JP2004295993A - 呼吸フィルタ - Google Patents
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Abstract
【課題】小型でありながら空気中に含まれている塵埃、湿気、腐食成分等が取り除かれた空気を長期間にわたり安定して取り出すことができる呼吸フィルタを提供する。
【解決手段】空気中の湿気や腐食成分を補集する吸着剤を結合材で固めた三次元網目構造を有する柱状の多孔質体と、その側面及び上面を、側壁内周面及び底面からなる内周面で包囲する有底状のカバー部材とを備え、該カバー部材の外周面から内周面にかけて空気流路を形成してなる呼吸フィルタにおいて、上記カバー部材の側壁内部に上記空気流路を形成した呼吸フィルタとする。
【選択図】図1
【解決手段】空気中の湿気や腐食成分を補集する吸着剤を結合材で固めた三次元網目構造を有する柱状の多孔質体と、その側面及び上面を、側壁内周面及び底面からなる内周面で包囲する有底状のカバー部材とを備え、該カバー部材の外周面から内周面にかけて空気流路を形成してなる呼吸フィルタにおいて、上記カバー部材の側壁内部に上記空気流路を形成した呼吸フィルタとする。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内外の圧力差及び空気の流入量を調整すると共に、空気中に含まれる塵埃の進入を防ぐことができ、さらに空気中に含まれる湿気や硫化水素、SOx、NOx、シロキサン等の腐食成分を吸着除去するのに用いる呼吸フィルタに関するものであり、特に磁気ディスク装置等の記録装置用呼吸フィルタとして好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、大型計算機やパーソナルコンピュータ等の記録装置である磁気ディスク装置にはその内外の圧力差や空気の流入量を調整する手段として呼吸フィルタが用いられている。
【0003】
図3に一般的な磁気ディスク装置の概略断面図を示すように、ケーシング11内に備える回転軸12に複数枚の磁気ディスク基板14が間隔を開けて取着してあり、上記磁気ディスク基板14の回転によって磁気ヘッド15が磁気ディスク基板14上を浮上するようになっている。そして、上記磁気ヘッド15を磁気ディスク基板14上の所定位置まで移動させることにより、磁気ディスク基板14上の情報を読み取ったり、情報を書き込んだりするようになっていた。
【0004】
また、ケーシング11には、温度低下によって磁気ディスク装置10内で結露が発生することを防止するために微少な貫通口16を形成してあり、この貫通口16の下方には、呼吸フィルタ30を設置するようになっていた。
【0005】
そして、このような磁気ディスク装置10に用いられる呼吸フィルタ30には、内外の圧力差や空気流入量の調整とともに、空気中に含まれている塵埃、湿気、腐食成分などの磁気ディスク装置内への侵入を阻止することが要求されている。
【0006】
即ち、空気中の塵埃が侵入して磁気ヘッド15と磁気ディスク基板14との間に入り込むと、ヘッドクラッシュを誘発する原因となるからであり、また、空気中の腐食成分(例えば、硫化水素、窒素酸化ガス、酸性ガス等)や湿気が侵入すると、磁気ディスク装置10内の部品が腐食し、その腐食粉が磁気ヘッド15と磁気ディスク基板14との間に入り込むと、ヘッドクラッシュを誘発する原因となるからである。
【0007】
その為、このような問題を解決する呼吸フィルタ20として、次のようなものが提案されている。
【0008】
特許文献1には、図4(a)、(b)に示すように、樹脂ケース21の凹部内に、空気中の湿度や腐食成分を吸着除去する吸着剤としての活性炭タブレット22を内装し、上記凹部開口部を不織布からなる多孔質膜23にて覆ってなり、樹脂ケース21の上面から凹部底面の間には曲がりくねった空気流路25を備え、樹脂ケース21の上面における空気流路25の開口部を空気導入口24とした呼吸フィルタ20が開示されている。
【0009】
この呼吸フィルタ20によれば、空気導入口24から入った空気は、蛇行する空気流路25によって流速が抑えられ、活性炭タブレット22にて空気中に含まれている湿気や腐食成分を吸着除去した後、多孔質膜23を通すことにより、空気中に含まれている塵埃を捕集するようになっていた。
【0010】
また、特許文献2には、図5に示すように合成樹脂の多孔質フィルムからなる容器内に、ガス拡散層を有するガス吸着シートを設置し、該多孔質フィルムからなる容器開口部を蓋体フィルムを用いて封止した構造の呼吸フィルタ30が開示されている。
【0011】
この呼吸フィルタ30によれば、磁気ディスク装置ケーシング壁34に設けられた空気導入口35からフィルタ30内に入った空気は、ガス吸着シート32のガス拡散層33によって、空気中に含まれている湿気や腐食性成分や塵埃を吸着しながら流速が抑制され、容器内の空間に分散された後、容器壁である多孔質フィルム31を通すようになっていた。
【0012】
〔特許文献1〕米国特許第4,863,499号公報
〔特許文献2〕特開平11−238376号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特許文献1に開示された呼吸フィルタ20は、空気の流速を抑える部位と、空気中の湿気や腐食成分を吸着除去する部位とがそれぞれ独立して形成されており、また空気の流速を抑える空気流路25は樹脂ケース21の厚肉部26内に形成してあることから、製作上及び強度上の問題から厚肉部26の厚みを薄くすることができず、その結果、小型化することが難しいといった課題があった。
【0014】
即ち、樹脂ケース21の厚肉部26内に図4(b)に示すような空気流路25を形成するには、少なくとも三枚の樹脂板27、28、29を用意し、第二の樹脂板28に空気流路25を形成し、その上面に空気導入口24を有する第一の樹脂板27を貼り合わせ、かつ下面に凹部を有する第三の樹脂板29を貼り合わせて形成するのであるが、樹脂板の強度を考慮すると2〜3mm程度の厚さが必要であり、活性炭タブレット22の厚みも含めると呼吸フィルタ20の高さを4mm以下とすることは難しいものであった。
【0015】
その為、例えば、小型化が要求されている磁気ディスク装置10には搭載することが難しく、また比較的大きな磁気ディスク装置10においてもケーシング11内のかなり広い領域を占めることになり、他の部品を搭載する際に設計的制約を受けるといった不都合があった。
【0016】
一方、特許文献2に開示された呼吸フィルタ30は、図4の呼吸フィルタ20のような空気流路25を有しておらず、空気の流速を抑えて吸湿効率を高めるには、圧力損失を高くしなければならないために、磁器ディスク装置内外の圧力差の調整が難しいといった課題があった。
【0017】
さらには、ガス吸着シート32の厚さの上限は10mmと非常に厚いために、特許文献1と同様に小型化が要求されている磁気ディスク装置10においてケーシング11内のかなり広い領域を占めることとなり、他の部品を搭載する際にやはり設計的制約を受けてしまうといった問題があった。
【0018】
【発明の目的】
本発明の目的は、小型で簡単な構造でありながら、従来と同等以上の吸湿特性、腐食成分の吸着特性を有し、磁気ディスク装置内外の圧力差及び空気流量の調整を容易に行うことができる呼吸フィルタを提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、本発明は、空気中の湿気や腐食成分を補集する吸着剤を結合材で固めた三次元網目構造の柱状の多孔質体と、該多孔質体の側面及び上面を、側壁内周面及び底面からなる内周面で包囲する有底状のカバー部材とを備え、該カバー部材の外周面から内周面にかけて空気流路を形成してなる呼吸フィルタにおいて、上記カバー部材の側壁内部に上記空気流路を形成したものである。
【0020】
また、上記多孔質体の上面及び下面の少なくとも一方に多孔質膜を形成したことを特徴とする。
【0021】
また、上記空気流路を蛇行させたことを特徴とする。
