JP2004279882A - 超高速非線形光学素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】大きな光学的非線形性と高速応答特性という背反する2つの条件を同時に克服することができる超高速非線形光学素子を提供する。
【解決手段】超高速非線形光学素子において、不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質に、同軸で光パルスを入射し、量子ドットを励起した後に、パルス面積を考慮したパルス列を同軸で入射し、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こすことにより、初期状態に速やかに回復させることができ、高繰り返しスイッチングが可能となる同軸入射超高速光スイッチング機能を有する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信や光情報処理の分野において、数100fsから1ps程度の時間間隔の高繰り返し光スイッチングや光演算が可能な、新しい高効率大容量の超高速非線形光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光情報処理技術はこれまでの電子技術にはない様々な特徴を持つが、特にその実現により、情報処理速度と情報処理の容量を格段に向上させることが可能となる。まず、情報処理速度に関しては、電子素子による演算において、現在のところ10psの応答速度が実現できているので、1ps程度というのが光演算素子の目標となる。また、光の持つ並列性を利用すれば、電子素子による演算容量をはるかに凌駕する情報処理が可能となる。
【0003】
この光情報処理の分野において、非線形光学効果、とりわけ四光波混合過程は光スイッチ、実時間の画像処理、画像演算、位相共役、光メモリー、光双安定などで重要な役割を果たしている。この光学過程を起こすには大きく分けて2つの方法がある。
【0004】
(1)第1は三次の非線形分極に由来した方法であり、原理的には、原子、分子、有機色素、液晶、半導体など、どのような物質においても起こり得る光学過程である。また、その起源も様々で媒質に非共鳴な場合における光カー効果や、共鳴な場合における吸収飽和効果などがある。
【0005】
(2)第2には光誘起屈折率効果(フォトリフラクティブ効果)が挙げられる。これは三次の非線形分極に由来するものではないが、類似の効果を生み出すもので、近年、その応用が期待される物質である。
【0006】
このような四光波混合過程を利用した光情報処理素子の実現のためには、大きな光学的非線形性と高速緩和を同時に示す媒質が必要となる。しかしながら、これまで知られている物質ではこの条件を満たすものがなく、実現には越えるべきハードルが多いことをうかがわせる。
【0007】
まず、光カー効果においては、数100fsから1ps程度の応答時間が期待できるが、非線形感受率が小さく信号の発生効率は極めて低い。また、吸収飽和効果においては、共鳴を利用するため信号の発生効率は高くなるが、数100ps以上の励起状態の寿命で応答速度や繰り返し速度が決まるため、通常は、1ps程度の高速応答を期待できない。
【0008】
一方、フォトリフラクティブ効果では、10mW/cm程度の低強度でも動作が可能であるが、応答速度が極めて遅く、100ms程度である。このように、信号の発生効率と応答時間の間にはトレードオフの関係があり、両者を同時に満たすのは難しいことがこれまでにも指摘されてきた。
【0009】
この問題を解決するためには、いろいろなアプローチが考えられる。
【0010】
まず、物質の側からのアプローチとして、新物質の探索や作製が上げられる。その中で最も有力だと思われるのが、半導体量子ナノ構造の利用である。GaAsやInPに代表されるIII −V族の化合物半導体や、CdSなどに代表されるII−VI族の化合物半導体は広く研究されている。また、SiやCなどのIV族の半導体においても、近年新しい構造が見つかりその応用が期待される。また、有機−無機複合体において実現された自然量子井戸構造も特異な物性を示し、今後の研究が待たれるところである。
【0011】
これらの中で光通信帯である1.55μm帯での使用を考えた場合、化合物半導体は有力な候補といえる。また、結晶成長技術の進歩に伴い、量子構造としても閉じ込めの次元の様々な構造が作製可能である。閉じ込めの次元が1次元の量子井戸、2次元の量子細線、3次元の量子ドットなどが現在作製可能であるが、その状態密度が急峻なために振動子強度の大きい量子ドットは今後の応用が強く期待されている。
【0012】
これまでは、このような物質そのものの特性改善が主流であったが、近年、光の側からの新しいアプローチが注目を浴びている。
【0013】
まず、非線形光学特性を向上させる試みとして、微小共振器やフォトニック結晶のような構造を利用するアプローチがある。光の波長程度の周期で誘電率が変調された媒質をフォトニック結晶と呼ぶが、微小共振器も1次元のフォトニック結晶と考えると統一的な見方が可能となる。このような周期構造においては、光が存在できないような周波数帯、いわゆるフォトニックバンドギャップ、あるいはストップバンドというような周波数帯が出現し得るが、周期構造に欠陥を導入することでこのような周波数帯の中に光のモードを作り出すことができる。
【0014】
これは共振器でいうところの共振ピークに相当し、欠陥を有するフォトニック結晶は共振器であるともいえる。この共振ピークの周波数の光を入射した場合、この共振部分(欠陥)付近に光が局在するために光電場が増強することが知られている。このことを利用して共振部分に非線形光学媒質を導入すれば、この増強された電場により、非線形光学効果を実効的に増強することができる。
