JP2004214734A - 圧電板、その製造方法およびそれを用いた超音波変換器 - Google Patents

圧電板、その製造方法およびそれを用いた超音波変換器 Download PDF

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Abstract

【課題】放射される超音波パルスの時間波形を可能な限り短くし、距離分解能を向上させるとともに、幅広い周波数特性を有する超音波パルスを発生させ、高分解能で高感度な計測を可能にする超音波変換器を提供する。
【解決手段】1枚の多成分系圧電性磁器からなる圧電板であって、成分金属元素の構成比率を空間的に傾斜させることによって、圧電h定数を厚さ方向で連続的に、かつ単調に傾斜させたことを特徴とする圧電板。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波変換器などに使用されるセラミック圧電板、並びに該圧電板を使用した超音波変換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミック圧電材料を用いた超音波変換器は、医用診断装置や非破壊検査装置、魚群探知機など各種超音波計測機器に広く使用されている。
これらの機器は、主として超音波変換器に電気的パルスを入力して超音波を発生させ、この超音波を媒体中に伝搬させて、媒体中に存在する音響インピーダンスの異なった部分からの反射波を検出して計測を行う、超音波エコー法を用いるものである。2つの媒体間の音響インピーダンスが同程度であれば音波は良く透過し、反射波は非常に少ないが、音響インピーダンスが異なる媒体間では、その境界で音波の反射がおこり、その差が大きいと透過波は少なく、反射波が多くなる。これを利用したのが超音波エコー法である。
【0003】
超音波計測機器には高い分解能と、広い周波数帯にわたって計測可能であることが要求されるため、超音波変換器から発生する超音波パルスの時間波形を可能な限り短くすること、および広帯域な周波数特性を持つ超音波パルスを発生させることが望まれている。
図9は従来の超音波変換器の構造を示す図である。厚さ方向に分極された圧電性磁器板21(以下、圧電板という)の両面に金属電極膜22、23を形成し、更に圧電性磁器板21の片面には、バッキング材として同材質のセラミック板24が、電極膜23を介して接着剤25を用いて貼り付けられ、さらにその後ろには樹脂とタングステン粉末の混合物からなる吸音材26が形成されている。超音波パルスは、前記圧電板21にインパルス電圧を印加して励振される。
【0004】
圧電板21として、厚さ方向に関して圧電h定数が一様に分布した磁器板を使用した場合、超音波変換器を電圧パルスで駆動すると、圧電板の表面から外部に放射される超音波パルスの時間波形は、図10に示されるように、単一パルスではなく長いパルス列を形成しており、時間波形が長くなる。
これに対して、厚み方向で圧電h定数が単調に傾斜した圧電板を使用すれば、広い周波数帯域幅を持つ短パルスの超音波が得られることが知られている。これは、圧電h定数が一様に分布した圧電板を用いたものでは、圧電板の両面から超音波パルスが発生するのに対し、傾斜圧電板では、超音波が圧電定数の大きな一面からのみ放射されるためである。
【0005】
このような圧電定数が単調に傾斜した圧電板を得る方法の一つとして、圧電板の厚み方向に温度勾配を与えて部分的に減極させることが提案されている(例えば特許文献1参照。)。しかし、板厚方向の温度勾配は両端面の設定温度により自動的に決定されるものであることから、h定数の傾斜を目的に合わせて制御することは極めて困難であり、工業的な価値は低い。
【0006】
