JP2004238480A - デンプン加水分解糖類およびその縮重合物 - Google Patents

デンプン加水分解糖類およびその縮重合物 Download PDF

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Abstract

【課題】熱可塑性、柔軟性および実用的に十分な機械的物性を有し、かつ、廉価なデンプン加水分解糖類およびその縮重合物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】常温の水中に24時間浸漬したのちにゲル状態を示し、MI値が0.1以上でチクソトロピー性を示すデンプン加水分解糖類およびその縮重合物、具体的には、デンプンの主鎖中の少なくとも一部に、−O−(C=O)−O−、−((O−R−(O−(C=O)−R−O−または−CH−(C=O)−CHR−O−で表わされる基を導入してなるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物にかかわる。RおよびRは、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基、x、yおよびzは、0または1、x+yは1または2、mは1〜3100の整数、Rは炭素数1以上のアルキル基、炭素数6以上のアリール基または炭素数1以上のアルコキシ基を示す。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物に関する。本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、たとえば、化粧品用増粘剤、食品用増粘剤、薬品用増量剤、ゲル化剤、製膜強化剤、ゼリー状組成物、オブラート、可食性材料、ならびに、カプセルの原料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
デンプンは経済的なポリマーであるが、熱可塑性を有しないので、一般的なポリマーの用途、たとえばフィルム、繊維、成形品などには使用することができない。デンプンを使用し、熱可塑性製品を製造する提案がすでに数多くされている。
【0003】
このような変成されたデンプンとしては、ヒドロキシアルキルデンプン、アセチルデンプンまたはカルバメートデンプンなどがある。これらは、デンプンのメチルヒドロキシル基に、尿素、アルキレンオキシド、カルバメートもしくはイソシアネート形成物質などを反応させることにより製造される。しかし、このような変成工程で生産される化工デンプンは経済的に不利であり、前記のような用途に一般には使用されていない。
【0004】
デンプンはアミロペクチンによる分岐があり、巨大なポリマーであるため熱可塑性を示さない。またメチルヒドロキシル基間の水素結合などにより、熱可塑性になることを阻害している。デンプンのメチルヒドロキシル基を反応させて、変性することにより、水素結合力がなくなり、デンプンが熱可塑性を示すようになる。
【0005】
一方、アルファー化デンプンはデンプンを加熱すると生成し、冷えるとベーター化デンプンに戻る。片栗粉は、デンプンが水の存在下、加熱されることにより糊状になり、その状態で外観上熱可塑性を示すよい例である。
【0006】
また、特許文献1に「架橋高分子材料の再生方法」が提案されている。この中に架橋高分子材料および水を1軸または2軸押出し機に供給し、前記水が前記押出し機内で超臨界水または亜臨界水となる条件で加水分解し、架橋部分を切断する方法が記載されている。この中には炭酸ガス・水系の炭酸ガスの超臨界または亜臨界を利用する方法は記載されていない。また、切断された架橋部分を再度縮重合する方法は記載されていない。
【0007】
一般に熱可塑性高分子は軟化点以上の高温では融着しやすい性質をもっている。したがって、この膠着を防止するため、通常、クエンチを行なう。たとえばナイロン、ポリエステルなどのペレットを製造する際に溶融したポリマーをノズルからガット状に押出し、水冷でクエンチを行ない、温度を軟化点以下に下げてからカッターでカットし、ペレットの膠着を防止することは公知である。しかし、水冷することにより、再度溶融する前に乾燥する必要があり経済的に不利である。熱可塑性樹脂の軟化点以上で膠着を防止する方法は未だ報告されていない。
【0008】
デンプンを原料として、合成樹脂に代替する熱可塑性材料を製造する試みがすでに数多く提案されている。たとえば、デンプンのメチル水酸基に、エーテル結合、エステル結合、カルバメート結合またはウレタン結合を形成する化合物(たとえば、アルキレンオキシド、有機酸、尿素、イソシアネート)を反応させることにより得られる化工デンプンが知られている。このような変成工程を経て製造される化工デンプンは、高価で、経済的に不利である。
【0009】
また、デンプンに水分を加え、加熱すると、水の存在下で、デンプン粒が糊化デンプンとして膨潤し、糊状になり、外観上熱可塑性を示す。この原理を利用してデンプンを可塑化させる方法が、特許文献2に記載されている。この方法では、デンプンに水を加え、高温で分解デンプンを製造し、乾燥調製した溶融体を製造すると記載されている。前記公報には、デンプンを加水分解することにより、分解デンプンとなり、熱可塑性を示すと記載されている。前記公報には、分解デンプンに18重量%吸湿させ、他の樹脂の溶融体を混合し、射出成形機でダンベル試験片を試作したことが記載されている。この試験片は、デンプンと比較すると吸湿による変形が小さいことが特長とされているが、通常のプラスチックと比較すると、著しく大きい値を示している。吸湿性が大きいと、その機械的物性が環境湿度に大きく左右されることが予想され、取り扱い上、好ましくない。また、分解デンプンの成形品には、硬くて脆いという実用上重大な欠点がある。
【0010】
一方、デンプンを炭酸ガス・水系の超臨界状態でタンク内で分解する方法はすでに数多く報告されている。たとえば、特許文献3には「高密度化流体中での多糖類の変性」が提案されている。しかし、この提案はデンプンの巨大高分子をオリゴマー以下の低分子に分解する方法が開示されているのみで、如何に低分子化合物に効率よく分解できるかが主要な課題である。したがって、高分子を分解し、得られた低分子を再度連続して縮重合する方法は記載されていない。
【0011】
また、特許文献4に「架橋高分子材料の再生方法」が提案されている。この中に架橋高分子材料および水を1軸または2軸押出し機に供給し、前記水が前記押出し機内で超臨界状態または亜臨界状態となる条件で分解し、架橋部分を切断する方法が記載されている。この中には炭酸ガス・水系の炭酸ガスの超臨界状態または亜臨界状態を利用する方法は記載されていない。また、切断された架橋部分を再度縮重合する方法は記載されていない。
【0012】
一般に熱可塑性高分子は軟化点以上の高温では融着(膠着)しやすい。したがって、この膠着を防止するため、通常、クエンチを行なう。たとえば、ナイロン、ポリエステルなどのペレットを製造する際に、溶融したポリマーをノズルからガット状に押出し、水冷でクエンチを行ない、温度を軟化点以下に下げてからカッターでカットし、ペレットの膠着を防止することは公知である。しかし、水冷することにより、再度溶融する前に乾燥する必要があり、経済的に不利である。熱可塑性樹脂の軟化点以上で膠着を防止する方法は未だ報告されていない。
【0013】
また、特許文献5に「ゼラチンを使用しない経口投与カプセル、その組成と製造法」が提案されている。この提案の医薬、化粧品、入浴剤、ダイエット補助食品用のゼラチンフリー経口カプセルは「a)8−50重量%の水分散または水溶性可塑剤、b)0.5−12重量%のκ−カラギーナン、c)0−60重量%のデキストリンと1−95重量%の水から調製することができる。ここでκ−カラギーナンは組成中少なくとも50重量%の熱可塑性ゲルを形成または形成に寄与する全てのガム成分で、海草から取れる多糖類である。
【0014】
また、経口医薬または化粧品用のカプセルは患者や目的に沿った内容物を一杯に内包することもある。このカプセルは水性フィルムからなり、フィルムはa)8−50重量%の水分散または水溶性可塑剤とb)カラギーナンからなる。ここでカラギーナンは少なくとも50−75重量%のκ−カラギーナンまたは50−75重量%の熱可塑性ゲルを形成または形成に寄与するガムである。この組成物を加熱し、フィルムにキャストまたは押し出し、ゲルを冷却し、(通常はフィルムの)ゲルに内容物を封入シールするカプセルの製造方法である。」と記載されている。
【0015】
しかし、この提案では特殊な多糖類κ−カラギーナンを必要とし、経済的に不利である。また、カプセルの製造方法も湿式凝固法に限定され、生産効率上不利である。
【0016】
ゼラチンを使用したカプセルの製造方法としては回転するダイロールを使用する製造方法がある。特許文献6に「ソフトカプセル製造装置およびその製造方法」が提案されている。すなわち「2枚のゼラチンシートから薬液などの充填材料が封入されたソフトカプセルを製造する装置であり、近接して対峙する一対のダイロール310,310間の上面側の左右の湾曲外周面部分に囲まれる湾曲凹み部に充填材料供給用のノズルセグメント320の下端中央部の左右の湾曲面からなる倒山形尖出部を対峙させ、一対の回転するダイロール間にはその上方側から2枚のゼラチンシート100を供給すると共に、ノズルセグメントの倒山形尖出部のノズル孔322から充填材料を供給してソフトカプセルを製造するソフトカプセル製造装置。ノズルセグメントの倒山形尖出部にダイロールのカプセルポケット311の複数列分に対応する複数列のノズル孔を設け、1回のプランジャー式ポンプの駆動によって、ノズルセグメントの複数列のノズル孔から、ダイロールの複数列分のカプセルポケットに一度に充填材料を供給する」装置と製造法が記載されている。
【0017】
また別のカプセルの製造法として、ゼラチン水溶液にカプセル型をディップし、付着させたゼラチン水溶液を乾燥し、フィルム化するハードカプセルの製造法がある。さらに、二重または三重ノズル滴下法を用い、ゼラチン水溶液を凝固浴中に押し出し、フィルム化するシームレスカプセルの製造法がある。
【0018】
しかし、これらの製造法はゼラチンが熱可塑性をもたないために提案された方法であり、生産性、経済性に不利であるが、カプセル製造に適した熱可塑性材料の提案はなされていなかった。
【0019】
【特許文献1】
特開2001−253967号公報
【特許文献2】
特公平7−74241号公報
【特許文献3】
特開平11−92501号公報
【特許文献4】
特開2001−253967号公報
【特許文献5】
米国特許第6214376号明細書
【特許文献6】
特開平11−221267号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規な熱可塑性であり、チクソトロピー性を示すデンプン加水分解糖類およびその縮重合物を提供することにある。
【0021】
本発明の目的は、たとえば、化粧品用増粘剤、食品用増粘剤、薬品用増量剤、ゲル化剤、製膜強化剤、ゼリー状組成物、オブラート、可食性材料、ならびに、カプセルの原料として有用なデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の廉価な製造方法を提供することにある。
【0022】
本発明の目的は、充分な使用特性を有し、かつ、廉価であり、しかも可食性または生分解性を有するブロー成形品を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は、常温(たとえば25℃)の水中に24時間浸漬したのちにゲル状態を示し、MI値が0.1以上でチクソトロピー性を示すデンプン加水分解糖類およびその縮重合物にかかわる。
【0024】
