JP2004236392A - モータとその駆動回路のシミュレーション方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】定常時と過渡時のモータ動作の把握を高精度に行うことのできるモータとその駆動回路のシミュレーション方法を提供する。
【解決手段】モータとその駆動回路を回路方程式で記述し、電磁界解析により算出した速度起電力係数とトルク係数、インダクタンス列を利用して、定常時と過渡時のモータの動作解析を行うように構成した。
【選択図】 図1
【解決手段】モータとその駆動回路を回路方程式で記述し、電磁界解析により算出した速度起電力係数とトルク係数、インダクタンス列を利用して、定常時と過渡時のモータの動作解析を行うように構成した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁界解析を用いて回路方程式に必要なパラメータのみを抽出することにより、より精度が高く、製品設計過程における試作品製作回数の低減が可能なモータと、その駆動回路のシミュレーション方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、モータを解析する方法としては種々の方式が提案されている。例えば、モータとモータ駆動回路をともに伝達関数で指定する方法や、モータとモータ駆動回路をともに回路モデル(回路方程式)で指定する方法などがある。
【0003】
しかし、前述したように、モータとモータ駆動回路の両方を伝達関数で指定した場合、系の細かい振る舞いの把握は困難であり、また、前記モータとモータ駆動回路をともに回路モデルで指定した場合は、系の細かい振る舞いの把握は可能となるものの、シミュレーション(解析)に要する時間が増大してしまう問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、モータを伝達関数で記述し、モータ駆動回路を回路モデル(回路方程式)で記述する方法や、モータの半分を伝達関数で記述し、前記モータの残りの半分とモータ駆動回路を回路モデル(回路方程式)で記述する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この方法によれば、前述した問題点、すなわち、系の振る舞いの把握が困難であるといった問題や、シミュレーション時間が増大するといった問題を確実に解消できるとともに、モータ駆動回路の細かい設計が容易となる等の効果が得られる。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−233574号(第3頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
然るに、モータを伝達関数で記述し、モータ駆動回路を回路モデルで記述した場合、モータの定常時の動作を把握することは可能であるが、過渡時の動作を把握することはできなかった。
【0008】
また、モータの半分を伝達関数で記述し、前記モータの残りの半分とモータ駆動回路を回路モデルで記述した場合、定常時のみならず過渡時のモータの動作を把握することができるが、この場合、両者を結びつけるためのリンク手段を予め用意する必要があり、シミュレーションプログラムが複雑となるなど、あまり好ましくなかった。
【0009】
さらに、前述した2つの方法においては、いづれも、解析に必要なモータの速度起電力係数とトルク係数を、種々の正弦波の合成関数を複数用意することにより与えているため、前記合成関数から速度起電力係数列の波形を求めた場合、速度起電力係数やトルク係数に含まれる歪み(高調波成分)をシミュレーション波形に反映させることが非常に困難であるといった問題を有していた。
【0010】
しかも、前記合成関数から速度起電力係数とトルク係数を与える場合、一般的には、基本波だけでなく高次の波形も与える必要があるが、その次数の与え方が明示されていなかった。
【0011】
そこで、本発明は、定常時と過渡時の両方のモータの動作解析を、短時間かつ高精度で行うことのできるモータとその駆動回路のシミュレーション方法を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のモータとその駆動回路のシミュレーション方法は、モータとモータ駆動回路を回路方程式で記述し、電磁界解析によって算出した瞬時の速度起電力係数とトルク係数を用いて、定常状態および過渡状態のモータのシミュレーションを行うことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載のモータとその駆動回路のシミュレーション方法は、モータとその駆動回路を回路方程式で記述し、電磁界解析によって算出したインダクタンス列を利用して、定常状態および過渡状態のモータのシミュレーションを行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載のモータとその駆動回路のシミュレーション方法は、モータとその駆動回路を回路方程式で記述し、電磁界解析によって算出した瞬時の速度起電力係数とトルク係数、および、インダクタンス列を利用して、定常状態および過渡状態のモータのシミュレーションを行うことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載のモータとその駆動回路のシミュレーション方法は、請求項1ないし3記載の前記モータとその通電状況にそれぞれ対応した複数の回路モデル(回路方程式)を備え、前記モータに応じて使用する回路モデルを択一的に切り替えて実行することを特徴とする。
【0016】
請求項5記載のモータとその駆動回路のシミュレーション方法は、請求項1ないし4において、算出した瞬時電流の最大値から前記モータで発生する鉄損のシミュレーションを行うことを特徴とする。
