JP2004257163A - 人工芝用基布及びそれを用いた人工芝 - Google Patents
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Abstract
【課題】再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて、適度な柔軟性を有し、縦割れし難く、且つ、十分な強度を有する人工芝用基布を提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレート樹脂70〜95重量%及び無水マレイン酸で変性されたエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマー5〜30重量%の範囲で配合したもの、さらには無機充填剤を特定量を配合することにより、成形性や耐衝撃性に優れ、適度な柔軟性を有し、縦割れし難く、且つ、十分な強度を有する人工芝用基布及びこれを用いた人工芝が得られる。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリエチレンテレフタレート樹脂70〜95重量%及び無水マレイン酸で変性されたエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマー5〜30重量%の範囲で配合したもの、さらには無機充填剤を特定量を配合することにより、成形性や耐衝撃性に優れ、適度な柔軟性を有し、縦割れし難く、且つ、十分な強度を有する人工芝用基布及びこれを用いた人工芝が得られる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回収されたポリエチレンテレフタレート樹脂の再利用に関するものであり、特に、回収されたポリエチレンテレフタレート樹脂を原料成分として、これに無水マレイン酸で変性されたエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマー(以下EPDMエラストマーと称す。)を特定量配合した組成物により形成された人工芝用基布及びそれを用いた人工芝に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来よりポリエチレンテレフタレート樹脂は、飲料用容器やシートなどの材料として多用されている。特に、ペットボトルと称されているポリエチレンテレフタレート樹脂製の容器は、軽さ、加工性、強度等の点で、ガラス製、紙製及び金属製の容器に比べて、優れていることから急速に使用量が増大しており、その廃棄処分をめぐって大きな環境間題となっており、また、資源の有効利用という点からもその再利用技術の確立は急務となっている。
【0003】
このような資源保護、環境保全の観点から、回収されたポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、再生PET樹脂と称する。)の再利用技術に関しては、様々な提案がなされているが、使用済みとなったペットボトル等の容器の量は、その量が膨大なため回収が効率的に行われたとしても、回収PET樹脂を充分に消化できるだけの有力な技術の提案は未だ少ないのが実状である。即ち、回収PET樹脂は、容器を粉砕装置で粉砕してから押出機で溶融押出して樹脂原料としてペレット状に加工する際に、加水分解により固有粘度の低下、即ち、分子量低下のため強度物性が低下する。そのため、回収PET樹脂を再利用する場合、用途は限定されがちで、回収樹脂の用途拡大は充分に進んでいない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した再生PET樹脂の再利用に関し、再生PET樹脂を用いてフイルム成形化した際、成形性が悪く、得られるフイルムは硬くて柔軟性に乏しく、このフイルムをスリットし、延伸してフラットヤーンとし、さらに割繊処理したスプリットヤーンを用いた人工芝用基布は、縦割れし易く、強度が不十分という問題があった。
本発明は、再生PET樹脂を用いて、適度な柔軟性を有し、縦割れし難く、且つ、十分な強度を有する人工芝用基布を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、再生PET樹脂に無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマーを特定の割合で配合した樹脂組成物を用いることにより、フイルムの成形性が改善され、適度の柔軟性を有し、縦割れし難く、且つ、十分な強度を有するスプリットヤーンの人工芝用基布が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本願発明の要旨は、ポリエチレンテレフタレート樹脂70〜95重量%及び無水マレイン酸で変性されたエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマー5〜30重量%の範囲の組成物からなることを特徴とする人工芝用基布、に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明において、人工芝は、一次基布と称するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の繊維体からなる織布、編物、不織布等で構成された人工芝用基布にポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなるフラットヤーンやモノフィラメントのパイル糸をタフティングにより多数植設し、パイルがループした頂部をカットして芝葉をなし、ついで、基布の裏面にラテックス材を裏打ち加工して一次基布にパイル糸を固定することにより製造される。