本発明は、デンプンの主鎖中の一部に式(1):−O−(C=O)−O−で表わされる基、式(2):−((O−R−(O−(C=O)−R−O−で表わされる基および式(3):−CH−(C=O)−CHR−O−で表わされる基からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を導入してなる前記のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物にかかわる。式(2)中、Rは、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;Rは、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;xは0または1;yは0または1;x+yは1または2;mは1〜3100の整数;zは0または1を示し、式(3)中、Rは、炭素数1以上のアルキル基、炭素数6以上のアリール基または炭素数1以上のアルコキシ基を示す。
【0025】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、架橋されていることが好ましい。本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、温度20℃、相対湿度60%の条件下で24時間放置することにより、実質的に恒量平衡に達した水分率が1〜6重量%であることが好ましい。本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、温度25℃の水中に1時間浸漬後の膨潤率が150〜400%であることが好ましい。本発明は、前記のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物からなるカプセルにかかわる。
【0026】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、たとえば、デンプンと、式(1)で表わされる基を形成する化合物、式(2)で表わされる基を形成する化合物および式(3)で表わされる基を形成する化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを、水の存在下、不活性温度以下で触媒として酵素、酵母および酵素含有有機物からなる群から選ばれた少なくとも1種を使用し、40〜350℃で、反応させること、または、水および炭酸ガスの存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で、不活性温度以下で触媒として酵素、酵母および酵素含有有機物からなる群から選ばれた少なくとも1種を使用し、反応させることにより、製造することができる。
【0027】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の製造方法においては、デンプンと、式(1)で表わされる基を形成する化合物、式(2)で表わされる基を形成する化合物および式(3)で表わされる基を形成する化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物との反応に押出し機を使用し、100〜250kg/cm(=9.8〜24.5MPa)のノズル前圧力で押出すことが好ましい。
【0028】
本発明は、前記のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物からなるブロー成形品にかかわる。
【0029】
本発明は、前記のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物と可食性成分原料とからなる組成物にかかかわる。本発明は、前記の組成物からなる食品用増粘剤にかかわる。本発明は、原料可食性成分が食用油脂、食用油脂鹸化物、食用アルコール、単糖類、多糖類、ソルビトールまたはガムの少なくとも1種である前記の組成物からなるカプセルおよび食品用増粘剤にかかわる。本発明は、前記の組成物を増量剤主原料として含有する錠剤にかかわる。本発明は、前記の組成物をゲル化剤として使用したゼリー状組成物にかかわる。
【0030】
本発明は、原料可食性成分が食用油脂、食用油脂鹸化物、食用アルコール、単糖類、多糖類、ソルビトールまたはガムの少なくとも1種である前記の組成物を含有する錠剤およびゼリー状組成物にかかわる。本発明は、原料可食性成分が食用油脂、食用油脂鹸化物、食用アルコール、単糖類、多糖類、ソルビトールまたはガムの少なくとも1種である前記の組成物を製膜強化剤として含有するフィルムまたはシートにかかわる。
【0031】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、擬似架橋され、チクソトロピー性を保有していることが好ましい。本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、常温の水中に24時間浸漬したのちにゲル状態を示し、無負荷では加温しても流動せず、荷重下ではMI値が0.1以上のチクソトロピー性を示す。MI値は150℃、10kgの加重下、長さ1cm、内径2mmのオリフィスを10分間に流下した質量をグラム数で表わす。
【0032】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は化粧品用増粘剤、食品用増粘剤、薬品用増量剤、ゲル化剤、製膜強化剤、ゼリー状組成物、オブラート、可食性材料、ならびに、カプセルの原料として有用である。
【0033】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、デンプンの主鎖中の一部に式(1)、式(2)または式(3)で表わされる柔軟な線状有機基を有することにより、吸湿性が著しく大きいというデンプンの欠点が改良されており、熱可塑性であり、柔軟性を有するものと考えられる。すなわち、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基の導入により、剛直なグルコース連鎖からなるデンプンの主鎖中の一部に蝶番のような柔軟な部分が存在することになり、主鎖が柔軟になる。柔軟性を増した主鎖は、小さな糸毬状になりやすい。糸毬状になった主鎖は他の主鎖との絡みが少なくなり、結果として主鎖間の滑りがよくなる。この現象が、本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の熱可塑性として現れるものと考えられる。また、耐水性と無負荷で熱融着しにくい性質の原因であるチクソトロピー性は本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物のメチロール基間の架橋または/およびアミロペクチンによる架橋が僅かになされ、網目状構造が発現し、水中浸漬によりゲル状態が発現する。一方、軟化点以上では応力によりこの網目構造(擬似架橋)が一時的に切断することにより流動性が発現する。しかし、官能基が多数存在するため、擬似架橋は応力が除去されると容易に再結合すると考えられらる。
【0034】
デンプンと、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物とを、前記のような条件下で、反応させることにより、デンプンが加水分解され、加水分解されたデンプンが、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物と脱水縮重合し、本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物が生成するものと考えられる。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、常温(たとえば25℃)の水中に24時間浸漬したのちにゲル状態を示し、MI値が0.1以上でチクソトロピー性を示す。
【0036】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、デンプンおよびその加水分解縮重合物の主鎖中の一部に式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を導入した構造を有する。本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、式(10):−G−M−で表わされる繰返し単位を有する。Gは、グルコース(とくに、α−D−グルコピラノース)の1位および4位の水酸基を除去した2価の基を示す。Mは、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を示す。nは1以上の整数を示す。nが2上の整数の場合、複数のMは相互に同一であっても異なってもよい。
【0037】
式(2)中のRとしては、たとえば、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基などの炭素数1以上(通常は12以下)の直鎖状のアルキレン基;フェニレン基、ビフェニレン基、ビフェニレンアルキレン基(たとえば、ビフェニレンメチレン基、2,2−ビフェニレンプロピレン基)などの炭素数6以上(通常は15以下)のアリーレン基がある。
【0038】
式(2)中のRとしては、たとえば、1,1−エチレン基、1,1−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,1−ブチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基などの炭素数1以上(通常は12以下)のアルキル基を有するアルキレン基;フェニレン基、ビフェニレンアルキレン基(たとえば、ビフェニレンメチレン基、2,2−ビフェニレンプロピレン基)などの炭素数6以上(通常は15以下)のアリーレン基がある。
【0039】
がアリーレン基であるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物より、アルキレン基であるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の方が、柔軟性および生分解性が高い傾向がある。
【0040】
式(2)で表わされる基としては、式(4):−(O−(C=O)−R−で表わされる基(x=0、y=1、z=0)、式(5):−(O−(C=O)−R−O−で表わされる基(x=0、y=1、z=1)、式(6):−(O−R−で表わされる基(x=1、y=0、z=0)、式(7):−(O−R−O−(C=O)−R−で表わされる基(x=1、y=1、z=0)、式(8):−(O−R−O−で表わされる基(x=1、y=0、z=1)および式(9):−(O−R−O−(C=O)−R−O−で表わされる基(x=1、y=1、z=1)がある。
【0041】
式(4)で表わされる基としては、脂肪族エステル基(Rがアルキレン基)、芳香族エステル基(Rがアリーレン基)があり、モノエステル基(m=1)、ジエステル基(m=2)、トリエステル基(m=3)、ポリエステル基(mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数)がある。
【0042】
式(5)で表わされる基としては、脂肪族エステルエーテル基(Rがアルキレン基)、芳香族エステルエーテル基(Rがアリーレン基)があり、モノエステルエーテル基(m=1)、ジエステルエーテル基(m=2)、トリエステルエーテル基(m=3)、ポリエステルエーテル基(mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数)がある。
【0043】
