JP2004216432A - 高速射出ダイカストマシンの射出装置 - Google Patents

高速射出ダイカストマシンの射出装置 Download PDF

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博章 古屋
Tatsuo Sakamoto
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Abstract

【課題】射出速度の超高速化(射出速度が2.5m/秒より速い場合)に対応できるダイカストマシンを提供することである。
【解決手段】最高の射出速度が2.5m/秒より速いダイカストマシンの射出装置であって、プランジャロッドおよび射出ピストン等をチタン−アルミ系の軽量合金で構成された高速射出ダイカストマシンの射出装置とした。また、前記チタン−アルミ系の軽量合金が2.5〜8.35Wt%のアルミニウムを含ませることとした。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミニウム等軽金属成形用ダイカストマシンに関するものであり、特に、最高の射出速度が2.5m/秒より速いダイカストマシンの射出装置の軽量化に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平8−300134号公報
【特許文献2】
特開平7−155925号公報
アルミニウム等の軽金属を鋳造するダイカスト鋳造法は広く知られている。このダイカスト鋳造法は、注湯口からスリーブ内へ供給した軽金属の溶湯を、プランジャチップにより圧送して金型のキャビティ内に充填することにより、所望の形状の製品を鋳造するものである。アルミニウム合金等の軽金属は、合成樹脂に比べて冷却時間が短いため、射出速度の高速化(通常、樹脂の射出成形機の10倍以上が必要)がより重要となってきている。
射出速度の高速化を行う場合には、射出ユニットの往復運動部品(プランジャチップを含むプランジャロッドと射出ピストン及びこの両者を結合するカップリング等)の慣性力が問題となる。即ち、溶湯を金型キャビティ内に押し込むための往復運動部品は質量が大きく、これらの運動部品に停止指令を発しても直ぐには止まらず、慣性力で移動をつづける。その結果、金型キャビティに対して溶湯の充填が完了した後も、この溶湯が大きな慣性力で押されて金型内の溶湯圧力が上昇してサージ圧力(パック圧)が生じることになる。近年は、各種部品の軽量化のためにダイカスト鋳造品も薄肉化が進んでおり、射出速度の高速化への要求はますます大きくなっている。
【0003】
一方、ダイカストマシンでは高温の溶融したアルミニウムやマグネシウムを金型に高速・高圧で鋳込むために射出ピストンやプランジャロッドなどの射出関連部品(往復運動部品)を具備しているが、前述した過酷な使用条件に耐えうるようにSCMやSKD等の合金鋼材が使用されている。
この場合、従来の合金鋼材で製造された射出関連部品ではその自重が大きいので往復運動部品の加速及び減速効率が悪く、また、充填完了直前の往復運動部品の運動エネルギーを溶湯で吸収するために上述したサージ圧が発生する。このサージ圧の発生により、金型内の溶湯圧力(メタル圧)が上昇して型締力より大きくなって金型が開いてバリ吹きの原因となっていた。
【0004】
高速射出時の慣性力を低減させた先行技術としては特開平8−300134号公報(特許文献1)等があり、また、高速射出時の充填サージ圧を防止する先行技術としては特開平7−155925号公報(特許文献2)等がある。
特開平8−300134号公報には、低速射出時には射出装置のプランジャロッドと射出ピストンとを一体的に作動させ、射出充填完了直前にはプランジャロッドだけを作動させて金型キャビティに溶湯を充填完了させることが記載されている。
また、特開平7−155925号公報には、プランジャロッドと射出ピストンの接合部に弾性部材を装着したカップリングで構成することにより、射出完了時点での慣性力に起因するサージ圧を前記の弾性部材により吸収することが記載されている。
【0005】
しかしながら、特開平8−300134号公報に記載された技術においては、射出装置自体が複雑になるとともに、射出充填完了直前のプランジャロッドの作動は第二シリンダの内部に水素やガソリンなどの可燃性物質を吸引・充満させてこれの爆発力により保圧(押湯効果)するために、正確なメタル圧力の制御が困難であった。
また、特開平7−155925号公報記載された技術においては、充填サージ圧力を吸収しながら圧縮工程で射出シリンダロッドのフランジ端面とプランジャロッドのフランジ端面が合体し連続した剛性体とするために、成形条件等によりサージ圧が変化するような場合には対応が困難となっていた。
【0006】
ここでマシンサイズ(型締力)と射出装置とのバランスについて説明する。ダイカストマシンのサイズとしては定格型締力で表現するのが一般的である。この定格型締力を基本として、トグルリンク機構やプラテン(固定盤や可動盤)サイズが決まり、タイバーサイズやタイバー間隔が決定される。タイバー間隔が決まると、このマシンに取付け可能な金型サイズが決まることになる。
