JP2004220391A - 発電プラントのリスク管理方法及び発電プラントのリスク管理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】安全性やプラント停止リスクを総合的に考慮した最適なプラント保全を実施することのできる発電プラントのリスク管理装置及びリスク管理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】電力会社とプラントメーカと機器メーカとをネットワークを介して接続し、電力会社からプロセスデータと運転履歴データとを入手し、プラントメーカからプラントのシステム構成データを入手し、機器メーカから機器評価結果を入手して、電力会社の発電プラントごとに、前記プラントのシステム構成データに基づいて、前記プロセスデータと運転履歴データと機器評価結果を用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価し、評価結果とリスク低減策を電力会社に提供する。
【選択図】 図2
【解決手段】電力会社とプラントメーカと機器メーカとをネットワークを介して接続し、電力会社からプロセスデータと運転履歴データとを入手し、プラントメーカからプラントのシステム構成データを入手し、機器メーカから機器評価結果を入手して、電力会社の発電プラントごとに、前記プラントのシステム構成データに基づいて、前記プロセスデータと運転履歴データと機器評価結果を用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価し、評価結果とリスク低減策を電力会社に提供する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力プラントや火力プラントなどの発電プラント(発電所)におけるリスク管理方法に係わり、電力会社やプラントメーカなどに代わってプラントリスクを管理する発電プラントのリスク管理方法及び発電プラントのリスク管理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、原子力プラントのリスクを低減するためのプラントの保全を支援するための装置としては、次のものがある(例えば特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1には、重大事故の発生確率とその時の損失期待値の算出と、プラント停止に至る確率とその時の損失期待値の算出とを合わせ、プラント保全費用が損失期待値の合計以下で最小なものを選択する技術が開示されている。また、特許文献2には、機器の重要度、損傷発生可能性及び経済性を指標として最適な予防保全計画を作成するための方法と装置に関する技術が開示されている。
原子力プラントの安全性を定量的に評価する手法としては、炉心損傷頻度を頂上事象とした確率論的安全評価があり、リスクを主としてプラントメーカが評価し、電力会社がその結果を基にプラントの安全性を確認し、リスクを低減するための設備改造などを実施している。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−77211号公報(段落〔0005〕−〔0008〕)
【特許文献2】
特開平9−33684号公報(段落〔0004〕−〔0009〕)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発電プラントにおけるリスクには、安全性に関するもののみならずプラントが計画外に停止するリスクも存在し、計画外停止に至ると電力会社は収益を失うばかりでなく、電力の安定供給の責務を果たせなくなる恐れもある。また、IPP発電会社(Independent Power Producer:独立発電事業者)において電力を電力会社に売電している場合には、約束の電力を供給できないとペナルティを支払う必要がある。このように、発電プラントの計画外停止リスクを考慮してプラント保全の最適化を行う必要があり、この点を考慮したのが、特許文献1に記載の方法であるが、特許文献1ではプラントの運転に伴うリスクの変動が考慮されていない。また、特許文献2に記載の方法では、亀裂の発生と進展について予測を実施することが示されているが、プラントの運転状況の変化を反映させたものとはなっていない。その原因は、機器メーカやプラントメーカなどはそれぞれの機器やシステムなどに関する設計又は保守に関するデータを所有しているが、プラントの日々の運転データを所有していない。逆に電力会社は、プラントの日々の運転データを所有しているが、設計上のノウハウや詳細な保守データを所有していないことから生じている。
【0005】
そこで、本発明の課題は、プラントの日々の運転状況の変化を考慮しつつ、安全性やプラント停止リスクを総合的に考慮した最適なプラント保全を実施することのできる発電プラントのリスク管理方法及び発電プラントのリスク管理装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段として本発明は、リスク評価契約を締結した電力会社からプロセスデータと運転履歴データとを、プラントメーカからプラントのシステム構成データを、リスク評価者であるリスク評価会社が入手すると共に、機器評価契約(機器寿命評価契約)を締結した機器メーカからリスク評価に必要な機器評価結果(機器寿命評価結果)を入手する。そして、リスク評価会社は、前記電力会社の発電プラントごとに、前記プラントのシステム構成データに基づいてイベントツリーやフォールトツリーを構成し、前記プロセスデータと運転履歴データと機器評価結果とを用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価し、評価結果及びリスク低減策を電力会社に提供する。電力会社はその結果からプラントメーカに機器やシステムなどのメンテナンス又は更新を依頼し、プラントの保全を実施する。
【0007】
また、前記課題を解決する他の手段として、リスク評価契約を締結した電力会社からプロセスデータと運転履歴データとを、プラントメーカからプラントのシステム構成データを、リスク評価者であるリスク評価会社が入手すると共に、機器評価契約を締結した機器メーカからリスク評価に必要な機器評価結果を入手する。そして、リスク評価会社は、前記電力会社の発電プラントごとに、前記プラントのシステム構成データに基づいてイベントツリーやフォールトツリーを構成し、前記プロセスデータと運転履歴データと機器評価結果とを用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価し、その結果を電力会社及びプラントメーカに提供する。プラントメーカは、リスク低減策又はリスクを低減しながらプラント出力を増加させる機器やシステムなどの更新案を電力会社に提供する。電力会社はその案のリスクをリスク評価会社に再評価させ、その結果からプラントメーカに機器やシステムなどのメンテナンスあるいは出力増加を含む更新を依頼し、プラントの保全を実施する。
【0008】
さらに、前記課題を解決する他の手段として、リスク管理契約を締結したIPP発電会社からプロセスデータと運転履歴データとを、リスク管理者であるリスク管理会社が入手すると共に、機器評価契約を締結したプラントメーカからプラントのシステム構成データを、機器メーカからリスク評価に必要な機器評価結果をそれぞれ入手する。そして、リスク管理会社は、前記IPP発電会社の発電プラントごとに、前記プラントのシステム構成データに基づいてイベントツリーやフォールトツリーを構成し、前記プロセスデータと運転履歴データと機器評価結果とを用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価し、その結果からプラントメーカに機器やシステムなどのメンテナンス又は更新を依頼し、プラントの保全を実施する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明の実施形態は、(1)リスク評価者であるリスク評価会社が行った発電プラントのリスクの評価結果とリスク低減策とを基に、電力会社がプラントメーカに機器とシステムのメンテナンス又は更新を依頼する第一実施形態と、(2)リスク評価会社はリスクの評価結果を電力会社とプラントメーカに提供して、プラントメーカがリスク低減策又は機器とシステムの更新案を電力会社に提供し、電力会社がプラントメーカに機器とシステムのメンテナンス又は更新を依頼する第二実施形態と、(3)IPP発電会社が、リスクの管理を業務とするリスク管理者であるリスク管理会社にプラントの保全を委託して、リスク管理会社がリスクの評価結果を基にプラントメーカに機器とシステムのメンテナンス又は更新を依頼する第三実施形態とに大別して説明する。
【0010】
〔第一実施形態〕
原子力発電プラントなど(以下、単にプラントという)におけるプラント保全活動を通して行われるリスク管理ビジネスに本発明を適用した第一実施形態について説明する。図1(a)は、第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略系統構成図である。図1(b)は、第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る契約形態説明図である。図2は、第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る発電プラントのリスク管理装置のブロック構成図である。図3は、第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略ビジネスフロー図である。
【0011】
図1(a)に示すように、リスク管理ビジネスの関係者は、リスク評価会社1、電力会社2、プラントメーカ3、機器メーカ4などである。各関係者間は、インターネットなどのネットワーク5を介して接続されている。本発明の実施形態では、図1(b)に示すように、リスク評価会社1は、電力会社2及びプラントメーカ3と、3社間のリスク評価契約を締結する。また、リスク評価会社1は、機器メーカ4と機器評価契約(機器寿命評価契約)を締結する。これらのリスク評価契約と機器寿命評価契約では、例えば年間契約を締結する。本発明の実施形態は、プラントを保有する電力会社2が、プラントリスクをコントロールするためのプラント保全活動をプラントメーカ3に依頼(委託)する例である。
【0012】