式(6)で表わされる基としては、モノアルキルエーテル基(Rがアルキレン基、m=1)、ジアルキルエーテル基(Rがアルキレン基、m=2)、トリアルキルエーテル基(Rがアルキレン基、m=3)、ポリアルキルエーテル基(Rがアルキレン基、mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数)、モノアリールエーテル基(Rがアリーレン基、m=1)、ジアリールエーテル基(Rがアリーレン基、m=2)、トリアリールエーテル基(Rがアリーレン基、m=3)、ポリアリールエーテル基(Rがアリーレン基、mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数の場合)がある。
【0044】
式(7)で表わされる基としては、モノアルキレンエステル基(Rがアルキレン基、m=1)、ジアルキレンエステル基(Rがアルキレン基、m=2)、トリアルキレンエステル基(Rがアルキレン基、m=3)、ポリアルキレンエステル基(Rがアルキレン基、mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数の場合)、モノアリーレンエステル基(Rがアリーレン基、m=1)、ジアリーレンエステル基(Rがアリーレン基、m=2)、トリアリーレンエステル基(Rがアリーレン基、m=3)、ポリアリーレンエステル基(Rがアリーレン基、mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数の場合)がある。
【0045】
式(8)で表わされる基としては、モノアルキルジエーテル基(Rがアルキレン基、m=1)、ジアルキルジエーテル基(Rがアルキレン基、m=2)、トリアルキルジエーテル基(Rがアルキレン基、m=3)、ポリアルキルジエーテル基(Rがアルキレン基、mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数)、モノアリールジエーテル基(Rがアリーレン基、m=1)、ジアリールジエーテル基(Rがアリーレン基、m=2)、トリアリールジエーテル基(Rがアリーレン基、m=3)、ポリアリールジエーテル基(Rがアリーレン基、mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数)がある。
【0046】
式(9)で表わされる基としては、モノアルキレンエステルエーテル基(Rがアルキレン基、m=1)、ジアルキレンエステルエーテル基(Rがアルキレン基、m=2)、トリアルキレンエステルエーテル基(Rがアルキレン基、m=3)、ポリアルキレンエステルエーテル基(Rがアルキレン基、mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数)、モノアリーレンエステルエーテル基(Rがアリーレン基、m=1)、ジアリーレンエステルエーテル基(Rがアリーレン基、m=2)、トリアリーレンエステルエーテル基(Rがアリーレン基、m=3)、ポリアリーレンエステルエーテル基(Rがアリーレン基、mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数の場合)などがある。
【0047】
式(3)中のRとしては、たとえば、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などの炭素数1以上(通常は3以下)のアルキル基;フェニル基などの炭素数6以上(通常は8以下)のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1以上(通常は3以下)のアルコキシ基がある。式(3)で表わされる基としては、たとえば、アセチルケトン基(Rが水素原子)、メチルアセチルケトン基(Rがメチル基)、メトキシアセチルケトン基(Rがメトキシ基)がある。
【0048】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、デンプンおよびその加水分解縮重合物の主鎖中の一部に式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基の1種または2種以上を導入されてなることができる。式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基の2種以上を導入されてなるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物としては、式(1)で表わされる基と式(2)または式(3)で表わされる基とを有するデンプン加水分解糖類およびその縮重合物;式(2)で表わされる2種以上の基を有するデンプン加水分解糖類およびその縮重合物;式(3)で表わされる2種以上の基を有するデンプン加水分解糖類およびその縮重合物がある。
【0049】
デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の主鎖中の一部に式(1)で表わされる基が導入されたことは、赤外分光光度計による測定において、炭酸基に特有のCO伸縮振動による1,745〜1,755cm−1の吸収帯が測定されることにより、確認することができる。この吸収帯はデンプンには認められない。
【0050】
デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の主鎖中の一部に式(4)、式(5)、式(7)および式(9)で表わされる基(y=1)が導入されたことは、得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物から、溶媒(たとえば、オルトクレゾール)で、未反応の式(4)、式(5)、式(7)および式(9)で表わされる基を形成する化合物(たとえば、ポリ乳酸)を抽出したのち、赤外分光光度計による測定において、エステル基に特有のCO伸縮振動による1,730〜1,740cm−1の吸収帯が測定されることにより、確認することができる。この吸収帯はデンプンには認められない。また、Rが1,1−エチレン基である場合(たとえば、前記式(5)で表わされる基を形成する化合物としてポリα−オキシプロピオン酸を使用する場合)には、得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物から、未反応のポリα−オキシプロピオン酸を抽出したのち、NMR測定において、ポリα−オキシプロピオン酸のメチル基に特有のピークが測定されることにより、確認することができる。
【0051】
デンプンおよびその加水分解縮重合物の主鎖中の一部に式(6)、式(7)、式(8)または式(9)で表わされる基(x=1)が導入されたことは、得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物から、溶媒(たとえば、沸騰水)で、未反応の式(6)、式(7)、式(8)および式(9)で表わされる基を形成する化合物(たとえば、n−プロピルアルコール)を抽出したのち、NMR測定において、たとえば、Rが1,3−プロピレン基である場合には、デンプンには認められないプロピルアルコールのメチレン基に特有のピークが測定されることにより、確認することができる。
【0052】
デンプンおよびその加水分解縮重合物の主鎖中の一部に式(3)で表わされる基が導入されたことは、赤外分光光度計による測定において、式(3)で表わされる基に特有のCO伸縮振動による1,715〜1,725cm−1の吸収帯が測定されることにより、確認することができる。この吸収帯はデンプンおよび式(3)で表わされる基を形成する化合物(たとえば、グリセリン)には認められない。
【0053】
デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の熱可塑性の点より、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基は、デンプンのグルコース単位100モルに対して、合計の化学式量で、50〜100、とりわけ70〜100となる割合で導入することが好ましい。式(1)、式(2)および式(3)で表わされる基の導入量が少ないと、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の熱可塑性が低く、多いと最終製品から式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物がブリードアウトする場合がある。
【0054】
デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の主鎖中への式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基の導入量が、赤外分光光度計で僅かに観察される量、すなわち、数%でも、その効果が現れる。感度の低い光度計ではショルダーとして観察されることもある。式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基の主鎖中への導入量が多くなるにしたがい、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の熱可塑性が向上する。式(1)、式(2)および式(3)で表わされる基の導入量が少ないと、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物が硬くなり、多いと柔らかくなる傾向がある。
【0055】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、デンプンと、式(1)で表わされる基を形成する化合物、式(2)で表わされる基を形成する化合物(式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)または式(9)で表わされる基を形成する化合物)または式(3)で表わされる基を形成する化合物とを、反応させることにより製造することができる。
【0056】
主原料デンプンは、一般に使用されるデンプンを使用することができる。たとえば、大麦、ライ麦、カラス麦、小麦、米およびとうもろこしのような穀類、じゃがいもならびにタピオカなどのいも類から生産されている。本発明では、原料デンプンの種類をとくには限定しない。しかし、とうもろこしデンプンは経済性に優れる点で好ましい。
【0057】
デンプンの分子量は、たとえば約20,000,000と非常に巨大で、種類により異なる。
【0058】
式(1)で表わされる基、すなわち、炭酸基を形成する化合物としては、炭酸ガス、または、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウムなどの加熱されることにより炭酸ガスを放出する炭酸化物などを使用することができる。
【0059】
式(4)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(11):H−(C=O)−R−(O−(C=O)−Rm−1−OHで表わされる化合物がある。
【0060】
式(4)で表わされる基のうち、脂肪族モノエステル基(Rがアルキレン基、m=1)を形成する化合物としては、たとえば、ヒドロキシアセトアルデヒド、ヒドロキシエチルアルデヒド、ヒドロキシブチルアルデヒド、グリセルアルデヒドなどのヒドロキシアルキルアルデヒドがある。式(4)で表わされる基のうち、芳香族モノエステル基(Rがアリーレン基、m=1)を形成する化合物としては、たとえば、ヒドロキシメチルベンジルアルデヒド、ヒドロキシエチルベンジルアルデヒド、ヒドロキシプロピルベンジルアルデヒドなどのヒドロキシアルキルアリールアルデヒドがある。
【0061】
式(4)で表わされる基のうち、ジエステル基(m=2)、トリエステル基(m=3)、ポリエステル基(mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数)などを形成する化合物としては、たとえば、ヒドロキシアセトアルデヒドモノ乳酸エステル、ヒドロキシアセトアルデヒドジ乳酸エステル、ヒドロキシアセトアルデヒドトリ乳酸エステル、ヒドロキシアセトアルデヒドポリ乳酸エステルなどのヒドロキシアルキルアルデヒドと脂肪族カルボン酸とのエステルがある。
