JP2004239776A - 炭素質材料の異物検出方法 - Google Patents

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一夫 丹羽
Nobuyuki Onishi
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Abstract

【目的】炭素質材料への異物の混入の有無を簡単に確認できる方法を提供すること。
【解決手段】炭素質材料の薄層にX線を照射して透過してくるX線を検出し、検出した透過X線の強度により炭素質材料中の異物を検出することを特徴とする炭素質材料の異物検出方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素質材料の異物検出方法、特に炭素質材料に金属や金属酸化物等の異物が含有されている場合に、これを検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カメラ一体型VTR装置、オーディオ機器、携帯型コンピュータ、携帯電話等様々な機器の小型化、軽量化が進んでおり、これら機器の電源としての電池に対する高性能化の要請が高まっている。その要求に答えるべく、種々の開発がなされ、例えば負極活物質として金属リチウムに代わって、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な炭素質材料等を用いることにより、安全性が大幅に向上し、リチウム二次電池が実用段階に入った。
【0003】
炭素質材料を負極活物質とする電池は、一般に、この炭素質材料を集電体に塗布して負極板を製造し、これと正極板、電解液、セパレータなどを組み合わせて製造する。
しかしながら、炭素質材料には、その製造工程で何らかの原因により異物が混入する場合がある。異物が混入している炭素質材料は、当然のことながら負極活物質としては好ましくない。特に問題となる異物は金属や金属酸化物であり、これらが混入している炭素質材料を用いて製造した電池は、マイクロショートが発生し、電池性能が低下するという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
炭素質材料中への異物の混入は、炭素質材料の製造過程を厳密に管理することにより、異物が混入しないようにすることにより解決すべきであり、かつこれにより異物の混入を相当程度防止することができる。しかし、混入を完全に防止することは、工業的操作としては事実上不可能である。従って、現実的には製造された炭素質材料について、その異物の有無をチェックし、異物が混入しているものを排除する方法によらざるを得ず、そのためには、炭素質材料中の異物の有無を簡単に検出し得る方法が必要である。本発明はこの要望に応えようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決すべく、X線を用いての異物検出に関し検討を重ねた結果、炭素質材料を薄層にしてX線を照射することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を解決するに至った。
即ち、本発明の要旨は、炭素質材料の薄層にX線を照射して透過してくるX線を検出し、検出した透過X線の強度により炭素質材料中の異物の有無を検出することを特徴とする炭素質材料の異物検出方法に存する。
【0006】
【発明の実施の態様】
本発明による異物検出方法は、種々の炭素質材料中の異物検出に適用できるが、特にリチウムイオン二次電池用負極材料として用いられる炭素質材料の異物検出に好適に用いられる。リチウムイオン二次電池用負極材料として用いられる炭素質材料としては、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、コークス、非晶質炭素、およびこれらの複合体または混合物などが挙げられる。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛のいずれであってもよい。
【0007】
複合体としては、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、コークスなどの炭素質材料表面にピッチ等の有機物を被覆した後、500〜3200℃、好ましくは650〜2400℃、更に好ましくは700〜1350℃で焼成し、表面に炭素質材料より非晶質の炭素を形成したものが挙げられる。この中では、黒鉛の表面に非晶質の炭素を形成したもの(以下、「非晶質炭素被覆黒鉛」という)が好ましい。 非晶質炭素被覆黒鉛に占める黒鉛の割合は、少なくとも50重量%以上である。この割合が大きいほど活物質単位量当たりの負極容量は大きくなるので、黒鉛の割合は、90重量%以上、特に92重量%以上であるのが好ましい。しかし、この割合が大きくなりすぎると非晶質炭素で被覆した効果が小さくなるので、その上限は、99.5重量%、特に99重量%を越えないものが好ましい。なお、この黒鉛としては、黒鉛化度の高いものを用いるべきであり、X線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が3.37Å未満であるものが好ましい。複合体としては、この他にも炭素質材料を造粒、集合させた粒子なども好ましい。
【0008】
さらに、非晶質炭素被覆黒鉛は、波長5145Åのアルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析を行ったときの、1570〜1620cm−1の範囲に存在するピークの強度をIA、1350〜1370cm−1の範囲に存在するピークの強度をIBとしたとき、その比(=IB/IA)であるR値が、0.2を超えるものが好ましく、0.3以上1.5以下であるものが更に好ましい。R値は非晶質炭素の被覆率の指標となる。
【0009】
本発明では、炭素質材料の薄層にX線を照射して、異物と炭素質材料とのX線の透過率の差に基づいて異物の検出を行うので、検出を精度よく行うには、薄層は厚さ及び炭素質材料の充填密度が局部的に不均一とならないように形成することが重要である。そのためには、炭素質材料は粉末状であることが好ましく、通常は、レーザー分光粒度分布計で求めた平均粒子径が100μm以下、好ましくは50μm以下であり、通常1μm以上、好ましくは10μm以上である。さらに、粒径60μm以下のものが90重量%以上を占めるものが好ましい。
