JP2004264390A - 光ピックアップ装置用の対物レンズ、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置 - Google Patents
光ピックアップ装置用の対物レンズ、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】2つのプラスチックレンズ間に温度差が生じた場合、及び/又は、少なくとも1つのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合であっても、球面収差の発生が小さい対物レンズ、この対物レンズを使用する光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置を提供する。
【解決手段】第1、第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、第1、第2プラスチックレンズのうち何れか一方が第1温度T1であって、且つ他方が第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、T1>T2 (1) W1>W2 (2)となるように設計することにより、第1、第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じた場合に発生する全系の球面収差、及び/又は、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合に発生する全系の球面収差を小さく抑える。
【選択図】 図6
【解決手段】第1、第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、第1、第2プラスチックレンズのうち何れか一方が第1温度T1であって、且つ他方が第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、T1>T2 (1) W1>W2 (2)となるように設計することにより、第1、第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じた場合に発生する全系の球面収差、及び/又は、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合に発生する全系の球面収差を小さく抑える。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置、並びにそれに用いる対物レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年における光ディスクの高密度化の流れに伴い、それら高密度光ディスクへの情報の記録及び/又は再生に使用される光ピックアップ装置の対物レンズは、集光スポットをより小さくするという要求から、その開口数(NA)が高いものが用いられるようになっている。例えば、波長(λ)405nmの青紫色半導体レーザ光源を使用するBD(ブルーレイディスク)では、高密度化を達成するためにNA0.85の対物レンズが必要であるとされている。
【0003】
すでに一般化されたCD、MO、DVDなどの光ディスクへの情報の記録及び/又は再生に使用される対物レンズには、軽量であること、及び金型を用いた射出成形により低コストで大量生産できること、などの理由により主にプラスチックレンズが使用されているが、高密度光ディスクの光ピックアップ装置においても、同様の理由により対物レンズとしてプラスチックレンズを使用するのが好ましい。
【0004】
本出願人は先に、2群構成とすることで十分な製造公差を確保しつつNA0.85を実現し、更に、高NAでありながら、光源側に配置される第1プラスチックレンズと光ディスク側に配置される第2プラスチックレンズとのパワーの比を適切に設定することで、温度変化に伴う屈折率変化で生じる球面収差発生を小さく抑えたプラスチックレンズを提案した(特許文献1参照)。
【特許文献1】
特開2002−236252号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
光ピックアップ装置では、対物レンズを取り付けたボビンを駆動させることでフォーカシングやトラッキングを行うのが一般的である。この際、フォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルとマグネットとの間に生じる電磁力を利用してボビンを駆動させるため、光ピックアップ装置の動作中にはフォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルの発熱により対物レンズの温度が上昇する。
【0006】
ここで、2群構成の高NAプラスチックレンズを対物レンズとしてボビンに取り付ける場合には、対物レンズを含めたボビンの重心位置を最適化するために、図1に示すように、第1プラスチックレンズをボビンに保持させるようにするのが好ましい。しかるに、このように2群構成の高NAプラスチックレンズをボビンに取り付けた場合、光ピックアップ装置の動作中に光ディスク側に配置された第2プラスチックレンズの温度よりも、フォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルに近い第1プラスチックレンズの温度が高くなる傾向がある。更に、図1に示すように2群構成の高NAプラスチックレンズをボビンに取り付けた場合、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとの間の温度差に加え、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じる場合がある。例えば、レンズ先端(光源に近い方)からレンズ終端(光ディスクに近い方)に向かって温度が低くなる光軸方向の温度分布(図1において、Z軸方向の温度分布)や、レンズ中心(光軸に近い方)からレンズ周辺(フォーカシングコイルやトラッキングコイルに近い方)に向かって温度が高くなる径方向の温度分布(図1において、R方向の温度分布)である。
【0007】
上記の特許文献1に記載の高NAプラスチックレンズは、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとが温度差なく温度上昇し、且つそれぞれのプラスチックレンズ内の温度は均一である状態に対して球面収差発生を小さく抑えるという設計思想のもとに、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとのパワーの比が最適化されているため、上記のように、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じたり、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じると球面収差が発生し、高密度光ディスクに対する情報の記録及び/又は再生に支障を来すおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、2つのプラスチックレンズから構成され、高密度光ディスクの光ピックアップ装置用の対物レンズとして好適な対物レンズであって、2つのプラスチックレンズ間に温度差が生じた場合、及び/又は少なくとも1つのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合であっても、球面収差の発生が小さいプラスチックレンズを提供することを日的とする。また、このプラスチックレンズを対物レンズとして使用する光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置を提供することも本発明の目的である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以下に、本発明による対物レンズにおける、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じた場合に発生する球面収差の補正原理について具体的な数値を挙げて説明する。
【0010】
設計基準温度が25℃である2群構成の高NAプラスチックレンズにおいて、第1プラスチックレンズの温度が55℃に上昇した場合の全系の球面収差を図2(a)に示し、第2プラスチックレンズの温度が55℃に上昇した場合の全系の球面収差を図2(b)に示す。これらの球面収差図から理解されるように、第1プラスチックレンズは温度上昇により全系の球面収差をアンダー(補正不足)方向に変化させ、第2プラスチックレンズは温度上昇により全系の球面収差をオーバー(補正過剰)方向に変化させる。
【0011】
ここで、第1プラスチックレンズの寄与によりアンダー方向に変化する球面収差量に対して、第2プラスチックレンズの寄与によりオーバー方向に変化する球面収差量を最適化(すなわち、第1プラスチックレンズのパワーに対して第2プラスチックレンズとのパワーを最適化)させることで、2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃に上昇した場合の全系の球面収差を図2(c)に示すようにフルコレクション(完全補正)とすることができ、上述の特許文献1に記載の対物レンズのように、高NAのプラスチックレンズでありながら使用可能な温度範囲の広い対物レンズを得ることができる。このような設計思想のもとに設計された高NAプラスチックレンズのレンズデータを表1に示す。尚、これ以降(表のレンズデータ含む)において、10のべき乗数(例えば 2.5×10−3)を、E(例えば 2.5×E―3)を用いて表すものとする。
【表1】
【0012】
しかるに、2群構成の高NAプラスチックレンズを搭載した光ピックアップ装置では、図1に示したように、第1プラスチックレンズがフォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルに近い位置となるようにボビンに取り付けられるので、第1プラスチックレンズの温度の方が第2プラスチックレンズの温度よりも高くなる。例えば、表1の高NAプラスチックレンズにおいて、第1プラスチックレンズの温度が55℃に上昇し、これに対して第2プラスチックレンズの温度は35℃までしか上昇しない場合には、温度上昇により球面収差をオーバー方向に変化させる第2プラスチックレンズの寄与が小さくなるので、図3に示すように全系の球面収差はアンダーとなり0.039λRMSの波面収差が発生する。
【0013】
これに対し、レンズ設計の段階で、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である状態に対して、球面収差がフルコレクションとなるように、第1プラスチックレンズのパワーに対して第2プラスチックレンズとのパワーを最適化しておくことで、光ピックアップ装置の動作中の温度上昇で、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとに温度差が生じた場合でも球面収差の発生を小さく抑えることができる。
【0014】
このような手法により設計された高NA対物レンズのレンズデータを表2に示し、更に、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である状態における全系の球面収差を図4に示す。この球面収差図から理解されるように、表2の高NA対物レンズは第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である状態に対して球面収差がフルコレクションとなり、2つのプラスチックレンズ間に20℃の温度差が生じた場合でも波面収差は0.010λRMSに留まり、表1の高NAプラスチックレンズに比べて約1/4に改善されている。表2の高NAプラスチックレンズにおいて、2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差は、温度上昇により球面収差をオーバー方向に変化させる第2プラスチックレンズの寄与が大きくなるので、図5に示すようにオーバーとなる。
【表2】
【0015】
上記の例では、フォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルの発熱の影響で、第1プラスチックレンズの温度が55℃に上昇した場合における、第2プラスチックレンズの温度を35℃として説明したが、本発明による2つのプラスチックレンズに温度差が生じた場合に発生する球面収差の補正原理は、20℃以外の温度差に対して適用することができることはいうまでもない。更に、上記の例では、フォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルの発熱の影響で、第1プラスチックレンズの温度の方が第2プラスチックレンズの温度よりも高くなる場合について説明したが、第2プラスチックレンズの温度の方が第1プラスチックレンズの温度よりも高くなる場合にも、本発明による2つのプラスチックレンズに温度差が生じた場合に発生する球面収差の補正原理と同様の考え方で、温度上昇により発生する球面収差を小さく抑えることができる。
【0016】
以上の説明では、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布は均一であるとしたが、次に、光ピックアップ装置の動作中にフォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルの発熱の影響で、それぞれのプラスチックレンズ内で光軸方向の温度分布、及び径方向の温度分布が発生した場合の収差変化について考察する。
【0017】
始めに、それぞれのプラスチックレンズ内での光軸方向の温度分布の影響について考察する。単純化するために、第1プラスチックレンズ内の光軸方向の温度分布のみを考え、先端で25+ΔT(℃)、中心で25℃(設計基準温度)、終端で25−ΔT(℃)となるような線形の温度分布を仮定する。このとき、第2プラスチックレンズは均一に25℃(設計基準温度)であるとする。
【0018】
表1の高NAプラスチックレンズにおいて、第1プラスチックレンズに先端から終端に向かって温度が低くなる温度分布が発生した場合は、全系の球面収差はアンダーとなる。両端での温度振幅ΔTが5℃である場合の波面収差は0.024λRMSであるが、光軸方向の温度分布により発生する波面収差量は温度振幅ΔTにほぼ比例する。一方、先端から終端に向かって温度が高くなる温度分布が発生した場合は、全系の球面収差はオーバーとなる。
【0019】
また、第2プラスチックレンズ内で光軸方向の温度分布が発生した場合の全系の球面収差変化の傾向は、第1プラスチックレンズ内で温度方向の温度分布が発生した場合と同様である。
【0020】
そして、第1プラスチックレンズ内、及び第2プラスチックレンズ内で光軸方向の温度分布が同時に発生した場合の波面収差の変化量は、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布による波面収差の変化量の単純な和とほぼ等しい。
【0021】
更に、それぞれのプラスチックレンズ内での径方向の温度分布の影響について考察する。単純化するために、第1プラスチックレンズ内の径方向の温度分布のみを考え、光軸上で25℃(設計基準温度)、光軸からの高さが1.5mmの周辺位置が25+ΔT(℃)となるような径方向の温度分布を仮定する。このとき、第2プラスチックレンズは均一に25℃(設計基準温度)であるとする。
【0022】
表1の高NAプラスチックレンズにおいて、第1プラスチックレンズの径方向の温度分布を4次関数と仮定した場合は全系の球面収差はアンダーとなり、光軸上と周辺位置との温度差ΔTが2℃である場合には0.033λRMSの波面収差が発生する。一方、第1プラスチックレンズの径方向の温度分布を2次関数と仮定した場合は全系の球面収差はオーバーとなり、光軸上と周辺位置との温度差ΔTが2℃である場合には0.025λRMSの波面収差が発生する。径方向の温度分布により発生する波面収差量は、光軸上と周辺位置との温度差ΔTとほぼ比例の関係にある。
【0023】
また、第2プラスチックレンズ内で径方向の温度分布が発生した場合の全系の球面収差変化の傾向は、第1プラスチックレンズ内で径方向の温度分布が発生した場合と同様である。
【0024】
そして、第1プラスチックレンズ内、及び第2プラスチックレンズ内で同時に径方向の温度分布が発生した場合の波面収差の発生量は、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布による波面収差の発生量の単純な和とほぼ等しい。
【0025】