【0062】
式(5)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(12):H−(O−(C=O)−R−OHで表わされる化合物がある。式(5)で表わされる基のうち、脂肪族エステルエーテル基(Rがアルキレン基)を形成する化合物としては、たとえば、α−オキシプロピオン酸(乳酸)、β−オキシプロピオン酸、α−オキシブタノイック酸、β−オキシブタノイック酸、γ−オキシブタノイック酸などのヒドロキシアルキルカルボン酸およびその縮重合物(たとえば、ポリα−オキシプロピオン酸)がある。式(5)で表わされる基のうち、芳香族モノエステルエーテル基(Rがアリーレン基)を形成する化合物としては、たとえば、ヒドロキシメチルベンジルカルボン酸、ヒドロキシエチルベンジルカルボン酸、ヒドロキシプロピルベンジルカルボン酸などのヒドロキシアルキルアリールカルボン酸がある。
【0063】
式(6)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(13):H−(O−R−Hで表わされる化合物がある。式(6)で表わされる基のうち、アルキルエーテル基(Rがアルキレン基、m=1)を形成する化合物としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコールなどのアルコールがある。
【0064】
式(7)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(14):H−(R−O−(C=O)−R−OHで表わされる化合物がある。
【0065】
式(7)で表わされる基のうち、アルキルエステルエーテル基(Rがアルキレン基、m=1)、ジアルキルエステルエーテル基(Rがアルキレン基、m=2)、トリアルキルエステルエーテル基(Rがアルキレン基、m=3)、ポリアルキルエステルエーテル基(Rがアルキレン基、mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数の場合)としては、たとえば、乳酸エチルエステル、ジ乳酸エチルエステル、トリ乳酸エチルエステル、ポリ乳酸エチルエステル、乳酸プロピルエステル、ジ乳酸プロピルエステル、トリ乳酸プロピルエステル、ポリ乳酸プロピルエステル、乳酸ブチルエステル、ジ乳酸ブチルエステル、トリ乳酸ブチルエステル、ポリ乳酸ブチルエステル、α−ヒドロキシブタノイック酸エチルエステル、ジα−ヒドロキシブタノイック酸エチルエステル、トリα−ヒドロキシブタノイック酸エチルエステル、ポリα−ヒドロキシブタノイック酸エチルエステル、α−ヒドロキシブタノイック酸プロピルエステル、ジα−ヒドロキシブタノイック酸プロピルエステル、トリα−ヒドロキシブタノイック酸プロピルエステル、ポリα−ヒドロキシブタノイック酸プロピルエステル、α−ヒドロキシブタノイック酸ブチルエステル、ジα−ヒドロキシブタノイック酸ブチルエステル、トリα−ヒドロキシブタノイック酸ブチルエステル、ポリα−ヒドロキシブタノイック酸ブチルエステルなどのヒドロキシ酸のアルキルエステルがある。
【0066】
式(8)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(15):H−R−(C=O)−OHで表わされる化合物、式(16):H−(O−R−OHで表わされる化合物がある。−R−CH−がRに相当する。式(8)で表わされる基、すなわち、アルキルエーテル基を形成する化合物としては、たとえばプロピオン酸、ブタノイック酸(酪酸、イソ酪酸)、ペンタノイック酸、ヘキサノイック酸、ラウリル酸、オレイル酸、ステアリル酸などの脂肪族カルボン酸;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコールコポリマーがある。
【0067】
式(9)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(17):H−R−O−(C=O)−R−(C=O)−O−Hで表わされる化合物がある。Rは、−R−CH−が式(2)中のRに相当する。式(9)で表わされる基を形成する化合物としては、すなわち、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノプロピルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、コハク酸エチルエステル、コハク酸プロピルエステル、コハク酸ブチルエステル、フマール酸エチルエステル、コハク酸プロピルエステル、フマール酸ブチルエステル、アジピン酸エチルエステル、アジピン酸プロピルエステル、アジピン酸ブチルエステルなどのジカルボン酸アルキルエステルがある。
【0068】
式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物として、天然食品中にも存在する成分を使用することにより、安全性に優れ、環境的にも優れたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物を得ることができる。
【0069】
デンプンと、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物とを、水の存在下、100〜350℃、好ましくは135〜155℃で、強せん断応力下、反応させることにより、デンプンおよびその加水分解縮重合物の主鎖中の一部に式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を導入することができる。反応温度が低すぎると、反応率が低下し、高すぎると、得られるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物が変色し、過大な架橋により熱可塑性が低下、脆化する場合がある。
【0070】
デンプンと、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物とを、触媒として酵素、酵母または酵素含有有機物を不活性温度以下で使用し、加水分解反応後、水および炭酸ガスの存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下(たとえば、温度100〜350℃、好ましくは135〜155℃、反応最高圧力7.48〜29.4MPa、好ましくは15.7〜23.5MPaの条件下)で、強せん断応力下、反応させることにより、デンプンおよびその加水分解縮重合物の主鎖中の一部に式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基をより有効に導入することができる。存在させる炭酸ガスは、式(1)で表わされる基を形成する化合物としても作用する。炭酸ガスは、温度31.1℃以上、圧力7.48MPa以上の条件下で超臨界状態となり、温度31.1℃以上、圧力7.48MPa未満の条件下および温度31.1℃未満、圧力7.48MPa以上の条件下で亜臨界状態となる。超臨界状態または亜臨界状態の炭酸ガスは、デンプンの加水分解反応を促進するとともに、加水分解したデンプンと式(1)で表わされる基を形成する化合物として脱水縮重合反応に寄与し、また、架橋剤として架橋反応にも寄与する。炭酸ガスの使用量は、水を基準として、たとえば、0.1〜3重量%とすることができる。炭酸ガスは、デンプンの分解反応の際、触媒的に作用するので、微量でも効果を発揮する。
【0071】
反応最高圧力は、たとえば、76〜300kg/cm(=7.5〜29.4MPa)、好ましくは160〜240kg/cm(=15.7〜23.5MPa)とすることができる。低圧すぎると、反応率が低下する。高圧すぎると、得られるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物が変色し、分子量が著しく低下し、成膜性が低下する場合がある。反応時間は、たとえば1〜10分間、好ましくは3〜5分間とすることができる。長時間すぎると、得られるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物が変色し、分子量が著しく低下し、成膜性が低下する場合がある。短時間すぎると反応率が低下し、充分な性能を有するデンプン加水分解糖類およびその縮重合物が得られない場合がある。
【0072】
水の使用量は、たとえばデンプン100重量部(水分を除く)に対してデンプン中に含まれる水分(通常12〜13重量%)と併せて30〜80重量部、好ましくは50〜70重量部とする。水の使用量が少ないとデンプンの反応率が低下する。水の使用量が多すぎると脱水縮重合反応率が低下し、分子量の回復が少なくなり、得られるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の分子量が低下する傾向がある。また、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物を回収するための脱水に必要なエネルギーが大きくなり経済的に好ましくない。
【0073】
デンプンと、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物とを、前記各条件下で反応させることによって、デンプンの主鎖の加水分解反応と、加水分解されたデンプンと式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物との脱水縮重合とが、連続しておこり、デンプンおよびその加水分解縮重合物の主鎖中の一部に式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基が導入される。デンプンの主鎖の加水分解反応とともに、デンプンの分岐が切断されて、デンプンの分子量が減少するとともに、デンプンがリニアーに近くなり、さらに式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基が導入されることにより、疎水性と柔軟性が付与され、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物が熱可塑性を示すものと考えられる。
【0074】
式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物の一部は、グルコース単位の水酸基、とりわけヒドロキシメチル基の水酸基と脱水反応し、側鎖を形成し、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の熱可塑性を向上させる。
【0075】
デンプンと、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物との反応率は、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物のTGA・DSC分析によって測定される減量率および水分含有量から、未反応の式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物の量を算出することにより、推測することができる。
【0076】
