JP2004290875A - 液体プロセッサーによる液体処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体プロセッサー用デバイスにおいて、目標処理時間の長さに応じて液体処理用流通経路を設定することができ、得られる液体プロセッサーによって所期の処理を確実に実行することのできる液体処理方法を提供すること。
【解決手段】液体プロセッサー用デバイスは、板状の基材に微小流路網が形成されてなり、微小流路網は、少なくとも1本の第1の微小流路と、これに交差する2本以上の第2の微小流路とを有し、微小流路の交差点の各々から伸びる流路部分にバルブが設けられると共にバルブ制御機構を備えてなり、選択された流路部分以外の流路部分のバルブが閉止されることにより液体流通経路が設定され、液体プロセッサーが構成される。液体処理用流通経路は、目標処理時間に応じて設定されるが、仮設流通経路に被処理液体が流通されることにより流過時間が求められ、これにより修正された液体処理用流通経路が設定される。
【選択図】 図4
【解決手段】液体プロセッサー用デバイスは、板状の基材に微小流路網が形成されてなり、微小流路網は、少なくとも1本の第1の微小流路と、これに交差する2本以上の第2の微小流路とを有し、微小流路の交差点の各々から伸びる流路部分にバルブが設けられると共にバルブ制御機構を備えてなり、選択された流路部分以外の流路部分のバルブが閉止されることにより液体流通経路が設定され、液体プロセッサーが構成される。液体処理用流通経路は、目標処理時間に応じて設定されるが、仮設流通経路に被処理液体が流通されることにより流過時間が求められ、これにより修正された液体処理用流通経路が設定される。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体プロセッサーによる液体処理方法に関し、詳しくは、液体流通経路を選択的に設定することのできる微小流路網を有する液体プロセッサー用デバイスを用い、当該液体プロセッサー用デバイスにおいて、処理を行うための液体処理用流通経路を設定して液体プロセッサーを構成し、この液体プロセッサーにより、微少量の被処理液体について目的とする処理を行う液体プロセッサーによる液体処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近においては、微量の液体試薬を反応させるマイクロリアクターが注目されており、それは、所期の反応の実行に要する液体試薬が微量でよいなどの微小サイズによる利点のみでなく、反応に要する時間がきわめて短時間でよいために、例えば、迅速性が求められる医療の分野における生体の検査などにおいて、きわめて便利だからである。
【0003】
しかしながら、実際に実行されるべき微量反応のタイプは、その目的によってきわめて多様である。例えば、最も単純なものは2種の反応用液体を単に接触させる反応であるが、複数の接触反応を順次に行うことや重層的に行うことが要請される場合もある。
【0004】
従来、微量反応を実行するためのマイクロリアクターとしては、例えば、板状の基材にマイクロチャンネルとも称される微小流路を形成したものが提案されている。
然るに、従来のマイクロリアクターは、特定のタイプの微量反応を行うためのものとして構成されており、従って、当然のことながら、異なるタイプの微量反応には用いることができない。
【0005】
このように、従来のマイクロリアクターは、いわば専用型のものとして提供されているため、多くのタイプの微量反応を実行することが要請される場合には、必要とされる微量反応のタイプに応じて、多種のマイクロリアクターを予め用意しておくことが必要とされるが、これは、不可避的に多くの無駄が伴うこととなる。
【0006】
以上のような事情から、液体流通経路を選択的に設定することのできる微小流路網が形成されてなる液体プロセッサー用デバイスが提案されている(例えば、「特願2002−154124号」明細書参照。)。
【0007】
この液体プロセッサー用デバイスは、板状の基材に、液体が流通する微小流路による微小流路網が形成されてなり、当該微小流路網は、例えば、各々横方向に平行に伸びる複数の第1の微小流路と、この第1の微小流路と交差する、各々縦方向に平行に伸びる複数の第2の微小流路とを有し、当該微小流路網における微小流路の交差点の各々から伸びる複数の流路部分の各々に、当該流路部分を閉止するバルブが設けられると共に、当該バルブの各々をその閉止状態と開放状態との間で制御するバルブ制御機構を備えてなるものである。
【0008】
このような液体プロセッサー用デバイスによれば、選択された流路部分以外の流路部分に係るバルブが閉止状態とされることにより、少なくとも1つの液体入口とこの液体入口に通ずる液体出口とを有する液体流通経路を設定することができ、これにより、種々の長さの流通経路を有する液体プロセッサーを構成することができる。
【0009】
そして、この液体プロセッサーによれば、被処理液体を、例えばマイクロポンプを利用して液体入口から流入させて設定された流通経路によって流通させることにより、流通の過程において適宜の処理が施された液体を液体出口から排出させることができ、従って、微量の被処理液体に対して所期の処理が施された結果物としての液体を得ることができる。例えば、2種の反応用液体を2つの液体入口から流入させて混合した状態で流通経路を流通させることにより反応させ、反応結果物である液体を液体出口から得ることができる。
【0010】
しかしながら、実際の液体プロセッサーにおいては、設定された流通経路が固定されたものであるにもかかわらず、流入液体が当該流通経路を流過するために要する流過時間を、厳密にあるいは精確に制御することは相当に困難である。
【0011】
その理由の一つとして、現実に製造される個々の液体プロセッサー用デバイスに固有の誤差があることが挙げられる。すなわち、上記のような液体プロセッサー用デバイスは、例えば光硬化性液体を材料として用いるいわゆる光造形加工法によって好適に製造することができるが、実際に得られる液体プロセッサー用デバイスは、制御された条件下で製造されたものであっても、個々に見ると、液体流路に固有の微小な寸法精度や形状精度の誤差や変動が不可避的に存在するものとなっている。そして、そのような液体流路の誤差や変動によって流通経路の体積(流通経路を形成する空間の体積)に差が生じた状態となっていることから、流通される液体が微少量であるために、流過時間に相当に大きな誤差が生ずることとなる。
【0012】
また、上記のような液体プロセッサーにおいて、液体を液体流路に送入するために例えばマイクロポンプが使用されるが、実際の個々のマイクロポンプにおいては性能上の差異があるため、実際には厳密に精確な流量、すなわち送入速度で液体を送入することができない。例えば、1秒間当たり0.15mL(ミリリットル)の送入性能を有するものとされているマイクロポンプであっても、個々には、例えば±0.01mL程度以上の誤差が存在することも稀ではない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、実際の液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体について目的とする処理がなされるべき目標処理時間の長さに応じて液体処理用流通経路を設定することができ、ここに得られる液体プロセッサーによって被処理液体に対する所期の処理を確実に実行することのできる、液体プロセッサーによる液体処理方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、実際の液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体について目的とする処理がなされるべき目標処理時間の長さに応じて、実際の流過時間がそのような長さとなる液体処理用流通経路を設定することができ、従って、ここに得られる液体プロセッサーにより、被処理液体に対して目的とする処理を厳密に精確に実行することのできる、液体プロセッサーによる液体処理方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の液体プロセッサーによる液体処理方法は、板状の基材に、液体が流通する微小流路による微小流路網が形成されてなり、当該微小流路網は、少なくとも1本の第1の微小流路と、この第1の微小流路に交差する少なくとも2本以上の第2の微小流路とを有し、当該微小流路網における微小流路の交差点の各々から伸びる複数の流路部分の各々には当該流路部分を閉止するバルブが設けられると共に、当該バルブの各々をその閉止状態と開放状態との間で制御するバルブ制御機構を備えてなる液体プロセッサー用デバイスを用い、
当該液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体の目的とする処理に適した目標処理時間の長さに応じて、選択された流路部分以外の流路部分に係るバルブが閉止状態とされることにより、少なくとも1つの液体入口とこの液体入口に通ずる液体出口とを有する液体処理用流通経路を設定することにより、液体プロセッサーを構成し、
