JP2004225195A - アクリル系繊維の製造方法および溶媒除去装置 - Google Patents
アクリル系繊維の製造方法および溶媒除去装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】アクリル系繊維の製造工程における設備費、変動費を増大することなく、生産性を向上させることを目的とする。
【解決手段】紡糸ノズルから紡出されて凝固浴中で凝固したアクリル系繊維束を、95℃以上の熱水中の微細化された泡の中を通過させることを特徴とするアクリル系繊維の製造方法。このときの微細化された泡は、熱の供給源である蒸気配管より発生する泡を微細化したものであるのが好ましい。微細化された泡の中を通過することによって、繊維束が振動し、水洗工程における溶媒除去効果が向上する。
【選択図】 図1
【解決手段】紡糸ノズルから紡出されて凝固浴中で凝固したアクリル系繊維束を、95℃以上の熱水中の微細化された泡の中を通過させることを特徴とするアクリル系繊維の製造方法。このときの微細化された泡は、熱の供給源である蒸気配管より発生する泡を微細化したものであるのが好ましい。微細化された泡の中を通過することによって、繊維束が振動し、水洗工程における溶媒除去効果が向上する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル系繊維の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、湿式紡糸法または半乾半湿式紡糸法によるアクリル系繊維の製造工程において、紡糸ノズルから紡出されて凝固浴中で凝固したアクリル系繊維中の溶媒を連続的に除去する方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アクリル系繊維は、湿式紡糸法または半乾半湿式紡糸法で製造される。上記紡糸方法においては、紡糸ノズルから紡出された紡糸原液を凝固浴中で凝固させるが、凝固後も、繊維は紡糸原液の溶媒により湿潤状態にあるため、繊維をそのまま直ちに乾燥させると繊維同士が接着してしまう。このため、乾燥前に予め繊維中の溶媒を水槽中での水洗工程により除去する方法が一般に採用されている。
【0003】
前記水洗工程において繊維内の溶媒の除去速度を早くするには繊維束の厚みを薄くすることが有効である。しかし、実際は設備生産性を向上させるために繊維束は厚くする必要がある。そのため実際の工程では、溶媒の除去不足による乾燥工程での繊維同士の融着、延伸工程での断糸が発生し、工程トラブルの原因になるとともに、得られるアクリル系繊維の物性も低下するという課題があった。
【0004】
また繊維からの溶媒の除去速度は、水洗温度の影響がかなり大きいため、通常は加熱された熱水中で洗浄が行われる。しかし、水洗槽の熱水の温度を例えば95℃以上にしようとすると、熱源である蒸気配管から泡が発生し、その泡によって繊維束が乱れ、工程トラブルを引き起こす。そのため、実際に使用される洗浄浴中の熱水温度は90℃程度が限界である。この点も、洗浄が十分に行われず、繊維に溶媒が残存する要因のひとつである。
【0005】
これらの問題点の改善策として、特許文献1には、方向ガイドから浴液を噴出させることにより繊維束をほぐすことで、単糸間接着を防止する技術が提案されている。しかしながら繊維束が厚くなると溶液が内部に浸透しにくく単糸間接着を防止することができない。また特許文献2では、加振器あるいはラダーロール状のフリーロールを繊維束に接触させることにより、繊維束を振動させ洗浄効果を向上させる技術が開示されている。しかしながら機械的振動だけでは繊維束がほぐれるだけの効果しか無く、さらなる溶媒除去速度の向上が望まれている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭64−85306号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平5−140815号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような従来のアクリル系繊維の製造工程における溶媒除去の問題点に鑑み、効率的に溶媒を除去し、かつ工程安定性を確保することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アクリル系繊維束を95℃以上の熱水中を走行させ、その際熱の供給源である蒸気配管から発生する泡を微細化させて繊維束の乱れを防ぐとともに、繊維束を振動させることにより、効率的な溶媒の除去、工程安定性の確保が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るアクリル系繊維の製造方法は、紡糸ノズルから紡出されて凝固浴中で凝固したアクリル系繊維束を、95℃以上の熱水中の微細化された泡の中を通過させることを特徴とする。