JP2004257994A - 熱レンズ吸光分析装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】試料12に励起光eを入射することで熱による屈折率勾配を形成させる共に、該励起光に対して交差する方向から試料にプローブ光pを入射し、屈折率勾配により生じるプローブ光偏向量を検出し、試料の吸光度を測定する。ここでプローブ光は2本の平行な光ビームからなり、検出系30で2本のプローブ光偏向量の積から吸光度を求めることによって外乱による検出信号変化が自動補正されるようにする。検出系は、例えば両プローブ光を互いに逆の方向に反射する対称形状の反射体32と、両プローブ光を受けるリニアポジションセンサ34,36と、それら検出信号の積を求める乗算器38からなる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱レンズ法を利用した吸光分析装置に関し、更に詳しく述べると、検出系で2本のプローブ光偏向量の積から吸光度を求めるようにして、外乱による検出信号変化が自動補正されるようにした熱レンズ吸光分析装置に関するものである。この技術は、例えば環境測定や化学分析など微少吸光測定が必要な分析分やなどで有用である。
【0002】
【従来の技術】
光熱分析法の一種に熱レンズ吸光分析法がある。この方法は、媒質の微小な屈折率の変化を利用して吸光度を測定する手法である。媒質に光を入射し吸収が起きると、励起エネルギーの大部分は熱として放出される。この熱によって周囲の媒質の屈折率が変化し、励起光の強度分布に従った屈折率分布が生じる。一般に温度が高いほど屈折率は小さくなるため、あたかも凹レンズが形成されたような状態になる。これが熱レンズ効果と呼ばれる現象である。生成した熱レンズの大きさは吸収した媒質の存在量に比例することから、その効果を測定することによって定量分析が可能となる。
【0003】
従来の熱レンズ吸光分析装置は、例えば励起光源からの励起光とプローブ光源からのプローブ光をダイクロイック(誘電体多層膜)ミラーで結合して同軸で試料セル中の媒質に入射し、それらの光をガウス型カットフィルタ(ガウス型の濃度分布をもったマスク)でカットし、透過光を光検出器で検出する構成である。励起光によって媒体の屈折率変化が生じるとプローブ光の偏向角が変化し、光検出器に到達する透過光量が変化する。これを検出することによって吸光度を算出する。このような熱レンズ吸光分析法は、通常の吸光度分析法に比べて希薄媒質の測定に大きな威力を発揮し、ppm やppt オーダーの吸光度を行うことができるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような従来技術では、励起光、プローブ光、及びガウス型カットフィルタ(マスク)を正確にアライメント(位置合わせ)する必要があり、測定に熟練を必要とする問題があった。また振動などの外乱の影響を受けやすく、外乱によって大きな光量変化が生じてしまい、その結果、測定誤差が大きくなる欠点があった。
【0005】
このようなプローブ光を励起光と同軸で入射させる方法の他に、プローブ光を励起光に対して交差する向きで媒体に入射させる方法もあり、この構成の方が感度の点で有利であるとされている。しかし、正確なアライメントの必要性、並びに外乱の影響を受けやすい欠点に関しては、上記の同軸配置と同様である。
【0006】
本発明の目的は、高いアライメント精度が要求されないためアライメント作業が容易であり、そのため測定に熟練を必要とせず簡便に且つ迅速に測定でき、また外乱による影響を受け難くして測定誤差を極力小さく抑えることができるようにした熱レンズ吸光分析装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、試料に励起光を入射することで熱による屈折率勾配を形成させる共に、該励起光に対して交差する方向から試料にプローブ光を入射し、屈折率勾配により生じるプローブ光偏向量を検出し、試料の吸光度を測定する吸光分析装置において、プローブ光は2本の平行な光ビームからなり、検出系で2本のプローブ光偏向量の積から吸光度を求めることによって外乱やアライメントミスなどによる検出信号変化が自動補正されるようにしたことを特徴とする熱レンズ吸光分析装置である。
