本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に記述する。図1は、本発明の構成する液体燃料容器の断面構造の一例を示す。
燃料容器1の外壁面には表面が絶縁性の燃料電池装着部2が複数設けられ、この電池装着部2の容器壁は、予め液体燃料が透過するに十分な網目状構造、多孔質層、もしくは、スリット上の拡散孔3を形成している。
燃料電池装着部2の表面には、隣接する燃料電池と電気的接続をするための耐食性,導電性を有する材料を塗布,焼付けてアノード側インターコネクタ4を形成しておく。インターコネクタ4は、液体燃料が透過するに十分な網目状構造、多孔質層もしくはスリット上の拡散孔構造を持っている。
燃料容器1の内壁面には、電気化学的に不活性な液体燃料吸上げ材5が装着されている。燃料容器の壁面に装着された燃料電池を、電気的に直列あるいは直列と並列の組合せで接続し、発電装置外部へ取出すアノードおよびカソードの燃料電池端子6を設けておく。
単電池は図2に示すように、予め固体の電解質膜21の両面にアノード層22およびカソード層23を一体接合し、電解質膜/電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assembly)を形成しておく。燃料電池を燃料容器に固定するための燃料電池固定板8は、図3に示すように電気的に絶縁性の板を用い、燃料電池と接触する部分は、空気が拡散して燃料電池に供給するに十分な網目状構造,多孔質層もしくはスリット状の拡散孔3を有しており、拡散孔部分の燃料電池と接する面には、隣接する燃料電池のアノード側インターコネクタ4と接続するためのカソード集電板7を備えている。
このカソード集電板7の燃料電池に接する部分は、空気を供給するに十分な拡散孔3を持たせている。発電に際して燃料容器1内では、燃料が酸化されて炭酸ガスが発生することになるが、この炭酸ガスは図4(a)に示すような断面構造の液不透過性の気液分離機能を持った通気孔15を介して、燃料容器の外部へ排出される。
通気孔15は、通気管51とネジ締め方式の通気蓋52で構成され、撥水性,多孔質の気液分離膜50を通気蓋で固定する構造となっている。この通気孔15は、図4(b)に示す断面構造のように、燃料電池発電装置が如何なる姿勢をとっても1つ以上の通気孔が通気状態となるように燃料容器1の複数の面に配置される。
燃料電池発電装置の組立ては図5に示すように、燃料容器の燃料電池装着部にガスケット10、MEA9、ガスケット10、空気と生成する水の拡散を容易にするために炭素繊維織布にポリテトラフロロエチレンを微細に分散した多孔質の拡散層11の順に積層して、通気孔装着孔19を有する燃料電池固定板8を燃料容器1に接着あるいはネジ留め等の方法で固定する。この固定過程でカソード集電板は、隣接する燃料電池のアノード側インターコネクタと接触して電気的に接続され、始点と終点部が出力端子16として取出される。
燃料電池発電装置の作動に当たり、図4(b)に示した燃料補給孔を兼ねた通気孔15の蓋を外し、ここから液体燃料、例えば、メタノール水溶液が充填される。容器下面に装着された単電池には充填されたメタノール水溶液が浸透してアノードに安定的に供給され、上面に装着された単電池には吸い上げ材から吸い上げられてアノードに安定的に供給されることになる。
各単電池のカソードは網目状,多孔質あるいはスリット上の貫通孔,カソード集電板とカソード拡散層を介して外気と接しているため、空気中の酸素が拡散供給され、発電で生成した水は拡散で排除される。
本例の燃料電池発電装置の外観を図6に示す。通気孔15を有する燃料容器1は発電装置の構造体として機能すると共に、その壁面に複数の単電池13が燃料電池固定板8で固定され、電気的に直列接続された両端を出力端子16として外部に取出す構造となっている。
発電に際してアノード側、即ち、燃料容器内には燃料が酸化されて炭酸ガスが発生するが、この炭酸ガスは液不透過性の気液分離機能を持った通気孔を介して燃料容器の外部へ排出される。この通気孔は、燃料容器壁面に複数個設けて、燃料容器が発電中に如何なる姿勢をとっても、1個以上の通気孔が燃料液体で遮蔽されることがないような位置に配置しておくことによって、安定な発電動作を保証しているのが特徴である。
本発明による燃料発電装置は、燃料や酸化剤ガスなどを強制的に供給する設備を必要とせず、容器壁面には単電池が一層装着されるのみで、電池がセパレータを介して複数積層される構造をとらず、放熱が十分であるために強制冷却機構を設ける必要がない。そのため、補機動力損が無く、積層のための導電性セパレータを必要としない、部品点数の少ない構造とすることができる。
メタノール水溶液を燃料とする燃料電池では、以下に示す電気化学反応でメタノールが持っている化学エネルギーが直接電気エネルギーに変換される形で発電される。
アノード電極側では供給されたメタノール水溶液が(1)式に従って反応して炭酸ガスと水素イオンと電子に解離する。
〔化1〕
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e− …(1)
生成された水素イオンは、電解質膜中をアノードからカソード側に移動し、カソード電極上で空気中から拡散してきた酸素ガスと電極上の電子とが(2)式に従って反応し、水を生成する。
〔化2〕
6H++3/2O2+6e− → 3H2O …(2)
従って、発電に伴う全化学反応は(3)式に示すように、メタノールが酸素によって酸化され炭酸ガスと水を生成し、化学反応式は形式上メタノールの火炎燃焼と同じになる。
〔化3〕
CH3OH+3/2O2 → CO2+3H2O …(3)
