JP2004209877A - インク噴霧装置、ステンシル版プレート、およびステンシル印刷装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価でしかも噴霧する色を簡易に変更することが可能なインク噴霧装置を提供すること。また、簡易な構成のステンシル印刷装置およびステンシル版プレートを提供すること。
【解決手段】インクを噴霧して対象物に塗布するインク噴霧装置において、インクジェット方式のプリンタのインクカートリッジを装着する装着部と、装着部に装着されたインクカートリッジに対して駆動電圧を印加する駆動電圧印加部と、ユーザの操作に応じて駆動電圧印加部を制御する制御部と、を有する。ステンシル印刷装置は、このような構成のインク噴霧装置と、ステンシル版プレートを使用して文字や図形を印刷する。
【選択図】 図1
【解決手段】インクを噴霧して対象物に塗布するインク噴霧装置において、インクジェット方式のプリンタのインクカートリッジを装着する装着部と、装着部に装着されたインクカートリッジに対して駆動電圧を印加する駆動電圧印加部と、ユーザの操作に応じて駆動電圧印加部を制御する制御部と、を有する。ステンシル印刷装置は、このような構成のインク噴霧装置と、ステンシル版プレートを使用して文字や図形を印刷する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク噴霧装置、ステンシル版プレート、およびステンシル印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクを微細な霧状にして対象物に噴霧するインク噴霧装置としては、従来、エアブラシが知られている(特許文献1参照)。また、印刷用のプレートとして、文字や図形に相当する部分を露光し、露光した部分を除去し、その除去部分からインクを印刷対象物に塗布するものが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平08−290081号公報(要約)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のエアブラシは、圧縮空気を発生するためのコンプレッサと、圧縮空気によってインクを霧状に噴霧するためのハンドピースと呼ばれる部分から構成されており、圧縮空気を発生するためのコンプレッサは高価であり、また、運転時の騒音が大きいという問題点がある。
【0005】
また、従来のエアブラシは、ハンドピースに設けられたカップと呼ばれる部分にインクを充填し、これをノズルによって霧状に噴霧していた。したがって、噴霧するインクの色を変更する場合には、カップに充填されたインクを取り除き、カップを洗浄した後、新たなインクを充填しなおす必要があるため、噴霧するインクの色を簡易に変えることができないという問題点がある。
【0006】
さらに、単色のインクでは表現できない色を噴霧するためには、複数のインクを目的に応じて混合する必要がある。その場合、どのような色を混合した場合に、どのような色が生成されるかを熟知している必要があるため、様々な色を使いこなすためには、ある程度の熟練が必要であるという問題点もある。
【0007】
また、従来の印刷用プレートは、露光によって除去される部分の下方には、網状の部材が配置され、その部材によって、例えば、文字「ロ」の中央の部分が抜け落ちてしまうことを防止している。このため、文字部分に網状の痕跡が残ってしまう場合があったり、この網状部分が出ないようにインクの量を増やしたり、インクの材質を工夫する必要が生じる。
【0008】
本発明は、上記の事情に基づきなされたもので、その目的とするところは、安価でしかも噴霧する色を簡易に変更することが可能なインク噴霧装置を提供することである。また、他の発明は、そのようなインク噴霧装置を利用することができるとともに、文字や図形を簡易な手法にて印刷できるステンシル印刷装置およびステンシル版プレートを提供しよう、とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明は、インクを噴霧して対象物に塗布するインク噴霧装置において、インクジェット方式のプリンタのインクカートリッジを装着する装着部と、装着部に装着されたインクカートリッジに対して駆動電圧を印加する駆動電圧印加部と、ユーザの操作に応じて駆動電圧印加部を制御する制御部と、を有している。
【0010】
このため、安価でしかも噴霧する色を簡易に変更することが可能なインク噴霧装置を提供できる。
【0011】
また、他の発明は、上述の発明に加えて、装着部は、インクカートリッジを着脱可能に装着するようにしている。このため、インクが無くなった場合でも、インクカートリッジを簡単に交換することが可能になる。
【0012】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて、駆動電圧印加部は、インクカートリッジに対して所定の周期のパルス信号を印加し、制御部は、パルス信号の周期を変化させることにより、単位時間に吐出されるインクの量を制御する、ようにしている。このため、インクの吐出量を制御することにより、対象物に塗布されるインクの量を簡易に調整することが可能になる。
【0013】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて、インクの吐出量を制御する調整つまみを有している。このため、このつまみを調整することにより、インクの吐出量を簡易に調整することが可能になる。
【0014】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて、インクカートリッジは、ブラック以外の色を有するカラーインクカートリッジであり、駆動電圧印加部は、各色のインク毎に駆動電圧を印加し、制御部は、各色のインク毎にパルス信号の周期を変化させることにより、対象物上で混合された結果として生ずる色彩を制御するようにしている。このため、対象物上で混合された結果として生ずる色彩を簡易に変更することが可能になる。
【0015】
また、他の発明は、上述の発明に加えて、制御部に接続され、各色のインクのパルス信号の周期を調整するための少なくとも2以上の調整つまみを有するようにしている。このため、つまみを調整することにより、対象物上で混合された結果として生ずる色彩やインクの濃度を簡易に変更することが可能になる。
【0016】
また、他の発明は、上述の発明に加えて、複数の調整つまみのそれぞれには、各色のインクの発色に応じたカラーフィルタがその一部が重畳するように設けられており、各調整つまみを操作することにより、当該重畳部分に現れる色が、噴霧されたインクが対象物上で混合された結果として生ずる色彩を示す、ようにしている。このため、カラーフィルタを参照することにより、噴霧されたインクが対象物上で混合された結果として生ずる色彩を印刷前に確認することが可能になる。
【0017】
また、本発明は、ステンシル印刷用のステンシル版プレートにおいて、第1から第n(n≧2)のパターンを有し、これらのパターンを合成することにより、目的とする図形または文字を印刷する、ようにしている。
【0018】
このため、印刷しようとする文字や図形が孤立パターンを有する場合であっても品質が高い印刷を行うことが可能になる。また、網状部分が文字中に残るという問題が発生しないので、インク量やインク材についての工夫を要せず、簡易な手段で印刷を実行することができる。
【0019】
また、本発明は、ステンシル版プレートとインク噴霧装置とを用いて印刷用部材上に所望の図形または文字を印刷するステンシル印刷装置において、印刷用部材上に配置され、ステンシル版プレートを保持する保持部と、インク噴霧装置が自由に摺動可能となるようにガイドするガイド部とを有する中間部材を有する、ようにしている。
【0020】
このため、インク噴霧装置と印刷用部材との距離および角度を適切に設定することにより、印刷の品質を高くすることが可能になる。
【0021】
また、他の発明は、上述の発明のステンシル印刷装置に加えて、保持部は、印刷用部材とステンシル版プレートとが所定の間隔を有するようにして保持するようにしている。このため、インク噴霧装置によってステンシル版プレートに付着したインクや、印刷用部材に印刷された未乾燥のインクが印刷用部材に付着することを防止できる。
【0022】
また、他の発明は、上述の各発明のステンシル印刷装置に加えて、ステンシル版プレートは、第1から第n(n≧2)のパターンを有しており、これらのパターンを合成することにより、目的とする図形または文字を印刷するようにしている。このため、印刷しようとする文字や図形が孤立パターンを有する場合であっても品質が高い印刷を行うことが可能になる。
【0023】
また、他の発明は、上述の発明のステンシル印刷装置に加えて、中間部材は、ステンシル版プレートに形成されたいずれかのパターンが択一的に露出される窓部を有するようにしている。このため、印刷用部材の意図せぬ位置にインクが付着して汚損することを防止できる。
【0024】
また、他の発明は、上述の発明のステンシル印刷装置に加えて、中間部材とステンシル版プレートは、窓部に露出される各パターンが相互にずれを生じないように、一定の位置で係止する係止部を有するようにしている。このため、各パターンの位置合わせが簡単になるとともに、印刷の品質を向上させることが可能になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係るインク噴霧装置の構成例を示す図である。この図に示すように、インク噴霧装置1は、インクジェットプリンタに使用されるインクカートリッジ10、制御回路等が配置されたプリント基板20、およびバッテリ30によって構成されている。なお、バッテリ30を囲む筐体をさらに配置してもよい。
【0027】