【0008】
ここで2本の平行なプローブ光は、例えば単一のプローブ光源と、該プローブ光源からの光ビームを2光路に分岐する光分岐手段及び光ビームをコリメート光にするレンズ系を有する集光系で形成される。検出系は、2本の平行なプローブ光を互いに逆の方向に反射する対称形状の反射体と、それぞれのプローブ光を受けるリニアポジションセンサと、両リニアポジションセンサの検出信号の積を求める乗算器からなる。反射体は、2本のプローブ光をそれぞれ直角方向に反射するように反射面が45度傾いた直角反射体が好ましい。
【0009】
【実施例】
図1は、本発明に係る熱レンズ吸光分析装置の一実施例を示す概略構成図である。この熱レンズ吸光分析装置は、基本的にはプローブ光が励起光に対して直交方向に入射する方式である。
【0010】
試料セル10に収容されている試料(測定媒体)12に励起光eを照射する。図1では励起光eは、励起光源(図示せず)から紙面に垂直方向に入射して試料12を照射し、それによって該試料に熱による屈折率分布を形成させる。プローブ光pは、単一のプローブ光源14からの光を集光系16で2本の平行な光ビームにして試料セル10内の試料12に照射する。図1では2本の平行なプローブ光pは、紙面に平行に上方から下方へ入射する。集光系16は、光ビームをコリメート光にするレンズ系と、光ビームを2光路に分岐する光分岐手段20などを具備している。勿論、光ビームを光分岐手段で2光路に分岐し、その後に各光ビームをレンズ系でコリメート光にする構成でもよい。
【0011】
励起光及びプローブ光の使用波長については特に制限はなく、従来技術と同様であってよい。但しプローブ光としては、試料(測定媒質)で吸収されない波長域を選択する必要がある。また後述する検出系で用いるリニアポジションセンサは、一般に検出素子にシリコンを使用しているので、近赤外から紫外までが使用できる波長域となる。従ってレンズ系は、光学ガラスもしくは石英系の素子で構成する。光分岐手段20としては、適当な間隔をもって形成した2つのスリット22で構成するのが望ましい。
【0012】
試料12を透過した2本の平行なプローブ光は、検出系30へ向かう。検出系30は、2本の平行なプローブ光を互いに逆の方向に反射する対称形状の反射体32と、それぞれのプローブ光を受けるリニアポジションセンサ34,36と、両リニアポジションセンサ34,36の検出信号の積を求める乗算器38からなる。ここでは反射体32として、2本のプローブ光をそれぞれ直角方向に反射するように反射面が45度傾いた直角反射体(直角プリズム)を用いている。リニアポジションセンサ34,36は、光が照射されている位置を電圧に変換して出力する素子である。これらは初期値が0Vに設定されており、予め定められた分解能で照射位置の変位に応じた電圧信号を出力する機能を有する。積算器38は任意の方式であってよい。アナログ方式でもよいが、ノイズ除去などの観点からはデジタル的に計算を行う方式の方が好ましい。このように構成した検出系30によって、2本のプローブ光偏向量の積を算出し吸光度を求める。
【0013】
なお、本発明に係る熱レンズ吸光分析装置による測定では、両プローブ光の偏向量を測定できればよいので、反射体でプローブ光を反射せずに、試料を透過してくるプローブ光を直接検出する構成も可能である。しかし、2本の平行なプローブ光の間隔が非常に狭いのに対して、リニアポジションセンサはある程度の大きさを有する。そのため、このような機器構成では部品配置が難しくなる。そこで本実施例のように、両プローブ光の光路を変える反射体を配置するのが好ましい。なお検出信号としてプローブ光の偏向量の基準点からのずれを用いるので、反射面が対称配置であればよく、必ずしも直角反射体(直角プリズム)である必要はない。
【0014】
本装置における測定原理を図2及び図3により説明する。図2に示すように、励起光強度Iは中心からガウス分布となっている。従って、中心から距離rだけ離れた位置での励起光強度Iは、次式で表される。
I=A0 exp (−r2 )
【0015】