また、これと同様の方法で圧電e定数を圧電板の厚み方向で傾斜した圧電板を使用した超音波変換器が知られている(例えば非特許文献1参照。)。また本出願人も、先に、この種の超音波変換器について提案を行っている(特願2001−222654号)。さらに、構成元素と圧電d定数とが共に空間的に傾斜した圧電性磁器と、その製造法も知られている(例えば特許文献2、3参照。)。
【0007】
しかし、以下に述べるようにe定数やd定数とh定数の傾斜の仕方は全く異なるので、圧電e定数や圧電d定数が傾斜した材料と、圧電h定数が傾斜した材料とは別種の材料と言える。即ち、圧電性を表す定数にはd, e, g, h定数が存在し、応力一定の誘電率をεT、歪一定の誘電率をεS、電気変位一定の弾性スチフネスとコンプライアンスをそれぞれcD, sDとした時、h定数はこれらの関数として次式(1)で示される。
【0008】
h = (cD T)d = (1 /εS)e = (1 / sD)g (1)
しかし、d、e、g定数が変化すると、それに伴なってεT、εS、cD、 sDも変化するため、h定数はd、e、g定数とは比例関係にはない。従って、d、eあるいはg定数が単調に傾斜した材料でも、h定数も単調な傾斜を同様の傾斜を示すということにはならない。例えばd、eあるいはg定数が単調に変化していても、圧電h定数が単調に変化せず、ある厚みでh定数の変化率が急激に変わったり、極大、極小を示したりするような圧電板を使用した場合、その個所からも超音波パルスが発生し、広い周波数帯域幅を持つ短パルスの超音波が得られない。
【0009】
更に、従来の構造の超音波変換器においては、圧電板と、磁器板からなるバッキング材や吸音材が、音響インピーダンスが大きく異なる接着剤で接着されているため、圧電板で発生した超音波がこれらの境界で何度も反射されながら外部に放射されることになり、超音波の時間波形を短くできない。接着剤層の厚さを極めて薄くして問題解決を計ることも可能であるが、実用的な接着強度を維持することは困難である。
【0010】
【特許文献1】
特開平7−154897号公報
【特許文献2】
特開平1−232777号公報
【特許文献3】
特許第3106365号公報
【非特許文献1】
平成12年5月18日発行 第29回EMシンポジウム講演論文集、山崎大輔、山田顕、中村喜良著、37頁−42頁
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、超音波エコー法で使用される超音波変換器において、圧電性磁器の圧電h定数の空間的傾斜を任意に制御できるような圧電板と、その製造方法を提供することを目的とする。また、このように圧電h定数の傾斜を任意に制御することにより、圧電性磁器から放射される超音波パルスの時間波形を可能な限り短くし、距離分解能を向上させるとともに、幅広い周波数特性を有する超音波パルスを発生させ、高分解能で高感度な計測を可能にする超音波変換器を提供することを目的とする。
【0012】
また本発明の他の目的は、構造上の音響的な不連続性を解消することにより、外部に放射される超音波パルスを短パルス化し、更に距離分解能を改善した実用性の高い超音波変換器を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
1.1枚の多成分系圧電性磁器からなる圧電板であって、成分金属元素の構成比率を空間的に傾斜させることによって、圧電h定数を厚さ方向で連続的に、かつ単調に傾斜させたことを特徴とする圧電板。
2.圧電h定数が異なる2種以上の磁器粉末を準備し、それぞれの磁器粉末からグリーンシートを作製し、該グリーンシートを圧電h定数の大きさの順に積層、圧着し、高温で焼成して、圧電h定数を積層方向で連続的にかつ単調に傾斜させたことを特徴とする、前記1に記載の圧電板の製造方法。
3.2種以上の磁器粉末が、同一の成分を含み、かつその成分金属元素の比率を変えることによって圧電h定数を変化させたものである、前記2に記載の圧電板の製造方法。
4.前記1に記載の圧電板を主要構成要素とする超音波変換器。