【0007】
本発明に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETと称す。)としては、酸成分としてテレフタル酸またはテレフタル酸誘導体と、グリコール成分としてエチレングリコールとを重縮合させて得られる重合体であって、そのテレフタル酸成分および/またはエチレングリコール成分の一部を共重合成分で置き換えた共重合体も包含する。上記PETとしては、バージンのPETや再生PET等が好適に使用される。再生PETとしては、通常、ポリエチレンテレフタレート製飲料用容器(通称ペットボトル)を破砕し、再ペレット化して用いるものであり、再ペレット化工程において、吸水や熱履歴などにより低下した固有粘度(η値)を固相重合で調整して使用することができる。また、再生PETは、上記バージンのPETと適宜混合して使用することもできる。
【0008】
上記PETの固有粘度[η]としては、0.4〜1.5の範囲のものであり、好ましくは、0.6〜1.1の範囲である。[η]が0.4未満ではフラットヤーンの引張強度が弱く、かつ縦割れが生じやすく、また[η]が1.5を超えると溶融押出時に流動性が劣り糸切れが生じるので好ましくない。
【0009】
本発明におけるEPDMエラストマーは、エチレンとプロピレンとジエンモノマーとの3元ポリマー(ターポリマー)である。ジエンモノマーとしては、炭素数が5〜20の範囲の炭素原子を含有する非共役直鎖状または環状ジエン炭化水素であり、例えば、ジエンモノマーとしては、エチリデンノルボルネン、メチレンノルボルネン、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン及びイソプレン等が挙げられ、特にエチリデンノルボルネンが好ましい。
【0010】
上記EPDMエラストマーの数平均分子量は、通常5000以上、好ましくは1万〜20万の範囲である。EPDMエラストマーとしては、それぞれの含有量がエチレン35〜80重量%、プロピレン18〜55重量%及びジエンモノマー2〜10重量%の範囲、好ましくはエチレン48〜77重量%、プロピレン23〜52重量%及びエチレンとプロピレンの合計含量を基準としてジエンモノマー2.5〜9.8重量%の範囲からなるターポリマーである。
【0011】
本発明で用いられる無水マレイン酸により変性されたEPDMエラストマーとしては、上記EPDMエラストマーの総重量の0.2〜1.0重量%、好ましくは0.4〜0.6重量%が無水マレインで変性されたものである。変性法は特に限定されるものではないが、例えば、米国特許第4,578,429号公報等に記載の方法を利用して、溶融法によりEPDMエラストマーに無水マレイン酸を反応させて行う方法等が挙げられる。
【0012】
上記PETと無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマーとの配合割合は、ポリエチレンテレフタレート樹脂70〜95重量%及び無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマー5〜30重量%の範囲、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート樹脂75〜90重量%及び無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマー10〜25重量%の範囲内である。無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマーの配合割合が5重量%未満では得られるフラットヤーンの縦割れ防止効果が不十分であり、一方、30重量%を超えると押出機の溶融粘度が高くなり、成形性が低下するので好ましくない。
【0013】
上記組成物の押出成形に際し、フラットヤーンの成形加工性、滑性、表面外観などを向上させ、縦割れを抑止する目的で、無機充填材を配合することが望ましい。無機充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、ハイドロタルサイト等が好適に用いられる。これらのうちでは炭酸カルシウムが好ましい。無機充填材の配合量は、上記PETと無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマーとの組成物100重量部に対して、0.5〜5重量部が好ましく、1〜3重量部がより好ましい。配合量が0.5重量部より小さいと上記目的の達成が困難となり、5重量部を超えるとフラットヤーンの柔軟性が失われるとともに糸切れが生じて好ましくない。
【0014】
さらに、本発明に用いられる上記樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、難燃剤、無機充填剤、核剤、発泡剤、分散剤等を任意の割合で添加することができる。
【0015】