ここで、インクカートリッジ10は、図2に示すように、筐体11、コンタクトパッド14、凸部12、およびノズルプレート13によって構成されている。筐体11は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の3色のインクを貯納している。また、凸部12の先端に設けられたノズルプレート13には、インクを吐出するための複数のノズルがマトリクス状に配置されており、各ノズルにはインクを吐出するための圧力を発生する圧力発生室が設けられている。圧力発生室には、筐体11に貯納されている各色のインクが供給されている。
【0028】
なお、インクに圧力を印加する方法としては、ピエゾ素子の電気的な膨張または収縮を利用する方法と、膜沸騰によって発生する泡(バブル)の圧力を利用する方法とがあるが、本発明では、メンテナンスの比較的容易な膜沸騰を利用するものを用いている。ピエゾ素子を利用するものを用いることも可能である。
【0029】
コンタクトパッド14は、各圧力室に設けられた発熱素子を駆動するための駆動信号を印加するための接続端子である。
【0030】
図1に戻って、プリント基板20には、後述する駆動回路とともに、装着部である接続用ケーブル21、インクの噴霧を開始するためのトリガスイッチ22、各インクの単位時間あたりの吐出量を調整するための吐出量調整つまみ23C,23M,23Yが設けられている。
【0031】
図3は、プリント基板20に設けられている回路の詳細を説明するための図である。この図に示すように、プリント基板20には、DC−DCコンバータ回路50、タイミング発生回路51、トリガスイッチ22、吐出量調整つまみ23C,23M,23Y、ヘッドドライバ回路52が設けられている。
【0032】
ここで、DC−DCコンバータ回路50は、バッテリ30から供給された直流電力を所定の電圧まで昇圧(または降圧)して、タイミング発生回路51およびヘッドドライバ回路52に電源電圧として出力する。
【0033】
制御部であるタイミング発生回路51は、トリガスイッチ22が操作された場合には、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yの設定値を読み込み、設定された値に応じたタイミング信号を生成して、ヘッドドライバ回路52に供給する。
【0034】
トリガスイッチ22は、例えば、プッシュボタンによって構成されており、このボタンが押圧されている期間は、インクの噴霧が実行される。トグルスイッチを用いて、操作が行われる毎に、インクの噴霧状態と、停止状態とを切り替えるようにしてもよい。
【0035】
調整つまみである吐出量調整つまみ23C,23M,23Yは、シアン、マゼンタ、イエローのそれぞれの色の単位時間あたりのインク吐出量を設定するためのつまみである。これらは、例えば、ロータリータイプのDIPスイッチや可変抵抗によって構成されており、設定角度に応じた所定の信号を生成して出力する。
【0036】
駆動電圧印加部であるヘッドドライバ回路52は、タイミング発生回路51から供給されるタイミング信号に応じて、インクカートリッジ10の圧力室に設けられている発熱素子を駆動し、所定の色のインクを吐出させる。
【0037】
なお、バッテリ30は、例えば、乾電池や充電池によって構成されており、所定の直流電圧を発生してDC−DCコンバータ回路50に供給する。なお、バッテリ30の代わりにACアダプタ等から直流電力を供給するようにすることも可能である。
【0038】
図4は、ノズルプレート13に内蔵されている発熱素子と、それを駆動する回路との構成例を示す図である。この図の例では、マトリクス状に配置された発熱素子Ri,j(i=1〜4,j=1〜12)と、スイッチングトランジスタQi,j(i=1〜4,j=1〜12)によって構成されている。ここで、行方向(図4の左右方向)に並んだ発熱素子Ri,1〜Ri,12(i=1〜4)のそれぞれは、列方向(図1の上下方向)に配置されたノズル群のそれぞれに対応して設けられている。この図4ではノズルは4行あり、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の他にブラック(K)も出力できるようになっているが、i=4の行は、常にオフとして使用しないようにしている。なお、3色の場合には、3行(i=3)とするのが好ましい。ちなみに、i=1〜4として、いずれか1行を3色混在としてもよい。
【0039】
コモン線C1〜C4は、図4において行方向に配置されたスイッチングトランジスタQi,1〜Qi,12(i=1〜4)をそれぞれ駆動するための信号である。データ線D1〜D12は、図4において列方向に配置された発熱素子R1,j〜R4,j(j=1〜12)に駆動信号を印加するための信号線である。
【0040】
つぎに、以上の実施の形態の動作について説明する。
【0041】
図5は、本発明の実施の形態の動作を説明するためのタイミングチャートである。まず、図示せぬ電源スイッチが投入されると、バッテリ30からDC−DCコンバータ回路50への電力の供給が開始され、DC−DCコンバータ回路50は、バッテリ30から供給された直流電力を昇圧または降圧してタイミング発生回路51およびヘッドドライバ回路52へ供給する。
【0042】
タイミング発生回路51は、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yの設定位置を読み取って保持するとともに、トリガスイッチ22が押圧されているか否かを判定する。
【0043】
その結果、トリガスイッチ22が押圧されていると判定した場合(図5の(A)として示す信号が“H”の状態になった場合)には、ヘッドドライバ回路52に対してコモン信号とデータ信号の発生のタイミングを指示する。その結果、ヘッドドライバ回路52は、図5の(B)に示すように、幅がT1である4つのパルス(パルス列)が連続して出力され、当該パルス列が周期T3毎に繰り返されるデータ信号D1〜D12を出力する。また、ヘッドドライバ回路52は、図5の(C)〜(F)に示すように、幅がT2であるパルスがC1〜C4の順に周期T3で繰り返されるコモン信号C1〜C4を出力する。
【0044】
なお、T1およびT2は、各インクカートリッジ10に固有の値(推奨値)が存在するので、それを下回る値にならないように留意する必要がある。
【0045】
インクカートリッジ10では、ヘッドドライバ回路52からのデータ信号D1〜D12とコモン信号C1〜C4とを入力し、図4に示す回路に供給する。その結果、まず、コモン信号C1が“H”の状態になると、図4に示す発熱素子R1,1〜R1,12が電源の一方の極に接続された状態になる。このとき、データ信号D1〜D12が“H”の状態になると、全てのスイッチングトランジスタが導通状態になるため、発熱素子R1,1〜R1,12に電源の双方の極に接続された状態となって電流が流入する。
【0046】
なお、発熱素子R1,1〜R1,12は、所定の色のインク(例えば、シアン(C))に対応するノズル列のインク室に設けられている。その結果、これらの発熱素子R1,1〜R1,12が発熱して圧力室において膜沸騰が発生し、所定量のインク滴がノズルプレート13より吐出される。同様に、発熱素子R2,1〜R2,12は、所定の他の色のインク(例えば、マゼンタ(M))に対応し、発熱素子R3,1〜R3,12は、その他の色のインク(例えば、イエロー(Y))に対応している。
【0047】
つぎに、コモン信号C2が“H”の状態になると、図4に示す発熱素子R2,1〜R2,12が電源の一方の極に接続された状態になり、このような状態で、データ信号D1〜D12が“H”の状態になると、所定の色のインク(例えば、マゼンタ(M))に対応するノズル列のインク室において膜沸騰が発生し、所定量のインク滴がノズルプレート13より吐出される。
【0048】
同様の動作は、コモン信号C3に対しても実行され、所定の色のインク滴、例えば、イエロー(Y)がノズルプレート13より吐出される。なお、コモン信号C4はこのときオフの状態とされているため、所定のD1〜D12が入力されたとしてもインクは吐出されない。
【0049】
このような動作は、トリガスイッチ22が押圧されている間中繰り返され、ノズルプレート13から所定の色のインクが順次射出され、対象物上に着弾してドットを形成することになる。
【0050】
なお、以上の例では、D1〜D12の全てがオンされる場合を示したが、幅を変更したい場合には、D1〜D12の一部のみをオンの状態にするようにしてもよい。また、上述した例では、全ての色のインクが同じ頻度で射出される場合を例に挙げて説明したが、各色のインクの射出される頻度(周期)を変更することにより、対象物上に形成されるドットの密度を色毎に変更し、色彩を様々に設定することができる。この制御は、コモン信号C1〜C3の周期を変更することで実現できる。すなわち、コモン信号C1〜C3を一定周期で間引くことで実現できる。
【0051】
図6は、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yの設定値と、コモン信号との関係を示す図である。図6の(A)は、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yの設定値が“8”である場合におけるコモン信号の状態を示している。また、図6の(B)〜(G)は、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yの設定値が“7”〜“1”である場合におけるコモン信号の状態をそれぞれ示している。この図6に示すように、この実施の形態では、設定値が小さいほどコモン信号のパルスが発生する頻度が低くなるように設定されている。
【0052】
図7は、吐出量調整つまみ23Y,23M,23Cの設定値と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のそれぞれに対応するコモン信号との関係を示すタイミングチャートである。この例では、イエローの色の吐出量調整つまみ23Yの設定値は“8”に、また、マゼンタの色の吐出量調整つまみ23Mとシアンの色の吐出量調整つまみ23Cの設定値は“6”と“5”にそれぞれ設定された状態を示しており、設定値が大きいほどコモン信号のパルスの発生頻度が高くなる。その結果、対象物上に形成されるドットの密度が色毎に異なることとなり、ドットが混合されることで生成される色彩を、吐出量調整つまみ23Y,23M,23Cの設定値によって調整することが可能になる。
