JP2004245024A - 杭基礎の構築装置および杭基礎構築工法 - Google Patents
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Abstract
【課題】杭を打設したのみでは信頼性が少ない軟弱な地盤に対して、杭孔の下部にモルタル等による膨大部を容易に構築できて、杭基礎の信頼性を増大できるようにする。
【解決手段】掘削装置20では、掘削ヘッド21を中ロッド24の下部に設け、その上部に袋部材30を設けて、小径パイプ26から流体を供給させるようにする。また、前記袋部材30をケーシング22によりカバーする状態で掘削作業を行い、所定の深さまで掘削してから、ケーシング22を上昇させて袋部材30を露出させ、流体を供給して袋部材による膨大部を形成した後で、前記袋部材の流体を排除しながらモルタルを充満させて、杭の支持部材を構築する。
【選択図】 図2
【解決手段】掘削装置20では、掘削ヘッド21を中ロッド24の下部に設け、その上部に袋部材30を設けて、小径パイプ26から流体を供給させるようにする。また、前記袋部材30をケーシング22によりカバーする状態で掘削作業を行い、所定の深さまで掘削してから、ケーシング22を上昇させて袋部材30を露出させ、流体を供給して袋部材による膨大部を形成した後で、前記袋部材の流体を排除しながらモルタルを充満させて、杭の支持部材を構築する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅等の建物の基礎を支持する杭基礎に関し、特に、既成の杭を地盤に立設するに際して、杭の下部に強固な膨大部を形成して、基礎杭による支持力を増大させる基礎の構築装置および構築工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、住宅やその他の小規模の建物等の構造物を構築するに際しては、その構築場所の地盤の強度等の条件を調査し、その地盤が構造物を支持することができないと判断された場合には、その支持力を増大させる工事を行っている。前記地盤の支持力を増大させるためには、杭等を打設することや柱状の地盤改良を行うこと、または、地盤を圧密して支持強度を増大させる等の手段が一般に用いられている。前記地盤の支持力を増大させる工法のうち、最も簡便なものは杭打ち方式であるが、前記杭基礎を構築するに際しては、コンクリート杭の他に、鋼管杭を打設する工法は近年多く用いられるようになっている。
【0003】
前記杭基礎を構築するに際して、軟弱な地盤に杭を打設したのみでは、十分な支持強度を得ることができない場合が多くあるので、そのような強度の弱い地盤に対しては、立設する杭の下部にモルタルなどによる球根状の大径部を構築して、その大径部の上に杭を立設すること等が行われている。例えば、地盤の土にセメントミルク等を混合して構築する場所打ち杭においては、掘削機で所定の径の杭孔を構築し、その掘削した孔の土にセメントミルクのような固化材を混合して、所定の径のソイルセメントコラムを構築するが、そのコラムの下部には膨大部を構築して、杭の支持強度を大きくするような手段が用いられている。(例えば、特許文献1を参照)
【0004】
【特許文献1】
特開平10−46567号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記支持力を増大させる手段を付加して設けた杭を用いる場合に、杭に突起部材を溶接等により取り付ける加工を必要とするために、パイプをそのまま使用する場合に比較して、の加工コストが増加するという問題がある。前記パイプの周囲や下面に突起部材を設けた杭を打設するに際しては、杭打ち機にも回転機構と押圧機構とを設けるので、杭打ち機の構造が複雑で、杭の打設工事の手間と、打ち込みの作業に時間とを必要とするという課題が残っている。そして、杭を回転手段を用いて打ち込みを実施するに際しては、フライト等の突起部材が杭孔の周囲の地盤を破砕するので、杭の周囲面と土の壁の間の摩擦係数が大幅に低下する等の問題もある。さらに、前記杭に設ける突起部材が螺旋状の部材(スクリュー)である場合には、その突起部材の下面は平面でないために、掘削面との接地は面ではなく線に近いものとなるために、杭の構築後に荷重が付与されると初期沈下が大きい。したがって、従来の杭基礎の設計に際しては、突起部材を含めた面積の半分が有効に作用するものとして計算しているのが現状であり、杭の強度を十分に利用出来ていないものである。その他に、従来の杭基礎の構築工法にあっては、掘削した孔から余分な土を排除する必要があり、その土を指定された場所に処分しない等の手抜き工事が、公害等の問題を発生する原因とされている等の問題となり、土を捨てなくても良い工法が望まれている。
【0006】
本発明は、前記杭を用いた地盤の支持力を向上させる工事を簡単に行い得て、杭の支持強度を向上させ得るような基礎とその構築工法、および、杭孔の掘削に際して余分な土を排除しない工法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、地盤に垂直に杭孔を掘削し、前記掘削した孔に既成の杭を埋設して構築する杭基礎の構築装置に関する。請求項1の発明は、掘削ヘッドを下端部に設け、前記掘削ヘッドの上部に噴出孔を装備し、上端部にモルタル注入用のパイプを接続するとともに、前記噴出孔の上部に袋部材を取付けてなる中空な中ロッドと、前記中ロッドに対して所定の間隔を介して設け、前記中ロッドに対して上下方向に移動を許容し、駆動源に接続されるケーシングと、前記中ロッドの内部に同軸に配置される小径パイプと、前記中ロッドの下部に取付けられ、前記小径パイプを介して供給される流体により掘削孔の下部で膨大部を構成可能な袋部材とを有し、杭孔の掘削と、掘削した杭孔の下部にモルタルによる膨大部を形成して、前記掘削孔に挿入する杭の下部を前記膨大部により支持するために用いることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、前記中パイプの下部に取付けられる袋部材は、ゴムまたはゴムのような弾性体で構成され、掘削ヘッドにより杭孔を構築する際には、ケーシングにより覆われた状態とされ、前記杭孔を所定の深さまで掘削した後に、前記袋部材の長さに対応する距離だけケーシングを上昇させて、地盤中に膨大部を形成可能に構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、地盤に垂直に杭孔を掘削し、前記掘削した孔に既成の杭を埋設して構築する杭基礎の構築工法に関するもので、掘削ヘッドを用いて掘削する杭孔の土を、前記杭孔の周囲に圧密しながら前記杭孔の掘削を行う工程と、前記掘削した杭孔の下部で、流体を袋部材に供給して、前記袋部材を膨脹させることにより膨大部を形成する工程と、前記膨大部の流体を排除しながら、前記袋部材の外側からモルタルを供給してモルタルによる膨大部を構築する工程と、前記モルタルによる膨大部を構築した後で掘削装置を引上げて、杭孔に既成の杭の下部を膨大部に埋設する工程を経て、前記杭の支持力を増大させることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、掘削ヘッドを下端部に設け、前記掘削ヘッドの上部に噴出孔を装備し、上端部にモルタル注入用のパイプを接続するとともに、前記噴出孔の上部に袋部材を取付けてなる中空な中ロッドと、前記中ロッドに対して所定の間隔を介して同軸に配置し、前記中ロッドに対して上下方向に移動を許容するとともに、駆動源に接続されるケーシングと、前記中ロッドの内部に同軸に配置される小径パイプと、前記中ロッドの下部に取付けられ、前記小径パイプを介して供給される流体により掘削孔の下部で膨大部を構成可能な袋部材とを設けた掘削装置を用い、杭孔を掘削した後で、ケーシングを所定の間隔だけ引上げてから、袋部材を膨脹させて膨大部を形成し、前記膨大部にモルタルを充満させた後で、掘削装置を抜き出し、前記掘削した杭孔の膨大部の中に所定の深さまで達するように、既成の杭を立設して、前記杭の支持力を増大させることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、前記袋部材に供給する流体として水を用い、前記袋部材に水を供給して膨大部を構築した後で、モルタルを圧送して前記袋部材の水をモルタルの圧力により排除ながら、モルタルによる膨大部を構築することを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、地盤に垂直に杭孔を掘削し、前記掘削した孔に既成の杭を埋設して構築する杭基礎の構築装置に