単位電池の開路電圧は、概ね室温近傍で1.2Vであるが、燃料が電解質膜を浸透する影響で実質的には0.85〜1.0Vであり、特に、限定されるものではないが、実用的な負荷運転の下での電圧は0.3〜0.6V程度の領域となる負荷電流密度が選ばれる。従って、実際に電源として用いる場合には負荷機器の要求に従って所定の電圧が得られるよう複数の単位電池を直列接続して用いられる。単電池の出力電流密度は電極触媒,電極構造,その他の影響で変化するが、実効的に単電池の発電部面積を選択して所定の電流が得られるように設計される。
本発明による燃料電池発電装置を構成する支持体は、液体燃料を収容する燃料容器に特徴があり、その断面形状は角型,円型あるいはその他の形状であってもコンパクトに単電池が必要な数だけ装着できる形状であれば、特に制限はない。しかし、単電池を規定の容積中にコンパクトに装填するには円筒型または角型が装着効率も良く、燃料電池発電部を装着する加工性の上でも好ましい形状と云える。
支持体の材料は、電気化学的に不活性で使用環境下で耐久性,耐食性を持った薄型で十分な強度を持つ材料であれば特に制限はない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリアクリル系樹脂、その他のエンジニアリング樹脂やこれらを各種のフィラ等で補強した電気絶縁性の材料、または、電池作動雰囲気での耐食性に優れた炭素材料、ステンレス系鋼、あるいは通常の鉄、ニッケル、銅、アルミニウムまたはこれらの合金の表面を耐食化および電気絶縁化処理した材料を挙げることができる。いずれにしても形状を支持する強度,耐食性と電気化学的に不活性な材料であれば特に限定されるものではない。
燃料電池支持体内部は、燃料貯蔵および輸送空間として使用されるが、筒状支持体内部に充填され燃料供給を安定化する吸上げ材は、メタノール水溶液との接触角が小さく、電気化学的に不活性で耐食性のある材料であれば良く、粉末あるいは繊維状のものを用いるとよい。例えば、ガラス,アルミナ,シリカアルミナ,シリカ,非黒鉛系炭素,セルロースなどの繊維や、吸水性高分子繊維などは充填密度が低く、メタノール水溶液保持性に優れた材料である。
発電部を構成するアノード触媒としては、炭素系粉末担体に白金とルテニウムあるいは白金/ルテニウム合金の微粒子を分散担持したもの、カソード触媒としては、炭素系担体に白金微粒子を分散担持したものは容易に製造できる材料である。しかし、本発明の燃料電池のアノードおよびカソードの触媒は、通常の直接形メタノール燃料電池に用いられるものであれば、特に、制限されるものではなく、電極触媒の安定化や長寿命化のために上記の貴金属成分に鉄,錫,希土類元素等から選ばれた第3の成分を添加した触媒を用いることは好ましい。
電解質膜には限定的ではないが水素イオン導電性を示す膜が用いられる。代表的な材料としてパーフロロカーボン系スルフォン酸樹脂,ポリパーフロロスチレン系スルフォン酸樹脂などに代表されるスルフォン酸化やアルキレンスルフォン酸化したフッ素系ポリマやポリスチレン類,ポリスルフォン類,ポリエーテルスルフォン類,ポリエーテルエーテルスルフォン類,ポリエーテルエーテルケトン類,その他の炭化水素系ポリマをスルフォン化した材料を用いることができる。
これらの電解質膜でメタノールの透過性の小さい材料は、燃料の利用率を高く採ることができ、燃料のクロスオーバによる電池電圧の低下も無く、好ましい材料であり、一般に燃料電池を90℃以下の温度で運転することができる。また、タングステン酸化物水和物,ジルコニウム酸化物水和物,スズ酸化物水和物,ケイタングステン酸,ケイモリブデン酸,タングストリン酸,モリブドリン酸などの水素イオン導電性無機物を、耐熱性樹脂にミクロ分散した複合電解質膜等を用いることによって、より高温域まで運転できる燃料電池とすることもできる。
いずれにしても水素イオン伝導性が高く、メタノール透過性の低い電解質膜を用いると、燃料の利用率が高くなるため本発明の効果であるコンパクト化および長時間発電を、より高いレベルで達成することができる。
上記した水和型の酸性電解質膜は、一般に乾燥時と湿潤時とでは膨潤によって膜の変形が発生したり、十分にイオン導電性の高い膜では機械強度が十分でない場合が生じる。このような場合には、機械強度,耐久性,耐熱性に優れた繊維を不織布あるいは織布状で芯材として用いたり、電解質膜製造時にこれらの繊維をフィラとして添加,補強することは、電池性能の信頼性を高める上で有効な方法である。 また、電解質膜の燃料透過性を低減するために、ポリベンズイミダゾール類に硫酸,リン酸,スルフォン酸類やフォスフォン酸類をドープした膜を使用することもできる。
単電池を構成する発電部は、上記に代わるもう一つ例として、例えば、以下のような方法によって作製することもできる。即ち、(1)液体燃料容器の電気絶縁性外周面に導電性のインタコネクタを塗布してアノード接合部の壁面を貫通孔による多孔質化する工程、(2)アノード触媒と電解質樹脂を予め揮発性有機溶媒に溶解した溶液をバインダとして添加、分散してペースト状にしたものを液体燃料の収納容器の切込みの多孔質部分に10〜50μmの一定厚さに塗布して電極を形成する工程、(3)アノード塗布部をマスクして切込み部にシール用のガスケットを塗布し燃料容器と接合する工程、(4)その後、予め揮発性有機溶媒に溶解した電解質溶液をアノード電極に接して切込み部に、膜形成後の厚さが20〜50μmとなるように塗布する工程、(5)次いで、カソード触媒と電解質膜を予め揮発性有機溶媒に溶解した溶液をバインダとして混練してペースト状にしたものを電解質膜の上に10〜50μmの一定厚さに塗布して電極を形成する工程、(6)更に、その外部に炭素系粉末と所定量の撥水性分散材、例えば、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の水性分散液をペースト状にして、カソード電極表面に接合するように切込み部に塗布し、拡散層を形成する工程、を経て単電池が作られる。この時、(4)の工程において電解質膜部分はカソード面積よりも大きくとり、ガスケットと電解質膜を密着させるか、あるいは、接着剤を用いて接着することによってシールすることが重要である。
