JP2004266484A - 無指向性アンテナ - Google Patents
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Abstract
【課題】垂直面における主ビーム方向が一定で、中心周波数に対して使用周波数帯域の上限や下限での指向性利得の差がなく、サイドローブの抑制が可能で、細径に形成でき、アンテナ周方向における垂直面指向性の差が小さい無指向性アンテナを提供する。
【解決手段】上下に分岐した給電線2を設け、その給電線2の上端及び下端に上下に分岐した次の給電線2又は放射素子3のいずれかを設け、その給電線2の上端及び下端にはさらに次の給電線2又は放射素子3のいずれかを設けることにより、次々に上下二分岐された給電線2の端末にそれぞれ放射素子3を配置した。周波数による位相ずれが小さいので、垂直面における主ビーム方向が周波数によらず一定する。
【選択図】 図1
【解決手段】上下に分岐した給電線2を設け、その給電線2の上端及び下端に上下に分岐した次の給電線2又は放射素子3のいずれかを設け、その給電線2の上端及び下端にはさらに次の給電線2又は放射素子3のいずれかを設けることにより、次々に上下二分岐された給電線2の端末にそれぞれ放射素子3を配置した。周波数による位相ずれが小さいので、垂直面における主ビーム方向が周波数によらず一定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の放射素子を上下に配置し水平面指向性を無指向性にしたアンテナに係り、特に、垂直面における主ビーム方向が一定で、中心周波数に対して使用周波数帯域の上限や下限での指向性利得の差がなく、サイドローブの抑制が可能で、細径に形成でき、アンテナ周方向における垂直面指向性の差が小さい無指向性アンテナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
移動体通信の基地局用アンテナとして上下に配置した複数の放射素子を有し、水平面指向性が無指向性である無指向性アンテナ(無指向性アレイアンテナ、無指向性オムニアンテナとも言う)を用いる場合、放射素子としては、半波長ダイポールアンテナやパッチアンテナが用いられている。そして、放射素子への給電方式としては、従来一般に、直列給電方式と中央給電方式とがある。直列給電方式は、下端を給電点とし上に延びた一本の給電線に対しこの給電線から等間隔のところに上下に配置された複数の放射素子を各々繋ぐことにより、給電線から放射素子への分岐点が給電線上に直列に並ぶ方式である。また、中央給電方式は、中央を給電点とし上下に延びた一本の給電線に対し上側にも下側にも複数の放射素子を繋ぐことにより、給電点からの電力を上方向と下方向に二分配し、それぞれの方向に直列給電方式で給電する方式である。
【0003】
近年、標準化が進められている2GHz帯IMT−2000システムでは、従来より広い周波数帯域を使用して通信が行われる。このように中心周波数に対して使用周波数帯域の上限と下限が離れている場合には、上記2つの給電方式には、それぞれ周波数による問題がある。即ち、直列給電方式には、上限周波数や下限周波数では垂直面指向性における主ビーム(メインローブ)方向が中心周波数における主ビーム方向と異なるという問題がある。また、中央給電方式には、所定のビーム方向において上限周波数や下限周波数での利得が中心周波数での利得より減少するという問題がある。
【0004】
アンテナの指向性を改善する先行技術の文献として、特許文献1及び2がある。特許文献1は、上下に配置した複数の放射素子の水平方向の角度を異ならせることにより、それぞれの放射素子が持つ水平面指向性を重畳させてより広い水平面指向性を得ようというものである。また、特許文献2は、上下に配置した複数の放射素子の水平方向の角度を異ならせることにより、それぞれの放射素子が持つ水平面指向性を重畳させて全体で水平面指向性の無指向性を得ようというものである。
【0005】
特許文献1及び2には、水平面指向性を改善するための構成が示されているが、使用周波数帯域が広い場合について、或いは垂直面指向性を改善することについては何も言及されていない。本発明では、広い周波数帯域内での周波数による垂直面指向性の不一致、並びにアンテナ周方向による垂直面指向性の不一致を改善することを目指す。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−232858号公報
【特許文献2】
特開平11−215040号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述した直列給電方式の問題点を解決し、使用周波数帯域の上限から下限まで垂直面における主ビーム方向が一定である無指向性アンテナが望まれている。垂直面指向性における主ビーム方向が一定しないのは、周波数に依存して各放射素子に生じる位相ずれが原因である。
【0008】
同時に、前述した中央給電方式の問題点を解決し、上限周波数や下限周波数での利得が中心周波数での利得と差がない無指向性アンテナが望まれている。この原因は、上限周波数や下限周波数において、給電点から上の複数の放射素子によりもたらされる部分的な主ビームの方向と給電点から下の複数の放射素子によりもたらされる部分的な主ビームの方向とが同一でなく、これらの部分的な主ビームの方向が中心周波数における主ビームの方向と上下に食い違っているため、合成された全体の主ビームの上下幅が中心周波数における主ビームの上下幅よりも広くなるからである。
【0009】
また、不要輻射である垂直面指向性におけるサイドローブを抑制することが望まれている。しかし、サイドローブを抑制するには各々の放射素子に対し個別に給電位相や電力を任意に設定できる必要がある。従来の直列給電方式や中央給電方式では複数の放射素子に対し一括して給電位相や電力を設定することしかできない。
【0010】
また、無指向性アンテナの全体を細径にすることが望まれている。
【0011】
