JP2004217448A - 水素製造装置および燃料電池システム - Google Patents

水素製造装置および燃料電池システム Download PDF

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Abstract

【課題】小型軽量で、構成機器の温度制御を容易に好適に行うことができる水素製造装置を提供する。
【解決手段】炭化水素油から水素を含有するガスを製造するための水素製造装置において、密閉可能な一つの円筒状容器内に、水蒸気改質反応器、バーナー、水蒸発器、CO変成反応器、選択酸化反応器、燃焼用の空気を該容器の底部からバーナーへ供給する燃焼用空気供給ライン、燃焼用の燃料を該容器の底部からバーナーへ供給する燃焼用燃料供給ライン、炭化水素油を該容器の底部から水蒸気改質反応器へ供給する炭化水素油供給ライン、および、水蒸気を水蒸発器から水蒸気改質反応器へ供給する水蒸気供給ラインを有する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は灯油等の炭化水素油から、水素を製造するための水素製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境に優しいエネルギー変換技術として燃料電池が注目されている。固体高分子形など、多くのタイプの燃料電池において、燃料電池の燃料極で実際に電極反応するのは水素である。しかし、水素よりも灯油等の炭化水素油の方が供給体制や取り扱いにおいて優れる面があるため、灯油等の炭化水素油を改質して水素を含む改質ガスを製造し、これを燃料電池の燃料極に供給する燃料電池システムが開発されている。
【0003】
例えば固体高分子形燃料電池においては、一酸化炭素が電池性能に悪影響を及ぼすため、燃料極に供給する燃料中のCO濃度を低下させる必要があり、改質器の下流にCO変成反応器と選択酸化反応器が設けられる。また、改質に水蒸気を用いる場合には水蒸気発生器が設けられ、さらに硫黄が改質触媒などの被毒物質となるため、炭化水素油中の硫黄を除去するための脱硫器が設けられる場合も多い。
【0004】
このように、炭化水素油から、燃料極に供給するに適した水素含有ガスを製造するためにはいくつもの機器が必要となる。
【0005】
これら機器のうちには、発熱を伴うもの、あるいは吸熱を伴うものがあり、またそれぞれ適した温度が存在する。水蒸気改質器においては、反応は吸熱反応であり、例えば800℃程度の高温で運転される。収着型脱硫触媒を用いた脱硫器は例えば300℃程度の中温で運転される。CO変成反応器は、反応は発熱反応であり、例えば300℃程度で運転される。選択酸化反応器は、反応は発熱反応であり、例えば150℃程度の低温で運転される。したがって、それぞれの機器について温度管理が必要となる。
【0006】
従来の水素製造プロセスにおいて、中温および低温で運転される機器の温度管理は、プロセスガスと冷却水による温度制御によってなされるのが主流であった。この場合、負荷の小さいところではプロセスガスの量も少なく、温度制御が容易でないことがあった。また、起動時には、プロセスガスがほとんど得られないため、中温部や低温部においては、電気ヒータ等の加熱手段を別途設けて機器を加熱することも行われていた。このため、水素製造のための装置が複雑になり、流体の流れに偏りが生じ、機器に不均等な熱分布が生じる原因となることがあった。また、燃料電池システムはコンパクトかつ軽量であることが求められることが多いが、上記のような従来技術では水素製造のための装置はコンパクトさにおいて優れるとはいえず、一層の小型化、軽量化が望まれていた。
【0007】
上記のような水素製造に係る従来技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−241108号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、炭化水素油から水素含有ガスを製造するための水素製造装置において、小型軽量で、構成機器の温度制御を容易に好適に行うことができる水素製造装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明により、炭化水素油から水素を含有するガスを製造するための水素製造装置において、