関するもので、掘削ヘッドを下端部に設ける中ロッドと、前記中ロッドを通して接続し、前記掘削ヘッドの上部に所定の間隔を介して設けた噴出孔とモルタル供給手段の間を接続する小径パイプと、前記噴出孔の上部に上部分を固定し下部を拘束しない状態で設ける弾性を有する袋部材を設け、前記中ロッドに対して所定の間隔を介して設けるとともに、前記中ロッドに対して上下方向に移動を許容し、駆動源に接続されるケーシングとを有し、前記中ロッドに設けた掘削ヘッドと、ケーシングとを連動させてまたは別個に上下動させる手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、地盤に垂直に杭孔を掘削し、前記掘削した孔に既成の杭を埋設して構築する杭基礎の構築装置に関するもので、掘削ヘッドを下端部に設ける中ロッドと、前記中ロッドを通して接続し、前記掘削ヘッドの上部に所定の間隔を介して設けた噴出孔とモルタル供給手段の間を接続する小径パイプと、前記噴出孔の上部に上部分を固定し、下部を拘束しない状態で設ける弾性を有する袋部材と、前記中ロッドに対して所定の間隔を介して設けるとともに、前記中ロッドに対して上下方向に移動を許容し、駆動源に接続されるケーシングと、前記中ロッドに設けた掘削ヘッドと、ケーシングとを連動させてまたは別個に上下動させる手段を設け、掘削装置により杭孔を掘削した後で、前記杭孔内でケーシングを所定の高さまで上昇させ、その後に袋部材の上部からモルタルを供給して、前記袋部材を拡開させて、杭孔の上部を前記袋部材により封止しながら、前記供給されるモルタルにより周囲の土を圧密しながら膨大部を形成し、前記モルタルによる膨大部を構築した後で掘削装置を引上げて、杭孔に既成の杭の下部を膨大部に埋設する工程を経て、前記杭の支持力を増大させることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、前記袋部材を、中ロッドへの取付位置から所定の長さの略スカート状の部材として設け、前記袋部材の固定部の直下部に開口する小径ロッドを通して、注入されるモルタルが杭孔に漏れることを前記袋部材により防止しながらモルタルを充満させて、膨大部として形成することを特徴とする。
【0015】
前述したように、本発明の工法は、鋼管杭やコンクリート杭等の既成の杭を用いて支持基礎を構築するものであるから、杭孔の構築に際して土を排出することがなく、杭孔の下部に構成する膨大部に杭の下部を挿入して一体化させ、杭の支持力を大幅に増大させることができる。また、前記掘削装置を用いて杭孔を掘削し、その杭孔の下部に膨大部を形成することは、袋部材に注入する水のような流体の圧力を調整することで、任意の大きさに形成することが可能であり、杭本体の地盤との摩擦力に加えて、膨大部での支持力を増加させることで、杭基礎の信頼性を向上させることが可能となる。そして、前記杭基礎の下部にモルタル等による膨大部を構築することにより、杭の支持を強固な固化層により行い得るので、杭の強度の特性をそのまま利用できて、基礎の構築を容易に行うことが可能で、杭の強度をそのまま有効に利用できる。さらに、前記流体を補助手段して用いることの他に、下端部を開放した状態の袋部材に対して直接モルタルを注入して膨大部を構成する場合には、掘削装置の構造を簡素化することができ、作業性を向上させることができる。したがって、前述したようにして構築し、杭の下部にモルタルの膨大部を一体に設けた杭基礎では、膨大部による支持作用と杭孔の周囲から打設した杭を押圧する力が作用し、杭が負担する荷重を大きな値として設計することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図示される例にしたがって、杭を用いた基礎の構築装置とその工法を説明する。図1に示す例は、基礎杭38を工事地盤に打設する例を示しているもので、基礎杭38を構築する作業装置1としては、従来より一般に使用されているような作業車両2を用いる。基礎杭38の打設を行うために、ガイドポスト3に沿わせて上下動させる駆動装置10を設け、前記ガイドポスト3を作業車両2のアーム5と補助アーム5aにより支持している。また、前記ガイドポスト3の頂部にはヘッド部材4を配置し、作業車両2に設けているウインチ7によりワイヤ8を駆動して、昇降部6により駆動装置10を上下動させながら、杭孔を用いて基礎杭38を構築のために、以下に説明する掘削装置20による杭孔の掘削作業を行う。なお、前記駆動装置10に対して、作業車両2に設けた油圧ポンプからの油圧供給系11を接続しているが、前記駆動装置10の駆動系は、作業車両2に設けている油圧ポンプを用いることの他に、車両とは別に装備する油圧発生装置を用いることも可能である。
【0017】
なお、前記杭孔の下部に膨大部を構築する工法は、その対象とする地盤が、単純に杭を打設したとしても、その杭と地盤との摩擦力のみでは、上部の建物の重量を支えることができないような、非常に軟弱な地盤を対象とする。すなわち、従来の地盤の土に硬化材を混合する場所打ち杭を施工する際に、セメントミルクの注入量が、想定した量に比較して増大するような、水の含有率が多い地層、または隙間が多い地層の例が多くある。そのような軟弱な地盤に対しては、場所打ち杭を構築することや既成の杭を打設する等の従来の工法を適用することでは、基礎の信頼性を維持できないという問題があった。
【0018】
前記作業車両2は、自走式の車両として構成されているもので、一般的なクローラにより走行する車両には、油圧装置を装備して駆動装置10に向けて油圧系統11を接続し、その駆動源として用いるようにする。前記作業車両に加えて、地上設備として液体供給装置12とモルタル供給装置14を配置しているもので、前記液体供給装置12では、水やその他の流体を掘削装置20の下部に向けて圧送して、杭孔35の下部に膨大部を形成するために、パイプ13を介して圧力を加えた液体を供給するように構成している。
【0019】
前記液体供給装置12で水を用いる場合には、水タンクと圧送用のポンプ等を組み合わせた装置として構成することができる。また、モルタル供給装置14からは、掘削装置20に向けて供給ホース15を通してモルタル等を供給するもので、前記モルタル供給装置14は、モルタル製造プラントと、圧送ポンプ等を組み合わせて構成するが、前記水とモルタルの供給装置等は、従来公知の任意の装置を用いることが可能である。さらに、前記作業車両と、液体供給装置12およびモルタル供給装置14の駆動を制御するために、地盤の地質に対応させて、あらかじめ設定している制御データにもとづいて、各作業部材に対する制御を行う制御装置16を用いている。
【0020】
そして、前記制御装置16においては、モニターとコントロール手段とを組み合わせた制御手段17を車両に設けておき、車両のオペレータがモニターを見ながら、各作業部材に対する制御の動作を、端末装置18……の各々に対して随時行うようにする。なお、前記液体供給装置12とモルタル供給装置14の、注入装置の各々において、前記制御手段ではポンプの駆動とバルブを開閉する流量調整のように、すべての制御の動作を行うことができる。また、前記袋部材に対して流体を袋部材に向けて供給する際の圧力や、モルタルを注入して膨大部を構築する際の圧力等は、工事の事前のボーリング等による事前の地質調査で地質や地盤の強度等のデータを得ておき、それ等のデータにもとづいて行うことが可能である。前記注入作業に際して、オペレータは、前記制御装置のモニターを見ながら微調整を行うことで、作業を効率良く行うことができる。
【0021】
また、前記作業装置1においては、前記作業車両2に直接組み合わせて設けるガイドポスト3や、駆動装置10の他に、液体供給装置12とモルタル供給装置14とを組み合わせて設け、掘削装置20の掘削ヘッド21により杭孔35を掘削してから、前記液体供給装置12とモルタル供給装置14とを作動させて、杭孔35の下部に膨大部を形成するようにしている。前記駆動装置10により回転駆動される掘削装置20は、図2に示されるように構成されているもので、大径のケーシング22の内部には、中間接続部材23により駆動力が伝達される中ロッド24を配置して、前記中ロッド24の下部に設けている掘削ヘッド21を、杭孔の中心軸に対して回転させるように設けている。
【0022】
前記ケーシング22と同軸に設けられる中ロッド24は、ケーシング22に対して、スライド可能に設けられている。そして、後述するように、所定の深さまで杭孔35を掘削した後で、掘削ヘッド21と中ロッド24をその掘削した位置に残して、ケーシング22のみを所定の距離だけ引上げて、後述するように、杭孔の下部に所定の大きさの膨大部を構築することができる。なお、前記ケーシング22のみを引上げることを許容するためには、ケーシング22と中ロッド24との間での駆動伝達の機構を、前記中間接続部材23に設けておくことができ、その他に、従来公知の任意の構成の駆動伝達手段を設けておくことができる。