また、放射素子を給電線の両側に配置した場合、これら2つの放射素子と給電線とを含む垂直面に対し直角な方向から見た両放射素子の距離は互いに同じであるが、前記垂直面に平行な方向から見た両放射素子の距離は互いに同じでない。よって、前記垂直面における垂直面指向性と前記垂直面に直角な垂直面における垂直面指向性とは同じにならない。即ち、アンテナ周方向によって垂直面指向性が変わるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、垂直面における主ビーム方向が一定で、中心周波数に対して使用周波数帯域の上限や下限での指向性利得の差がなく、サイドローブの抑制が可能で、細径に形成でき、アンテナ周方向における垂直面指向性の差が小さい無指向性アンテナを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、複数の放射素子を上下に配置したアンテナにおいて、上下に分岐した給電線を設け、その給電線の上端及び下端に上下に分岐した次の給電線又は放射素子のいずれかを設け、その給電線の上端及び下端にはさらに次の給電線又は放射素子のいずれかを設けることにより、次々に上下二分岐された給電線の端末にそれぞれ放射素子を配置したものである。
【0014】
前記給電線を横に延びた横方向部とその横方向部の端点より上下に延びた上方向部及び下方向部とから構成してもよい。
【0015】
給電線に対する放射素子の周方向の配置角度を放射素子により異ならせてもよい。
【0016】
前記放射素子を給電線に平行な線状放射素子とし、これら放射素子及び給電線をひとつの基板の面内に形成し、この基板複数枚を起立させて上下に配置し、基板面が臨む周方向の角度基板の向きを基板により異ならせてもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1に示されるように、本発明に係る無指向性アンテナにあっては、給電点1より分岐してその給電点1の上と下にそれぞれ延びた給電線2aが設けられている。これを第一段の給電線2aと呼ぶことにする。第一段の給電線2aの上端には、この上端より分岐してこの上端の上と下にそれぞれ延びた第二段の給電線2bが設けられている。同様に、給電線2aの下端にも、上と下にそれぞれ延びた第二段の給電線2cが設けられている。第一段の給電線2aの上端から分岐している第二段の給電線2bの上端には、この上端より分岐してこの上端の上と下にそれぞれ延びた第三段の給電線2dが設けられている。そして、この給電線2dの上端には一番上の放射素子3aが設けられ、給電線2dの下端には上から数えて2つ目の放射素子3bが設けられている。一方、第二段の給電線2bの下端には上から数えて3つ目の放射素子3cが設けられている。もうひとつの第二段の給電線、即ち、第一段の給電線2aの下端から分岐している給電線2cの上端には、4つ目の放射素子3dが設けられている。そして、給電線2cの下端には、第三段の給電線2eが設けられている。この給電線2eの上端には5つ目の放射素子3eが設けられ、給電線2eの下端には6つ目の放射素子3fが設けられている。
【0019】
このように、本発明では、上下に分岐した給電線2の上端及び下端にさらに上下に分岐した次の給電線2又は放射素子3のいずれかを設けることにより、次々に上下二分岐された給電線2の端末にそれぞれ放射素子3を配置している。1つの給電線2に対して上下両端に次の給電線2を設ける給電線2が存在する場合も存在しない場合もある。一端に放射素子3を設け他端には次の給電線2を設ける給電線2が存在する場合も存在しない場合もある。両端ともに放射素子3を設ける給電線2は存在する。次の給電線2を設けない上端或いは下端を端末という。端末には必ず放射素子3を設けることになる。このような分岐をするトポロジが勝抜き形式の競技の組合わせ表のトポロジに類似しているので、給電線2の全体形状をトーナメント状と呼ぶことにする。ただし、図1の形態は後述する折り返し配置を適用しているので、給電線2の形状は、日常見られる勝抜き表とは似ていない。
【0020】
各給電線2は、上下に長く延びた部分とその途中から出て給電点1又は前段の給電線2に繋がる短い部分とからなる。即ち、給電線2は、T字状に形成されている。給電線2bを例にとると、この給電線2bは、横に延びた横方向部4とその横方向部4の端点より上下に延びた上方向部5及び下方向部6とから構成されている。符号は付記しないが、給電線2a,2c,2d,2eも同様に横方向部4、上方向部5及び下方向部6を有する。
【0021】
給電線2に対する放射素子3の周方向の配置角度は、放射素子3により異ならせてある。従って、給電線2から放射素子3への電気的接続を図る端末部8の延びる方向が放射素子3により異なっている。同時に、給電線2の横方向部4の延びる方向も給電線2により異なっている。図1の形態では、給電線2及び放射素子3を基板7上に形成しているので、端末部8及び横方向部4の向きは左か右になっている。
【0022】
これらの端末部8及び横方向部4について延び出し方向及び長さを適宜に組み合わせることにより、第一段の給電線2aと第三段の給電線2d,2eが同軸上に位置されていると共に、全ての放射素子3がこの軸から等距離に位置されている。この軸を中心軸Oと呼ぶことにする。中心軸Oから各放射素子3までの距離をΔdとする。即ち、放射素子3は、第一段の給電線2aを中心軸Oとし、周方向の任意の配置角度で距離Δdのところに配置されていることになる。図1の形態では、上から下へ6つ並んだ放射素子3a〜3fが交互に中心軸Oの左右に配置されている。
【0023】
図1に示した無指向性アンテナは、基板7に印刷したマイクロストリップ線路で給電線2を構成し、同様に基板7に印刷した導体で放射素子3を形成したものである。放射素子3は、給電線2と同じ基板7の面内(表裏いずれでもよい)に設けられ、給電線2と平行な線状放射素子で実現されている。この放射素子3は、上に延びた導体と下に延びた導体とを適宜なギャップで配置した半波長ダイポールとなっている。各放射素子3は、給電線2から延びた端末部8に近接することにより電気的な接続が図られており、端末部8からの高周波電流が伝搬可能である。この基板7を給電線2が上下に長く延びるよう起立させて使用する。
【0024】
