JP2004290493A - 血液透析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】血液透析処理中の循環血液量を適正に推移させ、制御手段の機構が単純かつ操作が容易であり、制御を迅速かつ精細に行って、制御特性を改善するとともに、血漿補充速度を透析処理中に正確に算出・測定する血液透析装置を提供する。
【解決手段】血液指標値を計測するm箇所の計測時点を設定して、血液指標値が所定時点以後に所定値を維持するように制御し、m箇所の計測時点の第nの計測時点で計測した血液指標値を用いて、次の第n+1の計測時点の血液指標値が所定値となるための除水速度を算出する。この第nの計測時点で算出した除水速度に基づいて、第nの計測時点から第n+1の計測時点までの間、血液透析処理実働部を制御しつつ、第nの計測時点での除水速度に基づいて、第nの計測時点における血漿補充速度を算出して出力する。
【選択図】 図7
【解決手段】血液指標値を計測するm箇所の計測時点を設定して、血液指標値が所定時点以後に所定値を維持するように制御し、m箇所の計測時点の第nの計測時点で計測した血液指標値を用いて、次の第n+1の計測時点の血液指標値が所定値となるための除水速度を算出する。この第nの計測時点で算出した除水速度に基づいて、第nの計測時点から第n+1の計測時点までの間、血液透析処理実働部を制御しつつ、第nの計測時点での除水速度に基づいて、第nの計測時点における血漿補充速度を算出して出力する。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、血液処理装置に関し、特に、透析条件を制御して血液透析処理を実行しつつ血漿補充速度を算出する血液透析装置に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、腎機能が損なわれた被透析者の治療のために、従来から半透膜を介した透析や濾過によって血液を浄化する治療が行われている。
【0003】
この血液を浄化する治療に用いられる装置、すなわち血液透析装置においては、安全で効果的な血液浄化を行うため、被透析者の体重を適正に維持する機能を有することが重要である。
【0004】
なぜなら、急激あるいは過度に水分を除去してしまうと、被透析者の循環血液量が過剰に減少してしまうためである。そして、この急激または過度の水分除去により、血圧の低下やショックなどが生じる可能性がある。
【0005】
ところが、反対に、水分除去が遅くなると血液を浄化する際に要する時間が長時間化するのみならず、十分な除水ができないと、高血圧や心不全などを引き起こす可能性もある。
【0006】
そのため、被透析者の血液状態を監視しながら除水を行う血液透析装置が提案されている。たとえば、ヘマトクリットメーターによって体液状態を推定する推定器と、この推定器からの出力により、血液ポンプや限外圧を制御する制御装置が提案されている(特許文献1)。
【0007】
特許文献1に記載された装置においては、計測した体液状態によって直接的に除水処理が制御されるため、便利ではあるが、反面、計測値によって除水が直接制御されるため、計測手段が正確でなかったり、異常が生じたりすると大きな問題になる。そのため、このようなフィードフォワード制御においては、制御ラインとは別に独立したラインを設け、このラインに安全機構を装着するのが一般的である。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された装置においては、独立したラインや安全機構を設けるようにしているため、装置構造が複雑になるのみならず、操作が非常に面倒になる。さらに、装置の製造コストも増加してしまう。
【0009】
そこで、さらに簡易な装置が提案された(特許文献2)。この特許文献2に記載された装置は、被透析者の血液状態を監視しつつ、状態によって警報を鳴らすとともに、除水ポンプを停止するようにしたものである。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載された装置においては、透析開始前に測定した血液濃度との比較に基づいて制御を行い、透析開始時の制御条件によって除水制御が行われているか否かを認識するだけであった。そのため、それぞれの被透析者に適応した除水処理を行うことが極めて困難であった。
【0011】
さらに、特許文献2に記載された装置においては、透析条件に従った除水処理が行われなかった場合、医師や操作者などの従事者が、その都度除水量や補液量を調整する必要があった。そのため、安全性を確保することができる反面、操作が煩雑であり面倒なため、人的負担が極めて大きかった。
【0012】
さらに、特許文献2に記載された装置においては、血液回路の静脈液側ラインに血液状態を測定する手段が設けられている。そのため、血液処理器(ダイアライザー)を通った後の血液状態が計測されるため、被透析者のダイレクトな血液状態を反映しないという問題があった。
【0013】
そこで、この問題を解決した血液処理装置を提供することを目的として、本発明者により血液透析装置が提案された。
【0014】
すなわち、本発明者は、血液パラメータを計測する血液計測手段と、血液処理を行う実働部と、所定の血液処理条件で血液処理を行うように実働部を制御する制御部とからなる血液透析装置において、血液計測手段から得られる被透析者の血液指標値に対してあらかじめ規定された血液指標領域を設定し、この血液指標領域における経時的な血液指標値の推移に対応して、制御部が実働部に血液処理条件の変更を指示するようにした血液処理装置を提案している(特許文献3)。
【0015】
そして、この特許文献3に記載された装置によれば、それぞれの被透析者の血液状態を監視しつつ、経時的にそれぞれの被透析者に適応した血液処理を可能とするとともに、使用する際の従事者に対する負担が少なく、かつ、血液処理装置をより簡易な構成とすることができ、使い易く、低コスト化することができるという利点を有する。
【0016】
また、本発明者は、特許文献3に記載された血液処理装置の改善点を想起し、この装置の改善を行った。そして、本発明者は、それぞれの被透析者の血液状態を監視しつつ、経時的にそれぞれの被透析者に適応した血液透析の条件設定、特に除水速度を容易に変更および設定可能な血液処理装置を提案するに至った(特許文献4)。
【0017】
この特許文献4に記載された血液処理装置は、血液パラメータを計測する血液計測手段と、血液処理を行う実働部と、所定の血液処理条件で血液処理を行うように実働部を制御する制御部とを少なくとも有し、制御部が被透析者のサンプリングから得られる血液指標値を血液計測手段から取り込み、あらかじめ設定された血液指標値範囲(設定血液指標値範囲)内で推移するか否かを監視するとともに、この監視対象となる血液指標値が設定範囲を逸脱した場合に、あらかじめ設定された除水速度変化率で実働部の除水速度を変更可能な除水速度制御機能を有する。この特許文献4に記載された血液透析装置は、血液透析処理中におけるそれぞれの時点において、確実に血液指標値を管理することができるという利点を有する。
【0018】
【特許文献1】
特公平6−83723号公報
【特許文献2】
特開平9−149935号公報
【特許文献3】
特開平11−22175号公報
【特許文献4】
特開2001−540号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者が検討を行った結果、特許文献4に記載された血液透析装置は、それぞれの時点において目標とする血液指標値の領域をそれぞれ設定する必要があるため、操作や設定が面倒になるという問題点を知見するに至った。
【0020】
さらに、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、特許文献4に記載された血液透析装置においては、設定する血液指標値が範囲として指定されるために、血液指標値が設定範囲内に存在している限り、設定範囲内の境界近傍の箇所にある場合でも、血液透析装置の制御機構が作動しないという問題点があることを知見した。そして、本発明者は、この問題点に起因して、実際に計測された血液指標値が目標に対して微妙にずれた場合に、制御が遅延化してしまうという問題が生じることを、さらに知見するに至った。
【0021】
また、血液透析処理における除水処理においては、被透析者の血漿補充速度(プラズマリフィリングレート(PRR))を正確に認識することが重要である。しかしながら、このPRRは、血漿が身体の細胞内から血液内(血管内)に移動する速度であり、被透析者の身体内部全体にわたる現象であるため、その測定は極めて困難であり、その測定技術の開発が熱望されていた。
【0022】
したがって、この発明の目的は、血液透析処理中の循環血液量が適正に推移するように制御可能とし、制御手段の機構が単純で、かつ操作が容易であるのみならず、制御を迅速かつ精細に行うことができ、制御特性を改善することができるとともに、この制御に有効な要素である血漿補充速度を、血液透析処理中に正確に算出、測定することができる血液透析装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明は、
血液指標値が所定値を維持するように制御して、血液透析処理において実行される透析条件と、それぞれの計測時点において計測される血液指標値とから、血漿補充速度の算出を行うようにする
ことを特徴とするものである。
【0024】
したがって、この発明は、
血液に関する値からなる血液指標値が血液透析処理の開始後の所定時点以後に所定値を維持するように、経時的進路を設定し、
経時的進路に、それぞれ血液指標値を計測するm箇所の計測時点(mは自然数)を設定し、
m箇所の計測時点のうちの第nの計測時点(nは自然数)において計測された血液指標値を用いて、次の第n+1の計測時点における血液指標値が所定値となるための透析条件を算出し、
第nの計測時点において算出された透析条件に基づいて、第nの計測時点から第n+1の計測時点までの間で血液透析処理を実行する実働手段を制御するとともに、第nの計測時点において実行されている血液透析処理の透析条件に基づいて、第nの計測時点における血漿補充速度を算出する
ことを特徴とする血液透析装置である。
【0025】
この発明において、好適には、任意の第nの計測時点における被透析者の血漿補充速度をPRRn、第nの計測時点における除水速度をUFRn、第nの計測時点における血液変化量をΔBVn ´、第nの計測時点と第nの計測時点に隣り合う計測時点との時間間隔をTnとしたときに、
【数4】
が成立し、ΔBVn ´をほぼ0に制御することによって、
【数5】
を成立させて、第2式における除水速度UFRnの値から血漿補充速度を算出するように構成されている。
【0026】
この発明において、血液透析装置は、典型的には、第1式における時間間隔Tを、隣り合う2つの計測時点における血漿補充速度の差が無視できる程度に設定するように構成されている。
【0027】
この発明において、透析条件は除水処理における除水速度である。そして、この場合、血液透析装置は、好適には、透析条件としての除水速度を、血液透析処理の開始時における血液指標値と、隣り合った2つの計測時点におけるそれぞれの血液指標値の実測値と、2つの計測時点間において制御された除水速度と、2つの計測時点のさらに次の計測時点の目標制御線により決定される血液指標値とに基づいて算出するように構成されている。
【0028】
この発明において、血液透析装置は、典型的には、最大除水速度を設定し、算出された透析条件としての除水速度が最大除水速度を超えた場合に、最大除水速度以下の除水速度で除水処理を行うように構成されている。
【0029】
この発明において、血液透析装置は、典型的には、それぞれの計測時点における透析条件の算出および透析条件に基づく実働手段の制御をフィードフォワード制御により行うように構成されている。さらに、具体的には、血液透析処理の開始時の血液量BV0、任意の第nの計測時点における血液変化量%ΔBVn ´、除水速度UFRn、第nの計測時点の1つ前の第n−1の計測時点における血液変化量%ΔBVn−1 ´、第nの計測時点の1つ後の第n+1の計測時点に対して制御するように設定された血液変化量の割合%ΔBVn+1、第nの計測時点と第n+1の計測時点との間の時間間隔T、制御する第n+1の除水速度UFRn+1から、制御を、
【数6】
に基づいて行うように構成されている。
【0030】
この発明において、血液透析装置は、典型的には、被透析者の血液透析処理中における安全を確保しつつ、血液透析処理における、血液指標値の経時的変化を所定の範囲に制限する逸脱制御線を設定し、血液指標値が逸脱制御線の範囲を逸脱した場合に、フィードフォワード制御以外の制御によって、血液指標値が逸脱制御線により示される範囲に収まる方向に制御する。そして、この発明において、血液透析装置は、好適には、逸脱制御線により示される血液指標値が、目標制御線により示される血液指標値より低くなるように逸脱制御線を設定し、計測された血液指標値が逸脱制御線により示される血液指標値より低い場合に、除水処理を停止するように構成されている。
【0031】
この発明において、血液透析装置は、典型的には、血液透析処理における血液指標値が所定値を維持するように制御を始める所定時点より前の段階において、経時的進路を示す目標制御線を血液指標値が減少する方向に制御するように構成されている。
【0032】
