JP2004279865A - 有機導波路型光変調器および該有機導波路型光変調器を構成要素とする光通信システム - Google Patents
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Abstract
【課題】低電圧駆動が可能な、低コスト、高速の有機導波路型光変調器技術を提供すること。
【解決手段】両側の変調電極111,113をグランドに落とし、中央の変調電極112にマイクロ波を印加することで、分岐した各光伝送路にあるDAST181,182に逆向きの電界を印加し2倍の位相変化を生じさせ、より低電圧駆動を可能としている。変調電極112には終端抵抗を付与し、進行波型電極とすることで、容量の影響をなくし、高速な光変調に対応できる構造としている。変調電極111〜113の表面に導電性のナノチューブ19を設ける。変調電極111〜113の各々を、ナノチューブを含まない層20と表面にチューブナノチューブ19が突出しているナノチューブを含む電極の2層から構成すると、より抵抗制御が容易で、インピーダンスマッチングがとりやすくなる。
【選択図】 図2
【解決手段】両側の変調電極111,113をグランドに落とし、中央の変調電極112にマイクロ波を印加することで、分岐した各光伝送路にあるDAST181,182に逆向きの電界を印加し2倍の位相変化を生じさせ、より低電圧駆動を可能としている。変調電極112には終端抵抗を付与し、進行波型電極とすることで、容量の影響をなくし、高速な光変調に対応できる構造としている。変調電極111〜113の表面に導電性のナノチューブ19を設ける。変調電極111〜113の各々を、ナノチューブを含まない層20と表面にチューブナノチューブ19が突出しているナノチューブを含む電極の2層から構成すると、より抵抗制御が容易で、インピーダンスマッチングがとりやすくなる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導波路型光変調器技術に係り、さらに詳細には、電気光学効果を応用し、特に低電圧で駆動可能な導波路型光変調器およびそれを用いた光通信システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、インターネットに代表される情報化社会の急速な進展によって、より多くの情報をやり取りするために、大容量高速の光通信の要求は高まっている。そのため、幹線系のネットワークばかりでなく、LAN、ネットワーク端末や電子機器間、ボード間、LSIチップ間にも光を用いた情報伝達が提案されている。
【0003】
特に、機器間やボード間、LSIチップ間を結ぶ光インタコネクションにおいては、そこに搭載されているLSIチップの電源電圧は、低電圧化の一途をたどっており、それらにノイズを与えないためにも、光インターコネクションに用いられるデバイスは低電圧化が求められている。
【0004】
また、電気信号により光を変調するドライバも低電圧化しており、システム全体の低消費電力の要求ともあいまって、低電圧化の要求は強い。
【0005】
このような構成要素の一つに電気光学効果を用いた導波路型光変調器がある。電気光学効果は、光学媒体に電界を印加した場合、この媒体の屈折率が変化する現象であり、電界に比例する屈折率変化であるポッケルス効果と電界の2乗に比例するカー効果とがある。一般には、ポッケルス効果のほうがカー効果より大きいために、ポッケルス効果が用いられている。
【0006】
従来の幹線系の変調器の例として、無機強誘電性結晶LiNbO3(LN)を用いたマッハツェンダ型の光強度変調器がある。光強度変調器の光導波路部分は、XやZなど適当な方位で切り出されたLN結晶にTiイオンなどを拡散させることで屈折率の大きな領域を形成してコア層とし、Tiの拡散のないLN結晶やシリコン酸化膜のバッファ層をクラッド層としている。
【0007】
また、外部からの電場は、AuやCuなどの金属からなる進行波電極で対称もしくは非対称平面ストリップラインの変調用電極に印加される。
【0008】
入射光は、入り口側のY分岐した2つのポートに分岐される。ポートを伝搬する光は、電極に印加されたマイクロ波と相互作用して位相変化を起こす。この位相変化を生じた光は、他方を伝搬してきた光と出口側のY分岐部で重ね合わされ、重ね合わされた合成波は位相変化に起因して強度変化を引き起こす。
【0009】
集中定数型の電極構成で駆動させると、電極の持つ電気容量Cにより変調帯域が制限されるために、ストリップラインに変調用マイクロ波電気信号を伝搬させる信光波型の電極構成をとる。この場合、理想的には、電気回路的帯域の制限はない。
【0010】
しかし、実際には、変調信号と光伝搬速度に差があると、この電極構成をとっても、帯域の制限を受ける。今、マイクロ波に対する実効屈折率をnm、光に対する実効屈折率をn0、マイクロ波と光の相互作用長Lとすると、帯域幅BWは、
【数1】
【数2】
の関係がある(西原ら著「光集積回路」オーム社発行、p116(非特許文献1))。
【0011】
したがって、LN結晶の誘電率が約28と大きいために、マイクロ波の実効屈折率nmが光の実効屈折率n0に対して大きくなり、マイクロ波と光波の位相速度差による帯域制限を受ける。したがって、より高帯域化、つまり高速変調するには、電極長さを小さくして、マイクロ波と光波の相互作用長を小さくする必要がある。
【0012】
しかし、電極の長さを小さくすると、変調のための駆動電圧が高くなり、高速化と低電圧化の両立が難しい。実際に、現状のLN変調器の一例を示すと10Gbpsで5V駆動と、LSIチップの電源電圧に比べて、2,3倍の大きさとなっている。そのため、特公平7−50265号公報(特許文献1)では、リッジ型導波路の両側端面に一対の電極を対向配置されている。この例では、電極と指示部材の作製は困難であることが指摘されている。
【0013】
一方、特開平6−300995号公報(特許文献2)では、リッジ型光導波路の上部を除く両側に、基板の比誘電率より低い比誘電率を有する低比誘電率層を設け、リッジ型光導波路の両側に、コプレーナ型進行波電極を設けている。しかし、このようなLN変調器は、一般にデスクリートデバイスで、高コストデバイスである。
【0014】
一方、有機結晶や有機高分子材料は、誘電率が無機材料に比べて小さく、薄膜化が可能で、大きな電気光学定数を持つため、低電圧で高速な光変調器として期待されている。
【0015】
有機高分子材料は、高分子中に二次光非線形材料を溶解したもの、または、二次光非線形材料を直接またはスペーサー原子団を介して、高分子鎖に結合したもの。これらの高分子材料は、中心対称構造をなし、電気光学効果を発現させるために直流電圧印化やコロナ帯電等による分極処理が必要である。
【0016】
これらの一例として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)にアゾ色素をドープしたもの(Journal of Optical Society of America, B4(1987)968)(非特許文献2)やポリメチルメタクリレート(PMMA)、アモルファスポリカーボネート(APC)とCLD系色素用いたもの(Science Vol.288(2000) p119(非特許文献3))などの例がある。
【0017】
また、有機結晶に関しては、図5に構造式を示す4−N,N−dimethylamino−4’−N−methyl−stilbazolium tosylate(DAST)が、東北大学中西研究室において開発され、極めて大きな非線形光学定数d11=1010pm/V(λ=1.3μm)と電気光学定数r11=75pm/V(λ=820nm)を有し、有機結晶特有の低い誘電率(ε1=5.2)であるために、低電圧、高速の光変調や検波、ミリ波(または、サブミリ波)発生など関心を集めている。
【0018】
改良シェア法によってDAST結晶の薄膜を形成し、光変調を行った報告(M.Thakur他、Appl. Phys.Lett.,Vol.74(1999) p635)(非特許文献4)やDASTの電気光学効果を用いて、その屈折率変化から信号線を伝搬する電気信号を計測する報告(特開平8−262117号公報(特許文献3))がなされているが、バルクとして用いており、いまのところ、DASTを用いた導波路型光変調器を作製した報告はない。
【0019】
【特許文献1】
特公平7−50265号公報(特許文献1)
【特許文献2】
特開平6−300995号公報(特許文献2)
【特許文献3】
特開平8−262117号公報(特許文献3)
【非特許文献1】
西原ら著「光集積回路」オーム社発行、p116(非特許文献1)
【非特許文献2】
