JP2004277606A - インクジェット記録用水性インク - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録装置において用いられるインクジェット記録用水性インクに関し、特に、インク流路が形成されたシートを積層してなる積層型プリンタヘッドを搭載した圧電式インクジェットプリンタに用いるインクジェット記録用水性インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、例えば、静電吸引方式;圧電素子を用いてインクに機械的振動又は変位を与える方式;インクを加熱することにより気泡を発生させ、その時の圧力を利用する方式等のインク吐出方式によりインク小滴を形成し、それらの一部又は全部を紙等の被記録材に付着させて記録を行うものである。
【0003】
このようなインクジェット記録方式に使用するインクジェット記録用水性インクとしては、各種の水溶性染料又は顔料を、水又は水と水溶性有機溶剤とからなる液媒体に溶解又は分散させたものが知られており、かつ、使用されている。
このようなインクジェット記録用水性インクには、長時間にわたって良好な記録を行うために、粘度、表面張力及び密度等の特性値が適当な値であること;インクジェット記録装置のノズル、オリフィスでの目詰まりを防止し、安定して吐出するために熱等により析出物が生じたり、物性値が変化したりしないこと;記録画像が耐水性、耐光性等に優れていること等の条件が必要とされる。
【0004】
一般的なインクジェット記録用水性インクを用いてインクジェットプリンタにより記録を行う際には、滲みのない良好な印字品質を得るために、インクジェット専用紙を用いることも少なくない。しかしながら、近年では、ランニングコスト、環境への配慮からインクジェット専用紙に記録するよりも普通紙への記録需要が高まってきている。また、家庭及びオフィス向け市場では、モノクロよりもカラーでの記録の方が圧倒的に需要が高いことから、カラーインクジェットプリンタが主流となっており、普通紙に良好な印字品質でカラーでの記録を行えることが求められている。
【0005】
しかしながら、普通紙への印字品質は未だ充分でなく、その主な要因としては種々の要因を挙げることができる。ひとつはフェザリングといわれる問題であり、インクが記録紙中に浸透する際に、記録紙の紙繊維に沿って不均一に滲み、画像部のエッジがギザギザになってしまって、シャープな画像部のエッジが得られないというものである。
【0006】
これに対して、従来、フェザリングを防止して印字品質を改善するための一般的な手法としては、表面張力を高くして記録紙の紙繊維へ滲み難いインク組成とする方法が広く知られており、例えば、特許文献1では、インクの表面張力を40mN/m以上にしてインクの記録紙表面に沿った浸透を抑制し、フェザリングを防止する技術が開示されている。しかし、この方法では、インクの紙へのぬれ性が低下し、記録紙上において隣同士のインクが連続せずに不連続な状態となり、インクの広がりが不足した印字品質となる。また、それを回避するには膨大なインク量を吐出することも考えられるが、コスト的な問題やインクの乾燥時間がかかり過ぎる等の新たな問題を呼び起こす。従って、適度な液滴量で、適度にかつ均質に広がるインクが必要である。
【0007】
一方、インクジェット記録用水性インクの浸透性を高めるための一般的な手法としては、浸透剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテルをインクに配合したり、界面活性剤を配合したりすることで、記録紙上での隣同士のインク液滴を連続させ印字品質を改良する方法が広く用いられており、例えば、特許文献2では、インクに特定の浸透剤と界面活性剤とを配合し、表面張力を下げて紙内部への浸透性を高める技術が開示されている。しかし、この方法では、インクが紙繊維に沿って不均一に広がる現象を抑制することができず、画像部のエッジが滲み、フェザリングが起こりやすくなってしまう。
【0008】
このように、従来のインクジェット記録用水性インクでは、普通紙において、フェザリングの防止とインクの広がり不足の防止とを両立することが困難であるという問題があった。
【0009】
また、インクジェットプリンタに新品のインクカートリッジを装着した際に、インクジェット記録用水性インクがプリンタヘッドのインク流路中にスムーズに導入されないと、使用開始時にインクの不吐出という問題が生じることから、インクジェット記録用水性インクには、上述したフェザリング及びインクの広がり不足の防止に加えて、更に、プリンタヘッドのインク流路への初期導入性が優れることも要求される。
【0010】
