JP2004243403A - レーザービーム溶接装置及びレーザービーム溶接方法 - Google Patents

レーザービーム溶接装置及びレーザービーム溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】段差がある場合にも板材のへり溶接を適切に行うことができるレーザービーム溶接装置及びレーザービーム溶接方法を提供する。
【解決手段】第1、第2フランジ3a、3bの各端面部25,26間に段差60があって第1トーチ11に対応する焦点位置−板材間距離がゼロ〔0〕でない場合、第1トーチ11の第1集光レンズ21の焦点23位置が第1フランジ3aの端面部25に一致するように、前記焦点位置−板材間距離分だけ第1トーチ11を移動させる。第1、第2トーチ11,12からのレーザービームが端面部25,26にジャストフォーカスした状態で照射されて、へり溶接が行われる。ジャストフォーカス状態でレーザービームが照射されるので、第1、第2フランジ3a、3bの突合せ部35は効率的に溶融して溶融体積は大きくなり、第1、第2フランジ3a、3bは確実かつ精度高く接合される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のフューエルタンクのフランジ部に対するへり溶接などに用いられるレーザービーム溶接装置及びレーザービーム溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
接合される2枚の板材に対してへり溶接を行うレーザービーム溶接装置の一例として、1本のトーチからのレーザービームを2枚の板材の突合せ部(溶接して接合すべき部分)に照射して、2枚の板材を接合する溶接装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−269943号公報(段落「0012」〜「0015」及び図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、2枚の板材の突合せ部(溶接して接合すべき部分)に板隙(隙間)、段差が存在すると溶接不良や未接合な部分が発生する。
すなわち、突合せ部に板隙が存在すると、レーザービームが照射される面積が減少するため溶融される体積が減少する。その結果、板隙を埋め合わせるだけの溶融体積が得られず溶接不良や未接合な部分が発生する。
また、突合せ部に段差が存在すると、突合せ部の両方の板材にレーザービームをジャストフォーカスするのは不可能であるため、溶融される体積が減少する。その結果、2枚の板の溶融池がつながらないため溶接不良や未接合な部分が発生する。
【0005】
例えば、図10に示すように、第1、第2板材51,52の突合せ部(突合せ部53における第1板材51側、第2板材52側を第1板材側、第2板材側突合せ部という。)53a、53bに段差60及び板隙(隙間)61が存在する場合がある。このような場合に、従来技術では、1本の溶接トーチ62(以下、トーチという。)からのレーザービーム63が突合せ部53に効率良く当らず(すなわち、ジャストフォーカスにならず)、図11に示すように溶融される(当該溶融される部分を溶融部分64という。)体積が小さいものとなる。このため、従来技術では、第1、第2板材51,52を接合できないことが起こり得た。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、段差がある場合にも板材のへり溶接を適切に行うことができるレーザービーム溶接装置及びレーザービーム溶接方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、接合される2枚の板材に対してへり溶接を行うレーザービーム溶接装置において、前記2枚の板材の端面部にそれぞれ上方向からレーザービームを照射する2本のトーチと、該2本のトーチを移動させる駆動手段と、前記2本のトーチに備えられる集光レンズの焦点位置が前記2枚の板材の各端面部にそれぞれ一致するように前記駆動手段を制御して前記2本のトーチを移動させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、前記2本のトーチからのレーザービームが照射される前記端面部上の照射点と前記集光レンズの焦点位置とを結ぶ照射方向線分における上下方向成分に相当する焦点位置−板材間距離を検出する焦点位置−板材間距離検出手段を有し、前記制御手段は、前記駆動手段の制御を前記焦点位置−板材間距離に基づいて行うことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、前記2本のトーチからのレーザービームの先方位置における前記2枚の板材の存否を検