JP2004248406A - 車両のバッテリ管理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単、且つ、精度良く、バッテリの過充電状態を検出し、バッテリの耐久性、信頼性の劣化を防止することができ、また、発電機のON−OFFによるショックが少なく乗り心地を良好に保つ。
【解決手段】バッテリ管理装置32は、36Vバッテリ16の電流値から36Vバッテリ16が過充電状態と判定される場合には、モータ/ジェネレータ15による発電をカットすることなく通常の充電電圧値よりも所定に低い電圧値を設定する充電休止処理を実行する。
【選択図】 図2
【解決手段】バッテリ管理装置32は、36Vバッテリ16の電流値から36Vバッテリ16が過充電状態と判定される場合には、モータ/ジェネレータ15による発電をカットすることなく通常の充電電圧値よりも所定に低い電圧値を設定する充電休止処理を実行する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンと電動機の両方を搭載するハイブリッド車や電気自動車等においてバッテリの充放電状態を監視し、該バッテリを容易且つ適切に管理する車両のバッテリ管理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等の車両においては、低公害、省資源の観点からエンジンとモータとを併用する様々な形態のハイブリッド車や、モータのみで走行可能な電気自動車が開発され、実用化されている。
【0003】
このような、ハイブリッド車や電気自動車においては、バッテリの管理を精度良く行うことが重要である。例えば、特開平8−29506号公報においては、車両の停車状態を確認し、その直後の車両加速状態におけるバッテリからの放電電流とこの時のバッテリ電圧を検出して、これら放電電流とバッテリ電圧よりバッテリの内部抵抗を算出して、この内部抵抗に基いて正確にバッテリの残存容量を決定する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−29506号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、バッテリを上述の特許文献1に記載されるようなバッテリの残存容量で管理しようとすると、複数のパラメータを用いた複雑な演算処理が必要になり、これらパラメータ毎の検出誤差や、演算誤差を生じ、却って正確なバッテリの管理が難しいものとなる可能性がある。
【0006】
そして、バッテリの過充電状態が、上述の様々な誤差により正確に推定できず、バッテリの過充電状態において、更なる充電が続けられると、バッテリの耐久性や信頼性を損なう虞がある。
【0007】
一方、バッテリの過充電状態において、単純に発電機による発電を停止させてしまうような制御では、発電機のON−OFFによるショックが生じ、ドライバに違和感を与え、車両の乗り心地を悪化させてしまう可能性もある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、簡単、且つ、精度良く、バッテリの過充電状態を検出し、バッテリの耐久性、信頼性の劣化を防止することができ、また、発電機のON−OFFによるショックが少なく乗り心地を良好に保つことができる車両のバッテリ管理装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1記載の本発明による車両のバッテリ管理装置は、バッテリ電流を検出するバッテリ電流検出手段と、予めバッテリが過充電状態であることを判定する上記バッテリ電流の過充電閾値を設定し、該過充電閾値と上記バッテリ電流とを比較して上記バッテリが過充電状態であるか否か判定する過充電判定手段と、上記過充電判定手段で上記バッテリが過充電状態と判定した際に上記バッテリの充電状態を抑止する処理を実行させる充電抑止処理実行手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項2記載の本発明による車両のバッテリ管理装置は、請求項1記載の車両のバッテリ管理装置において、バッテリ電圧を検出するバッテリ電圧検出手段と、バッテリ温度を検出するバッテリ温度検出手段とを備え、上記過充電判定手段で設定する上記過充電閾値は、上記バッテリ電圧と上記バッテリ温度の少なくともどちらかに応じて可変設定することを特徴としている。
【0011】
更に、請求項3記載の本発明による車両のバッテリ管理装置は、請求項1又は請求項2記載の車両のバッテリ管理装置において、上記充電抑止処理実行手段は、上記過充電判定手段で上記バッテリが過充電状態と判定した際には、上記バッテリに設定する充電電圧値を通常の充電電圧値よりも所定に低い充電電圧値とする充電休止の実行指令を出力することを特徴としている。
【0012】
また、請求項4記載の本発明による車両のバッテリ管理装置は、請求項3記載の車両のバッテリ管理装置において、上記充電休止は、少なくとも予め設定しておいたバッテリ残存容量を示すバッテリ電圧値となった場合に終了させることを特徴としている。
【0013】
すなわち、請求項1記載の車両のバッテリ管理装置は、バッテリ電流検出手段でバッテリ電流を検出し、過充電判定手段で予めバッテリが過充電状態であることを判定するバッテリ電流の過充電閾値を設定し、該過充電閾値とバッテリ電流とを比較してバッテリが過充電状態であるか否か判定する。そして、過充電判定手段でバッテリが過充電状態と判定した際に、充電抑止処理実行手段は、バッテリの充電状態を抑止する処理を実行させる。
【0014】
この際、請求項2記載のように、バッテリ電圧検出手段でバッテリ電圧を検出し、バッテリ温度検出手段でバッテリ温度を検出しているのであれば、過充電判定手段で設定する過充電閾値は、バッテリ電圧とバッテリ温度の少なくともどちらかに応じて可変設定するようにすれば、より正確な過放電状態の判定が行える。
【0015】
また、充電抑止処理実行手段は、過充電判定手段でバッテリが過充電状態と判定した際には、具体的には、請求項3記載のように、バッテリに設定する充電電圧値を通常の充電電圧値よりも所定に低い充電電圧値とする充電休止の実行指令を出力する。
【0016】