試料の吸収量のプロファイルは、励起光のプロファイルに比例する。そしてプローブ光の偏向量は吸光度に比例する。従って、吸光度が一定であれば、試料の屈折率変化は励起光強度と同様のプロファイルをとる。試料の屈折率変化は、吸収量に比例するので、プローブ光の偏向角θは励起光強度Iに比例することになり、次式のように表せる。
θ∝I=A0 exp (−r2 )
【0016】
ここで、励起光がプローブ光の丁度中央を通っている場合のリニアポジションセンサの位置出力を基準とすると、検出面での偏向量δ0 は、反射点と検出面の距離をmとして、
δ0 =m・tan θ
となる。ここでθ≪1とすると、tan θ≒θとなるから、
δ0 ≒m・θ≒m・A0 exp (−r2 )
となる。ここで検出信号として左右2つのプローブ光偏向量の積をとると、検出信号δS0は、
δS0=δ0 ・δ0 =m2 ・A0 2 exp (−2r2 )
となる。
【0017】
次に、図3に示すように、プローブ光が外乱などによって中心からΔrだけ図面左側にずれた場合を仮定する。右側の検出面での偏向量δ+ と、左側の検出面での偏向量δ− は、それぞれ以下のように表せる(但し、Δr≪1とする)。
この場合の検出信号δS は、
よって、δS =δS0となる。
【0018】
上記のように、検出出力として2つのプローブ光偏向量の積をとると、プローブ光の配置の対称性によって、位置ずれΔrによる信号ずれは自動的に補正される。プローブ光の初期位置が中心からずれている場合(アライメントミス)も同様のメカニズムで信号のずれが補正される。なお吸光度が変化した場合は、指数部の積の部分が変化するので、積信号においても変化は相殺されず検出できる。従って、本装置においては、粗いアライメントであっても、また振動などの外乱が作用しても、それらによる吸光度の変化を自動的に補正でき、非常に安定で再現性の良好な測定が可能となる。
【0019】
【発明の効果】
本発明は上記のように、2本の平行なプローブ光を用いて、その偏向の積信号から吸光度を算出するように構成した熱レンズ吸光分析装置であるので、外乱等による信号変化が自動的に補正され、測定誤差を極力抑えた精度の高い測定が可能となる。また部品配置に高いアライメントが要求されず、アライメント作業が容易となるため、測定に関して熟練を必要とせず、簡便に且つ迅速に測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る熱レンズ吸光分析装置の一実施例を示す概略構成図。
【図2】励起光強度分布と励起光が両プローブ光の丁度中央を通っている場合のプローブ光偏向量の説明図。
【図3】励起光が両プローブ光の中央から距離Δr離れている場合のプローブ光偏向量の説明図。
【符号の説明】
10 試料セル
12 試料(測定媒質)
14 プローブ光源
16 集光系
18 レンズ系
20 光分岐手段
22 スリット
30 検出系
32 反射体
34,36 リニアポジションセンサ
38 乗算器
e 励起光
p プローブ光
Claims (3)
- 試料に励起光を入射することで熱による屈折率勾配を形成させる共に、該励起光に対して交差する方向から試料にプローブ光を入射し、屈折率勾配により生じるプローブ光偏向量を検出し、試料の吸光度を測定する吸光分析装置において、
プローブ光は2本の平行な光ビームからなり、検出系で2本のプローブ光偏向量の積から吸光度を求めることによって外乱等による検出信号変化が自動補正されるようにしたことを特徴とする熱レンズ吸光分析装置。 - 平行な2本のプローブ光は、単一のプローブ光源と、該プローブ光源からの光ビームを2光路に分岐する光分岐手段及び光ビームをコリメート光にするレンズ系を有する集光系で形成される請求項1記載の熱レンズ吸光分析装置。
- 検出系は、2本の平行なプローブ光を互いに逆の方向に反射する対称形状の反射体と、それぞれのプローブ光を受けるリニアポジションセンサと、両リニアポジションセンサの検出信号の積を求める乗算器からなる請求項1又は2記載の熱レンズ吸光分析装置。
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