図1に示した無指向性アンテナの作用効果を説明する。
【0025】
この種のアンテナでは、複数の放射素子3が上下に配置されているため、給電点1から放射素子3までの直線的距離が放射素子3により異なる。給電線2の引き回しにより、給電点1から各放射素子3までの給電距離を調整することができる。各給電距離は、使用周波数帯域の中心周波数Fcで給電距離を評価した給電位相φが一致するように決めるとよい。しかし、中心周波数Fcから離れた周波数、例えば、使用周波数帯域の上限周波数Fh及び下限周波数Flについては位相ずれが生じる。従来の直列給電方式や中央給電方式では、給電点1から順次遠くに位置する放射素子3への給電距離が直線的距離にほぼ比例して増大し、n番目に遠い放射素子3に生じる上限周波数Fh及び下限周波数Flでの位相ずれは、隣接する放射素子3間での位相ずれφiをn個までトータルした(1−Fh/Fc)Σφi及び(1−Fl/Fc)Σφiとなる。これに対し、本発明では、給電点1に直線的距離が近い放射素子3cであっても、第一段の給電線2aの上端から第二段の給電線2bを経由して給電されるため給電距離は他の放射素子3a,3bと大差がない。同じ給電線2dの端末にある放射素子3aと放射素子3bとでは給電線2dの横方向部4を上下の中点に置くことで給電距離を同一にすることができ、前段の給電線2bにおける横方向部4の位置を工夫すれば放射素子3cに対しても給電距離を同一にすることが可能である。従って、どの放射素子3に生じる上限周波数Fh及び下限周波数Flでの位相ずれも、任意の放射素子3間での最も大きい位相ずれ(1−Fh/Fc)φi及び(1−Fl/Fc)φiを超えることがない。
【0026】
このように、本発明では、上下に分岐した給電線2の上端及び下端にさらに上下に分岐した次の給電線2又は放射素子3のいずれかを設けるというトーナメント状の給電方式としたので、使用周波数帯域の上限及び下限における位相ずれを小さくすることができる。よって、垂直面における主ビーム方向を使用周波数帯域内で上限から下限までほぼ一定とすることができる。
【0027】
また、本発明では、垂直面における主ビーム方向が使用周波数帯域内で上限から下限までほぼ一定となると共に、従来の中央給電方式のような上下の放射素子による部分的な主ビーム方向の相違がないことにより、上限周波数Fhや下限周波数Flにおける主ビームの上下幅が中心周波数Fcにおける主ビームの上下幅と同程度になるので、上限周波数Fh及び下限周波数Flでの利得が中心周波数Fcでの利得と差がない。
【0028】
本発明に係る無指向性アンテナは、図1にその実施形態を示したように、プリント基板を用いて容易に実施することができる。基板7上に給電線2及び複数の放射素子3を配置する場合、既に説明したように、第一段の給電線2aを中心軸Oに配し、上から下へ並んだ複数の放射素子3を交互に中心軸Oの左右に配するとよい。基本的には半波長ダイポールアンテナは水平面指向性が無指向性であるが、基板7上に放射素子3を配置するとグランド導体(図示せず)の側への輻射が小さくなり無指向性とはならない。そこで、放射素子3を交互に中心軸Oの左右に配すると、グランド導体に対する放射素子3の位置関係が交互に左側、右側となり、各放射素子3毎の輻射を重ね合わせると全体の水平面指向性を無指向性とすることができる。
【0029】
従来技術の問題点として指摘したように、複数の放射素子3からなるアンテナにおいて、サイドローブを抑制するには各々の放射素子3に対し個別に給電位相や電力を任意に設定できる必要がある。その点、本発明では、T字状に形成した部分的な給電線2を順次接続して全体の給電線2を構成しているので、各T字状分岐の幅(横方向部4の長さ)或いは分岐位置(上方向部5の長さ及び下方向部6の長さ)を調整することで、給電点1から各々の放射素子3への給電距離を調整して給電位相を各放射素子3について個別に任意に設定できる。また、T字状の分岐は、3つの枝(横方向部4、上方向部5及び下方向部6)のインピーダンスの組合わせで電力の分配比が決まり、基板7上に同じ導体厚みで形成される給電線のインピーダンスは給電線幅で決まるので、各枝の給電線幅を調整することにより、給電線2から次段の給電線2或いは放射素子3への分配電力を任意に設定できる。これらにより、垂直面指向性における主ビーム方向が任意に設定できると共に、容易にサイドローブを抑制することができる。
【0030】
無指向性アンテナの細径化は、本発明において、次のように達成されている。まず、給電線2をマイクロストリップ線路で構成すると共に放射素子3を給電線2と平行な線状放射素子で構成したので、径方向への大きなスペースはとらない。さらに、本発明では、放射素子3を中心軸Oにできるだけ近付けて配置することができる。即ち、第一段の給電線2aに対する第二段の給電線2bからの横方向部4の延ばし方向と第二段の給電線2bに対する第三段の給電線2dからの横方向部4の延ばし方向とを左右逆にしてある。これにより、第三段の給電線2dは第一段の給電線2aと同じく中心軸Oに位置している。このように、多段に分岐する給電線2を同一方向にだんだん離して配置していくのではなく、場所により反対方向に折り返して相互に近付けるように配置したので、給電線2の端末に配置される放射素子3を中心軸Oの近くに配置することができる。よって、複数の給電線2が横並びするにもかかわらず、基板7の横幅を小さくすることができ、無指向性アンテナ全体の細径化が達成される。
【0031】
次に、図2の実施形態を説明する。
【0032】
図2に示した本発明に係る無指向性アンテナは、基板7を2枚起立させて上下に配置し、基板の向き(基板面が臨む周方向の角度)を基板7により異ならせたものである。それぞれの基板7は、放射素子3が2個ずつであるほかは図1で説明したのと同じ技術思想に基づくものである。上に位置した基板7による無指向性アンテナをユニット9a、下に位置した基板7による無指向性アンテナをユニット9bとする。図示のように、ユニット9aは、方向A,Cに基板面を臨ませ、方向B,Dに対して基板面が平行になっている。一方、ユニット9bは、方向B,Dに基板面を臨ませ、方向A,Cに対して基板面が平行になっている。