このとき微細化された泡が、熱の供給源である蒸気配管より発生する泡を微細化したものであるのがこのましい。また微細化された泡の中を通過することによって、繊維束が振動することが好ましい。また本発明に係るアクリル系繊維の好ましい製造方法は前記繊維束を振動させる方法として、さらに機械的振動を併用することを特徴とする。さらに本発明に係るアクリル系繊維の好ましい製造方法は繊維束の厚みが2000dtex/mm以上、10000dtex/mm以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るアクリル系繊維中の溶媒除去装置は、水洗槽内に熱の供給源である蒸気配管を設け、かつ発生する泡を微細化する機能を有し、さらに繊維束の乱れを防止する側壁を有することを特徴とする。また本発明に係るアクリル系繊維流の好ましい溶媒除去装置は前記溶媒除去装置にさらに機械的振動装置を設けることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。本発明におけるアクリル系繊維とは、アクリロニトリルの単独重合体、またはアクリロニトリルと共重合可能な1種以上のビニルまたはアリル化合物などとの共重合体からなるものであり、これらの重合体をDMAc(ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、アセトン、硝酸、ロダンソーダ水溶液などの有機または無機の溶媒に溶解した紡糸原液を用いて、湿式または半乾半湿式紡糸法により製造されるものである。
【0013】
そして、本発明においては、上記のようなアクリル系繊維の製造工程において、紡糸ノズルから紡出されて凝固浴中で凝固したアクリル系繊維束を、95℃以上の熱水中の微細化された泡の中を通過させることで、該アクリル系繊維中の溶媒を除去する。このとき、微細化された泡として、特に限定されるものではないが、熱源である蒸気配管より発生した泡を微細化したものを用いるのが好ましい。
【0014】
通常、水洗に使用される熱水は、水洗槽中に配置された蒸気配管により加熱されている。熱水全体の温度を95℃以上にしようとすると、蒸気配管に接している部分の熱水はそれ以上の温度に加熱されることになるため、そこから多量の泡が発生して繊維束を乱すことにより、工程トラブルを引き起こしてしまうことから、従来は90℃程度で洗浄を行っている。しかしながら水洗工程における溶媒の除去速度は、熱水温度の影響が大きいことから、できるだけ高い温度で使用することが望ましい。本発明の好ましい方法においては、水洗槽内に泡の分散板を設置し、水洗槽の熱水の温度を95℃以上にして、あえて蒸気配管から泡を発生させ、この泡を上記分散板で微細化することで繊維束を振動させることにより、繊維束中の溶媒の除去速度を促進させる。もし、蒸気配管から発生した泡を利用しない場合には、別途微細化された泡を供給してやればよい。
【0015】
本発明における泡の微細化とは、水洗槽を走行する繊維束がその泡によって乱れたりしない程度に適度に微細化されていればよく、特にその程度が限定されるものではないが、例えば、一般に蒸気配管から発生した泡の大きさは1cm程度であるのに対し、本発明ではそれを5mm以下程度の大きさに微細化してやればよい。
【0016】
本発明ではさらに、機械的振動手段を併用して、繊維束をより振動させ、洗浄を促進させるのが好ましい。機械的振動手段としては、公知の方法、例えば菊型フリーロールや加振機などのほか、繊維束に振動を与えることが出来るものであれば限定されない。
【0017】