5.1枚の分極処理された圧電板と、圧電板の一方の面に形成された電極膜と、他方の面に電極膜を介して接合された音響インピーダンスが圧電板と類似する磁器板とを主要構成要素とし、圧電板が多成分系圧電性磁器からなり、その成分金属元素の構成比率を厚み方向で傾斜させることによって圧電h定数を連続的にかつ単調に傾斜させたものであることを特徴とする超音波変換器。
6.内部電極膜を介して接合している2枚の分極処理された圧電板A、Bと、圧電板Bの内部電極膜と接合していない面に形成された電極膜と、圧電板Aの内部電極膜と接合していない面に電極膜を介して接合された、音響インピーダンスが圧電板と類似する磁器板とを主要構成要素とし、2枚の圧電板A、Bが多成分系圧電性磁器からなり、圧電h定数が内部電極膜との接合部で最も大きくなるようにそれぞれ厚み方向で連続的にかつ単調に傾斜させたものであることを特徴とする超音波変換器。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電板は、例えばPZTなど、多種類の金属元素から構成されたペロブスカイト構造の多成分系圧電磁器材料からなっており、その組成即ち成分金属元素(以下「構成元素」という。)の比率を厚さ方向で傾斜させることによって、一方の面で圧電h定数がゼロ、対向する他方の面で圧電h定数が最大となるように、単調に傾斜させたものである。単調に傾斜させるということは、厚さ方向の距離をxとしたとき、dh/dxが不連続な変化をしないこと、即ちxに対する圧電h定数の傾きが急激に変わらないこと、およびdh/dxの符号が変わらないことを意味する。
【0015】
本発明の圧電板は、有利には同一の成分を含み、構成元素の比率の変化に伴って、圧電h定数が単調に変化するような多成分系磁器材料を原料として使用し、例えば次のようにして製造される。
構成元素の比率により圧電h定数が異なる2種以上の磁器粉末の層状プレス成型体を作製し、これを焼結する。あるいは、同様に圧電h定数が異なる2種以上の磁器粉末を用いて複数のグリーンシートを作製し、該複数のグリーンシートを圧電h定数の大きさの順に積層して圧着し、高温で焼成する。圧電h定数の大きい組成の磁器粉末の層とこの値が小さい組成磁器粉末の層との境界部では、成分元素が相互に熱拡散して濃度が変化し、これにより組成が連続的に変化しかつ圧電h定数が厚さ方向で連続的に、かつ単調に傾斜した1枚の圧電板を得る。
【0016】
このような方法によれば、圧電h定数の傾斜が単調で滑らかな圧電板を従来の方法より簡単に製造でき、材料の選択の幅も広い。また圧電h定数の異なる多種類の磁器粉末を用いることや、層厚あるいはグリーンシート厚を変えることで、h定数の傾斜を目的に合わせて自在に制御することが可能となる。
本発明の超音波変換器は、前記の方法で得られた圧電板の両面に電極膜を設け、一方の面にバッキング材として音響インピーダンスが圧電板と類似した磁器板、および所望により吸音材を設けたものを主要構成要素とする。
【0017】
図1は、本発明の超音波変換器の主要部の構造の一例を示す側断面図である。図1において、1は厚さ方向に構成元素の比率と圧電h定数が単調に傾斜分布した圧電板(以下「傾斜圧電板」という)である。傾斜圧電板1は、矢印Pの方向に分極処理されている。2、3は傾斜圧電板1の両面に形成された電極膜であり、6、6′は電極膜2、3からそれぞれ取り出されたリードと端子である。4は傾斜圧電板1と音響インピーダンスが類似した磁器板であり、電極膜3を介して傾斜圧電板1と接合されている。
【0018】
傾斜圧電板1の圧電h定数は、表面の電極膜2に接する部分で最大、電極膜3に接する部分で0となっている。この傾斜の方向は、逆であってもよい。また分極Pの方向は、図示の方向でも、これとは逆の方向であっても良い。