この発明において、血液透析処理を行う従事者が血漿補充速度PRRを認識することができるようにするために、血液透析装置は、典型的には、情報データを出力する出力手段を有し、出力手段に、算出された血漿補充速度の値から構成される情報データを出力するように構成されている。
【0033】
この発明において、好適には、血液透析装置は、第nの計測時点における透析条件と、第nの計測時点において計測された血液指標値とを用いて血漿補充速度を算出するように構成されている。
【0034】
この発明において、典型的には、血液指標値は、ヘマトクリット値、ヘマトクリット値に基づく値、循環血液量、または循環血液量に基づく値であるが、そのほかの指標値を用いることも可能であり、具体的には、血液中の溶質濃度などの循環血液量を規定する血液指標値を用いることが可能である。
【0035】
この発明は、上述の組み合わせに限定されるものではなく、上述した技術的思想のあらゆる組み合わせにより構成することが可能であるとともに、技術的思想の任意の組み合わせを採用することが可能である。
【0036】
上述のように構成されたこの発明による血液透析装置によれば、第nの計測時点(nは自然数)において計測された血液指標値を用いて、次の第n+1の計測時点における血液指標値が所定値となるための透析条件を算出し、第nの計測時点において実行されている血液透析処理の透析条件と第nの計測時点において計測された血液指標値とに基づいて、第nの計測時点における血漿補充速度を算出していることにより、透析条件を適宜補正しながら血液透析処理を適切に実行することができるとともに、この血液透析処理中に血漿補充速度を随時算出、計測することが可能となる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0038】
まず、この発明の一実施形態による血液透析装置について説明する。図1に、この一実施形態による血液透析装置の概略ブロック図を示す。
【0039】
図1に示すように、この一実施形態による血液透析装置は、血液透析処理実働部1、制御部2、補助記憶部3および操作表示部4を有して構成されている。
【0040】
これらのうちの制御部2は、コンピュータの情報処理部を中心として構成される。また、補助記憶部3は、データを記憶し保持するとともに制御部2との間においてデータの入出力を行うためのものである。
【0041】
また、操作表示部4は、従事者によるデータの入力が可能な操作部と、データの表示が可能な表示部とを有して構成されている。また、この操作表示部4は、制御部2からのデータを入力可能に構成されているとともに、制御部2に、操作部からのデータを出力可能に構成されている。
【0042】
また、この操作表示部4は、タッチパネルディスプレイから構成することが可能である。このように操作表示部4をタッチパネルディスプレイにより構成することにより、この一実施形態による血液透析装置の血液透析処理実働部1以外の部分を小型化することができる。そのため、血液透析装置全体も小型化することができ、省スペース化を図ることができる。さらに、血液透析装置を、その操作や監視に適した場所に設置することができるという利点も有する。
【0043】
また、上述したタッチパネルディスプレイからなる操作表示部4における操作部(操作キー)および表示部は、複数の画面に分割して表示することが可能である。これらの操作部および表示部を有する操作表示部4の表示は、制御部2によって制御される。そのため、表示のためのソフトウェアを変更することにより、種々のキー配置や表示形式が選択可能である。
【0044】
このときのソフトウェアは、表示形式を適宜変更するためのソフトウェアのみならず、血液透析装置の使用方法についての説明を表示するアプリケーションをフレキシブルディスクの形で使用することも可能である。このときには、タッチパネルディスプレイからなる操作表示部4の表示部に使用方法、特に使用に際しての留意事項を詳細に表示させることが可能である。
【0045】
また、この一実施形態による血液透析装置を、血液透析処理実働部1と、その他の部分とに分離した構成とすることも可能である。そして、このような構成を採用することにより、操作の際に直接触れることがない血液透析処理実働部1を手元に配置する必要がなくなり、たとえばベッドの横や下などに配置することが可能となるので、より一層の省スペース化を図ることができる。
【0046】
そして、この制御部2、補助記憶部3および操作表示部4からなる装置の具体例としては、構成を機能により2つの主制御部と補助制御部(コントロール・ユニット)とに分割して構成したものを挙げることが可能である。
【0047】
これらのうちの一方の主制御部は、さまざまな透析条件や、処理および操作を設定するとともに、これらの透析条件のデータや、処理および操作のための信号を血液透析処理実働部1に供給することによって、血液透析処理実働部1を制御するための部分として、機能する。また、他方の補助制御部は、血液計測器から供給されたデータを変換するとともに、このデータに基づいて、あらかじめ設定された適切な透析条件を選択するための部分である。
【0048】
また、他の具体例としては、制御部2と補助記憶部3と操作表示部4とを有する構成とした患者監視装置(コンソール)などを挙げることも可能であり、必要に応じて、制御部2のみから患者監視装置(コンソール)を構成することも可能である。
【0049】
また、血液透析処理実働部1以外の部分を、上述したようにタッチパネルディスプレイを用いることによって極めてコンパクトにすることができるので、省スペース化のみならず、操作・表示部などを操作や監視を行いやすい位置に配置することができる。
【0050】
また、制御部2は、操作表示部4から入力され、設定される条件に基づいて、血液透析処理実働部1を制御するためのものである。そして、この制御部2から出力される制御信号により血液透析装置の各部が制御される。
【0051】
たとえば、ダイアライザーの性能、血液流量、透析液流量、透析時間および除水量などを被透析者ごとに設定し、この設定に基づいて制御部2により血液透析処理実働部1が制御され、血液透析処理が行われる。
【0052】
また、この一実施形態による血液透析装置に設けられた制御部2を、機能面から見ると、アプリケーションの関連性に基づいて、具体的に3種類の機能を有する。
【0053】
すなわち、制御部2は、さまざまな透析条件や処理・操作を設定可能とし、種々の値を算出可能とする第1の機能を有する。また、制御部2は、後述する血液計測計において計測され出力されたデータ(血液パラメータ)を、適切な血液指標値やその変化値に変換し、この血液に関するデータに基づいて、あらかじめ設定された適切な透析条件を選択する第2の機能を有する。また、制御部2は、選択された透析条件のデータや処理信号および操作信号を、血液透析処理実働部1に供給して制御する第3の機能を有する。
【0054】
すなわち、操作者が操作表示部4を用いて必要な要件を入力し設定することにより、制御部2は、これらの要件に基づいて血液透析処理実働部1の血液ポンプ、透析液供給ポンプ、透析液排出ポンプ(いずれも図示せず)などを制御し、設定どおりの透析条件によって血液透析処理を実行する。
【0055】
また、血液透析処理を安全に行うためには、透析液の濃度、透析液の温度、静脈圧のチェック、空気のチェック、およびヘパリン注入量などの設定やチェックを、正確に行う必要がある。そのため、これらの要件の設定やチェックもタッチパネルディスプレイからなる操作表示部4を用いて、容易に行うことができる。
【0056】
ここで、上述した制御部2、補助記憶部3および操作表示部4を有する装置の詳細なブロック図を図2に示す。
【0057】
図2に示すように、この一実施形態による血液透析処理装置においては、バス5に、中央処理装置2a(CPU(Central Processing Unit)2a)、RAM(Random Access Memory)などのメインメモリ2bおよび、血液透析装置の機械的な制御を行うプログラムが格納されたROM2c(Read Only Memory 2c)から構成された制御部2と、ハードディスク(Hard Disk,HD)やフレキシブルディスク、またはROMからなる補助記憶部3と、いわゆるGUIを実行する操作表示手段として、たとえば入力部および表示部が一体化されたタッチパネルディスプレイからなる操作表示部4とが接続されている。
【0058】
そして、CPU2a、メインメモリ2bおよびROM2cからなる制御部2と、補助記憶部3と、操作表示部4との間のデータの通信は、バス5を介して行われる。また、このバス5がインターフェース6(I/F)を介して、血液透析処理実働部1に接続されている。
【0059】
また、補助記憶部3には、インストールされたプログラムを実行するとともに、オペレータにより血液制御装置を操作するための、オペレーティングシステム(OS)3aがインストールされている。
【0060】
さらに、補助記憶部3には、このOS3aをベースとして、時間計測アプリケーション3b、フィードフォワード制御アプリケーション3c、PRR計測アプリケーション3d、および演算処理アプリケーション3eがインストールされている。これらのうちの2つのアプリケーション、すなわちフィードフォワード制御アプリケーション3cおよびPRR計測アプリケーション3dが、制御部2により、制御アプリケーションとして、主に血液透析処理において実行される。
【0061】
また、これらのアプリケーションのうちの時間計測アプリケーション3bは、血液透析処理を行う際の経過時間を計測するためのアプリケーションである。そして、この時間計測アプリケーション3bによって、血液透析処理の実行時間の計測や、血液透析処理の切換時間や、複数回の計測時点の設定などを設定することが可能になっている。
【0062】
また、PRR計測アプリケーション3dは、所定のプログラムにしたがって、第nの計測時点において実行されている血液透析処理の透析条件と第nの計測時点において計測された血液指標値とに基づいて、この計測時点における血漿補充速度PRRを算出するためのアプリケーションである。そして、このPRR計測アプリケーション3dが制御部2により実行され、PRR計測アプリケーション3dによって算出されたプラズマリフィリングレート(PRR)が算出されると、制御部2から算出値が出力されて操作表示部4に供給され、この算出値がPRRの値として表示される。
【0063】
また、フィードフォワード制御アプリケーション3cは、後述するフィードフォワード制御を行うためのアプリケーションである。そして、このフィードフォワード制御アプリケーション3cにより設定された、m箇所の計測時点のうちの第nの計測時点(m,nは自然数)において計測された血液指標値を用いて、次の第n+1の計測時点における血液指標値が所定値となるための透析条件が算出され、これによる透析条件に基づいて、血液透析処理が制御される。
【0064】
これにより、この一実施形態による血液透析処理に対するフィードフォワード制御を実行することが可能となる。また、フィードフォワード制御において必要となる演算処理は、演算処理アプリケーション3eのプログラムにしたがって実行される。
【0065】
そして、血液透析装置において、OS3aが起動のベースとなって、これらのアプリケーション3b〜3eが実行される際には、まず、これらのアプリケーションのプログラムが補助記憶部3からメインメモリ2bに一時的に記憶される。その後、メインメモリ2bにロードされたそれぞれのアプリケーションのプログラムに従って、CPU2aにより所定の処理が行われる。
【0066】
すなわち、補助記憶部3にインストールされたOS3aおよび各種アプリケーション3b〜3eは、それらのプログラムに従って制御部2による処理が実行される。そして、これらのアプリケーションにより、血液透析処理実働部1の制御が行われ、この一実施形態による血液透析処理が実行される。
【0067】
次に、血液透析処理実働部1について説明する。図3に、この一実施形態による血液透析処理実働部1を示す。
【0068】
この一実施形態による血液透析処理実働部1は、血液透析の実質的な操作を行うための手段である。すなわち、図3に示すように、血液透析処理実働部1は、透析治療の中心となる血液透析器(ダイアライザー)11、このダイアライザー11に被透析者の血液を供給したり、ダイアライザー11から送出された透析後の血液との間で血液の運搬を行ったりするための血液回路12、血液の運搬に関する駆動力となる血液ポンプ13、血液計測計14、ダイアライザー11に透析液を供給するための透析液回路15、この透析液を制御するための供給弁16および、血液からの除水処理を行う除水ポンプ17を少なくとも有して構成されている。
【0069】
また、血液計測計14は、血液の光透過度、電解質量、血液浸透圧などの各種血液パラメータを計測するための装置である。さらに、この血液計測計14には、温度、流量および圧力などのセンサ(図示せず)が設置されており、これらの情報を測定可能に構成されている。なお、これらのセンサにより測定されたデータは、制御部2によって、計測値データとして処理されたり、制御部2を介して操作表示部4に表示させたり、補助記憶部3に記憶させたりすることが可能である。また、これらの表示および記憶を並行して実行させることも可能である。
【0070】
また、血液計測計14においては、適正な透析条件を選択するために、計測したパラメータを適当な血液指標値に換算する必要がある。
【0071】
