JP2004244540A - 消去性ボールペン用インキ組成物及び消去性ボールペン - Google Patents
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Abstract
【課題】描線濃度を充分確保しながらも、充分な消去性能を有し、且つ、ペン先のドライアップによる筆記不良を低減した筆記性能に優れる消去性ボールペン用インキ組成物及び消去性ボールペンを提供する。
【解決手段】少なくとも、着色剤、熱可塑性エラストマーからなる消しゴムで消去可能なボールペン用インキにおいて、下記A類及びB類から選ばれる2種類以上の溶剤を使用することを特徴とする消去性ボールぺン用インキ組成物。
〔A類〕
使用する熱可塑性エラストマーを溶解し、且つ、常圧下での沸点が140〜250℃である溶剤。
〔B類〕
使用する熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる溶剤。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも、着色剤、熱可塑性エラストマーからなる消しゴムで消去可能なボールペン用インキにおいて、下記A類及びB類から選ばれる2種類以上の溶剤を使用することを特徴とする消去性ボールぺン用インキ組成物。
〔A類〕
使用する熱可塑性エラストマーを溶解し、且つ、常圧下での沸点が140〜250℃である溶剤。
〔B類〕
使用する熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる溶剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、筆記した描線が、消しゴムにて消去可能である、消去性ボールぺン用インキ組成物、及びこのインキ組成物を使用した消去性を有するボールペンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、筆記した描線が、消しゴムにて消去可能となる消去性インキ組成物は、数多くの提案がなされている。
【0003】
例えば、顔料の粒径を大きくして、色材が紙に染み込まないようにして、その消去性を向上せしめた消去性インキ組成物や揮発性溶剤を添加してなる消去性インキ組成物が知られている。
顔料の粒径を大きくした消去性インキ組成物では、描線濃度が薄くなるという問題点を有し、また、揮発性溶剤を添加してなる消去性インキ組成物では、ペン先がドライアップし、筆記性能に悪影響を与えるという問題点を有するものであった。
【0004】
一方、筆記描線の強さと消去性の点から熱可塑性ブロック共重合体を含有する消去性インキ、具体的には、重合体物質の原液着色された有機溶媒溶液を含有するボールペン用消去性インキにおいて、前記溶液がガラス質A(熱可塑性)ブロックとB(ゴム状)ブロックのABA、(AB)nXまたは(−AB)−(ここで、Xは2〜4官能性をもつ有機または無機結合分子で、nはその官能性に相当する数である)からなる配列を有する熱可塑性ブロック共重合体を含み、前記熱可塑性ブロックはポリスチレンブロックからなり、前記ゴム状ブロックはポリブタジエン、ポリイソプレンまたはポリエチレン−ポリブチレンブロックからなり、そのゴム状ブロック対熱可塑性ブロックの比は60:40〜90:10までであり、前記溶媒の溶解度係数が7〜10.5までであることを特徴とするボールペン用消去性インキ、並びに、上記溶媒として、溶解度係数7.2と7.8の間の第一溶媒と、溶解度係数8.7と8.9の間の第二溶媒との混合溶媒を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、筆記用紙に書かれた筆跡が初めのうちは普通の鉛筆用消しゴムで消すことができ、一定の時間後は消すことができなくなるボールペン筆記具用インキ組成物であって、該インキ組成物が、天然ゴム、合成ゴム及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記インキ組成物の約18〜28重量%の範囲で存在するエラストマーと、前記インキ組成物の約20〜22重量%の範囲で存在する顔料と、前記エラストマー及び顔料用の溶媒系であって、前記インキ組成物の約8〜30重量%の範囲で存在し、約180℃以下の沸点を有する揮発性成分と、約180℃以上約300℃以下の沸点を有する本質的に非揮発性成分からなる溶媒系からなることを特徴とする初期には消去可能なボールペン用インキ組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特公平2−47512号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】
特開昭57−170967号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【0006】
上記特許文献1に記載されるボールペン用消去性インキでは、溶媒の溶解度係数が7〜10.5までであり、しかも、低揮発性のものを使用しているため、描線乾燥性が充分でなく、また、筆記直後に消去しようとすると、紙面上で描線が延びてしまい、紙面を汚してしまうという課題を有するものである。
また、上記特許文献2に記載されるボールペン用消去性インキは、インキ組成物中に約8〜30重量%の範囲で存在し、約180℃以下の沸点を有する揮発性成分と、約180℃以上約300℃以下の沸点を有する本質的に非揮発性成分からなる溶媒を用いるため、ある程度の消去性は向上するが、ペン先で溶剤が揮発してしまうので、長期保存性に課題を有するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、描線濃度を充分確保しながらも、充分な消去性能を有し、且つ、ペン先のドライアップによる筆記不良を低減した筆記性能に優れる消去性ボールペン用インキ組成物及び消去性ボールペンを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の従来の課題等について、鎖意検討した結果、少なくとも溶剤、着色剤、熱可塑性エラストマーからなるインキ組成物において、配合される熱可塑性エラストマーを完全に溶解する特定の溶剤(A類)と、配合される熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる特定の溶剤(B類)の少なくとも2種類以上の溶剤を含有せしめることにより、上記目的の消去性ボールペン用インキ組成物及び消去性ボールペンが得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(8)に存する。