密閉可能な一つの円筒状容器内に、水蒸気改質反応器、バーナー、水蒸発器、CO変成反応器、選択酸化反応器、燃焼用の空気を該容器の底部からバーナーへ供給する燃焼用空気供給ライン、燃焼用の燃料を該容器の底部からバーナーへ供給する燃焼用燃料供給ライン、炭化水素油を該容器の底部から水蒸気改質反応器へ供給する炭化水素油供給ライン、および、水蒸気を水蒸発器から水蒸気改質反応器へ供給する水蒸気供給ラインを有することを特徴とする水素製造装置が提供される。
【0011】
この装置において、前記水蒸気改質反応器、バーナー、水蒸発器、CO変成反応器および選択酸化反応器が、前記容器の中心軸に対して対称な形状を有することが好ましい。
【0012】
上記装置において、前記容器内の鉛直方向において、上から下に向かって、水蒸気改質反応器、水蒸発器、CO変成反応器および選択酸化反応器がこの順に配され、バーナーはバーナー上端が水蒸気改質反応器の下端になる位置に配され、該容器内の半径方向において、バーナー、該燃焼用空気供給ラインおよび該燃焼用燃料供給ラインより外側の領域である外周領域に、水蒸気改質反応器、水蒸発器、CO変成反応器および選択酸化反応器が配され、
該容器底部から水蒸発器へ、選択酸化反応器とCO変成反応器をこの順に経由して冷却しつつ水を供給する第1の水供給ラインと、該容器底部から水蒸発器へ、選択酸化反応器とCO変成反応器を経由せずに水を供給する第2の水供給ラインとを有し、
バーナーの燃焼ガスが水蒸気改質反応器の半径方向中央側を上昇し、水蒸気改質反応器の上端で折り返し、水蒸気改質反応器の半径方向外側を下降し、水蒸発器、CO変成反応器、選択酸化反応器、該第2の水供給ライン、該燃焼用空気供給ラインおよび該燃焼用燃料供給ラインを加熱しつつ下降し、容器底部に設けられた排出口へと導かれる燃焼ガス流路を有する
ことが好ましい。
【0013】
上記装置において、次の二つの好ましい形態がある。
【0014】
i)さらに、炭化水素油を脱硫するための脱硫器が、前記容器内の鉛直方向において水蒸発器とCO変成反応器との間に、前記容器内の半径方向において前記外周領域に、かつ前記燃焼ガス流路内に配され、
かつ、該脱硫器が前記炭化水素油供給ラインの途中、かつ前記水蒸気供給ラインの途中に配されることにより、水蒸発器からの水蒸気と前記容器底部から供給される炭化水素油とが該脱硫器に供給され、該脱硫器から排出される脱硫された炭化水素油と水蒸気との混合ガスが水蒸気改質反応器に供給されるラインが形成された水素製造装置。
【0015】
この装置では、前記脱硫器が収着型脱硫触媒を備えることが好ましい。
【0016】
ii)さらに、供給される二つの流体を混合する混合器が、前記容器内の鉛直方向において水蒸発器とCO変成反応器との間に、前記容器内の半径方向において前記外周領域に、かつ前記燃焼ガス流路内に配され、
かつ、該混合器が前記炭化水素油供給ラインの途中、かつ前記水蒸気供給ラインの途中に配されることにより、水蒸発器からの水蒸気と前記容器底部から供給される炭化水素油とが該混合器に供給され、該混合器から排出される炭化水素油と水蒸気との混合ガスが水蒸気改質反応器に供給されるラインが形成された水素製造装置。
【0017】
上記装置において、発生した水蒸気をスーパーヒートするスーパーヒーターを有することが好ましい。
【0018】
上記装置において、前記CO変成反応器が、相対的に低い定格運転温度を持つ低温CO変成部と、相対的に高い定格運転温度を持つ高温CO変成部とを有することが好ましい。
【0019】
本発明により、上記の水素製造装置と、該水素製造装置で製造された水素を含有するガスを燃料極供給ガスとして用いる燃料電池とを少なくとも有する燃料電池システムが提供される。
【0020】
【発明の実施の形態】
〔炭化水素油〕
水素製造の原料としては、常温、例えば15〜20℃、で液体であり、分子中に炭素と水素を有する化合物を含み、水蒸気改質反応により水素を生成しうる有機化合物を用いることができる。例えば、石油から得られる、液化石油ガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油などの石油系炭化水素油を用いることができる。