Journal of Optical Society of America, B4(1987) p968)(非特許文献2)
【非特許文献3】
Science Vol.288(2000) p119(非特許文献3)
【非特許文献4】
M.Thakur他、Appl. Phys.Lett.,Vol.74(1999) p635)(非特許文献4)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
カーボンナノチューブ(CNT)に代表されるナノチューブは、直径が、0.5〜100nm程度、長さが100nm〜1mm程度と非常に高アスペクト比の材料である。
【0021】
カーボンナノチューブは、グラファイト状炭素原子面を丸めた円筒が1個、または数〜数10個入れ子状に配列した繊維状構造を有し、その構造によって金属から半導体と幅広い電気特性を持ち、微小で表面積が大きい、アスペクト比(長さ/直径比)が大きい、中空であるといった独特の形状を有し、更に形状に由来する特殊な特性をもつことから、新しい炭素材料として産業上への適用が期待されている。
【0022】
特に、カーボンナノチューブの先端は、ナノメートルオーダーの径をもつ半球状で、電圧印加による電界の集中が容易に得られ、数10V〜100V程度と低い印加電圧でも先端から電界放出が期待され、ディスプレイなどへの応用が提案されている。しかし、このようなナノチューブを、光変調器の電極に適用した例はない。
【0023】
本発明は、上述したような光インタコネクションなどに用いられる導波路型光変調器に関し、特に低電圧駆動が可能な有機導波路型光変調器技術を提供することを目的とするものである。以下、請求項毎の目的を記す。
【0024】
a)請求項1記載の発明の目的は、低電圧駆動の有機導波路型光変調器を提供することにある。
b)請求項2記載の発明の目的は、低電圧駆動を維持したまま、信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することにある。
【0025】
c)請求項3記載の発明の目的は、より低電圧駆動をとなる有機導波路型光変調器を提供することにある。
d)請求項4および5記載の発明の目的は、低電圧駆動を維持したまま、より高速の有機導波路型光変調器を提供することにある。
【0026】
e)請求項6記載の発明の目的は、より低電圧で高速、かつ信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することにある。
【0027】
f)請求項7記載の発明の目的は、低電圧駆動を維持したまま、低コストな有機導波路型光変調器を提供することにある。
g)請求項8記載の発明の目的は、低電圧で高速、広帯域な光通信システムを提供することにある。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、変調電極にナノチューブを付けたことを特徴とするものである。以下、請求項毎に特徴を述べる。
【0029】
a)請求項1に記載の発明は、外部から制御された電場によって光の位相または強度を変調する電気光学効果を有する有機材料をコア層とする光導波路と、光の位相または強度を変調するための変調電極を構成要素にもつ有機導波路型光変調器において、変調電極の表面に突出した電気伝導性のナノチューブを有することを特徴としている。
【0030】
b)請求項2に記載の発明は、前記ナノチューブが、炭素からなるカーボンナノチューブ(CNT)であることを特徴としている。
【0031】
c)請求項3に記載の発明は、前記有機導波路型光変調器が、干渉により光変調を行う変調器であり、前記変調電極が、二つの光路に配置された電気光学効果を示す有機材料の分極方向に対して逆向きの電界を印加することを特徴としている。
【0032】
d)請求項4に記載の発明は、前記変調電極が、進行波型電極であることを特徴としている。
【0033】
e)請求項5に記載の発明は、前記変調電極が、ナノチューブを含む層とナノチューブを含まない層の2層からなることを特徴としている。
【0034】
f)請求項6に記載の発明は、前記電気光学効果をもつ有機材料が、有機結晶4−N,N−dimethylamino−4’−N−methyl−stilbazolium tosylate(DAST)であることを特徴としている。
【0035】
g)請求項7に記載の発明は、前記電気光学効果をもつ有機材料が、有機高分子であることを特徴としている。
【0036】
h)請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれかの有機導波路型光変調器を光出力部の構成要素とする光通信システムである。
【0037】
【発明の実施の形態】
本実施例で用いるナノチューブは、直径0.5〜100nm程度、長さ100nm〜1mm程度のもので、金属または半導体的な電気特性をもつものである。アスペクト比が非常に大きな金属または半導体のナノチューブが、電極表面に突出しているために、局所的に集中した強い電界を形成できるため、低電圧でも電気光学効果の媒体に及ぼす電界が大きくなることから、屈折率変化が大きくなり、低電圧駆動が可能となる。
【0038】
また、ナノチューブの径は、一般的には数〜数10nm程度の場合が多いため、クラッド層にこのようなナノチューブが進入していてもその光学的な屈折率に及ぼす影響は小さいために、光導波路の損失には大きな影響はない。
【0039】
さらに、ナノチューブが炭素原子からなるカーボンナノチューブは、グラファイト状炭素原子面を丸めた円筒が1個である単層カーボンナノチューブと、グラファイト状炭素原子面を丸めた円筒が数〜数10個入れ子状に配列した多層カーボンナノチューブとがあり、どちらも化学的に非常に安定で、また機械的強度も非常に強い。
【0040】
本実施例で用いる有機高分子は、電気光学効果を示す媒体として、アゾ化合物やスチルベン化合物、アゾメチン化合物、ポリジアセチレン、ポリアセチレン、金属フタロシアニン等の有機化合物を、アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネートおよびこれらの重水素化樹脂、あるいはフッ素化樹脂等の基材に分散もしくは高分子側鎖に結合させた材料を用いることができる。これらの材料は、スピンコート法に代表される塗布法などによって容易に形成される。
【0041】
この光変調器を形成するため、SiO2やSi、GaAsなどの無機材料またはポリイミドなどの有機材料、およびプリント板に用いられているガラスエポキシなどのハイブリッド材料の基板を用いることができる。
【0042】
以下、本発明に係る有機導波路型光変調器の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0043】
<実施例1>
図1は、本発明の有機導波路型光変調器の上面図、図2は、電気光学媒体を横切るA−A’での断面図を示している。ここでは電気光学媒体としてDASTを用いたマッハツェンダー型の光変調器の例を示している。変調電極によって屈折率変化を生じさせる両アームに等しい長さのDAST181,182を選択的に配置している。なお、光導波路全てを電気光学媒体から形成してもよい。
【0044】
Y分岐によって、2つにスプリットされた光は、DASTの最も大きな電気光学定数r11を有効に使うため、光はb軸伝播するように、また、電界はa軸方向に印加され、入射光の偏波面もa軸に平行となるように、結晶方位および入射光を設定している。この例では、結晶のa軸は基板に平行方向となるように制御しているため、電界も基板と平行になるように図2のようなコプレーナ型の配置となっている。
【0045】
さらに変調電極については、両側の変調電極111,113をグランドに落とし、中央の変調電極112にマイクロ波を印加することで、各々のDAST181,182に逆向きの電界を印加することができ、2倍の位相変化を生じさせ、より低電圧駆動が可能となる。また、変調電極112には終端抵抗を付与し、進行波型電極とすることで、容量の影響をなくし、高速な光変調に対応できる電極構造としている。
【0046】
このような変調電極111〜113の表面に導電性のナノチューブ19、ここでは多層カーボンナノチューブが表面に突出している。また、変調電極111〜113の各々は、図2に示すように、ナノチューブを含まない層20と表面にチューブナノチューブ19が突出しているナノチューブを含む電極の2層からなっており、2つの抵抗が異なるためにより抵抗制御が容易で、インピーダンスマッチングがとりやすくなっている。
【0047】