この指標値としては、全血液に占める赤血球の容積率を示す「ヘマトクリット値(Ht値)」、被透析者における循環血液量の状態をチェックするための指標値を示す「循環血液量指数(Blood Volume、BV)」、およびこれらのHt値やBV値の変化量などを挙げることができる。
【0072】
そして、これらのデータを操作表示部4の表示部に表示する場合の表示方法としては、血液透析処理を実行している間の透析状態のみを表示するようにしても良く、過去の記憶された測定データと現在の測定データとを、それらの経時的変化を明確かつ理解容易な形で表示させることも可能である。
【0073】
また、上述したセンサにより得られた現在の透析状態のデータを、フレキシブルディスクやICカードなどの外部記録媒体を用いて記録するようにしても良く、これにより、それぞれの被透析者個人における過去の透析結果を長期間保存することが可能となる。
【0074】
以上のようにして、この一実施形態による血液透析装置が構成されている。
【0075】
次に、以上のように構成されたこの一実施形態による血液透析装置の動作について説明する。まず、この動作の前提として、血液指標値として利用する循環血液量に関する定義について説明する。
【0076】
まず、第1に、利用可能な循環血液量とその定義について説明する。
【0077】
すなわち、この発明の一実施形態においては、たとえばHt値や、このHt値から算出されるBV値(Blood Volume値)や、このBV値を透析開始時のBV値であるBV0で除算して百分率表記した、%BV値などの血液循環量を示すものを循環血液量のパラメータとして用いる。なお、この循環血液量のパラメータは、これらに限定されるものでなく、血液中の水分量や血球濃度などを利用することができる。
【0078】
次に、血液指標値としての血液変化量の算出式について説明する。この一実施形態においては、血液指標値の1つの例として、BV変化量の計算式を示す。そして、BV変化量と血液透析処理の開始時における血液量BV0とからBV値を算出することが可能となる。
【0079】
すなわち、BV変化量(ΔBV)の計算式は、
【数7】
と表され、%ΔBV値の計算式は、
【数8】
と表される。
【0080】
第3に、その他のパラメータの定義と算出式について説明する。
【0081】
まず、血漿補充速度PRR(Plasma Refilling Rate)は、血漿が体内から血管に再補充される速度と定義され、各時点における被透析者の除水能を示す指標値である。
【0082】
そして、PRRの算出式は、その定義から、
【数9】
と表すことができる。なお、(3)式において、PRRnは、選択された任意の計測時点(第nの計測時点)におけるプラズマリフィリングレート、UFRnは、第nの計測時点における除水速度、△BVnは、第nの計測時点における血液変化量、Tは計測時点間の時間間隔である。
【0083】
次に、血液透析処理において、血液指標値を経時的進路として用いる目標制御線の具体例について説明する。図4に、この発明の実施形態による前半段階の制御に用いられる目標制御線および実測値線のグラフを示す。
【0084】
図4に示すように、BVが減少する方向に設定された目標制御線A、実測値線Bおよび予測制御線Cを示す。図4に示す縦軸は、%BV値を示し、横軸は透析開始からの経過時間を示す。また、目標制御線Aは、循環血液量(血液指標値)の経時的進路または経時的目標値の目安となる制御線である。そして、この目標制御線Aは、透析前に医師などによって被透析者ごとに設定される。
【0085】
また、実測値線Bは、%ΔBV1 ´、%ΔBV2 ´などの血液指標値の実測値を示す。また、目標制御線Aの近傍の予測制御線Cは、血液透析処理を行う血液透析処理実働部1に対して透析条件の制御を行うための制御線である。この予測制御線Cは、それぞれの計測時点において計測された、%ΔBV1 ´や%ΔBV2 ´などの血液指標値の実測値と、目標制御線Aとに基づいて、たとえば除水速度などの透析条件が算出され、これによって、透析条件の制御が行われる。
【0086】
すなわち、除水処理を開始した時点において、目標除水量を目標透析時間で除算した除水速度UFR0により血液透析処理が実行される。その後、BV値が安定した段階でフィードフォワード制御による制御が開始され、循環血液量に対する制御が行われる。
【0087】
そして、次の第1の計測時点から、その次の第2の計測時点までは、血液透析処理前の体重値から求められたBV値に基づき、目標制御線に乗るように算出された除水速度UFR1により血液透析処理が実施される。さらに、その次の第3の計測時点までは、前の第1の計測時点および第2の計測時点において計測されたそれぞれの血液指標値と、除水速度UFR1および目標制御線からの目標値に基づいて算出された除水速度UFR2とに基づいて、血液透析処理が実行され、除水処理が行われる。
【0088】
このようにして、目標制御線Aから外れてしまいがちな実測線bは、計測時点のたびに新たに設定された透析条件により修正され、目標制御線Aに沿って推移する。そして、このフィードフォワード制御は、順次計測時点ごとに行われる。
【0089】
以下に、このフィードフォワード制御に関して詳細に説明する。すなわち、隣り合う2つの計測時点におけるそれぞれの血液指標値と、制御された除水速度と、目標制御線により決定される目標値とから、透析条件としての除水速度を算出する方法について説明する。
【0090】
まず、透析開始時におけるBV値をBV0とすると、たとえば第1の計測時点において、
【数10】
が成立する。また、第2の計測時点において、
【数11】
が成立する。なお、BV0、%ΔBV1 ´、%ΔBV2 ´およびTは、それぞれ透析開始時のBV値、第1の計測時点のBV変化量の割合、第2計測時点におけるBV変化量の割合および計測時点の間隔を表す。また、%ΔBV3は、目標制御線によって決定される血液変化量の割合である。
【0091】
そして、任意の第n−1の計測時点および第nの計測時点のそれぞれの計測時点においても、
第n−1の計測時点
【数12】
第nの計測時点
【数13】
が成立する。
【0092】
そして、上述した(4)式および(5)式からは、
【数14】
が成立する。
【0093】
ここで、PRR1とPRR2との間の差が無視できるほど小さい場合、すなわち、それぞれの計測時点間の時間間隔Tを、それぞれの計測時点における被透析者のPRRに実質的な変化が生じない程度として、その変化が無視できる程度に短く設定した場合、
【数15】
が成立する。
【0094】
したがって、
【数16】
が成立する。
【0095】
この(10)式においては、%ΔBV3が次の計測時点である第3の計測時点における目標値であり目標制御線により設定され、制御部2による制御によって血液指標値を近づけるべき値である。また、UFR2は、次の計測時点の血液指標値を目標値に近づけるために、第2の計測時点において設定すべき除水速度である。なお、BV0、%ΔBV1 ´、%ΔBV2 ´およびTは、それぞれ既知であり、UFR1も第1の計測時点と第2の計測時点との間の除水速度として既知である。
【0096】
これにより、目標となるBV変化量である%ΔBV3を指定すれば、(10)式により透析条件の除水速度を算出することができる。また、BV目標値は、目標制御線により計測時点によって決定される。反対に、その除水速度により血液透析処理を行うと、次の計測時点におけるBV値を目標とする値、すなわち目標制御線に近づけることが可能となる。
【0097】
また、上述の(10)式を任意の計測時点についてまとめると、
【数17】
と表すことができる。
【0098】
そして、2つの計測時点におけるBV変化量、2つの計測時点の間における除水速度、透析時間Tの計測値、および血液指標値の目標制御線に基づいて決定される2つの計測時点のさらに次の計測時点における設定された血液指標値に基づいて、次の計測時点における血液指標値を目標に近づけるための設定すべき除水速度を求めることができる。
【0099】
なお、(11)式において、BV0が透析開始時の初期血液量、%△BVn ´が選択された任意の計測時点(第nの計測時点)における血液変化量の割合、%△BVn−1 ´が選択された任意の計測時点の1つ前の計測時点(第n−1の計測時点)における血液変化量の割合、%△BVn+1がフィードフォワード制御を行うべき次の計測時点(第n+1の計測時点)における設定された血液変化量の割合、Tが計測時間、UFRnが選択された計測時点における除水速度、UFRn+1が選択された第nの計測時点から第n+1の計測時点までにおいて、目標となる血液指標値に到達するために、血液処理実働部1に対して制御を行う際に設定される除水速度である。
【0100】
なお、上述した(10)式や(11)式が成立するためには、これらの式を導出するために仮定した「隣り合った2つの計測時点におけるPRRに実質的な差がない」という条件が前提となっている。そして、この前提条件を満足するためには、PRRの差が無視できる程度にそれぞれの計測時点の時間間隔Tを短くすることが必要となる。
【0101】
さらに、この制御方法においては、透析開始時の初期血液量BV0に関する誤差、制御遅れ、またはその他の要因によって、制御自体に誤差が生じる可能性も否定できない。しかしながら、実際の制御においては、それぞれの計測時点において除水速度を設定し直すことにより、制御を確実なものとしている。
【0102】
具体的には、図4のグラフに示すように、それぞれの計測時点の間の間隔を短くするとともに、その都度除水速度を設定するようにしていることにより、生じる誤差は実質的な問題として表出することはない。
【0103】
以上のようにして、この一実施形態による血液透析装置において、循環血液量の制御(BVコントロール)が行われる。
【0104】
次に、上述した循環血液量制御方法に基づいた血液透析処理の具体的な方法およびこの制御に基づいた血漿補充速度(プラズマリフィリングレート(PRR))の測定方法について説明する。図5に、この一実施形態による血液透析処理のBV制御における血液指標値の経時的進路としての目標設定値のグラフを示す。
【0105】
すなわち、図5に示すように、この一実施形態によるBV制御は、前半段階と後半段階との2段階により行われる。そして、前半段階においては、初期血液量から適正血液量まで血液量を減少させる方向に制御される。また、後半段階においては、循環血液量が適正血液量の一定値の状態を維持するように制御される。
【0106】
前半段階においては、制御部2の制御に基づいて、血液透析処理の開始時における初期血液量BV0から適正血液量BVstになるまでの間、余剰な水分の除水処理が行われる。これにより、循環血液量が減少する方向に制御される。そして、血液透析装置により、目標制御線に沿って余剰血液量(余剰水分量)の除水が行われ、循環血液量BVが、被透析者にとって適正な循環血液量、すなわち適正血液量BVstになったときに、前半段階が終了する。
【0107】
その後、この適正血液量BVstを、所定値を維持するように、制御部2による血液透析装置が制御され、血液透析処理が実行される。この後半段階において適正血液量BVstを維持するように血液透析処理を行う間においても、被透析者の体内の細胞からは、血管内の血液に水分が供給され続けている。そして、この体内の細胞から血管内の血液への水分の移動と、除水処理により行われる除水との間において、それらが均衡を保つように制御しつつ血液透析処理を行うことにより、過剰に水分を除水することなく、血液透析処理を実行することが可能となる。
【0108】
さらに、後半段階においては、細胞から血管内に補充される血漿の量に相当する量の除水を行っていることにより、被透析者にとって適正となる循環血液量を維持する制御が行われる。これとともに、この循環血液量の維持により血漿補充速度(PRR)の算出が行われる。なお、PRRの算出方法に関する詳細は後述する。
【0109】
以上のBV制御プロセスに基づいて実行される血液透析処理の具体的な一例を、図6に示す。なお、図6においては、図4と同様に、目標制御線以外に、循環血液量の実測値線が示され、さらに、逸脱制御線(警報線)、最大除水速度線および除水速度履歴が示されている。
【0110】
図6中、目標制御線の下方に平行な右下がりの斜め線および水平線として示されるのが、逸脱制御を行うための逸脱制御線である。この一実施形態による血液透析処理の通常時においては、フィードフォワード制御などの制御方法が作用する一方で、血液指標値が逸脱制御線を逸脱する場合には、通常の制御方法と異なる非常時制御が作用する。
【0111】
具体的には、図6に示すように、実測値の推移を示す実測線が警報線の下方に逸脱した場合、フィードフォワード制御が解除され、除水ポンプなどの除水手段の停止、または必要に応じて補液ポンプによる被透析者への補液が優先的に行われる。なお、これらの制御は、血液透析装置の制御アプリケーションにしたがって制御部2により制御され、血液透析処理実働部1において実行される。
【0112】
このように、この一実施形態による血液透析装置は、血液指標値を目標に近づける機能を有するのみならず、血液指標値が、被透析者の身体にとって安全な領域から逸脱した場合に、非常時制御を優先的に作動させるように構成される。これにより、被透析者の安全性も確保することができる。
【0113】
次に、血液透析処理の具体的プロセスについて、時間経過にしたがって説明する。
【0114】
すなわち、まず、血液透析処理の開始直後は、BV値が不安定であるため、除水処理を行わない(除水速度a=0)。そして、この間は、除水処理を行わずに、体外循環処理のみを行い、BV値が安定するまで体外循環処理を維持する。
