JP2004235588A - R−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末 - Google Patents

R−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた磁気特性を有することに加え、樹脂バインダとともにコンパウンドとした際にその流動性の改善を図ることができるR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末を提供すること。
【解決手段】急冷合金薄帯を予め粉砕した後、得られた粉砕物を結晶化熱処理してから高速気流中衝撃法によりさらに粉砕し、全体の80質量%以上が粒径が150μm以下の粒子とした、酸素含有量が0.2質量%以下の磁石粉末である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた磁気特性を有することに加え、樹脂バインダとともにコンパウンドとした際にその流動性の改善を図ることができるR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】
NdFe14B相などの硬磁性相と、鉄基硼化物相(Fe23相やFeB相など)やα−Fe相などの軟磁性相とで構成されるNd−Fe−B系ナノコンポジット磁石に代表されるR(希土類金属元素)−Fe−B系ナノコンポジット磁石は、硬磁性相と軟磁性相とがナノメートルスケールの微結晶相として混在して磁気的に結合した組織を有する磁石であり、優れた磁気特性を有することで注目を集めている。R−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末の代表的な製造方法としては、単ロール法などのメルトスピニング技術により、溶融した原料合金から非晶質急冷合金薄帯を得、得られた非晶質急冷合金薄帯を粉砕して非晶質急冷合金粉末とした後、これを結晶化熱処理して当該粉末を構成する粒子に対して微結晶を析出させるという方法がある。このようにして得られたR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末は、主に樹脂バインダなどと混練してコンパウンドとされ、射出成形や押出成形により所定形状を有するボンド磁石とされる。
【0003】
一般に、ボンド磁石を製造するに際して射出成形や押出成形を行う場合、コンパウンドの流動性はできるだけ高いことが望ましい。コンパウンドの流動性が低いと、金型内におけるコンパウンドの流路に制約が生じるので金型設計が制限され、複雑形状を有するボンド磁石の製造が困難になる。射出成形や押出成形を高温下で行えばコンパウンドの流動性は改善されるが、磁石粉末が酸化されて磁気特性が低下する恐れがある。従って、高温化での射出成形や押出成形は望ましいものではない。
【0004】
以上のような事情の下、R−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末の流動性の改善を図るため、例えば、特許文献1において、当該粉末を構成する粒子の形状を扁平なものから球状に近いものとすべく、厚みが80μm〜300μmの急冷合金薄帯を結晶化熱処理した後、ピンディスクミルなどの粉砕機を用いてこれを粉砕し、平均粒径が50μm〜300μmで長軸方向サイズに対する短軸方向サイズの比が0.3〜1.0の粒子とする方法が記載されている。希土類系磁石粉末の流動性を高めるために粉末形状を球形化するという思想は古くから存在し、例えば、特許文献2にも記載されている。また、特許文献3には、希土類系磁石粉末に対して機械的粉砕を行い、粉末形状を球状化してその流動性を高める方法が記載されており、機械的粉砕の具体的方法としてメカノフィージョンシステムが推奨され、その他の方法として高速気流中衝撃法(ハイブリダイゼーションシステム)が例示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−244107号公報
【特許文献2】
特開平1−204401号公報
【特許文献3】
特開2001−230110号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、特許文献1に記載された方法、即ち、急冷合金薄帯をピンディスクミルなどの粉砕機を用いて行う粉砕方法をR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末の製造に適用しても、こうして得られる磁石粉末では、樹脂バインダとともにコンパウンドとした際にその流動性の改善を必ずしも行えないことや、射出成形時にノズルなどの磨耗を起こしやすいことを見出した。