【0033】
ここで図1に戻り、周方向の複数角度における垂直面指向性を相互比較する。図1の左方向(矢印;基板面に平行)から見ると、放射素子3a,3c,3eは中心軸OよりΔd近い位置にある。一方、放射素子3b,3d,3fは中心軸OよりΔd遠い位置にある。この距離差により生じる位相差は、使用電波の周波数をλとすると、4πΔd/λとなる。これに対し図1の紙面垂直方向(基板面に垂直)から見ると、放射素子3a〜3fは全て等距離にあり、位相差は0である。この位相差の違いにより、それぞれの角度における垂直面指向性が異なることになる。
【0034】
図3(a)に、図1の無指向性アンテナにおける基板面垂直方向での垂直面指向性を示し、図3(b)に、基板面平行方向での垂直面指向性を示す。横軸は角度を示し、0°が水平に相当する。縦軸は利得である。図示されるように、基板面に垂直な方向でも平行な方向でも、ほぼ水平でやや地上側よりに現れる主ビーム31は殆ど同じプロファイルである。しかし、基板面平行方向では、天空側30°及び地上側45°に顕著なサイドローブ32が存在する。
【0035】
そこで、図2の実施形態では、1つの基板7による無指向性アンテナを1つのユニット9とし、このユニット9を上下に複数重ねてそれぞれのユニット9の向きを異ならせた。図2の実施形態では、ユニット9が2つであるため、ユニット9a,9bを互いの周方向角度を90°異ならせた(θ=90°)。ユニット数がさらに多い場合は、周方向角度を180°/ユニット数ずつ異ならせるとよい。この構成により、4つの方向A〜Dから見た放射特性の諸元(位相中心、位相遅れ、位相進み)が方向によらずほぼ等しくなり、垂直面指向性もほぼ等しくなる。
【0036】
図4に示した実施形態にあっては、図1と同様な6つの放射素子3を有する無指向性アンテナを1つのユニット9とし、このユニット9を上下に2個重ねてそれぞれのユニット9の向きを異ならせたものである。各ユニット9a,9bの給電点1に対し、分配器10で等配分された電力が給電されるようになっている。給電線2の引き回しは図1と多少異なっている。例えば、第一段の給電線2aは給電点1のやや上で屈曲して横方向に一旦延びてから上に延びている。その他の給電線2にも屈曲が見られる。これは、放射素子3までの給電距離を調整すると共に、さらなる細径化のために放射素子3を中心軸Oに近付けて配置したことによるものである。
【0037】
この無指向性アンテナにおいて、ユニット9aの基板面に正対する方向A,Cでは各放射素子3から放射された電波には距離による位相差は生じないが、基板の端の方向B,Dでは中心軸Oより手前に位置する放射素子3から放射された電波と中心軸Oの向う側に位置する放射素子3から放射された電波との間で距離による位相差が生じる。ユニット9bに関しては、逆に、方向A,Cの電波に距離による位相差が生じ、方向B,Dの電波には距離による位相差が生じない。ユニット9aによる垂直面指向性とユニット9b垂直面指向性とを重ね合わせると、位相差を生じる角度と生じない角度とが補完し合うことになり、どの角度においても一定の垂直面指向性を得ることができる。
【0038】
図5(a)に、図4の無指向性アンテナにおける基板面垂直方向での垂直面指向性を示し、図5(b)に、基板面平行方向での垂直面指向性を示す。横軸は角度を示し、0°が水平に相当する。縦軸は利得である。各軸のスケールは図3と同一にしてある。図5に示されるように、基板面に垂直な方向でも平行な方向でも、ほぼ水平でやや地上側よりに現れる主ビーム51は殆ど同じプロファイルである。そして、図3のものと比べると、顕著なサイドローブが存在しない。
【0039】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0040】
(1)上下に分岐した給電線2の上端及び下端にさらに上下に分岐した次の給電線2又は放射素子3のいずれかを設けるというトーナメント状の給電方式としたので、使用周波数帯域の上限及び下限における位相ずれを小さくし、垂直面における主ビーム方向を周波数によらず一定とすることができる。
【0041】
(2)中心周波数に対して使用周波数帯域の上限や下限での指向性利得の差がない。
【0042】
(3)T字状に形成した部分的な給電線2を順次接続して全体の給電線2を構成しているので、サイドローブの抑制を容易に行うことができる。
【0043】
(4)放射素子3を線状放射素子で構成したこと、及び多段に分岐する給電線2を相互に近付けるように配置したことにより、無指向性アンテナを細径に形成することができる。
【0044】
(5)基板の向きを基板7により異ならせたので、アンテナ周方向における垂直面指向性の差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す無指向性アンテナの正面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す無指向性アンテナの斜視図である。
【図3】(a)は、図1の無指向性アンテナにおける基板面垂直方向の垂直面指向性を示す特性図であり、(b)は無指向性アンテナにおける基板面平行方向での垂直面指向性を示す特性図である。
【図4】本発明の一実施形態を示す無指向性アンテナの斜視図である。
【図5】(a)は、図4の無指向性アンテナにおける基板面垂直方向の垂直面指向性を示す特性図であり、(b)は無指向性アンテナにおける基板面平行方向での垂直面指向性を示す特性図である。
【符号の説明】
1 給電点
2 給電線
3 放射素子
7 基板
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の放射素子を上下に配置し水平面指向性を無指向性にしたアンテナに係り、特に、垂直面における主ビーム方向が一定で、中心周波数に対して使用周波数帯域の上限や下限での指向性利得の差がなく、サイドローブの抑制が可能で、細径に形成でき、アンテナ周方向における垂直面指向性の差が小さい無指向性アンテナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