この請求項3で記載する充電休止は、請求項4記載のように、少なくとも予め設定しておいたバッテリ残存容量を示すバッテリ電圧値となった場合に終了させる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。 図1〜図7は本発明の実施の形態を示し、図1は車両のバッテリ管理装置を有する車両全体の概略説明図、図2はバッテリ管理制御のフローチャート、図3はバッテリの電流値と温度に応じて可変設定される過放電閾値の特性図、図4はアイドルストップ後のバッテリの電圧値と電流値の変化の一例を示すタイムチャート、図5はバッテリの電流値と温度に応じて可変設定される過充電閾値の特性図、図6は回生開始後のバッテリの電圧値と電流値の変化の一例を示すタイムチャート、図7はインバータに対して通常時と充電休止時に指令する充電の電圧値の温度特性図である。
【0018】
図1において、符号1は車両前部に配置されたエンジンを示し、このエンジン1による駆動力は、エンジン1後方の自動変速装置(トルクコンバータ等も含んで図示)2からトランスファ3に伝達される。
【0019】
更に、このトランスファ3に伝達された駆動力は、リヤドライブ軸4、プロペラシャフト5、ドライブピニオン軸部6を介して後輪終減速装置7に入力される一方、リダクションドライブギヤ、リダクションドリブンギヤ、フロントドライブ軸を介して前輪終減速装置(以上、フロント駆動系は図示せず)に入力される。
【0020】
後輪終減速装置7に入力された駆動力は、後輪左ドライブ軸8rlを経て左後輪9rlに、後輪右ドライブ軸8rrを経て右後輪9rrに伝達される。前輪終減速装置に入力された駆動力は、前輪左ドライブ軸8flを経て左前輪9flに、前輪右ドライブ軸8frを経て右前輪9frに伝達される。
【0021】
次に、この車両に車載される各エレクトロニクス系について説明する。
本車両は、42Vの高電圧系と14Vの低電圧系の2つの電圧系統を有して構成されている。
【0022】
符号11は、インバータ装置を示し、このインバータ装置11には、エンジン1のクランクスプロケット12によりベルト13を介して回転軸端部のプーリ14が回転され発電を行うと共に、最初の始動時以外の再始動等におけるエンジン1の始動を行うモータ/ジェネレータ15が電気的に接続されている。
【0023】
インバータ装置11には、充放電可能な36Vバッテリ16と接続された42V系の配線が接続され、この42V系の配線には、最初のエンジン始動時のみ使用するスタータモータ17や、電動モータによるパワーステアリング装置18等が接続されている。
【0024】
また、インバータ装置11側面には、42V系の配線が接続されて、42V電圧を14V電圧に変換するDC−DCコンバータ19が略一体的に併設されている。このDC−DCコンバータ19に接続される配線には、充放電可能な12Vバッテリ20が接続され、その他各種ランプ、オーディオ、及び、後述する各制御装置等の14V負荷21が接続されている。
【0025】
車両には、車両の自動停止再始動制御を実行するアイドルストップ制御装置30が搭載されており、このアイドルストップ制御装置30には、エンジン1における周知の各種制御を実行するエンジン制御装置31、主に36Vバッテリ16の充電状態、放電状態を管理するバッテリ管理装置32等が、例えば、車両の通信ネットワークとしてISOの標準プロトコルの一つであるCAN(Controller
Area Network)等により接続されている。
【0026】
アイドルストップ制御装置30には、ブレーキペダル41の踏み込みストロークを検出するブレーキペダル踏み込み量センサ42(ブレーキ油圧を検出するものでも良い)、アクセルペダル43の踏み込みストロークを検出するアクセルペダル踏み込み量センサ44が接続されている。また、アイドルストップ制御装置30には、ハンドル角θHを検出するハンドル角センサ45、車速Vを検出する車速センサ46、選択されたシフトポジション(P、R、N、D、3速、2速、1速の各レンジ位置)を検出するシフトポジションスイッチ47、エンジン回転数NEを検出するエンジン回転数センサ48等が接続されている。
【0027】
そして、アイドルストップ制御装置30は、これらスイッチ、センサ類から得られる情報を基に、予め設定しておいたエンジン自動停止条件が成立しているか否か判定し、エンジン自動停止条件が成立している場合には、エンジン制御装置31に対して信号を出力してエンジン1を自動停止するアイドルストップを実行させる。
【0028】
また、アイドルストップ制御装置30は、アイドルストップ状態の場合にエンジン自動停止条件が不成立の状態となったら、エンジン制御装置31及びインバータ装置11に信号を出力してモータ/ジェネレータ15を駆動させ、エンジン1を再始動させる。ここで、エンジン自動停止条件とは、例えば、ブレーキペダル41が踏み込まれ、アクセルペダル43が踏まれておらず、シフトポジションがP、N、D、3速、2速、1速の何れかで、車速Vが略ゼロであり、且つ、バッテリ管理装置32からアイドルストップの禁止指令がない場合である。
【0029】
更に、アイドルストップ制御装置30は、予め設定しておいた回生条件(例えば、アクセルペダル43が踏まれておらず、エンジン回転数NEが1000rpm以上で、車速Vが40km/h以上で、駆動系とエンジン1とが連結され燃料が消費されていない条件)が成立する場合には、バッテリ管理装置32に対して回生指令を出力する。
【0030】
また、バッテリ管理装置32は、後述の図2に示すフローチャートに従って、36Vバッテリ16の充電状態、放電状態を管理すべく、36Vバッテリ16における温度を検出するバッテリ温度検出手段としてのバッテリ温度センサ51、36Vバッテリ16の電圧値を検出するバッテリ電圧検出手段としてのバッテリ電圧計52、36Vバッテリ16の電流値を検出するバッテリ電流検出手段としてのバッテリ電流計53が接続されている。
【0031】
バッテリ管理装置32は、充電に際しては、モータ/ジェネレータ15の発電トルクを直接的に制御することなく、目標とする電圧値をインバータ装置11に出力して充電を実行させるものであり、36Vバッテリ16は回生等により充電が行われるものであるため、通常は、予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値により充電が行われるようになっている。また、アイドルストップ制御装置30から回生指令がある場合には、通常より若干高い目標とする電圧値がインバータ装置11に対して出力される。
【0032】
また、バッテリ管理装置32は、36Vバッテリ16の電圧値から36Vバッテリ16が過放電状態と判定される場合には、後述の如く、アイドルストップ制御装置30に対してアイドルストップの禁止指令を出力し、更に、通常の充電電圧値よりも所定に高い電圧値で充電を実行する急速充電処理を実行して、放電状態を抑止させる。
