JP2004249748A - 自動車の追突防止制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】入力するべきパラメータが1種類のみであり、前走車との追突事故を確実に防止することが出来て、十分にアクセルを踏むことが出来て、車両の加速性能を十分に生かしきることが出来る様な自動車の追突防止制御システムの提供。
【課題を解決するための手段】前走車(R)と追跡車両(C)との相対距離(D、D(t))を計測する相対距離計測手段(2)と、1制御周期(T)だけ相対距離(D、D(t))を遅らせることにより前走車(R)と追跡車両(C)との相対速度(d´(t))を求める手段(FP8、OSD10)と、前走車(R)と追跡車両(C)との相対距離(D、D(t))及び相対速度(d´(t))が入力されるとファジィ制御を行って追跡車両(C)の最大アクセル開度(y♯(t))を出力するファジィ推論部(FIP5)とを有している。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は前走車と追跡車両とが同一方向へ走行している際に、追跡車両が前走車に追突してしまうことを防止出来る自動車の追突防止制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
図17で示す様に、前走車Rが存在する場合、後続車両(追跡車両)Cのドライバーは追突を恐れるため、十分にアクセルを踏むことが出来ず、車両Cの加速性能を十分に生かしきれないことが多い。このことは、追突防止という観点のみから論ずる限り、何等問題は無い。
しかしながら、十分にアクセルを踏むことが出来ず、車両の加速性能を十分に生かしきれないことが、後続車両(追跡車両)Cのドライバーに対して精神的なストレスを及ぼしてしまい、交通安全の見地から、却って好ましくない事態を生じる可能性が否定出来ない。
【0003】
十分にアクセルを踏むことが出来ないことに起因する後続車両(追跡車両)ドライバーにおける精神的なストレスを回避するために、自動制御による追突防止技術が、従来から提案されている。そして、その様な追突防止は、人間の感性に良く適合するファジィ制御を用いる場合が多い。
しかし、従来のファジィ制御を用いた追突防止技術では、入力するべきパラメータ(計測されるパラメータ)の数が数種類にも及び、非常に複雑な制御を必要とするので、その処理のためには高性能且つ大規模な構造が要求される。
従って、スペースが限られた車両内に設置するのに適さない場合が多い。そのため、入力するべきパラメータが少なく、理想的には入力するべきパラメータが1種類のみであり、前走車Rとの追突事故を確実に防止することが出来て、しかも、十分にアクセルを踏むことが出来て、車両の加速性能を十分に生かしきることが出来る様な自動車の追突防止制御システムが求められているが、現時点では実現されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、入力するべきパラメータが1種類のみであり、前走車との追突事故を確実に防止することが出来て、十分にアクセルを踏むことが出来て、車両の加速性能を十分に生かしきることが出来る様な自動車の追突防止制御システムの提供を目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者は種々研究の結果、前走車両が存在する場合における後続車両(追跡車両)の運転、特に加速或いは制動操作の制御に良く適合したメンバーシップ関数(図6、図8で示すメンバーシップ関数:本明細書では、「キャリアモードメンバーシップ関数」と記載する)を使用して、適合度(ωij)及び後件部定数(Cij)を適宜設定することで、ファジィ制御により上述した問題を解消する手法を見出した。
本発明の自動車の追突防止制御システム(A)は、係る手法を適用するものであり、前走車(R)と追跡車両(C)との相対距離(D或いはD(t))を計測する相対距離計測手段(2)と、1制御周期(T)だけ相対距離(D或いはD(t))を遅らせることにより前走車(R)と追跡車両(C)との相対速度(d´(t))を求める手段(フィードバック部分FP8、1回遅れ回路OSD10)と、前走車(R)と追跡車両(C)との相対距離(D或いはD(t))及び相対速度(d´(t))が入力されるとファジィ制御を行って追跡車両の最大アクセル開度(y♯(t))を出力するファジィ推論部(FIP5)とを有している(請求項1)。
【0006】
ここで、前記ファジィ推論部(FIP5)は、前走車(R)と追跡車両(C)との相対距離(D或いはD(t))或いは前走車(R)と追跡車両(C)との相対速度(d´(t))が入力されるメンバーシップ関数回路(CMMF9:例えば図2で示す様に上下2ヶ所にそれぞれ2個ずつ、合計4個設けられている)と、メンバーシップ関数回路(CMMF9)の出力(μA、μB)に対する適合度(ωij)演算を行う演算回路(ω11、ω12、ω21、ω22)と、演算回路(ω11、ω12、ω21、ω22)で求められた適合度(ωij)に外部ディジタル入力により制御された後件部定数(Cij)を乗算する乗算回路(C11、C12、C21、C22)と、演算回路(ω11、ω12、ω21、ω22)の出力(適合度ωij)及び乗算回路(C11、C12、C21、C22)の出力(適合度に後件部定数を乗じたものCijωij)から重心点計算(式(2))により追跡車両(C)の最大アクセル開度(y♯(t))を求める推論回路(y♯)とを有しているのが好ましい(請求項2)。
【0007】
さらに、前記メンバーシップ関数回路(CMMF9)では、非ファジィ入力に対して、一定のグレード勾配(ΔG/ΔD)の部分と、グレードが変化しない部分(水平部分)と、グレードが急激に変化する部分(変化部分Δ1、Δ2)とを有するグレード特性であって、単調増加のグレード特性(図6(b))と、単調減少のグレード特性(図6(a))とを組み合わせたメンバーシップ関数(図6(c):キャリアモードメンバーシップ関数)を用いているのが好ましい(請求項3)。