【0015】
図17は従来の微小共振器構造の非線形光学素子の模式図であり、100は微小共振器構造であり、101,103はλ/4厚みの多層膜ブラッグ反射鏡、102はλ/2共振層(非線形光学媒質を含む)、104は光の伝搬方向を示している。
【0016】
これまで、有機色素分子やCdSe量子ドットを非線形媒質とした、図17のような微小共振器構造(1次元フォトニック結晶)100において、縮退四光波混合光の発生効率を数1000倍増強できることが示されている。また、位相共役画像の発生にも成功しているので、理論的にはより大きな増強度も期待できる。半導体微細加工技術の進歩に伴い、このような誘電率の変調構造と半導体量子ドットのような量子ナノ構造を結合させることは可能となっており、工業的にも期待の持てる技術であるといえる。
【0017】
もう一つの課題である高速応答性を実現するためには、これとは別の方法が必要となる。光の側からのもう一つのアプローチとして励起子のコヒーレント制御という方法がある。半導体を光励起して励起子を生成すると、一般にその寿命、すなわちエネルギー緩和時間は数100psであり、光演算等を考える場合、その数100ps間の時間は次の演算ができないとされてきた。
【0018】
コヒーレント制御においては、強制的に励起子を消滅させることでこの制約を打ち破ることができる。具体的には光励起した直後、励起子分極は入射光の振動電場とコヒーレンスを持つので、この励起子分極のコヒーレンスが残っている間に最初の励起光と位相同期した第2のパルス照射により励起子数を制御できる。
【0019】
第2パルスの位相が第1パルスと同位相の場合は励起子数が増加し、逆位相の場合は励起子数を減少させることができる。この分極のコヒーレンスが残っている時間を位相緩和時間と呼び、このようなコヒーレント制御は、この位相緩和時間の間は可能となるので、コヒーレント制御のためには位相緩和時間が長い物質が必要となる。
【0020】
例えば、GaAs量子井戸ではこの位相緩和時間は数psであり、第1パルスと逆位相の第2パルスを数ps以内に照射すれば励起子を消滅させることが可能であることが知られている。この場合、量子井戸は均一広がりの系であることが条件である。位相緩和時間は、均一幅の逆数で定義される時間であり、均一幅が狭いほど位相緩和時間は長くなるので、この均一幅の狭い媒質がコヒーレント制御に適している。
【0021】
その点、量子ドットは、3次元的な量子閉じ込め効果のために電子の状態密度は極めてシャープで、均一幅も量子井戸に比べて桁違いに狭く、位相緩和時間に換算すると数10psから数100ps程度にも達することが知られており、コヒーレント制御には絶好の系である。しかしながら、現実の量子ドットの場合、サイズ等のばらつきのために均一幅は狭いものの非常に広い不均一広がりが存在するので、コヒーレント制御の場合は単一の量子ドットを観測する必要がある。
【0022】
単一量子ドットを顕微系でコヒーレント制御することで励起子数の制御が可能であり、これを利用して量子コンピュータの量子ビットとして用いるという試みが近年行われるようになってきた。このように、長い位相緩和時間を持つ量子ドットを用いることで、エネルギー緩和時間に律速されない高速応答が可能な素子が期待できるが、縮退四光波混合に代表される非線形光学効果を利用した素子の実現にはいくつかの問題点がある。
【0023】
以下に、半導体量子ドットを非線形光学媒質とした新しい非線形光学素子の実現のための問題点を挙げる。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
(1)まず、第1の問題点として、縮退四光波混合光発生のような場合、単一量子ドットのみでは十分な信号強度が取れないので、量子ドットを集合体として使用する必要がある。量子ドットの集合体のような不均一広がりのある系においては、光励起により各分極はコヒーレントに振動し始めるが、周波数的に分布しているためその不均一幅の逆数で定義される時間で相互に打ち消し合い、マクロな分極は極めて早い時間で消失する。単一量子ドットの位相緩和時間が、100ps程度の場合、位相同期した数ps程度以下の光パルス対を用いればコヒーレンスが消失する前に励起子数を制御できるが、このような広い不均一広がりが存在する場合は瞬時にコヒーレンスが消失するので、これまでのような方法でのコヒーレント制御は不可能である。この不均一広がりがあるためにコヒーレント制御による高速応答化ができないので、このままでは超高速非線形光学素子としての実現は非常に難しく、新しい高速応答化の方法を考える必要がある。
【0025】
(2)次に、第2の問題点として、量子ドットはその状態密度の急竣性により、その他の量子ナノ構造と比べて振動子強度が大きく非線形光学特性も大きいが、例えばフォトリフラクティブ媒質における四光波混合の発生効率と比較すると、その非線形光学特性の大きさは不十分である。
【0026】
本発明は、上記状況に鑑みて、大きな光学的非線形性と高速応答特性という背反する2つの条件を同時に克服することができる超高速非線形光学素子を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕超高速非線形光学素子であって、不均一広がりのある系にパルス面積を考慮したパルス列を照射して不均一広がりのデフェィジング(dephasing:失整相)効果をリフェィジング(rephasing:回復整相)効果で相殺することにより、励起された系をエネルギー緩和時間よりも短時間で強制的に緩和することができ、不均一広がりのある系に対応したコヒーレント制御を行うことを特徴とする。