【0115】
その後、BV制御が開始される。すなわち、BV値が安定した後、血液透析装置をリセットして、計測が再開される。なお、このときのそれぞれの被透析者固有のBV値、および選択された制御ポイントから次の目標とする制御ポイントに到達する必要な除水速度UFRは、上述した方法に基づいて決定される。
【0116】
すなわち、血液透析処理の時間経過に伴って上述したフィードフォワード制御により決定された除水速度a〜iのうち、血液透析処理の前半段階において、除水速度dおよび除水速度hは、最大除水速度線を超えているため、この間は、最大除水速度で除水処理を行う。このように、算出された除水速度UFRがあらかじめ規定された最大除水速度UFRmaxを超え、最大除水速度線を上回った場合、フィードフォワード制御は解除され、除水速度は、最大除水速度UFRmax以下、この一実施形態においては、最大除水速度UFRmaxに制御されて除水処理が実行される。なお、そのときの除水速度としては、好適には、最大除水速度UFRmaxが採用されるが、最大除水速度UFRmax以下の除水速度UFRを採用することも可能である。
【0117】
また、除水速度fの部分は、透析時における循環血液量または血液変化量の実測値が逸脱制御線より低くなる部分である。この間は、除水速度fを0として除水処理を実行しないように制御される。
【0118】
このように、血液透析処理の前半段階において、循環血液量が逸脱制御線に示される値より低くなった場合、除水処理が停止される。そして、この除水処理の停止の結果、循環血液量が逸脱制御線に示される値以上となった時点で除水処理が再開される。この再開時における除水処理の初期除水速度は、上述した方法により予測した除水速度とされる。
【0119】
その後、前半段階において、予定していた除水量を除水して所定の余剰血液量だけ減少させた時点で、血液透析処理の後半段階に連続的に移行する。なお、この血液透析処理の後半段階においても前半段階と同様に、特別な場合を除いてフィードフォワード制御による制御が実行され、さらに、この後半段階において血漿補充速度PRRの測定が実行される。
【0120】
すなわち、後半段階の移行直後においては、まず、残りの除水量が目標時間内で終了するように、除水速度の計算が行われる。そして、この除水速度により除水処理を行う。また、この除水速度で除水を行った結果、循環血液量が上述した逸脱制御線(警報線)の範囲を逸脱した場合、この一実施形態においては、逸脱制御線より下回った場合、除水処理を停止し、除水速度を0に制御する。
【0121】
具体的には、たとえば除水速度jで除水を行ったところ、循環血液量(BV値)が上述の逸脱制御線を下回った場合には、フィードフォワード制御を解除して別の制御に切り換える。そして、制御部2による制御により除水ポンプを停止させることによって、次の制御ポイント(計測時点)における除水処理を停止し、その除水速度kを0に制御する。
【0122】
この除水処理の停止の結果、循環血液量(BV値)が逸脱制御線を上回る程度まで回復すると、上述した(11)式に基づいたフィードフォワード制御により、血液指標値、すなわちBV値が上述した一定値になるように、制御部2により除水速度が算出される。そして、この算出された除水速度により除水速度lが決定され、除水処理が行われる。
【0123】
この除水処理を行った後、再度BV値の実測値が逸脱制御線を下回った場合も同様に、再度警報を出力するとともに除水処理を停止し、その間の除水速度mを0に制御する。その後、BV値の実測値が逸脱制御線を上回る程度に回復した段階で、上述の場合と同様の(11)式に基づいた制御により除水速度が算出され、除水処理が行われる。
【0124】
このとき、仮に、この決定除水速度(除水速度n)が最大除水速度を超えていた場合には、実際の除水速度として最大除水速度が採用される。そして、この最大除水速度で除水処理が行われる。
【0125】
以上のようにして血液透析処理の後半段階の制御が実行される。そして、この後半段階において、BV値を一定に制御することにより、血漿補充速度(PRR)の算出が行われる。図7に、この血液透析処理の後半段階の目標制御線と、PRRの測定区間を示す。
【0126】
すなわち、血漿補充速度PRRは、その定義式((3)式)から、第nの計測時点において、
【数18】
が成立する。そして、図7に示すように、血液透析処理の後半段階においては、(12)式におけるΔBVn ´が0になるように制御され、循環血液量(BV値)が一定になる方向に制御されるため、
【数19】
が成立する。
【0127】
すなわち、血液透析処理の後半段階においては、(13)式が成立するように、UFRnが制御される。そして、制御部2により、PRR計測アプリケーション3dにしたがって計算が実行され、この既知の値であるUFRnから、PRRnの値が算出される。
【0128】
また、上述したように、隣り合う2つの計測時点の間の時間間隔は、被透析者の血漿補充速度PRRの変化が無視できるほど小さい時間である。そのため、血液透析処理中において、被透析者の血漿補充速度PRRの変化を逐一算出することが可能となり、実質的に、血漿補充速度PRRを連続して測定することが可能となる。
【0129】
そして、以上のように算出された第nの計測時点におけるPRRnの情報データは、制御部2により操作表示部4に供給され、タッチパネルディスプレイに表示される。
【0130】
これにより、血液透析処理の従事者は、血液透析処理中の被透析者の血漿補充速度PRRの数値を逐一認識することが可能になるため、この血漿補充速度PRRの数値に基づいて、被透析者に対して、適切かつ必要な処置を施すことが可能となる。
【0131】
なお、上述のPRRnの算出においては、フィードフォワード制御により(13)式が成立するように血液透析装置が制御されている。ところが、本発明者の種々の検討の結果、一般的なフィードフォワード制御は、制御線が急激に変化する場合に制御遅れが発生することを知見した。そして、この場合には、血漿補充速度の算出に誤差が生じる可能性がある。
【0132】
すなわち、除水速度を急激に変化させた場合、除水速度の変化に対して、循環血液量の変化は遅れて表出する。この点に加え、フィードフォワード制御は、現在の制御値と実測値との変化に基づいて次の制御値を決定する手法である。そのため、自ら制御を乱してしまい、制御が安定しないという問題があった。
【0133】
そこで、本発明者が鋭意検討を行った結果、制御の乱れる原因としては、変化を抑制する方向に制御を行う場合、制御パラメータの変更に対し、実際の変化が遅れて発生するため、制御量に対し、変化が多く算出されてしまう点にあることを想起するに至った。すなわち、循環血液量や血液変化量を一定の値を維持するように制御すると、実測値が目標値に沿わずに逸脱してしまう点を知見するに至った。
【0134】
そこで、本発明者は、さらに鋭意検討を重ね、フィードフォワード制御を安定させる方法を想起した。
【0135】
すなわち、上述したこの一実施形態による制御に加え、一定の値を保つ制御を開始する直前の制御から、一定値になるように目標制御値を設定し直すようにする。そして、制御を行う時点の度に目標制御値を遅らせていくようにする。
【0136】
また、制御周期から一定の遅れ時間を設定し、実際の制御と実測値の変化との間に、大きな差がなくなった時点から、次の制御周期の除水速度の予測を行うための血液量変化値を測定する。そして、この測定データに基づいて、次の制御周期の除水速度を算出し、この算出された除水速度を設定して血液透析処理実働部1を制御する。
【0137】
これにより、血液透析処理の後半段階において、循環血液量などの血液指標値を、より確実に一定値で維持することが可能となる。
【0138】
以上説明したように、この一実施形態による血液透析装置によれば、血液透析処理の後半段階において、循環血液量が所定値を維持するように、経時的進路が設定され、第n−1の計測時点と第nの計測時点(nは自然数)とにおいて計測された循環血液量変化値の割合%ΔBVを用いて、第nの計測時点の循環血液量が所定値を維持するための除水速度が算出され、血液透析処理実働部1がこの算出された除水速度に基づいて制御されるとともに、
【数20】
が成立するように制御される。そのため、第nの計測時点において、制御された除水速度UFRnから血漿補充速度PRRnを算出することが可能となる。したがって、血液透析処理中の循環血液量が適正に推移するように制御することができ、操作が容易であるのみならず、制御を迅速かつ精細に行うことができ、制御特性を改善することができるとともに、この制御に有効な要素である血漿補充速度を、実質的に血液透析処理中に連続して正確に測定することができる。
【0139】
以上、この発明の一実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0140】
たとえば、上述の一実施形態において挙げた目標制御線や逸脱制御線はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれとは異なる目標制御線や逸脱制御線を用いてもよい。また、図6およびこれに関する説明は、あくまでも一例であり、必ずしも図6に示すパターンに限定されるものではない。
【0141】
また、たとえば上述の一実施形態においては、(13)式を用いて、PRRnの計測を行っているが、(12)式を用いてPRRnの計測を実行することも可能である。すなわち、第nの計測時点における血液量変化値ΔBVn ´と、血液透析装置の操作者または制御部2により設定される計測時間の間隔Tと、制御部2により算出され制御される除水速度UFRnとに基づいて、(12)式からPRRnを算出し、この算出された値をPRRnの情報データとして操作表示部4のタッチパネルディスプレイに表示させるようにすることも可能である。
【0142】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、従事者による操作が容易になるとともに、制御を迅速かつ精細に実行することができるので、血液透析処理において、循環血液量を適性に推移させることができるとともに、制御による血液透析処理を安定化させることができ、さらに、血液透析処理の実行中に、この制御により迅速かつ精細に制御を行いつつ、その制御特性の向上にとって重要な要素である血漿補充速度(プラズマリフィリングレート(PRR))を、連続的に算出、測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態による血液透析装置の全体の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の第1の実施形態による血液透析装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の第1の実施形態による血液透析装置の血液透析処理実働部を示す略線図である。
【図4】この発明の第1の実施形態による血液透析装置による血液変化量の制御の初期段階を説明するためのグラフである。
【図5】この発明の一実施形態による血液透析装置を制御するための目標制御線を示すグラフである。
【図6】この発明の一実施形態による血液透析装置による血液変化量の制御の全体の制御プロセスを示すグラフである。
【図7】この発明の一実施形態の血液透析装置を制御するための目標制御線を示すとともに、PRR測定区間を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1 血液透析処理実働部
2 制御部
2a 中央処理装置
2b メインメモリ
2c ROM
3 補助記憶部
3a オペレーティングシステム
3b 時間計測アプリケーション
3c フィードフォワード制御アプリケーション
3d PRR計測アプリケーション
3e 演算処理アプリケーション
4 操作表示部
5 バス
6 インターフェース
11 ダイアライザー
12 血液回路
13 血液ポンプ
14 血液計測計
15 透析液回路
16 供給弁
17 除水ポンプ
【発明の属する技術分野】
この発明は、血液処理装置に関し、特に、透析条件を制御して血液透析処理を実行しつつ血漿補充速度を算出する血液透析装置に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、腎機能が損なわれた被透析者の治療のために、従来から半透膜を介した透析や濾過によって血液を浄化する治療が行われている。
【0003】
この血液を浄化する治療に用いられる装置、すなわち血液透析装置においては、安全で効果的な血液浄化を行うため、被透析者の体重を適正に維持する機能を有することが重要である。
【0004】
なぜなら、急激あるいは過度に水分を除去してしまうと、被透析者の循環血液量が過剰に減少してしまうためである。そして、この急激または過度の水分除去により、血圧の低下やショックなどが生じる可能性がある。
【0005】
ところが、反対に、水分除去が遅くなると血液を浄化する際に要する時間が長時間化するのみならず、十分な除水ができないと、高血圧や心不全などを引き起こす可能性もある。
【0006】
そのため、被透析者の血液状態を監視しながら除水を行う血液透析装置が提案されている。たとえば、ヘマトクリットメーターによって体液状態を推定する推定器と、この推定器からの出力により、血液ポンプや限外圧を制御する制御装置が提案されている(特許文献1)。
【0007】
