JP2004225890A - スプリングシート固定構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】スプリングシートの抜け防止及び回転防止を図ることができるスプリングシート固定構造を提供する。
【解決手段】油圧緩衝器2におけるスプリングシート6の係止部8と係止リング5との間に、ゴム製部材12を介在し、係止部8及び係止リング5に対して弾性力を作用させるようにした。係止部8と弾性体との間には大きな面摩擦力が発揮されるので、スプリングシート6は、ゴム製部材12を介して係止リング5ひいてはシリンダ3に対して確実に位置決めされて大きな力(ばね力ひいては面摩擦力)で保持される。このため、スプリング11が装着されていない状態の油圧緩衝器2の搬送に際し、スプリングシート6が抜けたり、回転したりすることを確実に防止できる。
【選択図】 図1
【解決手段】油圧緩衝器2におけるスプリングシート6の係止部8と係止リング5との間に、ゴム製部材12を介在し、係止部8及び係止リング5に対して弾性力を作用させるようにした。係止部8と弾性体との間には大きな面摩擦力が発揮されるので、スプリングシート6は、ゴム製部材12を介して係止リング5ひいてはシリンダ3に対して確実に位置決めされて大きな力(ばね力ひいては面摩擦力)で保持される。このため、スプリング11が装着されていない状態の油圧緩衝器2の搬送に際し、スプリングシート6が抜けたり、回転したりすることを確実に防止できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用懸架装置などに用いられる油圧緩衝器用のスプリングシート固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のスプリングシート固定構造の一例として特許文献1に示されるスプリングシート固定構造がある。このスプリングシート固定構造は、自動車用懸架装置の油圧緩衝器に用いられ、油圧緩衝器のシリンダ(ストラット外筒)に圧縮ばねの下部スプリングシート(ばね座)を摺動可能に嵌合し、シリンダの外面に、その軸線方向に適当間隔をあけて複数本の溝を形成し、該溝に、下部スプリングシートの下端面を受ける係止リング(止め環)を嵌合している。そして、前記圧縮ばねは、前記下部スプリングシートと、シリンダより上部に突出しているピストンロッドに固定された上部スプリングシートとの間に挿入して用いられる。
【0003】
上述した緩衝器は、下部スプリングシート及び上部スプリングシート間に圧縮ばねを装着しない状態で自動車工場に搬送される。そして、当該緩衝器を自動車へ組付ける際に、これに合わせて圧縮ばねを下部スプリングシート及び上部スプリングシート間に装着するようにしている。このように下部スプリングシート及び上部スプリングシート間に圧縮ばねが装着された状態では、下部スプリングシートは圧縮ばねのばね力により係止リングに押し付けられて位置決めされる。
【0004】
【特許文献1】
特開昭50−107382号公報(第1頁右欄第1〜10行、第2頁第1〜12行、第1図、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、搬送の際には、下部スプリングシートは、係止リングに乗せられただけであり、シリンダの長手方向の変位及び抜け、並びに周方向の変位(回転)を生じる虞がある。この問題点の改善のために、下部スプリングシートを接着剤で固定することが考えられるが、接着剤が固着するまでは塗布した状態を放置させておく必要があり、不便であった。
【0006】
また、従来の他の例として、油圧緩衝器のシリンダの外面に、螺旋状の溝(以下、螺旋溝という。)を形成し、該螺旋溝に、下部スプリングシートの下端面を受ける略C字状の係止リングを嵌合したスプリングシート固定構造がある。この螺旋溝を有するスプリングシート固定構造も、このスプリングシート固定構造を備える油圧緩衝器を搬送する際、上述したのと同様に、下部スプリングシートが係止リングに乗せられた状態とされていることから、下部スプリングシートがシリンダの長手方向に変位及び抜けを生じたり、又は周方向に変位(回転)する虞がある。さらに、スプリングシートがシリンダの長手方向に変位し、ひいては抜けてしまうことも起こり得る。また、係止リングがシリンダの長手方向に変位することも起こり得、このような係止リングの長手方向の変位や前記スプリングシートの変位により圧縮ばねのばね力が所望の値と異なるものになる虞があった。なお、接着剤を用いて下部スプリングシートを固定する場合も、上述した従来例と同様の不便さがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、スプリングシートの抜け防止及び回転防止を図ることができるスプリングシート固定構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、油圧緩衝器のシリンダの外周に形成された周方向に延びる溝に嵌合される略環状の支持部材と、前記シリンダに挿入されて前記支持部材を介して前記シリンダに支持され、かつスプリングの一端を支持するスプリングシートと、を備えるスプリングシート固定構造であって、前記スプリングシートには、前記シリンダの溝に嵌合された前記支持部材に臨む略筒状の係止部が形成され、前記支持部材は、前記シリンダの溝に嵌合された状態で前記係止部を径方向外方に押圧することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のスプリングシート固定構造において、前記支持部材は、前記溝に嵌合される略環状の係止部材と、該係止部材の外周側又は内周側に設けられ、前記係止部に対する前記径方向外方の押圧を弾性力により行う弾性体と、からなることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載のスプリングシート固定構造において、前記支持部材は、周方向に向かって波状に変化する波形状とし、前記支持部材の内周部を前記溝の底部に当接させ、かつ、当該当接状態で、前記支持部材の外周部に前記係止部を圧入することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施の形態に係るスプリングシート固定構造を、図1ないし図3に基づいて説明する。図1ないし図3において、スプリングシート固定構造1は、図示しない自動車の懸架装置用の油圧緩衝器2に用いられるようになっている。油圧緩衝器2のシリンダ3は、車軸側に取付けられている。また、このシリンダ3内に摺動可能に収納するピストン(図示省略)にピストンロッド(図示省略)が連結されており、このピストンロッドが車体側に取付けられている。