(1) 少なくとも、着色剤、熱可塑性エラストマーからなる消しゴムで消去可能なボールペン用インキにおいて、下記A類及びB類から夫々選ばれる2種類以上の溶剤を使用することを特徴とする消去性ボールぺン用インキ組成物。
〔A類〕
使用する熱可塑性エラストマーを溶解し、且つ、常圧下での沸点が140〜250℃である溶剤。
〔B類〕
使用する熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる溶剤。
(2) 熱可塑性エラストマーが、スチレン系エラストマーである上記(1)に記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
(3) 熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、B類の溶剤の少なくとも1種は、流動パラフィンである上記(1)に記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
(4) 熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、B類の溶剤の少なくとも1種は、分子中に1つだけヒドロキシル基を含み、且つ、エチレンオキサイドを含まない分子量130以上のモノエステル、若しくはモノエーテル化合物である上記(1)に記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
(5) 熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、B類の溶剤の少なくとも1種は、グリセリン、ジグリセリンの完全エステル化である上記(1)記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
(6) 熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、B類の溶剤の少なくとも1種は、炭素数8〜20のアルコールである上記(1)記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
(7) 上記(1)〜(6)の何れか一つに記載のインキ組成物がボールペン用リフィールに充填されたものから構成されたことを特徴とするボールペン。
(8) ボールペンが加圧式ボールぺンであり、リフィール内圧が、1,500〜10,000hPaである上記(7)記載のボールペン。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の消去性ボールペン用インキ組成物は、少なくとも、着色剤、熱可塑性エラストマーからなる消しゴムで消去可能なボールペン用インキにおいて、下記A類及びB類から夫々選ばれる2種類以上の溶剤を使用することを特徴とするものである。
〔A類〕
使用する熱可塑性エラストマーを溶解し、且つ、常圧下での沸点が140〜250℃である溶剤。
〔B類〕
使用する熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる溶剤。
【0010】
本発明に用いる熱可塑性エラストマーとしては、上記A類の溶剤、B類の溶剤における両方の要件を満たすもの、すなわち、A類の溶剤に対して溶解する熱可塑性エラストマー、B類の溶剤に対して、混合により、その混合物が弾性体となる熱可塑性エラストマーとなるものであれば、特に限定するものではない。
用いることができる熱可塑性エラストマーは、未加硫ゴムを含むものであり、具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴムなどが挙げられる。
これらの熱可塑性エラストマーは、夫々単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
これらの熱可塑性エラストマーの中でも、好ましくは、インキの流動性、すなわち、筆記性に優れ、かつ、相反する描線塗膜のゴム弾性、すなわち、消去性が発現しやすい点から、スチレン系エラストマー、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)等が望ましい。
【0011】
本発明において、用いる熱可塑性エラストマーの平均分子量は、特に、限定されるものではないが、大きいほど、消去性能が良好であり、105〜5×106の範囲であることが望ましい。この平均分子量が5×106を越えて大きくなりすぎると、インキの流動性が極端に悪くなり、カスレや糸引きが発生したりと、筆記性能が低下してくることとなる。逆に、平均分子量が105より小さすぎると、消去性が発現しにくくなる。
【0012】
用いる熱可塑性エラストマーの含有量は、使用するエラストマーの平均分子量や、分子構造、更には使用する溶剤により異なるため、特に限定されないが、概ね、インキ組成物全量に対して、2〜25重量%、更に好ましくは、5〜15重量%の範囲であることが望ましい。
この含有量が25重量%を越えて多すぎると、インキの流動性が極端に悪くなり、カスレや糸引き発生といったように筆記性能が低下することとなり、また、2重量%未満であると、消去性が発現しにくくなる。
【0013】
本発明に用いる溶剤としては、筆記性及び消去性に優れるインキとする点から、A類の溶剤は使用する熱可塑性エラストマーを溶解し、且つ、常圧下での沸点が140〜250℃である溶剤であり、B類の溶剤は使用する熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる溶剤であることが必要である。
本発明では、A類の溶剤から少なくとも1種を使用すると共に、B類の溶剤から少なくとも1種を使用、すなわち、A類及びB類から夫々選ばれる2種類以上の溶剤を使用することにより、インキが紙等の被転着面に移行すると、まず適度な揮発性を有するA類の溶剤が揮散、若しくは、被転着面内部へ拡散することで、B類溶剤と熱可塑性エラストマー等で構成される残ったインキ成分が即座に弾性を有する膜を形成し、消去可能な描線となるものである。