そこで本発明は、優れた磁気特性を有することに加え、樹脂バインダとともにコンパウンドとした際にその流動性の改善を図ることができるR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、さらに種々の検討を行った結果、特許文献1に記載された、急冷合金薄帯をピンディスクミルなどの粉砕機を用いて行う粉砕方法に代えて、特許文献3に記載された高速気流中衝撃法による粉砕方法を採用した場合、驚くべきことに粉末形状が必ずしも球状化されていないにもかかわらず、優れた磁気特性を有することに加え、樹脂バインダとともにコンパウンドとした際にその流動性の改善を図ることができるR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末が得られることを知見した。
【0008】
本発明は上記の知見に基づいてなされたものであり、本発明のR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末は、請求項1記載の通り、急冷合金薄帯を予め粉砕した後、得られた粉砕物を結晶化熱処理してから高速気流中衝撃法によりさらに粉砕し、全体の80質量%以上が粒径が150μm以下の粒子とした、酸素含有量が0.2質量%以下の磁石粉末である。
また、請求項2記載の磁石粉末は、請求項1記載の磁石粉末において、軟磁性相が主として鉄基硼化物相で構成されてなる磁石粉末である。
また、請求項3記載の磁石粉末は、請求項1または2記載の磁石粉末において、平均粒径が25μm〜50μmの粒子で構成されてなる磁石粉末である。
また、請求項4記載の磁石粉末は、請求項1乃至3のいずれかに記載の磁石粉末において、急冷合金薄帯がストリップキャスト法により作製されたものである磁石粉末である。
また、請求項5記載の磁石粉末は、請求項1乃至4のいずれかに記載の磁石粉末において、結晶化熱処理を500℃〜850℃で行ったものである磁石粉末である。
また、請求項6記載の磁石粉末は、請求項1乃至5のいずれかに記載の磁石粉末において、高速気流中衝撃法による粉砕をロータ周速度が50m/秒〜70m/秒で30秒〜4分行ったものである磁石粉末である。
また、本発明のコンパウンドは、請求項7記載の通り、請求項1記載のR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末と樹脂バインダとからなるコンパウンドである。
また、本発明のボンド磁石は、請求項8記載の通り、請求項7記載のコンパウンドを用いて所定形状に成形されてなるボンド磁石である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末は、急冷合金薄帯を予め粉砕した後、得られた粉砕物を結晶化熱処理してから高速気流中衝撃法によりさらに粉砕し、全体の80質量%以上が粒径が150μm以下の粒子とした、酸素含有量が0.2質量%以下の磁石粉末である。本発明のR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末は、優れた磁気特性を有することに加え、樹脂バインダとともにコンパウンドとした際にその流動性の改善を図ることができる。
【0010】
本発明のR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末の原料となる急冷合金薄帯(薄帯が割れて薄片になったものや急冷合金作製時に薄片状の合金となったものなども含む)の組成としては、ナノコンポジット組織が得られる組成であれば特段限定されないが、例えば、国際公開第02/030595号パンフレットに記載の、Fe100−x−y−z(但し、RはPr、Nd、DyまたはTbの1種または2種以上、QはBまたはCの1種または2種、MはCo、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、Pt、Au、Pbの1種または2種以上で、式中のx、y、zがそれぞれ1原子%≦x<6原子%、15原子%≦y≦30原子%、0原子%≦z≦7原子%)で表されるものや、特開2002−175908号公報に記載の、(Fe1−m100−x−y−z(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の金属元素、QはBおよびCからなる群から選択された1種以上の元素、RはLaおよびCeを実質的に含まない1種以上の希土類金属元素、MはTi、Zr、およびHfからなる群から選択された金属元素であって、Tiを必ず含む少なくとも1種の金属元素で、式中のx、y、z、mがそれぞれ10原子%<x≦20原子%、6原子%≦y<10原子%、0.1原子%≦z≦12原子%、0≦m≦0.5)で表されるものが挙げられる。
