JP2004219309A - 唾液糖測定方法および測定キット - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、非侵襲血糖測定の開発を目的に、簡便でしかも短時間に採取可能な唾液に着目し、その測定に必要となる唾液採取回収方法および高感度測定から成る唾液糖測定方法および測定キットを提供する。
【解決手段】口腔内細菌の殺菌および抗菌するための口腔洗浄、余剰唾液および水分除去のための余剰水分吸収体、唾液分泌促進のための刺激剤、舌下腺および顎下腺唾液を採取回収するための唾液糖採取回収器具を使用する方法、およびグルコース脱水素酵素、酸化型補酵素の酵素反応から生成される還元型補酵素に電子メディエータ、テトラゾリウム塩の酸化還元反応から生成されるホルマザンを比色定量する高感度測定を用いることにより血糖と高い相関性を持つ唾液糖測定が可能となる
【選択図】 図1
【解決手段】口腔内細菌の殺菌および抗菌するための口腔洗浄、余剰唾液および水分除去のための余剰水分吸収体、唾液分泌促進のための刺激剤、舌下腺および顎下腺唾液を採取回収するための唾液糖採取回収器具を使用する方法、およびグルコース脱水素酵素、酸化型補酵素の酵素反応から生成される還元型補酵素に電子メディエータ、テトラゾリウム塩の酸化還元反応から生成されるホルマザンを比色定量する高感度測定を用いることにより血糖と高い相関性を持つ唾液糖測定が可能となる
【選択図】 図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、非侵襲血糖測定の一方法として、血糖値と高い相関性を持つ唾液糖測定のために必要な高感度測定から成る唾液糖測定方法および測定キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、非侵襲血糖測定の開発が盛んに行われており、例えば、超音波処理により皮膚細胞間隙を広げ、染み出してくる細胞間液の糖濃度測定による方法(Nature Medicine,Vol.6,p.347(2000))などがある。唾液も非侵襲血糖の一候補検体であり、さまざまに検討がなされている。
【0003】
口腔内に存在するヒトの唾液腺は、耳下腺、舌下腺、顎下腺の3腺有り、各々から分泌される唾液のことを耳下腺唾液、舌下腺唾液、顎下腺唾液と区別している。さらに上記の唾液が混合すると全唾液と呼んでいる。これら各々の唾液腺および刺激の有無により唾液量、唾液成分などが異なることが知られており(Geigy Scientific Table,Vol.1,p.114(1981))、各種唾液中の糖濃度も同様に異なっている。また、唾液1mL中に約1千万個の常在菌が繁殖しており、その大部分の細菌は糖を分解することも知られている(歯学微生物学 第5版,p.220(1998))。
【0004】
以前から唾液糖に関する研究(例えば、Virchows Archiv fur Pathologische Anatomie und Physiologie und for Klinische Medizin, Vol.125, p146 and 340(1891))が行われており、唾液糖は血糖に依存していないとの多くの報告がある。しかし、各種唾液成分の検討および刺激の有無による採取に関して明確に検討されていなく、常在菌による糖の分解に関しては全く検討されていない。また、糖尿病患者は口内炎を発症している人が多く、口内炎による血液の混入による影響なども報告されていない。さらに、短時間の高感度測定ができなかったなどの多くの問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは簡便でしかも短時間に採取可能な唾液に着目して検討を行った。本発明では、唾液糖の測定に変動を与える要因の影響を解決するために、口腔内細菌の殺菌洗浄、余剰水分除去、刺激条件下での舌下腺および顎下腺唾液の採取回収方法および高感度測定を行うことによる唾液糖測定方法および測定キットを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の唾液糖測定方法は、唾液採取回収方法および高感度測定からなっており、唾液採取回収方法とは、口腔内細菌の殺菌洗浄、余剰唾液および水分の除去、刺激条件下での舌下腺および顎下腺唾液の採取回収からなり、高感度測定とは、グルコース脱水素酵素、酸化型補酵素の酵素反応から生成される還元型補酵素に電子メディエータ、テトラゾリウム塩の酸化還元反応から生成されるホルマザンを比色定量により測定する方法である。