特許文献1に記載された装置においては、計測した体液状態によって直接的に除水処理が制御されるため、便利ではあるが、反面、計測値によって除水が直接制御されるため、計測手段が正確でなかったり、異常が生じたりすると大きな問題になる。そのため、このようなフィードフォワード制御においては、制御ラインとは別に独立したラインを設け、このラインに安全機構を装着するのが一般的である。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された装置においては、独立したラインや安全機構を設けるようにしているため、装置構造が複雑になるのみならず、操作が非常に面倒になる。さらに、装置の製造コストも増加してしまう。
【0009】
そこで、さらに簡易な装置が提案された(特許文献2)。この特許文献2に記載された装置は、被透析者の血液状態を監視しつつ、状態によって警報を鳴らすとともに、除水ポンプを停止するようにしたものである。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載された装置においては、透析開始前に測定した血液濃度との比較に基づいて制御を行い、透析開始時の制御条件によって除水制御が行われているか否かを認識するだけであった。そのため、それぞれの被透析者に適応した除水処理を行うことが極めて困難であった。
【0011】
さらに、特許文献2に記載された装置においては、透析条件に従った除水処理が行われなかった場合、医師や操作者などの従事者が、その都度除水量や補液量を調整する必要があった。そのため、安全性を確保することができる反面、操作が煩雑であり面倒なため、人的負担が極めて大きかった。
【0012】
さらに、特許文献2に記載された装置においては、血液回路の静脈液側ラインに血液状態を測定する手段が設けられている。そのため、血液処理器(ダイアライザー)を通った後の血液状態が計測されるため、被透析者のダイレクトな血液状態を反映しないという問題があった。
【0013】
そこで、この問題を解決した血液処理装置を提供することを目的として、本発明者により血液透析装置が提案された。
【0014】
すなわち、本発明者は、血液パラメータを計測する血液計測手段と、血液処理を行う実働部と、所定の血液処理条件で血液処理を行うように実働部を制御する制御部とからなる血液透析装置において、血液計測手段から得られる被透析者の血液指標値に対してあらかじめ規定された血液指標領域を設定し、この血液指標領域における経時的な血液指標値の推移に対応して、制御部が実働部に血液処理条件の変更を指示するようにした血液処理装置を提案している(特許文献3)。
【0015】
そして、この特許文献3に記載された装置によれば、それぞれの被透析者の血液状態を監視しつつ、経時的にそれぞれの被透析者に適応した血液処理を可能とするとともに、使用する際の従事者に対する負担が少なく、かつ、血液処理装置をより簡易な構成とすることができ、使い易く、低コスト化することができるという利点を有する。
【0016】
また、本発明者は、特許文献3に記載された血液処理装置の改善点を想起し、この装置の改善を行った。そして、本発明者は、それぞれの被透析者の血液状態を監視しつつ、経時的にそれぞれの被透析者に適応した血液透析の条件設定、特に除水速度を容易に変更および設定可能な血液処理装置を提案するに至った(特許文献4)。
【0017】
この特許文献4に記載された血液処理装置は、血液パラメータを計測する血液計測手段と、血液処理を行う実働部と、所定の血液処理条件で血液処理を行うように実働部を制御する制御部とを少なくとも有し、制御部が被透析者のサンプリングから得られる血液指標値を血液計測手段から取り込み、あらかじめ設定された血液指標値範囲(設定血液指標値範囲)内で推移するか否かを監視するとともに、この監視対象となる血液指標値が設定範囲を逸脱した場合に、あらかじめ設定された除水速度変化率で実働部の除水速度を変更可能な除水速度制御機能を有する。この特許文献4に記載された血液透析装置は、血液透析処理中におけるそれぞれの時点において、確実に血液指標値を管理することができるという利点を有する。
【0018】
【特許文献1】
特公平6−83723号公報
【特許文献2】
特開平9−149935号公報
【特許文献3】
特開平11−22175号公報
【特許文献4】
特開2001−540号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者が検討を行った結果、特許文献4に記載された血液透析装置は、それぞれの時点において目標とする血液指標値の領域をそれぞれ設定する必要があるため、操作や設定が面倒になるという問題点を知見するに至った。
【0020】
さらに、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、特許文献4に記載された血液透析装置においては、設定する血液指標値が範囲として指定されるために、血液指標値が設定範囲内に存在している限り、設定範囲内の境界近傍の箇所にある場合でも、血液透析装置の制御機構が作動しないという問題点があることを知見した。そして、本発明者は、この問題点に起因して、実際に計測された血液指標値が目標に対して微妙にずれた場合に、制御が遅延化してしまうという問題が生じることを、さらに知見するに至った。
【0021】
また、血液透析処理における除水処理においては、被透析者の血漿補充速度(プラズマリフィリングレート(PRR))を正確に認識することが重要である。しかしながら、このPRRは、血漿が身体の細胞内から血液内(血管内)に移動する速度であり、被透析者の身体内部全体にわたる現象であるため、その測定は極めて困難であり、その測定技術の開発が熱望されていた。
【0022】
したがって、この発明の目的は、血液透析処理中の循環血液量が適正に推移するように制御可能とし、制御手段の機構が単純で、かつ操作が容易であるのみならず、制御を迅速かつ精細に行うことができ、制御特性を改善することができるとともに、この制御に有効な要素である血漿補充速度を、血液透析処理中に正確に算出、測定することができる血液透析装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明は、
血液指標値が所定値を維持するように制御して、血液透析処理において実行される透析条件と、それぞれの計測時点において計測される血液指標値とから、血漿補充速度の算出を行うようにする
ことを特徴とするものである。
【0024】
したがって、この発明は、
血液に関する値からなる血液指標値が血液透析処理の開始後の所定時点以後に所定値を維持するように、経時的進路を設定し、
経時的進路に、それぞれ血液指標値を計測するm箇所の計測時点(mは自然数)を設定し、
m箇所の計測時点のうちの第nの計測時点(nは自然数)において計測された血液指標値を用いて、次の第n+1の計測時点における血液指標値が所定値となるための透析条件を算出し、
第nの計測時点において算出された透析条件に基づいて、第nの計測時点から第n+1の計測時点までの間で血液透析処理を実行する実働手段を制御するとともに、第nの計測時点において実行されている血液透析処理の透析条件に基づいて、第nの計測時点における血漿補充速度を算出する
ことを特徴とする血液透析装置である。
【0025】
この発明において、好適には、任意の第nの計測時点における被透析者の血漿補充速度をPRRn、第nの計測時点における除水速度をUFRn、第nの計測時点における血液変化量をΔBVn ´、第nの計測時点と第nの計測時点に隣り合う計測時点との時間間隔をTnとしたときに、
【数4】
が成立し、ΔBVn ´をほぼ0に制御することによって、
【数5】
を成立させて、第2式における除水速度UFRnの値から血漿補充速度を算出するように構成されている。
【0026】
この発明において、血液透析装置は、典型的には、第1式における時間間隔Tを、隣り合う2つの計測時点における血漿補充速度の差が無視できる程度に設定するように構成されている。
【0027】
この発明において、透析条件は除水処理における除水速度である。そして、この場合、血液透析装置は、好適には、透析条件としての除水速度を、血液透析処理の開始時における血液指標値と、隣り合った2つの計測時点におけるそれぞれの血液指標値の実測値と、2つの計測時点間において制御された除水速度と、2つの計測時点のさらに次の計測時点の目標制御線により決定される血液指標値とに基づいて算出するように構成されている。
【0028】
この発明において、血液透析装置は、典型的には、最大除水速度を設定し、算出された透析条件としての除水速度が最大除水速度を超えた場合に、最大除水速度以下の除水速度で除水処理を行うように構成されている。
【0029】
この発明において、血液透析装置は、典型的には、それぞれの計測時点における透析条件の算出および透析条件に基づく実働手段の制御をフィードフォワード制御により行うように構成されている。さらに、具体的には、血液透析処理の開始時の血液量BV0、任意の第nの計測時点における血液変化量%ΔBVn ´、除水速度UFRn、第nの計測時点の1つ前の第n−1の計測時点における血液変化量%ΔBVn−1 ´、第nの計測時点の1つ後の第n+1の計測時点に対して制御するように設定された血液変化量の割合%ΔBVn+1、第nの計測時点と第n+1の計測時点との間の時間間隔T、制御する第n+1の除水速度UFRn+1から、制御を、
【数6】
に基づいて行うように構成されている。
【0030】
この発明において、血液透析装置は、典型的には、被透析者の血液透析処理中における安全を確保しつつ、血液透析処理における、血液指標値の経時的変化を所定の範囲に制限する逸脱制御線を設定し、血液指標値が逸脱制御線の範囲を逸脱した場合に、フィードフォワード制御以外の制御によって、血液指標値が逸脱制御線により示される範囲に収まる方向に制御する。そして、この発明において、血液透析装置は、好適には、逸脱制御線により示される血液指標値が、目標制御線により示される血液指標値より低くなるように逸脱制御線を設定し、計測された血液指標値が逸脱制御線により示される血液指標値より低い場合に、除水処理を停止するように構成されている。
【0031】
この発明において、血液透析装置は、典型的には、血液透析処理における血液指標値が所定値を維持するように制御を始める所定時点より前の段階において、経時的進路を示す目標制御線を血液指標値が減少する方向に制御するように構成されている。
【0032】
この発明において、血液透析処理を行う従事者が血漿補充速度PRRを認識することができるようにするために、血液透析装置は、典型的には、情報データを出力する出力手段を有し、出力手段に、算出された血漿補充速度の値から構成される情報データを出力するように構成されている。
【0033】
この発明において、好適には、血液透析装置は、第nの計測時点における透析条件と、第nの計測時点において計測された血液指標値とを用いて血漿補充速度を算出するように構成されている。
【0034】
この発明において、典型的には、血液指標値は、ヘマトクリット値、ヘマトクリット値に基づく値、循環血液量、または循環血液量に基づく値であるが、そのほかの指標値を用いることも可能であり、具体的には、血液中の溶質濃度などの循環血液量を規定する血液指標値を用いることが可能である。
【0035】
この発明は、上述の組み合わせに限定されるものではなく、上述した技術的思想のあらゆる組み合わせにより構成することが可能であるとともに、技術的思想の任意の組み合わせを採用することが可能である。
【0036】
上述のように構成されたこの発明による血液透析装置によれば、第nの計測時点(nは自然数)において計測された血液指標値を用いて、次の第n+1の計測時点における血液指標値が所定値となるための透析条件を算出し、第nの計測時点において実行されている血液透析処理の透析条件と第nの計測時点において計測された血液指標値とに基づいて、第nの計測時点における血漿補充速度を算出していることにより、透析条件を適宜補正しながら血液透析処理を適切に実行することができるとともに、この血液透析処理中に血漿補充速度を随時算出、計測することが可能となる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0038】
まず、この発明の一実施形態による血液透析装置について説明する。図1に、この一実施形態による血液透析装置の概略ブロック図を示す。
【0039】
図1に示すように、この一実施形態による血液透析装置は、血液透析処理実働部1、制御部2、補助記憶部3および操作表示部4を有して構成されている。
【0040】
これらのうちの制御部2は、コンピュータの情報処理部を中心として構成される。また、補助記憶部3は、データを記憶し保持するとともに制御部2との間においてデータの入出力を行うためのものである。
【0041】
また、操作表示部4は、従事者によるデータの入力が可能な操作部と、データの表示が可能な表示部とを有して構成されている。また、この操作表示部4は、制御部2からのデータを入力可能に構成されているとともに、制御部2に、操作部からのデータを出力可能に構成されている。
【0042】
また、この操作表示部4は、タッチパネルディスプレイから構成することが可能である。このように操作表示部4をタッチパネルディスプレイにより構成することにより、この一実施形態による血液透析装置の血液透析処理実働部1以外の部分を小型化することができる。そのため、血液透析装置全体も小型化することができ、省スペース化を図ることができる。さらに、血液透析装置を、その操作や監視に適した場所に設置することができるという利点も有する。
