JP2004273365A - 電子線装置及び該装置を用いたデバイス製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】カソードおよびアノードを有する電子銃から電子線を試料に照射する電子線装置において、試料表面に電子線を一様な照射量で照射する。
【解決手段】カソードおよびアノードを有する電子銃から電子線を試料に照射する電子線装置において、電子銃と試料との間に設けた静電偏向器およびまたは電磁偏向器により試料面上の走査を行ない、走査間隔を試料の中央部にて粗く、周辺部にて密となるようにほぼ走査位置の半径に逆比例するようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】カソードおよびアノードを有する電子銃から電子線を試料に照射する電子線装置において、電子銃と試料との間に設けた静電偏向器およびまたは電磁偏向器により試料面上の走査を行ない、走査間隔を試料の中央部にて粗く、周辺部にて密となるようにほぼ走査位置の半径に逆比例するようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子線装置に関し、より詳細には、電子銃から放出される電子線を、試料表面に一様な照射量で高スループットで照射できるようにした電子線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子線装置において、試料に電子線を照射し、試料表面の評価、検査、塗布材料の改質等を行なう場合、試料表面に電子線を一様な照射量(ドーズ)で照射することが必要とされる場合がある。
【0003】
従来の電子線装置では、広いカソード面を有する電子銃から放出される電子線を平行ビームとして8インチのウエハ全面をほぼ一様な照射量で照射する装置があった。しかしながら、従来の電子線装置では、照射されるべき試料が12インチウエハのごとく大型化された場合、電子線強度の一様性を確保することは極めて困難であった。また、電子線装置の真空室の壁が、試料の塗布材料からの放出物で汚染される結果、照射強度の一様性が短時間で損なわれ、このため真空室をしばしば分解して清掃する必要があった。さらに、電子線と中性ガスとの衝突や塗布材料への照射により発生した正イオンがカソードに向け加速される結果、カソードがイオン衝撃によって短時間で劣化するという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の欠点を除去すべくなされたものであって、12インチウエハのごとき大型の試料であっても、一様な照射量で電子線照射を行なうことができ、真空室をしばしば分解清掃する必要が無く、かつカソードの寿命を大幅に伸ばすことができる電子線装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明は、カソードおよびアノードを有する電子銃から放出される電子線を試料上に照射する電子線装置において、電子銃と試料との間に設けた静電偏向器およびまたは電磁偏向器により試料面上の走査を行ない、走査間隔を試料の中央部にて粗く、周辺部にて密となるようにほぼ走査位置の半径に逆比例するようにしたことを特徴とする電子線装置を提供する。
【0006】
上記した電子線装置において、走査ビームの寸法を走査間隔より大きくすることが望ましい。
【0007】
また、照射により発生するイオンビームがカソードに入射しないように、上記した電子線装置において、静電偏向器が所定量の最小偏向量を与えるようにすることが望ましい。
【0008】
また、試料の塗布材料からの放出物で真空室の壁表面が汚染されないように、上記した電子線装置において、試料から見通せる電子線装置の真空室の壁表面の少なくとも一部を、二次電子発生率の小さい材料で形成することがのぞましい。
【0009】
また、本発明は、カソードおよびアノードを有する電子銃から放出される電子線を試料上に照射する電子線装置において、試料から見通せる電子線装置の真空室の壁表面の少なくとも一部を、二次電子発生率の小さい材料で形成したことを特徴とする電子線装置を提供する。
【0010】
上記材料は、カーボンコーティングまたは貴金属コーティングとすることができる。
【0011】
さらに、本発明は、半導体デバイスを製造する方法であって、
a.ウエハに材料をコーティングするステップ、
b.コーティングされたウエハを電子線装置の真空室にローディングするステップ、
