JP2004256992A - トロンブ壁パネル - Google Patents

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Abstract

【課題】建物への設置が容易なトロンブ壁パネルを得る。
【解決手段】トロンブ壁パネルは、枠体30,枠体30の建物に設置された状態で室内側開口近傍に配設される複数の蓄熱容器32,枠体30の室外側に固定される遮光板34、蓄熱容器32と遮光板34との間に配設される遮光装置140とを備えている。蓄熱容器32内には、蓄熱液94として水が封入されている。蓄熱容器32は長手形状の筒状容器であり、長手方向が上下方向に延びる姿勢で、かつ、複数本の蓄熱容器32が互いに平行に並べられた状態で配設される。遮光装置140の透光状態で、太陽光線が透光板34を透過して蓄熱容器32に入射することにより、蓄熱容器32内の水に太陽熱が蓄積され、熱線として室内に放射されることによって、室内が良好に温められる。トロンブ壁パネルは、蓄熱容器32に水が入っていない空の状態で設置された後、注入口100から水が注入された後に蓄熱容器32が密閉される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トロンブ壁の改良およびトロンブ壁を住宅等の建物に設置するためのトロンブ壁施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
「トロンブ壁」は、省エネルギー化住宅、環境共生型住宅等を実現するために採用されるパッシブ暖房システムの一種であり、例えば特許文献1および2に記載されているように、住宅等の建物の南側に設けられ、ガラス板と、ガラス板より室内側に設けられたコンクリート製の蓄熱壁、あるいは複数のブロックが積まれることにより構成される蓄熱壁とを含んで、住宅の外壁の一部を構成するものである。ガラス板を透過して蓄熱壁に太陽光線が入射し、蓄熱壁に蓄えられた太陽熱が、室内側に放射(輻射)されることによって室内が温められる。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−284285号公報
【特許文献2】
特開2002−81690公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
しかしながら、上記構成のトロンブ壁を住宅に採用するには特別な知識や設計力が必要であり、実際に住宅を建造する一般の建築業者には設置が困難である場合が多いため、実用化が進んでいないのが実状である。
本発明は、以上の事情を背景とし、住宅等の建築物への設置が容易なトロンブ壁を得ることを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様のトロンブ壁パネルおよびトロンブ壁施工方法が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0005】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(4)項が請求項3に、 (9)項が請求項4に、(11)項および(12)項を合わせたものが請求項5に、(15)項が請求項6に、(16)項が請求項7に、(17)項が請求項8に、(20)項が請求項9にそれぞれ相当する。
【0006】
(1)枠体と、
その枠体に保持され、内部に蓄熱液を注入するための注入口を備えた蓄熱容器と、
その蓄熱容器の一側において前記枠体に保持された透光板と、
を含み、全体としてパネル状を成すことを特徴とするトロンブ壁パネル。
太陽光線が透光板を透過して蓄熱容器に入射することにより、蓄熱容器内の蓄熱液に太陽熱が蓄積され、後に熱線として室内に放射されることによって、室内が良好に温められる。本発明によれば、住宅等建築物にそのまま取り付ければトロンブ壁となるトロンブ壁パネルとしてユニット化されることにより、トロンブ壁に関する知識の乏しい建築業者であっても容易にトロンブ壁を設置できる。
蓄熱容器は、枠体の内側開口をほぼ塞ぐ状態で配設されることが望ましいが、不可欠ではない。例えば、内側開口内に複数の蓄熱容器が互いに間隔を隔てて配設され、それらの隙間が断熱材等他の材料により塞がれた状態とされてもよいのである。蓄熱容器は、金属製としたり、合成樹脂等の非金属材料製としたりすることができる。蓄熱液としては水が好適であるが、単純な水ではなく、不凍液,防錆剤を添加したり、ゲル化剤を加えてゲル化することにより対流を防止したりすることも可能である。透光板は、太陽光線、特に長波長成分を透過させる材料から成るものであればよく、アクリル樹脂等の樹脂板でもよいが、ガラス板が好適であり、2層,3層ガラス板,Low−Eガラス板,真空断熱ガラス板が特に好適である。
【0007】
(2)前記蓄熱容器が、内部に蓄熱液を注入した後に密閉可能なものである (1)項に記載のトロンブ壁パネル。
蓄熱容器は、蓄熱液を注入後に密閉することは不可欠ではないが、本項に係る発明のように密閉可能とすれば、蓄熱液の蒸発を抑制できるため蓄熱液の定期的な補充が不要となる。また、蓄熱容器を金属製とする場合には、蓄熱容器内部に錆びが発生することを良好に防止できる。ただし、蓄熱容器を密閉する際には、蓄熱容器内に気体(工事の容易さの点から、空気が望ましい)が充満した設定容積の空間が残るように蓄熱液を注入するにとどめることが望ましい。それによって、気体が充満した空間に膨張器の役割を果たさせることができる。また、蓄熱容器の外部に膨張器を設け、両者を連通路により連通させておくこともできる。膨張器は、蓄熱液の温度が低下して、体積が最小となった場合でも、蓄熱容器内の圧力が大気圧以下にならない範囲においてできる限り低い圧力下に蓄熱液を蓄えるものとすることが望ましい。あるいは、内部圧力をほぼ大気圧に保って容積が変化し得る構造の膨張器を蓄熱容器に接続することも可能である。
