JP2004283170A - 育苗方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 病害等のストレスに対する苗の抵抗性を高め、圃場に移植した後、病害等のストレスによって苗の生育が妨げられることを抑制して品質の良い安全な作物を収穫可能とする育苗方法を提供する。
【解決手段】 移植後に作用する病害等のストレスに対する抵抗性を高める育苗方法であって、育苗期間中に、紫外線を苗に照射する操作と、苗に物理的な振動を与える操作とを行う。物理的な振動を与える操作としては、苗に風を当てること、苗に照射する紫外線としては、近紫外光が有効である。
【選択図】 図1

Description

本発明は育苗方法に関し、より詳細には病害に対する苗の抵抗力を高めて、移植後の植物の生長を促進させることができる育苗方法に関する。
日本の作物生産における農薬の単位面積あたりの使用量は世界一の水準にあるといわれ、近年は、食品の安全性に対する要望の高まりとともに、人工的な化学物質を使用しない作物が求められるようになった。
一方で、生産者は産地形成の必要性や市場の要望から、同じ種類の作物を継続して生産することが多く、連作障害が各地で発生している。このような連作障害を回避する方法としては、土壌消毒剤を使用したり、ストレス緩和、病害防除を目的として化学資材を使用する方法が常法である。
また、育苗方法としては、植え傷みを防ぐために、育苗土壌の電気伝導度を調整して根の生長を促進させる方法や、セル育苗ポット内での根回りが改善されるように育苗土壌の電気伝導度を調整することも行われている。また、育苗時に生長を促進させるため、電照栽培することも行われている。
しかしながら、連作障害を回避するために土壌消毒剤を使用したり、育苗土壌の電気伝導度を調整するといった方法は、環境汚染を招くとともに、エネルギーを大量に消費し、コストがかかるという、環境負荷と経営経済面で問題がある。また、食品の安全性を高めるために、使用できる土壌消毒剤の種類や使用量が制限されるといった指導もなされるようになってきたため、農作物の生産地では、土壌消毒剤等の化学資材を使用することなく作物を生産できる方法の開発が強く求められるようになってきた。
本発明者は、このような要請に鑑み、土壌消毒剤等を使用せずに農作物を生産する方法として、農作物(植物)自体の病害等のストレスに対する抵抗性を高めることによって、病害等に妨げられずに農作物を生育させるようにする方法について検討してきた。病害等のストレスに対する農作物の抵抗性を高めることができれば、病害等がある圃場においても問題なく作物を生育させることができるからである。また、病害等に対する抵抗性を高める方法として化学汚染の危険性がない物理的手段を利用することができれば、環境汚染を心配することなく安全な作物を生産することができ、この点においても有用である。
すなわち、本発明は、病害等のストレスに対する抵抗性の高い苗を生育させることにより、従来のような土壌消毒剤や化学資材を使用することなく、品質の良い作物を容易に生育させることができ、これによって安全な作物として提供することを可能とする育苗方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、移植後に作用する病害等のストレスに対する抵抗性を高める育苗方法であって、育苗期間中に、紫外線を苗に照射する操作と、苗に物理的な振動を与える操作とを行うことを特徴とする。
なお、物理的な振動を苗に与える操作とは、発芽後の苗を揺するようにして物理的な刺激を苗に与えることをいう。苗に振動を与える方法としては、苗床を機械的に揺動させて苗を揺らすようにする方法等が可能である。物理的な振動を与える操作として、苗に風を当てる方法は、ファンを用いて苗に風を当てるだけで、苗に簡単に物理的な振動を与えることができるという利点がある。
本発明は育苗後、圃場で生育させる作物に適用されるが、対象作物は農作物に限らず、移植して栽培する植物については同様に適用可能である。
また、前記苗に照射する紫外線として、近紫外光を使用することが有効である。近紫外光とは320〜400nm程度の波長域の紫外線であり、植物の遺伝子を阻害せずに刺激を与えることができる。
また、紫外線を苗に照射する操作と、苗に物理的な振動を与える操作は間欠的に行えば十分であり、紫外線を苗に照射する操作と、苗に物理的な振動を与える操作とを同時に行うようにすると制御等が容易である。