デンプンは水の存在下で、高圧かつ高せん断力下、加熱することにより、より有効に加水分解させることができる。また、不活性温度以下で触媒として酵素、酵母または酵素含有有機物を使用することができる。たとえばα−D−グルコシダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、Exo−1,4−α−D−グルコシダーゼ、Exo−マルトテトラヒドロラーゼ、Exo−マルトヘキサノヒドロラーゼ、プルラナーゼ、オリゴ−1,6−グルコシダーゼ、アミロ−1,6−グルコシダーゼ、イソプルラナーゼ、デクストラナーゼ、Exo−1,6−α−D−グルコシダーゼ、Exo−イソマルトヒドロラーゼ、Exo−イソマルトトリオヒドロラーゼ、Exo−1,3−α−グルカナーゼ、Exo−1,3−α−D−グルカナーゼ、ミコデクストラナーゼ、Endo−1,2−β−D−グルカナーゼ、Exo−1,3−β−D−グルカナーゼ、Exo−1,3−β−D−グルコシダーゼ、Endo−1,3−β−D−グルカナーゼ、Endo−1,3(4)−β−D−グルカナーゼ、リケナーゼ、Exo−1,4−β−D−グルコシダーゼ、Exo−セロビオヒドロラーゼ、セルラーゼ、Endo−1,6−β−D−グルカナーゼ、ジアスターゼなどの酵素を使用することができる。併せて酸またはアルカリ触媒を使用することもできる。
【0077】
デンプンの加水分解を高圧で短時間に行なわせ、その後引き続き脱水縮重合反応を行なわせるために、デンプンと、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物との反応には、脱水用ベント付き押出し機形式の連続反応機を使用することが好ましい。反応機としては、押出し機、たとえば、2ベント付き押出し機、または3ベント付き押出し機を使用することが好ましい。使用するスクリューは、好ましくは、供給部のみ食い込みをよくするため2軸とし、この後からダイまでは1軸で構成される。たとえば、3ベント付き押出し機は、好ましくは、スクリュー供給部、せん断混練り圧縮部、解放ベント部、混練り圧縮部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部から構成される。
【0078】
反応機として押出し機を使用する場合、たとえば、100〜250kg/cm(=9.8〜24.5MPa)のノズル前圧力で押出すことが好ましい。
【0079】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、架橋剤により軽度に架橋されていることができる。デンプン加水分解糖類およびその縮重合物のヒドロキシメチル基間を架橋することにより、水膨潤性を抑制し、耐水性を向上させ、チクソトロピー性を与えることができる。架橋の程度は僅かでもゲル化を生じ充分な水膨潤抑制効果を示す。架橋が増加するにしたがい水膨潤性が低下する。水膨潤率は、たとえば、常温(たとえば、25℃)の水中に1時間浸漬して膨潤させた前後の重量測定と絶乾重量から算出することができる。
【0080】
架橋剤としては、たとえば、リン酸類、多価カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類、エポキシ、酸無水物、イソシアネート、シラン化物などを使用することができる。架橋剤としては、たとえば、トリポリリン酸ナトリウムなどのリン酸塩;シュウ酸、マレイン酸、アジピン酸、フタル酸、コハク酸などの多価カルボン酸;アジピン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、フタル酸カルシウム、コハク酸カルシウムなどの多価カルボン酸塩;乳酸などのヒドロキシカルボン酸;乳酸カルシウムなどのヒドロキシカルボン酸塩;炭酸ガス;重炭酸ナトリウム、重炭酸カルシウムなどの重炭酸塩;モノグリシジルエーテルなどのエポキシ;無水コハク酸、無水マレイン酸などの酸無水物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエン2,4−ジイソシアネートなどのイソシアネート;ビニルトリメチルシランなどのシラン化物;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリスアクリロイル−s−トリアジンがある。架橋剤は最終製品に悪影響をおよぼさない範囲で、1種を単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。とくに可食性製品に関しては原料に可食性素材を選定するよう注意を要する。中では炭酸ガスまたは炭酸ガスを加熱により発生する架橋剤が安全性の面から好ましい。
【0081】
デンプンまたはデンプン加水分解糖類およびその縮重合物に架橋剤を添加し、加熱(たとえば100〜180℃)して混練することにより、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物を架橋することができる。架橋剤の添加量は、架橋する前のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物を基準として、0.01〜3重量%が好ましい。架橋剤の添加量が少ないと、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の水膨潤性を抑制し、耐水性を向上させる効果が小さい傾向があり、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物が水に溶解してしまい、水膨潤性が無限大となる場合がある。架橋剤の添加量が多すぎると、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の熱可塑性および流動性が低下し、加工性が低下する場合がある。
【0082】
押出し機を使用し、デンプンと、式(1)で表わされる基を形成する化合物(たとえば、炭酸ガス)とを、水の存在下で反応させる場合、ならびに、デンプンと、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物とを、水および炭酸ガスの存在下で反応させる場合、たとえば、ノズル前圧力を160kg/cm(=15.7MPa)以上に維持し、大気中に瞬時に押出して急激な脱水を起こさせることにより、グルコース単位のヒドロキシメチル基間に炭酸ガスなどによる架橋を部分的に起こさせることができる。この部分的な架橋により、充分な架橋密度を有し、水中に浸漬すると膨潤ゲル化し、荷重下軟化点以上で流動し、チクソトロピー性を示すデンプン加水分解糖類およびその縮重合物を得ることができる。この架橋反応は、ヒドロキシメチル基間における脱水による架橋反応であるため、より急激に脱水されるほど、すなわち、より高圧から、より急激に減圧されるほど、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の架橋密度が高くなり、水膨潤性が低く、耐水性が高くなり、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物が膠着しにくくなる。
【0083】
たとえば、押出し機のダイスに接触するホットカッターにより切断して得られる架橋されたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物のペレットは、若干の空気を吹き付けられながら落下して、たとえば1m下に設置された受け皿に留まった状態でも、膠着しないので、そのまま圧送エジェクターにより搬送することができる。また、このペレットを使用し、インフレーション装置により、製膜中に、たとえばダイスから1m後方の風船状フィルムを両側から加圧密着させても、膠着しない。架橋されたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物が、膠着しにくいのは、部分的架橋により、可逆的チクソトロピー性を有するようになったためと考えられる。
【0084】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、たとえば、重量平均分子量が30000〜500000、好ましくは50000〜200000であることができる。分子量が低いデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、機械的物性が低い傾向があり、分子量が高いデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、流動性が低く、成形しにくい場合がある。
【0085】
デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の分子量は、デンプンと、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物とを反応させる際の反応温度を高くすることにより、または、反応圧力を高くすることにより、低くなる傾向がある。
【0086】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、温度20℃、相対湿度60%の条件下で24時間放置することにより、実質的に恒量平衡に達した水分率が1〜6重量%であることが好ましい。
【0087】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、25℃の水中に1時間浸漬後の膨潤率が50〜400%、とりわけ150〜400%であることが好ましい。前記膨潤率が高すぎるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は耐水性が低く、また、ペレットが膠着しやすい傾向があり、前記膨潤率が低すぎるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、流動性が低い傾向がある。
【0088】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、チクソトロピー性を有する。たとえば、架橋されたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は可逆的チクソトロピー性を示す。
【0089】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、デンプン粒子として存在しないため、透明性に優れている。本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、たとえば、ホットプレスにより作成した1mm厚さのシートについて分光光度計により求められるヘイズが30以下と優れた値を示す。ヘイズは、たとえば、スガ試験機(株)製HGM−2DPにより、Tt(全光線透過率(%))およびTd(拡散透過率(%))を測定し、ヘイズ(%)=Td÷Tt×100として算出することができる。本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物のシートは、水中に浸漬すると、ゲル化し、部分的な膨潤性の差により、屈折率の部分差が生じ、光散乱を起こし、徐々に白濁してくるが、乾燥することにより、屈折率の局部差がなくなり、再度透明となる。
【0090】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物には、一般に使用される添加剤を添加することができる。これらの添加剤としては、たとえば、キチン、キトサン、アルギン酸、グルテン、コラーゲン、ポリアミノ酸、プルラン、カードラン、グルテン、コラーゲン、寒天などの可食増量剤、香料、甘味料、酸味料、着色剤(食用着色料、顔料、染料)、抗菌剤、防臭剤、防腐剤、防虫剤、静電防止剤、耐光剤、耐熱剤、ブロッキング防止剤などの添加剤があげられる。これらの添加剤は、単独で使用することができ、または、2種以上を併用することもできる。これらの添加剤の使用に関しては、用途により、食品としての特性、薬品としての特性、廃棄時の生分解性などに悪影響のないように配慮すべきである。
