JP2004255848A - 構造体を補強するためのはめ込み型繊維強化複合材料および補強方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】さまざまな構造体において、構造体の応力がかかる部分に部分的な補強をしておく必要がある場合に、安定した品質の繊維強化複合材料で補強ができ、現場施工であっても信頼性ある補強方法を提供すること。
【解決手段】構造体を補強するために、あらかじめ工場で対象構造体の補強部分を覆うわっか形状に成型された繊維補強複合材料を対象構造物に、はめ込み施工することを特徴とする構造体の補強方法。
繊維補強複合材料は、比強度が200×103m以上、比弾性率が3×106m以上である補強繊維とこれを結合するための樹脂よりなり、対象構造物の補強部分の応力がかかる方向に補強繊維を配列させることが好ましい。
補強繊維は、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維又はポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維が好適に用いられる。
【選択図】 なし
【解決手段】構造体を補強するために、あらかじめ工場で対象構造体の補強部分を覆うわっか形状に成型された繊維補強複合材料を対象構造物に、はめ込み施工することを特徴とする構造体の補強方法。
繊維補強複合材料は、比強度が200×103m以上、比弾性率が3×106m以上である補強繊維とこれを結合するための樹脂よりなり、対象構造物の補強部分の応力がかかる方向に補強繊維を配列させることが好ましい。
補強繊維は、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維又はポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維が好適に用いられる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造体を補強するための繊維強化複合材料およびその補強方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、一般に建築物等の構造物には、送水管、ガス管などの金属製もしくはプラスチック製の各種配管が用いられているが、備え付けの場所、態様によっては過大な外圧や内圧等がかかり、それらによる変形を防止するために、各種配管本来の強度では足りずに、補強が必要とされる場合がある。また、移動構造物、例えば、標識ポールでは、下部ポール部は持ち運びの便から軽量のアルミニウムパイプが使用されるが、当該ポールを固定構造物等にクランプで締め付けると、アルミニウムパイプではその締め付け力に耐えられないので、補強の必要がある。さらには、圧力容器のような圧力がかかる構造体では、そのケーシングを保護することにより耐久性、安全性を向上させることが必要な場合がある。
このように、さまざまな構造体において、構造体の応力がかかる部位に部分的な補強をしておく必要があることは少なくない。
【0003】
近年、コンクリート製の土木建築物の柱や梁などの補強、補修に、構造物のある現場で、引張強度が高く、また引張弾性率の高い繊維からなるシートをコンクリート面にエポキシ樹脂などの接着剤を用いて張り付け、もしくは巻き付ける補強、補修方法が普及しつつある。この際、エポキシ樹脂は繊維シートをコンクリートに接着させるだけでなく、繊維シートに含浸して、シートの強度を向上させ、結果的に該シートは繊維強化複合材料となっている。この方法は、施工が容易であり、工期が短縮できるなどの利点を有する(例えば、非特許文献1参照)。その現場施工の具体的方法としては、例えば、コンクリート構造物の対象部位に樹脂を塗布後、あらかじめ必要とする長さに切断しておいた長尺の補強繊維シートを貼り付け、ローラーなどを用いて、樹脂を十分に繊維シートに含浸させる。下塗り樹脂が十分含浸したことを確認した後、同じ樹脂を用いて、上塗りを行う。繊維シート全面に均一に樹脂を塗布した後、樹脂が完全に硬化するまで、養生をしておくものである。
コンクリート構造物以外であっても、例えば、前記の金属製もしくはプラスチック製の構造体部位などの補強が必要な場合において、同様に、炭素繊維、アラミド繊維などの補強繊維もしくは補強繊維シートを、エポキシ樹脂などの接着剤を用いて対象部位に巻きつける現場施工が行われてきた。
【0004】
しかしながら、このような補強繊維もしくは補強繊維シートの接着剤を用いた巻きつけによる補強の現場施工には次のような問題がある。
現場施工は、野外の種々の環境下での作業であることが少なくなく、そのうえ、樹脂調合、巻きつけ、含浸操作等、かなりの手間を要する作業であるが、必ずしも熟練作業者ばかりで作業が行われるわけではない。このため、例えば、繊維シートの巻きつけ方向の誤り等の施工ミスが起こることがある。また、強度発現のためには樹脂が繊維シートに十分にかつ均一に含浸されることが極めて重要であるが、現場施工ではこの含浸操作はローラーで行われるので、熟練を要し、必ずしも安定した品質の施工ができないという問題がある。