【0033】
更に、バッテリ管理装置32は、36Vバッテリ16の電流値から36Vバッテリ16が過充電状態と判定される場合には、後述の如く、モータ/ジェネレータ15による発電をカットすることなく通常の充電電圧値よりも所定に低い電圧値を設定する充電休止処理を実行するようになっている。すなわち、バッテリ管理装置32は、過充電判定手段と、充電抑止処理実行手段の機能を備えて構成されている。
【0034】
次に、バッテリ管理装置32におけるバッテリ管理制御を図2のフローチャートで説明する。まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で制御に必要なパラメータを読み込み、S102に進み、36Vバッテリ16が過放電状態か否か判定する。
【0035】
これは、具体的には、まず、図3に示すように、予めメモリしておいた36Vバッテリ16の電流値と温度に応じた過放電閾値Vc1のマップを参照して、過放電閾値Vc1を設定し、この過放電閾値Vc1と36Vバッテリ16の電圧値とを比較することにより過放電状態か否か判定する。この過放電閾値Vc1は、温度が高くなるほど、高い値に設定され、また、電流値が高くなるほど電圧ドロップが大きくなるため低い値に設定されるようになっている。
【0036】
そしてすなわち、図4のタイムチャートの例に示すように、時間t0でエンジン1がアイドルストップし、電流値が一定の放電を続けていくと、36Vバッテリ16の電圧値は次第に低下していく。そして、この電圧値の低下が、上述の過放電閾値Vc1を下回ろうとした際(時間tvc1)に、36Vバッテリ16が過放電状態と判定するのである。
【0037】
S102の判定の結果、36Vバッテリ16が過放電状態と判定された場合は、S103に進み、アイドルストップ制御装置30に対してアイドルストップの禁止指令を出力し、放電を抑止させる。
【0038】
次いで、S104に進んで、36Vバッテリ16に対する急速充電の処理を行う。これは、図7に示す、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)よりも所定に高い電圧値(例えば、+2V)をインバータ装置11に出力して充電を実行させる。尚、この急速充電の処理は、余り長い時間の間、実行すると、36Vバッテリ16の温度が上昇して活性化しすぎる虞があるため、10分程度のみに限定して行うことが望ましい。
【0039】
そして、S105に進み、36Vバッテリ16の電圧値が中間状態、すなわち、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)に到達したか否か判定し、中間状態に到達していないのであれば、S104の急速充電の処理を再度実行し、中間状態に到達しているのであればS112へと進む。
【0040】
一方、S102で36Vバッテリ16は、過放電状態ではないと判定した場合は、S106に進み、36Vバッテリ16が過充電状態か否か判定する。
【0041】
これは、具体的には、まず、図5に示すように、予めメモリしておいた36Vバッテリ16の電圧値と温度に応じた過充電閾値Ic1のマップを参照して、過充電閾値Ic1を設定し、この過充電閾値Ic1と36Vバッテリ16の電流値とを比較することにより過充電状態か否か判定する。この過充電閾値Ic1は、温度が高くなるほど、高い値に設定され、また、電圧値が高くなるほど大きな電流が流れるため、高い値に設定されるようになっている。
【0042】
そしてすなわち、図6のタイムチャートの例に示すように、時間t0で回生による充電が開始され、一定の電圧値が設定されて36Vバッテリ16に充電が始まると、次第に36Vバッテリ16に流入される電流値が小さくなっていく。そして、この電流値の低下が上述の過充電閾値Ic1を下回ろうとした際(時間tic1)に、36Vバッテリ16が過充電状態と判定するのである。
【0043】
こうして、S106の判定の結果、36Vバッテリ16が過充電状態と判定された場合は、S107に進み、36Vバッテリ16の充電休止の処理を行う。これは、図7に示す、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)に対し、完全に充電をカットしてしまうのではなく、予め設定しておいた50%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)で充電するように、インバータ装置11に出力するのである。
【0044】
そして、S108に進み、36Vバッテリ16の電圧値が中間状態、すなわち、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)に到達したか否か判定し、中間状態に到達していないのであれば、S107の充電休止の処理を再度実行し、中間状態に到達しているのであればS112へと進む。
【0045】
S106で、36Vバッテリ16が過充電状態ではないと判定された場合、S109に進み、その他の異常状態が有るか否か判定され、その他の異常状態がある場合にはS110に進み、その他の異常状態がなければS112へと進む。このその他の異常とは、例えば、36Vバッテリ16の電圧値、電流値、或いは、温度が、通常ではとりえない値を示す場合等で、このような異常がある場合には、S110に進み、正常化処理、例えば、バッテリ温度センサ51、バッテリ電圧計52、バッテリ電流計53の結線確認の自己診断プログラムの実行等を行って、S111に進む。
【0046】
S111では、正常状態に復帰したか否か確認し、正常状態に復帰していないのであれば、S110に戻って、再び、必要な正常化処理を行い、正常状態に復帰している場合にはS112に進む。
【0047】
S105、S108、S109、S111の何れかからS112に進むと、アイドルストップ制御装置30から回生指令が出力されているか否か判定される。そして、回生指令が出力されていないのであれば、S113に進み、図7に示すような、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)で充電するようにインバータ装置11に出力しプログラムを抜ける。
【0048】
