JP2004292252A - 薄板部と支持部とを有する焼結体の製造方法、薄板部と支持部とを有する焼結体の構造物、及び薄板焼結体の製造方法 - Google Patents
薄板部と支持部とを有する焼結体の製造方法、薄板部と支持部とを有する焼結体の構造物、及び薄板焼結体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】平面度が良好である薄板部を備えた焼結体構造物(圧電/電歪デバイス)の製造方法を提供すること。
【解決手段】圧電/電歪デバイスは、「(1)仮積層体25を、一対のセラミックグリーンシート23,23でサンドイッチ状に挟みこみ、更にそれらを一対のセラミックグリーンシート26,26で挟み込むように積層して本積層体27を作成する。このとき、焼成後に薄板部となるセラミックグリーンシート24には補助材50を形成し、セラミックグリーンシート24の剛性を向上しておく。(2)本積層体27を焼結させる。(3)所定の切断平面に沿って切断する。(4)補助材50をエッチングにより除去する。」という各工程を経て製造される。補助材50は、焼成中に消失しない物質(例えば、酸化物)であって、焼成後にエッチングにより容易に除去される物質から選択される。
【選択図】 図9
【解決手段】圧電/電歪デバイスは、「(1)仮積層体25を、一対のセラミックグリーンシート23,23でサンドイッチ状に挟みこみ、更にそれらを一対のセラミックグリーンシート26,26で挟み込むように積層して本積層体27を作成する。このとき、焼成後に薄板部となるセラミックグリーンシート24には補助材50を形成し、セラミックグリーンシート24の剛性を向上しておく。(2)本積層体27を焼結させる。(3)所定の切断平面に沿って切断する。(4)補助材50をエッチングにより除去する。」という各工程を経て製造される。補助材50は、焼成中に消失しない物質(例えば、酸化物)であって、焼成後にエッチングにより容易に除去される物質から選択される。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄板部と支持部とを有する焼結体の製造方法、薄板部と支持部とを有する焼結体の構造物、及び薄板焼結体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄板部と同薄板部を支持する支持部とを有する焼結体からなる構造物は、例えば、薄板部に形成された圧電/電歪素子を備え、この圧電/電歪素子により薄板部を変形させることにより薄板部に保持された光学的又は磁気的情報等の読取り及び/又は書込み用素子(ヘッド)の位置を制御するアクチュエータ等として開発されてきている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−315100号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような焼結体からなる構造物を焼成工程(焼結工程)を経て製造する場合、焼成中に薄板部となる板体がその自重により撓んで変形してしまうという問題がある。
【0005】
また、このような構造物は、薄板部となる板体と支持部となる部分とを同時に焼成することにより製造される。ところが、薄板部となる板体の肉厚は支持部となる部分の肉厚よりも薄いので、薄板部となる板体は支持部となる部分よりも短時間内に焼結する。このため、焼成中において構造物の内部に応力が発生し、その応力による歪は最も強度の弱い薄肉部(薄板部)を変形させるという形で解放されるので、薄板部が変形してしまうという問題もある。
【0006】
従って、本発明の目的は、薄板部と支持部とを有する焼結体(焼結体からなる構造物)であって、同薄板部の板厚が極めて薄い場合であっても、所望の形状(例えば、平面度が良好な薄板体形状)の薄板部を有する焼結体を得ることができる製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、耐衝撃性や防湿性に優れた焼結体からなる構造物を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、厚さが極めて薄く所望の形状を有する薄板焼結体を得ることができる薄板焼結体の製造方法を提供することにある。
【0007】
【本発明の概要】
上記目的を達成するための本発明による焼結体の製造方法は、薄板部と同薄板部を支持する支持部とを有する焼結体の製造方法であって、前記薄板部となる板体の少なくとも一部に補助材(前駆体)を接触させるとともに、同薄板部となる板体の少なくとも他の一部に前記支持部となる部分を接触させた状態にて、同薄板部となる板体及び同支持部となる部分の焼成を行う焼成工程と、前記焼成工程終了後に前記補助材又は前記補助材の化学変化による生成物を除去する除去工程と、を含む。
【0008】
これによれば、前記薄板部となる板体の少なくとも一部に補助材が接触された状態にて同板体が焼成せしめられる。この補助材は、焼成工程中に化学変化しない材質からなっていてもよく、焼成工程中に化学変化(例えば、酸化)する材質からなっていてもよい。そして、補助材又は補助材の化学変化による生成物は焼成工程終了後に除去される。換言すると、補助材は、薄板部となる板体及び支持部となる部分の焼成中(焼成工程中)に消失しない材質から選択される。
【0009】
このような補助材は、従来から焼結体構造物の製造において使用されるテオブロミン等の昇華性物質とは異なり、焼成工程の最後まで消失することなく存在している。従って、後述するように、薄板部となる板体の板厚が補助材により擬似的に厚くされた状態(板体の剛性が向上された状態)にて同薄板部となる板体が焼成せしめられ、或いは、薄板部となる板体が補助材により支持された状態にて焼成せしめられるので、焼成中において薄板部となる板体がその自重によって撓まない。この結果、薄板部の平面度が良好な焼結体(焼結体からなる構造物)が提供される。
【0010】
この場合、前記補助材は、酸化物、窒化物、及び炭化物の何れか一つを含んでなることが好適である。また、補助材の化学変化による生成物は、酸化物であってもよい。補助材は、金属元素又は半導体元素からなる物質、炭化物、亜酸化物、及び塩化物等の少なくとも一つを含む材料であってもよい。
【0011】
焼成工程中の化学変化の有無に関わらず、焼成工程前の補助材が焼成工程終了後において酸化物として存在している場合、その補助材又は補助材の化学変化による生成物は、溶剤を適切に選択することにより、エッチングにより容易に除去され得る。
【0012】
エッチング可能な酸化物としては、例えばCoO、SiO2、NiO、Nb2O5、TiO2、ZnO、ZrO2、MgO、BaO、CaO等が挙げられる。ただし、焼結工程終了後、補助材又は補助材の化学変化による生成物が、選択的にエッチングされ得ること(即ち、焼結した薄板部及び支持部(基板材料)が溶出することなく補助材又は補助材の化学変化による生成物のみが溶出により除去されること)が重要である。この場合、焼結した薄板部及び支持部が溶剤としての水に溶出しない場合には、補助材をMgO、BaO、CaOを含む材料の中から選択することが望ましい。
【0013】
また、窒化物及び炭化物は常圧で焼成すると焼結し難いから(難焼結性を示すから)、補助材が窒化物又は炭化物を含んでいれば、その補助材又は補助材の化学変化による生成物は焼結工程終了後に粉砕により容易に除去され得る。これらの補助材としては、例えば、Ta2O5、BN、Si3N4、SiC、WC等を含む材料を挙げることができる。
【0014】
また、補助材が、金属元素又は半導体元素からなる物質を含んでなる場合、焼成工程中に金属及び半導体は金属酸化物及び酸化物へとそれぞれ体積膨張を伴いながら変化するものが多い。従って、このような補助材によれば、薄板部となる板体を一層確実に支持しながら焼成を行うことができる。
【0015】
本発明の一つの態様において、前記焼成工程は、前記薄板部となる板体の少なくとも一部に前記補助材を層状に形成し、同板体の板厚を擬似的に増大した状態にて前記焼成を行う工程である。
【0016】
これによれば、焼成前の時点で薄板部となる板体の板厚が補助材により擬似的に厚くされた状態(即ち、薄板部となる板体の剛性が向上された状態)にて同薄板部となる板体が焼成せしめられ、焼成後に補助材又は補助材の化学変化による生成物が除去され、所望の板厚を有する薄板部が形成される。従って、焼成時に薄板部となる板体がその自重によって撓み難くなるので、薄板部の平面度が良好な焼結体(構造物)が提供される。また、薄板部となる板体の板厚が擬似的に厚くされて同薄板部となる板体の強度が高くなるので、焼成工程前の製造工程においける同薄板部となる板体の取り扱いが容易となる(ハンドリング性が向上する。)。なお、薄板部となる板体に形成される層状の補助材は薄板部となる板体の何れの面に形成されてもよい。更に、その層状の補助材の厚みは薄板部となる板体の厚みと同等である必要はなく、薄板部となる板体より薄くても厚くてもよい。
【0017】
本発明の他の態様において、前記焼成工程は、前記薄板部となる板体及び前記支持部となる部分が前記接触された状態にて画定する空間に前記補助材を実質的に満たした状態にて前記焼成を行う工程である。
【0018】
これによれば、薄板部となる板体が補助材により支持された状態にて焼成せしめられるので、焼成中に同板体がその自重によって撓み難くなる。更に、薄板部となる板体下に存在する空間に補助材が充填されることになるので、補助材の焼成工程中における変化率(収縮率又は膨張率)を調整する(即ち、薄板部となる板体と補助材の割掛け差を調整する)ことにより、薄板部となる板体の焼成中の変形を抑制したり、或いは、意図的に薄板部の形状を制御することが可能となる。
【0019】
薄板部となる板体の変形を抑制するには、例えば、補助材の変化率(収縮率又は膨張率)を支持部となる部分の変化率(収縮率又は膨張率)に一致させればよい。これにより、薄板部となる板体と、その板体に対して焼成中における変化率が調整(一致)された補助材及び支持部となる部分とが、互いに接触された状態で焼成されることになるからである。
【0020】
また、この方法により、補助材を除去した空間を液体の加圧室等として用いるダイヤフラム構造等を備えた焼結構造体、即ち、「薄板下に空間を有する焼結構造体」を製造すれば、狙いとする寸法を有する空間を製造することができる。
【0021】
なお、本明細書において、「前記薄板部となる板体及び前記支持部となる部分が前記接触された状態にて画定する空間に補助材を実質的に満たした状態」とは、焼結工程前において同空間が補助材によって完全に満たされた状態及び焼結工程前において同空間が僅かな空隙を残しながら補助材によってほぼ満たされている状態のいずれであってもよい。例えば、補助材として金属元素を含む材料を選択した場合、焼成工程中に金属が酸化物へ変化することにより補助材が膨張するので、この膨張により焼成工程前に存在した僅かな空隙を埋め、それにより薄板部となる板体を補助材により支持して焼成してもよい。
【0022】
前記薄板部となる板体及び前記支持部となる部分が前記接触された状態にて画定する空間に補助材を実質的に満たすには、ペースト状の補助材を前記空間に充填してもよい。また、前記空間に固体状の前記補助材を配置するとともに、同固体状の補助材と前記薄板部となる板体との間にペースト状の前記補助材を介在させることによってもよい。
【0023】
このように、ペースト状の補助材を使用すれば、スクリーン印刷やスポッティング等の生産効率の良好な手法を用いて補助材を充填或いは配置することができる。また、補助材をペースト状にする際に使用する溶剤等の特性(例えば蒸気圧)や量を調整することにより、焼成工程中における補助材の変化率(収縮率又は膨張率)を制御することも可能である。
【0024】
本発明の他の態様において、前記焼成工程は、前記薄板部となる板体及び前記支持部となる部分が前記接触された状態にて画定する空間に、同薄板部となる板体及び同支持部となる部分に対して非接触となるように中子を配置するとともに、同中子と同薄板部となる板体との間に前記補助材を介在させた状態にて前記焼成を行う工程であってもよい。
【0025】
これによっても、薄板部となる板体が補助材により支持された状態にて焼結せしめられるので、焼結時に薄板部となる板体がその自重によって撓まない。この結果、薄板部の平面度が良好な焼結体(構造物)が提供される。
【0026】
更に、この場合において、前記薄板部となる板体、前記支持部となる部分、及び前記中子は同種の材料により構成され、前記補助材は前記中子と前記薄板部となる板体との間の空間に層状に形成されることが好適である。
【0027】
これによれば、薄板部となる板体と支持部となる部分とが接触された状態にて画定する空間の大部分が、薄板部となる板体及び支持部となる部分と同種の材料からなる中子により占有される。従って、薄板部となる板体と中子の変化率(収縮率又は膨張率)の差(割掛け差)を極めて小さくすることができる。また、補助材の使用量を減らすことにより、補助材の焼成時の形状変化等が薄板部となる板体へもたらす影響を小さくすることができる。この結果、焼成工程における薄板部となる板体の変形を抑制することが可能となる。また、薄板部となる板体と中子との間に補助材が介在せしめられているので、薄板部となる板体と中子との焼成による一体化を回避することができる。
【0028】
更に、前記中子と前記支持部となる部分とを同種の材料により構成させるには、例えば、セラミックグリーンシートにパンチング加工等により必要な空隙を作成し、このセラミックグリーンシートを積層した積層体に別のセラミックグリーンシートを積層することにより、同中子と同支持部となる部分とを形成すればよい。
【0029】
更に、前記補助材が前記中子と前記薄板部となる板体との間の空間に層状に形成されることが好ましい。層状の補助材は、薄板部となる板体と中子の収縮を阻害する要因とはなり難いから、両者の間の調整された小さな変化率(収縮率又は膨張率)を有効に機能させることができ、その結果、平面度が良好な薄板部を得ることができるからである。また、層状の補助材は、印刷,塗布等により容易に形成することができるからである。以上のことから、薄板部の平面度が良好な焼結体(構造物)が、効率よく製造され得る。
【0030】
また、上述したように、前記補助材は前記焼成工程終了後にエッチング可能な物質として存在するように選択され、前記除去工程は、前記補助材又は前記補助材の化学変化による生成物をエッチングにより除去する工程であってもよい。これによれば、焼成工程終了後に補助材又は補助材の化学変化による生成物をエッチングにより簡単に除去することができる。
【0031】
また、前記補助材は焼成後に粉砕可能な物質として存在するように選択され、前記除去工程は、前記補助材又は前記補助材の化学変化による生成物を粉砕により除去する工程であってもよい。これによれば、焼成工程終了後に補助材又は補助材の化学変化による生成物を粉砕により簡単に除去することができる。
【0032】
また、本発明による焼結体の構造物は、薄板部と同薄板部を支持する支持部とを有する焼結体の構造物であって、前記薄板部の前記支持部と接触する以外の部分の表面に同薄板部を構成する材料とは異なる材料からなる層状のコート層が形成されてなる焼結体の構造物である。
【0033】
この焼結体の構造物によれば、支持部と接触していない薄板部の表面の少なくとも一部に、薄板部を構成する材料とは異なる材料からなる層状のコート層(例えば、酸化物からなる膜)が形成されている。従って、コート層の存在により、薄板部の耐衝撃性及び防湿性が向上し、焼結体の長寿命化が達成され得る。
【0034】
また、本発明による焼結体の構造物は、焼成前薄板部を焼成工程において焼成することにより得られる焼結後薄板部と、焼成前支持部を同焼成工程において焼成することにより得られる同焼結後薄板部を支持する焼結後支持部と、を有する焼結体の構造物であって、前記焼成前薄板部の少なくとも一部に接触した状態にて同焼成前薄板部及び前記焼成前支持部ととともに前記焼成工程を経た後において前記焼結後薄板部から分離除去可能となる補助材が同焼成工程において同焼結前薄板部と反応することにより生成される物質が、同焼結後薄板部の表面の少なくとも一部に層状に形成されてなる焼結体の構造物である。この層状に形成された物質は、焼成工程にいて補助材が薄板部と反応することで形成されるものであり、焼成工程終了後に補助材を除去した後においても薄板部の表面に残存する。
【0035】
これによれば、薄板部の少なくとも一部に前記層状に形成された物質(例えば、酸化物からなる膜)が形成されているので、薄板部が2層構造となり、その耐衝撃性及び防湿性が向上し、焼結体の長寿命化が達成され得る。また、そのような層状物質が形成された部分に他の部材を接着剤により接着させる場合、層状物質が形成された部分は同層状物質が形成されていない部分に比べ表面のラフネスが粗くなるので、接着強度を向上することもできる。
【0036】
ところで、従来から、薄板の焼結体はアルミナ等からなるセッター(基台)の上に別途形成された焼成前の薄板シートを配置し、この薄板シートをセッターとともに焼成することにより製造されている。この従来の方法によると数μm程度の単なる薄板体であれば製造可能であるが、例えば1μm以下の焼成前の薄板シートの製造が難しいので、そのような極めて厚さの薄い薄板の焼結体を得ることが困難である。
【0037】
また、この従来の方法によると、焼成中に薄板シートが変形し、例えば、平面度の良好な薄板焼結体を得ることが困難である。この変形は、薄板シートの厚みが不均一であることに伴って焼結する速さが薄板シート全面で均一でないために発生する。この変形は、薄板シートの厚みが小さく、及び/又は、薄板シートの面積が大きい場合に顕著に現れる。
【0038】
このような課題に対処するための本発明による薄板焼結体の製造方法は、焼成前の層状の部材を焼成させることにより薄板の焼結体を製造する薄板焼結体の製造方法であって、前記焼成前の層状の部材と同種の材料からなるセッター用シート、薄膜状の補助材及び同焼成前の層状の部材を順に積層し、その状態にて同セッター用シート及び同焼成前の層状の部材を焼成させる焼成工程と、前記焼成工程の終了後に前記補助材又は前記補助材の化学変化による生成物を除去する除去工程と、を含む。