リスク管理ビジネスに係る発電プラントのリスク管理装置(以下、リスク管理装置という)10の構成を図2に示す。リスク管理装置10は、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価し、評価結果とリスク低減策を電力会社2に提供する装置であり、電力会社2とプラントメーカ3と機器メーカ4とにおけるそれぞれの発電プラントに関する装置(システム)とはネットワーク5を介して接続されている。リスク管理装置10は、主としてプロセス・運転履歴データ受信部100とプラント構成データ受信部101と機器評価結果受信部102と評価部103と評価結果送信部104とその他として、受信部105、送信部106、データベース(DB)管理部107、データベース(DB)108とで構成されている。プロセス・運転履歴データ受信部100は、電力会社2からプロセスデータと運転履歴データを受信部105を通して受信し、プラント構成データ受信部101は、プラントメーカ3からプラントのシステム構成データを受信部105を通して受信し、機器評価結果受信部102は主として機器メーカ4から機器評価結果(機器寿命評価結果)を受信部105を通して受信する。評価部103は、これら各受信部で受信したデータなどを用いて、プラントのシステム構成に基づいて安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価する。そして評価結果送信部104が評価結果とリスク低減策を送信部106を通して電力会社2に送信する。なお、評価結果やリスク低減策などは必要に応じてデータベース管理部107経由でデータベース108に保存しておく。これらの詳細の流れについては後記する。なお、これらの各構成手段は、コンピュータを用いて、発電プラントのリスク管理プログラムとしてコンピュータのプログラムで実現することができる。また、このリスク管理プログラムは、記録媒体に記録することができる。
【0013】
本発明の第一、第二実施形態では、プラント構成機器(以下、単に「機器」という)は、原子炉圧力容器、原子炉圧力容器内の炉内構造物及び炉内機器、核燃料集合体、原子炉圧力容器外の炉外付帯機器、原子炉圧力容器に接続されている配管系機器、タービン、発電機などを含む。炉内構造物及び炉内機器としては、シュラウド(炉心隔壁)、制御棒、ジェットポンプ、セパレータ(気水分離器)、ドライヤ(蒸気乾燥器)などを含んでいる。また、炉外の付帯機器には制御棒駆動機構や制御棒駆動機構のハウジングなどを含む。配管系機器としては、復水系、給水系、再循環系、主蒸気系の各配管、弁、ポンプ、熱交換器などを含む。
【0014】
以下、図3を用いて、適宜図1(a)及び図1(b)を参照しながら第一実施形態のリスク管理ビジネスについて説明する。まず、リスク評価会社1は、リスク評価契約に従って、プラントのプロセスデータ、運転履歴データを、ネットワーク5を介して電力会社2から入手(ST300)する。このプロセスデータは、機器のリスクを評価するために必要なオンライン又はオフラインのプラント監視データであり、プラントの熱出力や中性子束密度、水質データ、流量、温度、運転中に実施される安全系の動作確認試験データなどを含んでいる。運転履歴データは、過去のプロセスデータのほか、機器のメンテナンス履歴データとしてシステムの変更、機器の部品交換や補修の有無などに関するデータを含んでいる。
【0015】
また、リスク評価会社1は、リスク評価契約に従って、プラントのシステム構成データ、機器情報データを、ネットワーク5を介してプラントメーカ3から入手(ST301)する。プラントのシステム構成データは、機器相互の接続関係やインターロック、使用されている機器の構成を含んでいる。機器情報データは、機器の使用条件、設計仕様(設計温度、最大使用圧力、構成材料など)、故障頻度データなどを含む。これらのリスク評価に必要なデータを用いて、電力会社2からのリスク評価依頼(ST302)により、リスク評価会社1は、プラントの安全性を評価するために、例えば、炉心損傷頻度を頂上事象としたリスク評価のためのイベントツリーやフォールトツリー(図示せず)を構築し、各構成機器の故障確率に基づきリスクを評価する。さらに、プラントの計画外停止リスクを評価するために、計画外停止を頂上事象としたリスク評価のためのイベントツリーやフォールトツリー(図示せず)を構築する。計画外停止を引き起こす原因としては、主要設備である再循環ポンプの停止や、各種配管や弁からの漏水などがあり、いずれもプラントの運転履歴や環境によって損傷の進展具合が異なってくる。このため、リスク評価会社1は、リスク評価契約に基づいてプラントメーカ3に対して、また機器寿命評価契約に基づいて機器メーカ4に対して、それぞれの担当する機器の寿命評価依頼(ST303)をする。
【0016】
寿命評価依頼を受けたプラントメーカ3と機器メーカ4は、寿命評価のための評価条件や必要な評価用データなどをリスク評価会社1に要求(ST304)する。これを受けてリスク評価会社1は、プラントのプロセスデータや過去の運転履歴データなどを格納したデータベースから必要なデータを抽出し、評価条件と共にプロセスデータ、運転履歴データをネットワーク5を介して提供(ST305)する。図4に機器の寿命を評価する一例として炉内構造物のシュラウドを対象にした場合の評価条件を示している。すなわち、シュラウドの劣化モードとして応力腐食割れの進行を考慮した場合に、亀裂の進行を評価する場合の条件として、使用温度、中性子束密度、水質条件及び初期亀裂長さを初期条件として与え、例えば亀裂が全周の半分にわたった場合を寿命と考えた場合を機器寿命の評価条件として与える。さらに、シュラウドへの積算中性子照射量を求めるための運転履歴データ(図示せず)を評価条件と共に提供する。
【0017】
評価条件を受信したプラントメーカ3と機器メーカ4は、それぞれの担当機器に対して与えられた条件に基づいた寿命評価を行い、リスク評価会社1に機器寿命評価結果を提供(図3のST306)する。シュラウドの例では図5に示すような亀裂長さの進展を予測し、許容亀裂長さの上限値から機器寿命を求め、機器の残寿命を予測誤差と共に評価結果として提供する。図5では横軸に運転時間を、縦軸に亀裂長さを示しており運転時間と共に亀裂長さの変化を表わしている。許容亀裂上限値(例えば亀裂が全周の半分にわたった場合)に達したところが機器の寿命となる。
【0018】
リスク評価会社1は、プラントメーカ3と機器メーカ4から入手した機器寿命評価結果を用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクの経時変化を評価し、図6(a)、(b)に示すような炉心損傷頻度、計画外停止頻度などのリスク評価結果やリスク低減策などを電力会社2に提供(ST307)する。図6(a)は安全性に対するリスクに関する評価結果の一例として炉心損傷頻度の経時変化を示したものであり、図6(b)は計画外停止リスクに関する評価結果の一例として計画外停止頻度の経時変化を示したものである。
【0019】
電力会社2は、図7に示すフローに従いリスク評価結果を用いてプラントの安全目標とプラントの計画外停止頻度と予測される停止期間とから求められる予測損失の大きさと、プラントの計画外停止頻度を低減するための保全コストの大小関係とから保全の必要性を判断し、機器やシステムなどの更新がリスク低減に有効な場合はプラントメーカ3に機器やシステムなどの更新を依頼する。これらの依頼は、ネットワーク5を介して実施される。図7において、電力会社2は、リスク評価結果を入手して(ST700)、このリスク評価結果により安全性に関するリスクが安全目標を満たしているかを判断する(ST701)。安全性に関するリスクが安全目標を満たしていない(ST701でNo)場合は、安全系のシステム又は保全計画の見直し(ST702)を行う。安全目標を満たしている(ST701でYes)場合は、プラント計画外停止のリスク(予測損失)の算出(ST703)を行う。予測損失と保全コストの関係が妥当かを判断(ST704)し、妥当であれば(ST704でYes)、現行の保全計画を遂行(ST705)する。予測損失と保全コストの関係が妥当でなければ(ST705でNo)、予測損失への寄与が大きい機器やシステムなどの抽出(ST706)を行う。そして抽出された機器やシステムなどの保全計画見直し(ST707)を行い、プラント計画外停止のリスク(予測損失)の再算出(ST708)を行う。再度予測損失と保全コストの関係を判断して(ST709)、予測損失と保全コストの関係が妥当であれば(ST709でYes)、見直しの保全計画をメーカに発注(ST710)する。予測損失と保全コストの関係が妥当でなければ(ST709でNo)、再度ST707に戻って抽出された機器やシステムなどの保全計画の見直しを行う。
【0020】
再度、図3に戻って、機器やシステムなどの更新を依頼(ST308)されたプラントメーカ3は、機器やシステムなどの更新計画(設計)を行い、機器メーカ4に個別の機器取換を依頼(ST310)する。この機器の取換依頼は、プラントメーカ3と機器メーカ4との間の機器メンテナンス契約(ST309)に基づいて行われる。機器メーカ4は、依頼された取換工事を実施し、その機器取換内容の報告と機器取換費をプラントメーカ3にネットワーク5を介して請求(ST311)する。プラントメーカ3は、機器メーカ4から入手した個別機器に関する取換工事の内容が電力会社2からの依頼内容を満足しているかを判断する。この判断結果が条件を満足しない場合、プラントメーカ3は、機器メーカ4に対して機器の補修や取換を再依頼する(図示せず)。前記判断結果が条件を満足している場合、プラントメーカ3は、機器メーカ4から入手した個別機器に関する取換工事の内容に基づき機器取換内容を電力会社2にネットワーク5を介して報告し、機器取換費を請求(ST312)する。
【0021】
電力会社2は機器取換内容をリスク評価会社1にネットワーク5を介して報告(ST313)し、リスクの再評価を依頼する。リスク評価会社1は、取換あるいはメンテナンス情報に基づき、リスクを再評価してリスク再評価結果を電力会社2へ報告(ST314)する。電力会社2は、再評価によるリスクの低減効果を確認し、機器の取換報告の内容と合わせて十分であるかどうかを判断する。この判断の結果、不十分な場合、電力会社2は、プラントメーカ3に対して機器の補修や取換を再依頼する(図示せず)。前記判断の結果、十分な場合には、プラントメーカ3からの請求に応じて、機器取換費をプラントメーカ3に支払う(ST315)。この機器やシステムなどの更新費は、リスク評価契約において、機器の取換内容、再依頼の有無などの条件に応じて予め決めておく。