自然界においては植物は太陽光を利用して生育するが、植物の光合成には400〜500nmの波長域と600〜700nmの波長域の光が寄与することが知られている。これらの波長域のうち長波長域の光は花や果実の生育に悪い影響を与えるとされ、生育に対しては短波長域の光を多く照射することが有効とされている。したがって、たとえば作物を栽培する際の被覆資材には短波長域の光を多く通すものを使用するといったことが行われている。一方、紫外線は植物の生長には有害とされ、電照栽培などでは、少なくとも、積極的に紫外線を使用することはなされていない。
苗を圃場に移植すると、光のストレス、水のストレス、温度のストレス、病害のストレスが苗に作用してくる。したがって、これらのストレスに対する苗の抵抗性を高めておけば、苗はこれらのストレスに打ち勝って丈夫に生育する。本発明は、これらのストレスに対する抵抗性の高い苗を育てる方法として、育苗時に苗に物理的手段を作用させることによって苗の抵抗性を高めるようにしたものである。
本発明においては、この物理的手段として、紫外線を苗に照射する方法と、物理的な振動を苗に与える方法を併用することを特徴とする。
紫外線は、波長域によってUV−A(波長320〜400nm)、UV−B(波長280〜320nm)、UV−C(波長200〜280nm)の3種に大別され、それぞれブラックライト、日焼け光線、殺菌光線と呼ばれる。本発明において苗に照射する紫外線は、近紫外光すなわちUV−A(波長320〜400nm)の光である。この近紫外光は植物の成育を抑制するとされているが、近紫外光は植物に一定の刺激を作用させることができること、植物の遺伝子を損傷させたりしないことから、苗の抵抗性を向上させる物理的手段として好適に使用することができる。
なお、育苗時に照射する紫外線としては、植物の生育を抑制しないといったことから近紫外光UV−Aがもっとも有効であるが、紫外線の波長域がUV−B(波長280〜320nm)の波長域と重複する波長の光であっても使用可能である。これは、紫外線の当て方、強度、植物種によって利用できる紫外線が異なる可能性があるからである。したがって、育苗時に苗に照射する紫外線として近紫外光は問題なく使用することが可能であるが、近紫外光よりも短波長域の光を苗の刺激用として利用することは可能である。
なお、実際に苗に近紫外光を照射する方法としては、電照栽培によって育苗する際に、照明用光源として、ブラックライトの波長域まで光が放射される光源を使用して照明するようにすればよい。電照栽培で連続的に陽光を照射して育苗する方法による場合は、たとえば陽光を連続照射しながら、一定時間間隔をおいて近紫外光を苗に照射するようにすればよい。これによって、苗は陽光による光合成作用と、一定時間ごとに近紫外光による刺激を受けることになる。近紫外光を一定時間をおいて照射するようにしているのは、近紫外光によって苗の生育が阻害されないようにするためである。近紫外光の強度、照射時間間隔は適宜設定すればよい。
本発明においては、近紫外光とともに苗に風を当てながら育苗している。育苗時に苗に風を当てる目的は、風によって苗を物理的に振動させる(揺らせる)ことによって物理的な刺激を苗に与えるためである。したがって、苗に当てる風は苗に適当な物理的刺激が与えられる程度の風力に設定すればよい。苗を揺らすようにして物理的な振動を苗に与える方法としては、苗床を一定時間間隔ごとに揺動させるようにすることも可能である。この場合は苗床を機械的操作によって揺動させるようにすればよい。苗床の揺動操作と風を当てる操作を併用することも可能である。
また、苗に風を当てる際には、連続的に苗に風を当てるようにしてもよいし、一定時間間隔で風を当てるようにしてもよい。実際上は、コスト的にも、常時、風を当てておく必要はなく、たとえば、2時間ごとに15分ずつ風を当てるといったように、間欠的に風を当てる方法で十分である。
なお、苗に近紫外光を照射する操作と、苗に物理的な振動を与える操作のタイミングを一致させて行う必要はないが、苗に近紫外光を照射しながら、同時に風を当てるといった操作方法によれば、容易に育苗管理することができる。