得られた単電池のカソード側拡散層部分に、導電性の多孔質材あるいはネットを装着してカソードカレントコレクタとし、隣接する単電池からのインターコネクターと電気的に接続し、直列接続された両端から端子を取出す。カソード側に拡散層を設けることは燃料電池作動時に生成する水のフラッデイングを防止する上で有効な方法である。
また、拡散層を製造するに当たって、撥水性の水性分散材が白金触媒または白金・ルテニウム合金触媒の触媒毒成分となる界面活性剤を含んでいるような場合には、例えば、炭素繊維のような導電性の織布面の片側に、炭素系粉末と所定量の撥水性分散材、例えば、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の水性分散液をペースト状にして塗布し、予め、界面活性剤が分解する温度で焼成してから塗布面をカソードに接するように装着し、炭素繊維織布をカソードカレントコレクタとする方法は有効である。
いずれにしても単電池が支持体表面にアノード,電解質膜,カソード,拡散層の順に重ねられ、アノード/電解質膜,カソード/電解質膜間に十分な反応界面を形成する方法であれば、その製法に特別な制限はない。また、カソードを形成する際にカソード触媒、電解質膜と電解質を予め揮発性有機溶媒に溶解した溶液に所定量の撥水性分散材、例えば、ポリテトラフルオロエチレン微粒子を加えてペースト状にし、これを塗布することによって拡散層を必要としない電池を構成することもできる。
本発明の趣旨である液体燃料容器を、プラットホームとしてその外周面にアノード,電解質膜,カソードから構成される複数の単電池を作製し、各単電池を導電性のインターコネクタで直列に接続することで高電圧化を図ることがでる。また、燃料や酸化剤を強制供給する補機を用いることなく、燃料電池を強制冷却するための補機を用いることなく運転でき、燃料には体積エネルギー密度の高いメタノール水溶液を液体燃料として用いることによって、長時間の発電を継続できる小型電源を実現することができる。
この小型電源を、例えば、携帯電話機、ブックタイプパーソナルコンピュータや携帯用ビデオカメラなどの電源として内蔵して駆動することができ、予め、用意された燃料を逐次補給することによって長時間の連続使用が可能となる。
また、前記の場合よりも燃料補給の頻度を大幅に少なくする目的で、この小型電源を、例えば、二次電池搭載の携帯電話機、ブックタイプパーソナルコンピュータや携帯用ビデオカメラの充電器と結合し、それらの収納ケースの一部に装着することによって、バッテリーチャージャとして用いることは有効である。この場合、携帯用電子機器使用時には収納ケースより取出して二次電池で駆動し、使用しない時にはケースに収納することによって、ケースに内蔵された小型燃料電池発電装置が充電器を介して接続され二次電池を充電する。こうすることによって燃料タンクの容積を大きくでき、燃料補給の頻度は大幅に少なくすることができる。
次に、本発明を実施例に基づき説明する。
〔比較例1〕
図7は、従来の構造に基づくセパレータ構造を示す断面図である。一方の面内構造と縦断面を図7(a)に、他方の面内構造と横断面を図7(b)に示し、電池積層構成を図8に、セルホルダーの構成を図9に、単電池18個を直列で2組積層し、燃料容器を付設して構成された電源システム構造を図10(a)に、そして、積層端の燃料電池と燃料容器との接続を示す断面構造を図10(b)に示す。
セパレータ81は、16mm幅×33mm長さ×厚さ2.5mmの黒鉛化炭素板を用いた。セパレータ81の底部には10mm幅×4mm長さの内部マニフォルド82が設けられ、図7(a)のセパレータ横断面図で符号84に示すように、1mm幅×0.8mm深さ×23mm長さの溝を1mm間隔で構成しリブ部54を形成して、マニフォルド82とセパレータ81の上面を繋ぐ燃料供給溝を設けた。
一方、図7(b)とセパレータ縦断面図83に示すように、セパレータの他方の面にはこれと直交する方向に1mm幅×1.4mm深さ×16mm長さの溝を1mm間隔で構成したリブ部54を形成してセパレータ81の側面を繋ぐ酸化剤供給溝を設けた。
アノード層は、炭素担体上に白金/ルテニウムの原子比が1/1の白金/ルテニウム合金微粒子を50wt%分散担持した触媒粉末と、30wt%パーフロロカーボンスルフォン酸(商品名:Nafion117、DuPont社製)電解質を、バインダとして水/アルコール混合溶媒〔水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが20:40:40(重量比)の混合溶媒〕のスラリーを調製し、スクリーン印刷法でポリイミドフィルム上に厚さ約20μmの多孔質膜に形成した。
カソード層は、炭素担体上に30wt%の白金微粒子を担持した触媒粉末と、電解質をバインダとして水/アルコール混合溶媒のスラリーを調製してスクリーン印刷法でポリイミドフィルム上に厚さ約25μmの多孔質膜に形成した。こうして調製したアノード多孔質膜およびカソード多孔質膜を、それぞれ10mm幅×20mm長さに切出して、アノード層およびカソード層とした。
次に、電解質膜として16mm幅×33mm長さ×50μm厚さのナフィオン117にマニフォルド開孔部86を設けた。
アノード層表面に、5重量%のナフィオン117アルコール水溶液〔水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが20:40:40(重量比)の混合溶媒:Fluka Chemika社製〕を約0.5ml浸透させた後、上記の電解質膜の発電部に接合し、約1kgの荷重を加えて80℃,3時間乾燥する。次に、カソード層表面に5重量%の前記ナフィオン117アルコール水溶液を約0.5ml浸透させた後、電解質膜に先に接合したアノード層と重なるように接合し、約1kgの荷重を加えて80℃,3時間乾燥することによって、MEA9を調製した。