【0028】
〔2〕超高速非線形光学素子において、不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質に、同軸で光パルスを入射し、量子ドットを励起した後に、パルス面積を考慮した光パルス列を同軸で入射し1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こすことにより、初期状態に速やかに回復させることができ、高繰り返しスイッチングが可能となる同軸入射超高速光スイッチング機能を有する。
【0029】
〔3〕超高速非線形光学素子において、不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質に、非同軸で2つないし3つの光パルスを入射し、縮退四光波混合光を発生させた後に、パルス面積を考慮した光パルス列を入射することにより、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こし、高繰り返し高効率光演算が可能となる非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算機能を有する。
【0030】
〔4〕超高速非線形光学素子において、不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質を半導体微小共振器の共振部分に配置することにより、光学的非線形性を実効的に増強できる素子に、同軸で光パルスを入射し、量子ドットを励起した後に、パルス面積を考慮した光パルス列を同軸で入射し、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こすことにより、初期状態に速やかに回復させることができ、高繰り返しスイッチングが可能となる同軸入射超高速光スイッチング機能を有する。
【0031】
〔5〕超高速非線形光学素子において、不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質を半導体微小共振器の共振部分に配置することにより、光学的非線形性を実効的に増強できる素子に、非同軸で2つないし3つの光パルスを入射し、縮退四光波混合光を発生させた後に、パルス面積を考慮した光パルス列を入射することにより、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こし、高繰り返し高効率光演算が可能となる非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算機能を有する。
【0032】
〔6〕超高速非線形光学素子において、不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質を厚みに変調を加えた半導体微小共振器の共振部分に配置することにより、光学的非線形性を実効的に増強でき、かつ素子面内の各場所で独立演算が可能となる素子に、同軸で光パルスを入射し、量子ドットを励起した後に、パルス面積を考慮した光パルス列を同軸で入射し、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こすことにより、初期状態に速やかに回復させることができ、高繰り返しスイッチングが可能となる同軸入射超高速光スイッチング機能を有する。
【0033】
〔7〕超高速非線形光学素子において、不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質を厚みに変調を加えた半導体微小共振器の共振部分に配置することにより、光学的非線形性を実効的に増強でき、かつ素子面内の各場所で独立演算が可能となる素子に、非同軸で2つないし3つの光パルスを入射し、縮退四光波混合光を発生させた後に、パルス面積を考慮した光パルス列を入射することにより、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こし、高繰り返し高効率光演算が可能となる非同軸縮退四光波混合超高速光演算機能を有する。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0035】
〔I〕まず、不均一広がりのある系における新しいコヒーレント制御法について説明する。
【0036】
不均一広がりのある系において、励起子数を自由自在に制御するためには新しいコヒーレント制御法が必要となる。これを説明するために、光学的ブロッホ方程式を視覚化したブロッホベクトルモデルを用いる。光学的ブロッホ方程式とは光と2準位系物質(基底状態と励起状態のみを考える)のコヒーレント相互作用を記述する基本方程式であり、式(1)で表される。
【0037】
【数1】
Figure 2004279882
【0038】
ここで、wは分布数(実数)、ρはコヒーレンス(複素数)である。Ωはラビ周波数での物質の双極子モーメントと電場の積に比例する量である。また、Δは入射光の周波数と物質中の分極周波数との間の離調である。T,Tはそれぞれエネルギー緩和時間、位相緩和時間を表す。ここで複素数であるコヒーレンスρの実部をx、虚部をyとし、分布数wをzとすると光学的ブロッホ方程式は、式(2)のように書け、これら3つの変数の時間発展を3次元デカルト座標表示したものをブロッホベクトルモデルという。
【0039】
【数2】
Figure 2004279882
【0040】