植物に近紫外光を照射し、風を当てて物理的に刺激すると、植物は活性酸素や、植物ホルモンのひとつであるエチレンを生成する。それにより生じたエチレンは色素合成を促進するが、これらの色素は紫外線を防御するだけでなく抗菌性を備えている。本発明において育苗時に物理的手段を苗に作用させることによって、病害等に対する抵抗性を高めることが可能となるのは、苗に物理的刺激を与えることによって、このようなメカニズムが働いて抗菌性が高まるためと考えられる。
本発明方法は、育苗期間中に、苗に紫外線を照射し、風を当てる等により物理的な振動を与えるようにするといった方法を適用する他は、播種、土壌、水やり等は、従来の育苗方法とまったく変わらない。電照栽培によって育苗している施設の場合は、光源としてブラックライトを含む光源を使用すればよく、風を当てる等により苗に物理的な刺激を与えるだけで、従来の施設を大きく変更することなく本発明方法を適用することができる。
育苗した後は、圃場に移植して従来の苗と同様に生育させればよい。本発明方法によって生育させた苗は、各種のストレスに対して非常に強い苗となり、圃場に移植した際に、苗に作用する水、光、温度、病害ストレスに対して強い抵抗性を備えていることから、病害等に侵されずに生長することができ、品質の良い作物として得ることができ、収穫量を多くすることができる。
本発明に係る育苗方法によれば、紫外線を苗に照射する操作と苗に風を当てる操作という物理的手段を利用することによって、病害等のストレスに対する苗の抵抗性を有効に高めることができ、圃場に移植した後、病害等のストレスによって苗の生育が妨げられることを抑制し、収穫物の品質を向上させ、収量を増大させることができる。また、物理的手段を利用して病害等に対する苗の抵抗性を高めることによって、従来は土壌消毒剤等の化学資材を使用して病害等を予防していた圃場において、化学資材を使用することなく作物を栽培することができ、より安全な作物を生産することが可能になる。
以下、本発明の実施の形態として、レタス栽培に本発明を適用した例について説明する。
用いたレタス品種はメルボンMTであり、育苗用園芸培土を充填した200穴のプラグ苗箱に播種し、25℃連続照射の陽光恒温器内で育苗した。近紫外光の照射は市販のブラックライト光源を使用した。図1は育苗に使用した陽光とブラックライトのスペクトルを合わせて示したものである。光強度スペクトルは市販の計測器で測定した。a部分が対照区に照射した陽光のスペクトル、b部分が近紫外光のスペクトルで、実施区では陽光と近紫外光を照射する。図2は近紫外光のスペクトルのみを拡大して示す。近紫外光は360nm付近にピークをもち、320nm付近から400nmに分布している。
実験では、対照区の苗については従来と同様に陽光のみを照射し、実施区(本発明方法を適用して育苗する区)の苗については、陽光を連続照射するとともに、2時間間隔ごとに15分ずつ近紫外光を照射した。近紫外光の苗への照射時間は、1日あたり、3時間となる。
また、実施区についてはブラックライトによる近紫外光とともに、シロッコファンを用いて苗に風を当てた。苗に風を当てる操作は、苗に近紫外光を照射する操作と同時に行い、2時間間隔ごとに15分間、風を当てた。
ブラックライトおよびシロッコファンとも、苗床の上方40cmに設置して光を照射する操作と、風を当てる操作を行った。シロッコファンを用いて当てる風の強さは、葉がわずかに揺れる程度である。
プラグ苗箱に播種した後、27日間で、本葉3葉苗となった。実施区の苗については、芽が出てから、本葉3葉苗にまで生長するまでの間、2時間ごとに15分間ずつ近紫外光と風を当てる処理を行った。対照区の苗については、単に陽光を連続照射する従来方法で本葉3葉苗まで生育させた。実施区および対照区の苗とも、圃場に移植する際における生長量の差はほとんどなく、葉の色も両区で差がなかった。
生育させた本葉3葉苗を圃場に移植し、その後の生長度合いを実施区のレタスと対照区のレタスについて比較した。
実験では、病害ストレスに対する抵抗性をみるため、とくに重度汚染圃場を選んで苗を移植した。この重度汚染圃場は根腐れ菌による病害がはなはだしく、土壌消毒の効果が薄いところを選んだものである。
圃場にシルバーマルチをかけ、畝間45cm、株間25cmで定植した。実験では3反復乱塊法で定植し、1区を8固体とした。
圃場に定植した後、45日でレタスを収穫した。収穫したレタスの主根の全部を切除、裁断し、23℃、PDA培地で培養・分離し、蛍光灯照射条件下で培養して小型分生胞子の形態によって菌を同定した。