該方法に必要な器具および試薬を包括した測定キットである本発明の唾液糖測定キットは、唾液中に含まれる糖を分解する口腔内細菌を殺菌および抗菌するための口腔洗浄液、該口腔洗浄液、余剰唾液および水分を除くための余剰水分吸収体、唾液分泌促進のための刺激剤ならびに舌下腺および顎下腺唾液を簡便で短時間に採取および回収可能な唾液採取回収器具を含む。
【0007】
口腔洗浄液は、口腔内に存在する細菌の殺菌除去のために必要であり、さらに唾液糖は血糖の約1/100であることから口内炎などによる血液混入の影響除去のために必要である。
【0008】
余剰水分吸収体は、口腔洗浄液、余剰唾液および水分の除去を目的としている。唾液糖測定では、刺激中の舌下腺および顎下腺唾液の糖濃度が血糖濃度に相関する結果が得られているため、洗浄のため使用された口腔洗浄液、全唾液および水分により、唾液糖が希釈される可能性がある。
【0009】
刺激剤に関しては、唾液の分泌量および濃度を一定にする効果とともに、唾液の分泌量が少ない糖尿病患者および高齢者でも採取可能とするために必要である。また、この刺激剤を使用することにより、唾液の分泌を促し、短時間での唾液採取回収を可能とする。さらに、本発明に使用する刺激剤は粉末状もしくは固形状であり、唾液の採取時は常に同一の刺激条件下であることが特徴となっている。
【0010】
唾液採取回収器具に関しては、刺激条件下のもと舌下腺、顎下腺から分泌される唾液を採取する必要がある。そのため、両唾液腺が存在する舌下に配置するだけで、採取することが可能で、しかも短時間の回収可能な構造を必要とする。本発明者らは、これらのことを改善するために、簡便で短時間に唾液の採取回収が可能な器具を新規に開発してきた(WO02/086453)。これら器具を舌下に配置するだけで、舌下腺および顎下腺唾液を簡便で短時間に唾液の採取および回収が可能となった。これらの器具は、耳下腺のみにも使用することができ、また、他の検査項目にも使用することができる。本発明の主旨である唾液糖測定に関しては、刺激条件下で舌下腺および顎下腺唾液を限定して採取することにより、血糖に対する唾液糖の有用な相関が得られた。
【0011】
血糖を測定する方法として、比色定量法としては、グルコース脱水素酵素―酸化型補酵素もしくはグルコースオキシダーゼ−ペルオキシダーゼを用いて生成される還元型補酵素もしくは過酸化水素を他の酸化還元物質に呈色させてマイクロプレートリーダーもしくは分光光度計で測定を行う方法などがある。しかし、唾液糖は血糖の約1/100の濃度のため、上記の血糖の測定をそのまま使用することができない。本発明者らは、グルコース脱水素酵素−酸化型補酵素に電子メディエータ、テトラゾリウム塩を含めた比色定量の測定系で高感度測定を行った。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる口腔洗浄液の殺菌成分としては、人体に影響なく口腔内での使用が可能であり、糖を分解する口腔内細菌を殺菌し、唾液糖測定の際に阻害しなければ特に限定はない。例えば、四級アンモニウム塩系殺菌剤である塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。その中で、塩化セチルピリジニウムが口腔内洗浄液の殺菌成分として、一般的に最もよく知られ、かつ使用されており、また唾液糖測定に影響がないことから使用することができる。
【0013】
また、口腔洗浄液の殺菌成分以外のものとして、香料、甘味料、潤滑剤等を使用することにより、殺菌成分の苦みの軽減や洗浄の円滑などの特徴を付与することができるが、これも、唾液糖測定の際に阻害しなければ特に限定はない。
【0014】