【0008】
さらに本発明によれば、追跡車両(C)から見た画像を前処理して2次元観測窓(図16のW)を作成し、該2次元観測窓(W)から1次元空間上であらわされた前走車(R)と追跡車両(C)との相対距離データを算出する前処理手段(35)を有しているのが好ましい。
但し、本発明において用いられる相対距離データの計測手段はこれに限定されるものではない。また、距離計測については、例えば、超音波を利用する方式、光学式等のどのような距離計測手段でも、本発明では利用可能である。
【0009】
係る構成を具備する本発明の自動車の追突防止制御システムによれば、前走車(R)と追跡車両(C)との相対距離(D或いはD(t))を計測するのみで、追跡車両(C)の最大アクセル開度(y♯(t))を得ることが出来る。そして、追跡車両(C)のドライバーのアクセル開度と、演算された追跡車両(C)の最大アクセル開度(y♯(t))との誤差を修正する。
ここで、演算された最大アクセル開度(y♯(t))は、前走車(R)と追突しないという条件で求められたものであり、追跡車両(C)のアクセル開度が係る最大アクセル開度(y♯(t))で走行される限り、前走車(R)に追突することは無い。
換言すれば、制御目標D0は前走車と追跡車両との相対距離が0であるが、これに所定のオフセット量(例えば、5m)を加えることにより、追跡車両は前走車から前記オフセット量だけ離れた位置を制御目標とすることになる。従って、制御が正確に行われれば、常時、前記オフセット量だけ、追跡車両と前走車との間に間隔が維持され、追跡車両が前走車に追突してしまうことが防止されるのである。
【0010】
また、演算された最大アクセル開度(y♯(t))までのアクセル開放が可能であることと、ドライバーのアクセル開度が演算された最大アクセル開度(y♯(t))を超えても、追跡車両(C)側で修正して当該最大アクセル開度(y♯(t))に抑えるので、追跡車両のドライバーは、十分にアクセルを踏み、車両の加速性能を十分に生かした感覚が味わえる。
そのため、追跡車両のドライバーに無用の精神的ストレスを及ぼすことが無くなり、交通安全上、大変望ましい。
【0011】
さらに、人間の感性に近いファジィ制御を採用しているため、追跡車両のドライバーが制御によって不自然な感覚を持つことが無い。
これに加えて、前走車両が存在する場合における後続車両(追跡車両)の運転、特に加速或いは制動操作の制御に良く適合した前述したメンバーシップ関数(図6、図8で示すメンバーシップ関数:キャリアモードメンバーシップ関数)を使用するので、加速及び制動が円滑且つ安全に行われる。
【0012】
本発明の移動障害物回避機構(B)は、上述した(請求項1〜3の)自動車の追突防止制御システム(A)と共に、追跡車両(C)から見た画像を前処理して2次元観測窓(図16のW)を作成し、該2次元観測窓(W)から2次元空間上の危険度データと追跡車両(C)の前走車(R)に対する目標角度データを算出する前処理手段(35)と、前処理手段(35)からの前記危険度データ及び目標角度データに基いて、目標点への誘導並びに障害物の回避量を推論してハンドル操作の限界角度を決定するステアリング制御機構(39)を有している(請求項4)。
【0013】
係る構成を採用すれば、追突防止に加えて、ハンドル角度をも適正に制御して、運転の安全性をより向上させることが可能となる。
【0014】
なお、本明細書において、「自動車」なる文言は、普通乗用車に限定されるのではない。貨物車両であっても良いし、自動2輪車や、特殊車両であっても良い。さらに、道路を走行できる原動機付きの乗り物のみならず、船舶についても本発明を適用可能である。換言すれば、道路を走行できる原動機付きの乗り物及び船舶は、全て、本明細書で言う「自動車」に包含する趣旨である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、貼付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1〜図8を参照して、第1実施形態を説明する。
【0017】
図1において、本発明の第1実施形態に係る追突防止制御システムAは、前走車Rを追跡している追跡車両すなわち自車Cと、仮想空間適合ファジィコントローラ1と、自車Cと仮想空間適合ファジィコントローラ1とを仲介するインターフェース3を有している。
【0018】
ここで、前走車R及びそれを追跡している追跡車両(自車)Cが存在する実空間は、1次元空間として考える。そして、仮想空間適合ファジィコントローラ1は、仮想空間において、移動障害物である前走車Rと追跡車両Cとの各種シミュレーションを実施して、当該シミュレーションで安全が確認された推論結果を最大アクセル量y♯(t)として、自車側(追跡車両)Cへ提供するように構成されている。
【0019】
図1において、仮想空間適合ファジィコントローラ1は、アナログスイッチ11と、プログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)12と、移動障害物である前走車Rと追跡車両Cとの各種シミュレーションを行う仮想空間ブロック13とを有している。なお、プログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)12の詳細については、図4を参照して後述する。
【0020】
図1では明確には示されていないが、追跡車Cは、移動障害物である前走車Rとの車間距離Diを計測する車間距離計測手段2が設けられている。そして、計測された車間距離Diは、インターフェース3及びアナログスイッチ11を介して、プログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)12へ入力される。
プログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)12は、ファジィ推論を用いて所定のアクセル開度を出力する。プログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)12の出力であるアクセル開度は、仮想空間ブロック13へ送られる(P1)と共に、メモリMで一時的に貯蔵(P2)される。
【0021】
仮想空間ブロック13では、追跡車両Cのアクセル開度をプログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)12の出力とした場合のシミュレーションが行われ、移動障害物Rとの車間距離d(t)が求められる。シミュレーションの結果として求められた車間距離d(t)は、アナログスイッチ11へ送られる(P3)と共に、評価回路4に送られ(P4)、以って、追跡車両Cのアクセル開度をプログラマブルプログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)12の出力にした場合に車間距離d(t)が所定値以下にならないか(追跡車両Cが前走車Rに許容値以上近接してしまわないか否か)が判定される。
評価回路4における判定結果は、プログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)12の出力であるアクセル開度が一時的に貯蔵されるメモリMと、インターフェース3とに送られる(P5、P6)。そして、評価回路4においてプログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)12の出力であるアクセル開度が妥当であると判定されたならば、当該アクセル開度がインターフェース3を介して自車Cに対する制御信号(y#(t))として送られる。
【0022】
なお、キャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9については、図4を参照して後述する。
【0023】
図2では、図1で説明した第1実施形態に係る追突防止制御システムA、特にその回路構成を、より具体的な回路ブロック図で表現している。
図2において、追突防止制御システムAは、ファジィ推論部(FIP)5と、累積加算器(Acc)6と、実際に走行している車両を表示する実空間部分(VSP)7と、フィードバック部(FP)8とから、概略構成されている。
【0024】
そして、ファジィ推論部(FIP)5は、キャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)(図2で示す例では、上下2ヶ所にそれぞれ2個ずつ、合計4個設けられている)9と、演算回路ω11、ω12、ω21、ω22と、乗算回路C11、C12、C21、C22と、推論回路(y♯)Yとを有している。
ここで、ファジィ推論部(FIP)5において、符号μAは図2上方のキャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9の出力(グレード)を意味しており、符号μBは図2下方のキャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9の出力(グレード)を意味している。
【0025】
演算回路ω11、ω12、ω21、ω22は、キャリアモードメンバーシップ関数回路(CMFC)9の出力μA、μBに対する適合度(ωij)演算を行う。
そして、乗算回路C11、C12、C21、C22は、外部ディジタル入力DIにより制御された後件部定数(Cij)を乗算する。ここで、後件部定数(Cij)は、例えば図8を参照して後述する規則1〜規則4に基いて決定される。
推論回路(y♯)Yは、アクセル開度増加分(y♯(t))の推論を行う回路である。ここで、アクセル開度増加分y♯(t)は、次の式で示される。
アクセル開度増加分y♯(t)=ΣωijCij/Σωij ・・・(2)
【0026】
なお、図8を参照して後述するが、図2のキャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9において、符号Nは右下がりのキャリアモードメンバーシップ関数を意味しており、符号Pは右上がりのキャリアモードメンバーシップ関数を意味している。
【0027】
図2の回路による作用を説明する。
実空間部(VSP)7では、図2で示す回路により制御を受ける走行車両(追跡車両)Cと、移動障害物である前走車Rとの距離d(t)が、図示しない相対距離計測手段(図1の符号2)により、制御周期T(例えば10ms〜50ms)毎に計測される。
計測された距離d(t)は、フィードバック部(FP)8を介して、図2中上方のキャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9に入力I1される。
【0028】
それと同時に、計測された距離d(t)は、フィードバック部(FP)8の1回遅れ回路(OSD)10で制御周期Tの1回分だけ遅延I2され、合流回路Gにおいて、1回遅れ回路(OSD)10を経由しなかった距離d(t)に関する新たな計測信号と合流される。
1回遅れ回路OSDで制御周期Tの1回分だけ遅延される結果、距離d(t)を示す信号の差分Δd(t)が求まる。この差分Δd(t)は1回の制御周期Tにより発生したものであるため、追跡車両Cと前走車Rとの相対速度d´(t)は、
相対速度d´(t)=Δd(t)/T
で求まる。
合流回路Gでは係る処理が為され、図2中下方のキャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9には、追跡車両Cと前走車Rとの相対速度d´(t)が入力されることとなる。
【0029】