尚、それぞれのプラスチックレンズ内で、光軸方向の温度分布と径方向の温度分布とが同時に発生した場合の波面収差の発生量は、それぞれの温度分布による波面収差の発生量の単純な和とほぼ等しくなり、更に、2つのプラスチックレンズ間に温度差が生じた場合(但し、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布は均一)の波面収差の変化量と、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布による波面収差の変化量との間には単純な重ね合わせが成り立つ。
【0026】
以上、説明したように、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布は、2つのプラスチックレンズ間に温度差が生じる場合と同様に、球面収差発生を引き起こす。従って、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布により発生する球面収差が、2つのプラスチックレンズ間の温度差に起因するものと仮定して、第1プラスチックレンズのパワーに対する第2プラスチックレンズのパワーを最適化することで、2つのプラスチックレンズ間に温度差が生じる場合と同様に、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合の球面収差の発生を小さく抑えることが可能となる。
【0027】
以下に具体的な数値を挙げて説明する。例えば、第1プラスチックレンズに先端で60℃、中心で55℃、終端で50℃となるような線形の光軸方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に40℃となるように温度上昇した場合、表1のプラスチックレンズでは、図11に示すように全系の球面収差はアンダーとなり、0.056λRMSの波面収差が発生する。これは、第1プラスチックレンズが均一に55℃であリ、且つ第2プラスチックレンズが均ーに40℃である場合の波面収差0.033λRMSと、第1プラスチックレンズに先端で30(℃)、中心で25℃(設計基準温度)、終端で20(℃)となるような線形の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に25℃(設計基準温度)である場合の波面収差0.024λRMSとの単純な和にほぼ等しい。
【0028】
これに対し、同様に、第1プラスチックレンズに先端で60℃、中心で55℃、終端で50℃となるような線形の光軸方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に40℃となるように温度上昇した場合、表4のプラスチックレンズでは、図12に示すように全系の球面収差はフルコレクションとなり、波面収差の発生は0.016λRMSに留まり、表1の高NAプラスチックレンズに比ベて約1/4に改善されている。
【0029】
このように、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じた場合に発生する球面収差の補正原理を適用することで、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合の球面収差の発生も小さく抑えることが可能である。尚、本発明の技術範囲は、上記の例にのみ限定されるものではない。
【0030】
尚、表1及び表2のレンズデータにおいて、非球面はその面の頂点に接する平面からの変形量をX(mm)、光軸に垂直な方向の高さをh(mm)、曲率半径をr(mm)とするとき、次の数1で表される。ただし、κを円錐係数、A2iを非球面係数とする。
【数1】
【0031】
また、表1及び表2のレンズデータにおいて、NAは開口数、λ(nm)は設計波長、f(mm)は全系の焦点距離、mは全系の倍率、r(mm)は曲率半径、d(mm)は面間隔、Nλは設計波長における屈折率、νdはd線におけるアッベ数を表し、温度変化に対する屈折率の変化率は第1プラスチックレンズ、第2プラスチックレンズ共に−1.1×10−4/℃である。
【0032】
請求項1に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされた光ピックアップ装置用の対物レンズにおいて、
前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズのうち何れか一方が前記第1温度T1であって、且つ他方がある第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、
T1>T2 (1)
W1>W2 (2)
となるように設計されたことを特徴とするので、前記第1プラスナックレンズと前記第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じた場合に発生する全系の球面収差、及び/又は、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合に発生する全系の球面収差を小さく抑えることができる。
【0033】
請求項2に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされた光ピックアップ装置用の対物レンズにおいて、
前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズのうち何れか一方が前記第1温度T1であって、且つ他方がある第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、
T1>T2 (3)
70(℃)≧T1≧45(℃) (4)
W1>W2 (5)
となるように設計されたことを特徴とするので、前記第1プラスナックレンズと前記第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じた場合に発生する全系の球面収差、及び/又は、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合に発生する全系の球面収差を小さく抑えることができる。
【0034】
請求項3に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項2に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
40(℃)>T1−T2>0(℃) (6)
【0035】
請求項4に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項3に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
30(℃)>T1−T2>5(℃) (7)
【0036】
請求項5に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項4に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
W2<0.07(λRMS) (8)
【0037】
請求項6に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1乃至5の何れか1項に記載の発明において、前記波面収差RMS値W2は、前記第1プラスチックレンズが前記第1温度T1であって、且つ前記第2プラスチックレンズが前記第2温度T2である場合の波面収差RMS値であることを特徴とする。
【0038】
請求項7に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされた光ピックアップ装置用の対物レンズにおいて、
前記対物レンズの開口数をNA、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、温度変化に対する波面収差RMS値の3次球面収差成分の変化率をΔ3SA(λRMS)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))>0 (9)
本発明によれば、前記第1プラスナックレンズと前記第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じた場合に発生する全系の球面収差、及び/又は、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合に発生する全系の球面収差を小さく抑えることができる。
【0039】
ここで、温度変化に対する波面収差RMS値の3次球面収差成分の変化率Δ3SA(λRMS)は、対物レンズを25℃の環境温度下に放置して、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズとの温度差がなくなった定常状態で測定した波面収差RMS値の3次球面収差成分を3SA(λRMS)とし、対物レンズを55℃の環境温度下に放置して、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズとが温度差なく温められた定常状態で測定した波面収差RMS値の3次球面収差成分を3SA’(λRMS)としたとき、
Δ3SA=(3SA’−3SA)/(55−25)
で算出される値である。尚、波面収差RMS値の3次球面収差成分の符号は、オーバーである場合を「+」とし、アンダーである場合を「−」とする。
【0040】
請求項8に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項7に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))≧0.0003 (10)
【0041】
請求項9に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項8に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))≧0.0006 (11)
【0042】
請求項10に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1乃至9の何れか1項に記載の発明において、温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL1、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、前記対物レンズのバックフォーカスをfB(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
1.7>ΔNL2/ΔNL1>0.6 (12)
0.16<fB/(f・(1−m))<0.32 (13)
【0043】
温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率変化率であるΔNL1と、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率変化率であるΔNL2とが(12)式を満たす場合には、対物レンズ全系の焦点距離f(mm)と対物レンズ全系の倍率mとに対して、前記対物レンズのバックフォーカスfB(mm)を(13)式をみたすように設定することで、以下の利点を得ることができる。
【0044】
まず、対物レンズのバックフォーカスfB(mm)を、(13)式の下限を上回るように設定すると、温度上昇により球面収差をオーバー方向に変化させる前記第2プラスチックレンズの寄与が小さくなりすぎることを防ぐので、前記第1プラスチックレンズの温度の方が前記第2プラスチックレンズの温度より高くなった場合に全系の球面収差がアンダーになりすぎるのを抑制できる。
【0045】
一方、対物レンズのバックフォーカスfB(mm)を、(13)式の上限を下回るように設定すると、温度上昇により球面収差をオーバー方向に変化させる前記第2プラスチックレンズの寄与が大きくなりすぎることを防ぐので、前記第1プラスチックレンズの温度の方が前記第2プラスチックレンズの温度より高くなった場合に全系の球面収差がオーバーになりすぎるのを抑制できる。従って、前記第1プラスチックレンズの温度の方が前記第2プラスチックレンズの温度より高くなった場合の全系の球面収差の発生が大きくなることを抑制し、光情報記録媒体に対する情報の記録及び/又は再生に支障を来すおそれを回避できる。
【0046】
請求項11に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1乃至9の何れか1項に記載の発明において、温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL1、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、前記対物レンズのバックフォーカスをfB(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
5>ΔNL2/ΔNL1>1.7 (14)
0.10<fB/(f・(1−m))<0.25 (15)
【0047】
請求項12に記載の発明において、温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率変化率であるΔNL1と、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率変化率であるΔNL2との間で、(14)式を満たすような差がある場合には、前記対物レンズ全系の焦点距離f(mm)と前記対物レンズ全系の倍率mとに対して、前記対物レンズのバックフォーカスfB(mm)を(15)式をみたすように設定することで、以下の利点を得ることができる。
【0048】
まず、前記対物レンズのバックフォーカスfB(mm)を(15)式の下限を上回るように設定すると、温度上昇により球面収差をオーバー方向に変化させる前記第2プラスチックレンズの寄与が小さくなりすぎるのを防ぐので、前記第1プラスチックレンズの温度の方が前記第2プラスチックレンズの温度より高くなった場合に全系の球面収差がアンダーになりすぎることを抑制できる。
【0049】
一方、前記対物レンズのバックフォーカスfB(mm)を(15)式の上限を下回るように設定すると、温度上昇により球面収差をオーバー方向に変化させる前記第2プラスチックレンズの寄与が大きくなりすぎるのを防ぐので、前記第1プラスチックレンズの温度の方が前記第2プラスチックレンズの温度より高くなった場合に全系の球面収差がオーバーになりすぎることを抑制できる。従って、前記第1プラスチックレンズの温度の方が前記第2プラスチックレンズの温度より高くなった場合の全系の球面収差の発生を抑制でき、光情報記録媒体に対する情報の記録及び/又は再生に支障を来す恐れを回避できる。
【0050】
尚、上述の(13)式及び(15)式における前記対物レンズのバックフォーカスfB(mm)は対物レンズの最も光情報記録媒体側の光学面と、光情報記録媒体の保護層との光軸上の距離を指す。
【0051】
請求項12に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1乃至11の何れか1項に記載の発明において、前記第2プラスチックレンズの倍率をβL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、光軸に垂直で第1プラスチックレンズの光源側の光学面の頂点に接する平面と、有効径最周辺における前記第1プラスチックレンズの光源側の光学面との光軸方向の差をX1(mm)、光軸に垂直で第2プラスチックレンズの光源側の光学面の頂点に接する平面と、有効径最周辺における前記第2プラスチックレンズの光源側の光学面との光軸方向の差をX3(mm)、前記第1プラスチックレンズの使用波長における屈折率をN1、前記第2プラスチックレンズの使用波長における屈折率をN2、前記第1プラスチックレンズの焦点距離をf1(mm)、前記第1プラスチックレンズの焦点距離をf2(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
0.45>βL2/(1−m)>0.15 (16)
−0.015>ΔSAG>−0.085 (17)
ΔSAG=(X1’−X3’)/(NA4・f・(1−m)) (18)
X1’=X1・(N1−1)3/f1 (19)
X3’=X3・(N2−1)3/f2 (20)
【0052】
ここで、X1とX3の符号は、上記接平面を基準として光ディスクの方向に測る場合を正、光源の方向に測る場合を負とする。
【0053】
