JP2004217077A - 太陽電池の取付構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】外皮3の外側に装着部材33および外套膜材15を有する装着体32を設けて、この装着体32に太陽電池パネル31を装着する。装着体32の外套膜材15によって空気層4を形成し、空気層4の層厚T4を、給排気手段10による空気層4に対して空気を供給および排出して変更する。空気層4がある場合とない場合とでは、機体3の内外方向の熱抵抗が異なる。したがって飛行船2の飛行状況に応じて、この空気層4の層厚T4を変更し、機体内外の熱の移動を制御することができる。また空気層4を介在させることによって、太陽電池パネル31の熱が外皮5に伝わりにくく、外皮5が高温になることを防ぐことができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飛行船に太陽電池を設ける構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
飛行船は、機体を構成する外皮内に浮揚ガスを収納し、この浮揚ガスによる浮力によって、中空に浮揚しており、浮揚ガスの体積を制御することによって、高度を制御することができる。浮揚ガスの体積を制御するにあたって、外気の温度と浮揚ガスの温度との温度差、換言すれば内外温度差が変化しない状態では、この浮揚ガスの体積の制御が容易であるが、内外温度差が変化すると、これに応じて外気の圧力と浮揚ガスの圧力との差圧、換言すれば内外差圧が変化し、浮揚ガスの体積が不所望に変化してしまう。したがって飛行船では、内外温度差を一定、具体的には内外温度差がない状態に保つことが望まれている(たとえば非特許文献1参照)。
【0003】
このような飛行船は、飛行時には、外気との間で対流伝熱による熱交換が容易であるので、積極的に熱交換をして内外温度差を無くすことができるように、内外の熱抵抗を小さくすることが望まれる。また、飛行船では、定点位置に静止する停留時等、外気と飛行船との相対速度が小さい場合には、大気(以下「外気」という場合がある)との間で対流伝熱による熱交換が困難であるので、太陽輻射などによる熱の流入および放射冷却などによる熱の流出をできるだけ抑えることによって、浮揚ガスの温度変化を抑えて内外温度差が大きくなることを防ぐために、内外の熱抵抗を大きくすることが望まれる。
【0004】
【非特許文献1】
SPF飛行船における熱的な問題とその対策、「第3回成層圏ワークショップ予稿集」、2001年10月1日、p.78−84
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように飛行船は、外皮を含む機体の構造が、飛行状況に応じて、内外の熱抵抗をできるだけ小さくすることと、内外の熱抵抗をできるだけ大きくすることとが要求される。つまり飛行船には、相反する要求が存在するが、これらの要求を満足する飛行船はなく、熱の移動の制御が困難であった。
【0006】
特に、外皮に直接太陽電池パネルが設けられている飛行船においては、この太陽電池部分における熱の輻射による流入および流出が激しく、昼間はスーパーヒートと呼ばれる浮揚ガスの温度が高くなる現象、および夜間はスーパークールと呼ばれる浮揚ガスの温度が低くなる現象がさらに助長され、飛行船の浮力制御上の大きな問題となる。また太陽電池を外皮に直接設けると、太陽輻射によりその部分の外皮が高温になってしまい、強度が著しく低下する不具合がある。
【0007】
したがって本発明の目的は、機体の内外の熱の出入を容易に制御することができ、かつ外皮が高温に熱せられることを防ぐことができる飛行船への太陽電池の取付構造を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、太陽電池が装着される装着体であって、飛行船の機体を構成する外皮の少なくとも一部を外側から覆って設けられ、外皮に当接および離間自在に設けられる装着体と、
装着体が外皮に当接される当接状態と、装着体が外皮から離間する離間状態とに、装着体の状態を切り換える装着体状態切換手段とを含むことを特徴とする太陽電池の取付構造である。
【0009】
本発明に従えば、外皮の外側に、外皮に当接および離間自在に、装着体が設けられ、この装着体に太陽電池が装着され、この太陽電池が装着される装着体は、装着体状態切換手段によって、外皮に当接される当接状態と、外皮から離間する離間状態とに、状態が切り換えられる。当接状態にある場合、外皮内に収容される浮揚ガスと太陽電池との間の熱抵抗は小さく、離間状態にある場合、浮揚ガスと太陽電池との間の熱抵抗は大きい。太陽電池は、昼間などに太陽輻射に対して熱を吸収しやすく、夜間などに放射冷却によって熱を放出しやすい構成である。
【0010】
飛行船では、高度を容易に制御するために、機体外の大気の温度と、外皮内の浮揚ガスの温度とを、できるだけ一致させる必要があるが、これを達成するにあたって、機体内外の熱抵抗を小さくすることが好ましい飛行状況と、機体内外の熱抵抗を大きくすることが好ましい飛行状況とが存在する。太陽電池と浮揚ガスとの熱抵抗が小さい状態では、機体内外の熱抵抗が小さくなり、太陽電池と浮揚ガスとの熱抵抗が大きい状態では、機体内外の熱抵抗が大きくなる。したがって飛行船の飛行状況に応じて、熱の出入を制御し、機体の外皮内の浮揚ガスの温度を、外気の温度にできるだけ一致させ、高度を容易に制御することができる。また外皮は高温になると強度が低下してしまうが、前述のように、離間状態にすれば、太陽電池が加熱されても、外皮は加熱されにくくなり、高温になることを防ぐことができる。
【0011】
