JP2004284237A - マグネシウム系金属の防食性被覆構造 - Google Patents
マグネシウム系金属の防食性被覆構造 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】マグネシウム系金属の表面を陽極酸化による酸化物層で被覆し、この酸化物層に重ねてアクリル樹脂またはエポキシ樹脂からなる樹脂1重量部に対して、アルミニウム系、チタン系、ジルコニウム系のカップリング剤を0.1〜2重量部を含有する変性樹脂層を被覆すると共に、前記酸化物層を貫通する細孔を介して変性樹脂を好ましくはマグネシウム系金属の表面まで浸透させて、マグネシウム系金属の表面に変性樹脂層を接着した防食性被覆構造とする。マグネシウム系金属の表面まで浸透した変性樹脂は、マグネシウム系金属と直接に接着して結合し、複層の防食性被覆は一体となってマグネシウム系金属の表面に強固に固定される。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、マグネシウム系金属の表面に耐食性を向上させる防食性被覆を形成したマグネシウム系金属の防食性被覆構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム系金属は、軽量で比強度に優れた金属工業材料の一つであり、工業製品の軽量化やそれに伴うエネルギー消費の低減に役立つため、特に自動車部品や家電製品などの素材に好適なものである。
【0003】
しかし、マグネシウム系金属は、そのイオン化傾向からもわかるように電位的に卑な物性であり、耐食性が弱いという欠点がある。具体的には、マグネシウムは、強アルカリには強いが、中性や弱酸性の液体には容易に溶解する。
【0004】
そこで、従来のマグネシウム系金属に対しては特定の防食対策として、例えば物理的蒸着法(PVD)または化学的蒸着法(CVD)による表面改質処理や化成処理もしくは陽極酸化処理が採用されてきた。
【0005】
化成処理は、クロム酸を主成分とする処理液を使用してマグネシウム系金属の表面に安定なクロム化合物の皮膜を形成したり、クロムフリーの皮膜を形成する防食処理である。
【0006】
また、陽極酸化処理は、アルカリ性の電解液中にマグネシウム系金属を電極として浸漬し、陽極で酸化マグネシウムを主体とする皮膜を形成する場合などがある。
【0007】
陽極酸化処理によって形成される皮膜(以下、陽極酸化皮膜と称する。)は、図1および図2(いずれも図面代用写真)に示すように、表面に多数の細孔が開口する多孔質性の皮膜であり、マグネシウム系金属の表面に均一に厚く形成することは困難である。なぜなら、陽極酸化処理の際に、素地のマグネシウム合金が溶解し、ガスが発生するからである。
【0008】
また、マグネシウム合金の表面に陽極酸化皮膜を形成し、これを下地としてその上にエポキシ樹脂やメラミン樹脂などの熱硬化性樹脂塗料を被覆し、陽極酸化皮膜の細孔(ピンホール)を埋め、さらにその上にめっき層を形成する防食性皮膜構造が公知である(特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−152393号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来の防食性皮膜構造は、陽極酸化皮膜の細孔を埋めることはできるが、陽極酸化皮膜とマグネシウム系金属との密着性が不充分であり、皮膜が僅かに剥がれただけで、皮膜の防食性を維持することが難しくなり、長期間に亘って防食性皮膜構造を維持することができなくなる場合がある。
【0011】
また、種々のマグネシウム系金属のうち、特にアルミニウムを含有しない工業用純マグネシウムや亜鉛−ジルコニウム(Zn−Zr)系マグネシウム合金のZK60材など、またはアルミニウム低含有量のマグネシウム合金AZ31(Al3%−Zn1%)などは特に耐食性が充分に保てないものである。
【0012】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して酸化物層(陽極酸化皮膜)と基材のマグネシウム系金属との界面を確実に接着させるようにして、耐久性に優れたマグネシウム系金属の防食性被覆構造とすることである。
【0013】
特に、湿度の高い環境や水中においても、酸化物層とその上に被覆される樹脂層とを確実に接着することにより、それより下方の層を保護し、陽極酸化被膜とマグネシウム系金属との界面を充分に密着させ、これらの皮膜がどの層からも剥がれ難いマグネシウム系金属の防食性被覆構造にすることである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、マグネシウム系金属の表面を陽極酸化による酸化物層で被覆し、この酸化物層の表面をアルミニウム系、チタン系またはジルコニウム系のカップリング剤で変性した変性樹脂で被覆すると共に、前記酸化物層の表面に開口する細孔に前記変性樹脂を浸透させかつ前記表面に被膜を形成してなるマグネシウム系金属の防食性被覆構造としたのである。