本発明の人工芝用基布に用いるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の繊維体の形態としては、フィルムをスリットして延伸したフラットヤーンや、フラットヤーンを割繊したスプリットヤーン、また円形または異形ノズルから押し出したフィラメントを延伸したモノフィラメントや、低繊度フィラメントを収束したマルチフィラメントなどの単層型あるいは多層型、芯鞘型、並列型等の複合糸条など制限なく採用される。
【0016】
上記繊維体の形態として、上記PET及び無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマーの組成物を用いて、フラットヤーンを成形する方法としては、前記組成物を押出機で溶融押出し、Tダイ法またはインフレーション法によりフィルムを成形し、冷却固化したフィルムをスリットし、ついで加熱延伸し、さらに熱弛緩処理を施しててフラットヤーンを形成する。押出温度は270〜290℃の範囲であり、延伸温度は100〜140℃の範囲であり、さらに熱弛緩温度は120〜160℃の範囲が好ましい。また、加熱処理方法としては熱ロール方式、オーブン方式、熱板方式などいずれも採用できるが、熱板方式が好ましい。さらに延伸倍率は3〜15倍の範囲であり、好ましくは3〜6倍の範囲である。このフラットヤ−ンは、人工芝用基布を構成するものとして、その単糸繊度が500〜5000デシテクス(dt)の範囲である。
【0017】
上記繊維体の基布は、その形態や組織は制限されることはなく、例えば、織布の場合は、平織り、綾織り、絡み織り、もじり織り等挙げられ、フラットヤーンの打ち込み密度としては、3〜20本/インチが望ましい。また、編布の場合は、ラッセル編、トリコット編、ミラニーズ編等、不織布の場合は、湿式あるいは乾式法を問わずスパンボンド不織布、フラッシュ紡糸不織布、メルトブロー不織布等、またこれらを組み合わせて補強した積層物等が挙げられる。
【0018】
このようにして得られた一次基布と称するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の繊維等からなる織布等で構成された基布に上記ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなるフラットヤーンやモノフィラメントのパイル糸をタフティングにより多数植設し、パイルがループした頂部をカットして芝葉をなし、ついで、基布の裏面にラテックス材を裏打ち加工して一次基布にパイル糸を固定することにより人工芝が製造される。裏打ち層も従来と同様のポリ塩化ビニル、ポリオレフィン系樹脂等が主体として使用され、裏打ち加工温度が150〜190℃程度の範囲で行われる。
【0019】
【実施例】
実施例1
回収したペットボトルを破砕、溶融押出、ペレット化し、160℃、5時間乾燥処理した固有粘度=0.65dl/gの再生PET樹脂(融点=254℃)80重量%及びその総重量の0.5重量%が無水マレイン酸で変性されたエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマー20重量%の組成物100重量部に対して、炭酸カルシウム含有量40重量%のマスターバッチを4重量部を配合した樹脂組成物を用いて、65mmφ押出機により溶融温度275℃で、Tダイ法でフィルムを形成した。
冷却固化したフィルムをスリットし、120℃で4倍に延伸し、150℃で熱弛緩して、繊度が1000dtのフラットヤーンを得た。このフラットヤーンを経緯糸に使用して、スルーザー織機により打込密度を16×16本/インチで平織のフラットヤーンクロスを得て基布とした。
上記フラットヤーンの成形性は良好であり、柔軟性を有し、縦割れも全く見られず、耐摩耗性は良好であった。
上記で得られたフラットヤーンクロスを一次基布に用い、上記ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなるフラットヤーンをパイル糸として、タフティング法により植設し、その裏面にポリ塩化ビニルを用いて裏打ち加工温度150℃で裏打ち加工を施し、人工芝を形成した。
この人工芝は、タフティング時の生産性も良好で、裏打ち加工での熱収縮もなく外観上優れたものであった。
【0020】
比較例1
回収したペットボトルを破砕、溶融押出、ペレット化し、160℃、5時間乾燥処理した固有粘度=0.65dl/gの再生PET樹脂(融点=254℃)100重量部に炭酸カルシウム含有量40重量%のマスターバッチ4重量部を配合した樹脂組成物を用いて、65mmφ押出機により溶融温度275℃で、Tダイ法でフィルムを形成した。
冷却固化したフィルムをスリットし、120℃で5倍に延伸し、150℃で熱弛緩して、繊度が1000dtのフラットヤーンを得た。
上記フラットヤーンは成形性が不十分で、柔軟性にかけ、縦割れし易く、耐摩耗性も不十分であった。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の人工芝用基布は、ポリエチレンテレフタレート樹脂に変性されたエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマー、さらには、無機充填剤を特定量配合することにより、成形性や耐衝撃性に優れ、縦割れのないフラットヤーンを形成することができ、人工芝用基布として好適に使用される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、回収されたポリエチレンテレフタレート樹脂の再利用に関するものであり、特に、回収されたポリエチレンテレフタレート樹脂を原料成分として、これに無水マレイン酸で変性されたエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマー(以下EPDMエラストマーと称す。)