請求項2記載の本発明は、装着体は、帯状部材を格子状に組んで構成され、太陽電池が装着される装着部材を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に従えば、装着体が帯状部材を格子状に組んで構成される装着部材を有するので、太陽電池の装着に耐え得る強度を保持したうえで、装着体の剛性をできるだけ低くすることができる。したがって装着体の外皮に対する近接および離反変位を容易にすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態の飛行船2の機体3を簡略して模式的に示す断面図である。図2は、空気層4の層厚T4が最小厚の状態で飛行船2を示す斜視図である。図3は、空気層4の層厚T4が最大厚の状態で飛行船2を示す斜視図である。図1は、ブロワ12が設けられる部位を代表して示し外皮5などの厚みを省略して示す。飛行船2は、成層圏プラットホームとして実施することができる飛行船であって、地上から成層圏の予め定められる任務遂行位置まで飛行し、その任務遂行位置に停留して、たとえば通信および放送、地球観測ならびに災害監視などの任務を遂行するために用いられる。この飛行船2は、機体3の下部に、前記任務を遂行するための機器などが装備されるゴンドラが設けられて構成される。図1〜図3において、ゴンドラは図示を省略する。
【0014】
機体3は、気密性を有する外皮5を有し、この外皮5によって機体3の外部の空間25(以下「外部空間」という場合がある)と気密に仕切られる収容空間6が形成される。外皮5内には、浮揚ガス嚢7が設けられ、収容空間6が、浮揚ガス嚢7内の浮揚ガス収容領域8と、浮揚ガス嚢7外の空気収容領域9ととに気密に仕切られる。機体3の上部側に形成される浮揚ガス収容領域8には、空気よりも比重の小さい軽い気体である浮揚ガス、たとえばヘリウムガスが収容され、機体3の下部側に形成される空気収容領域9には、空気が収容される。飛行船2は、この浮揚ガスによって浮力を得て、空中に浮遊することができる。
【0015】
機体3の最下部には、給排気手段10の一部を構成する給排気手段本体16が設けられている。本実施の形態では、機体3の機軸方向に2つの給排気手段本体16が設けられている。各給排気手段本体16は、内部空間22が形成されるハウジング11と、このハウジング11内の空間22(以下「ハウジング内空間」という場合がある)と外部空間25との間に介在されるブロワ12と、ハウジング内空間22と空気収容領域9との間に介在される機内開閉弁13とを有する。
【0016】
ブロワ12は、ファンを一方向へ回転させることによって、外部空間25の空気(以下「外気」という場合がある)をハウジング内空間22に送ることができるとともに、ファンを逆方向へ回転させることによって、ハウジング内空間22の空気を外部空間へ排出することができる。機内開閉弁13は、ハウジング内空間22と空気収容領域9との間を、開放する開状態と、閉鎖する閉状態とに、切り換えることができる。
【0017】
機内開放弁13が閉状態では、空気収容空間9とハウジング内空間22との間の空気の移動が阻止される。機内開放弁13が開状態では、空気収容空間9とハウジング内空間22との間の空気の移動が許容され、この状態でブロワ12のファンを回転することによって、空気収容領域9に空気を供給することができるとともに、空気収容領域9から空気を排出することができる。
【0018】
浮揚ガス嚢7は、可撓性を有しており、浮揚ガス収容領域8の容積を変化可能である。給排気手段10によって、空気収容領域9に空気を供給すると、収容空間6における浮揚ガス収容領域8と空気収容領域9との容積比が、浮揚ガス収容領域8の容積を小さくするように変化する。逆に、給排気手段10によって、空気収容領域9から空気を排出すると、前記容積比が、浮揚ガス収容領域8の容積を大きくするように変化する。この容積比を変化させることによって、機体内ガスの重量を変化させ、飛行船2の高度を制御している。
【0019】
飛行船2では、昼間は、太陽からの熱輻射によって機体3内に熱が流入し、夜間は、機体からの熱輻射によって機体3内から熱が流出する。このように機体3に対して熱が移動すると、浮揚ガスの温度が変化する。このとき、外気の温度も同様に変化すれば、浮揚ガスの温度と外気の温度の温度差は一定であるが、機体3内に収容されるガスは、前記太陽からの熱輻射などによって温度変化する。
【0020】
浮揚ガスの温度が外気の温度よりも一定温度以上に低下すると、機体内圧力が機体形状維持のための最低差圧を下回り、機体が形状を維持できなくなるか、あるいは、機体形状を保てる差圧を維持するために外気を空気収容領域9に取込むと機体の密度が増大し、高度が維持できなくなる。逆に浮揚ガスの温度が外気の温度よりも一定温度以上高くなると、機体内圧力が上昇して、許容差圧を越え、最悪機体が損傷するが、それを避けるために、空気収容領域9内空気を機体外に排気し、機体内圧力を下げると、機体の密度が低下し、機体は上昇し高度保持ができなくなる。これらの不具合を未然に防ぐために、飛行船2では、浮揚ガスの温度と外気温度との温度差を常に、許容範囲内に保つことが望まれる。
【0021】
前述のように外気に比べて浮揚ガスの温度が変化しやすい点に鑑み、浮揚ガスの温度と外気の温度とをできるだけ一致させるための対策として、浮揚ガスの温度の変化を抑制することと、浮揚ガスと外気との間で熱交換することとが考えられる。
【0022】
大気中を飛行している場合には、外気が飛行船2に対して流動しているので、浮揚ガスと外気との間で積極的に熱交換し、浮揚ガスの温度は外気の温度に近づく。この場合、熱交換を容易にするために、機体3の内外の熱抵抗を小さくすることが要求される。機体が周囲の大気に対して相対的に静止している場合には、浮揚ガスと外気との間で熱交換しにくく、したがって機体3の内外の熱の移動を抑制、つまり機体3の内外で断熱し、浮揚ガスの温度と大気温度との温度差が大きくなるのを抑制する。この場合、断熱性を高くするために、機体3の内外の熱抵抗を大きくすることが要求される。