基板16として、ポリイミド基板を用い、その基板16上に、光導波路のクラッド層として働くコア層よりも屈折率の小さなポリイミド樹脂をスピンコートする。さらに、マッハツェンダーの導波路パターンマスクを用いて、フォトリソグラフィーと酸素ガスを用いた反応性イオンエッチングを行い、コア溝を形成した。同じくコアとなる屈折率の大きなポリイミド樹脂を溝部に形成し、低損失な光導波路を形成する。更にリソグラフィーとエッチングを用いて、DASTを選択的に形成する部分だけ、コア溝を再度形成する。
【0048】
ここに、メタノールを溶媒に用いた徐冷法によって、DASTを結晶成長させた。結晶方位については種結晶によって、導波路方向をb軸となるようにした。それとほぼ垂直方向がa軸となるように、コア溝を埋め込んだ形でDAST単結晶が形成された。このときコア溝以外にも、結晶成長したDASTが存在する。
【0049】
そこで、研磨により不要部分のDASTの除去を行う。研磨は、発泡ウレタンパッドIC−1000/SUBAIV(ロデール製)を用いて、シリカの研磨粒子を用いて研磨を行い、コア溝以外のDASTを除去し、DAST181,182を特定のコア溝にのみ残すことができる。
【0050】
ここでは、種結晶を用いた徐冷法でDAST層を形成したが、Appl. Phys.Lett.,Vol.74(1999)635にあるような改良シェア法によってDAST薄膜を形成したり、MOVPE法によって薄膜を形成してもよい。
【0051】
一方、石英ガラス基板上に剥離層を形成し、カーボンナノチューブが突出した変調電極111〜113を形成する。
【0052】
まず、各変調電極の各々は、カーボンナノチューブを含まない層(電極部分)20として、メッキ法にて4μm膜厚のAu膜を形成し、変調電極111〜113とした。ついで、Auメッキ液に多層カーボンナノチューブを混合し調整したメッキ液を用いる。多層カーボンナノチューブは、長さ100nm〜5μm程度のもので、直径は、1,2nm〜50nm程度のものを使っている。
【0053】
上述の多層カーボンナノチューブを含むメッキ液をメッキ槽内で攪拌した後、液温を調整しながら、Au電極を形成したガラス基板を浸漬し、無電解メッキを行った。多層カーボンナノチューブを含むAu層が約2μmの膜厚で形成され、その表面にはカーボンナノチューブ19が突出している。
【0054】
また、無電解メッキを行っているため、カーボンナノチューブは表面に対してランダムな方向を向いて突出している。メッキ法を用いているために、下層Au電極の上面および側面にカーボンナノチューブ19が突出した変調電極111〜113が形成される。この下層のAu電極以外については、カーボンナノチューブを含むAu層がほとんど形成されていないか、もしくは簡単な洗浄により除去できる。
【0055】
ついで、先ほどのDAST181,182を形成した基板16上に、先ほどと同様にクラッド層17となるコア層よりも屈折率の小さな紫外線硬化樹脂をスピンコートし、先のカーボンナノチューブが突出した変調電極111〜113側をスピンコートした樹脂上に張り合わせ、石英ガラス基板側から紫外線を照射して固定する。電気光学媒体であるDAST181,182および光導波路に対して、変調電極111〜113が適切な配置になるようにアライメントを行う。
【0056】
その後、剥離層を除去することによって、石英ガラス基板を剥離し、終端抵抗15を付加し進行波型電極とした。このようにして、カーボンナノチューブ19が変調電極111〜113に突出し、クラッド層17にまで伸びた有機導波路型光変調器を作製した。
【0057】
波長1.3μmのレーザ光を入射しながら、同軸ケーブルを介して変調電極111〜113間に変調信号を入力したところ、約1.5Vと低い駆動電圧で光強度変調ができる。化学的に安定で、機械的強度も強いカーボンナノチューブ19を用いることによって、信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することができる。更に進行波型の変調電極構成をとることでより高速の変調にも対応できる。
【0058】
更に、変調電極111〜113をナノチューブを含む層20とナノチューブを含まない層の2層構造にすることによって、電気抵抗制御が容易になり、インピーダンス整合がとりやすい。電気光学定数がきわめて大きく、かつ誘電率が小さく、有機結晶であるために熱的に安定なDASTを電気光学効果の媒体として用いることによって、より低電圧で高速、かつ信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0059】
ここでは多層カーボンナノチューブを用いたが、単層カーボンナノチューブ、または、電気伝導性のナノチューブでもよい。
【0060】
パターニングの方法としては、フォトリソとエッチングによる半導体微細加工を用いたが、インプリンティングやスタンパ−などの型成形によるもので形成してもよく、DAST部以外のコア層やクラッド層を感光性樹脂によるもので形成してもよい。
【0061】
<実施例2>
図3は、有機導波路型光変調器の断面図である。
上記実施例1と同様にマッハツェンダー型の光変調器であり、電気光学効果の媒体として高分子ポリマーを用いた場合の例を示す。この場合は、マッハツェンダーのアーム部ばかりではなく、Y分岐などの光導波路部分も全てこの高分子ポリマーで形成している。
【0062】
この例では、有機高分子材料の分極方向は同一方向で、下部の変調電極に逆符号の電位を印加することによって、2倍の位相変化を生じさせ、より低電圧駆動が可能となる。このような変調電極の表面に導電性のナノチューブ、ここでは多層カーボンナノチューブが表面に突出している光変調器を形成している。
【0063】
基板21として、表面を熱酸化したシリコンウェハーを用い、その基板21上に、カーボンナノチューブを含まない電極部分として、メッキ法にてシード層として1μm膜厚のAu膜を形成し変調電極221,222とした。
【0064】
ついで、Auメッキ液に多層カーボンナノチューブを混合し調整したメッキ液を作製する。多層カーボンナノチューブは、実施例1と同様のものを用いた。上述の多層カーボンナノチューブを含むメッキ液をメッキ槽内で攪拌した後、液温を調整しながら、Au膜からなる変調電極221,222を形成したSi基板21を浸漬し、電解メッキを行った。電解メッキを行うことで、多層カーボンナノチューブ23がAu電極(変調電極221,222)に垂直に配向した状態で、電極表面に突出したAu層が形成された。
【0065】
その上層に、コア層よりも屈折率の小さなエポキシ系紫外線硬化樹脂をスピンコートし、クラッド層241を形成した。このとき、変調電極221,222の表面から突出したカーボンナノチューブ23はクラッド層241まで伸びた状態になっている。ここで、変調電極221,222の表面に凹凸がある場合には、研磨などにより表面の平坦化を行ってもよい。
【0066】
ついで、PMMAに4−N,Nジエチルアミノ−4−ニトロスチルベンを2%溶解した高分子材料をクラッド層241上にスピンコートし、リソグラフィーとエッチングを行うことで、コアを形成する。
【0067】
ついで、公知技術により、150℃に加熱しながら、コロナ帯電により分極処理を行い、冷却して配向を固定し、電気光学効果を生じさせて電気光学媒体25とする。分極処理に関しては、コロナ帯電のほかに、電極を形成して、直流電解を印加する方法などもある。
【0068】
この上に、先ほどと同様にコア層よりも屈折率の小さなエポキシ系紫外線硬化樹脂をスピンコートし、上層クラッド層242とした。この上に、メッキ法でAu膜を形成し変調電極26とした。
【0069】
波長1.3μmのレーザ光を入射しながら、同軸ケーブルを介して変調電極221,222に異なる位相の変調信号を入力したところ、約3Vとカーボンナノチューブ23がない場合に比べて低い駆動電圧で光強度変調ができる。化学的に安定で、機械的強度も強いカーボンナノチューブを用いることによって、信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0070】
ここでは、電気光学効果を示す媒体として4−N,Nジエチルアミノ−4−ニトロスチルベンを用いたが、アゾ化合物やスチルベン化合物、アゾメチン化合物、ポリジアセチレン、ポリアセチレン、金属フタロシアニン等の有機化合物をアクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネートおよびこれらの重水素化樹脂、あるいはフッ素化樹脂等の基材に分散もしくは高分子側鎖に結合させた有機高分子材料を用いることができる。これらの材料は、スピンコート法に代表される塗布法などによって容易に形成されるため、低コストのデバイスを作製することができる。
【0071】