【0022】
一方、プラントメーカ3は、機器メーカ4からの請求に応じて、機器取換費を機器メーカ4に支払う(ST316)。この機器の取換費は、機器の取換内容、再依頼の有無などの条件に応じて、プラントメーカ3と機器メーカ4との間の機器メンテナンス契約(ST309)において、予め決めておく。プラントメーカ3は、リスク評価契約に基づきリスク評価会社1に機器寿命評価費を請求(ST317)する。また、機器メーカ4は、機器寿命評価契約に基づいてリスク評価会社1に機器寿命評価費を別に請求(ST318)する。リスク評価会社1及びプラントメーカ3は、リスク評価契約に基づき電力会社2にリスク評価費を請求(ST319、ST320)する。電力会社2はリスク評価会社1及びプラントメーカ3からの請求に応じて、リスク評価費をそれぞれに支払う(ST321、ST322)。リスク評価会社1は、プラントメーカ3及び機器メーカ4からの請求に応じて、機器寿命評価費をそれぞれに支払う(ST323)。
【0023】
以上のように、リスク評価会社1はプラントの安全と計画外停止のリスク評価をリアルタイムに行う。その結果に基づき電力会社1はプラントリスクを常に適切な水準に管理できるようになる。プラントメーカ3と機器メーカ4は、機器寿命の予測評価結果に基づき、機器やシステムなどの更新時期を予め推定することができ、長期的な製造ラインの運用計画に反映することができる。
【0024】
〔第二実施形態〕
次に、プラント保全活動を通して行われるリスク管理ビジネスに本発明を適用した第二実施形態を図8を用いて、適宜図1(a)及び図1(b)を参照しながら説明する。図8は、第二実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略ビジネスフロー図である。図1(a)に示した系統構成及び図1(b)に示した契約形態は、第一実施形態と同様に第二実施形態にも適用される。第二実施形態が第一実施形態と異なる点は、リスク評価会社1が実施したリスク評価結果が電力会社2だけでなく、プラントメーカ3にもネットワーク5を介して提供されること及びリスクを低減するための機器やシステムなどの更新案をプラントメーカ3が提供することである。すなわち、電力会社2はプラントメーカ3に対して機器やシステムなどの寿命評価のみならず、リスクを低減するための更新計画の立案も依頼する。なお、図2で示した発電プラントのリスク管理装置10では、評価結果送信部104が電力会社2だけでなくプラントメーカ3にもネットワーク5を介してリスク評価結果を送信する(図示せず)。
【0025】
図8に示すように、電力会社2からリスク評価会社1にプロセスデータ、運転履歴データが提供(ST800)されることから始まり、リスク評価会社1がプラントメーカ3と機器メーカ4から入手した機器の寿命結果に基づき安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価しリスク評価結果を電力会社2に提供(ST807a)するまでのプロセスは第一実施形態と同じである。
【0026】
リスク評価会社1は、リスク評価結果を電力会社2と同時にプラントメーカ3にもネットワーク5を介して提供(ST807a、ST807b)する。プラントメーカ3は、入手したリスク評価結果に基づき、リスクを低減するための機器やシステムなどの更新案や保全計画の見直し案を構築し、その結果を電力会社2に提案(ST808)する。この際、プラントの主要機器の1つであるタービンの更新が必要と判断した場合に、単なる同じ仕様の新しい機器へのリプレースとしての提案に代わって、プラントの出力を増加させる提案を行うこともできる。
【0027】
このようなプラント出力の増加は売電収入を増加させることになるのでプラントの価値が増えることを意味するが、出力増大に伴う機器の仕様が変更になる分、更新コストが増加する。ここで、予めリスク評価契約の中で電力会社2とプラントメーカ3の間で機器の単純リプレース費で増出力を実施できる機器をプラントメーカ3が提供する代わりに、増出力で増える収入の一部を電力会社2がプラントメーカ3に支払うことを取り決めておくことができる。この場合、電力会社2は、設備投資の額が増えずに売電収入を増加させるメリットがある。プラントメーカ3は、機器のリプレース時の収益が悪化するが、更新後の機器のメンテナンスに関して予め一括で請け負うことを契約することで長期的に安定した収入を得ることができる。
【0028】
電力会社2は、プラントメーカ3からネットワーク5を介して入手した機器やシステムなどの更新案に基づき、リスク評価会社1に更新案の評価を依頼(ST809)する。リスク評価会社1は、機器やシステムなどの更新案の情報を基に、プラントリスクの変化を評価し、更新案評価結果を電力会社2に報告(ST810)する。電力会社2は、更新案の評価結果に基づき、その妥当性と経済性を考慮し、更新案の受諾可否を判断する。更新案を受諾した場合には、電力会社2は、プラントメーカ3に更新案の実施を依頼(ST811)する。電力会社2が、更新案を受諾できない場合は、プラントメーカ3に対して代替案の立案を要求し、プラントメーカ3が代替案を電力会社2に提案する。代替案が電力会社2に受諾されるまで、このプロセスが繰り返される。
【0029】
実施が受諾された機器やシステムなどの更新案に基づき、プラントメーカ3は、第一実施形態に示したように機器やシステムなどの更新設計を行い、機器メーカ4に個別の機器の取換依頼(ST813)をする。この機器の取換依頼は、プラントメーカ3と機器メーカ4との間の機器メンテナンス契約(ST812)に基づいて行われる。以下、機器の取換の実施、実施内容報告、費用請求などリスク再評価結果のリスク評価会社1から電力会社2への報告、すなわちST814からST819までは第一実施形態と同じフローとなる。
【0030】
第一実施形態では、機器寿命評価費の請求がプラントメーカ3と機器メーカ4からリスク評価会社1に対して行われていたが、第二実施形態では、プラントメーカ3の機器寿命評価費は電力会社2に請求するリスク評価費の中で一括請求する。このため機器寿命評価費の請求は、機器メーカ4からのみリスク評価会社1に対して行われている(ST820)。リスク評価費については、プラントメーカ3が実施していた機器寿命評価分に関して電力会社2からリスク評価会社1への支払いが減少し、プラントメーカ3に対しては機器寿命評価分とリスク低減のための機器やシステムなどの更新案作成分の支払いが増加するが、リスク評価費の請求(ST821、ST822)と支払い(ST823、824)の流れは、第一実施形態と同じである。リスク評価会社1は、電力会社2から得たリスク評価費の一部を機器メーカ4に機器寿命評価費として支払う(ST825)。また、機器の更新に伴って増出力を電力会社2の設備投資の追加なく実施した場合には、プラントメーカ3は、増出力によって得られた余剰収益の一部を発電実績に応じて還元することを要求(ST826)し、その要求に応じて電力会社2は、プラントメーカ3に対して余剰収益の一部を支払う(ST827)。
【0031】
本発明の実施形態のようにプラントのリスク低減案をプラントメーカ3が実施することにより、リスク管理が適正に行われるだけでなく、プラント増出力などのプラントの経済性向上も同時に得られる機器やシステムなどの更新が可能となる。
【0032】
〔第三実施形態〕
次に、プラント保全活動を通して行われるリスク管理ビジネスに本発明を適用した第三実施形態を説明する。図9は、第三実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略系統構成図である。図10は、第三実施形態のリスク管理ビジネスに係る契約形態説明図である。図11は、第三実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略ビジネスフロー図である。なお、第一実施形態、第二実施形態と共通する要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
図9に示すように、リスク管理ビジネスの関係者は、リスク管理会社7、電力会社2、プラントメーカ3、機器メーカ4、IPP発電会社6(Independent Power Producer:独立発電事業者)などである。各関係者間は、インターネットなどのネットワーク5を介して接続されている。なお、リスク管理会社7は、リスクの評価だけでなくプラントメーカ3に機器やシステムなどの更新依頼を行う会社である。
【0034】
本発明の実施形態では、図10に示すように、リスク管理会社7は、IPP発電会社6とリスク管理契約を締結する。また、リスク管理会社7は、プラントメーカ3と機器メーカ4とそれぞれ機器寿命評価契約を締結する。さらに、IPP発電会社6と電力会社2との間には電力供給に関する売電契約が締結されている。これらのリスク管理契約、機器寿命評価契約及び売電契約では、例えば年間契約を締結する。本発明の実施形態は、プラントを保有するIPP発電会社6が、全面的にプラントリスク管理をリスク管理会社7に依頼(委託)し、リスク管理会社7は、プラント保全活動をプラントメーカ3に依頼(委託)する例である。本発明の実施形態では、プラント構成機器は、IPP発電に用いられている火力発電プラントのボイラ、燃料供給系機器、制御系機器及びそれらの付帯機器、接続されている配管系機器、タービン、発電機などを含む。配管系機器としては、復水系、給水系、主蒸気系の各配管、弁、ポンプ、熱交換器などを含む。
【0035】
以下、図11を用いて、適宜図9及び図10を参照しながら第三実施形態のリスク管理ビジネスについて説明する。まず、リスク管理会社7は、リスク管理契約に従って、プラントのプロセスデータと運転履歴データを、ネットワーク5を介してIPP発電会社6から入手(ST1100)する。このプロセスデータは、機器のリスクを評価するために必要なオンライン又はオフラインのプラント監視データであり、プラントの熱出力や水質データ、流量、温度に関するデータなどを含んでいる。運転履歴データは、過去のプロセスデータのほか、機器のメンテナンス履歴データとしてシステムの変更、機器の部品交換や補修の有無などに関するデータを含んでいる。
【0036】