【0039】
これによれば、焼成前の層状の部材(焼成前層状部材)がセッター用シートの上に積層された補助材の上で焼成せしめられる。この補助材は薄膜状であるから、互いに同種の材料からなる焼成前層状部材及びセッター用シートの焼成工程における変形を阻害しない。従って、焼成前層状部材は、焼成前層状部材の焼成中の変化率(収縮率又は膨張率)に極めて近い変化率を有するセッター用シートと実質的に接触した状態で焼成せしめられることになるので、同焼成前層状部材の焼成中における変形を抑制することができる。
【0040】
更に、焼成前層状部材とセッター用シートとの間に補助材が介在せしめられているので、焼成前層状部材とセッター用シートとの焼成による一体化を回避することができる。以上により、上記薄板焼結体の製造方法によれば、板厚が極めて薄く且つ所望の形状を有する薄板焼結体を容易に得ることができる。
【0041】
この場合、前記焼成前の層状の部材は、セラミックグリーンシートであってもよく、前記セッター用シートに形成された薄膜状の補助材の上面に印刷により形成される部材であってもよい。
【0042】
特に、前記焼成前の層状の部材が前記セッター用シートに形成された薄膜状の補助材の上面に印刷により形成される部材であれば、極めて厚さが薄く所望の形状を有する薄板焼結体を容易に製造することができる点で有利である。これは、以下の理由による。
【0043】
即ち、例えば、幅が狭く且つ長さが長い桟状の薄板焼結体を焼成前のシートを使用して得るためには、その焼成前シートに対して微細な打ち抜き加工を行う必要がある。しかしながら、焼成前シートの厚さが薄いと、同焼成前シートの剛性が低いので、そのような加工により所望の形状の焼成前シートが得られず、その結果、所望の形状の薄板焼結体を得ることができない。
【0044】
これに対し、前記焼成前の層状の部材が前記セッター用シートの上に形成された補助材の上面に印刷により形成される部材であれば、細長の桟や幅の狭い曲線状の桟等の所望の形状であって極めて厚さが薄い焼成前層状部材を容易に形成することができ、結果として、所望の形状を有する薄板焼結体を製造することができる。このような印刷による部材は、基板なしでは自立できないので基板上に形成する必要があるが、基板とともにそのまま焼成したのでは基板と一体化してしまう。従って、本発明のように、補助材の上に層状部材を印刷し、この補助材を焼成後に除去すれば、所望の形状を有する薄板焼結体が製造できるのである。
【0045】
なお、「焼成前の層状の部材と同種の材料からなるセッター用シート、薄膜状の補助材及び焼成前の層状の部材を順に積層した状態にて焼成を行うこと」には、「セッター用シート、薄膜状の補助材及び焼成前の層状の部材を順に積層した上に、更に薄膜状の補助材及びセッター用シートを積層し、その状態又は更に他の部材を積層した状態にて焼成を行うこと」が含まれる。
【0046】
これによれば、焼成前の層状の部材は、セッター用シートの間にサンドイッチ状に挟みこまれた状態にて焼成されるので、焼成される層状の部材の焼成中における表裏面の温度差を小さくすることができる。この結果、層状の部材の表裏面の温度差に基づく変形を抑制することができる。この場合にも、焼成前の層状の部材とセッター用シートの間には、補助材が介在せしめられているので、層状の部材とセッター用シートとの焼成による一体化を回避することができる。
【0047】
以上、説明したように、本発明による薄板焼結体の製造方法によれば、板厚が極めて薄く、且つ、所望の形状を有する薄板の焼結体を容易に得ることができる。なお、このようにして製造される薄板焼結体は、例えば、金属部材等に貼り付けることにより、ハードディスクのヘッド位置制御用アクチュエータ等して使用することができる。
【0048】
【発明の実施の形態】
図1に斜視図を示した圧電/電歪デバイス10は、本発明による焼結体の製造方法により製造されるデバイスである。圧電/電歪デバイス10は、支持部11と、一対の薄板部12,12と、一対の保持部(ダム、マウント)13,13と、一対の圧電/電歪素子14,14とを備えている。支持部11、薄板部12,12、及び保持部13,13は、セラミックスから形成されていて、焼成により一体化されている。
【0049】
支持部11は、本体部11aと溝形成部11b,11bとからなっている。本体部11aは、互いに直交するX軸,Y軸,及びZ軸の各軸に平行な辺を有する直方体形状を有している。溝形成部11b,11bは、X軸,Y軸,及びZ軸の各軸に平行な辺を有する直方体形状を有し、本体部11aのX軸方向両端部に設けられている。溝形成部11b,11bのX軸方向及びZ軸方向の長さは、本体部11aのX軸方向及びZ軸方向の長さよりもそれぞれ短くなっている。溝形成部11b,11bのY軸方向の長さは本体部11aのY軸方向の長さと等しくなっている。溝形成部11b,11bのZ−X平面は、本体部11aのZ−X平面と同一面上にある。
【0050】
互いに対向する一対の薄板部12,12は、それぞれがX軸,Y軸,及びZ軸の各軸に平行な辺を有する直方体形状を有する薄板体であり、支持部11のX軸方向両端部において支持部11により支持されている。即ち、一対の薄板部12,12は、一対の溝形成部11b,11bにそれぞれ固定されている。各薄板部12は、固定された溝形成部11bからZ軸正方向に延びている。薄板部12,12は、X軸方向の厚みが極めて薄いので、Z−X平面に沿って容易に変形し得るようになっている。
【0051】
保持部13,13は、薄板部12,12のZ軸正方向端部近傍位置において、薄板部12,12の互いに対向する内側平面部にそれぞれ形成されている。各保持部13は、Y軸方向に延びる長手方向を有し、その長手方向に直交する平面で切断した断面形状が略台形状をなしている。各保持部13は、その台形の底辺部分において各薄板部12に固定されている。
【0052】
圧電/電歪素子14,14は、薄板部12,12の外側平面部にそれぞれ固定されている。各圧電/電歪素子14,14は、層状の電極と圧電/電歪層とが交互に積層された積層タイプの圧電/電歪素子である。
【0053】
より具体的に述べると、図2に示したように、圧電/電歪素子14は、薄板部12の外側平面上に、電極14a1、圧電/電歪層14b1、電極14a2、圧電/電歪層14b2、電極14a3、圧電/電歪層14b3、電極14a4、圧電/電歪層14b4、及び電極14a5が順に積層されてなる積層体である。電極14a1,14a3及び14a5は互いに電気的に接続され、櫛歯状の電極を構成している。電極14a2及び14a4は互いに電気的に接続され、櫛歯状の電極を構成している。電極14a1,14a3,14a5と電極14a2,14a4とは絶縁状態が維持されている。
【0054】
この圧電/電歪素子14は、膜形成方法により薄板部12に対して一体的に形成される。また、圧電/電歪素子14を薄板部12とは別体として製造しておき、有機樹脂等の接着剤を用いて、或いは、ガラス、ロウ付け、半田付け、共晶接合等により薄板部12に貼り付けてもよい。
【0055】
なお、ここでは、電極が全部で5層である多層構造を有する例を示したが、層の数は特に限定されない。一般には、層の数を多くすることにより、薄板部12,12を変形する力(駆動力)が増大する一方、消費電力も増大する。従って、実施にあたっては、用途及び使用状態等に応じて層の数を適宜選定すればよい。
【0056】
この圧電/電歪デバイス10は、図2に示したように、一対の保持部13,13の間に対象物Sを保持し、圧電/電歪素子14,14が発生する力によって薄板部12,12を変形せしめ、これにより保持部13,13を変位させて対象物Sの位置を制御し得るアクチュエータとして使用されるようになっている。この対象物Sは、磁気ヘッド、光ヘッド、或いは、センサの感度調整用の重り等である。
【0057】
支持部11及び薄板部12,12から構成された部分は、後に詳述するようにセラミックグリーンシートを焼成により一体化したセラミック積層体により構成されている。保持部13,13は、薄板部12,12と同種のセラミックスよりなり薄板部12,12に焼成により一体化されている。このようなセラミックスの一体化物は、各部の接合部に接着剤が介在しないことから、経時的な状態変化が殆ど生じないので、接合部位の信頼性が高く、かつ、剛性確保に有利である。これらの材料としては、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニアをはじめとするジルコニア等を挙げることができる。
【0058】
この安定化ジルコニアは、ジルコニアに、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化セリウム、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムのうち少なくとも1つの化合物(場合により、これらのうち二つ以上の化合物)を添加・含有させることにより安定化されていることが好ましい。同様に、部分安定化ジルコニアは、ジルコニアに上記化合物を添加・含有させることにより部分安定化されていることが好ましい。
【0059】
なお、それぞれの化合物の添加量としては、酸化イットリウムや酸化イッテルビウムの場合にあっては、1〜30モル%、好ましくは1.5〜10モル%、酸化セリウムの場合にあっては、6〜50モル%、好ましくは8〜20モル%、酸化カルシウムや酸化マグネシウムの場合にあっては、5〜40モル%、好ましくは5〜20モル%とすることが望ましい。特に、酸化イットリウムを安定化剤として用いることが好ましく、その場合においては、1.5〜10モル%、(機械的強度を特に重視するときには更に好ましくは2〜4モル%、耐久信頼性を特に重視するときには更に好ましくは5〜7モル%)とすることが望ましい。
【0060】
また、ジルコニアに、焼結助剤等の添加物としてアルミナ、シリカ、遷移金属酸化物等を0.05〜20wt%の範囲で添加することが可能である。なお、支持部11及び薄板部12を構成するセラミックスは、その機械的強度が高く且つ安定した結晶相が得られることが望ましい。そのため、ジルコニアの平均結晶粒子径を0.05〜3μmとすることが好ましく、0.05〜1μmとすることが更に望ましい。
【0061】
圧電/電歪層14b1〜14b4は、圧電セラミックスにより構成されることが好適である。その一方、圧電/電歪層14b1〜14b4は、電歪セラミックス、強誘電体セラミックス、或いは反強誘電体セラミックスにより構成することも可能である。また、このような圧電/電歪デバイス10において、保持部13,13の変位量と駆動電圧(又は出力電圧)とのリニアリティが重要とされる場合、圧電/電歪層14b1〜14b4は歪み履歴の小さい材料で形成されることが好ましく、従って、それらの抗電界が10kV/mm以下の材料で形成されることが好ましい。
【0062】
圧電/電歪層14b1〜14b4の具体的な材料としては、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、マンガンタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウムビスマス、ニオブ酸カリウムナトリウム、タンタル酸ストロンチウムビスマス等を単独であるいは混合物として含有するセラミックスが挙げられる。
【0063】
一方、圧電/電歪素子14,14の電極14a1〜14a5は、室温で固体であり、導電性に優れた金属で構成されていることが好ましく、例えばアルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛等の金属単体、もしくはこれらの合金で構成され得る。更に、電極材として、これらの金属に圧電/電歪層14b1〜14b4と同じ材料又は薄板部12,12と同じ材料を分散させたサーメット材料を用いてもよい。
【0064】
次に、上記圧電/電歪デバイス10の製造方法(第1の製造方法)について説明する。
【0065】
先ず、図3に示した50μmの厚みを有する長方形のセラミックグリーンシート21を作製する。具体的には、ジルコニアのセラミック粉末にバインダ、溶剤、分散剤、及び可塑剤等を添加混合してスラリーを作製し、このスラリーに対して脱泡処理を施す。その後、リバースロールコーター法及びドクターブレード法等の適切な方法により、上記形状のセラミックグリーンシート21を作製する。セラミックグリーンシート21の一例としては、ZrO2を主原料とし、焼結助剤としてY2O3を使用したものを挙げることができる。なお、以下において、セラミックグリーンシート21の短辺のうちの一辺を便宜上「基準短辺SL」と呼び、長辺のうちの一辺を便宜上「基準長辺LL」と呼ぶ。
【0066】
次に、図4に示したように、セラミックグリーンシート21の中央部に長方形の窓部W1を打ち抜き加工により形成し、セラミックグリーンシート22を製造する。打ち抜き加工は、金型を用いた打抜加工やレーザ加工等の方法により行う。窓部W1の各辺は、セラミックグリーンシート21の対応する各辺と平行となっている。基準短辺SLから窓部W1の短辺のうちの同基準短辺SLに近い一辺までの距離d1は、図1に示した本体部11aのZ軸方向長さL1と等しくなるように設定されている。基準短辺SLから距離d1までのセラミックグリーンシート22の中央部分22aは後に本体部11aとなる部分である。基準短辺SLから窓部W1の他の短辺までの距離d2は、図1に示した薄板部12のZ軸方向長さL2よりも大きくなるように設定されている。基準長辺LLから窓部W1の長辺のうちの同基準長辺LLに近い一辺までの距離はd3である。
【0067】
一方、図5に示したように、セラミックグリーンシート21の中央部に長方形の窓部W2を打ち抜き加工により形成し、セラミックグリーンシート23を製造する。打ち抜き加工には、窓部W1を形成する場合と同種の方法が使用される。窓部W2の各辺は、セラミックグリーンシート21の対応する各辺と平行となっている。基準短辺SLから窓部W2の短辺のうちの同基準短辺SLに近い一辺までの距離d4は、図1に示した溝形成部11bのZ軸方向長さL3と等しくなるように設定されている。基準短辺SLから距離d4までのセラミックグリーンシート23の中央部分23aは後に溝形成部11bとなる部分である。基準短辺SLから窓部W2の他の短辺までの距離d5は距離d2と等しくなるように設定されている。基準長辺LLから窓部W2の長辺のうちの同基準長辺LLに近い一辺までの距離d6は距離d3と等しくなるように設定されている。
【0068】
更に、図6に示したように、セラミックグリーンシート21の片面に後に保持部13となるダム(マウント)DMを印刷により形成し、セラミックグリーンシート24を作製する。
【0069】
次いで、図7の(A)に示したように、セラミックグリーンシート22を複数枚(ここでは8枚)準備し、各セラミックグリーンシート22に印刷した接着剤を使用してこれらのセラミックグリーンシート22を仮積層して図7の(B)に示した中央部に直方体の貫通穴25aを有する仮積層体25を作製する。なお、このような接着剤(接着ペースト)の一例としては、セラミックス原料としてZrO2粉末及びY2O3粉末を、バインダーとしてPVBを、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルへキシルを、分散媒として2エチルヘキサノールを使用し、これらを調合した後、粘度を100000cps程度に調整したものが挙げられる。
【0070】
一方、図8に示したように、セラミックグリーンシート24の上に、MgOを2−エチルヘキサノールからなる溶剤でペースト状とした補助材50(即ち、MgOを含むペースト状の補助材50)を、ダムDMが形成された面上に印刷により層状に形成し、セラミックグリーンシート26を作製する。補助材50の一例としては、主成分としてMgO(高純度化学研究所製)を、有機成分として上述した接着ペーストと同組成の有機成分を使用し、これらを調合した後、粘度を400000cps程度に調整したものを挙げることができる。
【0071】
セラミックグリーンシート24の上に印刷された補助材50は、セラミックグリーンシート23の窓部W2よりも僅かに小さい長方形状を有している。また、補助材50は、印刷された補助材50のセラミックグリーンシート21に対する位置が窓部W2の同セラミックグリーンシート21(セラミックグリーンシート23)に対する位置と略同一となるように形成される。
【0072】
そして、図9の(A)に示したように、下から順にセラミックグリーンシート26、セラミックグリーンシート23、仮積層体25、セラミックグリーンシート23、及びセラミックグリーンシート26を積層させ、図9の(B)に示した本積層体27を作成する。即ち、仮積層体25を、一対のセラミックグリーンシート23,23でサンドイッチ状に挟みこみ、更にそれらを一対のセラミックグリーンシート26,26で挟み込むように積層して本積層体27を作成する。このとき、セラミックグリーンシート26,26は、補助材50同士が互いに対向するように積層する。なお、この場合にも、各セラミックグリーンシートに印刷された接着剤を使用して積層を行う。
【0073】
図10は、この状態にある本積層体27を図9の(B)に示した仮想線IM1,IM2,及びIM3に沿う平面で切断したものの斜視図である。図10から理解されるように、薄板部12となるセラミックグリーンシート24(26)は、補助材50により、その板厚が擬似的に厚くされている。
【0074】
その後、本積層体27を焼結させて一体化するため、本積層体27(薄板部12となる板体24及び支持部11となる部分)を1200〜1600℃の温度で所定の時間(一例としては、1400℃で2時間)焼成する焼成工程を実施する。このとき、セラミックグリーンシート26は、補助材50によってその板厚が擬似的に厚くされていて剛性が高くなっている。また、補助材50は、焼結工程中に消失せず、酸化物のまま残存する。従って、焼結後に薄板部12となる部分は、焼成工程中において自重により撓まない。その結果、平面度が極めて良好な薄板部12が作製される。
【0075】