一方、成形品(鋳造品)は製品設計より形状・肉厚等の諸元が決定されて、この成形に必要な鋳造圧力(メタル圧)が決められる。このメタル圧は緻密な金属組織を得るためのメタル圧は30〜100MPaの範囲で選択されている。このメタル圧は射出ピストンや部分加圧ピン(アキュラッドピン)駆動油圧シリンダより静的に加圧する圧力であり、金型内の溶湯に作用する静的な圧力(押湯圧力ともいう)となる。
【0007】
次に、従来の型締力の決定方法をメタル圧と金型投影面積とを関連付けて説明する。成形品形状と鋳造に必要なメタル圧が決まると、成形に必要な型締力が算出される。この算出された型締力に対して10〜20%程度の余裕を持たせた型締力を設定することになる。この型締力が前述した定格型締力より大きくなると一ランク上のマシンを使用せざるを得なくなる。
以上のような型締力の決定方法は静的な型締力の決定方法であり、サージ圧の影響が小さい場合に適用している。しかしながら、前述したように、射出速度の高速化に伴って射出部品(運動・可動部品)の慣性力に起因して発生する動的な圧力、即ち、サージ圧(パック圧)の影響を無視して型締力は決定できなくなってきた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
最近のダイカスト成形品は部品点数を削減するための部品一体化や軽量化のための薄肉化の傾向が強くなってきている。従来のダイカストマシンサイズ(型締力が同じ)で薄物や投影面積の大きな成形品を成形(鋳造)するためには射出速度を超高速化する必要に迫られてきた。
従来技術における射出速度の高速化の程度は2.0〜2.5m/秒であった。この程度の射出速度であれば、サージ圧の影響もさほど大きくないので、従来技術での対応が可能であった。本願発明の目的は射出速度の超高速化(射出速度が2.5m/秒より速い場合)に対応できるダイカストマシンを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、第一の発明では、最高の射出速度が2.5m/秒より速いダイカストマシンの射出装置であって、プランジャロッドと射出ピストンをチタン−アルミ系の軽量合金で構成した。
更に、第二の発明においては、第一の発明でのチタン−アルミ系の軽量合金として2.5〜8.35Wt%のアルミニウムを含ませることとした。
【0010】
【発明の実施の形態】
先ず、チタン−アルミ系の軽量合金がダイカストマシンの射出関連部品に採用されてこなかった理由について説明する。チタンは金属材料の中でも耐蝕性に優れることが良く知られており工業製品としては反応容器など化学工業用に使われてきたが、その多くは対酸・アルカリを目的とする純チタンに限定されていた。
純チタンは170〜280MPa程度の引張強度しかなく、クリープ温度も300℃と低めであったことから機械構造材料としては鉄鋼系材料に比較して魅力に乏しく、また、比強度は鉄合金やアルミ合金に劣るために高温・高衝撃・高負荷下で使用されるダイカストマシンなどの一般産業機械に採用されることはなかった。
一方、従来のダイカストの鋳造要件でも射出高速域が2.0〜2.5m/秒、メタル圧が30〜100MPaを対象とするもので、これらの条件下では質量慣性によるサージ圧が問題となることは少なかったので、材料開発をしてまでの軽量化を求める必然性も無かった。
【0011】
ところが最近になって、航空機関連のエンジンや機体に構造部材として開発され、その強度が800〜1,600MPaとなる比強度と耐蝕性を併せ持つチタン−アルミ系の合金の市場が広がったことから 一般工業材料としての可能性が認められ始めた。 一方、前述のようにダイカスト技術環境下では高速射出化・低メタル圧鋳造化の要求によりバリ吹き限界が下がるなど、高速往復運動部品の形状変更による軽量化にだけでなく、材料の見直しを含む徹底的な軽量化が重要な問題となってきた。
【0012】
次に、本発明によるチタン−アルミ系の軽量合金を採用できるダイカストマシンの射出関連部品(往復運動部品)について説明する。
溶湯を金型キャビティ内に押し込むための射出装置関連の往復運動部品としてはプランジャチップ、プランジャロッド、射出ピストンやプランジャロッドと射出ピストンとを結合するカップリング等がある。この中で、プランジャーチップは600〜700℃の溶湯と直接接することからチタン−アルミ系の軽量合金の採用には問題がある。従って、現段階で本願発明を適用できる射出関連部品(往復運動部品)としてはプランジャロッド及び射出ピストンが主体である。プランジャチップは往復運動部品全体に占める質量比率は小さいので、本願発明の効果にはあまり影響しない。
【0013】
次に、チタン−アルミ系の軽量合金の成分について説明する。
本願発明の工業的な価値を高めるためには、市場性があって適正な価格になっているチタン−アルミ系の軽量合金を使用することが有効である。また、比強度、高温強度や耐蝕・耐摩耗性を考慮して、本願発明のチタン−アルミ系の軽量合金の組成は2.5〜8.35Wt%のアルミニウムを含むものとし、望ましくは5.5〜6.5Wt%のアルミニウムを含むチタン−アルミ系合金とした。これらの合金は引張強度が1000MPa以上であり、破壊靭性が1500MPa以上であり、バランスが取れた市場性に富んだ材料である。