また、クラッド層242としてエポキシ樹脂を用いたが、ポリイミド樹脂やアクリル酸エステル系樹脂、シリコン樹脂、シアヌレート樹脂などのコア層より屈折率の小さな樹脂を用いて形成することができる。
【0072】
また、多層カーボンナノチューブを用いたが、単層カーボンナノチューブ、または、電気伝導性のナノチューブでもよい。
【0073】
また、パターニングの方法としては、フォトリソとエッチングによる半導体微細加工を用いたが、インプリンティングやスタンパ−などの型成形によるもので形成してもよく、感光性樹脂を用いてもよい。
【0074】
<実施例3>
図4は、有機導波路型光変調器を用いた光通信システムの一例を示す図である。この例は、ガラスもしくはセラミック、もしくは樹脂フィルム等でできたプリント基板上に配置された複数のIC間の光配線を実現したものである。光配線は速い信号線に用いており、遅い信号線は図示していないが電気配線を用いている。
【0075】
光通信システムは、ボード30上のIC35からの電気信号を光信号に変換して出力するための光出力部31、その光信号を伝送するための光伝送路47,および伝送された光信号を受信して電気信号に変換してボード40’上のIC45’に入力するための光入力部41’からなる。
【0076】
光出力部31は、実施例1の4個の有機導波路型光変調器10をアレイ化した光変調器アレイ32と、IC35からの電気信号を処理する電気回路および有機導波路型光変調器アレイを駆動するためのドライバからなる電気信号処理部33と、有機導波路型光変調器10によって光信号を形成する光を発光するための発光素子(図示しない)およびその光を光変調器10まで導波するための光導波路(図示しない)からなっている。
【0077】
一方、光入力部41’は、伝送された信号を受光するための受光素子46’からなる受光素子アレイ42’と、必要に応じて受光素子46’からの信号を増幅するためのアンプとおよび再度もとのビットに変換するための電気回路からなる電気信号処理部43’からなっている。
【0078】
なお、図4では、ボード30上のIC35とボード40’上のIC45’との間で双方向光伝送を可能とするために、ボード30上に、上記光入力部41’と同様な構成の光入力部41(伝送された信号を受光するための受光素子46からなる受光素子アレイ42と、必要に応じて受光素子46からの信号を増幅するためのアンプとおよび再度もとのビットに変換するための電気回路からなる電気信号処理部43)が備えられており、また、ボード40’上に、上記光出力部31と同様な構成の光出力部31’(実施例1の4個の有機導波路型光変調器10’をアレイ化した光変調器アレイ32’と、IC45’からの電気信号を処理する電気回路および有機導波路型光変調器アレイを駆動するためのドライバからなる電気信号処理部33’と、有機導波路型光変調器10’によって光信号を形成する光を発光するための発光素子およびその光を光変調器10’まで導波するための光導波路)が備えられている。
【0079】
また、光伝送路47として、ここではシングルモードの光ファイバを用いた。そのほか、用途に応じて、マルチモードの光ファイバやPOF、また、ボード内光通信においては、石英や樹脂からなる光導波路を用いることができる。
【0080】
なお上記例では、各装置が同一ボード上に光出力部および光入力部の両方を備えており、装置間で双方向の光伝送を可能にした好ましい例ではあるが、本発明はこのような構成に限定される物ではなく、光出力部と光入力部が同一ボード上になくてもかまわないし、逆にその他の光学構成要素があっても何ら問題はない。
【0081】
また、ここでは、IC35とIC45’が、異なるボードすなわちボード30とボード40’に存在している光通信システムを例にあげているが、同一ボード内に存在するようなボード内光インターコネクションのような光通信システムに用いてもかまわない。
【0082】
本発明によれば、ナノチューブが変調電極表面に突出した有機導波路型光変調器を光出力部の構成要素とすることによって、低電圧駆動で、高速、広帯域な光通信システムを提供することができる。
【0083】
【発明の効果】
以下、本発明の効果を請求項毎に述べる。
(1)請求項1における効果
電気光学効果をもつ媒体として有機材料の屈折率を変化させて、光の位相または強度を変調するための変調電極表面に電気伝導性のナノチューブが突出していることによって、局所的に集中した強い電界を形成できるため、低電圧でも電気光学効果による大きな屈折率変化を生じることができ、低電圧駆動が可能な有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0084】
(2)請求項2における効果
変調電極表面に突出している電気伝導性のナノチューブとして、化学的に安定で、機械的強度も強いカーボンナノチューブを用いることによって、局所的に集中した強い電界による低電圧駆動を維持しながら、信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0085】
(3)請求項3における効果
前記光変調器は、干渉により光変調を行う変調器であり、変調電極は、その二つの光路に配置された電気光学効果を示す媒体の分極方向に対して逆向きの電界を印加することによって、2倍の位相変化を生じることができ、より低電圧駆動できる有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0086】
(4)請求項4における効果
電気光学効果の有機媒体の屈折率を制御する変調電極を、進行波型電極にすることによって、局所的に集中した強い電界による低電圧駆動を維持しながら、より高速の有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0087】
(5)請求項5における効果
変調電極をナノチューブを含む層とナノチューブを含まない層の2層構造にすることによって、電気抵抗制御が容易になり、インピーダンス整合がとりやすいために、局所的に集中した強い電界による低電圧駆動を維持しながら、より高速の有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0088】
(6)請求項6における効果
電気光学定数がきわめて大きく、かつ誘電率が小さく、有機結晶であるために熱的に安定な4−N,N−dimethylamino−4’−N−methyl−stilbazolium tosylate(DAST)を電気光学効果の媒体として用いることによって、より低電圧で高速、かつ信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0089】
(7)請求項7における効果
電気光学効果の媒体として、塗布など、膜形成が容易な有機高分子を用いることによって、局所的に集中した強い電界による低電圧駆動を維持しながら、低コストな有機導波路型光変調器を提供することができる
【0090】
(8)請求項8における効果
請求項1から7のいずれかの有機導波路型光変調器を光出力部の構成要素とすることによって、低電圧駆動で、高速、広帯域な光通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る有機導波路型光変調器の上面図である。
【図2】図1の電気光学媒体を横切るA−A’の断面図である。
【図3】有機導波路型光変調器の断面図である。
【図4】有機導波路型光変調器を用いた光通信システムの一例を示す図である。
【図5】4−N,N−dimethylamino−4’−N−methyl−stilbazolium tosylate(DAST)の構造式を示す図である。
【符号の説明】
21:基板、
221,222,26:変調電極、
23:(カーボン)ナノチューブ、
241,242:クラッド層、
25:電気光学媒体、
30,40’:ボード、
31,31’:光出力部、
32,32’:光変調器アレイ、
33,33’:電気信号処理部、
34,34’:電気配線、
35,45’:IC、
41,41’:光入力部、
42,42’:受光素子アレイ、
43,43’:電気信号処理部、
44,44’:電気配線、
46,46’:受光素子、
47:光伝送路。
【発明の属する技術分野】
本発明は、導波路型光変調器技術に係り、さらに詳細には、電気光学効果を応用し、特に低電圧で駆動可能な導波路型光変調器およびそれを用いた光通信システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、インターネットに代表される情報化社会の急速な進展によって、より多くの情報をやり取りするために、大容量高速の光通信の要求は高まっている。そのため、幹線系のネットワークばかりでなく、LAN、ネットワーク端末や電子機器間、ボード間、LSIチップ間にも光を用いた情報伝達が提案されている。