【0011】
以上のような組成を有する急冷合金薄帯は、ストリップキャスト法やメルトスピニング法などの液体急冷法で作製することができるが、薄帯の厚みが30μmよりも薄いと、高速気流中衝撃法による粉砕によって得られる磁石粉末を構成する粒子が小さくなりすぎることで酸化されやすくなり、樹脂バインダとともにコンパウンドにする際やコンパウンドを用いた射出成形時などに磁石粉末の酸化による磁気特性の低下が顕著となるためや、液体急冷法での急冷速度が速すぎることにより結晶化の制御が困難になるため、結果的に磁気特性に優れたボンド磁石が得られない恐れがある。一方、薄帯の厚みが300μmよりも厚いと、液体急冷法での急冷速度が十分ではないために結晶粒が粗大化して、結果的に磁気特性に優れたボンド磁石が得られない恐れがある。従って、急冷合金薄帯の厚みは30μm〜300μmとすることが望ましい。なお、急冷合金薄帯はその一部が結晶化しているものであってもよい。液体急冷法の中でもストリップキャスト法は、回転する冷却ロールに合金溶湯を注いで薄帯を作製する方法であり、このような比較的厚みのある薄帯を作製するのに適している。ストリップキャスト法により作製された厚みが30μm〜300μmの急冷合金薄帯は、非晶質であるか、または硬磁性層と軟磁性層が150nm以下の平均結晶粒径からなる微細結晶質から構成されるため、ランダムな方向に粉砕されやすい性状を有する。従って、パワーミルなどの粉砕機を用いた粉砕により、等軸的な形状を有する粉砕物が得られるので、その後の高速気流中衝撃法による粉砕を効率よく行うことができる。ストリップキャスト法の好適な具体例としては、特許第3297676号公報に記載されているような、傾斜した案内板(シュート)上に合金溶湯を注ぎ、案内板を流れる溶湯を案内板と冷却ロールの接触領域にて冷却ロールに供給する方法や、特願2002−270271号明細書に記載されているような、案内板を流れる溶湯を管状孔を介して冷却ロールとの接触領域に供給する方法などが挙げられる。
【0012】
急冷合金薄帯は、例えば、パワーミルやハンマーミルやピンディスクミルなどの粉砕機を用いて予め粉砕される。その後、得られた粉砕物を結晶化熱処理してから高速気流中衝撃法によるさらなる粉砕を行う。パワーミルなどの粉砕機を用いて行う急冷合金薄帯の粉砕は、その後の高速気流中衝撃法による粉砕を効率よくしかも安定に行うことができる大きさになるまで行えばよいが、具体的には、3000μm以下になるまで行うことが望ましく、1000μm以下になるまで行うことがより望ましい。
【0013】
急冷合金薄帯を予め粉砕して得られた粉砕物の結晶化熱処理は、好適な磁気特性を発現するナノコンポジット組織を形成するために行うものであり、500℃〜850℃で行うことが望ましい。500℃よりも低温であると結晶化が十分に進行しなかったり、結晶化に長時間を要したりする恐れがある一方、850℃よりも高温であると結晶粒が粗大化して、好適な磁気特性が得られない恐れがある。
【0014】
以上のようにして結晶化熱処理を施された粉砕物を高速気流中衝撃法により全体の80質量%以上が粒径が150μm以下の粒子で構成されてなる磁石粉末となるまでさらに粉砕する。このように規定するのは、粒径が150μm以下の粒子が磁石粉末全体の80質量%未満である場合には、樹脂バインダとともにコンパウンドとしてもその流動性の改善を行えない恐れが高いからである。高速気流中衝撃法は、装置内に投入した粉砕物を高速回転により分散させながら粉砕物同士の相互作用を含む衝撃力により、圧縮、摩擦、せん断力などの機械的作用を繰り返してさらに粉砕するものである。高速気流中衝撃法による粉砕はロータ周速度が50m/秒〜70m/秒で30秒〜4分行うことが望ましい。ロータ周速度が50m/秒未満であったり処理時間が30秒未満であると粉砕を十分に行うことができない恐れがある一方、ロータ周速度が70m/秒を超えたり処理時間が4分を超えると粉砕が過度に進行して得られる磁石粉末の粒子が小さくなりすぎることで酸化されやすくなる恐れや、流動性の改善に適した幅広の粒度分布を有する磁石粉末を得ることができない恐れがある。なお、結晶化熱処理を施した粉砕物をパワーミルなどの粉砕機を用いて粒径が150μm以下の粒子が磁石粉末全体の80質量%以上になるまで粉砕した後、高速気流中衝撃法によりさらに粉砕するようにしてもよい。