【0053】
図8は、イエローの色の吐出量調整つまみ23Yの設定値を“8”に、マゼンタの色の吐出量調整つまみ23Mの設定値を“4”に、シアンの色の吐出量調整つまみ23Cの設定値を“2”に設定した場合において、インク噴霧装置1を図の左から右へ一定の速度でスキャン(走査)した場合に印刷用部材上に形成されるドットの様子を示す図である。
【0054】
この図8に示すように、印刷用部材上にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のそれぞれのノズル列に対応する線分が形成されており、吐出量調整つまみ23Y,23M,23Cの設定値に応じてその形成密度が異なっている。なお、この図では、各色の線分を区別するために、イエローを点線で、マゼンタを実線で、シアンを破線で示しているが、このようなパターンの線分が実際に描画されるわけではない。また、実際には解像度が高く微細なため、各色の線分は混色されて特定の色彩として網膜に映ずることになる。
【0055】
なお、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yのそれぞれに対して図9に示すような各色の濃度段階変化を表すカラーフィルタによるホイール61〜63を設置し、3色の組み合わせによる発色を3つのホイール61〜63のセンターに開けられた窓64で確認できるようにしてもよい。この図9の例では、イエロー、シアン、マゼンタのホイール61〜63が、その一部が重畳するように設けられており、重畳する部分に設けられた窓64に表出した色彩を参照することにより、設定されたインクの発色を簡単に確認することができる。
【0056】
なお、各ホイール61〜63は、ホイール61を例に挙げて説明すると、設定値0,2〜8に応じた濃度段階変化を表すカラーフィルタ61a〜61hによって構成されており、ホイール62,63も同様の構成となっている。なお、設定値0は、その値が0で透明なホイール部分となる。設定値1〜8に加え、設定値0を付加する場合は、ホイール61〜63は、9分割されることになる。
【0057】
なお、以上の実施の形態では、3種類のカラーインクを使用する場合を例に挙げて説明したが、これ以外にもブラックインクのみを用いることも可能である。図10は、ブラックインクのみを使用した場合の実施の形態の構成例を示す図である。なお、図10に示す実施の形態において、図1に示す実施の形態と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図10に示す実施の形態では、図1の場合と比較して、インク噴霧装置1Aは、カラーのインクカートリッジ10がブラック(K)のインクカートリッジ10Aに置換されている。また、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yが吐出量調整つまみ23Kに置換されている。その他の構成は、図1の場合と同様である。また、回路構成は、図3に示す吐出量調整つまみ23C,23M,23Yが吐出量調整つまみ23Kに置換されるとともに、コモン信号C1〜C4が全てブラック(K)に使用されている以外は同様であるので、その説明は省略する。なお、ノズル数を12個、すなわち、ノズルを1列としたインクカートリッジを使用するようにしてもよい。
【0059】
図10に示す実施の形態では、ノズルプレート13からは、ブラックインクのみが吐出される。また、吐出量調整つまみ23Kにより、ブラックインクの吐出量、すなわち、単位時間におけるインクの射出頻度を設定することができる。その他の動作は、図1の場合と同様であるので、詳細は省略する。ここで、吐出量調整つまみ23Kを設けるようにしてもよいが、この場合、黒色ではなく灰色としたい場合は、スキャンする速度、すなわち、インク噴霧装置1Aを移動させる速度を速めることで対応することができる。
【0060】
なお、以上の実施の形態では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色のカラーインクまたはブラック(K)のインクのみを使用するようにしたが、例えば、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、ダークイエロー(DY)のインクを代わりに使用した3色のものとしたり、上述の3色に加えて6色としたり、カラーインクとブラックインクの双方を使用可能として4色や7色としてもよい。そのような実施の形態によれば、表現可能な色の種類を変更したり増加したりすることが可能になる。
【0061】
また、図1および図10に示す実施の形態では、カラーインクカートリッジ10およびブラックインクカートリッジ10Aのそれぞれに対する専用のインク噴霧装置1およびインク噴霧装置1Aを構成するようにしたが、これらを共用できるように、例えば、ブラックインクカートリッジ10Aが装着された場合には、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yのいずれかによってブラックインクの吐出量を調整できるようにしてもよい。
【0062】
つぎに、以上に示すインク噴霧装置1およびインク噴霧装置1Aを利用した印刷装置に関する実施の形態について説明する。
【0063】
図11は、インク噴霧装置1,1Aを使用してステンシル(型染め)印刷を行うためのステンシル印刷装置の構成例を示す図である。
【0064】
図11に示すように、ステンシル印刷装置は、インク噴霧装置110、ガイド枠120、マスキング用版130、印刷用スペーサ140、印刷用部材150、および、滑り止め用下敷き160によって構成されている。
【0065】
ここで、インク噴霧装置110は、図1に示すインク噴霧装置1または図10に示すインク噴霧装置1Aが筐体に内蔵された構成を有しており、所定の色のインクを霧状にして噴霧する。
【0066】
ガイド枠120は、インク噴霧装置110を印刷用部材150に対して垂直になるように固定するとともに、図の左右方向(図中太線矢印で示す方向)に自由に移動可能となるように保持する。また、ガイド枠120の側面部には、車輪121が合計4個設けられている。これらの車輪121と、印刷用スペーサ140に設けられた2本のガイド用レール143とが嵌合することにより、ガイド枠120は、インク噴霧装置110を載置した状態で、図の前後方向(図中太線矢印で示す方向)に自由に移動可能となる。
【0067】
ステンシル版プレートであるマスキング用版130は、印刷しようとする図形や文字に応じたインク透過パターンを有するプレートである。図12は、マスキング用版130の一例を示す図である。図12(A)は、氏名である「小川一夫」を印刷するためのマスキング用版130Aである。インク透過パターンの部分(切り抜かれた部分)のみインクが通過し、印刷用部材150に印刷が行われる。なお、この例では、不透明部材によってマスキング用版130Aを構成しているが、例えば、透明なアクリル素材を用いることにより、印刷用部材150上での位置決めが簡単になる。
【0068】
一方、図12の(B)は、氏名である「田中国男」を印刷するためのマスキング用版130Bである。この図に示すように、「田中国男」という名前の場合には同様のマスキング用版を作成するとステンシルプレートの構造上、孤立部分を作ることができないので、接続用のリブを残した形状になってしまう。
【0069】
このように、リブ部分を残した状態では、印刷される文字の品質が低下してしまうため、本実施の形態では、図13に示すように、文字列を2つの版に分解し、印刷を2回行って各パターンを合成することで、自然な印字文字を得るようにしている。すなわち、図13の例では、文字列を縦方向のパターンと、横方向のパターンに分解し、縦方向のパターンをマスキング用版130Cとし、横方向のパターンをマスキング用版130Dとし、これらのパターンを合成することにより、リブの無い自然な印字結果131を得る。なお、図12の(B)に示すようなマスキング用版130Bを使用するようにしてもよい。
【0070】
ところで、分解されたパターンを用いて印刷を行う際には、各パターンが印刷用部材150上において正確に一致するように位置合わせをする必要が生じる。また、マスキング用版を1つの文字列に対して2つ使用するようにした場合、印刷の途中でマスキング用版を取り替える必要が生じて煩雑である。
【0071】
そこで、本実施の形態では、図14に示すように、マスキング用版130には、上下2版にエリアが分けられ、上のエリアには文字列を構成する縦のパターンが、また、下のエリアには文字列を構成する横のパターンが形成されている。この図の例では、「田中」という文字列が上下のエリアに分解されて配置されている。
【0072】
また、上下2版の寸法をA、印刷用スペーサ140に設置されているスライドストッパーの144(図11参照)の寸法をBとすると、マスキング用版130のエッジには、センターからそれぞれ上下方向に(A+B)/2だけ「コ」の字型の切り欠きが設けられている。
【0073】
ここで、寸法Aは、上下の版を仮にその中央で切り、重ね合わせたときに「田中」という文字列ができあがる寸法とされている。これにより、マスキング用版130を印刷用スペーサ140上で上下方向にスライドストッパー144に突き当たるまで移動させれば、上下2版のそれぞれが、「田中」という文字列を構成するように印刷用部材150の同じ位置で停止される。従って、2つのパターンの位置合わせを簡易に行うことができる。
【0074】
図11に戻って、中間部材である印刷用スペーサ140は、透明部材によって構成され、1つの窓部141、2本の版用レール142、2本のガイド用レール143、1つのスライドストッパー144を有している。
【0075】
ここで、窓部141は、マスキング用版130によって形成される印刷文字列よりも十分大きいサイズを有する窓であり、インク噴霧装置110から射出されたインクが印刷用部材150の意図しない部分に付着しないようにマスクする。
【0076】