【0003】
特に、機器間やボード間、LSIチップ間を結ぶ光インタコネクションにおいては、そこに搭載されているLSIチップの電源電圧は、低電圧化の一途をたどっており、それらにノイズを与えないためにも、光インターコネクションに用いられるデバイスは低電圧化が求められている。
【0004】
また、電気信号により光を変調するドライバも低電圧化しており、システム全体の低消費電力の要求ともあいまって、低電圧化の要求は強い。
【0005】
このような構成要素の一つに電気光学効果を用いた導波路型光変調器がある。電気光学効果は、光学媒体に電界を印加した場合、この媒体の屈折率が変化する現象であり、電界に比例する屈折率変化であるポッケルス効果と電界の2乗に比例するカー効果とがある。一般には、ポッケルス効果のほうがカー効果より大きいために、ポッケルス効果が用いられている。
【0006】
従来の幹線系の変調器の例として、無機強誘電性結晶LiNbO3(LN)を用いたマッハツェンダ型の光強度変調器がある。光強度変調器の光導波路部分は、XやZなど適当な方位で切り出されたLN結晶にTiイオンなどを拡散させることで屈折率の大きな領域を形成してコア層とし、Tiの拡散のないLN結晶やシリコン酸化膜のバッファ層をクラッド層としている。
【0007】
また、外部からの電場は、AuやCuなどの金属からなる進行波電極で対称もしくは非対称平面ストリップラインの変調用電極に印加される。
【0008】
入射光は、入り口側のY分岐した2つのポートに分岐される。ポートを伝搬する光は、電極に印加されたマイクロ波と相互作用して位相変化を起こす。この位相変化を生じた光は、他方を伝搬してきた光と出口側のY分岐部で重ね合わされ、重ね合わされた合成波は位相変化に起因して強度変化を引き起こす。
【0009】
集中定数型の電極構成で駆動させると、電極の持つ電気容量Cにより変調帯域が制限されるために、ストリップラインに変調用マイクロ波電気信号を伝搬させる信光波型の電極構成をとる。この場合、理想的には、電気回路的帯域の制限はない。
【0010】
しかし、実際には、変調信号と光伝搬速度に差があると、この電極構成をとっても、帯域の制限を受ける。今、マイクロ波に対する実効屈折率をnm、光に対する実効屈折率をn0、マイクロ波と光の相互作用長Lとすると、帯域幅BWは、
【数1】
【数2】
の関係がある(西原ら著「光集積回路」オーム社発行、p116(非特許文献1))。
【0011】
したがって、LN結晶の誘電率が約28と大きいために、マイクロ波の実効屈折率nmが光の実効屈折率n0に対して大きくなり、マイクロ波と光波の位相速度差による帯域制限を受ける。したがって、より高帯域化、つまり高速変調するには、電極長さを小さくして、マイクロ波と光波の相互作用長を小さくする必要がある。
【0012】
しかし、電極の長さを小さくすると、変調のための駆動電圧が高くなり、高速化と低電圧化の両立が難しい。実際に、現状のLN変調器の一例を示すと10Gbpsで5V駆動と、LSIチップの電源電圧に比べて、2,3倍の大きさとなっている。そのため、特公平7−50265号公報(特許文献1)では、リッジ型導波路の両側端面に一対の電極を対向配置されている。この例では、電極と指示部材の作製は困難であることが指摘されている。
【0013】
一方、特開平6−300995号公報(特許文献2)では、リッジ型光導波路の上部を除く両側に、基板の比誘電率より低い比誘電率を有する低比誘電率層を設け、リッジ型光導波路の両側に、コプレーナ型進行波電極を設けている。しかし、このようなLN変調器は、一般にデスクリートデバイスで、高コストデバイスである。
【0014】
一方、有機結晶や有機高分子材料は、誘電率が無機材料に比べて小さく、薄膜化が可能で、大きな電気光学定数を持つため、低電圧で高速な光変調器として期待されている。
【0015】
有機高分子材料は、高分子中に二次光非線形材料を溶解したもの、または、二次光非線形材料を直接またはスペーサー原子団を介して、高分子鎖に結合したもの。これらの高分子材料は、中心対称構造をなし、電気光学効果を発現させるために直流電圧印化やコロナ帯電等による分極処理が必要である。
【0016】
これらの一例として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)にアゾ色素をドープしたもの(Journal of Optical Society of America, B4(1987)968)(非特許文献2)やポリメチルメタクリレート(PMMA)、アモルファスポリカーボネート(APC)とCLD系色素用いたもの(Science Vol.288(2000) p119(非特許文献3))などの例がある。
【0017】
また、有機結晶に関しては、図5に構造式を示す4−N,N−dimethylamino−4’−N−methyl−stilbazolium tosylate(DAST)が、東北大学中西研究室において開発され、極めて大きな非線形光学定数d11=1010pm/V(λ=1.3μm)と電気光学定数r11=75pm/V(λ=820nm)を有し、有機結晶特有の低い誘電率(ε1=5.2)であるために、低電圧、高速の光変調や検波、ミリ波(または、サブミリ波)発生など関心を集めている。
【0018】
改良シェア法によってDAST結晶の薄膜を形成し、光変調を行った報告(M.Thakur他、Appl. Phys.Lett.,Vol.74(1999) p635)(非特許文献4)やDASTの電気光学効果を用いて、その屈折率変化から信号線を伝搬する電気信号を計測する報告(特開平8−262117号公報(特許文献3))がなされているが、バルクとして用いており、いまのところ、DASTを用いた導波路型光変調器を作製した報告はない。
【0019】
【特許文献1】
特公平7−50265号公報(特許文献1)
【特許文献2】
特開平6−300995号公報(特許文献2)
【特許文献3】
特開平8−262117号公報(特許文献3)
【非特許文献1】
西原ら著「光集積回路」オーム社発行、p116(非特許文献1)
【非特許文献2】
Journal of Optical Society of America, B4(1987) p968)(非特許文献2)
【非特許文献3】
Science Vol.288(2000) p119(非特許文献3)
【非特許文献4】
M.Thakur他、Appl. Phys.Lett.,Vol.74(1999) p635)(非特許文献4)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
カーボンナノチューブ(CNT)に代表されるナノチューブは、直径が、0.5〜100nm程度、長さが100nm〜1mm程度と非常に高アスペクト比の材料である。
【0021】
カーボンナノチューブは、グラファイト状炭素原子面を丸めた円筒が1個、または数〜数10個入れ子状に配列した繊維状構造を有し、その構造によって金属から半導体と幅広い電気特性を持ち、微小で表面積が大きい、アスペクト比(長さ/直径比)が大きい、中空であるといった独特の形状を有し、更に形状に由来する特殊な特性をもつことから、新しい炭素材料として産業上への適用が期待されている。
【0022】
特に、カーボンナノチューブの先端は、ナノメートルオーダーの径をもつ半球状で、電圧印加による電界の集中が容易に得られ、数10V〜100V程度と低い印加電圧でも先端から電界放出が期待され、ディスプレイなどへの応用が提案されている。しかし、このようなナノチューブを、光変調器の電極に適用した例はない。
【0023】
本発明は、上述したような光インタコネクションなどに用いられる導波路型光変調器に関し、特に低電圧駆動が可能な有機導波路型光変調器技術を提供することを目的とするものである。以下、請求項毎の目的を記す。
【0024】
a)請求項1記載の発明の目的は、低電圧駆動の有機導波路型光変調器を提供することにある。
b)請求項2記載の発明の目的は、低電圧駆動を維持したまま、信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することにある。
【0025】
c)請求項3記載の発明の目的は、より低電圧駆動をとなる有機導波路型光変調器を提供することにある。
d)請求項4および5記載の発明の目的は、低電圧駆動を維持したまま、より高速の有機導波路型光変調器を提供することにある。
【0026】
e)請求項6記載の発明の目的は、より低電圧で高速、かつ信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することにある。
【0027】