請求項12に記載の対物レンズにおいて、(16)乃至(20)式を満たすと、前記第1プラスチックレンズの寄与によりアンダー方向に変化する球面収差量と前記第2プラスチックレンズの寄与によりオーバー方向に変化する球面収差量とをバランスさせることが可能となり、光ピックアップ装置の動作中に発生する前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズとの温度差に対して全系の球面収差の発生を小さく抑えることができる。
【0054】
請求項13に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1乃至12の何れか1項に記載の発明において、前記第1プラスチックレンズはその光学機能部よりも周辺側の部分に第1フランジ部を有し、前記第2プラスチックレンズはその光学機能部よりも周辺側の部分に第2フランジ部を有し、前記第1フランジ部の少なくとも一部と前記第2フランジ部の少なくとも一部とを当接することで、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズは一体化され、前記第1フランジ部を含めた前記第1プラスチックレンズの外径をD1(mm)、前記第2フランジ部を含めた前記第2プラスチックレンズの外径をD2(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
D1>D2 (21)
【0055】
本発明においては、上記のような構造を有するために、光ピックアップ装置の動作中に発生する前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズとの温度差、及び/又は、それぞれのプラスチックレンズ内で生じる温度分布に対して全系の球面収差の発生を小さく抑えるという作用効果を最大限に発揮することができる。
【0056】
請求項14に記載の光ピックアップ装置は、光源と、前記光源からの光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させることによって、前記情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行うようになっている対物レンズを含む集光光学系とを有する光ピックアップ装置において、
前記対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされており、
前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズのうち何れか一方が前記第1温度T1であって、且つ他方がある第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、
T1>T2 (1)
W1>W2 (2)
となるように設計されたことを特徴とする。本発明の作用効果は、請求項1に記載の発明と同様である。
【0057】
請求項15に記載の光ピックアップ装置は、光源と、前記光源からの光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させることによって、前記情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行うようになっている対物レンズを含む集光光学系とを有する光ピックアップ装置において、
前記対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされており、
前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズのうち何れか一方が前記第1温度T1であって、且つ他方がある第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、
T1>T2 (3)
70(℃)≧T1≧45(℃) (4)
W1>W2 (5)
となるように設計されたことを特徴とする。本発明の作用効果は、請求項2に記載の発明と同様である。
【0058】
請求項16に記載の光ピックアップ装置は、請求項15に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
40(℃)>T1−T2>0(℃) (6)
【0059】
請求項17に記載の光ピックアップ装置は、請求項16に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
30(℃)>T1−T2>5(℃) (7)
【0060】
請求項18に記載の光ピックアップ装置は、請求項17に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
W2<0.07(λRMS) (8)
【0061】
請求項19に記載の光ピックアップ装置は、請求項14乃至18のいずれかに記載の発明において、前記波面収差RMS値W2は、前記第1プラスチックレンズが前記第1温度T1であって、且つ前記第2プラスチックレンズが前記第2温度T2である場合の波面収差RMS値であることを特徴とする。
【0062】
請求項20に記載の光ピックアップ装置は、光源と、前記光源からの光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させることによって、前記情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行うようになっている対物レンズを含む集光光学系とを有する光ピックアップ装置において、
前記対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされており、
前記対物レンズの開口数をNA、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、温度変化に対する波面収差RMS値の3次球面収差成分の変化率をΔ3SA(λRMS)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))>0 (9)
本発明の作用効果は、請求項7に記載の発明と同様である。
【0063】
請求項21に記載の光ピックアップ装置は、請求項20に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))≧0.0003 (10)
【0064】
請求項22に記載の光ピックアップ装置は、請求項21に記載の発明において、
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))≧0.0006 (11)
【0065】
請求項23に記載の光ピックアップ装置は、請求項14乃至22の何れかに記載の発明において、温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL1、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、前記対物レンズのバックフォーカスをfB(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
1.7>ΔNL2/ΔNL1>0.6 (12)
0.16<fB/(f・(1−m))<0.32 (13)
【0066】
請求項24に記載の光ピックアップ装置は、請求項14乃至22の何れかに記載の発明において、温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL1、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、前記対物レンズのバックフォーカスをfB(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
5>ΔNL2/ΔNL1>1.7 (14)
0.10<fB/(f・(1−m))<0.25 (15)
【0067】
請求項25に記載の光ピックアップ装置は、請求項14乃至24の何れかに記載の発明において、前記第2プラスチックレンズの倍率をβL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、光軸に垂直で第1プラスチックレンズの光源側の光学面の頂点に接する平面と、有効径最周辺における前記第1プラスチックレンズの光源側の光学面との光軸方向の差をX1(mm)、光軸に垂直で第2プラスチックレンズの光源側の光学面の頂点に接する平面と、有効径最周辺における前記第2プラスチックレンズの光源側の光学面との光軸方向の差をX3(mm)、前記第1プラスチックレンズの使用波長における屈折率をN1、前記第2プラスチックレンズの使用波長における屈折率をN2、前記第1プラスチックレンズの焦点距離をf1(mm)、前記第1プラスチックレンズの焦点距離をf2(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
0.45>βL2/(1−m)>0.15 (16)
−0.015>ΔSAG>−0.085 (17)
ΔSAG=(X1’−X3’)/(NA4・f・(1−m)) (18)
X1’=X1・(N1−1)3/f1 (19)
X3’=X3・(N2−1)3/f2 (20)
【0068】
請求項26に記載の光ピックアップ装置は、請求項14乃至25の何れかに記載の発明において、前記第1プラスチックレンズはその光学機能部よりも周辺側の部分に第1フランジ部を有し、前記第2プラスチックレンズはその光学機能部よりも周辺側の部分に第2フランジ部を有し、前記第1フランジ部の少なくとも一部と前記第2フランジ部の少なくとも一部とを当接することで、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズは一体化され、前記第1フランジ部を含めた前記第1プラスチックレンズの外径をD1(mm)、前記第2フランジ部を含めた前記第2プラスチックレンズの外径をD2(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
D1>D2 (21)
【0069】
請求項27に記載の光ピックアップ装置は、請求項14乃至26のいずれかに記載の発明において、前記第1プラスチックレンズをアクチュエータにより駆動されるボビンに保持させたことを特徴とする。
【0070】
請求項29に記載の光情報記録再生装置は、請求項14乃至27のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置と、前記光情報記録媒体を支持する媒体支持装置とを有することを特徴とする。
【0071】
なお、本明細書において、「光ピックアップ装置用の対物レンズ」とは、光ピックアップ装置に光情報記録媒体を装填した状態において最も光情報記録媒体側の位置でこれと対向すべく配置され、アクチュエータによって少なくともその光軸方向に移動可能なレンズ群を指すものとする。そして、「開口数」とは光情報記録媒体の規格で規定されている開口数、或いは光情報記録媒体に対して光源波長に応じ情報の記録及び/又は再生を行うために必要なスポット径を得ることが可能な対物レンズの最も光情報記録媒体側に位置する光学面の像側開口数を指す。「光情報記録媒体」とは、CD,MO、DVD、BDなどの光ディスクをいうが、特に短波長光源を用いるBDにおいて本発明は有効である。「光学機能部」とは、光源からの光束が通過する部位をいう。
【0072】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による対物レンズの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図6は、本実施の形態の対物レンズOBJの概略断面図である。この対物レンズOBJは、例えば、波長405nmの青紫色半導体レーザ光源を使用するBD(ブルーレイディスク)を記録及び/又は再生するための光ピックアップ装置に適用され、光源から発したレーザ光を光ディスク(光情報記録媒体)の保護層PLを介して情報記録面RL上に集光させる機能を有している。
【0073】
対物レンズOBJは、光源側に配置され正のパワーを有する第1プラスチックレンズL1と、光ディスク側に配置され正のパワーを有する第2プラスチックレンズL2とから構成される2群構成のプラスチックレンズであり、2つのプラスチックレンズから得られるNAは0.85である。第1プラスチックレンズL1と第2プラスチックレンズL2は光学機能部OFP(図6では斜線部)よりも周辺側の部分に、それぞれ光学機能部OFPと一体に成形された第1フランジ部FL1と第2フランジ部FL2とを有しており、第1フランジ部と第2フランジ部の一部同士(図6では当接部M)を当接することで第1プラスチックレンズL1と第2プラスチックレンズL2は一体化されている。
【0074】
図7は、上記の対物レンズOBJを搭載した光ピックアップ装置PUの構成を概略的に示す図である。光ピックアップ装置PUは、光源としての青紫色半導体レーザLD、偏光ビームスプリッタBS、コリメートレンズCL、1/4波長板WP、絞りST、対物レンズOBJ、2軸アクチュエータAC、シリンドリカルレンズCY、凹レンズNL、及び光検出器PDとから構成される。尚、光ピックアップ装置PUにおいて、青紫色半導体レーザの代わりに青紫色SHGレーザを光源として使用しても良い。
【0075】
青紫色半導体レーザLDから射出された発散光束は、偏光ビームスプリッタBSを透過し、コリメートレンズCL、及び1/4波長板WPを経て円偏光の平行光束となった後、絞りSTにより光束径が規制され、対物レンズOBJによって光ディスクODの保護層PLを介して情報記録面RL上に形成されるスポットとなる。
【0076】
情報記録面RLで情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOBJ、絞りST、1/4波長板WP、及びコリメートレンズCLを透過した後、収斂光束となり、偏光ビームスプリッタBSによって反射され、シリンドリカルレンズCY、凹レンズNLを経ることによって非点収差が与えられ、光検出器PDに収束する。そして、光検出器PDの出力信号を用いて光ディスクODに記録された情報を読み取ることができる。
【0077】
対物レンズOBJは、図1に示したように、第1プラスチックレンズL1の第1フランジ部FL1の当接により、2軸アクチュエータACで駆動されるボビンB(図1参照)に保持されているため、光ピックアップ装置PUの動作中には、2軸アクチュエータACを構成するフォーカシングコイルFC及び/又はトラッキングコイルTCの発熱により、フォーカシングコイルFC及び/又はトラッキングコイルTCにより近い位置にある第1プラスチックレンズL1の温度のほうが、第2プラスチックレンズL2の温度よりも高くなったり、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じる。
【0078】
これに対して、対物レンズOBJは、上述の(1)式乃至(21)式を満たすように設計されているので、フォーカシングコイルFC及び/又はトラッキングコイルTCにより近い位置にある第1プラスチックレンズL1の温度が、第2プラスチックレンズL2の温度よりも高くなった場合や、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合でも全系の球面収差の発生は小さく、常に安定した情報の記録及び/又は再生が可能である。
【0079】
[実施例]
次に上述した対物レンズOBJとして好適な対物レンズの具体例を3例提示する。
【0080】
(実施例1)
表3にレンズデータを示す実施例1の対物レンズは、設計基準温度が25℃、開口数NAが0.85、設計波長λが405nm、全系の焦点距離fが1.7647mm、全系の倍率mが0である2群構成のプラスチックレンズである。
【表3】
表3のレンズデータにおいて、NAは開口数、λ(nm)は設計波長、f(mm)は全系の焦点距離、mは全系の倍率、r(mm)は曲率半径、d(mm)は面間隔、Nλは設計波長における屈折率、νdはd線におけるアッベ数を表し、温度変化に対する屈折率の変化率は第1プラスチックレンズ、第2プラスチックレンズ共に−1.1×10−4/℃である。
【0081】
又、表3のレンズデータにおいて、非球面はその面の頂点に接する平面からの変形量をX(mm)、光軸に垂直な方向の高さをh(mm)、曲率半径をr(mm)とするとき、上述の数1で表される。ただし、κを円錐係数、A2iを非球面係数とする。
【0082】