保持部である版用レール142は、マスキング用版130が図11の前後方向に移動する際のガイドとしての役割を有している。また、ガイド部であるガイド用レール143は、ガイド枠120の車輪121が嵌合され、ガイド枠120が図の前後方向に移動する際のガイドとしての役割を有している。係止部であるスライドストッパー144は、前述したように、マスキング用版130が所定の位置で停止させるためのストッパーである。なお、この図には示していないが、印刷用スペーサ140の裏面(印刷用部材150と当接する面)には、滑り止め部材が、例えば、粘着材によって貼付されている。
【0077】
印刷用部材150は、例えば、印刷用紙、樹脂板、金属板等である。なお、本印刷装置では、プリンタで印刷する場合のように装置の内部へ挿入する必要がないため、どのようなサイズまたは厚さの印刷用部材150でも印刷の対象とすることができる。また、印刷用紙としては祝儀袋や香典袋、熨斗紙等を用いることもできる。
【0078】
滑り止め用下敷き160は、例えば、ラバー等の素材によって構成されており、印刷用部材150の下に敷くことにより、印刷用部材150が印刷中にずれることを防止する役割を有している。
【0079】
図15は、インク噴霧装置110、マスキング用版130、および印刷用スペーサ140の位置関係と、インクが噴霧される様子を示す図である。図15(A)に示すように、本実施の形態では、インク噴霧装置110は、ガイド枠120によって印刷用部材150と垂直になるように保持され、また、マスキング用版130によって、インク噴霧装置110と印刷用部材150との間隔が常に一定になるようにされる。そのため、図15(B)に示すように、インク噴霧装置110が垂直位置からずれることにより、インクの着弾位置がずれてしまったり、図15(C)に示すように、インク噴霧装置110と印刷用部材150との間隔が広くなり過ぎることにより、ノズルプレート13から射出されたインク滴が途中で失速して、意図しない場所に着弾したりすることを防止できる。
【0080】
つぎに、以上の実施の形態を用いて印刷する場合の手順について説明する。
【0081】
まず、図16に示すように、図示せぬ滑り止め用下敷き160の上に印刷用部材150を重ねて配置し、その上に、印刷用スペーサ140を載置する。そして、印刷用スペーサ140の一対の版用レール142に合わせてマスキング用版130を配置し、手前方向に移動させてスライドストッパー144によって停止される位置まで移動させる。そして、マスキング用版130を印刷用スペーサ140ごと移動させて、印刷文字のパターンが印刷用部材150の所望の位置にくるように印刷位置合わせを行う。なお、この印刷合わせは、この段階では行わず、次のガイド枠120の載置後や、さらには、インク噴霧装置110の載置後に、印刷位置合わせをするようにしてもよい。
【0082】
つぎに、図17に示すように、ガイド枠120を印刷用スペーサ140上に配置し、車輪121とガイド用レール143とを嵌合させる。また、インク噴霧装置110をガイド枠120に装着する。そして、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yにより、例えば、慶事の場合には明るい色を濃くし、弔事の場合には暗い色とする等適正な色彩と濃度を設定した後、トリガスイッチ22を押しながら、前後にガイド枠120ごと動かし、インク噴霧装置110を左右に動かし、印刷文字パターン上に均一にインクが吐出されるようにして第1回目の印刷を行う。
【0083】
図18は、第1回目の印刷(文字列の縦のパターンの印刷)が終了した場合において、印刷用部材150上に印刷された文字パターンの様子を示す図である。この図に示すように、第1回目の印刷が終了すると、窓部141によって囲まれた印刷用部材150の一部にはマスキング用版130の上側の版によって印刷された文字列の縦のパターンが出現する。
【0084】
なお、この図18では、印刷されたパターンを示すために、あえて、マスキング用版130を印刷用スペーサ140から外した状態を示したが、実際に印刷する際には、マスキング用版130は、取り外さない方が望ましい。取り外すことにより、印刷用スペーサ140の位置がずれたり、マスキング用版130に付着しているインクが印刷用部材150上に落ちたりする場合があるからである。
【0085】
つぎに、図19に示すように、マスキング用版130を、印刷用スペーサ140の版用レール142に沿って上方向にスライドストッパー144で停止する位置まで動かす。その結果、マスキング用版130の下側の版が図示せぬ窓部141まで移動するとともに、先に印刷された上側のパターンと位置合わせが完了する。
【0086】
そして、図20に示すように、ガイド枠120を印刷用スペーサ140上に配置し、車輪121とガイド用レール143とを嵌合させる。また、インク噴霧装置110をガイド枠120に装着する。なお、マスキング用版130をガイド枠120を設置した状態でスライド可能な構成とすれば、図17の状態の後、マスキング用版130のみをスライドさせれば、図20の状態とすることができる。
【0087】
そして、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yを、第1回目の印刷の場合と同じになるように設定した後、トリガスイッチ22を押しながら、前後にガイド枠120を動かしつつ、左右にインク噴霧装置110を動かし、印刷文字パターン上に均一にインクが吐出されるようにして第2回目の印刷を行う。
【0088】
図21は、第2回目の印刷が完了した後に、マスキング用版130を取り外した場合に、窓部141から観察される文字列の様子を示す図である。この図に示すように、窓部141には、第1回目の印刷によってマスキング用版130の上側の版で印刷されたパターンと、第2回目の印刷によってマスキング用版130の下側の版で印刷されたパターンとが正確に合成され、目的の文字列である「田中」が、窓部141によって囲まれた印刷用部材150の一部に出現することになる。
【0089】
図22は、印刷時における、インク噴霧装置110と、各構成部品との関係を示す端面図である。第1回目の印刷後においてマスキング用版130は、第2回目の印刷位置へ移動されるが、印刷用スペーサ140の厚さがあるので、印刷用部材150に吸収される前の未乾燥インク200がマスキング用版130に付着してしまうことを防止できる。また、印刷時に、マスキング用版130の表面に付着したインク201は吸収されずに版の表面に残るが、ガイド枠120によって形成される高さ方向のスペースによって、インク噴霧装置110やガイド枠120に付着してしまうことを防止できる。なお、マスキング用版130に残ったインク201は、印刷が完了した後、吸湿性の紙を使用して拭去する。
【0090】
以上に説明したように、本発明の実施の形態によれば、文字パターンを分割してステンシルパターンを形成するようにしたので、文字が孤立部分を有する場合であっても、品質の高い文字を印刷することが可能になる。
【0091】
また、以上の実施の形態では、1枚のマスキング用版130に2つの文字パターンを設けるようにしたので、複数のマスキング用版130を取り替えて印刷する手間を省略することができる。
【0092】
また、以上の実施の形態では、版用レール142およびスライドストッパー144を有する印刷用スペーサ140と、切り欠き部を有するマスキング用版130とを利用し、版用レール142にマスキング用版130を嵌合させ、スライドストッパー144と切り欠きによって位置決めをするようにしたので、2つのパターンを簡単にしかも正確に合成することが可能になる。
【0093】
また、以上の実施の形態では、印刷用スペーサ140に窓部141を設け、この窓部141を通じて印刷するようにしたので、印刷用部材150の意図しない部分にインクが付着して汚損することを防止できる。
【0094】
また、インク噴霧装置110をガイド枠120によって印刷用部材150と垂直になるように保持するようにしたので、インクが意図しない位置に着弾して、印刷品質が低下することを防止できる。また、印刷用スペーサ140によって、マスキング用版130と、印刷用部材150との間にスペースを設けるようにしたので、マスキング用版130を移動させた場合に、未乾燥インクによって印刷用部材150が汚損することを防止できる。
【0095】
また、以上の実施の形態によれば、通常のプリンタでは印刷が困難な、例えば、祝儀袋、香典袋、熨斗紙に対しても簡易に印刷を行うことができるとともに、ステンシル印刷によれば、毛筆によって書かれたような印象を与えることができるので、これらにふさわしい文字を印刷することが可能になる。
【0096】
さらに、以上の実施の形態によれば、パーソナルコンピュータに接続されたプリンタを用いて印刷する場合に比較して、例えば、ドライバやアプリケーションソフトの設定等といった煩雑な手続きや知識を必要としないので、簡易に品質の高い文字を印刷することが可能になる。
【0097】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能である。
【0098】
例えば、以上の各実施の形態では、サーマル方式のインクカートリッジ10を用いるようにしたが、ピエゾ方式のインクカートリッジを使用することも可能である。また、インクカートリッジとしては、ブラック容器が別体にされているものや、ブラック容器が他の色とともに一体化されているものとしてもよい。また、シアン系やマゼンタ系のカラー色についてもそれぞれの容器が別体とされているものとしたり、全体が1つの容器として一体化されているものとしたりしてもよい。また、ブラック以外のカラーを使用するときは、ブラックとは別に少なくとも1色あればよい。また、ブラックを使用せずに他の1色のみとしてもよい。
【0099】