【0023】
このように飛行状況によって、要求される機体3の内外の熱抵抗が異なる。
また飛行船2では、飛行船および前述の任務を遂行するための機器に供給する電力を得るために、太陽電池パネル31が設けられている。この太陽電池パネル31を外皮に直接設けると、この部分の輻射による熱交換が外皮のみの場合に比べて大きく、停留時に、スーパーヒートと呼ばれる浮揚ガスの温度が高くなる現象およびスーパークールと呼ばれる浮揚ガスの温度が低くなる現象が増大する不具合があるとともに、太陽熱輻射により太陽電池を取付けた部分の外皮が高温になってしまい、強度が著しく低下する不具合がある。
【0024】
このような点に鑑み、飛行船2は、飛行状況によって要求が異なる機体3の内外の熱抵抗を変化可能にして、機体3の内外の熱の移動を制御できる熱制御構造1および太陽電池の取付構造30が実施される。飛行船2の熱制御構造1は、空気層形成手段である外套膜材15と、層厚変更手段である給排気手段10とを含んで構成され、太陽電池の取付構造30は、装着体32と、装着体状態切換手段である給排気手段10とを含んで構成される。給排気手段10は、空気収容領域9に対する給排気に用いられる手段であり、層厚変更手段および装着体状態変更手段でもある。
【0025】
外套膜材15は、外皮5の少なくとも一部の外側に層厚T4を変更可能に空気層(以下「断熱空気層」という場合がある)4を形成する手段である。本実施の形態では、外套膜材15は、機体3の上側部分全体に、断熱空気層4を形成する。外套膜材15は、外皮5の機体3の上側部分全体を外側から覆って設けられ、これによって外皮5と外套膜材15との間に外部から密に仕切られる空間(以下「断熱空間」という場合がある)を形成することができる。この断熱空間によって断熱空気層4が構成される。以下、理解を助けるために、断熱空間に断熱空気層と同一の符号「4」を付す。
【0026】
外皮5および外套膜材15は、単層構造および積層構造のいずれであってもよいが、少なくとも気密性および可撓性を有するシート状に形成される。本実施の形態では、外皮5は、たとえば変性ポリフェニレンエーテル(たとえばザイロン(登録商標))から成り、外套膜材15は、たとえばポリテトラフルオロエチレン(たとえばテフロン(登録商標)系合成樹脂)から成る。外套膜材15は、気密性だけを備えればよく、外皮5に比べて厚み寸法が小さく、かつ剛性が低い構成である。このような気密性のシートに囲まれて、断熱空気層4が形成される。
【0027】
また外皮5および外套膜材15の少なくともいずれか一方の断熱空間4に臨む側の表面部には、輻射による熱の移動を抑制するためのアルミニウム層が設けられている。本実施の形態では、外套被膜15として、断熱空間4に臨む側の表面部にアルミニウム蒸着層が形成される膜材が用いられる。
【0028】
前記断熱空間は、全体が1つに連なる構成であってもよいし、また複数に分割される構成であってもよい。図4に示す本実施の形態では、機軸方向に2つに分割され、周方向に2つに分割されて、計4つの断熱空間4が形成される。具体的に述べると、本実施の形態では、4枚の外套膜材15が設けられており、各外套膜材15が、機軸方向および周方向に2枚ずつ並べられて設けられている。各外套膜材15によって、断熱空間4がそれぞれ形成される。また1つの断熱空間4が、通路によって連通される複数の小空間に分割される構成であってもよい。
【0029】
給排気手段10は、断熱空気層4の層厚T4を変更する手段でもある。給排気手段10は、外皮3と各外套膜材15との間の前記各断熱空間4に空気を供給するとともに、外皮3と各外套膜材15との間の前記各断熱空間4から空気を排出する。給排気手段10は、独立した各断熱空間4に対して空気を供給および排出することができるように設けられる。このように前記各断熱空間4に対する空気の供給および排出を制御することによって、断熱空気層4の層厚T4を制御することができる。
【0030】
給排気手段10は、給排気手段本体16に加えて、導気路形成手段である導気路形成膜材17および断熱空気排出弁18をさらに有する。導気路形成膜材17は、帯状であって、外皮5を外側から覆って設けられ、導気路形成膜材17と外皮5との間に、外部から密に仕切られる導気路19が形成される。導気路形成膜材17は、外套膜材15と給排気手段本体16との間にわたって、機体3の周方向に延びて設けられる。本実施の形態では、前述のように4つの断熱空間4が形成されており、各断熱空間4に対応して1つずつ導気路形成膜材17が設けられる。
【0031】
具体的に述べると、前述のように2つの給排気手段本体16が、機軸方向に間隔をあけて設けられており、機首側の給排気手段本体16から周方向に両側に、機首側の断熱空間4を形成する各外套膜材15に向けて延びて2つの導気路形成膜材17が設けられ、機尾側の給排気手段本体16から周方向に両側に、機尾側の断熱空間4を形成する各外套膜材15に向けて延びて2つの導気路形成膜材17が設けられる。これら各導気路形成膜材17を設けることによって、各給排気手段本体16のハウジング内空間22と、各断熱空間4とを連通する4つの導気路19が形成される。
【0032】
各給排気手段本体16は、ハウジング内空間22とこのハウジング内空間22に連なる2つの導気路19との間にそれぞれ介在される2つの断熱空気供給弁20をさらに有する。各断熱空気供給弁20は、ハウジング内空間22と各導気路19との間を、開放する開状態と、閉鎖する閉状態とに、切り換えることができる。各断熱空気供給弁20が閉状態では、導気路19とハウジング内空間22との間の空気の移動が阻止される。各断熱空気供給弁20が開状態では、各導気路19とハウジング内空間22との間の空気の移動が許容され、この状態でブロワ12のファンを回転することによって、外気を、矢符A1で示すようにハウジング内空間22に取り込み、矢符A2〜A4で示すように導気路19を流下させて各断熱空間4に供給することができる。