【0012】
スプリングシート固定構造1は、シリンダ3の外周部に形成する環状溝(周方向に延びる溝)4に嵌合される略C字状(略環状)の係止リング(係止部材)5と、シリンダ3に挿入されて係止リング5を介してシリンダ3に支持されるスプリングシート6と、を備えている。前記スプリングシート6は、前記シリンダ3の外径に比してわずかに大きい内径を有し前記係止リング5に載置される略筒状の肩部7と、該肩部7に連接され内径が前記係止リング5の外径よりも大きい略筒状の係止部8と、を有している。スプリングシート6は、さらに、係止部8に連接され内径がこの係止部8の内径よりも大きい略筒状の延長筒部9と、延長筒部9に略直交して径方向外方に屈曲して連接されるスプリングシート本体部10と、を有している。前記スプリングシート本体部10とピストンロッドに取付けられる図示しない車体側のスプリングシートとの間には、シリンダ3を内側にするようにしてコイル状のスプリング11が介在されている。そして、スプリングシート本体部10は、スプリング11の一端を支持するようにしている。
【0013】
係止リング5には、当該係止リング5の外周側に嵌合するようにして、所定の厚さ(径方向の厚さ)寸法Eの環状のゴム製の部材(以下、ゴム製部材12という。)が一体にモールド成形されている。本実施の形態では、ゴム製部材12が弾性体を構成している。ゴム製部材12は、前記厚さ寸法Eが係止部8及び係止リング5間の距離Fよりも大きく(E>F)されている。そして、ゴム製部材12は、係止部8と係止リング5との間に介在されることにより、係止部8及び係止リング5に対して押付け力(弾性力)を発揮するようにしている。この第1実施の形態では、係止リング5及びゴム製部材12から支持部材が構成されている。
【0014】
また、ゴム製部材12は上面部(図2上方の面部)が係止リング5の上面部(図2上方の面部)より上方(図2上方)に突出しないように構成されており、スプリングシート6がゴム製部材12の上面部に影響されずに係止リング5の上面部によってシリンダ3の長手方向に位置決めされるようになっている。このため、ゴム製部材12を設けても、スプリング11が油圧緩衝器2に組付けられた際に、スプリング11がゴム製部材12の設置にかかわらず、予定される所望のばね力を発揮し得るようにしている。
【0015】
上述したように構成したスプリングシート固定構造1では、ゴム製部材12がスプリングシート6の係止部8を径方向外方に押付けるので、係止部8の内周壁(符号省略)とゴム製部材12との間には大きな面摩擦力が発揮されることになる。このため、スプリングシート6は、ゴム製部材12を介して係止リング5ひいてはシリンダ3に対して確実に位置決めされて大きな力(ばね力ひいては面摩擦力)で保持される。
【0016】
すなわち、スプリングシート6に仮にシリンダ3の長手方向(図1上方向)の外力が作用しても、係止部8及びゴム製部材12間に発揮される面摩擦力により、スプリングシート6の変位は抑制され、ひいてはスプリングシート6が抜けてしまうようなことを防止できる。また、スプリングシート6に仮に周方向の外力(図1紙面表側から裏側に向かう力、又は紙面裏側から表側に向かう力)が作用しても、前記係止部8及びゴム製部材12間に発揮される面摩擦力により、スプリングシート6の回転が抑制される。そして、上述したようにスプリングシート6が確実に位置決めされて大きな力(ばね力ひいては面摩擦力)で保持されることから、スプリング11が装着されていない状態で油圧緩衝器2が搬送される際にも、スプリングシート6が抜けたり、回転したりすることを防止できる。
【0017】
この実施の形態では、上述したようにスプリングシート6の抜け防止及び回転防止を、接着剤を用いずに果している。このため、接着剤の塗布作業が不要となる。また、接着剤が固着するまでの間、油圧緩衝器を放置して生産工程を一時待機した状態とする必要がある従来技術に比して、生産工程を一時待機した状態にすることなく、搬送などの工程を進めることができ、その分、生産性の向上を図ることができる。
【0018】
この実施の形態では、係止リング5とゴム製部材12とは一体に成形されているので、係止リング5を及びゴム製部材12を別個に組付けなくて済み、その分、組付け作業が簡略化されて便利になる。なお、係止リング5とゴム製部材12とを別体に構成してもよい。
【0019】
この実施の形態では、ゴム製部材12を一つの略環状の部材から構成しているが、これに代えてゴム製部材12を複数個の略円弧状のゴム片から構成するようにしてもよい。例えば図4に示すように、弾性体を3個の略円弧状のゴム片13からなるゴム製部材12Aから構成してもよい(第2実施の形態)。第2実施の形態では、係止リング5及びゴム製部材12Aにより支持部材が構成される。
【0020】
上記第1実施の形態では、ゴム製部材12が係止リング5の外周部と係止部8との間に介在されるものである場合を例にしたが、これに代えて、図5に示すゴム製部材12Bを用いてスプリングシート固定構造1aを構成してもよい(第3実施の形態)し、図6に示すように、係止リング5の内周部にゴム製部材12C(弾性体)を設けるように構成してもよい(第4実施の形態)。第3実施の形態では、係止リング5及びゴム製部材12Bにより支持部材が構成される。また、第4実施の形態では、係止リング5及びゴム製部材12Cにより支持部材が構成される。
【0021】
図5において、ゴム製部材12Bは、係止リング5の外周部と係止部8との間に介在される所定厚さ寸法G(G=E)の環状のゴム製部材本体部20と、ゴム製部材本体部20の一面側(図5下側)に連接され、ゴム製部材本体部20の厚さ寸法Gに比して大きい厚さ寸法J(J>G)のゴム製部材延長部21と、から構成されている。ゴム製部材12Bは、係止リング5に一体にモールド成形されている。