を特定量配合した組成物により形成された人工芝用基布及びそれを用いた人工芝に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来よりポリエチレンテレフタレート樹脂は、飲料用容器やシートなどの材料として多用されている。特に、ペットボトルと称されているポリエチレンテレフタレート樹脂製の容器は、軽さ、加工性、強度等の点で、ガラス製、紙製及び金属製の容器に比べて、優れていることから急速に使用量が増大しており、その廃棄処分をめぐって大きな環境間題となっており、また、資源の有効利用という点からもその再利用技術の確立は急務となっている。
【0003】
このような資源保護、環境保全の観点から、回収されたポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、再生PET樹脂と称する。)の再利用技術に関しては、様々な提案がなされているが、使用済みとなったペットボトル等の容器の量は、その量が膨大なため回収が効率的に行われたとしても、回収PET樹脂を充分に消化できるだけの有力な技術の提案は未だ少ないのが実状である。即ち、回収PET樹脂は、容器を粉砕装置で粉砕してから押出機で溶融押出して樹脂原料としてペレット状に加工する際に、加水分解により固有粘度の低下、即ち、分子量低下のため強度物性が低下する。そのため、回収PET樹脂を再利用する場合、用途は限定されがちで、回収樹脂の用途拡大は充分に進んでいない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した再生PET樹脂の再利用に関し、再生PET樹脂を用いてフイルム成形化した際、成形性が悪く、得られるフイルムは硬くて柔軟性に乏しく、このフイルムをスリットし、延伸してフラットヤーンとし、さらに割繊処理したスプリットヤーンを用いた人工芝用基布は、縦割れし易く、強度が不十分という問題があった。
本発明は、再生PET樹脂を用いて、適度な柔軟性を有し、縦割れし難く、且つ、十分な強度を有する人工芝用基布を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、再生PET樹脂に無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマーを特定の割合で配合した樹脂組成物を用いることにより、フイルムの成形性が改善され、適度の柔軟性を有し、縦割れし難く、且つ、十分な強度を有するスプリットヤーンの人工芝用基布が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本願発明の要旨は、ポリエチレンテレフタレート樹脂70〜95重量%及び無水マレイン酸で変性されたエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマー5〜30重量%の範囲の組成物からなることを特徴とする人工芝用基布、に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明において、人工芝は、一次基布と称するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の繊維体からなる織布、編物、不織布等で構成された人工芝用基布にポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなるフラットヤーンやモノフィラメントのパイル糸をタフティングにより多数植設し、パイルがループした頂部をカットして芝葉をなし、ついで、基布の裏面にラテックス材を裏打ち加工して一次基布にパイル糸を固定することにより製造される。
【0007】
本発明に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETと称す。)としては、酸成分としてテレフタル酸またはテレフタル酸誘導体と、グリコール成分としてエチレングリコールとを重縮合させて得られる重合体であって、そのテレフタル酸成分および/またはエチレングリコール成分の一部を共重合成分で置き換えた共重合体も包含する。上記PETとしては、バージンのPETや再生PET等が好適に使用される。再生PETとしては、通常、ポリエチレンテレフタレート製飲料用容器(通称ペットボトル)を破砕し、再ペレット化して用いるものであり、再ペレット化工程において、吸水や熱履歴などにより低下した固有粘度(η値)を固相重合で調整して使用することができる。また、再生PETは、上記バージンのPETと適宜混合して使用することもできる。
【0008】
上記PETの固有粘度[η]としては、0.4〜1.5の範囲のものであり、好ましくは、0.6〜1.1の範囲である。[η]が0.4未満ではフラットヤーンの引張強度が弱く、かつ縦割れが生じやすく、また[η]が1.5を超えると溶融押出時に流動性が劣り糸切れが生じるので好ましくない。
【0009】
本発明におけるEPDMエラストマーは、エチレンとプロピレンとジエンモノマーとの3元ポリマー(ターポリマー)である。ジエンモノマーとしては、炭素数が5〜20の範囲の炭素原子を含有する非共役直鎖状または環状ジエン炭化水素であり、例えば、ジエンモノマーとしては、エチリデンノルボルネン、メチレンノルボルネン、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン及びイソプレン等が挙げられ、特にエチリデンノルボルネンが好ましい。