この液体プロセッサーの液体処理用流通経路に被処理液体を流通させることにより、当該被処理液体について目的とする処理を実行することを特徴とする。
【0016】
本発明の液体プロセッサーによる液体処理方法は、板状の基材に、液体が流通する微小流路による微小流路網が形成されてなり、当該微小流路網は、少なくとも1本の第1の微小流路と、この第1の微小流路に交差する少なくとも2本以上の第2の微小流路とを有し、当該微小流路網における微小流路の交差点の各々から伸びる複数の流路部分の各々には当該流路部分を閉止するバルブが設けられると共に、当該バルブの各々をその閉止状態と開放状態との間で制御するバルブ制御機構を備えてなる液体プロセッサー用デバイスを用い、
当該液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体の目的とする処理に適した目標処理時間の長さに応じて、選択された流路部分以外の流路部分に係るバルブが閉止状態とされることにより、少なくとも1つの液体入口とこの液体入口に通ずる液体出口とを有する仮設流通経路を設定して前駆的液体プロセッサーを構成し、
この前駆的液体プロセッサーの仮設流通経路に被処理液体を流通させて当該被処理液体が当該仮設流通経路を流過するに要する流過時間を求め、この流過時間と前記目標処理時間とを比較して当該流過時間と目標処理時間との差に応じて前記仮設流通経路の少なくとも一部を修正することにより、液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーを構成し、
この液体プロセッサーの液体処理用流通経路に被処理液体を流通させることにより、当該被処理液体について目的とする処理を実行することを特徴とする。
【0017】
以上においては、被処理液体の流過時間を、仮設流通経路の液体出口からの液体流出速度と当該仮設流通経路の体積とによって求めることができる。
【0018】
被処理液体についての目的とする処理は、混合処理、反応処理、熱的処理または輻射線照射処理とすることができる。
【0019】
以上における液体プロセッサー用デバイスにおいて、微小流路網は、各々一方向に平行に伸びる複数の第1の微小流路と、各々前記一方向と交差する他方向に平行に伸びる複数の第2の微小流路とにより形成されているものとすることができる。
【0020】
また、第1の微小流路と第2の微小流路との交差点に、当該交差点に係る流路部分より径の大きい空間による、流路部分よりの液体が一時的に滞留して保持される液体滞留部が形成されている構成とすることが好ましい。
【0021】
【作用】
本発明の液体プロセッサーによる液体処理方法によれば、液体流通経路を選択的に設定することのできる微小流路網を有する液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体について目的とする処理がなされるべき目標処理時間の長さに応じて液体処理用流通経路を設定することにより液体プロセッサーを構成し、この液体プロセッサーによって被処理液体に対する処理が実行されるので、被処理液体は、その流過時間が厳密に精確に制御された状態で流通されることとなり、その結果、当該被処理液体の実際の処理時間を目標処理時間に実質的に一致させることができ、従って、微少量の被処理液体に対して所期の処理を確実に実行することができる。
【0022】
また、液体プロセッサー用デバイスにおいて、目標処理時間の長さに応じて仮設流通経路が設定された前駆的液体プロセッサーを構成し、当該仮設流通経路による被処理液体の流過時間を求め、この流過時間と前記目標処理時間とを比較して、例えば当該仮設流通経路の少なくとも一部が修正され、これにより液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーを構成するので、この液体プロセッサーを用いることにより、被処理液体の実際の処理時間が目標処理時間に実質的に一致された状態が実現され、従って、微少量の被処理液体に対して所期の処理を確実に実行することができる。
【0023】
以上において、被処理液体の流過時間を、仮設流通経路の液体出口からの液体流出速度と仮設流通経路の体積によって求めることにより、当該液体プロセッサー用デバイスにおいて、流過時間の長さが目標処理時間に厳密に精確に一致する状態の液体処理用流通経路を設定することができる。
【0024】
被処理液体の目的とする処理は、複数の種類の液体の反応処理、熱的処理または輻射線照射処理とすることができ、これにより、被処理液体に対して所期の処理を目標処理時間に応じた長さで実行することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
図1は、本発明において、液体プロセッサーの構成に用いられる液体プロセッサー用デバイス(以下、単に「デバイス」ともいう。)10の基本的な構成の一例を模式的に示す説明用斜視図である。
【0026】
このデバイス10は、全体が正方形の板状の基材12に微小流路網が形成されてなるものであり、基材12の材質としては、例えばガラス、樹脂または金属などから選ばれる被処理液体、すなわち処理されるべき液体に対して悪影響を与えないものが用いられるが、製造が容易であることから、特に樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
図1の例において、基材12には、各々が当該基材12の肉厚部内を断面円形のトンネル状に面方向に伸びるよう、複数の微小流路(実線で描かれている。)が互いに交差する状態に形成されており、これにより微小流路網が構成されている。
具体的には、各々基材12の横方向に伸びて両端が左右両側縁に開口する複数(図の例では4本)の横方向微小流路LHが、基材12に係る正方形を上下方向に均等に分割するライン(図の例では5等分するライン)に沿って、互いに上下方向に離間して形成されていると共に、各々基材12の縦方向に伸びて両端が上下両端縁において開口する複数(図の例では4本)の縦方向微小流路LVが、基材12に係る正方形を左右方向に均等に分割するライン(図の例では5等分するライン)に沿って、互いに左右方向に離間して形成されている。
【0028】
従って、横方向微小流路LHと縦方向微小流路LVとは互いに交差しており、この例では合計16個の交差点Xが形成されており、横方向微小流路LHおよび縦方向微小流路LVの各々は、当該微小流路上における4つの交差点Xによって分割されることによって5つの流路部分LPが形成されている。そして、1つの横方向微小流路LHまたは縦方向微小流路LVにおいて、4つの交差点Xによって分割して形成されている5つの流路部分LPは、いずれも等しい長さのものとされている。
【0029】
基材12において、横方向微小流路LHと縦方向微小流路LVとの交差点Xの各々には、微小流路の径より大きい空間部が形成されることにより、液体滞留部Sが設けられており、また、流路部分LPの各々には、当該流路部分を開閉するバルブVが設けられている。
【0030】
図2は、1つの液体滞留部Sと、当該液体滞留部Sに関連する4つの流路部分LPおよび各流路部分LPにおけるバルブVの関係をイメージとして示す説明用斜視図、図3は、1つの流路部分LPにおけるバルブVと、当該流路部分LPの両端における液体滞留部Sを示す説明用断面図である。
【0031】
これらの図に示されているように、液体滞留部Sは、基材12の厚さ方向に伸びる円柱状の空間によって形成されており、各々断面円形の孔による流路部分LPの4つが、この液体滞留部Sの軸方向における中央のレベルにおいて、周方向に90度の角度位置で液体滞留部Sの周壁に開口して連通されている。
【0032】
バルブVは、基材12の肉厚部中に形成された流路部分LPの途中に介在する状態で形成された、当該流路部分LPより大きな内径を有する球状空間によるバルブ室20と、このバルブ室20内に配置された、バルブの弁体となるバルブ粒子を構成するバルブボール28とにより構成されている。
【0033】
バルブ室20には、1つの流路部分LPを形成する2本の細孔22および24が開口しており、一方の細孔22は、基材12の表面に沿って伸びる主部分22Aと、この主部分22Aに連続する「コ」字状の屈曲部分22Bとを有してなり、屈曲部分22Bは、バルブ室20の上部において円形の開口23を介して当該バルブ室20に連通している。この開口23は、その周縁がバルブの弁座となるものである。また、他方の細孔24は、基材12の表面に沿って伸び、バルブ室20の側部に開口25において連通している。そして、当該バルブ室20と、これに開口することにより互いに連通された状態である一方の細孔22および他方の細孔24とにより、流路部分LPが形成されている。
【0034】
以上において、2本の細孔22および24の径は同一とされており、バルブボール28は、それら細孔22および24の径よりも大きい外径を有するものとされている。このバルブボール28は、磁場感応性物質、例えば鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性体よりなるものとされており、当該バルブボール28を基材12の厚さ方向(図の上下方向)に移動させるための可磁性化膜(図示せず)が基材12の表面に設けられている。
