JP2004239966A - 光ファイバカプラ、その製造方法およびその製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な光学特性で効率よく製造可能な光ファイバカプラの製造方法を提供する。
【解決手段】被覆部材を一部除去した2本の光ファイバを略並列に接触して配置保持し、一方の光ファイバに異なる波長で合波した光を入射させて前処理工程を実施する。セラミックヒータにて光ファイバを1580〜1690℃で20〜70秒加熱して予熱工程を実施する。予熱より高い温度の1610〜1710℃で加熱しつつ、0.01〜0.5μm/秒で20〜120秒延伸した後、1〜15μm/秒で250〜550秒延伸して延伸工程を実施する。延伸工程より低い温度の1460〜1560℃で加熱しつつ、1〜15μm/秒で延伸し、所定の光学特性となる断面略円形に融着させて融着部を形成する。
【選択図】 図6
【解決手段】被覆部材を一部除去した2本の光ファイバを略並列に接触して配置保持し、一方の光ファイバに異なる波長で合波した光を入射させて前処理工程を実施する。セラミックヒータにて光ファイバを1580〜1690℃で20〜70秒加熱して予熱工程を実施する。予熱より高い温度の1610〜1710℃で加熱しつつ、0.01〜0.5μm/秒で20〜120秒延伸した後、1〜15μm/秒で250〜550秒延伸して延伸工程を実施する。延伸工程より低い温度の1460〜1560℃で加熱しつつ、1〜15μm/秒で延伸し、所定の光学特性となる断面略円形に融着させて融着部を形成する。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本の光ファイバが融着された光ファイバカプラ、その製造方法およびその製造装置に関する。
【0002】
【背景技術】
従来、2本の光ファイバの長手方向の一部を適宜融着することにより、光ファイバの一端側から入光される光を所定の条件で他端側から出光させる光ファイバカプラの製造方法として、各種方法が知られている(例えば、特許文献1ないし特許文献3)。
【0003】
特許文献1に記載の方法は、光ファイバの長手方向の一部を約1600℃〜1800℃程度で数分〜数十分間加熱し、光ファイバのコアのドーパントを拡散させる。これら加熱処理された光ファイバを加熱処理した部分で並列配置し、加熱処理した部分を加熱しつつ延伸して融着させ、少ない延伸量で所定の特性が得られる光ファイバカプラを製造する。しかしながら、この特許文献1に記載の方法では、良好な光学的特性が得られるべく、加熱処理を複数回実施する必要があり、製造性の向上が図れない。
【0004】
特許文献2に記載の方法は、2本の光ファイバを並列配置し、長手方向の一部で加熱し、断面マユ形に光ファイバのクラッドを融着させ、さらに加熱を継続して断面略円形でコアが2本となる状態に融着させ、さらに加熱を継続して2本のコアのドーパントを拡散させて重畳する状態にして融着を完了させる。このドーパントを拡散させる条件は、例えば長期間の使用により外周面の組成が水素基や水酸基などの結合にて変化することで屈折率が変動して光学特性が変動してしまうことを防止するために、外周面まで拡散しない状態とする。このような条件で融着することで、延伸による光学特性の変動や強度低下などの不都合を防止した光ファイバカプラを製造する。しかしながら、この特許文献2に記載の方法では、融着の際に光ファイバのコアのドーパントが重畳する状態となるまで加熱しなければならず、加熱時間が長時間となり、製造性の向上が図れない。
【0005】
特許文献3に記載の方法は、並列配置した光ファイバの一部を約1000℃〜1500℃程度で数分〜数十分間加熱して適宜延伸し、断面が略円形に融着させて製造する。しかしながら、この特許文献3に記載の方法では、加熱温度が比較的に低いので、光ファイバが点接触とならずに融着部分の断面が十分に円形となるまでには、ゆっくりと長時間に亘って加熱延伸する必要があり、製造性の向上が図れない。
【0006】
【特許文献1】
特開平3−274512号公報(第2頁左下欄−第4頁右下欄)
【特許文献2】
特開平5−288953号公報(第3頁左欄−第4頁左欄)
【特許文献3】
特開平7−56048号公報(第2頁右欄−第5頁左欄)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、特許文献1に記載のものは、光ファイバをそれぞれ加熱処理した後に再び加熱しつつ延伸して融着させるので、複数回の加熱処理を実施しなければならず、製造性の向上が図れない。また、特許文献2に記載のものは、融着の際に長時間加熱しなければならず、製造性の向上が図れない。さらに、特許文献3に記載のものは、融着部分の断面が十分に円形となるまで融着させるには、長時間に亘って加熱延伸する必要があり、製造性の向上が図れない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて、良好な光学特性で効率よく製造可能な光ファイバカプラ、その製造方法およびその製造装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、複数本の光ファイバの少なくとも一部を加熱により融着して光ファイバカプラを製造する光ファイバカプラの製造方法であって、略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を、1460℃以上2500℃以下の温度で加熱しつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度で延伸して融着することを特徴とする光ファイバカプラの製造方法である。
【0010】
この発明では、略並列に配置された複数本の光ファイバの少なくとも一部を、1460℃以上2500℃以下の温度で加熱しつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度で延伸することにより融着する。このことにより、融着した部分の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形となるまで加熱および延伸する時間を短縮することが可能となり、製造性の向上が図れる。
なお、略並列とは、光ファイバの長手方向を略平行に配列する場合の他、光ファイバをねじって接触させた状態などをも意味する。
ここで、加熱する温度が1460℃より低くなると、加熱温度が低くなって光ファイバの粘性が十分に低下せずに融着性が低下し、融着部分の断面形状を略円形にするためにはゆっくりと延伸しなければならなくなり、製造効率が低下して製造性の向上が図れなくなる。一方、加熱する温度が2500℃より高くなると、加熱した部分が垂れて歩留まりが悪化する。このことにより、加熱する温度を1460℃以上2500℃以下に設定する。また、延伸する速度が0.01μm/秒より遅くなると、加熱した部分が垂れて歩留まりが悪化する。一方、延伸する速度が18μm/秒より速くなると、十分に融着する前に光ファイバの径寸法が小さくなり、融着後の径寸法が小さくなって十分な強度が得られなくなる。このことにより、延伸する速度を0.01μm/秒以上18μm/秒以下に設定する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光ファイバカプラの製造方法において、加熱する温度が高くなるに従って延伸する速度が速くなる条件で融着することを特徴とする。
【0012】
この発明では、加熱する温度を高くするに従って延伸する速度を速くする条件で融着させる。このことにより、加熱する部分が垂れず径寸法が細くなりすぎることなく十分に融着して断面略円形にすることが、短時間の加熱・延伸で得られる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の光ファイバカプラの製造方法において、融着は、1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で前記光ファイバを予熱する予熱期間と、この予熱期間の温度以上で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して延伸する延伸期間と、を順次実施する条件であることを特徴とする。
【0014】
この発明では、略並列に配置した複数本の光ファイバの少なくとも一部を、1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で前記光ファイバを予熱する予熱期間を実施した後に、予熱期間の温度以上で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して延伸する延伸期間を実施することで融着する。このことにより、光ファイバが融着する前にあらかじめ予熱されて光ファイバの断面方向における温度分布が略均一となり、後工程の延伸による融着が良好となり、径寸法が小さくなりすぎることなく断面形状が略円形となり、良好な光学特性が得られる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の光ファイバカプラの製造方法において、融着は、前記延伸期間の実施の後に、この延伸期間の温度以下で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して延伸する冷却調整期間を実施することを特徴とする。
【0016】
この発明では、延伸期間の実施の後に、延伸期間の温度以下で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して延伸する冷却調整期間を実施して融着させる。このことにより、所定の分岐比や光学特性に高精度に設定することが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記冷却調整期間は、加熱温度が1460℃以上1560℃以下で、延伸速度が1μm/秒以上15μm/秒以下であることを特徴とする。
【0018】
この発明では、加熱温度を1460℃以上1560℃以下で延伸速度を1μm/秒以上15μm/秒以下で冷却調整期間を実施する。このことにより、融着後に急激に冷却されることによる歩留まりの悪化を防止して所望の分岐比や光学特性が容易に高精度で得られる。
ここで、加熱温度が1460℃より低くなると、粘性が増大して所望の分岐比や光学特性にするための延伸が困難となり、高精度の分岐比や光学特性を得るための延伸に時間を要し、製造性の向上が得られなくなるおそれがある。一方、加熱温度が1560℃より高くなると、所定の加熱・延伸の終了後に製造された光ファイバカプラが急冷状態となり、分岐比や光学特性などが変動するなどにより歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、冷却調整期間における加熱温度を1460℃以上1560℃以下とする。また、延伸速度が1μm/秒より遅くなると、製造効率が低下し製造性の向上が図れなくなるおそれがある。一方、延伸速度が15μm/秒より速くなると、融着部分の断面形状が略円形となる前に径寸法が縮小し、融着後の径寸法が小さくなって強度の向上が得られなくなるおそれがある。このことにより、冷却調整期間における延伸速度を1μm/秒以上15μm/秒以下とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記予熱期間の加熱温度は、1580℃以上1690℃以下であることを特徴とする。
【0020】
この発明では、予熱期間を加熱温度が1580℃以上1690℃以下で実施する。このことにより、後工程の延伸期間における良好な融着のための予熱として、光ファイバが垂れ落ちるなどの不都合がなく良好な粘性が得られ、良好な予熱が得られる。
ここで、1580℃より低い温度で加熱すると、光ファイバが十分に予熱されず後工程での加熱・延伸の際に十分な融着が得られなくなるおそれがある。一方、1690℃より高い温度で加熱すると、光ファイバの断面において略均一な温度の予熱となる前に垂れて歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、予熱期間では、1580℃以上1690℃以下の温度で加熱する。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項3ないし請求項6のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記予熱期間の加熱する時間は、20秒以上70秒以下であることを特徴とする。
【0022】
この発明では、予熱期間を20秒以上70秒以下の時間で実施する。このことにより、光ファイバが垂れることなく断面方向で略均一な温度分布となるある程度の粘度の状態が容易に得られる。
ここで、予熱期間の時間が20秒より短くなると、光ファイバが十分に熱せられず、後工程の延伸期間における良好な融着が得られなくなるおそれがある。一方、予熱期間の時間が70秒より長くなると、熱膨張による垂れが顕著となって良好な融着が得られなくなり、歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、予熱期間の時間を20秒以上70秒以下とする。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項3ないし請求項7のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記延伸期間の加熱温度は、1610℃以上1710℃以下であることを特徴とする。
【0024】
この発明では、延伸期間を加熱温度が予熱期間の加熱温度以上で1610℃以上1710℃以下で実施する。このことにより、光ファイバが垂れ落ちるなどの不都合がなく良好な粘性が得られ、延伸により良好に融着して断面形状が略円形に容易に形成される。
ここで、加熱温度が1610℃より低くなると、光ファイバの粘性が十分に低下せずに融着性が低下し、融着部分の断面形状を略円形にするためにはゆっくりと延伸しなければならなくなり、製造効率が低下して製造性の向上が図れなくなるおそれがある。一方、1710℃より高くなると、加熱した部分が垂れて歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、延伸期間における加熱温度を1610℃以上1710℃以下とする。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項3ないし請求項8のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記延伸期間は、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する第1の延伸期間と、この第1の延伸期間の速度以上で0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する第2の延伸期間と、を順次実施することを特徴とする。
【0026】
この発明では、延伸期間として、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する第1の延伸期間を実施した後に、第1の延伸期間の速度以上で0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する第2の延伸期間を実施する。このことにより、第1の延伸期間で熱膨張によるたるみが防止され、第2の延伸期間にて良好な融着が得られ、断面形状が略円形に容易に融着される。
【0027】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記第1の延伸期間の延伸速度は、0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下であり、前記第2の延伸期間の延伸速度は、1μm/秒以上15μm/秒以下であることを特徴とする。
【0028】
この発明では、第1の延伸期間で0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下の速度で延伸し、第2の延伸期間で1μm/秒以上15μm/秒以下の速度で延伸する。このことにより、第1の延伸期間で比較的にゆっくりと延伸されて垂れが良好に防止され、第2の延伸期間で比較的に速く延伸されて断面形状が略円形に良好に融着される。
ここで、第1の延伸期間における延伸速度が0.01μm/秒より遅くなると、垂れが解消されず、歩留まりの向上が図れなくなるおそれがある。一方、0.5μm/秒より速くなると、融着性が増大する前に光ファイバの径寸法が小さくなってしまい、融着の前に光ファイバの径寸法の縮小により、融着後の径寸法も小さくなり、強度の向上が得られなくなるおそれがある。このことにより、第1の延伸期間における延伸速度を0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下とする。また、第2の延伸期間における延伸速度が1μm/秒より遅くなると、製造効率が低下し製造性の向上が図れなくなるおそれがある。一方、第2の延伸期間における延伸速度が15μm/秒より速くなると、融着部分の断面形状が略円形となる前に径寸法が縮小し、融着後の径寸法が小さくなって強度の向上が得られなくなるおそれがある。このことにより、第2の延伸期間における延伸速度を1μm/秒以上15μm/秒以下とする。