【0022】
さらに、上記多孔質膜が樹脂系材料により形成されていることを特徴とする。
【0023】
さらにまた、上記吸着剤が活性炭であって、上記吸着剤のカーボン結晶相のX線回折における第一主ピークが22.0°〜25.5°の範囲にあり、かつ上記吸着剤の平均細孔径が7〜30Å、比表面積が900〜1880m2/gであることを特徴とする請求項1乃至4のそれぞれに記載の呼吸フィルタ。
【0024】
また、上記吸着剤は、平均細孔径40〜90Å、比表面積320〜550m2/gのシリカゲルと上記活性炭の混合粉末からなることを特徴とする請求項1乃至4に記載の呼吸フィルタ。
【0025】
さらに、上記吸着剤のシリカゲル/活性炭の混合比率を1/9〜9/1としたことを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
図1(a)は本発明の呼吸フィルタの一例を示すX―X断面図、図1(b)は本発明呼吸フィルタのカバー部材の一例を示す平面図、図1(c)はA方向から見た同カバー部材の一部断面を示した側面図である。
【0028】
この呼吸フィルタ1は、空気中の湿気や腐食成分を補集する吸着剤を結合材で固めた三次元網目構造を有する柱状の多孔質体6と、その側面及び上面を、側壁内周面及び底面からなる内周面で包囲する有底状のカバー部材2を備え、そのカバー部材2の外周面から内周面にかけて空気導入口3、空気流路5及び空気流路排出口4を、上記カバー部材2の側壁内部に上記空気流路5を形成しており、更には多孔質体6の下面に多孔質膜7を形成し、上記空気流路は蛇行させた構造としている。
【0029】
そのため、空気導入口3から呼吸フィルタ1内に流入した空気は、まず蛇行させた空気流路5内を通過する際にその流入量を制限され、その後に空気流路排出穴4からカバー部材2と多孔質体6間に設けた空間部8に流入する。そして、吸着剤からなる多孔質体6により、空気中に含まれる湿気や腐食成分が吸着され、さらには多孔質膜7により塵埃が取り除かれ、より清浄化された形で磁気ディスク装置内に排出されることとなる。
【0030】
ここで、上記カバー部材2と多孔質体6間に設けられた空間部8は、流入してきた空気を多孔質体6へ均一に拡散させるために設置しており、図1では空間としているが、ここに不図示であるが多孔質体からなるガス拡散層を設置すれば、流入空気の多孔質体6への拡散作用をより顕著なものとすることが可能であり好適である。
【0031】
また、上記空間部8はかならずしも設置する必要はなく、空間部8を設置しない構造としても、流入してくる空気中の湿気除去は可能である。
【0032】
更には、上記空気流路排出口4は、その位置をカバー部材2の内周面のどこに設置しても良い。ただし、多孔質膜7と接触する箇所に空気流路排出口を設置すると、湿気を十分に吸着しないまま多孔質膜7を通して磁気ディスク装置内に空気を排出してする可能性があるため、空間部8に排出可能な位置が好ましい。
【0033】
また、上記空気流路5は蛇行させて形成することが好ましい。なぜなら蛇行させることによって、空気流路5を長くでき、流入する空気の流速を遅くし、カバー部材2内の吸着剤からなる多孔質体6への空気供給量を抑制することができるためである。これにより、空気中の湿気や腐食成分を吸着させる時間を長くし、吸着効率をより高くすることが可能となる。
【0034】
更に本発明の呼吸フィルタ1のカバー部材2の一例を図1(b)、(c)に示し、その空気流路5はカバー部材2の側壁半周に設けた形としているが、他に1/4周、あるいは全周と、上記吸着剤からなる多孔質体6に必要とされる吸着性能に合わせてあらゆる形で設計することが可能である。
【0035】
また、上記多孔質体6を形成する吸着剤としては、空気中の湿気や腐食成分を吸着できる材質であれば良く、活性炭、ゼオライト、各種粘土、イオン交換樹脂等の少なくとも1種以上を用いることができるが、空気中の湿気や腐食成分を効率良く補集する観点から活性炭を用いることが好ましく、さらに望ましくは活性炭を主体とし、一部を吸湿性能良好なシリカゲルで置き換えて活性炭とシリカゲルとからなるものを用いることが良い。また、湿気の吸着を重視する場合は、シリカゲルを主体として吸着剤中の重量比率を高くしてやれば良い。
【0036】
更に上記吸着剤を成形するための結合材としては、ポリエチレングリコール、ポリビニールアルコール、アクリル酸エステル、セルロース等の有機物の結合材が用いられる。
【0037】
また、上記多孔質膜7の材質としては、セラミックス、ガラス、紙等を用いることが可能であるが、特にアウトガスや発塵が少なく製作容易性の観点から樹脂系材料が好ましく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンフタレート、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、セルロースエステル、ポリ塩化ビニル、パーフルオロエチレン等を用いることがより好適である。
【0038】
次に、本発明の呼吸フィルタ1の製造方法の一例を示す。
【0039】
まず、空気中の湿気や腐食成分を吸着させる多孔質体6を製作するため、粒状や繊維状をした活性炭やシリカゲルからなる吸着剤を用意し、これにポリエチレングリコール等の有機物の結合材を添加して均一混合する。吸着剤と結合材とを均一混合するには、万能混合攪拌機等を用いて適当な回転数で混合すれば良いが、活性炭やシリカゲルを混合攪拌機内で発生する摩擦力により摩耗させないためには、100〜500rpm程度の回転数で混合するのが好ましい。
【0040】
また、結合材の添加にあたっては、液状にて添加すると吸着に寄与する吸着剤表面の気孔や吸着剤間の隙間が閉ざされ、通気性とともに吸湿性能や吸着性能が損なわれる可能性があるため、粉末の状態で添加した方が良く、さらには多孔質の樹脂粉末に液状の結合材を染み込ませたものを用いて吸着剤粉末同士を結合させてもよい。
【0041】
そして、均一混合された原料を押出成形法やプレス成形法等の各種成形法によって所定形状に成形した後、10時間以上自然乾燥させるか、あるいは乾燥時間の短縮のために100〜500℃の温度で30分〜3時間程度の熱処理を行い、成形体を硬化させることにより多孔質体6が得られる。
【0042】
次に、カバー部材2を作製する。一例として図1(a)、(b)に示した形状のカバー部材2の製法を説明すれば、カバー部材の材料である通気性のないポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンフタレート、ポリカーボネート等の樹脂を用いて、射出成形法等により、まず空気導入口3、空気流路排出口4、空気流路5のない状態で成形し、これに空気導入口3、空気流路排出口4、空気流路5を機械加工により形成する。
【0043】
なお、射出成形にて空気導入口3、空気流路排出口4、空気流路5を形成しても何ら問題ない。この後、カバー部材2と同材質の樹脂シートをカバー部材2に加工した空気導入口3、空気流路排出口4、空気流路5上に熱融着法等を用いて貼り付けることにより、空気導入口3、空気流路排出口4、空気流路5を有した本発明の呼吸フィルタ1のカバー部材2が得られる。また、上述の樹脂シートは、液体樹脂をコートして、これを乾燥させることにより樹脂多孔質膜としても構わない。
【0044】
しかる後、カバー部材2に多孔質体6を装填しその上からカバー部材2の開放端を覆うようにして、不織布からなる多孔質膜7を載せ、熱融着や超音波融接法等によりカバー部材2と多孔質膜7を接合することにより本発明の呼吸フィルタ1が得られる。多孔質膜7は不織布に限定されるものではなく、上述の通り、液体樹脂をコートして、これを乾燥させることにより樹脂多孔質膜としても構わない。
【0045】
なお、上述の空気導入口3、空気流路排出口4、空気流路5を省略して、カバー部材2上面にφ1〜φ9mm程度の貫通孔を設け、これに上述の樹脂多孔質膜を形成して、空気導入口3としても良い。
【0046】