【0023】
前述したような構成を有する作業装置1を用いて、杭基礎を構築するに際しては、図2に示すように、最初に掘削装置20の掘削ヘッド21により所定の深さまで杭孔を掘削し、その掘削した杭孔の下部にモルタル等による膨大部を構築する。前記掘削ヘッド21により杭孔を掘削するに際しては、前記掘削ヘッド21により掘削した孔の土を、孔の周囲に押圧して圧密させた壁を形成する機構を用いているもので、従来の掘削装置の場合のように、掘削ヘッドにより掘削して揉みほぐした土を、スクリューにより地上に排出する方式を用いているのではない。つまり、前記掘削ヘッド21では、ヘッドの先端部で土をほぐす作用を行い、そのヘッドの上部では、土を孔壁の周囲に向けて圧密させるような作用を行うものとして構成する。
【0024】
そして、前記杭孔の下部に構築した膨大部のモルタルが硬化する前に、鋼管杭やコンクリート杭等を、前記膨大部の中に打ち込んで、膨大部と杭とを複合して一体化した杭基礎として構築できるようにするものである。前記杭の下部に、モルタル固化部としての膨大部を一体に設け、杭基礎の支持力を増大させる部材を構築するために、前記掘削装置20に対して掘削のための掘削ヘッド21と、袋部材を膨らませるための液体供給装置12、前記袋部材により大きく形成される膨大部に、モルタルを供給するためのモルタル供給装置14とを設けているものである。以下に、図2から図3に示す例のように、前記掘削装置20を用いて杭孔を構築した後で、膨大部を構築するための機構を説明する。なお、前記図2および図3に示す例において、昇降部6に支持される駆動装置10には、図示するように中ロッド24と小径パイプ26が上側に突出されて、スイベルにより各パイプを回転可能に支持し、前記ガイドポスト3に沿わせて前記駆動装置10を上下動させるように設けている。
【0025】
前記中ロッド24の上部には、供給ホース15を接続しており、下部の掘削ヘッド21の上部分に対応する位置には下端部排出口25を設けて、図1のモルタル供給装置14から送られるモルタルを、杭孔35の下部に向けて噴出させるようにしている。また、前記中ロッド24の中には、小径パイプ26を同軸に配置しており、前記小径パイプ26の上部にはパイプ13を接続し、下部に設けている吐出口27から圧力水等の液体を噴出させて、前記小径パイプ26の下部に取付けている袋部材30を膨らませるようにする。前記袋部材30は、ゴム等のような弾性を有する袋として構成されているもので、掘削装置20の下部に畳んだ状態で設けられるが、掘削装置20により杭孔を掘削する際には、ケーシング22の内部に収納された状態に保持される。前記袋部材30は、中ロッド24に対して上下の固定手段31、32により取付けられており、小径パイプ26に設けた噴出口27を介して、前記袋部材30に対する液体の給排が可能に構成している。
【0026】
前記掘削装置20により、所定の径の杭孔35を掘削した後で、図3に示すように、掘削ヘッド21と中ロッド24を残して、ケーシング22を所定の高さまで引上げて、袋部材30をケーシングから露出させるようにする。そして、前記袋部材30に対して。液体供給装置12からの圧力水を、パイプ13から小径パイプ26を通して、噴出口27から噴出させることにより、周囲の地盤を押し広げるように、前記袋部材30を図の仮想線で示すように大きく膨脹させる作用を行わせる。前記袋部材30を膨脹させる作用は、供給される水等の液体に付与される圧力によって行われるもので、軟弱な地盤や水分の多い、または空隙の多い地質では、その袋部材30内部に付与される圧力の大きさにしたがって、任意の大きさの膨大部37が形成される。
【0027】
前記図3に示されたようにして、杭孔35の下部で袋部材30を膨らませて、大きな空隙を構築してから、図4に示すように、中ロッド24の下部の下端部排出口25からモルタル36を噴出させて、前記袋部材30の下部に向けてモルタルを充満させるようにする。前記モルタルを噴出させる際には、袋部材30に供給した圧力よりも若干大きな圧力でモルタルを供給するようにしており、また、袋部材30の液体はパイプ13に設けたバルブを通して排出させる状態とする。そして、前記袋部材30の下部からモルタル36を供給することにより、袋部材30の中の液体を排出しながら、その空隙を埋める状態で膨大部を構築する。前述したようにして、モルタルを供給することで、図5に示すように膨大部37をモルタルによる充満させる作業を継続し、ほぼ完全にモルタルが充満された状態で、前記掘削ヘッド21と中ロッド24および袋部材30を引上げる。なお、前記掘削ヘッド21等を引上げる作業の途中で、前記膨大部37に空隙が形成されると予測される場合には、前記掘削部材を引上げながら余分にモルタルを供給する。
【0028】
前述したようにして、掘削装置20を完全に引上げてから、その杭孔35には鋼管杭やコンクリート杭等の既成の基礎杭38を打ち込み、図6に示すように、前記基礎杭38の下部を膨大部37に埋没させて、一体化した杭基礎を構築する。したがって、前記基礎杭38を膨大部37と一体化し、膨大部37による支持力を大きくした場合には、従来の摩擦杭のみを用いる場合に比較して、その杭の支持力を大きく増加させることが可能となる。また、前記膨大部に充満させたモルタルに、杭の下部を埋没することで、杭基礎が支持する上部の建物の荷重を、前記膨大部が広い面積で受けることが可能となり、杭基礎の信頼性を向上させることができる。
【0029】
なお、前記掘削装置において、構築した杭孔に立設する既成の杭の径に対して、ほぼ同径の孔として構築するものであるから、前記掘削ヘッドの径は立設する杭に応じて、その太さまたはパイプ等の肉厚を適宜選択して用いる。そして、前記ケーシングの外径も、前記掘削ヘッドの径とほぼ同径に形成することで、後で立設する杭が孔壁に接するようにして、摩擦による支持力をも有効に作用させるようにする。また、前記掘削ロッド部において、駆動装置からの回転力は、ケーシングに対して伝達すること、または、中パイプに対して駆動伝達すること等の任意の駆動伝達方式を用いることが可能であり、前記杭孔の下部に膨大部を構築する際には、中パイプに対してケーシングを引上げる機構も、特に限定するものではない。さらに、前記掘削装置を構成する中パイプや小径パイプの径等は、任意に構成することが可能であり、前記パイプを通して供給する流体やモルタル等の材料は、従来より用いられているポンプで圧送が可能なものであれば良い。
【0030】
(実施例2)
図7に示す例は、前記図2に示した掘削装置の構造を若干変更しているもので、掘削装置20aの大径のケーシング22の内部には、掘削ヘッド21を先端部に設けた中ロッド24を配置している。前記中ロッドは所定の径を有する中空なロッドとして構成されているもので、その中空部の内部には小径パイプ26を同軸に配置しており、前記小径パイプ26の上部にはモルタル供給装置からの供給ホース15を接続している。そして、前記小径パイプ26の下端部は噴出口27に接続されて、中ロッドに支持されている袋部材30aの内部にモルタルを噴出させるように構成される。
【0031】
前記袋部材30aは前記実施例と同様に、内部に圧送されるモルタルの圧力に耐え得て、周囲の土を圧密させる作用を発揮可能なものであり、ゴム等のような弾性体で構成された略スカート状のものを用いている。そして、前記袋部材30aの上端部を、前記噴出口27の上部で固定部31を用いて取り付け、その袋部材30aの下部は固着せずに、任意に拡開可能なものとされるもので、固定部31の下部から、掘削ヘッドとの間隔の略半分程度の長さのものとして構成される。なお、前記袋部材30aは前記実施例の場合とは異なり、袋部材の固定部の直下部からモルタルを充満させて、略スカート状に拡開させる状態で、図3に説明した膨大部と同様に、モルタルの球状の膨大部を形成可能な大きさのものとして構成されたものを用いるもので、大きな袋を折り畳んだ状態で、中ロッド24のまわりでケーシング22の中に収容している。
【0032】
前記実施例の場合と同様にして、前記掘削装置20aにより杭孔を掘削するに際して、中ロッド24とケーシング22とを連動回転させて杭孔を掘削する作業を行い、その後に、ケーシング22の下端部が前記固定部31より上になるように引上げて、袋部材30aが掘削した杭孔の中に露出される状態とする。ついで、モルタル供給装置から小径ロッド26を通してモルタルが供給されて、噴出孔27から袋部材30aの上部に向けて供給され、図8に示すように、袋部材30aを上部から膨脹させるようにする。前記袋部材30aに対してその上部からモルタルが噴出されると、袋部材の上部が膨脹されるので、前記杭孔に連通する部分を、前記袋部材30aを拡開させることにより封止し、袋部材とその下部の土をモルタルにより押圧して、周囲の土を圧密しながら膨大部を形成させるようにする。