余剰水分吸収体としては、口腔洗浄後に存在している口腔洗浄液、余剰唾液および水分などを瞬時に吸収し、口腔内を傷つけない適度の柔軟さ、および使用中に噛み切るなどの破損しない材料であれば特に限定はない。例えば、コットン、セルロース、ポリウレタン、ポリエステル、レーヨン、不織布などが挙げられる。その中で、不織布が水分の吸収性がよく、適度の柔軟さがあり、また噛み切ることが難しい材料であることから使用できる。
【0015】
刺激剤としては、唾液の分泌に際して十分な刺激を有し、唾液糖測定に影響を与えなければ特に限定はなく、唾液採取と同時に使用する必要があるため、粉末状もしくは固形状のような唾液を希釈しない形状であれば特に問題がない。例えば、甘味料としては、アスパルテーム・L−フェニルアラニン化合物、キシリトール、ソルビトール、酸味料としては、クエン酸、グルコン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、香料としては、1−メントール、果実香味成分が挙げられ、単一もしくは複数成分を使用することができる。
【0016】
唾液採取回収器具としては、簡便で短時間に20マイクロリットル以上の舌下腺および顎下腺唾液が採取および回収可能な器具であれば特に限定されない。例えば、本発明者らが開発した唾液採取回収器具として、フィルム型唾液採取回収器具、シリンジ型唾液採取回収器具などがある。
【0017】
高感度測定としては、唾液糖は血糖の約1/100の濃度であるため、数十nmol/Lの濃度が測定できる方法が必要である。グルコース脱水素酵素、補酵素、電子メディエータ、テトラゾリウム塩の試薬を用いる比色定量の測定系によりその濃度領域を測定することができる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明の一実施例について具体的に説明する。
実施例1 唾液採取回収方法
本実施例における唾液の採取回収キットおよびそれを用いた採取方法の一例を図1に示す。
まず、塩化セチルピリジニウム(サンスター(株)製)含む口腔洗浄液1で30秒間口腔内を殺菌洗浄し、その後水でよく濯いだ。
余剰水分吸収体2として、40×80mmの不織布(オーミケンシ(株)製)を舌下に入れ、口を閉じ、舌下の余剰水分を吸収させた。
次に、前記余剰水分吸収体を取り出し、同様の位置に唾液採取回収器具のピストン部分3を設置させ、舌先に固形の刺激剤4を置き、口を閉じ、30秒程度待った。
唾液採取回収用具のピストン部分を取り出し、唾液採取回収用具のシリンジ部分5に挿入し、圧搾することにより、シリンジの先から約25マイクロリットルの唾液が得られた。
【0019】
実施例2 比色定量の試薬調製方法および測定方法
本実施例における高感度測定の一実施例として比色定量の試薬調製方法および測定方法を以下に示す。
試薬1凍結乾燥試薬として、pH8.0 Tris−KOH Buffer:10mmol/L、KCl:150mmol/Lで溶解させたアスコルビン酸オキシダーゼ(東洋紡(株)製):4U/mLを混合し凍結乾燥させたものを使用した。
試薬1溶解液として、超純粋で溶解させた1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルフェート(1−メトキシPMS)((株)同仁化学研究所製):0.02mmol/Lを使用した。
試薬2凍結乾燥試薬として、pH8.0 Tris−KOH Buffer:10mmol/L、KCl:150mmol/Lで溶解させたグルコース脱水素酵素(天野エンザイム(株)製):50U/mL、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)(オリエンタル酵母(株)製):3mmol/Lを混合し凍結乾燥させたものを使用した。
試薬2溶解液として、超純粋で溶解させた2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2水素−テトラゾリウム(WST−1)((株)同仁化学研究所製):2mmol/Lを用いた。
【0020】
試薬1凍結乾燥試薬に試薬1溶解液を任意量添加混合し、試薬1を、試薬2凍結乾燥試薬に試薬2溶解液を同様に任意量添加混合し、試薬2をそれぞれ調製した。標準溶液もしくは唾液試料の20マイクロリットルをマイクロプレートに添加し、次に、よく混合した試薬1を50マイクロリットル添加した。5分後、試薬2を50マイクロリットル添加し、20分待った。分光光度計において、主波長として450nm、副波長として630nmを設定し、比色定量を行った。