【0008】
(3)前記蓄熱容器が、内部に蓄熱液が注入された後、大気に開放された状態に保たれるものである (1)項に記載のトロンブ壁パネル。
本項に係る発明によれば、密閉型の蓄熱容器の場合のように、蓄熱液の熱膨張による蓄熱容器の内圧上昇を蓄熱容器の耐圧以下に抑えるために、蓄熱容器の耐圧強度を大きくする等の手段を必要とせず、蓄熱容器を薄肉化および軽量化することが容易となる。蓄熱容器の軽量化は、トロンブ壁パネル全体の軽量化に寄与し、トロンブ壁パネルの設置作業の負担を軽減できる。蓄熱容器を大気に開放するといっても、大気との連通口はできる限り小さくし、蓄熱液が蒸発により大気中へ失われることを可及的に防止し、蓄熱液の補充頻度を小さくすることが望ましい。
【0009】
(4)前記透光板と前記蓄熱容器との間あるいは透光板に対して蓄熱容器とは反対側に設けられ、透光板を通して蓄熱容器に太陽光線が入射することを許容する透光状態と阻止する遮光状態とを取り得る遮光装置を含む (1)項ないし(3)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
冬の間は遮光装置が投光状態とされることによって前述のように室内の暖房が行われ、暖房が不要な夏の間は遮光状態とされる等、必要に応じて遮光装置が透光状態と遮光状態とに択一的に変更されれば、太陽光線を良好に室内暖房に利用することができる。また、日没後から日の出前の夜間においても、屋内から屋外への放熱を抑制するために遮光装置が遮光状態とされることが望ましい場合もある。遮光装置は、透光板と蓄熱容器との間に設けられて透光板を透過した太陽光線が蓄熱容器に入射することを阻止し得るものとしてもよいし、透光板に対して蓄熱容器とは反対側に設けて透光板に太陽光線が入射すること自体を阻止し得るものとしてもよい。
(5)前記遮光装置の少なくとも前記蓄熱容器側とは反対側の面が太陽光線を反射する反射面とされた (4)項に記載のトロンブ壁パネル。
遮光装置を前記遮光状態とすれば、太陽光線の蓄熱容器への入射を抑制する効果が得られるが、遮光装置の蓄熱容器側とは反対側の面を太陽光線を反射する反射面とすれば、太陽熱の蓄熱容器への到達防止効果がさらに向上する。遮光装置自体が太陽光線により暖められ、蓄熱容器に向かって熱線を放射することを抑制し得るからである。遮光装置の蓄熱容器側の面も蓄熱容器からの放射熱線を反射する反射面とされることが望ましい。各反射面は、入射する太陽光線や放射熱線の70%以上を反射するものであることが望ましく、85%以上反射するものであることがさらに望ましい。また、遮光装置を、断熱材を内蔵するものとすれば、遮光状態において、蓄熱容器に向かって熱線を放射することを抑制する効果と、蓄熱容器から遮光装置側への放熱を抑制する効果との少なくとも一方をより効果的に享受できる。
【0010】
(6)前記遮光装置が、ロールに巻き取られることにより前記透光状態とされ、ロールから引き出されることにより前記遮光状態とされる遮光シートを含む (4)項または (5)項に記載のトロンブ壁パネル。
遮光シートは、安価であり、また、反射面の形成が容易である。
(7)前記遮光装置が、複数枚の帯状部材が互いに平行に配列されるとともに、各帯状部材が長手方向に平行な回動軸線まわりに回動することにより、前記透光状態と遮光状態とを取るベネシャンブラインドを含む (4)項または (5)項に記載のトロンブ壁パネル。
帯状部材は、遮光状態においては互いに接触してほぼ空気の流れを遮断する状態となることが望ましい。
【0011】
(8)前記注入口が前記蓄熱容器の上端近傍部に設けられた (1)項ないし (7)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
注入口より下の位置に排気口を設けることが望ましい。蓄熱容器内に蓄熱液が注入されるに従って蓄熱容器内の空気が排気口から流出するが、蓄熱液の上面が排気口に達すれば、排気口から蓄熱液が溢れる状態となるため、所定量の蓄熱液が注入されたことを確認し得る。
(9)前記蓄熱容器が、気体が充満した設定容積の空間が内部に残る状態に前記蓄熱液が注入されて密閉された (1)項ないし (8)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
蓄熱容器への蓄熱液の注入作業終了後は、上部に適切な体積の気体が充満した空間が残された状態で、注入口および排気口(設けられていれば)が密閉されて、蓄熱容器は密閉蓄熱容器とされる。気体が充満した空間が残されるのは、前述のように、蓄熱液の温度上昇に伴う体積膨張が空間内の気体の圧縮により吸収され、内部圧力が過度に上昇することを回避するためである。したがって、設定容積は、使用時に蓄熱液が予定最高温度まで上昇した場合にも、内部圧力が蓄熱容器の耐圧強度を超えることがない大きさに設定される。予定最高温度は、トロンブ壁パネルが使用される環境によって異なり、50℃、65℃,80℃から選定される。
【0012】
(10)前記蓄熱容器を複数含む (1)項ないし (9)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
1つの枠体内に1つの蓄熱容器を設けることも可能である。蓄熱容器が少なくとも一部が大気に開放される開放型である場合には特に、蓄熱容器に高い耐圧強度は要求されないため、1つの蓄熱容器にすることが容易である。しかし、複数の蓄熱容器を設けることが望ましい場合が多い。製造や、蓄熱液の膨張による内圧の上昇に対する耐圧性の確保等が容易となるからである。複数の蓄熱容器の各々に個別の注入口から蓄熱液を注入しても、複数の蓄熱容器の注入口を接続通路で接続し、その接続通路に設けた集中注入口から蓄熱液を注入してもよい。
【0013】
(11)前記蓄熱容器が、長手形状の筒状容器である (1)項ないし (10)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