【0033】
本実施例では、前記袋部材30aの下端部が規制されていないことから、ある程度の大きさの膨大部が形成された後では、袋部材30aの下端部の拡開された部分からモルタルが噴出されて、モルタルが直接土を圧密しながら膨大部を形成する作用を行うものと考えられる。そこで、前述したように、モルタルが袋部材30aの外側に噴出する状態となれば、モルタルの圧送の圧力が急激に変化する等の、定常な動作状態と異なる圧送圧力が検知されるので、そのような膨大部の形成作用は、モルタル圧送装置での圧力の変化等をモニターすることにより検知可能である。
【0034】
また、膨大部を形成する地盤の状態も、モルタルの圧送状態の検知情報により判断可能であり、異常状態等が発生した時には、モルタル供給装置の動作を停止させる等の処理を行うと良い。前記袋部材30aの内部にモルタルを充満させて所定の大きさの膨大部を形成した後で、ケーシング22と中ロッド24および、掘削ヘッド21と袋部材30aとをそのまま引上げると、流動性を有するモルタルはそのまま孔の底に残ることになる。なお、前記モルタルを直接注入して形成する膨大部は、その地盤の特性により、球根状等の良好な形状のものとなることがなくとも、後で打ち込んだ杭を膨大部で支持することが可能であるから、前記杭基礎での建物の支持力を十分に発揮できるものとなる。
【0035】
その後に、前記杭孔の下部に構築した膨大部のモルタルが硬化する前に、鋼管杭やコンクリート杭等を、前記膨大部の中に所定の深さで入り込むように打ち込んで、硬化するモルタルと杭とを一体化させる。そして、前記モルタルが固化した膨大部37と杭38とを複合して、一体化された杭基礎を、図9のようにして構築する。前述したようにして構築した杭基礎においては、掘削した杭孔35は、掘削ヘッド21により土が周囲に圧密された状態とされるものであるから、掘削装置を引き抜いた後に打設する既成の杭に対して、孔の壁の圧密されている土が、打設した杭の周囲を押圧する作用を行う。したがって、前述したようにして構築し、杭の下部にモルタルの膨大部を一体に設けた杭基礎では、膨大部による支持作用と杭孔の周囲から打設した杭を押圧する力が作用し、杭が負担する荷重を大きな値として設計することが可能となる。
【0036】
なお、前記膨大部と一体化して杭基礎を構築するための装置において、袋部材としては、繊維の層等の補強手段をゴム層の中に一体化した弾性を有する袋を用いることができるもので、その他に、圧送するモルタルや流体の圧力に耐え得るものであれば、任意の弾性材料を用いて構成することが可能である。また、前記袋部材を中ロッドに固定する手段としては、任意のバンド状の拘束部材を用いることができるもので、その拘束位置に対応させて中ロッドに突起や突条を任意に設けておくことも可能である。さらに、掘削時にケーシングと中ロッドとを連動させて地中に押し込む動作と、膨大部を構築する際に、ケーシングのみを引上げる動作を行うためには、従来の掘削装置と同様な駆動伝達機構を用いることが可能である。
【0037】
【発明の効果】
前述したように、鋼管杭やコンクリート杭等の既成の杭を用いて支持基礎を構築するものであるから、杭孔の構築に際して土を排出することがなく、杭孔の下部に構成する膨大部に杭の下部を挿入して一体化させ、杭の支持力を大幅に増大させることができる。また、前記掘削装置を用いて杭孔を掘削し、その杭孔の下部に膨大部を形成することは、袋部材に注入する水のような流体の圧力を調整することで、任意の大きさに形成することが可能であり、杭本体の地盤との摩擦力に加えて、膨大部での支持力を増加させることで、杭基礎の信頼性を向上させることが可能となる。そして、前記杭基礎の下部にモルタルなどによる膨大部を構築することにより、杭の支持を強固な固化層により行い得るので、杭の強度の特性をそのまま利用できて、基礎の構築を容易に行うことが可能で、杭の強度をそのまま有効に利用できる。前記流体を補助手段して用いることの他に、下端部を開放した状態の袋部材に対して直接モルタルを注入して膨大部を構成する場合には、掘削装置の構造を簡素化することができ、作業性を向上させることができる。したがって、前述したようにして構築し、杭の下部にモルタルの膨大部を一体に設けた杭基礎では、膨大部による支持作用と杭孔の周囲から打設した杭を押圧する力が作用することにもなり、杭が負担可能な荷重を大きな値として設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】作業装置の構成を示す説明図である。
【図2】掘削装置の構成の説明図である。
【図3】ケーシングの下部で袋部材を膨脹させる状態の説明図である。
【図4】袋部材の膨脹部にモルタルを供給する作業の説明図である。
【図5】モルタルを供給中の状態の説明図である。
【図6】膨大部に基礎杭を組み合わせた基礎の説明図である。
【図7】掘削装置の別の実施例の構成を示す説明図である。
【図8】袋部材にモルタルを供給して膨大部を形成する動作の説明図である。
【図9】図8の膨大部に基礎杭を組み合わせた基礎の説明図である。
【符号の説明】
1 作業装置、 2 作業車両、 3 ガイドポスト、
4 ヘッド部、 5 支持アーム、 6 昇降部、
7 ウインチ、 8 ワイヤ、 10 駆動装置、
11 油圧系統、 12 液体供給装置、 13 パイプ、
14 モルタル供給装置、 15 供給ホース、 16 制御装置、
17 制御手段、 18 端末装置、 20 掘削装置、
21 掘削ヘッド、 22 ケーシング、 23 中間接続部材、
24 中ロッド、 25 下端部排出口、 26 小径パイプ、
27 噴出口、 30 袋部材、 35 杭孔、 36 モルタル、
37 膨大部、 38 基礎杭。
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅等の建物の基礎を支持する杭基礎に関し、特に、既成の杭を地盤に立設するに際して、杭の下部に強固な膨大部を形成して、基礎杭による支持力を増大させる基礎の構築装置および構築工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、住宅やその他の小規模の建物等の構造物を構築するに際しては、その構築場所の地盤の強度等の条件を調査し、その地盤が構造物を支持することができないと判断された場合には、その支持力を増大させる工事を行っている。前記地盤の支持力を増大させるためには、杭等を打設することや柱状の地盤改良を行うこと、または、地盤を圧密して支持強度を増大させる等の手段が一般に用いられている。前記地盤の支持力を増大させる工法のうち、最も簡便なものは杭打ち方式であるが、前記杭基礎を構築するに際しては、コンクリート杭の他に、鋼管杭を打設する工法は近年多く用いられるようになっている。
【0003】
前記杭基礎を構築するに際して、軟弱な地盤に杭を打設したのみでは、十分な支持強度を得ることができない場合が多くあるので、そのような強度の弱い地盤に対しては、立設する杭の下部にモルタルなどによる球根状の大径部を構築して、その大径部の上に杭を立設すること等が行われている。例えば、地盤の土にセメントミルク等を混合して構築する場所打ち杭においては、掘削機で所定の径の杭孔を構築し、その掘削した孔の土にセメントミルクのような固化材を混合して、所定の径のソイルセメントコラムを構築するが、そのコラムの下部には膨大部を構築して、杭の支持強度を大きくするような手段が用いられている。(例えば、特許文献1を参照)
【0004】
【特許文献1】
特開平10−46567号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記支持力を増大させる手段を付加して設けた杭を用いる場合に、杭に突起部材を溶接等により取り付ける加工を必要とするために、パイプをそのまま使用する場合に比較して、の加工コストが増加するという問題がある。前記パイプの周囲や下面に突起部材を設けた杭を打設するに際しては、杭打ち機にも回転機構と押圧機構とを設けるので、杭打ち機の構造が複雑で、杭の打設工事の手間と、打ち込みの作業に時間とを必要とするという課題が残っている。そして、杭を回転手段を用いて打ち込みを実施するに際しては、フライト等の突起部材が杭孔の周囲の地盤を破砕するので、杭の周囲面と土の壁の間の摩擦係数が大幅に低下する等の問題もある。さらに、前記杭に設ける突起部材が螺旋状の部材(スクリュー)である場合には、その突起部材の下面は平面でないために、掘削面との接地は面ではなく線に近いものとなるために、杭の構築後に荷重が付与されると初期沈下が大きい。したがって、従来の杭基礎の設計に際しては、突起部材を含めた面積の半分が有効に作用するものとして計算しているのが現状であり、杭の強度を十分に利用出来ていないものである。その他に、従来の杭基礎の構築工法にあっては、掘削した孔から余分な土を排除する必要があり、その土を指定された場所に処分しない等の手抜き工事が、公害等の問題を発生する原因とされている等の問題となり、土を捨てなくても良い工法が望まれている。