【0035】
この可磁性化膜は、いずれかのバルブ室20に対向する部分を磁化させると、当該部分に生ずる磁場の作用により、当該バルブ室20内のバルブボール28を吸引して一方の細孔22に係る開口23の周縁に押圧させ、これにより、当該開口23を塞いで当該一方の細孔22と球状空間20との連通を遮断し、もって当該流路部分LPを液体の流通が禁止された状態とするものである。
このように、可磁性化膜は、当該バルブに対するバルブ制御機構としての作用を有するものであり、このバルブ制御機構が駆動されることにより、開放状態にあったバルブが閉止状態とされる。そして、一旦、閉止状態とされたバルブは、当該部分が消磁されるまでの間は、そのまま閉止状態を維持することができるものとされている。
【0036】
可磁性化膜としては、現在公知のもの、例えば、磁気カードの処理に利用されているカードライターや、パソコンのハードデイスクドライブの記憶方式によるものを用いることができる。
【0037】
以上のようなデバイスは、種々の方法によって製造することができるが、具体的には、いわゆる光造形加工法を利用することが好ましい。
実際のデバイスにおいて、基材の一例における形状は、例えば縦50mm、横50mm、厚さ3mmであり、微小流路の径は、10μm〜3mm、一の微小流路における流量は、例えば0.0001〜5mL/秒である。これらの数値は例であって、限定されるものではない。
【0038】
このようなデバイス10においては、合計40個の流路部分LPから順次に連続する適宜のものを選択し、ここに選択されたもの以外の流路部分LPにおけるバルブVを閉止状態とすることにより、当該選択された流路部分LPにより、各々基材12の周縁に開口する液体入口および液体出口を有する連続した流通経路を設定することができ、これにより、液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーが構成される。なお、選択された流路部分LPによって確定された液体処理用流通経路が形成されればよいので、選択されたもの以外の流路部分LPにおける全部のバルブVを閉止状態とすることが不要な場合もある。
【0039】
このような液体プロセッサーにおいては、液体入口からマイクロポンプによって被処理液体を送入すると、当該被処理液体は、設定された液体処理用流通経路を形成している、バルブVのバルブ室20および液体滞留部Sを含む流路部分LPをを流通して液体出口から排出されるので、この流通の間に、被処理液体に適宜の処理を施すことが可能である。
【0040】
被処理液体に対する処理としては、例えば、2種またはそれ以上の被処理液体を混合する混合処理、2種またはそれ以上の被処理液体を化学的または生物学的に反応させる反応処理、被処理液体を加熱または冷却する熱的処理、外部から光などの輻射線を照射する輻射線照射処理などを挙げることができるが、複数の処理が複合的に実行される場合もある。例えば、混合処理や反応処理が、熱的処理または輻射線照射処理などを伴って行われる場合がある。
【0041】
液体プロセッサーにおいては、実際に行われる処理に応じていくつかの条件が必要となる場合があり、例えば、混合処理や反応処理を行う場合に、液体処理用流通経路は、複数の被処理液体を送入するために2またはそれ以上の液体入口を有するものとされる場合がある。また、熱的処理や輻射線照射処理などが行われる場合には、そのような処理のための機構が設けられることが必要であり、デバイスにおいても、そのような処理に適した条件が要求される。例えば、輻射線照射処理を行う場合には、当該デバイスは、基材が当該輻射線に透明な材質によって形成されていることが必要である。
【0042】
而して、本発明においては、上記のような液体プロセッサーを構成する場合において、被処理液体について目的とする処理が行われるために適した長さあるいは規定された長さの目標処理時間がある場合に、すなわち目標処理時間Tだけ処理が実行されるべき場合に、流過時間が、この目標処理時間の長さに応じた長さとなるよう、液体処理用流通経路を設定する。
【0043】
具体的には、被処理液体の流通速度と液体処理用流通経路の長さとによって定まる被処理液体の流過時間(すなわち、送入された被処理液体が、処理開始点から液体出口に到達するまでに要する時間)T1を求め、この流過時間T1が目標処理時間Tと一致するよう、あるいは流過時間T1と目標処理時間Tとの差が最も小さくなって実質的に一致するよう、デバイス10において液体処理用流通経路が設定される。
【0044】
このようにして液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーにおいて、その液体処理用流通経路に係る液体入口から被処理液体を例えばマイクロポンプで送入すると、送入された被処理液体は液体処理用流通経路を流通して液体出口から排出されるが、このときに被処理液体が実際に処理を受ける時間は、当該被処理液体の流過時間T1であり、この流過時間T1が目標処理時間Tに一致し、あるいは実質的に一致しているので、液体出口から排出された被処理液体は、流通している間に処理が施された時間が目標処理時間Tに一致し、あるいは実質的に一致したものとなり、結局、微少量の被処理液体について、所期の処理が確実に施された結果を得ることができる。
【0045】
図4は、本発明の液体プロセッサーによる液体処理方法を具体的に説明するための液体プロセッサー50の構成を模式的に示す説明用斜視図である。この液体プロセッサー50に係るデバイスは、横方向微小流路LHおよび縦方向微小流路LVがいずれも6本形成されているが、その他の構成は図1に示されているデバイス10と同様である。
【0046】
図4の液体プロセッサー50において、横方向微小流路LHと縦方向微小流路LVとの合計36個の交差点の各々について、上からm番目の横方向微小流路LHと、左からn番目の縦方向微小流路LVとの交差点を、文字Xに続けてmおよびnの数字を連記することにより特定することとする。
例えば、上から1番目の横方向微小流路LHと左から6番目の縦方向微小流路LVとの交差点は「交差点X16」のように記載される。
【0047】
図4の液体プロセッサー50においては、太線による流路部分および黒塗りされたバルブVおよび液体滞留部Sで示されているように、交差点X62から交差点X66、交差点X66から交差点X16、交差点X16から交差点X11、および交差点X11から交差点X21に至るラインに存在するすべての流路部分と、交差点X62、交差点X63および交差点X21に基材の周縁から直接通ずる流路部分とのすべてにおけるもののバルブVを開放状態とし、それら以外のバルブVを閉止状態とすることにより、液体処理用流通経路が設定されている。
【0048】
そして、交差点X62および交差点X63に直接通ずる流路部分の基材の周縁における開口が、それぞれ、被処理液体の液体入口E1およびE2とされると共に、交差点X21に直接通ずる流路部分の基材の周縁における開口が液体出口EXとされている。
【0049】
この液体プロセッサーは、2つの液体入口からそれぞれ第1の被処理液体および第2の被処理液体を送入することにより、両被処理液体を混合して反応させるためのものであって、処理開始点は、両方の被処理液体の混合が行われる交差点X63に係る液体滞留部であり、この交差点X63から液体出口EXまでの間が、実際に処理が行われる有効流通路となる。ここに、この有効流通路は、流路部分LPを構成する細孔22の入口からバルブVを介して連続する液体滞留部Sの出口までの流路を「単位流路」とすると、合計15個の単位流路によって形成されていることとなる。
【0050】
図5に、この液体プロセッサーのデバイス50における各部の寸法が示されている。すなわち、円柱状の液体滞留部Sの直径aが2mm、高さbが3mm、バルブVのバルブ室20の直径cが2mm、バルブボール28の直径dが0.5mm、流路部分LPを構成する細孔22,24の内径eが0.4mm、隣接する液体滞留部Sから伸びて当該液体滞留部Sに至る細孔22における主部分22Aの長さfが1mm、主部分22Aに続く屈曲部分22Bの厚さ方向に伸びる第1部分の長さgが1.6mm、面方向に伸びる第2部分の長さhが1mm、開口23に至る厚さ方向に伸びる第3部分の長さiが0.6mm(細孔22の中心軸線の長さが合計3mm)、細孔24の長さjが1mmのものとされている。
これらの数値から、この液体プロセッサーにおける、一の液体滞留部Sの入口から隣接する液体滞留部Sの入口までの単位流路の体積の大きさは0.0142mLと計算され、15個の単位流路よりなる有効流通路の体積は0.213mLとなる。
【0051】
この液体プロセッサー50を用いて、目標処理時間Tが1.42秒間である反応用の第1の被処理液体aと第2の被処理液体bとをそれぞれ液体入口E1およびE2から、送入速度が0.15mL/秒の性能を有するものとされているマイクロポンプで連続的に送入した。
【0052】
そして、実際に液体出口EXから排出される被処理液体の排出量(排出速度)を測定したところ、その値は0.15mL/秒であった。