【0017】
請求項6記載のモータとその駆動回路のシミュレーション方法は、請求項1ないし5において、コンデンサ容量,抵抗値,交流電源周波数,交流電源の投入位相に関するデータに基づいて、交流整流とその後段のコンデンサを考慮したシミュレーションを可能としたことを特徴とする。
【0018】
本発明のモータとその駆動回路のシミュレーション方法によれば、速度起電力係数とトルク係数を電磁界解析によって直接算出することができるので、前記速度起電力係数とトルク係数の高調波成分がシミュレーション波形に与える影響を把握するのに非常に有利である。
【0019】
また、本発明のモータとその駆動回路のシミュレーション方法によれば、シミュレータに複雑なリンク手段を備えることなく、定常時および過渡時のモータ動作を正確に把握することができる。
【0020】
さらに、本発明のモータとその駆動回路のシミュレーション方法によれば、解析の対象となるモータ毎に特化した回路モデル(回路方程式)を予め複数備えておき、解析時に複数の回路モデルの中から1つを択一的に選択してモータのシミュレーションを行うので、モータとモータ駆動回路をともに回路モデルで記述しても、シミュレーションに長時間を要することを確実に防止することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図10により説明する。図1は本発明のモータとその駆動回路のシミュレーション方法において、シミュレーションの対象となるモータ毎に特化して生成した専用のシミュレータの構成要素を記載した説明図である。
【0022】
まず、図1記載のモータとしては、本実施例においては、図2に示す三相永久磁石同期モータを例示する。前記三相永久磁石同期モータは、そのモータ本体1に、インバータ回路(3相インバータ回路)2と、該インバータ回路2を制御する制御装置3と、前記インバータ回路2の入力として電源(直流または交流)4を接続して概略構成されている。
【0023】
図3は、前記三相永久磁石同期モータの回路モデルを示しており(図1記載のモデル化)、抵抗,自己インダクタンスおよび相互インダクタンス,速度起電力係数とモータ回転子の回転数の積に比例する速度起電力を等価に置き換えた電源を一相分の構成として、それが3つ集まって構成されている。
【0024】
なお、前記自己インダクタンスおよび相互インダクタンスは、固定または回転子位置変動のどちらかを、また、前記トルク係数および速度起電力係数は、平均値または変動のどちらかを選択できるものとする。
【0025】
次に、下記[数1]に図1記載の回路方程式を記述する。
【0026】
【数1】
【0027】
この回路方程式は、前記三相永久磁石同期モータの三相のうちニ相に通電する場合について記述されている。また、前記回路方程式は、シミュレーションの対象となるモータ毎にその記述内容が異なり、複数種類のモータのシミュレーションを考慮した場合、各モータ毎に予めこれをモデル化して各々の回路方程式を作成する必要がある。
【0028】
つまり、前記シミュレーションを行うモータが異なれば、複数用意した回路方程式の中から適用する回路方程式を1つ選択することにより、それぞれのモータに特化した専用のシミュレータを構築することができ、この結果、シミュレーションに要する時間を短縮することが可能となる。
【0029】
また、図1に記す速度起電力係数とトルク係数は電磁界解析によって算出されるものであり、一方、運動方程式としては、下記[数2]に記すように、例えば、ラグランジェの運動方程式が利用される。
【0030】
【数2】
【0031】
図4は、本発明のシミュレーションの手順を簡略化して示す模式図である。該シミュレーションを実行する場合、まず、[数1]に記述した回路方程式で算出される電流と電磁界解析より求めたトルク係数を積算して、シミュレーションの対象であるモータ(本実施例では、三相永久磁石同期モータ)のトルクを算出する。
【0032】
次に、[数2]に記述したラグランジェの運動方程式に代表される運動方程式に、算出したトルクを代入することによって前記モータの回転数を算出し、つづいて、前記回転数と電磁界解析によって求めた速度起電力係数との積から速度起電力を算出する。
【0033】
そして、この速度起電力を1つのパラメータとして[数1]記載の回路方程式に入力(フィードバック)することによって前述した電流を再度計算する。以上の動作を繰り返し行うことによって、本発明のモータのシミュレーションは実行される。なお、前記シミュレーションによる結果は、電流波形や電圧波形などの各種波形データとして出力することが可能である。
【0034】
下記[表1]に前記シミュレーションを実行するために入力が必要なパラメータ(定数)を示す。各パラメータの説明は以下のとおりである。
【0035】
【表1】
【0036】
TD:計算の時間間隔(単位は(s))である。
【0037】
tE1off:計算開始時(時刻0)には、電源電圧はE1で与えられる値になっている。時刻0からこの時間が経過すると、E1が0になる。
【0038】
TSTOP:計算開始の時刻0から計算終了までの時刻(単位は(s))。
【0039】
strtcut:計算結果の出力ファイルへの書き出しを始める時刻(単位は(s))。
【0040】
stopcut:計算結果の出力ファイルへの書き出しを終える時刻(単位は(s))。
【0041】
phase:通電位相角(正は進み位相,負は遅れ位相(単位は(rad)))。
【0042】
start−rp:時刻0における回転子の位置(単位は(rad))。
【0043】
start−w:時刻0における回転子の速度(単位は(min−1))。
【0044】
極数:モータの極数。
【0045】
E1:インバータへ入力する直流電圧値(単位は(V))。
【0046】
J:モータの慣性モーメント(単位は(kg・m2))。
【0047】