ところが、近年、インクジェットプリンタ用のプリンタヘッドは小型化が進められており、例えば、圧電素子を用いた圧電式インクジェットプリンタ用のプリンタヘッドとして、インク流路の一部が形成された複数のシートを積層して形成された積層型プリンタヘッドが知られている。この積層型プリンタヘッドは、低コストで小型化を実現するとともに、その内部に狭く複雑な構造のインク流路を形成することができる。しかし、図2に示すように、インク流路14a、14b、14cの内周面に形成された屈曲部15a、15bや積層シート10a、10b、10c間の隙間等に気泡が残留しやすく、インク流路内にインクジェット記録用水性インクをスムーズに導入させることができず、インク流路への初期導入性を満足させることが特に困難であった。なお、図2は、積層型プリンタヘッドの一部拡大断面図である。
【0011】
そこで、インクジェット記録用水性インクのインク流路への初期導入性を向上させる方法として、インクジェット記録用水性インクに界面活性剤を適量添加し、その表面張力を最適値まで下げ、プリンタヘッドのインク流路内壁とのぬれ性を向上させる方法が知られている。
【0012】
しかしながら、インクジェット記録用水性インクに界面活性剤を添加し、表面張力を下げることにより、インク流路へのインクジェット記録用水性インクの初期導入性を向上させる方法では、インクの表面張力が低下すると同時に、記録紙へのぬれ性が高まり、画像部のエッジが滲んでフェザリングが発生する問題があった。
即ち、従来のインクジェット記録用水性インクでは、プリンタヘッド(特に積層型プリンタヘッド)のインク流路への初期導入性とフェザリングの防止とを両立させることが困難であるという問題があった。
【0013】
このように、従来の手法で普通紙に記録した場合、記録紙上でインクのフェザリングやインクの広がり不足が発生したり、プリンタヘッドのインク流路へのインクの初期導入性に問題が生じたりする等の問題が、全て又はいずれかが発生して、満足できる印字品質のものを得られないという問題があった。
【0014】
【特許文献1】
特開平8−259864号公報
【特許文献2】
特開平8−283631号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、インクジェットプリンタに搭載するプリンタヘッドのうち、特に、積層型プリンタヘッドのインク流路へのインクの初期導入性が良好であり、普通紙へ記録してもフェザリング及びインクの広がり不足の発生がないインクジェット記録用水性インクを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、インクジェットプリンタに使用するインクジェット記録用水性インクであって、少なくとも分散着色剤と、プロピレングリコールエーテルと、下記一般式(1)で表される界面活性剤とを含有するインクジェット記録用水性インクである。
【0017】
【化2】
【0018】
一般式(1)中、nは2〜4の整数を表し、R1は炭素数12〜15のアルキル基を表し、MはNa又はトリエタノールアミンを表す。
以下に本発明を詳述する。
【0019】
本発明者らは、鋭意検討した結果、インクジェット記録用水性インクに、少なくとも分散着色剤と、プロピレングリコールエーテルと、上記一般式(1)で表される界面活性剤とを含有させることにより、例えば、その内部に狭く複雑なインク流路が形成された積層型プリンタヘッドを搭載したインクジェットプリンタに使用する場合であっても、インク流路への初期導入性に優れるとともに、普通紙へ記録した際のフェザリング及びインクの広がり不足等を防止することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0020】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、分散着色剤を含有する。
上記分散着色剤としては水相に分散可能なものであれば特に限定されず、例えば、カーボンブラック、無機顔料、有機顔料等を挙げることができる。
上記有機顔料としては特に限定されず、例えば、アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ;ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック昼光蛍光顔料等を挙げることができる。上記無機顔料としては特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化鉄系顔料等を挙げることができる。上記分散着色剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して用いられてもよい。
【0021】
また、上述した着色分散剤は、本発明のインクジェット記録用水性インクに対して特に好ましいものであるが、本発明においては、その他の顔料であっても水相に分散可能なものであれば使用でき、例えば、ポリマーを染料で染着した着色剤等も使用することができる。
【0022】
上記分散着色剤の配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して好ましくは下限が0.1重量%、上限が20重量%であり、より好ましくは下限が0.3重量%、上限が15重量%であり、更に好ましくは下限が0.5重量%、上限が10重量%である。
