JP2004283043A - 中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】融点を上げることなく、酸化安定性、水分散性に優れたリン脂質を煩雑な作業をともなわず産業的に有利な方法で製造する方法を提供する。
【解決手段】リン脂質と中鎖脂肪トリグリセリドを、有機溶剤の無存在下でリパーゼを用いてリン脂質のエステル交換反応を行う中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法において、リパーゼがリゾムコール(Rhizomucor )属、サーモマイセス(Thermomyces )属、キャンディダ(Candida )属、アルカリゲネス(Alcaligenes )属、シュードモナス(Pseudomonas )属からなる群より選択される微生物由来のリパーゼであり、このリパーゼを1種または2種以上を用いることを特徴とする中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】リン脂質と中鎖脂肪トリグリセリドを、有機溶剤の無存在下でリパーゼを用いてリン脂質のエステル交換反応を行う中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法において、リパーゼがリゾムコール(Rhizomucor )属、サーモマイセス(Thermomyces )属、キャンディダ(Candida )属、アルカリゲネス(Alcaligenes )属、シュードモナス(Pseudomonas )属からなる群より選択される微生物由来のリパーゼであり、このリパーゼを1種または2種以上を用いることを特徴とする中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リン脂質は天然の乳化剤として食品、化粧品等に広く使用されており、レシチンの名称にて知られている。また、近年リン脂質の生体内における種々の生理効果が示唆され、リポソ−ム等の医薬品工業への利用も盛んに行なわれている。しかし、現在工業的に用いられているリン脂質はそのほとんどが大豆、あるいは卵黄から得られており、リン脂質に結合している脂肪酸はいずれもその50%以上が不飽和脂肪酸であるため、熱および酸化安定性に乏しいことが知られている。例えば、大豆あるいは卵黄由来の代表的なリン脂質であるホスファチジルコリン(PC)については熱酸化により脂肪酸部分に生じたカルボニル基がPC中のホスホリルコリン基を触媒とする分子間アルドール縮合により重合し褐変生成物を生じることが報告されている。また長期保存に際しても脂肪酸部分の酸化に起因する着色、異臭発生などが知られている。このようにリン脂質に結合している脂肪酸の二重結合にもとづき過酸化、分解反応が進行し、酸化に対する不安定さを生じさせると考えられるため、リン脂質の用途を広げるためには脂肪酸部分の酸化に対する安定性の改善が必須と思われる。
【0003】
この欠点を解消する方法として、水素および水素化触媒の存在下でリン脂質に結合している脂肪酸中の不飽和二重結合を接触水素添加して飽和脂肪酸とする方法が知られておりすでに実用化されている(特公昭50−7586号公報、特許文献1)が、これは有機溶剤中で加圧水素を用いる反応であるため特殊な反応設備が必要であり、産業的に有利は方法とは言いがたく、この水添反応により得られたリン脂質は長鎖飽和脂肪酸を多く含むため融点が高く、水分散性が悪いため、利用するにあたり制限がある。
また、グリセロホスホコリンのようなグリセロリン脂質と脂肪酸から酸無水物法、酸クロリド法などによりホスファチジルコリン等のリン脂質を合成する方法も知られているが、縮合剤による脂肪酸の劣化が起こるという問題点や、反応方法が煩雑かつコスト高になるという欠点がある。他方、リパ−ゼについてはトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド等のエステル結合を加水分解すること、また、リン脂質における脂肪酸との結合形態であるエステル結合を加水分解することが報告されている。そこでこのリパーゼを利用しリン脂質の脂肪酸部分をエステル交換反応により変換する技術が検討されてきている。例えば、ポリアルキレングリコール修飾リパーゼによるホスファチジルコリンのエステル交換方法(特開昭63−105686号公報、特許文献2)、固定化リパ−ゼおよび固定化ホスホリパ−ゼからなる酵素系を使用したエステル交換方法(特開平8−291188号公報、特許文献3)が開示されている。これらのようにリパ−ゼを利用したエステル交換によりリン脂質に結合している脂肪酸をある程度改質することはできる。しかし、リパ−ゼには基質特異性があるため改質できる脂肪酸の種類が限られる、あるいは反応基質として脂肪酸、脂肪酸エステル等を使用するため反応系が不均一系となるため均一に溶解するための有機溶剤を必要とし、反応終了後に脱溶剤の必要があり煩雑な作業をともなうため産業的に有利な方法とは言いがたい。