GM:回転数に比例する損失の比例定数(回転制動係数)。
【0048】
kt0:負荷トルクを示す定数(負荷が一定の場合の単位は(N・m)、負荷が回転数の2乗に比例する場合の単位は(N・m・s2/(rad)2)。
【0049】
kt0n:負荷が回転数の何乗にあたるかを示す定数。
【0050】
線間R:モータの線間の抵抗値(初期温度で与えられる値であり、単位は(Ω))。
【0051】
線間L:モータの線間のインダクタンス値(単位は(H))。
【0052】
VD:ダイオードのオン電圧(単位は(V))。
【0053】
ke:うず電流計算用定数(単位は(W/A2))。
【0054】
kh:ヒステリシス損計算用定数(単位は(W/A))。
【0055】
weight:固定子1脚あたりの重量(単位(kg))。
【0056】
nw:1巻線の巻数。
【0057】
radius:鉄損失計算用の固定子1脚の換算半径(単位は(m))。
【0058】
B0:固定子材質の残留磁束密度(単位は(T))。
【0059】
HM:固定子材質が飽和し始める磁界の強さ(単位は(H))。
【0060】
BM:固定子の飽和磁束密度(単位は(T))。
【0061】
線間kew:速度起電力係数を正弦波近似する場合の実行値(ktiukew=2の場合のみ有効であり、単位は(V・S/rad))。
【0062】
線間kti:トルク係数を正弦波近似する場合の実行値(ktiukew=2の場合のみ有効であり、単位は(N・m/A))。
【0063】
ktiukew:速度起電力係数とトルク係数の与え方を示す。1は外部ファイルからであり、2は内部で定数(線間kewと線間kti)により計算する。
【0064】
初期温度:巻線抵抗の初期温度(単位は(℃))。
【0065】
使用温度:巻線抵抗の使用時の温度(単位は(℃))。
【0066】
PWMon/off:PWMを行うか行わないかを示しており、1は行う。2は行わない。
【0067】
PWMon時間: PWMの周期のうち通電している時間(単位は(s))。
【0068】
PWM周期:PWMの周期(単位は(s))。
【0069】
md135pwm:PWMをかける場合、通電モードを1,3,5とした場合に上下どの素子を入切するかを示す。1は上下とも入り。2は上切,下入。3は上入,下切。
【0070】
md246pwm:PWMをかける場合、通電モード2,4,6とした場合に上下どの素子を入切するかを示す。1は上下とも入り。2は上切,下入。3は上入,下切。
【0071】
L変動:インダクタンス変動方法を指定するもの(0→off,1→on(sin),2→on(ary))。
0…線間Lの値のみを読み込み、他の値は無視する。Lamp,線間平均M,線間変動Mの値は無視される。
1…(線間L+線間平均M)を一定値とし、(Lamp+線間変動M)が正弦波状に変化するとして与える。
2…インダクタンス列を外部ファイル(デフォルトはlary.csv)から読み込む。L変動,Lamp,線間平均M,線間変動Mの値は無視される。角度のみを考慮したインダクタンス列となる。この場合のlary.csvの例を下記の[表2]に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
3…インダクタンス列を外部ファイル(デフォルトはlary.csv)から読み込む。L変動,Lamp,線間平均M,線間変動Mの値は無視される。角度と電流を考慮したインダクタンス列となる。この場合のlary.csvの例を下記の[表3]に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
Lamp(単位は(H)):L変動が1のときに有効な値であり、自己インダクタンスは下記[数3]にて与えられる。
【0076】
【数3】
【0077】
[数3]において、θは回転子角度,sinは正弦波である。また、自己インダクタンスの一定値分L0を線間Lとして与え、自己インダクタンスの変動分MAをLampとして与える。
【0078】
線間平均M(単位は(H)),線間変動M(単位は(H)):L変動が1のときに有効な値である。相互インダクタンスは下記[数4]で与えられものとする。
【0079】
【数4】
【0080】
[数4]において、θは回転子角度,sinは正弦波である。また、相互インダクタンスの一定値分M0を線間平均Mとして与え、相互インダクタンスの変動分MAを線間変動として与える。
【0081】
電源選択:電源を指定するものであり、1を選択した場合はE1の値を直流電源とし、2を選択した場合はE1の値を交流正弦波の実行値とする。
【0082】
コンデンサ容量:単位は(F)
抵抗:単位は(Ω)
交流電源周波数:単位は(Hz)
交流電源投入位相:単位は(電気degree)
上記パラメータは、前記電源選択で2を選択したときに有効であり、電源はコンデンサインプット型とする。図5に電源選択で2を選択したときの概念図を示す。
【0083】
L+k・M選択(L+M(1),L+2M(2)):電圧平衡方程式中でL+MとL+2Mの係数がある。簡略化して扱うためにどちらかに統一する。
1…L+Mに統一する。
2…L+2Mに統一する。
【0084】
以上記載したパラメータを入力することによって、図4に示すシミュレーションは実行される。また、図4に示す速度起電力係数を電磁界解析によって算出した結果を図6に示す。
【0085】
図6(a)は埋め込み磁石型同期電動機(IPM)の速度起電力係数をグラフ化したものであり、同図(b)は表面磁石型同期電動機(SPM)の速度起電力係数をグラフ化したものである。
【0086】
[従来の技術]欄で説明した正弦波の合成関数から速度起電力係数を求めた場合、図6に示すような波形を得ることは困難であり、本発明の優位性を示すグラフであるといえる。なお、トルク係数については、前記速度起電力係数と同一値にできることは公知である。
【0087】