【0023】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、プロピレングリコールエーテルを含有する。
上記プロピレングリコールエーテルは、その分子構造中に親油性成分である(CHCH3CH2O)骨格を含んでいるため、紙への浸透に優れている。従って、本発明のインクジェット記録用水性インクへの添加量が少量であっても存分にその効果を発揮し、記録紙上でのインクのフェザリングに影響を及ぼすことなく、インクの広がり不足を改善することができる。
【0024】
上記プロピレングリコールエーテルとしては特に限定されず、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等を挙げることができる。
【0025】
本発明のインクジェット記録用水性インクにおいて、上記プロピレングリコールエーテルの含有量は、インクジェット記録用水性インク全量に対して好ましくは下限が0.01重量%、上限が10重量%であり、より好ましくは下限が0.1重量%、上限が3重量%である。0.01重量%未満であると、インクの記録紙への浸透速度が遅く、インクの広がり不足やインクの乾燥時間がかかり過ぎる等の問題が生じることがある。10重量%を超えると、インクの記録紙への浸透度合いが大きくなり過ぎ、記録紙の裏にまでインクが達してしまったり、記録紙上でインクのフェザリング等の問題を生じたりすることがある。
【0026】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、上記一般式(1)で表される界面活性剤を含有する。
上記一般式(1)で表される界面活性剤は、プリンタヘッドのインク流路構成材料とのぬれ性を高める効果があるため、上記プリンタヘッドがその内部に狭く複雑な構造のインク流路が形成された積層型プリンタヘッドであっても、本発明のインクジェット記録用水性インクをスムーズにインク流路内へ導入させることができるものと考えられる。また、プリンタヘッドのインク流路内に気泡が発生又は流入した場合でも、気泡をインク流路外へ素早く放出させることができ、気泡が目詰まりの原因となることを防ぐ作用を持つため、本発明のインクジェット記録用水性インクの安定吐出に効果があると考えられる。
【0027】
上記一般式(1)で表される界面活性剤のうち、市販されているものとしては、例えば、三洋化成工業社製のサンデットEND(アルキル基:炭素数12〜15、エチレンオキサイド付加モル数:3、対イオン:Na)、サンデットEN(アルキル基:炭素数12、エチレンオキサイド付加モル数:2、対イオン:Na)、サンデットET(アルキル基:炭素数12、エチレンオキサイド付加モル数:4、対イオン:トリエタノールアミン);花王社製のエマール20T(アルキル基:炭素数12、エチレンオキサイド付加モル数:3、対イオン:トリエタノールアミン)、エマール20C(アルキル基:炭素数12、エチレンオキサイド付加モル数:3、対イオン:Na)等を挙げることができる。
【0028】
上記一般式(1)で表される界面活性剤の配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して好ましくは下限が0.01重量%、上限が10重量%であり、より好ましくは下限が0.1重量%、上限が3重量%である。0.01重量%未満であると、本発明のインクジェット記録用水性インクのプリンタヘッドのインク流路へのぬれ性が低くなり、初期導入性が悪くなることがある。10重量%を超えると、本発明のインクジェット記録用水性インクの記録紙への浸透度合いが大きくなりすぎ、印字品質に悪影響を及ぼしたり、本発明のインクジェット記録用水性インクがプリンタヘッドのノズル周りを極端にぬらしてしまったりする等の不具合が発生し、結果として本発明のインクジェット記録用水性インクの安定吐出ができにくくなることがある。
【0029】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、上記分散着色剤、グリコールエーテル及び界面活性剤のほか、水を含有する。
上記水は、一般の水ではなく、イオン交換水、蒸留水等の純度の高いものであることが好ましい。
上記水の含有量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全重量に対して、好ましくは下限が10重量%、上限が98重量%であり、より好ましくは下限が30重量%、上限が97重量%であり、更に好ましくは下限が40重量%、上限が95重量%である。
【0030】
本発明のインクジェット記録用水性インクの基本構成は以上の通りであるが、その他従来公知の各種分散剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐防カビ剤等を必要に応じて含有していてもよい。
