JP2004269841A - 導電性ポリピロール薄膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記工程を含むことを特徴とする電気伝導性高分子薄膜の製造方法であって、ピロールをプラズマ重合させて作製した薄膜に、真空雰囲気下でアルキルベンゼンスルホン酸等からなるドーパントを導入することを特徴とする、高い電気伝導性を有する、高密度で、均質な高分子薄膜の製造方法、該方法により作製される、室温、空気中での導電率が10−6Scm−1以上である導電性薄膜、上記導電性薄膜を構成要素として含む導電性部材、及びVOCガスセンサ等の化学センサ部材。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、VOCガスに対して高感度に、かつ選択的に応答するセンサ素子材料やエレクトロデバイス材料等として有用な新規導電性ポリピロール薄膜及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、ピロールをプラズマ重合させて作製した薄膜に、真空雰囲気下でアルキルベンゼンスルホン酸からなるドーパントを導入することにより、ドライプロセスによる簡便な方法で、緻密で、かつ膜厚が均一で、高品質の電気伝導性高分子薄膜を製造する方法、該方法により作製される導電性薄膜、及び該導電性薄膜を利用した導電性部材及び化学センサ部材に関するものである。
本発明は、エレクトロデバイス材料として使用しうる高品質の導電性薄膜を簡便なプロセスで製造することを可能とする新規導電性高分子薄膜の製造方法、及びその製品、特に、当該技術分野で実用化が強く求められている、シックハウス症候群の原因物質のVOCガスに対する選択的、かつ高感度な応答特性を有する高性能VOCガスセンサ等の化学センサ部材を提供するものとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
電気伝導性高分子は、その高い導電性により、電極材料、導電性薄膜、コンデンサ、各種センサ等への応用が期待できることから、従来、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の電子共役系高分子に、電子供与性あるいは電子受容性化合物をドーパントとして添加した導電性高分子材料の開発が活発に行われている。この中で、ポリピロールは、高い電気伝導性を有し、空気中で安定なため、電解コンデンサの電解質材料として実用化されており、特に注目される物質である。更に、近年、導電性ポリピロールを用いた電解効果トランジスタ等のエレクトロニクスデバイス、あるいは太陽電池への応用が検討されているが、これらの製品は、競合商品を凌駕する特性までには至らず、実用化されていないのが現状である。
【0003】
その主な原因は、これらの応用に供しうる高品質・高安定性の導電性ポリピロール膜の製造方法が確立されていないことにある。ポリピロールの主な重合法は、電解重合法と化学重合法の二つに大別される。これまで、ポリピロール膜は、主に、電解重合法により合成されてきた。しかし、この技術では、大面積の膜を合成するためには、対応する大きな電極が必要であると共に、均一な厚さを持つ膜を合成することは困難であった。また、表面の平滑性に乏しく、凹凸が存在するため、エレクトロニクスデバイスとして用いる場合に、特定の箇所で過電流が流れるなどの問題が発生し、電子的機能を制御することを困難にしていた。
【0004】
一方、化学重合法では、ポリピロールは、粉末として得られ、これらは、一般に、溶媒に不溶であるため、フィルムや膜には成形できない。これまでに、ピロールモノマーの改質(例えば、特許文献1参照)、あるいは適切なドーパントの共存下での重合(例えば、特許文献2参照)により、可溶性のポリピロールが合成されて、キャスティングによりフィルム化されている。しかし、これらの製品は、導電性や膜厚の均質性の点で、エレクトロニクスデバイスへ供しうる特性を有するには至っていない。更には、これらのプロセスは、大量の有機溶媒を用いるため、既存の半導体プロセスとの融合が困難であり、このことが、半導体との集積化による高機能化の妨げとなっている。
【0005】
一方、プラズマ重合法は、高分子薄膜の形成方法として広く知られており、各種高分子薄膜の実用化研究も進められている。しかしながら、導電性高分子薄膜に注目すれば、従来、ピロールのプラズマ重合膜に、ヨウ素を気相ドーピングすることで導電性高分子膜を合成した例が報告されているが(非特許文献1参照)、その導電率は、10−8Scm−1以下にとどまっている。このように、従来、導電性ポリピロール膜の製造方法が種々検討されているが、高品質・高安定性の導電性ポリピロール膜の製造方法は未だ確立されておらず、当該技術分野では、そのような導電性ポリピロール膜を製造しうる新しい技術を開発することが強く求められていた。