図7は、本発明に係る電磁界解析によって算出したインダクタンス列を示す一例であり、前述の[表3]と対応している。即ち、図7は角度と電流をパラメータとしたインダクタンス列を電磁界解析によって算出し、それをグラフ化したものであり、電流値によって前記インダクタンス値が異なることがわかる。
【0088】
そして、前記シミュレーションを行う場合は、電磁界解析によって算出したインダクタンス(図7)をテーブル化して利用したり、前記インダクタンスを一定としてシミュレーションを行う。
【0089】
図8は、前記シミュレーションの結果、出力される波形の一例である。同図(a)に電流−時間波形を、同図(b)に電圧−時間波形を示している。図8に示す波形が、オシロスコープ等を用いて実測する場合と非常に近い波形イメージであることがわかる。
【0090】
図9は電流−時間波形について、これを実測した場合を(a)に、また、電磁界解析によって算出した速度起電力係数とトルク係数を用いて本発明のシミュレーションを実行した場合を同図(b)に、さらに、[従来の技術]欄に記載した正弦波の合成関数から速度起電力係数とトルク係数を求めた場合を同図(c)に示している。
【0091】
図9(a)〜(c)を互いに比較すると、本発明の電磁界解析を利用したシミュレーションによる電流−時間波形が、正弦波の合成関数から速度起電力係数とトルク係数を求めた場合に比べて、より実測波形に近似していることは明らかである。
【0092】
つまり、図9は、本発明のシミュレーション方法によれば、従来技術と比較して、より精度の高い(実測値に近い)シミュレーションが可能であることを示している。
【0093】
つづいて、本発明のシミュレーションによってモータの鉄損を算出する場合について説明する。前記鉄損を算出する場合は、まず最初に、前記シミュレーションによって算出した電流のピーク値にシミュレーションの対象であるモータのコイル巻数を乗じることによって、磁界の値を求める。
【0094】
次に、モータコア材(ケイ素鋼板や焼結フェライト等)のヒステリシスカーブ(本実施例では、図10に直線で近似した簡略的なヒステリシスカーブを例示するが、高次方程式を用いて、より精度の高いヒステリシスカーブに置き換えられることは当然である)上でその磁界に対応する最大磁束密度を読み取る。この最大磁束密度の値が判明すれば、下記の[数5]によって鉄損を容易に算出することができる。
【0095】
【数5】
【0096】
以上説明したように、本発明のモータとその駆動回路のシミュレーション方法によれば、定常時のみならず過渡時におけるモータ動作をも確実に把握することができるとともに、その精度は、従来の正弦波の合成関数を利用したシミュレーション方法に比較して、より精度の高い解析を可能とした。
【0097】
【発明の効果】
モータと駆動回路の両方を回路方程式で記述することにより、モータの瞬時および過渡時の波形をともに把握することができる。
【0098】
モータと駆動回路の両方を回路方程式で記述することにより、複雑なリンク手段を予め用意する必要は一切なく、シミュレーションのプログラムを簡易に構成することができる。
【0099】
電磁界解析によって算出した速度起電力係数とトルク係数を利用してモータのシミュレーションを実行することにより、より精度の高いシミュレーションを実現することができる。
【0100】
シミュレーションの対象となるモータ毎に回路モデル(回路方程式)を予め作成し、対象が変更される都度、複数の回路モデル(回路方程式)を切り替えて、対象となるモータに特化した回路モデルを選択するので、モータと駆動回路の両方を回路モデルで記述しているにもかかわらず、そのシミュレーション時間を大幅に短縮することができる。
【0101】
モータの鉄損を容易に算出することができるとともに、コンデンサ容量,抵抗値,交流電源周波数,交流電源の投入位相のデータを基に、交流整流とコンデンサを具備したモータのシミュレーションを実現可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシミュレーション方法を実現する要素を記載した説明図である。
【図2】前記シミュレーション方法を適用するモータの一例を示す構成図である。
【図3】前記モータの回路モデルを示す回路図である。
【図4】前記シミュレーションの手順を示す模式図である。
【図5】前記シミュレーションの入力パラメータで電源選択を2としたときの概念図である。
【図6】(a)は埋め込み磁石型同期電動機(IPM)の速度起電力係数を示すグラフであり、(b)は表面磁石型同期電動機(SPM)の速度起電力係数を示すグラフである。
【図7】電磁界解析により算出したインダクタンス列を示すグラフである。
【図8】(a)は、前記シミュレーションの結果として出力される電流−時間の関係を示すグラフであり、(b)は電圧−時間の関係を示すグラフである。
【図9】(a)は、電流−時間の関係についての実測値を示すグラフであり、(b)は電磁界解析によって算出した速度起電力係数とトルク係数を用いて前記シミュレーションを行った場合の電流−時間の関係を示すグラフであり、(c)は正弦波の合成関数から速度起電力係数とトルク係数を求めた場合の電流−時間の関係を示すグラフである。
【図10】モータコア材のヒステリシスカーブである。
【符号の説明】
1 モータ本体
2 インバータ回路
3 制御回路
4 電源
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁界解析を用いて回路方程式に必要なパラメータのみを抽出することにより、より精度が高く、製品設計過程における試作品製作回数の低減が可能なモータと、その駆動回路のシミュレーション方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、モータを解析する方法としては種々の方式が提案されている。例えば、モータとモータ駆動回路をともに伝達関数で指定する方法や、モータとモータ駆動回路をともに回路モデル(回路方程式)で指定する方法などがある。