そして、上記のようにして作製した本発明の呼吸フィルタ1を、例えば図2に示すように、磁気ディスク装置10に用いるには、ケーシング11に開口する貫通口16と図1に示す呼吸フィルタ1の空気導入口3を一致させ、ケーシング11と呼吸フィルタ1の隙間から流入空気が漏出しないように、ケーシング11の内壁面と呼吸フィルタ1のカバー部材2の上面とを接着剤や粘着テープを介して接合する。こうすることにより、ケーシング11内の圧力が大気圧より低くなるような圧力差が発生した場合、内外の圧力差を緩和するために空気導入口3から本発明の呼吸フィルタ1内に空気が取り込まれる。
【0047】
次に、空気導入口3から呼吸フィルタ1内に流入した空気は、まず空気流路5内を通過する際にその流入量を制限され、その後に空気流路排出穴4からカバー部材2と多孔質体6間に設けられた空間部8に流入する。そして、吸着剤からなる多孔質体6により空気中に含まれる湿気や腐食成分が吸着され、さらには多孔質膜7により塵埃が取り除かれ、より清浄化された形で磁気ディスク装置内10のケーシング11内に排出されることとなる。
【0048】
このように、空気流路5を呼吸フィルタ1の側壁内部に設けることで、従来のように樹脂ケース上部に蛇行させた空気通路を設けたりすることなく、磁気ディスク装置内外の圧力差や流入空気の流速の調整を行うことができるために呼吸フィルタ1の厚みを薄くできる。
【0049】
また、蛇行させた空気流路5をカバー部材2の上面及び側面に設置したことから、従来と比較して空気流路5の長さを長くし、より空気の流速を抑制することが可能であることから、多孔質体6による流入空気中の湿気や腐食成分の吸着時間を長くすることができ、吸着効率、吸着性能が上昇する。
【0050】
そして、湿気や腐食成分が吸着除去された空気は、多孔質膜7を通して磁気ディスク装置のケーシング11内に導かれるようになっており、この多孔質膜7によって多孔質体6から排出される塵埃等がケーシング11内に排出されるのを防止することができる。
【0051】
かくして、本発明の呼吸フィルタ1を用いれば、磁気ディスク装置10内に取り込まれた空気中には塵埃、湿気、腐食成分等が殆ど含まれず、塵埃が磁気ディスク基板14と磁気ヘッド15との間に噛み込むことにより発生するヘッドクラシュを招いたり、あるいは湿気や腐食成分によって磁気ディスク装置10の構成部品を錆びさせたり腐食させることがないため、長期使用においても安定して磁気ディスク装置10の駆動を実現することができる。
【0052】
また、本発明の呼吸フィルタ1は、カバー部材2の上面及び側面に空気流路5を設けた構造であるため、その厚さを薄くできるとともに空気流路5の長さ、幅を調節することで流路抵抗の幅広い調整が可能であるため、小型でありながら、圧力差や空気流入量の調整幅の広い呼吸フィルタ1とすることができる。よって、磁気ディスク装置10内に設置する際、その占有領域を小さくできるため、様々な設計ニーズに対応することが可能で、ノート型のパーソナルコンピュータに用いられる薄型の磁気ディスク装置10にも好適に用いることができる。
【0053】
なお、本発明の呼吸フィルタ1の空気流入、排出量を推し量る目安に呼吸フィルタ1全体の圧力損失がある。この圧力損失とは、呼吸フィルタ1の空気導入口から清浄な空気が排出される多孔質膜までを含めた空気の流路抵抗を示すものである。
【0054】
この圧力損失は空気導入口3の大きさや空気流路5の幅や深さ、長さ、多孔質体の孔径、形状によっても左右される値であり、磁気ディスク装置10の内外の圧力差をなくし、さらに空気の流速を抑えて、空気中の湿気や塵埃をより効率的に吸着剤で取り除くには、空気導入口3に流入する空気流量を200cc/minとしたときに100〜1000mmH2Oとするのが良い。圧力損失が100mmH2O未満と低い場合には流入空気の流速が早くなり、空気中の湿気や腐食性ガスを吸着剤により充分に吸着させることができない傾向となる。また1000mmH2Oより大きい場合には、圧力損失が高すぎるためにごく微量の空気の流入、排出しかできず磁気ディスク装置30内外に圧力差が生じた場合に充分な圧力差の調整を行うことが困難となる傾向にある。
【0055】
また、圧力損失を100〜1000mmH2Oとするために他の方法としては多孔質膜7、8の緻密度を調整する方法等がある。
【0056】
ところで、多孔質体6により空気中の湿気や腐食成分の吸着特性を高めるには、吸着剤のX線回折におけるカーボンの結晶相の第一主ピークが22.0〜25.5°の範囲にあり、かつ比表面積が900〜1880m2/gの範囲内とした活性炭を吸着剤として用いることが好ましい。
【0057】
即ち、本件発明者の研究によれば、吸着剤のX線回折におけるカーボンの結晶相の第一主ピークが22.0〜25.5°の範囲を外れると、活性炭からなる吸着剤の比表面積がいずれも900〜1880m2/gの範囲外となり、より好適な湿気や腐食性成分の吸着性能が得られなくなるからである。
【0058】
また、空気中の湿気の吸着性能を高めるためには、吸着剤を形成する活性炭の一部を、より吸湿性能の高いシリカゲルで置き換えて多孔質体6を形成することが好ましい。
【0059】
上記シリカゲルをより吸着性能の高いものにしようとすると、平均細孔径が40〜90Å、比表面積が320〜550m2/gとすれば良く、更には活性炭と混合させてこれにより多孔体6を作製すればよりいっそう好適である。
【0060】
ここで、上記活性炭とシリカゲルのより吸着性能が高められる混合比率としては1/9〜9/1である。
【0061】
なお、既に上述したが、図1では呼吸フィルタ1の平面形状として円形としたものを示したが、平面形状については特に限定するものではなく、設置箇所のスペースに合わせて、長方形、半円形、楕円形や三角形等の多角形などさまざまな形状を採用することができる。さらには空気流路の形状についても、長方形、円形、半円形、楕円形や三角形等の多角形などさまざまな形状を採用することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について示したが、本発明は上述した実施形態のものだけに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で改良や変更したものにも適用できることは言う迄もない。
【0063】
【実施例】
(実施例1)
図1(a)、(b)、(c)に示す本発明の呼吸フィルタ1と図4(a)、(b)、図5に示す従来の呼吸フィルタ20、30を用意し、図2の2.5インチの磁気ディスク装置10の呼吸孔16と呼吸フィルタ1の空気導入口3、フィルタ20の空気導入口24、フィルタ30の空気導入口35とを合わせて磁気ディスク装置10内に取付け、吸湿性能について比較する実験を行った。
【0064】
実験にあたり、本発明の呼吸フィルタ1は、多孔質体6を形成する吸着剤として粒状の賦活(ふかつ)ヤシ殻活性炭を用い、外形状は、直径10mm、高さ4mmのポリエチレン樹脂の円柱状体とし、空気導入口3の直径を0.8mm、長さを約70mm、側壁全周に蛇行させた空気流路を蛇行数26箇所として設け、吸着剤部直径を9mm、高さ3mmとし、空気排出穴4直径を0.8mmとした。
【0065】
また、上面と側面の空気流路5を包囲するフィルムは枠部材2と同様のポリエチレン樹脂フィルムを用いた。空気排出穴5の開口部に設ける多孔質膜8には、膜厚が100μm、目開きが1μm程度のポリエチレン製の不織布を用いた。多孔質膜7は液状ポリウレタン樹脂を引き延ばした後乾燥して、膜厚100μm程度の微多孔膜としてカバー部材2に接着させて本発明の呼吸フィルタ1を形成した。
【0066】
そして、得られた本発明の各呼吸フィルタ1の圧力損失を調べたところ、空気流量が200cc/min時、約800mmH2Oであった。
【0067】
一方、従来の呼吸フィルタ20は、直径10mm、高さ4mmの円柱状をしたポリカーボネート樹脂ケースの凹部に、直径8mm、高さ2.5mmの粒状活性炭タブレット22を挿入し、その開口部を厚さ100μm、目開き40μmのポリエチレン製の不織布で塞いだものを用いた。なお、樹脂ケース21内に形成した空気流路25の断面積は約0.2mm2とし、かつ空気流路25の距離は約20mmとした。