c.カソードおよびアノードを有する電子銃から放出される電子線を前記ウエハに向けるステップ、
d.電子銃と試料との間に設けた静電偏向器および/または電磁偏向器により前記ウエハ上の走査をおこなうステップ、
e.走査をおこなったウエハを大気に取り出すステップ、
を有し、前記ステップdにおいて、前記走査間隔はウエハの中央部では粗く、周辺部では密となるように走査することを特徴とする半導体デバイスの製造方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施の形態による電子線装置の主要部を断面図にて示したものである。該実施の形態における電子銃1は、4mmφの電子線放出面を有するLaB6カソード2と、該カソード加熱用のカーボンヒーター3と、これらカソードとカーボンヒーターとを固定する支持体4と、ウェーネルト電極5と、および引出し電極またはアノード6とから構成されている。
【0013】
カソード2は、4mmφと大きな電子線放出面を有するので、数10mAのカソード電流を得るには温度を1500°K程度と低温にでき、LaB6の蒸発速度を十分低くすることができ、このためカソードの寿命は主にイオン衝撃によって左右される。ビーム電流を20mAにした場合、1ミリクーロン/cm2のドーズを与えても12インチウエハを1分以内で照射することができる。ウェーネルト5は、空間電荷効果によりビームが拡がるのを防ぐため、ビームの最外部の軌道と67.5度の角度をなす円錐形に形成されている。アノード6もウェーネルト5とほぼ同じ角度の円錐形状を有する。
【0014】
電子銃1から出てきた電子線は、空間電荷効果によって拡がるので、3枚の電極7,8,9を有する静電レンズ10により集束して、ウエハW上で比較的小寸法のビームになるように絞る。レンズ10の直後には、8極の静電偏向器11と、サドル型電磁偏向器12とを設けてある。電磁偏向器12は、偏向コイル13と強磁性体からなるコア14とを有する。電磁偏向器12の偏向コイル13の内側の真空壁15は電気抵抗の大きいTiで形成し、その厚みを500μmとした。これらの偏向器によって、後述するように電子線は12インチウエハWの全面を一様な照射量で走査することができる。ウエハW近傍の装置外部には、偏向コイル16と強磁性体からなるコア17とを含む電磁偏向器18が設けられ、偏向してきたビーム19の軌道をウエハ表面に塗布された低K樹脂20にほぼ垂直に入射するように偏向されるようになっている。
【0015】
低K樹脂20への照射により発生したハイドロカーボンが、電子線装置の真空室の壁21に付着するのを防止するため、ウエハWから見通せる真空室の壁21には、金や白金のごとき貴金属がコーテイング22してある。金や白金のごとき貴金属は、反応し難いので、真空室の壁にハイドロカーボンが付着するのを防止することができる。また、貴金属の代りに、カーボンのごとき二次電子放出率の小さい低原子番号の材料を真空室の壁に使用してもよい。
【0016】
カソード2を劣化させるイオンビーム23,24は、電子線の通路に沿って発生し、ビームが通っている場所が、電子線の空間電荷によって電位が低くなっているので電子線の通路に沿って集まり、カソード2に向かって加速される。本実施の形態における電子線装置では、イオンビーム23,24がカソード2に向かう際に、カソード2の手前に静電偏向器11が設けられているので、電子銃1から放出された電子線が図の右側19’へ偏向されている時刻には、反対方向に進んできたイオンビームは、左側へ偏向するために23で示したように光軸OAからさらに離れるように偏向するためにカソード2には向かわず、したがって、従来のようにイオン衝撃によってカソードが劣化するおそれが無い。
【0017】
一次電子線が光軸近くの場所を走査している時は、偏向器11,12による偏向量がゼロに近いので、イオンビームがカソードを直撃するおそれがある。このため、本実施の形態の装置では、光軸上を進んできたイオンビームがカソードを直撃せず、24の軌道を取るように、すなわちアノード6またはウェーネルト5に入射するように(図示例ではアノードに入射)、静電偏向器11には常に一定の最小の偏向量を与えるようにしてある。
【0018】
一次電子線にさらに小さい偏向量を与えたい場合には、電磁偏向器12により、静電偏向器11と逆方向の偏向を与えるようにすればよい。すなわち、これによって一次電子線の偏向量はさらに小さくなり光軸に接近するが、イオンは電磁偏向器12ではほとんど偏向されないので、光軸方向へ偏向される量は無視できる程度であり、24の軌道はほとんど変わらない。