【0033】
断熱空気排出弁18は、機体3の最上部に設けられ、各断熱空間4と外部空間25との間に介在される。本実施の形態では、機軸方向に2つの断熱空気排出弁18が、各給排気手段本体16と対を成すように設けられる。機首側の断熱空気排出弁18は、機首側の2つの外套膜材15間に配置され、これら機首側の各外套膜材15によって形成される各断熱空間4と外部空間25との間に介在される。機尾側の断熱空気排出弁18は、機尾側の2つの外套膜材15間に配置され、これら機首側の各外套膜材15によって形成される各断熱空間4と外部空間25との間に介在される。
【0034】
各断熱空気排出弁18は、各断熱空間4と外部空間25との間を、開放する開状態と、閉鎖する閉状態とに、切り換えることができる。各断熱空気排出弁18が閉状態では、各断熱空間4と外部空間25との間の空気の移動が阻止される。各断熱空気排出弁18が開状態では、各断熱空間4と外部空間25との間の空気の移動が許容され、各断熱空間4の空気を、矢符A5で示すように外部空間25に排出することができる。
【0035】
給排気手段10を用いて、各断熱空間4に空気を供給することによって、断熱空気層4の層厚T4を大きくするように変更することができる。また給排気手段10の断熱空気排出弁18を用いて、各断熱空間4から空気を排出することによって、断熱空気層4の層厚T4を小さくするように変更することができる。このように給排気手段10、断熱空気排出弁18によって、断熱空気層4の層厚T4を、外皮5および外套被膜15が当接する層厚が0(最小厚)の状態と、予め定める最大厚の状態とに、変更することができる。
【0036】
断熱空気層4の層厚T4が最小厚にある状態では、図2に示すように、外套被膜15が外皮5に沿って配置され、機体3全体として最も滑らかな流線形の外表面が形成される。断熱空気層4の層厚T4が最大厚にある状態では、図3に示すように、外套被膜15が外皮5から離間し、機体3の上部側が外方に膨出する形状の外表面が形成される。
【0037】
図4は、飛行船2の機体3を簡略化して示す斜視図である。図5は、図4のセクションS5の装着体32に端部付近を拡大して示す断面図である。前述のように、飛行船2には、太陽電池の取付構造30が実施されている。この取付構造30は、飛行船2に太陽電池パネル31を設ける構造である。
【0038】
この取付構造30を構成する装着体32は、太陽電池、具体的には太陽電池パネル31が装着される構成体である。この装着体32は、外皮5の少なくとも一部を外側から覆って設けられ、外皮5に当接および離間可能に設けられる。本実施の形態では、装着体32は、機体3の上側部分全体に設けられ、この部分に太陽電池パネル31が設けられる。
【0039】
装着体32は、太陽電池パネルが装着される装着部材33と、装着部材33の内側に設けられる前記外套膜材15とを有する。装着体32は、装着部材33と外套膜材15とが積層されて構成され、太陽電池パネル31は、この装着体32の外側に配置されて装着される。
【0040】
外套膜材15は、その外周縁部が、全周にわたって、連結膜材36によって外皮5に連結される。連結膜材36は、気密性および可撓性を有する膜材、たとえば外套膜材15と同様の膜材によって実現され、外套膜材15が、全周にわたって気密に、外皮5に連結される。このようにして外皮5と外套膜材15との間に外部から密に仕切られる断熱空間4が形成される。
【0041】
装着体状態切換手段でもある給排気手段10の給排気手段本体16および断熱空気排出弁18は、前述のように断熱空間4に対して、空気を供給および排出することができ、これによって断熱空間4によって実現される断熱空気層4の層厚T4を変更することができる。このように層厚T4を変更することによって、外套膜材15を、外皮5に対して、近接および離反させることができる。層厚T4が0の状態では、装着体32が外皮5に当接される当接状態となり、層厚T4が0以外の状態では、装着体32が外皮5から離間する離間状態であって、層厚T4が最も大きい状態で、装着体32が外皮5から最も離間する状態となる。このように給排気手段10は、装着体32の状態を、当接状態と離間状態とに切り換えることができる。
【0042】
図6は、装着体32の一部を拡大して示す斜視図である。図7は、取付構造30を示す斜視図である。図8は、取付構造30を分解して示す斜視図である。装着体32を構成する装着部材33は、帯状部材37,38を格子状に組んで構成される。さらに具体的に述べると、機体3の機軸方向に大略的に沿って延び、周方向に間隔をあけて設けられる複数の縦帯状部材37と、機体3の周方向に大略的に沿って延び、機軸方向に間隔をあけて設けられる複数の横帯状部材38とが、相互に略直交するように配置されて相互に固定され、格子状の装着体32が形成される。各帯状部材は、たとえば外皮と同一の材料から成り、たとえば接着によって相互に固定される。
【0043】
このような装着部材33が、1つの断熱空間4に対応する寸法に形成される。換言すれば、機体3の上部を機軸方向および周方向に分割されて、4つに分割された各領域を覆うことができる形状および寸法に形成される。この装着部材33の厚み方向一方側に外套膜材15が固定され、厚み方向他方側に複数の太陽電池パネル31が装着される。外套膜材15は、装着部材33の全領域にわたって設けられ、たとえば接着されて装着部材33に固定される。
【0044】
太陽電池パネル31は、一辺が1m程度の方形のパネルであって、装着部材33は、各帯状部材37,38が約1m毎に配置されている。装着部材33は、その全体の剛性が各帯状部材37,38の幅寸法に基づいて決まり、太陽電池パネル31の装着に耐え得る強度を得たうえで、外皮5よりも低い剛性となるように、構成される。