次に、図11に示すように、本積層体27の両表面にそれぞれ圧電/電歪素子14,14を形成する圧電素子形成工程を実施する。より具体的に述べると、本積層体27の両表面の所定位置に電極14a1,14a1を印刷して焼成し、次いで、圧電/電歪層14b1,14b1を印刷して焼成し、その上に電極14a2,14a2を印刷して焼成する。このような処理を所定回数繰り返して圧電/電歪素子14,14を形成する。その後、電極14a1,14a3,14a5、及び電極14a2,14a4を駆動回路にそれぞれ電気的に接続するための端子を印刷し焼成する。
【0076】
なお、最下層の電極14a1を印刷して焼成し、その後、圧電/電歪層14b1と電極14a2とを印刷してから同時に焼成し、その後、同様に、一つの圧電/電歪層と一つの電極とを印刷してから同時に焼成する工程を所定回数だけ繰り返すことで圧電/電歪素子14,14を形成してもよい。
【0077】
圧電素子形成工程が終了すると、図11に示した切断線C1,C2,及びC3に沿う平面で本積層体27及び圧電/電歪素子14,14を切断する切断工程を実施する。この切断は、ワイヤソー加工やダイシング加工等の機械加工のほか、YAGレーザ及びエキシマレーザ等のレーザ加工や、電子ビーム加工により行うことが可能である。これにより、図10に示した形状と同様な形状を有するとともに圧電/電歪素子14,14が形成された構造体が得られる。
【0078】
次いで、補助材50を除去する除去工程を実施する。この場合、残存する補助材50はMgOであるから水、湯、或いは弱酸により簡単に除去することができる。水、湯、或いは弱酸は、セラミックスの焼結体となっている支持部11、薄板部12、及び保持部13となる部分と反応しないから、補助材50のみが選択的に容易にエッチングされる(除去される)。この除去工程の一例としては、20%リン酸水溶液中に前述の構造体を浸し、60℃で10分間の条件で補助材50を除去することが挙げられる。
【0079】
以上により、図1に示した構造を有する圧電/電歪デバイス10が製造される。但し、実際には、本積層体27を縦横に複数個並べたものと同等の積層体を準備し、一回の切断工程で多数の圧電/電歪デバイス10を製造する。
【0080】
このように、第1の製造方法の焼成工程においては、薄板部12となる板体であるセラミックグリーンシート24の少なくとも一部に補助材50を層状に形成し、同板体12の板厚を擬似的に増大した状態(即ち、セラミックグリーンシート26の状態)にて焼成を行う。従って、薄板部12となる板体24の剛性が向上された状態にて同板体24が焼成せしめられるので、焼成工程中に同板体24がその自重によって撓まない。この結果、薄板部12の平面度が良好な焼結体である圧電/電歪デバイス10が提供される。また、薄板部12となる板体24の板厚が擬似的に厚くされ、同板体24の強度が高くなる。従って、焼成工程前の製造工程において、薄板部12となる板体24(セラミックグリーンシート26)の取り扱いが容易となる(ハンドリング性が向上する。)。
【0081】
なお、上記の例において、層状の補助材50はセラミックグリーンシート24(薄板部となる板体)のダムDMが形成されている面に形成されているが、反対の面、或いは、両面に形成されてもよい。更に、補助材50の厚みはセラミックグリーンシート24の厚みと同等である必要はなく、セラミックグリーンシート24より薄くても厚くてもよい。
【0082】
次に、本発明による圧電/電歪デバイス10の第2の製造方法について説明する。第2の製造方法は、図8に示したように、補助材50をセラミックグリーンシート24の上に形成する代わりに、補助材50を本積層体27の内部空間に充填する点のみにおいて、第1の製造方法と異なる。
【0083】
即ち、第2の製造方法においては、図12に示したように、図7を参照して説明した方法により作製した仮積層体25を一対のセラミックグリーンシート23でサンドイッチ状に挟みこみ、更にそれらを一対のセラミックグリーンシート24で挟み込むように積層して本積層体27を作成する。本積層体27は、一例として、80℃で上記各部材同士を熱圧着する方法により作成される。このとき、一対のセラミックグリーンシート24,24を積層する前に仮積層体25とセラミックグリーンシート23,23とにより形成される内部空間に補助材50を充填し、その後、セラミックグリーンシート24,24を積層して前記内部空間を密閉する。即ち、薄板部12となる板体24と支持部11となる部分(仮積層体25とセラミックグリーンシート23,23)とが接触された状態にて画定される空間に補助材50を満たす。図13は、この状態にある本積層体27の縦断面図である。
【0084】
その後、本積層体27は第1の製造方法の焼成工程と同じ焼成工程にて焼成される。焼成工程を経た本積層体27は、第1の製造方法と同じ圧電素子形成工程にて圧電/電歪素子14,14が形成され、その後、第1の製造方法と同じ切断工程にて切断される。切断された構造体は、第1製造方法と同じ補助材50の除去工程にて補助材50が除去される。以上により、圧電/電歪デバイス10が作製される。
【0085】
以上、説明したように、第2の製造方法においては、焼成工程が、薄板部12となる板体24と支持部11となる部分(仮積層体25及びセラミックグリーンシート23,23)とが接触された状態にて画定する空間に補助材50を実質的に満たした状態にて、焼成(焼結)を行う工程である。即ち、ペースト状の補助材50を本積層体27の内部空間に充填した後、薄板部となる板体24及び支持部11となる部分を焼成する。
【0086】
これによれば、薄板部12となる板体24が焼成工程終了時まで消失することのない補助材50により支持された状態にて焼成せしめられるので、焼成中に同板体24がその自重によって撓まない。更に、薄板部となる板体24下に存在する空間に補助材50が充填されることになるので、補助材50の焼成工程中における変化率(収縮率又は膨張率)を調整する(即ち、薄板部となる板体24と補助材50の割掛け差を調整する)ことにより、薄板部となる板体24の焼成中の変形を抑制したり、或いは、意図的に薄板部12の形状を制御することが可能となる。薄板部となる板体24の変形を抑制するには、例えば、補助材50の変化率(収縮率又は膨張率)を支持部となる部分(仮積層体25及びセラミックグリーンシート23,23)の変化率(収縮率又は膨張率)に一致させればよい。これにより、薄板部となる板体24と、その板体24に対して焼成中における変化率が調整(一致)された実質的に一つの部材(仮積層体25、セラミックグリーンシート23,23及び補助材50)とが、互いに接触された状態で焼成されることになるからである。
【0087】
また、ペースト状の補助材50を使用しているので生産効率の良好な手法を用いて補助材50を充填することができる。更に、補助材50をペースト状にする際に使用する溶剤等の特性(例えば蒸気圧)や量を調整することができるので、焼成工程中における補助材50の変化率(収縮率又は膨張率)を容易に制御することもできる。
【0088】
次に、本発明による圧電/電歪デバイス10の第3の製造方法について説明する。第3の製造方法は、第2の製造方法における本積層体27の内部空間に補助材50と同種の材料からなる固体状の補助材を配置し、その固体状の補助材と薄板部12となる板体24との間にペースト状の補助材50を介在させる点において、第2の製造方法と相違している。なお、第3の製造方法により作製される圧電/電歪デバイス10は保持部13を備えていない。
【0089】
以下、具体的に説明すると、第3の製造方法においては、図14に示したように、セラミックグリーンシート21の上面にペースト状の補助材50を印刷により形成して(塗布して)セラミックグリーンシート28を作製する。この場合、補助材50は、セラミックグリーンシート21と実質的に同じ厚み(従って、セラミックグリーンシート23と同じ厚み)を有し、セラミックグリーンシート23の窓部W2よりも僅かに小さい長方形状を有するように形成される。また、補助材50は、補助材50のセラミックグリーンシート21に対する位置が窓部W2のセラミックグリーンシート21(セラミックグリーンシート23)に対する位置と略同一となるように形成される。
【0090】
そして、図7の(A)に示したように、セラミックグリーンシート22を複数枚(ここでは8枚)用意し、これらを積層して図7の(B)に示した仮積層体25を作製する。一方、図15の(A)に示したように、MgOを含んでなる補助材(酸化物)のグリーンシートであってセラミックグリーンシート22と同一の厚みを有し、且つ、窓部W1よりも僅かに小さい長方形状のシート51を複数枚(例えば、8枚)準備し、これらを積層して図15の(B)に示した固体状の補助材のブロック52を作製する。
【0091】
次に、図16の(A)に示したように、仮積層体25の貫通穴25a内に酸化物のブロック52を挿入し、それらを一対のセラミックグリーンシート23,23でサンドイッチ状に挟みこみ、更にそれらを一対のセラミックグリーンシート28,28で挟み込むように積層し、図16の(B)に示した本積層体29を作成する。このとき、セラミックグリーンシート28,28は、補助材50同士が互いに対向するように積層する。
【0092】
その後、本積層体29は第1の製造方法の焼成工程と同じ焼成工程にて焼成される。この結果、補助材50,52は、焼成工程の終了時まで消失することなく、図16の(C)に示したように一対化した酸化物53となる。そして、焼成工程を経た本積層体29に対し、第1の製造方法と同じ圧電素子形成工程にて圧電/電歪素子14,14を形成し、その後、第1の製造方法と同じ切断工程を施す。次いで、第1の製造方法と同様に酸化物53をエッチングにより除去する除去工程を施す。これにより、図1に示した保持部13を備えない圧電/電歪デバイス10が作製される。
【0093】
以上、説明したように、第3の製造方法においては、焼成工程が、薄板部12となる板体21と支持部11となる部分(仮積層体25及びセラミックグリーンシート23,23)とが接触された状態にて画定する空間に補助材50,52を実質的に満たした状態にて、焼成(焼結)を行う工程となっている。即ち、前記確定された空間に固体状の補助材52を配置するとともに同固体状の補助材52と薄板部となる板体21との間にペースト状の補助材50を介在させることにより同確定された空間に同補助材50,52を満たし、その後、薄板部となる板体21及び支持部となる部分(仮積層体25とセラミックグリーンシート23,23)を焼成する。
【0094】
これによれば、第2の製造方法と同様、薄板部12となる板体21が補助材50により支持された状態にて焼成せしめられるので、焼成中に同板体21がその自重によって撓まない。更に、薄板部となる板体21下に存在する空間に補助材50,52が隙間なく充填されることになるので、補助材50,52の焼成工程中における変化率(収縮率又は膨張率)を調整することにより、薄板部となる板体21の焼成中の変形を抑制したり、或いは、意図的に薄板部となる板体21の形状を制御することが可能となる。
【0095】
薄板部となる板体21の変形を抑制するには、例えば、補助材50,52の変化率(収縮率又は膨張率)を支持部となる部分(仮積層体25及びセラミックグリーンシート23,23)の変化率(収縮率又は膨張率)に一致させればよい。これにより、薄板部となる板体21と、その板体21に対して焼成中における変化率が調整された実質的に一つの部材(仮積層体25、セラミックグリーンシート23,23及び補助材50,52)とが、互いに接触された状態で焼成されることになるからである。
【0096】
また、ペースト状の補助材50を使用しているので、スクリーン印刷やスポッティング等の生産効率の良好な手法を用いて補助材50を充填或いは配置することができる。また、補助材50をペースト状にする際に使用する溶剤等の特性(例えば蒸気圧)や量を調整することができるので、焼成工程中における補助材50の変化率(収縮率又は膨張率)を容易に制御することもできる。
【0097】
加えて、固体状の補助材52を用いて、薄板部12となる板体21と支持部11となる部分(仮積層体25及びセラミックグリーンシート23,23)とが接触された状態にて画定する空間の大部分を埋めているので、同空間を効率良く補助材で満たすことができる。
【0098】
次に、本発明による圧電/電歪デバイス10の第4の製造方法について説明する。第4の製造方法は、第2の製造方法における本積層体27の内部空間に本積層体27と同種の材料からなる中子を配置し、その中子と薄板部12となる板体との間に補助材50を介装する点において、第2の製造方法と相違している。なお、第4の製造方法により作製される圧電/電歪デバイス10は保持部13を備えていない。
【0099】
以下、具体的に説明すると、第4の製造方法においては、第3の製造方法と同様に、図14に示したセラミックグリーンシート28を作製する。従って、補助材50は、セラミックグリーンシート21と同じ厚み(従って、セラミックグリーンシート23と同じ厚み)を有し、セラミックグリーンシート23の窓部W2よりも僅かに小さい長方形状を有するように形成される。また、補助材50は、セラミックグリーンシート21に対する補助材50の位置が窓部W2のセラミックグリーンシート21(セラミックグリーンシート23)に対する位置と略同一となるように形成される。
【0100】
一方、図17に示したように、図3に示したセラミックグリーンシート21に細長の長方形の窓部(スリット)W3を打ち抜き加工により形成し、セラミックグリーンシート30を製造する。打ち抜き加工は、金型を用いた打抜加工やレーザ加工等の方法により行う。窓部W3の各辺は、セラミックグリーンシート21の対応する各辺と平行となっている。基準短辺SLから窓部W3の短辺のうちの同基準短辺SLに近い一辺までの距離d9は、図1に示した本体部11aのZ軸方向長さL1(従って、前述した距離d1)と等しくなるように設定されている。基準短辺SLから窓部W3の他の短辺までの距離d10は、距離d9よりも僅かな距離tだけ長くなっている。基準長辺LLから窓部W3の長辺のうちの同基準長辺LLに近い一辺までの距離d11は図4に示した距離d3と等しくなるように設定されている。
【0101】
そして、図18の(A)に示したように、セラミックグリーンシート30を複数枚(ここでは8枚)用意し、これらを積層して図18の(B)に示した仮積層体31を作製する。この仮積層体31は、図18の(B)において仮想線(二点鎖線)により示したように、図1に示した本体部11aとなる本体部分31a及び後述する中子31bとなる部分を備える。
【0102】
次に、図19の(A)に示したように、仮積層体31を一対のセラミックグリーンシート23,23でサンドイッチ状に挟みこみ、更にそれらを一対のセラミックグリーンシート28,28で挟み込むように積層し、図19の(B)に示した本積層体32を作成する。このとき、セラミックグリーンシート28,28は、補助材50同士が互いに対向するように積層する。この結果、本積層体32は、内部空間に中子31bを有し、中子31bと薄板部12を形成することになるセラミックグリーンシート28のセラミックスの板体21との間に補助材50が介在するように構成される。本積層体32は、一例として、80℃で上記各部材同士を熱圧着する方法により作成される。
【0103】
換言すると、中子31bは、薄板部となる板体21と支持部となる部分31a,23aとが接触された状態にて画定する空間に、同薄板部となる板体21と同支持部となる部分31a,23aに対して実質的に非接触(図19に示した断面において非接触)となるように配置される。また、補助材50は、中子31bと薄板部となる板体21との間に介在するように配置される。
【0104】
その後、本積層体32は第1の製造方法の焼成工程と同じ焼成工程にて焼成される。このとき、補助材50は焼成工程終了時まで消失しない。更に、焼成工程を経た本積層体32に対し、本積層体32の両表面にそれぞれ圧電/電歪素子14,14を形成する。そして、図11を参照して説明した第1の製造方法と同じ切断工程を施す。この段階で、図20に示した切断面を有する中間体CTが得られる。なお、図20において、圧電/電歪素子14,14は省略されている。
【0105】
次いで、第1の製造方法と同様なエッチングによる補助材50の除去工程を施す。これにより、補助材50が除去されるので、中子31bが分離可能となって除去される。この結果、図1に示した保持部13を備えない圧電/電歪デバイス10が作製される。
【0106】
以上、説明したように、第4の製造方法においては、焼成工程が、薄板部12となる板体(シート28のセラミックグリーンシート21)と支持部11となる部分(仮積層体31の本体部分31a及びセラミックグリーンシート23,23)とが接触された状態にて画定する空間に、同薄板部12となる板体21及び同支持部11となる部分に対して非接触となるように中子31bを配置するとともに、同中子31bと同薄板部12となる板体21との間にペースト状の補助材50を介在させた状態にて焼成を行う工程となっている。
【0107】
これによれば、薄板部12となる板体21が補助材50により支持された状態にて焼結せしめられるので、焼結時に板体21がその自重によって撓まない。この結果、薄板部12の平面度が良好な焼結体(構造物)である圧電/電歪デバイス10が提供される。
【0108】
更に、中子31bは、支持部11となる部分(即ち、仮積層体31の本体部分31a及びセラミックグリーンシート23,23)及び薄板部12となる板体21と同一の材料により構成される。また、補助材50は中子31bと薄板部12となる板体21との間の空間(セラミックグリーンシート23の窓部W1)に層状に形成される。
【0109】
従って、薄板部12となる板体21と支持部11となる部分とが接触された状態にて画定する空間の大部分が、薄板部12となる板体21及び支持部11となる部分と同じ材料からなる中子31bにより占有される。その結果、薄板部12となる板体21と中子31bの変化率(収縮率又は膨張率)の差(割掛け差)を極めて小さくすることができるので、薄板部12となる板体21の焼成工程における変形を抑制することができる。また、中子31bの存在により補助材50の使用量を減らすことができ、これにより補助材50の焼成時の形状変化等による影響を小さくできるので、焼成工程における薄板部12となる板体21の変形を抑制することができる。更に、薄板部12となる板体21と中子31bとの間に補助材50が介在せしめられているので、薄板部12となる板体21と中子31bとの焼成による一体化を回避することができる。
