JP2004225066A - 分子線セル - Google Patents

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高稔 山本
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真哉 梅本
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Abstract

【課題】塩化物、酸化物、窒化物、珪化物、硫化物などの化合物を組成を変えず、そのまま加熱して分子線とすることができ、かつ、高温まで放出ガス量を抑えた分子線セルを提供すること。
【解決手段】分子線エピタキシー装置の外側に設けた赤外線ランプの赤外光を石英ロッドによってるつぼの底部の窪みにまで導き赤外光でるつぼと材料を急速に高温(1500℃〜1700℃)まで加熱、溶融あるいは気化して材料の組成が変わらないようにして分子線とする。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は試料を1500℃〜1700℃の高温に100℃〜150℃/秒で急速加熱することができる高温用の分子線セルに関する。分子線セルというのは分子線エピタキシャル成長法(Molecular Beam Epitaxy)において試料を加熱して分子線とするための単位となる装置である。分子線エピタキシャル成長法というのは10−10Torr(10−8Pa)程度の超高真空に引いたチャンバにおいて基板ホルダーによって斜め下向きに保持した基板に、その斜め下に放射状に設けた分子線セル(Molecular Beam Cell)から原料となる物質の分子線を放射して加熱した基板上にそれらの物質の化合物や単体の薄膜を形成するものである。
【0002】
【従来の技術】
分子線エピタキシー装置は超高真空に引くことのできる超高真空チャンバと、その内部壁面に近接して設けられた液体窒素シュラウドと、チャンバの中央部にある試料基板を保持するための基板ホルダーと、基板ホルダーの斜め下に適数個設置された分子線セルと、チャンバを真空に引くための真空排気装置と、ゲートバルブと、ゲートバルブによって接続される試料準備室などよりなる。分子線セルというのは単体の固体の原料を液体にして蒸発させ分子線とするものである。たとえばSi、Ga、In、Cu、Agなどの金属固体を加熱し融液として蒸発させる。砒素(As)、燐(P)、硫黄(S)のように常温で固体で加熱して昇華する材料の場合にも使用できる。
【0003】
雰囲気が超高真空であるから気化すると通常分子状態になり分子線となる。そのような固体液化用の分子線セルはKセル(Knudsen Cell)と呼ばれて既に長い実績がある。例えば実開平4−13056号、実開平4−13057号、実開平4−13058号、実開平3−22067号、実開平3−38367号、実開平4−18427号、実開平4−25870号、実開平4−133427号、実開昭63−199172号などがある。
【0004】
KセルはPBN(Pyrolytic Boron Nitride)の鍔付き有底円筒形るつぼをコイル状、リボン状の抵抗加熱ヒータ(W、Ta)で取り囲み、さらにTaの反射板を円筒状に設け下方にはディスク状の反射板を設けるようになっている。反射板は円板状の板で支持され板は2〜3本の支柱で支持される。るつぼの開口部の上には開閉自在のシャッターが設けられる。
【0005】
るつぼに原料固体を入れておきチャンバを閉じ真空に引いてヒータに通電して加熱し原料を融かして液状とし蒸発できるようにする。シャッターを開くと蒸発した分子状のビームが基板に向けて飛翔する。シャッターの開閉によって任意の厚みの薄膜を自在に製作することができる。一つの分子線セルのみのシャッターを開くとその単体の薄膜ができ、2つの分子線セルのシャッターを開くと化合物の薄膜ができる。
【0006】
Kセルは分子線セルの基本であるから図1によってその構造の概略を説明する。有鍔有底円筒形のるつぼ1はPBNによって製作される。その中へ固体の材料を入れるようになっている。るつぼ1の廻りにコイル状のヒータ2が設けられる。これはW、Taなどの細い抵抗加熱ヒータである。この例ではヒータ2はるつぼ1の上方で密に下方で粗になるように巻線分布している。るつぼの上方は開口部だから温度が下がり易く、融液で閉じられた下底部は温度が上がり易いので、それを補償するためにヒータ密度を上方になるにつれ高くしているのである。
【0007】
ヒータ2は細い金属線で加熱して柔らかくなるのでヒータ2を保持するため溝付きのヒータサポート3が設けられる。そのさらに外側に円筒形の側面反射板4が設けられる。るつぼの側面に逃げる熱を反射して、るつぼに戻し、るつぼを高温に保持する作用がある。これはTaの薄い板を何重にも重ねたものである。平坦面を持つものだと板がくっつくので薄板には多数の突起が造形してあり隙間を確保するようになっている。るつぼ1、ヒータ2、ヒータサポート3、側面反射板4は同心状に分布する。るつぼ1の下底の下方には円盤状の下面反射板5が複数層設けられる。これは、るつぼ1の底面からの放射熱を反射し、るつぼの高温を維持するためのものである。
【0008】
るつぼ1の底面には熱電対6の先端が接触するように設けられる。円盤状のベース板19が下面反射板5、側面反射板4を保持する。るつぼ1、反射板4、5の下方には円盤状のフランジ7がある。これはステンレスなどの厚い金属板であり分子線エピタキシー装置のポートフランジに金属ガスケットを介して固定される部分である。ベース板19は支柱(図示しない)によってフランジ7に結合される。支柱がベース板を保持する。コイルヒータ2の両側端子に続くように電流導入棒20、20がフランジ7からベース板19に向かって縦方向に設けられる。フランジ7には真空を維持しながら熱電対端子電圧を外部へ取り出すための熱電対フィードスルー9がある。また電流導入棒20と外部電源回路を真空を維持しながら接続するための電流フィードスルー8がフランジ7に設けられる。
【0009】