f)請求項7記載の発明の目的は、低電圧駆動を維持したまま、低コストな有機導波路型光変調器を提供することにある。
g)請求項8記載の発明の目的は、低電圧で高速、広帯域な光通信システムを提供することにある。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、変調電極にナノチューブを付けたことを特徴とするものである。以下、請求項毎に特徴を述べる。
【0029】
a)請求項1に記載の発明は、外部から制御された電場によって光の位相または強度を変調する電気光学効果を有する有機材料をコア層とする光導波路と、光の位相または強度を変調するための変調電極を構成要素にもつ有機導波路型光変調器において、変調電極の表面に突出した電気伝導性のナノチューブを有することを特徴としている。
【0030】
b)請求項2に記載の発明は、前記ナノチューブが、炭素からなるカーボンナノチューブ(CNT)であることを特徴としている。
【0031】
c)請求項3に記載の発明は、前記有機導波路型光変調器が、干渉により光変調を行う変調器であり、前記変調電極が、二つの光路に配置された電気光学効果を示す有機材料の分極方向に対して逆向きの電界を印加することを特徴としている。
【0032】
d)請求項4に記載の発明は、前記変調電極が、進行波型電極であることを特徴としている。
【0033】
e)請求項5に記載の発明は、前記変調電極が、ナノチューブを含む層とナノチューブを含まない層の2層からなることを特徴としている。
【0034】
f)請求項6に記載の発明は、前記電気光学効果をもつ有機材料が、有機結晶4−N,N−dimethylamino−4’−N−methyl−stilbazolium tosylate(DAST)であることを特徴としている。
【0035】
g)請求項7に記載の発明は、前記電気光学効果をもつ有機材料が、有機高分子であることを特徴としている。
【0036】
h)請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれかの有機導波路型光変調器を光出力部の構成要素とする光通信システムである。
【0037】
【発明の実施の形態】
本実施例で用いるナノチューブは、直径0.5〜100nm程度、長さ100nm〜1mm程度のもので、金属または半導体的な電気特性をもつものである。アスペクト比が非常に大きな金属または半導体のナノチューブが、電極表面に突出しているために、局所的に集中した強い電界を形成できるため、低電圧でも電気光学効果の媒体に及ぼす電界が大きくなることから、屈折率変化が大きくなり、低電圧駆動が可能となる。
【0038】
また、ナノチューブの径は、一般的には数〜数10nm程度の場合が多いため、クラッド層にこのようなナノチューブが進入していてもその光学的な屈折率に及ぼす影響は小さいために、光導波路の損失には大きな影響はない。
【0039】
さらに、ナノチューブが炭素原子からなるカーボンナノチューブは、グラファイト状炭素原子面を丸めた円筒が1個である単層カーボンナノチューブと、グラファイト状炭素原子面を丸めた円筒が数〜数10個入れ子状に配列した多層カーボンナノチューブとがあり、どちらも化学的に非常に安定で、また機械的強度も非常に強い。
【0040】
本実施例で用いる有機高分子は、電気光学効果を示す媒体として、アゾ化合物やスチルベン化合物、アゾメチン化合物、ポリジアセチレン、ポリアセチレン、金属フタロシアニン等の有機化合物を、アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネートおよびこれらの重水素化樹脂、あるいはフッ素化樹脂等の基材に分散もしくは高分子側鎖に結合させた材料を用いることができる。これらの材料は、スピンコート法に代表される塗布法などによって容易に形成される。
【0041】
この光変調器を形成するため、SiO2やSi、GaAsなどの無機材料またはポリイミドなどの有機材料、およびプリント板に用いられているガラスエポキシなどのハイブリッド材料の基板を用いることができる。
【0042】
以下、本発明に係る有機導波路型光変調器の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0043】
<実施例1>
図1は、本発明の有機導波路型光変調器の上面図、図2は、電気光学媒体を横切るA−A’での断面図を示している。ここでは電気光学媒体としてDASTを用いたマッハツェンダー型の光変調器の例を示している。変調電極によって屈折率変化を生じさせる両アームに等しい長さのDAST181,182を選択的に配置している。なお、光導波路全てを電気光学媒体から形成してもよい。
【0044】
Y分岐によって、2つにスプリットされた光は、DASTの最も大きな電気光学定数r11を有効に使うため、光はb軸伝播するように、また、電界はa軸方向に印加され、入射光の偏波面もa軸に平行となるように、結晶方位および入射光を設定している。この例では、結晶のa軸は基板に平行方向となるように制御しているため、電界も基板と平行になるように図2のようなコプレーナ型の配置となっている。
【0045】
さらに変調電極については、両側の変調電極111,113をグランドに落とし、中央の変調電極112にマイクロ波を印加することで、各々のDAST181,182に逆向きの電界を印加することができ、2倍の位相変化を生じさせ、より低電圧駆動が可能となる。また、変調電極112には終端抵抗を付与し、進行波型電極とすることで、容量の影響をなくし、高速な光変調に対応できる電極構造としている。
【0046】
このような変調電極111〜113の表面に導電性のナノチューブ19、ここでは多層カーボンナノチューブが表面に突出している。また、変調電極111〜113の各々は、図2に示すように、ナノチューブを含まない層20と表面にチューブナノチューブ19が突出しているナノチューブを含む電極の2層からなっており、2つの抵抗が異なるためにより抵抗制御が容易で、インピーダンスマッチングがとりやすくなっている。
【0047】
基板16として、ポリイミド基板を用い、その基板16上に、光導波路のクラッド層として働くコア層よりも屈折率の小さなポリイミド樹脂をスピンコートする。さらに、マッハツェンダーの導波路パターンマスクを用いて、フォトリソグラフィーと酸素ガスを用いた反応性イオンエッチングを行い、コア溝を形成した。同じくコアとなる屈折率の大きなポリイミド樹脂を溝部に形成し、低損失な光導波路を形成する。更にリソグラフィーとエッチングを用いて、DASTを選択的に形成する部分だけ、コア溝を再度形成する。
【0048】
ここに、メタノールを溶媒に用いた徐冷法によって、DASTを結晶成長させた。結晶方位については種結晶によって、導波路方向をb軸となるようにした。それとほぼ垂直方向がa軸となるように、コア溝を埋め込んだ形でDAST単結晶が形成された。このときコア溝以外にも、結晶成長したDASTが存在する。
【0049】
そこで、研磨により不要部分のDASTの除去を行う。研磨は、発泡ウレタンパッドIC−1000/SUBAIV(ロデール製)を用いて、シリカの研磨粒子を用いて研磨を行い、コア溝以外のDASTを除去し、DAST181,182を特定のコア溝にのみ残すことができる。
【0050】
ここでは、種結晶を用いた徐冷法でDAST層を形成したが、Appl. Phys.Lett.,Vol.74(1999)635にあるような改良シェア法によってDAST薄膜を形成したり、MOVPE法によって薄膜を形成してもよい。
【0051】
一方、石英ガラス基板上に剥離層を形成し、カーボンナノチューブが突出した変調電極111〜113を形成する。
【0052】
まず、各変調電極の各々は、カーボンナノチューブを含まない層(電極部分)20として、メッキ法にて4μm膜厚のAu膜を形成し、変調電極111〜113とした。ついで、Auメッキ液に多層カーボンナノチューブを混合し調整したメッキ液を用いる。多層カーボンナノチューブは、長さ100nm〜5μm程度のもので、直径は、1,2nm〜50nm程度のものを使っている。
【0053】
上述の多層カーボンナノチューブを含むメッキ液をメッキ槽内で攪拌した後、液温を調整しながら、Au電極を形成したガラス基板を浸漬し、無電解メッキを行った。多層カーボンナノチューブを含むAu層が約2μmの膜厚で形成され、その表面にはカーボンナノチューブ19が突出している。
【0054】
また、無電解メッキを行っているため、カーボンナノチューブは表面に対してランダムな方向を向いて突出している。メッキ法を用いているために、下層Au電極の上面および側面にカーボンナノチューブ19が突出した変調電極111〜113が形成される。この下層のAu電極以外については、カーボンナノチューブを含むAu層がほとんど形成されていないか、もしくは簡単な洗浄により除去できる。