このように、各種補強の現場施工には、十分な施工管理をしてもなお、安定した品質が保証できず、施工の信頼性に欠けるという問題があった。
【0005】
【非特許文献1】
土木学会コンクリート委員会連続繊維補修補強研究小委員会編、「連続繊維シートを用いたコンクリート構造物の補修補強設計施工指針」、土木学会、2000年7月25日、P.5〜7
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかる状況に鑑みて、本発明は、さまざまな構造体において、構造体の応力がかかる部分に部分的な補強をしておく必要がある場合に、安定した品質の繊維強化複合材料で補強ができ、現場施工であっても信頼性のある補強方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、あらかじめ工場で成型された繊維補強複合材料を用いて、対象とする構造物を、現場ではめ込み方式で補強すれば、安定した品質の補強材料を用いた簡単な現場施工によって、信頼性のある良好な補強が可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明によれば、構造体を補強するために、あらかじめ工場で対象構造体の補強部分を覆うわっか形状に成型された繊維補強複合材料が提供される。ここで対象構造体の補強部分を覆う「わっか形状」とは、対象構造体の補強部分に沿った形状で、かつ、はめこみのできる閉じた形状をいう。例えば、対象構造体が管形状の場合、対象構造体を完全に囲む形状、もしくは補強部分を覆うものであれば、一部を切り欠いたものであってもよい。
また、本発明は、該繊維補強複合材料を構造体のある現場で対象構造物にはめ込み施工することを特徴とする構造体の補強方法を提供する。
本発明の繊維補強複合材料としては、比強度が200×103m以上、比弾性率が3×106m以上である繊維とこれを結合するための樹脂よりなる繊維補強複合材料が好ましく、対象構造物の補強部分の応力がかかる方向に繊維を配列させることが好ましい。
また、前記補強繊維は、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維又はポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維補強複合材料は、あらかじめ工場において、引張強度、弾性率の大きい繊維に樹脂を含浸させ、対象構造体の補強部分を覆うわっか形状に成型した繊維補強複合材料成型体として製造される。
【0010】
本発明で使用される補強繊維としては、比強度が200×103m以上、比弾性率が3×106m以上である高強度・高弾性率繊維であることが好ましく、そのような特性を有する繊維として、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維又はポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維が好適で、これらの1種又は2種以上のハイブリッドであってもよい。とりわけ、アラミド繊維が好ましく用いられる。
【0011】
本発明で成型に使用される含浸接着樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましく使用され、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂が好適である。
【0012】
工場において、補強対象の構造体の補強部分を覆う形状をした繊維補強複合材料成型体の成型は次のようにして行われる。
一つの方法として、フィラメントワインディング法がある。
ボビン状に巻かれた補強繊維フィラメントの1本〜数本を取り出し、樹脂浴を通して樹脂を含浸する。この含浸フィラメントを、断面が補強対象物と同形状で少し大きい目の寸法の、若干のテーパーを有して回転する金属製筒状体であるマンドレルに、含浸フィラメント同士を密に隣接させながら順次巻きつけてゆき、マンドレルの形状に沿った筒状体をつくる。マンドレルの全面に巻き終わったところで熱をかけて樹脂をキュアして成型し、マンドレルを内面から冷却することにより、金属が収縮し、テーパーがあるために繊維補強複合材料成型体を筒状で抜き出すことができる。これを必要寸法に切断することにより、本発明の補強材料となる繊維補強複合材料成型体を複数個製作することができる。
なお、対象構造体の補強部分の寸法より少し大きい目のマンドレル寸法とするのは、対象構造体へのはめ込み易さ、および補強部分の寸法のばらつきに対応するためである。
この成型方法によれば、周方向に繊維が配列したパイプができ、周方向の補強に有効なものができる。すなわち、周方向の外圧・内圧に強いが、曲げ補強には有効ではない。
よく行われる他の方法で、フィラメントワインディング法とは別の物性の筒状繊維補強複合材料成型体をつくるものとして、引き抜き成型法がある。