【0021】
実施例3 血糖および唾液糖の相関関係
本実施例における血糖および唾液糖との相関関係を図2に示す。横軸に血糖濃度、縦軸に唾液糖濃度を示しており、検体数は88である。この図は、クラークエラーグリッド(Diabetes Care,Vol.10,p.622(1987))と呼ばれており、AからEまでの5つの領域に区別される。領域AとBは臨床的に正確な領域であり、領域C、DおよびEは潜在的に危険な領域、かつ臨床的に重大な誤診を引き起こす領域である。一般的に血糖自己測定器の性能評価に用いられるものである。
この図から、領域AとBは95.4%、領域Cは2.3%、領域Dは2.3%となっており、極めて良好な相関性が得られた。また、血糖に対する唾液糖は約1/100の濃度で分泌していることがわかる。
【0022】
【発明の効果】
以上のような唾液糖測定方法および測定キットを用いることによって、血糖と高い相関性がある唾液糖測定が可能となる。この方法による唾液糖測定を行うことにより、血糖測定で問題となっていた採血時の痛みによる苦痛および感染の危険性を回避することができる。また採血が不要のため、誰でも測定が可能となり、糖尿病患者の自己管理だけではなく、健常者の糖尿病予防などにも使用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】唾液採取回収方法を示す概略図である。
【図2】血糖濃度および唾液糖濃度との相関関係を示す図である。
【符号の説明】
1・・・口腔洗浄液
2・・・余剰水分吸収体
3・・・唾液採取回収器具のピストン部分
4・・・唾液採取回収用具のシリンジ部分
5・・・固形の刺激剤
【産業上の利用分野】
本発明は、非侵襲血糖測定の一方法として、血糖値と高い相関性を持つ唾液糖測定のために必要な高感度測定から成る唾液糖測定方法および測定キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、非侵襲血糖測定の開発が盛んに行われており、例えば、超音波処理により皮膚細胞間隙を広げ、染み出してくる細胞間液の糖濃度測定による方法(Nature Medicine,Vol.6,p.347(2000))などがある。唾液も非侵襲血糖の一候補検体であり、さまざまに検討がなされている。
【0003】
口腔内に存在するヒトの唾液腺は、耳下腺、舌下腺、顎下腺の3腺有り、各々から分泌される唾液のことを耳下腺唾液、舌下腺唾液、顎下腺唾液と区別している。さらに上記の唾液が混合すると全唾液と呼んでいる。これら各々の唾液腺および刺激の有無により唾液量、唾液成分などが異なることが知られており(Geigy Scientific Table,Vol.1,p.114(1981))、各種唾液中の糖濃度も同様に異なっている。また、唾液1mL中に約1千万個の常在菌が繁殖しており、その大部分の細菌は糖を分解することも知られている(歯学微生物学 第5版,p.220(1998))。
【0004】
以前から唾液糖に関する研究(例えば、Virchows Archiv fur Pathologische Anatomie und Physiologie und for Klinische Medizin, Vol.125, p146 and 340(1891))が行われており、唾液糖は血糖に依存していないとの多くの報告がある。しかし、各種唾液成分の検討および刺激の有無による採取に関して明確に検討されていなく、常在菌による糖の分解に関しては全く検討されていない。また、糖尿病患者は口内炎を発症している人が多く、口内炎による血液の混入による影響なども報告されていない。さらに、短時間の高感度測定ができなかったなどの多くの問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは簡便でしかも短時間に採取可能な唾液に着目して検討を行った。