出する板材有無検出手段と、該板材有無検出手段により前記2枚の板材について少なくとも一方の板材が無いと検出された場合、該少なくとも一方の板材が前記板材有無検出手段により検出されるように前記駆動手段を制御して前記少なくとも一方の板材に対応するトーチを移動させる照射域配置用移動制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1から3までのいずれかに記載に係るレーザービーム溶接装置の発明によれば、制御手段が2本のトーチに備えられる集光レンズの焦点位置が前記2枚の板材の各端面部にそれぞれ一致するように駆動手段を制御して前記2本のトーチを移動させるので、前記2本のトーチの移動によって対応する集光レンズの焦点位置が2枚の板材の各端面部に一致することになる。
【0009】
請求項4記載の発明は、接合される2枚の板材に対してへり溶接を行うレーザービーム溶接方法において、前記2枚の板材の端面部にそれぞれ上方向からレーザービームを照射する2本のトーチに備えられる集光レンズの焦点位置が前記2枚の板材の各端面部にそれぞれ一致するように、前記2本のトーチを移動させることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の構成において、前記2本のトーチからのレーザービームが照射される前記端面部上の照射点と前記集光レンズの焦点位置とを結ぶ照射方向線分における上下方向成分に相当する焦点位置−板材間距離を検出し、前記駆動手段の制御を、前記焦点位置−板材間距離検出手段が検出する相対変位量に基づいて行うことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項4又は5に記載の構成において、前記2本のトーチからのレーザービームの先方位置における前記2枚の板材の存否を検出し、該検出により前記2枚の板材について少なくとも一方の板材が無いと検出された場合、少なくとも一方の板材が前記板材有無検出手段により検出されるように、前記一方の板材に対応するトーチを移動することを特徴とする。
【0010】
請求項4から6までのいずれかに記載に係るレーザービーム溶接方法の発明によれば、レーザービームを照射する照射部を有する2本のトーチに備えられる集光レンズの焦点位置が前記2枚の板材の各端面部にそれぞれ一致するように、前記2本のトーチを移動させるので、前記2本のトーチの移動によって対応する集光レンズの焦点位置が2枚の板材の各端面部に一致することになり、2本のトーチからのレーザービームの2枚の板材の各端面部への照射をジャストフォーカスの状態で行えるようになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態を図1ないし図7に基づいて説明する。
図1〜図4に示すレーザービーム溶接装置1は、例えば図5に示す自動車用のフューエルタンク2のフランジ3のへり溶接のために用いられる。フューエルタンク2は燃料を貯留する容器本体4を備えている。容器本体4は、凹部5が形成された例えばステンレス鋼板からなる第1、第2の容器部材6,7を接合することにより構成される。
第1、第2の容器部材6,7の縁部には、フランジ(請求項1の2枚の板材に相当する。)3が形成されている。第1の容器部材6のフランジ3を第1フランジ3aといい、第2の容器部材7のフランジ3を第2フランジ3bという。容器本体4は、第1、第2フランジ3a、3bをへり溶接することにより第1、第2の容器部材6,7が接合されて得られている。第1の容器部材6には、エンジンへの燃料供給用の開口部8及び燃料を容器本体4に供給するためのパイプ9が設けられている。
【0012】
前記レーザービーム溶接装置1は、図1〜図3に示すように、レーザービーム発振器10と、2本のトーチ(図1右側のトーチを第1トーチ11、左側のトーチを第2トーチ12という。)と、を備えている。第1、第2トーチ11,12の先端側には照射部13,14が設けられている。レーザービーム発振器10と第1、第2トーチ11,12の基端側とはビーム伝送路15を介して接続されており、レーザービーム発振器10からのレーザービーム63を照射部13,14から外部に照射し得るようになっている。
【0013】
ビーム伝送路15の途中には、部分反射鏡16、全反射鏡17が設けられている。レーザービーム発振器10からのレーザービーム63は、部分反射鏡16を介してその約50%が第1トーチ11側に反射される一方、残りが全反射鏡17側に進んで第2トーチ12側に伝送されるようになっている。
以下、ビーム伝送路15のうち、部分反射鏡16から第1トーチ11までの部分を第1トーチビーム伝送路18といい、全反射鏡17から第2トーチ12までの部分を第2トーチ側ビーム伝送路19という。第1、第2トーチ側ビーム伝送路18,19は、可撓性とされており、後述する第1、第2トーチ11,12の移動に追従し得るようになっている。