本発明において、水洗槽を走行する繊維束の厚みは、200dtex/mm以上、10000dtex/mm以下であるのが好ましい。ここでいう繊維束の厚みとは、水洗槽を走行する繊維束の総繊度(dtex)を、該繊維束の幅(mm)で除した値である。一般に、水洗槽を走行する繊維束の厚みが、2000dtex/mm以下の場合は、従来の方法によっても溶媒の除去速度はさほど低くなく、問題とならない。しかしながら繊維束の厚みが2000dtex/mm以上になると厚みが増すごとに溶媒の除去速度が顕著に低下する。本発明の方法によって、繊維束の厚みが2000dtex/mm以上においても効率よく溶媒を除去することが出来、例えば繊維束の厚みが10000dtex/mm以下であれば溶媒の残存量は何も施さない場合の1/2以下になる。繊維束の厚みが10000dtex/mm以上になると繊維束が振動しにくくなるため、溶媒の除去効果も低減する傾向がある。
【0018】
以下、本発明の溶媒除去装置について、添付図面を引用して更に説明する。まず図1に示す溶媒除去装置Aについて説明する。紡糸ノズルから紡出されて凝固浴中で凝固したアクリル系の繊維束1は送り込みガイドロール3、4によって水洗槽2に導かれる。水洗槽2には熱水温度を95℃以上に調整する昇温用蒸気配管5、蒸気配管より発生する泡を微細化し繊維束を振動させるための分散板6を設置している。また、繊維束の整状を整えるトイ7を設置している。そのため水洗槽2内では、繊維束1は泡により振動するが、トイにより乱れることなく走行し、引き取りガイドロール8、9により水洗槽より導き出され、乾燥工程へ導かれる。ここで蒸気配管より発生する泡を微細化するための分散板6の形状は特に限定しないが、多孔板、金網、スリット等の他、スチールウールを金網などにある程度の厚さで敷きつめたようなもの等、泡の微細化が可能なものであればよい。さらに溶媒の除去効率を良くするには、図2の溶媒除去装置Bに示すように、図1に示した溶媒除去装置Aに機械的振動を加えるとさらに効果的である。ここで機械的振動を与える方法としては、特に限定はしないが、菊型フリーロール、加振機等の振動を付与できるものであればよい。
【0019】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例の記載に先立ち、繊維中の溶媒量の測定方法および溶媒除去時の繊維束の厚みの算定方法について以下に説明する。
(繊維中の溶媒量の測定方法)
アクリル系含液繊維を有機溶媒に溶解し、ガスクロマトグラフィーにて溶媒量を定量分析するとともに、溶解液の固形分濃度を絶乾法により測定し、単位樹脂あたりの溶媒量を[重量%]として算出した。
(溶媒除去時の繊維厚みの算定方法)
アクリル系繊維最終製品の繊維束の総繊度[dtex]に溶媒除去工程以降の延伸倍率をかけ、溶媒除去時のアクリル系繊維の総繊度を算出し、これを溶媒除去時の繊維束の幅[mm]で除して[dtex/mm]として算出した。
【0020】
(実施例1)
アクリロニトリル49.5重量%と塩化ビニル50.0重量%、スチレンスルホン酸ソーダ0.5重量%よりなる共重合体を、アセトンに固形分濃度29.5%で溶解した紡糸原液を用いて、ノズル径0.25mm、4000ホールのノズルから濃度30%のアセトン水溶液に押し出し、湿式紡糸法により凝固操作を行った。この凝固後のアクリル系繊維を、300%の浴中延伸を行った後、繊維束の厚みを5000dtex/mmに調整し、図1に示した溶媒除去装置A内を通過させることで溶剤の除去を行った。このとき使用した分散板は、線径0.5mmのスチールウールを厚さ3cmとなるように敷き詰め金網で挟み込みこんだものであり、この分散板を蒸気配管の約1cm上の位置に配置した。また、この場合の処理速度は0.5m/s、水洗水の温度は95℃、水洗槽の長さは5mとし、3槽で処理することにより滞留時間は30sとした。以上の装置および条件によりアクリル系繊維中の溶媒を除去したところ、処理前の繊維内の溶媒量が15.0重量%であったものが、3.6重量%まで除去することができた。
【0021】
(実施例2)
実施例1と同じ条件で凝固したアクリル系繊維を、図2に示した溶媒除去装置B内を通過させることで溶剤の除去を行った。なお、菊型フリーロール10は繊維束の走行により回転するもので、本体は径0.2m、バーはアクリル製で径0.01mのものを4本設置したものを用いた。その他の条件は実施例1と同じである。以上の装置および条件によりアクリル系繊維中の溶媒を除去したところ、処理前の繊維内の溶媒量が15.0重量%であったものが、3.1重量%まで除去することができた。