【0029】
請求項11に記載の発明は、請求項9または請求項10に記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記第1の延伸期間の時間は、20秒以上120秒以下で、前記第2の延伸期間の時間は、250秒以上550秒以下であることを特徴とする。
【0030】
この発明では、第1の延伸期間の時間を20秒以上120秒以下の時間で実施し、第2の延伸期間の時間を250秒以上550秒以下の時間で実施する。このことにより、良好な垂れ防止および径寸法が小さくなることなく断面形状が略円形となる良好な融着が容易に得られる。
ここで、第1の延伸期間の時間が20秒より短くなると融着がほとんど進行しなくなり、第2の延伸期間における加熱・延伸にて断面略円形の融着部を形成することが困難となるおそれがある。一方、第1の延伸期間の時間が120秒より長くなると、垂れが顕著となり、歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、第1の延伸期間の時間を20秒以上120秒以下とする。また、第2の延伸期間の時間が250秒より短くなると、断面略円形の融着部が得られず、良好な光学特性が得られなくなるおそれがある。一方、第2の延伸期間の時間が550秒より長くなると、垂れが顕著となったり、融着部の径寸法が細くなって強度が低下したりするなどの不都合が生じるおそれがある。このことにより、第2の延伸期間の時間を250秒以上550秒以下とする。
【0031】
請求項12に記載の発明は、請求項3に記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記予熱期間の加熱温度は、1800℃以上2500℃以下であることを特徴とする。
【0032】
この発明では、予熱期間を加熱温度が1800℃以上2500℃以下で実施する。このことにより、例えば加熱する構成としてセラミックヒータなどを用いずバーナなどの火炎を用いる場合などでは、後工程の延伸期間における良好な融着のための予熱として、光ファイバが撓むなどの不都合がなく良好な粘性が得られ、良好な予熱が得られる。
ここで、加熱温度が1800℃より低くなると、光ファイバが十分に予熱されず後工程での加熱・延伸の際に十分な融着が得られなくなるおそれがある。一方、加熱温度が2500℃より高くなると、光ファイバの断面において略均一な温度の予熱となる前に撓みなどが生じて歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、予熱期間では、1800℃以上2500℃以下の温度で加熱する。
【0033】
請求項13に記載の発明では、請求項3または請求項12に記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記予熱期間の加熱する時間は、100秒以上300秒以下であることを特徴とする。
【0034】
この発明では、予熱期間を100秒以上300秒以下の時間で実施する。このことにより、光ファイバが垂れることなく断面方向で略均一な温度分布となるある程度の粘度の状態が容易に得られる。
ここで、予熱期間の時間が100秒より短くなると、光ファイバが十分に熱せられず、後工程の延伸期間における良好な融着が得られなくなるおそれがある。一方、予熱期間の時間が300秒より長くなると、熱膨張による垂れが顕著となって良好な融着が得られなくなり、歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、予熱期間の時間を100秒以上300秒以下とする。
【0035】
請求項14に記載の発明は、請求項3、請求項12および請求項13のうちのいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記延伸期間は、加熱温度が1800℃以上2500℃以下で、延伸速度が5μm/秒以上18μm/秒以下であることを特徴とする。
【0036】
この発明では、加熱温度を1800℃以上2500℃以下で延伸速度を5μm/秒以上18μm/秒以下で延伸期間を実施する。このことにより、光ファイバが垂れ落ちるなどの不都合がなく良好な粘性が得られ、延伸により良好に融着して断面形状が略円形に容易に形成される。
ここで、加熱温度1800℃以上2500℃以下の加熱における延伸速度が5μm/秒より遅くなると、垂れが解消されず、歩留まりの向上が図れなり、また製造効率が低下して製造性の向上が図れなくなるおそれがある。一方、加熱温度1800℃以上2500℃以下の加熱における延伸速度が18μm/秒より速くなると、融着性が増大する前に光ファイバの径寸法が小さくなってしまい、融着の前に光ファイバの径寸法の縮小により、融着後の径寸法も小さくなり、強度の向上が得られなくなるおそれがある。このことにより、加熱温度1800℃以上2500℃以下の加熱で延伸速度を5μm/秒以上18μm/秒以下とする。
【0037】
請求項15に記載の発明は、複数本の光ファイバの少なくとも一部を加熱により融着して光ファイバカプラを製造する光ファイバカプラの製造方法であって、略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を1580℃以上1690℃以下の温度範囲内で加熱して予熱を実施し、この予熱した前記光ファイバの少なくとも一部を1610℃以上1710℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下の速度範囲内で延伸して第1の加熱・延伸を実施し、この第1の加熱・延伸をした前記光ファイバの少なくとも一部を1610℃以上1710℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、1μm/秒以上15μm/秒以下の速度範囲内で延伸して第2の加熱・延伸を実施し、この第2の加熱・延伸をした前記光ファイバの少なくとも一部を1460℃以上1560℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、1μm/秒以上15μm/秒以下の速度範囲内で延伸することを特徴とする光ファイバカプラの製造方法である。
【0038】
この発明では、略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を1580℃以上1690℃以下の温度範囲内で加熱して予熱した後に、1610℃以上1710℃以下の温度範囲内で加熱しつつ0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下の速度範囲内で延伸し、さらに1610℃以上1710℃以下の温度範囲内で加熱しつつ1μm/秒以上15μm/秒以下の速度範囲内で延伸し、そして1460℃以上1560℃以下の温度範囲内で加熱しつつ1μm/秒以上15μm/秒以下の速度範囲内で延伸する。このことにより、融着した部分の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形となるまで加熱および延伸する時間が短縮し、製造性が向上する。
【0039】
請求項16に記載の発明は、複数本の光ファイバの少なくとも一部を加熱により融着して光ファイバカプラを製造する光ファイバカプラの製造方法であって、略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を1800℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して予熱を実施し、この予熱した前記光ファイバの少なくとも一部を1800℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、5μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸することを特徴とする光ファイバカプラの製造方法である。
【0040】
この発明では、略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を1800℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して予熱した後に、1800℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、5μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する。このことにより、融着した部分の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形となるまで加熱および延伸する時間が短縮し、製造性が向上する。
【0041】
請求項17に記載の発明は、請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法が実施されて製造されたことを特徴とした光ファイバカプラである。
【0042】
この発明では、請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法により製造される。このことにより、融着した部分の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形に容易に製造されるとともに、製造時の加熱および延伸する時間が短縮し、製造性の向上が図れる。
【0043】
請求項18に記載の発明は、請求項1ないし請求項17のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法を実施することを特徴とした光ファイバカプラの製造装置である。
【0044】
この発明では、請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法を実施して光ファイバカプラを製造する。このことにより、融着した部分の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形に光ファイバカプラが容易に製造されるとともに、製造時の加熱および延伸する時間が短縮し、製造性の向上が図れる。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における一実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔光ファイバカプラの構成〕
図1は、本実施の形態において製造される光ファイバカプラを示す保護部材近傍の一部を切り欠いた断面図である。図2は、光ファイバカプラを示す保護部材近傍の一部を切り欠いた平面図である。なお、本実施の形態では、2本の光ファイバを融着した融着型光ファイバカプラについて説明するが、融着する光ファイバは2本に限らず、複数本融着されたものでも適用できる。
【0046】
図1および図2において、10は光ファイバカプラで、この光ファイバカプラ10は、光ファイバ11,12の少なくとも一部が溶融延伸法により融着されて枝分かれ状に構成され、1本あるいは複数本の光ファイバ11,12の長手方向の一端から入光された光を、所定の分岐率や分波率で分光して他端から出光させる。融着する光ファイバ11,12は、線状のクラッド11A,12Aの中心軸にコア11B,12Bを有し、外周面には被覆部材11C,12Cがそれぞれ設けられている。
そして、光ファイバカプラ10は、光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cが除去された部分で融着されて融着部13が形成されている。この融着部13は、断面略円形で、外周面が略円柱状となるクラッド13A内に2本のコア13Bが略平行に埋設された状態に形成されている。
【0047】
また、光ファイバカプラ10には、融着部13の近傍を保護する保護部材20が設けられている。この保護部材20は、支持板21、光ファイバ固定部22と、カプラ固定部23と、保護管24と、を備えている。
支持板21は、例えば石英板などにて略板状に形成されている。この支持板21の一面には、所定の間隙を介して対向する一対の光ファイバ固定部22が設けられている。
光ファイバ固定部22は、支持板21の一面側に位置して光ファイバ11,12を支持板21に位置決め固定する。カプラ固定部23は、光ファイバ固定部22間で融着部13の両端側に位置し光ファイバ11,12を支持板21に位置決め固定する。これら光ファイバ固定部22およびカプラ固定部23は、例えば紫外線硬化型樹脂などが用いられる。
保護管24は、例えば金属管が用いられ、光ファイバカプラ10を固定した支持板21を収容可能に形成されている。なお、金属管に限らず、例えばガラス管などの線膨張係数の小さい部材にて形成したものなど、いずれの材料が利用できる。そして、支持板21を収容した保護管24は両端部が光ファイバ11,12を延出する状態にシール部材25にて閉塞され、光ファイバカプラ10は融着部13の近傍が保護部材20内に封止されて固定される。
【0048】
〔製造装置の構成〕
次に、上記光ファイバカプラを製造するための製造装置の構成について図面を参照して説明する。図3は、製造装置の概略構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態における製造装置として、加熱手段に電気炉としてセラミックヒータを用いた構成について説明するが、火炎を利用したマイクロトーチ(マイクロバーナ)などを用いた構成などでも適用できる。
【0049】
図3において、100は製造装置で、この製造装置100は、2本の光ファイバ11,12の少なくとも一部を融着させて光ファイバカプラ10を製造する装置である。この製造装置100は、保持手段110と、加熱手段120と、図示しない延伸手段と、制御手段130と、を備えている。また、制御手段130は、融着状況を制御するもので、融着制御部131と、計測部132と、を備えている。
【0050】
保持手段110は、クランプなどの一対の保持部111を有し、光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cが除去された部分をほぼ弛みなく略並列に接触する状態で配置して保持する。なお、保持する状態としては、光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cが除去された部分を長手方向が略平行、あるいはねじって互いに接触する状態とする。そして、一対の保持部111はそれぞれ延伸手段に配設され、保持部111間の距離が延伸手段により可変可能となっている。
なお、延伸手段は、制御手段130の融着制御部131の制御により、保持部111間の距離を可変する量や可変する時間、保持部111を移動させる速さなどが制御されて動作する。
【0051】
加熱手段120は、図示しない台座部と、セラミックヒータ121と、図示しない温度検出部と、を備えている。なお、図3は、セラミックヒータ121として、加熱する熱エネルギを図示する都合上、マイクロトーチ(マイクロバーナ)の火炎のように示す。そして、上述したように、セラミックヒータ121に限らず、図3に示すように、直接火炎を用いて加熱するマイクロトーチなどのバーナを利用してもよい。
台座部は、制御手段130の融着制御部131の制御により移動可能に配設されている。セラミックヒータ121は、台座部に一体的に設けられ、図示しない電力の供給にて加熱してその熱エネルギ121Aにて光ファイバ11,12を加熱する。温度検出部は、セラミックヒータ121にて加熱された光ファイバ11,12の温度を検出する。この検出方法としては、加熱により発光する光ファイバ11,12の光量にて判断したり、輻射熱を測定したりするなど、既存のいずれの方法をも利用できる。
そして、加熱手段120は、制御手段130の融着制御部131が温度検出部にて検出する温度に基づいてセラミックヒータ121を制御、すなわち加熱する温度や時間などが制御される。
【0052】
制御手段130の融着制御部131は、第1のCPU(Central Processing Unit)131Aを有している。この第1のCPU131Aは、加熱手段120および延伸手段に接続され、内蔵する図示しない内蔵メモリにあらかじめ設定登録された条件に基づいて、加熱手段120および延伸手段の動作を適宜制御する。すなわち、第1のCPU131Aは、加熱手段120による光ファイバ11,12の加熱温度や加熱時間を制御し、延伸手段による保持部111間に張設された光ファイバ11,12の延伸時間や延伸速度を制御する。
【0053】