本発明では、唾液糖の測定に変動を与える要因の影響を解決するために、口腔内細菌の殺菌洗浄、余剰水分除去、刺激条件下での舌下腺および顎下腺唾液の採取回収方法および高感度測定を行うことによる唾液糖測定方法および測定キットを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の唾液糖測定方法は、唾液採取回収方法および高感度測定からなっており、唾液採取回収方法とは、口腔内細菌の殺菌洗浄、余剰唾液および水分の除去、刺激条件下での舌下腺および顎下腺唾液の採取回収からなり、高感度測定とは、グルコース脱水素酵素、酸化型補酵素の酵素反応から生成される還元型補酵素に電子メディエータ、テトラゾリウム塩の酸化還元反応から生成されるホルマザンを比色定量により測定する方法である。該方法に必要な器具および試薬を包括した測定キットである本発明の唾液糖測定キットは、唾液中に含まれる糖を分解する口腔内細菌を殺菌および抗菌するための口腔洗浄液、該口腔洗浄液、余剰唾液および水分を除くための余剰水分吸収体、唾液分泌促進のための刺激剤ならびに舌下腺および顎下腺唾液を簡便で短時間に採取および回収可能な唾液採取回収器具を含む。
【0007】
口腔洗浄液は、口腔内に存在する細菌の殺菌除去のために必要であり、さらに唾液糖は血糖の約1/100であることから口内炎などによる血液混入の影響除去のために必要である。
【0008】
余剰水分吸収体は、口腔洗浄液、余剰唾液および水分の除去を目的としている。唾液糖測定では、刺激中の舌下腺および顎下腺唾液の糖濃度が血糖濃度に相関する結果が得られているため、洗浄のため使用された口腔洗浄液、全唾液および水分により、唾液糖が希釈される可能性がある。
【0009】
刺激剤に関しては、唾液の分泌量および濃度を一定にする効果とともに、唾液の分泌量が少ない糖尿病患者および高齢者でも採取可能とするために必要である。また、この刺激剤を使用することにより、唾液の分泌を促し、短時間での唾液採取回収を可能とする。さらに、本発明に使用する刺激剤は粉末状もしくは固形状であり、唾液の採取時は常に同一の刺激条件下であることが特徴となっている。
【0010】
唾液採取回収器具に関しては、刺激条件下のもと舌下腺、顎下腺から分泌される唾液を採取する必要がある。そのため、両唾液腺が存在する舌下に配置するだけで、採取することが可能で、しかも短時間の回収可能な構造を必要とする。本発明者らは、これらのことを改善するために、簡便で短時間に唾液の採取回収が可能な器具を新規に開発してきた(WO02/086453)。これら器具を舌下に配置するだけで、舌下腺および顎下腺唾液を簡便で短時間に唾液の採取および回収が可能となった。これらの器具は、耳下腺のみにも使用することができ、また、他の検査項目にも使用することができる。本発明の主旨である唾液糖測定に関しては、刺激条件下で舌下腺および顎下腺唾液を限定して採取することにより、血糖に対する唾液糖の有用な相関が得られた。
【0011】
血糖を測定する方法として、比色定量法としては、グルコース脱水素酵素―酸化型補酵素もしくはグルコースオキシダーゼ−ペルオキシダーゼを用いて生成される還元型補酵素もしくは過酸化水素を他の酸化還元物質に呈色させてマイクロプレートリーダーもしくは分光光度計で測定を行う方法などがある。しかし、唾液糖は血糖の約1/100の濃度のため、上記の血糖の測定をそのまま使用することができない。本発明者らは、グルコース脱水素酵素−酸化型補酵素に電子メディエータ、テトラゾリウム塩を含めた比色定量の測定系で高感度測定を行った。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる口腔洗浄液の殺菌成分としては、人体に影響なく口腔内での使用が可能であり、糖を分解する口腔内細菌を殺菌し、唾液糖測定の際に阻害しなければ特に限定はない。例えば、四級アンモニウム塩系殺菌剤である塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。その中で、塩化セチルピリジニウムが口腔内洗浄液の殺菌成分として、一般的に最もよく知られ、かつ使用されており、また唾液糖測定に影響がないことから使用することができる。
【0013】
また、口腔洗浄液の殺菌成分以外のものとして、香料、甘味料、潤滑剤等を使用することにより、殺菌成分の苦みの軽減や洗浄の円滑などの特徴を付与することができるが、これも、唾液糖測定の際に阻害しなければ特に限定はない。
【0014】