【0006】
更に、最近、シックハウス症候群の原因物質として、揮発性有機化合物のVOCガスが注目されており、それらの対策が社会的ニーズとなっている中で、それを検知するためのセンサの開発が種々検討されている。しかし、これまでのものは当該VOCガスに対して高い選択性と高い感度を示す高性能のVOCガスセンサとして十分ではなく、当該技術分野では、その製品開発が強く求められていた。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−224207号公報
【特許文献2】
特表平10−507225号公報
【非特許文献1】
Thin Solid Films, 342, 119−126 (1999)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、優れた特性を有する導電性高分子膜を簡便なプロセスで製造する方法を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、ピロールをプラズマ重合させて作製した薄膜に、真空雰囲気下でドーパントを導入する方法を採用することにより、高密度で均質な高分子薄膜を得ることができ、得られた薄膜は、高い電気伝導性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、溶媒を用いないドライプロセスにより、高い導電性を有する高品質・高安定性の導電性ポリピロール薄膜を効率よく製造する方法、その導電性ポリピロール薄膜、及び当該材料を構成要素として含む導電性部材、更にはVOCガスに対する選択的・かつ高感度な応答特性を有するVOCガスセンサ等の化学センサ部材を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)重合膜中にドーパントを導入して導電性高分子薄膜を製造する方法であって、ピロールをプラズマ重合することにより作製した高分子薄膜に、真空雰囲気下でアルキルベンゼンスルホン酸からなるドーパントを導入することを特徴とする導電性高分子薄膜の製造方法。
(2)前記ドーパントが、低級アルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする前記(1)記載の導電性薄膜の製造方法。
(3)前記ドーパントが、加熱時に分解せず沸点を有するアルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする前記(1)記載の導電性薄膜の製造方法。
(4)ピロールをプラズマ重合することにより作製した高分子薄膜に、真空雰囲気下でアルキルベンゼンスルホン酸からなるドーパントを導入したことを特徴とする導電性高分子薄膜。
(5)前記ドーパントが、低級アルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする前記(4)記載の導電性薄膜。
(6)前記ドーパントが、加熱時に分解せず沸点を有するアルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする前記(4)記載の導電性薄膜。
(7)室温、空気中での導電率が10−6Scm−1以上であることを特徴とする前記(4)から(6)のいずれかに記載の導電性薄膜。
(8)前記(7)記載の導電性薄膜を構成要素として含むことを特徴とする導電性部材。
(9)前記(7)記載の導電性薄膜を構成要素として含むことを特徴とする化学センサ部材。
(10)VOCガスに対して選択的、かつ高感度な応答特性を有するVOCガスセンサであることを特徴とする前記(9)記載の化学センサ部材。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、上述のように、重合膜中にドーパントを導入して導電性高分子薄膜を製造する方法であって、ピロールをプラズマ重合することにより作製した高分子薄膜に、真空雰囲気下でアルキルベンゼンスルホン酸からなるドーパントを導入することにより導電性高分子薄膜を製造することを特徴とするものである。本発明において、導電性高分子薄膜を製造するに当たっての原料モノマーとしては、ピロールが用いられる。これは、複素五員環化合物であり、化学式C4 NH5 で表される。
【0011】