移動体通信の基地局用アンテナとして上下に配置した複数の放射素子を有し、水平面指向性が無指向性である無指向性アンテナ(無指向性アレイアンテナ、無指向性オムニアンテナとも言う)を用いる場合、放射素子としては、半波長ダイポールアンテナやパッチアンテナが用いられている。そして、放射素子への給電方式としては、従来一般に、直列給電方式と中央給電方式とがある。直列給電方式は、下端を給電点とし上に延びた一本の給電線に対しこの給電線から等間隔のところに上下に配置された複数の放射素子を各々繋ぐことにより、給電線から放射素子への分岐点が給電線上に直列に並ぶ方式である。また、中央給電方式は、中央を給電点とし上下に延びた一本の給電線に対し上側にも下側にも複数の放射素子を繋ぐことにより、給電点からの電力を上方向と下方向に二分配し、それぞれの方向に直列給電方式で給電する方式である。
【0003】
近年、標準化が進められている2GHz帯IMT−2000システムでは、従来より広い周波数帯域を使用して通信が行われる。このように中心周波数に対して使用周波数帯域の上限と下限が離れている場合には、上記2つの給電方式には、それぞれ周波数による問題がある。即ち、直列給電方式には、上限周波数や下限周波数では垂直面指向性における主ビーム(メインローブ)方向が中心周波数における主ビーム方向と異なるという問題がある。また、中央給電方式には、所定のビーム方向において上限周波数や下限周波数での利得が中心周波数での利得より減少するという問題がある。
【0004】
アンテナの指向性を改善する先行技術の文献として、特許文献1及び2がある。特許文献1は、上下に配置した複数の放射素子の水平方向の角度を異ならせることにより、それぞれの放射素子が持つ水平面指向性を重畳させてより広い水平面指向性を得ようというものである。また、特許文献2は、上下に配置した複数の放射素子の水平方向の角度を異ならせることにより、それぞれの放射素子が持つ水平面指向性を重畳させて全体で水平面指向性の無指向性を得ようというものである。
【0005】
特許文献1及び2には、水平面指向性を改善するための構成が示されているが、使用周波数帯域が広い場合について、或いは垂直面指向性を改善することについては何も言及されていない。本発明では、広い周波数帯域内での周波数による垂直面指向性の不一致、並びにアンテナ周方向による垂直面指向性の不一致を改善することを目指す。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−232858号公報
【特許文献2】
特開平11−215040号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述した直列給電方式の問題点を解決し、使用周波数帯域の上限から下限まで垂直面における主ビーム方向が一定である無指向性アンテナが望まれている。垂直面指向性における主ビーム方向が一定しないのは、周波数に依存して各放射素子に生じる位相ずれが原因である。
【0008】
同時に、前述した中央給電方式の問題点を解決し、上限周波数や下限周波数での利得が中心周波数での利得と差がない無指向性アンテナが望まれている。この原因は、上限周波数や下限周波数において、給電点から上の複数の放射素子によりもたらされる部分的な主ビームの方向と給電点から下の複数の放射素子によりもたらされる部分的な主ビームの方向とが同一でなく、これらの部分的な主ビームの方向が中心周波数における主ビームの方向と上下に食い違っているため、合成された全体の主ビームの上下幅が中心周波数における主ビームの上下幅よりも広くなるからである。
【0009】
また、不要輻射である垂直面指向性におけるサイドローブを抑制することが望まれている。しかし、サイドローブを抑制するには各々の放射素子に対し個別に給電位相や電力を任意に設定できる必要がある。従来の直列給電方式や中央給電方式では複数の放射素子に対し一括して給電位相や電力を設定することしかできない。
【0010】
また、無指向性アンテナの全体を細径にすることが望まれている。
【0011】
また、放射素子を給電線の両側に配置した場合、これら2つの放射素子と給電線とを含む垂直面に対し直角な方向から見た両放射素子の距離は互いに同じであるが、前記垂直面に平行な方向から見た両放射素子の距離は互いに同じでない。よって、前記垂直面における垂直面指向性と前記垂直面に直角な垂直面における垂直面指向性とは同じにならない。即ち、アンテナ周方向によって垂直面指向性が変わるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、垂直面における主ビーム方向が一定で、中心周波数に対して使用周波数帯域の上限や下限での指向性利得の差がなく、サイドローブの抑制が可能で、細径に形成でき、アンテナ周方向における垂直面指向性の差が小さい無指向性アンテナを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、複数の放射素子を上下に配置したアンテナにおいて、上下に分岐した給電線を設け、その給電線の上端及び下端に上下に分岐した次の給電線又は放射素子のいずれかを設け、その給電線の上端及び下端にはさらに次の給電線又は放射素子のいずれかを設けることにより、次々に上下二分岐された給電線の端末にそれぞれ放射素子を配置したものである。
【0014】
前記給電線を横に延びた横方向部とその横方向部の端点より上下に延びた上方向部及び下方向部とから構成してもよい。
【0015】
給電線に対する放射素子の周方向の配置角度を放射素子により異ならせてもよい。
【0016】