【0014】
第1、第2トーチ11,12内には、集光レンズ(第1、第2トーチ11,12に対応してそれぞれ第1、第2集光レンズ21,22という。)が収納されており、部分反射鏡16又は全反射鏡17からのレーザービーム63を焦点23,24に集光するようにしている。この実施の形態では、第1、第2トーチ11,12の照射部13,14は、第1フランジ3aの端面部25及び第2フランジ3bの端面部26上に配置され、後述するように位置調整された上で、端面部25、26に対しレーザービーム63を斜め上方から照射するようになっている。端面部25、26におけるレーザービーム63が照射される部分を、以下、便宜上、照射点71,72という。
【0015】
レーザービーム溶接装置1は、第1、第2トーチ11,12を3次元的にそれぞれ独立して移動させる駆動装置(駆動手段)27を有している。
第1、第2トーチ11,12の先端部には、図1及び図2に示すように、焦点位置−板材間距離検出装置(焦点位置−板材間距離検出手段)28が設けられており、焦点位置−板材間距離y(図4参照)を検出するようにしている。ここで、焦点位置−板材間距離yは、第1トーチ11からのレーザービーム63が照射される第1フランジ3aの端面部25上の照射点71と第1集光レンズ21の焦点23位置とを結ぶ照射方向線分73(図4参照)における上下方向成分に相当する長さである。また、第2フランジ3bに対しては、焦点位置−板材間距離yは、端面部26上の照射点72と第2集光レンズ22の焦点24位置とを結ぶ照射方向線分における上下方向成分に相当する長さであるといえる。
【0016】
焦点位置−板材間距離検出装置28の検出原理について、図4の原理図に基づいて説明する。
この原理図(図4)では、焦点位置−板材間距離検出装置28は第1トーチ11に設けられ、第1フランジ3aの端面部25を対象にした焦点位置−板材間距離yの検出を行う場合を例にしている。図4中、73は、前記照射点71と第1集光レンズ21の焦点23位置とを結ぶ照射方向線分を示している。また、図4の例ではレーザービーム63は、端面部25に対して真上から下方に向けて照射されており、照射方向線分73における上下方向成分に相当する焦点位置−板材間距離yは、照射方向線分73の長さに一致したものになっている。
【0017】
焦点位置−板材間距離検出装置28は、図4に示すように、焦点位置−板材間距離yを検出するためのレーザービーム(以下、便宜上、基準レーザービームという)63aを所定の位置29から所定の出射角(第1集光レンズ21の焦点23位置に向かう角度)で発信する発信部30と、発信部30から発信され第1フランジ3aの端面部25で反射された基準レーザービーム63aを受光する受光部31と、焦点位置−板材間距離y検出のために発信部30の制御を行い、かつ記憶機能を有する演算部32と、から大略構成されている。
【0018】
受光部31は、入射する基準レーザービーム63aの位置(計測入射位置という。)Dを検出する。
演算部32は、基準レーザービーム63aが第1集光レンズ21の焦点23位置で反射されて受光部31に入射される位置(基準入射位置という。)E及び当該基準レーザービーム63aが受光部31に対して入射する際の角度(以下、基準入射角という。)αを記憶している。この記憶データは、予め行われる計測により求められたデータを用いる。
【0019】
上述したように受光部31は基準レーザービーム63aの計測入射位置Dを検出するが、その際の基準レーザービーム63aの入射角度は、前記基準入射角αと同等(すなわち、前記集光レンズの焦点位置で反射される基準レーザービーム63aと第1フランジ3aの端面部25とは平行)になる。
演算部32は、さらに、基準入射位置Eから計測入射位置Dまでの距離(水平方向距離という)x及び前記基準入射角αから、第1集光レンズ21の焦点23位置から第1フランジ3aの端面部25までの距離(照射方向線分73における上下方向成分、前記焦点位置−板材間距離y)を求め、焦点位置−板材間距離yを示す情報(焦点位置−板材間距離情報という。)Gを出力する。
演算部32は、同様にして第2集光レンズ22の焦点24位置から第2フランジ3bの端面部26までの距離(前記焦点位置−板材間距離y)を求め、当該焦点位置−板材間距離yを示す情報(焦点位置−板材間距離情報G)を出力する。
【0020】
なお、本実施の形態では、上述したように端面部25、26に対しレーザービーム63を斜め上方から照射する(図1参照)ようになっているが、端面部25、26に対するレーザービーム63の傾斜角度を予め記憶しており、この傾斜角度を考慮して前記焦点位置−板材間距離検出装置28の検出原理を利用することにより焦点位置−板材間距離yを検出するようにしている。