【0003】
しかし、前述したように、モータとモータ駆動回路の両方を伝達関数で指定した場合、系の細かい振る舞いの把握は困難であり、また、前記モータとモータ駆動回路をともに回路モデルで指定した場合は、系の細かい振る舞いの把握は可能となるものの、シミュレーション(解析)に要する時間が増大してしまう問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、モータを伝達関数で記述し、モータ駆動回路を回路モデル(回路方程式)で記述する方法や、モータの半分を伝達関数で記述し、前記モータの残りの半分とモータ駆動回路を回路モデル(回路方程式)で記述する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この方法によれば、前述した問題点、すなわち、系の振る舞いの把握が困難であるといった問題や、シミュレーション時間が増大するといった問題を確実に解消できるとともに、モータ駆動回路の細かい設計が容易となる等の効果が得られる。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−233574号(第3頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
然るに、モータを伝達関数で記述し、モータ駆動回路を回路モデルで記述した場合、モータの定常時の動作を把握することは可能であるが、過渡時の動作を把握することはできなかった。
【0008】
また、モータの半分を伝達関数で記述し、前記モータの残りの半分とモータ駆動回路を回路モデルで記述した場合、定常時のみならず過渡時のモータの動作を把握することができるが、この場合、両者を結びつけるためのリンク手段を予め用意する必要があり、シミュレーションプログラムが複雑となるなど、あまり好ましくなかった。
【0009】
さらに、前述した2つの方法においては、いづれも、解析に必要なモータの速度起電力係数とトルク係数を、種々の正弦波の合成関数を複数用意することにより与えているため、前記合成関数から速度起電力係数列の波形を求めた場合、速度起電力係数やトルク係数に含まれる歪み(高調波成分)をシミュレーション波形に反映させることが非常に困難であるといった問題を有していた。
【0010】
しかも、前記合成関数から速度起電力係数とトルク係数を与える場合、一般的には、基本波だけでなく高次の波形も与える必要があるが、その次数の与え方が明示されていなかった。
【0011】
そこで、本発明は、定常時と過渡時の両方のモータの動作解析を、短時間かつ高精度で行うことのできるモータとその駆動回路のシミュレーション方法を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のモータとその駆動回路のシミュレーション方法は、モータとモータ駆動回路を回路方程式で記述し、電磁界解析によって算出した瞬時の速度起電力係数とトルク係数を用いて、定常状態および過渡状態のモータのシミュレーションを行うことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載のモータとその駆動回路のシミュレーション方法は、モータとその駆動回路を回路方程式で記述し、電磁界解析によって算出したインダクタンス列を利用して、定常状態および過渡状態のモータのシミュレーションを行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載のモータとその駆動回路のシミュレーション方法は、モータとその駆動回路を回路方程式で記述し、電磁界解析によって算出した瞬時の速度起電力係数とトルク係数、および、インダクタンス列を利用して、定常状態および過渡状態のモータのシミュレーションを行うことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載のモータとその駆動回路のシミュレーション方法は、請求項1ないし3記載の前記モータとその通電状況にそれぞれ対応した複数の回路モデル(回路方程式)を備え、前記モータに応じて使用する回路モデルを択一的に切り替えて実行することを特徴とする。
【0016】
請求項5記載のモータとその駆動回路のシミュレーション方法は、請求項1ないし4において、算出した瞬時電流の最大値から前記モータで発生する鉄損のシミュレーションを行うことを特徴とする。
【0017】
請求項6記載のモータとその駆動回路のシミュレーション方法は、請求項1ないし5において、コンデンサ容量,抵抗値,交流電源周波数,交流電源の投入位相に関するデータに基づいて、交流整流とその後段のコンデンサを考慮したシミュレーションを可能としたことを特徴とする。
【0018】
本発明のモータとその駆動回路のシミュレーション方法によれば、速度起電力係数とトルク係数を電磁界解析によって直接算出することができるので、前記速度起電力係数とトルク係数の高調波成分がシミュレーション波形に与える影響を把握するのに非常に有利である。
【0019】
また、本発明のモータとその駆動回路のシミュレーション方法によれば、シミュレータに複雑なリンク手段を備えることなく、定常時および過渡時のモータ動作を正確に把握することができる。
【0020】
さらに、本発明のモータとその駆動回路のシミュレーション方法によれば、解析の対象となるモータ毎に特化した回路モデル(回路方程式)を予め複数備えておき、解析時に複数の回路モデルの中から1つを択一的に選択してモータのシミュレーションを行うので、モータとモータ駆動回路をともに回路モデルで記述しても、シミュレーションに長時間を要することを確実に防止することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図10により説明する。図1は本発明のモータとその駆動回路のシミュレーション方法において、シミュレーションの対象となるモータ毎に特化して生成した専用のシミュレータの構成要素を記載した説明図である。