【0015】
上記したように構成される防食性被覆構造では、表面に多数の細孔が開口する酸化物層に所定のカップリング剤を被覆および浸透させるので、変性樹脂が多数の細孔の一部またはその全部に進入し、これらを埋めた状態で被膜形成することにより、両層の界面は多数の点で繋がって係止され、そのため変性樹脂層と酸化物層が一体的に接着されて酸化物層の表面に封孔性の皮膜が形成される。
【0016】
酸化物層の細孔に変性樹脂が浸入している状態を微視的に詳しく説明すると、変性樹脂の一部はマグネシウム系金属の内部まで浸透していればよいが、好ましくはその一部または全部が表面から裏側にまで貫通するように浸透し、マグネシウム系金属の表面と変性樹脂は直接に接着して、その接着力によりマグネシウム系金属表面と酸化物層とが剥がれないように固定される。このようにして、防食性被覆構造に層間剥離が起こり難くなる。
【0017】
特に酸化物層を強固にマグネシウム系金属に結合させることのできる好ましい変性樹脂としては、変性アクリル樹脂または変性エポキシ樹脂である。
【0018】
変性樹脂として、樹脂樹脂1重量部に対し、アルミニウム系、チタン系もしくはジルコニウム系のカップリング剤を0.1〜2重量部を含有する変性樹脂を採用すると、浸透した変性樹脂が、マグネシウムの表面の陽極酸化による酸化物層またはマグネシウム系金属に対し、確実に接着して酸化物層を強固にマグネシウム系金属に結合した被覆構造が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
この発明に用いられるマグネシウム系金属は、マグネシウムを主成分とする金属であればよく、工業用純マグネシウムの他、ASTMで分類された記号で示されるAZ31、AZ91、ZK60などの周知のマグネシウム合金を広く用いることができる。
【0020】
この発明でいう陽極酸化による酸化物膜は、マグネシウム表面に耐食性に優れた複合酸化物薄膜を形成させるように電気化学的表面処理によって得られるものであり、水酸化アルミニウム、水酸化カリウム等の強アルカリ性水溶液中でマグネシウムを電極(陽極)として陽極酸化を行うことにより、マグネシウム表面に酸化マグネシウムとアルミン酸マグネシウムの複合酸化物(セラミックス)膜などを形成させることができる。
【0021】
通常、陽極酸化膜をマグネシウム系金属の表面に生成させるには、直流電圧50〜100V、陽極電流密度1〜2A/dm2で5〜60分間の処理を採用できる。直流電圧が上記所定範囲未満で低すぎたり、陽極電流密度が上記所定範囲未満の場合は、反応が遅くなったり膜厚が不均一になったりして好ましくなく、また上記所定範囲を超える電圧及び電流密度では、陽極酸化膜が粗くなったり膜厚が不均一に形成されやすいからである。また、陽極酸化法としては、JISに規定されているような周知の方法および条件を採用することができる。
【0022】
次に、この発明に用いるカップリング剤として、アルミニウム系、チタン系もしくはジルコニウム系のアルコキシド、キレート、アシレートなどからなるカップリング剤およびこのようなカップリング剤で変性された変性樹脂について説明する。
【0023】
アルミニウム系カップリング剤は、アルミニウムキレートまたはアルミニウムアルコキシドからなるものが代表的であり、これによって変性した樹脂は、アルミニウムキレート変性樹脂(キレートが熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の共重合成分として導入されているもの)、もしくはこれを一部含み、さらに残部の混合成分がアルミニウムキレート化合物からなるアルミニウムキレート含有樹脂組成物であるか、またはアルミニウムアルコキシド変性樹脂(アルコキシドが熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の共重合成分として導入されているもの)、もしくはこれを一部含み、さらに残部の混合成分がアルミニウムアルコキシドからなるアルミニウムアルコキシド含有樹脂組成物である。
【0024】
変性樹脂が、カップリング剤の共重合成分または混合成分からなる点については、以下に説明するチタン系のアルコキシドまたはキレートからなるカップリング剤、またはジルコニウム系のアルコキシドまたはキレートからなるカップリング剤についても同じである。
【0025】
アルミニウムキレート化合物の代表例としては、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが挙げられる。
また、アルミニウムアルコキシドの代表例としては、アルミニウムエトキサイドが挙げられる。アルミニウムアルコレートは反応性に富むので、安定性面からアルミニウムキレートがより好ましい。