次いで、セパレータ81と同じサイズで、マニフォルド開孔部86と発電部開孔部85を設けた厚み250μmのポリエチレンテレフタレート製ライナー92と、厚み400μmのネオプレン製ガスケット10を作製した。
次に、炭素粉末に焼成後の重量で40wt%となるよう撥水剤ポリテトラフロロエチレン微粒子の水性分散液(テフロンデイスパージョンD−1:ダイキン工業製)を添加,混練し、ペースト状になったものを、厚さ約350μm,空隙率87%の炭素繊維織布上の片面に厚さ約20μmとなるように塗布し、室温で乾燥後、270℃,3時間焼成して炭素シートを形成した。得られたシートを前記のMEAの電極サイズと同じ形状に切り出して拡散層11を調製した。
次に、セパレータ81の燃料極側溝埋込み部88と、マニフォルド埋込み部87で構成されるパルプ紙製の燃料吸上げ材5を作製した。
これらの部品を図8に示すようにセパレータ81、液体燃料吸上げ材5、ライナー92、ガスケット10、MEA9、拡散層11、ライナー92、セパレータ81の順序を単位に14層積み上げて、約5kg/cm2でプレス加圧し積層電池94とした。該積層電池94を、図9に示す構造の表面をエポキシ系樹脂(フレップ;東レ・チオコール社製)で絶縁化したSUS316製のホルダー105を介して、フッ素系ゴム(バイトン;DuPont社製)の締付けバンド17で図10(a)に示すように締め付けて固定した。燃料容器1は、積層電池装着部103を持ったポリプロピレン製の外形33mm高さ×85mm長さ×65mm幅のサイズで側壁厚さ2mmのものを作製した。
図10(b)に示すように、燃料容器1の中央部には図4(a)に示した構造と同様な多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜を、気液分離膜50として装着したガス選択透過機能を持つネジ蓋52付きの通気管51を通気孔15として備え、燃料容器内部には燃料としてメタノール水溶液12が充填されている。作製した2つの積層電池は図10(b)示すような構造で、燃料電池装着部103と結合し、図10(a)に示すような構造の電源を作製した。
上記電源は、概ね33mm高さ×120mm長さ×65mm幅のもので発電部面積が約2cm2、容量約150mlの燃料容器を備えている。運転温度50℃で負荷電流0.2Aの時5.7Vの電圧を示し、セパレータの空気極側溝で構成される電源の側壁の開孔部全面に、ファンで送風しながら発電した時の電圧は11.8Vであった。これは電源負荷時には、セパレータの空気極側溝構造では十分な空気の拡散による酸素の供給が不足するためと考えられる。この電源の体積出力密度は、通気ファンを用いないと約4.4W/lで、通気ファンを用いた場合には約9.2W/lであった。
燃料容器に10wt%メタノール水溶液を150ml充填し、送風ファンを使用し、運転温度50℃、負荷電流0.2Aで運転したところ、出力電圧11.8Vで約4.5時間継続した後に、電圧が急速に低下した。従って、10wt%メタノール水溶液燃料を充填した時の体積エネルギー密度は、通気ファンを用いた時に41Wh/lであった。
この燃料電池発電装置は、積層電池下部のマニフォルドから液体燃料を吸上げ、積層電池上部から燃料の酸化によって発生する炭酸ガスを、排出する構造を採っている。そのために運転時には上下転置や横転すると発電が継続しないと云う問題を有している。
〔実施例1〕
図11に本実施例によるMEAの構造を示す。MEAはアノード層22とカソード層23が電解質膜21の両面に重なるよう電解質樹脂をバインダとして接合して形成される。
アノード層は、炭素担体上に白金/ルテニウムが1/1(原子比)の白金/ルテニウム合金微粒子を50wt%分散担持した触媒粉末と、30wt%パーフロロカーボンスルフォン酸(ナフィオン117)電解質を、バインダとして水/アルコール混合溶媒(水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが重量比で20:40:40の混合溶媒)のスラリーを調製し、スクリーン印刷法で厚さ約20μmの多孔質膜に形成した。
カソード層は、炭素担体上に30wt%の白金微粒子を担持した触媒粉末と電解質をバインダとして水/アルコール混合溶媒のスラリーを、スクリーン印刷法で厚さ約25μmの多孔質膜に形成した。
上記のアノード多孔質膜およびカソード多孔質膜を、それぞれ10mm幅×20mm長さに切出してアノード層22およびカソード層23とした。厚さ50μmのナフィオン117電解質膜20mm幅×30mm長さを切出し、アノード層表面に5重量%のナフィオン117アルコール水溶液(水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが重量比で20:40:40の混合溶媒:Fluka Chemika社製)を、約0.5ml浸透させた後、電解質膜中央部に接合し約1kgの荷重を加えて80℃,3時間乾燥する。
次に、カソード層表面に5重量%のナフィオン117アルコール水溶液(Fluka Chemika社製)を約0.5ml浸透させた後、電解質膜中央部に先に接合したアノード層22と重なるように接合し、約1kgの荷重を加えて80℃,3時間乾燥し、MEAを調製した。
次に、炭素粉末に焼成後の重量で40wt%となるように撥水剤ポリテトラフロロエチレン微粒子の水性分散液(テフロンデイスパージョンD−1:ダイキン工業製)を添加,混練したペーストを、厚さ約350μm,空隙率87%の炭素繊維織布上の片面に厚さ約20μmとなるように塗布し、室温で乾燥後、270℃,3時間焼成して炭素シートを形成した。得られたシートを上記したMEAの電極サイズと同じ形状に切出して拡散層を調製した。(注)テフロン;登録商標
次に、燃料容器外周面に、MEAからなる燃料電池の実装方法を燃料電池発電装置の断面構造を示す図13を用いて説明する。
外形65mm幅×135mm長さ×25mm高さで壁面厚さ2mmの硬質塩化ビニル製燃料容器1の内壁面には厚さ5mm、空隙率85%のガラス繊維マットを燃料吸上げ材5として装着した。