【0022】
また、ゴム製部材本体部20は上面部が係止リング5の上面部より上方に突出しないように構成されている。そして、ゴム製部材12Bを設けても、スプリング11が油圧緩衝器2に組付けられた際に、スプリング11がゴム製部材12Bの設置にかかわらず、予定される所望のばね力を発揮し得るようにしている。
【0023】
ゴム製部材本体部20は、厚さ寸法Gが係止部8及び係止リング5間の距離Fよりも大きく(G>F)されている。また、ゴム製部材延長部21は、厚さ寸法Jがシリンダ3及び係止リング5間の距離Kよりも大きく(J>K)されている。そして、ゴム製部材12Bは、ゴム製部材本体部20が係止部8と係止リング5との間に介在されて、係止部8及び係止リング5に対して押付け力(弾性力)を発揮すると共に、ゴム製部材延長部21がシリンダ3と係止リング5との間に介在され、シリンダ3及び係止リング5に対して押付け力(弾性力)を発揮するようにしている。
【0024】
この第3実施の形態によれば、第1実施の形態に比して、ゴム製部材延長部21がシリンダ3及び係止リング5に対して押付け力を発揮する分、大きな面摩擦力を発揮することになるので、スプリングシート6の抜け防止及び回転防止をより確実に果すことができる。また、この第3実施の形態では、係止リング5とゴム製部材12Bとが一体に成形されている場合を例にしたが、係止リング5とゴム製部材12Bとを別体に構成してもよい。
【0025】
図6に示すように、第4実施の形態に係るスプリングシート固定構造1bは、係止リング5の内周部にゴム製部材12Cを設けているが、スプリングシート6を装着した状態で、ゴム製部材12Cが係止リング5を介してスプリングシート6の係止部8を径方向外方に押付けるようにしている。この場合、図6に示すように、ゴム製部材12Cの厚さmを環状溝4の深さdに比して小さく(m<d)設定し、係止リング5の内周部が環状溝4内に収まり、係止リング5がシリンダ3に確実に支持され得るようになっている。
【0026】
この第4実施の形態は、ゴム製部材12Cが係止リング5を介してスプリングシート6の係止部8を径方向外方に押付けるので、係止部8の内周壁(符号省略)と係止リング5との間には大きな面摩擦力が発揮されることになる。このため、この第4実施の形態では、スプリングシート6は、ゴム製部材12C及び係止リング5を介してシリンダ3に対して確実に位置決めされて大きな力(ばね力ひいては面摩擦力)で保持される。
【0027】
上記各実施の形態では、弾性体がゴム製部材12、12A、12B又は12Cである場合を例にしたが、ゴム製部材12、12A、12B又は12Cのゴム材料としては天然樹脂及び合成樹脂の何れでもよい。また、弾性体は、ゴム製部材12、12A、12B又は12Cに代えて、高分子材料からなる他の材料から構成してもよい。
【0028】
上記各実施の形態では、係止部材が略C字状である場合を例にしたが、これに代えて、複数個の円弧状部材を備え、該複数個の円弧状部材を組合せることにより全体として略環状となる係止リング組立体を用いるようにしてもよい。この係止リング組立体として2つの例を説明する。一つ目の係止リング組立体は、2つの円弧状部材と、一方の円弧状部材の一端部と他方の円弧状部材の一端部を連結して設けられるヒンジ機構と、から構成されている。2つの円弧状部材は、ヒンジ機構を介して開閉可能とされており、閉じた状態で環状をなすようになっている。そして、この係止リング組立体は、2つの円弧状部材を開いた状態で環状溝に配置され、その配置状態で閉じられることにより環状溝に嵌合される。
【0029】
二つ目の係止リング組立体は、2つの円弧状部材と、2つの円弧状部材の各一端部を連結し両者に引張り力を作用する第1ばねと、2つの円弧状部材の各他端部を連結し両者に引張り力を作用する第2ばねと、から構成されている。2つの円弧状部材は、定常時は第1、第2ばねのばね力により、2つの円弧状部材の各一端部が接触し、かつ2つの円弧状部材の各他端部とが接触し、環状をなすようになっている。そして、2つの円弧状部材に外力を加えて第1、第2ばねのばね力に抗して2つの円弧状部材を外方に変位させ、2つの円弧状部材及び第1、第2ばねにより形成される空間を広げ、この空間を通して、この係止リング組立体を、シリンダに挿入して環状溝に配置する。その配置状態で外力が停止されることにより、この係止リング組立体は第1、第2ばねのばね力により環状溝に嵌合される。
【0030】
上記各実施の形態では、周方向に延びる溝が環状溝4である場合を例にしたが、これに代えて、螺旋溝を用いるようにしてもよい。この場合には、係止部材としては、前記一つ目の係止リング組立体に略相当するもの(2つの円弧状部材が閉じられた状態で両他端部が上下にずれて配置されることを含め、係止リング組立体が螺旋溝に嵌合されるように構成されるもの)を用い、かつ、弾性体として例えば図4に示されるような複数個の略円弧状のゴム片から構成される弾性体を用いるようにする。
【0031】
このように螺旋溝を用いて構成されるスプリングシート固定構造でも、上述した実施の形態と同様にして、スプリングシートは、弾性体を介して係止リング組立体ひいてはシリンダに対して確実に位置決めされて大きな力(ばね力ひいては面摩擦力)で保持される。このため、スプリングが装着されていない状態で油圧緩衝器が搬送される際にも、スプリングシートが抜けたり、回転したりすることを防止できる。また、スプリングシートがシリンダに対して確実に位置決めされて大きな力で保持されて、油圧緩衝器が搬送されることから、搬送後にスプリングを組付ける際にも、予め定めた通りの位置関係で装着することができ、スプリングに所望の大きさのばね力を発揮させることができる。すなわち、上述した螺旋溝を用いて構成される上述した従来のスプリングシート固定構造では、搬送時に生じるスプリングシート又は係止リングのシリンダの長手方向の変位により、組み付けられた状態で圧縮ばねのばね力が所望の値と異なるものになる虞があったが、上述した螺旋溝を用いて構成されるスプリングシート固定構造では、上記従来技術が有する問題点を招くことがない。
【0032】