そのようにコイル、リボン状のヒータによって抵抗加熱する分子線セルは広く使われている。金属や融点の低い非金属の単体を融液とするには好適であり実績もある。ヒータの材質はタングステンWやタンタルTaである。反射板は薄いTa板を何層にも重ねたものである。層の数が多いほど反射が大きくなる。熱をるつぼに局在させることができる。支柱はステンレスかモリブデンとする。るつぼの温度を監視するため、るつぼ底部に熱電対を接触させるようになっている。
【0010】
しかし、ヒータ、ヒータ保持材による制限もあって、材料温度は1400℃以上にはなかなか上がらない。材料温度よりヒータ温度は高くなければならないがヒータを支持する酸化物(アルミナなど)やPBNなどの保持材からガスが大量に出るし母材を構成する物質自体が分解して出てくる。ガスや分解物質によって、エピタキシャル成長させている薄膜が汚染されることがある。だからKセルによる加熱温度には限界がある。
【0011】
有底有鍔るつぼを使うKセルの場合、るつぼに初めに入れた材料を消費すると真空チャンバを開いて材料を補給しなければならない。そうではなくて外部のガスボンベから気体原料を常時補給するようになっている分子線セルもある。ボンベ、ガス配管、分子線セル、超高真空チャンバというように配管系が連続する。分子線セルにはるつぼがないがヒータやシャッター、反射板などがある。それはガスソースセルと呼ぶ。常温では気体である原料の場合はガスソースセルを使う。常温で気体でなくても大量に必要で外部から常時送給する方が好都合である場合とかにガスソースセルを使うことができる。その場合は外部で材料を加熱して気化してから配管に流す。硫黄(S)、セレン(Se)などはKセルの他にガスソースとすることもできる。
【0012】
三つ目の分子線セルは、クラッカーセルというものである。砒素(As)や燐(P)の場合、通常のKセルも使われるが、これらは分子(As、As、As)といっても様々のものがある。単体のAs、Pが必要だということが多い。その場合にAs、Pなどの固体原料を収納したKセル部分と分子線エピタキシー装置の中へ挿入されたクラッカー部分が別になっており、それが長いパイプでつながれている。Kセルでヒータによって原料を抵抗加熱して蒸気にするが、まだそれだけでは分子にならず塊である。それが上方のクラッカー部に入ってさらに加熱されて微小な分子になる。それは実開平4−29664号(実公平7−34935号)に提案されている。
【0013】
四つ目の分子線セルは、ラジカルセル(Radical Cell)というものである。ZnSe、ZnS系の半導体のp型ドーパントとして窒素が使われるが窒素分子(N)は強固な結合をもち窒素ガスのままで分子線としてもp型ドーパントにならない。窒素原子(N)としなければならない。ガスソースセルのように外部の窒素ガスボンベから配管によって窒素ガスを引いてきて出口の部分でRFコイルによって高周波電力を与え窒素プラズマとする。それは窒素原子(N)の中性励起状態(ラジカル)を含む。それはZnSeの中でp型ドーパントとして機能する。それは高周波パワーによってN→2Nという反応を起こさせるものである。
【0014】
高周波電力をガス原料に掛けてプラズマにしイオンを引き出すイオン源はすでによく知られていた。蒸着装置に高周波コイルを付け蒸発する原料を高周波パワーによってプラズマとして被着力を増強するイオンプレーティング法もよく知られていた。そのようなプラズマ技術を分子線セルに応用したものがラジカルセルだということもできよう。個々の要素はよく知られていた技術であるが、それらを組み合わせることによって画期的な分子線セルが発明された。それによってZnSe系半導体のp型ドーピングが初めて可能になった。1990年頃になされた優れた発明であった。
【0015】
以上に述べたものは全て分子線エピタキシャル成長法と分子線セルに関するものであった。これから説明する従来技術は分子線エピタキシャル成長法(MBE)とは全く分野の異なる技術である。分子線セルとは全く無関係の従来技術である。しかし本発明はその技術を基礎にして創案されたものであるから基礎となるものをここに説明する。それは「赤外線導入加熱装置」というものである。装置の外に設けたランプで赤外線を発生させ、それを石英ロッドを使って真空チャンバに導きステージの上に置かれたシリコンウエハー、GaAsウエハー、ZnSウエハー、セラミック板、金属板などに上から赤外線を当てて試料とステージを加熱するものである。ランプと試料が遠く離れており装置内にヒータを置く必要がないという利点がある。
【0016】
特許第2517218号(特願昭60−50347号、特開昭61−211978号、「輻射加熱装置」、出願人株式会社サーモ理工、発明者遠藤智義)
がそのような赤外線導入加熱装置を提案している。真空チャンバの中にステージを設け、その上に結晶試料(Si、GaAs、ZnSウエハー)、金属試料、セラミック試料を置いて、その上に石英ロッドを上向きに設け、石英ロッドの上端に赤外線ランプを取り付けている。赤外線ランプと石英ロッド端は回転楕円体のミラーの焦点の位置にあり赤外線ランプの光が石英ロッドの端に入るように工夫されている。
【0017】
ステージの上に置かれた試料を均熱に高効率加熱するために石英ロッドの先端は凸レンズの形状となっている。先端を凸にして集光性を与える。従来の抵抗加熱ヒータによる加熱装置ではステージにおいた小さい試料を500℃〜600℃にしか加熱できない。しかも、そのような高い温度にするとヒータが頻繁に断線する、と問題点を述べている。それはヒータを使わないから試料を1000℃〜1300℃まで加熱できると主張している。
【0018】
これは真空中に置かれたステージの上に固体試料を置いて固体のまま加熱して熱処理、半田付けなどを行うものである。温度の上限はステージの熱容量と熱伝導によって大きく限定される。ステージは広いステンレスの台であり試料はステージに強く接触しているから熱はステージに逃げる。ステージの熱容量が大きく熱伝導も旺盛なので試料の温度はあまり上がらない。ステージから試料を切り離すことができれば試料温度はもっと上がるであろうが、それはできないことである。赤外線ランプを2kWとしても試料の昇温の最大温度は1000℃〜1300℃である。ステージの存在は温度を下げるだけでなく温度上昇速度をも制限する。大体100℃/分の程度である。