【0019】
図2は、上記一次電子線およびイオンビームの偏向とウエハWとの関係、および一次電子線でウエハ表面を一様な照射量で照射するための偏向についての説明図である。
【0020】
本実施の形態における電子線装置では、一次電子線でウエハを照射する場合、静電偏向器11により、例えば31で示したように、一定の半径でウエハW上で円を描くように一次電子線を偏向させ、少しずつ半径を変えながら照射する。この場合、一次電子線の走査間隔は照射位置の半径に逆比例するようにすれば、ウエハ表面を一様な照射量で照射することができる。すなわち、35で示すウエハの中央部では走査間隔を大きく、また、34で示す周辺部で間隔を小さくなるように走査すればよい。
【0021】
また、33に示したように小さい半径の場(光軸に近い領域)を照射したいときは、静電偏向器11による偏向31に加えて、32で示すように、電磁偏向器12による偏向を加えればよい。電磁偏向器12による偏向は、静電偏向器11による半径よりも若干小さい半径で、かつ180°位相が異なるようにすればよい。このとき、一次電子線の走査軌道は、両偏向器からの偏向量によって小さい半径の円軌道33に沿うが、イオンビームの軌道は電磁偏向32によってほとんど影響されないので、図1および図3に示すように、23の軌道を描き、上記したようにアノード6に入射するので、カソードを直撃することは無い。
【0022】
また、一次電子線のビーム寸法は、その強度分布を図2の36で示したように、周辺部34,中央部35のいずれの領域においても、走査間隔よりもかなり広い半径の強度分布となるようにしてある。例えば、10〜20mmφのビームを作り、この寸法より十分小さい間隔でウエハを走査する。このようなビーム寸法の一次電子線を少しずつ半径を変えながら照射することにより、ウエハ全面を一様な照射量で照射することができる。
【0023】
走査間隔をどの程度にすればよいかは、強度分布を与えてシュミレーションによって求めてもよいし、実測によって一様な照射強度が得られる走査間隔を求めてもよい。
【0024】
【実施例】
図4に本発明による電子線装置を多層配線を有するデバイス製造に適用した場合のフローチャートを示す。
【0025】
前工程にてトランジスターアレーを完成したウエハに低K樹脂を塗布した後(ステップ100,101)、本発明の電子線装置で電子線を照射することにより低K樹脂をキュアした(ステップ102)。キュア後絶縁層の厚みの変化が規定値より大きい場合はCMP(化学機械研磨)で研磨し、平坦にする必要がある(ステップ103)。
【0026】
その後、ビア穴を形成し、そのビア穴に金属を埋め込み、メタル層を形成し、リソグラフィー工程により配線を形成した(ステップ104,105,106)。これらの工程を多層配線の層数だけ繰り返した後、ダイシング等からなる後工程へ送る(ステップ107,108)。
【0027】
本発明による電子線装置をステップ102の低K樹脂のキュアに適用することにより、デバイス製造において低K樹脂を一様な照射量で照射することができる。
【0028】
なお、上記実施の形態は、とくにウエハ上に塗布された低K樹脂の電子線照射について記載したが、本発明はこれに限らず、試料表面の評価、検査、処理、分析等試料表面に電子線を一様な照射量で照射する用途に適用できる。
【0029】
また、本発明は、次のステップからなる半導体デバイスの製造方法に適用することができる。
a.ウエハに材料をコーティングするステップ、
b.コーティングされたウエハを電子線装置の真空室にローディングするステップ、
c.カソードおよびアノードを有する電子銃から放出される電子線を前記ウエハに向けるステップ、
d.電子銃と試料との間に設けた静電偏向器および/または電磁偏向器により前記ウエハ上の走査をおこなうステップ、
e.走査をおこなったウエハを大気に取り出すステップ、
を有し、前記ステップdにおいて、前記走査間隔はウエハの中央部では粗く、周辺部では密となるように走査することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば次のような作用効果が得られる。
1)12インチウエハのごとき比較的大型の試料であっても、一様な照射量で照射することができる。
【0031】
2)比較的小寸法(10〜20mmφ)のビームを作り、この寸法より十分小さい間隔でウエハ面を走査するようにすることにより、一様な照射量で照射することができる。
【0032】