また、リスク管理会社7は、リスク管理契約に従って、プラントのシステム構成データ、機器情報データを、ネットワーク5を介してプラントメーカ3から入手(ST1101)する。プラントのシステム構成データは、機器相互の接続関係やインターロック、使用されている機器の構成を含んでいる。機器情報データは、機器の使用条件、設計仕様(設計温度、最大使用圧力、構成材料など)、故障頻度データなどを含む。これらのリスク評価に必要なデータを用いて、リスク管理会社7は、プラントの安全性を評価するため、例えば、爆発頻度を頂上事象としたリスク評価のためのイベントツリーやフォールトツリー(図示せず)を構築し、各構成機器の故障確率に基づきリスクを評価する。さらに、プラントの計画外停止リスクを評価するために、計画外停止を頂上事象としたリスク評価のためのイベントツリーやフォールトツリー(図示せず)を構築する。計画外停止を引き起こす原因としては、主要設備であるタービンブレードの損壊や、各種配管や弁からの漏水などがあり、いずれもプラントの運転履歴や環境によって損傷の進展具合が異なってくる。このため、リスク管理会社7は、リスク管理契約に基づいてプラントメーカ3と機器寿命評価契約に基づいて機器メーカ4とに対して、それぞれの担当する機器の寿命評価を依頼(ST1103)する。
【0037】
寿命評価依頼を受けたプラントメーカ3と機器メーカ4は、寿命評価のための評価条件や必要な評価用データなどをリスク管理会社7に要求(ST1104)する。これを受けてリスク管理会社7は、プラントのプロセスデータや過去の運転履歴データなどを格納したデータベースから必要なデータを抽出し、評価条件と共にプロセスデータ、運転履歴データをネットワーク5を介して各メーカに提供(ST1105)する。
【0038】
評価条件を受信したプラントメーカ3と機器メーカ4は、それぞれの担当機器であるタービンや弁、配管のエロージョンやコロージョンによる機器の残寿命評価を行い、機器の残寿命を予測誤差と共に機器寿命評価結果としてリスク管理会社7に提供(ST1106)する。
【0039】
リスク管理会社7は、プラントメーカ3と機器メーカ4から入手した機器寿命評価結果を用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクの経時変化を評価する。その結果を基に、プラントの安全(爆発によるプラントの壊滅的な損傷)に関係する損失リスクと計画外停止頻度と予測される停止期間とから求められる予測損失の大きさと、プラントの計画外停止頻度を低減するための保全コストの大小関係とから保全の必要性を判断し、機器やシステムなどの更新がリスク低減(経済性の向上)に有効な場合には、プラントメーカ3に機器やシステムなどの更新依頼(ST1107)をする。これらの依頼は、ネットワーク5を介して実施される。
【0040】
機器やシステムなどの更新を依頼されたプラントメーカ3は、機器やシステムなどの更新計画(設計)を行い、機器メーカ4に個別の機器の取換依頼(ST1109)をする。この機器の取換依頼は、プラントメーカ3と機器メーカ4との間の機器メンテナンス契約(ST1108)に基づいて行われる。機器メーカ4は、依頼された取換工事を実施し、その機器取換内容の報告と機器取換費をプラントメーカ3にネットワーク5を介して請求(ST1110)する。プラントメーカ3は、機器メーカ4から入手した個別機器に関する機器取換内容がリスク管理会社7からの依頼内容を満足しているかを判断する。この判断結果が条件を満足しない場合、プラントメーカ3は、機器メーカ4に対して機器の補修や取換を再依頼する(図示せず)。前記判断結果が条件を満足している場合、プラントメーカ3は、機器メーカ4から入手した個別機器に関する機器取換内容に基づき機器やシステムなどの機器取換内容をリスク管理会社7にネットワーク5を介して報告し、機器取換費を請求(ST1111)する。
【0041】
リスク管理会社7は、機器取換内容報告あるいはメンテナンス情報に基づき、リスクを再評価する。リスク管理会社7は、再評価によるリスクの低減効果を確認し、機器の取換報告の内容と合わせて十分であるかどうかを判断する。この判断の結果、不十分な場合、リスク管理会社7は、プラントメーカ3に対して機器の補修や取換を再依頼する(図示せず)。前記判断の結果、十分な場合には、プラントメーカ3からの請求に応じて、機器取換費をプラントメーカ3に支払う(ST1112)。この機器取換費やシステムなどの更新費は、機器寿命評価契約において、機器の取換内容、再依頼の有無などの条件に応じて予め決めておく。
【0042】
一方、プラントメーカ3は、機器メーカ4からの請求に応じて、機器取換費を機器メーカ4に支払う(ST1113)。この機器取換費は、機器の取換内容、再依頼の有無などの条件に応じて、プラントメーカ3と機器メーカ4との間の機器メンテナンス契約において、予め決めておく。プラントメーカ3は、リスク管理契約に基づきリスク管理会社7に機器寿命評価費を請求(ST1114a)する。また、機器メーカ4は、機器寿命評価契約に基づいてリスク管理会社7に機器寿命評価費を別に請求(ST1114b)する。リスク管理会社7は、リスク管理契約に基づきIPP発電会社6にリスク管理費を請求(ST1115)する。IPP発電会社6はリスク管理会社7からの請求に応じて、リスク管理費を支払う(ST1116)。リスク管理会社7は、プラントメーカ3及び機器メーカ4からの請求に応じて、機器寿命評価費をそれぞれに支払う(ST1117)。
【0043】
万一、発電プラントの計画外停止により、IPP発電会社6が電力会社2に電力を供給できなくなった場合には、売電契約に基づいて、電力会社2は計画外停止に伴う電力供給契約(売電契約)内容未達時の損失をIPP発電会社7に請求(ST1118)する。IPP発電会社6は、リスク管理契約に基づいて、リスク管理会社7にプラントの計画外停止時の停止損失を請求(ST1119)する。リスク管理会社7は、IPP発電会社6からの請求に応じて停止損失の支払い(ST1120)を行う。IPP発電会社6は、電力会社2からの請求に応じて電力供給契約(売電契約)内容未達時の損失支払い(ST1121)を行う。
【0044】
以上のように、IPP発電会社6は、プラント運転リスクを保全管理と共にリスク管理会社7に全面的に委託することにより経営上のリスクを低減する。リスク管理会社7はプラントの安全と計画外停止のリスク評価をリアルタイムに行い、その結果に基づきプラントリスクを常に適切な水準に管理する。プラントメーカ3と機器メーカ4は、機器寿命の予測評価結果に基づき、機器やシステムなどの更新時期を予め推定することができ、長期的な製造ラインの運用計画に反映することができる。
【0045】
以上説明した本発明は、前記した実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第一実施形態又は第二実施形態において、電力会社の代わりにIPP発電会社を適用しても構わない。すなわちリスク評価会社への評価依頼は電力会社でなくIPP発電会社であっても良い。ただし、IPP発電会社がリスクの評価結果を判断できる技術を備えていることが必要である。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、発電プラントの安全性やプラント停止リスクを適切に管理しつつ、プラント保全に関わる費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明による第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略系統構成図である。(b)は本発明による第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る契約形態を説明した図である。
【図2】本発明による第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る発電プラントのリスク管理装置のブロック構成図である。
【図3】本発明による第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略ビジネスフローを示した図である。
【図4】機器寿命の評価条件の一例を示した評価条件表である。
【図5】機器寿命の評価結果の一例を示した評価結果図である。
【図6】プラントリスクの評価結果の一例を示した評価結果図である。
【図7】電力会社におけるリスク管理フローを示した図である。
【図8】本発明による第二実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略ビジネスフローを示した図である。
【図9】本発明による第三実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略系統構成図である。
【図10】本発明による第三実施形態のリスク管理ビジネスに係る契約形態を説明した図である。
【図11】本発明による第三実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略ビジネスフローを示した図である。
【符号の説明】
1・・・リスク評価会社
2・・・電力会社
3・・・プラントメーカ
4・・・機器メーカ
5・・・ネットワーク
6・・・IPP発電会社
7・・・リスク管理会社
10・・発電プラントのリスク管理装置
100・・・プロセス・運転履歴データ受信部
101・・・プラント構成データ受信部
102・・・機器評価結果受信部
103・・・評価部
104・・・評価結果送信部
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力プラントや火力プラントなどの発電プラント(発電所)におけるリスク管理方法に係わり、電力会社やプラントメーカなどに代わってプラントリスクを管理する発電プラントのリスク管理方法及び発電プラントのリスク管理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、原子力プラントのリスクを低減するためのプラントの保全を支援するための装置としては、次のものがある(例えば特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1には、重大事故の発生確率とその時の損失期待値の算出と、プラント停止に至る確率とその時の損失期待値の算出とを合わせ、プラント保全費用が損失期待値の合計以下で最小なものを選択する技術が開示されている。また、特許文献2には、機器の重要度、損傷発生可能性及び経済性を指標として最適な予防保全計画を作成するための方法と装置に関する技術が開示されている。
