JP2004283967A - ワイヤの連結方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】超高強度極細径ソーワイヤの連結部に溝付きワークロールへの巻付け張力で破断しない強度をもたせうるワイヤの連結方法を提供する。
【解決手段】ソーワイヤ5を用いてスライシングを行うワイヤソー装置で現使用の先行ワイヤ5a に次使用の後行ワイヤ5b を連結するにあたり、先行ワイヤの後端部と後行ワイヤの先端部との所定長さL部分を並列させ、その部分に接着剤16を塗布後、養生して接着部17を形成し、これを連結部とするワイヤの連結方法において、前記接着剤として、性能1:JIS K 6850に規定の引張剪断接着強さ=1500N/cm2以上,性能2:BS 330 APPENDIX G に規定の繰返し曲げ試験でR=25の場合の亀裂または破断発生までの繰返し曲げ回数=25回以上、を有するものを用いる。
【選択図】 図1
【解決手段】ソーワイヤ5を用いてスライシングを行うワイヤソー装置で現使用の先行ワイヤ5a に次使用の後行ワイヤ5b を連結するにあたり、先行ワイヤの後端部と後行ワイヤの先端部との所定長さL部分を並列させ、その部分に接着剤16を塗布後、養生して接着部17を形成し、これを連結部とするワイヤの連結方法において、前記接着剤として、性能1:JIS K 6850に規定の引張剪断接着強さ=1500N/cm2以上,性能2:BS 330 APPENDIX G に規定の繰返し曲げ試験でR=25の場合の亀裂または破断発生までの繰返し曲げ回数=25回以上、を有するものを用いる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤの連結方法に関し、とくに、超高強度(TS3800MPa 以上)極細径(線径0.2mm 以下)のソーワイヤを対象として、ワイヤソー装置に装着された先行ワイヤの後端に、次に装着すべき後行ワイヤの先端を連結するのに好ましく用いうるワイヤの連結方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な鋼線ワイヤの連結方法としては、人手による結びつけ(結節:図4)、引掛け捻り込み結合(図5)、突合せ溶接(例えば特許文献1参照)、重ね合わせ溶接(図6)、重ね合わせ接着(図7)等の方法が知られている。
一方、ソーワイヤは、半導体や太陽電池の素材に用いられるシリコンインゴットや、磁性材料、 水晶、セラミックス等のブロックをスライシングするワイヤソー装置に装着されて使用される。その装着・使用形態は、例えば図3に示すように、単線のワイヤ(:ソーワイヤ)5をワイヤソー装置の1対の溝付きワークロール10,10 に一定間隔で並列に巻きつけ、線長方向に走行させながら、溝付きワークロール10,10 間で並列走行するワイヤ5に被切断材1を(あるいは前者を後者に)押し付けるというものである。
【0003】
このようなソーワイヤ装置によるスライシング作業では、耐用寿命終了時や断線トラブル等の発生に対応して現使用のソーワイヤを次使用のものと交換するにあたり、ワイヤソー装置に装着された現使用のワイヤ(:先行ワイヤ)の残余部の後端に次使用のワイヤ(:後行ワイヤ)の先端を連結し、後行ワイヤを先行ワイヤで案内させながら前記溝付きワークロールに巻付けることが行われる。この場合、先行ワイヤと後行ワイヤとの連結には前記結節が採用されていた。
【0004】
【特許文献1】
特公昭54−39819号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、最近、シリコンインゴットのスライシングにおいてカーフロス(切断代)を少なくし、歩留りを向上させるために、ソーワイヤは線径が0.2mm 以下の極細径ワイヤが使用される方向にある。そして、この極細径ワイヤの寿命、およびスライシング時の一定値以上のワイヤ張力を確保するために、ワイヤの強度レベルを通常のTS(:引張強さ)3600MPa 程度以下からTS3800MPa 以上へと高めた超高強度ワイヤが使用されるようになった。
【0006】