3)走査用の偏向器より試料側で発生したイオンは、ウェーネルト電極やアノードに入射してカソードには入射しないので、カソードの寿命を大幅に伸ばすことができる。
【0033】
4)カソード寸法を大きくしてビーム電流を20mA程度にすることができるので、1ミリクーロン/cm2のドーズを与えても12インチウエハを1分以内で照射することができる。
【0034】
5)ウエハから見通せる真空室の壁は、カーボンコーティングのような二次電子放出率の小さい材料、あるいは反応しにくい貴金属でコーティングされているので、真空室の壁が絶縁物が汚染されて、ビームの不安定を生ずることが無い。また、真空室の壁が汚染されないので、真空室をしばしば分解清掃する必要が無い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による電子線装置の主要部を示す断面図である。
【図2】一次電子線およびイオンビームの偏向とウエハとの関係、および一次電子線でウエハ表面を一様な照射量で照射するための偏向についての説明図である。
【図3】イオンビームの入射方向から電子銃側を見た平面図である。
【図4】本発明による電子線装置を多層配線を有するデバイス製造に適用した場合のフローチャートを示す。
【符号の説明】
1:電子銃
2:カソード
5:ウェーネルト
6:アノード
10:静電レンズ
11:静電偏向器
12:電磁偏向器
18:電磁偏向器
19,19a:電子線
20:低K樹脂
21:真空室の壁
22:コーティング
23,24:イオンビーム
W:ウエハ
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子線装置に関し、より詳細には、電子銃から放出される電子線を、試料表面に一様な照射量で高スループットで照射できるようにした電子線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子線装置において、試料に電子線を照射し、試料表面の評価、検査、塗布材料の改質等を行なう場合、試料表面に電子線を一様な照射量(ドーズ)で照射することが必要とされる場合がある。
【0003】
従来の電子線装置では、広いカソード面を有する電子銃から放出される電子線を平行ビームとして8インチのウエハ全面をほぼ一様な照射量で照射する装置があった。しかしながら、従来の電子線装置では、照射されるべき試料が12インチウエハのごとく大型化された場合、電子線強度の一様性を確保することは極めて困難であった。また、電子線装置の真空室の壁が、試料の塗布材料からの放出物で汚染される結果、照射強度の一様性が短時間で損なわれ、このため真空室をしばしば分解して清掃する必要があった。さらに、電子線と中性ガスとの衝突や塗布材料への照射により発生した正イオンがカソードに向け加速される結果、カソードがイオン衝撃によって短時間で劣化するという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の欠点を除去すべくなされたものであって、12インチウエハのごとき大型の試料であっても、一様な照射量で電子線照射を行なうことができ、真空室をしばしば分解清掃する必要が無く、かつカソードの寿命を大幅に伸ばすことができる電子線装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明は、カソードおよびアノードを有する電子銃から放出される電子線を試料上に照射する電子線装置において、電子銃と試料との間に設けた静電偏向器およびまたは電磁偏向器により試料面上の走査を行ない、走査間隔を試料の中央部にて粗く、周辺部にて密となるようにほぼ走査位置の半径に逆比例するようにしたことを特徴とする電子線装置を提供する。
【0006】
上記した電子線装置において、走査ビームの寸法を走査間隔より大きくすることが望ましい。
【0007】
また、照射により発生するイオンビームがカソードに入射しないように、上記した電子線装置において、静電偏向器が所定量の最小偏向量を与えるようにすることが望ましい。
【0008】
また、試料の塗布材料からの放出物で真空室の壁表面が汚染されないように、上記した電子線装置において、試料から見通せる電子線装置の真空室の壁表面の少なくとも一部を、二次電子発生率の小さい材料で形成することがのぞましい。
【0009】
また、本発明は、カソードおよびアノードを有する電子銃から放出される電子線を試料上に照射する電子線装置において、試料から見通せる電子線装置の真空室の壁表面の少なくとも一部を、二次電子発生率の小さい材料で形成したことを特徴とする電子線装置を提供する。