図2中上方と下方のキャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9に入力された追跡車両Cと前走車Rとの相対距離d(t)及び相対速度d´(t)は、外部ディジタル入力で制御された極性、グレード勾配の他、しきい値制御量により、グレード値に変換されて、出力μA、μBとなって、演算回路ω11、ω12、ω21、ω22に送られて、適合度(ωij)が演算される。この演算結果は、直接、推論回路(y♯)Yに送られると共に、乗算回路C11、C12、C21、C22で外部ディジタル入力により制御された後件部定数(Cij)を乗算されて(ωijCij)、推論回路(y♯)Yに送られる。
そして、推論回路y♯では、前記式(2)により、アクセル開度増加分y♯(t)が演算或いは推論される。推論結果である開度増加分y♯(t)は、累積加算器(Acc)6を介して追跡車両Cに入力され、追跡車両Cはそのアクセル開度増加分y♯(t)に従って、十分な加速を行うのである。
すなわち、前走車Rが存在してもアクセルを十分に踏み込むことが出来るのである。
実際の制御に際しては、追跡車両Cで許容される最大アクセル開度は累積加算器で処理され、次の制御周期で追跡車両Cにおけるドライバーの誤操作(或いは、実際の操作と制御信号との差異)が補正されるのである。
【0030】
次に、「仮想空間13にて移動障害物である前走車Rと追跡車両Cとの各種シミュレーションを実施して、当該シミュレーションで安全が確認された推論結果を最大アクセル量として、追跡車両Cへ提供する」という上述の情報の流れを、フローチャート(図3)、及び図1、図2を参照して説明する。
【0031】
ステップS1において、車間距離計測手段2によって車間距離を計測しており、1回遅延回路(OSD)10により相対速度d´(t)を算出する(ステップS2)。
【0032】
次のステップS3では、車間距離及び相対距離をキャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9に入力する。キャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9に入力された追跡車両Cと前走車Rとの相対距離d(t)及び相対速度d´(t)は、外部ディジタル入力DIで制御された極性、グレード勾配の他、しきい値制御量により、グレード値に変換されて、出力μA、μBとなって、演算回路ω11、ω12、ω21、ω22に送られて、適合度(ωij)が演算される(ステップS4)。
【0033】
この演算結果は、直接、推論回路(y♯)Yに送られると共に、乗算回路C11、C12、C21、C22で外部ディジタル入力により制御された後件部定数(Cij)を乗算(ωijCij:ステップS5)されて、推論回路(y♯)Yに送られる。
【0034】
次のステップS6では、適合度(ωij)および適合度(ωij)と後件部定数(Cij)の積(ωij)(Cij)から、前述の式(2)によってアクセル開度増加分y♯(t)を推論する。
【0035】
さらに累積加算器(Acc)6により1制御周期前のアクセル開度に前述のステップで求めたアクセル開度増加分y♯を加算し(ステップS7)、アクセル開度を追跡車両Cへ出力(アクセル開度の出力値:Sα)する(ステップS8)。
【0036】
次のステップS9では、追跡車両Cのドライバーのアクセル開度は前記出力値Sα以上か否かが判断され、以上であれば(ステップS9のYES)、ステップS10に進み、アクセル開度を前記出力値Sαと一致させる。
一方、出力値未満であれば(ステップS9のNO)、ステップS11に進み、ドライバーのアクセル開度をそのまま維持させる。
【0037】
そして元の状態に戻り、追跡車両Cのアクセル開度を増減させながらドライブを続行する(ステップS12)。
【0038】
次に、図4を参照して、図1において符号12で示されているプログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)について説明する。
図4で示すプログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)12では、6個のキャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9が設けられており、2個の入力Vin1、Vin2が接続点X1、X2を介して入力される。そして、1入力当り3個のキャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9が割り当てられている。そのため、1つの入力あたり3つの推論ルールが与えられるので、図4のプログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)12における推論ルールの最大数は9個となる。
【0039】
それぞれが1入力に対して割り当てられている6個のキャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9の出力は、推論ルールの最大数(9個)だけ設けられた最大値選択回路(MAX)21に入力される。そして、9個の最大値選択回路(MAX)21の出力には、それぞれ電流信号I0が付加される。
ここで、最大値選択回路(MAX)の出力に電流信号I0が付加された信号は、信号I0を1とすれば「1−MAX(CMMF出力)」となる。これは、MIN演算に他ならない。そして、係るMIN演算は適合度演算である。
【0040】
I0が付加された9個の最大値選択回路(MAX)の出力は、9個の荷重比1:1のカレントミラー(Current Mirror:CM)23の何れかに入力され、カレントミラー(CM)23の出力は重み付け回路(Weighting D/A:DA)25に入力される。これにより、重み付け回路(DA)25の分解能を高めたのち、除算回路(DIV)27に入力される。そして、除算回路(DIV)27から出力電圧V0を出力する。
【0041】
カレントミラー(CM)23の出力は適合度ωijに相当する。