バッキング材である磁器板4は、傾斜圧電板1と音響インピーダンスが類似していれば、どのような材質のものを用いてもよい。傾斜圧電板と同質の圧電性を示す磁器を使用してもよい。磁器板4は、電極膜3と接着剤で接着してもよいが、音響インピーダンスの異なる接着剤層が存在するとその部分で超音波の反射がおこり易いので、接着剤を用いずに接合することが望ましい。接着剤を使用せずに接合する方法としては、例えばグリーンシート法で傾斜圧電板と同時に焼成する方法がある。また磁器板4は、電極膜3との接合面の反対側の端部が、超音波が乱反射するように荒い仕上げ面となっているか、多孔質構造となっていることが好ましい。また、図示していないが、磁器板4に更に吸音材を付設してもよい。
【0019】
電極膜3は、超音波を反射しない程度に薄い金属膜であることが望ましく、また音響インピーダンスの不整合を生じないよう、接着剤を用いないで接合される。例えば、スパッタリング、蒸着、めっき、あるいは金属ペースト膜を傾斜圧電板と同時焼成する方法等によって形成される。
電極膜2は、どのような方法で形成されたものでもよい。金属ペーストの焼付、スパッタリング、蒸着、めっきの他、金属箔や金属板等を接着剤を用いて傾斜圧電板1に接合してもよい。また傾斜圧電板との同時焼成により形成してもよい。
【0020】
図2は、本発明の超音波変換器の構造の他の例を示す側断面図である。これは、図1の圧電板に代えて、圧電h定数が厚さ方向で連続的に、かつ単調に傾斜した2枚の傾斜圧電板1'、1"を、圧電h定数が両者の接合部で最も大きくなるように内部電極膜5を介して接合したものを用いたものである。内部電極膜5は電極膜3と同様、磁器との接合面で超音波を反射しない薄い金属膜であることが望ましく、接着剤を用いないで接合される。図2のような構造にすることにより、より感度の高い超音波変換器が得られる。
【0021】
本発明の超音波変換器では、前記のような傾斜圧電板を使用するので、リードと端子6、6′の間に電圧パルスを印加して超音波を発生させると、図1の場合は、超音波は傾斜圧電板1の圧電定数の大きな一面からのみ、双方向に向けて放射される。超音波変換器内部に向かう超音波は磁器板4の内部で散乱され、減衰し消滅する。図2の場合は、超音波は傾斜圧電板1'、1"の境界面から双方向に放射される。超音波変換器内部に向かう超音波は図1の場合と同様に散乱され減衰し消滅する。これとは反対方向に向かう超音波は超音波変換器の表面から外部に向けて放射される。このとき、一部の超音波は表面で反射されて内部に向かうことになるが、これは最初から内部に向かった超音波と同様にして減衰し消滅する。従っていずれの形態においても、広い周波数帯域幅を持つ短パルスの超音波が得られる。
【0022】
次に、本発明の超音波変換器の好ましい製造例として、グリーンシート積層法を用いて図1の超音波変換器を製造する方法を説明する。単純にするため、ここでは圧電h定数が異なる2種の磁器材料を使用したが、3種以上の材料を使用してもよい。
構成元素の比率が異なることによって圧電h定数が異なる2種のPZT系磁器粉末a、bを準備する。なお、磁器粉末aはh=0の圧電性を示さない材料である。これら磁器粉末a、bを樹脂、溶剤と適宜混合して磁器粉末スラリーとし、PETフィルム上にキャスティングした後、乾燥してそれぞれグリーンシート11、12を得る。磁器粉末aを用いた一枚のグリーンシート11上に、白金粉末、樹脂、溶剤からなる電極形成用の白金ペーストを、焼成後の電極膜厚みが5μmとなるよう所定の形状に印刷して、電極ペースト膜13を形成する。
【0023】
これらグリーンシートを図3に示すように積み重ね、圧着した後、磁器粉末の焼結温度で焼成し、図1に示されるような、傾斜圧電板1と、電極膜3と、バッキング材となる磁器板4とが一体化された焼成体を得る。次に焼成体の傾斜圧電板1の電極膜3と反対側の面上に、電極用ペースト、例えば銀粉末、ガラス粉末、樹脂および溶剤からなる銀ペーストを塗布、焼成することにより電極膜2を形成する。そして電極膜2、3の間に直流電圧を印加することにより、傾斜圧電板1を分極させる。