【0010】
上記材料は、カーボンコーティングまたは貴金属コーティングとすることができる。
【0011】
さらに、本発明は、半導体デバイスを製造する方法であって、
a.ウエハに材料をコーティングするステップ、
b.コーティングされたウエハを電子線装置の真空室にローディングするステップ、
c.カソードおよびアノードを有する電子銃から放出される電子線を前記ウエハに向けるステップ、
d.電子銃と試料との間に設けた静電偏向器および/または電磁偏向器により前記ウエハ上の走査をおこなうステップ、
e.走査をおこなったウエハを大気に取り出すステップ、
を有し、前記ステップdにおいて、前記走査間隔はウエハの中央部では粗く、周辺部では密となるように走査することを特徴とする半導体デバイスの製造方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施の形態による電子線装置の主要部を断面図にて示したものである。該実施の形態における電子銃1は、4mmφの電子線放出面を有するLaB6カソード2と、該カソード加熱用のカーボンヒーター3と、これらカソードとカーボンヒーターとを固定する支持体4と、ウェーネルト電極5と、および引出し電極またはアノード6とから構成されている。
【0013】
カソード2は、4mmφと大きな電子線放出面を有するので、数10mAのカソード電流を得るには温度を1500°K程度と低温にでき、LaB6の蒸発速度を十分低くすることができ、このためカソードの寿命は主にイオン衝撃によって左右される。ビーム電流を20mAにした場合、1ミリクーロン/cm2のドーズを与えても12インチウエハを1分以内で照射することができる。ウェーネルト5は、空間電荷効果によりビームが拡がるのを防ぐため、ビームの最外部の軌道と67.5度の角度をなす円錐形に形成されている。アノード6もウェーネルト5とほぼ同じ角度の円錐形状を有する。
【0014】
電子銃1から出てきた電子線は、空間電荷効果によって拡がるので、3枚の電極7,8,9を有する静電レンズ10により集束して、ウエハW上で比較的小寸法のビームになるように絞る。レンズ10の直後には、8極の静電偏向器11と、サドル型電磁偏向器12とを設けてある。電磁偏向器12は、偏向コイル13と強磁性体からなるコア14とを有する。電磁偏向器12の偏向コイル13の内側の真空壁15は電気抵抗の大きいTiで形成し、その厚みを500μmとした。これらの偏向器によって、後述するように電子線は12インチウエハWの全面を一様な照射量で走査することができる。ウエハW近傍の装置外部には、偏向コイル16と強磁性体からなるコア17とを含む電磁偏向器18が設けられ、偏向してきたビーム19の軌道をウエハ表面に塗布された低K樹脂20にほぼ垂直に入射するように偏向されるようになっている。
【0015】
低K樹脂20への照射により発生したハイドロカーボンが、電子線装置の真空室の壁21に付着するのを防止するため、ウエハWから見通せる真空室の壁21には、金や白金のごとき貴金属がコーテイング22してある。金や白金のごとき貴金属は、反応し難いので、真空室の壁にハイドロカーボンが付着するのを防止することができる。また、貴金属の代りに、カーボンのごとき二次電子放出率の小さい低原子番号の材料を真空室の壁に使用してもよい。
【0016】
カソード2を劣化させるイオンビーム23,24は、電子線の通路に沿って発生し、ビームが通っている場所が、電子線の空間電荷によって電位が低くなっているので電子線の通路に沿って集まり、カソード2に向かって加速される。本実施の形態における電子線装置では、イオンビーム23,24がカソード2に向かう際に、カソード2の手前に静電偏向器11が設けられているので、電子銃1から放出された電子線が図の右側19’へ偏向されている時刻には、反対方向に進んできたイオンビームは、左側へ偏向するために23で示したように光軸OAからさらに離れるように偏向するためにカソード2には向かわず、したがって、従来のようにイオン衝撃によってカソードが劣化するおそれが無い。
【0017】
一次電子線が光軸近くの場所を走査している時は、偏向器11,12による偏向量がゼロに近いので、イオンビームがカソードを直撃するおそれがある。このため、本実施の形態の装置では、光軸上を進んできたイオンビームがカソードを直撃せず、24の軌道を取るように、すなわちアノード6またはウェーネルト5に入射するように(図示例ではアノードに入射)、静電偏向器11には常に一定の最小の偏向量を与えるようにしてある。