このことは、被処理液体の有効流通路における実際の流過時間T1が1.42秒間であることを意味し(0.213mL÷0.15mL/秒=1.42秒)、結局、この液体プロセッサー50によれば、目標処理時間Tと一致または実質的に一致した処理時間の処理を実行することができる。
【0053】
しかし、上記の液体プロセッサー50と同一の基本的構成を有する他の液体プロセッサーに他のマイクロポンプを用いたものでは、実際に液体出口EXから排出される被処理液体の排出量(排出速度)を測定すると0.16mL/秒であった。
このことは、当該液体プロセッサーにおける有効流通路における実際の流過時間T1が1.33秒間であることを意味し(0.213mL÷0.16mL/秒=1.33秒)、目標処理時間Tの1.42秒との間に0.09秒の差があることとなる。この理由は、マイクロポンプの性能および液体プロセッサー50における設計値からの誤差が含まれているためである。
【0054】
そこで、図6に示すように、交差点X21に基材の周縁から直接通ずる流路部分におけるバルブVを閉止状態とし、交差点X21から交差点X31に至る流路部分と、当該交差点X31に基材の周縁から直接通ずる流路部分とにおけるバルブVを開放状態とすることにより、修正された液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーを得、これを用いて、上記と同様にして第1の被処理液体aおよび第2の被処理液体bを送入したところ、被処理液体の排出速度は同じ0.16mL/秒であった。
【0055】
この修正後の液体処理用流通経路による液体プロセッサーにおいては、有効流通路の体積は0.228mLであることから、流過時間T1は1.42秒であると計算される。
従って、このような修正された液体プロセッサーによれば、流過時間T1が目標処理時間Tに実質的に一致したものとなっているので、目的とする処理が確実に所期の処理時間で実行されることが理解される。
【0056】
以上において、液体処理用流通経路が修正される前のものが前駆的液体プロセッサー、その修正前の液体処理用流通経路が仮設流通経路としての意義を有し、この前駆的液体プロセッサーの仮設流通経路に被処理液体が流通されて当該被処理液体が当該仮設流通経路を流過するに要する流過時間T1を、実際の流出速度から求め、この流過時間T1と目標処理時間Tとが比較されて、両者の差に応じて仮設流通経路の一部が修正され、これにより、目的とする処理が実行される液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーを構成することができる。
従って、このような手順によって液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーによれば、被処理液体が微少量であっても、精確な処理時間で、目的とする処理を実行することができる。
【0057】
本発明において用いられる液体プロセッサー用デバイスにおいて、微小流路網を構成する微小流路の数および各々の方向は限定されるものではないが、通常、直線状であって、各々一方向に平行に伸びる複数の第1の微小流路と、各々前記一方向と交差する他方向に平行に伸びる複数の第2の微小流路とにより形成されていることが好ましく、第1の微小流路と第2の微小流路とが直角に交差すること、すなわち、微小流路網が縦横に伸びる格子状に形成されていることが好ましい。
【0058】
横方向微小流路および縦方向微小流路の数は自由に選定することができ、横方向微小流路の数と、縦方向微小流路の数とが同一であることも必須ではない。また、第1の微小流路と第2の微小流路との交差角度が90度でなく、鋭角または鈍角であってもよい。
【0059】
また、バルブにおいて、その構成は、作動状態において、または非作動状態において、上記の微小流路における液体の流通を阻止する機能を有するものであればよく、その具体的な構成が限定されるものではない。例えば、電荷を有するバルブボールと、これを電場の作用によって移動させるバルブ制御機構を利用することもできる。
【0060】
【発明の効果】
本発明の液体プロセッサーによる液体処理方法によれば、液体流通経路を選択的に設定することのできる微小流路網を有する液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体について目的とする処理がなされるべき目標処理時間の長さに応じて液体処理用流通経路を設定することにより液体プロセッサーを構成し、この液体プロセッサーによって被処理液体に対する処理が実行されるので、被処理液体は、その流過時間が厳密に精確に制御された状態で流通されることとなり、その結果、当該被処理液体の実際の処理時間を目標処理時間に実質的に一致させることができ、従って、微少量の被処理液体に対して所期の処理を確実に実行することができる。
【0061】
また、液体プロセッサー用デバイスにおいて、目標処理時間の長さに応じて仮設流通経路が設定された前駆的液体プロセッサーを構成し、当該仮設流通経路による被処理液体の流過時間を求め、この流過時間と前記目標処理時間とを比較して、例えば当該仮設流通経路の少なくとも一部が修正され、これにより液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーを構成するので、この液体プロセッサーを用いることにより、被処理液体の実際の処理時間が目標処理時間に実質的に一致された状態が実現され、従って、微少量の被処理液体に対して所期の処理を確実に実行することができる。
【0062】
そして、仮設流通経路における被処理液体の流過時間を、当該仮設流通経路の液体出口からの液体流出割合によって測定することにより、現に使用されている液体プロセッサー用デバイスにおいて、流過時間の長さが目標処理時間に厳密に精確に一致する状態の液体処理用流通経路を設定することができる。
【0063】
本発明によれば、複数の種類の液体の反応処理、熱的処理または輻射線照射処理とすることができ、これにより、被処理液体に対して所期の処理を目標処理時間に応じた長さで実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において、液体プロセッサーの構成に用いられる液体プロセッサー用デバイスの基本的な構成の一例を模式的に示す説明用斜視図である。
【図2】1つの液体滞留部と、当該液体滞留部に関連する4つの流路部分および各流路部分におけるバルブの関係をイメージとして示す説明用斜視図である。
【図3】1つの流路部分におけるバルブと、当該流路部分の両端における液体滞留部を示す説明用断面図である。
【図4】本発明の液体プロセッサーによる液体処理方法を具体的に説明するための液体プロセッサーの構成を模式的に示す説明用斜視図である。
【図5】図4に示した液体プロセッサーのデバイスの各部における寸法を示す説明図である。
【図6】図3の液体プロセッサーが前駆的液体プロセッサーとされた場合において、その仮設流通経路が修正されて液体処理用流通経路が設定された状態の液体プロセッサーを示す説明用斜視図である。
【符号の説明】
10 液体プロセッサー用デバイス
12 基材
LH 横方向微小流路
LV 縦方向微小流路
X 交差点
LP 流路部分
S 液体滞留部
V バルブ
20 バルブ室
28 バルブボール
22,24 細孔
22A 主部分
22B 屈曲部分
23,25 開口
50 液体プロセッサー
E1,E2 液体入口
EX 液体出口
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体プロセッサーによる液体処理方法に関し、詳しくは、液体流通経路を選択的に設定することのできる微小流路網を有する液体プロセッサー用デバイスを用い、当該液体プロセッサー用デバイスにおいて、処理を行うための液体処理用流通経路を設定して液体プロセッサーを構成し、この液体プロセッサーにより、微少量の被処理液体について目的とする処理を行う液体プロセッサーによる液体処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近においては、微量の液体試薬を反応させるマイクロリアクターが注目されており、それは、所期の反応の実行に要する液体試薬が微量でよいなどの微小サイズによる利点のみでなく、反応に要する時間がきわめて短時間でよいために、例えば、迅速性が求められる医療の分野における生体の検査などにおいて、きわめて便利だからである。
【0003】
しかしながら、実際に実行されるべき微量反応のタイプは、その目的によってきわめて多様である。例えば、最も単純なものは2種の反応用液体を単に接触させる反応であるが、複数の接触反応を順次に行うことや重層的に行うことが要請される場合もある。
【0004】
従来、微量反応を実行するためのマイクロリアクターとしては、例えば、板状の基材にマイクロチャンネルとも称される微小流路を形成したものが提案されている。
然るに、従来のマイクロリアクターは、特定のタイプの微量反応を行うためのものとして構成されており、従って、当然のことながら、異なるタイプの微量反応には用いることができない。