なお、上記A類単独の溶剤のみの使用、または、上記B類単独の溶剤のみの使用では、本発明の効果を発揮できないものとなる。
【0014】
本発明に用いるA類の溶剤としては、使用する熱可塑性エラストマーを溶解し、且つ、常圧下での沸点が140〜250℃であるものであれば、特に限定されず、例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:175℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点:189℃)、エチレングリコールジブチルエーテル(沸点:203℃)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点:146℃)、3−メトキシー3−メチルーブチルアセテート(沸点:188℃)、n−デカン(沸点:174℃)、ケロシン(沸点:150〜250℃)、イソプロピルベンゼン(沸点:152℃)、ジペンテン(沸点:177℃)などが挙げられる。
【0015】
また、本発明に用いるB類の溶剤としては、使用する熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる溶剤であれば、特に限定されないが、スチレン系エラストマーを使用することが、より好ましいことから、このスチレンブロック部への親和性が小さく、ポリブタジエン、ポリエチレン−ポリプロピレン等のゴム弾性部への親和性を有する溶剤で、好ましくは、流動パラフィン、分子中に1つだけヒドロキシル基を含み、且つ、エチレンオキサイドを含まない分子量130以上のモノエステル、若しくはモノエーテル化合物、グリセリン、ジグリセリンの完全エステル化物、炭素数8〜20のアルコールなどの使用が望ましい。
上記分子中に1つだけヒドロキシル基を含み、且つ、エチレンオキサイドを含まない分子量130以上のモノエステル、若しくはモノエーテル化合物としては、例えば、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ヒドロキシステアリン酸オクチルなどが挙げられる。
また、グリセリン、ジグリセリンの完全エステル化物としては、例えば、ジグリセリンテトライソステアレート、グリセリントリオレエートなどが挙げられる。
更に、炭素数8〜20のアルコールとしては、例えば、n−オクタノール、2−エチルへキサノール、n−デカノール、トリメチルノニルアルコールなどが挙げられる。
【0016】
上記A類、B類のそれぞれの溶剤は、使用する熱可塑性エラストマーに応じて、好適な組み合わせとなるものを選択することが望ましい。例えば、SBSエラストマーの場合、分子量、硬質相(スチレン)と軟質相(ブタジエン)の比率にもよるが、以下の溶剤が挙げられる。
A類の溶剤としては、例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:175℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点:189℃)、エチレングリコールジブチルエーテル(沸点:203℃)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点:146℃)、3−メトキシー3−メチルーブチルアセテート(沸点:188℃)などが使用でき、また、B類の溶剤としては、流動パラフィン、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ジグリセリンテトラエステル、C12〜l3側鎖1級アルコール、ヒドロキシステアリン酸オクチルなどが使用できる。
【0017】
本発明において、上記A類の溶剤と上記B類の溶剤の比率は、特に制限されるものでないが、更に優れた筆記性と消去性を同時に発揮せしめるため、A類の溶剤/B類の溶剤の比率(重量比)は、10/90〜90/10の範囲、更に好ましくは、30/70〜70/30の範囲であることが望ましい。
このA類の溶剤の比率が90/10より高すぎる場合、消去性が発現しなくなり、逆に、B類の溶剤の比率が10/90より高すぎる場合、ペン先での溶剤蒸発の影響が大きくなり、筆記時にカスレを生じることになる。
【0018】
また、上記A類とB類を併せた溶剤の(合計)含有量は、インキ組成物全量に対して、40〜80重量%の範囲、更に好ましくは、50〜70重量%の範囲であることが望ましい。
この溶剤量が40重量%未満である場合、概してインキの流動性が非常に乏しくなり、筆記性に悪影響を及ぼすこととなり、また、溶剤量が80重量%を超える場合には、筆記性を良好に保つことは可能であるが、消去性が悪くなる。
【0019】
本発明に用いる顔料としては、例えば、カーボンブラック、銅フタロシアニン、ハロゲン化フタロシアニン、モノアゾ、ジアゾ、縮合アゾ、アンスラキノン、イソインドリノン、キノフタロン、アシルアミド、アンスラピリミジン、キナクリドン、インダスレン、ペリレン、ペノリン、ジオキサジン、チオインジゴ、ジケトピロロビロール等の有機顔料や、酸化チタン、べんがら、顛鈴、黄土、チタン黄、アンチモン朱、群青、酸化クロム、酸化鉄、アルミナ等の無機顔料、更にはレーキ顔料等も使用することができる。
顔料の粒径は、特に制限はないが、描線濃度の面から、平均粒径1μm以下であることが望ましい。
この顔料の含有量についても、特に筆記性、消去性を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常、インキ組成物全量に対して、1〜40重量%、好ましくは、5〜25重量%の範囲が望ましい。
【0020】
本発明のインキ組成物には、更に、筆記性、消去性を阻害しない範囲であれば、通常ボールペン用インキ組成物に用いられる防腐剤、潤滑剤、溶解助剤、樹脂等の添加剤(任意成分)を含有することができる。
ただし、0℃以上のTgを有する樹脂を含有せしめる場合は、消去性の低下を招く場合があるため、その含有量は最小限に抑えた方が良い。また、使用する熱可塑性エラストマーを軟化させてしまう添加剤は、描線の乾燥速度が非常に遅くなり、消去性を大きく阻害してしまうため、その含有量も最小限に抑えた方が良い。
【0021】
本発明では、インキ組成物の粘度は、高い方が消去性に有利であるが、粘度が高すぎると、カスレ等を生じ、筆記性に悪影響を及ぼすこととなる。従って、特に制限するものではないが、好ましくは、10〜104Pa・sが望ましい。特に、インキの粘度が102(100)Pa・sを超える場合は、加圧式ボールペンの形態が望ましい。これは、通常ボールペンの重力に頼った吐出機構では、インキが流出し難くなるためである。