複数本の筒状容器が互いに平行に並べられた状態で枠体の内側開口内に配設されることが望ましい。
(12)前記筒状容器が複数本、互いに平行にかつ互いに接触する程度に近接して配設され、全体として板状を成す (11)項に記載のトロンブ壁パネル。
本態様によれば、複数本の筒状容器が互いに近接して配設されることにより、受熱面積が大きくなって効率的に筒状容器内の蓄熱液が温められることになる。また、複数本の筒状容器が全体として板状を成すことにより、室内をほぼ均一に温めることが容易となる。
(13)前記筒状容器の横断面形状が概して四角形である (11)項または (12)項に記載のトロンブ壁パネル。
横断面形状が概して四角形の筒状容器は互いに近接して配設することが容易であり、蓄熱容積を大きくすることができる。「概して四角形」には、文字通りの四角形は勿論、四角形の角が丸められた形状や、四角形の各辺が多少外方に凸に湾曲した形状等も含まれるものとする。
(14)前記筒状容器の横断面形状が概して円形である (11)項または (12)項に記載のトロンブ壁パネル。
「概して円形」には、文字通りの円形は勿論、多少つぶれて楕円形となった形状や、一部分に凹部または凸部を有する形状等が含まれるものとする。横断面形状が円形の筒状容器は耐圧強度が大きく、薄肉でありながら蓄熱液や封入気体の熱膨張に耐え得るものを得易い。
(15)前記筒状容器が上下方向に延びる姿勢で配設された (11)項ないし(14)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
複数本の筒状容器の設置が容易であり、また、容器への蓄熱液の注入が容易となるが、後述のように、筒状容器内での蓄熱液の対流が防止されることが望ましい。
(16)前記蓄熱容器の内部に対流防止手段が施された (1)項ないし(15)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
蓄熱容器内の蓄熱液が流動し易いものである場合、例えば冬の夜間のように、熱が屋内から屋外に向かって流出する際、筒状容器内に屋内側が上向き、屋外側が下向きの対流が発生し、屋内の熱が逃げ易くなる。したがって、本態様の対流防止手段を設ければ、屋内の保温性が向上する。対流防止手段は、例えば、蓄熱容器内での上下方向の対流を防止するための仕切りを含むものとすることができる。本項の特徴は、蓄熱容器が上下方向の寸法の大きいものである場合、例えば、長手形状の筒状容器が上下方向にほぼ平行に配設される場合に特に有効である。
(17)前記対流防止手段が、蓄熱液に加えられたゲル化剤を含む(16)項に記載のトロンブ壁パネル。
蓄熱液の蓄熱容器への注入前後にゲル化剤を加えて蓄熱液をゲル化するのである。ゲル化は、蓄熱液が、蓄熱容器への注入時には少なくとも注入が可能な程度の流動性を有し、後に対流を防止し得る程度に流動性を失うように行えばよい。蓄熱液をゲル化すれば、蓄熱液の流動が抑制され、蓄熱容器内に対流防止部材を設けることなく対流を防止することができる。
(18)前記筒状容器が横方向に延びる姿勢で配設された (11)項ないし(14)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
複数本の筒状容器を横方向に延びる姿勢で配設すれば、前述のような対流防止手段を設けなくても、筒状容器内部の対流による屋内の保温性低下を抑制し得る。
【0014】
(19)前記蓄熱容器が概して扁平な形状を有する (1)項ないし (10)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
トロンブ壁パネルの厚さ方向の寸法が、幅方向や高さ方向の寸法に比較して小さい扁平な形状の蓄熱容器を用いれば、所要蓄熱容器数を減少させることができる。蓄熱容器は、合成樹脂製や金属製の成形容器とすることも可能であり、その場合の一形態として、それぞれ射出成形や圧縮成形で凹凸部を形成した2枚の合成樹脂パネルや、プレス成形で凹凸部を形成した2枚の金属パネルを、接着やシーム溶接によって液密に固着し、容器状とすることができる。全体として扁平な形状の一体容器とされるのであるが、その場合でも、所要の剛性および耐圧強度を薄肉の材料で実現するために、扁平な形状の蓄熱容器の厚さ方向において互いに対向する壁の中間部同士を1個所以上において結合した構造とすることが望ましい。
【0015】
(20)前記蓄熱容器の前記透光板側の面が光透過性を有する断熱材により覆われた (1)項ないし(20)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
太陽熱の吸収を妨げることを回避しつつ放熱を抑制するためである。光透過性を有する断熱材は透明断熱材であることが望ましい。
(21)前記蓄熱容器の前記透光板側の面に黒色塗装または選択吸収膜処理が施された (1)項ないし(20)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
太陽熱を吸収し易くするためである。入射熱線の吸収性能が高く、熱線の放射性能が低い選択吸収膜は特に有効である。
(22)前記蓄熱容器の前記透光板側とは反対側の面に黒色塗装が施された (1)項ないし(21)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
蓄熱容器から屋内への熱線の放射が良好になる。
(23)当該トロンブ壁パネルが、前記枠体,前記透光板および前記蓄熱容器により囲まれた空間の下部と上部とをそれぞれ外気と連通させる開閉可能な連通口を有する (1)項ないし(22)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