特開昭62−84092号公報(特許文献4)には、レシチンの構成脂肪酸の20%〜90%が中鎖脂肪酸である水分散性のよいレシチンが開示されている。この技術では、リパーゼとしてCandida Cyrindracea属の菌体酵素のみが開示されており、汎用性がない問題がある。このように水分散性のよい中鎖脂肪酸を構成成分とするリン脂質が求められているが、汎用性のある簡単な製造方法が求められている。
【0004】
【特許文献1】特公昭50−7586号公報(第2頁)
【特許文献2】特開昭63−105686号公報(第2頁)
【特許文献3】特開平8−291188号公報(第1頁)
【特許文献4】特開昭62−84092号公報(第1頁)
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、融点を上げることなく、酸化安定性、水分散性に優れたリン脂質を煩雑な作業をともなわず産業上有利な方法で製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の(1)および(2)である。
(1)リン脂質と、中鎖脂肪トリグリセリドを、有機溶剤の無存在下リパーゼを用いてリン脂質のエステル交換反応を行う中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法において、リパーゼがリゾムコール(Rhizomucor )属、サーモマイセス(Thermomyces )属、キャンディダ(Candida )属、アルカリゲネス(Alcaligenes )属、シュードモナス(Pseudomonas )属からなる群より選択される微生物由来のリパーゼの1種または2種以上を用いることを特徴とする中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法である。
(2)パーゼがリゾムコールミーヘイ(Rhizomucor miehei )、サーモマイセスラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus )、キャンディダアンタークティカ(Candida antarctica )アルカリゲネスエスピー(Alcaligenes sp. )、シュードモナスツゼリ(Pseudomonas stutzeri )、およびシュードモナスセパシア(Pseudomonas cepacia )からなる群より選択される微生物由来のリパーゼの1種または2種以上を用いることを特徴とする請求項1記載の中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法は、リン脂質と、中鎖脂肪トリグリセリドを、有機溶剤の無存在下リパーゼを用いてリン脂質のエステル交換反応を行う中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法において、リパーゼがリゾムコール(Rhizomucor )属、サーモマイセス(Thermomyces )属、キャンディダ(Candida)属、アルカリゲネス(Alcaligenes )属、シュードモナス(Pseudomonas )属からなる群より選択される微生物由来のリパーゼの1種または2種以上を用いることを特徴とする。
ここで、本発明に用いることができるリン脂質とは、すなわちホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン等、あるいはこれらのリゾ体を単独あるいは混合物として含むものであり、原料としては大豆、なたね、卵黄などから抽出、精製して得られる動植物由来の天然のリン脂質、ホスホリパ−ゼA2により改質されたリン脂質、あるいは全合成などによって得られるリン脂質が挙げられる。しかし、価格、供給面よりから考えて天然物由来のリン脂質の方がより有利である。これらの天然物由来のリン脂質は、トリグリセリドを結合したペ−スト状の租精製リン脂質、アセトン分別等によりトリグリセリドを除去した精製リン脂質、あるいは溶剤やカラム分画によりホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン等の成分を濃縮したもの、あるいはこれらのいづれを用いてもよい。
【0007】
中鎖脂肪トリグリセリドとしては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸を単独あるいは複数その分子内に含むものを言う。