【0022】
このように構成される本発明の消去性ボールペン用インキ組成物では、少なくとも着色剤、熱可塑性エラストマーを含有すると共に、上記A類及びB類から夫々選ばれる2種類以上の溶剤を含有することで、描線濃度を充分確保しながらも、充分な消去性能を有し、且つ、ペン先のドライアップによる筆記不良を低減した筆記性能に優れるものとなる。
【0023】
本発明の消去性ボールペンは、上記構成となる本発明の消去性インキ組成物がボールペン用リフィール(インキ収容管)に充填されたものから構成されたものであることを特徴とするものである。
ボールペン構造等は、特に限定されるものではなく、通常のボールペン構造の他、加圧式ボールペンなどが挙げられる。
本発明の上記消去性インキ組成物を加圧式ボールぺンに使用する場合は、リフィール(インキ収納管内)の内圧は、1,500〜10,000hPaの範囲、更に好ましくは、2,000〜6,000hPaの範囲とすることが望ましい。
この内圧が1,500hPa未満の場合は、インキ流出に伴い次第に気相容積が増大し圧力が低下するため、インキが全て吐出してしまう前に外気圧力と同等になってしまう恐れがあり、このような事態になると、インキが残っているにも関わらず、筆訂不能になってしまうことがある。また、10,000hPaを超える場合、吐出圧力が高すぎてインキの吹き出しや、流量が不安定になったり、ボールの動きも制限されることにより、書き味が重くなったりしてしまうことがある。
【0024】
本発明の消去性ボールペンは、上述の構成となる消去性インキ組成物がボールペン用リフィールに充填されたものから構成されるので、描線濃度を充分確保しながらも、充分な消去性能を有し、且つ、ペン先のドライアップによる筆記不良を低減した筆記性能に優れるものとなり、特に、加圧式ボールペンでは、より高い粘度のインキを使用できるので、非常に優れた消去性を有するものとなる。
【0025】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって何ら限定されるものではない。
【0026】
〔実施例1〜6及び比較例1〜5〕
下記表1に示される溶剤(A類、B類、その他溶剤)、熱可塑性エラストマー、顔料(全て平均粒径1μm以下)、潤滑剤からなる配合組成で、全ての成分を調合した後、エラストマーが溶剤に対して十分に膨潤するまで高温下に密封状態で保存し、その後、三本ロールで4〜6Pass混練することで、各インキ組成物を調製した。
得られた各インキ組成物は、インキ収納管内の圧力を、約3,000hPaに設定した加圧ボールペンに仕立て、下記評価方法等により、インキ粘度、筆記性及び消去性の評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
【0027】
(インキ粘度の測定方法)
E型粘度計(TV−30:東機産業社製)、コーン:3° R×7.7、剪断速度0.2sec−1にて、25℃の粘度(Pa・s)を測定した。なお、表1中の各粘度は、×103であり、例えば、実施例1は9×103(=9000)Pa・sを意味する。
【0028】
(筆記性の評価方法)
加圧ボールペンに仕立てた後、25℃、60%環境下に、ペン先が横に向くように3日間放置後、筆記を行い、カスレの有無を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:かすれず筆記が可能
△:ややかすれるが、筆記は可能
×:筆記不能
【0029】
(消去性の評価方法)
一般の中性コピー用紙に、筆記後、プラスチック消しゴムにて消去し、消去の度合いを目視にて下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:痕跡が残らず消去できる
○:ほぼ消去できる
△:ややかすれるが、筆記は可能
×:描線の痕跡がはっきりと残っており、殆ど消えない
【0030】
【表1】
【0031】
上記表1中の*1〜*l2、×*、−*は、下記のとおりである。
*1:沸点189℃、*2:沸点175℃、*3:沸点203℃、
*4:沸点300℃以上、*5:沸点300℃以上、*6:沸点300℃以上
*7:沸点300℃以上、商品名「KAYDOL」、Witco社製
*8:沸点300℃以上、*9:沸点300℃以上、*10:沸点300℃以上
*11:アサプレン(旭化成社製)、平均分子量:約40万
*12:セプトン(クラレ社製)、平均分子量:105〜5×106
×*:流動しないため、測定できず。
−*:筆記性が悪いため、評価できず。
【0032】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜6は、本発明の範囲外となる比較例1〜5と較べて、各々A類、B類の溶剤が好適な比率で含油されているため、筆記性及び消去性ともに、満足のいく性能であった。
これに対して、比較例1では、A類の溶剤が含有されていないため、インキの流動性がなくなり、筆記できず、また、比較例2では、B類溶剤が含有されていないため、インキの流動性が上がり、塗膜が硬化しないため、消去性がなく、比較例3及び比較例4では、エラストマーは溶解するが、沸点の高い溶剤を使用したため、描線の乾燥性が発現しにくく、消しゴムによる消去の際、描線が延びてしまうこととなった。
また、比較例5では、エラストマーは溶解するが、沸点の低い溶剤を使用したため、ペン先での溶剤のドライアップにより筆記時にカスレ等を生じてしまうことが判った。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、通常のボールペンなみの筆記性及び描線濃度を充分確保しながらも、充分な消去性能を有し、且つ、ペン先のドライアップによる筆記不良を低減した筆記性能に優れる消去性ボールペン用インキ組成物及び消去性ボールペンが提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、筆記した描線が、消しゴムにて消去可能である、消去性ボールぺン用インキ組成物、及びこのインキ組成物を使用した消去性を有するボールペンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、筆記した描線が、消しゴムにて消去可能となる消去性インキ組成物は、数多くの提案がなされている。
【0003】