ボビン状に巻かれた多数の補強繊維フィラメントを、樹脂浴を通して樹脂を含浸する。含浸フィラメントは、ダイスという加熱炉を通過させ、キャタピラで引っ張り出して、所要長さにカットする。ダイスの中空部分の断面により、引っ張り出される筒状成型体の形状が決定され、ダイスの中で熱キュアも行われる。
この成型方法によれば、長手方向に繊維が配列したパイプやシートができ、長手方向の補強に有効なものができる。すなわち、パイプの場合、周方向からの外圧・内圧の補強には有効ではないが、曲げに強いものとなる。
場合によっては、上記2種類の成型方法によりつくられた複合材料を組み合わせて、補強するのが適切なこともある。
さらに別の方法として、シートワインド方法も有効である。一方向又は二方向の繊維シートに、あらかじめ樹脂を塗布、含浸させた後、マンドレルに巻きつけ、熱をかけて樹脂をキュアして成型し、マンドレルを内面から冷却することにより、金属が収縮し、テーパーがあるために繊維補強複合材料成型体を筒状で抜き出すことができる。これを必要寸法に切断することにより、本発明の補強材料となる繊維補強複合材料成型体を複数個製作することができる。
【0013】
補強繊維の繊維補強複合材料における体積含有率は40〜80%であるのが好ましい。40%以下であると複合材料がいたずらに厚くなり、樹脂が無駄となる。また、80%以上になると補強繊維のすべてに樹脂が行き渡らず、補強繊維の強度が十分に発揮されない部分が生ずる恐れがある。
【0014】
このように、工場で繊維補強複合材料成型体をつくることの、従来の現場施工における繊維補強複合材料の調製に対するメリットとして、次のようなことが挙げられる。
まず、一定品質のものを安定に生産できる。さらに、マンドレルなどに巻きつけた樹脂含浸フィラメントのように樹脂の繊維への均一な含浸が可能となり、複合材料本来の強度を安定的に発現させることができ、また、均一な熱キュアも可能であるので、さらに強度を増すことができる。
【0015】
本発明の補強対象とする構造物としては、応力がかかる部分に部分的な補強をしておく必要がある構造物であって、本発明のわっか形状の繊維補強複合材料をはめ込み形式で用いて補強可能なものであれば、特に限定されない。
例えば、送水管、ガス管などの金属製もしくはプラスチック製の各種配管、工事標識などの移動構造物、圧力容器などの圧力がかかる構造体では、そのケーシング等である。なお、固定構造物の場合は、新設時、もしくは、その要補強部位を含む構造物部材等の取替え時等が、施工の便宜から好ましい。
また、対象物の形状も、上記、マンドレルやダイスの断面形状の製作時に、円形、楕円形、矩形、多角形等、大抵の形状に対応することが可能である。
【0016】
なお、本発明の補強対象とする構造物は、本補強方法が繊維補強複合材料をあらかじめ工場でマンドレルなどの金型を個々の対象構造物の形状、寸法に合わせてつくって成型するものであるため、形状、寸法が規格化されていて、比較的多数個の同形の構造物に対して適用するものであることが経済性の面から要求される。
【0017】
本発明における構造体の補強方法の現場施工は次のようにして行われる。
本発明の繊維補強複合材料は、あらかじめ対象構造物の補強対象部位の形状、寸法に合わせてわっか形状に工場で成型されているので、現場では、該繊維補強複合材料を対象構造物にはめ込むだけでよい。
しかし、補強対象部位の形状、寸法のばらつきが多い場合など、必要な場合には、補強対象の構造体の補強部位に、エポキシ樹脂などの接着剤樹脂を全面に塗布しておき、本発明の繊維補強複合材料をはめ込み、硬化が終わるまで固定しておく。エポキシ樹脂などの接着剤樹脂は、補強対象の構造体と成型された繊維補強複合材料との間にある隙間を埋めて固定状態を強固にする。
このように、簡単な施工方法であるので、熟練作業者をとくには必要とせず、短時間の作業で施工を終えることができる。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、さまざまな構造体において、構造体の応力がかかる部分に部分的な補強をしておく必要がある場合に、補強対象物を覆うわっか形状に成型された繊維補強複合材料をあらかじめ工場で成型して、対象とする構造物にはめ込み施工方式で補強するので、安定した品質の補強材料による簡単な現場施工で、信頼性のある良好な補強が可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造体を補強するための繊維強化複合材料およびその補強方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、一般に建築物等の構造物には、送水管、ガス管などの金属製もしくはプラスチック製の各種配管が用いられているが、備え付けの場所、態様によっては過大な外圧や内圧等がかかり、それらによる変形を防止するために、各種配管本来の強度では足りずに、補強が必要とされる場合がある。また、移動構造物、例えば、標識ポールでは、下部ポール部は持ち運びの便から軽量のアルミニウムパイプが使用されるが、当該ポールを固定構造物等にクランプで締め付けると、アルミニウムパイプではその締め付け力に耐えられないので、補強の必要がある。さらには、圧力容器のような圧力がかかる構造体では、そのケーシングを保護することにより耐久性、安全性を向上させることが必要な場合がある。