燃料容器1の外壁面には、21mm幅×31mm長さ×0.5mm深さの燃料電池装着部2を上下それぞれ18個設けた。各燃料電池装着部2のアノード接触部には1mm幅×10mm長さのスリットを1mm間隔で設け拡散孔3とした。このスリット内には燃料容器内壁面に装着された燃料吸上げ材5と接触するように空隙率85%のガラス繊維マットを充填した。
スリットの外面には、隣接する燃料電池のカソード集電板7と電気的に接続するためのインターコネクタ4を、厚さ約50μmのニッケルの無電解メッキ層を設けた。得られた燃料容器の上下四隅には、図4(a)と同様な構造の気液分離機能を備えた通気孔15を設けた。
次に、燃料電池固定板8は、燃料容器1と同じ硬質塩化ビニル製の厚さ2.0mmの板で、各燃料電池のカソードに接する面には燃料容器の装着部2に設けられたスリットと直交する方向に1.0mm幅×20mm長さのスリットを拡散孔3として設けた。この燃料電池固定板8には、そのスリット部と同様の形状で隣接した燃料電池のインターコネクタ4との接続ができるよう成形したスリット付きニッケル製のカソード集電板7を固定した。
この燃料容器に前記したMEA9を装着するに当たって、MEA9の両面にシール用ガスケット10を配したものを燃料電池装着部2に配置し、そのカソード側に拡散層11を配して、燃料電池固定板8で燃料容器に各電池を固定した。この時、燃料電池固定板8のカソード側の面に、予め、配置されたカソード集電板7は、カソードと隣接した燃料電池のアノードからのインターコネクタ4とを電気的に接続し、各電池を直列に接続する。各燃料電池を接続した終端部は、燃料電池固定板8と燃料容器の界面から容器外部へ電池端子16として取出される。本実施例による燃料電池発電装置の外観を図12に示す。
通気孔15を有する燃料容器1には、燃料電池固定板8によって上下面36個の単電池13が装着され、出力端子16が設けられている。こうして燃料電池を実装した燃料容器の通気孔15の一つから、10wt%のメタノール水溶液12を燃料として容器内に注入する。この燃料電池は、概略65mm幅×135mm長さ×29mm高さのもので、燃料収納容積は約150mlであった。また、発電装置は発電面積2cm2、36直列で構成されている。
この燃料電池発電装置を温度50℃,負荷電流200mAで運転したところ出力電圧は12.2Vであった。10wt%のメタノール水溶液を充填して負荷電流200mAで運転すると約4.5時間発電を継続することができ、この燃料電池発電装置の出力密度は約9.6W/lで、燃料リッター当たりの体積エネルギー密度は約50Wh/lであった。また、この運転中に発電装置を天地逆転、または、横転した姿勢で運転しても、特に出力電圧の変化は観測されず、燃料容器内の圧力上昇も観測されなかった。
このように液体燃料容器外壁面に、複数の燃料電池を装着しインターコネクタで直列接続することによって、セパレータを介して積層することなく12V級の高電圧型の小型燃料電池を実現できる。この時、アノード側を液体燃料吸上げ材で収納容器内とアノードを接触させ、カソードが拡散層を介して外気に曝されることで、燃料送液ポンプやカソードガス用ファンなどの補機を必要としない電源が可能となった。
特に燃料容器の複数の面に配置された気液分離機能を備えた通気孔の設置によって、燃料電池がいかなる姿勢をとっても正常な発電が可能で、携帯用の発電装置として必須の特性が達成できた。
〔比較例2〕
セパレータを用いた低電圧型小型燃料電池発電装置を図14を用いて説明する。電池の構成材であるセパレータ,吸上げ材,ライナー,ガスケット,MEA,拡散層は比較例1と同じ材料で同サイズのものを用い、同一手順で単電池が4セルになるように積層電池23を作製した。この積層電池を比較例1と同じようにセルホルダー105に挿入し、フッ素系ゴムの締付けバンド17で固定した。
燃料容器1は、ポリプロピレン製の外形が33mm高さ×16mm長さ×65mm幅のもので側壁厚さ2mmである。図14に示すように、燃料容器1の上面の中央部には図4(a)に示した構造と同様に、多孔質ポリテトラフロロエチレン膜を装着した通気孔15を備えている。
作製された積層電池23は、比較例1と同じ構成で燃料容器1と結合して電源を構成した。得られた電源は概ね33mm高さ×82mm長さ×16mm幅で発電部面積が約2cm2、容量約20mlの燃料容器1を備えている。
運転温度50℃で負荷電流0.2Aの時0.58Vの電圧を示し、セパレータの空気極側溝で構成される電源の側壁の開孔部全面に、ファンで送風しながら発電した時の電圧は1.26Vであった。これは電源負荷時には、セパレータの空気極側溝構造では、空気の拡散による酸素の供給が不足するためと考えられる。この電源の体積出力密度は通気ファンを用いないと約2.7W/lで、通気ファンを用いた場合には約5.8W/lであった。
10wt%メタノール水溶液を20ml充填し、送風ファンを用い、運転温度50℃,負荷電流0.2Aで運転した場合の出力電圧は約1.26Vで、約5時間継続した後、電圧が急速に低下した。従って10wt%メタノール水溶液燃料リッター当たりの体積エネルギー密度は、通気ファンを用いた場合、29Wh/lであった。
この燃料電池発電装置は、積層電池下部のマニホールドから液体燃料を吸上げ、積層電池上部から燃料の酸化によって発生する炭酸ガスを排出する構造となっている。そのために運転時に、上下転置や横転すると発電が継続しないと云う問題がある。
〔実施例2〕
本実施例によるメタノールを燃料とした角柱型で低電圧型の発電装置の断面構造を図15に、燃料電池の実装方法の概略を図16に示す。MEAの調製法は実施例1とほぼ同じ方法で行った。30mm幅×50mm長さのポリイミドフィルム上に、炭素担体上に白金/ルテニウムが1/1(原子比)の白金/ルテニウム合金微粒子を50wt%分散担持した触媒粉末と、30wt%パーフロロカーボンスルフォン酸(ナフィオン117)電解質をバインダとし、水/アルコール混合溶媒(水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが重量比で20:40:40の混合溶媒)からなるスラリーを、スクリーン印刷法で厚さ約20μmの多孔質膜に形成し、これを90℃,3時間乾燥してアノード多孔質層とした。