【0045】
各太陽電池パネル31は、その周縁部が各帯状部材37,38に対向するように並べられ、四つの角部において、装着部材33の各帯鋲部材37,38が交差する部分に、連結具40を用いて連結される。この連結具40は、ロープなどの索条体であってもよく、ファスナなどであってもよく、本実施の形態では、ロープを用いており、このロープを用いて太陽電池パネル31を装着部材33に結び付けている。また連結具40は、太陽電池パネル31を装着部材33に対する変位を完全に阻止して連結するのではなく、太陽電池パネル31の寸法の1%程度、すなわち約1cm程度の変位を許容できるように、ゆとりを持たせて、緩やかに連結されている。
【0046】
このような装着体32は、外套膜材15が外皮5に対向するように内側に配置された状態で、索条体である取付ロープ42を用いて外皮5に連結される。外皮5には、一端部が複数の枝状に延出する形状を有し、外皮と同一の材料から成る複数の固定部材43が、装着部材33を設ける領域を外囲するように並べられて、接着されている。装着体32の装着部材33と、各固定部材43の他端部とにわたって、取付ロープ42が張架され、この取付ロープ42によって装着部材33と各固定部材43が連結され、これによって装着体32が、外皮5に連結される。複数の取付ロープ42を用いて、その両端部を取付部材33および固定部材43に固定する構造でもよいし、一本の取付ロープ42を用いて、取付部材33および各固定部材43間を蛇行するように、取付部材33おおび各固定部材43に係止して連結する構造でもよい。
【0047】
装着体32を取り付ける取付ロープ42は、張力が与えらた状態で設けられており、装着体32は全周にわたって外方に引っ張られた状態で設けられている。したがって装着体32は、取付ロープ42によって、外皮に当接する方向の力を弾発的に受けている。この力は、前述のように断熱空気排気弁18を開状態にしたとき、断熱空間4の空気を排出するために寄与する。また固定部材43を前述のような形状にすることによって、取付ロープ42からの力を外皮5に効率よく分散させることができ、高い強度を得ることができる。
【0048】
図9は、図4のセクションS9の2つの装着体32が突き合わされる付近を簡略化して示す断面図である。図10は、2つの装着体32が突き合わされる付近を簡略化して示す斜視図である。図9および図10には、太陽電池パネル31などを省略して示す。2つの装着体32が隣接し、突き合わされる領域には、各装着体32を連結するための取付ロープ42が設けられるとともに、溝状になっているので、この領域を覆うカバー部材47が設けられる。このカバー部材47は、たとえば外皮15と同一の材料から成り、幅方向両側部が装着体32に連結されて設けられる。このようなカバー部材47を設けることによって、この突き合わされる領域においても断熱空気層を設けることができ、また飛行時における抵抗を小さくすることができる。
【0049】
図11は、装着体32の端部の一部を示す斜視図である。飛行船2の機体3は、大略的に回転楕円体形状をしており、装着体32を長方形に形成すると、機体3の形状に合わせることができない場合がある。この場合には、端部を各帯状部材37,38の配置間隔、すなわち太陽電池パネル31の配置間隔に併せて、端部を階段状に形成することによって、機体3の形状に合わせて装着体32を設けることができ、機体3の形状に合わせて太陽電池パネル31を設けることができる。
【0050】
図12は、導気路形成膜材17を導気路19が縮小した状態で示す断面図である。図13は、導気路形成膜材17を示す斜視図である。図14は、導気路形成膜材17を導気路19が拡大した状態で示す断面図である。導気路形成膜材17は、断面形状が略C字状となるように、幅方向両側部が折り返された状態で、その幅方向両側部が外皮5に接着される。これによって導気路19が形成される。
【0051】
この導気路形成膜材17は、装着体32と同様に取付ロープ42および固定部材43を用いて、外皮5に連結されている。具体的に述べると、導気路形成膜材17が設けられる領域の両側に並べて、外皮5に固定部材43が接着されてており、取付ロープ42が、導気路形成膜材17の両側部付近と各固定部材43とにわたって張架され、この取付ロープ42によって導気路形成膜材17と各固定部材43とが連結され、これによって導気路形成膜材17が、外皮5に連結される。取付ロープ42の配置は、装着体32を連結する場合と同様に選択が可能である。
【0052】
このように設けられる導気路形成膜材17は、図12に示すように偏平に潰れた状態と、図14に示すように膨らんだ状態とに変形可能である。したがって空気を断熱空間4に供給すべきときだけ、空気を供給することによって必然的に膨らませて導気路を拡大させ、空気を断熱空間4に供給しない場合には、導気路19を縮小するように偏平に潰して、飛行における空気抵抗を小さくすることができる。
【0053】
前述のような飛行船2によれば、外套膜材15によって、外皮5の外側に断熱空気層4を形成することができ、しかもその断熱空気層4の層厚T4を、給排気手段10によって変更することができる。外皮5の外側に、断熱空気層4がある場合と、断熱空気層4がない場合とでは、機体3の内外方向の熱抵抗が異なる。また断熱空気層4がある場合でも、その層厚T4によって、機体3の内外方向の熱抵抗が異なる。具体的に述べると、断熱空気層4がない場合、すなわち層厚T4が0の場合、熱抵抗が最も小さく、空気層T4が厚くなるにつれて、熱抵抗が大きくなる。したがって断熱空気層4の層厚T4を制御することによって、機体内外の熱抵抗を制御することができ、機体3内への熱の流入および機体3内からの熱の流出を制御することができる。