【0019】
それは抵抗加熱ヒータを使ったもの(10〜20℃/分)に比較すれば、ずいぶんと速い。しかしそれでも速すぎるということはない。それはステージに試料を密接に接触させるという構造に由来する欠点である。重いステンレスのステージがあるので熱の大部分がステージの加熱に浪費されてしまう。ステージは熱伝導によって強く熱を奪う。それだけでなくステージは表面積体積が大きいから放射損失も大きい。だから熱伝導、放射の両方の作用が盛んに起こって熱は著しく失われる。ステージによる熱の損耗が90%を超える。
【0020】
ステージを加熱するというのは試料とステージが熱平衡になるという利点はある。が、それは大きすぎる犠牲といわねばならない。ランプパワーの殆ど全て(90%を超える)が単にステージの加熱に費やされるというのはいかにももったいない。それが最高温度を下げ、昇温速度を下げている。
【0021】
本発明はあくまで分子線セルの発明である。分子線エピタキシー装置に使う分子線セルを改良しようとするものであって加熱装置を改良しようとするものではない。本発明は、しかし上記の輻射装置と関連があるからここに説明した。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
分子線エピタキシャル成長法の適用可能な範囲が広がるとともに分子線セルにも次々と新しい要求が寄せられる。それを解決するために新種の分子線セルを本発明者らは鋭意考案してきた。
【0023】
単体でなくて化合物の分子線を作り出したいというような要望が新しく起こってきている。例えばフッ化物、硫化物、塩化物、酸化物、窒化物、シリサイド(硅化物)などである。化合物の場合は単体を分子線として飛ばすときよりも格段に難しい条件が課される。様々な化合物があるが一般的に単体元素より融点が高いので融液にして蒸発させる為の温度が高い、ということがある。
【0024】
それよりももっと難しいのは化学量論比(stoichiometric)を保持したまま分子線とするという要求である。化学量論比というのは化学結合によって決まる成分の整数比のことである。GaAsならGa:As=1:1であるし、SiOであればSi:O=1:2である。ZnClならZn:Cl=1:2、MgFならMg:F=1:2である。それを化学量論比というのである。
【0025】
例えば蒸着によって酸化物を飛ばそうとすると酸素が先に抜けるので酸素比の少ないものが基板上に被膜となって付着する。GaAsやGaNの場合はAsやNが抜けてGaAs(y<1)、GaN(y<1)というような半端な被膜ができる。そのような事情は加熱によって溶融し分子線とする分子線エピタキシー法でも同様である。それでは困るのであって、例えばMgFなら、フッ素抜けがなく、きちんとMgFである被膜を形成できるような分子線セルが望まれるのである。それはつまり分子を壊すことなく速やかに分子線とする、ということである。
【0026】
化合物を原料とする分子線セルがこれまで存在しなかったというわけではない。たとえばn型ZnSe膜を作製する場合、n型ドーパントは塩素(Cl)である。塩素を単独に分子線として飛ばすのでもよいのであるが、それは2原子分子Clでそのままではn型ドーパントにならない。それでZnClを材料としてKセルによって飛ばすようにする。ZnはZnSeの主成分でありZnSeの内部に入って塩素がn型ドーパントとなる。だからその場合はZnClが化学量論比で飛ぶ必要はない。だから化学量論比で飛ばなくて良いような化合物は本発明の先例にならない。
【0027】
そのようなものとして従来の抵抗加熱ヒータをもつKセルはなお不十分である。ヒータのパワーを増強してるつぼを加熱する温度を上げるとしても抵抗加熱ヒータではるつぼ内材料を1300℃〜1400℃に加熱することはかろうじてできる。ヒータが断線しないまでもヒータの保持材料(図1のヒータサポート3)からガスが出て、それが試料を汚染する。
【0028】
ヒータは細く撓み易い金属線だから保持部材が必要である。それはアルミナ(Al)のような耐熱性の酸化物とかPBNとか高温に耐える絶縁物である。るつぼ内材料温度よりもヒータの温度はもっと高い。材料が1300〜1400℃となるにはヒータは1500℃〜1600℃というような高温になっていなければならない。そのような高温になるとヒータは何とか耐えるとしても、絶縁保持部材のアルミナは主成分のAlを放出し試料を汚染するし、PBNの場合は主成分の窒素Nが出て試料を汚染する。
【0029】
1600℃を超える温度でも分解することなく不純物を放出しないような絶縁物はなかなか存在しない。保持部材を使わずヒータを自立させることができれば良いのであるがヒータは細い金属線で加熱すると柔らかくなるので、自立は難しい。必ずヒータの保持部材(サポート)は必要である。保持部材に付着した汚染物が飛ぶのであれば汚染を少なくすればよいのであるがヒータを1500℃以上にすると保持部材の主要構成要素自体が放出されるのでどうしようもない。
【0030】
フッ化物、塩化物、シリサイド(珪化物)、砒化物、燐化物、酸化物などの化合物はいずれも融点が高いから、それを分子線とするにはより高温に加熱するということが必要である。これらの化合物は構成要素の金属単体あるいは非金属の単体の融点よりも高い融点をもつので容易には融かすことができない。よほどの高温でなければならない。
【0031】
しかしそれだけではない。より速やかに高温に加熱するという必要がある。迅速に加熱できないと先述のようにフッ素、塩素、酸素、窒素、砒素など非金属成分が速く抜けてしまい組成がずれてくる。それではいけない。化学量論比を保ったまま分子線とするには急速加熱が必須である。急速に加熱して化合物の分子のまま分子線とすることが要求される。Kセルの抵抗加熱ヒータの場合は、昇温速度はせいぜい20℃〜40℃/分の程度である。それはいかにも遅すぎる。とても役に立たない。