しかしながら、超高強度極細径ワイヤは、通常の結節により先行ワイヤに後行ワイヤを連結すると結節時に大きな曲げや捻りが作用するため連結部の強度が弱くなりすぎて、溝付きワークロールに通す途中で連結部のところで破断するため、先行ワイヤの案内なしで後行ワイヤを溝付きワークロールに巻き付けねばならず、ソーワイヤの交換に長時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、この問題を解決し、超高強度極細径ソーワイヤの連結部に溝付きワークロールへの巻付け張力で破断しない強度をもたせうるワイヤの連結方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、結節に代わる有効な超高強度極細径ソーワイヤ連結方法を検討し、そのなかで、前記従来の連結方法をそれぞれ試みたが、引掛け捻り込みでは、結節と同様、大きな曲げや捻りの作用で連結部の強度が弱くなりすぎ、また、特許文献1記載の突合せ溶接では、極細径の単線を溶接対象とした例の開示はなく、また本発明者らの知る限りでは線径が0.5mm 以下のワイヤに対する突合せ溶接の実績は従来見当らず、これを直ちに極細径の単線に適用するのは困難であったことに加え、突合せ溶接部がマルテンサイト組織になって脆くなり、また、重ね合わせ溶接では、溶接熱影響部の軟化が大きくなりすぎ、また、重ね合わせ接着では、極細線径のため所要の接着面積を確保できず、いずれも溝付きワークロール巻付け中の連結部破断を防止できなかった。
【0009】
これら従来の連結方法において、重ね合わせ接着では連結部破断の主因が接着面積不足にあったことから、接着面積が十分稼げるような接着方法を開発できれば連結部破断は防止できそうである。そのような接着方法としては、並列したワイヤの略全周を接着剤で覆う方法が考えられる。しかし、単に接着面積を稼ぐだけでは不十分であろう。というのは、接着剤がワイヤとの接着界面での耐剥離性に乏しいものであると、案内時に作用する張力によって接着剤がワイヤから剥離してしまい、また、接着剤の引張強度が低いと、前記張力によって接着剤自体が破断してしまい、また、接着剤が柔軟性に乏しいものであると、連結部が多数の曲げ半径が小さい(60〜90mm)多くのガイドローラ11(図3参照)を通るときに受ける曲げ‐曲げ戻しにより接着剤に割れが生じてしまい、連結強度が弱まって連結部破断に至るからである。
【0010】
よって、接着剤としては、何でもよいわけではなく、ワイヤとの接着界面での耐剥離性に富みかつ接着剤自体の引張強度が高く、しかも柔軟性に富むものを使用する必要がある。さらに、作業性の観点から塗布作業が簡便で、塗布後の速乾性に優れるものが望ましい。
そこで、本発明者らは、上記検討に基づき種々の接着剤について鋭意実験を行い、その結果、上記の要請を満たすものを見出して、本発明をなした。
【0011】
すなわち、本発明は、ソーワイヤを用いてスライシングを行うワイヤソー装置で現使用の先行ワイヤに次使用の後行ワイヤを連結するにあたり、先行ワイヤの後端部と後行ワイヤの先端部との所定長さ部分を並列させ、該並列させた部分に接着剤を塗布し、該塗布した接着剤を養生して接着部を形成し、これを連結部とするワイヤの連結方法において、前記接着剤として、下記の性能1および性能2を有するものを用いることを特徴とするワイヤの連結方法である。
【0012】
記
性能1:JIS K 6850に規定される引張剪断接着強さ:1500N/cm2以上
性能2:BS 330 APPENDIX G に規定される繰返し曲げ試験においてR=25とした試験による亀裂または破断発生までの繰返し曲げ回数:25回以上
本発明では、連結対象のワイヤは超高強度極細径の鋼線またはめっき鋼線からなるソーワイヤであることが好ましい。超高強度とはTS3800MPa 以上であること、極細径とは線径0.2mm 以下であることを指す。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、先行ワイヤに後行ワイヤを連結するにあたり、まず、図1(a)に示すように、先行ワイヤ5a の後端部と後行ワイヤ5b の先端部との所定長さ部分を並列させる。このとき、使い捨て可能なガラス板などの下敷き板15上に先行、後行の両ワイヤを並列させるとよい。また、この並列の際には、両ワイヤを相互に接触させても若干離しておいてもよい。両ワイヤの並列長さLは、特に限定しないが、20〜50mm程度とすればよい。なお、並列させる前にワイヤの接合予定部分をアルコール、ベンゼン等で洗浄しておくとよい。
【0014】
次に、図1(b)に示すように、ワイヤの並列部分に本発明で限定された接着剤16を塗布する。この接着剤16に係る限定要件については後述する。このとき、ワイヤの並列長さ部のできる限り全周にワイヤ径の3〜10倍の厚みで接着剤16を付着させるように塗布するのが好ましい。また、塗布完了時のワイヤの並列間隔は、ワイヤの軸心間でワイヤ径の1〜2倍とするのが好ましい。なお、下敷き板15上に予め接着剤を適当な厚みでデポジットし、その中に埋め込むように両ワイヤを並列させてもよい。