【0006】
本発明は、前記杭を用いた地盤の支持力を向上させる工事を簡単に行い得て、杭の支持強度を向上させ得るような基礎とその構築工法、および、杭孔の掘削に際して余分な土を排除しない工法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、地盤に垂直に杭孔を掘削し、前記掘削した孔に既成の杭を埋設して構築する杭基礎の構築装置に関する。請求項1の発明は、掘削ヘッドを下端部に設け、前記掘削ヘッドの上部に噴出孔を装備し、上端部にモルタル注入用のパイプを接続するとともに、前記噴出孔の上部に袋部材を取付けてなる中空な中ロッドと、前記中ロッドに対して所定の間隔を介して設け、前記中ロッドに対して上下方向に移動を許容し、駆動源に接続されるケーシングと、前記中ロッドの内部に同軸に配置される小径パイプと、前記中ロッドの下部に取付けられ、前記小径パイプを介して供給される流体により掘削孔の下部で膨大部を構成可能な袋部材とを有し、杭孔の掘削と、掘削した杭孔の下部にモルタルによる膨大部を形成して、前記掘削孔に挿入する杭の下部を前記膨大部により支持するために用いることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、前記中パイプの下部に取付けられる袋部材は、ゴムまたはゴムのような弾性体で構成され、掘削ヘッドにより杭孔を構築する際には、ケーシングにより覆われた状態とされ、前記杭孔を所定の深さまで掘削した後に、前記袋部材の長さに対応する距離だけケーシングを上昇させて、地盤中に膨大部を形成可能に構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、地盤に垂直に杭孔を掘削し、前記掘削した孔に既成の杭を埋設して構築する杭基礎の構築工法に関するもので、掘削ヘッドを用いて掘削する杭孔の土を、前記杭孔の周囲に圧密しながら前記杭孔の掘削を行う工程と、前記掘削した杭孔の下部で、流体を袋部材に供給して、前記袋部材を膨脹させることにより膨大部を形成する工程と、前記膨大部の流体を排除しながら、前記袋部材の外側からモルタルを供給してモルタルによる膨大部を構築する工程と、前記モルタルによる膨大部を構築した後で掘削装置を引上げて、杭孔に既成の杭の下部を膨大部に埋設する工程を経て、前記杭の支持力を増大させることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、掘削ヘッドを下端部に設け、前記掘削ヘッドの上部に噴出孔を装備し、上端部にモルタル注入用のパイプを接続するとともに、前記噴出孔の上部に袋部材を取付けてなる中空な中ロッドと、前記中ロッドに対して所定の間隔を介して同軸に配置し、前記中ロッドに対して上下方向に移動を許容するとともに、駆動源に接続されるケーシングと、前記中ロッドの内部に同軸に配置される小径パイプと、前記中ロッドの下部に取付けられ、前記小径パイプを介して供給される流体により掘削孔の下部で膨大部を構成可能な袋部材とを設けた掘削装置を用い、杭孔を掘削した後で、ケーシングを所定の間隔だけ引上げてから、袋部材を膨脹させて膨大部を形成し、前記膨大部にモルタルを充満させた後で、掘削装置を抜き出し、前記掘削した杭孔の膨大部の中に所定の深さまで達するように、既成の杭を立設して、前記杭の支持力を増大させることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、前記袋部材に供給する流体として水を用い、前記袋部材に水を供給して膨大部を構築した後で、モルタルを圧送して前記袋部材の水をモルタルの圧力により排除ながら、モルタルによる膨大部を構築することを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、地盤に垂直に杭孔を掘削し、前記掘削した孔に既成の杭を埋設して構築する杭基礎の構築装置に関するもので、掘削ヘッドを下端部に設ける中ロッドと、前記中ロッドを通して接続し、前記掘削ヘッドの上部に所定の間隔を介して設けた噴出孔とモルタル供給手段の間を接続する小径パイプと、前記噴出孔の上部に上部分を固定し下部を拘束しない状態で設ける弾性を有する袋部材を設け、前記中ロッドに対して所定の間隔を介して設けるとともに、前記中ロッドに対して上下方向に移動を許容し、駆動源に接続されるケーシングとを有し、前記中ロッドに設けた掘削ヘッドと、ケーシングとを連動させてまたは別個に上下動させる手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、地盤に垂直に杭孔を掘削し、前記掘削した孔に既成の杭を埋設して構築する杭基礎の構築装置に関するもので、掘削ヘッドを下端部に設ける中ロッドと、前記中ロッドを通して接続し、前記掘削ヘッドの上部に所定の間隔を介して設けた噴出孔とモルタル供給手段の間を接続する小径パイプと、前記噴出孔の上部に上部分を固定し、下部を拘束しない状態で設ける弾性を有する袋部材と、前記中ロッドに対して所定の間隔を介して設けるとともに、前記中ロッドに対して上下方向に移動を許容し、駆動源に接続されるケーシングと、前記中ロッドに設けた掘削ヘッドと、ケーシングとを連動させてまたは別個に上下動させる手段を設け、掘削装置により杭孔を掘削した後で、前記杭孔内でケーシングを所定の高さまで上昇させ、その後に袋部材の上部からモルタルを供給して、前記袋部材を拡開させて、杭孔の上部を前記袋部材により封止しながら、前記供給されるモルタルにより周囲の土を圧密しながら膨大部を形成し、前記モルタルによる膨大部を構築した後で掘削装置を引上げて、杭孔に既成の杭の下部を膨大部に埋設する工程を経て、前記杭の支持力を増大させることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、前記袋部材を、中ロッドへの取付位置から所定の長さの略スカート状の部材として設け、前記袋部材の固定部の直下部に開口する小径ロッドを通して、注入されるモルタルが杭孔に漏れることを前記袋部材により防止しながらモルタルを充満させて、膨大部として形成することを特徴とする。
【0015】
前述したように、本発明の工法は、鋼管杭やコンクリート杭等の既成の杭を用いて支持基礎を構築するものであるから、杭孔の構築に際して土を排出することがなく、杭孔の下部に構成する膨大部に杭の下部を挿入して一体化させ、杭の支持力を大幅に増大させることができる。また、前記掘削装置を用いて杭孔を掘削し、その杭孔の下部に膨大部を形成することは、袋部材に注入する水のような流体の圧力を調整することで、任意の大きさに形成することが可能であり、杭本体の地盤との摩擦力に加えて、膨大部での支持力を増加させることで、杭基礎の信頼性を向上させることが可能となる。そして、前記杭基礎の下部にモルタル等による膨大部を構築することにより、杭の支持を強固な固化層により行い得るので、杭の強度の特性をそのまま利用できて、基礎の構築を容易に行うことが可能で、杭の強度をそのまま有効に利用できる。さらに、前記流体を補助手段して用いることの他に、下端部を開放した状態の袋部材に対して直接モルタルを注入して膨大部を構成する場合には、掘削装置の構造を簡素化することができ、作業性を向上させることができる。したがって、前述したようにして構築し、杭の下部にモルタルの膨大部を一体に設けた杭基礎では、膨大部による支持作用と杭孔の周囲から打設した杭を押圧する力が作用し、杭が負担する荷重を大きな値として設計することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図示される例にしたがって、杭を用いた基礎の構築装置とその工法を説明する。図1に示す例は、基礎杭38を工事地盤に打設する例を示しているもので、基礎杭38を構築する作業装置1としては、従来より一般に使用されているような作業車両2を用いる。基礎杭38の打設を行うために、ガイドポスト3に沿わせて上下動させる駆動装置10を設け、前記ガイドポスト3を作業車両2のアーム5と補助アーム5aにより支持している。また、前記ガイドポスト3の頂部にはヘッド部材4を配置し、作業車両2に設けているウインチ7によりワイヤ8を駆動して、昇降部6により駆動装置10を上下動させながら、杭孔を用いて基礎杭38を構築のために、以下に説明する掘削装置20による杭孔の掘削作業を行う。なお、前記駆動装置10に対して、作業車両2に設けた油圧ポンプからの油圧供給系11を接続しているが、前記駆動装置10の駆動系は、作業車両2に設けている油圧ポンプを用いることの他に、車両とは別に装備する油圧発生装置を用いることも可能である。