図3、4、5、6は、収穫した実施区と対照区のレタスについて、個体重、地上部重、結球重、地下部重の平均値をグラフで示したものである。グラフ中でUV-A+Windとあるデータが実施区のレタスについての計測結果、Cont.とあるのが対照区のレタスについての計測結果を示す。個体重とはレタスの地上部にある部分と根(地下部)とを合わせた重さ、地上部重とはレタスの地上部にある部分の重さ、結球重とはレタスの結球部分(出荷される部分)の重さ、地下部重とは根の部分の重さを示す。
圃場に移植した後、1週間経過頃から実施区と対照区のレタスの生長度合いに明りょうな差が出始め、結局、収穫時の個体重、地上部重、結球重について実施区が対照区に対して有意に増加していることが認められた。とくに、結球重については実施区のレタスは対照区のレタスの1.6倍程度にもなっている。P<0.01とは危険率1%水準で有意差があることを示す。
図3〜5に示す実験結果は、実施区のレタスの収量が対照区のレタスに対して明らかに上回っていること、したがって対照区にくらべて実施区のレタスが良好に生育したことを示している。
図6に示す地下部重については実施区と対照区とでは有意差がないという結果であり、図7に示す主根と側根との重量比については、明らかに実施区のレタスについては主根の重量比が大きくなっていることを示す。この図7に示す実験結果は、実施区のレタスについては主根が十分に生長していることを示すものである。この実験で使用した圃場は土壌伝染性菌によって汚染されている圃場であり、苗の抵抗性が低いと、このような圃場に苗を移植した際に、はじめに主根が侵され、側根が伸びるようになる。対照区のレタスでは主根の側根に対する重量比が小さくなったのに対して、実施区のレタスでは主根の側根に対する重量比が大きくなっているということは、実施区では土壌伝染性菌に対する抵抗性が向上していることを示している。
図8は収穫したレタスの葉色を比較したものである。葉色については実施区も対照区も有意差は認められなかった。図9は、レタスの茎の基部の断面の色を比較したものである。測定結果は実施区と対照区とで有意差が認められ、対照区のレタスについては褐変した個体が多かった。根の内部の菌を分離・培養し、胞子を顕微鏡観察して罹病の検定をした。その結果、病原菌は実施区で50%、対照区で83%から検出され、対照区でとくに多くの胞子が見いだされた。すなわち、対照区のレタスの方が罹病率が高くなっていた。
なお、実験では圃場の場所によって病害の被害の出方にかなりの差があったので、実施区と対照区が隣接している部分での各ブロックの結球重を比較してみた。図10がその比較結果である。この比較の結果、どのブロックについても、実施区のレタスの結球重が対照区にくらべて130g増加している。このことは、実施区の育苗処理が有効に作用していることを示唆するものである。
このように、本発明方法をレタス栽培に適用した結果は、本発明方法によって育苗する方法が苗の病害等に対する抵抗性を高めることに有効に利用できることを示すものである。本実施形態はレタス栽培に適用した例であるが、レタス以外の作物についても同様にして病害等に対する苗の抵抗性を高めることができ、これによって収穫物の品質を向上させ収量を増加させることができる。
なお、植物種によっては育苗期間が長期間にわたるものがある。このように育苗期間が長期間にわたるものについて、圃場に移植した後に正常に生育できる良品の苗を生育させることは、生産コスト上からもきわめて有効である。
なお、図11、12は、苗の抗菌性がどのような理由によって生じたかを検証するためにレタスについて実験した結果を示す。図11は近紫外光(UV−A)の照射と風がレタスの苗の抗酸化能に及ぼす影響を測定した結果を示したもの、図12はレタスの苗の地下部の抗酸化能とレタスの苗の新鮮重量との関係を調べた結果を示す。
この抗菌性についての実験では、陽光を連続照射するとともに2時間間隔ごとに15分ずつ近紫外光(UV−A)と風を照射して生育させたレタスの苗を実施区とし、陽光のみを当てて生育させたレタスの苗を対照区とした。
苗の病害に対する抵抗性については、先在抗菌物質(プロヒビチン、インヒビチン)が重要な役割を有するが、これらの先在抗菌物質の多くはフェノール類やサポニンである。したがって、実施区と対照区の苗について、これらの物質の濃度がどの程度であるかを測定することによって苗の抗菌性を推定することができる。先在抗菌物質の濃度を測定する方法としては、これらの物質を個々に定量して測定する方法も可能であるが、ここでは活性酸素消去能の強さを指標にして測定した。