制御手段130の計測部132は、発光部132Aと、受光部132Bと、第2のCPU132Cと、を備えている。発光部132Aは、第1の光源132A1と、第2の光源132A2と、合波部132A3と、を備えている。第1の光源132A1および第2の光源132A2は、第2のCPU132にて制御され、それぞれ異なる波長、例えば第1の光源132A1は波長が約1550nmの光を出射し、第2の光源132A2は波長が約1310nmの光を出射する。合波部132A3は、第1の光源132A1および第2の光源132A2から出射される光を合波する。この合波部132A3は、光ファイバカプラ10のいずれか一方の光ファイバ12(11)に着脱可能に接続され、光ファイバ12(11)の長手方向の一端に合波した光を入射させる。
受光部132Bは、第1の受光部132B1と、第2の受光部132B2と、処理部132B3と、を備えている。第1の受光部132B1および第2の受光部132B2は、例えばフォトトランジスタなどが用いられ、光ファイバカプラ10の光ファイバ11,12の端部にそれぞれ接続され、光ファイバ11,12から出射される光を受光する。処理部132B3は、第1の受光部132B1および第2の受光部132B2にそれぞれ接続され、これら第1の受光部132B1および第2の受光部132B2で受光した光に関する電気信号を適宜処理して出力する。
第2のCPU132Cは、受光部132Bの処理部132B3に接続され、処理部132B3で処理された信号を適宜処理して例えば図示しない表示装置にグラフ表示するなど、融着する一対の光ファイバ11,12の光の分岐や分波の状態を検出する。また、第2のCPU132Cは、融着制御部131の第1のCPU131Aに接続されている。そして、第2のCPU132Cは、処理部132B3からの信号に基づいて、あらかじめ設定された分岐や分波の状態を認識することにより、適宜信号を第1のCPU131Aに出力し、融着処理を制御する。
【0054】
なお、上記構成において、第1の光源および第2の光源を用いて2種類の波長の光を入射し、2つの第1の受光部132B1および第2の受光部132B2を用いて光の分岐状況を検出する構成で説明したが、1種類の光源のみを用いて1つの受光部により受光したり、複数の光源を用いて複数の受光部により受光したりするなどにり、分岐・分波の状況を認識して融着処理を制御してもよい。
【0055】
〔製造装置の動作〕
次に、上記製造装置を用いて光ファイバカプラを製造する動作について、図面を参照して説明する。図4は、光ファイバカプラを製造する動作を示すフローチャートである。図5は、光ファイバを融着処理する際の断面状態を示す説明図で、(A)は融着前の光ファイバの断面図、(B)は融着途中の融着部分の断面図、(C)は光ファイバカプラの融着部の断面図である。図6は、光ファイバカプラをセラミックヒータにより製造する条件を示す説明図である。
【0056】
まず、図4に示すように、前処理工程を実施する(ステップS1)。すなわち、2本の光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cの一部を除去する。なお、セラミックヒータ121の代わりに、加熱手段120としてマイクロトーチなどの火炎を利用する構成においては、被覆部材11C,12Cの除去として、被覆部材11C,12Cが除去された光ファイバ11,12の径寸法が250μm前後の場合、光ファイバ11,12の長さ寸法で約16.5mm除去するとよい。
ここで、被覆部材11C,12Cの除去する長さ寸法である剥き幅は、製造後の光ファイバカプラ10の小型化のために短い寸法が好ましいが、あまりに短すぎると複数本の光ファイバ11,12を略並列に配置させて接触させる状態が得られにくくなるとともに、融着の際の加熱で被覆部材11C,12Cまで加熱されて損傷し歩留まりが悪化するおそれがある。このことから、光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cの剥き幅は、約16.5mm程度とすることが好ましい。
【0057】
そして、光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cが除去された部分を互いに絡まって図5(A)に示すように接触する状態にねじる。この状態で、被覆部材11C,12Cが除去された部分が一対の保持部111間に位置させてほぼ弛みがない状態で保持手段110に光ファイバ11,12を保持させる。この光ファイバ11,12の保持状態は、ねじった状態に限らず、長手方向を略平行に配置して接触させたり、交差する状態で接触させたりしてもよい。
なお、光ファイバ11,12の長手方向が交差する状態で加熱・延伸して融着させることで良好な融着部13を形成できることから、ねじった状態で保持することが好ましい。
【0058】
この後、計測部132の発光部132Aを動作させ、第1の光源132A1および第2の光源132A2からそれぞれ異なる波長で出射される光を合波部132A3で合波し、保持手段110に保持した一方の光ファイバ12(11)の一端から入射させ、前処理工程を完了する。この光の入射により、入射された光は、受光部132Bの第1の受光部132B1および第2の受光部132B2で適宜受光され、処理部132B3で受光に対応して出力される信号を処理し、第2のCPU132Cで光の分岐や分波状態を例えば表示装置にて表示させる。なお、前処理工程では、一方の光ファイバ12(11)にのみ光を入射させることから、第1の受光部132B1または第2の受光部132B2の一方(第2の受光部132B2)のみで受光される。
【0059】
前処理工程の後、予熱期間となる予熱工程を実施する(ステップS2)。すなわち、計測部132の第2のCPU132Cからの予熱工程を実施する旨の信号を融着制御部131の第1のCPU131Aに出力させる。この信号を取得した第1のCPU131Aは、加熱手段120を適宜動作させ、保持手段110に保持された光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cが除去されて互いに捩れて接触する部分をセラミックヒータ121からの熱エネルギ121Aにより加熱する。
この加熱の際、例えば加熱手段120としてセラミックヒータ121の代わりにマイクロトーチなどの火炎を用いる構成、あるいはレーザ光により加熱する構成などでは、局所的に加熱することを防止する目的で、第1のCPU131Aは、台座部を光ファイバ11,12の長手方向に略沿って、例えば3600μm〜3700μm程度の距離で約2000μm/秒の速度で移動する状態に移動させる制御をする。そして、セラミックヒータ121において、所定の領域で略均一に加熱できる場合には台座部を移動させなくてもよく、局所的な加熱となるおそれがある場合には移動させる制御を実施するとよい。
また、第1のCPU131Aは、図6に示すように、温度検出部からの信号に基づいて所定の温度範囲、例えば1580℃以上1690℃以下、好ましくは1630℃以上1670℃以下で、所定時間、例えば20秒以上70秒以下、好ましくは30秒以上50秒以下で加熱する制御をする。なお、温度調整としては、セラミックヒータ121に供給する電力量、マイクロトーチでは供給する燃料ガスや空気量の調整による熱量の調整、台座部の移動によるセラミックヒータ121からの距離やマイクロトーチの火炎の当たり具合すなわち火炎と光ファイバ11,12との距離の調整など、いずれの制御方法が適用できる。
【0060】
この予熱工程において、マイクロトーチを用いて被覆部材11C,12Cの剥き幅が約16.5mm程度とした光ファイバ11,12を融着する場合に、台座部を移動させる振り幅が3600μm〜3700μmより幅狭寸法となると、光ファイバカプラ10の融着部13と融着されていない光ファイバ11,12との境界近傍におけるテーパが光ファイバ11,12の長手方向に対して急角度となり、光損失が増大する。また、振り幅が3600μm〜3700μmより幅広寸法となると、光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cが加熱されることとなり、被覆部材11C,12Cが損傷して光損失が増大するおそれがある。このことから、上述した径寸法や長さ寸法の光ファイバカプラをマイクロトーチやレーザ光などにて製造する場合、マイクロトーチの振り幅を3600μm〜3700μm程度に設定することが好ましい。
【0061】
また、予熱工程において、光ファイバ11,12の加熱温度が1580℃より低くなると、光ファイバ11,12が十分に予熱されず後工程での加熱・延伸の際に十分な融着が得られなくなるおそれがある。一方、加熱する温度が1690℃より高くなると、光ファイバ11,12の断面において略均一な温度の予熱となる前に垂れて歩留まりが悪化するおそれがある。さらには、セラミックヒータ121の寿命が短くなり製造コストの増大やヒータ交換などの煩雑な保守管理が要求され、製造性の向上が図れなくなるおそれがある。このことにより、予熱工程では、1580℃以上1690℃以下、好ましくは1630℃以上1670℃以下の温度で加熱することが好ましい。
さらに、予熱工程において、加熱する時間が20秒より短くなると、光ファイバ11,12が十分に熱せられず、後工程の延伸期間における良好な融着が得られなくなるおそれがある。一方、加熱する時間が70秒より長くなると、熱膨張による垂れ、すなわち弛みが顕著となって良好な融着が得られなくなり、歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、予熱工程での加熱する時間を20秒以上70秒以下、好ましくは30秒以上50秒以下に設定することが好ましい。
【0062】
このようにしてステップ2の予熱工程が終了すると、延伸期間である延伸工程を実施する。この延伸工程は、第1の延伸期間である第1の延伸工程(ステップS3)と、第2の延伸期間である第2の延伸工程(ステップS4)とがあり、第1の延伸工程の後に第2の延伸工程が実施される。
【0063】
ステップS3の第1の延伸工程は、計測部132の第2のCPU132Cが予熱工程の終了を認識することにより第1の延伸工程を実施する旨の信号を融着制御部131の第1のCPU131Aに出力させることにより実施される。この信号を取得した第1のCPU131Aは、加熱手段120を適宜動作させて光ファイバ11,12の予熱工程で加熱された部分を加熱するとともに、図示しない延伸手段を適宜動作させて加熱されている光ファイバ11,12を延伸する。なお、加熱手段120の駆動制御は、予熱工程の終了時に加熱を停止させることなく、加熱温度を調整する状態で制御する。
すなわち、第1のCPU131Aは、予熱工程と同様に台座部を適宜移動させて光ファイバ11,12を加熱する制御をする。また、第1のCPU131Aは、図6に示すように、温度検出部からの信号に基づいて予熱工程での加熱温度以上の所定の温度範囲、例えば1610℃以上1710℃以下、好ましくは1650℃以上1700℃以下で、所定時間、例えば20秒以上120秒以下、好ましくは30秒以上90秒以下で加熱する制御をする。さらに、第1のCPU131Aは、温度検出部からの信号に基づいて所定温度に達した後に、保持手段110の一対の保持部111間の距離を広げる方向に所定速度、例えば0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下、好ましくは0.1μm/秒以上0.3μm/秒以下の速度範囲内で移動させる制御をすることが好ましい。
【0064】
この第1の延伸工程において、加熱温度が1610℃より低くなると、光ファイバ11,12の粘性が十分に低下せずに融着性が低下し、融着部分の断面形状を略円形にするためにはゆっくりと延伸しなければならなくなり、製造効率が低下して製造性の向上が図れなくなるおそれがある。一方、1710℃より高くなると、加熱した部分が垂れて歩留まりが悪化するおそれがある。さらには、セラミックヒータ121の寿命が短くなり製造コストの増大やヒータ交換などの煩雑な保守管理が要求され、製造性の向上が図れなくなるおそれがある。このことにより、第1の延伸工程における加熱温度を1610℃以上1710℃以下、好ましくは1650℃以上1700℃以下とすることが好ましい。
また、第1の延伸工程において、延伸速度が0.01μm/秒より遅くなると、垂れが解消されず、歩留まりの向上が図れなくなるおそれがある。一方、0.5μm/秒より速くなると、融着性が増大する前に光ファイバ11,12の径寸法が小さくなってしまい、融着の前に光ファイバ11,12の径寸法の縮小により、融着後の径寸法も小さくなり、強度の向上が得られなくなるおそれがある。このことにより、第1の延伸工程における延伸速度を0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下、好ましくは0.1μm/秒以上0.3μm/秒以下とすることが好ましい。
さらに、第1の延伸工程において、加熱・延伸する時間が20秒より短くなると融着がほとんど進行しなくなり、第2の延伸工程における加熱・延伸にて断面略円形の融着部を形成することが困難となるおそれがある。一方、第1の延伸工程の時間が120秒より長くなると、垂れが顕著となり、歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、第1の延伸工程の時間を20秒以上120秒以下、好ましくは30秒以上90秒以下とすることが好ましい。
なお、加熱温度を所定の温度範囲内で高く設定するに従って延伸する速度を所定の延伸速度範囲内で速く設定されることが好ましい。
【0065】
このようにしてステップ3の第1の延伸工程により、光ファイバ11,12の接触する部分の一部が融着する状態となる。この第1の延伸工程が終了すると、ステップ4の第2の延伸工程が実施される。このステップ4の第2の延伸工程は、計測部132の第2のCPU132Cが第1の延伸工程の終了を認識することにより第2の延伸工程を実施する旨の信号を融着制御部131の第1のCPU131Aに出力させることにより実施される。この信号を取得した第1のCPU131Aは、第1の延伸工程と同様の条件で加熱手段120を適宜動作させて加熱するとともに、延伸手段を適宜動作させて加熱されている光ファイバ11,12を延伸する。なお、加熱手段120の駆動制御は、第1の延伸工程の終了時に加熱を停止させることなく、そのまま制御内容を維持する制御をする。また、延伸手段の駆動制御も同様に、第1の延伸工程の終了時に延伸を停止させることなく、延伸速度を調整する状態で制御する。
すなわち、第1のCPU131Aは、図6に示すように、第1の延伸工程と同様に台座部を適宜移動させて同一の温度範囲である1610以上1710℃以下、好ましくは1650℃以上1700℃以下で加熱する制御をする。また、第1のCPU131Aは、保持手段110の一対の保持部111間の距離を広げる方向に所定速度、例えば1μm/秒以上15μm/秒以下、好ましくは4μm/秒以上12μm/秒以下の速度範囲内で移動させる制御をする。さらに、第1のCPU131Aは、この第2の延伸工程の時間である加熱・延伸する時間を、例えば250秒以上550秒以下、好ましくは300秒以上450秒以下の範囲内で制御する。
【0066】
この第2の延伸工程において、延伸速度が1μm/秒より遅くなると、製造効率が低下し製造性の向上が図れなくなるおそれがある。一方、延伸速度が15μm/秒より速くなると、融着部分の断面形状が略円形となる前に径寸法が縮小し、融着部13の径寸法が小さくなって強度の向上が得られなくなるおそれがある。このことにより、第2の延伸工程における延伸速度を1μm/秒以上15μm/秒以下、好ましくは4μm/秒以上12μm/秒以下とすることが好ましい。また、第2の延伸工程において、加熱・延伸する時間が250秒より短くなると、断面略円形の融着部13が得られず、良好な光学特性が得られなくなるおそれがある。一方、加熱・延伸する時間が550秒より長くなると、垂れが顕著となったり、融着部13の径寸法が細くなって強度が低下したりするなどの不都合が生じるおそれがある。このことにより、第2の延伸工程の時間を250秒以上550秒以下、好ましくは300秒以上450秒以下とすることが好ましい。
なお、第2の延伸工程において、加熱する温度範囲は、上述した第1の延伸工程と同様の理由による。また、第1の延伸工程と同様に、加熱温度を所定の温度範囲内で高く設定するに従って延伸する速度を所定の延伸速度範囲内で速く設定されることが好ましい。
【0067】
このようにしてステップ4の第2の延伸工程により、光ファイバ11,12は断面略円形に融着する状態となる。この第2の延伸工程が終了して延伸工程が終了すると、冷却調整期間である冷却調整工程を実施する(ステップS5)。このステップS5の冷却調整工程は、計測部132の第2のCPU132Cが延伸工程の第2の延伸工程の終了を認識することにより冷却調整工程を実施する旨の信号を融着制御部131の第1のCPU131Aに出力させることにより実施される。この信号を取得した第1のCPU131Aは、加熱手段120を適宜動作させて光ファイバ11,12の延伸工程で加熱・延伸された部分を加熱するとともに、延伸手段を適宜動作させて加熱されている光ファイバ11,12を延伸する。なお、加熱手段120の駆動制御は、延伸工程の終了時に加熱を停止させることなく、加熱温度を調整する状態で制御する。また、延伸手段の駆動制御は、延伸工程の終了時に延伸を停止させることなく、延伸速度を調整する状態で制御する。