カソード多孔質層には、炭素担体上に30wt%の白金微粒子を担持した触媒粉末と、電解質をバインダとして水/アルコール混合溶媒のスラリーを調製し、スクリーン印刷法で30mm幅×50mm長さのポリイミドフィルム上に厚さ約25μmに形成後、90℃,3時間乾燥した。
上記のアノード多孔質膜およびカソード多孔質膜をそれぞれ10×10mmサイズに切出してアノード層およびカソード層とした。電解質には790g/eqで28mm幅×56mm長さ×厚さ50μmのスルフォン酸化ポリエーテルエーテルスルフォン膜を用いた。
初めに、アノード層8枚の各表面に5重量%のナフィオン117アルコール水溶液(Fluka Chemika社製)を約0.5ml浸透させ、これを電解質膜の一方の面に均等に配置し、各電極を約1kgの荷重を加えて80℃,3時間乾燥する。
次に、カソード層表面に5重量%のナフィオン117アルコール水溶液を、約0.5ml浸透させた後、上記アノードを接合した電解質膜の反対側の面にアノード層と重なるように配置し、各電池に約1kgの荷重を加えて80℃,3時間乾燥してMEAを調製した。
燃料容器1は、図16に示すように外形が22mm幅×79mm長さ×23mm高さで2mm壁厚の硬質塩化ビニル製のものを用いた。断面構造は、図15に示すように燃料容器1の上下の面には、16mm幅×16mm長さ×0.5mm深さの燃料電池装着部2をそれぞれ4面設けた。燃料電池装着部2の中央部の10mm幅×10mm長さの部分に、1mm幅×10mm長さの燃料容器1内部と貫通するスリットを拡散孔3として設けた。
この装着部2の外面にアノード側インターコネクタ4として、隣接する燃料電池と電気的接続をするために、厚さ0.1mmのニッケル層を無電解メッキ法で形成した。燃料容器1の内壁には厚さ1mmで空隙率約70%のガラス繊維マットを貼り付けて燃料吸上げ材5とし、さらにその内部を空隙率が約85%程度になるようガラス繊維を充填した低密度燃料を保持する保持層18を設けた。燃料容器1の上下面隅部には、図4(a)に示した構造の内径2mmの通気孔15を8個設けた。
燃料電池押さえ板となる燃料電池固定板8は、図16に示すように22mm幅×79mm長さ×1mm厚さの硬質塩化ビニルを用いて、各燃料電池のカソードと接する面に、燃料容器1の燃料電池装着部2のスリットとは直交する方向に1mm幅×10mm長さのスリットを設け、その4隅には通気孔装着孔19を設けた。
隣接する燃料電池アノード側のインターコネクタと接続するためのニッケル製0.2mm厚さのスリット付きカソード集電板7を、燃料電池固定板8に取り付けた。
本燃料電池は図16に示すように、ネオプレンゴム製のアノード側のガスケット10、MEA9、カソード側拡散層11、ネオプレンゴム製のカソード側のガスケット10、燃料電池固定板8の順で積層し、該固定板の外周部をネジ止めによって燃料容器1に固定した。
燃料容器1の上下に装着されたアノード側端子6およびカソード側端子6を、それぞれ並列に接続して出力端子16とした。得られた燃料電池発電装置の外形は22mm幅×79mm長さ×27mm高さで、発電面積が1cm2の4直列×2並列燃料電池で構成されている。
燃料容器1の容積は概略20mlで、この燃料容器に通気孔15を介して10%メタノール水溶液を充填し、運転温度50℃で運転したところ、負荷電流200mAで1.3Vの出力電圧が得られた。また、燃料容器に20mlの10%メタノール水溶液を充填して負荷電流200mAで連続発電したところ、1.3Vの出力で約5時間の安定した電圧が得られた。この電池の出力密度は約5.5W/lで燃料リッター当たりの体積エネルギー密度は約28Wh/lであった。この運転中に発電装置を天地逆転、または、横転した姿勢で運転しても出力電圧の変化は観測されず、燃料容器内の圧力上昇も観測されなかった。
このように液体燃料容器の1つの外壁面に、複数の燃料電池を装着しインターコネクタで直列接続し、複数の面に装着された直列電池群を並列にすることによって、セパレータを介して積層することなく1.3V級の小型燃料電池を実現できる。この時、アノード側を液体燃料吸上げ材で収納容器内とアノードを接触させ、カソードが拡散層を介して外気に曝されることで、燃料送液ポンプやカソードガス用ファンなどの補機を必要としない電源が得られた。
さらに、燃料容器内を低密度の燃料吸上げ材で充填することにより運転中に液体燃料の揺れを緩和することができた。特に、燃料容器の複数の面に配置された気液分離機能を備えた通気孔の設置により、燃料電池がいかなる姿勢をとっても正常な発電が可能で、携帯用の発電装置として必須の特性を達成することができた。
〔実施例3〕
本実施例では、エポキシ系樹脂を被覆した金属製燃料容器をプラットホームとする燃料電池について述べる。
MEAおよびカソード側拡散層は、実施例2と同様に作製した。燃料容器1は図17に示すように外形が22mm幅×79mm長さ×23mm高さで、厚さ0.3mmのSUS304製の燃料容器を作製した。容器はフレームとプレス加工された16mm幅×16mm長さ×0.5mm深さで4面の燃料電池装着部2を有する上下の蓋から構成されている。
燃料電池装着部2の中央には、10mm幅×10mm長さの部分に0.5mm幅×10mm長さのスリットが打抜き加工により拡散孔3として設けている。上下の蓋のコーナ部には、気液分離膜を用いないSUS304製の内径1mmの通気孔15を設けた。これらの部材を用いて、内部に空隙率が約80%のガラス繊維マットを燃料吸上げ材5として充填した後、溶接封止して燃料容器1とした。