【0054】
飛行船2では、前述のように、飛行時には、機体内外の熱抵抗をできるだけ小さくし、停留時等、外気と飛行船との相対速度が小さい場合には、機体内外の熱抵抗をできるだけ大きくすることが望まれるように、飛行状況に応じて望まれる機体内外の熱抵抗が異なるが、前述のように断熱空気層4の層厚T4を制御することによって、機体内外の熱抵抗を制御し、機体内外の熱の移動量を制御することができる。したがって飛行船2の飛行状況に応じて、熱の移動量を制御し、機体の外皮内の浮揚ガスの温度を、外気の温度にできるだけ一致させる。
【0055】
具体的には、外皮3内の空間と外部との間の熱交換、すなわち機体内外の熱交換が要求される飛行時には、空気層4の層厚T4を小さくして、浮揚ガスと外気との間で積極的に熱交換し、浮揚ガスの温度を外気の温度にできるだけ一致させる。外皮内の空間と外部との間の熱交換、すなわち機体内外の熱交換の抑制が要求される停留時等、外気と飛行船等との相対速度が小さい場合には、空気層4の層厚T4を小さくして、浮揚ガスに対する熱の移動を抑制し、浮揚ガスの温度変化を抑えることによって、浮揚ガスの温度を外気の温度にできるだけ一致させる。このようにして浮揚ガスと外気との温度差の変化に起因する浮揚ガスによって得られる浮力の変化を抑制し、飛行船2の高度を容易に制御することができる。
【0056】
図15は、断熱空気層4の層厚T4と浮揚ガス(ヘリウムガス:He)の温度との関係の一例を示すグラフである。横軸は、層厚T4を示し、縦軸は、浮揚ガスの温度および最大温度差を示す。線50は、浮揚ガスの一日における最高温度を示し、線51は、浮揚ガスの一日における最低温度を示し、線52には、一日における最大温度差を示す。線50〜52に示される温度および温度差は、飛行船2が成層圏で停留された場合における一例である。
【0057】
図15から明らかなように、層厚T4が0から70mm程度までの範囲では、層厚T4が大きくなるにつれて、最高温度が大きな変化率で低下するとともに、最低温度が大きな変化率で高騰し、最大温度差が大きな変化率で低下する。このように層厚T4が70mm程度までの範囲では、層厚T4の増加率に対する最大温度差の変化率が大きい。これに対して層厚T4が70mmを大きく超える範囲では、層厚T4の増加率に対する最大温度差の変化率が小さくなってしまう。つまり層厚T4が70mm程度までの範囲では、層厚T4の増加率に対する機体内外の熱抵抗の増加率が大きく、層厚T4が70mmを大きく超える範囲では、層厚T4の増加率に対する機体内外の熱抵抗の増加率が小さい。
【0058】
これに基づいて、外套膜材15は、層厚T4が最大で100mm程度の空気層4を形成することができるように構成される。さらに給排気手段10は、層厚T4を0以上100mm以下程度の範囲で変更できるように構成される。これによって空気層4の層厚T4を変化させることによって、効率よく、機体内外の熱抵抗を変化させることができる。
【0059】
また外套膜材15および給排気手段10を用いる構成によって、簡単な構成で、機体3の内外の熱抵抗の制御を可能にする層厚T4の変更可能な断熱空気層4を形成することができる。しかも給排気手段10は、一部の構成を、飛行船2の高度の制御に用いられる構成と共用することができ、構成の簡略化および有効利用を図ることができる。
【0060】
また外皮5および外套膜材15の少なくともいずれか一方、本実施の形態では外套膜材15の断熱空間4に臨む表面部に、熱輻射断熱構造であるアルミニウム層が設けられているので、外皮と外套膜材との間での輻射による熱交換を抑えることができる。これによって断熱空気層4が形成される状態における熱の移動をさらに抑制し、機体3の内外方向の熱抵抗をより高くすることができる。
【0061】
またブロワ12および断熱空気供給弁20を有する供給部を、機体3の下部に設け、断熱空気排出弁18を有する排出部を機体3の上部に設け、断熱空間4に関して空気の供給口と排出口とが反対側になるように構成される。これによって断熱空間4に空気をその断熱空間の下部から供給しながら、断熱空間4の空気をその断熱空間4の上部から排出することによって、断熱空気層4を形成した状態で、その空気層を形成している空気を流下させながら換気することができる。これによって断熱空気層4内の空気温度を外気温度に近づけ、より一層、機体内ガス温度と大気温度との差を小さくすることができる。
【0062】
また飛行船2には、太陽電池パネル31が設けられるが、この太陽電池パネル31は、外套被膜15を有する装着体32に装着されて設けられる。この装着体32は、外皮5に当接および離間可能に設けられ、給排気手段10によって、前記断熱空気層4の層厚T4を変化させることによって、外皮5に当接される当接状態と、外皮5から離間する離間状態とに切り換えられる。当然、当接状態にある場合、浮揚ガスと太陽電池パネル31との間の熱抵抗は小さく、離間状態にある場合、浮揚ガスと太陽電池パネル31との間の熱抵抗は大きい。太陽電池パネルは、昼間などに太陽熱輻射に対して熱を吸収しやすく、夜間などに放射冷却によって熱を放出しやすい特性を有し、外皮5に直接設けると、機体内外で熱が移動しやすくなり、浮揚ガスの温度が大きく変化するおそれがあるが、この太陽電池パネル31が、外皮5に対して変位可能に、外皮との間の空気層4の層厚T4を変更可能に設けるので、太陽電池パネル31を設けても、この断熱構造により浮揚ガスの温度が大きく変化してしまうことが防がれる。したがって太陽電池パネル31を設けても、浮揚ガスの温度をできるだけ外気の温度に一致させ、飛行船2の高度を容易に制御することができる。
【0063】
また外皮5は高温になると強度が低下してしまうが、前述のように、離間状態にすれば、太陽電池パネル31が加熱されても、外皮5は加熱されにくくなり、高温になることを防ぐことができる。したがって外皮5の熱によって強度低下を防止することができる。