【0010】
上記EPDMエラストマーの数平均分子量は、通常5000以上、好ましくは1万〜20万の範囲である。EPDMエラストマーとしては、それぞれの含有量がエチレン35〜80重量%、プロピレン18〜55重量%及びジエンモノマー2〜10重量%の範囲、好ましくはエチレン48〜77重量%、プロピレン23〜52重量%及びエチレンとプロピレンの合計含量を基準としてジエンモノマー2.5〜9.8重量%の範囲からなるターポリマーである。
【0011】
本発明で用いられる無水マレイン酸により変性されたEPDMエラストマーとしては、上記EPDMエラストマーの総重量の0.2〜1.0重量%、好ましくは0.4〜0.6重量%が無水マレインで変性されたものである。変性法は特に限定されるものではないが、例えば、米国特許第4,578,429号公報等に記載の方法を利用して、溶融法によりEPDMエラストマーに無水マレイン酸を反応させて行う方法等が挙げられる。
【0012】
上記PETと無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマーとの配合割合は、ポリエチレンテレフタレート樹脂70〜95重量%及び無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマー5〜30重量%の範囲、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート樹脂75〜90重量%及び無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマー10〜25重量%の範囲内である。無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマーの配合割合が5重量%未満では得られるフラットヤーンの縦割れ防止効果が不十分であり、一方、30重量%を超えると押出機の溶融粘度が高くなり、成形性が低下するので好ましくない。
【0013】
上記組成物の押出成形に際し、フラットヤーンの成形加工性、滑性、表面外観などを向上させ、縦割れを抑止する目的で、無機充填材を配合することが望ましい。無機充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、ハイドロタルサイト等が好適に用いられる。これらのうちでは炭酸カルシウムが好ましい。無機充填材の配合量は、上記PETと無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマーとの組成物100重量部に対して、0.5〜5重量部が好ましく、1〜3重量部がより好ましい。配合量が0.5重量部より小さいと上記目的の達成が困難となり、5重量部を超えるとフラットヤーンの柔軟性が失われるとともに糸切れが生じて好ましくない。
【0014】
さらに、本発明に用いられる上記樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、難燃剤、無機充填剤、核剤、発泡剤、分散剤等を任意の割合で添加することができる。
【0015】
本発明の人工芝用基布に用いるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の繊維体の形態としては、フィルムをスリットして延伸したフラットヤーンや、フラットヤーンを割繊したスプリットヤーン、また円形または異形ノズルから押し出したフィラメントを延伸したモノフィラメントや、低繊度フィラメントを収束したマルチフィラメントなどの単層型あるいは多層型、芯鞘型、並列型等の複合糸条など制限なく採用される。
【0016】
上記繊維体の形態として、上記PET及び無水マレイン酸で変性されたEPDMエラストマーの組成物を用いて、フラットヤーンを成形する方法としては、前記組成物を押出機で溶融押出し、Tダイ法またはインフレーション法によりフィルムを成形し、冷却固化したフィルムをスリットし、ついで加熱延伸し、さらに熱弛緩処理を施しててフラットヤーンを形成する。押出温度は270〜290℃の範囲であり、延伸温度は100〜140℃の範囲であり、さらに熱弛緩温度は120〜160℃の範囲が好ましい。また、加熱処理方法としては熱ロール方式、オーブン方式、熱板方式などいずれも採用できるが、熱板方式が好ましい。さらに延伸倍率は3〜15倍の範囲であり、好ましくは3〜6倍の範囲である。このフラットヤ−ンは、人工芝用基布を構成するものとして、その単糸繊度が500〜5000デシテクス(dt)の範囲である。
【0017】
上記繊維体の基布は、その形態や組織は制限されることはなく、例えば、織布の場合は、平織り、綾織り、絡み織り、もじり織り等挙げられ、フラットヤーンの打ち込み密度としては、3〜20本/インチが望ましい。また、編布の場合は、ラッセル編、トリコット編、ミラニーズ編等、不織布の場合は、湿式あるいは乾式法を問わずスパンボンド不織布、フラッシュ紡糸不織布、メルトブロー不織布等、またこれらを組み合わせて補強した積層物等が挙げられる。
【0018】