【0068】
そして、得られた従来の呼吸フィルタ20の圧力損失を調べたところ、空気流量が200cc/minの時、約150mmH2O以下であり、また呼吸フィルタ20全体の厚みを調べたところ4mmであった。
【0069】
この結果、図1及び図に示す本発明の呼吸フィルタ1と従来の呼吸フィルタ20とを比較すると、ほぼ同様のフィルタ体積を有していることが判る。
【0070】
また、従来のフィルタ30は、幅6mm×長さ15mm×高さ4mmの矩形状をしたフィルタであり、活性炭シート32と不織布ガス拡散層33よりなる吸着剤を厚さ約200μmの延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンのフィルム31で全面覆ったもので、空気導入口の孔径はφ3mmとした。
【0071】
そして得られた呼吸フィルタ30の圧力損失は約800mmH2Oであった。
【0072】
次に、磁気ディスク装置10のケーシングの厚みが約6mmである同容積を有する磁気ディスク装置10を3機用意し、図1、図4及び図5に示す呼吸フィルタ1、20、30を図2に示すような状態で設置した後、各磁気ディスク装置10内部を温度20℃、湿度40%に安定させた。その後、外気を温度20℃、湿度80%とし、時間経過とともに変化する各磁気ディスク装置10内部の湿度上昇量を温度/湿度測定機で測定した。
【0073】
結果は表1に示す通りである。
【0074】
【表1】
【0075】
この結果図1に示す本発明の呼吸フィルタ1は、図4に示す従来の呼吸フィルタ20と比較してフィルタ体積は同一ながら、同等以上の吸湿性能が得られ、図5に示す従来の呼吸フィルタ30に対しては、フィルタ体積が小さく、さらに少ない吸着剤量でありながら同等以上の吸湿性能が得られ、様々な設計要求に対して対応可能であることが確認できた。
【0076】
(実施例2)
次に、図1に示す本発明の呼吸フィルタ1において、吸着剤を形成する活性炭として表2に示すものを用い、実施例1と同様の条件にて吸湿性能を調べる実験を行った。
【0077】
結果は表2に示す通りである。
【0078】
なお、表中の判定において、特に吸湿性能が良好であったものを◎、良好なものを○として示している。
【0079】
【表2】
【0080】
この結果、いずれの活性炭を吸着剤として用いても十分な吸湿性能が得られたが、特にX線回折におけるカーボン結晶相の第一主ピークが22.0°〜25.5°の範囲にあるものを用いれば、その比表面積を900〜1880m2/gとすることができ、湿度上昇量を0.4%以下に抑えることが可能となり、さらに良好な吸湿特性が得られることを確認できた。
【0081】
(実施例3)
次に、図1に示す本発明の呼吸フィルタ1において、吸着剤を形成する活性炭として表2に示すもの内良好な特性を示すNo.2とNo.5の活性炭を用い、各種シリカゲル重量比率1:1で混合して実施例1と同様の条件にて吸湿性能を調べる実験を行った。
【0082】
結果は表3に示す通りである。
【0083】
なお、表中の判定において、湿度上昇量が抑えられ特に良好であったものを◎、良好であったものを○として示している。
【0084】
【表3】
【0085】
この結果、いずれのシリカゲルも活性炭と混合して用いても十分な吸湿性能が得られたが、特にシリカゲルの平均細孔径40〜90Å、比表面積320〜550m2/gの範囲にあるものを用いれば、湿度上昇量を0.4%以下に抑えることが可能となり、さらに良好な吸湿特性が得られることを確認できた。
【0086】
(実施例4)
次に、図1に示す本発明の呼吸フィルタ1において、吸着剤を形成する活性炭として表2に示すものの内、良好な特性を示すNo.2とNo.5の活性炭を用い、さらに添加するシリカゲルを平均細孔径40Å、比表面積550m2/gのものと、平均細孔径90Å、比表面積320m2/gのものをそれぞれ各重量比率で混合して、吸湿性能とガス吸着性能を調べる実験を行った。吸湿性能は実施例1と同様条件とし、ガス吸着性能は、代表的ガスとして、オクタメチルシクロテトラシロキサン[(CH3)2SiO]を用い約100ppmの供給量に対して80%以上の吸着量を確保できたものを良好と判断して、湿度上昇量0.4%以下と同時達成できた吸着剤を判定◎、湿度上昇量0.4%、ガス吸着性能が80%以上をどちらか一方達成できなかったものを判定○として表示した。
【0087】
結果は表4に示す通りである。
【0088】
【表4】
【0089】
この結果、上述の活性炭とシリカゲルのどの混合比率も良好な吸湿性能とシロキサンガス吸着性能を示したが、特に活性炭/シリカゲルの重量比率を1/9〜9/1としたものでさらに良好な性能が得られることが判った。
【0090】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、空気中の湿気や腐食成分を補集する吸着剤を結合材で固めた三次元網目構造を有する柱状の多孔質体の側面及び上面を、側壁内周面及び底面で包囲する有底状のカバー部材を備え、該カバー部材の外周面から内周面にかけて空気導入口、空気流路及び空気流路排出口を形成してなる呼吸フィルタにおいて、上記カバー部材の側壁内部に上記空気流路を形成した構造としたことから、フィルタ体積を極小化しつつ従来の吸湿性能を向上することができる。
【0091】
請求項2に係る発明によれば、上記多孔質体の上面及び下面の何れか一方に多孔質膜を形成したことから、空気中の塵埃を取り除くことが可能となり、磁気ディスク内に塵埃が侵入することを防止できる。
【0092】
請求項3に係る発明によれば、空気流路を蛇行させた構造としたことから、圧力損失を効率よく発現させ、フィルタに流入する空気量を制限することが可能となり、さらに良好な吸湿性能を得ることができる。
【0093】
請求項4〜7に係る発明によれば、上記多孔質膜が樹脂系材料により形成され、また、吸着剤のX線回折における結晶相の第一主ピークが22.0°〜25.5°の範囲にあり、且つ平均細孔径が7〜30Åであり、且つ比表面積が900〜1880m2/gである活性炭と、また、平均細孔径40〜90Å、比表面積320〜550m2/gのシリカゲルとの混合粉末からなる構成とし、さらに、上記吸着剤のシリカゲル/活性炭の混合比率を1/9〜9/1とした構成としたことより、従来よりも優れた吸湿性能およびガス吸着性能の両方を兼備した吸着剤とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の呼吸フィルタの一例を示す断面図、(b)は本発明の呼吸フィルタのカバー部材平面図、(c)は(b)をA方向から見た一部断面を示した側面図である。
【図2】本発明の呼吸フィルタを備えた磁気ディスク装置を示す概略断面図である。
【図3】一般的な磁気ディスク装置を示す概略断面図である。
【図4】(a)は従来の呼吸フィルタの一例を示す平面図、(b)は(a)のE−E線断面図である。
【図5】他の従来の呼吸フィルタを示す概略断面図である。
【符号の説明】
1:呼吸フィルタ
2:カバー部材
3:空気導入口
4:空気流路排出口
5:空気流路
6:多孔質体
7:多孔質膜
8:空間部
10:磁気ディスク装置
11:ケーシング
12:回転軸
14:磁気ディスク基板
15:磁気ヘッド
16:貫通孔
20:呼吸フィルタ
21:樹脂ケース
22:活性炭タブレット
23:多孔質膜
24:空気導入口
25:空気流路
30:呼吸フィルタ
31:容器壁(多孔質フィルム)
32:ガス吸着シート
33:ガス拡散層
34:磁気ディスク装置ケーシング壁
35:空気導入口
【発明の属する技術分野】
本発明は、内外の圧力差及び空気の流入量を調整すると共に、空気中に含まれる塵埃の進入を防ぐことができ、さらに空気中に含まれる湿気や硫化水素、SOx、NOx、シロキサン等の腐食成分を吸着除去するのに用いる呼吸フィルタに関するものであり、特に磁気ディスク装置等の記録装置用呼吸フィルタとして好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、大型計算機やパーソナルコンピュータ等の記録装置である磁気ディスク装置にはその内外の圧力差や空気の流入量を調整する手段として呼吸フィルタが用いられている。