【0015】
なお、高速気流中衝撃法による粉砕の際、急冷合金薄帯を粉砕して得られた粉砕物とともに窒化硼素などの無機質成分を装置内に投入し、粉砕物のさらなる粉砕と同時に当該成分による粒子の表面被覆を行うことで粒子に種々の特性を付与するようにしてもよい。また、装置内にシラン系やチタネート系のカップリング剤をスプレーしたりするなどしてカップリング剤を粒子の表面に吸着させることで、粒子の樹脂バインダなどとの接着性を高めるようにしてよい。
【0016】
本発明のR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末は、その酸素含有量を0.2質量%以下とする。酸素含有量が0.2質量%を超えるとその磁気特性が急激に低下するという特徴を有する。酸素含有量が0.2質量%以下の磁石粉末は、磁石粉末を構成する粒子の平均粒径を25μm以上に設定することで容易に得ることができる。平均粒径が25μm未満の粒子で構成されてなる磁石粉末では、酸化されやすい小さな粒子を多く含むので、酸素含有量を0.2質量%以下にすることができない恐れがある。従って、磁石粉末を構成する粒子の平均粒径の下限は25μmであることが望ましい。一方、平均粒径の上限は50μmであることが望ましい。平均粒径が50μmを超えると樹脂バインダとともにコンパウンドとしてもその流動性の改善を十分に行えない恐れがある。よって、磁石粉末は、平均粒径が25μm〜50μmの粒子で構成されてなることが望ましいが、平均粒径が30μm〜45μmの粒子で構成されてなることがより望ましい。
【0017】
以上のようにして製造される本発明のR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末は、例えば、自体公知の方法に基づき、樹脂バインダなどと混練してコンパウンドとされ、射出成形や押出成形により所定形状を有するボンド磁石とされる。なお、当該粉末は、圧縮成形により製造されるボンド磁石や熱間成形により製造されるバルク磁石の原料に用いてもよい。
【0018】
【実施例】
本発明を以下の実施例と比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
【0019】
(実施例1)
工程1:
Nd:8.5原子%、B:11.0原子%、Ti:2.5原子%、C:1.0原子%、Co:2.0原子%、残部Feの合金組成になるように配合した原料5kgを坩堝内に投入した後、50kPaに保持したAr雰囲気中にて高周波誘導加熱により合金溶湯を得た。
ストリップキャスト法を用いて得られた合金溶湯から急冷合金薄帯を作製した。具体的には、坩堝を傾転するすることによって、合金溶湯をシュートを介して、ロール表面速度15m/秒にて回転する純銅製の冷却ロール(直径250mm)上に直接供給し、合金溶湯を急冷した。なお、ロールに溶湯を供給する際には、シュート上で溶湯を2条に分流し、その際の溶湯の供給速度は坩堝の傾転角を調整することにより、1条あたり1.3kg/分に調整した。
得られた急冷合金薄帯について、鋳片100個の厚みをマイクロメータで測定した結果、薄帯の平均厚みは85μmで、その標準偏差σは11μmであった。得られた急冷合金薄帯をパワーミルを用いて粉砕し、目開き850μmのふるいを通過させて大きさが850μm以下の粉砕物を回収した。得られた粉砕物に対し、これを長さ500mmの均熱帯を有するフープベルト炉を用い、Ar流気下、ベルト送り速度100mm/分にて720℃に保持した炉内へ粉末を20g/分の供給速度で投入することによって結晶化熱処理を施した。
以上のようにして結晶化熱処理を施した粉砕物の結晶構造を粉末X線回折法を用いて解析した結果、硬磁性相としてのNdFe14B相と、軟磁性相としてのFe23相やFeB相などの鉄基硼化物相およびわずかのα−Fe相から構成されるナノコンポジット組織を有していることを確認することができた。
【0020】
工程2:
工程1で得られた結晶化熱処理を施した粉砕物を高速気流中衝撃法によりさらに粉砕して磁石粉末を得た。高速気流中衝撃法による粉砕は、装置としてハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)を用い、窒素雰囲気下、ロータ周速度50m/秒で2分間行った。装置内への粉砕物の1回の処理量は100gとした。