【0021】
前記演算部32、駆動装置27及びレーザービーム発振器10にはコントローラ(制御手段)33が接続されており、レーザービーム発振器10からレーザービーム63の発信を行わせるようにレーザービーム発振器10を制御する。また、コントローラ33は、演算部32から焦点位置−板材間距離情報Gを入力し、焦点位置−板材間距離情報Gに基づいて駆動装置27を制御して、焦点位置−板材間距離yがゼロとなるように、第1、第2トーチ11,12を移動させる。例えば図4の原理図において、第1トーチ11を、下方に移動して焦点23位置が第1フランジ3aの端面部25に一致する(すなわちジャストフォーカスとなる)ように第1トーチ11の位置を調整する。また、コントローラ33は、演算部32からの情報に基づいて駆動装置27を制御して第1、第2トーチ11,12を水平方向に移動させるようにしている。
【0022】
上述したように構成したレーザービーム溶接装置1の作用を図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、レーザービーム溶接装置1を起動し(ステップS1)、第1、第2トーチ11,12をフューエルタンク2に対する溶接作業エリアの予め定められた位置(フューエルタンク初期位置)に配置する(ステップS2)。次に、2つの焦点位置−板材間距離検出装置28を作動して、第1、第2トーチ11,12に対応する各発信部30から基準レーザービーム63aを発信させ(ステップS3)、受光部31への入光の有無を判定する(ステップS4)。
【0023】
ステップS4で、受光部31への入光が有る(Yes)と判定した場合、受光部31に計測入射位置Dを検出させ水平方向距離xを求める(ステップS5)。
ステップS4で、受光部31への入光が無い(No)と判定した場合、受光部31への入光が無いとされたトーチ(第1、第2トーチ11,12のうち一方又は両方)を対象として駆動装置27の作動により水平方向の移動を行い(ステップS6)、ステップS4に戻る。
本実施の形態では、発信部30、受光部31及び演算部32が板材有無検出手段を構成し、コントローラ33が照射域配置用移動制御部を構成している。
【0024】
ステップS5に続いて、演算部32は、水平方向距離x及び基準入射角αから、焦点位置−板材間距離yを求めて焦点位置−板材間距離情報Gとしてコントローラ33に出力する(ステップS7)。次に、コントローラ33は、前記焦点位置−板材間距離yがゼロ〔0〕であるか否かを判定する(ステップS8)。
【0025】
ステップS8で焦点位置−板材間距離yがゼロ〔0〕である(Yes)と判定すると、レーザービーム発振器10を駆動してレーザービーム63を第1、第2トーチ11,12から第1、第2フランジ3a、3bに照射してへり溶接を行う(ステップS9)。ステップS8でYesと判定された状態では第1、第2トーチ11,12は第1、第2フランジ3a、3bに対してジャストフォーカスとなっている。このため、前記ステップS9を実行することにより、図7に示すように第1、第2フランジ3a、3bの突合せ部35は効率的に溶融し溶融部分64の体積は大きくなり、第1、第2フランジ3a、3bひいては第1、第2の容器部材6,7は確実に接合されて、強固なフューエルタンク2を得ることができる。
【0026】
ステップS8で第1、第2トーチ11,12のうちいずれか一方のトーチに対応する焦点位置−板材間距離yがゼロ〔0〕でない(No)と判定すると、第1トーチ11又は第2トーチ12を移動させて(ステップS10)、ステップS8に戻って焦点位置−板材間距離yがゼロ〔0〕となることを確認した後、ステップS9に進む。
例えば第1トーチ11に対応する焦点位置−板材間距離yがゼロ〔0〕でない場合、第1トーチ11の第1集光レンズ21の焦点23位置が第1フランジ3aの端面部25に一致するように、ステップS5で得られた第1トーチ11に対応する焦点位置−板材間距離y分だけ第1トーチ11を移動させ、第1トーチ11からのレーザービーム63が第1フランジ3aの端面部25にジャストフォーカスして照射されるようにする。
【0027】
上述したように焦点位置−板材間距離yがゼロ〔0〕でない(No)と判定した場合、焦点位置−板材間距離yがゼロ〔0〕となるように、第1トーチ11又は第2トーチ12を移動させ(ステップS10)、第1、第2トーチ11,12が第1、第2フランジ3a、3bに対してジャストフォーカスとなっている状態で、レーザービーム63を第1、第2トーチ11,12から第1、第2フランジ3a、3bに照射してへり溶接を行う(ステップS9)。