【0026】
チタン系カップリング剤としては、チタン系アルコキシド、チタン系キレートもしくはチタン系アシレートがあり、例えばチタンアルコキシド、チタンキレートまたはチタンアシレートが挙げられ、安定性から好ましいものはチタンキレート、チタンアシレートである。キレート化合物等の代表例としては、テトラメチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、ポリヒドロキシチタンステアレートが挙げられる。
【0027】
ジルコニウム系カップリング材としては、ジルコニウムアルコキシドやジルコニウムキレートおよびジルコニウムアシレートがあり、安定性からジルコニウムキレート、ジルコニウムアシレートが好ましい。特に、ジルコニウムを添加したZK60などのマグネシウム合金にはジルコニウム系カップリング材が好ましい。ジルコニウムキレート等の具体例としては、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムアセチルアセテートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ジルコニウムアセテートなどが挙げられる。
【0028】
上述したようなカップリング剤を配合した変性樹脂の主成分の樹脂としては、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂からなるものを目的に応じて適宜に採用できるが、代表例としてエポキシ樹脂またはアクリル樹脂が挙げられる。
【0029】
この発明でいう変性樹脂は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の共重合成分として分子内に変性基が導入されているか、または変性樹脂を一部含み、さらに残部がアルミキレートなどのキレート化合物やアルコキシドなどの金属有機化合物が浸透成分として均一に混合されているような樹脂組成物をいう。
【0030】
アルコキシドやキレート化合物等の金属有機化合物に含まれる金属としては、アルミニウム、チタン、ジルコニウム以外に、シリコン、マグネシウム、すず、ニッケルなどが挙げられる。この場合でも、密着性に関する接着機構は同じであり、細孔を介して酸化物層と接着するか、さらにマグネシウム系金属表面と接着することで良好な層間の接着性が得られる。
【0031】
変性された熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の具体例としては、変性アクリル樹脂または変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0032】
因みにアクリル樹脂は、アクリル酸およびその誘導体を重合することにより製造できる樹脂であり、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルなどの重合体または樹脂改質のための他の単量体との共重合体が挙げられる。
【0033】
このようなアクリル樹脂は、酸化物層の表面に対して塗料に調製したものを塗布して硬化させることにより皮膜を形成するが、アクリル樹脂塗料は、メタクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸などの共重合物であり、熱硬化型塗料にする場合はさらにメラミン樹脂溶液と混合したものである。
【0034】
また、エポキシ樹脂は、エピクロルヒドリンとビスフェノール類または多価アルコールとの反応で得られる鎖状縮合体であり、一般には分子内に2個以上のエポキシ基を有し、アミンや酸無水物などで硬化する熱硬化性樹脂である。
【0035】
このようなアクリル樹脂またはエポキシ樹脂からなる樹脂1重量部に対し、浸透性を向上させるために前記所定のカップリング剤を0.1〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部配合する。例えばアルミキレートを0.1〜1重量部配合した変性樹脂組成物を採用することが好ましい。
【0036】
このように配合量を限定する理由は、カップリング剤の配合量が0.1重量部未満では、変性樹脂の酸化物層内への浸透性が不足し、経時による陽極酸化被膜との充分な密着性が得られにくいからである。また、カップリング剤の含有量が2重量部を超える多量の配合では、皮膜の乾燥性が不良またはフクレの原因になり、またそれ以上多量に配合しても効果は向上せず、却って経済性が損なわれるからである。
【0037】
このようにして調製される浸透成分を含有する変性樹脂は、塗料として酸化物層の表面に塗布された後、乾燥および加熱する手段等により硬化させる。前記の塗布方法は、周知の塗布法を採用できるが、平滑で均一な膜厚にするためには噴霧法(エアスプレー、エアレススプレーなど)を採用することが好ましい。