【0022】
(比較例1)
実施例1と同じ条件で凝固させたアクリル系繊維を、図1から分散板を除いた水洗槽内を90℃で通過させ、溶媒の除去を行った。その他の条件は実施例1と同じである。その結果、処理前の繊維内の溶媒量が15.0重量%であったものが、8.0重量%までしか除去することができなかった。
【0023】
以上の実施例、比較例における水洗処理後の繊維中の各溶媒量、比較例との溶媒量の比を表1にまとめた。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、アクリル系繊維の製造工程において、蒸気配管より発生する泡を利用し繊維束を振動させることにより効率的な溶媒の除去が可能となり、設備費、変動費を増大することなく生産性を向上させるとともに、工程安定性の確保にも貢献しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶媒除去装置の1例を示す概略説明図
【図2】本発明に係る溶媒除去装置の1例を示す概略説明図
【符号の説明】
1:繊維束、2:水洗槽、3,4:送り込みガイドロール、5:蒸気配管、6:発生する気泡の分散板、7:トイ、8,9:引き取りガイドロール、10:菊型フリーロール
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル系繊維の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、湿式紡糸法または半乾半湿式紡糸法によるアクリル系繊維の製造工程において、紡糸ノズルから紡出されて凝固浴中で凝固したアクリル系繊維中の溶媒を連続的に除去する方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アクリル系繊維は、湿式紡糸法または半乾半湿式紡糸法で製造される。上記紡糸方法においては、紡糸ノズルから紡出された紡糸原液を凝固浴中で凝固させるが、凝固後も、繊維は紡糸原液の溶媒により湿潤状態にあるため、繊維をそのまま直ちに乾燥させると繊維同士が接着してしまう。このため、乾燥前に予め繊維中の溶媒を水槽中での水洗工程により除去する方法が一般に採用されている。
【0003】
前記水洗工程において繊維内の溶媒の除去速度を早くするには繊維束の厚みを薄くすることが有効である。しかし、実際は設備生産性を向上させるために繊維束は厚くする必要がある。そのため実際の工程では、溶媒の除去不足による乾燥工程での繊維同士の融着、延伸工程での断糸が発生し、工程トラブルの原因になるとともに、得られるアクリル系繊維の物性も低下するという課題があった。
【0004】
また繊維からの溶媒の除去速度は、水洗温度の影響がかなり大きいため、通常は加熱された熱水中で洗浄が行われる。しかし、水洗槽の熱水の温度を例えば95℃以上にしようとすると、熱源である蒸気配管から泡が発生し、その泡によって繊維束が乱れ、工程トラブルを引き起こす。そのため、実際に使用される洗浄浴中の熱水温度は90℃程度が限界である。この点も、洗浄が十分に行われず、繊維に溶媒が残存する要因のひとつである。
【0005】
これらの問題点の改善策として、特許文献1には、方向ガイドから浴液を噴出させることにより繊維束をほぐすことで、単糸間接着を防止する技術が提案されている。しかしながら繊維束が厚くなると溶液が内部に浸透しにくく単糸間接着を防止することができない。また特許文献2では、加振器あるいはラダーロール状のフリーロールを繊維束に接触させることにより、繊維束を振動させ洗浄効果を向上させる技術が開示されている。