【0055】
ついで、先ほどのDAST181,182を形成した基板16上に、先ほどと同様にクラッド層17となるコア層よりも屈折率の小さな紫外線硬化樹脂をスピンコートし、先のカーボンナノチューブが突出した変調電極111〜113側をスピンコートした樹脂上に張り合わせ、石英ガラス基板側から紫外線を照射して固定する。電気光学媒体であるDAST181,182および光導波路に対して、変調電極111〜113が適切な配置になるようにアライメントを行う。
【0056】
その後、剥離層を除去することによって、石英ガラス基板を剥離し、終端抵抗15を付加し進行波型電極とした。このようにして、カーボンナノチューブ19が変調電極111〜113に突出し、クラッド層17にまで伸びた有機導波路型光変調器を作製した。
【0057】
波長1.3μmのレーザ光を入射しながら、同軸ケーブルを介して変調電極111〜113間に変調信号を入力したところ、約1.5Vと低い駆動電圧で光強度変調ができる。化学的に安定で、機械的強度も強いカーボンナノチューブ19を用いることによって、信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することができる。更に進行波型の変調電極構成をとることでより高速の変調にも対応できる。
【0058】
更に、変調電極111〜113をナノチューブを含む層20とナノチューブを含まない層の2層構造にすることによって、電気抵抗制御が容易になり、インピーダンス整合がとりやすい。電気光学定数がきわめて大きく、かつ誘電率が小さく、有機結晶であるために熱的に安定なDASTを電気光学効果の媒体として用いることによって、より低電圧で高速、かつ信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0059】
ここでは多層カーボンナノチューブを用いたが、単層カーボンナノチューブ、または、電気伝導性のナノチューブでもよい。
【0060】
パターニングの方法としては、フォトリソとエッチングによる半導体微細加工を用いたが、インプリンティングやスタンパ−などの型成形によるもので形成してもよく、DAST部以外のコア層やクラッド層を感光性樹脂によるもので形成してもよい。
【0061】
<実施例2>
図3は、有機導波路型光変調器の断面図である。
上記実施例1と同様にマッハツェンダー型の光変調器であり、電気光学効果の媒体として高分子ポリマーを用いた場合の例を示す。この場合は、マッハツェンダーのアーム部ばかりではなく、Y分岐などの光導波路部分も全てこの高分子ポリマーで形成している。
【0062】
この例では、有機高分子材料の分極方向は同一方向で、下部の変調電極に逆符号の電位を印加することによって、2倍の位相変化を生じさせ、より低電圧駆動が可能となる。このような変調電極の表面に導電性のナノチューブ、ここでは多層カーボンナノチューブが表面に突出している光変調器を形成している。
【0063】
基板21として、表面を熱酸化したシリコンウェハーを用い、その基板21上に、カーボンナノチューブを含まない電極部分として、メッキ法にてシード層として1μm膜厚のAu膜を形成し変調電極221,222とした。
【0064】
ついで、Auメッキ液に多層カーボンナノチューブを混合し調整したメッキ液を作製する。多層カーボンナノチューブは、実施例1と同様のものを用いた。上述の多層カーボンナノチューブを含むメッキ液をメッキ槽内で攪拌した後、液温を調整しながら、Au膜からなる変調電極221,222を形成したSi基板21を浸漬し、電解メッキを行った。電解メッキを行うことで、多層カーボンナノチューブ23がAu電極(変調電極221,222)に垂直に配向した状態で、電極表面に突出したAu層が形成された。
【0065】
その上層に、コア層よりも屈折率の小さなエポキシ系紫外線硬化樹脂をスピンコートし、クラッド層241を形成した。このとき、変調電極221,222の表面から突出したカーボンナノチューブ23はクラッド層241まで伸びた状態になっている。ここで、変調電極221,222の表面に凹凸がある場合には、研磨などにより表面の平坦化を行ってもよい。
【0066】
ついで、PMMAに4−N,Nジエチルアミノ−4−ニトロスチルベンを2%溶解した高分子材料をクラッド層241上にスピンコートし、リソグラフィーとエッチングを行うことで、コアを形成する。
【0067】
ついで、公知技術により、150℃に加熱しながら、コロナ帯電により分極処理を行い、冷却して配向を固定し、電気光学効果を生じさせて電気光学媒体25とする。分極処理に関しては、コロナ帯電のほかに、電極を形成して、直流電解を印加する方法などもある。
【0068】
この上に、先ほどと同様にコア層よりも屈折率の小さなエポキシ系紫外線硬化樹脂をスピンコートし、上層クラッド層242とした。この上に、メッキ法でAu膜を形成し変調電極26とした。
【0069】
波長1.3μmのレーザ光を入射しながら、同軸ケーブルを介して変調電極221,222に異なる位相の変調信号を入力したところ、約3Vとカーボンナノチューブ23がない場合に比べて低い駆動電圧で光強度変調ができる。化学的に安定で、機械的強度も強いカーボンナノチューブを用いることによって、信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0070】
ここでは、電気光学効果を示す媒体として4−N,Nジエチルアミノ−4−ニトロスチルベンを用いたが、アゾ化合物やスチルベン化合物、アゾメチン化合物、ポリジアセチレン、ポリアセチレン、金属フタロシアニン等の有機化合物をアクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネートおよびこれらの重水素化樹脂、あるいはフッ素化樹脂等の基材に分散もしくは高分子側鎖に結合させた有機高分子材料を用いることができる。これらの材料は、スピンコート法に代表される塗布法などによって容易に形成されるため、低コストのデバイスを作製することができる。
【0071】
また、クラッド層242としてエポキシ樹脂を用いたが、ポリイミド樹脂やアクリル酸エステル系樹脂、シリコン樹脂、シアヌレート樹脂などのコア層より屈折率の小さな樹脂を用いて形成することができる。
【0072】
また、多層カーボンナノチューブを用いたが、単層カーボンナノチューブ、または、電気伝導性のナノチューブでもよい。
【0073】
また、パターニングの方法としては、フォトリソとエッチングによる半導体微細加工を用いたが、インプリンティングやスタンパ−などの型成形によるもので形成してもよく、感光性樹脂を用いてもよい。
【0074】
<実施例3>
図4は、有機導波路型光変調器を用いた光通信システムの一例を示す図である。この例は、ガラスもしくはセラミック、もしくは樹脂フィルム等でできたプリント基板上に配置された複数のIC間の光配線を実現したものである。光配線は速い信号線に用いており、遅い信号線は図示していないが電気配線を用いている。
【0075】
光通信システムは、ボード30上のIC35からの電気信号を光信号に変換して出力するための光出力部31、その光信号を伝送するための光伝送路47,および伝送された光信号を受信して電気信号に変換してボード40’上のIC45’に入力するための光入力部41’からなる。
【0076】
光出力部31は、実施例1の4個の有機導波路型光変調器10をアレイ化した光変調器アレイ32と、IC35からの電気信号を処理する電気回路および有機導波路型光変調器アレイを駆動するためのドライバからなる電気信号処理部33と、有機導波路型光変調器10によって光信号を形成する光を発光するための発光素子(図示しない)およびその光を光変調器10まで導波するための光導波路(図示しない)からなっている。
【0077】
一方、光入力部41’は、伝送された信号を受光するための受光素子46’からなる受光素子アレイ42’と、必要に応じて受光素子46’からの信号を増幅するためのアンプとおよび再度もとのビットに変換するための電気回路からなる電気信号処理部43’からなっている。
【0078】
なお、図4では、ボード30上のIC35とボード40’上のIC45’との間で双方向光伝送を可能とするために、ボード30上に、上記光入力部41’と同様な構成の光入力部41(伝送された信号を受光するための受光素子46からなる受光素子アレイ42と、必要に応じて受光素子46からの信号を増幅するためのアンプとおよび再度もとのビットに変換するための電気回路からなる電気信号処理部43)が備えられており、また、ボード40’上に、上記光出力部31と同様な構成の光出力部31’(実施例1の4個の有機導波路型光変調器10’をアレイ化した光変調器アレイ32’と、IC45’からの電気信号を処理する電気回路および有機導波路型光変調器アレイを駆動するためのドライバからなる電気信号処理部33’と、有機導波路型光変調器10’によって光信号を形成する光を発光するための発光素子およびその光を光変調器10’まで導波するための光導波路)が備えられている。