燃料容器1の外表面は、液状エポキシ系樹脂塗料(フレップ:東レ・チオコール社製)を厚さ0.1mmに塗布し、熱硬化して絶縁層20を形成した。燃料電池装着部2の表面には、実施例2と同様の形状にアノード側インターコネクタ4としてニッケルを無電解メッキした。
燃料電池固定板には、実施例2と同様に、22mm幅×79mm長さ×1mm厚さの硬質塩化ビニルを用いて、各燃料電池のカソードと接する面に燃料電池装着部2のスリットと直交する方向に1mm幅×10mm長さのスリットを設け、その四隅には通気孔15を設けた。このスリットを用いて隣接する燃料電池アノード側のインターコネクタ4と接続するための厚さ0.2mmのスリット付きニッケル製のカソード集電板7を取付けた。
本燃料電池は、実施例2と同じくフッ素系ゴムのアノード側ガスケット、MEA、フッ素系ゴムのカソード側ガスケット、カソード側拡散層、燃料電池固定板の順で積層し、該固定板の外周部を厚さ100μmのスリット付きの熱収縮性樹脂チューブによって締付け燃料容器に固定した。燃料容器の上下に装着されたアノード側端子およびカソード側端子をそれぞれ直列に接続して出力端子とした。
得られた燃料電池発電装置の外形は約22mm幅×79mm長さ×27mm高さで、発電面積が1cm2の8直列の燃料電池で構成されている。燃料容器の容積は概略38mlであった。この燃料容器の通気孔を介して10%メタノール水溶液を燃料としてシリンジで充填し、運転温度50℃で運転したところ負荷電流100mAで出力電圧2.6Vが得られた。
また、燃料容器に約37mlの10%メタノール水溶液を充填して負荷電流100mAで連続的に発電したところ、2.6Vの出力で約4時間安定した電圧が得られた。この時の燃料電池発電装置の出力密度は約5.5W/lであり、燃料リッター当たりの体積エネルギー密度は約22Wh/lであった。この燃料電池は、天地逆転、または、横転した姿勢で運転しても、出力電圧の変化は観測されず、液体燃料の漏れもなく、燃料容器内の圧力上昇も観測されなかった。
このように液体燃料容器の1つの外壁面に、複数の燃料電池を装着しインターコネクタで直列接続し、複数の面に装着された直列電池群を並列にすることによって、セパレータを介して積層することなく2.6V級の小型燃料電池を実現できる。この時アノード側を液体燃料吸上げ材で収納容器内とアノードを接触させ、カソードが拡散層を介して外気に曝されることで、燃料送液ポンプやカソードガス用ファンなどの補機を必要としない電源が可能となった。
本実施例では、燃料容器を金属材料で構成し、その表面を絶縁処理しているために容積を大きくできると云う特徴を有する。また、燃料容器内を比較的高密度の燃料吸上げ材で充填することにより、気液分離機能を持たない小さな開放孔を設けるのみで液体燃料の漏れを防止でき、運転中どのような姿勢をとっても安定な発電が可能であった。また、該発電装置の生産において、熱収縮性樹脂チューブを用いて各燃料電池を容易に固定することが可能になった。
〔実施例4〕
エポキシ系樹脂を被覆した金属製燃料容器をプラットホームとする角筒型メタノール燃料電池発電装置について記述する。
MEAは電極外形が20mm幅×25mm長さで外形が24mm幅×29mm長さの形状に実施例2と同様にして製作した。また、カソード拡散層は20mm幅×25mm長さの形状で実施例2と同様に作製した。
燃料容器の外形は、一遍が28mm,高さが190mm,壁厚0.3mmの六角形の筒で、各面には24mm幅×29mm長さ×0.5mm深さの燃料電池装着部をプレス加工し、六角形の上下蓋で構成されている。
燃料電池装着部の中心の20mm幅×25mm長さの部分に0.5mm幅×25mm長さのスリットを0.5mm間隔に打抜き加工した。上下の蓋は、その周辺部に各6個の図4に示すものと同様な気液分離機能を備えた内径2mmの通気孔を設けた。六各筒内壁部に厚さ5mmで空隙率約85%のガラス繊維マットを装着後、上下の蓋部を溶接で封止した。また、燃料容器の外表面は液状エポキシ系樹脂塗料(フレップ:東レ・チオコール社製)を厚さ0.1mm塗布後、熱硬化し、実施例2と同様の形状にアノード側インターコネクタとしてニッケルを無電解メッキした。
燃料電池押さえ板となる燃料電池固定板8は、実施例2と同様に28mm幅×190mm長さ×1mm厚さの硬質塩化ビニルを用いて、各燃料電池のカソードと接する面に、燃料容器切込み部のスリットと直交する方向に0.5mm幅×20mm長さのスリットを0.5mm間隔で設けた。このスリットを用いて隣接する燃料電池アノード側のインターコネクタと接続するため、厚さ0.2mmのスリット付きニッケル製カソード集電板を取付けた。
本燃料電池は、実施例2と同様にフッ素系ゴムのアノード側ガスケット、MEA,フッ素系ゴムのカソード側ガスケット、カソード側拡散層、燃料電池固定板の順で積層して、燃料電池固定板の外周部を厚さ100μmのスリット付きの熱収縮製樹脂チューブにより締付けて燃料容器に固定した。得られた燃料電池発電装置を図18に示す。
通気孔15を上下にそれぞれ6個有する六角柱の燃料容器1の外壁には36個の単電池13が装着され、それぞれ直列に接続され、出力端子16を燃料容器1の外部に取出した。得られた燃料電池発電装置の外形は、一遍が約28mmの六角柱で高さ約190mm、発電面積が5cm2の36直列の直流発電装置である。燃料容器の内容積は概略300mlであった。
燃料容器に約300mlの10%メタノール水溶液を充填し、負荷電流500mAで連続発電したところ、12.1Vの出力で約4時間安定した電圧が得られた。この時の出力密度は約15W/lであり、燃料リッッター当たりの体積エネルギー密度は60Wh/lであった。この燃料電池は天地逆転、または、横転した姿勢で運転しても出力電圧の変化は観測されず、液体燃料の漏れもなく、燃料容器内の圧力上昇も観測されなかった。