【0003】
図3に一般的な磁気ディスク装置の概略断面図を示すように、ケーシング11内に備える回転軸12に複数枚の磁気ディスク基板14が間隔を開けて取着してあり、上記磁気ディスク基板14の回転によって磁気ヘッド15が磁気ディスク基板14上を浮上するようになっている。そして、上記磁気ヘッド15を磁気ディスク基板14上の所定位置まで移動させることにより、磁気ディスク基板14上の情報を読み取ったり、情報を書き込んだりするようになっていた。
【0004】
また、ケーシング11には、温度低下によって磁気ディスク装置10内で結露が発生することを防止するために微少な貫通口16を形成してあり、この貫通口16の下方には、呼吸フィルタ30を設置するようになっていた。
【0005】
そして、このような磁気ディスク装置10に用いられる呼吸フィルタ30には、内外の圧力差や空気流入量の調整とともに、空気中に含まれている塵埃、湿気、腐食成分などの磁気ディスク装置内への侵入を阻止することが要求されている。
【0006】
即ち、空気中の塵埃が侵入して磁気ヘッド15と磁気ディスク基板14との間に入り込むと、ヘッドクラッシュを誘発する原因となるからであり、また、空気中の腐食成分(例えば、硫化水素、窒素酸化ガス、酸性ガス等)や湿気が侵入すると、磁気ディスク装置10内の部品が腐食し、その腐食粉が磁気ヘッド15と磁気ディスク基板14との間に入り込むと、ヘッドクラッシュを誘発する原因となるからである。
【0007】
その為、このような問題を解決する呼吸フィルタ20として、次のようなものが提案されている。
【0008】
特許文献1には、図4(a)、(b)に示すように、樹脂ケース21の凹部内に、空気中の湿度や腐食成分を吸着除去する吸着剤としての活性炭タブレット22を内装し、上記凹部開口部を不織布からなる多孔質膜23にて覆ってなり、樹脂ケース21の上面から凹部底面の間には曲がりくねった空気流路25を備え、樹脂ケース21の上面における空気流路25の開口部を空気導入口24とした呼吸フィルタ20が開示されている。
【0009】
この呼吸フィルタ20によれば、空気導入口24から入った空気は、蛇行する空気流路25によって流速が抑えられ、活性炭タブレット22にて空気中に含まれている湿気や腐食成分を吸着除去した後、多孔質膜23を通すことにより、空気中に含まれている塵埃を捕集するようになっていた。
【0010】
また、特許文献2には、図5に示すように合成樹脂の多孔質フィルムからなる容器内に、ガス拡散層を有するガス吸着シートを設置し、該多孔質フィルムからなる容器開口部を蓋体フィルムを用いて封止した構造の呼吸フィルタ30が開示されている。
【0011】
この呼吸フィルタ30によれば、磁気ディスク装置ケーシング壁34に設けられた空気導入口35からフィルタ30内に入った空気は、ガス吸着シート32のガス拡散層33によって、空気中に含まれている湿気や腐食性成分や塵埃を吸着しながら流速が抑制され、容器内の空間に分散された後、容器壁である多孔質フィルム31を通すようになっていた。
【0012】
〔特許文献1〕米国特許第4,863,499号公報
〔特許文献2〕特開平11−238376号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特許文献1に開示された呼吸フィルタ20は、空気の流速を抑える部位と、空気中の湿気や腐食成分を吸着除去する部位とがそれぞれ独立して形成されており、また空気の流速を抑える空気流路25は樹脂ケース21の厚肉部26内に形成してあることから、製作上及び強度上の問題から厚肉部26の厚みを薄くすることができず、その結果、小型化することが難しいといった課題があった。
【0014】
即ち、樹脂ケース21の厚肉部26内に図4(b)に示すような空気流路25を形成するには、少なくとも三枚の樹脂板27、28、29を用意し、第二の樹脂板28に空気流路25を形成し、その上面に空気導入口24を有する第一の樹脂板27を貼り合わせ、かつ下面に凹部を有する第三の樹脂板29を貼り合わせて形成するのであるが、樹脂板の強度を考慮すると2〜3mm程度の厚さが必要であり、活性炭タブレット22の厚みも含めると呼吸フィルタ20の高さを4mm以下とすることは難しいものであった。
【0015】
その為、例えば、小型化が要求されている磁気ディスク装置10には搭載することが難しく、また比較的大きな磁気ディスク装置10においてもケーシング11内のかなり広い領域を占めることになり、他の部品を搭載する際に設計的制約を受けるといった不都合があった。
【0016】
一方、特許文献2に開示された呼吸フィルタ30は、図4の呼吸フィルタ20のような空気流路25を有しておらず、空気の流速を抑えて吸湿効率を高めるには、圧力損失を高くしなければならないために、磁器ディスク装置内外の圧力差の調整が難しいといった課題があった。
【0017】
さらには、ガス吸着シート32の厚さの上限は10mmと非常に厚いために、特許文献1と同様に小型化が要求されている磁気ディスク装置10においてケーシング11内のかなり広い領域を占めることとなり、他の部品を搭載する際にやはり設計的制約を受けてしまうといった問題があった。
【0018】
【発明の目的】
本発明の目的は、小型で簡単な構造でありながら、従来と同等以上の吸湿特性、腐食成分の吸着特性を有し、磁気ディスク装置内外の圧力差及び空気流量の調整を容易に行うことができる呼吸フィルタを提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、本発明は、空気中の湿気や腐食成分を補集する吸着剤を結合材で固めた三次元網目構造の柱状の多孔質体と、該多孔質体の側面及び上面を、側壁内周面及び底面からなる内周面で包囲する有底状のカバー部材とを備え、該カバー部材の外周面から内周面にかけて空気流路を形成してなる呼吸フィルタにおいて、上記カバー部材の側壁内部に上記空気流路を形成したものである。
【0020】
また、上記多孔質体の上面及び下面の少なくとも一方に多孔質膜を形成したことを特徴とする。
【0021】
また、上記空気流路を蛇行させたことを特徴とする。
【0022】
さらに、上記多孔質膜が樹脂系材料により形成されていることを特徴とする。
【0023】
さらにまた、上記吸着剤が活性炭であって、上記吸着剤のカーボン結晶相のX線回折における第一主ピークが22.0°〜25.5°の範囲にあり、かつ上記吸着剤の平均細孔径が7〜30Å、比表面積が900〜1880m2/gであることを特徴とする請求項1乃至4のそれぞれに記載の呼吸フィルタ。
【0024】
また、上記吸着剤は、平均細孔径40〜90Å、比表面積320〜550m2/gのシリカゲルと上記活性炭の混合粉末からなることを特徴とする請求項1乃至4に記載の呼吸フィルタ。
【0025】
さらに、上記吸着剤のシリカゲル/活性炭の混合比率を1/9〜9/1としたことを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
図1(a)は本発明の呼吸フィルタの一例を示すX―X断面図、図1(b)は本発明呼吸フィルタのカバー部材の一例を示す平面図、図1(c)はA方向から見た同カバー部材の一部断面を示した側面図である。
【0028】
この呼吸フィルタ1は、空気中の湿気や腐食成分を補集する吸着剤を結合材で固めた三次元網目構造を有する柱状の多孔質体6と、その側面及び上面を、側壁内周面及び底面からなる内周面で包囲する有底状のカバー部材2を備え、そのカバー部材2の外周面から内周面にかけて空気導入口3、空気流路5及び空気流路排出口4を、上記カバー部材2の側壁内部に上記空気流路5を形成しており、更には多孔質体6の下面に多孔質膜7を形成し、上記空気流路は蛇行させた構造としている。
【0029】