【0110】
また、補助材50が中子31bと薄板部12となる板体21との間の空間に層状に形成されているので(厚さが極めて薄い薄膜状に形成されているので)、層状の補助材50は薄板部12となる板体21と中子31bの収縮を阻害する要因とはなり難い。従って、両者(中子31bと薄板部12となる板体21)との間の調整された小さな変化率(収縮率又は膨張率)を有効に機能させることができ、これによっても、薄板部12となる板体21の変形を抑制することができる。加えて、層状の補助材50は、塗布、印刷等により容易に形成することができる。以上のことから、薄板部12の平面度が良好な焼結体(構造物)が、効率よく製造され得る。
【0111】
次に、本発明による薄板焼結体の製造方法(第1の薄板焼結体製造方法)について説明する。この薄板焼結体の製造方法においては、図21に示したように、アルミナ(Al2O3)からなる基台(セッター)40の上にジルコニア(ZrO2)からなる薄膜のセッター用シート41を配置する。次いで、セッター用シート41の上にMgOを2−エチルヘキサノールからなる溶剤でペースト状とした補助材54(即ち、MgOを含むペースト状の補助材54)を薄膜状(例えば、厚みが5μmの板状)に印刷により形成する。なお、アルミナセッター40は、本発明に必須のものではなく、ジルコニア基板を焼成する際に一般的に使用される焼成用のセッターである。
【0112】
次いで、補助材54の上にジルコニア(ZrO2)のペーストを印刷により層状に形成し、層状の部材42を補助材54の上に積層する。層状の部材42の印刷パターンは、最終的に必要となる薄板焼結体の形状に応じて決定される。前述したセッター用シート41の組成は、この補助材54の上に層状に形成されるジルコニアペースト(層状の部材)42と同一としておく。補助材54の上に層状に形成されるジルコニアペースト42の粘度は、一例として200000cpsであり、その膜厚は30μmである。なお、補助材54の上にジルコニアペーストを印刷して層状の部材42を積層する代わりに、同補助材54の上にジルコニア(ZrO2)からなる薄板シート42を配置して、層状の部材42を積層してもよい。
【0113】
この状態において、層状の物質42とセッター用シート41とを焼成する焼成工程を実施する。焼成工程の終了後、補助材54をエッチングにより除去する除去工程を実施する。この除去工程は、前述した各製造方法の除去工程と同様の工程である。以上により、所望の形状を有する焼結した薄板体42が作製される。
【0114】
次に、本発明による薄板焼結体の他の製造方法(第2の薄板焼結体製造方法)について説明する。この薄板焼結体の製造方法においては、図22に示したように、アルミナ(Al2O3)からなる基台(セッター)40の上にジルコニア(ZrO2)からなる薄膜のセッター用シート41aを配置する。次いで、セッター用シート41aの上にMgOを2−エチルヘキサノールからなる溶剤でペースト状とした補助材54a(即ち、MgOを含むペースト状の補助材54a)を薄膜状に印刷により形成する。なお、アルミナセッター40は、本発明に必須のものではなく、ジルコニア基板を焼成する際に一般的に使用される焼成用のセッターである。
【0115】
次いで、補助材54aの上にジルコニア(ZrO2)のペーストを印刷により層状に形成し、層状の部材42を補助材54の上に積層する。層状の部材42の印刷パターンは、最終的に必要となる薄板焼結体の形状に応じて決定される。前述したセッター用シート41aの組成は、この補助材54aの上に層状に形成されるジルコニアペースト(層状の部材)42と同一としておく。補助材54aの上に層状に形成されるジルコニアペースト42の粘度は、一例として200000cpsであり、その膜厚は30μmである。なお、補助材54aの上にジルコニアペーストを印刷して層状の部材42を積層する代わりに、同補助材54aの上にジルコニア(ZrO2)からなる薄板シート42を配置して、層状の部材42を積層してもよい。
【0116】
一方、セッター用シート41aと同じセッター用シート41bを準備し、その一面に補助材54aと同じ薄膜状の補助材54bを形成しておく。そして、層状の部材42の直上に補助材54bが積層されるようにセッター用シート41bを配置し、これらを熱圧着により固定する。なお、図22に示したセッター用シート41a,41bは、互いに同じ寸法(面積及び厚さ)を有することが収縮率の観点から望ましい。
【0117】
この状態において、層状の部材42とセッター用シート41a,41bとを焼成する焼成工程を実施する。焼成条件は、一例として1400℃、2時間を挙げることができる。焼成工程の終了後、補助材54a,54bをエッチングにより除去する除去工程を実施する。例えば、除去工程の一例として、60℃の20%リン酸水溶液に、焼成工程終了後のセッター用シート41a、補助材54a、層状の部材42、補助材54b、及びセッター用シート41bからなる対象物を、10分間浸漬することを挙げることができる。以上により、所望のパターンを有する焼結した薄板体42が作製される。
【0118】
以上、説明したように、上記第1及び第2の薄板焼結体の製造方法は、焼成前の層状の部材42を焼成させることにより薄板の焼結体を製造する薄板焼結体の製造方法であって、前記焼成前の層状の部材42と同種の材料からなるセッター用シート41,41a、薄膜状の補助材54,54a及び同焼成前の層状の部材42を順に積層し、その状態にて同セッター用シート41,41a及び同焼成前の層状の部材42を焼成させる焼成工程と、前記焼成工程の終了後に前記補助材54,54a又は前記補助材54,54aの化学変化による生成物を除去する除去工程と、を含んでいる。
【0119】
このように、第1及び第2の薄板焼結体製造方法によれば、焼成前の層状の部材(焼成前層状部材)42がセッター用シート41,41aの上に積層された補助材54,54aの上で焼成せしめられる。この補助材54,54aは薄膜状であるから、互いに同種の材料からなる焼成前層状部材42及びセッター用シート41,41aの焼成工程における変形を阻害しない。従って、焼成前層状部材42は、焼成前層状部材42の焼成中の変化率(収縮率又は膨張率)に極めて近い変化率を有するセッター用シート41,41aと実質的に接触した状態で焼成せしめられることになるので、同焼成前層状部材42の焼成中における変形を抑制することができる。
【0120】
更に、焼成前層状部材42とセッター用シート41,41a,41bとの間に補助材54,54a,54bが介在せしめられているので、焼成前層状部材42とセッター用シート41,41a,41bとの焼成による一体化を回避することができる。
【0121】
また、幅が狭く且つ長さが長い桟状の薄板焼結体を焼成前のシート(グリーンシート)を使用して得るためには、その焼成前シートに対して微細な打ち抜き加工を行う必要がある。しかしながら、焼成前シートの厚さが薄いと、同焼成前シートの剛性が低いので、そのような加工により所望の形状の焼成前シートが得られず、その結果、所望の形状の薄板焼結体を得ることができない。
【0122】
これに対し、上記第1及び第2の薄板焼結体の製造方法では、焼成前層状部材42がセッター用シート41,41aの補助材54,54aの上に印刷により形成される。従って、焼成前の層状部材42は、細長の桟や幅の狭い曲線状の桟等の所望の形状であって極めて厚さが薄くなるように形成することができ、結果として、所望の形状(薄さ及びパターン)を有する薄板焼結体を容易に製造することができる。
【0123】
また、上記第2の薄板焼結体の製造方法では、焼成前層状部材42は、セッター用シート41a,41bの間にサンドイッチ状に挟みこまれた状態にて焼成されるので、焼成される層状部材42の焼成中における表裏面の温度差を小さくすることができる。この結果、層状部材42の表裏面の温度差に基づく変形を抑制することができる。この場合にも、焼成前層状部材42とセッター用シート41a,41bの間には、補助材54a,54bが介在せしめられているので、層状部材42とセッター用シート41a,41bとの焼成による一体化を回避することができる。
【0124】
次に、本発明において使用される上記補助材50,51,52,54,54a,54bについて説明する。この補助材は、薄板部12等を焼結させる焼結工程を通して消失することがない物質から選ばれ、焼結工程中に化学変化するか否かを問わない。
【0125】
補助材は、酸化物、窒化物、及び炭化物の何れか一つを含んでなることが好適である。また、補助材の化学変化による生成物は、酸化物であってもよい。補助材は、金属元素又は半導体元素からなる物質、炭化物、亜酸化物、及び塩化物等の少なくとも一つを含む材料であってもよい。
【0126】
焼成工程中の化学変化の有無に関わらず、焼成工程前の補助材が焼成工程終了後において酸化物として存在している場合、その補助材又は補助材の化学変化による生成物は、溶剤を適切に選択することにより、エッチングにより容易に除去され得る。
【0127】
エッチング可能な酸化物としては、例えばCoO、SiO2、NiO、Nb2O5、TiO2、ZnO、ZrO2、MgO、BaO、CaO等が挙げられる。ただし、焼結工程終了後、補助材又は補助材の化学変化による生成物が、選択的にエッチングされ得ること(即ち、焼結した薄板部12及び支持部(基板材料)11が溶出することなく補助材又は補助材の化学変化による生成物のみが溶出により除去されること)が重要である。この場合、焼結した薄板部12及び支持部11が溶剤としての水に溶出しない場合には、補助材をMgO、BaO、CaOを含む材料の中から選択することが望ましい。
【0128】
また、窒化物及び炭化物は常圧で焼成すると焼結し難いから(難焼結性を示すから)、補助材が窒化物又は炭化物を含んでいれば、その補助材又は補助材の化学変化による生成物は焼結工程終了後に粉砕により容易に除去され得る。これらの補助材としては、例えば、Ta2O5、BN、Si3N4、SiC、WC等を含む材料を挙げることができる。この場合、上述した各製造方法における補助材の除去工程は、粉砕により補助材を除去する工程となる。
【0129】
また、補助材が、金属元素又は半導体元素からなる物質を含んでなる場合、焼成工程中に金属及び半導体は酸化物へと体積膨張を伴いながら変化するものが多い。従って、このような補助材によれば、薄板部となる板体を一層確実に支持しながら焼成を行うことができる。
【0130】
以上、説明したように、本発明による焼結体の第1〜第4の製造方法は、薄板部12と同薄板部を支持する支持部11とを有する焼結体10の製造方法であって、前記薄板部12となる板体の少なくとも一部に補助材50等を接触させるとともに、同薄板部12となる板体の少なくとも他の一部に前記支持部11となる部分を接触させた状態にて、同薄板部12となる板体及び同支持部11となる部分の焼成を行う焼成工程と、前記焼成工程終了後に前記補助材50(補助材50が焼成工程中に化学変化する場合には同補助材の化学変化による生成物)を除去する除去工程とを含む。これにより、所望の形状の薄板部12(平面度が極めて良好な薄板部12)を製造することができる。
【0131】
また、上記製造方法によれば、焼成前薄板部(焼成工程での焼成後に薄板部12となる板体)を焼成工程において焼成することにより得られる焼結後薄板部12と、焼成前支持部(焼成工程での終了後に支持部11となる部分)を同焼成工程において焼成することにより得られる同焼結後薄板部12を支持する焼結後支持部12と、を有する焼結体の構造物であって、前記焼成前薄板部の少なくとも一部に接触した状態にて同焼成前薄板部及び前記焼成前支持部ととともに前記焼成工程を経た後において前記焼結後薄板部12から分離除去可能となる補助材50が同焼成工程において同焼結前薄板部と反応することにより生成される物質が、同焼結後薄板部12の表面の少なくとも一部に層状に形成されてなる焼結体の構造物が得られる。
【0132】
この薄板部12の表面に層状に形成された物質(層状物質)は、焼成過程において薄板部12となる部分と補助材50の反応により形成される物質(例えば、酸化物からなる膜)であり、焼成工程終了後の除去工程にて補助材を除去した後においても薄板部12の表面に層状に残存するものである。
【0133】
このような構造物は、薄板部12の少なくとも一部に層状物質が形成されているので、薄板部12が2層構造となり、同薄板部12の耐衝撃性及び防湿性が向上し、焼結体10の長寿命化が達成され得る。また、そのような層状物質が形成された部分に他の部材を接着剤により接着させる場合、層状物質が形成された部分は同層状物質が形成されていない部分に比べ表面のラフネスが粗くなるので、接着強度を向上することもできる。
【0134】
以上、本発明による焼結体の製造方法及び焼結体の例について述べたが、本発明は上記例に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る圧電/電歪デバイスの斜視図である。
【図2】図1に示した圧電/電歪デバイスの正面図である。
【図3】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図4】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図5】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図6】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図7】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシート及び仮積層体の斜視図である。
【図8】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図9】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシート、仮積層体及び本積層体の斜視図である。
【図10】製造途中にある本積層体を仮想面で切断した構造体の斜視図である。
【図11】圧電/電歪素子が形成された本積層体の斜視図である。
【図12】本発明の第2の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシート及び本積層体の斜視図である。
【図13】図12に示した積層体の断面図である。
【図14】本発明の第3の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図15】本発明の第3の製造方法を説明するための補助材のグリーンシート及びそれらの積層体である補助材のブロックの斜視図である。
【図16】本発明の第3の製造方法を説明するための積層体等の断面図である。
【図17】本発明の第4の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図18】本発明の第4の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシート及び仮積層体の斜視図である。
【図19】本発明の第4の製造方法を説明するための積層体等の断面図である。
【図20】本発明の第4の製造方法を説明するための積層体の断面図である。
【図21】本発明による薄板焼結体の製造方法を説明するための焼結工程における各部材の配置を示す図である。
【図22】本発明による薄板焼結体の他の製造方法を説明するための焼結工程における各部材の配置を示す図である。
【符号の説明】
10…圧電デバイス(焼結体)、11…支持部、11a…本体部、11b…溝形成部、12…薄板部、13…保持部、14…圧電/電歪素子、21〜24,26,28,30…セラミックグリーンシート(板体)、25,31…仮積層体、25a…貫通穴、27,32,33…本積層体、31b…中子、41,41a,41b…セッター用シート、42…焼成前層状部材、50,54,54a,54b…補助材、51…補助材のグリーンシート、52…補助材(酸化物)のブロック、53…酸化物。
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄板部と支持部とを有する焼結体の製造方法、薄板部と支持部とを有する焼結体の構造物、及び薄板焼結体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄板部と同薄板部を支持する支持部とを有する焼結体からなる構造物は、例えば、薄板部に形成された圧電/電歪素子を備え、この圧電/電歪素子により薄板部を変形させることにより薄板部に保持された光学的又は磁気的情報等の読取り及び/又は書込み用素子(ヘッド)の位置を制御するアクチュエータ等として開発されてきている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−315100号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような焼結体からなる構造物を焼成工程(焼結工程)を経て製造する場合、焼成中に薄板部となる板体がその自重により撓んで変形してしまうという問題がある。
【0005】
また、このような構造物は、薄板部となる板体と支持部となる部分とを同時に焼成することにより製造される。ところが、薄板部となる板体の肉厚は支持部となる部分の肉厚よりも薄いので、薄板部となる板体は支持部となる部分よりも短時間内に焼結する。このため、焼成中において構造物の内部に応力が発生し、その応力による歪は最も強度の弱い薄肉部(薄板部)を変形させるという形で解放されるので、薄板部が変形してしまうという問題もある。
【0006】