【0021】
〔脱硫〕
硫黄は水蒸気改質触媒を不活性化させる作用があるため、水蒸気改質反応器に供給される炭化水素油中の硫黄濃度はなるべく低いことが好ましい。好ましくは50質量ppm以下、より好ましくは20質量ppm以下である。このため、必要であれば水蒸気改質の前に炭化水素油を脱硫することができる。本発明の水素製造装置に供給する前に予め脱硫された炭化水素油を用いても良いし、水素製造装置内に脱硫器を設けても良い。脱硫器を設ける場合、脱硫器に供給する炭化水素油は、脱硫器において例えば上記硫黄濃度まで脱硫できるものであれば使用することができる。
【0022】
脱硫方法としては、システムの簡素化、制御方法の簡便さ、および触媒の前処理の容易さの観点から、適当な収着型脱硫触媒の存在下硫黄分を収着させる方法が好ましい。収着型脱硫触媒は吸着および/または吸収によって硫黄分を除去するもので、例えば、硫黄の吸着容量の観点からZn/ZnO、Cu/CuO、Ni/NiOなどを含むものが好ましい。
【0023】
収着型脱硫触媒を用いる場合、脱硫触媒を良好に機能させる観点から、脱硫温度は200〜350℃が好ましい。
【0024】
また、脱硫触媒が、収着脱硫のみならず炭化水素油の分解反応を促進するものであってもよい。この場合脱硫器が、炭化水素油を一部分解するプレリフォーマーを兼ねる形態となる。
【0025】
〔水蒸気改質反応器〕
水蒸気改質反応器では、炭化水素油と水が反応して一酸化炭素と水素が得られる。この反応は大きな吸熱を伴うため、外部からの加熱が必要である。このため、本発明の水素製造装置にはバーナーが設けられ、燃焼熱により、改質反応が進行する領域を外部から加熱する。
【0026】
例えば、改質反応管内に改質触媒を充填して形成した改質触媒層に、炭化水素油とスチームを供給し、改質反応管の外部から改質触媒層を加熱することができる。
【0027】
水蒸気改質反応は、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などのVIII族金属を代表例とする金属触媒の存在下反応が行われる。
【0028】
反応温度は450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で行うことができる。
【0029】
改質反応の圧力は、適宜設定できるが、好ましくは大気圧〜20MPa、より好ましくは大気圧〜5MPa、さらに好ましくは大気圧〜1MPaの範囲である。
【0030】
反応系に導入するスチームの量は、炭化水素油に含まれる炭素原子モル数に対する水分子モル数の比(スチーム/カーボン比)として定義され、この値は好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜7、さらに好ましくは2〜5とされる。この時の空間速度(LHSV)は炭化水素燃料の液体状態での流速をA(L/h)、触媒層体積をB(L)とした場合A/Bで表すことができ、この値は好ましくは0.05〜20h−1、より好ましくは0.1〜10h−1、さらに好ましくは0.2〜5h−1の範囲で設定される。
【0031】
水蒸気改質反応器の形態としては、熱バランスの観点から、二重管型反応器が好ましい。二重管型反応器においては、二重管の外環部に改質触媒が充填され、内管には触媒は充填されない。改質の原料は外環部に導入され、触媒層を通過する際に水蒸気改質反応を起こし、導入された側とは反対の端部で折り返し、内管を通過して原料が導入される側の端部から排出される。
【0032】
〔バーナー〕
バーナーの燃焼のために供給される燃料としては、可燃物を適宜用いることができる。例えば、水素製造の原料として用いる炭化水素油を燃焼用に用いることが、水素製造装置あるいはその付帯設備の簡素化の観点から好ましい。また、水素製造装置を燃料電池システムに用いる場合には、燃料電池の燃料極出口ガスを用いることが、エネルギー効率の観点から好ましい。
【0033】
バーナーの燃焼最高温度は、改質反応器材料の耐熱温度の観点から800〜1000℃とすることが好ましい。
【0034】
〔CO変成反応器〕