そのため、空気導入口3から呼吸フィルタ1内に流入した空気は、まず蛇行させた空気流路5内を通過する際にその流入量を制限され、その後に空気流路排出穴4からカバー部材2と多孔質体6間に設けた空間部8に流入する。そして、吸着剤からなる多孔質体6により、空気中に含まれる湿気や腐食成分が吸着され、さらには多孔質膜7により塵埃が取り除かれ、より清浄化された形で磁気ディスク装置内に排出されることとなる。
【0030】
ここで、上記カバー部材2と多孔質体6間に設けられた空間部8は、流入してきた空気を多孔質体6へ均一に拡散させるために設置しており、図1では空間としているが、ここに不図示であるが多孔質体からなるガス拡散層を設置すれば、流入空気の多孔質体6への拡散作用をより顕著なものとすることが可能であり好適である。
【0031】
また、上記空間部8はかならずしも設置する必要はなく、空間部8を設置しない構造としても、流入してくる空気中の湿気除去は可能である。
【0032】
更には、上記空気流路排出口4は、その位置をカバー部材2の内周面のどこに設置しても良い。ただし、多孔質膜7と接触する箇所に空気流路排出口を設置すると、湿気を十分に吸着しないまま多孔質膜7を通して磁気ディスク装置内に空気を排出してする可能性があるため、空間部8に排出可能な位置が好ましい。
【0033】
また、上記空気流路5は蛇行させて形成することが好ましい。なぜなら蛇行させることによって、空気流路5を長くでき、流入する空気の流速を遅くし、カバー部材2内の吸着剤からなる多孔質体6への空気供給量を抑制することができるためである。これにより、空気中の湿気や腐食成分を吸着させる時間を長くし、吸着効率をより高くすることが可能となる。
【0034】
更に本発明の呼吸フィルタ1のカバー部材2の一例を図1(b)、(c)に示し、その空気流路5はカバー部材2の側壁半周に設けた形としているが、他に1/4周、あるいは全周と、上記吸着剤からなる多孔質体6に必要とされる吸着性能に合わせてあらゆる形で設計することが可能である。
【0035】
また、上記多孔質体6を形成する吸着剤としては、空気中の湿気や腐食成分を吸着できる材質であれば良く、活性炭、ゼオライト、各種粘土、イオン交換樹脂等の少なくとも1種以上を用いることができるが、空気中の湿気や腐食成分を効率良く補集する観点から活性炭を用いることが好ましく、さらに望ましくは活性炭を主体とし、一部を吸湿性能良好なシリカゲルで置き換えて活性炭とシリカゲルとからなるものを用いることが良い。また、湿気の吸着を重視する場合は、シリカゲルを主体として吸着剤中の重量比率を高くしてやれば良い。
【0036】
更に上記吸着剤を成形するための結合材としては、ポリエチレングリコール、ポリビニールアルコール、アクリル酸エステル、セルロース等の有機物の結合材が用いられる。
【0037】
また、上記多孔質膜7の材質としては、セラミックス、ガラス、紙等を用いることが可能であるが、特にアウトガスや発塵が少なく製作容易性の観点から樹脂系材料が好ましく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンフタレート、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、セルロースエステル、ポリ塩化ビニル、パーフルオロエチレン等を用いることがより好適である。
【0038】
次に、本発明の呼吸フィルタ1の製造方法の一例を示す。
【0039】
まず、空気中の湿気や腐食成分を吸着させる多孔質体6を製作するため、粒状や繊維状をした活性炭やシリカゲルからなる吸着剤を用意し、これにポリエチレングリコール等の有機物の結合材を添加して均一混合する。吸着剤と結合材とを均一混合するには、万能混合攪拌機等を用いて適当な回転数で混合すれば良いが、活性炭やシリカゲルを混合攪拌機内で発生する摩擦力により摩耗させないためには、100〜500rpm程度の回転数で混合するのが好ましい。
【0040】
また、結合材の添加にあたっては、液状にて添加すると吸着に寄与する吸着剤表面の気孔や吸着剤間の隙間が閉ざされ、通気性とともに吸湿性能や吸着性能が損なわれる可能性があるため、粉末の状態で添加した方が良く、さらには多孔質の樹脂粉末に液状の結合材を染み込ませたものを用いて吸着剤粉末同士を結合させてもよい。
【0041】
そして、均一混合された原料を押出成形法やプレス成形法等の各種成形法によって所定形状に成形した後、10時間以上自然乾燥させるか、あるいは乾燥時間の短縮のために100〜500℃の温度で30分〜3時間程度の熱処理を行い、成形体を硬化させることにより多孔質体6が得られる。
【0042】
次に、カバー部材2を作製する。一例として図1(a)、(b)に示した形状のカバー部材2の製法を説明すれば、カバー部材の材料である通気性のないポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンフタレート、ポリカーボネート等の樹脂を用いて、射出成形法等により、まず空気導入口3、空気流路排出口4、空気流路5のない状態で成形し、これに空気導入口3、空気流路排出口4、空気流路5を機械加工により形成する。
【0043】
なお、射出成形にて空気導入口3、空気流路排出口4、空気流路5を形成しても何ら問題ない。この後、カバー部材2と同材質の樹脂シートをカバー部材2に加工した空気導入口3、空気流路排出口4、空気流路5上に熱融着法等を用いて貼り付けることにより、空気導入口3、空気流路排出口4、空気流路5を有した本発明の呼吸フィルタ1のカバー部材2が得られる。また、上述の樹脂シートは、液体樹脂をコートして、これを乾燥させることにより樹脂多孔質膜としても構わない。
【0044】
しかる後、カバー部材2に多孔質体6を装填しその上からカバー部材2の開放端を覆うようにして、不織布からなる多孔質膜7を載せ、熱融着や超音波融接法等によりカバー部材2と多孔質膜7を接合することにより本発明の呼吸フィルタ1が得られる。多孔質膜7は不織布に限定されるものではなく、上述の通り、液体樹脂をコートして、これを乾燥させることにより樹脂多孔質膜としても構わない。
【0045】
なお、上述の空気導入口3、空気流路排出口4、空気流路5を省略して、カバー部材2上面にφ1〜φ9mm程度の貫通孔を設け、これに上述の樹脂多孔質膜を形成して、空気導入口3としても良い。
【0046】
そして、上記のようにして作製した本発明の呼吸フィルタ1を、例えば図2に示すように、磁気ディスク装置10に用いるには、ケーシング11に開口する貫通口16と図1に示す呼吸フィルタ1の空気導入口3を一致させ、ケーシング11と呼吸フィルタ1の隙間から流入空気が漏出しないように、ケーシング11の内壁面と呼吸フィルタ1のカバー部材2の上面とを接着剤や粘着テープを介して接合する。こうすることにより、ケーシング11内の圧力が大気圧より低くなるような圧力差が発生した場合、内外の圧力差を緩和するために空気導入口3から本発明の呼吸フィルタ1内に空気が取り込まれる。
【0047】
次に、空気導入口3から呼吸フィルタ1内に流入した空気は、まず空気流路5内を通過する際にその流入量を制限され、その後に空気流路排出穴4からカバー部材2と多孔質体6間に設けられた空間部8に流入する。そして、吸着剤からなる多孔質体6により空気中に含まれる湿気や腐食成分が吸着され、さらには多孔質膜7により塵埃が取り除かれ、より清浄化された形で磁気ディスク装置内10のケーシング11内に排出されることとなる。
【0048】
このように、空気流路5を呼吸フィルタ1の側壁内部に設けることで、従来のように樹脂ケース上部に蛇行させた空気通路を設けたりすることなく、磁気ディスク装置内外の圧力差や流入空気の流速の調整を行うことができるために呼吸フィルタ1の厚みを薄くできる。
【0049】
また、蛇行させた空気流路5をカバー部材2の上面及び側面に設置したことから、従来と比較して空気流路5の長さを長くし、より空気の流速を抑制することが可能であることから、多孔質体6による流入空気中の湿気や腐食成分の吸着時間を長くすることができ、吸着効率、吸着性能が上昇する。
【0050】