次に、図7及び図8に基づいて、本発明の第5実施の形態に係るスプリングシート固定構造1cを説明する。
第5実施の形態に係るスプリングシート固定構造1cは、前記第1実施の形態に比して、第1実施の形態のゴム製部材12を廃止し、係止リング5に代えて、支持部材を構成する波状係止リング50を設けたことが大きく異なっている。波状係止リング50は、環状部材の一部を欠落した略C字状で、かつ、径方向及び周方向に波状に変化する波状部40を複数個、周方向に距離を空けて断続的に有する形状、すなわち波状C字形をなしている。
【0033】
波状係止リング50は、環状溝4に嵌合された状態でその内周部51が前記環状溝4の底部4aに当接されるようになっている。この状態において、波状部40の内周部41と環状溝4の底部4aとの間に空間部が形成されている。また、この状態で、複数個の波状部40の外周部42の頂点部を含む円の径寸法の方が、前記係止部8の内径寸法に比して大きい値になっている。
【0034】
第5実施の形態に係るスプリングシート固定構造1cでは、波状係止リング50の内周部51が環状溝4の底部4aに当接した状態で、波状部40の外周部42に前記係止部8を圧入して、スプリングシート6が組み付けられるようになっている。そして、波状部40の外周部42に係止部8が圧入されていることにより、波状部40の外周部42が、スプリングシート6の係止部8を径方向外方に押付けるので、両者間に面摩擦力が発揮されることになる。このため、スプリングシート6は、波状係止リング50ひいてはシリンダ3に対して確実に位置決めされて大きな力(波状部40の外周部42の押付け力ひいては面摩擦力)で保持される。
【0035】
そして、スプリングシート6に仮にシリンダ3の長手方向(図7上方向)の外力が作用しても、波状係止リング50及び係止部8間に発揮される面摩擦力により、スプリングシート6の変位は抑制され、ひいてはスプリングシート6が抜けてしまうようなことを防止できる。また、スプリングシート6に仮に周方向の外力が作用しても、前記波状係止リング50及び係止部8間に発揮される面摩擦力により、スプリングシート6の回転が抑制される。そして、上述したようにスプリングシート6が確実に位置決めされて大きな力(波状部40の外周部42の押付け力ひいては面摩擦力)で保持されることから、スプリング11が装着されていない状態で油圧緩衝器2が搬送される際にも、スプリングシート6が抜けたり、回転したりすることを防止できる。
【0036】
なお、この第5実施の形態では、波状部40の外周部42に前記係止部8を圧入した際、波状部40が圧入に伴う力を受けて径方向内方に若干凹んで変形し、前記圧入に伴う力の一部が波状部40の変形により吸収され、環状溝4の底部4aに大きな荷重が直接作用することが抑制されるようになっている。このように環状溝4の底部4aに大きな力がかからないように構成することにより、シリンダ3に環状溝4を形成しても、前記圧入に伴う力でシリンダ3が変形することを回避できるようにしている。
【0037】
また、第5実施の形態の波状係止リング50の内周部に、ゴム、高分子材料などからなる略環状の弾性体をコーティングしてもよい。この場合、波状部40の外周部42によるスプリングシート6の押付けに加えて、前記弾性体が波状係止リング50を介して係止部8を押圧するので、その分、スプリングシート6をより確実に保持することができる。
【0038】
なお、第5実施の形態では、波状係止リング50を、周方向に短い複数個(図では7個)の波状部40を設けて、波状C字形をなす場合を例に示したが、波状部40よりも周方向に長い複数個(例えば3個)の波状部を設けて、波状C字形をなすようにしてもよい。
【0039】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明に係るスプリングシート固定構造によれば、スプリングシートには、シリンダの溝に嵌合された支持部材に臨む略筒状の係止部が形成され、支持部材は、前記シリンダの溝に嵌合された状態で前記係止部を径方向外方に押圧するので、係止部と支持部材との間に摩擦力が発揮されることになる。このため、スプリングシートは、支持部材を介して係止部材ひいてはシリンダに対して確実に位置決めされて大きな力(押圧力ひいては面摩擦力)で保持される。
【0040】
請求項2に記載の発明に係るスプリングシート固定構造によれば、支持部材は、前記溝に嵌合される略環状の係止部材と、該係止部材の外周側又は内周側に設けられ、前記係止部に対する前記径方向外方の押圧を弾性力により行う弾性体と、からなるので、スプリングシートは、弾性体を介して係止部材ひいてはシリンダに対して確実に位置決めされて大きな力(ばね力ひいては面摩擦力)で保持される。
【0041】
請求項3に記載の発明に係るスプリングシート固定構造によれば、請求項1に記載の構成に加え、前記支持部材は、周方向に向かって波状に変化する波形状とし、前記支持部材の内周部を前記溝の底部に当接させ、かつ、当該当接状態で、前記支持部材の外周部に前記係止部を圧入するので、両者間に面摩擦力が発揮され、これによりスプリングシートは、シリンダに対して確実に位置決めされて大きな力(押圧力ひいては面摩擦力)で保持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るスプリングシート固定構造を示す断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図1の係止リングを示す平面図である。
【図4】本発明の2実施の形態に係るスプリングシート固定構造における3個のゴム片からなるゴム製部材を示す平面図である。
【図5】本発明の第3実施の形態に係るスプリングシート固定構造を示す部分断面図である。
【図6】本発明の第4実施の形態に係るスプリングシート固定構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第5実施の形態に係るスプリングシート固定構造を示す断面図である。
【図8】図7の波状係止リング示す平面図である。
【符号の説明】
1 スプリングシート固定構造
3 シリンダ
4 環状溝(周方向に延びる溝)
5 係止リング(係止部材、支持部材)