一方、アイドルストップ制御装置30から回生指令が出力されている場合にはS114に進み、回生時の電圧値、例えば、図7に示す、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)よりも5V高い値をインバータ装置11に出力しプログラムを抜ける。このように、回生時の電圧値を、通常時より若干高い電圧に設定するだけで、通常時より5V高い値になった時点でモータ/ジェネレータ15は、発電をしなくなるため、モータ/ジェネレータ15をトルクコントロールすることによる誤差を簡単に排除している。
【0049】
以上のように、本発明の実施の形態によるバッテリ管理装置32によれば、通常の充電の目標とする電圧値は、予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)で充電するようになっているため、頻繁に回生、アイドルストップが行われ、充放電が常時行われる車両のバッテリの管理を、単に、その電圧値を定めるだけで、複雑な演算や多くのパラメータを考慮することなく、誤差を少なく正確に行うことが可能になっている。また、頻繁な回生、アイドルストップが可能であるため燃費の大きな向上を図ることが可能となっている。例えば、充電の目標とする電圧値が、満充電に近い値となっている場合では、誤差により、過充電となってしまう場合も想定され、また、満充電を目標とすると、エネルギを回生することができない場面も多くなり、燃費の向上があまり期待できない虞がある。逆に、充電の目標とする電圧値が低すぎる場合では、頻繁にアイドルストップが行われた場合、アイドルストップ後の再始動をスムーズに行うことが難しくなる虞があるが、本実施の形態のように、予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)で充電するようになっていれば、このような問題も生じることがない。
【0050】
また、本実施の形態によれば、回生時の充電を、単に電圧値を通常時よりも若干高い電圧値で設定するようになっているので、通常時より若干高い電圧値になった時点でモータ/ジェネレータ15は、発電をしなくなるため、モータ/ジェネレータ15をトルクコントロールすることによる誤差を簡単に排除することができる。そして、充電が進行するに従い、36Vバッテリ16の電圧値が高くなり発電量が減少されるため、36Vバッテリ16の劣化を防ぎつつ、また、モータ/ジェネレータ15のON−OFFのトルクショックの無い、制御が実現されるようになっている。
【0051】
更に、本実施の形態によれば、36Vバッテリ16の過放電状態を単に電圧値を、過放電閾値Vc1と比較することで判定できるようになっているため、36Vバッテリ16の過放電状態を、複雑な演算や多くのパラメータを考慮することなく、誤差を少なく正確に判断でき、36Vバッテリ16の耐久性の劣化や、アイドルストップ車の再始動性の悪化を確実に防止することが可能となっている。そして、36Vバッテリ16の過放電状態を検出した場合には、アイドルストップの禁止指令を出力し、放電状態を確実に抑制できるようになっている。また、更に、急速充電処理を行うことにより、車両停止等に備えて、確実に36Vバッテリ16の性能劣化を防止できるようになっている。
【0052】
また、本実施の形態によれば、36Vバッテリ16の過充電状態を単に電流値を、過充電閾値Ic1と比較することで判定できるようになっているため、36Vバッテリ16の過充電状態を、複雑な演算や多くのパラメータを考慮することなく、誤差を少なく正確に判断でき、36Vバッテリ16の耐久性、信頼性の劣化等を確実に防止することが可能となっている。そして、36Vバッテリ16の過充電状態を検出した場合には、36Vバッテリ16の充電休止の処理、すなわち、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)に対し、完全に充電をカットしてしまうのではなく、予め設定しておいた50%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)で充電するように、インバータ装置11に出力する。このように、発電電圧を、降下させて設定することにより、36Vバッテリ16から、急速に放電が行われ、充電受け入れ分を確保することができる。また、モータ/ジェネレータ15による発電を完全にカットしないことにより、急激な電装負荷変動から36Vバッテリ16を保護することができ、発電のON−OFFによるショックも緩和することが可能で、車両の乗り心地を良好に保つことができる。
【0053】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、簡単、且つ、精度良く、バッテリの過充電状態を検出し、バッテリの耐久性、信頼性の劣化を防止することができ、また、発電機のON−OFFによるショックが少なく乗り心地を良好に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両のバッテリ管理装置を有する車両全体の概略説明図
【図2】バッテリ管理制御のフローチャート
【図3】バッテリの電流値と温度に応じて可変設定される過放電閾値の特性図
【図4】アイドルストップ後のバッテリの電圧値と電流値の変化の一例を示すタイムチャート
【図5】バッテリの電流値と温度に応じて可変設定される過充電閾値の特性図
【図6】回生開始後のバッテリの電圧値と電流値の変化の一例を示すタイムチャート
【図7】インバータに対して通常時と充電休止時に指令する充電の電圧値の温度特性図
【符号の説明】
1 エンジン
11 インバータ装置
15 モータ/ジェネレータ
16 36Vバッテリ
30 アイドルストップ制御装置
31 エンジン制御装置
32 バッテリ管理装置(過充電判定手段、充電抑止処理実行手段)
51 バッテリ温度センサ(バッテリ温度検出手段)
52 バッテリ電圧計(バッテリ電圧検出手段)
53 バッテリ電流計(バッテリ電流検出手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンと電動機の両方を搭載するハイブリッド車や電気自動車等においてバッテリの充放電状態を監視し、該バッテリを容易且つ適切に管理する車両のバッテリ管理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等の車両においては、低公害、省資源の観点からエンジンとモータとを併用する様々な形態のハイブリッド車や、モータのみで走行可能な電気自動車が開発され、実用化されている。
【0003】