【0043】
また、上述したタッチパネルディスプレイからなる操作表示部4における操作部(操作キー)および表示部は、複数の画面に分割して表示することが可能である。これらの操作部および表示部を有する操作表示部4の表示は、制御部2によって制御される。そのため、表示のためのソフトウェアを変更することにより、種々のキー配置や表示形式が選択可能である。
【0044】
このときのソフトウェアは、表示形式を適宜変更するためのソフトウェアのみならず、血液透析装置の使用方法についての説明を表示するアプリケーションをフレキシブルディスクの形で使用することも可能である。このときには、タッチパネルディスプレイからなる操作表示部4の表示部に使用方法、特に使用に際しての留意事項を詳細に表示させることが可能である。
【0045】
また、この一実施形態による血液透析装置を、血液透析処理実働部1と、その他の部分とに分離した構成とすることも可能である。そして、このような構成を採用することにより、操作の際に直接触れることがない血液透析処理実働部1を手元に配置する必要がなくなり、たとえばベッドの横や下などに配置することが可能となるので、より一層の省スペース化を図ることができる。
【0046】
そして、この制御部2、補助記憶部3および操作表示部4からなる装置の具体例としては、構成を機能により2つの主制御部と補助制御部(コントロール・ユニット)とに分割して構成したものを挙げることが可能である。
【0047】
これらのうちの一方の主制御部は、さまざまな透析条件や、処理および操作を設定するとともに、これらの透析条件のデータや、処理および操作のための信号を血液透析処理実働部1に供給することによって、血液透析処理実働部1を制御するための部分として、機能する。また、他方の補助制御部は、血液計測器から供給されたデータを変換するとともに、このデータに基づいて、あらかじめ設定された適切な透析条件を選択するための部分である。
【0048】
また、他の具体例としては、制御部2と補助記憶部3と操作表示部4とを有する構成とした患者監視装置(コンソール)などを挙げることも可能であり、必要に応じて、制御部2のみから患者監視装置(コンソール)を構成することも可能である。
【0049】
また、血液透析処理実働部1以外の部分を、上述したようにタッチパネルディスプレイを用いることによって極めてコンパクトにすることができるので、省スペース化のみならず、操作・表示部などを操作や監視を行いやすい位置に配置することができる。
【0050】
また、制御部2は、操作表示部4から入力され、設定される条件に基づいて、血液透析処理実働部1を制御するためのものである。そして、この制御部2から出力される制御信号により血液透析装置の各部が制御される。
【0051】
たとえば、ダイアライザーの性能、血液流量、透析液流量、透析時間および除水量などを被透析者ごとに設定し、この設定に基づいて制御部2により血液透析処理実働部1が制御され、血液透析処理が行われる。
【0052】
また、この一実施形態による血液透析装置に設けられた制御部2を、機能面から見ると、アプリケーションの関連性に基づいて、具体的に3種類の機能を有する。
【0053】
すなわち、制御部2は、さまざまな透析条件や処理・操作を設定可能とし、種々の値を算出可能とする第1の機能を有する。また、制御部2は、後述する血液計測計において計測され出力されたデータ(血液パラメータ)を、適切な血液指標値やその変化値に変換し、この血液に関するデータに基づいて、あらかじめ設定された適切な透析条件を選択する第2の機能を有する。また、制御部2は、選択された透析条件のデータや処理信号および操作信号を、血液透析処理実働部1に供給して制御する第3の機能を有する。
【0054】
すなわち、操作者が操作表示部4を用いて必要な要件を入力し設定することにより、制御部2は、これらの要件に基づいて血液透析処理実働部1の血液ポンプ、透析液供給ポンプ、透析液排出ポンプ(いずれも図示せず)などを制御し、設定どおりの透析条件によって血液透析処理を実行する。
【0055】
また、血液透析処理を安全に行うためには、透析液の濃度、透析液の温度、静脈圧のチェック、空気のチェック、およびヘパリン注入量などの設定やチェックを、正確に行う必要がある。そのため、これらの要件の設定やチェックもタッチパネルディスプレイからなる操作表示部4を用いて、容易に行うことができる。
【0056】
ここで、上述した制御部2、補助記憶部3および操作表示部4を有する装置の詳細なブロック図を図2に示す。
【0057】
図2に示すように、この一実施形態による血液透析処理装置においては、バス5に、中央処理装置2a(CPU(Central Processing Unit)2a)、RAM(Random Access Memory)などのメインメモリ2bおよび、血液透析装置の機械的な制御を行うプログラムが格納されたROM2c(Read Only Memory 2c)から構成された制御部2と、ハードディスク(Hard Disk,HD)やフレキシブルディスク、またはROMからなる補助記憶部3と、いわゆるGUIを実行する操作表示手段として、たとえば入力部および表示部が一体化されたタッチパネルディスプレイからなる操作表示部4とが接続されている。
【0058】
そして、CPU2a、メインメモリ2bおよびROM2cからなる制御部2と、補助記憶部3と、操作表示部4との間のデータの通信は、バス5を介して行われる。また、このバス5がインターフェース6(I/F)を介して、血液透析処理実働部1に接続されている。
【0059】
また、補助記憶部3には、インストールされたプログラムを実行するとともに、オペレータにより血液制御装置を操作するための、オペレーティングシステム(OS)3aがインストールされている。
【0060】
さらに、補助記憶部3には、このOS3aをベースとして、時間計測アプリケーション3b、フィードフォワード制御アプリケーション3c、PRR計測アプリケーション3d、および演算処理アプリケーション3eがインストールされている。これらのうちの2つのアプリケーション、すなわちフィードフォワード制御アプリケーション3cおよびPRR計測アプリケーション3dが、制御部2により、制御アプリケーションとして、主に血液透析処理において実行される。
【0061】
また、これらのアプリケーションのうちの時間計測アプリケーション3bは、血液透析処理を行う際の経過時間を計測するためのアプリケーションである。そして、この時間計測アプリケーション3bによって、血液透析処理の実行時間の計測や、血液透析処理の切換時間や、複数回の計測時点の設定などを設定することが可能になっている。
【0062】
また、PRR計測アプリケーション3dは、所定のプログラムにしたがって、第nの計測時点において実行されている血液透析処理の透析条件と第nの計測時点において計測された血液指標値とに基づいて、この計測時点における血漿補充速度PRRを算出するためのアプリケーションである。そして、このPRR計測アプリケーション3dが制御部2により実行され、PRR計測アプリケーション3dによって算出されたプラズマリフィリングレート(PRR)が算出されると、制御部2から算出値が出力されて操作表示部4に供給され、この算出値がPRRの値として表示される。
【0063】
また、フィードフォワード制御アプリケーション3cは、後述するフィードフォワード制御を行うためのアプリケーションである。そして、このフィードフォワード制御アプリケーション3cにより設定された、m箇所の計測時点のうちの第nの計測時点(m,nは自然数)において計測された血液指標値を用いて、次の第n+1の計測時点における血液指標値が所定値となるための透析条件が算出され、これによる透析条件に基づいて、血液透析処理が制御される。
【0064】
これにより、この一実施形態による血液透析処理に対するフィードフォワード制御を実行することが可能となる。また、フィードフォワード制御において必要となる演算処理は、演算処理アプリケーション3eのプログラムにしたがって実行される。
【0065】
そして、血液透析装置において、OS3aが起動のベースとなって、これらのアプリケーション3b〜3eが実行される際には、まず、これらのアプリケーションのプログラムが補助記憶部3からメインメモリ2bに一時的に記憶される。その後、メインメモリ2bにロードされたそれぞれのアプリケーションのプログラムに従って、CPU2aにより所定の処理が行われる。
【0066】
すなわち、補助記憶部3にインストールされたOS3aおよび各種アプリケーション3b〜3eは、それらのプログラムに従って制御部2による処理が実行される。そして、これらのアプリケーションにより、血液透析処理実働部1の制御が行われ、この一実施形態による血液透析処理が実行される。
【0067】
次に、血液透析処理実働部1について説明する。図3に、この一実施形態による血液透析処理実働部1を示す。
【0068】
この一実施形態による血液透析処理実働部1は、血液透析の実質的な操作を行うための手段である。すなわち、図3に示すように、血液透析処理実働部1は、透析治療の中心となる血液透析器(ダイアライザー)11、このダイアライザー11に被透析者の血液を供給したり、ダイアライザー11から送出された透析後の血液との間で血液の運搬を行ったりするための血液回路12、血液の運搬に関する駆動力となる血液ポンプ13、血液計測計14、ダイアライザー11に透析液を供給するための透析液回路15、この透析液を制御するための供給弁16および、血液からの除水処理を行う除水ポンプ17を少なくとも有して構成されている。
【0069】
また、血液計測計14は、血液の光透過度、電解質量、血液浸透圧などの各種血液パラメータを計測するための装置である。さらに、この血液計測計14には、温度、流量および圧力などのセンサ(図示せず)が設置されており、これらの情報を測定可能に構成されている。なお、これらのセンサにより測定されたデータは、制御部2によって、計測値データとして処理されたり、制御部2を介して操作表示部4に表示させたり、補助記憶部3に記憶させたりすることが可能である。また、これらの表示および記憶を並行して実行させることも可能である。
【0070】
また、血液計測計14においては、適正な透析条件を選択するために、計測したパラメータを適当な血液指標値に換算する必要がある。
【0071】
この指標値としては、全血液に占める赤血球の容積率を示す「ヘマトクリット値(Ht値)」、被透析者における循環血液量の状態をチェックするための指標値を示す「循環血液量指数(Blood Volume、BV)」、およびこれらのHt値やBV値の変化量などを挙げることができる。
【0072】
そして、これらのデータを操作表示部4の表示部に表示する場合の表示方法としては、血液透析処理を実行している間の透析状態のみを表示するようにしても良く、過去の記憶された測定データと現在の測定データとを、それらの経時的変化を明確かつ理解容易な形で表示させることも可能である。
【0073】
また、上述したセンサにより得られた現在の透析状態のデータを、フレキシブルディスクやICカードなどの外部記録媒体を用いて記録するようにしても良く、これにより、それぞれの被透析者個人における過去の透析結果を長期間保存することが可能となる。
【0074】
以上のようにして、この一実施形態による血液透析装置が構成されている。
【0075】
次に、以上のように構成されたこの一実施形態による血液透析装置の動作について説明する。まず、この動作の前提として、血液指標値として利用する循環血液量に関する定義について説明する。
【0076】
まず、第1に、利用可能な循環血液量とその定義について説明する。
【0077】
すなわち、この発明の一実施形態においては、たとえばHt値や、このHt値から算出されるBV値(Blood Volume値)や、このBV値を透析開始時のBV値であるBV0で除算して百分率表記した、%BV値などの血液循環量を示すものを循環血液量のパラメータとして用いる。なお、この循環血液量のパラメータは、これらに限定されるものでなく、血液中の水分量や血球濃度などを利用することができる。
【0078】
次に、血液指標値としての血液変化量の算出式について説明する。この一実施形態においては、血液指標値の1つの例として、BV変化量の計算式を示す。そして、BV変化量と血液透析処理の開始時における血液量BV0とからBV値を算出することが可能となる。
【0079】
すなわち、BV変化量(ΔBV)の計算式は、
【数7】
と表され、%ΔBV値の計算式は、
【数8】
と表される。
【0080】
第3に、その他のパラメータの定義と算出式について説明する。
【0081】
まず、血漿補充速度PRR(Plasma Refilling Rate)は、血漿が体内から血管に再補充される速度と定義され、各時点における被透析者の除水能を示す指標値である。
【0082】
そして、PRRの算出式は、その定義から、
【数9】
と表すことができる。なお、(3)式において、PRRnは、選択された任意の計測時点(第nの計測時点)におけるプラズマリフィリングレート、UFRnは、第nの計測時点における除水速度、△BVnは、第nの計測時点における血液変化量、Tは計測時点間の時間間隔である。
【0083】
次に、血液透析処理において、血液指標値を経時的進路として用いる目標制御線の具体例について説明する。図4に、この発明の実施形態による前半段階の制御に用いられる目標制御線および実測値線のグラフを示す。