【0068】
すなわち、第1のCPU131Aは、予熱工程および延伸工程と同様に台座部を適宜移動させて光ファイバ11,12を加熱する制御をする。また、第1のCPU131Aは、図6に示すように、温度検出部からの信号に基づいて第2の延伸工程での温度以下の所定の温度範囲、例えば1460℃以上1560℃以下、好ましくは1470℃以上1530℃以下で加熱する制御をする。さらに、第1のCPU131Aは、温度検出部からの信号に基づいて所定温度に達した後に、保持手段110の一対の保持部111間の距離を広げる方向に、第2の延伸工程と同一の速度すなわち1μm/秒以上15μm/秒以下の範囲で移動させて延伸する制御をする。
なお、この冷却調整工程を実施する時間は、得られる光ファイバカプラ10があらかじめ設定した所定の分岐比あるいは分波比となる状態で加熱・延伸を停止させるまでの時間である。すなわち、加熱を停止したのちでも光ファイバ11,12の組成の結合が進行するので、所望の分岐比あるいは分波比が得られなくなるおそれがあるため、第2のCPU132Cは所望の分岐比あるいは分波比となる手前の所定の条件で冷却調整工程を終了させる旨の信号を第1のCPU131Aに出力する制御をする。
【0069】
この冷却調整工程において、加熱温度が1460℃より低くなると、光ファイバ11,12の粘性が増大して所望の分岐比や分波比などの所定の光学特性にするための延伸が困難となり、高精度で所定の光学特性を得るための延伸に時間を要し、製造性の向上が得られなくなるおそれがある。一方、加熱温度が1560℃より高くなると、所定の延伸後に急冷状態となり、所定の光学特性が変動するなどにより歩留まりが悪化するおそれがある。さらには、セラミックヒータ121の寿命が短くなり製造コストの増大やヒータ交換などの煩雑な保守管理が要求され、製造性の向上が図れなくなるおそれがある。このことにより、冷却調整工程における加熱温度を1460℃以上1560℃以下、好ましくは1470℃以上1530℃以下とすることが好ましい。
なお、冷却調整工程において、延伸速度範囲は、上述した第2の延伸工程と同様の理由による。また、延伸工程と同様に、加熱温度を所定の温度範囲内で高く設定するに従って延伸する速度を所定の延伸速度範囲内で速く設定されることが好ましい。
【0070】
そして、第2のCPU132Cは、この冷却調整工程において、処理部132B3からの信号に基づいて、あらかじめ設定した所定の光学特性となる手前の所定のタイミングの受光状態が得られたか否かを認識する。そして、第2のCPU132Cは、所定の状態を認識することにより、冷却調整工程の終了、すなわち光ファイバ11,12を断面略円形で所定の光学特性となる状態に融着する制御を終了する旨の信号を、第2のCPU132Cに出力する。この後、十分に冷却し、製造された光ファイバカプラ10を保持手段110から取り外し、光ファイバカプラ10の製造を終了する。そして、この製造された光ファイバカプラ10は、図5(C)に示すように、融着部13が断面略円形となっている。なお、製造された光ファイバカプラ10の融着部13近傍におけるコアは、径大すなわち若干拡散した状態となっている。
【0071】
〔実施の形態の効果〕
上述したように、上記実施の形態では、被覆部材11C,12Cが除去されて略並列に互いに接触する状態で配置した2本の光ファイバ11,12の一部を、1460℃以上2500℃以下の温度範囲内である1610℃以上1710℃以下で加熱しつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の範囲内である0.01μm/秒以上15μm/秒以下の速度で延伸して融着させる。このため、融着部13の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形、例えば光ファイバカプラ10の表面に水分に由来する水素基や水酸基が付着して屈折率が変動し光学特性が変化してしまうなどの不都合を生じない略円形に容易に融着でき、この断面略円形に融着するための加熱・延伸する時間を短縮でき、製造性を向上できる。
【0072】
そして、加熱・延伸して融着させる延伸工程として、予熱工程での加熱温度以上で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内である1610℃以上1710℃以下で加熱する第1の延伸工程および第2の延伸工程とする。このため、光ファイバ11,12が垂れ落ちるなどの不都合がなく良好な粘性が得られ、延伸により良好に融着して断面略円形の融着部13を容易に形成できる。
また、第1の延伸工程において、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内である0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下で延伸する。このため、比較的にゆっくりと延伸されて垂れが良好に防止でき、第2の延伸工程での断面略円形の融着が容易に得られる。
さらに、第1の延伸工程を20秒以上120秒以下で実施する。このため、断面略円形に融着するための部分的な融着および良好な垂れ防止が得られ、第2の延伸工程での断面略円形の融着が容易に得られる。
また、第2の延伸工程において、第1の延伸工程での延伸速度以上で0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内である1μm/秒以上15μm/秒以下で延伸する。このため、比較的に速く延伸しても径寸法が細くなり過ぎることなく断面略円形に良好に融着できる。
さらに、第2の延伸工程を250秒以上550秒以下で実施する。このため、比較的に短時間でも断面略円形に融着でき、製造性を確実に向上できる。
【0073】
また、融着するための加熱・延伸の動作の前に、予熱工程であらかじめ予熱しておく。このため、光ファイバ11,12の断面方向における温度分布が略均一となり、後工程である延伸工程における延伸による融着が良好となり、径寸法が小さくなりすぎることなく断面形状が略円形となり、良好な光学特性が得られる。
そして、予熱工程での加熱温度を1580℃以上1690℃以下としている。このため、融着のための加熱・延伸する延伸工程で断面略円形の良好な融着のための予熱として、光ファイバ11,12が垂れ落ちるなどの不都合がなく良好な粘性が得られ、良好な予熱ができる。
また、予熱工程を20秒以上70秒以下で実施する。このため、光ファイバ11,12が垂れることなく断面方向で略均一な温度分布となるある程度の粘度の状態を容易に得ることができる。したがって、後の延伸工程での断面略円形の良好な融着が短時間で容易にできる。
【0074】
さらに、延伸工程の後に、延伸工程の温度以下で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内である1460℃以上1560℃以下で加熱して、1μm/秒以上15μm/秒以下で延伸する冷却調整工程を実施して融着させる。このため、所定の分岐比や分波比などの所定の光学特性に高精度に形成することができる。さらに、延伸工程より低い温度で加熱・延伸して、所望の光学特性の手前まで冷却調整工程を実施するため、融着後に急冷されることなく、急冷による光学特性の変動がなく、高精度で所望の光学特性の光ファイバカプラ10を得ることができる。
また、冷却調整工程の終了タイミングとして、加熱・延伸時における計測部132にて計測する分岐比や分波比などの光学特性が所望の光学特性となる手前で終了させる。このため、予熱にて結合が進行して所定の光学特性となり、高精度で所望の光学特性の光ファイバカプラ10が得られる。
【0075】
また、所定の加熱温度範囲内で設定する加熱温度が高くなるに従って設定する延伸する速度を所定の延伸速度範囲内で速くすることが好ましい。このため、光ファイバ11,12の加熱される部分が垂れず、また製造された光ファイバカプラ10の融着部13の径寸法が細くなりすぎることを防止して十分に融着させて断面略円形にすることが、短時間の加熱・延伸で容易にできる。
【0076】
また、上記予熱工程、延伸工程および冷却調整工程を実施する製造装置100を提供することにより、断面略円形の光ファイバを効率よく製造することが容易に得られる。そして、上記製造装置100の構成としては、従来の装置構成と同様の保持手段110、加熱手段120および図示しない延伸手段と、上記工程を実施させる制御をする制御手段130とを備えた構成である。このため、従来の装置の制御方法を上記製造方法の工程で制御させる設定とするのみでよく、光ファイバカプラ10の製造性を容易に向上できる製造装置100を容易に提供できる。
【0077】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明の光ファイバカプラの製造において、上述した各実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0078】
すなわち、予熱工程、延伸工程および冷却調整工程を実施する構成としたが、予熱工程や冷却調整工程を実施せず、単に所定の加熱・延伸条件、すなわち1460℃以上2500℃以下の温度で加熱されつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度で延伸する延伸工程のみを実施してもよい。
そして、2本の光ファイバ11,12を融着させた光ファイバカプラ10の製造について説明したが、複数本を融着させてもよい。
また、加熱手段120としてセラミックスヒータなどの火炎を利用しないヒータを用いて説明したが、熱エネルギ121Aとして火炎を利用するマイクロトーチ121を用いて加熱したり、レーザ光を用いて加熱したりするなど、加熱する方法としてはいずれの方法でも適用できる。
【0079】
なお、マイクロトーチなどの火炎を利用するバーナを利用する場合には、例えば図7に示すように、予熱工程および延伸工程にて製造すればよい。図7は、光ファイバカプラをバーナにより製造する条件を示す説明図である。
すなわち、例えば1800℃以上2500℃以下、好ましくは1900℃以上2400℃以下で、100秒以上300秒以下、好ましくは160秒以上260秒以下で加熱して予熱工程を実施する。この後、加熱温度が1800℃以上2500℃以下、好ましくは1900℃以上2400℃以下で、延伸速度が5μm/秒以上18μm/秒以下、好ましくは6μm/秒以上15μm/秒以下で加熱・延伸して延伸工程を実施する。この延伸工程において、上述した実施の形態と同様に、加熱・延伸時における光学特性を計測部132にて検出して所望の光学特性となる条件の手前の所定のタイミングの条件で加熱・延伸を終了させて光ファイバカプラ10を製造する。
このように、バーナを用いて加熱する場合でも、1460℃以上2500℃以下の温度で加熱されつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度で延伸することで、光学特性の変動を生じない断面略円形に融着させる加熱・延伸の時間を容易に短縮することができる。
【0080】
なお、この予熱工程でも、上記実施の形態と同様に、1800℃より低くなると、光ファイバ11,12が十分に予熱されず後工程での加熱・延伸の際に十分な融着が得られなくなるおそれがある。一方、加熱温度が2500℃より高くなると、光ファイバ11,12の断面において略均一な温度の予熱となる前に垂れて歩留まりが悪化するおそれがある。このため、バーナを用いる場合においては、特に1800℃以上2500℃以下にすることが好ましい。
また、100秒より短くなると、光ファイバ11,12が十分に熱せられず、後の延伸工程における良好な融着が得られなくなるおそれがある。一方、300秒より長くなると、熱膨張による垂れが顕著となって良好な融着が得られなくなり、歩留まりが悪化するおそれがある。このため、予熱工程の時間を100秒以上300秒以下、好ましくは160秒以上260秒以下とすることが好ましい。そして、延伸工程では、予熱工程での加熱温度以上で1800℃以上2500℃以下、好ましくは1900℃以上2400℃以下とすることが好ましい。この条件は、予熱工程と同様の理由である。
【0081】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構成に変更するなどしてもよい。
【0082】
【発明の効果】
本発明によれば、略並列に配置された複数本の光ファイバの少なくとも一部を、1460℃以上2500℃以下の温度で加熱しつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度で延伸して融着させるため、融着した部分の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形にでき、断面略円形に融着させるまでの加熱および延伸する時間を容易に短縮でき、製造性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における光ファイバカプラを示す保護部材近傍の一部を切り欠いた断面図である。
【図2】前記一実施の形態における光ファイバカプラを示す保護部材近傍の一部を切り欠いた平面図である。
【図3】前記一実施の形態における製造装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】前記一実施の形態における光ファイバカプラを製造する動作を示すフローチャートである。
【図5】前記一実施の形態における光ファイバを融着処理する際の断面状態を示す説明図である。
(A):融着前の光ファイバの断面図
(B):融着途中の融着部分の断面図
(C):光ファイバカプラの融着部の断面図
【図6】前記一実施の形態における光ファイバカプラを製造する条件を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施の形態における光ファイバカプラを製造する条件を示す説明図である。
【符号の説明】
10:光ファイバカプラ、11,12:光ファイバ、13:融着部、100:製造装置、110:保持手段、120:加熱手段、130:制御手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本の光ファイバが融着された光ファイバカプラ、その製造方法およびその製造装置に関する。
【0002】
【背景技術】
従来、2本の光ファイバの長手方向の一部を適宜融着することにより、光ファイバの一端側から入光される光を所定の条件で他端側から出光させる光ファイバカプラの製造方法として、各種方法が知られている(例えば、特許文献1ないし特許文献3)。
【0003】
特許文献1に記載の方法は、光ファイバの長手方向の一部を約1600℃〜1800℃程度で数分〜数十分間加熱し、光ファイバのコアのドーパントを拡散させる。これら加熱処理された光ファイバを加熱処理した部分で並列配置し、加熱処理した部分を加熱しつつ延伸して融着させ、少ない延伸量で所定の特性が得られる光ファイバカプラを製造する。しかしながら、この特許文献1に記載の方法では、良好な光学的特性が得られるべく、加熱処理を複数回実施する必要があり、製造性の向上が図れない。
【0004】
特許文献2に記載の方法は、2本の光ファイバを並列配置し、長手方向の一部で加熱し、断面マユ形に光ファイバのクラッドを融着させ、さらに加熱を継続して断面略円形でコアが2本となる状態に融着させ、さらに加熱を継続して2本のコアのドーパントを拡散させて重畳する状態にして融着を完了させる。このドーパントを拡散させる条件は、例えば長期間の使用により外周面の組成が水素基や水酸基などの結合にて変化することで屈折率が変動して光学特性が変動してしまうことを防止するために、外周面まで拡散しない状態とする。このような条件で融着することで、延伸による光学特性の変動や強度低下などの不都合を防止した光ファイバカプラを製造する。しかしながら、この特許文献2に記載の方法では、融着の際に光ファイバのコアのドーパントが重畳する状態となるまで加熱しなければならず、加熱時間が長時間となり、製造性の向上が図れない。
【0005】
特許文献3に記載の方法は、並列配置した光ファイバの一部を約1000℃〜1500℃程度で数分〜数十分間加熱して適宜延伸し、断面が略円形に融着させて製造する。しかしながら、この特許文献3に記載の方法では、加熱温度が比較的に低いので、光ファイバが点接触とならずに融着部分の断面が十分に円形となるまでには、ゆっくりと長時間に亘って加熱延伸する必要があり、製造性の向上が図れない。
【0006】
【特許文献1】
特開平3−274512号公報(第2頁左下欄−第4頁右下欄)
【特許文献2】
特開平5−288953号公報(第3頁左欄−第4頁左欄)
【特許文献3】