本発明におけるピロールのプラズマ重合は、従来公知のプラズマ重合装置を用いて行うことができる。プラズマ重合の条件については、特に制限されることはないが、好適には、例えば、10〜100Paの真空下において、通常、13.56MHzの高周波を印加してプラズマ放電させて、プラズマ重合反応が行われる。放電出力は、重合装置により異なるが、製膜速度あるいは重合膜の構造に鑑みて、通常、5〜150W、好ましくは10〜120W程度である。重合時間は、特に制限されることはなく、重合時間が長くなると、膜厚の厚い膜が合成されるため、必要な膜厚に応じて、適宜選択することができる。
【0012】
プラズマ重合反応は、プラズマで活性化されたラジカル種が活性中心となって重合反応が開始される。放電により発生した電子がモノマーの炭素―炭素等の化学結合を解離してラジカルを発生させ、このラジカルが再結合することで架橋構造の重合体が形成される。このため、当該重合法によれば、モノマーには二重結合や縮合重合に必要な官能基を必ずしも必要としないという特徴がある。生成した重合体も、化学重合法で合成される鎖状ポリマーと異なり、分岐性の高い架橋構造を取るため、機械的特性に優れた高分子薄膜を製造することができる。モノマーの化学結合の解離と重合体における架橋構造は、主に放電出力に依存する。
【0013】
本発明におけるポリピロールの場合、五員環構造のピロールモノマーは、化学結合の解離により環構造が破れ、3次元的な架橋構造をもつ重合膜を生成するものと推定されるが、放電出力が大きいほどその程度が大きいことが、赤外スペクトル及び元素分析より示唆された。図1に、放電出力110Wで作製した重合膜と、化学重合法で合成したポリピロール膜の赤外吸収スペクトルを示す。化学重合法で合成したポリピロール膜で見られる五員環構造に起因する吸収ピークが、プラズマ重合膜では観察されず、環構造が破れていることが分かる。上記したプラズマ重合法によれば、膜厚の均一な重合膜が、各種基板材料上に形成される。本発明で用いる基板材料としては、上記出力程度のプラズマ中で安定であるものであれば、特に制限はなく、例えば、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、アルミナ、シリコン、各種プラスチック、各種金属等を選択することができる。
【0014】
本発明では、上記ピロールの重合膜とドーパントをガラス管中に真空封入し、これを適切な温度で熱処理する方法により、ドーパントを重合膜中に導入する。このように、本発明では、ドーパントを気相で導入するため、ドーパント自身が熱的に分解せず、かつ高い蒸気圧を有する必要がある。また、ピロールの重合膜に導電性を付与するためには、電子アクセプターとしての機能を持つドーパントを選択する必要がある。そのようなドーパントの一例として、好適には、例えば、エチルベンゼンスルホン酸に代表される低級アルキルベンゼンスルホン酸が挙げられる。後述の実施例には示していないが、アルキル基がメチルあるいはプロピル等のベンゼンスルホン酸も同様にドーパントとして使用することが可能である。しかしながら、例えば、長いアルキル基を有するドデシルベンゼンスルホン酸は、沸点を持たず、熱分解するため、本発明の方法には適していないと考えられる。本発明では、加熱時に分解せず沸点を有するアルキルベンゼンスルホン酸が用いられる。
【0015】
ドーパントを導入するための処理温度、処理時間などの処理条件は、使用するピロールの重合膜の膜厚、使用するドーパントの種類などにより適宜設定することができる。ドーパントとして、例えば、エチルベンゼンスルホン酸を使用した場合、処理温度は、通常、100〜170℃程度、好ましくは120〜150℃程度である。処理時間は、10〜120時間程度、好ましくは20〜60時間程度である。加熱手段は、特に限定されず、例えば、電気加熱炉、ガス加熱炉などの任意の手段を採用することができる。当該処理中、エチルベンゼンスルホン酸は、ガラス封管中で気化し、ピロールの重合膜と反応することでドーピングされる。
【0016】
本発明の方法によって得られる導電性高分子薄膜は、電子顕微鏡観察の結果、高密度で、緻密な膜であり、膜厚は、プラズマ重合時の放電出力及び反応時間により異なるが、通常、0.1〜5μm程度の範囲内となり、特に、0.5〜1μm程度の範囲のものが好適に得られる。ドーピング処理後の高分子薄膜は、導電性が良好であり、膜と平行方向に直流4端子法で測定した室温、空気中の電気伝導率は、合成条件などによって異なるが、通常、10−6Scm−1以上となり、より好ましくは10−5Scm−1以上となる。本発明により、上記導電性高分子薄膜を任意の基材に形成することが可能であり、それにより、上記良好な導電性を有する高分子薄膜を構成要素として含む、例えば、電極、電解質、エレクトロニクスデバイス、コンデンサ、各種センサに代表されるあらゆる種類の導電性部材を提供することができる。