このように、さまざまな構造体において、構造体の応力がかかる部位に部分的な補強をしておく必要があることは少なくない。
【0003】
近年、コンクリート製の土木建築物の柱や梁などの補強、補修に、構造物のある現場で、引張強度が高く、また引張弾性率の高い繊維からなるシートをコンクリート面にエポキシ樹脂などの接着剤を用いて張り付け、もしくは巻き付ける補強、補修方法が普及しつつある。この際、エポキシ樹脂は繊維シートをコンクリートに接着させるだけでなく、繊維シートに含浸して、シートの強度を向上させ、結果的に該シートは繊維強化複合材料となっている。この方法は、施工が容易であり、工期が短縮できるなどの利点を有する(例えば、非特許文献1参照)。その現場施工の具体的方法としては、例えば、コンクリート構造物の対象部位に樹脂を塗布後、あらかじめ必要とする長さに切断しておいた長尺の補強繊維シートを貼り付け、ローラーなどを用いて、樹脂を十分に繊維シートに含浸させる。下塗り樹脂が十分含浸したことを確認した後、同じ樹脂を用いて、上塗りを行う。繊維シート全面に均一に樹脂を塗布した後、樹脂が完全に硬化するまで、養生をしておくものである。
コンクリート構造物以外であっても、例えば、前記の金属製もしくはプラスチック製の構造体部位などの補強が必要な場合において、同様に、炭素繊維、アラミド繊維などの補強繊維もしくは補強繊維シートを、エポキシ樹脂などの接着剤を用いて対象部位に巻きつける現場施工が行われてきた。
【0004】
しかしながら、このような補強繊維もしくは補強繊維シートの接着剤を用いた巻きつけによる補強の現場施工には次のような問題がある。
現場施工は、野外の種々の環境下での作業であることが少なくなく、そのうえ、樹脂調合、巻きつけ、含浸操作等、かなりの手間を要する作業であるが、必ずしも熟練作業者ばかりで作業が行われるわけではない。このため、例えば、繊維シートの巻きつけ方向の誤り等の施工ミスが起こることがある。また、強度発現のためには樹脂が繊維シートに十分にかつ均一に含浸されることが極めて重要であるが、現場施工ではこの含浸操作はローラーで行われるので、熟練を要し、必ずしも安定した品質の施工ができないという問題がある。
このように、各種補強の現場施工には、十分な施工管理をしてもなお、安定した品質が保証できず、施工の信頼性に欠けるという問題があった。
【0005】
【非特許文献1】
土木学会コンクリート委員会連続繊維補修補強研究小委員会編、「連続繊維シートを用いたコンクリート構造物の補修補強設計施工指針」、土木学会、2000年7月25日、P.5〜7
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかる状況に鑑みて、本発明は、さまざまな構造体において、構造体の応力がかかる部分に部分的な補強をしておく必要がある場合に、安定した品質の繊維強化複合材料で補強ができ、現場施工であっても信頼性のある補強方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、あらかじめ工場で成型された繊維補強複合材料を用いて、対象とする構造物を、現場ではめ込み方式で補強すれば、安定した品質の補強材料を用いた簡単な現場施工によって、信頼性のある良好な補強が可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明によれば、構造体を補強するために、あらかじめ工場で対象構造体の補強部分を覆うわっか形状に成型された繊維補強複合材料が提供される。ここで対象構造体の補強部分を覆う「わっか形状」とは、対象構造体の補強部分に沿った形状で、かつ、はめこみのできる閉じた形状をいう。例えば、対象構造体が管形状の場合、対象構造体を完全に囲む形状、もしくは補強部分を覆うものであれば、一部を切り欠いたものであってもよい。
また、本発明は、該繊維補強複合材料を構造体のある現場で対象構造物にはめ込み施工することを特徴とする構造体の補強方法を提供する。
本発明の繊維補強複合材料としては、比強度が200×103m以上、比弾性率が3×106m以上である繊維とこれを結合するための樹脂よりなる繊維補強複合材料が好ましく、対象構造物の補強部分の応力がかかる方向に繊維を配列させることが好ましい。
また、前記補強繊維は、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維又はポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維補強複合材料は、あらかじめ工場において、引張強度、弾性率の大きい繊維に樹脂を含浸させ、対象構造体の補強部分を覆うわっか形状に成型した繊維補強複合材料成型体として製造される。
【0010】