活性酸素消去能は、サンプルにH2O2等の活性酸素種を加え、サンプルから放射される微弱光の強さを分析する方法によって調べることができる。このサンプルからの微弱光を検出して活性酸素消去能を測定する手段は、食品分析等の分野で従来行われている方法である。本実験では、実施区と対照区のレタスの本葉3葉苗を粉砕して得た新鮮物について、微弱発光分析を行って活性酸素消去能を測定した。
図11はレタスの苗の地上部と地下部についての測定結果を示すものである。微弱発光分析では、重量あたりの発光量が多いほど抗酸化性が強く、先在抗菌物質の総量が多い、すなわち抗菌性の大小をあらわすものと考えられる。なお、この測定系はpH9以上の溶液中で反応させるため、酵素反応の影響は除去される。図11に示すデータは、処理した苗を5個体、個体別に地上部と地下部に分けて3反復で行った結果を示す。
図11に示す測定結果は、実施区(UV−A処理)の地下部の抗酸化能が対照区の地下部の抗酸化能にくらべて約2倍となっているのに対して、実施区と対照区の地上部の抗酸化能については有意差が認められないことを示す。
図12は、上記実施区と対照区の苗について、個体の大きさ(苗の新鮮重量、生の状態での苗の重量)と苗の地下部の抗酸化能とを比較して表したグラフである。このグラフから、抗酸化能が高い苗については新鮮重量が軽い方に偏っていることがわかる。すなわち、根部の抗菌性が高い苗は個体自体が小さくなることがわかる。いいかえれば、抗菌性の高い苗はしっかりした、しまった苗として生育する、ということができる。
なお、レタスの苗にUV−A紫外光を照射するかわりに、UV−B紫外光を照射する実験を行ったが、UV−B紫外光を照射した場合には、上述したような苗の地下部で抗酸化能が増加するという現象は見られなかった。
以上説明したレタスの苗についての抗菌性についての実験から、苗の抗酸化性はUV−A紫外光の照射と風によって地下部のみで有意に増加したと言える。このことから、苗の先在抗菌物質(プロヒビチン、インヒビチン)の量は根の部分のみで特に多くなったと考えられる。これらの物質は病害抵抗性において重要な役割を持っている。またレタス根腐病は地下部から感染するため、これらの物質の感染部位における濃度は抵抗性の発現に関係が深いと考えられる。したがってUV−A紫外光と風を当てて育苗した場合にレタスの根腐病抵抗性が大幅に高まる原因の一つはこの現象にあると考えられる。
実施区の苗に照射した光(陽光+近紫外光:a+b)と対照区の苗に照射した光(陽光:a)のスペクトルを示すグラフである。 近紫外光のスペクトルを拡大して示すグラフである。 レタスの実施区と対照区の個体重を示すグラフである。 レタスの実施区と対照区の地上部重を示すグラフである。 レタスの実施区と対照区の結球重を示すグラフである。 レタスの実施区と対照区の地下部重を示すグラフである。 レタスの実施区と対照区の主根と側根の重量比を示すグラフである。 レタスの実施区と対照区について葉色(SPAD値)を示すグラフである。 レタスの実施区と対照区について茎の褐変度合いを示すグラフである。 隣接する実施区と対照区のレタスの結球重を、ブロックの間で比較した結果を示すグラフである。 UV−A紫外光の照射と風がレタスの苗の抗酸化能に及ぼす影響を測定した結果を示すグラフである。 レタスの苗の地下部の抗酸化能とレタスの苗の新鮮重量との関係を調べた結果を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 移植後に作用する病害等のストレスに対する抵抗性を高める育苗方法であって、
    育苗期間中に、紫外線を苗に照射する操作と、苗に物理的な振動を与える操作とを行うことを特徴とする育苗方法。
  2. 物理的な振動を与える操作として、苗に風を当てることを特徴とする請求項1記載の育苗方法。
  3. 苗に照射する紫外線として、近紫外光を使用することを特徴とする請求項1記載の育苗方法。
  4. 紫外線を苗に照射する操作と、苗に物理的な振動を与える操作とを間欠的に行うことを特徴とする請求項1、2または3記載の育苗方法。
  5. 紫外線を苗に照射する操作と、苗に物理的な振動を与える操作とを同時に行うことを特徴とする請求項4記載の育苗方法。
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