余剰水分吸収体としては、口腔洗浄後に存在している口腔洗浄液、余剰唾液および水分などを瞬時に吸収し、口腔内を傷つけない適度の柔軟さ、および使用中に噛み切るなどの破損しない材料であれば特に限定はない。例えば、コットン、セルロース、ポリウレタン、ポリエステル、レーヨン、不織布などが挙げられる。その中で、不織布が水分の吸収性がよく、適度の柔軟さがあり、また噛み切ることが難しい材料であることから使用できる。
【0015】
刺激剤としては、唾液の分泌に際して十分な刺激を有し、唾液糖測定に影響を与えなければ特に限定はなく、唾液採取と同時に使用する必要があるため、粉末状もしくは固形状のような唾液を希釈しない形状であれば特に問題がない。例えば、甘味料としては、アスパルテーム・L−フェニルアラニン化合物、キシリトール、ソルビトール、酸味料としては、クエン酸、グルコン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、香料としては、1−メントール、果実香味成分が挙げられ、単一もしくは複数成分を使用することができる。
【0016】
唾液採取回収器具としては、簡便で短時間に20マイクロリットル以上の舌下腺および顎下腺唾液が採取および回収可能な器具であれば特に限定されない。例えば、本発明者らが開発した唾液採取回収器具として、フィルム型唾液採取回収器具、シリンジ型唾液採取回収器具などがある。
【0017】
高感度測定としては、唾液糖は血糖の約1/100の濃度であるため、数十nmol/Lの濃度が測定できる方法が必要である。グルコース脱水素酵素、補酵素、電子メディエータ、テトラゾリウム塩の試薬を用いる比色定量の測定系によりその濃度領域を測定することができる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明の一実施例について具体的に説明する。
実施例1 唾液採取回収方法
本実施例における唾液の採取回収キットおよびそれを用いた採取方法の一例を図1に示す。
まず、塩化セチルピリジニウム(サンスター(株)製)含む口腔洗浄液1で30秒間口腔内を殺菌洗浄し、その後水でよく濯いだ。
余剰水分吸収体2として、40×80mmの不織布(オーミケンシ(株)製)を舌下に入れ、口を閉じ、舌下の余剰水分を吸収させた。
次に、前記余剰水分吸収体を取り出し、同様の位置に唾液採取回収器具のピストン部分3を設置させ、舌先に固形の刺激剤4を置き、口を閉じ、30秒程度待った。
唾液採取回収用具のピストン部分を取り出し、唾液採取回収用具のシリンジ部分5に挿入し、圧搾することにより、シリンジの先から約25マイクロリットルの唾液が得られた。
【0019】
実施例2 比色定量の試薬調製方法および測定方法
本実施例における高感度測定の一実施例として比色定量の試薬調製方法および測定方法を以下に示す。
試薬1凍結乾燥試薬として、pH8.0 Tris−KOH Buffer:10mmol/L、KCl:150mmol/Lで溶解させたアスコルビン酸オキシダーゼ(東洋紡(株)製):4U/mLを混合し凍結乾燥させたものを使用した。
試薬1溶解液として、超純粋で溶解させた1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルフェート(1−メトキシPMS)((株)同仁化学研究所製):0.02mmol/Lを使用した。
試薬2凍結乾燥試薬として、pH8.0 Tris−KOH Buffer:10mmol/L、KCl:150mmol/Lで溶解させたグルコース脱水素酵素(天野エンザイム(株)製):50U/mL、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)(オリエンタル酵母(株)製):3mmol/Lを混合し凍結乾燥させたものを使用した。
試薬2溶解液として、超純粋で溶解させた2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2水素−テトラゾリウム(WST−1)((株)同仁化学研究所製):2mmol/Lを用いた。
【0020】