【0018】
一次電子線にさらに小さい偏向量を与えたい場合には、電磁偏向器12により、静電偏向器11と逆方向の偏向を与えるようにすればよい。すなわち、これによって一次電子線の偏向量はさらに小さくなり光軸に接近するが、イオンは電磁偏向器12ではほとんど偏向されないので、光軸方向へ偏向される量は無視できる程度であり、24の軌道はほとんど変わらない。
【0019】
図2は、上記一次電子線およびイオンビームの偏向とウエハWとの関係、および一次電子線でウエハ表面を一様な照射量で照射するための偏向についての説明図である。
【0020】
本実施の形態における電子線装置では、一次電子線でウエハを照射する場合、静電偏向器11により、例えば31で示したように、一定の半径でウエハW上で円を描くように一次電子線を偏向させ、少しずつ半径を変えながら照射する。この場合、一次電子線の走査間隔は照射位置の半径に逆比例するようにすれば、ウエハ表面を一様な照射量で照射することができる。すなわち、35で示すウエハの中央部では走査間隔を大きく、また、34で示す周辺部で間隔を小さくなるように走査すればよい。
【0021】
また、33に示したように小さい半径の場(光軸に近い領域)を照射したいときは、静電偏向器11による偏向31に加えて、32で示すように、電磁偏向器12による偏向を加えればよい。電磁偏向器12による偏向は、静電偏向器11による半径よりも若干小さい半径で、かつ180°位相が異なるようにすればよい。このとき、一次電子線の走査軌道は、両偏向器からの偏向量によって小さい半径の円軌道33に沿うが、イオンビームの軌道は電磁偏向32によってほとんど影響されないので、図1および図3に示すように、23の軌道を描き、上記したようにアノード6に入射するので、カソードを直撃することは無い。
【0022】
また、一次電子線のビーム寸法は、その強度分布を図2の36で示したように、周辺部34,中央部35のいずれの領域においても、走査間隔よりもかなり広い半径の強度分布となるようにしてある。例えば、10〜20mmφのビームを作り、この寸法より十分小さい間隔でウエハを走査する。このようなビーム寸法の一次電子線を少しずつ半径を変えながら照射することにより、ウエハ全面を一様な照射量で照射することができる。
【0023】
走査間隔をどの程度にすればよいかは、強度分布を与えてシュミレーションによって求めてもよいし、実測によって一様な照射強度が得られる走査間隔を求めてもよい。
【0024】
【実施例】
図4に本発明による電子線装置を多層配線を有するデバイス製造に適用した場合のフローチャートを示す。
【0025】
前工程にてトランジスターアレーを完成したウエハに低K樹脂を塗布した後(ステップ100,101)、本発明の電子線装置で電子線を照射することにより低K樹脂をキュアした(ステップ102)。キュア後絶縁層の厚みの変化が規定値より大きい場合はCMP(化学機械研磨)で研磨し、平坦にする必要がある(ステップ103)。
【0026】
その後、ビア穴を形成し、そのビア穴に金属を埋め込み、メタル層を形成し、リソグラフィー工程により配線を形成した(ステップ104,105,106)。これらの工程を多層配線の層数だけ繰り返した後、ダイシング等からなる後工程へ送る(ステップ107,108)。
【0027】
本発明による電子線装置をステップ102の低K樹脂のキュアに適用することにより、デバイス製造において低K樹脂を一様な照射量で照射することができる。
【0028】
なお、上記実施の形態は、とくにウエハ上に塗布された低K樹脂の電子線照射について記載したが、本発明はこれに限らず、試料表面の評価、検査、処理、分析等試料表面に電子線を一様な照射量で照射する用途に適用できる。
【0029】
また、本発明は、次のステップからなる半導体デバイスの製造方法に適用することができる。
a.ウエハに材料をコーティングするステップ、
b.コーティングされたウエハを電子線装置の真空室にローディングするステップ、
c.カソードおよびアノードを有する電子銃から放出される電子線を前記ウエハに向けるステップ、
d.電子銃と試料との間に設けた静電偏向器および/または電磁偏向器により前記ウエハ上の走査をおこなうステップ、
e.走査をおこなったウエハを大気に取り出すステップ、