このため、前記ステップS9を実行することにより、図7に示すように第1、第2フランジ3a、3bの突合せ部35は効率的に溶融し溶融部分64の体積は大きくなり、第1、第2フランジ3a、3bひいては第1、第2の容器部材6,7は確実に接合されて、強固なフューエルタンク2を得ることができる。
【0028】
例えば、図1に示すように第1、第2フランジ3a、3bの端面部25,26(突合せ部35)に、段差60が存在すると、ステップS8で第1、第2トーチ11,12のうち少なくとも一方のトーチ(この場合、第1トーチ11を例にする。)に対応する焦点位置−板材間距離yがゼロ〔0〕でない(No)と判定される。すると、第1トーチ11に対応する焦点位置−板材間距離yがゼロ〔0〕となるように、第1トーチ11を移動させる(ステップS10)。そして、第1トーチ11に対応する焦点位置−板材間距離yがゼロ〔0〕となった状態でレーザービーム63を第1、第2トーチ11,12から第1、第2フランジ3a、3bに照射してへり溶接を行う(ステップS9)。このため、第1、第2フランジ3a、3bひいては第1、第2の容器部材6,7は確実に接合されて、強固なフューエルタンク2を得ることができる。
すなわち、第1、第2フランジ3a、3bの端面部(突合せ部35)に、段差60が存在しても、第1、第2フランジ3a、3bに対してジャストフォーカス状態でレーザービーム63を照射するので、へり溶接を効率良くかつ精度高く行うことができ、接合強度の向上を図ることができる。
【0029】
また、上述したようにステップS4で、受光部31への入光が無い(Yes)と判定した場合、受光部31への入光が無いとされたトーチ(第1、第2トーチ11,12のうち一方又は両方)を対象として駆動装置27の作動により水平方向に移動させる(ステップS6)。このため、仮に図1に示されるように第1、第2フランジ3a、3b間に板隙61が存在しても、ステップS9で第1、第2トーチ11,12から出射されるレーザービーム63は第1、第2フランジ3a、3bの両者に効率良く照射され、その分、溶融部分35の体積の増加を図ることができる。
【0030】
上記実施の形態では、図1に示されるように、第1、第2フランジ3a、3bの端面部25,26(突合せ部35)に段差60及び板隙61が存在する場合を例にしたが、これに限らず、第1、第2フランジ3a、3bの端面部25,26に板隙が無くて段差のみが存在する場合に、前記レーザービーム溶接装置1を用いてもよい。また、図8に示すように第1、第2フランジ3a、3bの端面部25,26(突合せ部35)に段差が無くて板隙61のみが存在する場合に、前記レーザービーム溶接装置1を用いてもよい。
【0031】
上記実施の形態では、一つのレーザービーム発振器10を有した場合を例にしたが、これに代えて、図9に示すように2つのレーザービーム発振器10a,10bを設け、各レーザービーム発振器10a,10bに対して専用のビーム伝送路15a,15bを介して第1、第2トーチ11,12を接続するように構成してもよい。
上記実施の形態では、第1、第2トーチ11,12にそれぞれ設けられる2つの焦点位置−板材間距離検出装置28について、同等仕様で構成されている場合を例にしたが、これに限られるものではなく、異なる仕様で構成してもよい。
上記実施の形態では、溶接対象がフューエルタンク2である場合を例にしたが、これに代えて、へり溶接を行う他のワークに対して本発明を適用するようにしてもよい。
【0032】
【発明の効果】
請求項1から3までのいずれかに記載に係るレーザービーム溶接装置の発明によれば、制御手段が2本のトーチに備えられる集光レンズの焦点位置が前記2枚の板材の各端面部にそれぞれ一致するように駆動手段を制御して前記2本のトーチを移動させるので、前記2本のトーチの移動によって対応する集光レンズの焦点位置が2枚の板材の各端面部に一致することになる。このため、2本のトーチからのレーザービームを2枚の板材の各端面部に対して、ジャストフォーカスの状態で照射して、2枚の板材の突合せ部を効率的に溶融させることができ、これに伴い2枚の板材を確実かつ精度高く接合することができる。
【0033】
請求項4から6までのいずれかに記載に係るレーザービーム溶接方法の発明によれば、レーザービームを照射する照射部を有する2本のトーチに備えられる集光レンズの焦点位置が前記2枚の板材の各端面部にそれぞれ一致するように、前記2本のトーチを移動させるので、前記2本のトーチの移動によって対応する集光レンズの焦点位置が2枚の板材の各端面部に一致することになり、2本のトーチからのレーザービームの2枚の板材の各端面部への照射をジャストフォーカスの状態で行えるようになる。このため、2本のトーチからのレーザービームを2枚の板材の各端面部に対して照射すると、上述したようにジャストフォーカスの状態となっていることから、2枚の板材の突合せ部を効率的に溶融させることができ、これに伴い2枚の板材を確実かつ精度高く接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレーザービーム溶接装置を模式的に示す図である。