【0005】
このように、従来のマイクロリアクターは、いわば専用型のものとして提供されているため、多くのタイプの微量反応を実行することが要請される場合には、必要とされる微量反応のタイプに応じて、多種のマイクロリアクターを予め用意しておくことが必要とされるが、これは、不可避的に多くの無駄が伴うこととなる。
【0006】
以上のような事情から、液体流通経路を選択的に設定することのできる微小流路網が形成されてなる液体プロセッサー用デバイスが提案されている(例えば、「特願2002−154124号」明細書参照。)。
【0007】
この液体プロセッサー用デバイスは、板状の基材に、液体が流通する微小流路による微小流路網が形成されてなり、当該微小流路網は、例えば、各々横方向に平行に伸びる複数の第1の微小流路と、この第1の微小流路と交差する、各々縦方向に平行に伸びる複数の第2の微小流路とを有し、当該微小流路網における微小流路の交差点の各々から伸びる複数の流路部分の各々に、当該流路部分を閉止するバルブが設けられると共に、当該バルブの各々をその閉止状態と開放状態との間で制御するバルブ制御機構を備えてなるものである。
【0008】
このような液体プロセッサー用デバイスによれば、選択された流路部分以外の流路部分に係るバルブが閉止状態とされることにより、少なくとも1つの液体入口とこの液体入口に通ずる液体出口とを有する液体流通経路を設定することができ、これにより、種々の長さの流通経路を有する液体プロセッサーを構成することができる。
【0009】
そして、この液体プロセッサーによれば、被処理液体を、例えばマイクロポンプを利用して液体入口から流入させて設定された流通経路によって流通させることにより、流通の過程において適宜の処理が施された液体を液体出口から排出させることができ、従って、微量の被処理液体に対して所期の処理が施された結果物としての液体を得ることができる。例えば、2種の反応用液体を2つの液体入口から流入させて混合した状態で流通経路を流通させることにより反応させ、反応結果物である液体を液体出口から得ることができる。
【0010】
しかしながら、実際の液体プロセッサーにおいては、設定された流通経路が固定されたものであるにもかかわらず、流入液体が当該流通経路を流過するために要する流過時間を、厳密にあるいは精確に制御することは相当に困難である。
【0011】
その理由の一つとして、現実に製造される個々の液体プロセッサー用デバイスに固有の誤差があることが挙げられる。すなわち、上記のような液体プロセッサー用デバイスは、例えば光硬化性液体を材料として用いるいわゆる光造形加工法によって好適に製造することができるが、実際に得られる液体プロセッサー用デバイスは、制御された条件下で製造されたものであっても、個々に見ると、液体流路に固有の微小な寸法精度や形状精度の誤差や変動が不可避的に存在するものとなっている。そして、そのような液体流路の誤差や変動によって流通経路の体積(流通経路を形成する空間の体積)に差が生じた状態となっていることから、流通される液体が微少量であるために、流過時間に相当に大きな誤差が生ずることとなる。
【0012】
また、上記のような液体プロセッサーにおいて、液体を液体流路に送入するために例えばマイクロポンプが使用されるが、実際の個々のマイクロポンプにおいては性能上の差異があるため、実際には厳密に精確な流量、すなわち送入速度で液体を送入することができない。例えば、1秒間当たり0.15mL(ミリリットル)の送入性能を有するものとされているマイクロポンプであっても、個々には、例えば±0.01mL程度以上の誤差が存在することも稀ではない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、実際の液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体について目的とする処理がなされるべき目標処理時間の長さに応じて液体処理用流通経路を設定することができ、ここに得られる液体プロセッサーによって被処理液体に対する所期の処理を確実に実行することのできる、液体プロセッサーによる液体処理方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、実際の液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体について目的とする処理がなされるべき目標処理時間の長さに応じて、実際の流過時間がそのような長さとなる液体処理用流通経路を設定することができ、従って、ここに得られる液体プロセッサーにより、被処理液体に対して目的とする処理を厳密に精確に実行することのできる、液体プロセッサーによる液体処理方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の液体プロセッサーによる液体処理方法は、板状の基材に、液体が流通する微小流路による微小流路網が形成されてなり、当該微小流路網は、少なくとも1本の第1の微小流路と、この第1の微小流路に交差する少なくとも2本以上の第2の微小流路とを有し、当該微小流路網における微小流路の交差点の各々から伸びる複数の流路部分の各々には当該流路部分を閉止するバルブが設けられると共に、当該バルブの各々をその閉止状態と開放状態との間で制御するバルブ制御機構を備えてなる液体プロセッサー用デバイスを用い、
当該液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体の目的とする処理に適した目標処理時間の長さに応じて、選択された流路部分以外の流路部分に係るバルブが閉止状態とされることにより、少なくとも1つの液体入口とこの液体入口に通ずる液体出口とを有する液体処理用流通経路を設定することにより、液体プロセッサーを構成し、
この液体プロセッサーの液体処理用流通経路に被処理液体を流通させることにより、当該被処理液体について目的とする処理を実行することを特徴とする。
【0016】
本発明の液体プロセッサーによる液体処理方法は、板状の基材に、液体が流通する微小流路による微小流路網が形成されてなり、当該微小流路網は、少なくとも1本の第1の微小流路と、この第1の微小流路に交差する少なくとも2本以上の第2の微小流路とを有し、当該微小流路網における微小流路の交差点の各々から伸びる複数の流路部分の各々には当該流路部分を閉止するバルブが設けられると共に、当該バルブの各々をその閉止状態と開放状態との間で制御するバルブ制御機構を備えてなる液体プロセッサー用デバイスを用い、
当該液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体の目的とする処理に適した目標処理時間の長さに応じて、選択された流路部分以外の流路部分に係るバルブが閉止状態とされることにより、少なくとも1つの液体入口とこの液体入口に通ずる液体出口とを有する仮設流通経路を設定して前駆的液体プロセッサーを構成し、
この前駆的液体プロセッサーの仮設流通経路に被処理液体を流通させて当該被処理液体が当該仮設流通経路を流過するに要する流過時間を求め、この流過時間と前記目標処理時間とを比較して当該流過時間と目標処理時間との差に応じて前記仮設流通経路の少なくとも一部を修正することにより、液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーを構成し、
この液体プロセッサーの液体処理用流通経路に被処理液体を流通させることにより、当該被処理液体について目的とする処理を実行することを特徴とする。
【0017】
以上においては、被処理液体の流過時間を、仮設流通経路の液体出口からの液体流出速度と当該仮設流通経路の体積とによって求めることができる。
【0018】
被処理液体についての目的とする処理は、混合処理、反応処理、熱的処理または輻射線照射処理とすることができる。
【0019】
以上における液体プロセッサー用デバイスにおいて、微小流路網は、各々一方向に平行に伸びる複数の第1の微小流路と、各々前記一方向と交差する他方向に平行に伸びる複数の第2の微小流路とにより形成されているものとすることができる。
【0020】
また、第1の微小流路と第2の微小流路との交差点に、当該交差点に係る流路部分より径の大きい空間による、流路部分よりの液体が一時的に滞留して保持される液体滞留部が形成されている構成とすることが好ましい。
【0021】
【作用】
本発明の液体プロセッサーによる液体処理方法によれば、液体流通経路を選択的に設定することのできる微小流路網を有する液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体について目的とする処理がなされるべき目標処理時間の長さに応じて液体処理用流通経路を設定することにより液体プロセッサーを構成し、この液体プロセッサーによって被処理液体に対する処理が実行されるので、被処理液体は、その流過時間が厳密に精確に制御された状態で流通されることとなり、その結果、当該被処理液体の実際の処理時間を目標処理時間に実質的に一致させることができ、従って、微少量の被処理液体に対して所期の処理を確実に実行することができる。