前記放射素子を給電線に平行な線状放射素子とし、これら放射素子及び給電線をひとつの基板の面内に形成し、この基板複数枚を起立させて上下に配置し、基板面が臨む周方向の角度基板の向きを基板により異ならせてもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1に示されるように、本発明に係る無指向性アンテナにあっては、給電点1より分岐してその給電点1の上と下にそれぞれ延びた給電線2aが設けられている。これを第一段の給電線2aと呼ぶことにする。第一段の給電線2aの上端には、この上端より分岐してこの上端の上と下にそれぞれ延びた第二段の給電線2bが設けられている。同様に、給電線2aの下端にも、上と下にそれぞれ延びた第二段の給電線2cが設けられている。第一段の給電線2aの上端から分岐している第二段の給電線2bの上端には、この上端より分岐してこの上端の上と下にそれぞれ延びた第三段の給電線2dが設けられている。そして、この給電線2dの上端には一番上の放射素子3aが設けられ、給電線2dの下端には上から数えて2つ目の放射素子3bが設けられている。一方、第二段の給電線2bの下端には上から数えて3つ目の放射素子3cが設けられている。もうひとつの第二段の給電線、即ち、第一段の給電線2aの下端から分岐している給電線2cの上端には、4つ目の放射素子3dが設けられている。そして、給電線2cの下端には、第三段の給電線2eが設けられている。この給電線2eの上端には5つ目の放射素子3eが設けられ、給電線2eの下端には6つ目の放射素子3fが設けられている。
【0019】
このように、本発明では、上下に分岐した給電線2の上端及び下端にさらに上下に分岐した次の給電線2又は放射素子3のいずれかを設けることにより、次々に上下二分岐された給電線2の端末にそれぞれ放射素子3を配置している。1つの給電線2に対して上下両端に次の給電線2を設ける給電線2が存在する場合も存在しない場合もある。一端に放射素子3を設け他端には次の給電線2を設ける給電線2が存在する場合も存在しない場合もある。両端ともに放射素子3を設ける給電線2は存在する。次の給電線2を設けない上端或いは下端を端末という。端末には必ず放射素子3を設けることになる。このような分岐をするトポロジが勝抜き形式の競技の組合わせ表のトポロジに類似しているので、給電線2の全体形状をトーナメント状と呼ぶことにする。ただし、図1の形態は後述する折り返し配置を適用しているので、給電線2の形状は、日常見られる勝抜き表とは似ていない。
【0020】
各給電線2は、上下に長く延びた部分とその途中から出て給電点1又は前段の給電線2に繋がる短い部分とからなる。即ち、給電線2は、T字状に形成されている。給電線2bを例にとると、この給電線2bは、横に延びた横方向部4とその横方向部4の端点より上下に延びた上方向部5及び下方向部6とから構成されている。符号は付記しないが、給電線2a,2c,2d,2eも同様に横方向部4、上方向部5及び下方向部6を有する。
【0021】
給電線2に対する放射素子3の周方向の配置角度は、放射素子3により異ならせてある。従って、給電線2から放射素子3への電気的接続を図る端末部8の延びる方向が放射素子3により異なっている。同時に、給電線2の横方向部4の延びる方向も給電線2により異なっている。図1の形態では、給電線2及び放射素子3を基板7上に形成しているので、端末部8及び横方向部4の向きは左か右になっている。
【0022】
これらの端末部8及び横方向部4について延び出し方向及び長さを適宜に組み合わせることにより、第一段の給電線2aと第三段の給電線2d,2eが同軸上に位置されていると共に、全ての放射素子3がこの軸から等距離に位置されている。この軸を中心軸Oと呼ぶことにする。中心軸Oから各放射素子3までの距離をΔdとする。即ち、放射素子3は、第一段の給電線2aを中心軸Oとし、周方向の任意の配置角度で距離Δdのところに配置されていることになる。図1の形態では、上から下へ6つ並んだ放射素子3a〜3fが交互に中心軸Oの左右に配置されている。
【0023】
図1に示した無指向性アンテナは、基板7に印刷したマイクロストリップ線路で給電線2を構成し、同様に基板7に印刷した導体で放射素子3を形成したものである。放射素子3は、給電線2と同じ基板7の面内(表裏いずれでもよい)に設けられ、給電線2と平行な線状放射素子で実現されている。この放射素子3は、上に延びた導体と下に延びた導体とを適宜なギャップで配置した半波長ダイポールとなっている。各放射素子3は、給電線2から延びた端末部8に近接することにより電気的な接続が図られており、端末部8からの高周波電流が伝搬可能である。この基板7を給電線2が上下に長く延びるよう起立させて使用する。
【0024】
図1に示した無指向性アンテナの作用効果を説明する。
【0025】
この種のアンテナでは、複数の放射素子3が上下に配置されているため、給電点1から放射素子3までの直線的距離が放射素子3により異なる。給電線2の引き回しにより、給電点1から各放射素子3までの給電距離を調整することができる。各給電距離は、使用周波数帯域の中心周波数Fcで給電距離を評価した給電位相φが一致するように決めるとよい。しかし、中心周波数Fcから離れた周波数、例えば、使用周波数帯域の上限周波数Fh及び下限周波数Flについては位相ずれが生じる。従来の直列給電方式や中央給電方式では、給電点1から順次遠くに位置する放射素子3への給電距離が直線的距離にほぼ比例して増大し、n番目に遠い放射素子3に生じる上限周波数Fh及び下限周波数Flでの位相ずれは、隣接する放射素子3間での位相ずれφiをn個までトータルした(1−Fh/Fc)Σφi及び(1−Fl/Fc)Σφiとなる。これに対し、本発明では、給電点1に直線的距離が近い放射素子3cであっても、第一段の給電線2aの上端から第二段の給電線2bを経由して給電されるため給電距離は他の放射素子3a,3bと大差がない。同じ給電線2dの端末にある放射素子3aと放射素子3bとでは給電線2dの横方向部4を上下の中点に置くことで給電距離を同一にすることができ、前段の給電線2bにおける横方向部4の位置を工夫すれば放射素子3cに対しても給電距離を同一にすることが可能である。従って、どの放射素子3に生じる上限周波数Fh及び下限周波数Flでの位相ずれも、任意の放射素子3間での最も大きい位相ずれ(1−Fh/Fc)φi及び(1−Fl/Fc)φiを超えることがない。
【0026】
このように、本発明では、上下に分岐した給電線2の上端及び下端にさらに上下に分岐した次の給電線2又は放射素子3のいずれかを設けるというトーナメント状の給電方式としたので、使用周波数帯域の上限及び下限における位相ずれを小さくすることができる。よって、垂直面における主ビーム方向を使用周波数帯域内で上限から下限までほぼ一定とすることができる。