【0024】
磁器板4の端部を多孔質とする場合は、焼成後に多孔質になるようなグリーンシートを所定の部分に使用すればよい。このようなグリーンシートとしては、任意の位置に多数の貫通孔を有するものや、樹脂ビーズ等を混入させて焼成後に空洞を生じるようにしたものなどがある。また表面の電極膜2は、予め最外層のグリーンシート12上に金属ペーストを印刷しておき、積層体と同時焼成して形成することもできる。
【0025】
なお、同様の方法で、圧電h定数の異なる磁器粉末を用いたグリーンシートと、これらのグリーンシートに金属ペーストを印刷したものとを適宜積層し、内部電極膜5も同時焼成することにより、図2のような構造の素子を容易に得ることができる。
このようなグリーンシート法で製造する場合、次のような利点がある。
【0026】
・温度勾配によりhを傾斜させる方法に比べて簡単で、かつhの傾斜の度合いを前述のように任意に調整できる。
・電極膜やバッキング材を圧電板と同時に焼成することができるので、工程が簡略化され、また音響的に連続になるため超音波の反射が少なく、より短パルス化が可能になる。
【0027】
【実施例】
実施例
磁器粉末としてxPb(Ni1/3Nb2/3)O3-yPbZrO3-zPbTiO3系で、組成がx=0.50mol、y=0.15mol、z=0.35mol(以後組成No.1とする)、x=0.55mol、y=0.30mol、z=0.15mol(以後組成No.2とする)及びx=0.65mol、y=0.25mol、z=0.10mol(以後組成No.3とする)で表される3種類の粉末を使用した。各組成の磁器の圧電h定数を表1に示す。
【0028】
【表1】
Figure 2004214734
【0029】
組成No.1〜3のそれぞれの磁器粉末100重量部に対して、アクリル樹脂5重量部、テルピオネールを主成分とする有機溶剤20重量部を混合してスラリーとし、テープキャスティング法を用いて厚さ約200μmの3種類の磁器グリーンシートを作製した。これら3種類のグリーンシートを組成No.1、2、3の順に各2枚ずつ計6枚を積層し、120℃に加熱した状態でプレス圧着した。次いでこの積層体を400℃で12時間かけて脱脂し、その後1120℃の温度で4時間かけて焼結して、圧電板を得た。この焼結体を直径15mm、厚さ0.7mmの円板に加工し、上下面を鏡面となるように研磨仕上げをし、上下面全面にスパッター法で金電極膜を形成した。この後、電極膜間に3kVの直流電圧を30分間印加して分極処理を行った。上記圧電板の厚み方向における構成元素の濃度を、X線マイクロアナライザで分析した。図4はNiとTiに関する分析結果を示すもので、構成元素の濃度が厚み方向で傾斜をもって分布していることが明らかである。
【0030】
前記圧電板を、一方の面が鏡面仕上げされ、反対の面が超音波が乱反射するように荒い仕上げ面となっている、No.3の組成で構成された厚さ20mmの磁器板(バッキング材)の鏡面側に、接着剤で貼り合わせ、試験用超音波変換器を製造した。なお、ここでは圧電板とバッキング材との間で音響的な連続性が保たれるよう、接着剤は、約0.1μm以下の厚さとなるようにした。電極膜間に20Vのスパイク状負性電圧パルスを印加して超音波を発生させ、これを水中に放射させた。そしてこの水中に放射させた超音波をハイドロフォンプローブで検出した。図5に水中に放射された超音波の時間波形を示す。本実施例の試験用超音波変換器では、正負一対の短い超音波パルスが得られた。縦軸はハイドロフォンの出力電圧であり、超音波の振幅に比例する量である。また図6はこの超音波パルスの周波数スペクトルを示すもので、極めて広い帯域幅を持つことが分かる。
【0031】
比較例