【0084】
図4に示すように、BVが減少する方向に設定された目標制御線A、実測値線Bおよび予測制御線Cを示す。図4に示す縦軸は、%BV値を示し、横軸は透析開始からの経過時間を示す。また、目標制御線Aは、循環血液量(血液指標値)の経時的進路または経時的目標値の目安となる制御線である。そして、この目標制御線Aは、透析前に医師などによって被透析者ごとに設定される。
【0085】
また、実測値線Bは、%ΔBV1 ´、%ΔBV2 ´などの血液指標値の実測値を示す。また、目標制御線Aの近傍の予測制御線Cは、血液透析処理を行う血液透析処理実働部1に対して透析条件の制御を行うための制御線である。この予測制御線Cは、それぞれの計測時点において計測された、%ΔBV1 ´や%ΔBV2 ´などの血液指標値の実測値と、目標制御線Aとに基づいて、たとえば除水速度などの透析条件が算出され、これによって、透析条件の制御が行われる。
【0086】
すなわち、除水処理を開始した時点において、目標除水量を目標透析時間で除算した除水速度UFR0により血液透析処理が実行される。その後、BV値が安定した段階でフィードフォワード制御による制御が開始され、循環血液量に対する制御が行われる。
【0087】
そして、次の第1の計測時点から、その次の第2の計測時点までは、血液透析処理前の体重値から求められたBV値に基づき、目標制御線に乗るように算出された除水速度UFR1により血液透析処理が実施される。さらに、その次の第3の計測時点までは、前の第1の計測時点および第2の計測時点において計測されたそれぞれの血液指標値と、除水速度UFR1および目標制御線からの目標値に基づいて算出された除水速度UFR2とに基づいて、血液透析処理が実行され、除水処理が行われる。
【0088】
このようにして、目標制御線Aから外れてしまいがちな実測線bは、計測時点のたびに新たに設定された透析条件により修正され、目標制御線Aに沿って推移する。そして、このフィードフォワード制御は、順次計測時点ごとに行われる。
【0089】
以下に、このフィードフォワード制御に関して詳細に説明する。すなわち、隣り合う2つの計測時点におけるそれぞれの血液指標値と、制御された除水速度と、目標制御線により決定される目標値とから、透析条件としての除水速度を算出する方法について説明する。
【0090】
まず、透析開始時におけるBV値をBV0とすると、たとえば第1の計測時点において、
【数10】
が成立する。また、第2の計測時点において、
【数11】
が成立する。なお、BV0、%ΔBV1 ´、%ΔBV2 ´およびTは、それぞれ透析開始時のBV値、第1の計測時点のBV変化量の割合、第2計測時点におけるBV変化量の割合および計測時点の間隔を表す。また、%ΔBV3は、目標制御線によって決定される血液変化量の割合である。
【0091】
そして、任意の第n−1の計測時点および第nの計測時点のそれぞれの計測時点においても、
第n−1の計測時点
【数12】
第nの計測時点
【数13】
が成立する。
【0092】
そして、上述した(4)式および(5)式からは、
【数14】
が成立する。
【0093】
ここで、PRR1とPRR2との間の差が無視できるほど小さい場合、すなわち、それぞれの計測時点間の時間間隔Tを、それぞれの計測時点における被透析者のPRRに実質的な変化が生じない程度として、その変化が無視できる程度に短く設定した場合、
【数15】
が成立する。
【0094】
したがって、
【数16】
が成立する。
【0095】
この(10)式においては、%ΔBV3が次の計測時点である第3の計測時点における目標値であり目標制御線により設定され、制御部2による制御によって血液指標値を近づけるべき値である。また、UFR2は、次の計測時点の血液指標値を目標値に近づけるために、第2の計測時点において設定すべき除水速度である。なお、BV0、%ΔBV1 ´、%ΔBV2 ´およびTは、それぞれ既知であり、UFR1も第1の計測時点と第2の計測時点との間の除水速度として既知である。
【0096】
これにより、目標となるBV変化量である%ΔBV3を指定すれば、(10)式により透析条件の除水速度を算出することができる。また、BV目標値は、目標制御線により計測時点によって決定される。反対に、その除水速度により血液透析処理を行うと、次の計測時点におけるBV値を目標とする値、すなわち目標制御線に近づけることが可能となる。
【0097】
また、上述の(10)式を任意の計測時点についてまとめると、
【数17】
と表すことができる。
【0098】
そして、2つの計測時点におけるBV変化量、2つの計測時点の間における除水速度、透析時間Tの計測値、および血液指標値の目標制御線に基づいて決定される2つの計測時点のさらに次の計測時点における設定された血液指標値に基づいて、次の計測時点における血液指標値を目標に近づけるための設定すべき除水速度を求めることができる。
【0099】
なお、(11)式において、BV0が透析開始時の初期血液量、%△BVn ´が選択された任意の計測時点(第nの計測時点)における血液変化量の割合、%△BVn−1 ´が選択された任意の計測時点の1つ前の計測時点(第n−1の計測時点)における血液変化量の割合、%△BVn+1がフィードフォワード制御を行うべき次の計測時点(第n+1の計測時点)における設定された血液変化量の割合、Tが計測時間、UFRnが選択された計測時点における除水速度、UFRn+1が選択された第nの計測時点から第n+1の計測時点までにおいて、目標となる血液指標値に到達するために、血液処理実働部1に対して制御を行う際に設定される除水速度である。
【0100】
なお、上述した(10)式や(11)式が成立するためには、これらの式を導出するために仮定した「隣り合った2つの計測時点におけるPRRに実質的な差がない」という条件が前提となっている。そして、この前提条件を満足するためには、PRRの差が無視できる程度にそれぞれの計測時点の時間間隔Tを短くすることが必要となる。
【0101】
さらに、この制御方法においては、透析開始時の初期血液量BV0に関する誤差、制御遅れ、またはその他の要因によって、制御自体に誤差が生じる可能性も否定できない。しかしながら、実際の制御においては、それぞれの計測時点において除水速度を設定し直すことにより、制御を確実なものとしている。
【0102】
具体的には、図4のグラフに示すように、それぞれの計測時点の間の間隔を短くするとともに、その都度除水速度を設定するようにしていることにより、生じる誤差は実質的な問題として表出することはない。
【0103】
以上のようにして、この一実施形態による血液透析装置において、循環血液量の制御(BVコントロール)が行われる。
【0104】
次に、上述した循環血液量制御方法に基づいた血液透析処理の具体的な方法およびこの制御に基づいた血漿補充速度(プラズマリフィリングレート(PRR))の測定方法について説明する。図5に、この一実施形態による血液透析処理のBV制御における血液指標値の経時的進路としての目標設定値のグラフを示す。
【0105】
すなわち、図5に示すように、この一実施形態によるBV制御は、前半段階と後半段階との2段階により行われる。そして、前半段階においては、初期血液量から適正血液量まで血液量を減少させる方向に制御される。また、後半段階においては、循環血液量が適正血液量の一定値の状態を維持するように制御される。
【0106】
前半段階においては、制御部2の制御に基づいて、血液透析処理の開始時における初期血液量BV0から適正血液量BVstになるまでの間、余剰な水分の除水処理が行われる。これにより、循環血液量が減少する方向に制御される。そして、血液透析装置により、目標制御線に沿って余剰血液量(余剰水分量)の除水が行われ、循環血液量BVが、被透析者にとって適正な循環血液量、すなわち適正血液量BVstになったときに、前半段階が終了する。
【0107】
その後、この適正血液量BVstを、所定値を維持するように、制御部2による血液透析装置が制御され、血液透析処理が実行される。この後半段階において適正血液量BVstを維持するように血液透析処理を行う間においても、被透析者の体内の細胞からは、血管内の血液に水分が供給され続けている。そして、この体内の細胞から血管内の血液への水分の移動と、除水処理により行われる除水との間において、それらが均衡を保つように制御しつつ血液透析処理を行うことにより、過剰に水分を除水することなく、血液透析処理を実行することが可能となる。
【0108】
さらに、後半段階においては、細胞から血管内に補充される血漿の量に相当する量の除水を行っていることにより、被透析者にとって適正となる循環血液量を維持する制御が行われる。これとともに、この循環血液量の維持により血漿補充速度(PRR)の算出が行われる。なお、PRRの算出方法に関する詳細は後述する。
【0109】
以上のBV制御プロセスに基づいて実行される血液透析処理の具体的な一例を、図6に示す。なお、図6においては、図4と同様に、目標制御線以外に、循環血液量の実測値線が示され、さらに、逸脱制御線(警報線)、最大除水速度線および除水速度履歴が示されている。
【0110】
図6中、目標制御線の下方に平行な右下がりの斜め線および水平線として示されるのが、逸脱制御を行うための逸脱制御線である。この一実施形態による血液透析処理の通常時においては、フィードフォワード制御などの制御方法が作用する一方で、血液指標値が逸脱制御線を逸脱する場合には、通常の制御方法と異なる非常時制御が作用する。
【0111】
具体的には、図6に示すように、実測値の推移を示す実測線が警報線の下方に逸脱した場合、フィードフォワード制御が解除され、除水ポンプなどの除水手段の停止、または必要に応じて補液ポンプによる被透析者への補液が優先的に行われる。なお、これらの制御は、血液透析装置の制御アプリケーションにしたがって制御部2により制御され、血液透析処理実働部1において実行される。
【0112】
このように、この一実施形態による血液透析装置は、血液指標値を目標に近づける機能を有するのみならず、血液指標値が、被透析者の身体にとって安全な領域から逸脱した場合に、非常時制御を優先的に作動させるように構成される。これにより、被透析者の安全性も確保することができる。
【0113】
次に、血液透析処理の具体的プロセスについて、時間経過にしたがって説明する。
【0114】
すなわち、まず、血液透析処理の開始直後は、BV値が不安定であるため、除水処理を行わない(除水速度a=0)。そして、この間は、除水処理を行わずに、体外循環処理のみを行い、BV値が安定するまで体外循環処理を維持する。
【0115】
その後、BV制御が開始される。すなわち、BV値が安定した後、血液透析装置をリセットして、計測が再開される。なお、このときのそれぞれの被透析者固有のBV値、および選択された制御ポイントから次の目標とする制御ポイントに到達する必要な除水速度UFRは、上述した方法に基づいて決定される。
【0116】
すなわち、血液透析処理の時間経過に伴って上述したフィードフォワード制御により決定された除水速度a〜iのうち、血液透析処理の前半段階において、除水速度dおよび除水速度hは、最大除水速度線を超えているため、この間は、最大除水速度で除水処理を行う。このように、算出された除水速度UFRがあらかじめ規定された最大除水速度UFRmaxを超え、最大除水速度線を上回った場合、フィードフォワード制御は解除され、除水速度は、最大除水速度UFRmax以下、この一実施形態においては、最大除水速度UFRmaxに制御されて除水処理が実行される。なお、そのときの除水速度としては、好適には、最大除水速度UFRmaxが採用されるが、最大除水速度UFRmax以下の除水速度UFRを採用することも可能である。
【0117】
また、除水速度fの部分は、透析時における循環血液量または血液変化量の実測値が逸脱制御線より低くなる部分である。この間は、除水速度fを0として除水処理を実行しないように制御される。
【0118】
このように、血液透析処理の前半段階において、循環血液量が逸脱制御線に示される値より低くなった場合、除水処理が停止される。そして、この除水処理の停止の結果、循環血液量が逸脱制御線に示される値以上となった時点で除水処理が再開される。この再開時における除水処理の初期除水速度は、上述した方法により予測した除水速度とされる。
【0119】
その後、前半段階において、予定していた除水量を除水して所定の余剰血液量だけ減少させた時点で、血液透析処理の後半段階に連続的に移行する。なお、この血液透析処理の後半段階においても前半段階と同様に、特別な場合を除いてフィードフォワード制御による制御が実行され、さらに、この後半段階において血漿補充速度PRRの測定が実行される。
【0120】
すなわち、後半段階の移行直後においては、まず、残りの除水量が目標時間内で終了するように、除水速度の計算が行われる。そして、この除水速度により除水処理を行う。また、この除水速度で除水を行った結果、循環血液量が上述した逸脱制御線(警報線)の範囲を逸脱した場合、この一実施形態においては、逸脱制御線より下回った場合、除水処理を停止し、除水速度を0に制御する。
【0121】
具体的には、たとえば除水速度jで除水を行ったところ、循環血液量(BV値)が上述の逸脱制御線を下回った場合には、フィードフォワード制御を解除して別の制御に切り換える。そして、制御部2による制御により除水ポンプを停止させることによって、次の制御ポイント(計測時点)における除水処理を停止し、その除水速度kを0に制御する。
【0122】