例えば、顔料の粒径を大きくして、色材が紙に染み込まないようにして、その消去性を向上せしめた消去性インキ組成物や揮発性溶剤を添加してなる消去性インキ組成物が知られている。
顔料の粒径を大きくした消去性インキ組成物では、描線濃度が薄くなるという問題点を有し、また、揮発性溶剤を添加してなる消去性インキ組成物では、ペン先がドライアップし、筆記性能に悪影響を与えるという問題点を有するものであった。
【0004】
一方、筆記描線の強さと消去性の点から熱可塑性ブロック共重合体を含有する消去性インキ、具体的には、重合体物質の原液着色された有機溶媒溶液を含有するボールペン用消去性インキにおいて、前記溶液がガラス質A(熱可塑性)ブロックとB(ゴム状)ブロックのABA、(AB)nXまたは(−AB)−(ここで、Xは2〜4官能性をもつ有機または無機結合分子で、nはその官能性に相当する数である)からなる配列を有する熱可塑性ブロック共重合体を含み、前記熱可塑性ブロックはポリスチレンブロックからなり、前記ゴム状ブロックはポリブタジエン、ポリイソプレンまたはポリエチレン−ポリブチレンブロックからなり、そのゴム状ブロック対熱可塑性ブロックの比は60:40〜90:10までであり、前記溶媒の溶解度係数が7〜10.5までであることを特徴とするボールペン用消去性インキ、並びに、上記溶媒として、溶解度係数7.2と7.8の間の第一溶媒と、溶解度係数8.7と8.9の間の第二溶媒との混合溶媒を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、筆記用紙に書かれた筆跡が初めのうちは普通の鉛筆用消しゴムで消すことができ、一定の時間後は消すことができなくなるボールペン筆記具用インキ組成物であって、該インキ組成物が、天然ゴム、合成ゴム及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記インキ組成物の約18〜28重量%の範囲で存在するエラストマーと、前記インキ組成物の約20〜22重量%の範囲で存在する顔料と、前記エラストマー及び顔料用の溶媒系であって、前記インキ組成物の約8〜30重量%の範囲で存在し、約180℃以下の沸点を有する揮発性成分と、約180℃以上約300℃以下の沸点を有する本質的に非揮発性成分からなる溶媒系からなることを特徴とする初期には消去可能なボールペン用インキ組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特公平2−47512号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】
特開昭57−170967号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【0006】
上記特許文献1に記載されるボールペン用消去性インキでは、溶媒の溶解度係数が7〜10.5までであり、しかも、低揮発性のものを使用しているため、描線乾燥性が充分でなく、また、筆記直後に消去しようとすると、紙面上で描線が延びてしまい、紙面を汚してしまうという課題を有するものである。
また、上記特許文献2に記載されるボールペン用消去性インキは、インキ組成物中に約8〜30重量%の範囲で存在し、約180℃以下の沸点を有する揮発性成分と、約180℃以上約300℃以下の沸点を有する本質的に非揮発性成分からなる溶媒を用いるため、ある程度の消去性は向上するが、ペン先で溶剤が揮発してしまうので、長期保存性に課題を有するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、描線濃度を充分確保しながらも、充分な消去性能を有し、且つ、ペン先のドライアップによる筆記不良を低減した筆記性能に優れる消去性ボールペン用インキ組成物及び消去性ボールペンを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の従来の課題等について、鎖意検討した結果、少なくとも溶剤、着色剤、熱可塑性エラストマーからなるインキ組成物において、配合される熱可塑性エラストマーを完全に溶解する特定の溶剤(A類)と、配合される熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる特定の溶剤(B類)の少なくとも2種類以上の溶剤を含有せしめることにより、上記目的の消去性ボールペン用インキ組成物及び消去性ボールペンが得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(8)に存する。
(1) 少なくとも、着色剤、熱可塑性エラストマーからなる消しゴムで消去可能なボールペン用インキにおいて、下記A類及びB類から夫々選ばれる2種類以上の溶剤を使用することを特徴とする消去性ボールぺン用インキ組成物。
〔A類〕
使用する熱可塑性エラストマーを溶解し、且つ、常圧下での沸点が140〜250℃である溶剤。
〔B類〕
使用する熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる溶剤。
(2) 熱可塑性エラストマーが、スチレン系エラストマーである上記(1)に記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
(3) 熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、B類の溶剤の少なくとも1種は、流動パラフィンである上記(1)に記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
(4) 熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、B類の溶剤の少なくとも1種は、分子中に1つだけヒドロキシル基を含み、且つ、エチレンオキサイドを含まない分子量130以上のモノエステル、若しくはモノエーテル化合物である上記(1)に記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
(5) 熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、B類の溶剤の少なくとも1種は、グリセリン、ジグリセリンの完全エステル化である上記(1)記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