【0031】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、その液安定性を向上させるために、以下に挙げる材料を含有していてもよい。なお、上記液安定性とは、プリンタヘッドのノズルでの本発明のインクジェット記録用水性インクの乾燥防止(湿潤)効果を有することをいう。
【0032】
上記液安定性を向上させる物質としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール等の多価アルコール類;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物等を挙げることができる。これらの液安定性を向上させる物質は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記液安定性を向上させる物質の配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インクの組成及び所望の特性に応じて広い範囲で決定されるが、40重量%以下であることが好ましく、より好ましくは下限が5重量%、上限が30重量%である。
【0033】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、種々のタイプのプリンタヘッドを搭載したインクジェットプリンタに使用することができるが、特に、その内部に狭く複雑な構造のインク流路が形成された積層型プリンタヘッドを搭載した圧電式インクジェットプリンタに好適に使用することができる。
【0034】
図1は、上記積層型プリンタヘッドの拡大断面図である。
図1に示すように、上記積層型プリンタヘッドは、50〜150μm程度の複数枚の積層(Ni−Fe合金)シート10a、10b、10c、11及び13が積層され相互に接着された積層体の上に、電極と圧電材料層とが交互に積層されて構成された圧電アクチュエータ20が接合された構成である。上記積層体には各積層シートにエッチング等によって形成した開口部を相互に連通させたインク流路14が形成されている。また、最上層の積層シート13には複数のインク室21が形成され、上から第2層の積層シート10aには開口18が形成され、上から第3〜4層の積層シート10b、10cには共通インク室12が形成され、最下層の積層シート11の下面にはノズル孔16を有するノズルプレート22が接着されている。
【0035】
このような構成の積層型プリンタヘッドにおいて、インクジェット記録用水性インクは、インクカートリッジから共通インク室12−開口18−複数のインク室21の順に導入される。そして、圧電アクチュエータ20によってインク室21内のインクジェット記録用水性インクに圧力が付与されると、積層シート10a、10b、10c及び11に穿設したインク流路14(図2に示したインク流路14a、14b及び14c)を経て、ノズル孔16からインクジェット記録用水性インクが吐出される。
インク流路14は、インク室21から離れた位置のノズル孔16にインクジェット記録用水性インクを供給するために、各積層シート10a、10b、10c及び11に形成した開口部を図2に示したインク流路14a、14b、14cのように階段状にずらして構成されている。また、同様に共通インク室12、開口18、インク室21の関係においてもインクの流路に屈曲部等が形成されている。
【0036】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、少なくとも分散着色剤と、プロピレングリコールエーテルと、上記一般式(1)で表される界面活性剤とを含有する。上記プロピレングリコールエーテルは、その分子構造中に親油性成分である(CHCH3CH2O)骨格を含んでいるため、添加量が少量であっても紙への浸透に優れ、記録紙上でのインクのフェザリングに影響を及ぼすことなく、インクの広がり不足を改善するこができる。また、上記一般式(1)で表される界面活性剤の有する界面活性作用により、プリンタヘッドのインク流路とのぬれ性の向上と、該インク流路内に発生又は流入した気泡をインク流路外へ素早く放出することを実現することができる。
従って、本発明のインクジェット記録用水性インクは、図1に示したような狭く複雑な構造のインク流路を有する積層型プリンタヘッドを搭載した圧電式インクジェットプリンタに使用した場合であっても、インク流路への初期導入性が良好であり、また、記録紙上でのインクのフェザリングやインクの広がり不足が発生することもない。
【0037】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
純水46.7重量部、グリセリン24.2重量部、プロピレングリコールエーテルとしてジプロピレングリコールプロピルエーテル(DPP)2重量部、上記一般式(1)で表される界面活性剤としてサンデットEND(三洋化成工業社製、アルキル基:炭素数12〜15、エチレンオキサイド付加モル数:3、対イオン:Na)0.2重量部、防カビ剤としてProxel GXL(s)(アビシア社製、以下GXL(s)と称する)0.2重量部、及び、防錆剤としてVERZONE Crystal # 120K(大和化成社製、以下BTと称する)0.1重量部を10分間攪拌混合し、レットダウン用溶媒を作製した。