各連通口は、状況に応じて適宜開閉される。例えば、夏の間は、下部および上部の各連通口を共に開状態として、トロンブ壁パネルの空間内の温度上昇を防ぎ、冬の間は、上部および下部の連通口を共に閉状態として、空間内の温められた空気が大気中へ逃げることを防止することにより、良好な暖房状態を維持できる。ただし、冬の間でも、枠体内部の空間が完全に密封されることは望ましくなく、下部の連通口は開状態とされるようにしてもよい。また、連通口は開状態においても雨水の浸入は防止し得る構造とされることが望ましい。
【0016】
(24) (1)項ないし(23)項のいずれかに記載のトロンブ壁パネルであって前記蓄熱容器が空であるものを建物の南側面に固定して外壁とする固定工程と、
前記空の蓄熱容器に前記注入口から前記蓄熱液を注入する注入工程と
を含むトロンブ壁施工方法。
本方法に従えば、トロンブ壁に関する知識の乏しい建築業者であってもトロンブ壁パネルを建物の南側面に固定して容易にトロンブ壁を設置できる。また、トロンブ壁パネルを固定した後に、蓄熱液を注入するのであるから、固定作業時の重量が小さくて済み、固定作業を容易に行うことができる。
(25)前記注入工程の後に、前記注入口を密閉する密閉工程を含む(24)項に記載のトロンブ壁施工方法。
(26)前記固定工程に先立って、別の場所で予め組み立てられた前記トロンブ壁パネルを前記建物の近傍に運搬する運搬工程を含む(24)項または(25)項に記載のトロンブ壁施工方法。
トロンブ壁設置現場での作業量を減少させ得る。
(27)前記固定工程に先立って、前記トロンブ壁パネルを前記建物の近傍において組み立てる組立工程を含む(24)項または(25)項に記載のトロンブ壁施工方法。
本態様は、トロンブ壁が特に大形のものである場合に有効である。
(28)前記固定工程が、前記枠体を建物の南側面に固定した後、その枠体に前記蓄熱容器の少なくとも一部のものを固定する工程を含む(24)項または(25)項に記載のトロンブ壁施工方法。
本態様は、予め組み立てられたトロンブ壁パネルの重量が大きい等の理由で、設置作業が困難である場所にトロンブ壁を設置する必要がある場合等に有効である。
【0017】
(29)枠体と、
その枠体に保持され、内部に蓄熱液を注入するための注入口を備えた蓄熱容器と、
その蓄熱容器の一側において前記枠体に保持される透光板と、
その透光板と前記蓄熱容器との間あるいは透光板に対して蓄熱容器とは反対側に設けられ、透光板を通して蓄熱容器に太陽光線が入射することを許容する透光状態と阻止する遮光状態とを取り得る遮光装置と
を含み、蓄熱容器,透光板および遮光装置の少なくとも一つが枠体に未だ取り付けられていないトロンブ壁パネルキット。
トロンブ壁パネルは工場等において予め組み上げられ、その状態で施工現場へ運搬されて建物に固定されることが望ましいが、トロンブ壁パネルの大きさ,重量,取付場所等の都合で、半完成品であるトロンブ壁パネルキットとして施工現場へ運搬され、枠体の建物への固定前に現場で組み上げられ、あるいは枠体が建物に固定された後、その枠体に蓄熱容器,透光板および遮光装置の少なくとも一つが取り付けられるようにすることも可能である。前記 (2)項, (3)項, (5)項ないし(23)項のいずれかに記載の特徴を本項の発明にも適用することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態であるトロンブ壁パネルについて図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の一実施形態として、建物の一種である軸組み構造の住宅の南側の外壁がトロンブ壁パネルにより構成された状態が示されている。図1には、住宅の1階にトロンブ壁パネルが設けられた状態が示されているが、住宅の2階以上に設置されてもよい。本トロンブ壁パネルはユニット化されており、そのトロンブ壁パネルごと建物に対して取り付けることができる。
【0019】
本トロンブ壁パネルは、窓が設置される場合と同様に、土台10,床板12等を含む床組14と、壁20を構成する隣接する2本の柱22、あるいは1本ずつの柱22と間柱とにより形成される空間に設置される。トロンブ壁パネルは、図1および図2に示すように、枠体30と、枠体30に保持された複数の蓄熱容器32と、蓄熱容器32の一方の側において枠体30に保持された透光板34とを備えている。
【0020】
枠体30は、本実施形態では木製であり、前記蓄熱容器32の配置される空間の四方を囲む一対の縦枠40と一対の横枠42とを備えている。ただし、枠体30の形成材料は木に限定されない。枠体30は、幅(一対の縦枠40の外のり寸法)800mm〜900mmで、高さ(一対の横枠42の外のり寸法)2m〜2.4m程度の寸法が標準的であるが、上記範囲に限定されるものではない。本実施形態における枠体30は、枠体30の幅方向の両端部を構成する一対の縦枠40の間の位置において、縦枠40と平行に延びる中間枠44も備えている。図示の例では、中間枠44は一対の縦枠40のほぼ中央位置に設けられている。
【0021】
枠体30の住宅室内側の端面(枠体30の透光板34が設けられた側とは反対側の端面)46は平坦面とされ、柱(あるいは間柱)22の室内側の端面と同一平面上に位置するように設置されている。また、枠体30は、土台10,床板12等の床組14に支持される。図示の例では、土台10に、トロンブ壁パネル取付け用の取付部材を介して支持されている。住宅の2階以上に設置される場合にも、土台,胴差,床板を含む床組の構成要素の一部に支持される。枠体30は、枠体30の外側面と柱(間柱)22等の構造体とをL字形の金具とねじ釘とを含む固定手段によってつなぐことにより、建物に固定される。あるいは、柱(間柱)22等に直接ねじ釘留めされてもよい。本トロンブ壁パネルが建物に設置された状態で、枠体30には、室内側から、内装材としての石膏ボード50が釘等の固定装置によって固定される。内装材は、石膏ボード50に代えて木製の板材としてもよい。中間枠44は、石膏ボード50を釘留めする間隔を適当な大きさとするために設けられている。枠体30を含むトロンブ壁パネルが、石膏ボード50とともに建物の壁の一部を構成する。なお、トロンブ壁パネルは、通常、住宅の外壁の総厚さよりも大きくなるため、外壁よりも外側に突出する部分には防水処理が施されることが望ましい。例えば、図1に示すように、外壁よりも外側に突出した枠体30の外周部(の特に上部および下部)を、防水性を有する板金54,56で被覆する。トロンブ壁パネルの住宅設置後であって、サイディング等の外装材施工時に現場で板金施工されることが望ましい。