(6) 熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、B類の溶剤の少なくとも1種は、炭素数8〜20のアルコールである上記(1)記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
(7) 上記(1)〜(6)の何れか一つに記載のインキ組成物がボールペン用リフィールに充填されたものから構成されたことを特徴とするボールペン。
(8) ボールペンが加圧式ボールぺンであり、リフィール内圧が、1,500〜10,000hPaである上記(7)記載のボールペン。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の消去性ボールペン用インキ組成物は、少なくとも、着色剤、熱可塑性エラストマーからなる消しゴムで消去可能なボールペン用インキにおいて、下記A類及びB類から夫々選ばれる2種類以上の溶剤を使用することを特徴とするものである。
〔A類〕
使用する熱可塑性エラストマーを溶解し、且つ、常圧下での沸点が140〜250℃である溶剤。
〔B類〕
使用する熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる溶剤。
【0010】
本発明に用いる熱可塑性エラストマーとしては、上記A類の溶剤、B類の溶剤における両方の要件を満たすもの、すなわち、A類の溶剤に対して溶解する熱可塑性エラストマー、B類の溶剤に対して、混合により、その混合物が弾性体となる熱可塑性エラストマーとなるものであれば、特に限定するものではない。
用いることができる熱可塑性エラストマーは、未加硫ゴムを含むものであり、具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴムなどが挙げられる。
これらの熱可塑性エラストマーは、夫々単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
これらの熱可塑性エラストマーの中でも、好ましくは、インキの流動性、すなわち、筆記性に優れ、かつ、相反する描線塗膜のゴム弾性、すなわち、消去性が発現しやすい点から、スチレン系エラストマー、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)等が望ましい。
【0011】
本発明において、用いる熱可塑性エラストマーの平均分子量は、特に、限定されるものではないが、大きいほど、消去性能が良好であり、105〜5×106の範囲であることが望ましい。この平均分子量が5×106を越えて大きくなりすぎると、インキの流動性が極端に悪くなり、カスレや糸引きが発生したりと、筆記性能が低下してくることとなる。逆に、平均分子量が105より小さすぎると、消去性が発現しにくくなる。
【0012】
用いる熱可塑性エラストマーの含有量は、使用するエラストマーの平均分子量や、分子構造、更には使用する溶剤により異なるため、特に限定されないが、概ね、インキ組成物全量に対して、2〜25重量%、更に好ましくは、5〜15重量%の範囲であることが望ましい。
この含有量が25重量%を越えて多すぎると、インキの流動性が極端に悪くなり、カスレや糸引き発生といったように筆記性能が低下することとなり、また、2重量%未満であると、消去性が発現しにくくなる。
【0013】
本発明に用いる溶剤としては、筆記性及び消去性に優れるインキとする点から、A類の溶剤は使用する熱可塑性エラストマーを溶解し、且つ、常圧下での沸点が140〜250℃である溶剤であり、B類の溶剤は使用する熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる溶剤であることが必要である。
本発明では、A類の溶剤から少なくとも1種を使用すると共に、B類の溶剤から少なくとも1種を使用、すなわち、A類及びB類から夫々選ばれる2種類以上の溶剤を使用することにより、インキが紙等の被転着面に移行すると、まず適度な揮発性を有するA類の溶剤が揮散、若しくは、被転着面内部へ拡散することで、B類溶剤と熱可塑性エラストマー等で構成される残ったインキ成分が即座に弾性を有する膜を形成し、消去可能な描線となるものである。
なお、上記A類単独の溶剤のみの使用、または、上記B類単独の溶剤のみの使用では、本発明の効果を発揮できないものとなる。
【0014】
本発明に用いるA類の溶剤としては、使用する熱可塑性エラストマーを溶解し、且つ、常圧下での沸点が140〜250℃であるものであれば、特に限定されず、例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:175℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点:189℃)、エチレングリコールジブチルエーテル(沸点:203℃)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点:146℃)、3−メトキシー3−メチルーブチルアセテート(沸点:188℃)、n−デカン(沸点:174℃)、ケロシン(沸点:150〜250℃)、イソプロピルベンゼン(沸点:152℃)、ジペンテン(沸点:177℃)などが挙げられる。
【0015】
また、本発明に用いるB類の溶剤としては、使用する熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる溶剤であれば、特に限定されないが、スチレン系エラストマーを使用することが、より好ましいことから、このスチレンブロック部への親和性が小さく、ポリブタジエン、ポリエチレン−ポリプロピレン等のゴム弾性部への親和性を有する溶剤で、好ましくは、流動パラフィン、分子中に1つだけヒドロキシル基を含み、且つ、エチレンオキサイドを含まない分子量130以上のモノエステル、若しくはモノエーテル化合物、グリセリン、ジグリセリンの完全エステル化物、炭素数8〜20のアルコールなどの使用が望ましい。
上記分子中に1つだけヒドロキシル基を含み、且つ、エチレンオキサイドを含まない分子量130以上のモノエステル、若しくはモノエーテル化合物としては、例えば、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ヒドロキシステアリン酸オクチルなどが挙げられる。