【0017】
特に、上記導電性高分子薄膜を用いて作製した化学センサは、シックハウス症候群の原因物質として注目されている、揮発性有機化合物のVOCガスに対して高い選択性と高い感度を有し、VOCガスセンサとしての優れた特性を示す。更に、当該センサは、湿度センサとしても優れた特性を示す。従来の導電性高分子膜を用いた抵抗変化型の湿度センサでは、相対湿度に対する応答の直線性が悪く、相対湿度90%以上では信頼性が劣る等の問題点があった。一方、本発明で得られた導電性高分子薄膜を用いたセンサでは、室温において相対湿度0〜100%で計測が可能であり、相対湿度40%以上では優れた直線性を示す。本発明は、特に、シックハウス症候群の原因物質として知られているVOCガスに対する特異的、選択的、かつ高感度な反応特性を示すVOCガスセンサ等の化学センサ部材を提供し、高性能のVOCガスセンサを実用化することを可能にするものとして有用である。
【0018】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
(1)高分子重合膜の作製
13.56MHzの高周波を用いる誘導結合方式のプラズマ処理装置を使用して、真空排気した上部の直径9cm、下部の直径21cm、高さ35cmの反応容器内に、精密バルブを通して、窒素ガスをキャリヤガスとして、ピロール蒸気を供給した。基板としては、室温に冷却したパイレックス(登録商標)ガラスを用いた。そこに、放電出力110Wでプラズマを発生させ、2時間反応を行った。その結果、膜厚1μmの重合膜が得られた。
【0019】
(2)ドーパントの導入
これを、内径12mmのH型のパイレックス(登録商標)ガラス管中にエチルベンゼンスルホン酸と共に真空封入した。この際、重合膜とエチルベンゼンスルホン酸は、直接接触しないように、H型ガラス管の両サイドに別々に入れ、それぞれの上部を封管した。これを、電気炉中で、150℃、24時間熱処理した。この熱処理では、昇温速度は2℃/分、保持温度は150℃、処理時間(保持時間)は24時間とした。処理後、過剰なエチルベンゼンスルホン酸を取り除くため、重合膜をアセトンで洗浄し、空気中、70℃、30分間乾燥した。得られた高分子膜の室温、空気中での電気伝導度は、4.8×10−4Scm−1であり、従来、報告されているヨウ素をドーピングした薄膜と比べて、実に、約10000倍程度の高い導電性を示した。
【0020】
(3)センサの作製及びセンサ特性の評価
得られた導電性ポリピロール膜の表面に、検出電極として、金薄膜櫛形電極をスパッタリング法により形成し、センサ素子とした。このセンサ素子の水素、一酸化炭素、二酸化炭素、及びメタンガスに対するセンサ特性を、各ガスに曝した時の電気抵抗値の変化で評価した。用いたガスの濃度は、すべて3%(空気希釈)とし、測定温度は、室温及び100℃とした。測定は、清浄空気(1分)、サンプルガス(3分)、清浄空気(16分)を順次流して、これらの合計20分を1サイクルとして行った。その結果、導電性ポリピロールセンサは、これらのガスに対して応答しなかった。一方、アセトアルデヒドに対する当該センサの抵抗値の変化を図2に示す。
【0021】
アセトアルデヒドに対しては、密閉型容器中にセンサを置き、容器中のヒーターに液体のアセトアルデヒドを供給することで気化させ、所定の濃度として、センサの抵抗値の変化を測定した。その結果、アセトアルデヒドに対しては、センサはその抵抗値が低下する応答を示した。同様の測定により得られた室温における500ppm濃度の各種VOCガスに対するセンサ感度(ΔR/Rair :Rair は初期抵抗値、ΔRはガス雰囲気中での抵抗値変化量)を図3に示す。センサは、クロロホルム、アセトン、トルエン、ベンゼンに比較して、アルデヒド類に対して高い感度を有し、選択的に応答を示し、その中でも、ホルムアルデヒドに対して最も高い感度を示した。このことは、本発明に係るセンサは、水素等の可燃性ガスには応答せず、しかもVOCガス対して高い選択性と高感度な応答特性を有していることを示している。
【0022】
湿度に対する応答特性は、上記有機系ガスの場合と同様に密閉型容器を用いて測定した。図4に、室温における相対湿度とセンサ感度の関係を示す。センサ感度は、相対湿度0%の時の抵抗値に対する抵抗値の変化量の割合として定義した。相対湿度が上昇するに従ってセンサの抵抗値は低下するが、相対湿度100%におけるセンサ感度は80%であり、相対湿度0〜100%の広い範囲にわたり計測が可能であった。また、相対湿度40%以上では優れた直線性を示した。