【図2】図1のレーザービーム溶接装置を模式的に示す斜視図である。
【図3】図1のレーザービーム溶接装置のレーザービームの伝送経路を模式的に示す図である。
【図4】図1のレーザービーム溶接装置に用いられる焦点位置−板材間距離検出装置の検出原理を模式的に示す正面図である。
【図5】図1のレーザービーム溶接装置の溶接対象であるフューエルタンクを示す斜視図である。
【図6】図1のレーザービーム溶接装置の作用を説明するためのフローチャートである。
【図7】図1のレーザービーム溶接装置の溶接により得られるフューエルタンクの第1、第2フランジの溶接状態を模式的に示す正面図である。
【図8】第1、第2フランジについて段差が無く板隙が存在する場合を模式的に示す図である。
【図9】レーザービーム発振器を2つ備えるレーザービーム溶接装置を示す図である。
【図10】従来技術での問題点を説明するための模式図である。
【図11】図10の従来技術で得られる溶接部分の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 レーザービーム溶接装置
2 フューエルタンク
3a,3b 第1、第2フランジ
11,12 第1、第2トーチ
13,14 照射部
21,22 第1、第2集光レンズ
23 焦点(第1集光レンズ21の焦点)
24 焦点(第2集光レンズ22の焦点)
25,26 第1フランジ3a、第2フランジ3bの端面部
27 駆動装置(駆動手段)
28 焦点位置−板材間距離検出装置
30 発信部(板材有無検出手段)
31 受光部(板材有無検出手段)
32 演算部(板材有無検出手段)
33 コントローラ(制御手段、照射域配置用移動制御部)

Claims (6)

  1. 接合される2枚の板材に対してへり溶接を行うレーザービーム溶接装置において、
    前記2枚の板材の端面部にそれぞれ上方向からレーザービームを照射する2本のトーチと、
    該2本のトーチを移動させる駆動手段と、
    前記2本のトーチに備えられる集光レンズの焦点位置が前記2枚の板材の各端面部にそれぞれ一致するように前記駆動手段を制御して前記2本のトーチを移動させる制御手段と、を備えたことを特徴とするレーザービーム溶接装置。
  2. 前記2本のトーチからのレーザービームが照射される前記端面部上の照射点と前記集光レンズの焦点位置とを結ぶ照射方向線分における上下方向成分に相当する焦点位置−板材間距離を検出する焦点位置−板材間距離検出手段を有し、前記制御手段は、前記駆動手段の制御を前記焦点位置−板材間距離に基づいて行うことを特徴とする請求項1記載のレーザービーム溶接装置。
  3. 前記2本のトーチからのレーザービームの先方位置における前記2枚の板材の存否を検出する板材有無検出手段と、該板材有無検出手段により前記2枚の板材について少なくとも一方の板材が無いと検出された場合、該少なくとも一方の板材が前記板材有無検出手段により検出されるように前記駆動手段を制御して前記少なくとも一方の板材に対応するトーチを移動させる照射域配置用移動制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザービーム溶接装置。
  4. 接合される2枚の板材に対してへり溶接を行うレーザービーム溶接方法において、
    前記2枚の板材の端面部にそれぞれ上方向からレーザービームを照射する2本のトーチに備えられる集光レンズの焦点位置が前記2枚の板材の各端面部にそれぞれ一致するように、前記2本のトーチを移動させることを特徴とするレーザービーム溶接方法。
  5. 前記2本のトーチからのレーザービームが照射される前記端面部上の照射点と前記集光レンズの焦点位置とを結ぶ照射方向線分における上下方向成分に相当する焦点位置−板材間距離を検出し、前記駆動手段の制御を、前記焦点位置−板材間距離検出手段が検出する相対変位量に基づいて行うことを特徴とする請求項4記載のレーザービーム溶接方法。
  6. 前記2本のトーチからのレーザービームの先方位置における前記2枚の板材の存否を検出し、該検出により前記2枚の板材について少なくとも一方の板材が無いと検出された場合、少なくとも一方の板材が前記板材有無検出手段により検出されるように、前記一方の板材に対応するトーチを移動することを特徴とする請求項4又は5に記載のレーザービーム溶接方法。
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