原子力プラントの安全性を定量的に評価する手法としては、炉心損傷頻度を頂上事象とした確率論的安全評価があり、リスクを主としてプラントメーカが評価し、電力会社がその結果を基にプラントの安全性を確認し、リスクを低減するための設備改造などを実施している。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−77211号公報(段落〔0005〕−〔0008〕)
【特許文献2】
特開平9−33684号公報(段落〔0004〕−〔0009〕)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発電プラントにおけるリスクには、安全性に関するもののみならずプラントが計画外に停止するリスクも存在し、計画外停止に至ると電力会社は収益を失うばかりでなく、電力の安定供給の責務を果たせなくなる恐れもある。また、IPP発電会社(Independent Power Producer:独立発電事業者)において電力を電力会社に売電している場合には、約束の電力を供給できないとペナルティを支払う必要がある。このように、発電プラントの計画外停止リスクを考慮してプラント保全の最適化を行う必要があり、この点を考慮したのが、特許文献1に記載の方法であるが、特許文献1ではプラントの運転に伴うリスクの変動が考慮されていない。また、特許文献2に記載の方法では、亀裂の発生と進展について予測を実施することが示されているが、プラントの運転状況の変化を反映させたものとはなっていない。その原因は、機器メーカやプラントメーカなどはそれぞれの機器やシステムなどに関する設計又は保守に関するデータを所有しているが、プラントの日々の運転データを所有していない。逆に電力会社は、プラントの日々の運転データを所有しているが、設計上のノウハウや詳細な保守データを所有していないことから生じている。
【0005】
そこで、本発明の課題は、プラントの日々の運転状況の変化を考慮しつつ、安全性やプラント停止リスクを総合的に考慮した最適なプラント保全を実施することのできる発電プラントのリスク管理方法及び発電プラントのリスク管理装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段として本発明は、リスク評価契約を締結した電力会社からプロセスデータと運転履歴データとを、プラントメーカからプラントのシステム構成データを、リスク評価者であるリスク評価会社が入手すると共に、機器評価契約(機器寿命評価契約)を締結した機器メーカからリスク評価に必要な機器評価結果(機器寿命評価結果)を入手する。そして、リスク評価会社は、前記電力会社の発電プラントごとに、前記プラントのシステム構成データに基づいてイベントツリーやフォールトツリーを構成し、前記プロセスデータと運転履歴データと機器評価結果とを用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価し、評価結果及びリスク低減策を電力会社に提供する。電力会社はその結果からプラントメーカに機器やシステムなどのメンテナンス又は更新を依頼し、プラントの保全を実施する。
【0007】
また、前記課題を解決する他の手段として、リスク評価契約を締結した電力会社からプロセスデータと運転履歴データとを、プラントメーカからプラントのシステム構成データを、リスク評価者であるリスク評価会社が入手すると共に、機器評価契約を締結した機器メーカからリスク評価に必要な機器評価結果を入手する。そして、リスク評価会社は、前記電力会社の発電プラントごとに、前記プラントのシステム構成データに基づいてイベントツリーやフォールトツリーを構成し、前記プロセスデータと運転履歴データと機器評価結果とを用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価し、その結果を電力会社及びプラントメーカに提供する。プラントメーカは、リスク低減策又はリスクを低減しながらプラント出力を増加させる機器やシステムなどの更新案を電力会社に提供する。電力会社はその案のリスクをリスク評価会社に再評価させ、その結果からプラントメーカに機器やシステムなどのメンテナンスあるいは出力増加を含む更新を依頼し、プラントの保全を実施する。
【0008】
さらに、前記課題を解決する他の手段として、リスク管理契約を締結したIPP発電会社からプロセスデータと運転履歴データとを、リスク管理者であるリスク管理会社が入手すると共に、機器評価契約を締結したプラントメーカからプラントのシステム構成データを、機器メーカからリスク評価に必要な機器評価結果をそれぞれ入手する。そして、リスク管理会社は、前記IPP発電会社の発電プラントごとに、前記プラントのシステム構成データに基づいてイベントツリーやフォールトツリーを構成し、前記プロセスデータと運転履歴データと機器評価結果とを用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価し、その結果からプラントメーカに機器やシステムなどのメンテナンス又は更新を依頼し、プラントの保全を実施する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明の実施形態は、(1)リスク評価者であるリスク評価会社が行った発電プラントのリスクの評価結果とリスク低減策とを基に、電力会社がプラントメーカに機器とシステムのメンテナンス又は更新を依頼する第一実施形態と、(2)リスク評価会社はリスクの評価結果を電力会社とプラントメーカに提供して、プラントメーカがリスク低減策又は機器とシステムの更新案を電力会社に提供し、電力会社がプラントメーカに機器とシステムのメンテナンス又は更新を依頼する第二実施形態と、(3)IPP発電会社が、リスクの管理を業務とするリスク管理者であるリスク管理会社にプラントの保全を委託して、リスク管理会社がリスクの評価結果を基にプラントメーカに機器とシステムのメンテナンス又は更新を依頼する第三実施形態とに大別して説明する。
【0010】
〔第一実施形態〕
原子力発電プラントなど(以下、単にプラントという)におけるプラント保全活動を通して行われるリスク管理ビジネスに本発明を適用した第一実施形態について説明する。図1(a)は、第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略系統構成図である。図1(b)は、第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る契約形態説明図である。図2は、第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る発電プラントのリスク管理装置のブロック構成図である。図3は、第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略ビジネスフロー図である。
【0011】
図1(a)に示すように、リスク管理ビジネスの関係者は、リスク評価会社1、電力会社2、プラントメーカ3、機器メーカ4などである。各関係者間は、インターネットなどのネットワーク5を介して接続されている。本発明の実施形態では、図1(b)に示すように、リスク評価会社1は、電力会社2及びプラントメーカ3と、3社間のリスク評価契約を締結する。また、リスク評価会社1は、機器メーカ4と機器評価契約(機器寿命評価契約)を締結する。これらのリスク評価契約と機器寿命評価契約では、例えば年間契約を締結する。本発明の実施形態は、プラントを保有する電力会社2が、プラントリスクをコントロールするためのプラント保全活動をプラントメーカ3に依頼(委託)する例である。
【0012】
リスク管理ビジネスに係る発電プラントのリスク管理装置(以下、リスク管理装置という)10の構成を図2に示す。リスク管理装置10は、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価し、評価結果とリスク低減策を電力会社2に提供する装置であり、電力会社2とプラントメーカ3と機器メーカ4とにおけるそれぞれの発電プラントに関する装置(システム)とはネットワーク5を介して接続されている。リスク管理装置10は、主としてプロセス・運転履歴データ受信部100とプラント構成データ受信部101と機器評価結果受信部102と評価部103と評価結果送信部104とその他として、受信部105、送信部106、データベース(DB)管理部107、データベース(DB)108とで構成されている。プロセス・運転履歴データ受信部100は、電力会社2からプロセスデータと運転履歴データを受信部105を通して受信し、プラント構成データ受信部101は、プラントメーカ3からプラントのシステム構成データを受信部105を通して受信し、機器評価結果受信部102は主として機器メーカ4から機器評価結果(機器寿命評価結果)を受信部105を通して受信する。評価部103は、これら各受信部で受信したデータなどを用いて、プラントのシステム構成に基づいて安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価する。そして評価結果送信部104が評価結果とリスク低減策を送信部106を通して電力会社2に送信する。なお、評価結果やリスク低減策などは必要に応じてデータベース管理部107経由でデータベース108に保存しておく。これらの詳細の流れについては後記する。なお、これらの各構成手段は、コンピュータを用いて、発電プラントのリスク管理プログラムとしてコンピュータのプログラムで実現することができる。また、このリスク管理プログラムは、記録媒体に記録することができる。
【0013】
本発明の第一、第二実施形態では、プラント構成機器(以下、単に「機器」という)は、原子炉圧力容器、原子炉圧力容器内の炉内構造物及び炉内機器、核燃料集合体、原子炉圧力容器外の炉外付帯機器、原子炉圧力容器に接続されている配管系機器、タービン、発電機などを含む。炉内構造物及び炉内機器としては、シュラウド(炉心隔壁)、制御棒、ジェットポンプ、セパレータ(気水分離器)、ドライヤ(蒸気乾燥器)などを含んでいる。また、炉外の付帯機器には制御棒駆動機構や制御棒駆動機構のハウジングなどを含む。配管系機器としては、復水系、給水系、再循環系、主蒸気系の各配管、弁、ポンプ、熱交換器などを含む。
【0014】