【0022】
また、液体プロセッサー用デバイスにおいて、目標処理時間の長さに応じて仮設流通経路が設定された前駆的液体プロセッサーを構成し、当該仮設流通経路による被処理液体の流過時間を求め、この流過時間と前記目標処理時間とを比較して、例えば当該仮設流通経路の少なくとも一部が修正され、これにより液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーを構成するので、この液体プロセッサーを用いることにより、被処理液体の実際の処理時間が目標処理時間に実質的に一致された状態が実現され、従って、微少量の被処理液体に対して所期の処理を確実に実行することができる。
【0023】
以上において、被処理液体の流過時間を、仮設流通経路の液体出口からの液体流出速度と仮設流通経路の体積によって求めることにより、当該液体プロセッサー用デバイスにおいて、流過時間の長さが目標処理時間に厳密に精確に一致する状態の液体処理用流通経路を設定することができる。
【0024】
被処理液体の目的とする処理は、複数の種類の液体の反応処理、熱的処理または輻射線照射処理とすることができ、これにより、被処理液体に対して所期の処理を目標処理時間に応じた長さで実行することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
図1は、本発明において、液体プロセッサーの構成に用いられる液体プロセッサー用デバイス(以下、単に「デバイス」ともいう。)10の基本的な構成の一例を模式的に示す説明用斜視図である。
【0026】
このデバイス10は、全体が正方形の板状の基材12に微小流路網が形成されてなるものであり、基材12の材質としては、例えばガラス、樹脂または金属などから選ばれる被処理液体、すなわち処理されるべき液体に対して悪影響を与えないものが用いられるが、製造が容易であることから、特に樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
図1の例において、基材12には、各々が当該基材12の肉厚部内を断面円形のトンネル状に面方向に伸びるよう、複数の微小流路(実線で描かれている。)が互いに交差する状態に形成されており、これにより微小流路網が構成されている。
具体的には、各々基材12の横方向に伸びて両端が左右両側縁に開口する複数(図の例では4本)の横方向微小流路LHが、基材12に係る正方形を上下方向に均等に分割するライン(図の例では5等分するライン)に沿って、互いに上下方向に離間して形成されていると共に、各々基材12の縦方向に伸びて両端が上下両端縁において開口する複数(図の例では4本)の縦方向微小流路LVが、基材12に係る正方形を左右方向に均等に分割するライン(図の例では5等分するライン)に沿って、互いに左右方向に離間して形成されている。
【0028】
従って、横方向微小流路LHと縦方向微小流路LVとは互いに交差しており、この例では合計16個の交差点Xが形成されており、横方向微小流路LHおよび縦方向微小流路LVの各々は、当該微小流路上における4つの交差点Xによって分割されることによって5つの流路部分LPが形成されている。そして、1つの横方向微小流路LHまたは縦方向微小流路LVにおいて、4つの交差点Xによって分割して形成されている5つの流路部分LPは、いずれも等しい長さのものとされている。
【0029】
基材12において、横方向微小流路LHと縦方向微小流路LVとの交差点Xの各々には、微小流路の径より大きい空間部が形成されることにより、液体滞留部Sが設けられており、また、流路部分LPの各々には、当該流路部分を開閉するバルブVが設けられている。
【0030】
図2は、1つの液体滞留部Sと、当該液体滞留部Sに関連する4つの流路部分LPおよび各流路部分LPにおけるバルブVの関係をイメージとして示す説明用斜視図、図3は、1つの流路部分LPにおけるバルブVと、当該流路部分LPの両端における液体滞留部Sを示す説明用断面図である。
【0031】
これらの図に示されているように、液体滞留部Sは、基材12の厚さ方向に伸びる円柱状の空間によって形成されており、各々断面円形の孔による流路部分LPの4つが、この液体滞留部Sの軸方向における中央のレベルにおいて、周方向に90度の角度位置で液体滞留部Sの周壁に開口して連通されている。
【0032】
バルブVは、基材12の肉厚部中に形成された流路部分LPの途中に介在する状態で形成された、当該流路部分LPより大きな内径を有する球状空間によるバルブ室20と、このバルブ室20内に配置された、バルブの弁体となるバルブ粒子を構成するバルブボール28とにより構成されている。
【0033】
バルブ室20には、1つの流路部分LPを形成する2本の細孔22および24が開口しており、一方の細孔22は、基材12の表面に沿って伸びる主部分22Aと、この主部分22Aに連続する「コ」字状の屈曲部分22Bとを有してなり、屈曲部分22Bは、バルブ室20の上部において円形の開口23を介して当該バルブ室20に連通している。この開口23は、その周縁がバルブの弁座となるものである。また、他方の細孔24は、基材12の表面に沿って伸び、バルブ室20の側部に開口25において連通している。そして、当該バルブ室20と、これに開口することにより互いに連通された状態である一方の細孔22および他方の細孔24とにより、流路部分LPが形成されている。
【0034】
以上において、2本の細孔22および24の径は同一とされており、バルブボール28は、それら細孔22および24の径よりも大きい外径を有するものとされている。このバルブボール28は、磁場感応性物質、例えば鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性体よりなるものとされており、当該バルブボール28を基材12の厚さ方向(図の上下方向)に移動させるための可磁性化膜(図示せず)が基材12の表面に設けられている。
【0035】
この可磁性化膜は、いずれかのバルブ室20に対向する部分を磁化させると、当該部分に生ずる磁場の作用により、当該バルブ室20内のバルブボール28を吸引して一方の細孔22に係る開口23の周縁に押圧させ、これにより、当該開口23を塞いで当該一方の細孔22と球状空間20との連通を遮断し、もって当該流路部分LPを液体の流通が禁止された状態とするものである。
このように、可磁性化膜は、当該バルブに対するバルブ制御機構としての作用を有するものであり、このバルブ制御機構が駆動されることにより、開放状態にあったバルブが閉止状態とされる。そして、一旦、閉止状態とされたバルブは、当該部分が消磁されるまでの間は、そのまま閉止状態を維持することができるものとされている。
【0036】
可磁性化膜としては、現在公知のもの、例えば、磁気カードの処理に利用されているカードライターや、パソコンのハードデイスクドライブの記憶方式によるものを用いることができる。
【0037】
以上のようなデバイスは、種々の方法によって製造することができるが、具体的には、いわゆる光造形加工法を利用することが好ましい。
実際のデバイスにおいて、基材の一例における形状は、例えば縦50mm、横50mm、厚さ3mmであり、微小流路の径は、10μm〜3mm、一の微小流路における流量は、例えば0.0001〜5mL/秒である。これらの数値は例であって、限定されるものではない。
【0038】
このようなデバイス10においては、合計40個の流路部分LPから順次に連続する適宜のものを選択し、ここに選択されたもの以外の流路部分LPにおけるバルブVを閉止状態とすることにより、当該選択された流路部分LPにより、各々基材12の周縁に開口する液体入口および液体出口を有する連続した流通経路を設定することができ、これにより、液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーが構成される。なお、選択された流路部分LPによって確定された液体処理用流通経路が形成されればよいので、選択されたもの以外の流路部分LPにおける全部のバルブVを閉止状態とすることが不要な場合もある。
【0039】
このような液体プロセッサーにおいては、液体入口からマイクロポンプによって被処理液体を送入すると、当該被処理液体は、設定された液体処理用流通経路を形成している、バルブVのバルブ室20および液体滞留部Sを含む流路部分LPをを流通して液体出口から排出されるので、この流通の間に、被処理液体に適宜の処理を施すことが可能である。
【0040】
被処理液体に対する処理としては、例えば、2種またはそれ以上の被処理液体を混合する混合処理、2種またはそれ以上の被処理液体を化学的または生物学的に反応させる反応処理、被処理液体を加熱または冷却する熱的処理、外部から光などの輻射線を照射する輻射線照射処理などを挙げることができるが、複数の処理が複合的に実行される場合もある。例えば、混合処理や反応処理が、熱的処理または輻射線照射処理などを伴って行われる場合がある。
【0041】