このような、ハイブリッド車や電気自動車においては、バッテリの管理を精度良く行うことが重要である。例えば、特開平8−29506号公報においては、車両の停車状態を確認し、その直後の車両加速状態におけるバッテリからの放電電流とこの時のバッテリ電圧を検出して、これら放電電流とバッテリ電圧よりバッテリの内部抵抗を算出して、この内部抵抗に基いて正確にバッテリの残存容量を決定する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−29506号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、バッテリを上述の特許文献1に記載されるようなバッテリの残存容量で管理しようとすると、複数のパラメータを用いた複雑な演算処理が必要になり、これらパラメータ毎の検出誤差や、演算誤差を生じ、却って正確なバッテリの管理が難しいものとなる可能性がある。
【0006】
そして、バッテリの過充電状態が、上述の様々な誤差により正確に推定できず、バッテリの過充電状態において、更なる充電が続けられると、バッテリの耐久性や信頼性を損なう虞がある。
【0007】
一方、バッテリの過充電状態において、単純に発電機による発電を停止させてしまうような制御では、発電機のON−OFFによるショックが生じ、ドライバに違和感を与え、車両の乗り心地を悪化させてしまう可能性もある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、簡単、且つ、精度良く、バッテリの過充電状態を検出し、バッテリの耐久性、信頼性の劣化を防止することができ、また、発電機のON−OFFによるショックが少なく乗り心地を良好に保つことができる車両のバッテリ管理装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1記載の本発明による車両のバッテリ管理装置は、バッテリ電流を検出するバッテリ電流検出手段と、予めバッテリが過充電状態であることを判定する上記バッテリ電流の過充電閾値を設定し、該過充電閾値と上記バッテリ電流とを比較して上記バッテリが過充電状態であるか否か判定する過充電判定手段と、上記過充電判定手段で上記バッテリが過充電状態と判定した際に上記バッテリの充電状態を抑止する処理を実行させる充電抑止処理実行手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項2記載の本発明による車両のバッテリ管理装置は、請求項1記載の車両のバッテリ管理装置において、バッテリ電圧を検出するバッテリ電圧検出手段と、バッテリ温度を検出するバッテリ温度検出手段とを備え、上記過充電判定手段で設定する上記過充電閾値は、上記バッテリ電圧と上記バッテリ温度の少なくともどちらかに応じて可変設定することを特徴としている。
【0011】
更に、請求項3記載の本発明による車両のバッテリ管理装置は、請求項1又は請求項2記載の車両のバッテリ管理装置において、上記充電抑止処理実行手段は、上記過充電判定手段で上記バッテリが過充電状態と判定した際には、上記バッテリに設定する充電電圧値を通常の充電電圧値よりも所定に低い充電電圧値とする充電休止の実行指令を出力することを特徴としている。
【0012】
また、請求項4記載の本発明による車両のバッテリ管理装置は、請求項3記載の車両のバッテリ管理装置において、上記充電休止は、少なくとも予め設定しておいたバッテリ残存容量を示すバッテリ電圧値となった場合に終了させることを特徴としている。
【0013】
すなわち、請求項1記載の車両のバッテリ管理装置は、バッテリ電流検出手段でバッテリ電流を検出し、過充電判定手段で予めバッテリが過充電状態であることを判定するバッテリ電流の過充電閾値を設定し、該過充電閾値とバッテリ電流とを比較してバッテリが過充電状態であるか否か判定する。そして、過充電判定手段でバッテリが過充電状態と判定した際に、充電抑止処理実行手段は、バッテリの充電状態を抑止する処理を実行させる。
【0014】
この際、請求項2記載のように、バッテリ電圧検出手段でバッテリ電圧を検出し、バッテリ温度検出手段でバッテリ温度を検出しているのであれば、過充電判定手段で設定する過充電閾値は、バッテリ電圧とバッテリ温度の少なくともどちらかに応じて可変設定するようにすれば、より正確な過放電状態の判定が行える。
【0015】
また、充電抑止処理実行手段は、過充電判定手段でバッテリが過充電状態と判定した際には、具体的には、請求項3記載のように、バッテリに設定する充電電圧値を通常の充電電圧値よりも所定に低い充電電圧値とする充電休止の実行指令を出力する。
【0016】
この請求項3で記載する充電休止は、請求項4記載のように、少なくとも予め設定しておいたバッテリ残存容量を示すバッテリ電圧値となった場合に終了させる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。 図1〜図7は本発明の実施の形態を示し、図1は車両のバッテリ管理装置を有する車両全体の概略説明図、図2はバッテリ管理制御のフローチャート、図3はバッテリの電流値と温度に応じて可変設定される過放電閾値の特性図、図4はアイドルストップ後のバッテリの電圧値と電流値の変化の一例を示すタイムチャート、図5はバッテリの電流値と温度に応じて可変設定される過充電閾値の特性図、図6は回生開始後のバッテリの電圧値と電流値の変化の一例を示すタイムチャート、図7はインバータに対して通常時と充電休止時に指令する充電の電圧値の温度特性図である。
【0018】
図1において、符号1は車両前部に配置されたエンジンを示し、このエンジン1による駆動力は、エンジン1後方の自動変速装置(トルクコンバータ等も含んで図示)2からトランスファ3に伝達される。
【0019】
更に、このトランスファ3に伝達された駆動力は、リヤドライブ軸4、プロペラシャフト5、ドライブピニオン軸部6を介して後輪終減速装置7に入力される一方、リダクションドライブギヤ、リダクションドリブンギヤ、フロントドライブ軸を介して前輪終減速装置(以上、フロント駆動系は図示せず)に入力される。
【0020】
後輪終減速装置7に入力された駆動力は、後輪左ドライブ軸8rlを経て左後輪9rlに、後輪右ドライブ軸8rrを経て右後輪9rrに伝達される。前輪終減速装置に入力された駆動力は、前輪左ドライブ軸8flを経て左前輪9flに、前輪右ドライブ軸8frを経て右前輪9frに伝達される。
【0021】
次に、この車両に車載される各エレクトロニクス系について説明する。