【0079】
また、光伝送路47として、ここではシングルモードの光ファイバを用いた。そのほか、用途に応じて、マルチモードの光ファイバやPOF、また、ボード内光通信においては、石英や樹脂からなる光導波路を用いることができる。
【0080】
なお上記例では、各装置が同一ボード上に光出力部および光入力部の両方を備えており、装置間で双方向の光伝送を可能にした好ましい例ではあるが、本発明はこのような構成に限定される物ではなく、光出力部と光入力部が同一ボード上になくてもかまわないし、逆にその他の光学構成要素があっても何ら問題はない。
【0081】
また、ここでは、IC35とIC45’が、異なるボードすなわちボード30とボード40’に存在している光通信システムを例にあげているが、同一ボード内に存在するようなボード内光インターコネクションのような光通信システムに用いてもかまわない。
【0082】
本発明によれば、ナノチューブが変調電極表面に突出した有機導波路型光変調器を光出力部の構成要素とすることによって、低電圧駆動で、高速、広帯域な光通信システムを提供することができる。
【0083】
【発明の効果】
以下、本発明の効果を請求項毎に述べる。
(1)請求項1における効果
電気光学効果をもつ媒体として有機材料の屈折率を変化させて、光の位相または強度を変調するための変調電極表面に電気伝導性のナノチューブが突出していることによって、局所的に集中した強い電界を形成できるため、低電圧でも電気光学効果による大きな屈折率変化を生じることができ、低電圧駆動が可能な有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0084】
(2)請求項2における効果
変調電極表面に突出している電気伝導性のナノチューブとして、化学的に安定で、機械的強度も強いカーボンナノチューブを用いることによって、局所的に集中した強い電界による低電圧駆動を維持しながら、信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0085】
(3)請求項3における効果
前記光変調器は、干渉により光変調を行う変調器であり、変調電極は、その二つの光路に配置された電気光学効果を示す媒体の分極方向に対して逆向きの電界を印加することによって、2倍の位相変化を生じることができ、より低電圧駆動できる有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0086】
(4)請求項4における効果
電気光学効果の有機媒体の屈折率を制御する変調電極を、進行波型電極にすることによって、局所的に集中した強い電界による低電圧駆動を維持しながら、より高速の有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0087】
(5)請求項5における効果
変調電極をナノチューブを含む層とナノチューブを含まない層の2層構造にすることによって、電気抵抗制御が容易になり、インピーダンス整合がとりやすいために、局所的に集中した強い電界による低電圧駆動を維持しながら、より高速の有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0088】
(6)請求項6における効果
電気光学定数がきわめて大きく、かつ誘電率が小さく、有機結晶であるために熱的に安定な4−N,N−dimethylamino−4’−N−methyl−stilbazolium tosylate(DAST)を電気光学効果の媒体として用いることによって、より低電圧で高速、かつ信頼性の高い有機導波路型光変調器を提供することができる。
【0089】
(7)請求項7における効果
電気光学効果の媒体として、塗布など、膜形成が容易な有機高分子を用いることによって、局所的に集中した強い電界による低電圧駆動を維持しながら、低コストな有機導波路型光変調器を提供することができる
【0090】
(8)請求項8における効果
請求項1から7のいずれかの有機導波路型光変調器を光出力部の構成要素とすることによって、低電圧駆動で、高速、広帯域な光通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る有機導波路型光変調器の上面図である。
【図2】図1の電気光学媒体を横切るA−A’の断面図である。
【図3】有機導波路型光変調器の断面図である。
【図4】有機導波路型光変調器を用いた光通信システムの一例を示す図である。
【図5】4−N,N−dimethylamino−4’−N−methyl−stilbazolium tosylate(DAST)の構造式を示す図である。
【符号の説明】
21:基板、
221,222,26:変調電極、
23:(カーボン)ナノチューブ、
241,242:クラッド層、
25:電気光学媒体、
30,40’:ボード、
31,31’:光出力部、
32,32’:光変調器アレイ、
33,33’:電気信号処理部、
34,34’:電気配線、
35,45’:IC、
41,41’:光入力部、
42,42’:受光素子アレイ、
43,43’:電気信号処理部、
44,44’:電気配線、
46,46’:受光素子、
47:光伝送路。
Claims (8)
- 電気光学効果を有する有機材料をコア層とする光導波路と、該光導波路に電場を印加して光の位相または強度を変調するための変調電極を備えた有機導波路型光変調器において、
前記変調電極の表面に突出した電気伝導性のナノチューブを有することを特徴とする有機導波路型光変調器。 - 前記ナノチューブは、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の有機導波路型光変調器。
- 前記変調電極は、二つの光路に配置された前記電気光学効果を有する有機材料の分極方向に対して逆向きの電界を印加することを特徴とする請求項1または2に記載の有機導波路型光変調器。
- 前記変調電極は、進行波型電極であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機導波路型光変調器。
- 前記変調電極は、ナノチューブを含む層とナノチューブを含まない層の2層からなることを特徴とする請求項4に記載の有機導波路型光変調器。
- 前記電気光学効果を有する有機材料は、有機結晶4−N,N−dimethylamino−4’−N−methyl−stilbazolium tosylate(DAST)であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の有機導波路型光変調器。
- 前記電気光学効果を有する有機材料は、有機高分子であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の有機導波路型光変調器。
- 請求項1から7のいずれかに記載の有機導波路型光変調器を光出力部の構成要素としたことを特徴とする光通信システム。
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---|---|---|---|
JP2003072981A JP2004279865A (ja) | 2003-03-18 | 2003-03-18 | 有機導波路型光変調器および該有機導波路型光変調器を構成要素とする光通信システム |
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JP2007072112A (ja) * | 2005-09-06 | 2007-03-22 | Univ Of Tokyo | 光デバイス |
JP2011169746A (ja) * | 2010-02-18 | 2011-09-01 | Seikoh Giken Co Ltd | 電界センシング装置 |
JP2013535028A (ja) * | 2010-06-15 | 2013-09-09 | ユニヴェルシテ パリ−スュッド オンズ | ナノチューブ電気−光学部品、該部品を組み込んだ光電子または光リンクベースのハイブリッド集積回路、および作成方法 |
-
2003
- 2003-03-18 JP JP2003072981A patent/JP2004279865A/ja active Pending
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