しかしながら機械的振動だけでは繊維束がほぐれるだけの効果しか無く、さらなる溶媒除去速度の向上が望まれている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭64−85306号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平5−140815号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような従来のアクリル系繊維の製造工程における溶媒除去の問題点に鑑み、効率的に溶媒を除去し、かつ工程安定性を確保することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アクリル系繊維束を95℃以上の熱水中を走行させ、その際熱の供給源である蒸気配管から発生する泡を微細化させて繊維束の乱れを防ぐとともに、繊維束を振動させることにより、効率的な溶媒の除去、工程安定性の確保が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るアクリル系繊維の製造方法は、紡糸ノズルから紡出されて凝固浴中で凝固したアクリル系繊維束を、95℃以上の熱水中の微細化された泡の中を通過させることを特徴とする。このとき微細化された泡が、熱の供給源である蒸気配管より発生する泡を微細化したものであるのがこのましい。また微細化された泡の中を通過することによって、繊維束が振動することが好ましい。また本発明に係るアクリル系繊維の好ましい製造方法は前記繊維束を振動させる方法として、さらに機械的振動を併用することを特徴とする。さらに本発明に係るアクリル系繊維の好ましい製造方法は繊維束の厚みが2000dtex/mm以上、10000dtex/mm以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るアクリル系繊維中の溶媒除去装置は、水洗槽内に熱の供給源である蒸気配管を設け、かつ発生する泡を微細化する機能を有し、さらに繊維束の乱れを防止する側壁を有することを特徴とする。また本発明に係るアクリル系繊維流の好ましい溶媒除去装置は前記溶媒除去装置にさらに機械的振動装置を設けることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。本発明におけるアクリル系繊維とは、アクリロニトリルの単独重合体、またはアクリロニトリルと共重合可能な1種以上のビニルまたはアリル化合物などとの共重合体からなるものであり、これらの重合体をDMAc(ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、アセトン、硝酸、ロダンソーダ水溶液などの有機または無機の溶媒に溶解した紡糸原液を用いて、湿式または半乾半湿式紡糸法により製造されるものである。
【0013】
そして、本発明においては、上記のようなアクリル系繊維の製造工程において、紡糸ノズルから紡出されて凝固浴中で凝固したアクリル系繊維束を、95℃以上の熱水中の微細化された泡の中を通過させることで、該アクリル系繊維中の溶媒を除去する。このとき、微細化された泡として、特に限定されるものではないが、熱源である蒸気配管より発生した泡を微細化したものを用いるのが好ましい。
【0014】
通常、水洗に使用される熱水は、水洗槽中に配置された蒸気配管により加熱されている。熱水全体の温度を95℃以上にしようとすると、蒸気配管に接している部分の熱水はそれ以上の温度に加熱されることになるため、そこから多量の泡が発生して繊維束を乱すことにより、工程トラブルを引き起こしてしまうことから、従来は90℃程度で洗浄を行っている。しかしながら水洗工程における溶媒の除去速度は、熱水温度の影響が大きいことから、できるだけ高い温度で使用することが望ましい。本発明の好ましい方法においては、水洗槽内に泡の分散板を設置し、水洗槽の熱水の温度を95℃以上にして、あえて蒸気配管から泡を発生させ、この泡を上記分散板で微細化することで繊維束を振動させることにより、繊維束中の溶媒の除去速度を促進させる。もし、蒸気配管から発生した泡を利用しない場合には、別途微細化された泡を供給してやればよい。
【0015】
本発明における泡の微細化とは、水洗槽を走行する繊維束がその泡によって乱れたりしない程度に適度に微細化されていればよく、特にその程度が限定されるものではないが、例えば、一般に蒸気配管から発生した泡の大きさは1cm程度であるのに対し、本発明ではそれを5mm以下程度の大きさに微細化してやればよい。
【0016】
本発明ではさらに、機械的振動手段を併用して、繊維束をより振動させ、洗浄を促進させるのが好ましい。機械的振動手段としては、公知の方法、例えば菊型フリーロールや加振機などのほか、繊維束に振動を与えることが出来るものであれば限定されない。
【0017】