従って、本発明の目的は、薄板部と支持部とを有する焼結体(焼結体からなる構造物)であって、同薄板部の板厚が極めて薄い場合であっても、所望の形状(例えば、平面度が良好な薄板体形状)の薄板部を有する焼結体を得ることができる製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、耐衝撃性や防湿性に優れた焼結体からなる構造物を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、厚さが極めて薄く所望の形状を有する薄板焼結体を得ることができる薄板焼結体の製造方法を提供することにある。
【0007】
【本発明の概要】
上記目的を達成するための本発明による焼結体の製造方法は、薄板部と同薄板部を支持する支持部とを有する焼結体の製造方法であって、前記薄板部となる板体の少なくとも一部に補助材(前駆体)を接触させるとともに、同薄板部となる板体の少なくとも他の一部に前記支持部となる部分を接触させた状態にて、同薄板部となる板体及び同支持部となる部分の焼成を行う焼成工程と、前記焼成工程終了後に前記補助材又は前記補助材の化学変化による生成物を除去する除去工程と、を含む。
【0008】
これによれば、前記薄板部となる板体の少なくとも一部に補助材が接触された状態にて同板体が焼成せしめられる。この補助材は、焼成工程中に化学変化しない材質からなっていてもよく、焼成工程中に化学変化(例えば、酸化)する材質からなっていてもよい。そして、補助材又は補助材の化学変化による生成物は焼成工程終了後に除去される。換言すると、補助材は、薄板部となる板体及び支持部となる部分の焼成中(焼成工程中)に消失しない材質から選択される。
【0009】
このような補助材は、従来から焼結体構造物の製造において使用されるテオブロミン等の昇華性物質とは異なり、焼成工程の最後まで消失することなく存在している。従って、後述するように、薄板部となる板体の板厚が補助材により擬似的に厚くされた状態(板体の剛性が向上された状態)にて同薄板部となる板体が焼成せしめられ、或いは、薄板部となる板体が補助材により支持された状態にて焼成せしめられるので、焼成中において薄板部となる板体がその自重によって撓まない。この結果、薄板部の平面度が良好な焼結体(焼結体からなる構造物)が提供される。
【0010】
この場合、前記補助材は、酸化物、窒化物、及び炭化物の何れか一つを含んでなることが好適である。また、補助材の化学変化による生成物は、酸化物であってもよい。補助材は、金属元素又は半導体元素からなる物質、炭化物、亜酸化物、及び塩化物等の少なくとも一つを含む材料であってもよい。
【0011】
焼成工程中の化学変化の有無に関わらず、焼成工程前の補助材が焼成工程終了後において酸化物として存在している場合、その補助材又は補助材の化学変化による生成物は、溶剤を適切に選択することにより、エッチングにより容易に除去され得る。
【0012】
エッチング可能な酸化物としては、例えばCoO、SiO2、NiO、Nb2O5、TiO2、ZnO、ZrO2、MgO、BaO、CaO等が挙げられる。ただし、焼結工程終了後、補助材又は補助材の化学変化による生成物が、選択的にエッチングされ得ること(即ち、焼結した薄板部及び支持部(基板材料)が溶出することなく補助材又は補助材の化学変化による生成物のみが溶出により除去されること)が重要である。この場合、焼結した薄板部及び支持部が溶剤としての水に溶出しない場合には、補助材をMgO、BaO、CaOを含む材料の中から選択することが望ましい。
【0013】
また、窒化物及び炭化物は常圧で焼成すると焼結し難いから(難焼結性を示すから)、補助材が窒化物又は炭化物を含んでいれば、その補助材又は補助材の化学変化による生成物は焼結工程終了後に粉砕により容易に除去され得る。これらの補助材としては、例えば、Ta2O5、BN、Si3N4、SiC、WC等を含む材料を挙げることができる。
【0014】
また、補助材が、金属元素又は半導体元素からなる物質を含んでなる場合、焼成工程中に金属及び半導体は金属酸化物及び酸化物へとそれぞれ体積膨張を伴いながら変化するものが多い。従って、このような補助材によれば、薄板部となる板体を一層確実に支持しながら焼成を行うことができる。
【0015】
本発明の一つの態様において、前記焼成工程は、前記薄板部となる板体の少なくとも一部に前記補助材を層状に形成し、同板体の板厚を擬似的に増大した状態にて前記焼成を行う工程である。
【0016】
これによれば、焼成前の時点で薄板部となる板体の板厚が補助材により擬似的に厚くされた状態(即ち、薄板部となる板体の剛性が向上された状態)にて同薄板部となる板体が焼成せしめられ、焼成後に補助材又は補助材の化学変化による生成物が除去され、所望の板厚を有する薄板部が形成される。従って、焼成時に薄板部となる板体がその自重によって撓み難くなるので、薄板部の平面度が良好な焼結体(構造物)が提供される。また、薄板部となる板体の板厚が擬似的に厚くされて同薄板部となる板体の強度が高くなるので、焼成工程前の製造工程においける同薄板部となる板体の取り扱いが容易となる(ハンドリング性が向上する。)。なお、薄板部となる板体に形成される層状の補助材は薄板部となる板体の何れの面に形成されてもよい。更に、その層状の補助材の厚みは薄板部となる板体の厚みと同等である必要はなく、薄板部となる板体より薄くても厚くてもよい。
【0017】
本発明の他の態様において、前記焼成工程は、前記薄板部となる板体及び前記支持部となる部分が前記接触された状態にて画定する空間に前記補助材を実質的に満たした状態にて前記焼成を行う工程である。
【0018】
これによれば、薄板部となる板体が補助材により支持された状態にて焼成せしめられるので、焼成中に同板体がその自重によって撓み難くなる。更に、薄板部となる板体下に存在する空間に補助材が充填されることになるので、補助材の焼成工程中における変化率(収縮率又は膨張率)を調整する(即ち、薄板部となる板体と補助材の割掛け差を調整する)ことにより、薄板部となる板体の焼成中の変形を抑制したり、或いは、意図的に薄板部の形状を制御することが可能となる。
【0019】
薄板部となる板体の変形を抑制するには、例えば、補助材の変化率(収縮率又は膨張率)を支持部となる部分の変化率(収縮率又は膨張率)に一致させればよい。これにより、薄板部となる板体と、その板体に対して焼成中における変化率が調整(一致)された補助材及び支持部となる部分とが、互いに接触された状態で焼成されることになるからである。
【0020】
また、この方法により、補助材を除去した空間を液体の加圧室等として用いるダイヤフラム構造等を備えた焼結構造体、即ち、「薄板下に空間を有する焼結構造体」を製造すれば、狙いとする寸法を有する空間を製造することができる。
【0021】
なお、本明細書において、「前記薄板部となる板体及び前記支持部となる部分が前記接触された状態にて画定する空間に補助材を実質的に満たした状態」とは、焼結工程前において同空間が補助材によって完全に満たされた状態及び焼結工程前において同空間が僅かな空隙を残しながら補助材によってほぼ満たされている状態のいずれであってもよい。例えば、補助材として金属元素を含む材料を選択した場合、焼成工程中に金属が酸化物へ変化することにより補助材が膨張するので、この膨張により焼成工程前に存在した僅かな空隙を埋め、それにより薄板部となる板体を補助材により支持して焼成してもよい。
【0022】
前記薄板部となる板体及び前記支持部となる部分が前記接触された状態にて画定する空間に補助材を実質的に満たすには、ペースト状の補助材を前記空間に充填してもよい。また、前記空間に固体状の前記補助材を配置するとともに、同固体状の補助材と前記薄板部となる板体との間にペースト状の前記補助材を介在させることによってもよい。
【0023】
このように、ペースト状の補助材を使用すれば、スクリーン印刷やスポッティング等の生産効率の良好な手法を用いて補助材を充填或いは配置することができる。また、補助材をペースト状にする際に使用する溶剤等の特性(例えば蒸気圧)や量を調整することにより、焼成工程中における補助材の変化率(収縮率又は膨張率)を制御することも可能である。
【0024】
本発明の他の態様において、前記焼成工程は、前記薄板部となる板体及び前記支持部となる部分が前記接触された状態にて画定する空間に、同薄板部となる板体及び同支持部となる部分に対して非接触となるように中子を配置するとともに、同中子と同薄板部となる板体との間に前記補助材を介在させた状態にて前記焼成を行う工程であってもよい。
【0025】
これによっても、薄板部となる板体が補助材により支持された状態にて焼結せしめられるので、焼結時に薄板部となる板体がその自重によって撓まない。この結果、薄板部の平面度が良好な焼結体(構造物)が提供される。
【0026】
更に、この場合において、前記薄板部となる板体、前記支持部となる部分、及び前記中子は同種の材料により構成され、前記補助材は前記中子と前記薄板部となる板体との間の空間に層状に形成されることが好適である。
【0027】
これによれば、薄板部となる板体と支持部となる部分とが接触された状態にて画定する空間の大部分が、薄板部となる板体及び支持部となる部分と同種の材料からなる中子により占有される。従って、薄板部となる板体と中子の変化率(収縮率又は膨張率)の差(割掛け差)を極めて小さくすることができる。また、補助材の使用量を減らすことにより、補助材の焼成時の形状変化等が薄板部となる板体へもたらす影響を小さくすることができる。この結果、焼成工程における薄板部となる板体の変形を抑制することが可能となる。また、薄板部となる板体と中子との間に補助材が介在せしめられているので、薄板部となる板体と中子との焼成による一体化を回避することができる。
【0028】
更に、前記中子と前記支持部となる部分とを同種の材料により構成させるには、例えば、セラミックグリーンシートにパンチング加工等により必要な空隙を作成し、このセラミックグリーンシートを積層した積層体に別のセラミックグリーンシートを積層することにより、同中子と同支持部となる部分とを形成すればよい。
【0029】
更に、前記補助材が前記中子と前記薄板部となる板体との間の空間に層状に形成されることが好ましい。層状の補助材は、薄板部となる板体と中子の収縮を阻害する要因とはなり難いから、両者の間の調整された小さな変化率(収縮率又は膨張率)を有効に機能させることができ、その結果、平面度が良好な薄板部を得ることができるからである。また、層状の補助材は、印刷,塗布等により容易に形成することができるからである。以上のことから、薄板部の平面度が良好な焼結体(構造物)が、効率よく製造され得る。
【0030】
また、上述したように、前記補助材は前記焼成工程終了後にエッチング可能な物質として存在するように選択され、前記除去工程は、前記補助材又は前記補助材の化学変化による生成物をエッチングにより除去する工程であってもよい。これによれば、焼成工程終了後に補助材又は補助材の化学変化による生成物をエッチングにより簡単に除去することができる。
【0031】
また、前記補助材は焼成後に粉砕可能な物質として存在するように選択され、前記除去工程は、前記補助材又は前記補助材の化学変化による生成物を粉砕により除去する工程であってもよい。これによれば、焼成工程終了後に補助材又は補助材の化学変化による生成物を粉砕により簡単に除去することができる。
【0032】
また、本発明による焼結体の構造物は、薄板部と同薄板部を支持する支持部とを有する焼結体の構造物であって、前記薄板部の前記支持部と接触する以外の部分の表面に同薄板部を構成する材料とは異なる材料からなる層状のコート層が形成されてなる焼結体の構造物である。
【0033】
この焼結体の構造物によれば、支持部と接触していない薄板部の表面の少なくとも一部に、薄板部を構成する材料とは異なる材料からなる層状のコート層(例えば、酸化物からなる膜)が形成されている。従って、コート層の存在により、薄板部の耐衝撃性及び防湿性が向上し、焼結体の長寿命化が達成され得る。
【0034】
また、本発明による焼結体の構造物は、焼成前薄板部を焼成工程において焼成することにより得られる焼結後薄板部と、焼成前支持部を同焼成工程において焼成することにより得られる同焼結後薄板部を支持する焼結後支持部と、を有する焼結体の構造物であって、前記焼成前薄板部の少なくとも一部に接触した状態にて同焼成前薄板部及び前記焼成前支持部ととともに前記焼成工程を経た後において前記焼結後薄板部から分離除去可能となる補助材が同焼成工程において同焼結前薄板部と反応することにより生成される物質が、同焼結後薄板部の表面の少なくとも一部に層状に形成されてなる焼結体の構造物である。この層状に形成された物質は、焼成工程にいて補助材が薄板部と反応することで形成されるものであり、焼成工程終了後に補助材を除去した後においても薄板部の表面に残存する。
【0035】
これによれば、薄板部の少なくとも一部に前記層状に形成された物質(例えば、酸化物からなる膜)が形成されているので、薄板部が2層構造となり、その耐衝撃性及び防湿性が向上し、焼結体の長寿命化が達成され得る。また、そのような層状物質が形成された部分に他の部材を接着剤により接着させる場合、層状物質が形成された部分は同層状物質が形成されていない部分に比べ表面のラフネスが粗くなるので、接着強度を向上することもできる。
【0036】
ところで、従来から、薄板の焼結体はアルミナ等からなるセッター(基台)の上に別途形成された焼成前の薄板シートを配置し、この薄板シートをセッターとともに焼成することにより製造されている。この従来の方法によると数μm程度の単なる薄板体であれば製造可能であるが、例えば1μm以下の焼成前の薄板シートの製造が難しいので、そのような極めて厚さの薄い薄板の焼結体を得ることが困難である。
【0037】
また、この従来の方法によると、焼成中に薄板シートが変形し、例えば、平面度の良好な薄板焼結体を得ることが困難である。この変形は、薄板シートの厚みが不均一であることに伴って焼結する速さが薄板シート全面で均一でないために発生する。この変形は、薄板シートの厚みが小さく、及び/又は、薄板シートの面積が大きい場合に顕著に現れる。
【0038】
このような課題に対処するための本発明による薄板焼結体の製造方法は、焼成前の層状の部材を焼成させることにより薄板の焼結体を製造する薄板焼結体の製造方法であって、前記焼成前の層状の部材と同種の材料からなるセッター用シート、薄膜状の補助材及び同焼成前の層状の部材を順に積層し、その状態にて同セッター用シート及び同焼成前の層状の部材を焼成させる焼成工程と、前記焼成工程の終了後に前記補助材又は前記補助材の化学変化による生成物を除去する除去工程と、を含む。
【0039】
これによれば、焼成前の層状の部材(焼成前層状部材)がセッター用シートの上に積層された補助材の上で焼成せしめられる。この補助材は薄膜状であるから、互いに同種の材料からなる焼成前層状部材及びセッター用シートの焼成工程における変形を阻害しない。従って、焼成前層状部材は、焼成前層状部材の焼成中の変化率(収縮率又は膨張率)に極めて近い変化率を有するセッター用シートと実質的に接触した状態で焼成せしめられることになるので、同焼成前層状部材の焼成中における変形を抑制することができる。
【0040】
更に、焼成前層状部材とセッター用シートとの間に補助材が介在せしめられているので、焼成前層状部材とセッター用シートとの焼成による一体化を回避することができる。以上により、上記薄板焼結体の製造方法によれば、板厚が極めて薄く且つ所望の形状を有する薄板焼結体を容易に得ることができる。
【0041】
この場合、前記焼成前の層状の部材は、セラミックグリーンシートであってもよく、前記セッター用シートに形成された薄膜状の補助材の上面に印刷により形成される部材であってもよい。
【0042】
特に、前記焼成前の層状の部材が前記セッター用シートに形成された薄膜状の補助材の上面に印刷により形成される部材であれば、極めて厚さが薄く所望の形状を有する薄板焼結体を容易に製造することができる点で有利である。これは、以下の理由による。
【0043】
即ち、例えば、幅が狭く且つ長さが長い桟状の薄板焼結体を焼成前のシートを使用して得るためには、その焼成前シートに対して微細な打ち抜き加工を行う必要がある。しかしながら、焼成前シートの厚さが薄いと、同焼成前シートの剛性が低いので、そのような加工により所望の形状の焼成前シートが得られず、その結果、所望の形状の薄板焼結体を得ることができない。
【0044】
これに対し、前記焼成前の層状の部材が前記セッター用シートの上に形成された補助材の上面に印刷により形成される部材であれば、細長の桟や幅の狭い曲線状の桟等の所望の形状であって極めて厚さが薄い焼成前層状部材を容易に形成することができ、結果として、所望の形状を有する薄板焼結体を製造することができる。このような印刷による部材は、基板なしでは自立できないので基板上に形成する必要があるが、基板とともにそのまま焼成したのでは基板と一体化してしまう。従って、本発明のように、補助材の上に層状部材を印刷し、この補助材を焼成後に除去すれば、所望の形状を有する薄板焼結体が製造できるのである。
【0045】
なお、「焼成前の層状の部材と同種の材料からなるセッター用シート、薄膜状の補助材及び焼成前の層状の部材を順に積層した状態にて焼成を行うこと」には、「セッター用シート、薄膜状の補助材及び焼成前の層状の部材を順に積層した上に、更に薄膜状の補助材及びセッター用シートを積層し、その状態又は更に他の部材を積層した状態にて焼成を行うこと」が含まれる。
【0046】
これによれば、焼成前の層状の部材は、セッター用シートの間にサンドイッチ状に挟みこまれた状態にて焼成されるので、焼成される層状の部材の焼成中における表裏面の温度差を小さくすることができる。この結果、層状の部材の表裏面の温度差に基づく変形を抑制することができる。この場合にも、焼成前の層状の部材とセッター用シートの間には、補助材が介在せしめられているので、層状の部材とセッター用シートとの焼成による一体化を回避することができる。
【0047】
以上、説明したように、本発明による薄板焼結体の製造方法によれば、板厚が極めて薄く、且つ、所望の形状を有する薄板の焼結体を容易に得ることができる。なお、このようにして製造される薄板焼結体は、例えば、金属部材等に貼り付けることにより、ハードディスクのヘッド位置制御用アクチュエータ等して使用することができる。
【0048】
【発明の実施の形態】