【0038】
なお、この発明に用いる変性樹脂に対して、必要に応じて周知の添加剤を添加してもよく、添加剤の具体例としては、貯蔵安定剤、界面活性剤(撥水防止剤)、レベリング剤、消泡剤、顔料などが挙げられる。
【0039】
【実施例および比較例】
〔実施例1〕
50×100×2mmの厚さのマグネシウム系金属のAZ31(圧延材)に対して、陽極酸化処理を行なって厚さ5μmの酸化物層を形成し、この酸化物層の上に重ねて膜厚10μmとなるようにアルミニウムキレート成分(川研ファインケミカル社製:アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート))を含有するアクリル樹脂系塗料A−1(アクリル樹脂1重量部に対してアルミニウムキレートを0.2重量部含有するもの)をエアスプレーで塗布し、乾燥硬化して防食性被覆を形成した。
【0040】
また、試験片の防食性被覆の密着性評価として以下の碁盤目試験を行ない、これらの結果を表1に示した。
すなわち、初期密着性を調べるため、マグネシウム系金属に防食性被覆を形成した試料の表面に、カッターナイフで切り目を入れて2mm×2mmのマスを100個作り、セロハンテープで剥離試験を行い、塗膜剥離のないマス目の数を測定した。また、密着性耐久試験として、JIS K 5600−7−1に規定されている耐中性塩水噴霧性試験に準拠して試験を行ない、250時間後に外観を目視にて調べると共に碁盤目試験を行なった。
【0041】
【表1】
【0042】
〔実施例2〕
実施例1において、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−1に代えて、アルミニウムキレートを含有するエポキシ樹脂系塗料A−2(エポキシ樹脂1重量部に対してアルミニウムキレートを0.2重量部含有するもの)を採用したこと以外は、実施例1と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。
【0043】
また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例1と全て同様の条件で行ない、この結果を表1中に併記した。
【0044】
〔実施例3〕
実施例1において、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−1に代えて、チタンアシレート成分(マツモト交商製:ポリヒドロキシチタンステアレート)を含有するアクリル樹脂系塗料B−1(アクリル樹脂1重量部に対してチタンアシレートを0.2重量部含有するもの)を採用したこと以外は、実施例1と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。
また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例1と全て同様の条件で行ない、この結果を表1中に併記した。
【0045】
〔実施例4〕
実施例1において、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−1に代えて、チタンアシレート成分(マツモト交商製:ポリヒドロキシチタンステアレート)を含有するエポキシ樹脂系塗料B−2(エポキシ樹脂1重量部に対してチタンアシレートを0.2重量部含有するもの)を採用したこと以外は、実施例1と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。
また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例1と全て同様の条件で行ない、この結果を表1中に併記した。
【0046】
〔実施例5〕
実施例1において、50×100×2mmの厚さのマグネシウム系金属であるAZ31(圧延材)に代えてZK60を用い、これに対して陽極酸化を行い、酸化膜の厚みを10μmに形成し、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−1に代えて、ジルコニウムアシレート成分(マツモト交商製:ジルコニウムモノステアレート)を含有するアクリル樹脂系塗料C−1(アクリル樹脂1重量部に対してジルコニウムアシレートを0.15重量部含有するもの)を採用したこと以外は、実施例1と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。
また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例1と全て同様の条件で行ない、この結果を表1中に併記した。
【0047】
〔実施例6〕