本発明において、水洗槽を走行する繊維束の厚みは、200dtex/mm以上、10000dtex/mm以下であるのが好ましい。ここでいう繊維束の厚みとは、水洗槽を走行する繊維束の総繊度(dtex)を、該繊維束の幅(mm)で除した値である。一般に、水洗槽を走行する繊維束の厚みが、2000dtex/mm以下の場合は、従来の方法によっても溶媒の除去速度はさほど低くなく、問題とならない。しかしながら繊維束の厚みが2000dtex/mm以上になると厚みが増すごとに溶媒の除去速度が顕著に低下する。本発明の方法によって、繊維束の厚みが2000dtex/mm以上においても効率よく溶媒を除去することが出来、例えば繊維束の厚みが10000dtex/mm以下であれば溶媒の残存量は何も施さない場合の1/2以下になる。繊維束の厚みが10000dtex/mm以上になると繊維束が振動しにくくなるため、溶媒の除去効果も低減する傾向がある。
【0018】
以下、本発明の溶媒除去装置について、添付図面を引用して更に説明する。まず図1に示す溶媒除去装置Aについて説明する。紡糸ノズルから紡出されて凝固浴中で凝固したアクリル系の繊維束1は送り込みガイドロール3、4によって水洗槽2に導かれる。水洗槽2には熱水温度を95℃以上に調整する昇温用蒸気配管5、蒸気配管より発生する泡を微細化し繊維束を振動させるための分散板6を設置している。また、繊維束の整状を整えるトイ7を設置している。そのため水洗槽2内では、繊維束1は泡により振動するが、トイにより乱れることなく走行し、引き取りガイドロール8、9により水洗槽より導き出され、乾燥工程へ導かれる。ここで蒸気配管より発生する泡を微細化するための分散板6の形状は特に限定しないが、多孔板、金網、スリット等の他、スチールウールを金網などにある程度の厚さで敷きつめたようなもの等、泡の微細化が可能なものであればよい。さらに溶媒の除去効率を良くするには、図2の溶媒除去装置Bに示すように、図1に示した溶媒除去装置Aに機械的振動を加えるとさらに効果的である。ここで機械的振動を与える方法としては、特に限定はしないが、菊型フリーロール、加振機等の振動を付与できるものであればよい。
【0019】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例の記載に先立ち、繊維中の溶媒量の測定方法および溶媒除去時の繊維束の厚みの算定方法について以下に説明する。
(繊維中の溶媒量の測定方法)
アクリル系含液繊維を有機溶媒に溶解し、ガスクロマトグラフィーにて溶媒量を定量分析するとともに、溶解液の固形分濃度を絶乾法により測定し、単位樹脂あたりの溶媒量を[重量%]として算出した。
(溶媒除去時の繊維厚みの算定方法)
アクリル系繊維最終製品の繊維束の総繊度[dtex]に溶媒除去工程以降の延伸倍率をかけ、溶媒除去時のアクリル系繊維の総繊度を算出し、これを溶媒除去時の繊維束の幅[mm]で除して[dtex/mm]として算出した。
【0020】
(実施例1)
アクリロニトリル49.5重量%と塩化ビニル50.0重量%、スチレンスルホン酸ソーダ0.5重量%よりなる共重合体を、アセトンに固形分濃度29.5%で溶解した紡糸原液を用いて、ノズル径0.25mm、4000ホールのノズルから濃度30%のアセトン水溶液に押し出し、湿式紡糸法により凝固操作を行った。この凝固後のアクリル系繊維を、300%の浴中延伸を行った後、繊維束の厚みを5000dtex/mmに調整し、図1に示した溶媒除去装置A内を通過させることで溶剤の除去を行った。このとき使用した分散板は、線径0.5mmのスチールウールを厚さ3cmとなるように敷き詰め金網で挟み込みこんだものであり、この分散板を蒸気配管の約1cm上の位置に配置した。また、この場合の処理速度は0.5m/s、水洗水の温度は95℃、水洗槽の長さは5mとし、3槽で処理することにより滞留時間は30sとした。以上の装置および条件によりアクリル系繊維中の溶媒を除去したところ、処理前の繊維内の溶媒量が15.0重量%であったものが、3.6重量%まで除去することができた。
【0021】
(実施例2)
実施例1と同じ条件で凝固したアクリル系繊維を、図2に示した溶媒除去装置B内を通過させることで溶剤の除去を行った。なお、菊型フリーロール10は繊維束の走行により回転するもので、本体は径0.2m、バーはアクリル製で径0.01mのものを4本設置したものを用いた。その他の条件は実施例1と同じである。以上の装置および条件によりアクリル系繊維中の溶媒を除去したところ、処理前の繊維内の溶媒量が15.0重量%であったものが、3.1重量%まで除去することができた。