水蒸気改質反応器で発生する改質ガスは水素の他に一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、水蒸気を含む。水素濃度を高めるため、また一酸化炭素は触媒毒となることもあるので一酸化炭素濃度を低減するため、一酸化炭素を水と反応させ水素と二酸化炭素に転換するのがCO変成反応器である。Fe−Crの混合酸化物、Zn−Cuの混合酸化物、白金、ルテニウム、イリジウムなど貴金属を含有する触媒を用い、一酸化炭素含有量(ドライベースのモル%)を好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下までに落とすことができる。
【0035】
シフト反応を二段階で行うこともでき、この場合CO変成反応器を二つの部分に分ける。一方は相対的に低い定格運転温度を持つ低温CO変成部であり、他方は相対的に高い定格運転温度を持つ高温CO変成部である。この二つの部分は一つの反応器の内部に、二つの領域として設けても良いし、独立した二つの反応器を接続した形態でも良い。高温CO変成は300〜500℃を好適な使用温度とする高温変成触媒を用いて行うことができ、低温CO変成は180〜300℃を好適な使用温度とする高温変成触媒を用いて行うことができる。
【0036】
CO変成はガス空間速度GHSV(15℃、1気圧(0.101MPa)換算)800〜3000h−1で行うことが好ましい。
【0037】
〔選択酸化反応器〕
例えば固体高分子形燃料電池システムでは、さらに一酸化炭素濃度を低減させることが好ましく、このためにCO変成反応器の出口ガスを選択酸化反応器で処理することができる。
【0038】
この反応には、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀、金などを含有する触媒を用い、残存する一酸化炭素モル数に対し好ましくは0.5〜10倍モル、より好ましくは0.7〜5倍モル、さらに好ましくは1〜3倍モルの酸素を添加することで一酸化炭素を選択的に二酸化炭素に転換することにより一酸化炭素濃度を好ましくは10ppm以下に低減させる。この場合、一酸化炭素の酸化と同時に共存する水素と反応させメタンを生成させることで一酸化炭素濃度の低減を図ることもできる。酸素源としては例えば空気を用いることができる。
【0039】
選択酸化は、100〜200℃を好適な使用温度とする選択酸化触媒を用いて行うことができる。供給する酸素とCOのモル比(O/CO比)は1.0〜2.0が好ましく、またGHSV(15℃、1気圧(0.101MPa)換算)で7000〜10000h−1が好ましい。
【0040】
〔水/蒸気系〕
水蒸気改質に必要な水蒸気を供給するために、水素製造装置は水蒸発器を備える。また、安定運転の観点から、水素製造装置は発生した水蒸気を過熱するスーパーヒーターを有することが好ましい。
【0041】
水素製造装置に供給する水の温度は例えば35〜60℃とすることができ、発生させる水蒸気は例えば0.1MPa、100〜120℃とすることができる。これをスーパーヒートして例えば250〜450℃とすることができる。
【0042】
〔容器〕
容器は、放熱を効果的に抑制する観点から、真空断熱材によって形成されることが好ましい。つまり、容器を内壁と外壁の二重構造とし、内壁と外壁の間を真空とすることが好ましい。
【0043】
〔配置〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の水素製造装置の一形態について詳細に説明する。図1は主要な機器構成を示すための、水素製造装置の側断面の左半分のみを示した模式図である。側断面の右半分は、機器の配置が基本的に同様のため図示を省略してある。なお、各図面において、紙面の上方は、鉛直方向の上方と一致する。
【0044】
水素製造装置を構成する機器は、一つの密閉可能な容器1内に収められる。容器は中心軸100を中心とする円形の断面を有する円筒状であり、その壁は二重構造を有する真空断熱材で形成される。
【0045】
バーナー2は容器1内の半径方向において中央に、かつ鉛直方向においては、バーナーの上端が水蒸気改質反応器3の下端になる位置に配される。
【0046】