そして、湿気や腐食成分が吸着除去された空気は、多孔質膜7を通して磁気ディスク装置のケーシング11内に導かれるようになっており、この多孔質膜7によって多孔質体6から排出される塵埃等がケーシング11内に排出されるのを防止することができる。
【0051】
かくして、本発明の呼吸フィルタ1を用いれば、磁気ディスク装置10内に取り込まれた空気中には塵埃、湿気、腐食成分等が殆ど含まれず、塵埃が磁気ディスク基板14と磁気ヘッド15との間に噛み込むことにより発生するヘッドクラシュを招いたり、あるいは湿気や腐食成分によって磁気ディスク装置10の構成部品を錆びさせたり腐食させることがないため、長期使用においても安定して磁気ディスク装置10の駆動を実現することができる。
【0052】
また、本発明の呼吸フィルタ1は、カバー部材2の上面及び側面に空気流路5を設けた構造であるため、その厚さを薄くできるとともに空気流路5の長さ、幅を調節することで流路抵抗の幅広い調整が可能であるため、小型でありながら、圧力差や空気流入量の調整幅の広い呼吸フィルタ1とすることができる。よって、磁気ディスク装置10内に設置する際、その占有領域を小さくできるため、様々な設計ニーズに対応することが可能で、ノート型のパーソナルコンピュータに用いられる薄型の磁気ディスク装置10にも好適に用いることができる。
【0053】
なお、本発明の呼吸フィルタ1の空気流入、排出量を推し量る目安に呼吸フィルタ1全体の圧力損失がある。この圧力損失とは、呼吸フィルタ1の空気導入口から清浄な空気が排出される多孔質膜までを含めた空気の流路抵抗を示すものである。
【0054】
この圧力損失は空気導入口3の大きさや空気流路5の幅や深さ、長さ、多孔質体の孔径、形状によっても左右される値であり、磁気ディスク装置10の内外の圧力差をなくし、さらに空気の流速を抑えて、空気中の湿気や塵埃をより効率的に吸着剤で取り除くには、空気導入口3に流入する空気流量を200cc/minとしたときに100〜1000mmH2Oとするのが良い。圧力損失が100mmH2O未満と低い場合には流入空気の流速が早くなり、空気中の湿気や腐食性ガスを吸着剤により充分に吸着させることができない傾向となる。また1000mmH2Oより大きい場合には、圧力損失が高すぎるためにごく微量の空気の流入、排出しかできず磁気ディスク装置30内外に圧力差が生じた場合に充分な圧力差の調整を行うことが困難となる傾向にある。
【0055】
また、圧力損失を100〜1000mmH2Oとするために他の方法としては多孔質膜7、8の緻密度を調整する方法等がある。
【0056】
ところで、多孔質体6により空気中の湿気や腐食成分の吸着特性を高めるには、吸着剤のX線回折におけるカーボンの結晶相の第一主ピークが22.0〜25.5°の範囲にあり、かつ比表面積が900〜1880m2/gの範囲内とした活性炭を吸着剤として用いることが好ましい。
【0057】
即ち、本件発明者の研究によれば、吸着剤のX線回折におけるカーボンの結晶相の第一主ピークが22.0〜25.5°の範囲を外れると、活性炭からなる吸着剤の比表面積がいずれも900〜1880m2/gの範囲外となり、より好適な湿気や腐食性成分の吸着性能が得られなくなるからである。
【0058】
また、空気中の湿気の吸着性能を高めるためには、吸着剤を形成する活性炭の一部を、より吸湿性能の高いシリカゲルで置き換えて多孔質体6を形成することが好ましい。
【0059】
上記シリカゲルをより吸着性能の高いものにしようとすると、平均細孔径が40〜90Å、比表面積が320〜550m2/gとすれば良く、更には活性炭と混合させてこれにより多孔体6を作製すればよりいっそう好適である。
【0060】
ここで、上記活性炭とシリカゲルのより吸着性能が高められる混合比率としては1/9〜9/1である。
【0061】
なお、既に上述したが、図1では呼吸フィルタ1の平面形状として円形としたものを示したが、平面形状については特に限定するものではなく、設置箇所のスペースに合わせて、長方形、半円形、楕円形や三角形等の多角形などさまざまな形状を採用することができる。さらには空気流路の形状についても、長方形、円形、半円形、楕円形や三角形等の多角形などさまざまな形状を採用することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について示したが、本発明は上述した実施形態のものだけに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で改良や変更したものにも適用できることは言う迄もない。
【0063】
【実施例】
(実施例1)
図1(a)、(b)、(c)に示す本発明の呼吸フィルタ1と図4(a)、(b)、図5に示す従来の呼吸フィルタ20、30を用意し、図2の2.5インチの磁気ディスク装置10の呼吸孔16と呼吸フィルタ1の空気導入口3、フィルタ20の空気導入口24、フィルタ30の空気導入口35とを合わせて磁気ディスク装置10内に取付け、吸湿性能について比較する実験を行った。
【0064】
実験にあたり、本発明の呼吸フィルタ1は、多孔質体6を形成する吸着剤として粒状の賦活(ふかつ)ヤシ殻活性炭を用い、外形状は、直径10mm、高さ4mmのポリエチレン樹脂の円柱状体とし、空気導入口3の直径を0.8mm、長さを約70mm、側壁全周に蛇行させた空気流路を蛇行数26箇所として設け、吸着剤部直径を9mm、高さ3mmとし、空気排出穴4直径を0.8mmとした。
【0065】
また、上面と側面の空気流路5を包囲するフィルムは枠部材2と同様のポリエチレン樹脂フィルムを用いた。空気排出穴5の開口部に設ける多孔質膜8には、膜厚が100μm、目開きが1μm程度のポリエチレン製の不織布を用いた。多孔質膜7は液状ポリウレタン樹脂を引き延ばした後乾燥して、膜厚100μm程度の微多孔膜としてカバー部材2に接着させて本発明の呼吸フィルタ1を形成した。
【0066】
そして、得られた本発明の各呼吸フィルタ1の圧力損失を調べたところ、空気流量が200cc/min時、約800mmH2Oであった。
【0067】
一方、従来の呼吸フィルタ20は、直径10mm、高さ4mmの円柱状をしたポリカーボネート樹脂ケースの凹部に、直径8mm、高さ2.5mmの粒状活性炭タブレット22を挿入し、その開口部を厚さ100μm、目開き40μmのポリエチレン製の不織布で塞いだものを用いた。なお、樹脂ケース21内に形成した空気流路25の断面積は約0.2mm2とし、かつ空気流路25の距離は約20mmとした。
【0068】
そして、得られた従来の呼吸フィルタ20の圧力損失を調べたところ、空気流量が200cc/minの時、約150mmH2O以下であり、また呼吸フィルタ20全体の厚みを調べたところ4mmであった。
【0069】
この結果、図1及び図に示す本発明の呼吸フィルタ1と従来の呼吸フィルタ20とを比較すると、ほぼ同様のフィルタ体積を有していることが判る。
【0070】
また、従来のフィルタ30は、幅6mm×長さ15mm×高さ4mmの矩形状をしたフィルタであり、活性炭シート32と不織布ガス拡散層33よりなる吸着剤を厚さ約200μmの延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンのフィルム31で全面覆ったもので、空気導入口の孔径はφ3mmとした。
【0071】
そして得られた呼吸フィルタ30の圧力損失は約800mmH2Oであった。
【0072】
次に、磁気ディスク装置10のケーシングの厚みが約6mmである同容積を有する磁気ディスク装置10を3機用意し、図1、図4及び図5に示す呼吸フィルタ1、20、30を図2に示すような状態で設置した後、各磁気ディスク装置10内部を温度20℃、湿度40%に安定させた。その後、外気を温度20℃、湿度80%とし、時間経過とともに変化する各磁気ディスク装置10内部の湿度上昇量を温度/湿度測定機で測定した。
【0073】
結果は表1に示す通りである。
【0074】
【表1】
【0075】
この結果図1に示す本発明の呼吸フィルタ1は、図4に示す従来の呼吸フィルタ20と比較してフィルタ体積は同一ながら、同等以上の吸湿性能が得られ、図5に示す従来の呼吸フィルタ30に対しては、フィルタ体積が小さく、さらに少ない吸着剤量でありながら同等以上の吸湿性能が得られ、様々な設計要求に対して対応可能であることが確認できた。