図1に斜視図を示した圧電/電歪デバイス10は、本発明による焼結体の製造方法により製造されるデバイスである。圧電/電歪デバイス10は、支持部11と、一対の薄板部12,12と、一対の保持部(ダム、マウント)13,13と、一対の圧電/電歪素子14,14とを備えている。支持部11、薄板部12,12、及び保持部13,13は、セラミックスから形成されていて、焼成により一体化されている。
【0049】
支持部11は、本体部11aと溝形成部11b,11bとからなっている。本体部11aは、互いに直交するX軸,Y軸,及びZ軸の各軸に平行な辺を有する直方体形状を有している。溝形成部11b,11bは、X軸,Y軸,及びZ軸の各軸に平行な辺を有する直方体形状を有し、本体部11aのX軸方向両端部に設けられている。溝形成部11b,11bのX軸方向及びZ軸方向の長さは、本体部11aのX軸方向及びZ軸方向の長さよりもそれぞれ短くなっている。溝形成部11b,11bのY軸方向の長さは本体部11aのY軸方向の長さと等しくなっている。溝形成部11b,11bのZ−X平面は、本体部11aのZ−X平面と同一面上にある。
【0050】
互いに対向する一対の薄板部12,12は、それぞれがX軸,Y軸,及びZ軸の各軸に平行な辺を有する直方体形状を有する薄板体であり、支持部11のX軸方向両端部において支持部11により支持されている。即ち、一対の薄板部12,12は、一対の溝形成部11b,11bにそれぞれ固定されている。各薄板部12は、固定された溝形成部11bからZ軸正方向に延びている。薄板部12,12は、X軸方向の厚みが極めて薄いので、Z−X平面に沿って容易に変形し得るようになっている。
【0051】
保持部13,13は、薄板部12,12のZ軸正方向端部近傍位置において、薄板部12,12の互いに対向する内側平面部にそれぞれ形成されている。各保持部13は、Y軸方向に延びる長手方向を有し、その長手方向に直交する平面で切断した断面形状が略台形状をなしている。各保持部13は、その台形の底辺部分において各薄板部12に固定されている。
【0052】
圧電/電歪素子14,14は、薄板部12,12の外側平面部にそれぞれ固定されている。各圧電/電歪素子14,14は、層状の電極と圧電/電歪層とが交互に積層された積層タイプの圧電/電歪素子である。
【0053】
より具体的に述べると、図2に示したように、圧電/電歪素子14は、薄板部12の外側平面上に、電極14a1、圧電/電歪層14b1、電極14a2、圧電/電歪層14b2、電極14a3、圧電/電歪層14b3、電極14a4、圧電/電歪層14b4、及び電極14a5が順に積層されてなる積層体である。電極14a1,14a3及び14a5は互いに電気的に接続され、櫛歯状の電極を構成している。電極14a2及び14a4は互いに電気的に接続され、櫛歯状の電極を構成している。電極14a1,14a3,14a5と電極14a2,14a4とは絶縁状態が維持されている。
【0054】
この圧電/電歪素子14は、膜形成方法により薄板部12に対して一体的に形成される。また、圧電/電歪素子14を薄板部12とは別体として製造しておき、有機樹脂等の接着剤を用いて、或いは、ガラス、ロウ付け、半田付け、共晶接合等により薄板部12に貼り付けてもよい。
【0055】
なお、ここでは、電極が全部で5層である多層構造を有する例を示したが、層の数は特に限定されない。一般には、層の数を多くすることにより、薄板部12,12を変形する力(駆動力)が増大する一方、消費電力も増大する。従って、実施にあたっては、用途及び使用状態等に応じて層の数を適宜選定すればよい。
【0056】
この圧電/電歪デバイス10は、図2に示したように、一対の保持部13,13の間に対象物Sを保持し、圧電/電歪素子14,14が発生する力によって薄板部12,12を変形せしめ、これにより保持部13,13を変位させて対象物Sの位置を制御し得るアクチュエータとして使用されるようになっている。この対象物Sは、磁気ヘッド、光ヘッド、或いは、センサの感度調整用の重り等である。
【0057】
支持部11及び薄板部12,12から構成された部分は、後に詳述するようにセラミックグリーンシートを焼成により一体化したセラミック積層体により構成されている。保持部13,13は、薄板部12,12と同種のセラミックスよりなり薄板部12,12に焼成により一体化されている。このようなセラミックスの一体化物は、各部の接合部に接着剤が介在しないことから、経時的な状態変化が殆ど生じないので、接合部位の信頼性が高く、かつ、剛性確保に有利である。これらの材料としては、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニアをはじめとするジルコニア等を挙げることができる。
【0058】
この安定化ジルコニアは、ジルコニアに、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化セリウム、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムのうち少なくとも1つの化合物(場合により、これらのうち二つ以上の化合物)を添加・含有させることにより安定化されていることが好ましい。同様に、部分安定化ジルコニアは、ジルコニアに上記化合物を添加・含有させることにより部分安定化されていることが好ましい。
【0059】
なお、それぞれの化合物の添加量としては、酸化イットリウムや酸化イッテルビウムの場合にあっては、1〜30モル%、好ましくは1.5〜10モル%、酸化セリウムの場合にあっては、6〜50モル%、好ましくは8〜20モル%、酸化カルシウムや酸化マグネシウムの場合にあっては、5〜40モル%、好ましくは5〜20モル%とすることが望ましい。特に、酸化イットリウムを安定化剤として用いることが好ましく、その場合においては、1.5〜10モル%、(機械的強度を特に重視するときには更に好ましくは2〜4モル%、耐久信頼性を特に重視するときには更に好ましくは5〜7モル%)とすることが望ましい。
【0060】
また、ジルコニアに、焼結助剤等の添加物としてアルミナ、シリカ、遷移金属酸化物等を0.05〜20wt%の範囲で添加することが可能である。なお、支持部11及び薄板部12を構成するセラミックスは、その機械的強度が高く且つ安定した結晶相が得られることが望ましい。そのため、ジルコニアの平均結晶粒子径を0.05〜3μmとすることが好ましく、0.05〜1μmとすることが更に望ましい。
【0061】
圧電/電歪層14b1〜14b4は、圧電セラミックスにより構成されることが好適である。その一方、圧電/電歪層14b1〜14b4は、電歪セラミックス、強誘電体セラミックス、或いは反強誘電体セラミックスにより構成することも可能である。また、このような圧電/電歪デバイス10において、保持部13,13の変位量と駆動電圧(又は出力電圧)とのリニアリティが重要とされる場合、圧電/電歪層14b1〜14b4は歪み履歴の小さい材料で形成されることが好ましく、従って、それらの抗電界が10kV/mm以下の材料で形成されることが好ましい。
【0062】
圧電/電歪層14b1〜14b4の具体的な材料としては、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、マンガンタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウムビスマス、ニオブ酸カリウムナトリウム、タンタル酸ストロンチウムビスマス等を単独であるいは混合物として含有するセラミックスが挙げられる。
【0063】
一方、圧電/電歪素子14,14の電極14a1〜14a5は、室温で固体であり、導電性に優れた金属で構成されていることが好ましく、例えばアルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛等の金属単体、もしくはこれらの合金で構成され得る。更に、電極材として、これらの金属に圧電/電歪層14b1〜14b4と同じ材料又は薄板部12,12と同じ材料を分散させたサーメット材料を用いてもよい。
【0064】
次に、上記圧電/電歪デバイス10の製造方法(第1の製造方法)について説明する。
【0065】
先ず、図3に示した50μmの厚みを有する長方形のセラミックグリーンシート21を作製する。具体的には、ジルコニアのセラミック粉末にバインダ、溶剤、分散剤、及び可塑剤等を添加混合してスラリーを作製し、このスラリーに対して脱泡処理を施す。その後、リバースロールコーター法及びドクターブレード法等の適切な方法により、上記形状のセラミックグリーンシート21を作製する。セラミックグリーンシート21の一例としては、ZrO2を主原料とし、焼結助剤としてY2O3を使用したものを挙げることができる。なお、以下において、セラミックグリーンシート21の短辺のうちの一辺を便宜上「基準短辺SL」と呼び、長辺のうちの一辺を便宜上「基準長辺LL」と呼ぶ。
【0066】
次に、図4に示したように、セラミックグリーンシート21の中央部に長方形の窓部W1を打ち抜き加工により形成し、セラミックグリーンシート22を製造する。打ち抜き加工は、金型を用いた打抜加工やレーザ加工等の方法により行う。窓部W1の各辺は、セラミックグリーンシート21の対応する各辺と平行となっている。基準短辺SLから窓部W1の短辺のうちの同基準短辺SLに近い一辺までの距離d1は、図1に示した本体部11aのZ軸方向長さL1と等しくなるように設定されている。基準短辺SLから距離d1までのセラミックグリーンシート22の中央部分22aは後に本体部11aとなる部分である。基準短辺SLから窓部W1の他の短辺までの距離d2は、図1に示した薄板部12のZ軸方向長さL2よりも大きくなるように設定されている。基準長辺LLから窓部W1の長辺のうちの同基準長辺LLに近い一辺までの距離はd3である。
【0067】
一方、図5に示したように、セラミックグリーンシート21の中央部に長方形の窓部W2を打ち抜き加工により形成し、セラミックグリーンシート23を製造する。打ち抜き加工には、窓部W1を形成する場合と同種の方法が使用される。窓部W2の各辺は、セラミックグリーンシート21の対応する各辺と平行となっている。基準短辺SLから窓部W2の短辺のうちの同基準短辺SLに近い一辺までの距離d4は、図1に示した溝形成部11bのZ軸方向長さL3と等しくなるように設定されている。基準短辺SLから距離d4までのセラミックグリーンシート23の中央部分23aは後に溝形成部11bとなる部分である。基準短辺SLから窓部W2の他の短辺までの距離d5は距離d2と等しくなるように設定されている。基準長辺LLから窓部W2の長辺のうちの同基準長辺LLに近い一辺までの距離d6は距離d3と等しくなるように設定されている。
【0068】
更に、図6に示したように、セラミックグリーンシート21の片面に後に保持部13となるダム(マウント)DMを印刷により形成し、セラミックグリーンシート24を作製する。
【0069】
次いで、図7の(A)に示したように、セラミックグリーンシート22を複数枚(ここでは8枚)準備し、各セラミックグリーンシート22に印刷した接着剤を使用してこれらのセラミックグリーンシート22を仮積層して図7の(B)に示した中央部に直方体の貫通穴25aを有する仮積層体25を作製する。なお、このような接着剤(接着ペースト)の一例としては、セラミックス原料としてZrO2粉末及びY2O3粉末を、バインダーとしてPVBを、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルへキシルを、分散媒として2エチルヘキサノールを使用し、これらを調合した後、粘度を100000cps程度に調整したものが挙げられる。
【0070】
一方、図8に示したように、セラミックグリーンシート24の上に、MgOを2−エチルヘキサノールからなる溶剤でペースト状とした補助材50(即ち、MgOを含むペースト状の補助材50)を、ダムDMが形成された面上に印刷により層状に形成し、セラミックグリーンシート26を作製する。補助材50の一例としては、主成分としてMgO(高純度化学研究所製)を、有機成分として上述した接着ペーストと同組成の有機成分を使用し、これらを調合した後、粘度を400000cps程度に調整したものを挙げることができる。
【0071】
セラミックグリーンシート24の上に印刷された補助材50は、セラミックグリーンシート23の窓部W2よりも僅かに小さい長方形状を有している。また、補助材50は、印刷された補助材50のセラミックグリーンシート21に対する位置が窓部W2の同セラミックグリーンシート21(セラミックグリーンシート23)に対する位置と略同一となるように形成される。
【0072】
そして、図9の(A)に示したように、下から順にセラミックグリーンシート26、セラミックグリーンシート23、仮積層体25、セラミックグリーンシート23、及びセラミックグリーンシート26を積層させ、図9の(B)に示した本積層体27を作成する。即ち、仮積層体25を、一対のセラミックグリーンシート23,23でサンドイッチ状に挟みこみ、更にそれらを一対のセラミックグリーンシート26,26で挟み込むように積層して本積層体27を作成する。このとき、セラミックグリーンシート26,26は、補助材50同士が互いに対向するように積層する。なお、この場合にも、各セラミックグリーンシートに印刷された接着剤を使用して積層を行う。
【0073】
図10は、この状態にある本積層体27を図9の(B)に示した仮想線IM1,IM2,及びIM3に沿う平面で切断したものの斜視図である。図10から理解されるように、薄板部12となるセラミックグリーンシート24(26)は、補助材50により、その板厚が擬似的に厚くされている。
【0074】
その後、本積層体27を焼結させて一体化するため、本積層体27(薄板部12となる板体24及び支持部11となる部分)を1200〜1600℃の温度で所定の時間(一例としては、1400℃で2時間)焼成する焼成工程を実施する。このとき、セラミックグリーンシート26は、補助材50によってその板厚が擬似的に厚くされていて剛性が高くなっている。また、補助材50は、焼結工程中に消失せず、酸化物のまま残存する。従って、焼結後に薄板部12となる部分は、焼成工程中において自重により撓まない。その結果、平面度が極めて良好な薄板部12が作製される。
【0075】
次に、図11に示すように、本積層体27の両表面にそれぞれ圧電/電歪素子14,14を形成する圧電素子形成工程を実施する。より具体的に述べると、本積層体27の両表面の所定位置に電極14a1,14a1を印刷して焼成し、次いで、圧電/電歪層14b1,14b1を印刷して焼成し、その上に電極14a2,14a2を印刷して焼成する。このような処理を所定回数繰り返して圧電/電歪素子14,14を形成する。その後、電極14a1,14a3,14a5、及び電極14a2,14a4を駆動回路にそれぞれ電気的に接続するための端子を印刷し焼成する。
【0076】
なお、最下層の電極14a1を印刷して焼成し、その後、圧電/電歪層14b1と電極14a2とを印刷してから同時に焼成し、その後、同様に、一つの圧電/電歪層と一つの電極とを印刷してから同時に焼成する工程を所定回数だけ繰り返すことで圧電/電歪素子14,14を形成してもよい。
【0077】
圧電素子形成工程が終了すると、図11に示した切断線C1,C2,及びC3に沿う平面で本積層体27及び圧電/電歪素子14,14を切断する切断工程を実施する。この切断は、ワイヤソー加工やダイシング加工等の機械加工のほか、YAGレーザ及びエキシマレーザ等のレーザ加工や、電子ビーム加工により行うことが可能である。これにより、図10に示した形状と同様な形状を有するとともに圧電/電歪素子14,14が形成された構造体が得られる。
【0078】
次いで、補助材50を除去する除去工程を実施する。この場合、残存する補助材50はMgOであるから水、湯、或いは弱酸により簡単に除去することができる。水、湯、或いは弱酸は、セラミックスの焼結体となっている支持部11、薄板部12、及び保持部13となる部分と反応しないから、補助材50のみが選択的に容易にエッチングされる(除去される)。この除去工程の一例としては、20%リン酸水溶液中に前述の構造体を浸し、60℃で10分間の条件で補助材50を除去することが挙げられる。
【0079】
以上により、図1に示した構造を有する圧電/電歪デバイス10が製造される。但し、実際には、本積層体27を縦横に複数個並べたものと同等の積層体を準備し、一回の切断工程で多数の圧電/電歪デバイス10を製造する。
【0080】
このように、第1の製造方法の焼成工程においては、薄板部12となる板体であるセラミックグリーンシート24の少なくとも一部に補助材50を層状に形成し、同板体12の板厚を擬似的に増大した状態(即ち、セラミックグリーンシート26の状態)にて焼成を行う。従って、薄板部12となる板体24の剛性が向上された状態にて同板体24が焼成せしめられるので、焼成工程中に同板体24がその自重によって撓まない。この結果、薄板部12の平面度が良好な焼結体である圧電/電歪デバイス10が提供される。また、薄板部12となる板体24の板厚が擬似的に厚くされ、同板体24の強度が高くなる。従って、焼成工程前の製造工程において、薄板部12となる板体24(セラミックグリーンシート26)の取り扱いが容易となる(ハンドリング性が向上する。)。
【0081】
なお、上記の例において、層状の補助材50はセラミックグリーンシート24(薄板部となる板体)のダムDMが形成されている面に形成されているが、反対の面、或いは、両面に形成されてもよい。更に、補助材50の厚みはセラミックグリーンシート24の厚みと同等である必要はなく、セラミックグリーンシート24より薄くても厚くてもよい。
【0082】
次に、本発明による圧電/電歪デバイス10の第2の製造方法について説明する。第2の製造方法は、図8に示したように、補助材50をセラミックグリーンシート24の上に形成する代わりに、補助材50を本積層体27の内部空間に充填する点のみにおいて、第1の製造方法と異なる。
【0083】