また、図1および図10には、インク噴霧装置1,1Aの内部構成のみを示したが、当該内部構成を筐体内に収めるとともに、例えば、持ちやすいように把持部(グリップ)を設けるようにしてもよい。なお、グリップは、筐体をペンのように把持するためにプリント基板20の長手方向に沿うように設けたり、ガングリップのようにプリント基板20の長手方向に対して垂直方向に対して設けてもよい。また、トリガスイッチ22および吐出量調整つまみ23M,23C,23Yについても、操作性を考慮して、プリント基板20上ではなく筐体の一部に設けるようにしてもよい。さらに、インクカートリッジ10,10Aについては、インクが無くなった場合の交換を容易にするために、筐体またはプリント基板20に対して簡単に着脱できる構造としてもよい。
【0100】
また、図3に示す回路では、インクカートリッジ10に供給するパルス信号の周期によってインクの吐出力を変更するようにしたが、例えば、パルス信号の電圧やデューティー比(オン時間)を変更することにより、インクの吐出量を制御することも可能である。
【0101】
また、図3に示す回路では、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yや23Kを調整することにより、目的となる色を発色させるようにしたが、例えば、パーソナルコンピュータと、インターフェースを介して接続し、当該パーソナルコンピュータ上でアプリケーションソフトウエアを動作させて目的となる色を選択し、当該色に対応するデータをインク噴霧装置1,1Aに供給するようにしてもよい。また、ディスプレイ上に吐出量調整つまみ23C,23M,23Yや23Kのそれぞれの設定値を表示させ、これをマニュアル操作で設定するようにしてもよい。
【0102】
また、図1または図10に示す実施の形態では、吐出量調整つまみ23C,23M,23Y,23Kの設定値を固定した状態で印刷するようにしたが、例えば、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yや吐出量調整つまみ23Kの設定値を乱数によって自動的に一定間隔で(または、不定期で)変更するようにすれば、様々な色のインクがアトランダムに噴霧されたり、または黒色の濃度が変化したりするので、このようなインクが塗布された対象物に、独特の色彩効果や濃度変化を表出することができる。
【0103】
また、図1に示す実施の形態では、列方向に配置された全てのノズルからインクを吐出するようにしたが、上述したように、必要に応じて一部のノズルからインクを吐出するようにしてもよい。例えば、細く帯状に印刷する場合にはデータ信号D1〜D12の一部のみを“H”の状態にすればよい。また、データ信号を色毎に変更すれば、例えば、中心からの位置によって色彩が異なる線(中心がマゼンタ、その周辺がイエロー、さらにその周辺がシアン等)を描画することが可能になるので、独特の色彩効果を表出することができる。
【0104】
また、上述の実施の形態の印刷装置では、ステンシル印刷を行う場合を例に挙げて説明したが、例えば、マスキング用版130の代わりに、孔版を用いることにより、孔版印刷装置として用いることも可能である。また、その他の印刷装置にも適用可能であることはいうまでもない。
【0105】
また、上述の実施の形態の印刷装置では、文字列を印刷する場合を挙げて説明を行ったが、これ以外にも、例えば、図形や模様を印刷することも可能である。その場合には、マスキング用版130を印刷しようとする図形や模様に合わせて作成すればよい。
【0106】
【発明の効果】
本発明によれば、安価でしかも噴霧する色を簡易に変更することが可能なインク噴霧装置を提供できる。また、他の発明では、希望の文字や図形を簡易な手段にて印刷することができる印刷装置やステンシル版プレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るインク噴霧装置の構成例を示す図である。
【図2】図1に示すインク噴霧装置のインクカートリッジの詳細な構成例を示す図である。
【図3】図1に示すインク噴霧装置のプリント基板上に形成されている回路の詳細な構成例を示す図である。
【図4】図2に示すインクカートリッジのノズルプレートに内蔵されている回路の構成例を示す図である。
【図5】図3に示す回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】図3に示す吐出量調整つまみの設定値と、コモン信号との関係を示すタイミングチャートである。
【図7】図3に示す吐出力調整つまみの設定値を、イエローを“8”に、マゼンタを“6”に、シアンを“5”に設定した場合におけるコモン信号の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【図8】図3に示す吐出力調整つまみの設定値を、イエローを“8”に、マゼンタを“4”に、シアンを“2”に設定した場合における印刷パターンの一例を示す図である。
【図9】図1に示す吐出量調整つまみに具備され、印刷後の発色を確認するためのホイールの構成例を示す図である。
【図10】ブラックインクカートリッジを使用した実施の形態の構成例を示す図である。
【図11】図1または図10に示すインク噴霧装置を利用したステンシル印刷装置の構成例を示す図である。
【図12】図11に示すステンシル印刷装置において使用するマスキング用版の構成例を示す図である。
【図13】孤立部を有する文字列をリブ無しで構成するためのマスキング用版の構成例を示す図である。
【図14】孤立部を有する文字列をリブ無しで構成するためのマスキング用版であって、1枚のマスキング用版によって印刷する場合の構成例を示す図である。
【図15】図11に示すステンシル印刷装置によって印刷する場合におけるインク噴霧装置と、マスキング用版と、印刷用スペーサとの関係を示す図である。
【図16】図11に示すステンシル印刷装置によって第1回目の印刷を行う前の状態を示す図である。
【図17】図11に示すステンシル印刷装置によって第1回目の印刷を行っている最中の状態を示す図である。
【図18】図11に示すステンシル印刷装置によって第1回目の印刷を行った後の状態を示す図である。
【図19】図11に示すステンシル印刷装置によって第2回目の印刷を行う前の状態を示す図である。
【図20】図11に示すステンシル印刷装置によって第2回目の印刷を行っている最中の状態を示す図である。
【図21】図11に示すステンシル印刷装置によって第2回目の印刷を行った後の状態を示す図である。
【図22】図11に示すステンシル印刷装置によって第1回目の印刷を行った後のインクの付着状態を示す図である。
【符号の説明】
21 接続ケーブル(装着部)
23C,23M,23Y,23K 吐出量調整つまみ(調整つまみ)
51 タイミング発生回路(制御部)
52 ヘッドドライバ回路(駆動電圧印加部)
61〜63 ホイール(カラーフィルタ)
130 マスキング用版(ステンシル版プレート)
140 印刷用スペーサ(中間部材)
141 窓部(窓部)
142 版用レール(保持部)
143 ガイド用レール(ガイド部)
144 スライドストッパー(係止部)
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク噴霧装置、ステンシル版プレート、およびステンシル印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクを微細な霧状にして対象物に噴霧するインク噴霧装置としては、従来、エアブラシが知られている(特許文献1参照)。また、印刷用のプレートとして、文字や図形に相当する部分を露光し、露光した部分を除去し、その除去部分からインクを印刷対象物に塗布するものが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平08−290081号公報(要約)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のエアブラシは、圧縮空気を発生するためのコンプレッサと、圧縮空気によってインクを霧状に噴霧するためのハンドピースと呼ばれる部分から構成されており、圧縮空気を発生するためのコンプレッサは高価であり、また、運転時の騒音が大きいという問題点がある。
【0005】
また、従来のエアブラシは、ハンドピースに設けられたカップと呼ばれる部分にインクを充填し、これをノズルによって霧状に噴霧していた。したがって、噴霧するインクの色を変更する場合には、カップに充填されたインクを取り除き、カップを洗浄した後、新たなインクを充填しなおす必要があるため、噴霧するインクの色を簡易に変えることができないという問題点がある。
【0006】
さらに、単色のインクでは表現できない色を噴霧するためには、複数のインクを目的に応じて混合する必要がある。その場合、どのような色を混合した場合に、どのような色が生成されるかを熟知している必要があるため、様々な色を使いこなすためには、ある程度の熟練が必要であるという問題点もある。
【0007】
また、従来の印刷用プレートは、露光によって除去される部分の下方には、網状の部材が配置され、その部材によって、例えば、文字「ロ」の中央の部分が抜け落ちてしまうことを防止している。このため、文字部分に網状の痕跡が残ってしまう場合があったり、この網状部分が出ないようにインクの量を増やしたり、インクの材質を工夫する必要が生じる。
【0008】
本発明は、上記の事情に基づきなされたもので、その目的とするところは、安価でしかも噴霧する色を簡易に変更することが可能なインク噴霧装置を提供することである。また、他の発明は、そのようなインク噴霧装置を利用することができるとともに、文字や図形を簡易な手法にて印刷できるステンシル印刷装置およびステンシル版プレートを提供しよう、とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明は、インクを噴霧して対象物に塗布するインク噴霧装置において、インクジェット方式のプリンタのインクカートリッジを装着する装着部と、装着部に装着されたインクカートリッジに対して駆動電圧を印加する駆動電圧印加部と、ユーザの操作に応じて駆動電圧印加部を制御する制御部と、を有している。
【0010】
このため、安価でしかも噴霧する色を簡易に変更することが可能なインク噴霧装置を提供できる。
【0011】
また、他の発明は、上述の発明に加えて、装着部は、インクカートリッジを着脱可能に装着するようにしている。このため、インクが無くなった場合でも、インクカートリッジを簡単に交換することが可能になる。