【0022】
透光板34は、ガラス板を備えるものであり、枠体30の室内側の端面46とは反対側の端面に取り付けられている。透光板34は、ガラス板のみから成るものとしてもよいし、ガラス板とそれの外縁部を囲む枠体とから成るものとしてもよい。ガラス板は、図示の例では2層のLow−E(Low Emission)ガラス板とされているが、3層のLow−Eガラス板や真空断熱ガラス板でもよいし、通常の2層,3層ガラス板、あるいは、条件によっては単層のガラス板でもよい。なお、上記2,3層のLow−Eガラスおよび真空断熱ガラスは、公知のものであるため詳細な説明は省略するが、太陽光線の透過を許容するとともに、ガラス板により覆われた内部空間からの放熱を抑制する効果を有するものである。
【0023】
透光板34は、枠体30に着脱可能に保持されている。トロンブ壁パネルの設置後に、枠体30および透光板34によって形成される空間内に対して作業者が作業を行う場合には、透光板34が取り外される。あるいは、透光板34が枠体30に固定され、その固定を解除して枠体30から取り外される構成としてもよいし、透光板34が枠体30に開閉可能に保持されてもよい。いずれにしても、透光板34の下端部が枠体30の横枠42に直接あるいは補助部材を介して間接に保持され、上端部が枠体30の構成要素である横枠60に直接あるいは補助部材を介して間接に保持されることにより、枠体30の室外側開口が閉塞される。なお、透光板34を開閉可能とすれば、トロンブ壁パネルの設置後に、枠体30および透光板34によって形成される空間内に対する作業を行うことが容易となる。開閉形式は、片開き(上,下,左,右のいずれの端を中心に回動してもよい)あるいは両開き(上下,左右のいずれでもよい)形式と、スライド(引き戸)形式とのいずれを選択することも可能である。
【0024】
枠体30の透光板34の配設部分(横枠60)より上方には、作業者がトロンブ壁パネルの空間内に対して簡単な作業を行うための作業口64が設けられている。この作業口64は、作業が行われない際は、枠体30に対して着脱可能な閉塞装置たる蓋66によって閉塞されており、トロンブ壁内部の空間に雨等の水や埃等の異物が進入することが防止されている。蓋66は、金属製や合成樹脂製とすることができる。
【0025】
枠体30,透光板34,石膏ボード50によって閉鎖された空間内に複数の蓄熱容器32が配設されている。複数の蓄熱容器32は、上記空間の室内側開口のほぼ全面に設置されている。本トロンブ壁パネルは、上記空間の下部と上部とをそれぞれ外気と連通させる連通口70,72,74を備えている。連通口70,72は共に開閉可能である。連通口74も同様に開閉可能な構造としてもよいが、本実施形態では、常時開放されている。連通口70,72は、図4に示すように、枠体30の横枠42に一体的に設けられ、かつ、枠体30より上方に突出する連通管78内に形成され、その連通管78に、開閉制御装置として機能する開閉カバー80が設けられている。開閉カバー80は、連通管78に上下方向に摺動可能に嵌合される内筒部82と、内筒部82より大径の外筒部84とを備え、それら内筒部82と外筒部84とが天板86において一体化されている。内筒部82の天板86の底面近傍部には、半径方向に貫通する貫通穴88が形成されている。したがって、開閉カバー80の閉状態では、連通口70,72の開口が開閉カバー80の底面によって閉塞されるとともに、貫通穴88が連通管78の周壁によって連通口70,72から遮断される(図4に二点鎖線で図示)。開閉カバー80が作業者等によって上方に引き上げられて開状態とされれば、開閉カバー80の底面が連通口70,72の開口を密閉していた状態から上方に離間させられるとともに、貫通穴88が連通口70,72と連通させられることにより、トロンブ壁パネルの内部空間が外気と連通する状態となる(図4に実線で図示)。本実施形態では、暖房の必要のない夏の間は、上部の連通口70,72が開状態とされて、トロンブ壁パネル内の空間の温度上昇が防止され、冬の間は、連通口70,72が閉状態とされて、トロンブ壁パネル空間内の温められた空気が大気中へ逃げることが防止される。図示の開閉カバー80は摩擦力で引き上げ位置に保たれるのであるが、下降防止装置を設けることも可能である。例えば、連通管78の周壁に、垂直に延びる垂直部とその垂直部の上端から水平に延びる水平部とを備えたL字形の係合孔を形成する一方、内筒部82の内周面から半径方向内向きに突出する係合ピンを設け、係合ピンを長穴に係合させればよい。開閉カバーを引き上げた後、回転させれば係合ピンが水平部に進入し、開閉カバーの下降を防止する。係合ピンと係合穴とをそれぞれ反対側の部材に設けてもよい。なお、連通口74は、常に開状態とされることにより、パネル空間内の空気の熱による膨張を許容するために、暖房を阻害しない程度に空気を逃がし得る穴として機能する。ただし、連通口74にも、上記連通口70,72と同様に開閉可能な装置を設けてもよい。
【0026】