バーナーの下方には燃焼用空気供給ライン11および燃焼用燃料供給ライン12が配される。
【0047】
バーナーおよび上記ライン11および12よりも容器半径方向外側(外周領域という)に、水蒸気改質反応器3、水蒸発器4、脱硫器5、CO変成反応器6、選択酸化反応器7が配される。
【0048】
水蒸気改質反応器は二重管型反応器であり、図2にその断面を示すように反応器が複数、ここでは6本、容器1の中心軸100を中心とする円周上に等間隔に配置される。
【0049】
水素製造装置の構成要素が中心軸に対して対称に配置されることにより、容器内の温度分布が中心軸に対して対称になり、プロセスガスが各構成要素において偏りなく処理、加熱などされ、安定した運転が可能となる。
【0050】
脱硫器、CO変成反応器および選択酸化反応器は図3(a)に示すような環状断面を有する筒状反応器であり、流体はその上部から供給され、下部から排出される。これら反応器は容器1の中心軸100について軸対称な形状とされる。脱硫器、CO変成反応器および選択酸化反応器の形状は容器内の温度分布の対称性の観点から、上記形状が好ましい。なお、本発明は、図3(b)に示すように配管のとり回しや接続などのために上記形状の一部を切り欠くことを妨げるものではない。
【0051】
水蒸発器4は、図1では簡略化して示してあるが、中心軸100を中心に単管を巻き回したコイル状であり、これも中心軸に対して対称に配される。コイルの途中で水は蒸発し、その下流はスーパーヒーターとして機能する。
【0052】
水蒸発器には、第1の水供給ライン14および第2の水供給ライン15を通じ、これらが混合されてライン21を経て水が供給される。第1の水供給ラインは選択酸化反応器およびCO変成反応器を経由しており、ここで水が予熱されると同時にこれら反応器が冷却される。これら反応器を経由する形態としては、これら反応器の外壁にジャケットを設け、このジャケットを第1の水供給ライン内に置く形態や、複数の管を反応器内を通過するように設け、特には触媒層内を通過するように設け、その複数の管を第1の水供給ライン内に置く形態などがある。
【0053】
CO変成反応器の温度バランスは、バーナーの燃焼ガスによって外部から加熱される加熱量と、水蒸気改質反応器からライン24を経て供給されるプロセスガスの持ち込み熱量、CO変成反応器内の触媒層でシフト反応によって発生する熱量、第1の水供給ラインを通過する水が持ち出す熱量で決まると考えることができる。上記のように第1の水供給ラインを設け、このラインを流れる水量を調節することにより、CO変成反応器のプロセスガス温度の入り口温度と出口温度が独立に制御でき、通常運転時のみならず起動時や負荷変動時にも安定してCO変成反応を進行させることができ、安定してCO濃度を0.5モル%(ドライベース)以下に保つことができる。また、第2の水供給ラインを併せ持つため、この制御は水蒸気量とも独立に行うことができる。つまり、例えば、第1の水供給ラインの水流量が減った分、第2の水供給ラインの水流量を増やすことにより水蒸発器に供給されるトータルの水流量を一定にすることが可能である。
【0054】
水蒸発器で発生した水蒸気は全量脱硫器に供給することが好ましい。これによってライン16から供給される炭化水素油とライン22から供給される水蒸気とが脱硫器5において、より均一に混合され、その結果水蒸気改質反応器内の改質触媒層において、流れるプロセスガスの組成がより均一となり、改質反応に偏りが生じることを防止でき、またコーキングを防止できる。
【0055】
水素製造装置に供給される炭化水素油中の硫黄濃度が低く、脱硫器を必要としない場合には、脱硫器に替えて混合器を設置することが可能である。この場合も上記と同様に混合促進の観点から、水蒸気は全量混合器に供給することが好ましい。
【0056】
混合器としては、炭化水素油とスチームが混合した際、体積膨張による圧力変化が下流に影響しないような構造、ラシヒリングまたは邪魔板などの抵抗物および伝熱剤を有し、均一に混ざり合い、気相を維持できるような構造のものが好ましい。
【0057】
バーナーで発生する燃焼ガスは、水蒸気改質反応器の内側を鉛直方向上方に向かって流れ、容器の頂部において折り返し、水蒸気改質反応器の外側を下降し、水蒸発器4、脱硫器5、CO変成反応器6、選択酸化反応器7の半径方向内側および外側を流れ、排出口8から排出される。図1中の墨矢印Aは燃焼ガスの流れ方向の概略を示す。