【0015】
そして、塗布した接着剤を養生(aging)する。養生とは、熟成ともいい、接着部(接着接合部)の性質を向上させるために一定条件下に放置することである(JIS K 6800参照)。この放置する条件(温度及び時間)は、温度=常温、時間=接着剤の取扱説明書またはラベルに記載された常温硬化時間(常温での接着強度発現時間)とすればよい。なお、当然ながら、養生完了後の接着剤は、他の材料に接着しなくなっている。
【0016】
養生完了後、必要に応じて、下敷き板15を剥がし、および/または、カッターナイフ等で接着剤16をトリミング(余剰部分を切除)し、図1(c)、(d)に示すような、幅D、長さLの接着部17を形成する。この接着部17がそのまま連結部になる。接着部17の長さLは、両ワイヤ5の並列長さと同じかわずか長い程度であり、接着部17の幅Dは、ワイヤ5の直径の5〜30倍程度とするのが好ましい。
【0017】
本発明で使用する接着剤の限定要件は、この接着剤が、JIS K 6850に規定される引張剪断接着強さが1500N/cm2以上になる性能(:性能1)、および、BS 330 APPENDIX G に規定される繰返し曲げ試験においてR=25とした試験による亀裂または破断発生までの繰返し曲げ回数が25回以上になる性能(:性能2)を有するものである点にある。ここで、性能2を確認するための試験方法を図2に示す。
【0018】
接着剤は、1液型、2液混合型のいずれであってもよい。また、作業性の観点から、常温硬化時間=1〜15分程度を示す接着剤が好ましい。
この限定要件を満たす接着剤を使用することにより、溝付きワークロールへの巻付け張力で破断しない強度および延性を有し、かつガイドローラを通過するときの曲げ‐曲げ戻しの繰返しにより亀裂や破断が生じない柔軟性を有する連結部を形成することができる。かかる接着剤としては、アクリル樹脂系、変性アクリル樹脂系の接着剤から選択するのが好ましい。エポキシ樹脂系、ゴム系の接着剤は、強度、延性、柔軟性のいずれかが不十分であるので好ましくない。
【0019】
本発明は、超高強度極細径ワイヤ以外のソーワイヤにも適用できるが、かかるソーワイヤでは、通常の結節による連結でも断線は生じず本発明の利点が顕現しないので、超高強度極細径ワイヤに適用するのが好ましい。かかる超高強度極細径ワイヤとしては、例えば特開2000−212676号公報に記載された、C:0.90〜2.0%、Si:0.15〜0.30% 、Mn:0.2 〜0.6%、Al:0.005%以下を含み残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、パーライト中に球状セメンタイトが分散してなる組織とを有する線径200 μm 以下、 引張強さ3800MPa 以上のワイヤソー用鋼線、あるいは例えば特開2000−256391号公報に記載された、質量% で、C:0.95〜2.0%、Si:0.15〜0.30% 、Mn:0.2 〜0.6%、Al:0.005%以下を含み残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、体積% で層状セメンタイトを15〜30% 含むパーライトまたはパーライトとベイナイトの混合からなる組織とを有する線径200 μm 以下の高強度ワイヤソー用鋼線などが挙げられる。
【0020】
【実施例】
表1に示す4種の超高強度極細径ワイヤについて、比較例として、図4のように結節して連結部を形成した。また、実施例として、同ワイヤについて被接着端部をアルコールで洗浄後、図1に示した要領で接着接合して連結部を形成した。接着剤には、前記性能1、2を有するアクリル樹脂系接着剤(3M社製構造用接着剤“メタルグリップ”;常温硬化時間=15分)を使用し、接着部の長さL=20mm、接着部の幅D=2mm、接着部の接着剤厚さ=0.8mm とした。なお、接着部の幅Dは、養生直後は約3mmであったがカッターナイフでトリミングして2mmとした。
【0021】
実施例および比較例について連結部の引張破断荷重を測定した。また、実施例について図2に示した要領で繰返し曲げ試験を行い、亀裂または破断が生じるまでの繰返し曲げ回数(“限界曲げ回数”という。)を測定した。その結果を表1に示す。表1より、実施例では、比較例に比べ引張破断荷重が大幅に向上しており、また、限界曲げ回数が25回以上になる優れた柔軟性を示した。
【0022】
【表1】
【0023】