蓄熱容器32は長手形状の筒状容器であり、長手方向が上下方向に延びる姿勢で、かつ、複数本の蓄熱容器32が互いに平行に並べられた状態で枠体30で囲まれた空間内に配設されている。本実施形態では、蓄熱容器32は金属材料の一種である鉄製とされている。枠体30の外側開口は透光板34により閉塞されており、複数本の蓄熱容器32は、枠体30の内側開口(端面46側の開口)内に配設され、トロンブ壁パネルの設置状態では石膏ボード50に近接させられるようになっている。例えば、蓄熱容器32の室内側端面が、上記端面46と同一平面、あるいは端面46から透光板34側へ1〜3mm程度引っ込まされた位置に配設されることが望ましい。蓄熱容器32は、それぞれ位置決めされた状態で適宜の固定装置によって枠体30に固定される。例えば、蓄熱容器32の上下端部を枠体30にねじ留めすることによって取り付けることができる。蓄熱容器32は、本実施形態では横断面形状が四角形を成し、複数本の蓄熱容器32が互いに平行にかつ互いに接触する程度に近接して配設され、全体として板状を成している。蓄熱容器32は、トロンブ壁パネルの厚さ方向の寸法(図1における左右方向の寸法)が、幅方向の寸法(図2における左右方向の寸法)および高さ方向(上下方向)の寸法に比較して小さい扁平な形状を有している。
【0027】
蓄熱容器32内には蓄熱液94が保持されている。本実施形態では、蓄熱液94として水が採用されている。水は安価でかつ容易に入手可能であり、しかも取扱い上安全であるからである。また、水は比較的大きい蓄熱容量を有するため長時間にわたる蓄熱に適している。蓄熱容器32に蓄熱液94を注入するために、蓄熱容器32の上端近傍部には注入口100が一体的に設けられている。蓄熱容器32には、注入口100の下方に並ぶ状態で、排気口102も一体的に設けられている。排気口102は、蓄熱液94の注入時に蓄熱容器32内の空気を流出させるとともに、蓄熱液94の上面が排気口102に達すれば、排気口102から蓄熱液94が溢れるため、所定量の蓄熱液94が注入されたことを確認するためのもの(基準)としても機能する。蓄熱容器32に蓄熱液94が所定量注入された後、上記注入口100および排気口102は共に密閉装置たる蓋104,106によって密閉されることにより、蓄熱容器32内部の蓄熱液94の蒸発が防止されている。なお、上記所定量は、蓄熱容器32内の上部に空気の層が適量残される程度の量とされている。このように蓄熱容器32内に封入される空気の体積と蓄熱液94(水)の体積との比率を適正値に選択することで、蓄熱容器32内の蓄熱液94および封入空気の熱膨張による蓄熱容器32内部の圧力の上昇を蓄熱容器32の耐圧強度以下に抑えることができる。
【0028】
蓄熱容器32の下端部には、排出口110が一体的に設けられている。複数の蓄熱容器32の各排出口110が連通管112によってそれぞれ連結されている。連通管112の各排出口110とは反対側の開口は、図示しない閉塞装置たるプラグにより密閉されており、そのプラグが外されれば、各排出口110から蓄熱容器32内部の蓄熱液94が外部に排出される。あるいは、連通管112の開口部に開閉可能なバルブを設け、バルブの制御によって排出口110からの蓄熱液94の排出を制御し得るようにしてもよい。
【0029】
蓄熱容器32の内部には、対流防止手段として仕切部材120が配設されている。仕切部材120は、水平方向に延びて、蓄熱容器32内部の上下方向に延びる空間を複数に仕切る複数枚の仕切板122と、鉛直方向に延びてそれら仕切板122を保持する支柱124とが一体化されたものである。仕切部材120によって、蓄熱容器32内の上下方向の蓄熱液94の対流が防止されている。ただし、仕切板122の外周縁と蓄熱容器32の内周面との間には僅かな隙間が存在し、蓄熱容器32内への蓄熱液94の注入は妨げられないようにされている。
【0030】
蓄熱容器32の透光板34側の面は、図1に示すように、光透過性を有する透明の断熱材130により覆われている。断熱材130は、蓄熱容器32の透光板34側の面を隙間を隔てて覆っており、透光板34を透過した太陽光線の蓄熱容器32への入射を許容しつつ放熱を抑制する。また、蓄熱容器32と枠体30との間、および複数の蓄熱容器32相互の間の隙間には断熱材136が詰められており、室内側空間(石膏ボード50側空間)と室外側空間との間の空気の流通が極力防止されている。蓄熱容器32の室内側の面には黒色塗装が施されて、室内側への熱線の放射がより良好に行われるようにされている。一方、蓄熱容器32の透光板34側の面には選択吸収膜処理が施されている。選択吸収膜処理は公知のものであるので詳細な説明は省略するが、この処理が施されることにより、太陽光線が吸収され易くなる一方、蓄熱容器32から透光板34側への放熱が抑制される。蓄熱容器32の透光板34側の面も、黒色塗装を施すことによって太陽光線が良く吸収されるようにしてもよい。
【0031】
蓄熱容器32と透光板34との間には、透光板34を通して蓄熱容器32に太陽光線が入射することを許容する透光状態と阻止する遮光状態とを取り得る遮光装置140が設けられている。本実施形態の遮光装置140は、図3に示すように、遮光シート142を含むものであり、遮光シート142がロール144に巻き取られることにより透光状態とされ、ロール144から引き出されることにより遮光状態とされる。ロール144は、トロンブ壁パネルの幅方向に延び、その長手方向の両端部において枠体30に自身の中心軸線を回転軸線として回転可能に保持されている。遮光シート142の透光板34側の面は、太陽光線を反射する反射面146とされ、蓄熱容器32側の面も蓄熱容器32からの放射熱線を反射する反射面148とされている。反射面146,148は、入射する太陽光線および放射熱線の70%以上を反射するものであることが望ましく、80%以上、85%以上を反射するものであることがさらに望ましい。例えば、金属箔の表面により反射面146,148を構成することができる。ただし、反射面146,148の少なくとも一方を省略することも可能である。
【0032】