得られた磁石粉末50gをJIS Z8801の標準ふるいを用いて分級した結果、粒径が150μm以下の粒子が磁石粉末全体の99質量%を占めていた。また、レーザー回折型粒度分布測定装置(堀場製作所社製SALD−2000:以下同じ)によって求めた平均粒径は37.6μmであった。この磁石粉末の酸素含有量を酸素窒素分析装置(堀場製作所社製EMGA−550W:以下同じ)で評価した結果、0.16質量%であった。また、この磁石粉末の磁気特性は、振動試料型磁力計(東英工業社製VSM−5−20:以下同じ)で測定した(BH)maxで処理前101.2kJ/m、処理後99.3kJ/mであり、処理の前後でほとんど変わらなかった。JIS Z8801の標準ふるいを用いて分級して得た粒径が38μm〜53μmの粒子の形状を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を図1に示す。
【0021】
工程3:
工程2で得られた磁石粉末92質量%、チタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ社製KR−TTS)1質量%、ステアリン酸アミド0.55質量%、熱可塑性樹脂としてナイロン12樹脂粉末6.45質量%を混合した後、ラボプラストミルを用いて、回転数80rpm、混錬温度230℃で10分間混錬を行い、コンパウンドを作製した。
得られたコンパウンドの流動性を評価するために、JIS K7210 B法を用いて、メルトフローレート(MFR)を測定した。ただし、荷重は15kgとし、270℃で測定を行った。その結果、工程2で得られた磁石粉末を用いて作製したコンパウンドのMFRは390g/10分と極めて優れた流動性を示した。
【0022】
工程4:
工程3で得られたコンパウンドを用いて、射出温度230℃で射出成形を行ったところ、比較的低い射出温度であるにもかかわらず、直径15mm×高さ5mmのボンド磁石を安定して製造することができた。
【0023】
(比較例1)
実施例1の工程1と同様にして得られた結晶化熱処理を施した粉砕物をピンディスクミルを用いてさらに粉砕して磁石粉末を得た。
得られた磁石粉末50gをJIS Z8801の標準ふるいを用いて分級した結果、粒径が150μm以下の粒子が磁石粉末全体の98質量%を占めていた。また、レーザー回折型粒度分布測定装置によって求めた平均粒径は54.8μmであった。この磁石粉末の酸素含有量を酸素窒素分析装置で評価した結果、0.10質量%であった。
こうして得られた磁石粉末を用いて実施例1の工程3と同様にしてコンパウンドを作製した。得られたコンパウンドのMFRを実施例1の工程3に記載の方法で測定したところ、270g/10分であった。
比較例1は特許文献1に記載の方法に対応するものであり、実施例1の磁石粉末は、比較例1の磁石粉末よりも、樹脂バインダとともにコンパウンドとした際に流動性が約1.5倍優れていた。特許文献3には、希土類系磁石粉末に対して機械的粉砕を行い、粉末形状を球状化してその流動性を高める方法が記載されており、機械的粉砕の具体的方法として高速気流中衝撃法が例示されている。しかしながら、本発明のR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末については図1を見る限りにおいて粉末形状が球状化されておらず、樹脂バインダとともにコンパウンドとした際に流動性の改善を図ることができたのは、少なくとも特許文献3に記載された粉末形状の球形化にだけ依拠するのではないことがわかった。これはナノコンポジット組織を構成する軟磁性相である鉄基硼化物相(Fe23相など)が非常に硬いというナノコンポジット磁石粉末特有の性状に起因しているものと考えられる。また、図1から明らかなように、個々の粒子の表面には多数の微細粒子が付着しており、このような粒子の表面に付着した微細粒子の存在も流動性の改善に寄与しているものと考えられる。
【0024】
(比較例2)
実施例1の工程1と同様にして得られた急冷合金薄帯をパワーミルを用いて粉砕し、目開き850μmのふるいを通過させて大きさが850μm以下の粉砕物を回収した。
得られた粉砕物を結晶化熱処理を施さずに実施例1の工程2と同様にして高速気流中衝撃法によりさらに粉砕した。
得られた粉末に対し、これを長さ500mmの均熱帯を有するフープベルト炉を用い、Ar流気下、ベルト送り速度100mm/分にて720℃に保持した炉内へ粉末を20g/分の供給速度で投入することによって結晶化熱処理を施した。