特開平7−56048号公報(第2頁右欄−第5頁左欄)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、特許文献1に記載のものは、光ファイバをそれぞれ加熱処理した後に再び加熱しつつ延伸して融着させるので、複数回の加熱処理を実施しなければならず、製造性の向上が図れない。また、特許文献2に記載のものは、融着の際に長時間加熱しなければならず、製造性の向上が図れない。さらに、特許文献3に記載のものは、融着部分の断面が十分に円形となるまで融着させるには、長時間に亘って加熱延伸する必要があり、製造性の向上が図れない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて、良好な光学特性で効率よく製造可能な光ファイバカプラ、その製造方法およびその製造装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、複数本の光ファイバの少なくとも一部を加熱により融着して光ファイバカプラを製造する光ファイバカプラの製造方法であって、略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を、1460℃以上2500℃以下の温度で加熱しつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度で延伸して融着することを特徴とする光ファイバカプラの製造方法である。
【0010】
この発明では、略並列に配置された複数本の光ファイバの少なくとも一部を、1460℃以上2500℃以下の温度で加熱しつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度で延伸することにより融着する。このことにより、融着した部分の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形となるまで加熱および延伸する時間を短縮することが可能となり、製造性の向上が図れる。
なお、略並列とは、光ファイバの長手方向を略平行に配列する場合の他、光ファイバをねじって接触させた状態などをも意味する。
ここで、加熱する温度が1460℃より低くなると、加熱温度が低くなって光ファイバの粘性が十分に低下せずに融着性が低下し、融着部分の断面形状を略円形にするためにはゆっくりと延伸しなければならなくなり、製造効率が低下して製造性の向上が図れなくなる。一方、加熱する温度が2500℃より高くなると、加熱した部分が垂れて歩留まりが悪化する。このことにより、加熱する温度を1460℃以上2500℃以下に設定する。また、延伸する速度が0.01μm/秒より遅くなると、加熱した部分が垂れて歩留まりが悪化する。一方、延伸する速度が18μm/秒より速くなると、十分に融着する前に光ファイバの径寸法が小さくなり、融着後の径寸法が小さくなって十分な強度が得られなくなる。このことにより、延伸する速度を0.01μm/秒以上18μm/秒以下に設定する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光ファイバカプラの製造方法において、加熱する温度が高くなるに従って延伸する速度が速くなる条件で融着することを特徴とする。
【0012】
この発明では、加熱する温度を高くするに従って延伸する速度を速くする条件で融着させる。このことにより、加熱する部分が垂れず径寸法が細くなりすぎることなく十分に融着して断面略円形にすることが、短時間の加熱・延伸で得られる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の光ファイバカプラの製造方法において、融着は、1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で前記光ファイバを予熱する予熱期間と、この予熱期間の温度以上で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して延伸する延伸期間と、を順次実施する条件であることを特徴とする。
【0014】
この発明では、略並列に配置した複数本の光ファイバの少なくとも一部を、1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で前記光ファイバを予熱する予熱期間を実施した後に、予熱期間の温度以上で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して延伸する延伸期間を実施することで融着する。このことにより、光ファイバが融着する前にあらかじめ予熱されて光ファイバの断面方向における温度分布が略均一となり、後工程の延伸による融着が良好となり、径寸法が小さくなりすぎることなく断面形状が略円形となり、良好な光学特性が得られる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の光ファイバカプラの製造方法において、融着は、前記延伸期間の実施の後に、この延伸期間の温度以下で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して延伸する冷却調整期間を実施することを特徴とする。
【0016】
この発明では、延伸期間の実施の後に、延伸期間の温度以下で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して延伸する冷却調整期間を実施して融着させる。このことにより、所定の分岐比や光学特性に高精度に設定することが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記冷却調整期間は、加熱温度が1460℃以上1560℃以下で、延伸速度が1μm/秒以上15μm/秒以下であることを特徴とする。
【0018】
この発明では、加熱温度を1460℃以上1560℃以下で延伸速度を1μm/秒以上15μm/秒以下で冷却調整期間を実施する。このことにより、融着後に急激に冷却されることによる歩留まりの悪化を防止して所望の分岐比や光学特性が容易に高精度で得られる。
ここで、加熱温度が1460℃より低くなると、粘性が増大して所望の分岐比や光学特性にするための延伸が困難となり、高精度の分岐比や光学特性を得るための延伸に時間を要し、製造性の向上が得られなくなるおそれがある。一方、加熱温度が1560℃より高くなると、所定の加熱・延伸の終了後に製造された光ファイバカプラが急冷状態となり、分岐比や光学特性などが変動するなどにより歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、冷却調整期間における加熱温度を1460℃以上1560℃以下とする。また、延伸速度が1μm/秒より遅くなると、製造効率が低下し製造性の向上が図れなくなるおそれがある。一方、延伸速度が15μm/秒より速くなると、融着部分の断面形状が略円形となる前に径寸法が縮小し、融着後の径寸法が小さくなって強度の向上が得られなくなるおそれがある。このことにより、冷却調整期間における延伸速度を1μm/秒以上15μm/秒以下とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記予熱期間の加熱温度は、1580℃以上1690℃以下であることを特徴とする。
【0020】
この発明では、予熱期間を加熱温度が1580℃以上1690℃以下で実施する。このことにより、後工程の延伸期間における良好な融着のための予熱として、光ファイバが垂れ落ちるなどの不都合がなく良好な粘性が得られ、良好な予熱が得られる。
ここで、1580℃より低い温度で加熱すると、光ファイバが十分に予熱されず後工程での加熱・延伸の際に十分な融着が得られなくなるおそれがある。一方、1690℃より高い温度で加熱すると、光ファイバの断面において略均一な温度の予熱となる前に垂れて歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、予熱期間では、1580℃以上1690℃以下の温度で加熱する。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項3ないし請求項6のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記予熱期間の加熱する時間は、20秒以上70秒以下であることを特徴とする。
【0022】
この発明では、予熱期間を20秒以上70秒以下の時間で実施する。このことにより、光ファイバが垂れることなく断面方向で略均一な温度分布となるある程度の粘度の状態が容易に得られる。
ここで、予熱期間の時間が20秒より短くなると、光ファイバが十分に熱せられず、後工程の延伸期間における良好な融着が得られなくなるおそれがある。一方、予熱期間の時間が70秒より長くなると、熱膨張による垂れが顕著となって良好な融着が得られなくなり、歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、予熱期間の時間を20秒以上70秒以下とする。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項3ないし請求項7のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記延伸期間の加熱温度は、1610℃以上1710℃以下であることを特徴とする。
【0024】
この発明では、延伸期間を加熱温度が予熱期間の加熱温度以上で1610℃以上1710℃以下で実施する。このことにより、光ファイバが垂れ落ちるなどの不都合がなく良好な粘性が得られ、延伸により良好に融着して断面形状が略円形に容易に形成される。
ここで、加熱温度が1610℃より低くなると、光ファイバの粘性が十分に低下せずに融着性が低下し、融着部分の断面形状を略円形にするためにはゆっくりと延伸しなければならなくなり、製造効率が低下して製造性の向上が図れなくなるおそれがある。一方、1710℃より高くなると、加熱した部分が垂れて歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、延伸期間における加熱温度を1610℃以上1710℃以下とする。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項3ないし請求項8のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記延伸期間は、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する第1の延伸期間と、この第1の延伸期間の速度以上で0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する第2の延伸期間と、を順次実施することを特徴とする。
【0026】
この発明では、延伸期間として、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する第1の延伸期間を実施した後に、第1の延伸期間の速度以上で0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する第2の延伸期間を実施する。このことにより、第1の延伸期間で熱膨張によるたるみが防止され、第2の延伸期間にて良好な融着が得られ、断面形状が略円形に容易に融着される。
【0027】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記第1の延伸期間の延伸速度は、0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下であり、前記第2の延伸期間の延伸速度は、1μm/秒以上15μm/秒以下であることを特徴とする。
【0028】
この発明では、第1の延伸期間で0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下の速度で延伸し、第2の延伸期間で1μm/秒以上15μm/秒以下の速度で延伸する。このことにより、第1の延伸期間で比較的にゆっくりと延伸されて垂れが良好に防止され、第2の延伸期間で比較的に速く延伸されて断面形状が略円形に良好に融着される。
ここで、第1の延伸期間における延伸速度が0.01μm/秒より遅くなると、垂れが解消されず、歩留まりの向上が図れなくなるおそれがある。一方、0.5μm/秒より速くなると、融着性が増大する前に光ファイバの径寸法が小さくなってしまい、融着の前に光ファイバの径寸法の縮小により、融着後の径寸法も小さくなり、強度の向上が得られなくなるおそれがある。このことにより、第1の延伸期間における延伸速度を0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下とする。また、第2の延伸期間における延伸速度が1μm/秒より遅くなると、製造効率が低下し製造性の向上が図れなくなるおそれがある。一方、第2の延伸期間における延伸速度が15μm/秒より速くなると、融着部分の断面形状が略円形となる前に径寸法が縮小し、融着後の径寸法が小さくなって強度の向上が得られなくなるおそれがある。このことにより、第2の延伸期間における延伸速度を1μm/秒以上15μm/秒以下とする。
【0029】
請求項11に記載の発明は、請求項9または請求項10に記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記第1の延伸期間の時間は、20秒以上120秒以下で、前記第2の延伸期間の時間は、250秒以上550秒以下であることを特徴とする。
【0030】
この発明では、第1の延伸期間の時間を20秒以上120秒以下の時間で実施し、第2の延伸期間の時間を250秒以上550秒以下の時間で実施する。このことにより、良好な垂れ防止および径寸法が小さくなることなく断面形状が略円形となる良好な融着が容易に得られる。
ここで、第1の延伸期間の時間が20秒より短くなると融着がほとんど進行しなくなり、第2の延伸期間における加熱・延伸にて断面略円形の融着部を形成することが困難となるおそれがある。一方、第1の延伸期間の時間が120秒より長くなると、垂れが顕著となり、歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、第1の延伸期間の時間を20秒以上120秒以下とする。また、第2の延伸期間の時間が250秒より短くなると、断面略円形の融着部が得られず、良好な光学特性が得られなくなるおそれがある。一方、第2の延伸期間の時間が550秒より長くなると、垂れが顕著となったり、融着部の径寸法が細くなって強度が低下したりするなどの不都合が生じるおそれがある。このことにより、第2の延伸期間の時間を250秒以上550秒以下とする。
【0031】
請求項12に記載の発明は、請求項3に記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記予熱期間の加熱温度は、1800℃以上2500℃以下であることを特徴とする。
【0032】
この発明では、予熱期間を加熱温度が1800℃以上2500℃以下で実施する。このことにより、例えば加熱する構成としてセラミックヒータなどを用いずバーナなどの火炎を用いる場合などでは、後工程の延伸期間における良好な融着のための予熱として、光ファイバが撓むなどの不都合がなく良好な粘性が得られ、良好な予熱が得られる。
ここで、加熱温度が1800℃より低くなると、光ファイバが十分に予熱されず後工程での加熱・延伸の際に十分な融着が得られなくなるおそれがある。一方、加熱温度が2500℃より高くなると、光ファイバの断面において略均一な温度の予熱となる前に撓みなどが生じて歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、予熱期間では、1800℃以上2500℃以下の温度で加熱する。
【0033】
請求項13に記載の発明では、請求項3または請求項12に記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記予熱期間の加熱する時間は、100秒以上300秒以下であることを特徴とする。
【0034】
この発明では、予熱期間を100秒以上300秒以下の時間で実施する。このことにより、光ファイバが垂れることなく断面方向で略均一な温度分布となるある程度の粘度の状態が容易に得られる。
ここで、予熱期間の時間が100秒より短くなると、光ファイバが十分に熱せられず、後工程の延伸期間における良好な融着が得られなくなるおそれがある。一方、予熱期間の時間が300秒より長くなると、熱膨張による垂れが顕著となって良好な融着が得られなくなり、歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、予熱期間の時間を100秒以上300秒以下とする。
【0035】
請求項14に記載の発明は、請求項3、請求項12および請求項13のうちのいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、前記延伸期間は、加熱温度が1800℃以上2500℃以下で、延伸速度が5μm/秒以上18μm/秒以下であることを特徴とする。
【0036】
この発明では、加熱温度を1800℃以上2500℃以下で延伸速度を5μm/秒以上18μm/秒以下で延伸期間を実施する。このことにより、光ファイバが垂れ落ちるなどの不都合がなく良好な粘性が得られ、延伸により良好に融着して断面形状が略円形に容易に形成される。