このブロッホベクトルモデルにより、光が2準位系に入射した後の系の時間発展を調べることができる。xとyはコヒーレンスでzが分布数を示している。
【0041】
図1は本発明にかかるブロッホベクトルモデルを示す図である。
【0042】
図1(a)に光が入射して入るときの系(光ON)、(b)に光がなくなったときの系(光OFF)の状態を示す。
【0043】
図1(a)に示すように光パルスが入射した場合、yz面内でベクトルはパルス面積ΩTに対応した角度だけ回転する。Tはパルスの時間幅である。ここで、ラビ周波数は不均一広がりよりずっと大きいものとする。したがって、Ω≫Δという近似が成り立つものとする。
【0044】
図1(b)に示すように光がなくなると、離調Δがある場合、ベクトルはxy面内で回転する。回転角度は離調Δと経過時間τの積で与えられる。均一広がりの場合は離調Δが0でありベクトルの回転はないが、不均一広がりの場合は不均一広がりを形成している各分極の離調Δは異なり、それぞれ異なる速度で回転するためにマクロな分極が消失していく。上記したように、このことが通常のコヒーレント制御を困難にしている理由である。
【0045】
また、この過程でのベクトルのx、y成分はTの速さで、z成分はTの速さで短くなるが、本発明においてはコヒーレント制御の時間と比べてT,Tがはるかに長い量子ドットのような媒質を考えているので、この緩和の効果は無視できる。逆にいえば、T,T、特に位相緩和時間が長いことがこのコヒーレント制御のために必要である。これは、通常の均一広がりの系における位相同期パルス対によるコヒーレント制御の場合と同じである。
【0046】
不均一広がりのある系に適用可能な新しいコヒーレント制御法は、この消失したマクロな分極をいかにして復活させるか、という問題に帰着する。ここで良く知られたコヒーレント過渡現象であるフォトンエコーを応用した新しいコヒーレント制御法を説明する。フォトンエコーにおいては、一度ばらばらになった各分極を再び復活させることで信号が発生する。
【0047】
図2に本発明のコヒーレント制御法のブロッホベクトルモデルによる説明図である。
【0048】
(A)図2(a)に示すように、はじめに基底状態にある物質において、ブロッホベクトルは−z方向に向いている。
【0049】
(B)図2(b)に示すように、第1パルスとしてパルス面積がπ/2であるπ/2パルスを入射する。ブロッホベクトルは、yz面内で90度回転し、y軸上に位置を移す。
【0050】
(C)図2(c)に示すように、第1パルスの入射後、時間τが経過すると各分極は異なる速度でxy面内を回転するため揃っていたマクロな分極がばらばらになり消失する(dephasing)。しかし、ばらばらになっても各分極それぞれは光とのコヒーレンスを位相緩和時間内持ち続ける。
【0051】
(D)次に、図2(d)に示すように、第2パルスとして同位相のパルス面積がπであるπパルスを位相緩和時間より早く入射すると、各ベクトルはx軸を中心に180度回転する。
【0052】
(E)図2(e)に示すように、第2パルスの入射後、各分極は再びそれぞれの速度でxy面内を回転し始めるが、今度は第1パルスの入射後のときと異なりそれぞれの分極が揃う方向に回転することになるので、同じ時間τが経過するとマクロな分極が復活するようになる(rephasing)。このとき復活したマクロな分極が光を放出するが、これがいわゆる2パルスフォトンエコーと呼ばれる現象である。しかし、このときすべてのブロッホベクトルはy軸上に揃っているので、このタイミングで同位相のπ/2パルス(第3パルス)を入射すればフォトンエコー光を発生させることなく強制的にすべてのベクトルを初期状態に戻すことができる。
【0053】
(F)図2(f)に示すように、不均一広がりのある系を強制的に基底状態に戻すことができるのである。
【0054】
これを一般化するとまず、任意のパルス面積αを持った第1パルスで系を励起する。時間τ経過後、各分極はdephasingするが、第2の同位相か逆位相のπパルスを入射することで各分極はrephasingし始め、さらに同じ時間τ経過後、マクロな分極が復活するのでパルス面積π−αの同位相の第3のパルスを入射することで形を基底状態に戻すことができる。あるいは第3パルスとしては、パルス面積π+αで第1パルスと逆位相のパルスでも同様の効果が期待できる。均一広がりの場合のような単に位相同期したパルス対によるコヒーレント制御ではなく、不均一広がりのある系におけるコヒーレント制御においては、以下の条件が必要となる。
【0055】
(A)均一幅の逆数である位相緩和時間が長い非線形光学媒質を対象とする。
【0056】
(B)ラビ周波数が不均一幅よりずっと大きくΩ≫Δという近似が成り立つ。
【0057】
(C)位相も考慮し入射するパルス面積の総和が2πの整数倍となる。
【0058】
(D)πパルスなどを用いてdephasing−rephasing過程が実現するようなタイミングで光パルスを入射する。
【0059】
このように、不均一広がりのある系においてもコヒーレント制御が可能であることが示された。量子ドットを非線形光学媒質とした場合の縮退四光波混合を利用した光情報処理素子における課題の一つである超高速応答特性は、この手法を利用することで可能となる。
【0060】
〔II〕次に、非線形光学特性の増強について説明する。
【0061】
もう一つの課題である非線形光学効果の大きさの問題は、既存技術の自己組織化量子ドットと微小共振器構造を用いることで解決できる。
【0062】
図3は本発明の実施例を示す微小共振器構造と自己組織化量子ドットを含む半導体微小共振器構造の超高速非線形光学素子の模式図、図4は図3に示す半導体微小共振器構造内の光電場パターンを示す図である。