【0012】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて、駆動電圧印加部は、インクカートリッジに対して所定の周期のパルス信号を印加し、制御部は、パルス信号の周期を変化させることにより、単位時間に吐出されるインクの量を制御する、ようにしている。このため、インクの吐出量を制御することにより、対象物に塗布されるインクの量を簡易に調整することが可能になる。
【0013】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて、インクの吐出量を制御する調整つまみを有している。このため、このつまみを調整することにより、インクの吐出量を簡易に調整することが可能になる。
【0014】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて、インクカートリッジは、ブラック以外の色を有するカラーインクカートリッジであり、駆動電圧印加部は、各色のインク毎に駆動電圧を印加し、制御部は、各色のインク毎にパルス信号の周期を変化させることにより、対象物上で混合された結果として生ずる色彩を制御するようにしている。このため、対象物上で混合された結果として生ずる色彩を簡易に変更することが可能になる。
【0015】
また、他の発明は、上述の発明に加えて、制御部に接続され、各色のインクのパルス信号の周期を調整するための少なくとも2以上の調整つまみを有するようにしている。このため、つまみを調整することにより、対象物上で混合された結果として生ずる色彩やインクの濃度を簡易に変更することが可能になる。
【0016】
また、他の発明は、上述の発明に加えて、複数の調整つまみのそれぞれには、各色のインクの発色に応じたカラーフィルタがその一部が重畳するように設けられており、各調整つまみを操作することにより、当該重畳部分に現れる色が、噴霧されたインクが対象物上で混合された結果として生ずる色彩を示す、ようにしている。このため、カラーフィルタを参照することにより、噴霧されたインクが対象物上で混合された結果として生ずる色彩を印刷前に確認することが可能になる。
【0017】
また、本発明は、ステンシル印刷用のステンシル版プレートにおいて、第1から第n(n≧2)のパターンを有し、これらのパターンを合成することにより、目的とする図形または文字を印刷する、ようにしている。
【0018】
このため、印刷しようとする文字や図形が孤立パターンを有する場合であっても品質が高い印刷を行うことが可能になる。また、網状部分が文字中に残るという問題が発生しないので、インク量やインク材についての工夫を要せず、簡易な手段で印刷を実行することができる。
【0019】
また、本発明は、ステンシル版プレートとインク噴霧装置とを用いて印刷用部材上に所望の図形または文字を印刷するステンシル印刷装置において、印刷用部材上に配置され、ステンシル版プレートを保持する保持部と、インク噴霧装置が自由に摺動可能となるようにガイドするガイド部とを有する中間部材を有する、ようにしている。
【0020】
このため、インク噴霧装置と印刷用部材との距離および角度を適切に設定することにより、印刷の品質を高くすることが可能になる。
【0021】
また、他の発明は、上述の発明のステンシル印刷装置に加えて、保持部は、印刷用部材とステンシル版プレートとが所定の間隔を有するようにして保持するようにしている。このため、インク噴霧装置によってステンシル版プレートに付着したインクや、印刷用部材に印刷された未乾燥のインクが印刷用部材に付着することを防止できる。
【0022】
また、他の発明は、上述の各発明のステンシル印刷装置に加えて、ステンシル版プレートは、第1から第n(n≧2)のパターンを有しており、これらのパターンを合成することにより、目的とする図形または文字を印刷するようにしている。このため、印刷しようとする文字や図形が孤立パターンを有する場合であっても品質が高い印刷を行うことが可能になる。
【0023】
また、他の発明は、上述の発明のステンシル印刷装置に加えて、中間部材は、ステンシル版プレートに形成されたいずれかのパターンが択一的に露出される窓部を有するようにしている。このため、印刷用部材の意図せぬ位置にインクが付着して汚損することを防止できる。
【0024】
また、他の発明は、上述の発明のステンシル印刷装置に加えて、中間部材とステンシル版プレートは、窓部に露出される各パターンが相互にずれを生じないように、一定の位置で係止する係止部を有するようにしている。このため、各パターンの位置合わせが簡単になるとともに、印刷の品質を向上させることが可能になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係るインク噴霧装置の構成例を示す図である。この図に示すように、インク噴霧装置1は、インクジェットプリンタに使用されるインクカートリッジ10、制御回路等が配置されたプリント基板20、およびバッテリ30によって構成されている。なお、バッテリ30を囲む筐体をさらに配置してもよい。
【0027】
ここで、インクカートリッジ10は、図2に示すように、筐体11、コンタクトパッド14、凸部12、およびノズルプレート13によって構成されている。筐体11は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の3色のインクを貯納している。また、凸部12の先端に設けられたノズルプレート13には、インクを吐出するための複数のノズルがマトリクス状に配置されており、各ノズルにはインクを吐出するための圧力を発生する圧力発生室が設けられている。圧力発生室には、筐体11に貯納されている各色のインクが供給されている。
【0028】
なお、インクに圧力を印加する方法としては、ピエゾ素子の電気的な膨張または収縮を利用する方法と、膜沸騰によって発生する泡(バブル)の圧力を利用する方法とがあるが、本発明では、メンテナンスの比較的容易な膜沸騰を利用するものを用いている。ピエゾ素子を利用するものを用いることも可能である。
【0029】
コンタクトパッド14は、各圧力室に設けられた発熱素子を駆動するための駆動信号を印加するための接続端子である。
【0030】
図1に戻って、プリント基板20には、後述する駆動回路とともに、装着部である接続用ケーブル21、インクの噴霧を開始するためのトリガスイッチ22、各インクの単位時間あたりの吐出量を調整するための吐出量調整つまみ23C,23M,23Yが設けられている。
【0031】
図3は、プリント基板20に設けられている回路の詳細を説明するための図である。この図に示すように、プリント基板20には、DC−DCコンバータ回路50、タイミング発生回路51、トリガスイッチ22、吐出量調整つまみ23C,23M,23Y、ヘッドドライバ回路52が設けられている。
【0032】
ここで、DC−DCコンバータ回路50は、バッテリ30から供給された直流電力を所定の電圧まで昇圧(または降圧)して、タイミング発生回路51およびヘッドドライバ回路52に電源電圧として出力する。
【0033】
制御部であるタイミング発生回路51は、トリガスイッチ22が操作された場合には、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yの設定値を読み込み、設定された値に応じたタイミング信号を生成して、ヘッドドライバ回路52に供給する。
【0034】
トリガスイッチ22は、例えば、プッシュボタンによって構成されており、このボタンが押圧されている期間は、インクの噴霧が実行される。トグルスイッチを用いて、操作が行われる毎に、インクの噴霧状態と、停止状態とを切り替えるようにしてもよい。
【0035】
調整つまみである吐出量調整つまみ23C,23M,23Yは、シアン、マゼンタ、イエローのそれぞれの色の単位時間あたりのインク吐出量を設定するためのつまみである。これらは、例えば、ロータリータイプのDIPスイッチや可変抵抗によって構成されており、設定角度に応じた所定の信号を生成して出力する。
【0036】
駆動電圧印加部であるヘッドドライバ回路52は、タイミング発生回路51から供給されるタイミング信号に応じて、インクカートリッジ10の圧力室に設けられている発熱素子を駆動し、所定の色のインクを吐出させる。
【0037】
なお、バッテリ30は、例えば、乾電池や充電池によって構成されており、所定の直流電圧を発生してDC−DCコンバータ回路50に供給する。なお、バッテリ30の代わりにACアダプタ等から直流電力を供給するようにすることも可能である。
【0038】
図4は、ノズルプレート13に内蔵されている発熱素子と、それを駆動する回路との構成例を示す図である。この図の例では、マトリクス状に配置された発熱素子Ri,j(i=1〜4,j=1〜12)と、スイッチングトランジスタQi,j(i=1〜4,j=1〜12)によって構成されている。ここで、行方向(図4の左右方向)に並んだ発熱素子Ri,1〜Ri,12(i=1〜4)のそれぞれは、列方向(図1の上下方向)に配置されたノズル群のそれぞれに対応して設けられている。この図4ではノズルは4行あり、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の他にブラック(K)も出力できるようになっているが、i=4の行は、常にオフとして使用しないようにしている。なお、3色の場合には、3行(i=3)とするのが好ましい。ちなみに、i=1〜4として、いずれか1行を3色混在としてもよい。
【0039】
コモン線C1〜C4は、図4において行方向に配置されたスイッチングトランジスタQi,1〜Qi,12(i=1〜4)をそれぞれ駆動するための信号である。データ線D1〜D12は、図4において列方向に配置された発熱素子R1,j〜R4,j(j=1〜12)に駆動信号を印加するための信号線である。
【0040】
つぎに、以上の実施の形態の動作について説明する。
【0041】