この除水処理の停止の結果、循環血液量(BV値)が逸脱制御線を上回る程度まで回復すると、上述した(11)式に基づいたフィードフォワード制御により、血液指標値、すなわちBV値が上述した一定値になるように、制御部2により除水速度が算出される。そして、この算出された除水速度により除水速度lが決定され、除水処理が行われる。
【0123】
この除水処理を行った後、再度BV値の実測値が逸脱制御線を下回った場合も同様に、再度警報を出力するとともに除水処理を停止し、その間の除水速度mを0に制御する。その後、BV値の実測値が逸脱制御線を上回る程度に回復した段階で、上述の場合と同様の(11)式に基づいた制御により除水速度が算出され、除水処理が行われる。
【0124】
このとき、仮に、この決定除水速度(除水速度n)が最大除水速度を超えていた場合には、実際の除水速度として最大除水速度が採用される。そして、この最大除水速度で除水処理が行われる。
【0125】
以上のようにして血液透析処理の後半段階の制御が実行される。そして、この後半段階において、BV値を一定に制御することにより、血漿補充速度(PRR)の算出が行われる。図7に、この血液透析処理の後半段階の目標制御線と、PRRの測定区間を示す。
【0126】
すなわち、血漿補充速度PRRは、その定義式((3)式)から、第nの計測時点において、
【数18】
が成立する。そして、図7に示すように、血液透析処理の後半段階においては、(12)式におけるΔBVn ´が0になるように制御され、循環血液量(BV値)が一定になる方向に制御されるため、
【数19】
が成立する。
【0127】
すなわち、血液透析処理の後半段階においては、(13)式が成立するように、UFRnが制御される。そして、制御部2により、PRR計測アプリケーション3dにしたがって計算が実行され、この既知の値であるUFRnから、PRRnの値が算出される。
【0128】
また、上述したように、隣り合う2つの計測時点の間の時間間隔は、被透析者の血漿補充速度PRRの変化が無視できるほど小さい時間である。そのため、血液透析処理中において、被透析者の血漿補充速度PRRの変化を逐一算出することが可能となり、実質的に、血漿補充速度PRRを連続して測定することが可能となる。
【0129】
そして、以上のように算出された第nの計測時点におけるPRRnの情報データは、制御部2により操作表示部4に供給され、タッチパネルディスプレイに表示される。
【0130】
これにより、血液透析処理の従事者は、血液透析処理中の被透析者の血漿補充速度PRRの数値を逐一認識することが可能になるため、この血漿補充速度PRRの数値に基づいて、被透析者に対して、適切かつ必要な処置を施すことが可能となる。
【0131】
なお、上述のPRRnの算出においては、フィードフォワード制御により(13)式が成立するように血液透析装置が制御されている。ところが、本発明者の種々の検討の結果、一般的なフィードフォワード制御は、制御線が急激に変化する場合に制御遅れが発生することを知見した。そして、この場合には、血漿補充速度の算出に誤差が生じる可能性がある。
【0132】
すなわち、除水速度を急激に変化させた場合、除水速度の変化に対して、循環血液量の変化は遅れて表出する。この点に加え、フィードフォワード制御は、現在の制御値と実測値との変化に基づいて次の制御値を決定する手法である。そのため、自ら制御を乱してしまい、制御が安定しないという問題があった。
【0133】
そこで、本発明者が鋭意検討を行った結果、制御の乱れる原因としては、変化を抑制する方向に制御を行う場合、制御パラメータの変更に対し、実際の変化が遅れて発生するため、制御量に対し、変化が多く算出されてしまう点にあることを想起するに至った。すなわち、循環血液量や血液変化量を一定の値を維持するように制御すると、実測値が目標値に沿わずに逸脱してしまう点を知見するに至った。
【0134】
そこで、本発明者は、さらに鋭意検討を重ね、フィードフォワード制御を安定させる方法を想起した。
【0135】
すなわち、上述したこの一実施形態による制御に加え、一定の値を保つ制御を開始する直前の制御から、一定値になるように目標制御値を設定し直すようにする。そして、制御を行う時点の度に目標制御値を遅らせていくようにする。
【0136】
また、制御周期から一定の遅れ時間を設定し、実際の制御と実測値の変化との間に、大きな差がなくなった時点から、次の制御周期の除水速度の予測を行うための血液量変化値を測定する。そして、この測定データに基づいて、次の制御周期の除水速度を算出し、この算出された除水速度を設定して血液透析処理実働部1を制御する。
【0137】
これにより、血液透析処理の後半段階において、循環血液量などの血液指標値を、より確実に一定値で維持することが可能となる。
【0138】
以上説明したように、この一実施形態による血液透析装置によれば、血液透析処理の後半段階において、循環血液量が所定値を維持するように、経時的進路が設定され、第n−1の計測時点と第nの計測時点(nは自然数)とにおいて計測された循環血液量変化値の割合%ΔBVを用いて、第nの計測時点の循環血液量が所定値を維持するための除水速度が算出され、血液透析処理実働部1がこの算出された除水速度に基づいて制御されるとともに、
【数20】
が成立するように制御される。そのため、第nの計測時点において、制御された除水速度UFRnから血漿補充速度PRRnを算出することが可能となる。したがって、血液透析処理中の循環血液量が適正に推移するように制御することができ、操作が容易であるのみならず、制御を迅速かつ精細に行うことができ、制御特性を改善することができるとともに、この制御に有効な要素である血漿補充速度を、実質的に血液透析処理中に連続して正確に測定することができる。
【0139】
以上、この発明の一実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0140】
たとえば、上述の一実施形態において挙げた目標制御線や逸脱制御線はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれとは異なる目標制御線や逸脱制御線を用いてもよい。また、図6およびこれに関する説明は、あくまでも一例であり、必ずしも図6に示すパターンに限定されるものではない。
【0141】
また、たとえば上述の一実施形態においては、(13)式を用いて、PRRnの計測を行っているが、(12)式を用いてPRRnの計測を実行することも可能である。すなわち、第nの計測時点における血液量変化値ΔBVn ´と、血液透析装置の操作者または制御部2により設定される計測時間の間隔Tと、制御部2により算出され制御される除水速度UFRnとに基づいて、(12)式からPRRnを算出し、この算出された値をPRRnの情報データとして操作表示部4のタッチパネルディスプレイに表示させるようにすることも可能である。
【0142】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、従事者による操作が容易になるとともに、制御を迅速かつ精細に実行することができるので、血液透析処理において、循環血液量を適性に推移させることができるとともに、制御による血液透析処理を安定化させることができ、さらに、血液透析処理の実行中に、この制御により迅速かつ精細に制御を行いつつ、その制御特性の向上にとって重要な要素である血漿補充速度(プラズマリフィリングレート(PRR))を、連続的に算出、測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態による血液透析装置の全体の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の第1の実施形態による血液透析装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の第1の実施形態による血液透析装置の血液透析処理実働部を示す略線図である。
【図4】この発明の第1の実施形態による血液透析装置による血液変化量の制御の初期段階を説明するためのグラフである。
【図5】この発明の一実施形態による血液透析装置を制御するための目標制御線を示すグラフである。
【図6】この発明の一実施形態による血液透析装置による血液変化量の制御の全体の制御プロセスを示すグラフである。
【図7】この発明の一実施形態の血液透析装置を制御するための目標制御線を示すとともに、PRR測定区間を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1 血液透析処理実働部
2 制御部
2a 中央処理装置
2b メインメモリ
2c ROM
3 補助記憶部
3a オペレーティングシステム
3b 時間計測アプリケーション
3c フィードフォワード制御アプリケーション
3d PRR計測アプリケーション
3e 演算処理アプリケーション
4 操作表示部
5 バス
6 インターフェース
11 ダイアライザー
12 血液回路
13 血液ポンプ
14 血液計測計
15 透析液回路
16 供給弁
17 除水ポンプ
Claims (14)
- 血液に関する値からなる血液指標値が血液透析処理の開始後の所定時点以後に所定値を維持するように、経時的進路を設定し、
上記経時的進路に、それぞれ血液指標値を計測するm箇所の計測時点(mは自然数)を設定し、
上記m箇所の計測時点のうちの第nの計測時点(nは自然数)において計測された血液指標値を用いて、次の第n+1の計測時点における血液指標値が上記所定値となるための透析条件を算出し、
上記第nの計測時点において算出された透析条件に基づいて、上記第nの計測時点から上記第n+1の計測時点までの間、血液透析処理を実行する実働手段を制御するとともに、上記第nの計測時点において実行されている血液透析処理の透析条件に基づいて、上記第nの計測時点における血漿補充速度を算出する
ことを特徴とする血液透析装置。 - 上記第1式における上記時間間隔Tを、隣り合う2つの計測時点における血漿補充速度の差が無視できる程度に設定する
ことを特徴とする請求項2記載の血液透析装置。 - 上記透析条件が除水処理における除水速度である
ことを特徴とする請求項1記載の血液透析装置。 - 上記透析条件としての除水速度を、
上記血液透析処理の開始時における血液指標値と、
隣り合った2つの計測時点におけるそれぞれの血液指標値の実測値と、
上記2つの計測時点間において制御された除水速度と、
上記2つの計測時点のさらに次の計測時点の上記目標制御線により決定される血液指標値とに基づいて算出する
ことを特徴とする請求項4記載の血液透析装置。 - 最大除水速度を設定し、
上記算出された透析条件としての除水速度が上記最大除水速度を超えた場合に、上記最大除水速度以下の除水速度で上記除水処理を行う
ことを特徴とする請求項4記載の血液透析装置。 - 上記それぞれの計測時点における透析条件の算出および上記透析条件に基づく実働手段の制御をフィードフォワード制御により行う
ことを特徴とする請求項1記載の血液透析装置。 - 上記血液指標値の経時的変化に対して所定の範囲を有する逸脱制御線を設定し、
上記血液指標値が上記逸脱制御線の範囲を逸脱した場合に、上記フィードフォワード制御以外の制御によって、上記血液指標値が上記逸脱制御線により示される範囲に収まる方向に制御を行う
ことを特徴とする請求項1記載の血液透析装置。 - 上記逸脱制御線を、上記逸脱制御線により示される血液指標値が上記目標制御線により示される血液指標値より低くなるように設定し、
上記計測された血液指標値が上記逸脱制御線により示される血液指標値より低い場合に、除水処理を停止する
ことを特徴とする請求項9記載の血液透析装置。 - 上記血液透析処理の上記所定時点より前の段階において、
経時的進路を示す目標制御線を上記血液指標値が減少する方向とする
ことを特徴とする請求項1記載の血液透析装置。 - 上記第nの計測時点における透析条件と、上記第nの計測時点において計測された血液指標値とを用いて上記血漿補充速度を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の血液透析装置。 - 情報データを出力する出力手段を有し、
上記出力手段に、上記算出された血漿補充速度の値を出力する
ことを特徴とする請求項1記載の血液透析装置。 - 上記血液指標値が、ヘマトクリット値、上記ヘマトクリット値に基づく値、循環血液量または上記循環血液量に基づく値である
ことを特徴とする請求項1記載の血液透析装置。
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Cited By (4)
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JP2007143815A (ja) * | 2005-11-28 | 2007-06-14 | Nikkiso Co Ltd | 血液浄化装置及び血液浄化方法 |
JP2008035930A (ja) * | 2006-08-02 | 2008-02-21 | Jms Co Ltd | 血液透析装置 |
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-
2003
- 2003-03-27 JP JP2003088580A patent/JP2004290493A/ja active Pending
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