液体プロセッサーにおいては、実際に行われる処理に応じていくつかの条件が必要となる場合があり、例えば、混合処理や反応処理を行う場合に、液体処理用流通経路は、複数の被処理液体を送入するために2またはそれ以上の液体入口を有するものとされる場合がある。また、熱的処理や輻射線照射処理などが行われる場合には、そのような処理のための機構が設けられることが必要であり、デバイスにおいても、そのような処理に適した条件が要求される。例えば、輻射線照射処理を行う場合には、当該デバイスは、基材が当該輻射線に透明な材質によって形成されていることが必要である。
【0042】
而して、本発明においては、上記のような液体プロセッサーを構成する場合において、被処理液体について目的とする処理が行われるために適した長さあるいは規定された長さの目標処理時間がある場合に、すなわち目標処理時間Tだけ処理が実行されるべき場合に、流過時間が、この目標処理時間の長さに応じた長さとなるよう、液体処理用流通経路を設定する。
【0043】
具体的には、被処理液体の流通速度と液体処理用流通経路の長さとによって定まる被処理液体の流過時間(すなわち、送入された被処理液体が、処理開始点から液体出口に到達するまでに要する時間)T1を求め、この流過時間T1が目標処理時間Tと一致するよう、あるいは流過時間T1と目標処理時間Tとの差が最も小さくなって実質的に一致するよう、デバイス10において液体処理用流通経路が設定される。
【0044】
このようにして液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーにおいて、その液体処理用流通経路に係る液体入口から被処理液体を例えばマイクロポンプで送入すると、送入された被処理液体は液体処理用流通経路を流通して液体出口から排出されるが、このときに被処理液体が実際に処理を受ける時間は、当該被処理液体の流過時間T1であり、この流過時間T1が目標処理時間Tに一致し、あるいは実質的に一致しているので、液体出口から排出された被処理液体は、流通している間に処理が施された時間が目標処理時間Tに一致し、あるいは実質的に一致したものとなり、結局、微少量の被処理液体について、所期の処理が確実に施された結果を得ることができる。
【0045】
図4は、本発明の液体プロセッサーによる液体処理方法を具体的に説明するための液体プロセッサー50の構成を模式的に示す説明用斜視図である。この液体プロセッサー50に係るデバイスは、横方向微小流路LHおよび縦方向微小流路LVがいずれも6本形成されているが、その他の構成は図1に示されているデバイス10と同様である。
【0046】
図4の液体プロセッサー50において、横方向微小流路LHと縦方向微小流路LVとの合計36個の交差点の各々について、上からm番目の横方向微小流路LHと、左からn番目の縦方向微小流路LVとの交差点を、文字Xに続けてmおよびnの数字を連記することにより特定することとする。
例えば、上から1番目の横方向微小流路LHと左から6番目の縦方向微小流路LVとの交差点は「交差点X16」のように記載される。
【0047】
図4の液体プロセッサー50においては、太線による流路部分および黒塗りされたバルブVおよび液体滞留部Sで示されているように、交差点X62から交差点X66、交差点X66から交差点X16、交差点X16から交差点X11、および交差点X11から交差点X21に至るラインに存在するすべての流路部分と、交差点X62、交差点X63および交差点X21に基材の周縁から直接通ずる流路部分とのすべてにおけるもののバルブVを開放状態とし、それら以外のバルブVを閉止状態とすることにより、液体処理用流通経路が設定されている。
【0048】
そして、交差点X62および交差点X63に直接通ずる流路部分の基材の周縁における開口が、それぞれ、被処理液体の液体入口E1およびE2とされると共に、交差点X21に直接通ずる流路部分の基材の周縁における開口が液体出口EXとされている。
【0049】
この液体プロセッサーは、2つの液体入口からそれぞれ第1の被処理液体および第2の被処理液体を送入することにより、両被処理液体を混合して反応させるためのものであって、処理開始点は、両方の被処理液体の混合が行われる交差点X63に係る液体滞留部であり、この交差点X63から液体出口EXまでの間が、実際に処理が行われる有効流通路となる。ここに、この有効流通路は、流路部分LPを構成する細孔22の入口からバルブVを介して連続する液体滞留部Sの出口までの流路を「単位流路」とすると、合計15個の単位流路によって形成されていることとなる。
【0050】
図5に、この液体プロセッサーのデバイス50における各部の寸法が示されている。すなわち、円柱状の液体滞留部Sの直径aが2mm、高さbが3mm、バルブVのバルブ室20の直径cが2mm、バルブボール28の直径dが0.5mm、流路部分LPを構成する細孔22,24の内径eが0.4mm、隣接する液体滞留部Sから伸びて当該液体滞留部Sに至る細孔22における主部分22Aの長さfが1mm、主部分22Aに続く屈曲部分22Bの厚さ方向に伸びる第1部分の長さgが1.6mm、面方向に伸びる第2部分の長さhが1mm、開口23に至る厚さ方向に伸びる第3部分の長さiが0.6mm(細孔22の中心軸線の長さが合計3mm)、細孔24の長さjが1mmのものとされている。
これらの数値から、この液体プロセッサーにおける、一の液体滞留部Sの入口から隣接する液体滞留部Sの入口までの単位流路の体積の大きさは0.0142mLと計算され、15個の単位流路よりなる有効流通路の体積は0.213mLとなる。
【0051】
この液体プロセッサー50を用いて、目標処理時間Tが1.42秒間である反応用の第1の被処理液体aと第2の被処理液体bとをそれぞれ液体入口E1およびE2から、送入速度が0.15mL/秒の性能を有するものとされているマイクロポンプで連続的に送入した。
【0052】
そして、実際に液体出口EXから排出される被処理液体の排出量(排出速度)を測定したところ、その値は0.15mL/秒であった。
このことは、被処理液体の有効流通路における実際の流過時間T1が1.42秒間であることを意味し(0.213mL÷0.15mL/秒=1.42秒)、結局、この液体プロセッサー50によれば、目標処理時間Tと一致または実質的に一致した処理時間の処理を実行することができる。
【0053】
しかし、上記の液体プロセッサー50と同一の基本的構成を有する他の液体プロセッサーに他のマイクロポンプを用いたものでは、実際に液体出口EXから排出される被処理液体の排出量(排出速度)を測定すると0.16mL/秒であった。
このことは、当該液体プロセッサーにおける有効流通路における実際の流過時間T1が1.33秒間であることを意味し(0.213mL÷0.16mL/秒=1.33秒)、目標処理時間Tの1.42秒との間に0.09秒の差があることとなる。この理由は、マイクロポンプの性能および液体プロセッサー50における設計値からの誤差が含まれているためである。
【0054】
そこで、図6に示すように、交差点X21に基材の周縁から直接通ずる流路部分におけるバルブVを閉止状態とし、交差点X21から交差点X31に至る流路部分と、当該交差点X31に基材の周縁から直接通ずる流路部分とにおけるバルブVを開放状態とすることにより、修正された液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーを得、これを用いて、上記と同様にして第1の被処理液体aおよび第2の被処理液体bを送入したところ、被処理液体の排出速度は同じ0.16mL/秒であった。
【0055】
この修正後の液体処理用流通経路による液体プロセッサーにおいては、有効流通路の体積は0.228mLであることから、流過時間T1は1.42秒であると計算される。
従って、このような修正された液体プロセッサーによれば、流過時間T1が目標処理時間Tに実質的に一致したものとなっているので、目的とする処理が確実に所期の処理時間で実行されることが理解される。
【0056】
以上において、液体処理用流通経路が修正される前のものが前駆的液体プロセッサー、その修正前の液体処理用流通経路が仮設流通経路としての意義を有し、この前駆的液体プロセッサーの仮設流通経路に被処理液体が流通されて当該被処理液体が当該仮設流通経路を流過するに要する流過時間T1を、実際の流出速度から求め、この流過時間T1と目標処理時間Tとが比較されて、両者の差に応じて仮設流通経路の一部が修正され、これにより、目的とする処理が実行される液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーを構成することができる。
従って、このような手順によって液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーによれば、被処理液体が微少量であっても、精確な処理時間で、目的とする処理を実行することができる。
【0057】
本発明において用いられる液体プロセッサー用デバイスにおいて、微小流路網を構成する微小流路の数および各々の方向は限定されるものではないが、通常、直線状であって、各々一方向に平行に伸びる複数の第1の微小流路と、各々前記一方向と交差する他方向に平行に伸びる複数の第2の微小流路とにより形成されていることが好ましく、第1の微小流路と第2の微小流路とが直角に交差すること、すなわち、微小流路網が縦横に伸びる格子状に形成されていることが好ましい。