本発明で使用される補強繊維としては、比強度が200×103m以上、比弾性率が3×106m以上である高強度・高弾性率繊維であることが好ましく、そのような特性を有する繊維として、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維又はポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維が好適で、これらの1種又は2種以上のハイブリッドであってもよい。とりわけ、アラミド繊維が好ましく用いられる。
【0011】
本発明で成型に使用される含浸接着樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましく使用され、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂が好適である。
【0012】
工場において、補強対象の構造体の補強部分を覆う形状をした繊維補強複合材料成型体の成型は次のようにして行われる。
一つの方法として、フィラメントワインディング法がある。
ボビン状に巻かれた補強繊維フィラメントの1本〜数本を取り出し、樹脂浴を通して樹脂を含浸する。この含浸フィラメントを、断面が補強対象物と同形状で少し大きい目の寸法の、若干のテーパーを有して回転する金属製筒状体であるマンドレルに、含浸フィラメント同士を密に隣接させながら順次巻きつけてゆき、マンドレルの形状に沿った筒状体をつくる。マンドレルの全面に巻き終わったところで熱をかけて樹脂をキュアして成型し、マンドレルを内面から冷却することにより、金属が収縮し、テーパーがあるために繊維補強複合材料成型体を筒状で抜き出すことができる。これを必要寸法に切断することにより、本発明の補強材料となる繊維補強複合材料成型体を複数個製作することができる。
なお、対象構造体の補強部分の寸法より少し大きい目のマンドレル寸法とするのは、対象構造体へのはめ込み易さ、および補強部分の寸法のばらつきに対応するためである。
この成型方法によれば、周方向に繊維が配列したパイプができ、周方向の補強に有効なものができる。すなわち、周方向の外圧・内圧に強いが、曲げ補強には有効ではない。
よく行われる他の方法で、フィラメントワインディング法とは別の物性の筒状繊維補強複合材料成型体をつくるものとして、引き抜き成型法がある。
ボビン状に巻かれた多数の補強繊維フィラメントを、樹脂浴を通して樹脂を含浸する。含浸フィラメントは、ダイスという加熱炉を通過させ、キャタピラで引っ張り出して、所要長さにカットする。ダイスの中空部分の断面により、引っ張り出される筒状成型体の形状が決定され、ダイスの中で熱キュアも行われる。
この成型方法によれば、長手方向に繊維が配列したパイプやシートができ、長手方向の補強に有効なものができる。すなわち、パイプの場合、周方向からの外圧・内圧の補強には有効ではないが、曲げに強いものとなる。
場合によっては、上記2種類の成型方法によりつくられた複合材料を組み合わせて、補強するのが適切なこともある。
さらに別の方法として、シートワインド方法も有効である。一方向又は二方向の繊維シートに、あらかじめ樹脂を塗布、含浸させた後、マンドレルに巻きつけ、熱をかけて樹脂をキュアして成型し、マンドレルを内面から冷却することにより、金属が収縮し、テーパーがあるために繊維補強複合材料成型体を筒状で抜き出すことができる。これを必要寸法に切断することにより、本発明の補強材料となる繊維補強複合材料成型体を複数個製作することができる。
【0013】
補強繊維の繊維補強複合材料における体積含有率は40〜80%であるのが好ましい。40%以下であると複合材料がいたずらに厚くなり、樹脂が無駄となる。また、80%以上になると補強繊維のすべてに樹脂が行き渡らず、補強繊維の強度が十分に発揮されない部分が生ずる恐れがある。
【0014】
このように、工場で繊維補強複合材料成型体をつくることの、従来の現場施工における繊維補強複合材料の調製に対するメリットとして、次のようなことが挙げられる。
まず、一定品質のものを安定に生産できる。さらに、マンドレルなどに巻きつけた樹脂含浸フィラメントのように樹脂の繊維への均一な含浸が可能となり、複合材料本来の強度を安定的に発現させることができ、また、均一な熱キュアも可能であるので、さらに強度を増すことができる。
【0015】
本発明の補強対象とする構造物としては、応力がかかる部分に部分的な補強をしておく必要がある構造物であって、本発明のわっか形状の繊維補強複合材料をはめ込み形式で用いて補強可能なものであれば、特に限定されない。
例えば、送水管、ガス管などの金属製もしくはプラスチック製の各種配管、工事標識などの移動構造物、圧力容器などの圧力がかかる構造体では、そのケーシング等である。なお、固定構造物の場合は、新設時、もしくは、その要補強部位を含む構造物部材等の取替え時等が、施工の便宜から好ましい。
また、対象物の形状も、上記、マンドレルやダイスの断面形状の製作時に、円形、楕円形、矩形、多角形等、大抵の形状に対応することが可能である。
【0016】