【0064】
また前述のように断熱空気層4の層厚T4を変更する構成としても、飛行時には、層厚T4を0にして、外表面形状をできるだけ滑らかな流線形状にすることができる。したがって飛行時における抵抗増加などの不具合が生じることはない。
【0065】
また装着体32を、帯状部材37,38を格子状に組んで構成される装着部材33と、外套膜材15とを有する構成とすることによって、断熱空気層4の形成のための構成と、太陽電池パネル31の保持をするための構成とに、役割分担し、太陽電池パネル31の好適な取付を実現することができる。しかも装着部材33を帯状部材37,38を格子状に組んで実現される構成とすることによって、極めてシンプルな構造で軽量、かつ太陽電池パネル31の装着に耐え得る強度を保持したうえで、装着体32の剛性をできるだけ低くすることができる。したがって装着体32の変形を容易にし、外皮5に対する近接および離反変位を容易にすることができる。加えて飛行船外皮への太陽電池取付のための加工部位が少なくてすみ、太陽電池を複数枚取付けた装着体ごと取付け、取外し可能とすることにより、極めて高い艤装作業性を得ることができる。
【0066】
さらに各帯状部材37,38が、外皮5と同一の材料から成り、その幅寸法によって、外皮5に対する剛性の比を容易に設定することができる。装着体32の剛性は、外皮5に比べて小さく設定されており、断熱空気層4の層厚T4の変更させるとき、だきるだけ外皮5を変形させずに、装着体32を変形させることができ、外皮3への不所望な荷重の作用を防止することができる。
【0067】
また太陽電池パネル31は、その四角部だけが連結具40によって装着部材33に連結されて装着される構成であり、太陽電池パネル31と装着部材32とは互いに変位しやすく連結されている。しかも連結具40は、太陽電池パネル31を装着部材32に緩やかに結びつけており、断熱空気層4の層厚T4変更に伴う装着部材32の変形、太陽電池パネル31と装着部材32との熱膨張率の差異などに起因して、太陽電池パネル31と装着部材32との間に相互に位置ずれを生じさせるような力が働いても、太陽電池パネル31および装着部材32に、これに伴う応力が発生することを防止して、太陽電池パネル31および装着部材32が損傷してしまうことを防ぐことができる。
【0068】
図16は、飛行船2の効果を確認するための解析に用いたモデル60を示す図である。図17は、太陽光の照射を受けている場合のモデル60による解析結果を示すグラフである。図18は、太陽光の照射を受けていない場合のモデル60による解析結果を示すグラフである。モデル60は、飛行船の機体を模擬しており、機軸から一方向に水平に向かった位置を0度とし、この位置から機軸まわりに、機体の下部が90度、反対側の側部が180度、上部が270度となるように、角度位置θを設定し、全周にわたって内膜61および外膜62を有する2層構造で、内膜61内に浮揚ガスが収容される構成とし、角度位置θが195度以上345度以下の範囲において、内膜61および外膜62間に層厚が100mmの空気層が形成され、角度位置θが255度以上345度以下の範囲において、外膜62の外側に太陽電池パネル31が設けられる構成である。また角度位置θが60度以上120度以下の範囲において、内膜61および外膜62間に、高度調節のための空気収容領域を有する。
【0069】
空気層が形成される角度位置範囲において、内膜61が外皮5に相当し、外膜62が外套膜材15に相当する。また角度位置330度の方向から太陽光が照射されると仮定する。
【0070】
図17および図18において、横軸は、角度位置を示し、縦軸は、温度を示す。また図17および図18において、線55は、外気の温度を示し、線56は、内膜61の温度を示し、線57は、外膜62の温度を示す。図17および図18から明らかなように、空気層を設けることによって、外膜62の外気に対する温度差が大きくても、内膜61の外気に対する温度差を小さく抑え、外気温度に近い温度に保つことができる。特に、太陽電池パネル31が設けられる領域では、外膜62の外気に対する温度差が極めて大きくなるが、この領域でも、内膜61の外気に対する温度差を小さく抑えることができる。
【0071】
表1は、断熱構造の差異による内膜および外膜の温度の差異を示す。機体を内膜および外膜を有する2層構造とし、外膜の一部に太陽電池パネルを設けたモデルを想定して、太陽電池パネルが設けられる部位の方向から太陽光が照射される場合と、太陽光が照射されない場合とにおいて解析し、内膜、外膜、太陽電池および浮揚ガス(He)の最高温度と最低温度とを求めた解析結果を示す。外膜に関しては、太陽電池パネルがある部分とない部分との2箇所の温度を示す。ここで内膜が前述の実施の形態の飛行船2における外皮5に相当し、外膜が前述の実施の形態の飛行船2における外套膜材15に相当する。
表1の最上段は、内膜および外膜間に空気層がない場合を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1の上から2段目は、内膜と外膜との間に層厚300mmの空気層が介在される場合を示す。表1の上から3段目は、内膜と外膜との間に層厚300mmの空気層が介在され、かつ内膜および外膜の空気層に臨む表面部にアルミニウム蒸着層が形成される場合を示す。表1の上から4段目は、内膜および外膜間に空気層がなく、外膜と太陽電池パネル31との間に厚さ10mmの発砲ウレタン層が介在される場合を示す。表1の上から5段目、すなわち最下段は、太陽電池パネルが設けられる部分における内膜、外膜、太陽電池パネルおよび浮揚ガス間が完全に断熱される場合を示す。
【0074】