即ち、第2の製造方法においては、図12に示したように、図7を参照して説明した方法により作製した仮積層体25を一対のセラミックグリーンシート23でサンドイッチ状に挟みこみ、更にそれらを一対のセラミックグリーンシート24で挟み込むように積層して本積層体27を作成する。本積層体27は、一例として、80℃で上記各部材同士を熱圧着する方法により作成される。このとき、一対のセラミックグリーンシート24,24を積層する前に仮積層体25とセラミックグリーンシート23,23とにより形成される内部空間に補助材50を充填し、その後、セラミックグリーンシート24,24を積層して前記内部空間を密閉する。即ち、薄板部12となる板体24と支持部11となる部分(仮積層体25とセラミックグリーンシート23,23)とが接触された状態にて画定される空間に補助材50を満たす。図13は、この状態にある本積層体27の縦断面図である。
【0084】
その後、本積層体27は第1の製造方法の焼成工程と同じ焼成工程にて焼成される。焼成工程を経た本積層体27は、第1の製造方法と同じ圧電素子形成工程にて圧電/電歪素子14,14が形成され、その後、第1の製造方法と同じ切断工程にて切断される。切断された構造体は、第1製造方法と同じ補助材50の除去工程にて補助材50が除去される。以上により、圧電/電歪デバイス10が作製される。
【0085】
以上、説明したように、第2の製造方法においては、焼成工程が、薄板部12となる板体24と支持部11となる部分(仮積層体25及びセラミックグリーンシート23,23)とが接触された状態にて画定する空間に補助材50を実質的に満たした状態にて、焼成(焼結)を行う工程である。即ち、ペースト状の補助材50を本積層体27の内部空間に充填した後、薄板部となる板体24及び支持部11となる部分を焼成する。
【0086】
これによれば、薄板部12となる板体24が焼成工程終了時まで消失することのない補助材50により支持された状態にて焼成せしめられるので、焼成中に同板体24がその自重によって撓まない。更に、薄板部となる板体24下に存在する空間に補助材50が充填されることになるので、補助材50の焼成工程中における変化率(収縮率又は膨張率)を調整する(即ち、薄板部となる板体24と補助材50の割掛け差を調整する)ことにより、薄板部となる板体24の焼成中の変形を抑制したり、或いは、意図的に薄板部12の形状を制御することが可能となる。薄板部となる板体24の変形を抑制するには、例えば、補助材50の変化率(収縮率又は膨張率)を支持部となる部分(仮積層体25及びセラミックグリーンシート23,23)の変化率(収縮率又は膨張率)に一致させればよい。これにより、薄板部となる板体24と、その板体24に対して焼成中における変化率が調整(一致)された実質的に一つの部材(仮積層体25、セラミックグリーンシート23,23及び補助材50)とが、互いに接触された状態で焼成されることになるからである。
【0087】
また、ペースト状の補助材50を使用しているので生産効率の良好な手法を用いて補助材50を充填することができる。更に、補助材50をペースト状にする際に使用する溶剤等の特性(例えば蒸気圧)や量を調整することができるので、焼成工程中における補助材50の変化率(収縮率又は膨張率)を容易に制御することもできる。
【0088】
次に、本発明による圧電/電歪デバイス10の第3の製造方法について説明する。第3の製造方法は、第2の製造方法における本積層体27の内部空間に補助材50と同種の材料からなる固体状の補助材を配置し、その固体状の補助材と薄板部12となる板体24との間にペースト状の補助材50を介在させる点において、第2の製造方法と相違している。なお、第3の製造方法により作製される圧電/電歪デバイス10は保持部13を備えていない。
【0089】
以下、具体的に説明すると、第3の製造方法においては、図14に示したように、セラミックグリーンシート21の上面にペースト状の補助材50を印刷により形成して(塗布して)セラミックグリーンシート28を作製する。この場合、補助材50は、セラミックグリーンシート21と実質的に同じ厚み(従って、セラミックグリーンシート23と同じ厚み)を有し、セラミックグリーンシート23の窓部W2よりも僅かに小さい長方形状を有するように形成される。また、補助材50は、補助材50のセラミックグリーンシート21に対する位置が窓部W2のセラミックグリーンシート21(セラミックグリーンシート23)に対する位置と略同一となるように形成される。
【0090】
そして、図7の(A)に示したように、セラミックグリーンシート22を複数枚(ここでは8枚)用意し、これらを積層して図7の(B)に示した仮積層体25を作製する。一方、図15の(A)に示したように、MgOを含んでなる補助材(酸化物)のグリーンシートであってセラミックグリーンシート22と同一の厚みを有し、且つ、窓部W1よりも僅かに小さい長方形状のシート51を複数枚(例えば、8枚)準備し、これらを積層して図15の(B)に示した固体状の補助材のブロック52を作製する。
【0091】
次に、図16の(A)に示したように、仮積層体25の貫通穴25a内に酸化物のブロック52を挿入し、それらを一対のセラミックグリーンシート23,23でサンドイッチ状に挟みこみ、更にそれらを一対のセラミックグリーンシート28,28で挟み込むように積層し、図16の(B)に示した本積層体29を作成する。このとき、セラミックグリーンシート28,28は、補助材50同士が互いに対向するように積層する。
【0092】
その後、本積層体29は第1の製造方法の焼成工程と同じ焼成工程にて焼成される。この結果、補助材50,52は、焼成工程の終了時まで消失することなく、図16の(C)に示したように一対化した酸化物53となる。そして、焼成工程を経た本積層体29に対し、第1の製造方法と同じ圧電素子形成工程にて圧電/電歪素子14,14を形成し、その後、第1の製造方法と同じ切断工程を施す。次いで、第1の製造方法と同様に酸化物53をエッチングにより除去する除去工程を施す。これにより、図1に示した保持部13を備えない圧電/電歪デバイス10が作製される。
【0093】
以上、説明したように、第3の製造方法においては、焼成工程が、薄板部12となる板体21と支持部11となる部分(仮積層体25及びセラミックグリーンシート23,23)とが接触された状態にて画定する空間に補助材50,52を実質的に満たした状態にて、焼成(焼結)を行う工程となっている。即ち、前記確定された空間に固体状の補助材52を配置するとともに同固体状の補助材52と薄板部となる板体21との間にペースト状の補助材50を介在させることにより同確定された空間に同補助材50,52を満たし、その後、薄板部となる板体21及び支持部となる部分(仮積層体25とセラミックグリーンシート23,23)を焼成する。
【0094】
これによれば、第2の製造方法と同様、薄板部12となる板体21が補助材50により支持された状態にて焼成せしめられるので、焼成中に同板体21がその自重によって撓まない。更に、薄板部となる板体21下に存在する空間に補助材50,52が隙間なく充填されることになるので、補助材50,52の焼成工程中における変化率(収縮率又は膨張率)を調整することにより、薄板部となる板体21の焼成中の変形を抑制したり、或いは、意図的に薄板部となる板体21の形状を制御することが可能となる。
【0095】
薄板部となる板体21の変形を抑制するには、例えば、補助材50,52の変化率(収縮率又は膨張率)を支持部となる部分(仮積層体25及びセラミックグリーンシート23,23)の変化率(収縮率又は膨張率)に一致させればよい。これにより、薄板部となる板体21と、その板体21に対して焼成中における変化率が調整された実質的に一つの部材(仮積層体25、セラミックグリーンシート23,23及び補助材50,52)とが、互いに接触された状態で焼成されることになるからである。
【0096】
また、ペースト状の補助材50を使用しているので、スクリーン印刷やスポッティング等の生産効率の良好な手法を用いて補助材50を充填或いは配置することができる。また、補助材50をペースト状にする際に使用する溶剤等の特性(例えば蒸気圧)や量を調整することができるので、焼成工程中における補助材50の変化率(収縮率又は膨張率)を容易に制御することもできる。
【0097】
加えて、固体状の補助材52を用いて、薄板部12となる板体21と支持部11となる部分(仮積層体25及びセラミックグリーンシート23,23)とが接触された状態にて画定する空間の大部分を埋めているので、同空間を効率良く補助材で満たすことができる。
【0098】
次に、本発明による圧電/電歪デバイス10の第4の製造方法について説明する。第4の製造方法は、第2の製造方法における本積層体27の内部空間に本積層体27と同種の材料からなる中子を配置し、その中子と薄板部12となる板体との間に補助材50を介装する点において、第2の製造方法と相違している。なお、第4の製造方法により作製される圧電/電歪デバイス10は保持部13を備えていない。
【0099】
以下、具体的に説明すると、第4の製造方法においては、第3の製造方法と同様に、図14に示したセラミックグリーンシート28を作製する。従って、補助材50は、セラミックグリーンシート21と同じ厚み(従って、セラミックグリーンシート23と同じ厚み)を有し、セラミックグリーンシート23の窓部W2よりも僅かに小さい長方形状を有するように形成される。また、補助材50は、セラミックグリーンシート21に対する補助材50の位置が窓部W2のセラミックグリーンシート21(セラミックグリーンシート23)に対する位置と略同一となるように形成される。
【0100】
一方、図17に示したように、図3に示したセラミックグリーンシート21に細長の長方形の窓部(スリット)W3を打ち抜き加工により形成し、セラミックグリーンシート30を製造する。打ち抜き加工は、金型を用いた打抜加工やレーザ加工等の方法により行う。窓部W3の各辺は、セラミックグリーンシート21の対応する各辺と平行となっている。基準短辺SLから窓部W3の短辺のうちの同基準短辺SLに近い一辺までの距離d9は、図1に示した本体部11aのZ軸方向長さL1(従って、前述した距離d1)と等しくなるように設定されている。基準短辺SLから窓部W3の他の短辺までの距離d10は、距離d9よりも僅かな距離tだけ長くなっている。基準長辺LLから窓部W3の長辺のうちの同基準長辺LLに近い一辺までの距離d11は図4に示した距離d3と等しくなるように設定されている。
【0101】
そして、図18の(A)に示したように、セラミックグリーンシート30を複数枚(ここでは8枚)用意し、これらを積層して図18の(B)に示した仮積層体31を作製する。この仮積層体31は、図18の(B)において仮想線(二点鎖線)により示したように、図1に示した本体部11aとなる本体部分31a及び後述する中子31bとなる部分を備える。
【0102】
次に、図19の(A)に示したように、仮積層体31を一対のセラミックグリーンシート23,23でサンドイッチ状に挟みこみ、更にそれらを一対のセラミックグリーンシート28,28で挟み込むように積層し、図19の(B)に示した本積層体32を作成する。このとき、セラミックグリーンシート28,28は、補助材50同士が互いに対向するように積層する。この結果、本積層体32は、内部空間に中子31bを有し、中子31bと薄板部12を形成することになるセラミックグリーンシート28のセラミックスの板体21との間に補助材50が介在するように構成される。本積層体32は、一例として、80℃で上記各部材同士を熱圧着する方法により作成される。
【0103】
換言すると、中子31bは、薄板部となる板体21と支持部となる部分31a,23aとが接触された状態にて画定する空間に、同薄板部となる板体21と同支持部となる部分31a,23aに対して実質的に非接触(図19に示した断面において非接触)となるように配置される。また、補助材50は、中子31bと薄板部となる板体21との間に介在するように配置される。
【0104】
その後、本積層体32は第1の製造方法の焼成工程と同じ焼成工程にて焼成される。このとき、補助材50は焼成工程終了時まで消失しない。更に、焼成工程を経た本積層体32に対し、本積層体32の両表面にそれぞれ圧電/電歪素子14,14を形成する。そして、図11を参照して説明した第1の製造方法と同じ切断工程を施す。この段階で、図20に示した切断面を有する中間体CTが得られる。なお、図20において、圧電/電歪素子14,14は省略されている。
【0105】
次いで、第1の製造方法と同様なエッチングによる補助材50の除去工程を施す。これにより、補助材50が除去されるので、中子31bが分離可能となって除去される。この結果、図1に示した保持部13を備えない圧電/電歪デバイス10が作製される。
【0106】
以上、説明したように、第4の製造方法においては、焼成工程が、薄板部12となる板体(シート28のセラミックグリーンシート21)と支持部11となる部分(仮積層体31の本体部分31a及びセラミックグリーンシート23,23)とが接触された状態にて画定する空間に、同薄板部12となる板体21及び同支持部11となる部分に対して非接触となるように中子31bを配置するとともに、同中子31bと同薄板部12となる板体21との間にペースト状の補助材50を介在させた状態にて焼成を行う工程となっている。
【0107】
これによれば、薄板部12となる板体21が補助材50により支持された状態にて焼結せしめられるので、焼結時に板体21がその自重によって撓まない。この結果、薄板部12の平面度が良好な焼結体(構造物)である圧電/電歪デバイス10が提供される。
【0108】
更に、中子31bは、支持部11となる部分(即ち、仮積層体31の本体部分31a及びセラミックグリーンシート23,23)及び薄板部12となる板体21と同一の材料により構成される。また、補助材50は中子31bと薄板部12となる板体21との間の空間(セラミックグリーンシート23の窓部W1)に層状に形成される。
【0109】
従って、薄板部12となる板体21と支持部11となる部分とが接触された状態にて画定する空間の大部分が、薄板部12となる板体21及び支持部11となる部分と同じ材料からなる中子31bにより占有される。その結果、薄板部12となる板体21と中子31bの変化率(収縮率又は膨張率)の差(割掛け差)を極めて小さくすることができるので、薄板部12となる板体21の焼成工程における変形を抑制することができる。また、中子31bの存在により補助材50の使用量を減らすことができ、これにより補助材50の焼成時の形状変化等による影響を小さくできるので、焼成工程における薄板部12となる板体21の変形を抑制することができる。更に、薄板部12となる板体21と中子31bとの間に補助材50が介在せしめられているので、薄板部12となる板体21と中子31bとの焼成による一体化を回避することができる。
【0110】
また、補助材50が中子31bと薄板部12となる板体21との間の空間に層状に形成されているので(厚さが極めて薄い薄膜状に形成されているので)、層状の補助材50は薄板部12となる板体21と中子31bの収縮を阻害する要因とはなり難い。従って、両者(中子31bと薄板部12となる板体21)との間の調整された小さな変化率(収縮率又は膨張率)を有効に機能させることができ、これによっても、薄板部12となる板体21の変形を抑制することができる。加えて、層状の補助材50は、塗布、印刷等により容易に形成することができる。以上のことから、薄板部12の平面度が良好な焼結体(構造物)が、効率よく製造され得る。
【0111】
次に、本発明による薄板焼結体の製造方法(第1の薄板焼結体製造方法)について説明する。この薄板焼結体の製造方法においては、図21に示したように、アルミナ(Al2O3)からなる基台(セッター)40の上にジルコニア(ZrO2)からなる薄膜のセッター用シート41を配置する。次いで、セッター用シート41の上にMgOを2−エチルヘキサノールからなる溶剤でペースト状とした補助材54(即ち、MgOを含むペースト状の補助材54)を薄膜状(例えば、厚みが5μmの板状)に印刷により形成する。なお、アルミナセッター40は、本発明に必須のものではなく、ジルコニア基板を焼成する際に一般的に使用される焼成用のセッターである。
【0112】
次いで、補助材54の上にジルコニア(ZrO2)のペーストを印刷により層状に形成し、層状の部材42を補助材54の上に積層する。層状の部材42の印刷パターンは、最終的に必要となる薄板焼結体の形状に応じて決定される。前述したセッター用シート41の組成は、この補助材54の上に層状に形成されるジルコニアペースト(層状の部材)42と同一としておく。補助材54の上に層状に形成されるジルコニアペースト42の粘度は、一例として200000cpsであり、その膜厚は30μmである。なお、補助材54の上にジルコニアペーストを印刷して層状の部材42を積層する代わりに、同補助材54の上にジルコニア(ZrO2)からなる薄板シート42を配置して、層状の部材42を積層してもよい。
【0113】
この状態において、層状の物質42とセッター用シート41とを焼成する焼成工程を実施する。焼成工程の終了後、補助材54をエッチングにより除去する除去工程を実施する。この除去工程は、前述した各製造方法の除去工程と同様の工程である。以上により、所望の形状を有する焼結した薄板体42が作製される。
【0114】
次に、本発明による薄板焼結体の他の製造方法(第2の薄板焼結体製造方法)について説明する。この薄板焼結体の製造方法においては、図22に示したように、アルミナ(Al2O3)からなる基台(セッター)40の上にジルコニア(ZrO2)からなる薄膜のセッター用シート41aを配置する。次いで、セッター用シート41aの上にMgOを2−エチルヘキサノールからなる溶剤でペースト状とした補助材54a(即ち、MgOを含むペースト状の補助材54a)を薄膜状に印刷により形成する。なお、アルミナセッター40は、本発明に必須のものではなく、ジルコニア基板を焼成する際に一般的に使用される焼成用のセッターである。
【0115】
次いで、補助材54aの上にジルコニア(ZrO2)のペーストを印刷により層状に形成し、層状の部材42を補助材54の上に積層する。層状の部材42の印刷パターンは、最終的に必要となる薄板焼結体の形状に応じて決定される。前述したセッター用シート41aの組成は、この補助材54aの上に層状に形成されるジルコニアペースト(層状の部材)42と同一としておく。補助材54aの上に層状に形成されるジルコニアペースト42の粘度は、一例として200000cpsであり、その膜厚は30μmである。なお、補助材54aの上にジルコニアペーストを印刷して層状の部材42を積層する代わりに、同補助材54aの上にジルコニア(ZrO2)からなる薄板シート42を配置して、層状の部材42を積層してもよい。