【0010】
また、薄層の厚さは炭素質材料の平均粒径の20〜1000倍、特に50〜500倍とするのが好ましい。炭素質材料は、容器内に炭素質材料を薄層となるように流入させ、振とうさせて均一な層としてX線照射に共するのが好ましい。所望ならば均一に押圧して充填密度を高めてもよい。容器としては、X線透過面が薄いプラスチックフィルムで形成されているものなど、X線透過率の高いものを用いるべきである。通常は、照射に用いるX線に対する透過率が90%以上、好ましくは95%以上の透過面を有する容器を用いる。
【0011】
照射に用いるX線は炭素質材料を透過するものであればよく、例えば対陰極として銅を用い、25〜50kV、好ましくは30〜40kVで発生させた特性X線を用いることができる。通常は、X線を走査線状に照射し、透過してくる透過X線をX線検知器で検知し、この透過X線の局部的強度差により異物の有無を検出する。透過X線の強度差を画像処理し、異物を画像として表示するのが好ましい。なお、走査線と走査線の間隔は、異物の検出精度の点からは、検出すべき異物の大きさ以下とするのが好ましいが、検出に要する時間と検出精度とを考慮して決定すればよい。
【0012】
本発明方法による検出対象となる異物は、主として鉄、クロム、銅、ステンレスなどの金属、酸化鉄、アルミナなどの金属酸化物、セラミックス、珪酸塩などの無機化合物であるが、ナイロン、ポリエチレンなどの合成樹脂や、紙、毛髪などの有機物も検出することができる。
本発明者らは、特定の条件において、検知すべき異物の分子量の大きさと、検知すべき異物の大きさにより、処理速度を決定することができることを見出した。図2は、炭素質材料中の異物の平均粒径が200μm以下、なかでも1〜200μm、炭素質材料中の異物の割合が0.1〜10重量%であって、炭素質材料の薄層の厚さを10mm、薄層の幅を200mm、薄層の嵩密度を1.0g/cc、X線の走査速度を10mm/sとした場合の、異物の粒径x(μm)と、それを検出しうる最大処理速度y(kg/hr)を、異物の分子量の大きさごとに示したものである。重い元素の最大処理速度y=20x、中位の元素の最大処理速度y=3.92x+8.33、軽い元素の最大処理速度y=0.94x+6.67であった。
【0013】
異物の分子量の大きさとは、X線として1.2Åの単色X線を用いた場合の質量吸収係数で表し、SUSなどの質量吸収係数が100以上である元素群(以下「重い元素群」という)、アルミナなどの質量吸収係数が20以上100未満である元素群(以下「中位の元素群」という)、シリカガラスなどの質量吸収係数が20未満である元素群(以下「軽い元素群」という)に分けた。
【0014】
具体的には、異物として重い元素群を検出する場合には、異物として検出する必要がある異物の最小粒径x(μm)とすると、処理速度y(kg/hr)は、図2より最大処理速度y=20xより処理速度が遅い範囲、すなわちy≦20xの範囲から選択すればよいことが分かる。中位の元素群、軽い元素群は検知せずに、重い元素群のみ検出したい場合には、y≦20xとy>3.92x+8.33を満たす処理速度を選択すればよいことになる。
【0015】
また、重い元素群と中位の元素群の両方を検出し、軽い元素群は検出しない場合には、y≦3.92x+8.33とy>0.94x+6.67を満たす処理速度を選択すればよい。
さらに、軽い元素群を検出する場合には、y≦0.94x+6.67の範囲から処理速度を選択すればよい。この場合の処理速度の下限としては、y=0.027x+1.3333程度である。なお、この場合には重い元素群、中位の元素群も同時に検出される。
【0016】
【実施例】
以下本発明につき、実施例を挙げてより詳細に説明する。
<実施例1〜3>
非晶質炭素被覆黒鉛(三菱化学製負極材料「MPG615」、平均粒径25μm、60μm以下の粒子が95重量%以上)1gと、粒径2〜10μmのステンレス粉(SUS304)10mg(実施例1)、平均粒径18μmのアルミナ粉10mg(実施例2)、又は粒径20〜50μmのガラス粉10mg(実施例3)とを混合し、図1に示すように、透明なセル(縦40mm×横40mm、透過面はポリエチレン製、透過面のX線透過率はほぼ100%)に厚さ1mmとなるように充填した。東芝製走査型画像処理装置「TOSMICRON−6090FR」を用いて、これにX線(ターゲット:銅、管電圧30〜40kV、管電流30〜50μA)を照射し、透過X線の測定及び画像処理を行い、画像を得た。
実施例1〜3のいずれも、得られた画像から異物の存在を確認することができた。
【0017】
【発明の効果】
本発明により、炭素質材料への異物の混入の有無を確認できる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】セルに炭素質材料を充填した状態を示す図
【図2】異物の粒径と最大処理速度の関係を示す図
【符号の説明】
1 照射X線の方向
2 炭素質材料
3 セル

Claims (6)

  1. 炭素質材料の薄層にX線を照射して透過してくるX線を検出し、検出した透過X線の強度により炭素質材料中の異物の有無を検出することを特徴とする炭素質材料の異物検出方法。
  2. 炭素質材料の薄層にX線を照射して透過してくるX線を検出し、検出した透過X線の強度により炭素質材料中の金属及び金属酸化物の有無を検出することを特徴とする炭素質材料の異物検出方法。
  3. 炭素質材料が粒径100μm以下のものが90重量%以上を占めるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の炭素質材料の異物検出方法。
  4. 炭素質材料の薄層の厚さが、炭素質材料の平均粒径の20〜1000倍であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の炭素質材料の異物検出方法。
  5. 炭素質材料がリチウムイオン二次電池用負極材料であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の炭素質材料の異物検出方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の異物検出方法による異物検出を経た炭素質材料。
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