本車両は、42Vの高電圧系と14Vの低電圧系の2つの電圧系統を有して構成されている。
【0022】
符号11は、インバータ装置を示し、このインバータ装置11には、エンジン1のクランクスプロケット12によりベルト13を介して回転軸端部のプーリ14が回転され発電を行うと共に、最初の始動時以外の再始動等におけるエンジン1の始動を行うモータ/ジェネレータ15が電気的に接続されている。
【0023】
インバータ装置11には、充放電可能な36Vバッテリ16と接続された42V系の配線が接続され、この42V系の配線には、最初のエンジン始動時のみ使用するスタータモータ17や、電動モータによるパワーステアリング装置18等が接続されている。
【0024】
また、インバータ装置11側面には、42V系の配線が接続されて、42V電圧を14V電圧に変換するDC−DCコンバータ19が略一体的に併設されている。このDC−DCコンバータ19に接続される配線には、充放電可能な12Vバッテリ20が接続され、その他各種ランプ、オーディオ、及び、後述する各制御装置等の14V負荷21が接続されている。
【0025】
車両には、車両の自動停止再始動制御を実行するアイドルストップ制御装置30が搭載されており、このアイドルストップ制御装置30には、エンジン1における周知の各種制御を実行するエンジン制御装置31、主に36Vバッテリ16の充電状態、放電状態を管理するバッテリ管理装置32等が、例えば、車両の通信ネットワークとしてISOの標準プロトコルの一つであるCAN(Controller
Area Network)等により接続されている。
【0026】
アイドルストップ制御装置30には、ブレーキペダル41の踏み込みストロークを検出するブレーキペダル踏み込み量センサ42(ブレーキ油圧を検出するものでも良い)、アクセルペダル43の踏み込みストロークを検出するアクセルペダル踏み込み量センサ44が接続されている。また、アイドルストップ制御装置30には、ハンドル角θHを検出するハンドル角センサ45、車速Vを検出する車速センサ46、選択されたシフトポジション(P、R、N、D、3速、2速、1速の各レンジ位置)を検出するシフトポジションスイッチ47、エンジン回転数NEを検出するエンジン回転数センサ48等が接続されている。
【0027】
そして、アイドルストップ制御装置30は、これらスイッチ、センサ類から得られる情報を基に、予め設定しておいたエンジン自動停止条件が成立しているか否か判定し、エンジン自動停止条件が成立している場合には、エンジン制御装置31に対して信号を出力してエンジン1を自動停止するアイドルストップを実行させる。
【0028】
また、アイドルストップ制御装置30は、アイドルストップ状態の場合にエンジン自動停止条件が不成立の状態となったら、エンジン制御装置31及びインバータ装置11に信号を出力してモータ/ジェネレータ15を駆動させ、エンジン1を再始動させる。ここで、エンジン自動停止条件とは、例えば、ブレーキペダル41が踏み込まれ、アクセルペダル43が踏まれておらず、シフトポジションがP、N、D、3速、2速、1速の何れかで、車速Vが略ゼロであり、且つ、バッテリ管理装置32からアイドルストップの禁止指令がない場合である。
【0029】
更に、アイドルストップ制御装置30は、予め設定しておいた回生条件(例えば、アクセルペダル43が踏まれておらず、エンジン回転数NEが1000rpm以上で、車速Vが40km/h以上で、駆動系とエンジン1とが連結され燃料が消費されていない条件)が成立する場合には、バッテリ管理装置32に対して回生指令を出力する。
【0030】
また、バッテリ管理装置32は、後述の図2に示すフローチャートに従って、36Vバッテリ16の充電状態、放電状態を管理すべく、36Vバッテリ16における温度を検出するバッテリ温度検出手段としてのバッテリ温度センサ51、36Vバッテリ16の電圧値を検出するバッテリ電圧検出手段としてのバッテリ電圧計52、36Vバッテリ16の電流値を検出するバッテリ電流検出手段としてのバッテリ電流計53が接続されている。
【0031】
バッテリ管理装置32は、充電に際しては、モータ/ジェネレータ15の発電トルクを直接的に制御することなく、目標とする電圧値をインバータ装置11に出力して充電を実行させるものであり、36Vバッテリ16は回生等により充電が行われるものであるため、通常は、予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値により充電が行われるようになっている。また、アイドルストップ制御装置30から回生指令がある場合には、通常より若干高い目標とする電圧値がインバータ装置11に対して出力される。
【0032】
また、バッテリ管理装置32は、36Vバッテリ16の電圧値から36Vバッテリ16が過放電状態と判定される場合には、後述の如く、アイドルストップ制御装置30に対してアイドルストップの禁止指令を出力し、更に、通常の充電電圧値よりも所定に高い電圧値で充電を実行する急速充電処理を実行して、放電状態を抑止させる。
【0033】
更に、バッテリ管理装置32は、36Vバッテリ16の電流値から36Vバッテリ16が過充電状態と判定される場合には、後述の如く、モータ/ジェネレータ15による発電をカットすることなく通常の充電電圧値よりも所定に低い電圧値を設定する充電休止処理を実行するようになっている。すなわち、バッテリ管理装置32は、過充電判定手段と、充電抑止処理実行手段の機能を備えて構成されている。
【0034】
次に、バッテリ管理装置32におけるバッテリ管理制御を図2のフローチャートで説明する。まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で制御に必要なパラメータを読み込み、S102に進み、36Vバッテリ16が過放電状態か否か判定する。
【0035】
これは、具体的には、まず、図3に示すように、予めメモリしておいた36Vバッテリ16の電流値と温度に応じた過放電閾値Vc1のマップを参照して、過放電閾値Vc1を設定し、この過放電閾値Vc1と36Vバッテリ16の電圧値とを比較することにより過放電状態か否か判定する。この過放電閾値Vc1は、温度が高くなるほど、高い値に設定され、また、電流値が高くなるほど電圧ドロップが大きくなるため低い値に設定されるようになっている。
【0036】
そしてすなわち、図4のタイムチャートの例に示すように、時間t0でエンジン1がアイドルストップし、電流値が一定の放電を続けていくと、36Vバッテリ16の電圧値は次第に低下していく。そして、この電圧値の低下が、上述の過放電閾値Vc1を下回ろうとした際(時間tvc1)に、36Vバッテリ16が過放電状態と判定するのである。