【0014】
図1〜図3に基いて本願発明の1実施形態の構成及び効果について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る高速射出ダイカストマシンの射出装置の説明図、図2は射出速度の高速化によるサージ圧の変化の状態を示した説明図、図3は本願発明の効果を従来技術との差異を示したサージ圧の比較図である。
図1において、高速射出ダイカストマシンの射出装置1は、射出シリンダ16内を左右に摺動する射出ピストン12、金型14に嵌合されているプランジャ17内を左右に摺動するプランジャチップ10を含むプランジャロッド11及び射出ピストン12とプランジャロッド11とを結合させるカップリング13等より構成されている。上記部品中の射出ピストン12とプランジャロッド11がチタン−アルミ系の軽量合金により製作されている。
【0015】
次に、図2について説明する。図2は定格型締力1650トンの従来のダイカストマシンを使って、射出速度を2.0(図2(A))、2.5(図2(B))、3.0(図2(C))m/秒と変化させた時のサージ圧のシミレーション結果である。射出速度が2.0m/秒の場合のサージ圧(ピーク圧の最大値)は51MPa程度であったものが、射出速度が3.0m/秒の場合にはサージ圧(ピーク圧の最大値)は94MPaまで上昇している。
更に、図3について説明すると、図3の(A)は前述の本発明によるダイカストマシンを使用して本願発明を射出速度3.0m/秒で実施した場合のサージ圧のシミレーション結果であり、図3の(B)は従来技術(チタン−アルミ系の軽量合金を使用しない場合)の射出速度3.0m/秒でのサージ圧のシミレーション結果である。両者を比較するとサージ圧(ピーク圧の最大値)が従来技術の94MPaから本願発明の67MPaまで低下しているとともに、圧力の振幅値(両振幅値)が大幅に小さくなっており、このことが金型寿命の延長にも効果がある。
なお、射出関連部品(往復運動部品)は従来技術においては340Kgfであったものが、本願発明の実施例においては210Kgfとなった。
【0016】
以上、実施例により説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な様態で実施できる。例えば、電動射出のダイカストマシンにも適用可能である。
【0017】
【発明の効果】
射出装置の往復運動部分を軽量のチタン−アルミ系合金で構成したので、従来のスチール製と比較して約60%の質量となった。このため、2.5m/秒を越える高速射出時においても溶湯に働く慣性力は小さくなる。したがって、2.5m/秒以上の高速射出の場合でも金型合わせ面よりのバリの発生がなくなった。このことは溶湯の噴き出しを防止するために金型の合わせ面を広く設定する必要がなく、金型の小型軽量化が可能になり、更に、ダイカストマシンサイズの小型化も可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る高速射出ダイカストマシンの射出装置の説明図である。
【図2】図2は射出速度の高速化によるサージ圧の変化の説明図である。
【図3】図3は本願発明の効果を示したサージ圧の比較図である。
【符号の説明】
1 高速射出ダイカストマシンの射出装置
10 プランジャチップ
11 プランジャロッド
12 射出ピストン
13 カップリング
14 金型
15 固定盤
16 射出シリンダ
17 プランジャ

Claims (2)

  1. 最高の射出速度が2.5m/秒より速いダイカストマシンの射出装置であって、プランジャロッドと射出ピストンをチタン−アルミ系の軽量合金で構成したことを特徴とする高速射出ダイカストマシンの射出装置。
  2. 前記チタン−アルミ系の軽量合金が2.5〜8.35Wt%のアルミニウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の高速射出ダイカストマシンの射出装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006224156A (ja) * 2005-02-18 2006-08-31 Ube Machinery Corporation Ltd ダイカストマシン及びダイカスト鋳造法
WO2015156255A1 (ja) * 2014-04-07 2015-10-15 東洋機械金属株式会社 電動ダイカストマシン

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WO2015156255A1 (ja) * 2014-04-07 2015-10-15 東洋機械金属株式会社 電動ダイカストマシン
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