得られた磁石粉末50gをJIS Z8801の標準ふるいを用いて分級した結果、粒径が150μm以下の粒子が磁石粉末全体の99質量%を占めていた。また、レーザー回折型粒度分布測定装置によって求めた平均粒径は41.3μmであった。この磁石粉末の酸素含有量を酸素窒素分析装置で評価した結果、0.10質量%であった。しかしながら、この磁石粉末の磁気特性は、振動試料型磁力計で測定した(BH)maxで81.5kJ/mであり、この磁石組成で期待される特性(約100kJ/m)を大きく下回った。従って、比較例2より、高速気流中衝撃法による粉砕を行った後に結晶化熱処理を施した場合には、得られる磁石粉末の磁気特性が大きく低下することがわかった。
【0025】
(実施例2〜実施例5および比較例3,比較例4)
実施例1の工程1と同様にして得られた結晶化熱処理を施した粉砕物を6種類の条件にて高速気流中衝撃法によりさらに粉砕して磁石粉末を得た。得られた磁石粉末50gをJIS Z8801の標準ふるいを用いて分級した結果、いずれの条件にて行った場合でも粒径が150μm以下の粒子が磁石粉末全体の98質量%以上を占めていた。6種類の粉砕条件と得られた磁石粉末についてのレーザー回折式粒度分布測定装置で求めた平均粒径、酸素窒素分析装置で評価した酸素含有量、振動試料型磁力計で測定した(BH)max、処理前に対する処理後の(BH)max低下率を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 2004235588
【0027】
表1から明らかなように、酸素含有量が0.2質量%以下の磁石粉末(実施例2〜実施例5)では、処理前(101.2kJ/m)に対する処理後の(BH)max低下率が3%以下と優れた値を示した。また、このような酸素含有量が0.2質量%以下の磁石粉末は、磁石粉末を構成する粒子の平均粒径を25μm以上に設定することで容易に得られることがわかった。
【0028】
(実施例6〜実施例8および比較例5,比較例6)
工程1:
Nd:4.5原子%、B:18.5原子%、Cr2.0原子%、Co:2.0原子%、残部Feの合金組成になるように配合した原料5kgを坩堝内に投入した後、50kPaに保持したAr雰囲気中にて高周波誘導加熱により合金溶湯を得た。
国際公開第02/030595号パンフレットに記載のストリップキャスト法を用いて、得られた合金溶湯から急冷合金薄帯を作製した。具体的には、雰囲気圧力8kPaの条件下で、坩堝を傾転するすることによって、合金溶湯をシュートを介して、ロール表面速度8m/秒にて回転する純銅製の冷却ロール上に直接供給し、合金溶湯を急冷した。なお、ロールへの溶湯の供給速度は坩堝の傾転角を調整することにより、8kg/分に調整した。
得られた急冷合金薄帯について、鋳片100個の厚みをマイクロメータで測定した結果、薄帯の平均厚みは90μmであった。得られた急冷合金薄帯をパワーミルを用いて粉砕し、目開き850μmのふるいを通過させて大きさが850μm以下の粉砕物を回収した。得られた粉砕物に対し、これを長さ500mmの均熱帯を有するフープベルト炉を用い、Ar流気下、ベルト送り速度100mm/分にて670℃に保持した炉内へ粉末を20g/分の供給速度で投入することによって結晶化熱処理を施した。
以上のようにして結晶化熱処理を施した粉砕物の結晶構造を粉末X線回折法を用いて解析した結果、硬磁性相としてのNdFe14B相と、軟磁性相としてのFeB相およびわずかのα−Fe相から構成されるナノコンポジット組織を有していることを確認することができた。また、この粉砕物の(BH)maxを振動試料型磁力計で測定したところ73.2kJ/mであった。
【0029】
工程2:
工程1で得られた結晶化熱処理を施した粉砕物を5種類の条件にて高速気流中衝撃法によりさらに粉砕して磁石粉末を得た。得られた磁石粉末50gをJISZ8801の標準ふるいを用いて分級した結果、いずれの条件にて行った場合でも粒径が150μm以下の粒子が磁石粉末全体の98質量%以上を占めていた。5種類の粉砕条件と得られた磁石粉末についてのレーザー回折式粒度分布測定装置で求めた平均粒径、酸素窒素分析装置で評価した酸素含有量、振動試料型磁力計で測定した(BH)max、処理前に対する処理後の(BH)max低下率を表2に示す。
【0030】
【表2】
Figure 2004235588
【0031】
表2から明らかなように、酸素含有量が0.2質量%以下の磁石粉末(実施例6〜実施例8)では、処理前(73.2kJ/m)に対する処理後の(BH)max低下率が10%以下と優れた値を示した。また、このような酸素含有量が0.2質量%以下の磁石粉末は、磁石粉末を構成する粒子の平均粒径を25μm以上に設定することで容易に得られることがわかった。実施例7で得られた磁石粉末を用いて実施例1の工程3と同様にして作製したコンパウンドのMFRを実施例1の工程3に記載の方法で測定したところ、350g/10分と極めて優れた流動性を示した。