【0091】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物に、油脂、脂肪、脂肪族有機酸およびそのグリセリドなどの可塑剤を加えることにより、熱可塑性を向上させることができる。可塑剤の配合量を増加させることにより、さらに熱可塑性を向上させることができる。
【0092】
式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物の反応率は、得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物のTGA・DSC分析によって測定される減量から推測することができる。一例として、70重量%のデンプンおよび30重量%のグリセリンを配合し、製造したデンプン加水分解糖類およびその縮重合物について、分解開始温度(270℃近辺)まで一定の速度で定率減量を行なった。この減量率が水分減量率を含め、約15重量%であった。デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の恒量平衡に達した水分含有率が4〜5重量%であることから、約10重量%の未反応のグリセリンが残存し、残りの約20重量%のグリセリンが反応し、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の主鎖中の一部に導入されるか、または、側鎖を形成したものと推測される。
【0093】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、フィルム、シート、パイプなどの押出成形品、モールド成形品、ブロー成形品および射出成形品の原料として使用することができ、たとえば、化粧品用増粘剤、食品用増粘剤、薬品用増量剤、ゲル化剤、製膜強化剤、ゼリー状組成物、オブラート、可食性材料、ならびに、カプセルを製造することができる。
【0094】
たとえば、本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物をTダイ法により押出し成形することにより、フィルムおよびシートを製造することができる。Tダイ法でフィルムまたはシートを製造する場合、得られるフィルムまたはシートの厚さは、押出し量と引き取り速度とを調節することにより、制御することができる。本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物のフィルムおよびシートは、インフレーション法によっても製造することができる。インフレーション法によってフィルムまたはシートを製造する場合には、操業上、粘度が、MI値で1〜10、とりわけ1〜5のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物を用いることが好ましい。たとえば、このフィルムからオブラートを製造する場合、オブラートの親水性を増加するためには、部分架橋を小さく維持する方がよく、デンプン加水分解糖類の量を多くしたほうがよい。親水性を増加した状態でフィルムを製造するとインフレーション法ではフィルムの膠着気味になるためTダイ法が好ましい。
【0095】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物のフィルムまたはシートを製造する場合、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の押出し温度は、たとえば、140〜180℃とすることが好ましい。
【0096】
Tダイ法またはインフレーション法で得られた本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物のフィルムまたはシートを、延伸することにより、延伸フィルムまたは延伸シートを製造することができる。本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物のフィルムおよびシートを延伸する際の温度は、ガラス転移点以上、その30℃上までの範囲とすることが好ましい。
【0097】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の未延伸シートを、たとえば、真空モールド成形することにより、モールド成形品を製造することができる。たとえば、厚さ0.2〜2mmのシートを赤外線ヒーターなどでガラス転移点以上に加熱し、真空モールド成形金型の上に移動し、金型から吸引することによりシートを金型の形に成形することができる。すなわち、本発明のカプセルは前記のようにモールド成形品として製造することができる。モールド成形によるカプセルの製造方法はゼラチンを使用する湿式法のカプセル製造方法と比べ、生産性が大きく、省エネルギーで経済的に有利である。
【0098】
広く知られている生分解性樹脂であるポリ乳酸は、未延伸状態における引張破断伸度が常温で2〜3%と非常に小さく脆弱で実用に耐えず、また、真空モールド成形しても、変形の大きい部分は延伸されるが、金型の縁の部分は殆ど延伸されないため、未延伸部分が残り、この部分が脆弱で実用に耐えない。これに対して、本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の未延伸シートは、引張破断伸度が常温(たとえば25℃)で20%以上あり、未延伸部分も実用に供しても問題のない機械的物性を有する。
【0099】
本発明で使用するデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の水分率を制御することにより、製品である本発明の化粧品用増粘剤、食品用増粘剤、オブラート、可食性材料、ならびに、カプセルの親水性をコントロールすることができる。デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の水分率およびデンプン加水分解糖類の量を多くすると製品である本発明の化粧品用増粘剤、食品用増粘剤、オブラート、可食性材料、ならびに、カプセルの親水性を増加することができる。用途により製品に求められる親水性は異なるため、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の水分率およびデンプン加水分解糖類の量を適宜選択するとよい。デンプン加水分解糖類の量がほとんどない場合、おおよその目安として水分率が1重量%未満で撥水性を示すようになる。同様に表面の水分率が1重量%未満になると表面撥水性を示すようになる。しかしこの場合、内部は親水性が保持されるため、この表面層が破壊されると親水性を示すようになる。
【0100】
化粧品用増粘剤、食品用増粘剤、製膜剤として使用し、親水性が大きいほうが好ましい場合は、部分架橋は少なくするとよい。
【0101】
カプセルの製造法はゼラチンで使用される回転ダイロール法、多重滴下法、ディップ法の他に、真空モールド成形法、射出成形法、ブロー法、押し出し法などの熱可塑性樹脂で使用できる製造方法を使用することができる。
【0102】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は遠心ミルにより容易に機械粉砕することができる。たとえば、ドイツ製遠心ミルにより平均粒子径が200〜500ミクロンにある粉末を得られる。この粉末は水に溶解またはゲル状態で分散することができ、湿式シームレスカプセルの製造に有利である。
【0103】
また、この粉末を食品または薬品有効成分と混和し、打錠機によりタブレットに成形することができる。一般に増量剤としてデンプンのみを使用するとタブレットが壊れやすいので、打錠圧力を極端に大きくするか、または適当な結合剤の併用を必要とする。一方、本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の粉末を使用し、打錠時に適当に加温、加熱することにより、透明で壊れにくいタブレットを製造することができる。これはデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の適当な増粘性、換言すれば接着性を利用した例である。打錠圧力を大きくすることは機械設備が高価になり経済的に不利である。また、タブレットが壊れ易いとタブレットの不良品発生率が大きくなり、経済的に不利である。タブレット製品として、たとえばミントなどを含有する口腔清涼剤タブレット、医療用錠剤、ゴキブリ用殺虫剤などがあげられるが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。また、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物をデンプンと併用することもできる。デンプンと併用する場合は、壊れ易いタブレットを得ることができる。好ましくはデンプンに対して、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物が20重量%以上、より好ましくは50重量%以上混和される。
【0104】
本発明のカプセルを使用し、化粧品、トイレタリー商品の健康付加カプセルの内包剤としては、食用油脂やシリコーンオイルなどに分散または溶解したd−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、d−α−トコトリエノール、d−β−トコトリエノール、d−γ−トコトリエノール、d−δ−トコトリエノール、酢酸d−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロールなどのビタミンE;ビタミンA;ビタミンB1、B2、B6、ビタミンHおよびニコチン酸、パントテン酸などのビタミンB群;ビタミンC;ヘチマ、カミツレ、アロエ、アズレン、ヒノキチオール、グリチルリチンなどの植物抽出エキス;胎盤抽出液、コラーゲンなど動物抽出エキスがあげられるが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0105】
前記カプセルに適宜、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチルなどの防腐剤、二酸化チタン、カロチンなどの着色剤、香料などの添加剤を使用してもよい。
【0106】
一般的にゼリー状食品は、ゼラチンまたは寒天と、糖類、香料、着色料を主原料として製造される。食味の大半を担うのがゼラチンまたは寒天である。しかし、ゼラチンには、BSEの恐れがあり、食品に使用することは好ましくない。本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は安全な可食原料のみを使用することにより、ゼラチンの安全な代替品、食品用増粘剤として使用することができる。また、ゼラチンや寒天が高価であるのに反し、本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物はデンプンを原料とするため経済的に有利である。ゼラチン代替として使用する際には一般に使用される粉末ゼラチン同様、粉砕して使用すると扱いやすい。
【0107】
また、食品増粘剤、食感向上剤としてデンプン粒代替品として、たとえば、ハム、カマボコ、麺類、スープ類、菓子類などに使用することができるが、これらのみに本発明は限定されるものではない。
【0108】
本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、たとえば、可食性材料、生分解性樹脂など他の原料素材と混合使用することができる。
【0109】
【実施例】
以下、本発明の詳細を実施例にて説明する。
【0110】
実施例1:式(3)で表わされる基を有するデンプン加水分解糖類およびその縮重合物