【0022】
まず、図1記載のモータとしては、本実施例においては、図2に示す三相永久磁石同期モータを例示する。前記三相永久磁石同期モータは、そのモータ本体1に、インバータ回路(3相インバータ回路)2と、該インバータ回路2を制御する制御装置3と、前記インバータ回路2の入力として電源(直流または交流)4を接続して概略構成されている。
【0023】
図3は、前記三相永久磁石同期モータの回路モデルを示しており(図1記載のモデル化)、抵抗,自己インダクタンスおよび相互インダクタンス,速度起電力係数とモータ回転子の回転数の積に比例する速度起電力を等価に置き換えた電源を一相分の構成として、それが3つ集まって構成されている。
【0024】
なお、前記自己インダクタンスおよび相互インダクタンスは、固定または回転子位置変動のどちらかを、また、前記トルク係数および速度起電力係数は、平均値または変動のどちらかを選択できるものとする。
【0025】
次に、下記[数1]に図1記載の回路方程式を記述する。
【0026】
【数1】
【0027】
この回路方程式は、前記三相永久磁石同期モータの三相のうちニ相に通電する場合について記述されている。また、前記回路方程式は、シミュレーションの対象となるモータ毎にその記述内容が異なり、複数種類のモータのシミュレーションを考慮した場合、各モータ毎に予めこれをモデル化して各々の回路方程式を作成する必要がある。
【0028】
つまり、前記シミュレーションを行うモータが異なれば、複数用意した回路方程式の中から適用する回路方程式を1つ選択することにより、それぞれのモータに特化した専用のシミュレータを構築することができ、この結果、シミュレーションに要する時間を短縮することが可能となる。
【0029】
また、図1に記す速度起電力係数とトルク係数は電磁界解析によって算出されるものであり、一方、運動方程式としては、下記[数2]に記すように、例えば、ラグランジェの運動方程式が利用される。
【0030】
【数2】
【0031】
図4は、本発明のシミュレーションの手順を簡略化して示す模式図である。該シミュレーションを実行する場合、まず、[数1]に記述した回路方程式で算出される電流と電磁界解析より求めたトルク係数を積算して、シミュレーションの対象であるモータ(本実施例では、三相永久磁石同期モータ)のトルクを算出する。
【0032】
次に、[数2]に記述したラグランジェの運動方程式に代表される運動方程式に、算出したトルクを代入することによって前記モータの回転数を算出し、つづいて、前記回転数と電磁界解析によって求めた速度起電力係数との積から速度起電力を算出する。
【0033】
そして、この速度起電力を1つのパラメータとして[数1]記載の回路方程式に入力(フィードバック)することによって前述した電流を再度計算する。以上の動作を繰り返し行うことによって、本発明のモータのシミュレーションは実行される。なお、前記シミュレーションによる結果は、電流波形や電圧波形などの各種波形データとして出力することが可能である。
【0034】
下記[表1]に前記シミュレーションを実行するために入力が必要なパラメータ(定数)を示す。各パラメータの説明は以下のとおりである。
【0035】
【表1】
【0036】
TD:計算の時間間隔(単位は(s))である。
【0037】
tE1off:計算開始時(時刻0)には、電源電圧はE1で与えられる値になっている。時刻0からこの時間が経過すると、E1が0になる。
【0038】
TSTOP:計算開始の時刻0から計算終了までの時刻(単位は(s))。
【0039】
strtcut:計算結果の出力ファイルへの書き出しを始める時刻(単位は(s))。
【0040】
stopcut:計算結果の出力ファイルへの書き出しを終える時刻(単位は(s))。
【0041】
phase:通電位相角(正は進み位相,負は遅れ位相(単位は(rad)))。
【0042】
start−rp:時刻0における回転子の位置(単位は(rad))。
【0043】
start−w:時刻0における回転子の速度(単位は(min−1))。
【0044】
極数:モータの極数。
【0045】
E1:インバータへ入力する直流電圧値(単位は(V))。
【0046】
J:モータの慣性モーメント(単位は(kg・m2))。
【0047】
GM:回転数に比例する損失の比例定数(回転制動係数)。
【0048】
kt0:負荷トルクを示す定数(負荷が一定の場合の単位は(N・m)、負荷が回転数の2乗に比例する場合の単位は(N・m・s2/(rad)2)。
【0049】
kt0n:負荷が回転数の何乗にあたるかを示す定数。
【0050】
線間R:モータの線間の抵抗値(初期温度で与えられる値であり、単位は(Ω))。
【0051】
線間L:モータの線間のインダクタンス値(単位は(H))。
【0052】
VD:ダイオードのオン電圧(単位は(V))。
【0053】
ke:うず電流計算用定数(単位は(W/A2))。
【0054】
kh:ヒステリシス損計算用定数(単位は(W/A))。
【0055】
weight:固定子1脚あたりの重量(単位(kg))。
【0056】
nw:1巻線の巻数。
【0057】
radius:鉄損失計算用の固定子1脚の換算半径(単位は(m))。
【0058】
B0:固定子材質の残留磁束密度(単位は(T))。
【0059】
HM:固定子材質が飽和し始める磁界の強さ(単位は(H))。
【0060】
BM:固定子の飽和磁束密度(単位は(T))。
【0061】
線間kew:速度起電力係数を正弦波近似する場合の実行値(ktiukew=2の場合のみ有効であり、単位は(V・S/rad))。
【0062】