全てのカレントミラーCMの出力は単一のラインを介して除算回路(DIV)27に入力される。これにより、除算回路(DIV)27にはカレントミラー(CM)23の出力の総和であるΣωijが入力される。
そして、適合度ωij(カレントミラー(CM)23の出力)が重み付け回路(DA)25を経過することにより、上述した重み付け回路(DA)25の出力は後件部定数(Cij)が加えられる。この重み付け回路(DA)25の出力が1つにまとめられることにより、当該出力はΣωijCijとなり、当該出力ΣωijCijが除算回路(DIV)27に入力される。
この結果、除算回路(DIV)27の出力は、上述した式(2)で示されるアクセル開度増加分(y#(t))、ΣωijCij/Σωijとなる。
【0042】
ここで、図2では2つのキャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9が設けられているのに対して、図4では3つのキャリアモードメンバーシップ関数回路CMMFが設けられている。
これは、図4の3つのキャリアモードメンバーシップ関数回路CMMFから2つのキャリアモードメンバーシップ関数回路CMMFを適宜選択すれば良いことを意味している。
換言すれば、図4のプログラマブルファジィコントローラ(PCMFC)12は、図2の回路におけるコントローラとして機能するのに必要な性能が保証されているのである。
【0043】
図5を参照して、図2、図4におけるキャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9を詳細に説明する。
図5において、キャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF)9の入力は電圧信号Viで示されており、出力は電流信号Igで示されている。
【0044】
入力信号Viは、SCLの多段回路で構成されているレベルシフト回路(LSC)22に入力される。ここで、レベルシフト回路(LSC)22には、入力信号Viのみならず、グレードの勾配制御を行う外部ディジタル入力(Gradient)24が入力される。
レベルシフト回路(LSC)22の出力は電圧信号であり、4個の2値しきい値制御回路(BTCC)26に送られる。それと共に、4個の2値しきい値制御回路(BTCC)26の各々には、感度極性切り替え設定を行う外部ディジタル入力(Polar)28が入力される。ここで、感度極性については、図7を参照して、後述する。
これに加えて、4個の2値しきい値制御回路(BTCC)26の各々には、しきい値制御量を設定するディジタル入力(Controlled variable)30が入力される。
2値しきい値制御回路(BTCC)26の出力は電流信号であり、4個の2値しきい値制御回路(BTCC)26の各々の出力電流は加算回路(Σ)32で合算され、電流信号Igとなる。
【0045】
次に、図6〜図8を参照して、上述したファジィ制御に関して用いられるメンバーシップ関数である「キャリアモードメンバーシップ関数」を説明する。
キャリアモードメンバーシップ関数は、非ファジィ入力の状態遷移方向に対応させて、グレード評価を2状態設定できる関数であり、これを実時間で処理できるという特徴を有している。
【0046】
図6において、追跡車両と先行車両との相対距離(D或いはd(t)で示す)と、グレード(grade)との関係を示すキャリアモードメンバーシップ関数Fが示されている。
キャリアモードメンバーシップ関数Fは図6(c)で示され(Fc)ており、図6(a)で示すメンバーシップ関数Faと、図6(b)で示すメンバーシップ関数Fbとを組み合わせて構成されている。
【0047】
メンバーシップ関数Faは、追跡車両Cと先行車両Rとの相対距離Dが単調に減少する場合においては、図6(a)の図示の実線で示すように、右上から左下に移動する場合に対応する。
従来・公知のファジィ制御で用いられるメンバーシップ関数であれば、追跡車両と先行車両との相対距離Dが単調に減少する場合は、図18の右上から左下に向かって、勾配「ΔG/ΔD」の直線となる。これに対して、本発明で用いられるファジィ制御で用いられるメンバーシップ関数は、(従来の線形関数であるメンバーシップ関数とは、)次に述べるように相違している。
【0048】
図6(a)において示されているメンバーシップ関数は、勾配「ΔG/ΔD」の直線の部分と、グレードが急激に変化する部分(変化部分Δ1、Δ2)とから成る。
初期の段階すなわち追跡車両と先行車両との相対距離Dが大きい場合(図6(a)では中央よりも左側の領域)には、大きなアクセル開度が要求されるので、グレード変化量が大きい(符合「Δ1」で示す)。
【0049】
収束点D0近傍においても、グレードが急激に変化する変化部分Δ2が設けられている。変化部分Δ2におけるグレード変化量は、変化部分Δ1におけるグレード変化量よりも小さいが、勾配ΔG/ΔDに比較すれば、その変化量(負側或いは図中下側への変化量)は遥かに大きい。
ここで、収束点D0近傍にグレードが急激に(負側或いは図6(a)中下側へ)変化する変化部分Δ2を設けることにより、収束点D0を超えたアンダーシュートの低減に効果的である。それと同時に、収束点D0を超えたとしても、回復動作を強調させる効果がある。
【0050】
図6(b)で示すように、メンバーシップ関数Fbが、追跡車両と先行車両との相対距離Dが単調に増加する場合においては、左下から右上への移動に該当し、図6(a)において示されているメンバーシップ関数と同様に、勾配「ΔG/ΔD」の直線の部分と、グレードが急激に変化する部分(変化部分Δ1、Δ2)とから成る。
相対距離Dが単調増加する場合には、収束点D0付近においては、追従特性の感度を上げるため、グレード変化量を正側(図6(b)中の上側)へ急激に変化させる必要がある。そのため、収束点D0近傍にグレードが急激に変化する変化部分Δ2を設けている。
【0051】