使用酵素としては、リゾムコール(Rhizomucor )属、サーモマイセス(Thermomyces )属、キャンディダ(Candida )属、アルカリゲネス(Alcaligenes )属、シュードモナス(Pseudomonas )属からなる群より選択される微生物由来のリパーゼを1種または2種以上を含むものを挙げることができる。さらにその属の中でも特に、リゾムコールミーヘイ(Rhizomucor miehei )、サーモマイセスラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus )、キャンディダアンタークティカ(Candida antarctica )、アルカリゲネスエスピー(Alcaligenes sp. )、シュードモナスツゼリ(Pseudomonas stutzeri )、シュードモナスセパシア(Pseudomonas cepacia )からなる群より選択される微生物由来のリパーゼが望ましい。
リン脂質に結合している不飽和脂肪酸を中鎖脂肪酸に置き換える方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
I)固定化担体に固定化されていない酵素を用いる場合は、公知の方法のいづれかを用いて固定化する。
II)穏やかに加温しつつ中鎖トリグリセリドにリン脂質を溶解する。
III)中鎖トリグリセリドとリン脂質の溶解液に固定化酵素を添加し、酵素の示適温度にて攪拌する。
IV)酵素反応終了後、固定化酵素をろ別し、脂肪酸部分が中鎖脂肪に変換されたリン脂質を得る。
【0008】
【発明の効果】
本発明の中鎖脂肪結合リン脂質の製造方法によれば、熱安定性、酸化安定性、水分散性に優れ、煩雑な作業をともなわず簡便な方法で製造することができる。
【0009】
【実施例】
以下に実施例に基づいて、本発明を更に詳しく説明する。
次に用いたリパーゼについて表1に記載する。
次にGC分析法について記載する。
<GC分析法>
機種;HP5890Aガスクロマトグラフ(Hewlett−Packard社製)
カラム;DB−WAX(0.25mm×30m:J&W社製)
分析温度;160→230℃、5℃/分 注入口温度 250℃
検出器温度;250℃(検出器:FID)
データ処理;面積百分率による組成比表示
(Hewlett−Packard社製HP3396Aインテグレータ使用)
キャリアガス;He 1ml/分
【0010】
実施例1
大豆レシチンパウダー(ツルーレシチン(株)製 SLPホワイト)1gを中鎖脂肪トリグリセリド(日本油脂(株)社製 パナセート810)9gに入れ、湯浴上にて完全に溶解させた。さらに、リゾムコール(Rhizomucor )属由来の固定化酵素(ノボザイムス(株)社製 Lipozyme RM IM)を1g入れ、40℃にて7時間震盪攪拌した。7時間後、反応液をTLCにて展開し、リン脂質のスポットをかきとり、前記のガスクロマトグラフィーの条件にてリン脂質脂肪酸組成を調べたところ、カプリル酸1.7%、カプリン酸0.8%(中鎖脂肪として合計2.5%)含まれていた。結果を表1に示す。
【0011】
実施例2〜7,比較例1〜7
実施例1のリゾムコール(Rhizomucor )属由来の固定化酵素(ノボザイムス(株)社製 Lipozyme RM IM)の代わりに、表1に示す各種のリパーゼを使用した以外は実施例1に準じて反応を行った。さらにリン脂質を同様にTLCで展開し、構成脂肪酸の分析を行った。結果を表1に合わせて示す。
【0012】
【表1】
【0013】
なお、用いた酵素の処理は、次の条件による。
市販の固定化酵素はそのまま使用した。固定化酵素以外は、4℃以下の若干の冷水に溶解させたのち粒状活性炭に吸着させたのち、凍結乾燥機にて乾燥させて固定化したものを用いた。
以上の結果より、本発明のリパーゼを用いた実施例は、反応が進行し、エステル交換反応が起こり、比較例で用いたリパーゼでは反応が進行しないことがわかる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リン脂質は天然の乳化剤として食品、化粧品等に広く使用されており、レシチンの名称にて知られている。また、近年リン脂質の生体内における種々の生理効果が示唆され、リポソ−ム等の医薬品工業への利用も盛んに行なわれている。しかし、現在工業的に用いられているリン脂質はそのほとんどが大豆、あるいは卵黄から得られており、リン脂質に結合している脂肪酸はいずれもその50%以上が不飽和脂肪酸であるため、熱および酸化安定性に乏しいことが知られている。例えば、大豆あるいは卵黄由来の代表的なリン脂質であるホスファチジルコリン(PC)については熱酸化により脂肪酸部分に生じたカルボニル基がPC中のホスホリルコリン基を触媒とする分子間アルドール縮合により重合し褐変生成物を生じることが報告されている。また長期保存に際しても脂肪酸部分の酸化に起因する着色、異臭発生などが知られている。このようにリン脂質に結合している脂肪酸の二重結合にもとづき過酸化、分解反応が進行し、酸化に対する不安定さを生じさせると考えられるため、リン脂質の用途を広げるためには脂肪酸部分の酸化に対する安定性の改善が必須と思われる。