これら実施例および比較例と同等の連結部を形成したソーワイヤをワイヤソー装置の溝付きワークロールに巻付けたところ、比較例では連結部のところで断線したのに対し、実施例では断線は生じなかった。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、超高強度極細径ソーワイヤを、溝付きワークロールへの巻付け張力で破断しない連結強度となるように連結しうるから、ワイヤの補充または交換作業時間が大幅に短縮し、ワイヤソー装置のスライシング稼働率が向上するという優れた効果を奏する。また、本発明は、ソーワイヤ以外のワイヤの連結作業、 例えばガイド用接合作業などにも、高信頼性接合継手法として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す模式図である。
【図2】性能2を確認するための繰返し曲げ試験要領の説明図である。
【図3】ワイヤソー装置におけるソーワイヤの装着・使用形態の1例を示す模式図である。
【図4】結節の例を示す模式図である。
【図5】引掛け捻り込み結合の例を示す模式図である。
【図6】重ね合わせ溶接の例を示す模式図である。
【図7】重ね合わせ接着の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 被切断材
2 固定板(ワークプレート)
3 接着剤
4 フィードユニット
5 ワイヤ(ソーワイヤ、a:先行、b:後行)
6 昇降
7 リールボビン
8 タッチローラ
9 ダンサアーム
10 溝付きワークロール
11 ガイドローラ
12 スラリノズル
13 砥粒
15 下敷き板
16 接着剤
17 接着部(接着接合部、連結部)
18 チャック
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤの連結方法に関し、とくに、超高強度(TS3800MPa 以上)極細径(線径0.2mm 以下)のソーワイヤを対象として、ワイヤソー装置に装着された先行ワイヤの後端に、次に装着すべき後行ワイヤの先端を連結するのに好ましく用いうるワイヤの連結方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な鋼線ワイヤの連結方法としては、人手による結びつけ(結節:図4)、引掛け捻り込み結合(図5)、突合せ溶接(例えば特許文献1参照)、重ね合わせ溶接(図6)、重ね合わせ接着(図7)等の方法が知られている。
一方、ソーワイヤは、半導体や太陽電池の素材に用いられるシリコンインゴットや、磁性材料、 水晶、セラミックス等のブロックをスライシングするワイヤソー装置に装着されて使用される。その装着・使用形態は、例えば図3に示すように、単線のワイヤ(:ソーワイヤ)5をワイヤソー装置の1対の溝付きワークロール10,10 に一定間隔で並列に巻きつけ、線長方向に走行させながら、溝付きワークロール10,10 間で並列走行するワイヤ5に被切断材1を(あるいは前者を後者に)押し付けるというものである。
【0003】
このようなソーワイヤ装置によるスライシング作業では、耐用寿命終了時や断線トラブル等の発生に対応して現使用のソーワイヤを次使用のものと交換するにあたり、ワイヤソー装置に装着された現使用のワイヤ(:先行ワイヤ)の残余部の後端に次使用のワイヤ(:後行ワイヤ)の先端を連結し、後行ワイヤを先行ワイヤで案内させながら前記溝付きワークロールに巻付けることが行われる。この場合、先行ワイヤと後行ワイヤとの連結には前記結節が採用されていた。
【0004】
【特許文献1】
特公昭54−39819号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、最近、シリコンインゴットのスライシングにおいてカーフロス(切断代)を少なくし、歩留りを向上させるために、ソーワイヤは線径が0.2mm 以下の極細径ワイヤが使用される方向にある。そして、この極細径ワイヤの寿命、およびスライシング時の一定値以上のワイヤ張力を確保するために、ワイヤの強度レベルを通常のTS(:引張強さ)3600MPa 程度以下からTS3800MPa 以上へと高めた超高強度ワイヤが使用されるようになった。
【0006】