【0032】
【課題を解決するための手段】
分子線セルの外部に設けたランプから出た光を石英ロッドによってるつぼの底へ導き、るつぼ底に光を当て、光によってるつぼと材料を加熱して高融点の材料を融液として分子線とするようにした。外部赤外線ランプの光を石英ロッドを導光路として内部へ導きるつぼの下底に当て、るつぼと中の材料を加熱するから材料の温度を急激に上昇させることができる。光照射によって加熱するから急速加熱できるということである。抵抗加熱ヒータの場合20℃〜40℃/分程度だったが、光による加熱の場合は100℃〜150℃/秒の急速加熱が可能である。
【0033】
さらにまた高温まで加熱することができる。抵抗加熱ヒータは保持材料が温度に耐えないで分解され不純物を発生するから高温にはできない。しかし本発明ではヒータがないからヒータ保持材料もない。加熱して分解する恐れのないものばかりである。しかも孤立したるつぼと材料を光によって加熱するから、いくらでも高温にすることができる。
【0034】
本発明においては赤外光が材料とるつぼによって吸収され、それが材料・るつぼ温度を上げる。るつぼ・材料はステンレスステージなど熱容量の大きい面積体積の嵩む金属台と接触しておらず空中に浮いている。だから熱伝導によって熱がるつぼ・材料から逃げない。旺盛な熱伝導がないということはとても好都合なことである。真空中だから対流損失はない。放射による損失は少しあるが熱伝導損失がない。真空中で熱が失われる最も大きい原因は熱伝導であるから、それがないということは著しく有利である。放射もあるがるつぼと材料は体積、面積がステージなどより格段に小さいから放射損失も少ない。熱伝導がなく放射もわずかだから材料の温度を著しく上げることができる。PBNるつぼやカーボンるつぼ、金属るつぼ等が耐えることができる温度まで材料の温度を上げることができる。それは最高温度が上がるということである。それに昇温速度が飛躍的に上がるということでもある。最高温度上昇、加熱速度上昇、それは本発明の最も優れた特徴である。
【0035】
それは試料が金属ステージの上に密に置かれている場合と大きく異なる。
高温だということは酸化物、フッ化物、塩化物などの化合物であっても化学量論比を維持しながら融液にでき分子線にすることができるということである。たとえば1500℃〜1600℃の高温に材料を加熱することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
図2によって本発明の赤外線加熱分子線セルの構造を説明する。有鍔有底円筒形のるつぼ1がその鍔部において円筒形の側面反射板4によって保持されている。側面反射板4はTaの薄い板を円筒状に丸めたものであり何層にも重なり合っている。層の数が多い方が反射率が高くて熱をるつぼへより有効に閉じ込めることができる。るつぼ1の下方には円盤状のTaの板が重ねてあり、それが下面反射板5となっている。
【0037】
円盤状のベース板19が支柱(図示しない)によってフランジ7に対して保持されている。熱電対6がベース板19と下面反射板5を貫いて縦方向に設けられる。但し熱電対6をるつぼ1の底へ当てる事ができないから、空間の雰囲気を測定できるようにしている。それは材料の温度を測定するための熱電対である。
【0038】
るつぼ1の中には材料22が収容される。図1のKセルと違って、るつぼ1と反射板4、5の間に抵抗加熱ヒータやヒータ保持部材が存在しない。ヒータ加熱でないからである。るつぼ1の下底に接近して直線状の長い透明の石英ロッド23が設けられる。石英ロッド23はフランジ7を突き抜けてシール部を貫通し大気圧の部分へ出ている。フランジ7において分子線エピタキシー装置のポートに結合されるのであるから実際にはフランジより下が分子線エピタキシー装置の外部に出ることになる。外部にはランプ室24が設けられる。ランプ室24は赤外線ランプ25と赤外線ランプを囲む集光用ミラー26、27が設けられる。集光用ミラー26、27は凹面ミラーである。球面ミラーでもよいが、ここでは回転楕円をもつミラーとなっている。回転楕円面ミラー26、27とする場合は赤外線ランプは下側のミラー26の楕円の焦点F’に一致させて設けるとよい。
【0039】
石英ロッド23の始端33が集光用ミラー27の開口部を貫いてその内部に達している。石英ロッド23の始端33はミラー27の焦点F近くに位置させる。ただし始端33が焦点Fに合致するのが最適だとは限らない。だから固定せずに焦点Fの近傍で始点33の最適な位置を探すようにする。ランプ室24の上部は蓋28で閉じられている。ランプの熱によってミラー26、27の温度が上がるので冷却水80がミラー26、27の背面を冷却するようになっている。
【0040】
石英ロッド23の終端34はるつぼ1の底近くに位置させる。るつぼ底へ接触させるのではなく僅かな間隙を置いて対向させるのである。石英ロッド23の始端33の近くには直径の大きい鍔部30が形成されている。フランジ7は胴部36を介して下フランジ35につながっている。下フランジ35の下面と石英ロッド23の鍔部30の間にOリング32をはさみ、押さえ板29によって鍔部30を上向きに押さえて固定する。それによって石英ロッド23がフランジ7に対し固定される。また気密封止されチャンバ内の真空が維持される事になる。
【0041】
実際には下フランジ35、鍔部30、Oリング32、押さえ板29よりなる気密封止支持機構はより複雑な構造を取るがここでは簡略に示している。
【0042】
【実施例】
[実施例1(底部に凹部を形成し吸熱を高揚:図3)]
真空装置外部で発生させた赤外線を石英ロッドで導き、るつぼ底部に照射するのであるが、ロッドの先端からの光が効率よく材料を加熱するようにるつぼの底部に凹部を設ける。図3によって、るつぼの形状を説明する。有底有鍔円筒形のるつぼであるが底部に窪み37を付けており底部周縁部38よりも奥まった形状とする。窪み37の中にロッド終端34が入り込むような配置とする。
【0043】