【0039】
分散着色剤としてキャボジェット300ブラック(キャボット社製、CAB−O−JET300:固形分濃度15%、残渣は水)26.7重量部に対してレットダウン用溶媒の全量を攪拌しながら添加してレットダウンし、更に30分間攪拌混合した。その後、孔径1μmのメンブランフィルターにて濾過し、インクジェット記録用水性インクを調製した。
各原料の組成を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(実施例2)
上記一般式(1)で表される界面活性剤としてサンデットET(三洋化成工業社製、アルキル基:炭素数12、エチレンオキサイド付加モル数:4、対イオン:トリエタノールアミン)を用いてレットダウン用溶媒を作製したほかは実施例1と同様にして、表2に示した組成のインクジェット記録用水性インクを調製した。
【0042】
【表2】
【0043】
(実施例3)
上記一般式(1)で表される界面活性剤としてエマール20T(花王社製、アルキル基:炭素数12、エチレンオキサイド付加モル数:3、対イオン:トリエタノールアミン)を用いてレットダウン用溶媒を作製したほかは実施例1と同様にして、表3に示した組成のインクジェット記録用水性インクを調製した。
【0044】
【表3】
【0045】
(実施例4)
プロピレングリコールエーテルとしてトリプロピレングリコールノルマルブチルエーテル(TPnB)、上記一般式(1)で表される界面活性剤としてサンデットEN(三洋化成工業社製、アルキル基:炭素数12、エチレンオキサイド付加モル数:2、対イオン:Na)を用いてレットダウン用溶媒を作製したほかは実施例1と同様にして、表4に示した組成のインクジェット記録用水性インクを調製した。
【0046】
【表4】
【0047】
(実施例5)
上記一般式(1)で表される界面活性剤としてエマール20C(花王社製、アルキル基:炭素数12、エチレンオキサイド付加モル数:3、対イオン:Na)を用いてレットダウン用溶媒を作製したほかは実施例4と同様にして、表5に示した組成のインクジェット記録用水性インクを調製した。
【0048】
【表5】
【0049】
(比較例1)
上記一般式(1)で表される界面活性剤を配合せずにレットダウン用溶媒を作製したほかは実施例1と同様にして、表6に示した組成のインクジェット記録用水性インクを調製した。
【0050】
【表6】
【0051】
(比較例2)
プロピレングリコールエーテルを配合せずにレットダウン用溶媒を作製したほかは実施例1と同様にして、表7に示した組成のインクジェット記録用水性インクを調製した。
【0052】
【表7】
【0053】
(比較例3)
上記一般式(1)で表される界面活性剤(三洋化成工業社製、サンデットEND)の代わりに、下記一般式(2)で表されるエソミンS15(ライオンアクゾ社製、アルキル基:大豆アルキル、エチレンオキサイド付加モル数:5)を用いてレットダウン用溶媒を作製したほかは実施例1と同様にして、表8に示した組成のインクジェット記録用水性インクを調製した。
【0054】
【化3】
【0055】
一般式(2)において、R2はアルキル基を表す。
【0056】
【表8】
【0057】
(比較例4)
ジプロピレングリコールプロピルエーテル(DPP)の代わりに、トリエチレングリコールブチルエーテル(BTG)を用いてレットダウン用溶媒を作製したほかは実施例1と同様にして、表9に示した組成のインクジェット記録用水性インクを調製した。
【0058】
【表9】
【0059】
実施例1〜5及び比較例1〜4で調製したインクジェット記録用水性インクを充分に混合攪拌した後、初期導入性の目安とするため、各インクジェット記録用水性インクの粘度と表面張力、及び、プリンタヘッドのインク流路構成部材に対するインクの初期接触角を測定した。
なお、インクの初期接触角は、インク流路構成部材としてエポキシ系接着剤で転写し接着した42合金を用い、接触角計(協和界面化学社製、CA−X型)を用いて測定した。
【0060】
ここで、インクのインク流路への初期導入性は、プリンタヘッドのインク流路構成部材とインクとの初期接触角が低いと良好であり、インク流路構成部材とインクとの初期接触角が75°以下である場合、ぬれ性が高く初期導入性が良好である。また、一般的に接触角はインクの表面張力と相関があり、インクの表面張力が40mN/m以下であることが、初期導入性を良くするためには好ましい。
【0061】
続いて、実施例1〜5及び比較例1〜4で調製したインクジェット記録用水性インクに超音波を照射しながら、真空ポンプを使用してインク容器中を真空状態とし、各実施例及び比較例に係るインクジェット記録用水性インク中に含有された気体を脱気し、記録評価用のインクとした。