【0003】
この欠点を解消する方法として、水素および水素化触媒の存在下でリン脂質に結合している脂肪酸中の不飽和二重結合を接触水素添加して飽和脂肪酸とする方法が知られておりすでに実用化されている(特公昭50−7586号公報、特許文献1)が、これは有機溶剤中で加圧水素を用いる反応であるため特殊な反応設備が必要であり、産業的に有利は方法とは言いがたく、この水添反応により得られたリン脂質は長鎖飽和脂肪酸を多く含むため融点が高く、水分散性が悪いため、利用するにあたり制限がある。
また、グリセロホスホコリンのようなグリセロリン脂質と脂肪酸から酸無水物法、酸クロリド法などによりホスファチジルコリン等のリン脂質を合成する方法も知られているが、縮合剤による脂肪酸の劣化が起こるという問題点や、反応方法が煩雑かつコスト高になるという欠点がある。他方、リパ−ゼについてはトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド等のエステル結合を加水分解すること、また、リン脂質における脂肪酸との結合形態であるエステル結合を加水分解することが報告されている。そこでこのリパーゼを利用しリン脂質の脂肪酸部分をエステル交換反応により変換する技術が検討されてきている。例えば、ポリアルキレングリコール修飾リパーゼによるホスファチジルコリンのエステル交換方法(特開昭63−105686号公報、特許文献2)、固定化リパ−ゼおよび固定化ホスホリパ−ゼからなる酵素系を使用したエステル交換方法(特開平8−291188号公報、特許文献3)が開示されている。これらのようにリパ−ゼを利用したエステル交換によりリン脂質に結合している脂肪酸をある程度改質することはできる。しかし、リパ−ゼには基質特異性があるため改質できる脂肪酸の種類が限られる、あるいは反応基質として脂肪酸、脂肪酸エステル等を使用するため反応系が不均一系となるため均一に溶解するための有機溶剤を必要とし、反応終了後に脱溶剤の必要があり煩雑な作業をともなうため産業的に有利な方法とは言いがたい。
特開昭62−84092号公報(特許文献4)には、レシチンの構成脂肪酸の20%〜90%が中鎖脂肪酸である水分散性のよいレシチンが開示されている。この技術では、リパーゼとしてCandida Cyrindracea属の菌体酵素のみが開示されており、汎用性がない問題がある。このように水分散性のよい中鎖脂肪酸を構成成分とするリン脂質が求められているが、汎用性のある簡単な製造方法が求められている。
【0004】
【特許文献1】特公昭50−7586号公報(第2頁)
【特許文献2】特開昭63−105686号公報(第2頁)
【特許文献3】特開平8−291188号公報(第1頁)
【特許文献4】特開昭62−84092号公報(第1頁)
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、融点を上げることなく、酸化安定性、水分散性に優れたリン脂質を煩雑な作業をともなわず産業上有利な方法で製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の(1)および(2)である。
(1)リン脂質と、中鎖脂肪トリグリセリドを、有機溶剤の無存在下リパーゼを用いてリン脂質のエステル交換反応を行う中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法において、リパーゼがリゾムコール(Rhizomucor )属、サーモマイセス(Thermomyces )属、キャンディダ(Candida )属、アルカリゲネス(Alcaligenes )属、シュードモナス(Pseudomonas )属からなる群より選択される微生物由来のリパーゼの1種または2種以上を用いることを特徴とする中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法である。