図6(a)及び図6(b)を比較すれば明らかな様に、追跡車両と先行車両との相対距離Dが単調に減少する場合(図6(a))と、相対距離Dが単調に増加する場合(図6(b))とを同時に満足させるメンバーシップ関数は存在しない。
そのため、図6(a)のメンバーシップ関数Faと、図6(b)のメンバーシップ関数Fbとを組み合わせ、双方の特徴を取り入れることにより、追跡車両と先行車両との相対距離Dが単調に減少する場合と、相対距離Dが単調に増加する場合とを同時に満足させるべく、構成したものが図6(c)のキャリアモードメンバーシップ関数Fcである。
【0052】
図6で説明したメンバーシップ関数(Fa、Fb、Fc)の感度極性は、図5を参照して上述したように、外部ディジタル入力(Polar:図5)28により、感度極性切り替え設定が行われる。
【0053】
図7は、メンバーシップ関数の感度極性の種類(外部から切り替え可能)を示したものである。
【0054】
図7(a)は、メンバーシップ関数が高感度特性の場合を示している。ここで、図7(a)の左側は、キャリアモードメンバーシップ関数回路(CMMF:図5の符号9)の構成要素であるレベルシフト回路24(図5)を構成するSCLの参照電圧である。そして、図7(a)の右側は、メンバーシップ関数の高感度特性を示している。図7(a)の左側を参照すれば、メンバーシップ関数の高感度特性は、SCLの参照電圧Vを固定すれば得られることが明らかである。
【0055】
図7(b)は、メンバーシップ関数が低感度特性の場合を示す。図7(b)の左側で示すSCLの参照電圧は、SCLの電圧入力を共用した時のFF電圧である。換言すれば、メンバーシップ関数が低感度特性は、SCLの電圧入力を共用した時のFF電圧をSCLの参照電圧に用いた場合に得られる特性である。
これに対して、SCLの電圧入力を共用した時のFF電圧の非反転出力をSCLの参照電圧に用いた場合の特性が、図7(c)で示されており、係る特性は超高感度特性と定義される。
【0056】
図8は、図2で説明した追突防止制御システムAで用いられるキャリアモードメンバーシップ関数回路CMMF(図2では、上下2ヶ所にそれぞれ2個ずつ、合計4個設けられている)9で用いられる4個のキャリアモードメンバーシップ関数を示している。
図8(a)の車間距離、図8(b)の相対速度では、左下から右上に遷移するキャリアモードメンバーシップ関数PAと、左上から右下に遷移するキャリアモードメンバーシップ関数NAとが、それぞれ示されている。
上述したように、左下から右上に遷移するキャリアモードメンバーシップ関数PAが図2の符号「P」に対応し、左上から右下に遷移するキャリアモードメンバーシップ関数NAが図2の符号「N」に対応する。
【0057】
図8(a)は追跡車両と前走車との車間距離D或いはd(t)とグレードとの関係を示すキャリアモードメンバーシップ関数を示しており、図8(a)中、左下から右上の領域に遷移するキャリアモードメンバーシップ関数が符号「PA」、左上から右下の領域に遷移するキャリアモードメンバーシップ関数が符号「NA」で示されている。
図8(a)において、「XA」は相対距離メンバーシップ関数における設定値である。
一方、図8(b)は追跡車両と前走車との相対速度d´(t)とグレードとの関係を示すキャリアモードメンバーシップ関数を示しており、図8(b)中、左下から右上の領域に遷移するキャリアモードメンバーシップ関数が符号「PB」、左上から右下の領域に遷移するキャリアモードメンバーシップ関数が符号「NB」で示されている。
図8(b)において、「XB」は相対速度メンバーシップ関数における設定値である。
【0058】
図8のキャリアモードメンバーシップ関数のグレードを用いて、アクセル開度の増分量について、以下の簡略化に基づく推論規則を適用する。
規則1: 車間距離d(t)がキャリアモードメンバーシップ関数NAであり、相対速度d´(t)がキャリアモードメンバーシップ関数が符号NBである場合には、後件部としての定数はC11とする。
規則2: 車間距離d(t)がキャリアモードメンバーシップ関数NAであり、相対速度d´(t)がキャリアモードメンバーシップ関数が符号PBである場合には、後件部としての定数はC12とする。
規則3: 車間距離d(t)がキャリアモードメンバーシップ関数PAであり、相対速度d´(t)がキャリアモードメンバーシップ関数が符号NBである場合には、後件部としての定数はC21とする。
規則4: 車間距離d(t)がキャリアモードメンバーシップ関数PAであり、相対速度d´(t)がキャリアモードメンバーシップ関数が符号PBである場合には、後件部としての定数はC22とする。
【0059】
図2において、外部ディジタル入力D1により乗算回路C11、C12、C21、C22に対して入力される後件部定数(Cij)は、図2では図示されない手段により、上述した規則1〜規則4に基づいて決定される。
【0060】
図1〜図8を参照して説明した第1実施形態の効果について、図9〜図14を参照して説明する。
制御対象として用いた車両の動力性能が図11に示されている。図9(a)では、同一の出力を有する車両のアクセル開度を全開にした際の時間−速度特性が、車重1087kg、1387kg、1687kgの各車両について、それぞれ示されている。そして、図9(a)によれば時速100km/hに達するまでの所要時間は車重1087kgでは7.73秒、1387kgでは10.0秒、1687kgでは12.3秒かかる。
図9(b)では、各々の車両の制動特性が示されている。図9(a)の時間−速度特性では、車重の大きさによって特性は大きく異なったが、図9(b)の制動特性は、車重による大きな差は見られない。
【0061】
図10は従来のファジィ制御による最大加速制動性能を示している。