図8(a)に、2つのプラスチックレンズの温度が共に設計基準波長である25℃である場合の全系の球面収差を示し、図8(b)に、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が45℃である場合の全系の球面収差を示し、図8(c)に、2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差を示す。これらの球面収差図から理解されるように、実施例1の対物レンズは、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が45℃である状態に対して球面収差がフルコレクションとなるように設計されている。図8(a)乃至(c)の状態での波面収差RMS値は、それぞれ、0.001λRMS、0.012λRMS、0.026λRMSである。実施例1の対物レンズの(1)式乃至(21)式に対応する値は、T1=55℃、T2=45℃とすると、表4に示す通りとなる。尚、上記の波面収差は、それぞれのプラスチックレンズ内の温度分布は考慮していないが、実施例1の対物レンズは、例えば、第1プラスチックレンズに光軸上で55℃、光軸からの高さが2.4mmの周辺位置で58℃となるような径方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に50℃となるように温度上昇した状態に対して球面収差がフルコレクションとなり、このときの波面収差RMS値は0.016λRMSである。
【表4】
【0083】
(実施例2)
表5にレンズデータを示す実施例2の対物レンズは、設計基準温度が25℃、開口数NAが0.85、設計波長λが405nm、全系の焦点距離fが1.7647mm、全系の倍率mが−0.089である2群構成のプラスチックレンズである。
【表5】
【0084】
表5のレンズデータにおいて、NAは開口数、λ(nm)は設計波長、f(mm)は全系の焦点距離、mは全系の倍率、r(mm)は曲率半径、d(mm)は面間隔、Nλは設計波長における屈折率、νdはd線におけるアッベ数を表し、温度変化に対する屈折率の変化率は第1プラスチックレンズ、第2プラスチックレンズ共に−1.1×10−4/℃である。
【0085】
又、表5のレンズデータにおいて、非球面はその面の頂点に接する平面からの変形量をX(mm)、光軸に垂直な方向の高さをh(mm)、曲率半径をr(mm)とするとき、上述の数1で表される。ただし、κを円錐係数、A2iを非球面係数とする。
【0086】
図9(a)に、2つのプラスチックレンズの温度が共に設計基準波長である25℃である場合の全系の球面収差を示し、図9(b)に、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が40℃である場合の全系の球面収差を示し、図9(c)に、2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差を示す。これらの球面収差図から理解されるように、実施例2の対物レンズは、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が40℃である状態に対して球面収差がフルコレクションとなるように設計されている。図9(a)乃至(c)の状態での波面収差RMS値は、それぞれ、0.001λRMS、0.010λRMS、0.054λRMSである。実施例2の対物レンズの(1)式乃至(21)式に対応する値は、T1=55℃、T2=40℃とすると、表4に示す通りとなる。尚、上記の波面収差は、それぞれのプラスチックレンズ内の温度分布は考慮していないが、実施例2の対物レンズは、例えば、第1プラスチックレンズに先端で60℃、中心で55℃、終端で50℃となるような線形の光軸方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に45℃となるように温度上昇した状態に対して球面収差がフルコレクションとなり、このときの波面収差RMS値は0.016λRMSである。
【0087】
(実施例3)
表6にレンズデータを示す実施例3の対物レンズは、設計基準温度が25℃、開口数NAが0.85、設計波長λが405nm、全系の焦点距離fが1.7647mm、全系の倍率mが0である2群構成のプラスチックレンズである。
【表6】
【0088】
表6のレンズデータにおいて、NAは開口数、λ(nm)は設計波長、f(mm)は全系の焦点距離、mは全系の倍率、r(mm)は曲率半径、d(mm)は面間隔、Nλは設計波長における屈折率、νdはd線におけるアッベ数を表し、温度変化に対する屈折率の変化率は第1プラスチックレンズが−1.1×10−4/℃であり、第2プラスチックレンズが−3.3×10−4/℃である。
【0089】
又、表6のレンズデータにおいて、非球面はその面の頂点に接する平面からの変形量をX(mm)、光軸に垂直な方向の高さをh(mm)、曲率半径をr(mm)とするとき、上述の数1で表される。ただし、κを円錐係数、A2iを非球面係数とする。
【0090】
図10(a)に、2つのプラスチックレンズの温度が共に設計基準波長である25℃である場合の全系の球面収差を示し、図10(b)に、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である場合の全系の球面収差を示し、図10(c)に、2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差を示す。これらの球面収差図から理解されるように、実施例3の対物レンズは、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である状態に対して球面収差がフルコレクションとなるように設計されている。図10(a)乃至(c)の状態での波面収差RMS値は、それぞれ、0.001λRMS、0.011λRMS、0.111λRMSである。実施例3の対物レンズの(1)式乃至(21)式に対応する値は、T1=55℃、T2=35℃とすると、表4に示す通りとなる。尚、上記の波面収差は、それぞれのプラスチックレンズ内の温度分布は考慮していないが、実施例3の対物レンズは、例えば、第1プラスチックレンズに先端で62℃、中心で55℃、終端で48℃となるような線形の光軸方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に40℃となるように温度上昇した状態に対して球面収差がフルコレクションとなり、このときの波面収差RMS値は0.020λRMSである。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、2つのプラスチックレンズから構成され、高密度光ディスクの光ピックアップ装置用の対物レンズとして好適な対物レンズであって、2つのプラスチックレンズ間に温度差が生じた場合、及び/又は、少なくとも1つのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合であっても、球面収差の発生が小さいプラスチックレンズを提供することができ、また、このプラスチックレンズを対物レンズとして使用する光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】対物レンズをボビンに保持した状態で示す正面図(a)及び断面図である。
【図2】第1プラスチックレンズの温度が55℃に上昇した場合の全系の球面収差図(a)、第2プラスチックレンズの温度が55℃に上昇した場合の全系の球面収差図(b)、及び2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃に上昇した場合の全系の球面収差図(c)である。
【図3】第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度は35℃である場合の全系の球面収差図である。
【図4】第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である状態における全系の球面収差図である。
【図5】第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である状態における全系の球面収差図である。
【図6】本実施の形態の対物レンズOBJの概略断面図である。
【図7】本実施の形態の対物レンズOBJを搭載した光ピックアップ装置PUの構成を概略的に示す図である。
【図8】第1及び第2プラスチックレンズの温度が共に設計基準波長である25℃である場合の全系の球面収差図(a)、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が45℃である場合の全系の球面収差図(b)、及び2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差図(c)である。
【図9】第1及び第2プラスチックレンズの温度が共に設計基準波長である25℃である場合の全系の球面収差図(a)、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が40℃である場合の全系の球面収差図(b)、及び2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差図(c)である。
【図10】第1及び第2プラスチックレンズの温度が共に設計基準波長である25℃である場合の全系の球面収差図(a)、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である場合の全系の球面収差図(b)、及び2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差図(c)である。
【図11】第1プラスチックレンズに先端で60℃、中心で55℃、終端で50℃となるような線形の光軸方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に40℃となるように温度上昇した場合の全系の球面収差を示す図である。
【図12】第1プラスチックレンズに先端で60℃、中心で55℃、終端で50℃となるような線形の光軸方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に40℃となるように温度上昇した場合の全系の球面収差を示す図である。
【符号の説明】
LD 青紫色半導体レーザ
BS 偏光ビームスプリッタ
CL コリメートレンズ
WP 1/4波長板
ST 絞り
OBJ 対物レンズ
OD 光ディスク
CY シリンドリカルレンズ
NL 凹レンズ
PD 光検出器
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置、並びにそれに用いる対物レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年における光ディスクの高密度化の流れに伴い、それら高密度光ディスクへの情報の記録及び/又は再生に使用される光ピックアップ装置の対物レンズは、集光スポットをより小さくするという要求から、その開口数(NA)が高いものが用いられるようになっている。例えば、波長(λ)405nmの青紫色半導体レーザ光源を使用するBD(ブルーレイディスク)では、高密度化を達成するためにNA0.85の対物レンズが必要であるとされている。
【0003】
すでに一般化されたCD、MO、DVDなどの光ディスクへの情報の記録及び/又は再生に使用される対物レンズには、軽量であること、及び金型を用いた射出成形により低コストで大量生産できること、などの理由により主にプラスチックレンズが使用されているが、高密度光ディスクの光ピックアップ装置においても、同様の理由により対物レンズとしてプラスチックレンズを使用するのが好ましい。
【0004】
本出願人は先に、2群構成とすることで十分な製造公差を確保しつつNA0.85を実現し、更に、高NAでありながら、光源側に配置される第1プラスチックレンズと光ディスク側に配置される第2プラスチックレンズとのパワーの比を適切に設定することで、温度変化に伴う屈折率変化で生じる球面収差発生を小さく抑えたプラスチックレンズを提案した(特許文献1参照)。
【特許文献1】
特開2002−236252号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
光ピックアップ装置では、対物レンズを取り付けたボビンを駆動させることでフォーカシングやトラッキングを行うのが一般的である。この際、フォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルとマグネットとの間に生じる電磁力を利用してボビンを駆動させるため、光ピックアップ装置の動作中にはフォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルの発熱により対物レンズの温度が上昇する。
【0006】
ここで、2群構成の高NAプラスチックレンズを対物レンズとしてボビンに取り付ける場合には、対物レンズを含めたボビンの重心位置を最適化するために、図1に示すように、第1プラスチックレンズをボビンに保持させるようにするのが好ましい。しかるに、このように2群構成の高NAプラスチックレンズをボビンに取り付けた場合、光ピックアップ装置の動作中に光ディスク側に配置された第2プラスチックレンズの温度よりも、フォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルに近い第1プラスチックレンズの温度が高くなる傾向がある。更に、図1に示すように2群構成の高NAプラスチックレンズをボビンに取り付けた場合、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとの間の温度差に加え、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じる場合がある。例えば、レンズ先端(光源に近い方)からレンズ終端(光ディスクに近い方)に向かって温度が低くなる光軸方向の温度分布(図1において、Z軸方向の温度分布)や、レンズ中心(光軸に近い方)からレンズ周辺(フォーカシングコイルやトラッキングコイルに近い方)に向かって温度が高くなる径方向の温度分布(図1において、R方向の温度分布)である。
【0007】
上記の特許文献1に記載の高NAプラスチックレンズは、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとが温度差なく温度上昇し、且つそれぞれのプラスチックレンズ内の温度は均一である状態に対して球面収差発生を小さく抑えるという設計思想のもとに、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとのパワーの比が最適化されているため、上記のように、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じたり、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じると球面収差が発生し、高密度光ディスクに対する情報の記録及び/又は再生に支障を来すおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、2つのプラスチックレンズから構成され、高密度光ディスクの光ピックアップ装置用の対物レンズとして好適な対物レンズであって、2つのプラスチックレンズ間に温度差が生じた場合、及び/又は少なくとも1つのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合であっても、球面収差の発生が小さいプラスチックレンズを提供することを日的とする。また、このプラスチックレンズを対物レンズとして使用する光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置を提供することも本発明の目的である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以下に、本発明による対物レンズにおける、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じた場合に発生する球面収差の補正原理について具体的な数値を挙げて説明する。
【0010】
設計基準温度が25℃である2群構成の高NAプラスチックレンズにおいて、第1プラスチックレンズの温度が55℃に上昇した場合の全系の球面収差を図2(a)に示し、第2プラスチックレンズの温度が55℃に上昇した場合の全系の球面収差を図2(b)に示す。これらの球面収差図から理解されるように、第1プラスチックレンズは温度上昇により全系の球面収差をアンダー(補正不足)方向に変化させ、第2プラスチックレンズは温度上昇により全系の球面収差をオーバー(補正過剰)方向に変化させる。
【0011】