6 スプリングシート
8 係止部
12、12A、12B、12C ゴム製部材(弾性体、支持部材)
50 波状係止リング(支持部材)
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用懸架装置などに用いられる油圧緩衝器用のスプリングシート固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のスプリングシート固定構造の一例として特許文献1に示されるスプリングシート固定構造がある。このスプリングシート固定構造は、自動車用懸架装置の油圧緩衝器に用いられ、油圧緩衝器のシリンダ(ストラット外筒)に圧縮ばねの下部スプリングシート(ばね座)を摺動可能に嵌合し、シリンダの外面に、その軸線方向に適当間隔をあけて複数本の溝を形成し、該溝に、下部スプリングシートの下端面を受ける係止リング(止め環)を嵌合している。そして、前記圧縮ばねは、前記下部スプリングシートと、シリンダより上部に突出しているピストンロッドに固定された上部スプリングシートとの間に挿入して用いられる。
【0003】
上述した緩衝器は、下部スプリングシート及び上部スプリングシート間に圧縮ばねを装着しない状態で自動車工場に搬送される。そして、当該緩衝器を自動車へ組付ける際に、これに合わせて圧縮ばねを下部スプリングシート及び上部スプリングシート間に装着するようにしている。このように下部スプリングシート及び上部スプリングシート間に圧縮ばねが装着された状態では、下部スプリングシートは圧縮ばねのばね力により係止リングに押し付けられて位置決めされる。
【0004】
【特許文献1】
特開昭50−107382号公報(第1頁右欄第1〜10行、第2頁第1〜12行、第1図、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、搬送の際には、下部スプリングシートは、係止リングに乗せられただけであり、シリンダの長手方向の変位及び抜け、並びに周方向の変位(回転)を生じる虞がある。この問題点の改善のために、下部スプリングシートを接着剤で固定することが考えられるが、接着剤が固着するまでは塗布した状態を放置させておく必要があり、不便であった。
【0006】
また、従来の他の例として、油圧緩衝器のシリンダの外面に、螺旋状の溝(以下、螺旋溝という。)を形成し、該螺旋溝に、下部スプリングシートの下端面を受ける略C字状の係止リングを嵌合したスプリングシート固定構造がある。この螺旋溝を有するスプリングシート固定構造も、このスプリングシート固定構造を備える油圧緩衝器を搬送する際、上述したのと同様に、下部スプリングシートが係止リングに乗せられた状態とされていることから、下部スプリングシートがシリンダの長手方向に変位及び抜けを生じたり、又は周方向に変位(回転)する虞がある。さらに、スプリングシートがシリンダの長手方向に変位し、ひいては抜けてしまうことも起こり得る。また、係止リングがシリンダの長手方向に変位することも起こり得、このような係止リングの長手方向の変位や前記スプリングシートの変位により圧縮ばねのばね力が所望の値と異なるものになる虞があった。なお、接着剤を用いて下部スプリングシートを固定する場合も、上述した従来例と同様の不便さがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、スプリングシートの抜け防止及び回転防止を図ることができるスプリングシート固定構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、油圧緩衝器のシリンダの外周に形成された周方向に延びる溝に嵌合される略環状の支持部材と、前記シリンダに挿入されて前記支持部材を介して前記シリンダに支持され、かつスプリングの一端を支持するスプリングシートと、を備えるスプリングシート固定構造であって、前記スプリングシートには、前記シリンダの溝に嵌合された前記支持部材に臨む略筒状の係止部が形成され、前記支持部材は、前記シリンダの溝に嵌合された状態で前記係止部を径方向外方に押圧することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のスプリングシート固定構造において、前記支持部材は、前記溝に嵌合される略環状の係止部材と、該係止部材の外周側又は内周側に設けられ、前記係止部に対する前記径方向外方の押圧を弾性力により行う弾性体と、からなることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載のスプリングシート固定構造において、前記支持部材は、周方向に向かって波状に変化する波形状とし、前記支持部材の内周部を前記溝の底部に当接させ、かつ、当該当接状態で、前記支持部材の外周部に前記係止部を圧入することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施の形態に係るスプリングシート固定構造を、図1ないし図3に基づいて説明する。図1ないし図3において、スプリングシート固定構造1は、図示しない自動車の懸架装置用の油圧緩衝器2に用いられるようになっている。油圧緩衝器2のシリンダ3は、車軸側に取付けられている。また、このシリンダ3内に摺動可能に収納するピストン(図示省略)にピストンロッド(図示省略)が連結されており、このピストンロッドが車体側に取付けられている。
【0012】
スプリングシート固定構造1は、シリンダ3の外周部に形成する環状溝(周方向に延びる溝)4に嵌合される略C字状(略環状)の係止リング(係止部材)5と、シリンダ3に挿入されて係止リング5を介してシリンダ3に支持されるスプリングシート6と、を備えている。前記スプリングシート6は、前記シリンダ3の外径に比してわずかに大きい内径を有し前記係止リング5に載置される略筒状の肩部7と、該肩部7に連接され内径が前記係止リング5の外径よりも大きい略筒状の係止部8と、を有している。スプリングシート6は、さらに、係止部8に連接され内径がこの係止部8の内径よりも大きい略筒状の延長筒部9と、延長筒部9に略直交して径方向外方に屈曲して連接されるスプリングシート本体部10と、を有している。前記スプリングシート本体部10とピストンロッドに取付けられる図示しない車体側のスプリングシートとの間には、シリンダ3を内側にするようにしてコイル状のスプリング11が介在されている。そして、スプリングシート本体部10は、スプリング11の一端を支持するようにしている。