遮光シート142は、操作装置150によって室内および屋外からそれぞれ操作可能となっている。図1および図3に示すように、遮光シート142が巻かれたロール144の長手方向の一端部には、プーリ151,152が設けられており、それらプーリ151,152に操作部材としての環状の操作紐154,156の各一部がそれぞれ巻き付けられており、一方の操作紐154の一部は、枠体30内の空間および石膏ボード50の開口158を経て室内側に引き出され、他方の操作紐156の一部は、枠体30内の空間および連通口74を経て屋外へ引き出されている。これら操作紐154,156の一方を作業者が操作してロール144を回転させることにより、前記透光状態あるいは遮光状態とすることができる。プーリ151,152と操作紐154,156との組合わせに代えて、スプロケットとチェーン、タイミングプーリとタイミングベルトのとの組合わせ等としてもよい。なお、枠体30の操作装置150を収容する凹部を形成する部分は、強度を確保するため、金具159によって構成されている。
【0033】
以上のように構成されるトロンブ壁パネルは、工場等で枠体30,蓄熱容器32,透光板34等が予め組み立てられた完成品として建物の近傍に運搬される。これが運搬工程である。ただし、蓄熱容器32内部に蓄熱液94たる水は封入されておらず空の状態である。このようにすればトロンブ壁パネルの運搬が比較的容易となる。そして、固定工程において、トロンブ壁パネルが建物の南側面に固定されることにより外壁の一部を構成することになる。上記固定工程の後、注入工程において、作業者によって、蓋66が開けられ、作業口64から空の蓄熱容器32の注入口100から蓄熱液94が所定量注入される。注入工程後、密閉工程において、注入口100および排気口102が密閉され、再び蓋66によって作業口64が塞がれる。あるいは、前述のように、透光板34を開放した状態で蓄熱液94を注入してもよい。以上のようにしてトロンブ壁が建物に施工される。
【0034】
本実施形態によれば、予め組み立てられたトロンブ壁パネルは、設置が容易であり、施工現場での作業量が少なくて済み、トロンブ壁に関する知識の乏しい建築業者であってもトロンブ壁を設置することができる。そして、設置されたトロンブ壁によって、透光板34を透過した太陽光線が蓄熱容器32に入射し、蓄熱容器32内の水に吸収されて蓄えられた太陽熱が、室内側に放射されることによって、石膏ボード50を含む内壁が温められ、室内に放熱されて室内が温められる。このように省エネルギーかつ環境負荷の小さい暖房システムを簡単な作業で得ることができる。また、開閉可能な連通口70,72,74,仕切部材120,断熱材130,136,遮光装置140等を設けることにより、夏,冬等の季節や昼夜等の時間帯などの状況に応じて、太陽光線の遮断や室内から室外への放熱の防止等を選択して暖房システムの暖房状態を調節できるトロンブ壁が得られる。例えば、冬季、トロンブ壁パネルに太陽光線が入射する時間帯は、遮光装置140を透光状態とするが、太陽光線が入射しない時間帯は遮光状態として蓄熱容器32から放射される熱線を反射させるようにすれば、蓄積された熱が無駄に屋外へ放出されることを防止することができる。そのために必要であれば、遮光装置140を透光状態と遮光状態とに切り換える自動切換装置を設けることも可能である。ただし、トロンブ壁パネルが上述の連通口70等の構成要素を全て備えることは不可欠ではなく、少なくとも1つの構成要素を省略することも可能である。
【0035】
トロンブ壁パネルの大きさや重さ、あるいは、設置場所(建物の2階以上等)等の都合によっては、枠体30に蓄熱容器32,透光板34および遮光装置140の少なくとも1つが組み付けられていない半完成品のトロンブ壁パネルキットの状態で設置場所近傍まで運搬され、固定工程に先立って、設置現場の近傍で組み立てる組立工程を行ってもよい。あるいは、枠体30を建物の南側面に固定した後、枠体30に蓄熱容器32,透光板34および遮光装置140の少なくとも1つが取り付けられるようにしてもよい。
【0036】
遮光装置200を、図5に示すように、複数枚の帯状部材202が互いに平行に配列されるとともに、各帯状部材202が長手方向に平行な回動軸線まわりに回動することにより、前記透光状態と遮光状態とを取るベネシャンブラインド204としてもよい。各帯状部材202は、図示しないリンク機構および操作装置を介して回動操作が可能である。複数枚の帯状部材202は、長手方向がトロンブ壁パネルの幅方向に平行とされ、上下方向に並んで設けられており、図5には、実線で遮光装置200の透光状態が示され、二点鎖線で遮光状態が示されている。遮光装置200の遮光状態では、複数枚の帯状部材202のうち上方に位置する帯状部材202の下端部とそれの下方に隣接する帯状部材202の上端部とが互いに接触する状態となり、太陽光線が蓄熱容器に入射することが阻止されるとともに、空気の流れをほぼ遮断する状態となっている。したがって、夏等暖房を必要としない状況において太陽熱が蓄熱容器に到達することが防止されたり、冬の夜間等屋内の熱を逃がしたくない状況下で、蓄熱容器から室外側へ放熱されることが防止される等の効果が状況に応じて得られる。各帯状部材202の長手方向は、本実施形態では水平方向とされているが、垂直方向等、これ以外の方向とすることも可能である。
【0037】
遮光装置140,200は、透光板34と蓄熱容器32との間に設けられるものとして説明したが、透光板34の蓄熱容器32とは反対側に設けられてもよい。遮光装置は、前記各実施形態で説明した以外にも、カーテンやその他の遮光性を有する部材でもよいし、あるいは、断熱性を有する蓋等の被覆部材により透光板34の表面を覆うものとすることも可能である。
【0038】
蓄熱容器32内の水をゲル化してもよい。例えば、水を蓄熱容器32に注入後にゲル化剤を加え、あるいは蓄熱容器32に先にゲル化剤を入れ、その後に水を注入するのである。また、ゲル化剤を加えた直後の水を蓄熱容器32に注入し、あるいは水にゲル化剤を加えつつ注入してもよい。本形態によれば、ゲル化剤が対流防止手段の一種として機能するため、仕切部材120等の対流防止部材を省略することができる。
【0039】