【0076】
(実施例2)
次に、図1に示す本発明の呼吸フィルタ1において、吸着剤を形成する活性炭として表2に示すものを用い、実施例1と同様の条件にて吸湿性能を調べる実験を行った。
【0077】
結果は表2に示す通りである。
【0078】
なお、表中の判定において、特に吸湿性能が良好であったものを◎、良好なものを○として示している。
【0079】
【表2】
【0080】
この結果、いずれの活性炭を吸着剤として用いても十分な吸湿性能が得られたが、特にX線回折におけるカーボン結晶相の第一主ピークが22.0°〜25.5°の範囲にあるものを用いれば、その比表面積を900〜1880m2/gとすることができ、湿度上昇量を0.4%以下に抑えることが可能となり、さらに良好な吸湿特性が得られることを確認できた。
【0081】
(実施例3)
次に、図1に示す本発明の呼吸フィルタ1において、吸着剤を形成する活性炭として表2に示すもの内良好な特性を示すNo.2とNo.5の活性炭を用い、各種シリカゲル重量比率1:1で混合して実施例1と同様の条件にて吸湿性能を調べる実験を行った。
【0082】
結果は表3に示す通りである。
【0083】
なお、表中の判定において、湿度上昇量が抑えられ特に良好であったものを◎、良好であったものを○として示している。
【0084】
【表3】
【0085】
この結果、いずれのシリカゲルも活性炭と混合して用いても十分な吸湿性能が得られたが、特にシリカゲルの平均細孔径40〜90Å、比表面積320〜550m2/gの範囲にあるものを用いれば、湿度上昇量を0.4%以下に抑えることが可能となり、さらに良好な吸湿特性が得られることを確認できた。
【0086】
(実施例4)
次に、図1に示す本発明の呼吸フィルタ1において、吸着剤を形成する活性炭として表2に示すものの内、良好な特性を示すNo.2とNo.5の活性炭を用い、さらに添加するシリカゲルを平均細孔径40Å、比表面積550m2/gのものと、平均細孔径90Å、比表面積320m2/gのものをそれぞれ各重量比率で混合して、吸湿性能とガス吸着性能を調べる実験を行った。吸湿性能は実施例1と同様条件とし、ガス吸着性能は、代表的ガスとして、オクタメチルシクロテトラシロキサン[(CH3)2SiO]を用い約100ppmの供給量に対して80%以上の吸着量を確保できたものを良好と判断して、湿度上昇量0.4%以下と同時達成できた吸着剤を判定◎、湿度上昇量0.4%、ガス吸着性能が80%以上をどちらか一方達成できなかったものを判定○として表示した。
【0087】
結果は表4に示す通りである。
【0088】
【表4】
【0089】
この結果、上述の活性炭とシリカゲルのどの混合比率も良好な吸湿性能とシロキサンガス吸着性能を示したが、特に活性炭/シリカゲルの重量比率を1/9〜9/1としたものでさらに良好な性能が得られることが判った。
【0090】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、空気中の湿気や腐食成分を補集する吸着剤を結合材で固めた三次元網目構造を有する柱状の多孔質体の側面及び上面を、側壁内周面及び底面で包囲する有底状のカバー部材を備え、該カバー部材の外周面から内周面にかけて空気導入口、空気流路及び空気流路排出口を形成してなる呼吸フィルタにおいて、上記カバー部材の側壁内部に上記空気流路を形成した構造としたことから、フィルタ体積を極小化しつつ従来の吸湿性能を向上することができる。
【0091】
請求項2に係る発明によれば、上記多孔質体の上面及び下面の何れか一方に多孔質膜を形成したことから、空気中の塵埃を取り除くことが可能となり、磁気ディスク内に塵埃が侵入することを防止できる。
【0092】
請求項3に係る発明によれば、空気流路を蛇行させた構造としたことから、圧力損失を効率よく発現させ、フィルタに流入する空気量を制限することが可能となり、さらに良好な吸湿性能を得ることができる。
【0093】
請求項4〜7に係る発明によれば、上記多孔質膜が樹脂系材料により形成され、また、吸着剤のX線回折における結晶相の第一主ピークが22.0°〜25.5°の範囲にあり、且つ平均細孔径が7〜30Åであり、且つ比表面積が900〜1880m2/gである活性炭と、また、平均細孔径40〜90Å、比表面積320〜550m2/gのシリカゲルとの混合粉末からなる構成とし、さらに、上記吸着剤のシリカゲル/活性炭の混合比率を1/9〜9/1とした構成としたことより、従来よりも優れた吸湿性能およびガス吸着性能の両方を兼備した吸着剤とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の呼吸フィルタの一例を示す断面図、(b)は本発明の呼吸フィルタのカバー部材平面図、(c)は(b)をA方向から見た一部断面を示した側面図である。
【図2】本発明の呼吸フィルタを備えた磁気ディスク装置を示す概略断面図である。
【図3】一般的な磁気ディスク装置を示す概略断面図である。
【図4】(a)は従来の呼吸フィルタの一例を示す平面図、(b)は(a)のE−E線断面図である。
【図5】他の従来の呼吸フィルタを示す概略断面図である。
【符号の説明】
1:呼吸フィルタ
2:カバー部材
3:空気導入口
4:空気流路排出口
5:空気流路
6:多孔質体
7:多孔質膜
8:空間部
10:磁気ディスク装置
11:ケーシング
12:回転軸
14:磁気ディスク基板
15:磁気ヘッド
16:貫通孔
20:呼吸フィルタ
21:樹脂ケース
22:活性炭タブレット
23:多孔質膜
24:空気導入口
25:空気流路
30:呼吸フィルタ
31:容器壁(多孔質フィルム)
32:ガス吸着シート
33:ガス拡散層
34:磁気ディスク装置ケーシング壁
35:空気導入口
Claims (7)
- 空気中の湿気や腐食成分を補集する吸着剤を結合材で固めた三次元網目構造の柱状の多孔質体と、該多孔質体の側面及び上面を、側壁内周面及び底面からなる内周面で包囲する有底状のカバー部材とを備え、該カバー部材の外周面から内周面にかけて空気流路を形成してなる呼吸フィルタにおいて、上記カバー部材の側壁内部に上記空気流路を形成したことを特徴とする呼吸フィルタ。
- 上記多孔質体の上面及び下面の少なくとも一方に多孔質膜を形成したことを特徴とする呼吸フィルタ。
- 上記空気流路を蛇行させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の呼吸フィルタ。
- 上記多孔質膜が樹脂系材料により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の呼吸フィルタ。
- 上記吸着剤が活性炭であって、上記吸着剤のカーボン結晶相のX線回折における第一主ピークが22.0°〜25.5°の範囲にあり、かつ上記吸着剤の平均細孔径が7〜30Å、比表面積が900〜1880m2/gであることを特徴とする請求項1乃至4のそれぞれに記載の呼吸フィルタ。
- 上記吸着剤は、平均細孔径40〜90Å、比表面積320〜550m2/gのシリカゲルと上記活性炭の混合粉末からなることを特徴とする請求項1乃至4に記載の呼吸フィルタ。
- 上記吸着剤の活性炭/シリカゲルの混合比率を1/9〜9/1としたことを特徴とする請求項6記載の呼吸フィルタ。
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JP2016501710A (ja) * | 2012-10-26 | 2016-01-21 | ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド | 電子筐体用の制御された水蒸気透過フィルター組立体 |
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2003
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