【0013】
係止リング5には、当該係止リング5の外周側に嵌合するようにして、所定の厚さ(径方向の厚さ)寸法Eの環状のゴム製の部材(以下、ゴム製部材12という。)が一体にモールド成形されている。本実施の形態では、ゴム製部材12が弾性体を構成している。ゴム製部材12は、前記厚さ寸法Eが係止部8及び係止リング5間の距離Fよりも大きく(E>F)されている。そして、ゴム製部材12は、係止部8と係止リング5との間に介在されることにより、係止部8及び係止リング5に対して押付け力(弾性力)を発揮するようにしている。この第1実施の形態では、係止リング5及びゴム製部材12から支持部材が構成されている。
【0014】
また、ゴム製部材12は上面部(図2上方の面部)が係止リング5の上面部(図2上方の面部)より上方(図2上方)に突出しないように構成されており、スプリングシート6がゴム製部材12の上面部に影響されずに係止リング5の上面部によってシリンダ3の長手方向に位置決めされるようになっている。このため、ゴム製部材12を設けても、スプリング11が油圧緩衝器2に組付けられた際に、スプリング11がゴム製部材12の設置にかかわらず、予定される所望のばね力を発揮し得るようにしている。
【0015】
上述したように構成したスプリングシート固定構造1では、ゴム製部材12がスプリングシート6の係止部8を径方向外方に押付けるので、係止部8の内周壁(符号省略)とゴム製部材12との間には大きな面摩擦力が発揮されることになる。このため、スプリングシート6は、ゴム製部材12を介して係止リング5ひいてはシリンダ3に対して確実に位置決めされて大きな力(ばね力ひいては面摩擦力)で保持される。
【0016】
すなわち、スプリングシート6に仮にシリンダ3の長手方向(図1上方向)の外力が作用しても、係止部8及びゴム製部材12間に発揮される面摩擦力により、スプリングシート6の変位は抑制され、ひいてはスプリングシート6が抜けてしまうようなことを防止できる。また、スプリングシート6に仮に周方向の外力(図1紙面表側から裏側に向かう力、又は紙面裏側から表側に向かう力)が作用しても、前記係止部8及びゴム製部材12間に発揮される面摩擦力により、スプリングシート6の回転が抑制される。そして、上述したようにスプリングシート6が確実に位置決めされて大きな力(ばね力ひいては面摩擦力)で保持されることから、スプリング11が装着されていない状態で油圧緩衝器2が搬送される際にも、スプリングシート6が抜けたり、回転したりすることを防止できる。
【0017】
この実施の形態では、上述したようにスプリングシート6の抜け防止及び回転防止を、接着剤を用いずに果している。このため、接着剤の塗布作業が不要となる。また、接着剤が固着するまでの間、油圧緩衝器を放置して生産工程を一時待機した状態とする必要がある従来技術に比して、生産工程を一時待機した状態にすることなく、搬送などの工程を進めることができ、その分、生産性の向上を図ることができる。
【0018】
この実施の形態では、係止リング5とゴム製部材12とは一体に成形されているので、係止リング5を及びゴム製部材12を別個に組付けなくて済み、その分、組付け作業が簡略化されて便利になる。なお、係止リング5とゴム製部材12とを別体に構成してもよい。
【0019】
この実施の形態では、ゴム製部材12を一つの略環状の部材から構成しているが、これに代えてゴム製部材12を複数個の略円弧状のゴム片から構成するようにしてもよい。例えば図4に示すように、弾性体を3個の略円弧状のゴム片13からなるゴム製部材12Aから構成してもよい(第2実施の形態)。第2実施の形態では、係止リング5及びゴム製部材12Aにより支持部材が構成される。
【0020】
上記第1実施の形態では、ゴム製部材12が係止リング5の外周部と係止部8との間に介在されるものである場合を例にしたが、これに代えて、図5に示すゴム製部材12Bを用いてスプリングシート固定構造1aを構成してもよい(第3実施の形態)し、図6に示すように、係止リング5の内周部にゴム製部材12C(弾性体)を設けるように構成してもよい(第4実施の形態)。第3実施の形態では、係止リング5及びゴム製部材12Bにより支持部材が構成される。また、第4実施の形態では、係止リング5及びゴム製部材12Cにより支持部材が構成される。
【0021】
図5において、ゴム製部材12Bは、係止リング5の外周部と係止部8との間に介在される所定厚さ寸法G(G=E)の環状のゴム製部材本体部20と、ゴム製部材本体部20の一面側(図5下側)に連接され、ゴム製部材本体部20の厚さ寸法Gに比して大きい厚さ寸法J(J>G)のゴム製部材延長部21と、から構成されている。ゴム製部材12Bは、係止リング5に一体にモールド成形されている。
【0022】
また、ゴム製部材本体部20は上面部が係止リング5の上面部より上方に突出しないように構成されている。そして、ゴム製部材12Bを設けても、スプリング11が油圧緩衝器2に組付けられた際に、スプリング11がゴム製部材12Bの設置にかかわらず、予定される所望のばね力を発揮し得るようにしている。
【0023】
ゴム製部材本体部20は、厚さ寸法Gが係止部8及び係止リング5間の距離Fよりも大きく(G>F)されている。また、ゴム製部材延長部21は、厚さ寸法Jがシリンダ3及び係止リング5間の距離Kよりも大きく(J>K)されている。そして、ゴム製部材12Bは、ゴム製部材本体部20が係止部8と係止リング5との間に介在されて、係止部8及び係止リング5に対して押付け力(弾性力)を発揮すると共に、ゴム製部材延長部21がシリンダ3と係止リング5との間に介在され、シリンダ3及び係止リング5に対して押付け力(弾性力)を発揮するようにしている。
【0024】
この第3実施の形態によれば、第1実施の形態に比して、ゴム製部材延長部21がシリンダ3及び係止リング5に対して押付け力を発揮する分、大きな面摩擦力を発揮することになるので、スプリングシート6の抜け防止及び回転防止をより確実に果すことができる。また、この第3実施の形態では、係止リング5とゴム製部材12Bとが一体に成形されている場合を例にしたが、係止リング5とゴム製部材12Bとを別体に構成してもよい。