【0027】
また、本発明では、垂直面における主ビーム方向が使用周波数帯域内で上限から下限までほぼ一定となると共に、従来の中央給電方式のような上下の放射素子による部分的な主ビーム方向の相違がないことにより、上限周波数Fhや下限周波数Flにおける主ビームの上下幅が中心周波数Fcにおける主ビームの上下幅と同程度になるので、上限周波数Fh及び下限周波数Flでの利得が中心周波数Fcでの利得と差がない。
【0028】
本発明に係る無指向性アンテナは、図1にその実施形態を示したように、プリント基板を用いて容易に実施することができる。基板7上に給電線2及び複数の放射素子3を配置する場合、既に説明したように、第一段の給電線2aを中心軸Oに配し、上から下へ並んだ複数の放射素子3を交互に中心軸Oの左右に配するとよい。基本的には半波長ダイポールアンテナは水平面指向性が無指向性であるが、基板7上に放射素子3を配置するとグランド導体(図示せず)の側への輻射が小さくなり無指向性とはならない。そこで、放射素子3を交互に中心軸Oの左右に配すると、グランド導体に対する放射素子3の位置関係が交互に左側、右側となり、各放射素子3毎の輻射を重ね合わせると全体の水平面指向性を無指向性とすることができる。
【0029】
従来技術の問題点として指摘したように、複数の放射素子3からなるアンテナにおいて、サイドローブを抑制するには各々の放射素子3に対し個別に給電位相や電力を任意に設定できる必要がある。その点、本発明では、T字状に形成した部分的な給電線2を順次接続して全体の給電線2を構成しているので、各T字状分岐の幅(横方向部4の長さ)或いは分岐位置(上方向部5の長さ及び下方向部6の長さ)を調整することで、給電点1から各々の放射素子3への給電距離を調整して給電位相を各放射素子3について個別に任意に設定できる。また、T字状の分岐は、3つの枝(横方向部4、上方向部5及び下方向部6)のインピーダンスの組合わせで電力の分配比が決まり、基板7上に同じ導体厚みで形成される給電線のインピーダンスは給電線幅で決まるので、各枝の給電線幅を調整することにより、給電線2から次段の給電線2或いは放射素子3への分配電力を任意に設定できる。これらにより、垂直面指向性における主ビーム方向が任意に設定できると共に、容易にサイドローブを抑制することができる。
【0030】
無指向性アンテナの細径化は、本発明において、次のように達成されている。まず、給電線2をマイクロストリップ線路で構成すると共に放射素子3を給電線2と平行な線状放射素子で構成したので、径方向への大きなスペースはとらない。さらに、本発明では、放射素子3を中心軸Oにできるだけ近付けて配置することができる。即ち、第一段の給電線2aに対する第二段の給電線2bからの横方向部4の延ばし方向と第二段の給電線2bに対する第三段の給電線2dからの横方向部4の延ばし方向とを左右逆にしてある。これにより、第三段の給電線2dは第一段の給電線2aと同じく中心軸Oに位置している。このように、多段に分岐する給電線2を同一方向にだんだん離して配置していくのではなく、場所により反対方向に折り返して相互に近付けるように配置したので、給電線2の端末に配置される放射素子3を中心軸Oの近くに配置することができる。よって、複数の給電線2が横並びするにもかかわらず、基板7の横幅を小さくすることができ、無指向性アンテナ全体の細径化が達成される。
【0031】
次に、図2の実施形態を説明する。
【0032】
図2に示した本発明に係る無指向性アンテナは、基板7を2枚起立させて上下に配置し、基板の向き(基板面が臨む周方向の角度)を基板7により異ならせたものである。それぞれの基板7は、放射素子3が2個ずつであるほかは図1で説明したのと同じ技術思想に基づくものである。上に位置した基板7による無指向性アンテナをユニット9a、下に位置した基板7による無指向性アンテナをユニット9bとする。図示のように、ユニット9aは、方向A,Cに基板面を臨ませ、方向B,Dに対して基板面が平行になっている。一方、ユニット9bは、方向B,Dに基板面を臨ませ、方向A,Cに対して基板面が平行になっている。
【0033】
ここで図1に戻り、周方向の複数角度における垂直面指向性を相互比較する。図1の左方向(矢印;基板面に平行)から見ると、放射素子3a,3c,3eは中心軸OよりΔd近い位置にある。一方、放射素子3b,3d,3fは中心軸OよりΔd遠い位置にある。この距離差により生じる位相差は、使用電波の周波数をλとすると、4πΔd/λとなる。これに対し図1の紙面垂直方向(基板面に垂直)から見ると、放射素子3a〜3fは全て等距離にあり、位相差は0である。この位相差の違いにより、それぞれの角度における垂直面指向性が異なることになる。
【0034】
図3(a)に、図1の無指向性アンテナにおける基板面垂直方向での垂直面指向性を示し、図3(b)に、基板面平行方向での垂直面指向性を示す。横軸は角度を示し、0°が水平に相当する。縦軸は利得である。図示されるように、基板面に垂直な方向でも平行な方向でも、ほぼ水平でやや地上側よりに現れる主ビーム31は殆ど同じプロファイルである。しかし、基板面平行方向では、天空側30°及び地上側45°に顕著なサイドローブ32が存在する。
【0035】
そこで、図2の実施形態では、1つの基板7による無指向性アンテナを1つのユニット9とし、このユニット9を上下に複数重ねてそれぞれのユニット9の向きを異ならせた。図2の実施形態では、ユニット9が2つであるため、ユニット9a,9bを互いの周方向角度を90°異ならせた(θ=90°)。ユニット数がさらに多い場合は、周方向角度を180°/ユニット数ずつ異ならせるとよい。この構成により、4つの方向A〜Dから見た放射特性の諸元(位相中心、位相遅れ、位相進み)が方向によらずほぼ等しくなり、垂直面指向性もほぼ等しくなる。
【0036】