試薬1凍結乾燥試薬に試薬1溶解液を任意量添加混合し、試薬1を、試薬2凍結乾燥試薬に試薬2溶解液を同様に任意量添加混合し、試薬2をそれぞれ調製した。標準溶液もしくは唾液試料の20マイクロリットルをマイクロプレートに添加し、次に、よく混合した試薬1を50マイクロリットル添加した。5分後、試薬2を50マイクロリットル添加し、20分待った。分光光度計において、主波長として450nm、副波長として630nmを設定し、比色定量を行った。
【0021】
実施例3 血糖および唾液糖の相関関係
本実施例における血糖および唾液糖との相関関係を図2に示す。横軸に血糖濃度、縦軸に唾液糖濃度を示しており、検体数は88である。この図は、クラークエラーグリッド(Diabetes Care,Vol.10,p.622(1987))と呼ばれており、AからEまでの5つの領域に区別される。領域AとBは臨床的に正確な領域であり、領域C、DおよびEは潜在的に危険な領域、かつ臨床的に重大な誤診を引き起こす領域である。一般的に血糖自己測定器の性能評価に用いられるものである。
この図から、領域AとBは95.4%、領域Cは2.3%、領域Dは2.3%となっており、極めて良好な相関性が得られた。また、血糖に対する唾液糖は約1/100の濃度で分泌していることがわかる。
【0022】
【発明の効果】
以上のような唾液糖測定方法および測定キットを用いることによって、血糖と高い相関性がある唾液糖測定が可能となる。この方法による唾液糖測定を行うことにより、血糖測定で問題となっていた採血時の痛みによる苦痛および感染の危険性を回避することができる。また採血が不要のため、誰でも測定が可能となり、糖尿病患者の自己管理だけではなく、健常者の糖尿病予防などにも使用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】唾液採取回収方法を示す概略図である。
【図2】血糖濃度および唾液糖濃度との相関関係を示す図である。
【符号の説明】
1・・・口腔洗浄液
2・・・余剰水分吸収体
3・・・唾液採取回収器具のピストン部分
4・・・唾液採取回収用具のシリンジ部分
5・・・固形の刺激剤
Claims (5)
- 唾液中に含まれる糖を分解する口腔内細菌を殺菌および抗菌するための口腔洗浄液、該口腔洗浄液、余剰唾液および水分を除くための余剰水分吸収体、唾液分泌促進のための刺激剤ならびに舌下腺および顎下腺唾液を簡便で短時間に採取および回収可能な唾液採取回収器具を含む、唾液中に含まれる低濃度の糖を定量的に測定が可能な高感度測定のための唾液糖測定キット。
- 前記刺激剤は、唾液糖測定に阻害しない成分であり、唾液分泌に際して十分な刺激を有し、前記唾液採取および回収器具と同時に使用することが可能な機能を有する請求項1記載の唾液糖測定キット。
- 前記唾液採取および回収器具は、舌下腺および顎下腺唾液を短時間で採取回収が可能であり、回収した唾液が唾液糖測定に十分量を確保することが可能な構造を有する請求項1または2に記載の唾液糖測定キット。
- 前記高感度測定は、グルコース脱水素酵素、酸化型補酵素の酵素反応から生成される還元型補酵素に電子メディエータ、テトラゾリウム塩の酸化還元反応から生成されるホルマザンを比色定量により測定する請求項1から3のいずれかに記載の唾液糖測定キット。
- 前記請求項1から4のいずれかに記載の唾液糖測定キットを用いた唾液糖測定方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003008241A JP2004219309A (ja) | 2003-01-16 | 2003-01-16 | 唾液糖測定方法および測定キット |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003008241A JP2004219309A (ja) | 2003-01-16 | 2003-01-16 | 唾液糖測定方法および測定キット |
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2003
- 2003-01-16 JP JP2003008241A patent/JP2004219309A/ja active Pending
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