【0058】
また、容器底部からバーナーに燃焼用の空気および燃料をそれぞれ供給する燃焼用空気供給ライン11および燃焼用燃料供給ライン12、容器底部から選択酸化反応器に選択酸化用の空気を供給する選択酸化用空気供給ライン13、第1の水供給ライン14、第2の水供給ライン15、炭化水素油供給ライン16も燃焼ガス流路内にあり、燃料ガスによって加熱される。従って各ラインを流れる流体が予熱され、燃焼ガスの熱エネルギーが極めて有効に利用される。
【0059】
バーナーが容器内の比較的上部に設けられることにより、バーナーの下に設けられるライン11および12が容器内で燃焼ガスと接触する面積を大きくとることができ、バーナー燃焼用の空気および燃料を効果的に予熱することができ、その結果、バーナーにおける燃焼状態を良好に保つことができる。
【0060】
また、炭化水素油供給ライン16においては、炭化水素油が気化されてもよい。この場合、すなわちこのラインの一部が気化器として機能する。
【0061】
また、各構成要素を接続するライン21、22、23、24、25、26も燃焼ガス流路内にある。第1の水供給ラインと第2の水供給ラインとの合流点と水蒸発器4を接続するライン21においては水蒸発器に供給される水が予熱され、水蒸発器と脱硫器とを接続するライン22においては水蒸気がさらにスーパーヒートされる。脱硫器出口と水蒸気改質反応器とを接続するライン23においては、炭化水素油と水蒸気との混合ガスが予熱される。ライン24〜27が燃焼ガス流路内に置かれると、各ラインの流体温度とその周囲の排ガス温度とが熱交換することにより、ユニット内に均一な温度勾配が発生し、強制的に冷却および加熱または保温することなく適度な温度に制御できる。
【0062】
ライン11〜16、21〜27は、単管であってもよいが、熱交換を促進する観点から、フィン付き管とすることもできる。さらに熱交換促進に加えて、容器内の温度分布を中心軸に対して対称にする観点から、例えば炭化水素油供給ライン、燃焼用空気供給ライン、燃焼用燃料供給ラインは、中心軸100を中心として巻き回したコイル状の部分を持つことが好ましい。
【0063】
上記のように各供給流体の予熱が水素製造装置内部で行われるため、水素製造装置に供給する炭化水素油、空気、水、燃焼用燃料は常温で供給することができる。
【0064】
この結果、排出口から排出される燃焼ガスは、例えば50〜98℃という低温まで冷却されることが可能である。
【0065】
燃焼ガス流路には、燃焼ガスの流れ方向を調整するために必要に応じて隔壁を設けることもできる。例えば、前記6本の改質管同士の間を燃焼ガスが通過することを防止するために、改質管同士の間に隔壁を設けることができる。
【0066】
また、一つの容器内に収納される機器および配管などを、燃焼ガスで直接加熱するため、熱交換のために別途熱交換器を設けた場合に比べ、極めてコンパクトな水素製造装置となる。
【0067】
〔燃料電池システム〕
本発明の燃料電池システムは、上述の水素製造装置と、この水素製造装置から得られる水素含有ガスを燃料極供給ガスとして用いる燃料電池とを備える。また、これ以外にも、カソードに空気等の酸素含有ガスを供給する手段、燃料電池から電気を取り出すための手段、計装制御機器など、従来から燃料電池システムに備わる機器等として公知の機器等を適宜設けることができる。
【0068】
【発明の効果】
本発明により、コンパクトで温度制御の容易な水素製造装置が提供された。必要な構成部材の量も低減できるため、小型化に伴って軽量化も実現された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水素製造装置の一形態を示す模式的側断面図である。
【図2】水蒸気改質反応器の配置を示すための模式的断面図である。
【図3】脱硫器、CO変成反応器および選択酸化反応器の形状を示す模式図である。
【符号の説明】
1 容器
2 バーナー
3 二重管型水蒸気改質反応装置
4 水蒸発器
5 脱硫器
6 CO変成反応器
7 選択酸化反応器
8 排出口