【0063】
これらの図において、1,3はλ/4厚みの多層膜ブラッグ反射鏡、2はλ/2共振層(自己組織化量子ドットを含む)、図3における4は光の伝搬方向、図4における5は量子ドット、6は共振周波数の光を示している。
【0064】
図3に示すように、半導体エピタキシャル成長技術により光を閉じ込める微小共振器構造と自己組織化量子ドットを含む構造を一回の成長で作製することができる。この際、図4に示すように、量子ドット5を増強電場の腹の部分に配置することで、非線形性の増強が可能となる。しかし、逆に節の部分だと非線形光学効果が小さくなってしまうので、素子設計は慎重に行う必要がある。
【0065】
ここで、共振部分における光電場の増強効果を非線形性の実効的増強に利用したが、もう一つの効用がある。上記〔I〕においてパルス面積を考慮したパルス列を入射することが不均一広がりのある系において必要なことを述べたが、パルス面積はラビ周波数(物質の双極子モーメントと電場の積)とパルス幅の積で定義される量なので、コヒーレント制御に必要なパルス面積を実現するためには十分大きな光電場が必要となる。微小共振器構造をとることで光電場の増強効果が見込まれ、コヒーレント制御するための光強度も減少させることができる。
【0066】
また、ここで非線形媒質として量子ドットを用いているが、量子ドットにおいては振動子強度が他の半導体量子ナノ構造と比べて大きいので、ラビ周波数を決定する物質の双極子モーメントも大きくなり、上記〔I〕のコヒーレント制御の実現のためには有利である。このように不均一広がりのある系におけるコヒーレント制御の実現のためにも量子ドットと微小共振器構造の組み合わせは重要である。
【0067】
したがって、上記した〔I〕と〔II〕の組み合わせで、量子ドットを利用した超高速非線形光学素子の実現が期待できる。さらに工夫をすることで、高密度集積型の非線形素子が可能となることを示す。
【0068】
なお、上記〔II〕に示した微小共振器構造は、図3に示したように、多層膜面内のどの場所でも薄膜の厚みは同じであるが、このために共振周波数は素子面内どこでも同じである。
【0069】
図5は本発明の実施例を示す共振器層の厚みに変調を加えた自己組織化量子ドットを含む半導体微小共振器構造の超高速非線形光学素子の模式図である。
【0070】
図5において、10は超高速非線形光学素子、11,13はλ/4厚みの多層膜ブラッグ反射鏡、12は膜厚に変調を加えた中央の共振層(自己組織化量子ドットを含む)、14は量子ドットを示している。
【0071】
ここで、図5に示すように、中央の共振層12の厚みに変調を加えた微小共振器構造を形成すると、共振周波数が場所によって変わる。量子ドットには広い不均一広がりがあるために、共振器の共振ピーク周波数が少々変化しても共振ピーク周波数と量子ドット励起子の共鳴周波数を重ねることが可能である。これは量子井戸のような不均一広がりの小さい、あるいは存在しない系では、素子作製のために励起子共鳴と共振器の共振ピークを一致させることが重要であったことと対照的である。
【0072】
図6は本発明の実施例のパルス整形したスペクトル幅の広い超短パルス光による高密度集積演算法を示す図である。
【0073】
図6において、10は超高速非線形光学素子、20は周波数領域が広い超短パルス、21〜23はパルス列を示す。
【0074】
図6に示すように、周波数領域が広い超短光パルス20を多次元パルス整形法で加工し、それぞれの場所で中心周波数が異なり(λ,λ,λ)かつ異なる情報を有したパルス列21〜23を超高速非線形光学素子10に入射すれば、超高速非線形光学素子10面内の各部分で同時に独立な光学過程が可能となり、高密度集積型の超高速非線形光学素子が実現できる。
【0075】
すなわち、パルス列を空間的に波長を分解した後に厚みに変調がある微小共振器に入射する。換言すれば、中央活性層の厚みdに変調があれば、透過する波長が変わる(λ>λ>λ)ことになる。
【0076】
これまでの技術を組み合わせることで、様々な超高速非線形光学素子が考えられる。以下にそれらのいくつかの例を挙げる。
【0077】
(1)同軸入射超高速光スイッチA
図7は本発明の実施例の同軸入射超高速光スイッチAにおけるパルスシークエンスを示す図、図8は図7に示す同軸入射超高速光スイッチAにおける光学過程のブロッホベクトルモデルによる説明図である。
【0078】
図7に示すように、同軸で励起パルス31およびそれに引き続く制御パルス32を高速非線形光学素子(図示なし)に入射する。
【0079】
これを、図8に示すようなブロッホベクトルで説明すると以下のようになる。
【0080】
(A)図8(a)に示すように、まず系は基底状態にあり、ブロッホベクトルは−z方向を向いている。これをOFF状態とする。
【0081】
(B)図8(b)に示すように、そこにパルス面積πの励起パルス31を入射して系を励起すると、ブロッホベクトルはyz面内で180度回転し、+z軸方向を向く。この場合は不均一広がりがあってもx成分あるいはy成分を持たないので、全ての分極ブロッホベクトルは同じ方向のままである。この状態をON状態とすると、物質は励起状態にあるために吸収がない状態となり透過率が上がる。この状態は、図8(c)に示すように、物質のエネルギー緩和時間τの間続く。
【0082】