ロッドの赤外線が終端34から出て斜め側方に広がるが、それは全て底部周縁部38によって吸収される。だから無駄な光が発生しない。赤外光を効率よく全てるつぼ1と材料22に吸収させることができる。るつぼ1は窪み37、底部周縁部38の他に円筒形の側面39と、上端開口部の外側に続く鍔部40を有する。
【0044】
赤外光に対する石英ロッドの屈折率をnとすると、石英ロッドの中に置いて全反射臨界角αは、α=cos−1(1/n)によって与えられる。それは伝搬可能な光線が軸線となす角度の最大値である。それ以上の傾斜角の光線は全て散逸する。伝搬光はだから全てα以下の傾斜角の光線である。終端面34で出射するときの最大の傾斜角βはβ=sin−1(n−1)1/2である。石英ロッドの屈折率nと空間の屈折率1の差がかなり大きいからαは大きいしβも大きい。コア・クラッド構造からなる光ファイバの場合とは大きく異なる。赤外光波長にもよるが例えばn=1.4と仮定すると、α=45゜、β=78゜となる。それはかなり大きい値である。
【0045】
それはランプから見れば好都合なことである。ランプから出た光が集光用ミラーによって反射されて石英ロッドの始端33に入る場合、78゜までの傾斜角の光線は入射して伝搬光になるということである。反対に終端34ではビームの広がりが78゜にもなるということである。そのような広がりの大きいビームだからるつぼの底面に窪み37を付け石英ロッドの終端34をその中へ挿入するということはとても有用である。
【0046】
[実施例2(るつぼの外周にPGコーティング:図4)]
PBNるつぼは赤外光をかなり通す。材料自身が充分に赤外光を吸収できるものであれば良いのであるが、そうでない場合もある。すると赤外光はるつぼ、材料を透過して無駄になるという事もある。それを防ぐために、るつぼ1の側面39、底面、鍔部40の全部について外部に高融点金属あるいはPG(パイロリティックグラファイト:pyrolytic graphite)をコーティングする。ここではPGの側面被覆42、底面被覆43、鍔部被覆44を示す。コーティング層42、43、44は赤外光を充分に吸収する。
【0047】
底面被覆43は直接にロッドからの赤外光を吸収できる。それが熱を保持してるつぼの底部の温度を高く維持する。側面被覆42は斜め赤外光が内部から外へ向けて逃げるのを防止する。外向きの光を吸収して、それを熱に変え保持するようになる。鍔部被覆44も外向きの漏れ光を吸収できる。PBNは赤外光に対し透明に近いので赤外光に対し黒体であるPGを被覆するのは熱をるつぼ内に保持するために有用である。それは輻射熱(熱線)を閉じ込めるというだけでなく赤外光の逃げを防ぐという積極的な意味がある。
【0048】
[実施例3(るつぼの鍔部に反射板:図5)]
既に述べたように分子線セルのるつぼは上部が開口しているから上部で温度が下がりがちであり、上部で温度が低下すると融液から蒸発した材料が上部で冷却されてまた液滴に戻り鍔部に付着したりるつぼ内部に戻ったりする。それが薄膜の品質を低下させることもある。それで鍔部40に、リング状の複数枚のTaの反射板45を載せている。薄いTaの板であるが熱を下向きに反射して、るつぼの開口部の温度低下を防止する。
【0049】
[実施例4(るつぼの上半部外周に反射板:図6)]
るつぼは上方の開口部から熱が逃げるので、どうしても上半部の温度が下がる。光加熱にすると光が材料とるつぼを通り抜けて斜め上方に逃げるという場合もある。先述のように石英ロッドは屈折率が1の外界と接触しているからロッド終端から出た光線の広がり角βが大きいので斜め光も優勢である。斜め光をそのまま逃がしてはいけない。材料22が透明、白色あるいはそれに近い場合、斜め光はるつぼ1や材料22を通り抜けて透過してしまうことがある。それを有効に防ぐために図6に示すように追加の反射板46を側面反射板4の内側に挿入するようにした。
【0050】
円筒形の追加側面反射板46は側面反射板4にポンチで外側から叩いて設けた突起47によって中間より上半部に保持される。追加側面反射板46の枚数をNとする。るつぼ1の下半部にはM枚の反射板があるとし上半部にはM+N枚の反射板が存在するということになる。反射板の枚数を増やすほどに光と熱の反射率が上がるので、るつぼの上半部で光、熱をより有効に閉じ込めることができるようになる。以下の実施例5〜8は追加側面反射板46の保持手段に関するものである。
【0051】
[実施例5(円環状部材を側面反射板の内周に溶接し突起とする:図7)]
図7に示すように側面反射板4のうち最内周の反射板の内面に円環状部材48を溶接しておく。そうすると上から追加側面反射板46を挿入するとそれらが円環状部材48によって支持される。
【0052】
[実施例6(下支え円筒の上に爪を立てて突起とする:図8)]
別部材の下支え円筒49を用いる。図8(1)に示すような円筒形で上部の爪を折り曲げたような下支え円筒49を作製する。上端部は余剰の爪50を作っておき、それを内側へ折り曲げて突起とする。これも薄いTaの板によって作るが粘りのあるTa薄板だから簡単に造形することができる。そのような下支え円筒49はその他の側面反射板4の最内周のものの中へ差し込むベース板によってそれが保持されるから位置が決まる。突起に該当するものが爪50である。上方から追加の側面反射板(N枚)46を挿入すると、爪50に当たって止まりそのままの位置で保有される事になる。これによって斜めの漏れ赤外光を反射してるつぼの開口部側へ戻す事ができる。そのために開口部の温度の低下を防ぐことができる。
【0053】
[実施例7(下支え円筒の上に円環状部材を乗せる:図9)]
これも別部材の下支え円筒52を用いる。爪を立てるのではなくて、単純な下支え円筒52の上に別部材の円環状部材53を乗せるようにする。ある程度の幅のある円環状部材53とするのでN枚の追加側面反射板46を乗せることができる。図9(1)は下支え円筒52、円環状部材53、追加側面反射板46の分解斜視図である。それらを、もともと存在する側面反射板4の最内殻のものの中へ挿入すると図9(2)のような状態になる。追加側面反射板46が中間高さより上半分に支持される。斜めの赤外光や熱線を反射し、るつぼ開口部温度を上げるように作用する。