得られた実施例及び比較例に係る記録評価用のインクを用いた記録は、インク流路の一部が形成されたシートを積層して作られた積層型プリンタヘッド(図1参照)を搭載した圧電式インクジェットプリンタ(ブラザー工業社製、MFC3100C)を用いてそれぞれ行った。
【0062】
上記記録をする際に、以下の方法により各記録評価用インクの積層型プリンタヘッドのインク流路への初期導入性を評価し、更にフェザリング及びインクの広がりを評価した。
【0063】
インクの初期導入性
インクカートリッジ交換後にパージ(プリンタ本体のポンプによるインクの吸引)を3回行い、全ノズル数に対する吐出ノズルの割合を評価対象とし、以下の基準に基づいて評価した。
◎・・・パージ3回で全ノズル数に対する吐出ノズルの割合が100%であった。
○・・・パージ3回で全ノズル数に対する吐出ノズルの割合が95%以上であった。
△・・・パージ3回で全ノズル数に対する吐出ノズルの割合が90%以上であった。
×・・・パージ3回で全ノズル数に対する吐出ノズルの割合が90%未満であった。
【0064】
フェザリング評価及びインクの広がり評価
背景なしで単色の文字のみの部分と、単色のベタ印字部分とからなる画像サンプルを普通紙(XEROX4200)を使用して記録した。記録した文字の大きさはMicrosoftWord97を用いて文字のサイズを11ポイントに設定した。
上記画像サンプルのフェザリングは、インクジェット記録用水性インクの滲みによるラインの乱れの程度と、文字の鮮明さとにより以下の基準に基づいて評価した。
◎・・・フェザリングがほとんどなく、文字が鮮明である。
○・・・僅かにフェザリングが発生しているが、文字は充分に判読できる。
△・・・明らかにフェザリングが発生しているが、文字は判読できる。
×・・・明らかにフェザリングが発生し、文字の判読も困難である。
【0065】
上記画像サンプルのインクの広がりの評価は、以下の基準に基づいて評価した。
◎・・・インクの広がり不足がほとんどなく、ベタ印字部のインクとインクとの間に隙間が見えない。
○・・・僅かにインクの広がり不足があるが、マクロ的に観察すると、インクとインクとの間に隙間がほとんど見えない。
△・・・僅かに広がり不足があり、マクロ的に観察すると、僅かにインクとインクとの間に隙間が見える。
×・・・明らかに広がり不足があり、マクロ的に観察した場合もインクとインクとの間に隙間が目立つ。
【0066】
総合評価
インクの初期導入性の評価、フェザリング評価及びインクの広がり評価の各項目のうち、最も悪い評価であったものを、そのインクの総合評価結果とした。例えば、インクの初期導入性の評価:×、フェザリング評価:◎、インクの広がり:◎であった場合、印字品質がどんなに良くてもインクの初期導入性が非常に悪いため総合評価は×となる。
結果を表10、表11にまとめて示した。
【0067】
【表10】
【0068】
【表11】
【0069】
以上、各実施例において、本発明のインクジェット記録用水性インクでは、インク流路への初期導入性が良好であり、記録紙上でのインクのフェザリング、広がり不足が低減された良好な記録を得ることができた。一方、比較例においては、インク流路への初期導入性が悪い、若しくは、明らかにフェザリング又は広がり不足が発生しており、充分な印字品質を得られない等満足できる結果は得られなかった。
【0070】
以上のことより、分散着色剤と、プロピレングリコールエーテルと、上記一般式(1)で表される界面活性剤とは、それぞれ単独で使用しても得られる効果は少なく、分散着色剤と、プロピレングリコールエーテルと、上記一般式(1)で表される界面活性剤とを併用することによってプリンタヘッドのインク流路への初期導入性が良好であり、記録紙上でのインクのフェザリング、広がり具合も満足させることができるインクジェット記録用水性インクが得られることが確認できた。
【0071】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成よりなるので、プリンタヘッドのうち、特に、その内部に狭く複雑な構造のインク流路が形成された積層型プリンタヘッドの該インク流路への初期導入性が良好であり、普通紙へ記録してもインクのフェザリング及びインクの広がり不足の発生がないインクジェット記録用水性インクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】積層型プリンタヘッドの拡大断面図である。
【図2】図1に示した積層型プリンタヘッドの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
10a、10b、10c、11、13 積層シート
14、14a、14b、14c インク流路
15a、15b 屈曲部
16 ノズル孔
18 開口
20 圧電アクチュエータ
21 インク室
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