このようにして得られた一次基布と称するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の繊維等からなる織布等で構成された基布に上記ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなるフラットヤーンやモノフィラメントのパイル糸をタフティングにより多数植設し、パイルがループした頂部をカットして芝葉をなし、ついで、基布の裏面にラテックス材を裏打ち加工して一次基布にパイル糸を固定することにより人工芝が製造される。裏打ち層も従来と同様のポリ塩化ビニル、ポリオレフィン系樹脂等が主体として使用され、裏打ち加工温度が150〜190℃程度の範囲で行われる。
【0019】
【実施例】
実施例1
回収したペットボトルを破砕、溶融押出、ペレット化し、160℃、5時間乾燥処理した固有粘度=0.65dl/gの再生PET樹脂(融点=254℃)80重量%及びその総重量の0.5重量%が無水マレイン酸で変性されたエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマー20重量%の組成物100重量部に対して、炭酸カルシウム含有量40重量%のマスターバッチを4重量部を配合した樹脂組成物を用いて、65mmφ押出機により溶融温度275℃で、Tダイ法でフィルムを形成した。
冷却固化したフィルムをスリットし、120℃で4倍に延伸し、150℃で熱弛緩して、繊度が1000dtのフラットヤーンを得た。このフラットヤーンを経緯糸に使用して、スルーザー織機により打込密度を16×16本/インチで平織のフラットヤーンクロスを得て基布とした。
上記フラットヤーンの成形性は良好であり、柔軟性を有し、縦割れも全く見られず、耐摩耗性は良好であった。
上記で得られたフラットヤーンクロスを一次基布に用い、上記ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなるフラットヤーンをパイル糸として、タフティング法により植設し、その裏面にポリ塩化ビニルを用いて裏打ち加工温度150℃で裏打ち加工を施し、人工芝を形成した。
この人工芝は、タフティング時の生産性も良好で、裏打ち加工での熱収縮もなく外観上優れたものであった。
【0020】
比較例1
回収したペットボトルを破砕、溶融押出、ペレット化し、160℃、5時間乾燥処理した固有粘度=0.65dl/gの再生PET樹脂(融点=254℃)100重量部に炭酸カルシウム含有量40重量%のマスターバッチ4重量部を配合した樹脂組成物を用いて、65mmφ押出機により溶融温度275℃で、Tダイ法でフィルムを形成した。
冷却固化したフィルムをスリットし、120℃で5倍に延伸し、150℃で熱弛緩して、繊度が1000dtのフラットヤーンを得た。
上記フラットヤーンは成形性が不十分で、柔軟性にかけ、縦割れし易く、耐摩耗性も不十分であった。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の人工芝用基布は、ポリエチレンテレフタレート樹脂に変性されたエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマー、さらには、無機充填剤を特定量配合することにより、成形性や耐衝撃性に優れ、縦割れのないフラットヤーンを形成することができ、人工芝用基布として好適に使用される。
Claims (4)
- ポリエチレンテレフタレート樹脂70〜90重量%及び無水マレイン酸で変性されたエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマー10〜30重量%の範囲の組成物からなることを特徴とする人工芝用基布。
- 無水マレイン酸で変性されたエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマーはそのエチレンープロピレンージエンモノマーエラストマーの総重量の0.2〜1.0重量%が無水マレイン酸で変性されたものである請求項1に記載の人工芝用基布。
- 上記組成物100重量部に対し無機充填剤0.5〜5重量部を配合してなる請求項1に記載の人工芝用基布
- 請求項1の人工芝用基布を用いた人工芝。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003050686A JP2004257163A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | 人工芝用基布及びそれを用いた人工芝 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP (1) | JP2004257163A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019138048A (ja) * | 2018-02-09 | 2019-08-22 | アイリスソーコー株式会社 | 防草人工芝 |
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2003
- 2003-02-27 JP JP2003050686A patent/JP2004257163A/ja active Pending
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JP2019138048A (ja) * | 2018-02-09 | 2019-08-22 | アイリスソーコー株式会社 | 防草人工芝 |
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