【0054】
[実施例8(最内殻側面反射板中間部複数箇所をコ型に切欠き内部へ折り返す:図10)]
別部材を作製準備するのが手数がかかりコスト高になって困るということであれば図10に示すように側面反射板4の最内殻のものの中間部の複数箇所にコの字型切欠き54を形成し、それを内部へ折り曲げて爪55とする。これは既存のものを変型して爪を立てるだけだから簡単でありコスト上昇もわずかで済む。追加側面反射板を上から挿入すると爪55で留まり、そこで把持される。それによって赤外光を反射して、るつぼの上半部を高温に保つようになる。
【0055】
[実施例9(水冷ジャケットつき金反射鏡:図11)]
石英ロッドからの赤外光はかなり大きい発散角βを持つということを述べた。さらにTaの反射板は波長の長い熱線に対しては有効であるが波長の短い赤外光に対しては必ずしも反射率が高くないという問題がある。Taは金属であるから表面電流が流れ屈折率が大きい虚数部を持ちそれが反射率を1に近づけているのであるが波長依存性があって波長の短いものに対してはやはり金がもっとも反射率が高い。そこでTaよりももっと反射を強めるため円筒状の水冷ジャケット56をるつぼ1の周囲に配置する。
【0056】
水冷ジャケット56の底片は側面反射板4であるTaで支持される。水冷ジャケット56のるつぼに対向する内向き面には金層57が形成されている。ジャケット自体はステンレスを使うことができるが内向き面には金をつけて反射率を100%近くに上げる。金層57は蒸着、メッキなど任意の手法によって形成する。真空中であるが熱によって金層57が溶ける可能性もあるから水冷ジャケットを使い冷却水58を内部に通して冷却する。側面に出てくる赤外光を金層ミラー57で反射するので無駄なパワーの発生を防ぐことができる。Taの側面反射板は不要である。
【0057】
[実施例10(液体窒素冷却ジャケットつき金反射鏡:図11)]
前例と同じような構造であるが、冷却媒体として水でなくて液体窒素を用いる。図11と同じようなものである。分子線エピタキシー装置の内壁には液体窒素のシュラウドがあって内部に液体窒素が収容される。その一部を用いて冷却ジャケット56に廻し金層57の過熱を防ぐ。そのようにすると冷却水系を追加する必要がなくて元々存在する液体窒素を利用でき構造を単純化することができる。
【0058】
[実施例11(るつぼを昇降、開口部保温の上反射板:図12、図13)]
石英ロッド23とるつぼ1の底面の距離gは加熱の効率に影響する。g=0であるのが加熱効率という点からは最も良いのであるが、るつぼと石英ロッドを接触させると、高温に加熱したとき石英ロッドが溶けてしまう。その点で非接触とした方が良い。ギャップgは1mm〜5mm程度である。材料によって最適のギャップgが変化する。ここでは、るつぼの高さを調節可能なものにしている。分子線セルでは鍔つきるつぼの鍔を側面反射板によって保持しているが、それではるつぼを昇降できない。そこで鍔なしのるつぼ1を使う。台付き円筒器のるつぼ受台62によって鍔なしのるつぼ1の底部の外周部を支持する。
【0059】
るつぼ受台62の下半部は円筒状でありベース板19の通し穴63に対し上下方向に摺動可能になっている。るつぼ受台62の下部には螺子による昇降機構64が設けられる。図13に昇降機構部分だけを図示した。縦方向に調整螺子65が挿通されている。調整螺子65はるつぼ受台62の雌螺穴66に螺合している。調整螺子65を廻すことによって、るつぼ受台62を上下に移動させることができる。
【0060】
るつぼ1の底部がるつぼ受台62に載っているから受台62を上下させると、るつぼを上下に移動させることができる。それによって石英ロッドとるつぼの間隙gを最適値に調整することができる。昇降できるように鍔部を省いている。鍔部がないので、そのままでは赤外光や熱線が上部の開口部から逃げる。それを防ぐために側面反射板4の頂部60にリング状の押さえ蓋61を設ける。押さえ蓋61もTaの薄板である。その上に複数枚の上部反射板59を積み重ねている。それによって上面のるつぼ壁からの熱の逃げを防止する。
【0061】
[実施例12(ベース板を昇降:図14)]
るつぼだけでなくて反射板も一体として上昇下降できるようにした方が良い場合もある。その場合はるつぼなどをフランジに対して支持する支柱を伸縮できるものとする。図14のように上支柱67と下支柱68に支柱を分割し間を円筒形のスリーブ69で繋ぐようにする。スリーブに対して螺子穴を穿ち、それに螺子を螺合して螺子を締めることによって上下の支柱を適当な高さに固定する。この例では下の螺子72は下支柱68の螺穴に固定している。上螺子70は上支柱67の側面を押さえるようにしている。そのような螺子による調節機構を全ての(3〜4本の)支柱に設けることによって支柱を伸縮できる。そうするとるつぼ、反射板の全体を昇降できる。それによって石英ロッドとの間隙gを任意の量に調節することができる。
【0062】
[実施例13(ベース板を昇降:図15)]
これもフランジに対して、るつぼの位置を上昇下降できるようにしたものである。受け筒73をフランジ7に固定してある。受け筒73に対し支柱78が差し込まれる。受け筒73と支柱78を繋ぐために円筒形のスリーブ74が設けられる。受け筒73には縦溝75があって下螺子76が縦溝75に沿って上下できるようになっている。下螺子76を締めると受け筒73に対して支柱の高さが決まる。上螺子77を締めるとスリーブ74に対して支柱78の位置が決まる。それによって支柱の高さを自在に変化させることができる。だから、るつぼの位置を上下することができ、石英ロッドとるつぼ底面の距離を変化させることができる。
【0063】
【発明の効果】
従来の分子線セルは、るつぼを囲んで抵抗加熱ヒータが設けられヒータによってるつぼとその内部に保有される材料を加熱して融液としていた。ヒータを保持し他の部材から絶縁するためにヒータは絶縁部によって保持しなければならない。ヒータ加熱の場合材料よりもヒータの方がより高温になる。ヒータを高温にするとそれに接触する絶縁材が加熱されガスが大量に放出される。また絶縁材の組成物そのものが分解して出てきて材料を汚染する。