【0025】
図6に示すように、第4実施の形態に係るスプリングシート固定構造1bは、係止リング5の内周部にゴム製部材12Cを設けているが、スプリングシート6を装着した状態で、ゴム製部材12Cが係止リング5を介してスプリングシート6の係止部8を径方向外方に押付けるようにしている。この場合、図6に示すように、ゴム製部材12Cの厚さmを環状溝4の深さdに比して小さく(m<d)設定し、係止リング5の内周部が環状溝4内に収まり、係止リング5がシリンダ3に確実に支持され得るようになっている。
【0026】
この第4実施の形態は、ゴム製部材12Cが係止リング5を介してスプリングシート6の係止部8を径方向外方に押付けるので、係止部8の内周壁(符号省略)と係止リング5との間には大きな面摩擦力が発揮されることになる。このため、この第4実施の形態では、スプリングシート6は、ゴム製部材12C及び係止リング5を介してシリンダ3に対して確実に位置決めされて大きな力(ばね力ひいては面摩擦力)で保持される。
【0027】
上記各実施の形態では、弾性体がゴム製部材12、12A、12B又は12Cである場合を例にしたが、ゴム製部材12、12A、12B又は12Cのゴム材料としては天然樹脂及び合成樹脂の何れでもよい。また、弾性体は、ゴム製部材12、12A、12B又は12Cに代えて、高分子材料からなる他の材料から構成してもよい。
【0028】
上記各実施の形態では、係止部材が略C字状である場合を例にしたが、これに代えて、複数個の円弧状部材を備え、該複数個の円弧状部材を組合せることにより全体として略環状となる係止リング組立体を用いるようにしてもよい。この係止リング組立体として2つの例を説明する。一つ目の係止リング組立体は、2つの円弧状部材と、一方の円弧状部材の一端部と他方の円弧状部材の一端部を連結して設けられるヒンジ機構と、から構成されている。2つの円弧状部材は、ヒンジ機構を介して開閉可能とされており、閉じた状態で環状をなすようになっている。そして、この係止リング組立体は、2つの円弧状部材を開いた状態で環状溝に配置され、その配置状態で閉じられることにより環状溝に嵌合される。
【0029】
二つ目の係止リング組立体は、2つの円弧状部材と、2つの円弧状部材の各一端部を連結し両者に引張り力を作用する第1ばねと、2つの円弧状部材の各他端部を連結し両者に引張り力を作用する第2ばねと、から構成されている。2つの円弧状部材は、定常時は第1、第2ばねのばね力により、2つの円弧状部材の各一端部が接触し、かつ2つの円弧状部材の各他端部とが接触し、環状をなすようになっている。そして、2つの円弧状部材に外力を加えて第1、第2ばねのばね力に抗して2つの円弧状部材を外方に変位させ、2つの円弧状部材及び第1、第2ばねにより形成される空間を広げ、この空間を通して、この係止リング組立体を、シリンダに挿入して環状溝に配置する。その配置状態で外力が停止されることにより、この係止リング組立体は第1、第2ばねのばね力により環状溝に嵌合される。
【0030】
上記各実施の形態では、周方向に延びる溝が環状溝4である場合を例にしたが、これに代えて、螺旋溝を用いるようにしてもよい。この場合には、係止部材としては、前記一つ目の係止リング組立体に略相当するもの(2つの円弧状部材が閉じられた状態で両他端部が上下にずれて配置されることを含め、係止リング組立体が螺旋溝に嵌合されるように構成されるもの)を用い、かつ、弾性体として例えば図4に示されるような複数個の略円弧状のゴム片から構成される弾性体を用いるようにする。
【0031】
このように螺旋溝を用いて構成されるスプリングシート固定構造でも、上述した実施の形態と同様にして、スプリングシートは、弾性体を介して係止リング組立体ひいてはシリンダに対して確実に位置決めされて大きな力(ばね力ひいては面摩擦力)で保持される。このため、スプリングが装着されていない状態で油圧緩衝器が搬送される際にも、スプリングシートが抜けたり、回転したりすることを防止できる。また、スプリングシートがシリンダに対して確実に位置決めされて大きな力で保持されて、油圧緩衝器が搬送されることから、搬送後にスプリングを組付ける際にも、予め定めた通りの位置関係で装着することができ、スプリングに所望の大きさのばね力を発揮させることができる。すなわち、上述した螺旋溝を用いて構成される上述した従来のスプリングシート固定構造では、搬送時に生じるスプリングシート又は係止リングのシリンダの長手方向の変位により、組み付けられた状態で圧縮ばねのばね力が所望の値と異なるものになる虞があったが、上述した螺旋溝を用いて構成されるスプリングシート固定構造では、上記従来技術が有する問題点を招くことがない。
【0032】
次に、図7及び図8に基づいて、本発明の第5実施の形態に係るスプリングシート固定構造1cを説明する。
第5実施の形態に係るスプリングシート固定構造1cは、前記第1実施の形態に比して、第1実施の形態のゴム製部材12を廃止し、係止リング5に代えて、支持部材を構成する波状係止リング50を設けたことが大きく異なっている。波状係止リング50は、環状部材の一部を欠落した略C字状で、かつ、径方向及び周方向に波状に変化する波状部40を複数個、周方向に距離を空けて断続的に有する形状、すなわち波状C字形をなしている。
【0033】
波状係止リング50は、環状溝4に嵌合された状態でその内周部51が前記環状溝4の底部4aに当接されるようになっている。この状態において、波状部40の内周部41と環状溝4の底部4aとの間に空間部が形成されている。また、この状態で、複数個の波状部40の外周部42の頂点部を含む円の径寸法の方が、前記係止部8の内径寸法に比して大きい値になっている。
【0034】
第5実施の形態に係るスプリングシート固定構造1cでは、波状係止リング50の内周部51が環状溝4の底部4aに当接した状態で、波状部40の外周部42に前記係止部8を圧入して、スプリングシート6が組み付けられるようになっている。そして、波状部40の外周部42に係止部8が圧入されていることにより、波状部40の外周部42が、スプリングシート6の係止部8を径方向外方に押付けるので、両者間に面摩擦力が発揮されることになる。このため、スプリングシート6は、波状係止リング50ひいてはシリンダ3に対して確実に位置決めされて大きな力(波状部40の外周部42の押付け力ひいては面摩擦力)で保持される。