表1から明らかなように、空気層を形成するともに、アルミニウム層を設けることによって、浮揚ガスの最高温度と最低温度との温度差を小さくできることが分かる。この解析結果からも、本発明の有用性が確認できる。
【0075】
前述の各実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において、構成を変更することができる。たとえば飛行船は、成層圏プラットホームとして用いられる飛行船以外の飛行船であってもよい。また前述の実施の形態では、アルミニウム層は他の材料、たとえば銀を用いてもよいし、アルミニウム蒸着層は、外套膜材15に設けられる構成について説明したけれども、他の実施の形態として、外皮5に設けるようにしてもよいし、外套膜材15および外皮5の両方に設けられる構成であってもよい。また太陽電池パネル31は、断熱空気層4が形成される領域全体に設けられたけれども、一部にだけ設けてもよい。また外套被膜15を直接変位駆動して、断熱空気層4の層厚T4を変化させる構成であってもよい。また、吸排気手段は10は、独立して断熱空気層用専用に設置してもよい。
【0076】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、外皮の外側に、外皮に当接および離間自在に、装着体が設けられ、この装着体に太陽電池が装着され、この太陽電池が装着される装着体は、装着体状態切換手段によって、外皮に当接される当接状態と、外皮から離間する離間状態とに、状態が切り換えられる。当接状態にある場合、外皮内に収容される浮揚ガスと太陽電池との間の熱抵抗は小さく、離間状態にある場合、浮揚ガスと太陽電池との間の熱抵抗は大きい。太陽電池は、昼間などに太陽輻射に対して熱を吸収しやすく、夜間などに放射冷却によって熱を放出しやすい構成である。
【0077】
飛行船では、高度を容易に制御するために、機体外の大気の温度と、外皮内の浮揚ガスの温度とを、できるだけ一致させる必要があるが、これを達成するにあたって、機体内外の熱抵抗を小さくすることが好ましい飛行状況と、機体内外の熱抵抗を大きくすることが好ましい飛行状況とが存在する。太陽電池と浮揚ガスとの熱抵抗が小さい状態では、機体内外の熱抵抗が小さくなり、太陽電池と浮揚ガスとの熱抵抗が大きい状態では、機体内外の熱抵抗が大きくなる。したがって飛行船の飛行状況に応じて、熱の出入を制御し、機体の外皮内の浮揚ガスの温度を、外気の温度にできるだけ一致させ、高度を容易に制御することができる。また外皮は高温になると強度が低下してしまうが、前述のように、離間状態にすれば、太陽電池が加熱されても、外皮は加熱されにくくなり、高温になることを防ぐことができる。
【0078】
請求項2記載の本発明によれば、装着体が帯状部材を格子状に組んで構成される装着部材を有し、極めてシンプルな構造で軽量、かつ太陽電池の装着に耐え得る強度を保持したうえで、装着体の剛性をできるだけ低くすることができる。したがって装着体の外皮に対する近接および離反変位を容易にすることができる。加えて飛行船外皮への太陽電池取付のための加工部位が少なくてすみ、太陽電池を複数枚取付けた装着体ごと取付け、取外し可能とすることにより、極めて高い艤装作業性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の飛行船2の機体3を簡略して模式的に示す断面図である。
【図2】空気層4の層厚T4が最小の状態で飛行船2を示す斜視図である。
【図3】空気層4の層厚T4が最大の状態で飛行船2を示す斜視図である。
【図4】飛行船2の機体3を簡略化して示す斜視図である。
【図5】図4のセクションS5の装着体32の端部付近を拡大して示す断面図である。
【図6】装着体32の一部を拡大して示す斜視図である。
【図7】取付構造30を示す斜視図である。
【図8】取付構造30を分解して示す斜視図である。
【図9】図4のセクションS9の2つの装着体32が突き合わされる付近を簡略化して示す断面図である。
【図10】2つの装着体32が突き合わされる付近を簡略化示す斜視図である。
【図11】装着体32の端部の一部を示す斜視図である。
【図12】導気路形成膜材17を導気路19が縮小した状態で示す断面図である。
【図13】導気路形成膜材17を示す斜視図である。
【図14】導気路形成膜材17を導気路19が拡大した状態で示す断面図である。
【図15】断熱空気層4の層厚T4と浮揚ガスの温度との関係を示すグラフである。
【図16】飛行船2の効果を確認するための解析に用いたモデル60を示す図である。
【図17】太陽光の照射を受けている場合のモデル60による解析結果を示すグラフである。
【図18】太陽光の照射を受けていない場合のモデル60による解析結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 熱制御構造
2 飛行船
3 機体
4 断熱空間,断熱空気層
5 外皮
10 給排気手段
12 ブロワ
15 外套膜材
16 給排気手段本体
17 導気路形成膜材
18 断熱空気排出弁
19 導気路
20 断熱空気供給弁
30 取付構造
31 太陽電池パネル
32 装着体
33 装着部材
36,37 帯状部材
Claims (2)
- 太陽電池が装着される装着体であって、飛行船の機体を構成する外皮の少なくとも一部を外側から覆って設けられ、外皮に当接および離間自在に設けられる装着体と、
装着体が外皮に当接される当接状態と、装着体が外皮から離間する離間状態とに、装着体の状態を切り換える装着体状態切換手段とを含むことを特徴とする太陽電池の取付構造。 - 装着体は、帯状部材を格子状に組んで構成され、太陽電池が装着される装着部材を有することを特徴とする請求項1記載の太陽電池の取付構造。
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