とうもろこしデンプン(重量平均分子量約20000000、アミロース含有率74重量%、アミロペクチン含有率26重量%)100重量部、デンプン中に含まれる通常12〜13重量%の水分と併せてイオン交換水70重量部およびグリセリン10重量部、ソルビトール50重量部、触媒としてα−アミラーゼ0.1重量部を60℃で攪拌混合し、45mmトリプルベント付き1軸押出し機に供給した。ベント口から開放、水封ポンプ、油拡散ポンプで脱水した。押出し機のスクリューは、供給、混練り、圧縮、ベントからの脱水、混練り、ベントからの脱水、混練り、ベントからの脱水、圧縮の過程を経るように設計し、通常の2軸押出し機に劣らない混練り効果を得られるようにした。
【0111】
スクリューの混練り効果は、無色透明ポリプロピレン100重量部にカーボンブラック含有ポリエチレン2重量部を混合し、混練り後、顕微鏡観察によりカーボンブラックの存在部分を比較することにより確認した。ポリエチレンはポリプロピレン中に約30ミクロン程度の大きさでほぼ均一に分散されていることが光学顕微鏡による切片観察により確認された。
【0112】
入り口温度60℃、加熱最高温度150℃、圧力12.5MPaでデンプンを加水分解し、加水分解されたデンプンとグリセリン、ソルビトールとを、引き続き、急激に開放し、脱水縮重合させた。全滞留時間を3分、原料の供給速度を50kg/時間とした。生成したデンプン加水分解糖類およびその縮重合物を100メッシュのフィルターで濾過後、直径1mmのノズルから押出し、ホットカッターでペレットに成形した。得られた可食性原料のみを使用したデンプン加水分解糖類およびその縮重合物ぺレットはチクソトロピー性を示し、余熱により膠着することなく、MI値(150℃)が5と良好な熱可塑性を示した。このペレットのジメチルスルホキシド(DMSO)希薄溶液を高速液体ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した結果、6.8重量%のオリゴ糖類以下の分子量の糖類が含まれていた。
【0113】
得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物ペレットよりフィルムを作成し、フーリエ変換赤外分光光度計によるFT−IR測定を行なったところ、デンプンには認められない式(3)で表わされる基特有のCO伸縮振動による1,724.4cm−1の吸収帯が確認された。
【0114】
デンプンと炭酸ガスのみを使用したデンプン加水分解糖類およびその縮重合物フィルムの赤外分光光度計によるFT−IR測定の測定結果を図1に示す。
【0115】
図1中、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の3353.74cm−1の吸収は水素結合したO−H、2930.48cm−1の吸収はCH基のC−H、1724.4cm−1の吸収は炭酸基のC=O、1644.95cm−1の吸収は結晶水の存在を示す。とうもろこしデンプンでは、ジメチルケトン基のC=Oの存在を示す1724.4cm−1付近の吸収はない。
【0116】
実施例2および3:式(3)で表わされる基を有するデンプン加水分解糖類およびその縮重合物
滞留時間を3分(実施例2)および5分(実施例3)としたほかは実施例1と同様にして、ペレットを成形したところ、実施例1と同様に、熱可塑性を有する式(3)で表わされる基が導入された全て可食性原料であるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物であることが確認された。
【0117】
<オブラート>
実施例4
実施例1の未延伸シートを90℃のチャンバー温度で4倍延伸し、膜厚100ミクロンの1軸延伸フィルムを製造した。得られたフィルムの引張破断強度は4.8N/mm、引張破断伸度は29%で実用に耐えられる強度を示した。このフィルムは親水性で35℃の純水に浸漬すると膨潤し、溶解しなかった。しかし、口中に入れると甘みを感じ、唾液の酵素の働きで容易に溶解し、オブラートとして好適に使用することができた。
【0118】
実施例5:式(1)で表わされる基を有するデンプン加水分解糖類およびその縮重合物
α−アミラーゼの代わりにEndo−1,3(4)−β−D−グルカナーゼ、グリセリンの代りに炭酸ガスを発生する重炭酸ソーダ10重量部を用いて反応させたほかは、実施例1と同様にした。得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、赤外分光光度計による測定において、炭酸基特有のCO伸縮振動による1,745〜1,755cm−1の吸収帯が新たに発現することより、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の主鎖中の一部に式(1):−O−(C=O)−O−で表わされる基が導入されたことを確認することができた。この吸収帯は、デンプンには認められない。得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物のMI値は23であった。またDMSO希薄溶液を高速液体ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した結果、5.9重量%の単糖類が含まれていた。
【0119】
<食品増粘剤>
実施例6
実施例5のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物60重量部を食品増粘剤主原料とし、15ミクロン以下に機械粉砕し、洗浄した清浄な鶏卵の殻を25重量部、ビーフジャーキーの冷凍粉砕粉10重量部および椰子油5重量部と、全て可食性成分を使用し、2軸混練り機にて、150℃で混合し、ペレットを製造した。つぎにこのペレットを160℃で射出成形により長さ10cm、直径約1cmのダンベル状ドッグフードを製造した。愛玩犬のダックスフント雄3歳に供したところ好んで食した。体重変化など、食後の体調変化は認められなかった。
【0120】
実施例7:式(5)で表わされる基を有するデンプン加水分解糖類およびその縮重合物
グリセリンの代りに、モノマーユニットに換算して同モル相当のポリα−オキシプロピオン酸を使用して反応させたほかは実施例1と同様にした。得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物からオルトクレゾールで未反応のポリα−オキシプロピオン酸を抽出したのち、赤外分光光度計による測定において、エステル基特有のCO伸縮振動による1,730〜1,740cm−1の吸収帯が新たに発現したことにより、デンプンの主鎖中の一部に(O−(C=O)−CH(CH))−O−で表わされる基が導入されたことを確認することができた。この吸収帯はデンプンには認められない。また、得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物から未反応のポリα−オキシプロピオン酸を抽出したのちのNMR分析により、ポリα−オキシプロピオン酸のメチル基の存在を示すピークが検出された。
【0121】
<ハードカプセル>
実施例8
実施例7のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物ペレットを使用し、射出成形により外径5.0mm、内径4.9mm、長さ7mmと外径5.1mmの段なしオス型、内径5.0mm接合部分の長さが3mm、内径4.9mm、長さ10mmの段付きメス型ハードカプセルを作成した。このカプセルの中に粒状の窒素肥料を充填し、160℃に加熱した45度の傾斜のステンレス製鋼板上を転がし落下させ、収縮接着した。このカプセルを鉢植えの菊の茎から5cmの場所に深さ1cmで埋め込み、1週間毎に掘り返し、観察したところ、3週間目まではカプセルの中身は損なわれていなかったが、7週間目にカプセルはほとんど分解し、時限分解性肥料カプセルとして有効であった。
【0122】
実施例9:式(6)で表わされる基を有するデンプン加水分解糖類およびその縮重合物
グリセリンの代りに、1/2モルのイソプロピルアルコールを併せ使用して反応させたほかは実施例1と同様にした。得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物から沸騰水で未反応のイソプロピルアルコールを抽出したのち、NMR分析により、デンプンには認められないイソプロピルアルコールのメチル基の存在を示すピークが検出され、デンプンの主鎖中の一部にO−CH−CHCH−で表わされる基が導入されたことを確認することができた。
【0123】
<シームレスカプセル>
実施例10
実施例9のMI値16の粉末デンプン加水分解糖類およびその縮重合物を加熱溶解し(65℃)、15重量%水溶液を調製し、カプセル材料とした。65℃に保持したオリーブオイルにニンジンエキスを溶解し、内包剤として使用し、2重滴下法で15℃のコーンオイル凝固浴中に滴下後、90℃で熱風乾燥し、外皮と内包剤の比率が重量比1:3の直径5mmの可食健康補助食品(シームレスカプセル)を製造した。室温にて6週間スクリュービン中で保管後、オリーブオイルの酸化を調べたが、測定誤差範囲にとどまった。
【0124】
実施例11:式(5)および式(6)で表わされる基を有するデンプン加水分解糖類およびその縮重合物
グリセリンの代りに、半分のモル数のn−プロピルアルコールと、モノマーユニットに換算して半分のモル数に相当するポリα−オキシプロピオン酸を使用して反応させたほかは実施例1と同様にした。得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物から沸騰水で未反応のn−プロピルアルコールを抽出し、つぎにオルトクレゾールで未反応のポリα−オキシプロピオン酸を抽出したのち、NMR分析により、デンプンには認められないn−プロピルアルコールのメチレン基の存在を示すピークが検出され、デンプンの主鎖中の一部にO−CH−CH−CH−で表わされる基が導入されたことを確認することができた。また、得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、赤外分光光度計による測定において、エステル基特有のCO伸縮振動による1,730〜1,740cm−1の吸収帯が新たに発現したことより、デンプンの主鎖中の一部に(O−(C=O)−CH(CH))−O−で表わされる基が導入されていることを確認することができた。
【0125】
<ボトル>
実施例12
実施例11のMI値1.2のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物を使用し、プレカーサを中間体として製造することなく、180℃でブロー成形にて500mlの飲料用ボトルの金型に、直ブロー成形を行ない、ボトルを成形した。得られたボトルにシャンプーを充填し、常温、暗所で4ヵ月保管した後、内容物を破棄、洗浄し、畑の土に埋め、分解速度を観察した結果、6週間後にはボトルの形状が残るものの最大径1cm以上の穴が数箇所観察され、生分解が進行していることが観察された。
【0126】
<モールド成形法によるカプセルの製造>
実施例13〜20
実施例1、2、3、5、7、9、11のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物を使用して厚さ0.2mmの未延伸シートをおのおの製造し、赤外線ヒーターで90℃(ガラス転移点以上)に加熱したのち、常温の真空モールド成形金型の上に移動し、金型の底部から真空ポンプで吸引することにより、シートを金型通りの形に成形し、刃付き金型でトリミングして、直径2mm、深さ6mmのモールド成型品を作成し、開口部を1mm長さでカットして、直径2mm、深さ5mmのハードカプセルのモールド成形品を製造した。製造したおのおののハードカプセルには極端な肉薄部分が発生したりすることもなく、良好であった。
【0127】
<ゼリー>
実施例21