【0064】
ガス放出がなく分解しないで高熱によく耐える絶縁材料がないので、あまり高温にできない。それに抵抗加熱ヒータはより高温になり蒸発も著しく寿命が短くなってしまう。それに抵抗加熱ヒータはじっくりと熱を発生するから加熱速度が遅く、従来はいくら速くしても昇温速度は20℃/分〜40℃/分であった。そのように低温でしかも加熱が遅いと、塩化物、フッ化物、酸化物、珪化物、窒化物など融点、昇華点の高い化合物を組成を変えることなく飛ばすことはできない。
【0065】
本発明は抵抗加熱ヒータを用いないで、赤外光ランプを装置外に設け、その光を石英ロッドによって装置内へ導き、るつぼの底面近くで赤外光を石英ロッドから放出し赤外光でるつぼと材料を加熱するようにした。ヒータを支持するための絶縁部が不要になる。絶縁部からのガス放出がない。絶縁物から不純物が出るという問題もない。赤外光によるからヒータ加熱よりも急速に加熱できる。真空中であって、しかも孤立したるつぼに材料が入っており周囲に熱容量の大きい(ステージなど)ものがないから熱が容易に逃げず加熱効率が良い。加熱温度の制限がないのでヒータ加熱よりも高温まで加熱できる。実際これによれば1700℃程度まで材料を加熱することができる。昇温速度も100℃/秒といった驚異的な速さとなる。
【0066】
硫化物、塩化物、酸化物、珪化物、窒化物などの化合物でも組成を変えないで分子線とすることができる。化合物を原料とする化合物薄膜の分子線エピタキシャル成長が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】抵抗加熱ヒータによって、るつぼと材料を加熱するようにした従来例にかかる分子線セルの断面図。
【図2】分子線エピタキシー装置の外側に設けた赤外光ランプの光を石英ロッドによって装置内部へ導き、るつぼとるつぼ内の固体材料を急速に高温まで加熱できるようにした赤外線加熱分子線セルの全体縦断面図。
【図3】底に窪みを有するるつぼと、それに下から対向し赤外光を照射して材料を加熱するようにした石英ロッドとを有する実施例1にかかる分子線セルの縦断面図。
【図4】底に窪みを有し外周にパイロリティックグラファイト(PG)を被覆したるつぼと、それに下から対向し赤外光を照射して材料を加熱するようにした石英ロッドとを有する実施例2にかかる分子線セルの縦断面図。
【図5】底に窪みを有し鍔部に複数枚のTa板からなる上面反射板を乗せたるつぼと、それに下から対向し赤外光を照射して材料を加熱するようにした石英ロッドとを有する実施例3にかかる分子線セルの縦断面図。
【図6】底に窪みを有するるつぼと、側面反射板と、側面反射板鍔部内側の突起に掛けた複数枚のTa板を円筒形に加工した追加側面反射板を有し、るつぼに下から対向し赤外光を照射して材料を加熱するようにした石英ロッドとを有する実施例4にかかる分子線セルの縦断面図。
【図7】円環状部材を最内側の側面反射板の内側に溶接して追加側面反射板を保持するための突起としたものの側面反射板と追加側面反射板の部分の実施例5にかかる縦断面図。
【図8】追加側面反射板を保持するための上端に内側へ折り曲げた爪を複数個有する実施例6にかかる円筒形の下支え円筒の斜視図(1)と、側面反射板と下支え円筒とによって追加側面反射板を保持した状態の縦断面図(2)。
【図9】実施例7にかかる、円筒形の下支え円筒とその上に乗せる円環状部材と、その上に乗せるべき追加側面反射板の斜視図(1)と、側面反射板と下支え円筒、円環状部材とによって追加側面反射板を保持した状態の縦断面図(2)。
【図10】爪に追加側面反射板を保持させるため、側面反射板の最内殻の円筒の側面をコの字型に切り欠いて内側へ折り曲げることによって爪を立てたものの実施例8にかかる斜視図。
【図11】斜めに反れた赤外光を内向きに反射するために金をコーティングした冷却ジャケットをるつぼの周囲に設け、冷却水あるいは液体窒素によって冷却ジャケットを冷却するようにした実施例9、10にかかる分子線セルの縦断面図。
【図12】有底円筒形のるつぼを石英ロッドに対して昇降できるようにするため、るつぼをるつぼ受台で支持し、るつぼ受台をベース板に対して昇降できるようにしたものの実施例11にかかる縦断面図。
【図13】図12の上昇下降可能なるつぼ受台の下方の螺子による昇降機構の例を示す縦断面図。
【図14】実施例12にかかる、るつぼの高さを加減できるようにするために、支柱を上支柱と下支柱に分割し、スリーブに差し込んでスリーブに対して上支柱を上昇下降できるようにしたものの支柱の縦断面図。
【図15】実施例13にかかる、るつぼの高さを加減できるようにするために、支柱をフランジと切り放し、フランジに立てた受け筒に差し込み、その外側に設けたスリーブを動かして螺子で固定し、支柱の高さをフランジに対して調節可能にしたものの縦断面図。
【符号の説明】
1 るつぼ
2 ヒータ
3 ヒータサポート
4 側面反射板
5 下面反射板
6 熱電対
7 フランジ
8 電流フィードスルー
9 熱電対フィードスルー
19 ベース板
20 電離導入棒
22 材料
23 石英ロッド
24 ランプ室
25 赤外線ランプ
26 集光用ミラー
27 集光用ミラー
28 ランプ室蓋
29 押さえ板
30 鍔部
32 Oリング
33 始端
34 終端
35 下フランジ
36 胴部
37 窪み
38 底部周縁部
39 側面
40 鍔部
42 側面PGコーティング
43 底面PGコーティング
44 鍔部裏面PGコーティング
45 上部反射板
46 追加反射板
47 追加反射板用突起
48 円環状部材
49 下支え円筒
50 爪
52 下支え円筒
53 円環状部材
54 切欠き
55 爪
56 冷却ジャケット
57 金コーティング
58 冷却媒体
59 上部反射板
60 頂部
61 押さえ蓋
62 るつぼ受台
63 通し穴
64 昇降機構
65 調整螺子
66 雌螺子穴
67 上支柱
68 下支柱
69 スリーブ
70 上螺子
72 下螺子
73 受け筒
74 スリーブ
75 縦溝
76 下螺子
77 上螺子
78 支柱