ここで、第1プラスチックレンズの寄与によりアンダー方向に変化する球面収差量に対して、第2プラスチックレンズの寄与によりオーバー方向に変化する球面収差量を最適化(すなわち、第1プラスチックレンズのパワーに対して第2プラスチックレンズとのパワーを最適化)させることで、2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃に上昇した場合の全系の球面収差を図2(c)に示すようにフルコレクション(完全補正)とすることができ、上述の特許文献1に記載の対物レンズのように、高NAのプラスチックレンズでありながら使用可能な温度範囲の広い対物レンズを得ることができる。このような設計思想のもとに設計された高NAプラスチックレンズのレンズデータを表1に示す。尚、これ以降(表のレンズデータ含む)において、10のべき乗数(例えば 2.5×10−3)を、E(例えば 2.5×E―3)を用いて表すものとする。
【表1】
【0012】
しかるに、2群構成の高NAプラスチックレンズを搭載した光ピックアップ装置では、図1に示したように、第1プラスチックレンズがフォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルに近い位置となるようにボビンに取り付けられるので、第1プラスチックレンズの温度の方が第2プラスチックレンズの温度よりも高くなる。例えば、表1の高NAプラスチックレンズにおいて、第1プラスチックレンズの温度が55℃に上昇し、これに対して第2プラスチックレンズの温度は35℃までしか上昇しない場合には、温度上昇により球面収差をオーバー方向に変化させる第2プラスチックレンズの寄与が小さくなるので、図3に示すように全系の球面収差はアンダーとなり0.039λRMSの波面収差が発生する。
【0013】
これに対し、レンズ設計の段階で、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である状態に対して、球面収差がフルコレクションとなるように、第1プラスチックレンズのパワーに対して第2プラスチックレンズとのパワーを最適化しておくことで、光ピックアップ装置の動作中の温度上昇で、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとに温度差が生じた場合でも球面収差の発生を小さく抑えることができる。
【0014】
このような手法により設計された高NA対物レンズのレンズデータを表2に示し、更に、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である状態における全系の球面収差を図4に示す。この球面収差図から理解されるように、表2の高NA対物レンズは第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である状態に対して球面収差がフルコレクションとなり、2つのプラスチックレンズ間に20℃の温度差が生じた場合でも波面収差は0.010λRMSに留まり、表1の高NAプラスチックレンズに比べて約1/4に改善されている。表2の高NAプラスチックレンズにおいて、2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差は、温度上昇により球面収差をオーバー方向に変化させる第2プラスチックレンズの寄与が大きくなるので、図5に示すようにオーバーとなる。
【表2】
【0015】
上記の例では、フォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルの発熱の影響で、第1プラスチックレンズの温度が55℃に上昇した場合における、第2プラスチックレンズの温度を35℃として説明したが、本発明による2つのプラスチックレンズに温度差が生じた場合に発生する球面収差の補正原理は、20℃以外の温度差に対して適用することができることはいうまでもない。更に、上記の例では、フォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルの発熱の影響で、第1プラスチックレンズの温度の方が第2プラスチックレンズの温度よりも高くなる場合について説明したが、第2プラスチックレンズの温度の方が第1プラスチックレンズの温度よりも高くなる場合にも、本発明による2つのプラスチックレンズに温度差が生じた場合に発生する球面収差の補正原理と同様の考え方で、温度上昇により発生する球面収差を小さく抑えることができる。
【0016】
以上の説明では、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布は均一であるとしたが、次に、光ピックアップ装置の動作中にフォーカシングコイル及び/又はトラッキングコイルの発熱の影響で、それぞれのプラスチックレンズ内で光軸方向の温度分布、及び径方向の温度分布が発生した場合の収差変化について考察する。
【0017】
始めに、それぞれのプラスチックレンズ内での光軸方向の温度分布の影響について考察する。単純化するために、第1プラスチックレンズ内の光軸方向の温度分布のみを考え、先端で25+ΔT(℃)、中心で25℃(設計基準温度)、終端で25−ΔT(℃)となるような線形の温度分布を仮定する。このとき、第2プラスチックレンズは均一に25℃(設計基準温度)であるとする。
【0018】
表1の高NAプラスチックレンズにおいて、第1プラスチックレンズに先端から終端に向かって温度が低くなる温度分布が発生した場合は、全系の球面収差はアンダーとなる。両端での温度振幅ΔTが5℃である場合の波面収差は0.024λRMSであるが、光軸方向の温度分布により発生する波面収差量は温度振幅ΔTにほぼ比例する。一方、先端から終端に向かって温度が高くなる温度分布が発生した場合は、全系の球面収差はオーバーとなる。
【0019】
また、第2プラスチックレンズ内で光軸方向の温度分布が発生した場合の全系の球面収差変化の傾向は、第1プラスチックレンズ内で温度方向の温度分布が発生した場合と同様である。
【0020】
そして、第1プラスチックレンズ内、及び第2プラスチックレンズ内で光軸方向の温度分布が同時に発生した場合の波面収差の変化量は、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布による波面収差の変化量の単純な和とほぼ等しい。
【0021】
更に、それぞれのプラスチックレンズ内での径方向の温度分布の影響について考察する。単純化するために、第1プラスチックレンズ内の径方向の温度分布のみを考え、光軸上で25℃(設計基準温度)、光軸からの高さが1.5mmの周辺位置が25+ΔT(℃)となるような径方向の温度分布を仮定する。このとき、第2プラスチックレンズは均一に25℃(設計基準温度)であるとする。
【0022】
表1の高NAプラスチックレンズにおいて、第1プラスチックレンズの径方向の温度分布を4次関数と仮定した場合は全系の球面収差はアンダーとなり、光軸上と周辺位置との温度差ΔTが2℃である場合には0.033λRMSの波面収差が発生する。一方、第1プラスチックレンズの径方向の温度分布を2次関数と仮定した場合は全系の球面収差はオーバーとなり、光軸上と周辺位置との温度差ΔTが2℃である場合には0.025λRMSの波面収差が発生する。径方向の温度分布により発生する波面収差量は、光軸上と周辺位置との温度差ΔTとほぼ比例の関係にある。
【0023】
また、第2プラスチックレンズ内で径方向の温度分布が発生した場合の全系の球面収差変化の傾向は、第1プラスチックレンズ内で径方向の温度分布が発生した場合と同様である。
【0024】
そして、第1プラスチックレンズ内、及び第2プラスチックレンズ内で同時に径方向の温度分布が発生した場合の波面収差の発生量は、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布による波面収差の発生量の単純な和とほぼ等しい。
【0025】
尚、それぞれのプラスチックレンズ内で、光軸方向の温度分布と径方向の温度分布とが同時に発生した場合の波面収差の発生量は、それぞれの温度分布による波面収差の発生量の単純な和とほぼ等しくなり、更に、2つのプラスチックレンズ間に温度差が生じた場合(但し、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布は均一)の波面収差の変化量と、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布による波面収差の変化量との間には単純な重ね合わせが成り立つ。
【0026】
以上、説明したように、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布は、2つのプラスチックレンズ間に温度差が生じる場合と同様に、球面収差発生を引き起こす。従って、それぞれのプラスチックレンズ内での温度分布により発生する球面収差が、2つのプラスチックレンズ間の温度差に起因するものと仮定して、第1プラスチックレンズのパワーに対する第2プラスチックレンズのパワーを最適化することで、2つのプラスチックレンズ間に温度差が生じる場合と同様に、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合の球面収差の発生を小さく抑えることが可能となる。
【0027】
以下に具体的な数値を挙げて説明する。例えば、第1プラスチックレンズに先端で60℃、中心で55℃、終端で50℃となるような線形の光軸方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に40℃となるように温度上昇した場合、表1のプラスチックレンズでは、図11に示すように全系の球面収差はアンダーとなり、0.056λRMSの波面収差が発生する。これは、第1プラスチックレンズが均一に55℃であリ、且つ第2プラスチックレンズが均ーに40℃である場合の波面収差0.033λRMSと、第1プラスチックレンズに先端で30(℃)、中心で25℃(設計基準温度)、終端で20(℃)となるような線形の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に25℃(設計基準温度)である場合の波面収差0.024λRMSとの単純な和にほぼ等しい。
【0028】
これに対し、同様に、第1プラスチックレンズに先端で60℃、中心で55℃、終端で50℃となるような線形の光軸方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に40℃となるように温度上昇した場合、表4のプラスチックレンズでは、図12に示すように全系の球面収差はフルコレクションとなり、波面収差の発生は0.016λRMSに留まり、表1の高NAプラスチックレンズに比ベて約1/4に改善されている。
【0029】
このように、第1プラスチックレンズと第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じた場合に発生する球面収差の補正原理を適用することで、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合の球面収差の発生も小さく抑えることが可能である。尚、本発明の技術範囲は、上記の例にのみ限定されるものではない。
【0030】
尚、表1及び表2のレンズデータにおいて、非球面はその面の頂点に接する平面からの変形量をX(mm)、光軸に垂直な方向の高さをh(mm)、曲率半径をr(mm)とするとき、次の数1で表される。ただし、κを円錐係数、A2iを非球面係数とする。
【数1】
【0031】
また、表1及び表2のレンズデータにおいて、NAは開口数、λ(nm)は設計波長、f(mm)は全系の焦点距離、mは全系の倍率、r(mm)は曲率半径、d(mm)は面間隔、Nλは設計波長における屈折率、νdはd線におけるアッベ数を表し、温度変化に対する屈折率の変化率は第1プラスチックレンズ、第2プラスチックレンズ共に−1.1×10−4/℃である。
【0032】
請求項1に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされた光ピックアップ装置用の対物レンズにおいて、
前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズのうち何れか一方が前記第1温度T1であって、且つ他方がある第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、
T1>T2 (1)
W1>W2 (2)
となるように設計されたことを特徴とするので、前記第1プラスナックレンズと前記第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じた場合に発生する全系の球面収差、及び/又は、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合に発生する全系の球面収差を小さく抑えることができる。
【0033】
請求項2に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされた光ピックアップ装置用の対物レンズにおいて、
前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズのうち何れか一方が前記第1温度T1であって、且つ他方がある第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、
T1>T2 (3)
70(℃)≧T1≧45(℃) (4)
W1>W2 (5)
となるように設計されたことを特徴とするので、前記第1プラスナックレンズと前記第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じた場合に発生する全系の球面収差、及び/又は、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合に発生する全系の球面収差を小さく抑えることができる。
【0034】
請求項3に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項2に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
40(℃)>T1−T2>0(℃) (6)
【0035】
請求項4に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項3に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
30(℃)>T1−T2>5(℃) (7)
【0036】
請求項5に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項4に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
W2<0.07(λRMS) (8)
【0037】
請求項6に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1乃至5の何れか1項に記載の発明において、前記波面収差RMS値W2は、前記第1プラスチックレンズが前記第1温度T1であって、且つ前記第2プラスチックレンズが前記第2温度T2である場合の波面収差RMS値であることを特徴とする。
【0038】
請求項7に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされた光ピックアップ装置用の対物レンズにおいて、
前記対物レンズの開口数をNA、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、温度変化に対する波面収差RMS値の3次球面収差成分の変化率をΔ3SA(λRMS)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))>0 (9)
本発明によれば、前記第1プラスナックレンズと前記第2プラスチックレンズとの間に温度差が生じた場合に発生する全系の球面収差、及び/又は、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合に発生する全系の球面収差を小さく抑えることができる。
【0039】
ここで、温度変化に対する波面収差RMS値の3次球面収差成分の変化率Δ3SA(λRMS)は、対物レンズを25℃の環境温度下に放置して、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズとの温度差がなくなった定常状態で測定した波面収差RMS値の3次球面収差成分を3SA(λRMS)とし、対物レンズを55℃の環境温度下に放置して、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズとが温度差なく温められた定常状態で測定した波面収差RMS値の3次球面収差成分を3SA’(λRMS)としたとき、