【0037】
S102の判定の結果、36Vバッテリ16が過放電状態と判定された場合は、S103に進み、アイドルストップ制御装置30に対してアイドルストップの禁止指令を出力し、放電を抑止させる。
【0038】
次いで、S104に進んで、36Vバッテリ16に対する急速充電の処理を行う。これは、図7に示す、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)よりも所定に高い電圧値(例えば、+2V)をインバータ装置11に出力して充電を実行させる。尚、この急速充電の処理は、余り長い時間の間、実行すると、36Vバッテリ16の温度が上昇して活性化しすぎる虞があるため、10分程度のみに限定して行うことが望ましい。
【0039】
そして、S105に進み、36Vバッテリ16の電圧値が中間状態、すなわち、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)に到達したか否か判定し、中間状態に到達していないのであれば、S104の急速充電の処理を再度実行し、中間状態に到達しているのであればS112へと進む。
【0040】
一方、S102で36Vバッテリ16は、過放電状態ではないと判定した場合は、S106に進み、36Vバッテリ16が過充電状態か否か判定する。
【0041】
これは、具体的には、まず、図5に示すように、予めメモリしておいた36Vバッテリ16の電圧値と温度に応じた過充電閾値Ic1のマップを参照して、過充電閾値Ic1を設定し、この過充電閾値Ic1と36Vバッテリ16の電流値とを比較することにより過充電状態か否か判定する。この過充電閾値Ic1は、温度が高くなるほど、高い値に設定され、また、電圧値が高くなるほど大きな電流が流れるため、高い値に設定されるようになっている。
【0042】
そしてすなわち、図6のタイムチャートの例に示すように、時間t0で回生による充電が開始され、一定の電圧値が設定されて36Vバッテリ16に充電が始まると、次第に36Vバッテリ16に流入される電流値が小さくなっていく。そして、この電流値の低下が上述の過充電閾値Ic1を下回ろうとした際(時間tic1)に、36Vバッテリ16が過充電状態と判定するのである。
【0043】
こうして、S106の判定の結果、36Vバッテリ16が過充電状態と判定された場合は、S107に進み、36Vバッテリ16の充電休止の処理を行う。これは、図7に示す、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)に対し、完全に充電をカットしてしまうのではなく、予め設定しておいた50%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)で充電するように、インバータ装置11に出力するのである。
【0044】
そして、S108に進み、36Vバッテリ16の電圧値が中間状態、すなわち、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)に到達したか否か判定し、中間状態に到達していないのであれば、S107の充電休止の処理を再度実行し、中間状態に到達しているのであればS112へと進む。
【0045】
S106で、36Vバッテリ16が過充電状態ではないと判定された場合、S109に進み、その他の異常状態が有るか否か判定され、その他の異常状態がある場合にはS110に進み、その他の異常状態がなければS112へと進む。このその他の異常とは、例えば、36Vバッテリ16の電圧値、電流値、或いは、温度が、通常ではとりえない値を示す場合等で、このような異常がある場合には、S110に進み、正常化処理、例えば、バッテリ温度センサ51、バッテリ電圧計52、バッテリ電流計53の結線確認の自己診断プログラムの実行等を行って、S111に進む。
【0046】
S111では、正常状態に復帰したか否か確認し、正常状態に復帰していないのであれば、S110に戻って、再び、必要な正常化処理を行い、正常状態に復帰している場合にはS112に進む。
【0047】
S105、S108、S109、S111の何れかからS112に進むと、アイドルストップ制御装置30から回生指令が出力されているか否か判定される。そして、回生指令が出力されていないのであれば、S113に進み、図7に示すような、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)で充電するようにインバータ装置11に出力しプログラムを抜ける。
【0048】
一方、アイドルストップ制御装置30から回生指令が出力されている場合にはS114に進み、回生時の電圧値、例えば、図7に示す、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)よりも5V高い値をインバータ装置11に出力しプログラムを抜ける。このように、回生時の電圧値を、通常時より若干高い電圧に設定するだけで、通常時より5V高い値になった時点でモータ/ジェネレータ15は、発電をしなくなるため、モータ/ジェネレータ15をトルクコントロールすることによる誤差を簡単に排除している。
【0049】
以上のように、本発明の実施の形態によるバッテリ管理装置32によれば、通常の充電の目標とする電圧値は、予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)で充電するようになっているため、頻繁に回生、アイドルストップが行われ、充放電が常時行われる車両のバッテリの管理を、単に、その電圧値を定めるだけで、複雑な演算や多くのパラメータを考慮することなく、誤差を少なく正確に行うことが可能になっている。また、頻繁な回生、アイドルストップが可能であるため燃費の大きな向上を図ることが可能となっている。例えば、充電の目標とする電圧値が、満充電に近い値となっている場合では、誤差により、過充電となってしまう場合も想定され、また、満充電を目標とすると、エネルギを回生することができない場面も多くなり、燃費の向上があまり期待できない虞がある。逆に、充電の目標とする電圧値が低すぎる場合では、頻繁にアイドルストップが行われた場合、アイドルストップ後の再始動をスムーズに行うことが難しくなる虞があるが、本実施の形態のように、予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)で充電するようになっていれば、このような問題も生じることがない。