【0017】
なお、前記杭孔の下部に膨大部を構築する工法は、その対象とする地盤が、単純に杭を打設したとしても、その杭と地盤との摩擦力のみでは、上部の建物の重量を支えることができないような、非常に軟弱な地盤を対象とする。すなわち、従来の地盤の土に硬化材を混合する場所打ち杭を施工する際に、セメントミルクの注入量が、想定した量に比較して増大するような、水の含有率が多い地層、または隙間が多い地層の例が多くある。そのような軟弱な地盤に対しては、場所打ち杭を構築することや既成の杭を打設する等の従来の工法を適用することでは、基礎の信頼性を維持できないという問題があった。
【0018】
前記作業車両2は、自走式の車両として構成されているもので、一般的なクローラにより走行する車両には、油圧装置を装備して駆動装置10に向けて油圧系統11を接続し、その駆動源として用いるようにする。前記作業車両に加えて、地上設備として液体供給装置12とモルタル供給装置14を配置しているもので、前記液体供給装置12では、水やその他の流体を掘削装置20の下部に向けて圧送して、杭孔35の下部に膨大部を形成するために、パイプ13を介して圧力を加えた液体を供給するように構成している。
【0019】
前記液体供給装置12で水を用いる場合には、水タンクと圧送用のポンプ等を組み合わせた装置として構成することができる。また、モルタル供給装置14からは、掘削装置20に向けて供給ホース15を通してモルタル等を供給するもので、前記モルタル供給装置14は、モルタル製造プラントと、圧送ポンプ等を組み合わせて構成するが、前記水とモルタルの供給装置等は、従来公知の任意の装置を用いることが可能である。さらに、前記作業車両と、液体供給装置12およびモルタル供給装置14の駆動を制御するために、地盤の地質に対応させて、あらかじめ設定している制御データにもとづいて、各作業部材に対する制御を行う制御装置16を用いている。
【0020】
そして、前記制御装置16においては、モニターとコントロール手段とを組み合わせた制御手段17を車両に設けておき、車両のオペレータがモニターを見ながら、各作業部材に対する制御の動作を、端末装置18……の各々に対して随時行うようにする。なお、前記液体供給装置12とモルタル供給装置14の、注入装置の各々において、前記制御手段ではポンプの駆動とバルブを開閉する流量調整のように、すべての制御の動作を行うことができる。また、前記袋部材に対して流体を袋部材に向けて供給する際の圧力や、モルタルを注入して膨大部を構築する際の圧力等は、工事の事前のボーリング等による事前の地質調査で地質や地盤の強度等のデータを得ておき、それ等のデータにもとづいて行うことが可能である。前記注入作業に際して、オペレータは、前記制御装置のモニターを見ながら微調整を行うことで、作業を効率良く行うことができる。
【0021】
また、前記作業装置1においては、前記作業車両2に直接組み合わせて設けるガイドポスト3や、駆動装置10の他に、液体供給装置12とモルタル供給装置14とを組み合わせて設け、掘削装置20の掘削ヘッド21により杭孔35を掘削してから、前記液体供給装置12とモルタル供給装置14とを作動させて、杭孔35の下部に膨大部を形成するようにしている。前記駆動装置10により回転駆動される掘削装置20は、図2に示されるように構成されているもので、大径のケーシング22の内部には、中間接続部材23により駆動力が伝達される中ロッド24を配置して、前記中ロッド24の下部に設けている掘削ヘッド21を、杭孔の中心軸に対して回転させるように設けている。
【0022】
前記ケーシング22と同軸に設けられる中ロッド24は、ケーシング22に対して、スライド可能に設けられている。そして、後述するように、所定の深さまで杭孔35を掘削した後で、掘削ヘッド21と中ロッド24をその掘削した位置に残して、ケーシング22のみを所定の距離だけ引上げて、後述するように、杭孔の下部に所定の大きさの膨大部を構築することができる。なお、前記ケーシング22のみを引上げることを許容するためには、ケーシング22と中ロッド24との間での駆動伝達の機構を、前記中間接続部材23に設けておくことができ、その他に、従来公知の任意の構成の駆動伝達手段を設けておくことができる。
【0023】
前述したような構成を有する作業装置1を用いて、杭基礎を構築するに際しては、図2に示すように、最初に掘削装置20の掘削ヘッド21により所定の深さまで杭孔を掘削し、その掘削した杭孔の下部にモルタル等による膨大部を構築する。前記掘削ヘッド21により杭孔を掘削するに際しては、前記掘削ヘッド21により掘削した孔の土を、孔の周囲に押圧して圧密させた壁を形成する機構を用いているもので、従来の掘削装置の場合のように、掘削ヘッドにより掘削して揉みほぐした土を、スクリューにより地上に排出する方式を用いているのではない。つまり、前記掘削ヘッド21では、ヘッドの先端部で土をほぐす作用を行い、そのヘッドの上部では、土を孔壁の周囲に向けて圧密させるような作用を行うものとして構成する。
【0024】
そして、前記杭孔の下部に構築した膨大部のモルタルが硬化する前に、鋼管杭やコンクリート杭等を、前記膨大部の中に打ち込んで、膨大部と杭とを複合して一体化した杭基礎として構築できるようにするものである。前記杭の下部に、モルタル固化部としての膨大部を一体に設け、杭基礎の支持力を増大させる部材を構築するために、前記掘削装置20に対して掘削のための掘削ヘッド21と、袋部材を膨らませるための液体供給装置12、前記袋部材により大きく形成される膨大部に、モルタルを供給するためのモルタル供給装置14とを設けているものである。以下に、図2から図3に示す例のように、前記掘削装置20を用いて杭孔を構築した後で、膨大部を構築するための機構を説明する。なお、前記図2および図3に示す例において、昇降部6に支持される駆動装置10には、図示するように中ロッド24と小径パイプ26が上側に突出されて、スイベルにより各パイプを回転可能に支持し、前記ガイドポスト3に沿わせて前記駆動装置10を上下動させるように設けている。
【0025】
前記中ロッド24の上部には、供給ホース15を接続しており、下部の掘削ヘッド21の上部分に対応する位置には下端部排出口25を設けて、図1のモルタル供給装置14から送られるモルタルを、杭孔35の下部に向けて噴出させるようにしている。また、前記中ロッド24の中には、小径パイプ26を同軸に配置しており、前記小径パイプ26の上部にはパイプ13を接続し、下部に設けている吐出口27から圧力水等の液体を噴出させて、前記小径パイプ26の下部に取付けている袋部材30を膨らませるようにする。前記袋部材30は、ゴム等のような弾性を有する袋として構成されているもので、掘削装置20の下部に畳んだ状態で設けられるが、掘削装置20により杭孔を掘削する際には、ケーシング22の内部に収納された状態に保持される。前記袋部材30は、中ロッド24に対して上下の固定手段31、32により取付けられており、小径パイプ26に設けた噴出口27を介して、前記袋部材30に対する液体の給排が可能に構成している。
【0026】
前記掘削装置20により、所定の径の杭孔35を掘削した後で、図3に示すように、掘削ヘッド21と中ロッド24を残して、ケーシング22を所定の高さまで引上げて、袋部材30をケーシングから露出させるようにする。そして、前記袋部材30に対して。液体供給装置12からの圧力水を、パイプ13から小径パイプ26を通して、噴出口27から噴出させることにより、周囲の地盤を押し広げるように、前記袋部材30を図の仮想線で示すように大きく膨脹させる作用を行わせる。前記袋部材30を膨脹させる作用は、供給される水等の液体に付与される圧力によって行われるもので、軟弱な地盤や水分の多い、または空隙の多い地質では、その袋部材30内部に付与される圧力の大きさにしたがって、任意の大きさの膨大部37が形成される。
【0027】