なお、本発明の補強対象とする構造物は、本補強方法が繊維補強複合材料をあらかじめ工場でマンドレルなどの金型を個々の対象構造物の形状、寸法に合わせてつくって成型するものであるため、形状、寸法が規格化されていて、比較的多数個の同形の構造物に対して適用するものであることが経済性の面から要求される。
【0017】
本発明における構造体の補強方法の現場施工は次のようにして行われる。
本発明の繊維補強複合材料は、あらかじめ対象構造物の補強対象部位の形状、寸法に合わせてわっか形状に工場で成型されているので、現場では、該繊維補強複合材料を対象構造物にはめ込むだけでよい。
しかし、補強対象部位の形状、寸法のばらつきが多い場合など、必要な場合には、補強対象の構造体の補強部位に、エポキシ樹脂などの接着剤樹脂を全面に塗布しておき、本発明の繊維補強複合材料をはめ込み、硬化が終わるまで固定しておく。エポキシ樹脂などの接着剤樹脂は、補強対象の構造体と成型された繊維補強複合材料との間にある隙間を埋めて固定状態を強固にする。
このように、簡単な施工方法であるので、熟練作業者をとくには必要とせず、短時間の作業で施工を終えることができる。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、さまざまな構造体において、構造体の応力がかかる部分に部分的な補強をしておく必要がある場合に、補強対象物を覆うわっか形状に成型された繊維補強複合材料をあらかじめ工場で成型して、対象とする構造物にはめ込み施工方式で補強するので、安定した品質の補強材料による簡単な現場施工で、信頼性のある良好な補強が可能となる。
Claims (5)
- 構造体を補強するために、あらかじめ工場で対象構造体の補強部分を覆うわっか形状に成型された繊維補強複合材料。
- 比強度が200×103m以上、比弾性率が3×106m以上である補強繊維とこれを結合するための樹脂よりなる請求項1記載の繊維補強複合材料。
- 対象構造物に対して応力がかかる方向に補強繊維を配列させた請求項1又は2記載の繊維補強複合材料。
- 前記補強繊維が、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維又はポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維である請求項1〜3記載の繊維補強複合材料。
- 請求項1〜4記載の繊維補強複合材料を、構造体のある現場で対象構造物に、はめ込み施工することを特徴とする構造体の補強方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003052189A JP2004255848A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 構造体を補強するためのはめ込み型繊維強化複合材料および補強方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003052189A JP2004255848A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 構造体を補強するためのはめ込み型繊維強化複合材料および補強方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004255848A true JP2004255848A (ja) | 2004-09-16 |
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ID=33117117
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JP2003052189A Pending JP2004255848A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 構造体を補強するためのはめ込み型繊維強化複合材料および補強方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004255848A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006205519A (ja) * | 2005-01-27 | 2006-08-10 | Sekisui Chem Co Ltd | 繊維補強樹脂成形品の製造方法、並びに、中間成形品及びその製造方法 |
-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003052189A patent/JP2004255848A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006205519A (ja) * | 2005-01-27 | 2006-08-10 | Sekisui Chem Co Ltd | 繊維補強樹脂成形品の製造方法、並びに、中間成形品及びその製造方法 |
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