【0050】
また、本実施の形態によれば、回生時の充電を、単に電圧値を通常時よりも若干高い電圧値で設定するようになっているので、通常時より若干高い電圧値になった時点でモータ/ジェネレータ15は、発電をしなくなるため、モータ/ジェネレータ15をトルクコントロールすることによる誤差を簡単に排除することができる。そして、充電が進行するに従い、36Vバッテリ16の電圧値が高くなり発電量が減少されるため、36Vバッテリ16の劣化を防ぎつつ、また、モータ/ジェネレータ15のON−OFFのトルクショックの無い、制御が実現されるようになっている。
【0051】
更に、本実施の形態によれば、36Vバッテリ16の過放電状態を単に電圧値を、過放電閾値Vc1と比較することで判定できるようになっているため、36Vバッテリ16の過放電状態を、複雑な演算や多くのパラメータを考慮することなく、誤差を少なく正確に判断でき、36Vバッテリ16の耐久性の劣化や、アイドルストップ車の再始動性の悪化を確実に防止することが可能となっている。そして、36Vバッテリ16の過放電状態を検出した場合には、アイドルストップの禁止指令を出力し、放電状態を確実に抑制できるようになっている。また、更に、急速充電処理を行うことにより、車両停止等に備えて、確実に36Vバッテリ16の性能劣化を防止できるようになっている。
【0052】
また、本実施の形態によれば、36Vバッテリ16の過充電状態を単に電流値を、過充電閾値Ic1と比較することで判定できるようになっているため、36Vバッテリ16の過充電状態を、複雑な演算や多くのパラメータを考慮することなく、誤差を少なく正確に判断でき、36Vバッテリ16の耐久性、信頼性の劣化等を確実に防止することが可能となっている。そして、36Vバッテリ16の過充電状態を検出した場合には、36Vバッテリ16の充電休止の処理、すなわち、通常の充電の目標とする予め設定しておいた70%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)に対し、完全に充電をカットしてしまうのではなく、予め設定しておいた50%のバッテリ残存容量に相当する電圧値(温度に応じて可変設定される値)で充電するように、インバータ装置11に出力する。このように、発電電圧を、降下させて設定することにより、36Vバッテリ16から、急速に放電が行われ、充電受け入れ分を確保することができる。また、モータ/ジェネレータ15による発電を完全にカットしないことにより、急激な電装負荷変動から36Vバッテリ16を保護することができ、発電のON−OFFによるショックも緩和することが可能で、車両の乗り心地を良好に保つことができる。
【0053】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、簡単、且つ、精度良く、バッテリの過充電状態を検出し、バッテリの耐久性、信頼性の劣化を防止することができ、また、発電機のON−OFFによるショックが少なく乗り心地を良好に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両のバッテリ管理装置を有する車両全体の概略説明図
【図2】バッテリ管理制御のフローチャート
【図3】バッテリの電流値と温度に応じて可変設定される過放電閾値の特性図
【図4】アイドルストップ後のバッテリの電圧値と電流値の変化の一例を示すタイムチャート
【図5】バッテリの電流値と温度に応じて可変設定される過充電閾値の特性図
【図6】回生開始後のバッテリの電圧値と電流値の変化の一例を示すタイムチャート
【図7】インバータに対して通常時と充電休止時に指令する充電の電圧値の温度特性図
【符号の説明】
1 エンジン
11 インバータ装置
15 モータ/ジェネレータ
16 36Vバッテリ
30 アイドルストップ制御装置
31 エンジン制御装置
32 バッテリ管理装置(過充電判定手段、充電抑止処理実行手段)
51 バッテリ温度センサ(バッテリ温度検出手段)
52 バッテリ電圧計(バッテリ電圧検出手段)
53 バッテリ電流計(バッテリ電流検出手段)
Claims (4)
- バッテリ電流を検出するバッテリ電流検出手段と、
予めバッテリが過充電状態であることを判定する上記バッテリ電流の過充電閾値を設定し、該過充電閾値と上記バッテリ電流とを比較して上記バッテリが過充電状態であるか否か判定する過充電判定手段と、
上記過充電判定手段で上記バッテリが過充電状態と判定した際に上記バッテリの充電状態を抑止する処理を実行させる充電抑止処理実行手段と、
を備えたことを特徴とする車両のバッテリ管理装置。 - バッテリ電圧を検出するバッテリ電圧検出手段と、バッテリ温度を検出するバッテリ温度検出手段とを備え、
上記過充電判定手段で設定する上記過充電閾値は、上記バッテリ電圧と上記バッテリ温度の少なくともどちらかに応じて可変設定することを特徴とする請求項1記載の車両のバッテリ管理装置。 - 上記充電抑止処理実行手段は、上記過充電判定手段で上記バッテリが過充電状態と判定した際には、上記バッテリに設定する充電電圧値を通常の充電電圧値よりも所定に低い充電電圧値とする充電休止の実行指令を出力することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両のバッテリ管理装置。
- 上記充電休止は、少なくとも予め設定しておいたバッテリ残存容量を示すバッテリ電圧値となった場合に終了させることを特徴とする請求項3記載の車両のバッテリ管理装置。
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Cited By (3)
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JP2022554286A (ja) * | 2019-11-01 | 2022-12-28 | ザ・ノコ・カンパニー | 充電中に温度補償を提供するための温度センサを有するバッテリ充電装置、およびバッテリ充電装置の充電を補償するために消耗又は放電したバッテリの温度を測定する方法。 |
-
2003
- 2003-02-13 JP JP2003035603A patent/JP2004248406A/ja active Pending
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