前記図3に示されたようにして、杭孔35の下部で袋部材30を膨らませて、大きな空隙を構築してから、図4に示すように、中ロッド24の下部の下端部排出口25からモルタル36を噴出させて、前記袋部材30の下部に向けてモルタルを充満させるようにする。前記モルタルを噴出させる際には、袋部材30に供給した圧力よりも若干大きな圧力でモルタルを供給するようにしており、また、袋部材30の液体はパイプ13に設けたバルブを通して排出させる状態とする。そして、前記袋部材30の下部からモルタル36を供給することにより、袋部材30の中の液体を排出しながら、その空隙を埋める状態で膨大部を構築する。前述したようにして、モルタルを供給することで、図5に示すように膨大部37をモルタルによる充満させる作業を継続し、ほぼ完全にモルタルが充満された状態で、前記掘削ヘッド21と中ロッド24および袋部材30を引上げる。なお、前記掘削ヘッド21等を引上げる作業の途中で、前記膨大部37に空隙が形成されると予測される場合には、前記掘削部材を引上げながら余分にモルタルを供給する。
【0028】
前述したようにして、掘削装置20を完全に引上げてから、その杭孔35には鋼管杭やコンクリート杭等の既成の基礎杭38を打ち込み、図6に示すように、前記基礎杭38の下部を膨大部37に埋没させて、一体化した杭基礎を構築する。したがって、前記基礎杭38を膨大部37と一体化し、膨大部37による支持力を大きくした場合には、従来の摩擦杭のみを用いる場合に比較して、その杭の支持力を大きく増加させることが可能となる。また、前記膨大部に充満させたモルタルに、杭の下部を埋没することで、杭基礎が支持する上部の建物の荷重を、前記膨大部が広い面積で受けることが可能となり、杭基礎の信頼性を向上させることができる。
【0029】
なお、前記掘削装置において、構築した杭孔に立設する既成の杭の径に対して、ほぼ同径の孔として構築するものであるから、前記掘削ヘッドの径は立設する杭に応じて、その太さまたはパイプ等の肉厚を適宜選択して用いる。そして、前記ケーシングの外径も、前記掘削ヘッドの径とほぼ同径に形成することで、後で立設する杭が孔壁に接するようにして、摩擦による支持力をも有効に作用させるようにする。また、前記掘削ロッド部において、駆動装置からの回転力は、ケーシングに対して伝達すること、または、中パイプに対して駆動伝達すること等の任意の駆動伝達方式を用いることが可能であり、前記杭孔の下部に膨大部を構築する際には、中パイプに対してケーシングを引上げる機構も、特に限定するものではない。さらに、前記掘削装置を構成する中パイプや小径パイプの径等は、任意に構成することが可能であり、前記パイプを通して供給する流体やモルタル等の材料は、従来より用いられているポンプで圧送が可能なものであれば良い。
【0030】
(実施例2)
図7に示す例は、前記図2に示した掘削装置の構造を若干変更しているもので、掘削装置20aの大径のケーシング22の内部には、掘削ヘッド21を先端部に設けた中ロッド24を配置している。前記中ロッドは所定の径を有する中空なロッドとして構成されているもので、その中空部の内部には小径パイプ26を同軸に配置しており、前記小径パイプ26の上部にはモルタル供給装置からの供給ホース15を接続している。そして、前記小径パイプ26の下端部は噴出口27に接続されて、中ロッドに支持されている袋部材30aの内部にモルタルを噴出させるように構成される。
【0031】
前記袋部材30aは前記実施例と同様に、内部に圧送されるモルタルの圧力に耐え得て、周囲の土を圧密させる作用を発揮可能なものであり、ゴム等のような弾性体で構成された略スカート状のものを用いている。そして、前記袋部材30aの上端部を、前記噴出口27の上部で固定部31を用いて取り付け、その袋部材30aの下部は固着せずに、任意に拡開可能なものとされるもので、固定部31の下部から、掘削ヘッドとの間隔の略半分程度の長さのものとして構成される。なお、前記袋部材30aは前記実施例の場合とは異なり、袋部材の固定部の直下部からモルタルを充満させて、略スカート状に拡開させる状態で、図3に説明した膨大部と同様に、モルタルの球状の膨大部を形成可能な大きさのものとして構成されたものを用いるもので、大きな袋を折り畳んだ状態で、中ロッド24のまわりでケーシング22の中に収容している。
【0032】
前記実施例の場合と同様にして、前記掘削装置20aにより杭孔を掘削するに際して、中ロッド24とケーシング22とを連動回転させて杭孔を掘削する作業を行い、その後に、ケーシング22の下端部が前記固定部31より上になるように引上げて、袋部材30aが掘削した杭孔の中に露出される状態とする。ついで、モルタル供給装置から小径ロッド26を通してモルタルが供給されて、噴出孔27から袋部材30aの上部に向けて供給され、図8に示すように、袋部材30aを上部から膨脹させるようにする。前記袋部材30aに対してその上部からモルタルが噴出されると、袋部材の上部が膨脹されるので、前記杭孔に連通する部分を、前記袋部材30aを拡開させることにより封止し、袋部材とその下部の土をモルタルにより押圧して、周囲の土を圧密しながら膨大部を形成させるようにする。
【0033】
本実施例では、前記袋部材30aの下端部が規制されていないことから、ある程度の大きさの膨大部が形成された後では、袋部材30aの下端部の拡開された部分からモルタルが噴出されて、モルタルが直接土を圧密しながら膨大部を形成する作用を行うものと考えられる。そこで、前述したように、モルタルが袋部材30aの外側に噴出する状態となれば、モルタルの圧送の圧力が急激に変化する等の、定常な動作状態と異なる圧送圧力が検知されるので、そのような膨大部の形成作用は、モルタル圧送装置での圧力の変化等をモニターすることにより検知可能である。
【0034】
また、膨大部を形成する地盤の状態も、モルタルの圧送状態の検知情報により判断可能であり、異常状態等が発生した時には、モルタル供給装置の動作を停止させる等の処理を行うと良い。前記袋部材30aの内部にモルタルを充満させて所定の大きさの膨大部を形成した後で、ケーシング22と中ロッド24および、掘削ヘッド21と袋部材30aとをそのまま引上げると、流動性を有するモルタルはそのまま孔の底に残ることになる。なお、前記モルタルを直接注入して形成する膨大部は、その地盤の特性により、球根状等の良好な形状のものとなることがなくとも、後で打ち込んだ杭を膨大部で支持することが可能であるから、前記杭基礎での建物の支持力を十分に発揮できるものとなる。
【0035】
その後に、前記杭孔の下部に構築した膨大部のモルタルが硬化する前に、鋼管杭やコンクリート杭等を、前記膨大部の中に所定の深さで入り込むように打ち込んで、硬化するモルタルと杭とを一体化させる。そして、前記モルタルが固化した膨大部37と杭38とを複合して、一体化された杭基礎を、図9のようにして構築する。前述したようにして構築した杭基礎においては、掘削した杭孔35は、掘削ヘッド21により土が周囲に圧密された状態とされるものであるから、掘削装置を引き抜いた後に打設する既成の杭に対して、孔の壁の圧密されている土が、打設した杭の周囲を押圧する作用を行う。したがって、前述したようにして構築し、杭の下部にモルタルの膨大部を一体に設けた杭基礎では、膨大部による支持作用と杭孔の周囲から打設した杭を押圧する力が作用し、杭が負担する荷重を大きな値として設計することが可能となる。
【0036】
なお、前記膨大部と一体化して杭基礎を構築するための装置において、袋部材としては、繊維の層等の補強手段をゴム層の中に一体化した弾性を有する袋を用いることができるもので、その他に、圧送するモルタルや流体の圧力に耐え得るものであれば、任意の弾性材料を用いて構成することが可能である。また、前記袋部材を中ロッドに固定する手段としては、任意のバンド状の拘束部材を用いることができるもので、その拘束位置に対応させて中ロッドに突起や突条を任意に設けておくことも可能である。さらに、掘削時にケーシングと中ロッドとを連動させて地中に押し込む動作と、膨大部を構築する際に、ケーシングのみを引上げる動作を行うためには、従来の掘削装置と同様な駆動伝達機構を用いることが可能である。
【0037】
【発明の効果】