11 燃焼用空気供給ライン
12 燃焼用燃料供給ライン
13 選択酸化用空気供給ライン
14 第1の水供給ライン
15 第2の水供給ライン
16 炭化水素油供給ライン
21〜27 ライン
100 中心軸

Claims (9)

  1. 炭化水素油から水素を含有するガスを製造するための水素製造装置において、
    密閉可能な一つの円筒状容器内に、水蒸気改質反応器、バーナー、水蒸発器、CO変成反応器、選択酸化反応器、燃焼用の空気を該容器の底部からバーナーへ供給する燃焼用空気供給ライン、燃焼用の燃料を該容器の底部からバーナーへ供給する燃焼用燃料供給ライン、炭化水素油を該容器の底部から水蒸気改質反応器へ供給する炭化水素油供給ライン、および、水蒸気を水蒸発器から水蒸気改質反応器へ供給する水蒸気供給ラインを有することを特徴とする水素製造装置。
  2. 前記水蒸気改質反応器、バーナー、水蒸発器、CO変成反応器および選択酸化反応器が、前記容器の中心軸に対して対称な形状を有する請求項1記載の水素製造装置。
  3. 前記容器内の鉛直方向において、上から下に向かって、水蒸気改質反応器、水蒸発器、CO変成反応器および選択酸化反応器がこの順に配され、バーナーはバーナー上端が水蒸気改質反応器の下端になる位置に配され、
    該容器内の半径方向において、バーナー、該燃焼用空気供給ラインおよび該燃焼用燃料供給ラインより外側の領域である外周領域に、水蒸気改質反応器、水蒸発器、CO変成反応器および選択酸化反応器が配され、
    該容器底部から水蒸発器へ、選択酸化反応器とCO変成反応器をこの順に経由して冷却しつつ水を供給する第1の水供給ラインと、該容器底部から水蒸発器へ、選択酸化反応器とCO変成反応器を経由せずに水を供給する第2の水供給ラインとを有し、
    バーナーの燃焼ガスが水蒸気改質反応器の半径方向中央側を上昇し、水蒸気改質反応器の上端で折り返し、水蒸気改質反応器の半径方向外側を下降し、水蒸発器、CO変成反応器、選択酸化反応器、該第2の水供給ライン、該燃焼用空気供給ラインおよび該燃焼用燃料供給ラインを加熱しつつ下降し、容器底部に設けられた排出口へと導かれる燃焼ガス流路を有する
    請求項1または2に記載の水素製造装置。
  4. さらに、炭化水素油を脱硫するための脱硫器が、前記容器内の鉛直方向において水蒸発器とCO変成反応器との間に、前記容器内の半径方向において前記外周領域に、かつ前記燃焼ガス流路内に配され、
    かつ、該脱硫器が前記炭化水素油供給ラインの途中、かつ前記水蒸気供給ラインの途中に配されることにより、水蒸発器からの水蒸気と前記容器底部から供給される炭化水素油とが該脱硫器に供給され、該脱硫器から排出される脱硫された炭化水素油と水蒸気との混合ガスが水蒸気改質反応器に供給されるラインが形成された
    請求項1〜3のいずれか一項記載の水素製造装置。
  5. 前記脱硫器が収着型脱硫触媒を備える請求項4記載の水素製造装置。
  6. さらに、供給される二つの流体を混合する混合器が、前記容器内の鉛直方向において水蒸発器とCO変成反応器との間に、前記容器内の半径方向において前記外周領域に、かつ前記燃焼ガス流路内に配され、
    かつ、該混合器が前記炭化水素油供給ラインの途中、かつ前記水蒸気供給ラインの途中に配されることにより、水蒸発器からの水蒸気と前記容器底部から供給される炭化水素油とが該混合器に供給され、該混合器から排出される炭化水素油と水蒸気との混合ガスが水蒸気改質反応器に供給されるラインが形成された
    請求項1〜3のいずれか一項記載の水素製造装置。
  7. 発生した水蒸気をスーパーヒートするスーパーヒーターを有する請求項1〜6のいずれか一項記載の水素製造装置。
  8. 前記CO変成反応器が、相対的に低い定格運転温度を持つ低温CO変成部と、相対的に高い定格運転温度を持つ高温CO変成部とを有する請求項1〜7のいずれか一項記載の水素製造装置。
  9. 請求項1〜8の何れか一項記載の水素製造装置と、該水素製造装置で製造された水素を含有するガスを燃料極供給ガスとして用いる燃料電池とを少なくとも有する燃料電池システム。
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