【0035】
そして、スプリングシート6に仮にシリンダ3の長手方向(図7上方向)の外力が作用しても、波状係止リング50及び係止部8間に発揮される面摩擦力により、スプリングシート6の変位は抑制され、ひいてはスプリングシート6が抜けてしまうようなことを防止できる。また、スプリングシート6に仮に周方向の外力が作用しても、前記波状係止リング50及び係止部8間に発揮される面摩擦力により、スプリングシート6の回転が抑制される。そして、上述したようにスプリングシート6が確実に位置決めされて大きな力(波状部40の外周部42の押付け力ひいては面摩擦力)で保持されることから、スプリング11が装着されていない状態で油圧緩衝器2が搬送される際にも、スプリングシート6が抜けたり、回転したりすることを防止できる。
【0036】
なお、この第5実施の形態では、波状部40の外周部42に前記係止部8を圧入した際、波状部40が圧入に伴う力を受けて径方向内方に若干凹んで変形し、前記圧入に伴う力の一部が波状部40の変形により吸収され、環状溝4の底部4aに大きな荷重が直接作用することが抑制されるようになっている。このように環状溝4の底部4aに大きな力がかからないように構成することにより、シリンダ3に環状溝4を形成しても、前記圧入に伴う力でシリンダ3が変形することを回避できるようにしている。
【0037】
また、第5実施の形態の波状係止リング50の内周部に、ゴム、高分子材料などからなる略環状の弾性体をコーティングしてもよい。この場合、波状部40の外周部42によるスプリングシート6の押付けに加えて、前記弾性体が波状係止リング50を介して係止部8を押圧するので、その分、スプリングシート6をより確実に保持することができる。
【0038】
なお、第5実施の形態では、波状係止リング50を、周方向に短い複数個(図では7個)の波状部40を設けて、波状C字形をなす場合を例に示したが、波状部40よりも周方向に長い複数個(例えば3個)の波状部を設けて、波状C字形をなすようにしてもよい。
【0039】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明に係るスプリングシート固定構造によれば、スプリングシートには、シリンダの溝に嵌合された支持部材に臨む略筒状の係止部が形成され、支持部材は、前記シリンダの溝に嵌合された状態で前記係止部を径方向外方に押圧するので、係止部と支持部材との間に摩擦力が発揮されることになる。このため、スプリングシートは、支持部材を介して係止部材ひいてはシリンダに対して確実に位置決めされて大きな力(押圧力ひいては面摩擦力)で保持される。
【0040】
請求項2に記載の発明に係るスプリングシート固定構造によれば、支持部材は、前記溝に嵌合される略環状の係止部材と、該係止部材の外周側又は内周側に設けられ、前記係止部に対する前記径方向外方の押圧を弾性力により行う弾性体と、からなるので、スプリングシートは、弾性体を介して係止部材ひいてはシリンダに対して確実に位置決めされて大きな力(ばね力ひいては面摩擦力)で保持される。
【0041】
請求項3に記載の発明に係るスプリングシート固定構造によれば、請求項1に記載の構成に加え、前記支持部材は、周方向に向かって波状に変化する波形状とし、前記支持部材の内周部を前記溝の底部に当接させ、かつ、当該当接状態で、前記支持部材の外周部に前記係止部を圧入するので、両者間に面摩擦力が発揮され、これによりスプリングシートは、シリンダに対して確実に位置決めされて大きな力(押圧力ひいては面摩擦力)で保持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るスプリングシート固定構造を示す断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図1の係止リングを示す平面図である。
【図4】本発明の2実施の形態に係るスプリングシート固定構造における3個のゴム片からなるゴム製部材を示す平面図である。
【図5】本発明の第3実施の形態に係るスプリングシート固定構造を示す部分断面図である。
【図6】本発明の第4実施の形態に係るスプリングシート固定構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第5実施の形態に係るスプリングシート固定構造を示す断面図である。
【図8】図7の波状係止リング示す平面図である。
【符号の説明】
1 スプリングシート固定構造
3 シリンダ
4 環状溝(周方向に延びる溝)
5 係止リング(係止部材、支持部材)
6 スプリングシート
8 係止部
12、12A、12B、12C ゴム製部材(弾性体、支持部材)
50 波状係止リング(支持部材)
Claims (3)
- 油圧緩衝器のシリンダの外周に形成された周方向に延びる溝に嵌合される略環状の支持部材と、前記シリンダに挿入されて前記支持部材を介して前記シリンダに支持され、かつスプリングの一端を支持するスプリングシートと、を備えるスプリングシート固定構造であって、
前記スプリングシートには、前記シリンダの溝に嵌合された前記支持部材に臨む略筒状の係止部が形成され、
前記支持部材は、前記シリンダの溝に嵌合された状態で前記係止部を径方向外方に押圧することを特徴とするスプリングシート固定構造。 - 前記支持部材は、前記溝に嵌合される略環状の係止部材と、該係止部材の外周側又は内周側に設けられ、前記係止部に対する前記径方向外方の押圧を弾性力により行う弾性体と、からなることを特徴とする請求項1に記載のスプリングシート固定構造。
- 前記支持部材は、周方向に向かって波状に変化する波形状とし、前記支持部材の内周部を前記溝の底部に当接させ、かつ、当該当接状態で、前記支持部材の外周部に前記係止部を圧入することを特徴とする請求項1に記載のスプリングシート固定構造。
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