しかしながら、超高強度極細径ワイヤは、通常の結節により先行ワイヤに後行ワイヤを連結すると結節時に大きな曲げや捻りが作用するため連結部の強度が弱くなりすぎて、溝付きワークロールに通す途中で連結部のところで破断するため、先行ワイヤの案内なしで後行ワイヤを溝付きワークロールに巻き付けねばならず、ソーワイヤの交換に長時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、この問題を解決し、超高強度極細径ソーワイヤの連結部に溝付きワークロールへの巻付け張力で破断しない強度をもたせうるワイヤの連結方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、結節に代わる有効な超高強度極細径ソーワイヤ連結方法を検討し、そのなかで、前記従来の連結方法をそれぞれ試みたが、引掛け捻り込みでは、結節と同様、大きな曲げや捻りの作用で連結部の強度が弱くなりすぎ、また、特許文献1記載の突合せ溶接では、極細径の単線を溶接対象とした例の開示はなく、また本発明者らの知る限りでは線径が0.5mm 以下のワイヤに対する突合せ溶接の実績は従来見当らず、これを直ちに極細径の単線に適用するのは困難であったことに加え、突合せ溶接部がマルテンサイト組織になって脆くなり、また、重ね合わせ溶接では、溶接熱影響部の軟化が大きくなりすぎ、また、重ね合わせ接着では、極細線径のため所要の接着面積を確保できず、いずれも溝付きワークロール巻付け中の連結部破断を防止できなかった。
【0009】
これら従来の連結方法において、重ね合わせ接着では連結部破断の主因が接着面積不足にあったことから、接着面積が十分稼げるような接着方法を開発できれば連結部破断は防止できそうである。そのような接着方法としては、並列したワイヤの略全周を接着剤で覆う方法が考えられる。しかし、単に接着面積を稼ぐだけでは不十分であろう。というのは、接着剤がワイヤとの接着界面での耐剥離性に乏しいものであると、案内時に作用する張力によって接着剤がワイヤから剥離してしまい、また、接着剤の引張強度が低いと、前記張力によって接着剤自体が破断してしまい、また、接着剤が柔軟性に乏しいものであると、連結部が多数の曲げ半径が小さい(60〜90mm)多くのガイドローラ11(図3参照)を通るときに受ける曲げ‐曲げ戻しにより接着剤に割れが生じてしまい、連結強度が弱まって連結部破断に至るからである。
【0010】
よって、接着剤としては、何でもよいわけではなく、ワイヤとの接着界面での耐剥離性に富みかつ接着剤自体の引張強度が高く、しかも柔軟性に富むものを使用する必要がある。さらに、作業性の観点から塗布作業が簡便で、塗布後の速乾性に優れるものが望ましい。
そこで、本発明者らは、上記検討に基づき種々の接着剤について鋭意実験を行い、その結果、上記の要請を満たすものを見出して、本発明をなした。
【0011】
すなわち、本発明は、ソーワイヤを用いてスライシングを行うワイヤソー装置で現使用の先行ワイヤに次使用の後行ワイヤを連結するにあたり、先行ワイヤの後端部と後行ワイヤの先端部との所定長さ部分を並列させ、該並列させた部分に接着剤を塗布し、該塗布した接着剤を養生して接着部を形成し、これを連結部とするワイヤの連結方法において、前記接着剤として、下記の性能1および性能2を有するものを用いることを特徴とするワイヤの連結方法である。
【0012】
記
性能1:JIS K 6850に規定される引張剪断接着強さ:1500N/cm2以上
性能2:BS 330 APPENDIX G に規定される繰返し曲げ試験においてR=25とした試験による亀裂または破断発生までの繰返し曲げ回数:25回以上
本発明では、連結対象のワイヤは超高強度極細径の鋼線またはめっき鋼線からなるソーワイヤであることが好ましい。超高強度とはTS3800MPa 以上であること、極細径とは線径0.2mm 以下であることを指す。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、先行ワイヤに後行ワイヤを連結するにあたり、まず、図1(a)に示すように、先行ワイヤ5a の後端部と後行ワイヤ5b の先端部との所定長さ部分を並列させる。このとき、使い捨て可能なガラス板などの下敷き板15上に先行、後行の両ワイヤを並列させるとよい。また、この並列の際には、両ワイヤを相互に接触させても若干離しておいてもよい。両ワイヤの並列長さLは、特に限定しないが、20〜50mm程度とすればよい。なお、並列させる前にワイヤの接合予定部分をアルコール、ベンゼン等で洗浄しておくとよい。
【0014】
次に、図1(b)に示すように、ワイヤの並列部分に本発明で限定された接着剤16を塗布する。この接着剤16に係る限定要件については後述する。このとき、ワイヤの並列長さ部のできる限り全周にワイヤ径の3〜10倍の厚みで接着剤16を付着させるように塗布するのが好ましい。また、塗布完了時のワイヤの並列間隔は、ワイヤの軸心間でワイヤ径の1〜2倍とするのが好ましい。なお、下敷き板15上に予め接着剤を適当な厚みでデポジットし、その中に埋め込むように両ワイヤを並列させてもよい。