【0022】
(比較例1)
実施例1と同じ条件で凝固させたアクリル系繊維を、図1から分散板を除いた水洗槽内を90℃で通過させ、溶媒の除去を行った。その他の条件は実施例1と同じである。その結果、処理前の繊維内の溶媒量が15.0重量%であったものが、8.0重量%までしか除去することができなかった。
【0023】
以上の実施例、比較例における水洗処理後の繊維中の各溶媒量、比較例との溶媒量の比を表1にまとめた。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、アクリル系繊維の製造工程において、蒸気配管より発生する泡を利用し繊維束を振動させることにより効率的な溶媒の除去が可能となり、設備費、変動費を増大することなく生産性を向上させるとともに、工程安定性の確保にも貢献しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶媒除去装置の1例を示す概略説明図
【図2】本発明に係る溶媒除去装置の1例を示す概略説明図
【符号の説明】
1:繊維束、2:水洗槽、3,4:送り込みガイドロール、5:蒸気配管、6:発生する気泡の分散板、7:トイ、8,9:引き取りガイドロール、10:菊型フリーロール
Claims (7)
- 紡糸ノズルから紡出されて凝固浴中で凝固したアクリル系繊維束を、95℃以上の熱水中の微細化された泡の中を通過させることを特徴とするアクリル系繊維の製造方法。
- 微細化された泡が、熱の供給源である蒸気配管より発生する泡を微細化したものである請求項1記載の製造方法。
- 微細化された泡の中を通過することによって、繊維束が振動することを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
- 繊維束を振動させる手段として、さらに機械的振動を併用することを特徴とする請求項1〜3記載のアクリル系繊維中の溶媒除去方法。
- 繊維束の厚みが2000dtex/mm以上、10000dtex/mm以下であることを特徴とする請求項1〜4記載のアクリル系繊維中の溶媒除去方法。
- 水洗槽内に熱の供給源である蒸気配管を設け、かつ発生する泡を微細化する機能を有し、さらに繊維束の乱れを防止する側壁を有するアクリル系繊維中の溶媒除去装置。
- 前記溶媒除去装置にさらに機械的振動装置が設けられていることを特徴とする請求項6記載のアクリル系繊維中の溶媒除去装置。
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JP2003014394A JP2004225195A (ja) | 2003-01-23 | 2003-01-23 | アクリル系繊維の製造方法および溶媒除去装置 |
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Cited By (3)
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---|---|---|---|---|
JP2007321254A (ja) * | 2006-05-30 | 2007-12-13 | Teijin Techno Products Ltd | 走行繊維の洗浄装置及び洗浄方法 |
CN102677200A (zh) * | 2012-05-22 | 2012-09-19 | 中国科学院山西煤炭化学研究所 | 聚丙烯腈初生纤维的水洗槽及应用 |
EP4119704A1 (en) * | 2021-07-16 | 2023-01-18 | Formosa Plastics Corporation | Water washing device for carbon fiber filament precursor and method of water washing |
-
2003
- 2003-01-23 JP JP2003014394A patent/JP2004225195A/ja active Pending
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