このように液体燃料容器の1つの外壁面に複数の燃料電池を装着しインターコネクタで直列接続し、複数の面に装着された直列電池群を並列にすることによって、セパレータを介し積層することなく12V級の小型燃料電池を実現できる。この時アノード側を液体燃料吸上げ材で収納容器内とアノードを接触させ、カソードが拡散層を介して外気に曝されることで、燃料送液ポンプやカソードガス用ファンなどの補機を必要としない電源が可能となった。
本実施例では、発電面積を比較的大きくとり出力を上げた点が特徴で、運転中にいかなる姿勢をとっても安定な発電が可能となる。また、発電装置生産に当たり、熱収縮性樹脂チューブを用いて各燃料電池を容易に固定することが可能になった。
〔実施例5〕
角型で高出力型のメタノール水溶液を燃料とする発電装置について説明する。アノード層は炭素担体上に白金/ルテニウムが1/1(原子比)の白金/ルテニウム合金微粒子を50wt%分散担持した触媒粉末と,30wt%パーフロロカーボンスルフォン酸(ナフィオン117)電解質をバインダとし、水/アルコール混合溶媒(水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが重量比で20:40:40の混合溶媒)からなるスラリーを、スクリーン印刷法で厚さ約20μmの多孔質膜に形成した。
カソード層は、炭素担体上に50wt%の白金微粒子を担持した触媒粉末と、乾燥時重量が25wt%となるようポリテトラフロロエチレン水性分散液をバインダとしたスラリーを、ロール法で厚さ約25μmの多孔質膜に形成した。このカソード層を290℃、1時間空気中で焼成し、水性分散液中の界面活性剤を分解した。上記のアノード多孔質膜およびカソード多孔質膜を、それぞれ16mm幅×56mm長さのサイズに切出しアノードおよびカソードとした。
次に、厚さ50μmのナフィオン117電解質膜を120mm幅×180mm長さに切出し、アノード層表面に5重量%のナフィオン117アルコール水溶液(Fluka Chemika社製)を約0.5ml浸透させた後、接合し約1kgの荷重を加えて80℃で3時間乾燥する。次に、カソード層表面に10重量%のナフィオン117アルコール水溶液(Fluka Chemika社製)を乾燥時カソードの重量換算で25wt%となるように浸透させた後、電解質膜中央部に、先に接合したアノード層と重なるように接合し、約1kgの荷重を加えて80℃,3時間乾燥することによってMEAを作製した。
燃料容器は外形が28mm幅×128mm長さ×24mm高さで、接着剤で貼合せ加工した壁厚2mmの硬質塩化ビニル製の容器である。この六面体容器の外壁には、16mm幅×56mm長さ×0.1mm深さの燃料電池装着用の切込み部を実施例2と同様にして18個設けた。
燃料電池装着部の中心16mm幅×56mm長さの部分に0.5mm幅×16mm長さのスリットを0.5mm間隔に設けた。燃料容器の最大面積を持つ2面の四隅には、図4(a)と同様な気液分離機能を備えた内径2mmの通気孔を8個設けた。
燃料電池装着用切込み部には、実施例2と同様な方法で隣接する燃料電池と電気的に直列接続するためのアノード側インターコネクタとして、ニッケルの無電解メッキ膜の厚さ50μmのメタライジング層を形成した。燃料電池固定板も実施例2と同様に燃料容器各外壁面に合わせたサイズで、カソードと接触する部分には、燃料容器に設けたスリットと直交する0.5mm幅×56mm長さのスリットを0.5mm間隔で設けた。
さらに、燃料電池固定板には、スリット付きのカソード集電板を取り付けた。燃料容器外壁に装着された18個の燃料電池は、アノード側インターコネクタと隣接するカソード集電板によって、直列に接続された出力端子を取出した。
こうして得られた各部材をアノード側ガスケット、MEAの順で積層し、燃料電池固定板の各燃料電池外周部および燃料容器外周部を接着剤で接合した。得られた燃料電池発電装置は図19に示すように外形が概ね28mm幅×128mm長さ×28mm高さで、燃料容器1の壁面に発電面積が概ね9cm2の18直列の単電池13が装着され、出力端子16と上下面に8個の気液分離機能を備えた通気孔5を有する直流発電装置である。
燃料容器の内容積は概略59mlであった。燃料容器に約55mlの10%メタノール水溶液を充填して負荷電流1Aで連続的に発電したところ、6.1Vの出力で約45分間安定した電圧が得られた。この燃料電池は、天地逆転、または、横転した姿勢で運転しても出力電圧の変化は観測されず、液体燃料の漏れもなく、燃料容器内の圧力上昇も観測されなかった。
このように液体燃料容器の1つの外壁面に複数の燃料電池を装着し、インターコネクタで直列接続して、複数の面に装着された直列電池群を並列にすることによって、セパレータを介して積層することなく6V級の小型燃料電池を実現できる。この時アノード側を液体燃料吸上げ材で収納容器内とアノードを接触させ、カソードが拡散層を介して外気に曝されることで、燃料送液ポンプやカソードガス用ファンなどの補機を必要としない電源が可能となった。
本実施例は、カソード触媒層にポリテトラフロロエチレンを分散させて撥水性を持たせ、生成水の拡散を容易にすることによって、拡散層を省略しても性能を低下させることなく、構成部品点数を削減した構造とすることができる。
1…燃料容器、2…燃料電池装着部、3…拡散孔、4…インターコネクタ、5…液体燃料吸上げ材、6…燃料電池端子、7…カソード集電板、8…燃料電池固定板、9…MEA(電解質膜/電極接合体)、10…ガスケット、11…拡散層、12…メタノール水溶液、13…単電池、15…通気孔、16…出力端子、17…締付けバンド、18…燃料保持層、19…通気孔装着孔、20…絶縁層、21…電解質膜、22…アノード層、23…カソード層、50…気液分離膜、51…通気管、52…通気蓋、54…リブ部、81…セパレータ、82…マニフォルド、83…セパレータ縦断面図、84…セパレータ横断面図、85…発電開孔部、86…マニフォルド開孔部、87…マニフォルド埋込み部、88…溝埋込み部、89…リブ部、92…ライナー、93…吸上げ材、94…積層電池、102…燃料タンク、103…燃料電池装着部、105…セルホルダー。