図5は、本発明の実施の形態の動作を説明するためのタイミングチャートである。まず、図示せぬ電源スイッチが投入されると、バッテリ30からDC−DCコンバータ回路50への電力の供給が開始され、DC−DCコンバータ回路50は、バッテリ30から供給された直流電力を昇圧または降圧してタイミング発生回路51およびヘッドドライバ回路52へ供給する。
【0042】
タイミング発生回路51は、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yの設定位置を読み取って保持するとともに、トリガスイッチ22が押圧されているか否かを判定する。
【0043】
その結果、トリガスイッチ22が押圧されていると判定した場合(図5の(A)として示す信号が“H”の状態になった場合)には、ヘッドドライバ回路52に対してコモン信号とデータ信号の発生のタイミングを指示する。その結果、ヘッドドライバ回路52は、図5の(B)に示すように、幅がT1である4つのパルス(パルス列)が連続して出力され、当該パルス列が周期T3毎に繰り返されるデータ信号D1〜D12を出力する。また、ヘッドドライバ回路52は、図5の(C)〜(F)に示すように、幅がT2であるパルスがC1〜C4の順に周期T3で繰り返されるコモン信号C1〜C4を出力する。
【0044】
なお、T1およびT2は、各インクカートリッジ10に固有の値(推奨値)が存在するので、それを下回る値にならないように留意する必要がある。
【0045】
インクカートリッジ10では、ヘッドドライバ回路52からのデータ信号D1〜D12とコモン信号C1〜C4とを入力し、図4に示す回路に供給する。その結果、まず、コモン信号C1が“H”の状態になると、図4に示す発熱素子R1,1〜R1,12が電源の一方の極に接続された状態になる。このとき、データ信号D1〜D12が“H”の状態になると、全てのスイッチングトランジスタが導通状態になるため、発熱素子R1,1〜R1,12に電源の双方の極に接続された状態となって電流が流入する。
【0046】
なお、発熱素子R1,1〜R1,12は、所定の色のインク(例えば、シアン(C))に対応するノズル列のインク室に設けられている。その結果、これらの発熱素子R1,1〜R1,12が発熱して圧力室において膜沸騰が発生し、所定量のインク滴がノズルプレート13より吐出される。同様に、発熱素子R2,1〜R2,12は、所定の他の色のインク(例えば、マゼンタ(M))に対応し、発熱素子R3,1〜R3,12は、その他の色のインク(例えば、イエロー(Y))に対応している。
【0047】
つぎに、コモン信号C2が“H”の状態になると、図4に示す発熱素子R2,1〜R2,12が電源の一方の極に接続された状態になり、このような状態で、データ信号D1〜D12が“H”の状態になると、所定の色のインク(例えば、マゼンタ(M))に対応するノズル列のインク室において膜沸騰が発生し、所定量のインク滴がノズルプレート13より吐出される。
【0048】
同様の動作は、コモン信号C3に対しても実行され、所定の色のインク滴、例えば、イエロー(Y)がノズルプレート13より吐出される。なお、コモン信号C4はこのときオフの状態とされているため、所定のD1〜D12が入力されたとしてもインクは吐出されない。
【0049】
このような動作は、トリガスイッチ22が押圧されている間中繰り返され、ノズルプレート13から所定の色のインクが順次射出され、対象物上に着弾してドットを形成することになる。
【0050】
なお、以上の例では、D1〜D12の全てがオンされる場合を示したが、幅を変更したい場合には、D1〜D12の一部のみをオンの状態にするようにしてもよい。また、上述した例では、全ての色のインクが同じ頻度で射出される場合を例に挙げて説明したが、各色のインクの射出される頻度(周期)を変更することにより、対象物上に形成されるドットの密度を色毎に変更し、色彩を様々に設定することができる。この制御は、コモン信号C1〜C3の周期を変更することで実現できる。すなわち、コモン信号C1〜C3を一定周期で間引くことで実現できる。
【0051】
図6は、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yの設定値と、コモン信号との関係を示す図である。図6の(A)は、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yの設定値が“8”である場合におけるコモン信号の状態を示している。また、図6の(B)〜(G)は、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yの設定値が“7”〜“1”である場合におけるコモン信号の状態をそれぞれ示している。この図6に示すように、この実施の形態では、設定値が小さいほどコモン信号のパルスが発生する頻度が低くなるように設定されている。
【0052】
図7は、吐出量調整つまみ23Y,23M,23Cの設定値と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のそれぞれに対応するコモン信号との関係を示すタイミングチャートである。この例では、イエローの色の吐出量調整つまみ23Yの設定値は“8”に、また、マゼンタの色の吐出量調整つまみ23Mとシアンの色の吐出量調整つまみ23Cの設定値は“6”と“5”にそれぞれ設定された状態を示しており、設定値が大きいほどコモン信号のパルスの発生頻度が高くなる。その結果、対象物上に形成されるドットの密度が色毎に異なることとなり、ドットが混合されることで生成される色彩を、吐出量調整つまみ23Y,23M,23Cの設定値によって調整することが可能になる。
【0053】
図8は、イエローの色の吐出量調整つまみ23Yの設定値を“8”に、マゼンタの色の吐出量調整つまみ23Mの設定値を“4”に、シアンの色の吐出量調整つまみ23Cの設定値を“2”に設定した場合において、インク噴霧装置1を図の左から右へ一定の速度でスキャン(走査)した場合に印刷用部材上に形成されるドットの様子を示す図である。
【0054】
この図8に示すように、印刷用部材上にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のそれぞれのノズル列に対応する線分が形成されており、吐出量調整つまみ23Y,23M,23Cの設定値に応じてその形成密度が異なっている。なお、この図では、各色の線分を区別するために、イエローを点線で、マゼンタを実線で、シアンを破線で示しているが、このようなパターンの線分が実際に描画されるわけではない。また、実際には解像度が高く微細なため、各色の線分は混色されて特定の色彩として網膜に映ずることになる。
【0055】
なお、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yのそれぞれに対して図9に示すような各色の濃度段階変化を表すカラーフィルタによるホイール61〜63を設置し、3色の組み合わせによる発色を3つのホイール61〜63のセンターに開けられた窓64で確認できるようにしてもよい。この図9の例では、イエロー、シアン、マゼンタのホイール61〜63が、その一部が重畳するように設けられており、重畳する部分に設けられた窓64に表出した色彩を参照することにより、設定されたインクの発色を簡単に確認することができる。
【0056】
なお、各ホイール61〜63は、ホイール61を例に挙げて説明すると、設定値0,2〜8に応じた濃度段階変化を表すカラーフィルタ61a〜61hによって構成されており、ホイール62,63も同様の構成となっている。なお、設定値0は、その値が0で透明なホイール部分となる。設定値1〜8に加え、設定値0を付加する場合は、ホイール61〜63は、9分割されることになる。
【0057】
なお、以上の実施の形態では、3種類のカラーインクを使用する場合を例に挙げて説明したが、これ以外にもブラックインクのみを用いることも可能である。図10は、ブラックインクのみを使用した場合の実施の形態の構成例を示す図である。なお、図10に示す実施の形態において、図1に示す実施の形態と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図10に示す実施の形態では、図1の場合と比較して、インク噴霧装置1Aは、カラーのインクカートリッジ10がブラック(K)のインクカートリッジ10Aに置換されている。また、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yが吐出量調整つまみ23Kに置換されている。その他の構成は、図1の場合と同様である。また、回路構成は、図3に示す吐出量調整つまみ23C,23M,23Yが吐出量調整つまみ23Kに置換されるとともに、コモン信号C1〜C4が全てブラック(K)に使用されている以外は同様であるので、その説明は省略する。なお、ノズル数を12個、すなわち、ノズルを1列としたインクカートリッジを使用するようにしてもよい。
【0059】
図10に示す実施の形態では、ノズルプレート13からは、ブラックインクのみが吐出される。また、吐出量調整つまみ23Kにより、ブラックインクの吐出量、すなわち、単位時間におけるインクの射出頻度を設定することができる。その他の動作は、図1の場合と同様であるので、詳細は省略する。ここで、吐出量調整つまみ23Kを設けるようにしてもよいが、この場合、黒色ではなく灰色としたい場合は、スキャンする速度、すなわち、インク噴霧装置1Aを移動させる速度を速めることで対応することができる。
【0060】
なお、以上の実施の形態では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色のカラーインクまたはブラック(K)のインクのみを使用するようにしたが、例えば、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、ダークイエロー(DY)のインクを代わりに使用した3色のものとしたり、上述の3色に加えて6色としたり、カラーインクとブラックインクの双方を使用可能として4色や7色としてもよい。そのような実施の形態によれば、表現可能な色の種類を変更したり増加したりすることが可能になる。