【0015】
そして、塗布した接着剤を養生(aging)する。養生とは、熟成ともいい、接着部(接着接合部)の性質を向上させるために一定条件下に放置することである(JIS K 6800参照)。この放置する条件(温度及び時間)は、温度=常温、時間=接着剤の取扱説明書またはラベルに記載された常温硬化時間(常温での接着強度発現時間)とすればよい。なお、当然ながら、養生完了後の接着剤は、他の材料に接着しなくなっている。
【0016】
養生完了後、必要に応じて、下敷き板15を剥がし、および/または、カッターナイフ等で接着剤16をトリミング(余剰部分を切除)し、図1(c)、(d)に示すような、幅D、長さLの接着部17を形成する。この接着部17がそのまま連結部になる。接着部17の長さLは、両ワイヤ5の並列長さと同じかわずか長い程度であり、接着部17の幅Dは、ワイヤ5の直径の5〜30倍程度とするのが好ましい。
【0017】
本発明で使用する接着剤の限定要件は、この接着剤が、JIS K 6850に規定される引張剪断接着強さが1500N/cm2以上になる性能(:性能1)、および、BS 330 APPENDIX G に規定される繰返し曲げ試験においてR=25とした試験による亀裂または破断発生までの繰返し曲げ回数が25回以上になる性能(:性能2)を有するものである点にある。ここで、性能2を確認するための試験方法を図2に示す。
【0018】
接着剤は、1液型、2液混合型のいずれであってもよい。また、作業性の観点から、常温硬化時間=1〜15分程度を示す接着剤が好ましい。
この限定要件を満たす接着剤を使用することにより、溝付きワークロールへの巻付け張力で破断しない強度および延性を有し、かつガイドローラを通過するときの曲げ‐曲げ戻しの繰返しにより亀裂や破断が生じない柔軟性を有する連結部を形成することができる。かかる接着剤としては、アクリル樹脂系、変性アクリル樹脂系の接着剤から選択するのが好ましい。エポキシ樹脂系、ゴム系の接着剤は、強度、延性、柔軟性のいずれかが不十分であるので好ましくない。
【0019】
本発明は、超高強度極細径ワイヤ以外のソーワイヤにも適用できるが、かかるソーワイヤでは、通常の結節による連結でも断線は生じず本発明の利点が顕現しないので、超高強度極細径ワイヤに適用するのが好ましい。かかる超高強度極細径ワイヤとしては、例えば特開2000−212676号公報に記載された、C:0.90〜2.0%、Si:0.15〜0.30% 、Mn:0.2 〜0.6%、Al:0.005%以下を含み残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、パーライト中に球状セメンタイトが分散してなる組織とを有する線径200 μm 以下、 引張強さ3800MPa 以上のワイヤソー用鋼線、あるいは例えば特開2000−256391号公報に記載された、質量% で、C:0.95〜2.0%、Si:0.15〜0.30% 、Mn:0.2 〜0.6%、Al:0.005%以下を含み残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、体積% で層状セメンタイトを15〜30% 含むパーライトまたはパーライトとベイナイトの混合からなる組織とを有する線径200 μm 以下の高強度ワイヤソー用鋼線などが挙げられる。
【0020】
【実施例】
表1に示す4種の超高強度極細径ワイヤについて、比較例として、図4のように結節して連結部を形成した。また、実施例として、同ワイヤについて被接着端部をアルコールで洗浄後、図1に示した要領で接着接合して連結部を形成した。接着剤には、前記性能1、2を有するアクリル樹脂系接着剤(3M社製構造用接着剤“メタルグリップ”;常温硬化時間=15分)を使用し、接着部の長さL=20mm、接着部の幅D=2mm、接着部の接着剤厚さ=0.8mm とした。なお、接着部の幅Dは、養生直後は約3mmであったがカッターナイフでトリミングして2mmとした。
【0021】
実施例および比較例について連結部の引張破断荷重を測定した。また、実施例について図2に示した要領で繰返し曲げ試験を行い、亀裂または破断が生じるまでの繰返し曲げ回数(“限界曲げ回数”という。)を測定した。その結果を表1に示す。表1より、実施例では、比較例に比べ引張破断荷重が大幅に向上しており、また、限界曲げ回数が25回以上になる優れた柔軟性を示した。
【0022】
【表1】
【0023】