(C)しかし、図8(d)に示すように、引き続くパルス面積πの制御パルス32を入射すると、ブロッホベクトルはyz面内でさらに180度回転し、−z方向すなわち基底状態に速やかに戻る。このとき、制御パルス32の位相は任意でよい。またこの場合は不均一広がりの系に特徴的なdephasing−rephasing過程は含まれていない。これにより、エネルギー緩和時間に律速されない透過型超高速光スイッチが実現できる。
【0083】
(2)同軸入射超高速光スイッチB
図9は本発明にかかる同軸入射超高速光スイッチBにおけるパルスシークエンスを示す図、図10は図9に示す同軸入射超高速光スイッチBにおける光学過程のブロッホベクトルモデルによる説明図である。
【0084】
不均一広がりのある系に特徴的な、dephasing−rephasing過程を考慮した場合は、以下のようになる。
【0085】
図9に示すように同軸で励起パルス41およびそれに引き続く第1の制御パルス42および第2の制御パルス43を超高速非線形光学素子(図示なし)に入射する。
【0086】
これを図10に示すようなブロッホベクトルで説明すると以下のようになる。
【0087】
(A)図10(a)に示すように、まず系は基底状態にあり、ブロッホベクトルは−z方向を向いている。これをOFF状態とする。
【0088】
(B)図10(b)に示すように、そこにパルス面積π/2の励起パルス41を入射して系を励起すると、ブロッホベクトルはyz面内で90度回転し、y軸上に位置を移す。これをON状態とする。
【0089】
(C)図10(c)に示すように、励起パルスの入射後、時間τが経過すると、各分極はdephasingしてマクロな分極が消失する。
【0090】
(D)次に、図10(d)に示すように、第1の制御パルス42として同位相のπパルスを入射すると各ベクトルはx軸を中心に180度回転する。
【0091】
(E)第1の制御パルス42の入射後、各分極は再びそれぞれの速度で回転し始めるが、今度は励起パルス41の入射後と異なり、それぞれの分極が揃う方向に回転することになる。図10(e)に示すように、同じ時間τが経過するとrephasingのためマクロな分極が復活するようになる。
【0092】
(F)そして、図10(f)に示すように、同位相でパルス面積π/2の第2の制御パルス43を系に入射する。するとパルス面積の総和が2πの整数倍という条件を満たすので、ベクトルは−z方向を向き基底状態に戻る。
【0093】
この過程を利用することで励起パルスにより高速非線形光学素子の透過率を変化させ、制御パルス列により元の状態に回復させることができ、エネルギー緩和時間に律速されない透過型超高速光スイッチが実現できる。
【0094】
(3)非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算素子
図11は本発明にかかる非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算素子における空間的光学配置を示す図、図12は図11に示す非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算素子におけるパルスシークエンスを示す図、図13は本発明にかかるBOX−CARS配置における空間的干渉パターンを示す図、図14は図12に示す非同軸入射縮退四光波混合超高速演算素子における光学過程のブロッホベクトルモデルによる説明図である。
【0095】
ここでは、図11に示すようにパルスの入射を非同軸配置とする。この配置をBOX−CARS配置といい、縮退四光波混合発生においてよく用いられる。各軸における入射光(励起パルス52と制御パルス53,54)と信号光を、図12に示すような時間間隔τになるように超高速非線形光学素子51に入射する。このようにすると、縮退四光波混合過程によって光演算を行った後に系をエネルギー緩和時間に律速されることなく初期状態に戻すことが可能となる。
【0096】
非同軸配置のために3つのパルスが重なる領域においては、図13に示すように空間的に干渉パターン55が生じる。すなわち、光の強い部分と弱い部分ができるが、この強度分布は光学配置により決定される。光の弱い部分はこの過程を通じて事実上光入射がないので、ブロッホベクトルは回転しない。
【0097】
一方、光の強い部分は3つの光が強め合う部分なので、その総和がどのようなパルス面積を持つかということを考える必要がある。この強め合う部分に関して、図14に示すようなブロッホベクトルで説明すると以下のようになる。
【0098】
(A)図14(a)に示すように、まず系は基底状態にあり、ブロッホベクトルは−z方向を向いている。
【0099】
(B)図14(b)に示すように、そこにパルス面積π/6の3つの励起パルス52を図11に示すk、k、k方向から入射して系を励起すると、ブロッホベクトルはyz面内で90度回転し、y軸上に位置を移す。このとき、k−k+k方向などに縮退四光波混合光が発生する。このとき光演算が行われる。
【0100】
(C)図14(c)に示すように、励起パルス52群の入射後、時間τが経過すると各分極はdephasingしてマクロな分極が消失する。
【0101】
(D)次に、図14(d)に示すように、第1の制御パルス53として同位相でパルス面積π/3のパルスを励起パルス52群と同じ方向から入射すると、各ベクトルはx軸を中心に180度回転する。
【0102】
(E)次に、図14(e)に示すように、第1の制御パルス53の入射後、各分極は再びそれぞれの速度で回転し始めるが、今度は励起パルス52の後のときと異なり、それぞれの分極が揃う方向に回転することになる。同じ時間τ経過すると、rephasingのためマクロな分極が復活するようになる。
【0103】