実施例1において、50×100×2mmの厚さのマグネシウム系金属をAZ31(圧延材)に代えて、ZK60を用い、これに対して陽極酸化を行い、酸化膜の厚みを10μmに形成し、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−1に代えて、ジルコニウムアシレート成分(マツモト交商製:ジルコニウムモノステアレート)を含有するエポキシ樹脂系塗料C−2(エポキシ樹脂1重量部に対してジルコニウムアシレートを0.15重量部含有するもの)を採用したこと以外は、実施例1と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。
また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例1と全て同様の条件で行ない、この結果を表1中に併記した。
【0048】
〔比較例1〕
実施例1において、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−1に代えて、アルミニウムキレートを含有しないアクリル樹脂系塗料Dを採用したこと以外は、実施例1と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例1と全て同様の条件で行ない、この結果を表1中に併記した。
【0049】
〔比較例2〕
実施例2において、アルミニウムキレートを含有するエポキシ樹脂系塗料A−2に代えて、アルミニウムキレートを含有しないエポキシ樹脂系塗料Eを採用したこと以外は、実施例2と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例2と全て同様の条件で行ない、この結果を表1中に併記した。
【0050】
表1の結果からも明らかなように、比較例1は、アルミニウムキレートなどを含有しないアクリル樹脂系塗料Dを採用したので、皮膜の密着性は腐蝕環境で250時間後に耐久性が低下した。また、比較例2についても同様に耐久性が不充分であった。
【0051】
これに対して、アルミニウムキレートを含有した塗料を採用した実施例1、2は、初期密着性および腐蝕環境で250時間後の耐久性も良好であることがわかる。チタン系、ジルコニウム系カップリング剤を用いた実施例3〜6についても初期密着性および腐蝕環境で250時間後の耐久性も良好であることがわかる。
【0052】
〔実施例7〕
実施例1において、酸化膜の厚みを10μmに形成し、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−1に代えて、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−3(アクリル樹脂1重量部に対してアルミニウムキレートを0.5重量部含有するもの)を採用したこと以外は、実施例1と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。
また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例1と全て同様の条件で行ない、この結果を表2中に併記した。
【0053】
【表2】
【0054】
〔実施例8〕
実施例1において、酸化物層(酸化膜)の厚みを10μmに形成し、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−1に代えて、アルミニウムキレートを含有するエポキシ樹脂系塗料A−4(エポキシ樹脂1重量部に対してアルミニウムキレートを0.5重量部含有するもの)を用いて20μm厚さに形成したこと以外は、実施例1と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例1と全て同様の条件で行ない、この結果を表2中に併記した。
【0055】
〔実施例9〕
実施例1において、酸化物層の厚みを10μmに形成し、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−1に代えて、チタンアシレート成分(マツモト交商製:ポリヒドロキシチタンステアレート)を含有するアクリル樹脂系塗料B−3(アクリル樹脂1重量部に対してチタンアシレートを0.5重量部含有するもの)を採用したこと以外は、実施例1と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。
また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例1と全て同様の条件で行ない、この結果を表2中に併記した。
【0056】
〔実施例10〕
実施例1において、酸化膜の厚みを10μmに形成し、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−1に代えて、チタンアシレート成分(マツモト交商製:ポリヒドロキシチタンステアレート)を含有するエポキシ樹脂系塗料B−4(エポキシ樹脂1重量部に対してチタンアシレートを0.5重量部含有するもの)を用いて20μm厚さに形成したこと以外は、実施例1と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。