また、グリセリン、ジグリセリンの完全エステル化物としては、例えば、ジグリセリンテトライソステアレート、グリセリントリオレエートなどが挙げられる。
更に、炭素数8〜20のアルコールとしては、例えば、n−オクタノール、2−エチルへキサノール、n−デカノール、トリメチルノニルアルコールなどが挙げられる。
【0016】
上記A類、B類のそれぞれの溶剤は、使用する熱可塑性エラストマーに応じて、好適な組み合わせとなるものを選択することが望ましい。例えば、SBSエラストマーの場合、分子量、硬質相(スチレン)と軟質相(ブタジエン)の比率にもよるが、以下の溶剤が挙げられる。
A類の溶剤としては、例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:175℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点:189℃)、エチレングリコールジブチルエーテル(沸点:203℃)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点:146℃)、3−メトキシー3−メチルーブチルアセテート(沸点:188℃)などが使用でき、また、B類の溶剤としては、流動パラフィン、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ジグリセリンテトラエステル、C12〜l3側鎖1級アルコール、ヒドロキシステアリン酸オクチルなどが使用できる。
【0017】
本発明において、上記A類の溶剤と上記B類の溶剤の比率は、特に制限されるものでないが、更に優れた筆記性と消去性を同時に発揮せしめるため、A類の溶剤/B類の溶剤の比率(重量比)は、10/90〜90/10の範囲、更に好ましくは、30/70〜70/30の範囲であることが望ましい。
このA類の溶剤の比率が90/10より高すぎる場合、消去性が発現しなくなり、逆に、B類の溶剤の比率が10/90より高すぎる場合、ペン先での溶剤蒸発の影響が大きくなり、筆記時にカスレを生じることになる。
【0018】
また、上記A類とB類を併せた溶剤の(合計)含有量は、インキ組成物全量に対して、40〜80重量%の範囲、更に好ましくは、50〜70重量%の範囲であることが望ましい。
この溶剤量が40重量%未満である場合、概してインキの流動性が非常に乏しくなり、筆記性に悪影響を及ぼすこととなり、また、溶剤量が80重量%を超える場合には、筆記性を良好に保つことは可能であるが、消去性が悪くなる。
【0019】
本発明に用いる顔料としては、例えば、カーボンブラック、銅フタロシアニン、ハロゲン化フタロシアニン、モノアゾ、ジアゾ、縮合アゾ、アンスラキノン、イソインドリノン、キノフタロン、アシルアミド、アンスラピリミジン、キナクリドン、インダスレン、ペリレン、ペノリン、ジオキサジン、チオインジゴ、ジケトピロロビロール等の有機顔料や、酸化チタン、べんがら、顛鈴、黄土、チタン黄、アンチモン朱、群青、酸化クロム、酸化鉄、アルミナ等の無機顔料、更にはレーキ顔料等も使用することができる。
顔料の粒径は、特に制限はないが、描線濃度の面から、平均粒径1μm以下であることが望ましい。
この顔料の含有量についても、特に筆記性、消去性を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常、インキ組成物全量に対して、1〜40重量%、好ましくは、5〜25重量%の範囲が望ましい。
【0020】
本発明のインキ組成物には、更に、筆記性、消去性を阻害しない範囲であれば、通常ボールペン用インキ組成物に用いられる防腐剤、潤滑剤、溶解助剤、樹脂等の添加剤(任意成分)を含有することができる。
ただし、0℃以上のTgを有する樹脂を含有せしめる場合は、消去性の低下を招く場合があるため、その含有量は最小限に抑えた方が良い。また、使用する熱可塑性エラストマーを軟化させてしまう添加剤は、描線の乾燥速度が非常に遅くなり、消去性を大きく阻害してしまうため、その含有量も最小限に抑えた方が良い。
【0021】
本発明では、インキ組成物の粘度は、高い方が消去性に有利であるが、粘度が高すぎると、カスレ等を生じ、筆記性に悪影響を及ぼすこととなる。従って、特に制限するものではないが、好ましくは、10〜104Pa・sが望ましい。特に、インキの粘度が102(100)Pa・sを超える場合は、加圧式ボールペンの形態が望ましい。これは、通常ボールペンの重力に頼った吐出機構では、インキが流出し難くなるためである。
【0022】
このように構成される本発明の消去性ボールペン用インキ組成物では、少なくとも着色剤、熱可塑性エラストマーを含有すると共に、上記A類及びB類から夫々選ばれる2種類以上の溶剤を含有することで、描線濃度を充分確保しながらも、充分な消去性能を有し、且つ、ペン先のドライアップによる筆記不良を低減した筆記性能に優れるものとなる。
【0023】
本発明の消去性ボールペンは、上記構成となる本発明の消去性インキ組成物がボールペン用リフィール(インキ収容管)に充填されたものから構成されたものであることを特徴とするものである。
ボールペン構造等は、特に限定されるものではなく、通常のボールペン構造の他、加圧式ボールペンなどが挙げられる。
本発明の上記消去性インキ組成物を加圧式ボールぺンに使用する場合は、リフィール(インキ収納管内)の内圧は、1,500〜10,000hPaの範囲、更に好ましくは、2,000〜6,000hPaの範囲とすることが望ましい。
この内圧が1,500hPa未満の場合は、インキ流出に伴い次第に気相容積が増大し圧力が低下するため、インキが全て吐出してしまう前に外気圧力と同等になってしまう恐れがあり、このような事態になると、インキが残っているにも関わらず、筆訂不能になってしまうことがある。また、10,000hPaを超える場合、吐出圧力が高すぎてインキの吹き出しや、流量が不安定になったり、ボールの動きも制限されることにより、書き味が重くなったりしてしまうことがある。
【0024】
本発明の消去性ボールペンは、上述の構成となる消去性インキ組成物がボールペン用リフィールに充填されたものから構成されるので、描線濃度を充分確保しながらも、充分な消去性能を有し、且つ、ペン先のドライアップによる筆記不良を低減した筆記性能に優れるものとなり、特に、加圧式ボールペンでは、より高い粘度のインキを使用できるので、非常に優れた消去性を有するものとなる。
【0025】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって何ら限定されるものではない。