ここで、加熱温度1800℃以上2500℃以下の加熱における延伸速度が5μm/秒より遅くなると、垂れが解消されず、歩留まりの向上が図れなり、また製造効率が低下して製造性の向上が図れなくなるおそれがある。一方、加熱温度1800℃以上2500℃以下の加熱における延伸速度が18μm/秒より速くなると、融着性が増大する前に光ファイバの径寸法が小さくなってしまい、融着の前に光ファイバの径寸法の縮小により、融着後の径寸法も小さくなり、強度の向上が得られなくなるおそれがある。このことにより、加熱温度1800℃以上2500℃以下の加熱で延伸速度を5μm/秒以上18μm/秒以下とする。
【0037】
請求項15に記載の発明は、複数本の光ファイバの少なくとも一部を加熱により融着して光ファイバカプラを製造する光ファイバカプラの製造方法であって、略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を1580℃以上1690℃以下の温度範囲内で加熱して予熱を実施し、この予熱した前記光ファイバの少なくとも一部を1610℃以上1710℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下の速度範囲内で延伸して第1の加熱・延伸を実施し、この第1の加熱・延伸をした前記光ファイバの少なくとも一部を1610℃以上1710℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、1μm/秒以上15μm/秒以下の速度範囲内で延伸して第2の加熱・延伸を実施し、この第2の加熱・延伸をした前記光ファイバの少なくとも一部を1460℃以上1560℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、1μm/秒以上15μm/秒以下の速度範囲内で延伸することを特徴とする光ファイバカプラの製造方法である。
【0038】
この発明では、略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を1580℃以上1690℃以下の温度範囲内で加熱して予熱した後に、1610℃以上1710℃以下の温度範囲内で加熱しつつ0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下の速度範囲内で延伸し、さらに1610℃以上1710℃以下の温度範囲内で加熱しつつ1μm/秒以上15μm/秒以下の速度範囲内で延伸し、そして1460℃以上1560℃以下の温度範囲内で加熱しつつ1μm/秒以上15μm/秒以下の速度範囲内で延伸する。このことにより、融着した部分の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形となるまで加熱および延伸する時間が短縮し、製造性が向上する。
【0039】
請求項16に記載の発明は、複数本の光ファイバの少なくとも一部を加熱により融着して光ファイバカプラを製造する光ファイバカプラの製造方法であって、略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を1800℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して予熱を実施し、この予熱した前記光ファイバの少なくとも一部を1800℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、5μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸することを特徴とする光ファイバカプラの製造方法である。
【0040】
この発明では、略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を1800℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して予熱した後に、1800℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、5μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する。このことにより、融着した部分の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形となるまで加熱および延伸する時間が短縮し、製造性が向上する。
【0041】
請求項17に記載の発明は、請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法が実施されて製造されたことを特徴とした光ファイバカプラである。
【0042】
この発明では、請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法により製造される。このことにより、融着した部分の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形に容易に製造されるとともに、製造時の加熱および延伸する時間が短縮し、製造性の向上が図れる。
【0043】
請求項18に記載の発明は、請求項1ないし請求項17のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法を実施することを特徴とした光ファイバカプラの製造装置である。
【0044】
この発明では、請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法を実施して光ファイバカプラを製造する。このことにより、融着した部分の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形に光ファイバカプラが容易に製造されるとともに、製造時の加熱および延伸する時間が短縮し、製造性の向上が図れる。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における一実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔光ファイバカプラの構成〕
図1は、本実施の形態において製造される光ファイバカプラを示す保護部材近傍の一部を切り欠いた断面図である。図2は、光ファイバカプラを示す保護部材近傍の一部を切り欠いた平面図である。なお、本実施の形態では、2本の光ファイバを融着した融着型光ファイバカプラについて説明するが、融着する光ファイバは2本に限らず、複数本融着されたものでも適用できる。
【0046】
図1および図2において、10は光ファイバカプラで、この光ファイバカプラ10は、光ファイバ11,12の少なくとも一部が溶融延伸法により融着されて枝分かれ状に構成され、1本あるいは複数本の光ファイバ11,12の長手方向の一端から入光された光を、所定の分岐率や分波率で分光して他端から出光させる。融着する光ファイバ11,12は、線状のクラッド11A,12Aの中心軸にコア11B,12Bを有し、外周面には被覆部材11C,12Cがそれぞれ設けられている。
そして、光ファイバカプラ10は、光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cが除去された部分で融着されて融着部13が形成されている。この融着部13は、断面略円形で、外周面が略円柱状となるクラッド13A内に2本のコア13Bが略平行に埋設された状態に形成されている。
【0047】
また、光ファイバカプラ10には、融着部13の近傍を保護する保護部材20が設けられている。この保護部材20は、支持板21、光ファイバ固定部22と、カプラ固定部23と、保護管24と、を備えている。
支持板21は、例えば石英板などにて略板状に形成されている。この支持板21の一面には、所定の間隙を介して対向する一対の光ファイバ固定部22が設けられている。
光ファイバ固定部22は、支持板21の一面側に位置して光ファイバ11,12を支持板21に位置決め固定する。カプラ固定部23は、光ファイバ固定部22間で融着部13の両端側に位置し光ファイバ11,12を支持板21に位置決め固定する。これら光ファイバ固定部22およびカプラ固定部23は、例えば紫外線硬化型樹脂などが用いられる。
保護管24は、例えば金属管が用いられ、光ファイバカプラ10を固定した支持板21を収容可能に形成されている。なお、金属管に限らず、例えばガラス管などの線膨張係数の小さい部材にて形成したものなど、いずれの材料が利用できる。そして、支持板21を収容した保護管24は両端部が光ファイバ11,12を延出する状態にシール部材25にて閉塞され、光ファイバカプラ10は融着部13の近傍が保護部材20内に封止されて固定される。
【0048】
〔製造装置の構成〕
次に、上記光ファイバカプラを製造するための製造装置の構成について図面を参照して説明する。図3は、製造装置の概略構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態における製造装置として、加熱手段に電気炉としてセラミックヒータを用いた構成について説明するが、火炎を利用したマイクロトーチ(マイクロバーナ)などを用いた構成などでも適用できる。
【0049】
図3において、100は製造装置で、この製造装置100は、2本の光ファイバ11,12の少なくとも一部を融着させて光ファイバカプラ10を製造する装置である。この製造装置100は、保持手段110と、加熱手段120と、図示しない延伸手段と、制御手段130と、を備えている。また、制御手段130は、融着状況を制御するもので、融着制御部131と、計測部132と、を備えている。
【0050】
保持手段110は、クランプなどの一対の保持部111を有し、光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cが除去された部分をほぼ弛みなく略並列に接触する状態で配置して保持する。なお、保持する状態としては、光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cが除去された部分を長手方向が略平行、あるいはねじって互いに接触する状態とする。そして、一対の保持部111はそれぞれ延伸手段に配設され、保持部111間の距離が延伸手段により可変可能となっている。
なお、延伸手段は、制御手段130の融着制御部131の制御により、保持部111間の距離を可変する量や可変する時間、保持部111を移動させる速さなどが制御されて動作する。
【0051】
加熱手段120は、図示しない台座部と、セラミックヒータ121と、図示しない温度検出部と、を備えている。なお、図3は、セラミックヒータ121として、加熱する熱エネルギを図示する都合上、マイクロトーチ(マイクロバーナ)の火炎のように示す。そして、上述したように、セラミックヒータ121に限らず、図3に示すように、直接火炎を用いて加熱するマイクロトーチなどのバーナを利用してもよい。
台座部は、制御手段130の融着制御部131の制御により移動可能に配設されている。セラミックヒータ121は、台座部に一体的に設けられ、図示しない電力の供給にて加熱してその熱エネルギ121Aにて光ファイバ11,12を加熱する。温度検出部は、セラミックヒータ121にて加熱された光ファイバ11,12の温度を検出する。この検出方法としては、加熱により発光する光ファイバ11,12の光量にて判断したり、輻射熱を測定したりするなど、既存のいずれの方法をも利用できる。
そして、加熱手段120は、制御手段130の融着制御部131が温度検出部にて検出する温度に基づいてセラミックヒータ121を制御、すなわち加熱する温度や時間などが制御される。
【0052】
制御手段130の融着制御部131は、第1のCPU(Central Processing Unit)131Aを有している。この第1のCPU131Aは、加熱手段120および延伸手段に接続され、内蔵する図示しない内蔵メモリにあらかじめ設定登録された条件に基づいて、加熱手段120および延伸手段の動作を適宜制御する。すなわち、第1のCPU131Aは、加熱手段120による光ファイバ11,12の加熱温度や加熱時間を制御し、延伸手段による保持部111間に張設された光ファイバ11,12の延伸時間や延伸速度を制御する。
【0053】
制御手段130の計測部132は、発光部132Aと、受光部132Bと、第2のCPU132Cと、を備えている。発光部132Aは、第1の光源132A1と、第2の光源132A2と、合波部132A3と、を備えている。第1の光源132A1および第2の光源132A2は、第2のCPU132にて制御され、それぞれ異なる波長、例えば第1の光源132A1は波長が約1550nmの光を出射し、第2の光源132A2は波長が約1310nmの光を出射する。合波部132A3は、第1の光源132A1および第2の光源132A2から出射される光を合波する。この合波部132A3は、光ファイバカプラ10のいずれか一方の光ファイバ12(11)に着脱可能に接続され、光ファイバ12(11)の長手方向の一端に合波した光を入射させる。
受光部132Bは、第1の受光部132B1と、第2の受光部132B2と、処理部132B3と、を備えている。第1の受光部132B1および第2の受光部132B2は、例えばフォトトランジスタなどが用いられ、光ファイバカプラ10の光ファイバ11,12の端部にそれぞれ接続され、光ファイバ11,12から出射される光を受光する。処理部132B3は、第1の受光部132B1および第2の受光部132B2にそれぞれ接続され、これら第1の受光部132B1および第2の受光部132B2で受光した光に関する電気信号を適宜処理して出力する。
第2のCPU132Cは、受光部132Bの処理部132B3に接続され、処理部132B3で処理された信号を適宜処理して例えば図示しない表示装置にグラフ表示するなど、融着する一対の光ファイバ11,12の光の分岐や分波の状態を検出する。また、第2のCPU132Cは、融着制御部131の第1のCPU131Aに接続されている。そして、第2のCPU132Cは、処理部132B3からの信号に基づいて、あらかじめ設定された分岐や分波の状態を認識することにより、適宜信号を第1のCPU131Aに出力し、融着処理を制御する。
【0054】
なお、上記構成において、第1の光源および第2の光源を用いて2種類の波長の光を入射し、2つの第1の受光部132B1および第2の受光部132B2を用いて光の分岐状況を検出する構成で説明したが、1種類の光源のみを用いて1つの受光部により受光したり、複数の光源を用いて複数の受光部により受光したりするなどにり、分岐・分波の状況を認識して融着処理を制御してもよい。
【0055】
〔製造装置の動作〕
次に、上記製造装置を用いて光ファイバカプラを製造する動作について、図面を参照して説明する。図4は、光ファイバカプラを製造する動作を示すフローチャートである。図5は、光ファイバを融着処理する際の断面状態を示す説明図で、(A)は融着前の光ファイバの断面図、(B)は融着途中の融着部分の断面図、(C)は光ファイバカプラの融着部の断面図である。図6は、光ファイバカプラをセラミックヒータにより製造する条件を示す説明図である。
【0056】
まず、図4に示すように、前処理工程を実施する(ステップS1)。すなわち、2本の光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cの一部を除去する。なお、セラミックヒータ121の代わりに、加熱手段120としてマイクロトーチなどの火炎を利用する構成においては、被覆部材11C,12Cの除去として、被覆部材11C,12Cが除去された光ファイバ11,12の径寸法が250μm前後の場合、光ファイバ11,12の長さ寸法で約16.5mm除去するとよい。
ここで、被覆部材11C,12Cの除去する長さ寸法である剥き幅は、製造後の光ファイバカプラ10の小型化のために短い寸法が好ましいが、あまりに短すぎると複数本の光ファイバ11,12を略並列に配置させて接触させる状態が得られにくくなるとともに、融着の際の加熱で被覆部材11C,12Cまで加熱されて損傷し歩留まりが悪化するおそれがある。このことから、光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cの剥き幅は、約16.5mm程度とすることが好ましい。
【0057】
そして、光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cが除去された部分を互いに絡まって図5(A)に示すように接触する状態にねじる。この状態で、被覆部材11C,12Cが除去された部分が一対の保持部111間に位置させてほぼ弛みがない状態で保持手段110に光ファイバ11,12を保持させる。この光ファイバ11,12の保持状態は、ねじった状態に限らず、長手方向を略平行に配置して接触させたり、交差する状態で接触させたりしてもよい。
なお、光ファイバ11,12の長手方向が交差する状態で加熱・延伸して融着させることで良好な融着部13を形成できることから、ねじった状態で保持することが好ましい。
【0058】