以下、図3を用いて、適宜図1(a)及び図1(b)を参照しながら第一実施形態のリスク管理ビジネスについて説明する。まず、リスク評価会社1は、リスク評価契約に従って、プラントのプロセスデータ、運転履歴データを、ネットワーク5を介して電力会社2から入手(ST300)する。このプロセスデータは、機器のリスクを評価するために必要なオンライン又はオフラインのプラント監視データであり、プラントの熱出力や中性子束密度、水質データ、流量、温度、運転中に実施される安全系の動作確認試験データなどを含んでいる。運転履歴データは、過去のプロセスデータのほか、機器のメンテナンス履歴データとしてシステムの変更、機器の部品交換や補修の有無などに関するデータを含んでいる。
【0015】
また、リスク評価会社1は、リスク評価契約に従って、プラントのシステム構成データ、機器情報データを、ネットワーク5を介してプラントメーカ3から入手(ST301)する。プラントのシステム構成データは、機器相互の接続関係やインターロック、使用されている機器の構成を含んでいる。機器情報データは、機器の使用条件、設計仕様(設計温度、最大使用圧力、構成材料など)、故障頻度データなどを含む。これらのリスク評価に必要なデータを用いて、電力会社2からのリスク評価依頼(ST302)により、リスク評価会社1は、プラントの安全性を評価するために、例えば、炉心損傷頻度を頂上事象としたリスク評価のためのイベントツリーやフォールトツリー(図示せず)を構築し、各構成機器の故障確率に基づきリスクを評価する。さらに、プラントの計画外停止リスクを評価するために、計画外停止を頂上事象としたリスク評価のためのイベントツリーやフォールトツリー(図示せず)を構築する。計画外停止を引き起こす原因としては、主要設備である再循環ポンプの停止や、各種配管や弁からの漏水などがあり、いずれもプラントの運転履歴や環境によって損傷の進展具合が異なってくる。このため、リスク評価会社1は、リスク評価契約に基づいてプラントメーカ3に対して、また機器寿命評価契約に基づいて機器メーカ4に対して、それぞれの担当する機器の寿命評価依頼(ST303)をする。
【0016】
寿命評価依頼を受けたプラントメーカ3と機器メーカ4は、寿命評価のための評価条件や必要な評価用データなどをリスク評価会社1に要求(ST304)する。これを受けてリスク評価会社1は、プラントのプロセスデータや過去の運転履歴データなどを格納したデータベースから必要なデータを抽出し、評価条件と共にプロセスデータ、運転履歴データをネットワーク5を介して提供(ST305)する。図4に機器の寿命を評価する一例として炉内構造物のシュラウドを対象にした場合の評価条件を示している。すなわち、シュラウドの劣化モードとして応力腐食割れの進行を考慮した場合に、亀裂の進行を評価する場合の条件として、使用温度、中性子束密度、水質条件及び初期亀裂長さを初期条件として与え、例えば亀裂が全周の半分にわたった場合を寿命と考えた場合を機器寿命の評価条件として与える。さらに、シュラウドへの積算中性子照射量を求めるための運転履歴データ(図示せず)を評価条件と共に提供する。
【0017】
評価条件を受信したプラントメーカ3と機器メーカ4は、それぞれの担当機器に対して与えられた条件に基づいた寿命評価を行い、リスク評価会社1に機器寿命評価結果を提供(図3のST306)する。シュラウドの例では図5に示すような亀裂長さの進展を予測し、許容亀裂長さの上限値から機器寿命を求め、機器の残寿命を予測誤差と共に評価結果として提供する。図5では横軸に運転時間を、縦軸に亀裂長さを示しており運転時間と共に亀裂長さの変化を表わしている。許容亀裂上限値(例えば亀裂が全周の半分にわたった場合)に達したところが機器の寿命となる。
【0018】
リスク評価会社1は、プラントメーカ3と機器メーカ4から入手した機器寿命評価結果を用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクの経時変化を評価し、図6(a)、(b)に示すような炉心損傷頻度、計画外停止頻度などのリスク評価結果やリスク低減策などを電力会社2に提供(ST307)する。図6(a)は安全性に対するリスクに関する評価結果の一例として炉心損傷頻度の経時変化を示したものであり、図6(b)は計画外停止リスクに関する評価結果の一例として計画外停止頻度の経時変化を示したものである。
【0019】
電力会社2は、図7に示すフローに従いリスク評価結果を用いてプラントの安全目標とプラントの計画外停止頻度と予測される停止期間とから求められる予測損失の大きさと、プラントの計画外停止頻度を低減するための保全コストの大小関係とから保全の必要性を判断し、機器やシステムなどの更新がリスク低減に有効な場合はプラントメーカ3に機器やシステムなどの更新を依頼する。これらの依頼は、ネットワーク5を介して実施される。図7において、電力会社2は、リスク評価結果を入手して(ST700)、このリスク評価結果により安全性に関するリスクが安全目標を満たしているかを判断する(ST701)。安全性に関するリスクが安全目標を満たしていない(ST701でNo)場合は、安全系のシステム又は保全計画の見直し(ST702)を行う。安全目標を満たしている(ST701でYes)場合は、プラント計画外停止のリスク(予測損失)の算出(ST703)を行う。予測損失と保全コストの関係が妥当かを判断(ST704)し、妥当であれば(ST704でYes)、現行の保全計画を遂行(ST705)する。予測損失と保全コストの関係が妥当でなければ(ST705でNo)、予測損失への寄与が大きい機器やシステムなどの抽出(ST706)を行う。そして抽出された機器やシステムなどの保全計画見直し(ST707)を行い、プラント計画外停止のリスク(予測損失)の再算出(ST708)を行う。再度予測損失と保全コストの関係を判断して(ST709)、予測損失と保全コストの関係が妥当であれば(ST709でYes)、見直しの保全計画をメーカに発注(ST710)する。予測損失と保全コストの関係が妥当でなければ(ST709でNo)、再度ST707に戻って抽出された機器やシステムなどの保全計画の見直しを行う。
【0020】
再度、図3に戻って、機器やシステムなどの更新を依頼(ST308)されたプラントメーカ3は、機器やシステムなどの更新計画(設計)を行い、機器メーカ4に個別の機器取換を依頼(ST310)する。この機器の取換依頼は、プラントメーカ3と機器メーカ4との間の機器メンテナンス契約(ST309)に基づいて行われる。機器メーカ4は、依頼された取換工事を実施し、その機器取換内容の報告と機器取換費をプラントメーカ3にネットワーク5を介して請求(ST311)する。プラントメーカ3は、機器メーカ4から入手した個別機器に関する取換工事の内容が電力会社2からの依頼内容を満足しているかを判断する。この判断結果が条件を満足しない場合、プラントメーカ3は、機器メーカ4に対して機器の補修や取換を再依頼する(図示せず)。前記判断結果が条件を満足している場合、プラントメーカ3は、機器メーカ4から入手した個別機器に関する取換工事の内容に基づき機器取換内容を電力会社2にネットワーク5を介して報告し、機器取換費を請求(ST312)する。
【0021】
電力会社2は機器取換内容をリスク評価会社1にネットワーク5を介して報告(ST313)し、リスクの再評価を依頼する。リスク評価会社1は、取換あるいはメンテナンス情報に基づき、リスクを再評価してリスク再評価結果を電力会社2へ報告(ST314)する。電力会社2は、再評価によるリスクの低減効果を確認し、機器の取換報告の内容と合わせて十分であるかどうかを判断する。この判断の結果、不十分な場合、電力会社2は、プラントメーカ3に対して機器の補修や取換を再依頼する(図示せず)。前記判断の結果、十分な場合には、プラントメーカ3からの請求に応じて、機器取換費をプラントメーカ3に支払う(ST315)。この機器やシステムなどの更新費は、リスク評価契約において、機器の取換内容、再依頼の有無などの条件に応じて予め決めておく。
【0022】
一方、プラントメーカ3は、機器メーカ4からの請求に応じて、機器取換費を機器メーカ4に支払う(ST316)。この機器の取換費は、機器の取換内容、再依頼の有無などの条件に応じて、プラントメーカ3と機器メーカ4との間の機器メンテナンス契約(ST309)において、予め決めておく。プラントメーカ3は、リスク評価契約に基づきリスク評価会社1に機器寿命評価費を請求(ST317)する。また、機器メーカ4は、機器寿命評価契約に基づいてリスク評価会社1に機器寿命評価費を別に請求(ST318)する。リスク評価会社1及びプラントメーカ3は、リスク評価契約に基づき電力会社2にリスク評価費を請求(ST319、ST320)する。電力会社2はリスク評価会社1及びプラントメーカ3からの請求に応じて、リスク評価費をそれぞれに支払う(ST321、ST322)。リスク評価会社1は、プラントメーカ3及び機器メーカ4からの請求に応じて、機器寿命評価費をそれぞれに支払う(ST323)。
【0023】
以上のように、リスク評価会社1はプラントの安全と計画外停止のリスク評価をリアルタイムに行う。その結果に基づき電力会社1はプラントリスクを常に適切な水準に管理できるようになる。プラントメーカ3と機器メーカ4は、機器寿命の予測評価結果に基づき、機器やシステムなどの更新時期を予め推定することができ、長期的な製造ラインの運用計画に反映することができる。
【0024】
〔第二実施形態〕
次に、プラント保全活動を通して行われるリスク管理ビジネスに本発明を適用した第二実施形態を図8を用いて、適宜図1(a)及び図1(b)を参照しながら説明する。図8は、第二実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略ビジネスフロー図である。図1(a)に示した系統構成及び図1(b)に示した契約形態は、第一実施形態と同様に第二実施形態にも適用される。第二実施形態が第一実施形態と異なる点は、リスク評価会社1が実施したリスク評価結果が電力会社2だけでなく、プラントメーカ3にもネットワーク5を介して提供されること及びリスクを低減するための機器やシステムなどの更新案をプラントメーカ3が提供することである。すなわち、電力会社2はプラントメーカ3に対して機器やシステムなどの寿命評価のみならず、リスクを低減するための更新計画の立案も依頼する。なお、図2で示した発電プラントのリスク管理装置10では、評価結果送信部104が電力会社2だけでなくプラントメーカ3にもネットワーク5を介してリスク評価結果を送信する(図示せず)。
【0025】