【0058】
横方向微小流路および縦方向微小流路の数は自由に選定することができ、横方向微小流路の数と、縦方向微小流路の数とが同一であることも必須ではない。また、第1の微小流路と第2の微小流路との交差角度が90度でなく、鋭角または鈍角であってもよい。
【0059】
また、バルブにおいて、その構成は、作動状態において、または非作動状態において、上記の微小流路における液体の流通を阻止する機能を有するものであればよく、その具体的な構成が限定されるものではない。例えば、電荷を有するバルブボールと、これを電場の作用によって移動させるバルブ制御機構を利用することもできる。
【0060】
【発明の効果】
本発明の液体プロセッサーによる液体処理方法によれば、液体流通経路を選択的に設定することのできる微小流路網を有する液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体について目的とする処理がなされるべき目標処理時間の長さに応じて液体処理用流通経路を設定することにより液体プロセッサーを構成し、この液体プロセッサーによって被処理液体に対する処理が実行されるので、被処理液体は、その流過時間が厳密に精確に制御された状態で流通されることとなり、その結果、当該被処理液体の実際の処理時間を目標処理時間に実質的に一致させることができ、従って、微少量の被処理液体に対して所期の処理を確実に実行することができる。
【0061】
また、液体プロセッサー用デバイスにおいて、目標処理時間の長さに応じて仮設流通経路が設定された前駆的液体プロセッサーを構成し、当該仮設流通経路による被処理液体の流過時間を求め、この流過時間と前記目標処理時間とを比較して、例えば当該仮設流通経路の少なくとも一部が修正され、これにより液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーを構成するので、この液体プロセッサーを用いることにより、被処理液体の実際の処理時間が目標処理時間に実質的に一致された状態が実現され、従って、微少量の被処理液体に対して所期の処理を確実に実行することができる。
【0062】
そして、仮設流通経路における被処理液体の流過時間を、当該仮設流通経路の液体出口からの液体流出割合によって測定することにより、現に使用されている液体プロセッサー用デバイスにおいて、流過時間の長さが目標処理時間に厳密に精確に一致する状態の液体処理用流通経路を設定することができる。
【0063】
本発明によれば、複数の種類の液体の反応処理、熱的処理または輻射線照射処理とすることができ、これにより、被処理液体に対して所期の処理を目標処理時間に応じた長さで実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において、液体プロセッサーの構成に用いられる液体プロセッサー用デバイスの基本的な構成の一例を模式的に示す説明用斜視図である。
【図2】1つの液体滞留部と、当該液体滞留部に関連する4つの流路部分および各流路部分におけるバルブの関係をイメージとして示す説明用斜視図である。
【図3】1つの流路部分におけるバルブと、当該流路部分の両端における液体滞留部を示す説明用断面図である。
【図4】本発明の液体プロセッサーによる液体処理方法を具体的に説明するための液体プロセッサーの構成を模式的に示す説明用斜視図である。
【図5】図4に示した液体プロセッサーのデバイスの各部における寸法を示す説明図である。
【図6】図3の液体プロセッサーが前駆的液体プロセッサーとされた場合において、その仮設流通経路が修正されて液体処理用流通経路が設定された状態の液体プロセッサーを示す説明用斜視図である。
【符号の説明】
10 液体プロセッサー用デバイス
12 基材
LH 横方向微小流路
LV 縦方向微小流路
X 交差点
LP 流路部分
S 液体滞留部
V バルブ
20 バルブ室
28 バルブボール
22,24 細孔
22A 主部分
22B 屈曲部分
23,25 開口
50 液体プロセッサー
E1,E2 液体入口
EX 液体出口
Claims (6)
- 板状の基材に、液体が流通する微小流路による微小流路網が形成されてなり、当該微小流路網は、少なくとも1本の第1の微小流路と、この第1の微小流路に交差する少なくとも2本以上の第2の微小流路とを有し、当該微小流路網における微小流路の交差点の各々から伸びる複数の流路部分の各々には当該流路部分を閉止するバルブが設けられると共に、当該バルブの各々をその閉止状態と開放状態との間で制御するバルブ制御機構を備えてなる液体プロセッサー用デバイスを用い、
当該液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体の目的とする処理に適した目標処理時間の長さに応じて、選択された流路部分以外の流路部分に係るバルブが閉止状態とされることにより、少なくとも1つの液体入口とこの液体入口に通ずる液体出口とを有する液体処理用流通経路を設定することにより、液体プロセッサーを構成し、
この液体プロセッサーの液体処理用流通経路に被処理液体を流通させることにより、当該被処理液体について目的とする処理を実行することを特徴とする液体プロセッサーによる液体処理方法。 - 板状の基材に、液体が流通する微小流路による微小流路網が形成されてなり、当該微小流路網は、少なくとも1本の第1の微小流路と、この第1の微小流路に交差する少なくとも2本以上の第2の微小流路とを有し、当該微小流路網における微小流路の交差点の各々から伸びる複数の流路部分の各々には当該流路部分を閉止するバルブが設けられると共に、当該バルブの各々をその閉止状態と開放状態との間で制御するバルブ制御機構を備えてなる液体プロセッサー用デバイスを用い、
当該液体プロセッサー用デバイスにおいて、被処理液体の目的とする処理に適した目標処理時間の長さに応じて、選択された流路部分以外の流路部分に係るバルブが閉止状態とされることにより、少なくとも1つの液体入口とこの液体入口に通ずる液体出口とを有する仮設流通経路を設定して前駆的液体プロセッサーを構成し、
この前駆的液体プロセッサーの仮設流通経路に被処理液体を流通させて当該被処理液体が当該仮設流通経路を流過するに要する流過時間を求め、この流過時間と前記目標処理時間とを比較して当該流過時間と目標処理時間との差に応じて前記仮設流通経路の少なくとも一部を修正することにより、液体処理用流通経路が設定された液体プロセッサーを構成し、
この液体プロセッサーの液体処理用流通経路に被処理液体を流通させることにより、当該被処理液体について目的とする処理を実行することを特徴とする液体プロセッサーによる液体処理方法。 - 被処理液体の流過時間を、仮設流通経路の液体出口からの液体流出速度と当該仮設流通経路の体積とによって求めることを特徴とする請求項2に記載の液体プロセッサーによる液体処理方法。
- 被処理液体についての目的とする処理が、混合処理、反応処理、熱的処理または輻射線照射処理であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の液体プロセッサーによる液体処理方法。
- 液体プロセッサー用デバイスにおいて、微小流路網は、一方向に平行に伸びる複数の第1の微小流路と、前記一方向と交差する他方向に平行に伸びる複数の第2の微小流路とにより形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の液体プロセッサーによる液体処理方法。
- 第1の微小流路と第2の微小流路との交差点に、当該交差点に係る流路部分より径の大きい空間による、流路部分よりの液体が一時的に滞留して保持される液体滞留部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の液体プロセッサーによる液体処理方法。
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JP2006239638A (ja) * | 2005-03-07 | 2006-09-14 | Ebara Corp | 混合器および混合方法 |
JP2012508643A (ja) * | 2008-09-29 | 2012-04-12 | コーニング インコーポレイテッド | 多流路型マイクロリアクタ・デザイン |
WO2018179735A1 (ja) * | 2017-03-28 | 2018-10-04 | ソニー株式会社 | 細胞の生産能力を分析するためのデバイス、細胞の生産能力を分析するための装置、細胞の生産能力を分析する方法及び細胞の生産能力を分析するためのシステム |
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2003
- 2003-03-27 JP JP2003088527A patent/JP2004290875A/ja not_active Withdrawn
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