これら実施例および比較例と同等の連結部を形成したソーワイヤをワイヤソー装置の溝付きワークロールに巻付けたところ、比較例では連結部のところで断線したのに対し、実施例では断線は生じなかった。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、超高強度極細径ソーワイヤを、溝付きワークロールへの巻付け張力で破断しない連結強度となるように連結しうるから、ワイヤの補充または交換作業時間が大幅に短縮し、ワイヤソー装置のスライシング稼働率が向上するという優れた効果を奏する。また、本発明は、ソーワイヤ以外のワイヤの連結作業、 例えばガイド用接合作業などにも、高信頼性接合継手法として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す模式図である。
【図2】性能2を確認するための繰返し曲げ試験要領の説明図である。
【図3】ワイヤソー装置におけるソーワイヤの装着・使用形態の1例を示す模式図である。
【図4】結節の例を示す模式図である。
【図5】引掛け捻り込み結合の例を示す模式図である。
【図6】重ね合わせ溶接の例を示す模式図である。
【図7】重ね合わせ接着の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 被切断材
2 固定板(ワークプレート)
3 接着剤
4 フィードユニット
5 ワイヤ(ソーワイヤ、a:先行、b:後行)
6 昇降
7 リールボビン
8 タッチローラ
9 ダンサアーム
10 溝付きワークロール
11 ガイドローラ
12 スラリノズル
13 砥粒
15 下敷き板
16 接着剤
17 接着部(接着接合部、連結部)
18 チャック
Claims (2)
- ソーワイヤを用いてスライシングを行うワイヤソー装置で現使用の先行ワイヤに次使用の後行ワイヤを連結するにあたり、先行ワイヤの後端部と後行ワイヤの先端部との所定長さ部分を並列させ、該並列させた部分に接着剤を塗布し、該塗布した接着剤を養生して接着部を形成し、これを連結部とするワイヤの連結方法において、前記接着剤として、下記の性能1および性能2を有するものを用いることを特徴とするワイヤの連結方法。
記
性能1:JIS K 6850に規定される引張剪断接着強さ:1500N/cm2以上
性能2:BS 330 APPENDIX G に規定される繰返し曲げ試験においてR=25とした試験による亀裂または破断発生までの繰返し曲げ回数:25回以上 - 連結対象のワイヤは超高強度極細径の鋼線または表面被覆鋼線からなるソーワイヤであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤの連結方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003079876A JP2004283967A (ja) | 2003-03-24 | 2003-03-24 | ワイヤの連結方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003079876A JP2004283967A (ja) | 2003-03-24 | 2003-03-24 | ワイヤの連結方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004283967A true JP2004283967A (ja) | 2004-10-14 |
Family
ID=33293885
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2003079876A Pending JP2004283967A (ja) | 2003-03-24 | 2003-03-24 | ワイヤの連結方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004283967A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5009439B2 (ja) * | 2010-06-15 | 2012-08-22 | 新日本製鐵株式会社 | ソーワイヤ |
CN108328423A (zh) * | 2018-01-26 | 2018-07-27 | 巨石集团有限公司 | 一种纤维纱连接装置及其连接方法 |
-
2003
- 2003-03-24 JP JP2003079876A patent/JP2004283967A/ja active Pending
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