図8に示すように、電力会社2からリスク評価会社1にプロセスデータ、運転履歴データが提供(ST800)されることから始まり、リスク評価会社1がプラントメーカ3と機器メーカ4から入手した機器の寿命結果に基づき安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価しリスク評価結果を電力会社2に提供(ST807a)するまでのプロセスは第一実施形態と同じである。
【0026】
リスク評価会社1は、リスク評価結果を電力会社2と同時にプラントメーカ3にもネットワーク5を介して提供(ST807a、ST807b)する。プラントメーカ3は、入手したリスク評価結果に基づき、リスクを低減するための機器やシステムなどの更新案や保全計画の見直し案を構築し、その結果を電力会社2に提案(ST808)する。この際、プラントの主要機器の1つであるタービンの更新が必要と判断した場合に、単なる同じ仕様の新しい機器へのリプレースとしての提案に代わって、プラントの出力を増加させる提案を行うこともできる。
【0027】
このようなプラント出力の増加は売電収入を増加させることになるのでプラントの価値が増えることを意味するが、出力増大に伴う機器の仕様が変更になる分、更新コストが増加する。ここで、予めリスク評価契約の中で電力会社2とプラントメーカ3の間で機器の単純リプレース費で増出力を実施できる機器をプラントメーカ3が提供する代わりに、増出力で増える収入の一部を電力会社2がプラントメーカ3に支払うことを取り決めておくことができる。この場合、電力会社2は、設備投資の額が増えずに売電収入を増加させるメリットがある。プラントメーカ3は、機器のリプレース時の収益が悪化するが、更新後の機器のメンテナンスに関して予め一括で請け負うことを契約することで長期的に安定した収入を得ることができる。
【0028】
電力会社2は、プラントメーカ3からネットワーク5を介して入手した機器やシステムなどの更新案に基づき、リスク評価会社1に更新案の評価を依頼(ST809)する。リスク評価会社1は、機器やシステムなどの更新案の情報を基に、プラントリスクの変化を評価し、更新案評価結果を電力会社2に報告(ST810)する。電力会社2は、更新案の評価結果に基づき、その妥当性と経済性を考慮し、更新案の受諾可否を判断する。更新案を受諾した場合には、電力会社2は、プラントメーカ3に更新案の実施を依頼(ST811)する。電力会社2が、更新案を受諾できない場合は、プラントメーカ3に対して代替案の立案を要求し、プラントメーカ3が代替案を電力会社2に提案する。代替案が電力会社2に受諾されるまで、このプロセスが繰り返される。
【0029】
実施が受諾された機器やシステムなどの更新案に基づき、プラントメーカ3は、第一実施形態に示したように機器やシステムなどの更新設計を行い、機器メーカ4に個別の機器の取換依頼(ST813)をする。この機器の取換依頼は、プラントメーカ3と機器メーカ4との間の機器メンテナンス契約(ST812)に基づいて行われる。以下、機器の取換の実施、実施内容報告、費用請求などリスク再評価結果のリスク評価会社1から電力会社2への報告、すなわちST814からST819までは第一実施形態と同じフローとなる。
【0030】
第一実施形態では、機器寿命評価費の請求がプラントメーカ3と機器メーカ4からリスク評価会社1に対して行われていたが、第二実施形態では、プラントメーカ3の機器寿命評価費は電力会社2に請求するリスク評価費の中で一括請求する。このため機器寿命評価費の請求は、機器メーカ4からのみリスク評価会社1に対して行われている(ST820)。リスク評価費については、プラントメーカ3が実施していた機器寿命評価分に関して電力会社2からリスク評価会社1への支払いが減少し、プラントメーカ3に対しては機器寿命評価分とリスク低減のための機器やシステムなどの更新案作成分の支払いが増加するが、リスク評価費の請求(ST821、ST822)と支払い(ST823、824)の流れは、第一実施形態と同じである。リスク評価会社1は、電力会社2から得たリスク評価費の一部を機器メーカ4に機器寿命評価費として支払う(ST825)。また、機器の更新に伴って増出力を電力会社2の設備投資の追加なく実施した場合には、プラントメーカ3は、増出力によって得られた余剰収益の一部を発電実績に応じて還元することを要求(ST826)し、その要求に応じて電力会社2は、プラントメーカ3に対して余剰収益の一部を支払う(ST827)。
【0031】
本発明の実施形態のようにプラントのリスク低減案をプラントメーカ3が実施することにより、リスク管理が適正に行われるだけでなく、プラント増出力などのプラントの経済性向上も同時に得られる機器やシステムなどの更新が可能となる。
【0032】
〔第三実施形態〕
次に、プラント保全活動を通して行われるリスク管理ビジネスに本発明を適用した第三実施形態を説明する。図9は、第三実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略系統構成図である。図10は、第三実施形態のリスク管理ビジネスに係る契約形態説明図である。図11は、第三実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略ビジネスフロー図である。なお、第一実施形態、第二実施形態と共通する要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
図9に示すように、リスク管理ビジネスの関係者は、リスク管理会社7、電力会社2、プラントメーカ3、機器メーカ4、IPP発電会社6(Independent Power Producer:独立発電事業者)などである。各関係者間は、インターネットなどのネットワーク5を介して接続されている。なお、リスク管理会社7は、リスクの評価だけでなくプラントメーカ3に機器やシステムなどの更新依頼を行う会社である。
【0034】
本発明の実施形態では、図10に示すように、リスク管理会社7は、IPP発電会社6とリスク管理契約を締結する。また、リスク管理会社7は、プラントメーカ3と機器メーカ4とそれぞれ機器寿命評価契約を締結する。さらに、IPP発電会社6と電力会社2との間には電力供給に関する売電契約が締結されている。これらのリスク管理契約、機器寿命評価契約及び売電契約では、例えば年間契約を締結する。本発明の実施形態は、プラントを保有するIPP発電会社6が、全面的にプラントリスク管理をリスク管理会社7に依頼(委託)し、リスク管理会社7は、プラント保全活動をプラントメーカ3に依頼(委託)する例である。本発明の実施形態では、プラント構成機器は、IPP発電に用いられている火力発電プラントのボイラ、燃料供給系機器、制御系機器及びそれらの付帯機器、接続されている配管系機器、タービン、発電機などを含む。配管系機器としては、復水系、給水系、主蒸気系の各配管、弁、ポンプ、熱交換器などを含む。
【0035】
以下、図11を用いて、適宜図9及び図10を参照しながら第三実施形態のリスク管理ビジネスについて説明する。まず、リスク管理会社7は、リスク管理契約に従って、プラントのプロセスデータと運転履歴データを、ネットワーク5を介してIPP発電会社6から入手(ST1100)する。このプロセスデータは、機器のリスクを評価するために必要なオンライン又はオフラインのプラント監視データであり、プラントの熱出力や水質データ、流量、温度に関するデータなどを含んでいる。運転履歴データは、過去のプロセスデータのほか、機器のメンテナンス履歴データとしてシステムの変更、機器の部品交換や補修の有無などに関するデータを含んでいる。
【0036】
また、リスク管理会社7は、リスク管理契約に従って、プラントのシステム構成データ、機器情報データを、ネットワーク5を介してプラントメーカ3から入手(ST1101)する。プラントのシステム構成データは、機器相互の接続関係やインターロック、使用されている機器の構成を含んでいる。機器情報データは、機器の使用条件、設計仕様(設計温度、最大使用圧力、構成材料など)、故障頻度データなどを含む。これらのリスク評価に必要なデータを用いて、リスク管理会社7は、プラントの安全性を評価するため、例えば、爆発頻度を頂上事象としたリスク評価のためのイベントツリーやフォールトツリー(図示せず)を構築し、各構成機器の故障確率に基づきリスクを評価する。さらに、プラントの計画外停止リスクを評価するために、計画外停止を頂上事象としたリスク評価のためのイベントツリーやフォールトツリー(図示せず)を構築する。計画外停止を引き起こす原因としては、主要設備であるタービンブレードの損壊や、各種配管や弁からの漏水などがあり、いずれもプラントの運転履歴や環境によって損傷の進展具合が異なってくる。このため、リスク管理会社7は、リスク管理契約に基づいてプラントメーカ3と機器寿命評価契約に基づいて機器メーカ4とに対して、それぞれの担当する機器の寿命評価を依頼(ST1103)する。
【0037】
寿命評価依頼を受けたプラントメーカ3と機器メーカ4は、寿命評価のための評価条件や必要な評価用データなどをリスク管理会社7に要求(ST1104)する。これを受けてリスク管理会社7は、プラントのプロセスデータや過去の運転履歴データなどを格納したデータベースから必要なデータを抽出し、評価条件と共にプロセスデータ、運転履歴データをネットワーク5を介して各メーカに提供(ST1105)する。
【0038】
評価条件を受信したプラントメーカ3と機器メーカ4は、それぞれの担当機器であるタービンや弁、配管のエロージョンやコロージョンによる機器の残寿命評価を行い、機器の残寿命を予測誤差と共に機器寿命評価結果としてリスク管理会社7に提供(ST1106)する。
【0039】
リスク管理会社7は、プラントメーカ3と機器メーカ4から入手した機器寿命評価結果を用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクの経時変化を評価する。その結果を基に、プラントの安全(爆発によるプラントの壊滅的な損傷)に関係する損失リスクと計画外停止頻度と予測される停止期間とから求められる予測損失の大きさと、プラントの計画外停止頻度を低減するための保全コストの大小関係とから保全の必要性を判断し、機器やシステムなどの更新がリスク低減(経済性の向上)に有効な場合には、プラントメーカ3に機器やシステムなどの更新依頼(ST1107)をする。これらの依頼は、ネットワーク5を介して実施される。
【0040】