実施例の傾斜圧電板に代えて、No.1の組成のみから構成された、一様な圧電板を使用した超音波変換器の超音波特性を測定した。図7はその時間波形を、また図8は周波数スペクトルを示したものである。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、周波数帯域幅が極めて広く短パルス超音波を発生させることができる、圧電h定数が空間的に傾斜した圧電板を、工業的に適した方法で容易に製造することが可能である。
また本発明の超音波変換器を使用すれば、超音波エコー法を利用した各種の超音波計測機器の高分解能化と使用周波数帯域の広帯域化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超音波変換器の主要部の構造の一例を示す側断面図である。
【図2】本発明の超音波変換器の構造の他の例を示す側断面図である。
【図3】本発明の超音波変換器のグリーンシートによる製造方法を示した説明図である。
【図4】実施例で得られた圧電板の厚み方向での構成元素の濃度分布である。
【図5】実施例の超音波変換器から放射された超音波パルスの時間波形を表わしたグラフである。
【図6】実施例の超音波変換器から放射された超音波パルスの周波数スペクトルを表わしたグラフである。
【図7】比較例の超音波変換器から放射された超音波パルスの時間波形を表わしたグラフである。
【図8】比較例の超音波変換器から放射された超音波パルスの周波数スペクトルを表わしたグラフである。
【図9】従来の超音波変換器の構造の一例を示す側断面図である。
【図10】図9の超音波変換器の表面から外部に放射される超音波パルスの時間波形を表わしたグラフである。
【符号の説明】
P 分極の方向
1,1′,1" 傾斜圧電板
2,3 電極膜
4 傾斜圧電板と音響インピーダンスが類似した磁器板
6,6′ リードと端子
5 内部電極膜
11 圧電性を示さないセラミックスのグリーンシート
12 圧電性を示すセラミックスのグリーンシート
13 電極ペースト膜
21 圧電板
22、23 電極膜
24 磁器板
25 接着剤
26 吸音材

Claims (6)

  1. 1枚の多成分系圧電性磁器からなる圧電板であって、成分金属元素の構成比率を空間的に傾斜させることによって、圧電h定数を厚さ方向で連続的に、かつ単調に傾斜させたことを特徴とする圧電板。
  2. 圧電h定数が異なる2種以上の磁器粉末を準備し、それぞれの磁器粉末からグリーンシートを作製し、該グリーンシートを圧電h定数の大きさの順に積層、圧着し、高温で焼成して、圧電h定数を積層方向で連続的にかつ単調に傾斜させたことを特徴とする、請求項1に記載の圧電板の製造方法。
  3. 2種以上の磁器粉末が、同一の成分を含み、かつその成分金属元素の比率を変えることによって圧電h定数を変化させたものである、請求項2に記載の圧電板の製造方法。
  4. 請求項1に記載の圧電板を主要構成要素とする超音波変換器。
  5. 1枚の分極処理された圧電板と、圧電板の一方の面に形成された電極膜と、他方の面に電極膜を介して接合された音響インピーダンスが圧電板と類似する磁器板とを主要構成要素とし、圧電板が多成分系圧電性磁器からなり、その成分金属元素の構成比率を厚み方向で傾斜させることによって圧電h定数を連続的にかつ単調に傾斜させたものであることを特徴とする超音波変換器。
  6. 内部電極膜を介して接合している2枚の分極処理された圧電板A、Bと、圧電板Bの内部電極膜と接合していない面に形成された電極膜と、圧電板Aの内部電極膜と接合していない面に電極膜を介して接合された、音響インピーダンスが圧電板と類似する磁器板とを主要構成要素とし、2枚の圧電板A、Bが多成分系圧電性磁器からなり、圧電h定数を内部電極膜との接合部で最も大きくなるようにそれぞれ厚み方向で連続的にかつ単調に傾斜させたものであることを特徴とする超音波変換器。
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