線間kti:トルク係数を正弦波近似する場合の実行値(ktiukew=2の場合のみ有効であり、単位は(N・m/A))。
【0063】
ktiukew:速度起電力係数とトルク係数の与え方を示す。1は外部ファイルからであり、2は内部で定数(線間kewと線間kti)により計算する。
【0064】
初期温度:巻線抵抗の初期温度(単位は(℃))。
【0065】
使用温度:巻線抵抗の使用時の温度(単位は(℃))。
【0066】
PWMon/off:PWMを行うか行わないかを示しており、1は行う。2は行わない。
【0067】
PWMon時間: PWMの周期のうち通電している時間(単位は(s))。
【0068】
PWM周期:PWMの周期(単位は(s))。
【0069】
md135pwm:PWMをかける場合、通電モードを1,3,5とした場合に上下どの素子を入切するかを示す。1は上下とも入り。2は上切,下入。3は上入,下切。
【0070】
md246pwm:PWMをかける場合、通電モード2,4,6とした場合に上下どの素子を入切するかを示す。1は上下とも入り。2は上切,下入。3は上入,下切。
【0071】
L変動:インダクタンス変動方法を指定するもの(0→off,1→on(sin),2→on(ary))。
0…線間Lの値のみを読み込み、他の値は無視する。Lamp,線間平均M,線間変動Mの値は無視される。
1…(線間L+線間平均M)を一定値とし、(Lamp+線間変動M)が正弦波状に変化するとして与える。
2…インダクタンス列を外部ファイル(デフォルトはlary.csv)から読み込む。L変動,Lamp,線間平均M,線間変動Mの値は無視される。角度のみを考慮したインダクタンス列となる。この場合のlary.csvの例を下記の[表2]に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
3…インダクタンス列を外部ファイル(デフォルトはlary.csv)から読み込む。L変動,Lamp,線間平均M,線間変動Mの値は無視される。角度と電流を考慮したインダクタンス列となる。この場合のlary.csvの例を下記の[表3]に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
Lamp(単位は(H)):L変動が1のときに有効な値であり、自己インダクタンスは下記[数3]にて与えられる。
【0076】
【数3】
【0077】
[数3]において、θは回転子角度,sinは正弦波である。また、自己インダクタンスの一定値分L0を線間Lとして与え、自己インダクタンスの変動分MAをLampとして与える。
【0078】
線間平均M(単位は(H)),線間変動M(単位は(H)):L変動が1のときに有効な値である。相互インダクタンスは下記[数4]で与えられものとする。
【0079】
【数4】
【0080】
[数4]において、θは回転子角度,sinは正弦波である。また、相互インダクタンスの一定値分M0を線間平均Mとして与え、相互インダクタンスの変動分MAを線間変動として与える。
【0081】
電源選択:電源を指定するものであり、1を選択した場合はE1の値を直流電源とし、2を選択した場合はE1の値を交流正弦波の実行値とする。
【0082】
コンデンサ容量:単位は(F)
抵抗:単位は(Ω)
交流電源周波数:単位は(Hz)
交流電源投入位相:単位は(電気degree)
上記パラメータは、前記電源選択で2を選択したときに有効であり、電源はコンデンサインプット型とする。図5に電源選択で2を選択したときの概念図を示す。
【0083】
L+k・M選択(L+M(1),L+2M(2)):電圧平衡方程式中でL+MとL+2Mの係数がある。簡略化して扱うためにどちらかに統一する。
1…L+Mに統一する。
2…L+2Mに統一する。
【0084】
以上記載したパラメータを入力することによって、図4に示すシミュレーションは実行される。また、図4に示す速度起電力係数を電磁界解析によって算出した結果を図6に示す。
【0085】
図6(a)は埋め込み磁石型同期電動機(IPM)の速度起電力係数をグラフ化したものであり、同図(b)は表面磁石型同期電動機(SPM)の速度起電力係数をグラフ化したものである。
【0086】
[従来の技術]欄で説明した正弦波の合成関数から速度起電力係数を求めた場合、図6に示すような波形を得ることは困難であり、本発明の優位性を示すグラフであるといえる。なお、トルク係数については、前記速度起電力係数と同一値にできることは公知である。
【0087】
図7は、本発明に係る電磁界解析によって算出したインダクタンス列を示す一例であり、前述の[表3]と対応している。即ち、図7は角度と電流をパラメータとしたインダクタンス列を電磁界解析によって算出し、それをグラフ化したものであり、電流値によって前記インダクタンス値が異なることがわかる。
【0088】
そして、前記シミュレーションを行う場合は、電磁界解析によって算出したインダクタンス(図7)をテーブル化して利用したり、前記インダクタンスを一定としてシミュレーションを行う。
【0089】
図8は、前記シミュレーションの結果、出力される波形の一例である。同図(a)に電流−時間波形を、同図(b)に電圧−時間波形を示している。図8に示す波形が、オシロスコープ等を用いて実測する場合と非常に近い波形イメージであることがわかる。
【0090】
図9は電流−時間波形について、これを実測した場合を(a)に、また、電磁界解析によって算出した速度起電力係数とトルク係数を用いて本発明のシミュレーションを実行した場合を同図(b)に、さらに、[従来の技術]欄に記載した正弦波の合成関数から速度起電力係数とトルク係数を求めた場合を同図(c)に示している。
【0091】
図9(a)〜(c)を互いに比較すると、本発明の電磁界解析を利用したシミュレーションによる電流−時間波形が、正弦波の合成関数から速度起電力係数とトルク係数を求めた場合に比べて、より実測波形に近似していることは明らかである。