Δ3SA=(3SA’−3SA)/(55−25)
で算出される値である。尚、波面収差RMS値の3次球面収差成分の符号は、オーバーである場合を「+」とし、アンダーである場合を「−」とする。
【0040】
請求項8に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項7に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))≧0.0003 (10)
【0041】
請求項9に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項8に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))≧0.0006 (11)
【0042】
請求項10に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1乃至9の何れか1項に記載の発明において、温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL1、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、前記対物レンズのバックフォーカスをfB(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
1.7>ΔNL2/ΔNL1>0.6 (12)
0.16<fB/(f・(1−m))<0.32 (13)
【0043】
温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率変化率であるΔNL1と、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率変化率であるΔNL2とが(12)式を満たす場合には、対物レンズ全系の焦点距離f(mm)と対物レンズ全系の倍率mとに対して、前記対物レンズのバックフォーカスfB(mm)を(13)式をみたすように設定することで、以下の利点を得ることができる。
【0044】
まず、対物レンズのバックフォーカスfB(mm)を、(13)式の下限を上回るように設定すると、温度上昇により球面収差をオーバー方向に変化させる前記第2プラスチックレンズの寄与が小さくなりすぎることを防ぐので、前記第1プラスチックレンズの温度の方が前記第2プラスチックレンズの温度より高くなった場合に全系の球面収差がアンダーになりすぎるのを抑制できる。
【0045】
一方、対物レンズのバックフォーカスfB(mm)を、(13)式の上限を下回るように設定すると、温度上昇により球面収差をオーバー方向に変化させる前記第2プラスチックレンズの寄与が大きくなりすぎることを防ぐので、前記第1プラスチックレンズの温度の方が前記第2プラスチックレンズの温度より高くなった場合に全系の球面収差がオーバーになりすぎるのを抑制できる。従って、前記第1プラスチックレンズの温度の方が前記第2プラスチックレンズの温度より高くなった場合の全系の球面収差の発生が大きくなることを抑制し、光情報記録媒体に対する情報の記録及び/又は再生に支障を来すおそれを回避できる。
【0046】
請求項11に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1乃至9の何れか1項に記載の発明において、温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL1、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、前記対物レンズのバックフォーカスをfB(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
5>ΔNL2/ΔNL1>1.7 (14)
0.10<fB/(f・(1−m))<0.25 (15)
【0047】
請求項12に記載の発明において、温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率変化率であるΔNL1と、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率変化率であるΔNL2との間で、(14)式を満たすような差がある場合には、前記対物レンズ全系の焦点距離f(mm)と前記対物レンズ全系の倍率mとに対して、前記対物レンズのバックフォーカスfB(mm)を(15)式をみたすように設定することで、以下の利点を得ることができる。
【0048】
まず、前記対物レンズのバックフォーカスfB(mm)を(15)式の下限を上回るように設定すると、温度上昇により球面収差をオーバー方向に変化させる前記第2プラスチックレンズの寄与が小さくなりすぎるのを防ぐので、前記第1プラスチックレンズの温度の方が前記第2プラスチックレンズの温度より高くなった場合に全系の球面収差がアンダーになりすぎることを抑制できる。
【0049】
一方、前記対物レンズのバックフォーカスfB(mm)を(15)式の上限を下回るように設定すると、温度上昇により球面収差をオーバー方向に変化させる前記第2プラスチックレンズの寄与が大きくなりすぎるのを防ぐので、前記第1プラスチックレンズの温度の方が前記第2プラスチックレンズの温度より高くなった場合に全系の球面収差がオーバーになりすぎることを抑制できる。従って、前記第1プラスチックレンズの温度の方が前記第2プラスチックレンズの温度より高くなった場合の全系の球面収差の発生を抑制でき、光情報記録媒体に対する情報の記録及び/又は再生に支障を来す恐れを回避できる。
【0050】
尚、上述の(13)式及び(15)式における前記対物レンズのバックフォーカスfB(mm)は対物レンズの最も光情報記録媒体側の光学面と、光情報記録媒体の保護層との光軸上の距離を指す。
【0051】
請求項12に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1乃至11の何れか1項に記載の発明において、前記第2プラスチックレンズの倍率をβL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、光軸に垂直で第1プラスチックレンズの光源側の光学面の頂点に接する平面と、有効径最周辺における前記第1プラスチックレンズの光源側の光学面との光軸方向の差をX1(mm)、光軸に垂直で第2プラスチックレンズの光源側の光学面の頂点に接する平面と、有効径最周辺における前記第2プラスチックレンズの光源側の光学面との光軸方向の差をX3(mm)、前記第1プラスチックレンズの使用波長における屈折率をN1、前記第2プラスチックレンズの使用波長における屈折率をN2、前記第1プラスチックレンズの焦点距離をf1(mm)、前記第1プラスチックレンズの焦点距離をf2(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
0.45>βL2/(1−m)>0.15 (16)
−0.015>ΔSAG>−0.085 (17)
ΔSAG=(X1’−X3’)/(NA4・f・(1−m)) (18)
X1’=X1・(N1−1)3/f1 (19)
X3’=X3・(N2−1)3/f2 (20)
【0052】
ここで、X1とX3の符号は、上記接平面を基準として光ディスクの方向に測る場合を正、光源の方向に測る場合を負とする。
【0053】
請求項12に記載の対物レンズにおいて、(16)乃至(20)式を満たすと、前記第1プラスチックレンズの寄与によりアンダー方向に変化する球面収差量と前記第2プラスチックレンズの寄与によりオーバー方向に変化する球面収差量とをバランスさせることが可能となり、光ピックアップ装置の動作中に発生する前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズとの温度差に対して全系の球面収差の発生を小さく抑えることができる。
【0054】
請求項13に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1乃至12の何れか1項に記載の発明において、前記第1プラスチックレンズはその光学機能部よりも周辺側の部分に第1フランジ部を有し、前記第2プラスチックレンズはその光学機能部よりも周辺側の部分に第2フランジ部を有し、前記第1フランジ部の少なくとも一部と前記第2フランジ部の少なくとも一部とを当接することで、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズは一体化され、前記第1フランジ部を含めた前記第1プラスチックレンズの外径をD1(mm)、前記第2フランジ部を含めた前記第2プラスチックレンズの外径をD2(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
D1>D2 (21)
【0055】
本発明においては、上記のような構造を有するために、光ピックアップ装置の動作中に発生する前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズとの温度差、及び/又は、それぞれのプラスチックレンズ内で生じる温度分布に対して全系の球面収差の発生を小さく抑えるという作用効果を最大限に発揮することができる。
【0056】
請求項14に記載の光ピックアップ装置は、光源と、前記光源からの光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させることによって、前記情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行うようになっている対物レンズを含む集光光学系とを有する光ピックアップ装置において、
前記対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされており、
前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズのうち何れか一方が前記第1温度T1であって、且つ他方がある第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、
T1>T2 (1)
W1>W2 (2)
となるように設計されたことを特徴とする。本発明の作用効果は、請求項1に記載の発明と同様である。
【0057】
請求項15に記載の光ピックアップ装置は、光源と、前記光源からの光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させることによって、前記情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行うようになっている対物レンズを含む集光光学系とを有する光ピックアップ装置において、
前記対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされており、
前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズのうち何れか一方が前記第1温度T1であって、且つ他方がある第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、
T1>T2 (3)
70(℃)≧T1≧45(℃) (4)
W1>W2 (5)
となるように設計されたことを特徴とする。本発明の作用効果は、請求項2に記載の発明と同様である。
【0058】
請求項16に記載の光ピックアップ装置は、請求項15に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
40(℃)>T1−T2>0(℃) (6)
【0059】
請求項17に記載の光ピックアップ装置は、請求項16に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
30(℃)>T1−T2>5(℃) (7)
【0060】
請求項18に記載の光ピックアップ装置は、請求項17に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
W2<0.07(λRMS) (8)
【0061】
請求項19に記載の光ピックアップ装置は、請求項14乃至18のいずれかに記載の発明において、前記波面収差RMS値W2は、前記第1プラスチックレンズが前記第1温度T1であって、且つ前記第2プラスチックレンズが前記第2温度T2である場合の波面収差RMS値であることを特徴とする。
【0062】
請求項20に記載の光ピックアップ装置は、光源と、前記光源からの光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させることによって、前記情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行うようになっている対物レンズを含む集光光学系とを有する光ピックアップ装置において、
前記対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされており、
前記対物レンズの開口数をNA、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、温度変化に対する波面収差RMS値の3次球面収差成分の変化率をΔ3SA(λRMS)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))>0 (9)
本発明の作用効果は、請求項7に記載の発明と同様である。
【0063】
請求項21に記載の光ピックアップ装置は、請求項20に記載の発明において、次式を満たすことを特徴とする。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))≧0.0003 (10)
【0064】
請求項22に記載の光ピックアップ装置は、請求項21に記載の発明において、
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))≧0.0006 (11)
【0065】
請求項23に記載の光ピックアップ装置は、請求項14乃至22の何れかに記載の発明において、温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL1、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、前記対物レンズのバックフォーカスをfB(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
1.7>ΔNL2/ΔNL1>0.6 (12)
0.16<fB/(f・(1−m))<0.32 (13)
【0066】
請求項24に記載の光ピックアップ装置は、請求項14乃至22の何れかに記載の発明において、温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL1、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、前記対物レンズのバックフォーカスをfB(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
5>ΔNL2/ΔNL1>1.7 (14)
0.10<fB/(f・(1−m))<0.25 (15)
【0067】
請求項25に記載の光ピックアップ装置は、請求項14乃至24の何れかに記載の発明において、前記第2プラスチックレンズの倍率をβL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、光軸に垂直で第1プラスチックレンズの光源側の光学面の頂点に接する平面と、有効径最周辺における前記第1プラスチックレンズの光源側の光学面との光軸方向の差をX1(mm)、光軸に垂直で第2プラスチックレンズの光源側の光学面の頂点に接する平面と、有効径最周辺における前記第2プラスチックレンズの光源側の光学面との光軸方向の差をX3(mm)、前記第1プラスチックレンズの使用波長における屈折率をN1、前記第2プラスチックレンズの使用波長における屈折率をN2、前記第1プラスチックレンズの焦点距離をf1(mm)、前記第1プラスチックレンズの焦点距離をf2(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
0.45>βL2/(1−m)>0.15 (16)
−0.015>ΔSAG>−0.085 (17)
ΔSAG=(X1’−X3’)/(NA4・f・(1−m)) (18)
X1’=X1・(N1−1)3/f1 (19)
X3’=X3・(N2−1)3/f2 (20)
【0068】