実施例1と同様にして、グリセリンの代りに、同モル数のソルビトールを使用して反応させたほかは実施例1と同様にした。得られた加水分解糖類およびその縮重合物100重量部にショ糖20重量部、バニラエッセンス0.1重量部をドライブレンドし、120℃で混練り押出機から押出し、回転刃でカットしたのち、5℃の冷却水中に落下させ、ビーン状に成形した。ショ糖90重量部とコーンスターチ10重量部からなる20%水溶液を振りかけながら回転乾燥機で糖衣を付け、食味も良好なゼリービーンを製造した。
【0128】
実施例22:式(8)で表わされる基を有するデンプン加水分解糖類およびその縮重合物
実施例1と同様にして、グリセリンの代りに、同モル数のn−ブタンジオールを使用して反応させたほかは実施例1と同様にした。得られたデンプン加水分解糖類およびその縮重合物から沸騰水で未反応のn−ブタンジオールを抽出し、NMR分析により、デンプンには認められないn−ブタンジオールのメチレン基の存在を示すピークが検出され、デンプンの主鎖中の一部にO−CH−CH−CH−CH−O−で表わされる基が導入されたことを確認することができた。
【0129】
<ガラス転移点、破壊温度>
実施例1、2、3、5、7、9、11、22により得られた各デンプン加水分解糖類およびその縮重合物を、セイコー電子(株)製DSC6200およびセイコー電子(株)製SSC5200により分析した結果、ガラス転移点は42〜80℃、破壊温度は278〜299℃であった。
【0130】
<生分解性>
実施例1、2、3、5、7、9、11、22で得られたシートを、市販の家庭用生ゴミ処理コンポスト機に投入し、12時間毎に定期的に一部サンプリングし、サンプルの減量速度でシートの生分解性を評価した。コンポスト処理に際しては運転時の温度を40〜50℃に保持し、コンポストの種菌用栄養分として、とうもろこしデンプンを加えた。いずれのサンプルについても、48時間後には、デンプン加水分解糖類およびその縮重合物の90重量%以上が生分解され、良好な生分解性を示した。
【0131】
【発明の効果】
本発明デンプン加水分解糖類およびその縮重合物は、デンプンと異なり、熱可塑性を有するので、従来の熱可塑性樹脂の代替材料として、たとえば、汎用の製造法にて各種成形品を製造するための材料として、使用することができる。本発明のカプセルの製造方法も、従来と異なるモールド成形法や射出成形法を採用することができる。本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物を使用したカプセルは各種成形品を製造するため適宜製造法を選択することが可能であるので、経済的である。本発明のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物を使用したカプセルは、デンプン同様に、生分解性を有するので、コンポスト中で容易に生分解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で製造したデンプン加水分解糖類およびその縮重合物のフーリエ変換赤外分光光度計による測定結果を示すチャートである。

Claims (26)

  1. 常温の水中に24時間浸漬したのちにゲル状態を示し、MI値が0.1以上でチクソトロピー性を示すデンプン加水分解糖類およびその縮重合物。
  2. デンプンの主鎖中の一部に式(1):−O−(C=O)−O−で表わされる基、式(2):−((O−R−(O−(C=O)−R−O−で表わされる基および式(3):−CH−(C=O)−CHR−O−で表わされる基からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を導入してなる請求項1記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物(式(2)中、Rは、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;Rは、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;xは0または1;yは0または1;x+yは1または2;mは1〜3100の整数;zは0または1を示し、式(3)中、Rは、炭素数1以上のアルキル基、炭素数6以上のアリール基または炭素数1以上のアルコキシ基を示す)。
  3. 式(1)で表わされる基を導入してなる請求項2記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物。
  4. 式(2)で表わされる基として、式(4):−(O−(C=O)−R−で表わされる基(式(2)中のxが0、yが1、zが0のとき)を導入してなる請求項2記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物。
  5. 式(2)で表わされる基として、式(5):−(O−(C=O)−R−O−で表わされる基(式(2)中のxが0、yが1、zが1のとき)を導入してなる請求項2記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物。
  6. 式(2)で表わされる基として、式(6):−(O−R−で表わされる基(式(2)中のxが1、yが0、zが0のとき)を導入してなる請求項2記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物。
  7. 式(2)で表わされる基として、式(7):−(O−R−O−(C=O)−R−で表わされる基(式(2)中のxが1、yが1、zが0のとき)を導入してなる請求項2記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物。
  8. 式(2)で表わされる基として、式(8):−(O−R−O−で表わされる基(式(2)中のxが1、yが0、zが1のとき)を導入してなる請求項2記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物。
  9. 式(2)で表わされる基として、式(9):−(O−R−O−(C=O)−R−O−で表わされる基(式(2)中のxが1、yが1、zが1のとき)を導入してなる請求項2記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物。
  10. 式(3)で表わされる基を導入してなる請求項2記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物。
  11. 架橋されている請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物。
  12. 温度20℃、相対湿度60%の条件下で24時間放置することにより、実質的に恒量平衡に達した水分率が1〜6重量%である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物。
  13. 温度25℃の水中に1時間浸漬後の膨潤率が150〜400%である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物。
  14. 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物からなるカプセル。
  15. デンプンと、式(1):−O−(C=O)−O−で表わされる基を形成する化合物、式(2):−((O−R−(O−(C=O)−R−O−で表わされる基を形成する化合物および式(3):−CH−(C=O)−CHR−O−で表わされる基を形成する化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを、水の存在下、不活性温度以下で触媒として酵素、酵母および酵素含有有機物からなる群から選ばれた少なくとも1種を使用し、40〜350℃で、反応させるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の製造方法(式(2)中、Rは、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;Rは、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;xは0または1;yは0または1;x+yは1または2;mは1〜3100の整数;zは0または1を示し、式(3)中、Rは、炭素数1以上のアルキル基、炭素数6以上のアリール基または炭素数1以上のアルコキシ基を示す)。
  16. デンプンと、式(1):−O−(C=O)−O−で表わされる基を形成する化合物、式(2):−((O−R−(O−(C=O)−R−O−で表わされる基を形成する化合物および式(3):−CH−(C=O)−CHR−O−で表わされる基を形成する化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを、水および炭酸ガスの存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で、不活性温度以下で触媒として酵素、酵母および酵素含有有機物からなる群から選ばれた少なくとも1種を使用し、反応させるデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の製造方法(式(2)中、Rは、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;Rは、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;xは0または1;yは0または1;x+yは1または2;mは1〜3100の整数;zは0または1を示し、式(3)中、Rは、炭素数1以上のアルキル基、炭素数6以上のアリール基または炭素数1以上のアルコキシ基を示す)。
  17. デンプンと、式(1)で表わされる基を形成する化合物、式(2)で表わされる基を形成する化合物および式(3)で表わされる基を形成する化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物との反応に押出し機を使用し、100〜250kg/cmのノズル前圧力で押出す請求項15または16記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物の製造方法。
  18. 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物からなるブロー成形品。
  19. 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13記載のデンプン加水分解糖類およびその縮重合物と可食性成分原料とからなる組成物。
  20. 請求項19記載の組成物からなる食品用増粘剤。
  21. 原料可食性成分が食用油脂、食用油脂鹸化物、食用アルコール、単糖類、多糖類、ソルビトールまたはガムの少なくとも1種である請求項19記載の組成物からなるカプセル。
  22. 原料可食性成分が食用油脂、食用油脂鹸化物、食用アルコール、単糖類、多糖類、ソルビトールまたはガムの少なくとも1種である請求項19記載の組成物からなる食品用増粘剤。
  23. 請求項19記載の組成物を増量剤主原料として含有する錠剤。
  24. 請求項19記載の組成物をゲル化剤として使用したゼリー状組成物。
  25. 原料可食性成分が食用油脂、食用油脂鹸化物、食用アルコール、単糖類、多糖類、ソルビトールまたはガムの少なくとも1種である請求項19記載の組成物を含有する錠剤およびゼリー状組成物。
  26. 原料可食性成分が食用油脂、食用油脂鹸化物、食用アルコール、単糖類、多糖類、ソルビトールまたはガムの少なくとも1種である請求項19記載の組成物を製膜強化剤として含有するフィルムまたはシート。
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