【0092】
つまり、図9は、本発明のシミュレーション方法によれば、従来技術と比較して、より精度の高い(実測値に近い)シミュレーションが可能であることを示している。
【0093】
つづいて、本発明のシミュレーションによってモータの鉄損を算出する場合について説明する。前記鉄損を算出する場合は、まず最初に、前記シミュレーションによって算出した電流のピーク値にシミュレーションの対象であるモータのコイル巻数を乗じることによって、磁界の値を求める。
【0094】
次に、モータコア材(ケイ素鋼板や焼結フェライト等)のヒステリシスカーブ(本実施例では、図10に直線で近似した簡略的なヒステリシスカーブを例示するが、高次方程式を用いて、より精度の高いヒステリシスカーブに置き換えられることは当然である)上でその磁界に対応する最大磁束密度を読み取る。この最大磁束密度の値が判明すれば、下記の[数5]によって鉄損を容易に算出することができる。
【0095】
【数5】
【0096】
以上説明したように、本発明のモータとその駆動回路のシミュレーション方法によれば、定常時のみならず過渡時におけるモータ動作をも確実に把握することができるとともに、その精度は、従来の正弦波の合成関数を利用したシミュレーション方法に比較して、より精度の高い解析を可能とした。
【0097】
【発明の効果】
モータと駆動回路の両方を回路方程式で記述することにより、モータの瞬時および過渡時の波形をともに把握することができる。
【0098】
モータと駆動回路の両方を回路方程式で記述することにより、複雑なリンク手段を予め用意する必要は一切なく、シミュレーションのプログラムを簡易に構成することができる。
【0099】
電磁界解析によって算出した速度起電力係数とトルク係数を利用してモータのシミュレーションを実行することにより、より精度の高いシミュレーションを実現することができる。
【0100】
シミュレーションの対象となるモータ毎に回路モデル(回路方程式)を予め作成し、対象が変更される都度、複数の回路モデル(回路方程式)を切り替えて、対象となるモータに特化した回路モデルを選択するので、モータと駆動回路の両方を回路モデルで記述しているにもかかわらず、そのシミュレーション時間を大幅に短縮することができる。
【0101】
モータの鉄損を容易に算出することができるとともに、コンデンサ容量,抵抗値,交流電源周波数,交流電源の投入位相のデータを基に、交流整流とコンデンサを具備したモータのシミュレーションを実現可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシミュレーション方法を実現する要素を記載した説明図である。
【図2】前記シミュレーション方法を適用するモータの一例を示す構成図である。
【図3】前記モータの回路モデルを示す回路図である。
【図4】前記シミュレーションの手順を示す模式図である。
【図5】前記シミュレーションの入力パラメータで電源選択を2としたときの概念図である。
【図6】(a)は埋め込み磁石型同期電動機(IPM)の速度起電力係数を示すグラフであり、(b)は表面磁石型同期電動機(SPM)の速度起電力係数を示すグラフである。
【図7】電磁界解析により算出したインダクタンス列を示すグラフである。
【図8】(a)は、前記シミュレーションの結果として出力される電流−時間の関係を示すグラフであり、(b)は電圧−時間の関係を示すグラフである。
【図9】(a)は、電流−時間の関係についての実測値を示すグラフであり、(b)は電磁界解析によって算出した速度起電力係数とトルク係数を用いて前記シミュレーションを行った場合の電流−時間の関係を示すグラフであり、(c)は正弦波の合成関数から速度起電力係数とトルク係数を求めた場合の電流−時間の関係を示すグラフである。
【図10】モータコア材のヒステリシスカーブである。
【符号の説明】
1 モータ本体
2 インバータ回路
3 制御回路
4 電源
Claims (6)
- モータとその駆動回路を回路方程式で記述し、電磁界解析にて算出した瞬時の速度起電力係数とトルク係数を利用して、定常時と過渡時のモータの動作解析を行うことを特徴とするモータとその駆動回路のシミュレーション方法。
- モータとその駆動回路を回路方程式で記述し、電磁界解析にて算出したインダクタンス列を利用して、定常時と過渡時のモータの動作解析を行うことを特徴とするモータとその駆動回路のシミュレーション方法。
- モータとその駆動回路を回路方程式で記述し、電磁界解析にて算出した瞬時の速度起電力係数とトルク係数、および、インダクタンス列を利用して、定常時と過渡時のモータの動作解析を行うことを特徴とするモータとその駆動回路のシミュレーション方法。
- 請求項1ないし3において、前記モータとその通電状況にそれぞれ対応する複数の回路モデル(回路方程式)を備え、前記モータに応じて使用する回路モデルを択一的に切り替えて実行することを特徴とするモータとその駆動回路のシミュレーション方法。
- 請求項1ないし4において、算出した瞬時電流の最大値から前記モータで発生する鉄損のシミュレーションを行うことを特徴とするモータとその駆動回路のシミュレーション方法。
- 請求項1ないし5において、コンデンサ容量と抵抗値、交流電源周波数、交流電源の投入位相に係るデータに基づいて、交流整流とその後段に挿入されるコンデンサを考慮したシミュレーションを可能としたことを特徴とするモータとその駆動回路のシミュレーション方法。
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- 2003-01-29 JP JP2003019651A patent/JP2004236392A/ja active Pending
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