この後、計測部132の発光部132Aを動作させ、第1の光源132A1および第2の光源132A2からそれぞれ異なる波長で出射される光を合波部132A3で合波し、保持手段110に保持した一方の光ファイバ12(11)の一端から入射させ、前処理工程を完了する。この光の入射により、入射された光は、受光部132Bの第1の受光部132B1および第2の受光部132B2で適宜受光され、処理部132B3で受光に対応して出力される信号を処理し、第2のCPU132Cで光の分岐や分波状態を例えば表示装置にて表示させる。なお、前処理工程では、一方の光ファイバ12(11)にのみ光を入射させることから、第1の受光部132B1または第2の受光部132B2の一方(第2の受光部132B2)のみで受光される。
【0059】
前処理工程の後、予熱期間となる予熱工程を実施する(ステップS2)。すなわち、計測部132の第2のCPU132Cからの予熱工程を実施する旨の信号を融着制御部131の第1のCPU131Aに出力させる。この信号を取得した第1のCPU131Aは、加熱手段120を適宜動作させ、保持手段110に保持された光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cが除去されて互いに捩れて接触する部分をセラミックヒータ121からの熱エネルギ121Aにより加熱する。
この加熱の際、例えば加熱手段120としてセラミックヒータ121の代わりにマイクロトーチなどの火炎を用いる構成、あるいはレーザ光により加熱する構成などでは、局所的に加熱することを防止する目的で、第1のCPU131Aは、台座部を光ファイバ11,12の長手方向に略沿って、例えば3600μm〜3700μm程度の距離で約2000μm/秒の速度で移動する状態に移動させる制御をする。そして、セラミックヒータ121において、所定の領域で略均一に加熱できる場合には台座部を移動させなくてもよく、局所的な加熱となるおそれがある場合には移動させる制御を実施するとよい。
また、第1のCPU131Aは、図6に示すように、温度検出部からの信号に基づいて所定の温度範囲、例えば1580℃以上1690℃以下、好ましくは1630℃以上1670℃以下で、所定時間、例えば20秒以上70秒以下、好ましくは30秒以上50秒以下で加熱する制御をする。なお、温度調整としては、セラミックヒータ121に供給する電力量、マイクロトーチでは供給する燃料ガスや空気量の調整による熱量の調整、台座部の移動によるセラミックヒータ121からの距離やマイクロトーチの火炎の当たり具合すなわち火炎と光ファイバ11,12との距離の調整など、いずれの制御方法が適用できる。
【0060】
この予熱工程において、マイクロトーチを用いて被覆部材11C,12Cの剥き幅が約16.5mm程度とした光ファイバ11,12を融着する場合に、台座部を移動させる振り幅が3600μm〜3700μmより幅狭寸法となると、光ファイバカプラ10の融着部13と融着されていない光ファイバ11,12との境界近傍におけるテーパが光ファイバ11,12の長手方向に対して急角度となり、光損失が増大する。また、振り幅が3600μm〜3700μmより幅広寸法となると、光ファイバ11,12の被覆部材11C,12Cが加熱されることとなり、被覆部材11C,12Cが損傷して光損失が増大するおそれがある。このことから、上述した径寸法や長さ寸法の光ファイバカプラをマイクロトーチやレーザ光などにて製造する場合、マイクロトーチの振り幅を3600μm〜3700μm程度に設定することが好ましい。
【0061】
また、予熱工程において、光ファイバ11,12の加熱温度が1580℃より低くなると、光ファイバ11,12が十分に予熱されず後工程での加熱・延伸の際に十分な融着が得られなくなるおそれがある。一方、加熱する温度が1690℃より高くなると、光ファイバ11,12の断面において略均一な温度の予熱となる前に垂れて歩留まりが悪化するおそれがある。さらには、セラミックヒータ121の寿命が短くなり製造コストの増大やヒータ交換などの煩雑な保守管理が要求され、製造性の向上が図れなくなるおそれがある。このことにより、予熱工程では、1580℃以上1690℃以下、好ましくは1630℃以上1670℃以下の温度で加熱することが好ましい。
さらに、予熱工程において、加熱する時間が20秒より短くなると、光ファイバ11,12が十分に熱せられず、後工程の延伸期間における良好な融着が得られなくなるおそれがある。一方、加熱する時間が70秒より長くなると、熱膨張による垂れ、すなわち弛みが顕著となって良好な融着が得られなくなり、歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、予熱工程での加熱する時間を20秒以上70秒以下、好ましくは30秒以上50秒以下に設定することが好ましい。
【0062】
このようにしてステップ2の予熱工程が終了すると、延伸期間である延伸工程を実施する。この延伸工程は、第1の延伸期間である第1の延伸工程(ステップS3)と、第2の延伸期間である第2の延伸工程(ステップS4)とがあり、第1の延伸工程の後に第2の延伸工程が実施される。
【0063】
ステップS3の第1の延伸工程は、計測部132の第2のCPU132Cが予熱工程の終了を認識することにより第1の延伸工程を実施する旨の信号を融着制御部131の第1のCPU131Aに出力させることにより実施される。この信号を取得した第1のCPU131Aは、加熱手段120を適宜動作させて光ファイバ11,12の予熱工程で加熱された部分を加熱するとともに、図示しない延伸手段を適宜動作させて加熱されている光ファイバ11,12を延伸する。なお、加熱手段120の駆動制御は、予熱工程の終了時に加熱を停止させることなく、加熱温度を調整する状態で制御する。
すなわち、第1のCPU131Aは、予熱工程と同様に台座部を適宜移動させて光ファイバ11,12を加熱する制御をする。また、第1のCPU131Aは、図6に示すように、温度検出部からの信号に基づいて予熱工程での加熱温度以上の所定の温度範囲、例えば1610℃以上1710℃以下、好ましくは1650℃以上1700℃以下で、所定時間、例えば20秒以上120秒以下、好ましくは30秒以上90秒以下で加熱する制御をする。さらに、第1のCPU131Aは、温度検出部からの信号に基づいて所定温度に達した後に、保持手段110の一対の保持部111間の距離を広げる方向に所定速度、例えば0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下、好ましくは0.1μm/秒以上0.3μm/秒以下の速度範囲内で移動させる制御をすることが好ましい。
【0064】
この第1の延伸工程において、加熱温度が1610℃より低くなると、光ファイバ11,12の粘性が十分に低下せずに融着性が低下し、融着部分の断面形状を略円形にするためにはゆっくりと延伸しなければならなくなり、製造効率が低下して製造性の向上が図れなくなるおそれがある。一方、1710℃より高くなると、加熱した部分が垂れて歩留まりが悪化するおそれがある。さらには、セラミックヒータ121の寿命が短くなり製造コストの増大やヒータ交換などの煩雑な保守管理が要求され、製造性の向上が図れなくなるおそれがある。このことにより、第1の延伸工程における加熱温度を1610℃以上1710℃以下、好ましくは1650℃以上1700℃以下とすることが好ましい。
また、第1の延伸工程において、延伸速度が0.01μm/秒より遅くなると、垂れが解消されず、歩留まりの向上が図れなくなるおそれがある。一方、0.5μm/秒より速くなると、融着性が増大する前に光ファイバ11,12の径寸法が小さくなってしまい、融着の前に光ファイバ11,12の径寸法の縮小により、融着後の径寸法も小さくなり、強度の向上が得られなくなるおそれがある。このことにより、第1の延伸工程における延伸速度を0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下、好ましくは0.1μm/秒以上0.3μm/秒以下とすることが好ましい。
さらに、第1の延伸工程において、加熱・延伸する時間が20秒より短くなると融着がほとんど進行しなくなり、第2の延伸工程における加熱・延伸にて断面略円形の融着部を形成することが困難となるおそれがある。一方、第1の延伸工程の時間が120秒より長くなると、垂れが顕著となり、歩留まりが悪化するおそれがある。このことにより、第1の延伸工程の時間を20秒以上120秒以下、好ましくは30秒以上90秒以下とすることが好ましい。
なお、加熱温度を所定の温度範囲内で高く設定するに従って延伸する速度を所定の延伸速度範囲内で速く設定されることが好ましい。
【0065】
このようにしてステップ3の第1の延伸工程により、光ファイバ11,12の接触する部分の一部が融着する状態となる。この第1の延伸工程が終了すると、ステップ4の第2の延伸工程が実施される。このステップ4の第2の延伸工程は、計測部132の第2のCPU132Cが第1の延伸工程の終了を認識することにより第2の延伸工程を実施する旨の信号を融着制御部131の第1のCPU131Aに出力させることにより実施される。この信号を取得した第1のCPU131Aは、第1の延伸工程と同様の条件で加熱手段120を適宜動作させて加熱するとともに、延伸手段を適宜動作させて加熱されている光ファイバ11,12を延伸する。なお、加熱手段120の駆動制御は、第1の延伸工程の終了時に加熱を停止させることなく、そのまま制御内容を維持する制御をする。また、延伸手段の駆動制御も同様に、第1の延伸工程の終了時に延伸を停止させることなく、延伸速度を調整する状態で制御する。
すなわち、第1のCPU131Aは、図6に示すように、第1の延伸工程と同様に台座部を適宜移動させて同一の温度範囲である1610以上1710℃以下、好ましくは1650℃以上1700℃以下で加熱する制御をする。また、第1のCPU131Aは、保持手段110の一対の保持部111間の距離を広げる方向に所定速度、例えば1μm/秒以上15μm/秒以下、好ましくは4μm/秒以上12μm/秒以下の速度範囲内で移動させる制御をする。さらに、第1のCPU131Aは、この第2の延伸工程の時間である加熱・延伸する時間を、例えば250秒以上550秒以下、好ましくは300秒以上450秒以下の範囲内で制御する。
【0066】
この第2の延伸工程において、延伸速度が1μm/秒より遅くなると、製造効率が低下し製造性の向上が図れなくなるおそれがある。一方、延伸速度が15μm/秒より速くなると、融着部分の断面形状が略円形となる前に径寸法が縮小し、融着部13の径寸法が小さくなって強度の向上が得られなくなるおそれがある。このことにより、第2の延伸工程における延伸速度を1μm/秒以上15μm/秒以下、好ましくは4μm/秒以上12μm/秒以下とすることが好ましい。また、第2の延伸工程において、加熱・延伸する時間が250秒より短くなると、断面略円形の融着部13が得られず、良好な光学特性が得られなくなるおそれがある。一方、加熱・延伸する時間が550秒より長くなると、垂れが顕著となったり、融着部13の径寸法が細くなって強度が低下したりするなどの不都合が生じるおそれがある。このことにより、第2の延伸工程の時間を250秒以上550秒以下、好ましくは300秒以上450秒以下とすることが好ましい。
なお、第2の延伸工程において、加熱する温度範囲は、上述した第1の延伸工程と同様の理由による。また、第1の延伸工程と同様に、加熱温度を所定の温度範囲内で高く設定するに従って延伸する速度を所定の延伸速度範囲内で速く設定されることが好ましい。
【0067】
このようにしてステップ4の第2の延伸工程により、光ファイバ11,12は断面略円形に融着する状態となる。この第2の延伸工程が終了して延伸工程が終了すると、冷却調整期間である冷却調整工程を実施する(ステップS5)。このステップS5の冷却調整工程は、計測部132の第2のCPU132Cが延伸工程の第2の延伸工程の終了を認識することにより冷却調整工程を実施する旨の信号を融着制御部131の第1のCPU131Aに出力させることにより実施される。この信号を取得した第1のCPU131Aは、加熱手段120を適宜動作させて光ファイバ11,12の延伸工程で加熱・延伸された部分を加熱するとともに、延伸手段を適宜動作させて加熱されている光ファイバ11,12を延伸する。なお、加熱手段120の駆動制御は、延伸工程の終了時に加熱を停止させることなく、加熱温度を調整する状態で制御する。また、延伸手段の駆動制御は、延伸工程の終了時に延伸を停止させることなく、延伸速度を調整する状態で制御する。
【0068】
すなわち、第1のCPU131Aは、予熱工程および延伸工程と同様に台座部を適宜移動させて光ファイバ11,12を加熱する制御をする。また、第1のCPU131Aは、図6に示すように、温度検出部からの信号に基づいて第2の延伸工程での温度以下の所定の温度範囲、例えば1460℃以上1560℃以下、好ましくは1470℃以上1530℃以下で加熱する制御をする。さらに、第1のCPU131Aは、温度検出部からの信号に基づいて所定温度に達した後に、保持手段110の一対の保持部111間の距離を広げる方向に、第2の延伸工程と同一の速度すなわち1μm/秒以上15μm/秒以下の範囲で移動させて延伸する制御をする。
なお、この冷却調整工程を実施する時間は、得られる光ファイバカプラ10があらかじめ設定した所定の分岐比あるいは分波比となる状態で加熱・延伸を停止させるまでの時間である。すなわち、加熱を停止したのちでも光ファイバ11,12の組成の結合が進行するので、所望の分岐比あるいは分波比が得られなくなるおそれがあるため、第2のCPU132Cは所望の分岐比あるいは分波比となる手前の所定の条件で冷却調整工程を終了させる旨の信号を第1のCPU131Aに出力する制御をする。
【0069】
この冷却調整工程において、加熱温度が1460℃より低くなると、光ファイバ11,12の粘性が増大して所望の分岐比や分波比などの所定の光学特性にするための延伸が困難となり、高精度で所定の光学特性を得るための延伸に時間を要し、製造性の向上が得られなくなるおそれがある。一方、加熱温度が1560℃より高くなると、所定の延伸後に急冷状態となり、所定の光学特性が変動するなどにより歩留まりが悪化するおそれがある。さらには、セラミックヒータ121の寿命が短くなり製造コストの増大やヒータ交換などの煩雑な保守管理が要求され、製造性の向上が図れなくなるおそれがある。このことにより、冷却調整工程における加熱温度を1460℃以上1560℃以下、好ましくは1470℃以上1530℃以下とすることが好ましい。
なお、冷却調整工程において、延伸速度範囲は、上述した第2の延伸工程と同様の理由による。また、延伸工程と同様に、加熱温度を所定の温度範囲内で高く設定するに従って延伸する速度を所定の延伸速度範囲内で速く設定されることが好ましい。
【0070】
そして、第2のCPU132Cは、この冷却調整工程において、処理部132B3からの信号に基づいて、あらかじめ設定した所定の光学特性となる手前の所定のタイミングの受光状態が得られたか否かを認識する。そして、第2のCPU132Cは、所定の状態を認識することにより、冷却調整工程の終了、すなわち光ファイバ11,12を断面略円形で所定の光学特性となる状態に融着する制御を終了する旨の信号を、第2のCPU132Cに出力する。この後、十分に冷却し、製造された光ファイバカプラ10を保持手段110から取り外し、光ファイバカプラ10の製造を終了する。そして、この製造された光ファイバカプラ10は、図5(C)に示すように、融着部13が断面略円形となっている。なお、製造された光ファイバカプラ10の融着部13近傍におけるコアは、径大すなわち若干拡散した状態となっている。
【0071】
〔実施の形態の効果〕
上述したように、上記実施の形態では、被覆部材11C,12Cが除去されて略並列に互いに接触する状態で配置した2本の光ファイバ11,12の一部を、1460℃以上2500℃以下の温度範囲内である1610℃以上1710℃以下で加熱しつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の範囲内である0.01μm/秒以上15μm/秒以下の速度で延伸して融着させる。このため、融着部13の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形、例えば光ファイバカプラ10の表面に水分に由来する水素基や水酸基が付着して屈折率が変動し光学特性が変化してしまうなどの不都合を生じない略円形に容易に融着でき、この断面略円形に融着するための加熱・延伸する時間を短縮でき、製造性を向上できる。
【0072】
そして、加熱・延伸して融着させる延伸工程として、予熱工程での加熱温度以上で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内である1610℃以上1710℃以下で加熱する第1の延伸工程および第2の延伸工程とする。このため、光ファイバ11,12が垂れ落ちるなどの不都合がなく良好な粘性が得られ、延伸により良好に融着して断面略円形の融着部13を容易に形成できる。
また、第1の延伸工程において、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内である0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下で延伸する。このため、比較的にゆっくりと延伸されて垂れが良好に防止でき、第2の延伸工程での断面略円形の融着が容易に得られる。