図10(a)では、相対速度メンバーシップ関数における設定値XBが50km/hで一定であり、相対距離メンバーシップ関数における設定値Xaを3種類(50m、100m、150m)に変化させた場合における車間距離特性を示している。図10(a)から明らかなように、従来のファジィ制御による最大加速制動制御では、設定値Xaの値に関わらず、目標点付近で振動状態となる。そして、設定値Xaを大きくするほど、振動の振幅は小さくなる。
一方、図10(b)では、相対距離メンバーシップ関数における設定値XAが100mで一定であり、相対速度メンバーシップ関数における設定値Xbを3種類(20Km/h、50Km/h、80Km/h)とした場合の、相対速度特性を示している。図10(b)から明らかなように、相対速度特性においても振動モードが生じてしまい、Xbが大きいほど振幅が大きくなる。
【0062】
以上のシミュレーションから、Xaを大きく、Xbを小さく設定することが好ましいことが分かった。
【0063】
図10で示すような従来のファジィ制御に対して、上述した第1実施形態で必要な回路(キャリアモードメンバーシップ関数を用いた回路)を構成して制御を行った場合が、図12で示されている。
図12では、キャリアモードメンバーシップ関数を用いた回路を構成して制御を行った場合の時間−速度特性(Sa線)、制動特性(Da線)が時間軸を共有する同一のグラフ上に実線で描かれているが、比較対照のため、共に従来方式による特性が破線(Sc、Dc)で示されている。
図12から明らかなように、上述した第1実施形態においては、若干の振動が観察されるものの、車間距離特性、相対速度特性の何れにおいても、従来のファジィ制御の結果Sc、Dcに比較して、振動が極めて小さくなることが確認されている。
【0064】
図13は、図12と同様のグラフであり、初期相対距離が小さい(1m)場合であって、高速で遠ざかる(Sr=100km/h)前走車に対する追跡車両の車間距離特性、相対速度特性をシミュレートしたものである。
この場合であっても、車間距離特性、相対速度特性は、上述の実施形態を採用することにより、大幅に改善していることが理解できる。
【0065】
図14は、図12と同様のグラフであり、初期相対距離が大きいが(100m)、前走車の遠ざかる速度が小さい(Sr=10Km/h)場合を示している。この場合であっても、上述の実施形態では、車間距離特性、相対速度特性が改善されている。
【0066】
図15及び図16を参照して第2実施形態を説明する。
図15及び図16の第2実施形態は、図1〜図8の第1実施形態に係る追突防止制御システムAを用いた移動障害物回避制御システムである。
図15において、全体を符号Bで示す移動障害物回避制御システムは、移動障害物である前走車と追跡車両である自車40との相対距離を検出・測定する距離センサ34と、信号ラインL1を介して送られた距離センサ34の電圧信号をアナログ信号に変換する前処理装置35を有している。
【0067】
また、移動障害物回避制御システムBは、前処理装置35で処理されたアナログ信号を信号ラインL2、L3を介して受け、上述したようにファジィ推論により、最も安全に加速するように加速を制御する制御装置36と、前方に差し迫った障害物がある場合にその障害物を回避するように車両を制御する障害物回避制御装置37とを有している。
【0068】
更に、前記加速制御装置36の制御信号及び前記障害物回避制御装置37の制御信号を信号ラインL4、L5を介して受け、加減速を制御する加減速制御回路38と、操舵を制御するステアリング制御機構39、とを有し、信号ラインL6、L7を介して車両40の加減速及び操舵を制御するように構成されている。
なお、制御後の車両の挙動は、フィードバック回路L8、L9によって、前記加速制御装置36及び障害物回避制御装置37に随時フィードバックされる。
【0069】
図16は図15の移動障害物回避制御システムBにおいて、追跡車両Cから見た画像を前処理して作成した2次元観測窓Wを表しており、図中の符号Rが移動障害物である前走車および自車との相対位置を示す。
【0070】
上述のように、第2実施形態の移動障害物回避機構Bは、前述の追突防止制御システムAと共に、追跡車両Cから見た画像を前処理して2次元観測窓をW作成し、該2次元観測窓Wから2次元空間上の危険度データと追跡車両Cの前走車Rに対する目標角度データを算出する前処理手段35と、前処理手段35からの前記危険度データ及び目標角度データに基づいて、目標点への誘導並びに障害物の回避量を推論してハンドル操作の限界角度を決定するステアリング制御機構39を有しているので、追突防止に加え、ハンドル角度をも適正に制御して、運転の安全性をより向上させることが可能となる。
【0071】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【0072】
なお、本発明の実施に際しては、図11で示す様に、追跡車両の能力の限界値を見極めて、その能力を極限まで発揮できるように、各種特性を決定することが好ましい旨を付記する。
【0073】
【発明の効果】
本発明の作用効果を以下に列挙する。
(1) 前走車と追跡車両との相対距離を計測する相対距離計測手段と、1制御周期だけ相対距離を遅らせることにより前走車と追跡車両との相対速度を求める手段と、前走車と追跡車両との相対距離及び相対速度が入力されるとファジィ制御を行って追跡車両の最大アクセル開度を出力するファジィ推論部とを有しているため、前走車と追跡車両との相対距離を計測するのみで、追跡車両の最大アクセル開度を得ることが出来る。そして、追跡車両のドライバーのアクセル開度と、演算された追跡車両の最大アクセル開度との誤差を修正する。そして、演算された最大アクセル開度は、前走車と追突しないという条件で求められたものであり、追跡車両のアクセル開度が係る最大アクセル開度で走行される限り、前走車に追突することは無い。
(2) 演算された最大アクセル開度までのアクセル開放が可能であることと、ドライバーのアクセル開度が演算された最大アクセル開度を超えても、追跡車両側で修正して当該最大アクセル開度に抑えるので、追跡車両のドライバーは、十分にアクセルを踏み、車両の加速性能を十分に生かした感覚が味わえる。