80 冷却水

Claims (12)

  1. 加熱されて分子線となるべき材料を収容するための底部に窪みを有する有鍔有底円筒形のるつぼと、るつぼの側面に設けられ鍔部を保持する側面反射板と、るつぼの下面に設けられる下面反射板と、赤外光を発生するランプと、ランプの光を反射する反射ミラーと、ランプの赤外光をるつぼの底面の窪みの下へ導く石英ロッドとを含み、抵抗加熱ヒータを含まず、ランプの赤外光を石英ロッドによってるつぼ底面に当てて、るつぼと材料によって光を吸収させ、るつぼ内の材料を光によって加熱して分子線とする事を特徴とする分子線セル。
  2. 有底円筒形のるつぼがPBN又はカーボン、アルミナ、高融点金属の何れかであって、るつぼがPBNの場合その外側にパイロリティックグラファイト(pyrolytic graphite;PG)が被覆してあり赤外光の吸収を高めることを特徴とする請求項1に記載の分子線セル。
  3. るつぼ開口部の鍔部の上に金属薄板よりなるリング状の反射板を乗せてあり赤外光をるつぼ側に反射するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の分子線セル。
  4. 側面反射板の上半部内側に追加側面反射板を設けて側面における赤外光の反射率を高めたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の分子線セル。
  5. 側面反射板の最内側を外側から工具で叩くことによって、側面反射板の最内側に突起を設け、突起によって追加側面反射板の下辺を支持するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の分子線セル。
  6. 側面反射板の最内側に、円環状部材を溶接によって付加し、円環状部材によって、追加側面反射板の下辺を支持するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の分子線セル。
  7. 側面反射板の内側に、内側に折り曲げた爪をもつ下支え円筒を挿入し、下支え円筒の爪によって追加側面反射板の下辺を支持するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の分子線セル。
  8. 側面反射板の内側に、下支え円筒を挿入し、その上にリング状の円環状部材を置き、円環状部材によって追加側面反射板の下辺を支持するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の分子線セル。
  9. 側面反射板の最内側の中間部に複数個のコ型切欠きを内側に設け、コ型切欠きによって、追加側面反射板の下辺を支持するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の分子線セル。
  10. 加熱されて分子線となるべき材料を収容するための底部に窪みを有する有底円筒形のるつぼと、るつぼの周囲に設けられるつぼを保持し内面に金を被覆した水あるいは液体窒素で冷却される冷却ジャケットと、るつぼの下面に設けられる下面反射板と、赤外光を発生するランプと、ランプの光を反射する反射ミラーと、ランプの赤外光をるつぼの底面の窪みの下へ導く石英ロッドとを含み、抵抗加熱ヒータを含まず、ランプの赤外光を石英ロッドによってるつぼ底面に当てて、るつぼと材料によって光を吸収させ、るつぼ内の材料を光によって加熱して分子線とする事を特徴とする分子線セル。
  11. 加熱されて分子線となるべき材料を収容するための底部に窪みを有する有底円筒形のるつぼと、るつぼの底部を保持するるつぼ受台と、ベース板に対してるつぼ受台を昇降する昇降機構と、るつぼの側面に設けられる側面反射板と、るつぼの下面に設けられる下面反射板と、赤外光を発生するランプと、ランプの光を反射する反射ミラーと、ランプの赤外光をるつぼの底面の窪みの下へ導く石英ロッドとを含み、抵抗加熱ヒータを含まず、ランプの赤外光を石英ロッドによってるつぼ底面に当てて、るつぼと材料によって光を吸収させ、るつぼ内の材料を光によって加熱して分子線とするものであって、昇降装置によってるつぼと石英ロッドの間隔gを調整することができる事を特徴とする分子線セル。
  12. 加熱されて分子線となるべき材料を収容するための底部に窪みを有する有鍔有底円筒形のるつぼと、るつぼの側面に設けられ鍔部を保持する側面反射板と、るつぼの下面に設けられる下面反射板と、側面反射板と下面反射板を保持するベース板と、分子線エピタキシー装置のポートに取り付けるためのフランジと、ベース板をフランジに固定する支柱と、赤外光を発生するランプと、ランプの光を反射する反射ミラーと、ランプの赤外光をるつぼの底面の窪みの下へ導く石英ロッドと、支柱を伸縮できる機構とを含み、抵抗加熱ヒータを含まず、ランプの赤外光を石英ロッドによってるつぼ底面に当てて、るつぼと材料によって光を吸収させ、るつぼ内の材料を光によって加熱して分子線とするものであって、ベース板を上下させて石英ロッドの先端とるつぼの間隔gを変化させることができるようにした事を特徴とする分子線セル。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101516801B1 (ko) * 2014-05-22 2015-05-04 주식회사 넥스트론 일정면적에 대한 급속 및 균일한 가열과 온도 제어가 가능한 블로잉 성형용 히팅 유닛 및 이를 갖는 블로잉 성형 장치
WO2018034413A1 (ko) * 2016-08-18 2018-02-22 주식회사 제이몬 플라즈마 활성화 장치가 구비된 증착장치
JP2018140897A (ja) * 2017-02-28 2018-09-13 日本電信電話株式会社 結晶成長方法
JP2018158858A (ja) * 2017-03-22 2018-10-11 日本電信電話株式会社 結晶成長方法および装置

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