【0116】
一方、セッター用シート41aと同じセッター用シート41bを準備し、その一面に補助材54aと同じ薄膜状の補助材54bを形成しておく。そして、層状の部材42の直上に補助材54bが積層されるようにセッター用シート41bを配置し、これらを熱圧着により固定する。なお、図22に示したセッター用シート41a,41bは、互いに同じ寸法(面積及び厚さ)を有することが収縮率の観点から望ましい。
【0117】
この状態において、層状の部材42とセッター用シート41a,41bとを焼成する焼成工程を実施する。焼成条件は、一例として1400℃、2時間を挙げることができる。焼成工程の終了後、補助材54a,54bをエッチングにより除去する除去工程を実施する。例えば、除去工程の一例として、60℃の20%リン酸水溶液に、焼成工程終了後のセッター用シート41a、補助材54a、層状の部材42、補助材54b、及びセッター用シート41bからなる対象物を、10分間浸漬することを挙げることができる。以上により、所望のパターンを有する焼結した薄板体42が作製される。
【0118】
以上、説明したように、上記第1及び第2の薄板焼結体の製造方法は、焼成前の層状の部材42を焼成させることにより薄板の焼結体を製造する薄板焼結体の製造方法であって、前記焼成前の層状の部材42と同種の材料からなるセッター用シート41,41a、薄膜状の補助材54,54a及び同焼成前の層状の部材42を順に積層し、その状態にて同セッター用シート41,41a及び同焼成前の層状の部材42を焼成させる焼成工程と、前記焼成工程の終了後に前記補助材54,54a又は前記補助材54,54aの化学変化による生成物を除去する除去工程と、を含んでいる。
【0119】
このように、第1及び第2の薄板焼結体製造方法によれば、焼成前の層状の部材(焼成前層状部材)42がセッター用シート41,41aの上に積層された補助材54,54aの上で焼成せしめられる。この補助材54,54aは薄膜状であるから、互いに同種の材料からなる焼成前層状部材42及びセッター用シート41,41aの焼成工程における変形を阻害しない。従って、焼成前層状部材42は、焼成前層状部材42の焼成中の変化率(収縮率又は膨張率)に極めて近い変化率を有するセッター用シート41,41aと実質的に接触した状態で焼成せしめられることになるので、同焼成前層状部材42の焼成中における変形を抑制することができる。
【0120】
更に、焼成前層状部材42とセッター用シート41,41a,41bとの間に補助材54,54a,54bが介在せしめられているので、焼成前層状部材42とセッター用シート41,41a,41bとの焼成による一体化を回避することができる。
【0121】
また、幅が狭く且つ長さが長い桟状の薄板焼結体を焼成前のシート(グリーンシート)を使用して得るためには、その焼成前シートに対して微細な打ち抜き加工を行う必要がある。しかしながら、焼成前シートの厚さが薄いと、同焼成前シートの剛性が低いので、そのような加工により所望の形状の焼成前シートが得られず、その結果、所望の形状の薄板焼結体を得ることができない。
【0122】
これに対し、上記第1及び第2の薄板焼結体の製造方法では、焼成前層状部材42がセッター用シート41,41aの補助材54,54aの上に印刷により形成される。従って、焼成前の層状部材42は、細長の桟や幅の狭い曲線状の桟等の所望の形状であって極めて厚さが薄くなるように形成することができ、結果として、所望の形状(薄さ及びパターン)を有する薄板焼結体を容易に製造することができる。
【0123】
また、上記第2の薄板焼結体の製造方法では、焼成前層状部材42は、セッター用シート41a,41bの間にサンドイッチ状に挟みこまれた状態にて焼成されるので、焼成される層状部材42の焼成中における表裏面の温度差を小さくすることができる。この結果、層状部材42の表裏面の温度差に基づく変形を抑制することができる。この場合にも、焼成前層状部材42とセッター用シート41a,41bの間には、補助材54a,54bが介在せしめられているので、層状部材42とセッター用シート41a,41bとの焼成による一体化を回避することができる。
【0124】
次に、本発明において使用される上記補助材50,51,52,54,54a,54bについて説明する。この補助材は、薄板部12等を焼結させる焼結工程を通して消失することがない物質から選ばれ、焼結工程中に化学変化するか否かを問わない。
【0125】
補助材は、酸化物、窒化物、及び炭化物の何れか一つを含んでなることが好適である。また、補助材の化学変化による生成物は、酸化物であってもよい。補助材は、金属元素又は半導体元素からなる物質、炭化物、亜酸化物、及び塩化物等の少なくとも一つを含む材料であってもよい。
【0126】
焼成工程中の化学変化の有無に関わらず、焼成工程前の補助材が焼成工程終了後において酸化物として存在している場合、その補助材又は補助材の化学変化による生成物は、溶剤を適切に選択することにより、エッチングにより容易に除去され得る。
【0127】
エッチング可能な酸化物としては、例えばCoO、SiO2、NiO、Nb2O5、TiO2、ZnO、ZrO2、MgO、BaO、CaO等が挙げられる。ただし、焼結工程終了後、補助材又は補助材の化学変化による生成物が、選択的にエッチングされ得ること(即ち、焼結した薄板部12及び支持部(基板材料)11が溶出することなく補助材又は補助材の化学変化による生成物のみが溶出により除去されること)が重要である。この場合、焼結した薄板部12及び支持部11が溶剤としての水に溶出しない場合には、補助材をMgO、BaO、CaOを含む材料の中から選択することが望ましい。
【0128】
また、窒化物及び炭化物は常圧で焼成すると焼結し難いから(難焼結性を示すから)、補助材が窒化物又は炭化物を含んでいれば、その補助材又は補助材の化学変化による生成物は焼結工程終了後に粉砕により容易に除去され得る。これらの補助材としては、例えば、Ta2O5、BN、Si3N4、SiC、WC等を含む材料を挙げることができる。この場合、上述した各製造方法における補助材の除去工程は、粉砕により補助材を除去する工程となる。
【0129】
また、補助材が、金属元素又は半導体元素からなる物質を含んでなる場合、焼成工程中に金属及び半導体は酸化物へと体積膨張を伴いながら変化するものが多い。従って、このような補助材によれば、薄板部となる板体を一層確実に支持しながら焼成を行うことができる。
【0130】
以上、説明したように、本発明による焼結体の第1〜第4の製造方法は、薄板部12と同薄板部を支持する支持部11とを有する焼結体10の製造方法であって、前記薄板部12となる板体の少なくとも一部に補助材50等を接触させるとともに、同薄板部12となる板体の少なくとも他の一部に前記支持部11となる部分を接触させた状態にて、同薄板部12となる板体及び同支持部11となる部分の焼成を行う焼成工程と、前記焼成工程終了後に前記補助材50(補助材50が焼成工程中に化学変化する場合には同補助材の化学変化による生成物)を除去する除去工程とを含む。これにより、所望の形状の薄板部12(平面度が極めて良好な薄板部12)を製造することができる。
【0131】
また、上記製造方法によれば、焼成前薄板部(焼成工程での焼成後に薄板部12となる板体)を焼成工程において焼成することにより得られる焼結後薄板部12と、焼成前支持部(焼成工程での終了後に支持部11となる部分)を同焼成工程において焼成することにより得られる同焼結後薄板部12を支持する焼結後支持部12と、を有する焼結体の構造物であって、前記焼成前薄板部の少なくとも一部に接触した状態にて同焼成前薄板部及び前記焼成前支持部ととともに前記焼成工程を経た後において前記焼結後薄板部12から分離除去可能となる補助材50が同焼成工程において同焼結前薄板部と反応することにより生成される物質が、同焼結後薄板部12の表面の少なくとも一部に層状に形成されてなる焼結体の構造物が得られる。
【0132】
この薄板部12の表面に層状に形成された物質(層状物質)は、焼成過程において薄板部12となる部分と補助材50の反応により形成される物質(例えば、酸化物からなる膜)であり、焼成工程終了後の除去工程にて補助材を除去した後においても薄板部12の表面に層状に残存するものである。
【0133】
このような構造物は、薄板部12の少なくとも一部に層状物質が形成されているので、薄板部12が2層構造となり、同薄板部12の耐衝撃性及び防湿性が向上し、焼結体10の長寿命化が達成され得る。また、そのような層状物質が形成された部分に他の部材を接着剤により接着させる場合、層状物質が形成された部分は同層状物質が形成されていない部分に比べ表面のラフネスが粗くなるので、接着強度を向上することもできる。
【0134】
以上、本発明による焼結体の製造方法及び焼結体の例について述べたが、本発明は上記例に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る圧電/電歪デバイスの斜視図である。
【図2】図1に示した圧電/電歪デバイスの正面図である。
【図3】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図4】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図5】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図6】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図7】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシート及び仮積層体の斜視図である。
【図8】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図9】本発明の第1の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシート、仮積層体及び本積層体の斜視図である。
【図10】製造途中にある本積層体を仮想面で切断した構造体の斜視図である。
【図11】圧電/電歪素子が形成された本積層体の斜視図である。
【図12】本発明の第2の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシート及び本積層体の斜視図である。
【図13】図12に示した積層体の断面図である。
【図14】本発明の第3の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図15】本発明の第3の製造方法を説明するための補助材のグリーンシート及びそれらの積層体である補助材のブロックの斜視図である。
【図16】本発明の第3の製造方法を説明するための積層体等の断面図である。
【図17】本発明の第4の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの斜視図である。
【図18】本発明の第4の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシート及び仮積層体の斜視図である。
【図19】本発明の第4の製造方法を説明するための積層体等の断面図である。
【図20】本発明の第4の製造方法を説明するための積層体の断面図である。
【図21】本発明による薄板焼結体の製造方法を説明するための焼結工程における各部材の配置を示す図である。
【図22】本発明による薄板焼結体の他の製造方法を説明するための焼結工程における各部材の配置を示す図である。
【符号の説明】
10…圧電デバイス(焼結体)、11…支持部、11a…本体部、11b…溝形成部、12…薄板部、13…保持部、14…圧電/電歪素子、21〜24,26,28,30…セラミックグリーンシート(板体)、25,31…仮積層体、25a…貫通穴、27,32,33…本積層体、31b…中子、41,41a,41b…セッター用シート、42…焼成前層状部材、50,54,54a,54b…補助材、51…補助材のグリーンシート、52…補助材(酸化物)のブロック、53…酸化物。
Claims (17)
- 薄板部と同薄板部を支持する支持部とを有する焼結体の製造方法であって、
前記薄板部となる板体の少なくとも一部に補助材を接触させるとともに、同薄板部となる板体の少なくとも他の一部に前記支持部となる部分を接触させた状態にて、同薄板部となる板体及び同支持部となる部分の焼成を行う焼成工程と、
前記焼成工程終了後に前記補助材又は前記補助材の化学変化による生成物を除去する除去工程と、
を含んだ焼結体の製造方法。 - 請求項1に記載の焼結体の製造方法であって、
前記補助材が、酸化物、窒化物、及び炭化物の何れか一つを含んでなる焼結体の製造方法。 - 請求項1に記載の焼結体の製造方法であって、
前記補助材の化学変化による生成物が酸化物である焼結体の製造方法。 - 請求項1に記載の焼結体の製造方法であって、
前記補助材は、金属元素又は半導体元素からなる物質を含んでなる焼結体の製造方法。 - 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の焼結体の製造方法であって、
前記焼成工程は、前記薄板部となる板体の少なくとも一部に前記補助材を層状に形成し、同板体の板厚を擬似的に増大した状態にて前記焼成を行う工程である焼結体の製造方法。 - 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の焼結体の製造方法であって、
前記焼成工程は、前記薄板部となる板体及び前記支持部となる部分が前記接触された状態にて画定する空間に前記補助材を実質的に満たした状態にて前記焼成を行う工程である焼結体の製造方法。 - 請求項6に記載の焼結体の製造方法であって、
前記焼成工程は、ペースト状の前記補助材を前記空間に充填することにより同空間に同補助材を満たした後、前記焼成を行う工程である焼結体の製造方法。 - 請求項6に記載の焼結体の製造方法であって、
前記焼成工程は、前記空間に固体状の前記補助材を配置するとともに同固体状の補助材と前記薄板部となる板体との間にペースト状の前記補助材を介在させることにより同空間に同補助材を満たした後、前記焼成を行う工程である焼結体の製造方法。 - 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の焼結体の製造方法であって、
前記焼成工程は、前記薄板部となる板体及び前記支持部となる部分が前記接触された状態にて画定する空間に、同薄板部となる板体及び同支持部となる部分に対して非接触となるように中子を配置するとともに、同中子と同薄板部となる板体との間に前記補助材を介在させた状態にて前記焼成を行う工程である焼結体の製造方法。 - 請求項9に記載の焼結体の製造方法であって、
前記薄板部となる板体、前記支持部となる部分、及び前記中子は同種の材料により構成され、
前記補助材は前記中子と前記薄板部となる板体との間の空間に層状に形成された焼結体の製造方法。 - 請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の焼結体の製造方法であって、
前記補助材は前記焼成工程終了後にエッチング可能な物質として存在するように選択され、
前記除去工程は、前記補助材又は前記補助材の化学変化による生成物をエッチングにより除去する工程である焼結体の製造方法。 - 請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の焼結体の製造方法であって、
前記補助材は前記焼成工程終了後に粉砕可能な物質として存在するように選択され、
前記除去工程は、前記補助材又は前記補助材の化学変化による生成物を粉砕により除去する工程である焼結体の製造方法。 - 薄板部と同薄板部を支持する支持部とを有する焼結体の構造物であって、
前記薄板部の前記支持部と接触する以外の部分の表面に同薄板部を構成する材料とは異なる材料からなる層状のコート層が形成されてなる焼結体の構造物。 - 焼成前薄板部を焼成工程において焼成することにより得られる焼結後薄板部と、焼成前支持部を同焼成工程において焼成することにより得られる同焼結後薄板部を支持する焼結後支持部と、を有する焼結体の構造物であって、
前記焼成前薄板部の少なくとも一部に接触した状態にて同焼成前薄板部及び前記焼成前支持部ととともに前記焼成工程を経た後において前記焼結後薄板部から分離除去可能となる補助材が同焼成工程において同焼結前薄板部と反応することにより生成される物質が、同焼結後薄板部の表面の少なくとも一部に層状に形成されてなる焼結体の構造物。 - 焼成前の層状の部材を焼成させることにより薄板の焼結体を製造する薄板焼結体の製造方法であって、
前記焼成前の層状の部材と同種の材料からなるセッター用シート、薄膜状の補助材及び同焼成前の層状の部材を順に積層し、その状態にて同セッター用シート及び同焼成前の層状の部材を焼成させる焼成工程と、
前記焼成工程の終了後に前記補助材又は前記補助材の化学変化による生成物を除去する除去工程と、
を含んでなる薄板焼結体の製造方法。 - 請求項15に記載の薄板焼結体の製造方法において、
前記焼成前の層状の部材は、セラミックグリーンシートである薄板焼結体の製造方法。 - 請求項15に記載の薄板焼結体の製造方法において、
前記焼成前の層状の部材は、前記セッター用シートに形成された薄膜状の補助材の上面に印刷により形成される部材である薄板焼結体の製造方法。
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CN104001373A (zh) * | 2014-05-30 | 2014-08-27 | 成都易态科技有限公司 | 制备板状烧结体的专用烧结装置及方法 |
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