【0023】
実施例2
プラズマ重合の際の放電出力を1 0Wとしたこと、及びドーピングの際の熱処理条件を140℃、60時間としたこと以外は、実施例1の方法に準じて、高分子薄膜を製造した。得られた高分子膜の室温、空気中での電気伝導度は、4.0×10−4Scm−1であった。
【0024】
実施例3
プラズマ重合の際の放電出力を1 0Wとしたこと、及びドーピングの際の熱処理条件を140℃、60時間としたこと以外は、実施例1の方法に準じて、高分子薄膜を製造した。得られた高分子膜の室温、空気中での電気伝導度は、1.0×10−6Scm−1であった。
【0025】
実施例4
プラズマ重合の際の放電出力を50Wとしたこと、及びドーピングの際の熱処理条件を140℃、60時間としたこと以外は、実施例1の方法に準じて、高分子薄膜を製造した。得られた高分子膜の室温、空気中での電気伝導度は、2.0×10−5Scm−1であった。
【0026】
実施例5
プラズマ重合の際の放電出力を100Wとしたこと、及びドーピングの際の熱処理条件を140℃、60時間としたこと以外は、実施例1の方法に準じて、高分子薄膜を製造した。得られた高分子膜の室温、空気中での電気伝導度は、3.0×10−4Scm−1であった。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、導電性ポリピロール薄膜、その製造方法、導電性部材、及びVOCガスセンサ等の化学センサ部材に係るものであり、本発明により、以下のような作用効果が奏される。
(1)本発明の電気伝導性高分子薄膜の製造方法によれば、緻密で、かつ膜厚の均一性に優れた高分子薄膜を得ることができる。
(2)得られる高分子薄膜は、適切にドーピングされており、その高い電気伝導度により、エレクトロニクスデバイス材料として利用することができる。
(3)特に、本発明の方法により得られる電気伝導性高分子薄膜は、ドライプロセスにより簡便に製造できるので、集積化が可能となり、化学センサとして、各種の用途に好適に用いることができる。
(4)上記導電性高分子薄膜を構成要素として含む導電性部材、及びVOCガスセンサ等の化学センサ部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマ重合膜と化学重合法で合成したポリピロールの赤外吸収スペクトルを示す。
【図2】実施例1に示すセンサのアセトアルデヒドに対するセンサ特性を示す。
【図3】実施例1に示すセンサの揮発性有機化合物に対するセンサ感度を示す。
【図4】実施例1に示すセンサの相対湿度に対するセンサ感度を示す。
Claims (10)
- 重合膜中にドーパントを導入して導電性高分子薄膜を製造する方法であって、ピロールをプラズマ重合することにより作製した高分子薄膜に、真空雰囲気下でアルキルベンゼンスルホン酸からなるドーパントを導入することを特徴とする導電性高分子薄膜の製造方法。
- 前記ドーパントが、低級アルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする請求項1記載の導電性薄膜の製造方法。
- 前記ドーパントが、加熱時に分解せず沸点を有するアルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする請求項1記載の導電性薄膜の製造方法。
- ピロールをプラズマ重合することにより作製した高分子薄膜に、真空雰囲気下でアルキルベンゼンスルホン酸からなるドーパントを導入したことを特徴とする導電性高分子薄膜。
- 前記ドーパントが、低級アルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする請求項4記載の導電性薄膜。
- 前記ドーパントが、加熱時に分解せず沸点を有するアルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする請求項4記載の導電性薄膜。
- 室温、空気中での導電率が10−6Scm−1以上であることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の導電性薄膜。
- 請求項7記載の導電性薄膜を構成要素として含むことを特徴とする導電性部材。
- 請求項7記載の導電性薄膜を構成要素として含むことを特徴とする化学センサ部材。
- VOCガスに対して選択的、かつ高感度な応答特性を有するVOCガスセンサであることを特徴とする請求項9記載の化学センサ部材。
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