そのため、追跡車両のドライバーに無用の精神的ストレスを及ぼすことが無くなり、交通安全上、大変望ましい。
(3) 人間の感性に近いファジィ制御を採用しているため、追跡車両のドライバーが制御によって不自然な感覚を持つことが無い。これに加えて、前走車両が存在する場合における後続車両の運転、特に加速或いは制動操作の制御に良く適合した前述したメンバーシップ関数を使用するので、加速及び制動が円滑且つ安全に行われる。
(4) 本発明の移動障害物回避機構は、追突防止制御システムと共に、追跡車両から見た画像を前処理して2次元観測窓を作成し、該2次元観測窓から2次元空間上の危険度データと追跡車両の前走車に対する目標角度データを算出する前処理手段と、前処理手段からの前記危険度データ及び目標角度データに基づいて、目標点への誘導並びに障害物の回避量を推論してハンドル操作の限界角度を決定するステアリング制御機構を有することが出来るので、追突防止に加え、ハンドル角度をも適正に制御して、運転の安全性をより向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の追突防止制御システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1実施形態の追突防止制御システムの回路構成を詳細に示すブロック図。
【図3】前方障害物に対して安全が確保できる最大アクセル量を算出する際のフローチャート。
【図4】本発明の第1実施形態の追突防止制御システムのプログラマブルファジィコントローラの詳細構成を示すブロック図。
【図5】本発明の第1実施形態の追突防止制御システムのキャリアモードメンバーシップ関数回路の構成を示すブロック図。
【図6】本発明の第1実施形態の追突防止制御システムで用いられるキャリアモードメンバーシップ関数を表す図。
【図7】メンバーシップ関数の感度極性の種類を示した図。
【図8】本発明の第1実施形態の追突防止制御システムのキャリアモードメンバーシップ関数回路で用いられるキャリアモードメンバーシップ関数を表した図。
【図9】本発明の第1実施形態の効果として得られた加速・制動特性図。
【図10】従来のファジィ制御による最大加速・制動性能を示す特性図。
【図11】制御対象として用いた車両の動力性能を示した図。
【図12】キャリアモードメンバーシップ関数回路を用いた制御及び従来方式によって制御した際の特性図。
【図13】キャリアモードメンバーシップ関数回路を用いた制御及び従来方式によって制御した際の特性図で、初期相対距離が小さく、前走車が高速で遠ざかる場合の特性図。
【図14】キャリアモードメンバーシップ関数回路を用いた制御及び従来方式によって制御した際の特性図で、初期相対距離が大きく、前走車の遠ざかる速度が小さい場合の特性図。
【図15】本発明の第2実施形態である移動障害物回避制御システムの概略構成を示すブロック図。
【図16】本発明の第2実施形態である移動障害物回避制御システムにおいて、追跡車両から見た画像を処理して作成した2次元観測窓の概略図。
【図17】前走車を追跡車両が追尾する様を示す様態図。
【図18】従来技術におけるファジィ制御のメンバーシップ関数を表した図。
【符号の説明】
A・・・追突防止制御システム
B・・・移動障害物回避機構
C・・・追跡車両
R・・・前走車
1・・・仮想空間適合ファジィコントローラ
2・・・距離センサ/相対距離計測手段
3・・・インターフェース
4・・・評価回路
5・・・ファジィ推論部/FIP
6・・・累積加算器/Acc
7・・・実空間部分/VSP
8・・・フィードバック部/FP
9・・・キャリアモードメンバーシップ関数回路/CMMF
10・・・1回遅れ回路
11・・・アナログスイッチ
12・・・プログラマブルファジィコントローラ/PCMFC
13・・・仮想空間ブロック
22・・・レベルシフト回路/LSC
26・・・しきい値制御回路
30・・・デジタル入力

Claims (4)

  1. 前走車と追跡車両との相対距離を計測する相対距離計測手段と、1制御周期だけ相対距離を遅らせることにより前走車と追跡車両との相対速度を求める手段と、前走車と追跡車両との相対距離及び相対速度が入力されるとファジィ制御を行って追跡車両の最大アクセル開度を出力するファジィ推論部とを有していることを特徴とする自動車の追突防止制御システム。
  2. 前記ファジィ推論部は、前走車と追跡車両との相対距離或いは相対速度が入力されるメンバーシップ関数回路と、メンバーシップ関数回路の出力に対する適合度演算を行う演算回路と、該演算回路で求められた適合度に外部ディジタル入力により制御された後件部定数を乗算する乗算回路と、演算回路の出力及び乗算回路の出力から重心点計算により追跡車両の最大アクセル開度を求める推論回路とを有している請求項1の自動車の追突防止制御システム。
  3. 前記メンバーシップ関数回路では、非ファジィ入力に対して、一定のグレード勾配の部分と、グレードが変化しない部分と、グレードが急激に変化する部分とを有するグレード特性であって、単調増加のグレード特性と、単調減少のグレード特性とを組み合わせたメンバーシップ関数を用いる請求項2の自動車の追突防止制御システム。
  4. 請求項1〜3の何れか1項の自動車の追突防止制御システムと共に、追跡車両から見た画像を前処理して2次元観測窓を作成し、該2次元観測窓から2次元空間上の危険度データと追跡車両の前走車に対する目標角度データを算出する前処理手段と、前処理手段からの前記危険度データ及び目標角度データに基いて、目標点への誘導並びに障害物の回避量を推論してハンドル操作の限界角度を決定するステアリング制御機構を有していることを特徴とする移動障害物回避機構。
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