さらに、第1の延伸工程を20秒以上120秒以下で実施する。このため、断面略円形に融着するための部分的な融着および良好な垂れ防止が得られ、第2の延伸工程での断面略円形の融着が容易に得られる。
また、第2の延伸工程において、第1の延伸工程での延伸速度以上で0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内である1μm/秒以上15μm/秒以下で延伸する。このため、比較的に速く延伸しても径寸法が細くなり過ぎることなく断面略円形に良好に融着できる。
さらに、第2の延伸工程を250秒以上550秒以下で実施する。このため、比較的に短時間でも断面略円形に融着でき、製造性を確実に向上できる。
【0073】
また、融着するための加熱・延伸の動作の前に、予熱工程であらかじめ予熱しておく。このため、光ファイバ11,12の断面方向における温度分布が略均一となり、後工程である延伸工程における延伸による融着が良好となり、径寸法が小さくなりすぎることなく断面形状が略円形となり、良好な光学特性が得られる。
そして、予熱工程での加熱温度を1580℃以上1690℃以下としている。このため、融着のための加熱・延伸する延伸工程で断面略円形の良好な融着のための予熱として、光ファイバ11,12が垂れ落ちるなどの不都合がなく良好な粘性が得られ、良好な予熱ができる。
また、予熱工程を20秒以上70秒以下で実施する。このため、光ファイバ11,12が垂れることなく断面方向で略均一な温度分布となるある程度の粘度の状態を容易に得ることができる。したがって、後の延伸工程での断面略円形の良好な融着が短時間で容易にできる。
【0074】
さらに、延伸工程の後に、延伸工程の温度以下で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内である1460℃以上1560℃以下で加熱して、1μm/秒以上15μm/秒以下で延伸する冷却調整工程を実施して融着させる。このため、所定の分岐比や分波比などの所定の光学特性に高精度に形成することができる。さらに、延伸工程より低い温度で加熱・延伸して、所望の光学特性の手前まで冷却調整工程を実施するため、融着後に急冷されることなく、急冷による光学特性の変動がなく、高精度で所望の光学特性の光ファイバカプラ10を得ることができる。
また、冷却調整工程の終了タイミングとして、加熱・延伸時における計測部132にて計測する分岐比や分波比などの光学特性が所望の光学特性となる手前で終了させる。このため、予熱にて結合が進行して所定の光学特性となり、高精度で所望の光学特性の光ファイバカプラ10が得られる。
【0075】
また、所定の加熱温度範囲内で設定する加熱温度が高くなるに従って設定する延伸する速度を所定の延伸速度範囲内で速くすることが好ましい。このため、光ファイバ11,12の加熱される部分が垂れず、また製造された光ファイバカプラ10の融着部13の径寸法が細くなりすぎることを防止して十分に融着させて断面略円形にすることが、短時間の加熱・延伸で容易にできる。
【0076】
また、上記予熱工程、延伸工程および冷却調整工程を実施する製造装置100を提供することにより、断面略円形の光ファイバを効率よく製造することが容易に得られる。そして、上記製造装置100の構成としては、従来の装置構成と同様の保持手段110、加熱手段120および図示しない延伸手段と、上記工程を実施させる制御をする制御手段130とを備えた構成である。このため、従来の装置の制御方法を上記製造方法の工程で制御させる設定とするのみでよく、光ファイバカプラ10の製造性を容易に向上できる製造装置100を容易に提供できる。
【0077】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明の光ファイバカプラの製造において、上述した各実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0078】
すなわち、予熱工程、延伸工程および冷却調整工程を実施する構成としたが、予熱工程や冷却調整工程を実施せず、単に所定の加熱・延伸条件、すなわち1460℃以上2500℃以下の温度で加熱されつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度で延伸する延伸工程のみを実施してもよい。
そして、2本の光ファイバ11,12を融着させた光ファイバカプラ10の製造について説明したが、複数本を融着させてもよい。
また、加熱手段120としてセラミックスヒータなどの火炎を利用しないヒータを用いて説明したが、熱エネルギ121Aとして火炎を利用するマイクロトーチ121を用いて加熱したり、レーザ光を用いて加熱したりするなど、加熱する方法としてはいずれの方法でも適用できる。
【0079】
なお、マイクロトーチなどの火炎を利用するバーナを利用する場合には、例えば図7に示すように、予熱工程および延伸工程にて製造すればよい。図7は、光ファイバカプラをバーナにより製造する条件を示す説明図である。
すなわち、例えば1800℃以上2500℃以下、好ましくは1900℃以上2400℃以下で、100秒以上300秒以下、好ましくは160秒以上260秒以下で加熱して予熱工程を実施する。この後、加熱温度が1800℃以上2500℃以下、好ましくは1900℃以上2400℃以下で、延伸速度が5μm/秒以上18μm/秒以下、好ましくは6μm/秒以上15μm/秒以下で加熱・延伸して延伸工程を実施する。この延伸工程において、上述した実施の形態と同様に、加熱・延伸時における光学特性を計測部132にて検出して所望の光学特性となる条件の手前の所定のタイミングの条件で加熱・延伸を終了させて光ファイバカプラ10を製造する。
このように、バーナを用いて加熱する場合でも、1460℃以上2500℃以下の温度で加熱されつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度で延伸することで、光学特性の変動を生じない断面略円形に融着させる加熱・延伸の時間を容易に短縮することができる。
【0080】
なお、この予熱工程でも、上記実施の形態と同様に、1800℃より低くなると、光ファイバ11,12が十分に予熱されず後工程での加熱・延伸の際に十分な融着が得られなくなるおそれがある。一方、加熱温度が2500℃より高くなると、光ファイバ11,12の断面において略均一な温度の予熱となる前に垂れて歩留まりが悪化するおそれがある。このため、バーナを用いる場合においては、特に1800℃以上2500℃以下にすることが好ましい。
また、100秒より短くなると、光ファイバ11,12が十分に熱せられず、後の延伸工程における良好な融着が得られなくなるおそれがある。一方、300秒より長くなると、熱膨張による垂れが顕著となって良好な融着が得られなくなり、歩留まりが悪化するおそれがある。このため、予熱工程の時間を100秒以上300秒以下、好ましくは160秒以上260秒以下とすることが好ましい。そして、延伸工程では、予熱工程での加熱温度以上で1800℃以上2500℃以下、好ましくは1900℃以上2400℃以下とすることが好ましい。この条件は、予熱工程と同様の理由である。
【0081】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構成に変更するなどしてもよい。
【0082】
【発明の効果】
本発明によれば、略並列に配置された複数本の光ファイバの少なくとも一部を、1460℃以上2500℃以下の温度で加熱しつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度で延伸して融着させるため、融着した部分の断面形状が長期間の使用でも光学特性の変化を生じない略円形にでき、断面略円形に融着させるまでの加熱および延伸する時間を容易に短縮でき、製造性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における光ファイバカプラを示す保護部材近傍の一部を切り欠いた断面図である。
【図2】前記一実施の形態における光ファイバカプラを示す保護部材近傍の一部を切り欠いた平面図である。
【図3】前記一実施の形態における製造装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】前記一実施の形態における光ファイバカプラを製造する動作を示すフローチャートである。
【図5】前記一実施の形態における光ファイバを融着処理する際の断面状態を示す説明図である。
(A):融着前の光ファイバの断面図
(B):融着途中の融着部分の断面図
(C):光ファイバカプラの融着部の断面図
【図6】前記一実施の形態における光ファイバカプラを製造する条件を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施の形態における光ファイバカプラを製造する条件を示す説明図である。
【符号の説明】
10:光ファイバカプラ、11,12:光ファイバ、13:融着部、100:製造装置、110:保持手段、120:加熱手段、130:制御手段
Claims (18)
- 複数本の光ファイバの少なくとも一部を加熱により融着して光ファイバカプラを製造する光ファイバカプラの製造方法であって、
略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を、1460℃以上2500℃以下の温度で加熱しつつ、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度で延伸して融着する
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項1に記載の光ファイバカプラの製造方法において、
加熱する温度が高くなるに従って延伸する速度が速くなる条件で融着する
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載の光ファイバカプラの製造方法において、
融着は、1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で前記光ファイバを予熱する予熱期間と、この予熱期間の温度以上で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して延伸する延伸期間と、を順次実施する条件である
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項3に記載の光ファイバカプラの製造方法において、
融着は、前記延伸期間の実施の後に、この延伸期間の温度以下で1460℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して延伸する冷却調整期間を実施する
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項4に記載の光ファイバカプラの製造方法において、
前記冷却調整期間は、加熱温度が1460℃以上1560℃以下で、延伸速度が1μm/秒以上15μm/秒以下である
ことを特徴とした光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、
前記予熱期間の加熱温度は、1580℃以上1690℃以下である
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項3ないし請求項6のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、
前記予熱期間の加熱する時間は、20秒以上70秒以下である
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項3ないし請求項7のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、
前記延伸期間の加熱温度は、1610℃以上1710℃以下である
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項3ないし請求項8のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、
前記延伸期間は、0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する第1の延伸期間と、この第1の延伸期間の速度以上で0.01μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する第2の延伸期間と、を順次実施する
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項9に記載の光ファイバカプラの製造方法において、
前記第1の延伸期間の延伸速度は、0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下であり、
前記第2の延伸期間の延伸速度は、1μm/秒以上15μm/秒以下である
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項9または請求項10に記載の光ファイバカプラの製造方法において、
前記第1の延伸期間の時間は、20秒以上120秒以下で、
前記第2の延伸期間の時間は、250秒以上550秒以下である
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項3に記載の光ファイバカプラの製造方法において、
前記予熱期間の加熱温度は、1800℃以上2500℃以下である
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項3または請求項12に記載の光ファイバカプラの製造方法において、
前記予熱期間の加熱する時間は、100秒以上300秒以下である
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項3、請求項12および請求項13のうちのいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法において、
前記延伸期間は、加熱温度が1800℃以上2500℃以下で、延伸速度が5μm/秒以上18μm/秒以下である
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 複数本の光ファイバの少なくとも一部を加熱により融着して光ファイバカプラを製造する光ファイバカプラの製造方法であって、
略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を1580℃以上1690℃以下の温度範囲内で加熱して予熱を実施し、
この予熱した前記光ファイバの少なくとも一部を1610℃以上1710℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、0.01μm/秒以上0.5μm/秒以下の速度範囲内で延伸して第1の加熱・延伸を実施し、
この第1の加熱・延伸をした前記光ファイバの少なくとも一部を1610℃以上1710℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、1μm/秒以上15μm/秒以下の速度範囲内で延伸して第2の加熱・延伸を実施し、
この第2の加熱・延伸をした前記光ファイバの少なくとも一部を1460℃以上1560℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、1μm/秒以上15μm/秒以下の速度範囲内で延伸する
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 複数本の光ファイバの少なくとも一部を加熱により融着して光ファイバカプラを製造する光ファイバカプラの製造方法であって、
略並列に配置した前記複数本の光ファイバの少なくとも一部を1800℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱して予熱を実施し、
この予熱した前記光ファイバの少なくとも一部を1800℃以上2500℃以下の温度範囲内で加熱しつつ、5μm/秒以上18μm/秒以下の速度範囲内で延伸する
ことを特徴とする光ファイバカプラの製造方法。 - 請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法が実施されて製造された
ことを特徴とした光ファイバカプラ。 - 請求項1ないし請求項17のいずれかに記載の光ファイバカプラの製造方法を実施する
ことを特徴とした光ファイバカプラの製造装置。
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-
2003
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