請求項26に記載の光ピックアップ装置は、請求項14乃至25の何れかに記載の発明において、前記第1プラスチックレンズはその光学機能部よりも周辺側の部分に第1フランジ部を有し、前記第2プラスチックレンズはその光学機能部よりも周辺側の部分に第2フランジ部を有し、前記第1フランジ部の少なくとも一部と前記第2フランジ部の少なくとも一部とを当接することで、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズは一体化され、前記第1フランジ部を含めた前記第1プラスチックレンズの外径をD1(mm)、前記第2フランジ部を含めた前記第2プラスチックレンズの外径をD2(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする。
D1>D2 (21)
【0069】
請求項27に記載の光ピックアップ装置は、請求項14乃至26のいずれかに記載の発明において、前記第1プラスチックレンズをアクチュエータにより駆動されるボビンに保持させたことを特徴とする。
【0070】
請求項29に記載の光情報記録再生装置は、請求項14乃至27のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置と、前記光情報記録媒体を支持する媒体支持装置とを有することを特徴とする。
【0071】
なお、本明細書において、「光ピックアップ装置用の対物レンズ」とは、光ピックアップ装置に光情報記録媒体を装填した状態において最も光情報記録媒体側の位置でこれと対向すべく配置され、アクチュエータによって少なくともその光軸方向に移動可能なレンズ群を指すものとする。そして、「開口数」とは光情報記録媒体の規格で規定されている開口数、或いは光情報記録媒体に対して光源波長に応じ情報の記録及び/又は再生を行うために必要なスポット径を得ることが可能な対物レンズの最も光情報記録媒体側に位置する光学面の像側開口数を指す。「光情報記録媒体」とは、CD,MO、DVD、BDなどの光ディスクをいうが、特に短波長光源を用いるBDにおいて本発明は有効である。「光学機能部」とは、光源からの光束が通過する部位をいう。
【0072】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による対物レンズの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図6は、本実施の形態の対物レンズOBJの概略断面図である。この対物レンズOBJは、例えば、波長405nmの青紫色半導体レーザ光源を使用するBD(ブルーレイディスク)を記録及び/又は再生するための光ピックアップ装置に適用され、光源から発したレーザ光を光ディスク(光情報記録媒体)の保護層PLを介して情報記録面RL上に集光させる機能を有している。
【0073】
対物レンズOBJは、光源側に配置され正のパワーを有する第1プラスチックレンズL1と、光ディスク側に配置され正のパワーを有する第2プラスチックレンズL2とから構成される2群構成のプラスチックレンズであり、2つのプラスチックレンズから得られるNAは0.85である。第1プラスチックレンズL1と第2プラスチックレンズL2は光学機能部OFP(図6では斜線部)よりも周辺側の部分に、それぞれ光学機能部OFPと一体に成形された第1フランジ部FL1と第2フランジ部FL2とを有しており、第1フランジ部と第2フランジ部の一部同士(図6では当接部M)を当接することで第1プラスチックレンズL1と第2プラスチックレンズL2は一体化されている。
【0074】
図7は、上記の対物レンズOBJを搭載した光ピックアップ装置PUの構成を概略的に示す図である。光ピックアップ装置PUは、光源としての青紫色半導体レーザLD、偏光ビームスプリッタBS、コリメートレンズCL、1/4波長板WP、絞りST、対物レンズOBJ、2軸アクチュエータAC、シリンドリカルレンズCY、凹レンズNL、及び光検出器PDとから構成される。尚、光ピックアップ装置PUにおいて、青紫色半導体レーザの代わりに青紫色SHGレーザを光源として使用しても良い。
【0075】
青紫色半導体レーザLDから射出された発散光束は、偏光ビームスプリッタBSを透過し、コリメートレンズCL、及び1/4波長板WPを経て円偏光の平行光束となった後、絞りSTにより光束径が規制され、対物レンズOBJによって光ディスクODの保護層PLを介して情報記録面RL上に形成されるスポットとなる。
【0076】
情報記録面RLで情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOBJ、絞りST、1/4波長板WP、及びコリメートレンズCLを透過した後、収斂光束となり、偏光ビームスプリッタBSによって反射され、シリンドリカルレンズCY、凹レンズNLを経ることによって非点収差が与えられ、光検出器PDに収束する。そして、光検出器PDの出力信号を用いて光ディスクODに記録された情報を読み取ることができる。
【0077】
対物レンズOBJは、図1に示したように、第1プラスチックレンズL1の第1フランジ部FL1の当接により、2軸アクチュエータACで駆動されるボビンB(図1参照)に保持されているため、光ピックアップ装置PUの動作中には、2軸アクチュエータACを構成するフォーカシングコイルFC及び/又はトラッキングコイルTCの発熱により、フォーカシングコイルFC及び/又はトラッキングコイルTCにより近い位置にある第1プラスチックレンズL1の温度のほうが、第2プラスチックレンズL2の温度よりも高くなったり、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じる。
【0078】
これに対して、対物レンズOBJは、上述の(1)式乃至(21)式を満たすように設計されているので、フォーカシングコイルFC及び/又はトラッキングコイルTCにより近い位置にある第1プラスチックレンズL1の温度が、第2プラスチックレンズL2の温度よりも高くなった場合や、それぞれのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合でも全系の球面収差の発生は小さく、常に安定した情報の記録及び/又は再生が可能である。
【0079】
[実施例]
次に上述した対物レンズOBJとして好適な対物レンズの具体例を3例提示する。
【0080】
(実施例1)
表3にレンズデータを示す実施例1の対物レンズは、設計基準温度が25℃、開口数NAが0.85、設計波長λが405nm、全系の焦点距離fが1.7647mm、全系の倍率mが0である2群構成のプラスチックレンズである。
【表3】
表3のレンズデータにおいて、NAは開口数、λ(nm)は設計波長、f(mm)は全系の焦点距離、mは全系の倍率、r(mm)は曲率半径、d(mm)は面間隔、Nλは設計波長における屈折率、νdはd線におけるアッベ数を表し、温度変化に対する屈折率の変化率は第1プラスチックレンズ、第2プラスチックレンズ共に−1.1×10−4/℃である。
【0081】
又、表3のレンズデータにおいて、非球面はその面の頂点に接する平面からの変形量をX(mm)、光軸に垂直な方向の高さをh(mm)、曲率半径をr(mm)とするとき、上述の数1で表される。ただし、κを円錐係数、A2iを非球面係数とする。
【0082】
図8(a)に、2つのプラスチックレンズの温度が共に設計基準波長である25℃である場合の全系の球面収差を示し、図8(b)に、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が45℃である場合の全系の球面収差を示し、図8(c)に、2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差を示す。これらの球面収差図から理解されるように、実施例1の対物レンズは、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が45℃である状態に対して球面収差がフルコレクションとなるように設計されている。図8(a)乃至(c)の状態での波面収差RMS値は、それぞれ、0.001λRMS、0.012λRMS、0.026λRMSである。実施例1の対物レンズの(1)式乃至(21)式に対応する値は、T1=55℃、T2=45℃とすると、表4に示す通りとなる。尚、上記の波面収差は、それぞれのプラスチックレンズ内の温度分布は考慮していないが、実施例1の対物レンズは、例えば、第1プラスチックレンズに光軸上で55℃、光軸からの高さが2.4mmの周辺位置で58℃となるような径方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に50℃となるように温度上昇した状態に対して球面収差がフルコレクションとなり、このときの波面収差RMS値は0.016λRMSである。
【表4】
【0083】
(実施例2)
表5にレンズデータを示す実施例2の対物レンズは、設計基準温度が25℃、開口数NAが0.85、設計波長λが405nm、全系の焦点距離fが1.7647mm、全系の倍率mが−0.089である2群構成のプラスチックレンズである。
【表5】
【0084】
表5のレンズデータにおいて、NAは開口数、λ(nm)は設計波長、f(mm)は全系の焦点距離、mは全系の倍率、r(mm)は曲率半径、d(mm)は面間隔、Nλは設計波長における屈折率、νdはd線におけるアッベ数を表し、温度変化に対する屈折率の変化率は第1プラスチックレンズ、第2プラスチックレンズ共に−1.1×10−4/℃である。
【0085】
又、表5のレンズデータにおいて、非球面はその面の頂点に接する平面からの変形量をX(mm)、光軸に垂直な方向の高さをh(mm)、曲率半径をr(mm)とするとき、上述の数1で表される。ただし、κを円錐係数、A2iを非球面係数とする。
【0086】
図9(a)に、2つのプラスチックレンズの温度が共に設計基準波長である25℃である場合の全系の球面収差を示し、図9(b)に、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が40℃である場合の全系の球面収差を示し、図9(c)に、2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差を示す。これらの球面収差図から理解されるように、実施例2の対物レンズは、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が40℃である状態に対して球面収差がフルコレクションとなるように設計されている。図9(a)乃至(c)の状態での波面収差RMS値は、それぞれ、0.001λRMS、0.010λRMS、0.054λRMSである。実施例2の対物レンズの(1)式乃至(21)式に対応する値は、T1=55℃、T2=40℃とすると、表4に示す通りとなる。尚、上記の波面収差は、それぞれのプラスチックレンズ内の温度分布は考慮していないが、実施例2の対物レンズは、例えば、第1プラスチックレンズに先端で60℃、中心で55℃、終端で50℃となるような線形の光軸方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に45℃となるように温度上昇した状態に対して球面収差がフルコレクションとなり、このときの波面収差RMS値は0.016λRMSである。
【0087】
(実施例3)
表6にレンズデータを示す実施例3の対物レンズは、設計基準温度が25℃、開口数NAが0.85、設計波長λが405nm、全系の焦点距離fが1.7647mm、全系の倍率mが0である2群構成のプラスチックレンズである。
【表6】
【0088】
表6のレンズデータにおいて、NAは開口数、λ(nm)は設計波長、f(mm)は全系の焦点距離、mは全系の倍率、r(mm)は曲率半径、d(mm)は面間隔、Nλは設計波長における屈折率、νdはd線におけるアッベ数を表し、温度変化に対する屈折率の変化率は第1プラスチックレンズが−1.1×10−4/℃であり、第2プラスチックレンズが−3.3×10−4/℃である。
【0089】
又、表6のレンズデータにおいて、非球面はその面の頂点に接する平面からの変形量をX(mm)、光軸に垂直な方向の高さをh(mm)、曲率半径をr(mm)とするとき、上述の数1で表される。ただし、κを円錐係数、A2iを非球面係数とする。
【0090】
図10(a)に、2つのプラスチックレンズの温度が共に設計基準波長である25℃である場合の全系の球面収差を示し、図10(b)に、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である場合の全系の球面収差を示し、図10(c)に、2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差を示す。これらの球面収差図から理解されるように、実施例3の対物レンズは、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である状態に対して球面収差がフルコレクションとなるように設計されている。図10(a)乃至(c)の状態での波面収差RMS値は、それぞれ、0.001λRMS、0.011λRMS、0.111λRMSである。実施例3の対物レンズの(1)式乃至(21)式に対応する値は、T1=55℃、T2=35℃とすると、表4に示す通りとなる。尚、上記の波面収差は、それぞれのプラスチックレンズ内の温度分布は考慮していないが、実施例3の対物レンズは、例えば、第1プラスチックレンズに先端で62℃、中心で55℃、終端で48℃となるような線形の光軸方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に40℃となるように温度上昇した状態に対して球面収差がフルコレクションとなり、このときの波面収差RMS値は0.020λRMSである。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、2つのプラスチックレンズから構成され、高密度光ディスクの光ピックアップ装置用の対物レンズとして好適な対物レンズであって、2つのプラスチックレンズ間に温度差が生じた場合、及び/又は、少なくとも1つのプラスチックレンズ内で温度分布が生じた場合であっても、球面収差の発生が小さいプラスチックレンズを提供することができ、また、このプラスチックレンズを対物レンズとして使用する光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】対物レンズをボビンに保持した状態で示す正面図(a)及び断面図である。
【図2】第1プラスチックレンズの温度が55℃に上昇した場合の全系の球面収差図(a)、第2プラスチックレンズの温度が55℃に上昇した場合の全系の球面収差図(b)、及び2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃に上昇した場合の全系の球面収差図(c)である。
【図3】第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度は35℃である場合の全系の球面収差図である。
【図4】第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である状態における全系の球面収差図である。
【図5】第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である状態における全系の球面収差図である。
【図6】本実施の形態の対物レンズOBJの概略断面図である。
【図7】本実施の形態の対物レンズOBJを搭載した光ピックアップ装置PUの構成を概略的に示す図である。
【図8】第1及び第2プラスチックレンズの温度が共に設計基準波長である25℃である場合の全系の球面収差図(a)、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が45℃である場合の全系の球面収差図(b)、及び2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差図(c)である。
【図9】第1及び第2プラスチックレンズの温度が共に設計基準波長である25℃である場合の全系の球面収差図(a)、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が40℃である場合の全系の球面収差図(b)、及び2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差図(c)である。
【図10】第1及び第2プラスチックレンズの温度が共に設計基準波長である25℃である場合の全系の球面収差図(a)、第1プラスチックレンズの温度が55℃であり、第2プラスチックレンズの温度が35℃である場合の全系の球面収差図(b)、及び2つのプラスチックレンズの温度が共に55℃である場合の全系の球面収差図(c)である。