前述したように、鋼管杭やコンクリート杭等の既成の杭を用いて支持基礎を構築するものであるから、杭孔の構築に際して土を排出することがなく、杭孔の下部に構成する膨大部に杭の下部を挿入して一体化させ、杭の支持力を大幅に増大させることができる。また、前記掘削装置を用いて杭孔を掘削し、その杭孔の下部に膨大部を形成することは、袋部材に注入する水のような流体の圧力を調整することで、任意の大きさに形成することが可能であり、杭本体の地盤との摩擦力に加えて、膨大部での支持力を増加させることで、杭基礎の信頼性を向上させることが可能となる。そして、前記杭基礎の下部にモルタルなどによる膨大部を構築することにより、杭の支持を強固な固化層により行い得るので、杭の強度の特性をそのまま利用できて、基礎の構築を容易に行うことが可能で、杭の強度をそのまま有効に利用できる。前記流体を補助手段して用いることの他に、下端部を開放した状態の袋部材に対して直接モルタルを注入して膨大部を構成する場合には、掘削装置の構造を簡素化することができ、作業性を向上させることができる。したがって、前述したようにして構築し、杭の下部にモルタルの膨大部を一体に設けた杭基礎では、膨大部による支持作用と杭孔の周囲から打設した杭を押圧する力が作用することにもなり、杭が負担可能な荷重を大きな値として設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】作業装置の構成を示す説明図である。
【図2】掘削装置の構成の説明図である。
【図3】ケーシングの下部で袋部材を膨脹させる状態の説明図である。
【図4】袋部材の膨脹部にモルタルを供給する作業の説明図である。
【図5】モルタルを供給中の状態の説明図である。
【図6】膨大部に基礎杭を組み合わせた基礎の説明図である。
【図7】掘削装置の別の実施例の構成を示す説明図である。
【図8】袋部材にモルタルを供給して膨大部を形成する動作の説明図である。
【図9】図8の膨大部に基礎杭を組み合わせた基礎の説明図である。
【符号の説明】
1 作業装置、 2 作業車両、 3 ガイドポスト、
4 ヘッド部、 5 支持アーム、 6 昇降部、
7 ウインチ、 8 ワイヤ、 10 駆動装置、
11 油圧系統、 12 液体供給装置、 13 パイプ、
14 モルタル供給装置、 15 供給ホース、 16 制御装置、
17 制御手段、 18 端末装置、 20 掘削装置、
21 掘削ヘッド、 22 ケーシング、 23 中間接続部材、
24 中ロッド、 25 下端部排出口、 26 小径パイプ、
27 噴出口、 30 袋部材、 35 杭孔、 36 モルタル、
37 膨大部、 38 基礎杭。
Claims (8)
- 地盤に垂直に杭孔を掘削し、前記掘削した孔に既成の杭を埋設して構築する杭基礎の構築装置であって、
掘削ヘッドを下端部に設け、前記掘削ヘッドの上部に噴出孔を装備し、上端部にモルタル注入用のパイプを接続するとともに、前記噴出孔の上部に袋部材を取付けてなる中空な中ロッドと、
前記中ロッドに対して所定の間隔を介して設け、前記中ロッドに対して上下方向に移動を許容し、駆動源に接続されるケーシングと、
前記中ロッドの内部に同軸に配置される小径パイプと、
前記中ロッドの下部に取付けられ、前記小径パイプを介して供給される流体により掘削孔の下部で膨大部を構成可能な袋部材とを有し、
杭孔の掘削と、掘削した杭孔の下部にモルタルによる膨大部を形成して、前記掘削孔に挿入する杭の下部を前記膨大部により支持するために用いることを特徴とする杭基礎の構築装置。 - 前記中パイプの下部に取付けられる袋部材は、ゴムまたはゴムのような弾性体で構成され、
掘削ヘッドにより杭孔を構築する際には、ケーシングにより覆われた状態とされ、前記杭孔を所定の深さまで掘削した後に、前記袋部材の長さに対応する距離だけケーシングを上昇させて、地盤中に膨大部を形成可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の杭基礎の構築装置。 - 地盤に垂直に杭孔を掘削し、前記掘削した孔に既成の杭を埋設して構築する杭基礎の構築工法であって、
掘削ヘッドを用いて掘削する杭孔の土を、前記杭孔の周囲に圧密しながら前記杭孔の掘削を行う工程と、
前記掘削した杭孔の下部で、流体を袋部材に供給して、前記袋部材を膨脹させることにより膨大部を形成する工程と、
前記膨大部の流体を排除しながら、前記袋部材の外側からモルタルを供給してモルタルによる膨大部を構築する工程と、
前記モルタルによる膨大部を構築した後で掘削装置を引上げて、杭孔に既成の杭の下部を膨大部に埋設する工程を経て、
前記杭の支持力を増大させることを特徴とする杭基礎の構築工法。 - 掘削ヘッドを下端部に設け、前記掘削ヘッドの上部に噴出孔を装備し、上端部にモルタル注入用のパイプを接続するとともに、前記噴出孔の上部に袋部材を取付けてなる中空な中ロッドと、
前記中ロッドに対して所定の間隔を介して同軸に配置し、前記中ロッドに対して上下方向に移動を許容するとともに、駆動源に接続されるケーシングと、
前記中ロッドの内部に同軸に配置される小径パイプと、
前記中ロッドの下部に取付けられ、前記小径パイプを介して供給される流体により掘削孔の下部で膨大部を構成可能な袋部材とを設けた掘削装置を用い、
杭孔を掘削した後で、ケーシングを所定の間隔だけ引上げてから、袋部材を膨脹させて膨大部を形成し、前記膨大部にモルタルを充満させた後で、掘削装置を抜き出し、
前記掘削した杭孔の膨大部の中に所定の深さまで達するように、既成の杭を立設して、
前記杭の支持力を増大させることを特徴とする請求項3に記載の杭基礎の構築工法。 - 前記袋部材に供給する流体として水を用い、前記袋部材に水を供給して膨大部を構築した後で、モルタルを圧送して前記袋部材の水をモルタルの圧力により排除ながら、モルタルによる膨大部を構築することを特徴とする請求項3または4に記載の杭基礎の構築工法。
- 地盤に垂直に杭孔を掘削し、前記掘削した孔に既成の杭を埋設して構築する杭基礎の構築装置であって、
掘削ヘッドを下端部に設ける中ロッドと、
前記中ロッドを通して接続し、前記掘削ヘッドの上部に所定の間隔を介して設けた噴出孔とモルタル供給手段の間を接続する小径パイプと、
前記噴出孔の上部に上部分を固定し下部を拘束しない状態で設ける弾性を有する袋部材を設け、
前記中ロッドに対して所定の間隔を介して設けるとともに、前記中ロッドに対して上下方向に移動を許容し、駆動源に接続されるケーシングとを有し、
前記中ロッドに設けた掘削ヘッドと、ケーシングとを連動させてまたは別個に上下動させる手段を設けたことを特徴とする杭基礎の構築装置。 - 地盤に垂直に杭孔を掘削し、前記掘削した孔に既成の杭を埋設して構築する杭基礎の構築装置であって、
掘削ヘッドを下端部に設ける中ロッドと、
前記中ロッドを通して接続し、前記掘削ヘッドの上部に所定の間隔を介して設けた噴出孔とモルタル供給手段の間を接続する小径パイプと、
前記噴出孔の上部に上部分を固定し、下部を拘束しない状態で設ける弾性を有する袋部材と、
前記中ロッドに対して所定の間隔を介して設けるとともに、前記中ロッドに対して上下方向に移動を許容し、駆動源に接続されるケーシングと、
前記中ロッドに設けた掘削ヘッドと、ケーシングとを連動させてまたは別個に上下動させる手段を設け、
掘削装置により杭孔を掘削した後で、前記杭孔内でケーシングを所定の高さまで上昇させ、
その後に袋部材の上部からモルタルを供給して、前記袋部材を拡開させて、杭孔の上部を前記袋部材により封止しながら、前記供給されるモルタルにより周囲の土を圧密しながら膨大部を形成し、
前記モルタルによる膨大部を構築した後で掘削装置を引上げて、杭孔に既成の杭の下部を膨大部に埋設する工程を経て、
前記杭の支持力を増大させることを特徴とする杭基礎の構築工法。 - 前記袋部材を、中ロッドへの取付位置から所定の長さの略スカート状の部材として設け、
前記袋部材の固定部の直下部に開口する小径ロッドを通して、注入されるモルタルが杭孔に漏れることを前記袋部材により防止しながらモルタルを充満させて、膨大部として形成することを特徴とする請求項7に記載の杭基礎の構築工法。
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---|---|---|---|
JP2003193333A JP2004245024A (ja) | 2002-12-20 | 2003-07-08 | 杭基礎の構築装置および杭基礎構築工法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP6049844B1 (ja) * | 2015-11-30 | 2016-12-21 | 勇平 八百板 | 不等沈下制止構造及びその施工方法 |
KR102578197B1 (ko) * | 2023-04-24 | 2023-09-14 | 뉴콘텍이앤씨(주) | 지반보강을 위한 그라우팅 주입장치 |
-
2003
- 2003-07-08 JP JP2003193333A patent/JP2004245024A/ja active Pending
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