【0026】
〔実施例1〜6及び比較例1〜5〕
下記表1に示される溶剤(A類、B類、その他溶剤)、熱可塑性エラストマー、顔料(全て平均粒径1μm以下)、潤滑剤からなる配合組成で、全ての成分を調合した後、エラストマーが溶剤に対して十分に膨潤するまで高温下に密封状態で保存し、その後、三本ロールで4〜6Pass混練することで、各インキ組成物を調製した。
得られた各インキ組成物は、インキ収納管内の圧力を、約3,000hPaに設定した加圧ボールペンに仕立て、下記評価方法等により、インキ粘度、筆記性及び消去性の評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
【0027】
(インキ粘度の測定方法)
E型粘度計(TV−30:東機産業社製)、コーン:3° R×7.7、剪断速度0.2sec−1にて、25℃の粘度(Pa・s)を測定した。なお、表1中の各粘度は、×103であり、例えば、実施例1は9×103(=9000)Pa・sを意味する。
【0028】
(筆記性の評価方法)
加圧ボールペンに仕立てた後、25℃、60%環境下に、ペン先が横に向くように3日間放置後、筆記を行い、カスレの有無を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:かすれず筆記が可能
△:ややかすれるが、筆記は可能
×:筆記不能
【0029】
(消去性の評価方法)
一般の中性コピー用紙に、筆記後、プラスチック消しゴムにて消去し、消去の度合いを目視にて下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:痕跡が残らず消去できる
○:ほぼ消去できる
△:ややかすれるが、筆記は可能
×:描線の痕跡がはっきりと残っており、殆ど消えない
【0030】
【表1】
【0031】
上記表1中の*1〜*l2、×*、−*は、下記のとおりである。
*1:沸点189℃、*2:沸点175℃、*3:沸点203℃、
*4:沸点300℃以上、*5:沸点300℃以上、*6:沸点300℃以上
*7:沸点300℃以上、商品名「KAYDOL」、Witco社製
*8:沸点300℃以上、*9:沸点300℃以上、*10:沸点300℃以上
*11:アサプレン(旭化成社製)、平均分子量:約40万
*12:セプトン(クラレ社製)、平均分子量:105〜5×106
×*:流動しないため、測定できず。
−*:筆記性が悪いため、評価できず。
【0032】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜6は、本発明の範囲外となる比較例1〜5と較べて、各々A類、B類の溶剤が好適な比率で含油されているため、筆記性及び消去性ともに、満足のいく性能であった。
これに対して、比較例1では、A類の溶剤が含有されていないため、インキの流動性がなくなり、筆記できず、また、比較例2では、B類溶剤が含有されていないため、インキの流動性が上がり、塗膜が硬化しないため、消去性がなく、比較例3及び比較例4では、エラストマーは溶解するが、沸点の高い溶剤を使用したため、描線の乾燥性が発現しにくく、消しゴムによる消去の際、描線が延びてしまうこととなった。
また、比較例5では、エラストマーは溶解するが、沸点の低い溶剤を使用したため、ペン先での溶剤のドライアップにより筆記時にカスレ等を生じてしまうことが判った。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、通常のボールペンなみの筆記性及び描線濃度を充分確保しながらも、充分な消去性能を有し、且つ、ペン先のドライアップによる筆記不良を低減した筆記性能に優れる消去性ボールペン用インキ組成物及び消去性ボールペンが提供される。
Claims (8)
- 少なくとも、着色剤、熱可塑性エラストマーからなる消しゴムで消去可能なボールペン用インキにおいて、下記A類及びB類から夫々選ばれる2種類以上の溶剤を使用することを特徴とする消去性ボールぺン用インキ組成物。
〔A類〕
使用する熱可塑性エラストマーを溶解し、且つ、常圧下での沸点が140〜250℃である溶剤。
〔B類〕
使用する熱可塑性エラストマーと均一に混合することが可能で、その混合物が弾性体となる溶剤。 - 熱可塑性エラストマーが、スチレン系エラストマーである請求項1に記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
- 熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、B類の溶剤の少なくとも1種は、流動パラフィンである請求項1に記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
- 熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、B類の溶剤の少なくとも1種は、分子中に1つだけヒドロキシル基を含み、且つ、エチレンオキサイドを含まない分子量130以上のモノエステル、若しくはモノエーテル化合物である請求項1に記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
- 熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、B類の溶剤の少なくとも1種は、グリセリン、ジグリセリンの完全エステル化である請求項1記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
- 熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、B類の溶剤の少なくとも1種は、炭素数8〜20のアルコールである請求項1記載の消去性ボールぺン用インキ組成物。
- 請求項1〜6の何れか一つに記載のインキ組成物がボールペン用リフィールに充填されたものから構成されたことを特徴とするボールペン。
- ボールペンが加圧式ボールぺンであり、リフィール内圧が、1,500〜10,000hPaである請求項7記載のボールペン。
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Legal Events
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