機器やシステムなどの更新を依頼されたプラントメーカ3は、機器やシステムなどの更新計画(設計)を行い、機器メーカ4に個別の機器の取換依頼(ST1109)をする。この機器の取換依頼は、プラントメーカ3と機器メーカ4との間の機器メンテナンス契約(ST1108)に基づいて行われる。機器メーカ4は、依頼された取換工事を実施し、その機器取換内容の報告と機器取換費をプラントメーカ3にネットワーク5を介して請求(ST1110)する。プラントメーカ3は、機器メーカ4から入手した個別機器に関する機器取換内容がリスク管理会社7からの依頼内容を満足しているかを判断する。この判断結果が条件を満足しない場合、プラントメーカ3は、機器メーカ4に対して機器の補修や取換を再依頼する(図示せず)。前記判断結果が条件を満足している場合、プラントメーカ3は、機器メーカ4から入手した個別機器に関する機器取換内容に基づき機器やシステムなどの機器取換内容をリスク管理会社7にネットワーク5を介して報告し、機器取換費を請求(ST1111)する。
【0041】
リスク管理会社7は、機器取換内容報告あるいはメンテナンス情報に基づき、リスクを再評価する。リスク管理会社7は、再評価によるリスクの低減効果を確認し、機器の取換報告の内容と合わせて十分であるかどうかを判断する。この判断の結果、不十分な場合、リスク管理会社7は、プラントメーカ3に対して機器の補修や取換を再依頼する(図示せず)。前記判断の結果、十分な場合には、プラントメーカ3からの請求に応じて、機器取換費をプラントメーカ3に支払う(ST1112)。この機器取換費やシステムなどの更新費は、機器寿命評価契約において、機器の取換内容、再依頼の有無などの条件に応じて予め決めておく。
【0042】
一方、プラントメーカ3は、機器メーカ4からの請求に応じて、機器取換費を機器メーカ4に支払う(ST1113)。この機器取換費は、機器の取換内容、再依頼の有無などの条件に応じて、プラントメーカ3と機器メーカ4との間の機器メンテナンス契約において、予め決めておく。プラントメーカ3は、リスク管理契約に基づきリスク管理会社7に機器寿命評価費を請求(ST1114a)する。また、機器メーカ4は、機器寿命評価契約に基づいてリスク管理会社7に機器寿命評価費を別に請求(ST1114b)する。リスク管理会社7は、リスク管理契約に基づきIPP発電会社6にリスク管理費を請求(ST1115)する。IPP発電会社6はリスク管理会社7からの請求に応じて、リスク管理費を支払う(ST1116)。リスク管理会社7は、プラントメーカ3及び機器メーカ4からの請求に応じて、機器寿命評価費をそれぞれに支払う(ST1117)。
【0043】
万一、発電プラントの計画外停止により、IPP発電会社6が電力会社2に電力を供給できなくなった場合には、売電契約に基づいて、電力会社2は計画外停止に伴う電力供給契約(売電契約)内容未達時の損失をIPP発電会社7に請求(ST1118)する。IPP発電会社6は、リスク管理契約に基づいて、リスク管理会社7にプラントの計画外停止時の停止損失を請求(ST1119)する。リスク管理会社7は、IPP発電会社6からの請求に応じて停止損失の支払い(ST1120)を行う。IPP発電会社6は、電力会社2からの請求に応じて電力供給契約(売電契約)内容未達時の損失支払い(ST1121)を行う。
【0044】
以上のように、IPP発電会社6は、プラント運転リスクを保全管理と共にリスク管理会社7に全面的に委託することにより経営上のリスクを低減する。リスク管理会社7はプラントの安全と計画外停止のリスク評価をリアルタイムに行い、その結果に基づきプラントリスクを常に適切な水準に管理する。プラントメーカ3と機器メーカ4は、機器寿命の予測評価結果に基づき、機器やシステムなどの更新時期を予め推定することができ、長期的な製造ラインの運用計画に反映することができる。
【0045】
以上説明した本発明は、前記した実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第一実施形態又は第二実施形態において、電力会社の代わりにIPP発電会社を適用しても構わない。すなわちリスク評価会社への評価依頼は電力会社でなくIPP発電会社であっても良い。ただし、IPP発電会社がリスクの評価結果を判断できる技術を備えていることが必要である。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、発電プラントの安全性やプラント停止リスクを適切に管理しつつ、プラント保全に関わる費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明による第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略系統構成図である。(b)は本発明による第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る契約形態を説明した図である。
【図2】本発明による第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る発電プラントのリスク管理装置のブロック構成図である。
【図3】本発明による第一実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略ビジネスフローを示した図である。
【図4】機器寿命の評価条件の一例を示した評価条件表である。
【図5】機器寿命の評価結果の一例を示した評価結果図である。
【図6】プラントリスクの評価結果の一例を示した評価結果図である。
【図7】電力会社におけるリスク管理フローを示した図である。
【図8】本発明による第二実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略ビジネスフローを示した図である。
【図9】本発明による第三実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略系統構成図である。
【図10】本発明による第三実施形態のリスク管理ビジネスに係る契約形態を説明した図である。
【図11】本発明による第三実施形態のリスク管理ビジネスに係る概略ビジネスフローを示した図である。
【符号の説明】
1・・・リスク評価会社
2・・・電力会社
3・・・プラントメーカ
4・・・機器メーカ
5・・・ネットワーク
6・・・IPP発電会社
7・・・リスク管理会社
10・・発電プラントのリスク管理装置
100・・・プロセス・運転履歴データ受信部
101・・・プラント構成データ受信部
102・・・機器評価結果受信部
103・・・評価部
104・・・評価結果送信部
Claims (6)
- 電力会社とプラントメーカと機器メーカとをネットワークを介して接続し、リスク評価者がリスク評価を発電プラントのリスク管理装置を用いて行うリスク管理方法であって、前記電力会社のプロセスデータと運転履歴データと、プラントのシステム構成データと、前記機器メーカの機器評価結果とを取得して、前記電力会社の発電プラントごとに、前記プラントのシステム構成データに基づいて、前記プロセスデータと運転履歴データと機器評価結果とを用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクとを評価し、評価結果とリスク低減策とを電力会社に提供すること、を特徴とする発電プラントのリスク管理方法。
- リスク評価者が提供した前記評価結果とリスク低減策とに基づいて、前記電力会社が前記プラントメーカに機器とシステムのメンテナンス又は更新を依頼してプラントの保全を実施すること、を特徴とする請求項1に記載の発電プラントのリスク管理方法。
- 電力会社とプラントメーカと機器メーカとをネットワークを介して接続し、リスク評価者がリスク評価を発電プラントのリスク管理装置を用いて行うリスク管理方法であって、前記電力会社のプロセスデータと運転履歴データと、プラントのシステム構成データと、前記機器メーカの機器評価結果とを取得して、前記電力会社の発電プラントごとに、前記プラントのシステム構成データに基づいて、前記プロセスデータと運転履歴データと機器評価結果とを用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクとを評価し、評価結果を電力会社及びプラントメーカに提供し、前記プラントメーカが評価結果に基づいてリスク低減策又はリスクを低減しながらプラント出力を増加させる機器とシステムとの更新案を電力会社に提供すること、を特徴とする発電プラントのリスク管理方法。
- 前記プラントメーカが提供したリスク低減策又はリスクを低減しながらプラント出力を増加させる機器とシステムとの更新案に基づいて、電力会社がプラントメーカに、機器とシステムのメンテナンス又は出力増加を含む更新を依頼してプラントの保全を実施すること、を特徴とする請求項3に記載の発電プラントのリスク管理方法。
- 電力会社とプラントメーカと機器メーカと電力を前記電力会社に供給するIPP発電会社とをネットワークを介して接続し、リスク管理者がリスク管理を発電プラントのリスク管理装置を用いて行うリスク管理方法であって、前記IPP発電会社のプロセスデータと運転履歴データと、プラントのシステム構成データと、前記機器メーカの機器評価結果とを取得して、前記IPP発電会社の発電プラントごとに、前記プラントのシステム構成データに基づいて、前記プロセスデータと運転履歴データと機器評価結果とを用いて、安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価し、評価結果に基づいてプラントメーカに機器とシステムとのメンテナンス又は更新依頼をすること、を特徴とする発電プラントのリスク管理方法。
- 電力会社とプラントメーカと機器メーカとをネットワークを介して接続し、発電プラントのリスク評価を行う発電プラントのリスク管理装置であって、前記電力会社のプロセスデータと運転履歴データとを受信するプロセス・運転履歴データ受信部と、プラントのシステム構成データを受信するプラント構成データ受信部と、前記機器メーカの機器評価結果を受信する機器評価結果受信部と、前記プラントのシステム構成に基づいて安全性に対するリスクとプラントの計画外停止リスクを評価する評価部と、評価結果とリスク低減策とを電力会社に送信する評価結果送信部と、を備えたことを特徴とする発電プラントのリスク管理装置。
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