(F)そして、図14(f)に示すように、同位相でパルス面積π/6の第2の制御パルス54を系に入射する。するとパルス面積の総和が2πの整数倍という条件を満たすのでベクトルは−z方向を向き基底状態に戻る。この場合は、四光波混合信号を発生させた後に系をコヒーレントに制御し、初期状態に戻している。3つの光パルスを用いているが、これらの光それぞれに情報を与えることで相関や畳み込みなどの光演算が可能となる。
【0104】
ただし、これは光が強め合う部分においてのみ成り立つ説明である。実際には、空間系干渉パターンにおいては正弦的に強度が変化しているので、強め合う部分と弱め合う部分の間の部分におけるパルス面積は強め合う部分のそれより小さくなり、総和が2πという条件を満たせなくなる。すなわち、そういった部分においてはコヒーレント制御による高速緩和ができない。そこで、このような非同軸入射の場合のように空間的に光強度分布が生じる場合には工夫が必要である。この場合、光が強め合う場所にのみ非線形光学媒質が存在し、それ以外の所には媒質がないようにすれば、上記のコヒーレント制御が可能で高速緩和が実現できる。
【0105】
図15は本発明にかかる非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算素子実現のための位置制御量子ドット集合体の模式図、図16は本発明にかかる非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算素子実現のためのマスク付き量子ドット集合体の模式図である。
【0106】
これらの図において、61は基板、62は量子ドット集合体、71はマスク、72は量子ドット集合体、73は量子ドットである。
【0107】
例えば、図15に示すように、基板61の量子ドット集合体62を位置制御し、干渉パターンと同じ分布になるように配置したり、図16に示すように、干渉パターンと同分布のマスク71を施したりする工夫が考えられる。3方向からの光入射のため空間的干渉パターンは複雑になるが、その分布は入射する光の配置で決まるのでこのような工夫は可能である。
【0108】
ここで対象とする素子は、(1)量子ドットの集合体、(2)量子ドット集合体を含む微小共振器構造、(3)量子ドット集合体を含む厚みに変調を加えた微小共振器構造、のいずれであっても良いが、非線形光学効果の増強効果、さらに高密度多重化が可能な上記(3)が将来の超高速非線形光学素子として有望である。
【0109】
本発明によれば、光通信や光情報処理の分野において大きなインパクトを与えるものと期待できる。
【0110】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0111】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下に示すような効果を奏することができる。
【0112】
(A)100fsから1ps程度の時間間隔の高繰り返し光スイッチングや光演算が可能な高効率大容量非線形光学素子を提供することができる。
【0113】
(B)光入射パルスのパルス面積を考慮した新しいコヒーレント制御法を利用した超高速非線形光学素子を提供することができる。
【0114】
(C)振動子強度が大きく位相緩和時間の長い量子ドットの非線形光学特性を増強することができ、高密度多重化が期待できる厚みに変調を加えた微小共振器構造を提供することができる。
【0115】
(D)超高速非線形光学素子の微小共振器構造を、不均一広がりのある系においても有効な新しいコヒーレント制御法と組み合わせることにより、光情報処理の実現のためにこれまで制約となっていた大きな光学的非線形性と高速応答特性という背反する2つの条件を同時に克服することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるブロッホベクトルモデルを示す図である。
【図2】本発明のコヒーレント制御法のブロッホベクトルモデルによる説明図である。
【図3】本発明の実施例を示す微小共振器構造と自己組織化量子ドットを含む半導体微小共振器構造の超高速非線形光学素子の模式図である。
【図4】図3に示す半導体微小共振器構造内の光電場パターンを示す図である。
【図5】本発明の実施例を示す共振器層の厚みに変調を加えた自己組織化量子ドットを含む半導体微小共振器構造の超高速非線形光学素子の模式図である。
【図6】本発明の実施例のパルス整形したスペクトル幅の広い超短パルス光による高密度集積演算法を示す図である。
【図7】本発明の実施例の同軸入射超高速光スイッチAにおけるパルスシークエンスを示す図である。
【図8】図7に示す同軸入射超高速光スイッチAにおける光学過程のブロッホベクトルモデルによる説明図である。
【図9】本発明にかかる同軸入射超高速光スイッチBにおけるパルスシークエンスを示す図である。
【図10】図9に示す同軸入射超高速光スイッチBにおける光学過程のブロッホベクトルモデルによる説明図である。
【図11】本発明にかかる非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算素子における空間的光学配置を示す図である。
【図12】図11に示す非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算素子におけるパルスシークエンスを示す図である。
【図13】本発明にかかるBOX−CARS配置における空間的干渉パターンを示す図である。
【図14】図12に示す非同軸入射縮退四光波混合超高速演算素子における光学過程のブロッホベクトルモデルによる説明図である。