を有し、前記ステップdにおいて、前記走査間隔はウエハの中央部では粗く、周辺部では密となるように走査することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば次のような作用効果が得られる。
1)12インチウエハのごとき比較的大型の試料であっても、一様な照射量で照射することができる。
【0031】
2)比較的小寸法(10〜20mmφ)のビームを作り、この寸法より十分小さい間隔でウエハ面を走査するようにすることにより、一様な照射量で照射することができる。
【0032】
3)走査用の偏向器より試料側で発生したイオンは、ウェーネルト電極やアノードに入射してカソードには入射しないので、カソードの寿命を大幅に伸ばすことができる。
【0033】
4)カソード寸法を大きくしてビーム電流を20mA程度にすることができるので、1ミリクーロン/cm2のドーズを与えても12インチウエハを1分以内で照射することができる。
【0034】
5)ウエハから見通せる真空室の壁は、カーボンコーティングのような二次電子放出率の小さい材料、あるいは反応しにくい貴金属でコーティングされているので、真空室の壁が絶縁物が汚染されて、ビームの不安定を生ずることが無い。また、真空室の壁が汚染されないので、真空室をしばしば分解清掃する必要が無い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による電子線装置の主要部を示す断面図である。
【図2】一次電子線およびイオンビームの偏向とウエハとの関係、および一次電子線でウエハ表面を一様な照射量で照射するための偏向についての説明図である。
【図3】イオンビームの入射方向から電子銃側を見た平面図である。
【図4】本発明による電子線装置を多層配線を有するデバイス製造に適用した場合のフローチャートを示す。
【符号の説明】
1:電子銃
2:カソード
5:ウェーネルト
6:アノード
10:静電レンズ
11:静電偏向器
12:電磁偏向器
18:電磁偏向器
19,19a:電子線
20:低K樹脂
21:真空室の壁
22:コーティング
23,24:イオンビーム
W:ウエハ
Claims (7)
- カソードおよびアノードを有する電子銃から放出される電子線を試料上に照射する電子線装置において、電子銃と試料との間に設けた静電偏向器およびまたは電磁偏向器により試料面上の走査を行ない、走査間隔を試料の中央部にて粗く、周辺部にて密となるようにほぼ走査位置の半径に逆比例するようにしたことを特徴とする電子線装置。
- 請求項1に記載した電子線装置において、走査ビームの寸法を走査間隔より大きくしたことを特徴とする電子線装置。
- 請求項1または2に記載の電子線装置において、静電偏向器が所定量の最小偏向量を与えるようにしたことを特徴とする電子線装置。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の電子線装置において、試料から見通せる電子線装置の真空室の壁表面の少なくとも一部を、二次電子発生率の小さい材料で形成したことを特徴とする電子線装置。
- カソードおよびアノードを有する電子銃から放出される電子線を試料上に照射する電子線装置において、試料から見通せる電子線装置の真空室の壁表面の少なくとも一部を、二次電子発生率の小さい材料で形成したことを特徴とする電子線装置。
- 前記材料は、カーボンコーティングまたは貴金属コーティングからなることを特徴とする電子線装置。
- 半導体デバイスを製造する方法であって、
a.ウエハに材料をコーティングするステップ、
b.コーティングされたウエハを電子線装置の真空室にローディングするステップ、
c.カソードおよびアノードを有する電子銃から放出される電子線を前記ウエハに向けるステップ、
d.電子銃と試料との間に設けた静電偏向器および/または電磁偏向器により前記ウエハ上の走査をおこなうステップ、
e.走査をおこなったウエハを大気に取り出すステップ、
を有し、前記ステップdにおいて、前記走査間隔はウエハの中央部では粗く、周辺部では密となるように走査することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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-
2003
- 2003-03-11 JP JP2003065299A patent/JP2004273365A/ja active Pending
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