(2)パーゼがリゾムコールミーヘイ(Rhizomucor miehei )、サーモマイセスラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus )、キャンディダアンタークティカ(Candida antarctica )アルカリゲネスエスピー(Alcaligenes sp. )、シュードモナスツゼリ(Pseudomonas stutzeri )、およびシュードモナスセパシア(Pseudomonas cepacia )からなる群より選択される微生物由来のリパーゼの1種または2種以上を用いることを特徴とする請求項1記載の中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法は、リン脂質と、中鎖脂肪トリグリセリドを、有機溶剤の無存在下リパーゼを用いてリン脂質のエステル交換反応を行う中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法において、リパーゼがリゾムコール(Rhizomucor )属、サーモマイセス(Thermomyces )属、キャンディダ(Candida)属、アルカリゲネス(Alcaligenes )属、シュードモナス(Pseudomonas )属からなる群より選択される微生物由来のリパーゼの1種または2種以上を用いることを特徴とする。
ここで、本発明に用いることができるリン脂質とは、すなわちホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン等、あるいはこれらのリゾ体を単独あるいは混合物として含むものであり、原料としては大豆、なたね、卵黄などから抽出、精製して得られる動植物由来の天然のリン脂質、ホスホリパ−ゼA2により改質されたリン脂質、あるいは全合成などによって得られるリン脂質が挙げられる。しかし、価格、供給面よりから考えて天然物由来のリン脂質の方がより有利である。これらの天然物由来のリン脂質は、トリグリセリドを結合したペ−スト状の租精製リン脂質、アセトン分別等によりトリグリセリドを除去した精製リン脂質、あるいは溶剤やカラム分画によりホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン等の成分を濃縮したもの、あるいはこれらのいづれを用いてもよい。
【0007】
中鎖脂肪トリグリセリドとしては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸を単独あるいは複数その分子内に含むものを言う。
使用酵素としては、リゾムコール(Rhizomucor )属、サーモマイセス(Thermomyces )属、キャンディダ(Candida )属、アルカリゲネス(Alcaligenes )属、シュードモナス(Pseudomonas )属からなる群より選択される微生物由来のリパーゼを1種または2種以上を含むものを挙げることができる。さらにその属の中でも特に、リゾムコールミーヘイ(Rhizomucor miehei )、サーモマイセスラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus )、キャンディダアンタークティカ(Candida antarctica )、アルカリゲネスエスピー(Alcaligenes sp. )、シュードモナスツゼリ(Pseudomonas stutzeri )、シュードモナスセパシア(Pseudomonas cepacia )からなる群より選択される微生物由来のリパーゼが望ましい。
リン脂質に結合している不飽和脂肪酸を中鎖脂肪酸に置き換える方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
I)固定化担体に固定化されていない酵素を用いる場合は、公知の方法のいづれかを用いて固定化する。
II)穏やかに加温しつつ中鎖トリグリセリドにリン脂質を溶解する。
III)中鎖トリグリセリドとリン脂質の溶解液に固定化酵素を添加し、酵素の示適温度にて攪拌する。
IV)酵素反応終了後、固定化酵素をろ別し、脂肪酸部分が中鎖脂肪に変換されたリン脂質を得る。
【0008】
【発明の効果】
本発明の中鎖脂肪結合リン脂質の製造方法によれば、熱安定性、酸化安定性、水分散性に優れ、煩雑な作業をともなわず簡便な方法で製造することができる。
【0009】
【実施例】
以下に実施例に基づいて、本発明を更に詳しく説明する。
次に用いたリパーゼについて表1に記載する。
次にGC分析法について記載する。
<GC分析法>
機種;HP5890Aガスクロマトグラフ(Hewlett−Packard社製)
カラム;DB−WAX(0.25mm×30m:J&W社製)
分析温度;160→230℃、5℃/分 注入口温度 250℃
検出器温度;250℃(検出器:FID)
データ処理;面積百分率による組成比表示
(Hewlett−Packard社製HP3396Aインテグレータ使用)
キャリアガス;He 1ml/分
【0010】
実施例1