また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例1と全て同様の条件で行ない、この結果を表2中に併記した。
【0057】
〔実施例11〕
実施例1において、50×100×2mmの厚さのマグネシウム系金属をAZ31(圧延材)に代えて、ZK60を用い、これに対して陽極酸化を行い、酸化膜の厚みを10μmに形成し、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−1に代えて、ジルコニウムアシレート成分(マツモト交商製:ジルコニウムモノステアレート)を含有するアクリル樹脂系塗料C−3(アクリル樹脂1重量部に対してジルコニウムアシレートを0.5重量部含有するもの)を採用したこと以外は、実施例1と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例1と全て同様の条件で行ない、この結果を表2中に併記した。
【0058】
〔実施例12〕
実施例1において、50×100×2mmの厚さのマグネシウム系金属をAZ31(圧延材)に代えて、ZK60を用い、これに対して陽極酸化を行い、酸化膜の厚みを10μmに形成し、アルミニウムキレートを含有するアクリル樹脂系塗料A−1に代えて、ジルコニウムアシレート成分(マツモト交商製:ジルコニウムモノステアレート)を含有するエポキシ樹脂系塗料C−4(エポキシ樹脂1重量部に対してジルコニウムアシレートを0.5重量部含有するもの)を用いて20μm厚さに形成したこと以外は、実施例1と全て同様にして防食性被覆構造の試験片を作製した。
また、試験片の防食性被覆の密着性の評価についても実施例1と全て同様の条件で行ない、この結果を表2中に併記した。
【0059】
表2の結果からも明らかなように、アルミニウムキレートを含有した塗料を採用した実施例7、8は、初期密着性および腐蝕環境で250時間後の耐久性も良好であることがわかる。
【0060】
また、チタン系、ジルコニウム系カップリング剤を用いた実施例9〜12についても、初期密着性および腐蝕環境で250時間後の耐久性も良好であることがわかる。
【0061】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように、マグネシウム系金属の表面を陽極酸化による酸化物層で被覆し、さらに変性樹脂層を被覆すると共に酸化物層の細孔を介して変性樹脂をマグネシウム系金属の表面まで浸透・接着したマグネシウム系金属の防食性被覆構造としたので、変性樹脂層と酸化物層、酸化物層とマグネシウム系金属基材との界面を確実に接着し、耐久性に優れたマグネシウム系金属の防食性被覆構造になるという利点がある。
【0062】
また、このマグネシウム系金属の防食性被覆構造は、湿度の高い環境や水中においても、酸化物層とその上に被覆される樹脂層とを確実に接着することにより、それより下方の層を保護し、陽極酸化被膜とマグネシウム系金属との界面を充分に密着させ、これらの皮膜がどの層からも剥がれ難いマグネシウム系金属の防食性被覆構造になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】マグネシウム合金の陽極酸化皮膜の表面を示す走査型電子顕微鏡写真
【図2】マグネシウム合金の陽極酸化皮膜の断面を示す走査型電子顕微鏡写真
Claims (4)
- マグネシウム系金属の表面を陽極酸化による酸化物層で被覆し、この酸化物層の表面をアルミニウム系、チタン系またはジルコニウム系のカップリング剤で変性した変性樹脂で被覆すると共に、前記酸化物層の表面に開口する細孔に前記変性樹脂を浸透させかつ前記表面に被膜を形成してなるマグネシウム系金属の防食性被覆構造。
- 酸化物層の表面に開口する細孔から変性樹脂をマグネシウム系金属の表面にまで浸透させ、マグネシウム系金属の表面に変性樹脂層を接着一体化してなる請求項1に記載のマグネシウム系金属の防食性被覆構造。
- 変性樹脂が、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂を主成分とする変性樹脂である請求項1または2に記載のマグネシウム系金属の防食性被覆構造。
- 変性樹脂が、樹脂1重量部に対して、アルミニウム系、チタン系またはジルコニウム系のカップリング剤を0.1〜2重量部配合した変性樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載のマグネシウム系金属の防食性被覆構造。
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