図4に示した実施形態にあっては、図1と同様な6つの放射素子3を有する無指向性アンテナを1つのユニット9とし、このユニット9を上下に2個重ねてそれぞれのユニット9の向きを異ならせたものである。各ユニット9a,9bの給電点1に対し、分配器10で等配分された電力が給電されるようになっている。給電線2の引き回しは図1と多少異なっている。例えば、第一段の給電線2aは給電点1のやや上で屈曲して横方向に一旦延びてから上に延びている。その他の給電線2にも屈曲が見られる。これは、放射素子3までの給電距離を調整すると共に、さらなる細径化のために放射素子3を中心軸Oに近付けて配置したことによるものである。
【0037】
この無指向性アンテナにおいて、ユニット9aの基板面に正対する方向A,Cでは各放射素子3から放射された電波には距離による位相差は生じないが、基板の端の方向B,Dでは中心軸Oより手前に位置する放射素子3から放射された電波と中心軸Oの向う側に位置する放射素子3から放射された電波との間で距離による位相差が生じる。ユニット9bに関しては、逆に、方向A,Cの電波に距離による位相差が生じ、方向B,Dの電波には距離による位相差が生じない。ユニット9aによる垂直面指向性とユニット9b垂直面指向性とを重ね合わせると、位相差を生じる角度と生じない角度とが補完し合うことになり、どの角度においても一定の垂直面指向性を得ることができる。
【0038】
図5(a)に、図4の無指向性アンテナにおける基板面垂直方向での垂直面指向性を示し、図5(b)に、基板面平行方向での垂直面指向性を示す。横軸は角度を示し、0°が水平に相当する。縦軸は利得である。各軸のスケールは図3と同一にしてある。図5に示されるように、基板面に垂直な方向でも平行な方向でも、ほぼ水平でやや地上側よりに現れる主ビーム51は殆ど同じプロファイルである。そして、図3のものと比べると、顕著なサイドローブが存在しない。
【0039】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0040】
(1)上下に分岐した給電線2の上端及び下端にさらに上下に分岐した次の給電線2又は放射素子3のいずれかを設けるというトーナメント状の給電方式としたので、使用周波数帯域の上限及び下限における位相ずれを小さくし、垂直面における主ビーム方向を周波数によらず一定とすることができる。
【0041】
(2)中心周波数に対して使用周波数帯域の上限や下限での指向性利得の差がない。
【0042】
(3)T字状に形成した部分的な給電線2を順次接続して全体の給電線2を構成しているので、サイドローブの抑制を容易に行うことができる。
【0043】
(4)放射素子3を線状放射素子で構成したこと、及び多段に分岐する給電線2を相互に近付けるように配置したことにより、無指向性アンテナを細径に形成することができる。
【0044】
(5)基板の向きを基板7により異ならせたので、アンテナ周方向における垂直面指向性の差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す無指向性アンテナの正面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す無指向性アンテナの斜視図である。
【図3】(a)は、図1の無指向性アンテナにおける基板面垂直方向の垂直面指向性を示す特性図であり、(b)は無指向性アンテナにおける基板面平行方向での垂直面指向性を示す特性図である。
【図4】本発明の一実施形態を示す無指向性アンテナの斜視図である。
【図5】(a)は、図4の無指向性アンテナにおける基板面垂直方向の垂直面指向性を示す特性図であり、(b)は無指向性アンテナにおける基板面平行方向での垂直面指向性を示す特性図である。
【符号の説明】
1 給電点
2 給電線
3 放射素子
7 基板
Claims (4)
- 複数の放射素子を上下に配置したアンテナにおいて、上下に分岐した給電線を設け、その給電線の上端及び下端に上下に分岐した次の給電線又は放射素子のいずれかを設け、その給電線の上端及び下端にはさらに次の給電線又は放射素子のいずれかを設けることにより、次々に上下二分岐された給電線の端末にそれぞれ放射素子を配置したことを特徴とする無指向性アンテナ。
- 前記給電線を横に延びた横方向部とその横方向部の端点より上下に延びた上方向部及び下方向部とから構成したことを特徴とする請求項1記載の無指向性アンテナ。
- 給電線に対する放射素子の周方向の配置角度を放射素子により異ならせたことを特徴とする請求項1又は2記載の無指向性アンテナ。
- 前記放射素子を給電線に平行な線状放射素子とし、これら放射素子及び給電線をひとつの基板の面内に形成し、この基板複数枚を起立させて上下に配置し、基板の向きを基板により異ならせたことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の無指向性アンテナ。
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Cited By (4)
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JP2009111661A (ja) * | 2007-10-30 | 2009-05-21 | Denki Kogyo Co Ltd | アレイアンテナ |
JP2010010990A (ja) * | 2008-06-26 | 2010-01-14 | Hitachi Cable Ltd | 2周波共用無指向性アンテナ |
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US20220123466A1 (en) * | 2019-09-12 | 2022-04-21 | Rosenberger Technologies Co., Ltd. | Feed network for improving convergence of lobe width of wideband antenna |
-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003053598A patent/JP2004266484A/ja active Pending
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