【図15】本発明にかかる非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算素子実現のための位置制御量子ドット集合体の模式図である。
【図16】本発明にかかる非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算素子実現のためのマスク付き量子ドット集合体の模式図である。
【図17】従来の微小共振器構造の非線形光学素子の模式図である。
【符合の説明】
1,3,11,13,101,103 λ/4厚みの多層膜ブラッグ反射鏡
2,102 λ/2共振層(自己組織化量子ドットを含む)
4,104 光の伝搬方向
5,14,73 量子ドット
6 共振周波数の光
10,51,100 超高速非線形光学素子
12 膜厚に変調を加えた中央の共振層(自己組織化量子ドットを含む)
20 超短パルス
21,22,23 パルス列
31,41,52 励起パルス
32 制御パルス
42,53 第1の制御パルス
43,54 第2の制御パルス
55 干渉パターン
61 基板
62,72 量子ドット集合体
71 マスク

Claims (7)

  1. 不均一広がりのある系にパルス面積を考慮した光パルス列を照射し、不均一広がりのデフェイジング(dephasing)効果をリフェイジング(rephasing)効果で相殺することにより、励起された系をエネルギー緩和時間よりも短時間で強制的に緩和することができ、不均一広がりのある系に対応したコヒーレント制御を行うことを特徴とする超高速非線形光学素子。
  2. 不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質に、同軸で光パルスを入射し、量子ドットを励起した後に、パルス面積を考慮した光パルス列を同軸で入射し、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こすことにより、初期状態に速やかに回復させることができ、高繰り返しスイッチングが可能となる同軸入射超高速光スイッチング機能を有する超高速非線形光学素子。
  3. 不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質に、非同軸で2つないし3つの光パルスを入射し、縮退四光波混合光を発生させた後に、パルス面積を考慮した光パルス列を入射することにより、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こし、高繰り返し高効率光演算が可能となる非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算機能を有する超高速非線形光学素子。
  4. 不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質を半導体微小共振器の共振部分に配置することにより、光学的非線形性を実効的に増強できる素子に、同軸で光パルスを入射し、量子ドットを励起した後に、パルス面積を考慮した光パルス列を同軸で入射し、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こすことにより、初期状態に速やかに回復させることができ、高繰り返しスイッチングが可能となる同軸入射超高速光スイッチング機能を有する超高速非線形光学素子。
  5. 不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質を半導体微小共振器の共振部分に配置することにより、光学的非線形性を実効的に増強できる素子に、非同軸で2つないし3つの光パルスを入射し、縮退四光波混合光を発生させた後に、パルス面積を考慮した光パルス列を入射することにより、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こし、高繰り返し高効率光演算が可能となる非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算機能を有する超高速非線形光学素子。
  6. 不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質を厚みに変調を加えた半導体微小共振器の共振部分に配置することにより、光学的非線形性を実効的に増強でき、かつ素子面内の各場所で独立演算が可能となる素子に、同軸で光パルスを入射し、量子ドットを励起した後に、パルス面積を考慮した光パルス列を同軸で入射し、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こすことにより、初期状態に速やかに回復させることができ、高繰り返しスイッチングが可能となる同軸入射超高速光スイッチング機能を有する超高速非線形光学素子。
  7. 不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質を厚みに変調を加えた半導体微小共振器の共振部分に配置することにより、光学的非線形性を実効的に増強でき、かつ素子面内の各場所で独立演算が可能となる素子に、非同軸で2つないし3つの光パルスを入射し、縮退四光波混合光を発生させた後に、パルス面積を考慮した光パルス列を入射することにより、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こし、高繰り返し高効率光演算が可能となる非同軸縮退四光波混合超高速光演算機能を有する超高速非線形光学素子。
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