【0032】
(実施例9〜実施例12および比較例7)
実施例6〜実施例8および比較例5,比較例6の工程1で得られた結晶化熱処理を施した粉砕物を、ピンディスクミルを用いてさらに粉砕して磁石粉末を得た。
得られた磁石粉末50gをJIS Z8801の標準ふるいを用いて分級した結果、粒径が150μm以下の粒子が磁石粉末全体の98質量%を占めていた。また、レーザー回折型粒度分布測定装置によって求めた平均粒径は53.2μmであった。この磁石粉末の酸素含有量を酸素窒素分析装置で評価した結果、0.10質量%であった。この粉砕粉の(BH)maxを振動試料型磁力計で測定したところ72.9kJ/mであった。
このようにして得られた粉砕粉を5種類の条件にて高速気流中衝撃法によりさらに粉砕して磁石粉末を得た。5種類の粉砕条件と得られた磁石粉末についてのレーザー回折式粒度分布測定装置で求めた平均粒径、酸素窒素分析装置で評価した酸素含有量、振動試料型磁力計で測定した(BH)max、処理前に対する処理後の(BH)max低下率を表3に示す。
【0033】
【表3】
Figure 2004235588
【0034】
表3から明らかなように、酸素含有量が0.2質量%以下の磁石粉末(実施例9〜実施例12)では、処理前(72.9kJ/m)に対する処理後の(BH)max低下率が10%以下と優れた値を示した。また、このような酸素含有量が0.2質量%以下の磁石粉末は、磁石粉末を構成する粒子の平均粒径を25μm以上に設定することで容易に得られることがわかった。
【0035】
(参考例1)
実施例7と同様にして得られた急冷合金薄帯をパワーミルを用いて粉砕し、目開き850μmのふるいを通過させて大きさが850μm以下の粉砕物を回収した。
得られた粉砕物を結晶化熱処理を施さずに高速気流中衝撃法によりさらに粉砕した。高速気流中衝撃法による粉砕は、装置としてハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)を用い、窒素雰囲気下、ロータ周速度60m/秒で1分間行った。装置内への粉砕物の1回の処理量は100gとした。得られた粉末のレーザー回折型粒度分布測定装置によって求めた平均粒径は180.0μmであった。こうして得られた粉末を用いて実施例1の工程3と同様にしてコンパウンドを作製した。得られたコンパウンドのMFRを実施例1の工程3に記載の方法で測定したところ、20g/10分であり流動性に劣るものであった。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた磁気特性を有することに加え、樹脂バインダとともにコンパウンドとした際にその流動性の改善を図ることができるR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の工程2で得られた粒径が38μm〜53μmの粒子の形状をSEMで観察した結果を示す図である。

Claims (8)

  1. 急冷合金薄帯を予め粉砕した後、得られた粉砕物を結晶化熱処理してから高速気流中衝撃法によりさらに粉砕し、全体の80質量%以上が粒径が150μm以下の粒子とした、酸素含有量が0.2質量%以下のR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末。
  2. 軟磁性相が主として鉄基硼化物相で構成されてなる請求項1記載の磁石粉末。
  3. 平均粒径が25μm〜50μmの粒子で構成されてなる請求項1または2記載の磁石粉末。
  4. 急冷合金薄帯がストリップキャスト法により作製されたものである請求項1乃至3のいずれかに記載の磁石粉末。
  5. 結晶化熱処理を500℃〜850℃で行ったものである請求項1乃至4のいずれかに記載の磁石粉末。
  6. 高速気流中衝撃法による粉砕をロータ周速度が50m/秒〜70m/秒で30秒〜4分行ったものである請求項1乃至5のいずれかに記載の磁石粉末。
  7. 請求項1記載のR−Fe−B系ナノコンポジット磁石粉末と樹脂バインダとからなるコンパウンド。
  8. 請求項7記載のコンパウンドを用いて所定形状に成形されてなるボンド磁石。
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