大豆レシチンパウダー(ツルーレシチン(株)製 SLPホワイト)1gを中鎖脂肪トリグリセリド(日本油脂(株)社製 パナセート810)9gに入れ、湯浴上にて完全に溶解させた。さらに、リゾムコール(Rhizomucor )属由来の固定化酵素(ノボザイムス(株)社製 Lipozyme RM IM)を1g入れ、40℃にて7時間震盪攪拌した。7時間後、反応液をTLCにて展開し、リン脂質のスポットをかきとり、前記のガスクロマトグラフィーの条件にてリン脂質脂肪酸組成を調べたところ、カプリル酸1.7%、カプリン酸0.8%(中鎖脂肪として合計2.5%)含まれていた。結果を表1に示す。
【0011】
実施例2〜7,比較例1〜7
実施例1のリゾムコール(Rhizomucor )属由来の固定化酵素(ノボザイムス(株)社製 Lipozyme RM IM)の代わりに、表1に示す各種のリパーゼを使用した以外は実施例1に準じて反応を行った。さらにリン脂質を同様にTLCで展開し、構成脂肪酸の分析を行った。結果を表1に合わせて示す。
【0012】
【表1】
【0013】
なお、用いた酵素の処理は、次の条件による。
市販の固定化酵素はそのまま使用した。固定化酵素以外は、4℃以下の若干の冷水に溶解させたのち粒状活性炭に吸着させたのち、凍結乾燥機にて乾燥させて固定化したものを用いた。
以上の結果より、本発明のリパーゼを用いた実施例は、反応が進行し、エステル交換反応が起こり、比較例で用いたリパーゼでは反応が進行しないことがわかる。
Claims (2)
- リン脂質と中鎖脂肪トリグリセリドを、有機溶剤の無存在下でリパーゼを用いてリン脂質のエステル交換反応を行う中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法において、リパーゼがリゾムコール(Rhizomucor )属、サーモマイセス(Thermomyces)属、キャンディダ(Candida )属、アルカリゲネス(Alcaligenes )属、およびシュードモナス(Pseudomonas )属からなる群より選択される微生物由来のリパーゼの1種または2種以上を用いることを特徴とする中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法。
- リパーゼがリゾムコールミーヘイ(Rhizomucor miehei )、サーモマイセスラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus )、キャンディダアンタークティカ(Candida antarctica )アルカリゲネスエスピー(Alcaligenes sp. )、シュードモナスツゼリ(Pseudomonas stutzeri )、およびシュードモナスセパシア(Pseudomonas cepacia )からなる群より選択される微生物由来のリパーゼの1種または2種以上を用いることを特徴とする請求項1記載の中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2003077153A JP2004283043A (ja) | 2003-03-20 | 2003-03-20 | 中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2003077153A Pending JP2004283043A (ja) | 2003-03-20 | 2003-03-20 | 中鎖脂肪酸結合リン脂質の製造方法 |
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JP (1) | JP2004283043A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006022166A1 (ja) * | 2004-08-24 | 2006-03-02 | The Nisshin Oillio Group, Ltd. | リパーゼ粉末組成物及びそれを用いたエステル化物の製造方法 |
-
2003
- 2003-03-20 JP JP2003077153A patent/JP2004283043A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006022166A1 (ja) * | 2004-08-24 | 2006-03-02 | The Nisshin Oillio Group, Ltd. | リパーゼ粉末組成物及びそれを用いたエステル化物の製造方法 |
US7811802B2 (en) | 2004-08-24 | 2010-10-12 | The Nisshin Oillio Group, Ltd. | Lipase powder composition and a process for preparing an esterified compound by using the same |
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