トロンブ壁パネルを、図6に示すように、複数本の蓄熱容器300が横方向に延びる姿勢で配設されるものとしてもよい。本実施形態においては、トロンブ壁パネルの幅方向を長手方向とする四角形断面の蓄熱容器300が複数本、互いに上下方向に積み重ねられた状態で位置決め固定されている。本実施形態における蓄熱容器300は、本体部302と口部304とを備えている。本体部302と口部304とを別体として製造し、後に接着,溶着等により両者を固定することにより、本体部302と口部304を一体的に備えた蓄熱容器300とされているが、それら本体部302と口部304とを一体に製造することも可能である。口部304は、横断面形状が円形で全体としてはL字形の管であり、口部304の上方に延びる一端の開口が注入口310とされ、他端が本体部302の側壁に固定されている。口部304の上端開口(注入口)は、本体部302の上板よりやや上方の位置に形成されており、口部304の上端部に閉塞装置たる蓋312が気密に嵌合される。本体部302の長手方向に延びる側壁の上板近傍部には、排気口314が設けられている。上下方向に隣接する蓄熱容器300の各口部304の間には隙間が設けられており、作業者はそれらの隙間から各注入口310に蓄熱液を注入することができる。注入口310より蓄熱液が注入されるに従って蓄熱容器300内の空気が排気口314から流出するが、蓄熱液の上面が排気口314に達すれば、排気口314から蓄熱液が溢れる状態となるため、所定量の蓄熱液が注入されたことを確認し得る。上記所定量とは、前記実施形態で説明したのと同様、蓄熱容器300の上部に空気層が適量残される量である。注入作業終了後は、注入口310も排気口314も閉塞装置により密閉される。蓄熱容器300の側壁(例えば、口部が設けられた側とは反対側の側壁)にはまた、図示は省略するが、前記排出口110と同様に構成され、蓄熱液を排出可能な排出口が設けられている。蓄熱液排出作業時以外は、この排出口も密閉されている。本実施形態によれば、前記実施形態で述べた対流防止手段を設けなくても、蓄熱容器内の蓄熱液の対流を防止することができる。
【0040】
上記各実施形態において、複数の蓄熱容器32,300は各々が注入口および排気口を備えており、作業者がそれぞれに蓄熱液を注入する構成とされていたが、複数の蓄熱容器についてまとめて蓄熱液を注入し得る構成とすることも可能である。例えば、前記排出口100と同様に、複数の蓄熱容器についてそれぞれの注入口を連通管でつなぎ、その連通管の開口(この開口を注入口とも言い得る)から蓄熱液を注入するのである。トロンブ壁パネルに設けられる複数の蓄熱容器の全てについて1つの注入口からまとめて蓄熱液を注入する構造としてもよいし、上記複数の蓄熱容器を複数組に分け、それぞれについて注入してもよい。
【0041】
蓄熱容器32は鉄製とされているが、蓄熱液注入後に密閉されるため、容器内側が錆びることはない。ただし、蓄熱容器を合成樹脂製等としてもよい。蓄熱容器を合成樹脂製とすれば、鉄製と比較して軽量となり、建物への設置が容易となって作業者の負担が軽減される。
【0042】
以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるトロンブ壁パネルが建物に設置された状態を示す側面断面図である。
【図2】上記トロンブ壁パネルを透光板および遮光装置が外された状態で示す正面図である。
【図3】上記遮光装置を示す正面図である。
【図4】上記トロンブ壁パネルの構成要素である連通口を閉塞する閉塞装置を示す正面断面図である。
【図5】本発明の別の実施形態であるトロンブ壁パネルの構成要素である遮光装置を概略的に示す側面図である。
【図6】本発明のさらに別の実施形態であるトロンブ壁パネルの構成要素である蓄熱容器を示す正面図である。
【符号の説明】
30:枠体 32:蓄熱容器 34:透光板 94:蓄熱液 120:仕切部材 130:断熱材 140:遮光装置 200:帯状部材 200:遮光装置 204:ベネシャンブラインド 300:蓄熱容器

Claims (9)

  1. 枠体と、
    その枠体に保持され、内部に蓄熱液を注入するための注入口を備えた蓄熱容器と、
    その蓄熱容器の一側において前記枠体に保持された透光板と、
    を含み、全体としてパネル状を成すことを特徴とするトロンブ壁パネル。
  2. 前記蓄熱容器が、内部に蓄熱液を注入した後に密閉可能なものである請求項1に記載のトロンブ壁パネル。
  3. 前記透光板と前記蓄熱容器との間あるいは透光板に対して蓄熱容器とは反対側に設けられ、透光板を通して蓄熱容器に太陽光線が入射することを許容する透光状態と阻止する遮光状態とを取り得る遮光装置を含む 請求項1または2に記載のトロンブ壁パネル。
  4. 前記蓄熱容器が、気体が充満した設定容積の空間が内部に残る状態に前記蓄熱液が注入されて密閉された請求項1ないし3のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
  5. 前記蓄熱容器が、長手形状の筒状容器であり、その筒状容器が複数本、互いに平行にかつ互いに接触する程度に近接して配設され、全体として板状を成す請求項1ないし4のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
  6. 前記筒状容器が上下方向に延びる姿勢で配設された請求項5に記載のトロンブ壁パネル。
  7. 前記筒状容器の内部に対流防止手段が施された請求項1ないし6のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
  8. 前記対流防止手段が、蓄熱液に加えられるゲル化剤を含む請求項7に記載のトロンブ壁パネル。
  9. 前記蓄熱容器の前記透光板側の面が光透過性を有する断熱材により覆われた請求項1ないし8のいずれかに記載のトロンブ壁パネル。
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