【図11】第1プラスチックレンズに先端で60℃、中心で55℃、終端で50℃となるような線形の光軸方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に40℃となるように温度上昇した場合の全系の球面収差を示す図である。
【図12】第1プラスチックレンズに先端で60℃、中心で55℃、終端で50℃となるような線形の光軸方向の温度分布が発生し、且つ第2プラスチックレンズが均一に40℃となるように温度上昇した場合の全系の球面収差を示す図である。
【符号の説明】
LD 青紫色半導体レーザ
BS 偏光ビームスプリッタ
CL コリメートレンズ
WP 1/4波長板
ST 絞り
OBJ 対物レンズ
OD 光ディスク
CY シリンドリカルレンズ
NL 凹レンズ
PD 光検出器
Claims (28)
- 光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされた光ピックアップ装置用の対物レンズにおいて、
前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズのうち何れか一方が前記第1温度T1であって、且つ他方がある第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、
T1>T2 (1)
W1>W2 (2)
となるように設計されたことを特徴とする光ピックアップ装置用の対物レンズ。 - 光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされた光ピックアップ装置用の対物レンズにおいて、
前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズのうち何れか一方が前記第1温度T1であって、且つ他方がある第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、
T1>T2 (3)
70(℃)≧T1≧45(℃) (4)
W1>W2 (5)
となるように設計されたことを特徴とする光ピックアップ装置用の対物レンズ。 - 次式を満たすことを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
40(℃)>T1−T2>0(℃) (6) - 次式を満たすことを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
30(℃)>T1−T2>5(℃) (7) - 次式を満たすことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
W2<0.07(λRMS) (8) - 前記波面収差RMS値W2は、前記第1プラスチックレンズが前記第1温度T1であって、且つ前記第2プラスチックレンズが前記第2温度T2である場合の波面収差RMS値であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
- 光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされた光ピックアップ装置用の対物レンズにおいて、
前記対物レンズの開口数をNA、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、温度変化に対する波面収差RMS値の3次球面収差成分の変化率をΔ3SA(λRMS)としたとき、次式を満たすことを特徴とする光ピックアップ装置用の対物レンズ。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))>0 (9) - 次式を満たすことを特徴とする請求項7に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))≧0.0003 (10) - 次式を満たすことを特徴とする請求項8に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))≧0.0006 (11) - 温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL1、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、前記対物レンズのバックフォーカスをfB(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
1.7>ΔNL2/ΔNL1>0.6 (12)
0.16<fB/(f・(1−m))<0.32 (13) - 温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL1、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、前記対物レンズのバックフォーカスをfB(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
5>ΔNL2/ΔNL1>1.7 (14)
0.10<fB/(f・(1−m))<0.25 (15) - 前記第2プラスチックレンズの倍率をβL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、光軸に垂直で第1プラスチックレンズの光源側の光学面の頂点に接する平面と、有効径最周辺における前記第1プラスチックレンズの光源側の光学面との光軸方向の差をX1(mm)、光軸に垂直で第2プラスチックレンズの光源側の光学面の頂点に接する平面と、有効径最周辺における前記第2プラスチックレンズの光源側の光学面との光軸方向の差をX3(mm)、前記第1プラスチックレンズの使用波長における屈折率をN1、前記第2プラスチックレンズの使用波長における屈折率をN2、前記第1プラスチックレンズの焦点距離をf1(mm)、前記第1プラスチックレンズの焦点距離をf2(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
0.45>βL2/(1−m)>0.15 (16)
−0.015>ΔSAG>−0.085 (17)
ΔSAG=(X1’−X3’)/(NA4・f・(1−m)) (18)
X1’=X1・(N1−1)3/f1 (19)
X3’=X3・(N2−1)3/f2 (20) - 前記第1プラスチックレンズはその光学機能部よりも周辺側の部分に第1フランジ部を有し、前記第2プラスチックレンズはその光学機能部よりも周辺側の部分に第2フランジ部を有し、前記第1フランジ部の少なくとも一部と前記第2フランジ部の少なくとも一部とを当接することで、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズは一体化され、前記第1フランジ部を含めた前記第1プラスチックレンズの外径をD1(mm)、前記第2フランジ部を含めた前記第2プラスチックレンズの外径をD2(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
D1>D2 (21) - 光源と、前記光源からの光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させることによって、前記情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行うようになっている対物レンズを含む集光光学系とを有する光ピックアップ装置において、
前記対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされており、
前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズのうち何れか一方が前記第1温度T1であって、且つ他方がある第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、
T1>T2 (1)
W1>W2 (2)
となるように設計されたことを特徴とする光ピックアップ装置。 - 光源と、前記光源からの光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させることによって、前記情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行うようになっている対物レンズを含む集光光学系とを有する光ピックアップ装置において、
前記対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされており、
前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズが共に第1温度T1(℃)である場合の波面収差RMS値をW1(λRMS)、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズのうち何れか一方が前記第1温度T1であって、且つ他方がある第2温度T2(℃)である場合の波面収差RMS値をW2(λRMS)としたとき、
T1>T2 (3)
70(℃)≧T1≧45(℃) (4)
W1>W2 (5)
となるように設計されたことを特徴とする光ピックアップ装置。 - 次式を満たすことを特徴とする請求項15に記載の光ピックアップ装置。
40(℃)>T1−T2>0(℃) (6) - 次式を満たすことを特徴とする請求項16に記載の光ピックアップ装置。
30(℃)>T1−T2>5(℃) (7) - 次式を満たすことを特徴とする請求項14乃至17の何れか1項に記載の光ピックアップ装置。
W2<0.07(λRMS) (8) - 前記波面収差RMS値W2は、前記第1プラスチックレンズが前記第1温度T1であって、且つ前記第2プラスチックレンズが前記第2温度T2である場合の波面収差RMS値であることを特徴とする請求項14乃至18の何れか1項に記載の光ピックアップ装置。
- 光源と、前記光源からの光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させることによって、前記情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行うようになっている対物レンズを含む集光光学系とを有する光ピックアップ装置において、
前記対物レンズは、光源側から順に配置された正のパワーを有する第1プラスチックレンズと、正のパワーを有する第2プラスチックレンズとから構成され、開口数NAが0.8以上とされており、
前記対物レンズの開口数をNA、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、温度変化に対する波面収差RMS値の3次球面収差成分の変化率をΔ3SA(λRMS)としたとき、次式を満たすことを特徴とする光ピックアップ装置。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))>0 (9) - 次式を満たすことを特徴とする請求項20に記載の光ピックアップ装置。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))≧0.0003 (10) - 次式を満たすことを特徴とする請求項21に記載の光ピックアップ装置。
Δ3SA/(NA4・f・(1−m))≧0.0006 (11) - 温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL1、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、前記対物レンズのバックフォーカスをfB(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項14乃至22の何れか1項に記載の光ピックアップ装置。
1.7>ΔNL2/ΔNL1>0.6 (12)
0.16<fB/(f・(1−m))<0.32 (13) - 温度変化に対する前記第1プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL1、温度変化に対する前記第2プラスチックレンズの屈折率の変化率をΔNL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、前記対物レンズのバックフォーカスをfB(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項14乃至22の何れか1項に記載の光ピックアップ装置。
5>ΔNL2/ΔNL1>1.7 (14)
0.10<fB/(f・(1−m))<0.25 (15) - 前記第2プラスチックレンズの倍率をβL2、前記対物レンズ全系の焦点距離をf(mm)、前記対物レンズ全系の倍率をm、光軸に垂直で第1プラスチックレンズの光源側の光学面の頂点に接する平面と、有効径最周辺における前記第1プラスチックレンズの光源側の光学面との光軸方向の差をX1(mm)、光軸に垂直で第2プラスチックレンズの光源側の光学面の頂点に接する平面と、有効径最周辺における前記第2プラスチックレンズの光源側の光学面との光軸方向の差をX3(mm)、前記第1プラスチックレンズの使用波長における屈折率をN1、前記第2プラスチックレンズの使用波長における屈折率をN2、前記第1プラスチックレンズの焦点距離をf1(mm)、前記第1プラスチックレンズの焦点距離をf2(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項14乃至24の何れか1項に記載の光ピックアップ装置。
0.45>βL2/(1−m)>0.15 (16)
−0.015>ΔSAG>−0.085 (17)
ΔSAG=(X1’−X3’)/(NA4・f・(1−m)) (18)
X1’=X1・(N1−1)3/f1 (19)
X3’=X3・(N2−1)3/f2 (20) - 前記第1プラスチックレンズはその光学機能部よりも周辺側の部分に第1フランジ部を有し、前記第2プラスチックレンズはその光学機能部よりも周辺側の部分に第2フランジ部を有し、前記第1フランジ部の少なくとも一部と前記第2フランジ部の少なくとも一部とを当接することで、前記第1プラスチックレンズと前記第2プラスチックレンズは一体化され、前記第1フランジ部を含めた前記第1プラスチックレンズの外径をD1(mm)、前記第2フランジ部を含めた前記第2プラスチックレンズの外径をD2(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項14乃至25の何れか1項に記載の光ピックアップ装置。
D1>D2 (21) - 前記第1プラスチックレンズをアクチュエータにより駆動されるボビンに保持させたことを特徴とする請求項14乃至26の何れか1項に記載の光ピックアップ装置。
- 請求項14乃至27のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置と、前記光情報記録媒体を支持する媒体支持装置とを有することを特徴とする光情報記録再生装置。
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JP2003052646A JP2004264390A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 光ピックアップ装置用の対物レンズ、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置 |
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JP2003052646A JP2004264390A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 光ピックアップ装置用の対物レンズ、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置 |
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JP2003052646A Pending JP2004264390A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 光ピックアップ装置用の対物レンズ、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置 |
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