【0061】
また、図1および図10に示す実施の形態では、カラーインクカートリッジ10およびブラックインクカートリッジ10Aのそれぞれに対する専用のインク噴霧装置1およびインク噴霧装置1Aを構成するようにしたが、これらを共用できるように、例えば、ブラックインクカートリッジ10Aが装着された場合には、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yのいずれかによってブラックインクの吐出量を調整できるようにしてもよい。
【0062】
つぎに、以上に示すインク噴霧装置1およびインク噴霧装置1Aを利用した印刷装置に関する実施の形態について説明する。
【0063】
図11は、インク噴霧装置1,1Aを使用してステンシル(型染め)印刷を行うためのステンシル印刷装置の構成例を示す図である。
【0064】
図11に示すように、ステンシル印刷装置は、インク噴霧装置110、ガイド枠120、マスキング用版130、印刷用スペーサ140、印刷用部材150、および、滑り止め用下敷き160によって構成されている。
【0065】
ここで、インク噴霧装置110は、図1に示すインク噴霧装置1または図10に示すインク噴霧装置1Aが筐体に内蔵された構成を有しており、所定の色のインクを霧状にして噴霧する。
【0066】
ガイド枠120は、インク噴霧装置110を印刷用部材150に対して垂直になるように固定するとともに、図の左右方向(図中太線矢印で示す方向)に自由に移動可能となるように保持する。また、ガイド枠120の側面部には、車輪121が合計4個設けられている。これらの車輪121と、印刷用スペーサ140に設けられた2本のガイド用レール143とが嵌合することにより、ガイド枠120は、インク噴霧装置110を載置した状態で、図の前後方向(図中太線矢印で示す方向)に自由に移動可能となる。
【0067】
ステンシル版プレートであるマスキング用版130は、印刷しようとする図形や文字に応じたインク透過パターンを有するプレートである。図12は、マスキング用版130の一例を示す図である。図12(A)は、氏名である「小川一夫」を印刷するためのマスキング用版130Aである。インク透過パターンの部分(切り抜かれた部分)のみインクが通過し、印刷用部材150に印刷が行われる。なお、この例では、不透明部材によってマスキング用版130Aを構成しているが、例えば、透明なアクリル素材を用いることにより、印刷用部材150上での位置決めが簡単になる。
【0068】
一方、図12の(B)は、氏名である「田中国男」を印刷するためのマスキング用版130Bである。この図に示すように、「田中国男」という名前の場合には同様のマスキング用版を作成するとステンシルプレートの構造上、孤立部分を作ることができないので、接続用のリブを残した形状になってしまう。
【0069】
このように、リブ部分を残した状態では、印刷される文字の品質が低下してしまうため、本実施の形態では、図13に示すように、文字列を2つの版に分解し、印刷を2回行って各パターンを合成することで、自然な印字文字を得るようにしている。すなわち、図13の例では、文字列を縦方向のパターンと、横方向のパターンに分解し、縦方向のパターンをマスキング用版130Cとし、横方向のパターンをマスキング用版130Dとし、これらのパターンを合成することにより、リブの無い自然な印字結果131を得る。なお、図12の(B)に示すようなマスキング用版130Bを使用するようにしてもよい。
【0070】
ところで、分解されたパターンを用いて印刷を行う際には、各パターンが印刷用部材150上において正確に一致するように位置合わせをする必要が生じる。また、マスキング用版を1つの文字列に対して2つ使用するようにした場合、印刷の途中でマスキング用版を取り替える必要が生じて煩雑である。
【0071】
そこで、本実施の形態では、図14に示すように、マスキング用版130には、上下2版にエリアが分けられ、上のエリアには文字列を構成する縦のパターンが、また、下のエリアには文字列を構成する横のパターンが形成されている。この図の例では、「田中」という文字列が上下のエリアに分解されて配置されている。
【0072】
また、上下2版の寸法をA、印刷用スペーサ140に設置されているスライドストッパーの144(図11参照)の寸法をBとすると、マスキング用版130のエッジには、センターからそれぞれ上下方向に(A+B)/2だけ「コ」の字型の切り欠きが設けられている。
【0073】
ここで、寸法Aは、上下の版を仮にその中央で切り、重ね合わせたときに「田中」という文字列ができあがる寸法とされている。これにより、マスキング用版130を印刷用スペーサ140上で上下方向にスライドストッパー144に突き当たるまで移動させれば、上下2版のそれぞれが、「田中」という文字列を構成するように印刷用部材150の同じ位置で停止される。従って、2つのパターンの位置合わせを簡易に行うことができる。
【0074】
図11に戻って、中間部材である印刷用スペーサ140は、透明部材によって構成され、1つの窓部141、2本の版用レール142、2本のガイド用レール143、1つのスライドストッパー144を有している。
【0075】
ここで、窓部141は、マスキング用版130によって形成される印刷文字列よりも十分大きいサイズを有する窓であり、インク噴霧装置110から射出されたインクが印刷用部材150の意図しない部分に付着しないようにマスクする。
【0076】
保持部である版用レール142は、マスキング用版130が図11の前後方向に移動する際のガイドとしての役割を有している。また、ガイド部であるガイド用レール143は、ガイド枠120の車輪121が嵌合され、ガイド枠120が図の前後方向に移動する際のガイドとしての役割を有している。係止部であるスライドストッパー144は、前述したように、マスキング用版130が所定の位置で停止させるためのストッパーである。なお、この図には示していないが、印刷用スペーサ140の裏面(印刷用部材150と当接する面)には、滑り止め部材が、例えば、粘着材によって貼付されている。
【0077】
印刷用部材150は、例えば、印刷用紙、樹脂板、金属板等である。なお、本印刷装置では、プリンタで印刷する場合のように装置の内部へ挿入する必要がないため、どのようなサイズまたは厚さの印刷用部材150でも印刷の対象とすることができる。また、印刷用紙としては祝儀袋や香典袋、熨斗紙等を用いることもできる。
【0078】
滑り止め用下敷き160は、例えば、ラバー等の素材によって構成されており、印刷用部材150の下に敷くことにより、印刷用部材150が印刷中にずれることを防止する役割を有している。
【0079】
図15は、インク噴霧装置110、マスキング用版130、および印刷用スペーサ140の位置関係と、インクが噴霧される様子を示す図である。図15(A)に示すように、本実施の形態では、インク噴霧装置110は、ガイド枠120によって印刷用部材150と垂直になるように保持され、また、マスキング用版130によって、インク噴霧装置110と印刷用部材150との間隔が常に一定になるようにされる。そのため、図15(B)に示すように、インク噴霧装置110が垂直位置からずれることにより、インクの着弾位置がずれてしまったり、図15(C)に示すように、インク噴霧装置110と印刷用部材150との間隔が広くなり過ぎることにより、ノズルプレート13から射出されたインク滴が途中で失速して、意図しない場所に着弾したりすることを防止できる。
【0080】
つぎに、以上の実施の形態を用いて印刷する場合の手順について説明する。
【0081】
まず、図16に示すように、図示せぬ滑り止め用下敷き160の上に印刷用部材150を重ねて配置し、その上に、印刷用スペーサ140を載置する。そして、印刷用スペーサ140の一対の版用レール142に合わせてマスキング用版130を配置し、手前方向に移動させてスライドストッパー144によって停止される位置まで移動させる。そして、マスキング用版130を印刷用スペーサ140ごと移動させて、印刷文字のパターンが印刷用部材150の所望の位置にくるように印刷位置合わせを行う。なお、この印刷合わせは、この段階では行わず、次のガイド枠120の載置後や、さらには、インク噴霧装置110の載置後に、印刷位置合わせをするようにしてもよい。
【0082】
つぎに、図17に示すように、ガイド枠120を印刷用スペーサ140上に配置し、車輪121とガイド用レール143とを嵌合させる。また、インク噴霧装置110をガイド枠120に装着する。そして、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yにより、例えば、慶事の場合には明るい色を濃くし、弔事の場合には暗い色とする等適正な色彩と濃度を設定した後、トリガスイッチ22を押しながら、前後にガイド枠120ごと動かし、インク噴霧装置110を左右に動かし、印刷文字パターン上に均一にインクが吐出されるようにして第1回目の印刷を行う。
【0083】
図18は、第1回目の印刷(文字列の縦のパターンの印刷)が終了した場合において、印刷用部材150上に印刷された文字パターンの様子を示す図である。この図に示すように、第1回目の印刷が終了すると、窓部141によって囲まれた印刷用部材150の一部にはマスキング用版130の上側の版によって印刷された文字列の縦のパターンが出現する。
【0084】
なお、この図18では、印刷されたパターンを示すために、あえて、マスキング用版130を印刷用スペーサ140から外した状態を示したが、実際に印刷する際には、マスキング用版130は、取り外さない方が望ましい。取り外すことにより、印刷用スペーサ140の位置がずれたり、マスキング用版130に付着しているインクが印刷用部材150上に落ちたりする場合があるからである。
【0085】
つぎに、図19に示すように、マスキング用版130を、印刷用スペーサ140の版用レール142に沿って上方向にスライドストッパー144で停止する位置まで動かす。その結果、マスキング用版130の下側の版が図示せぬ窓部141まで移動するとともに、先に印刷された上側のパターンと位置合わせが完了する。
【0086】
そして、図20に示すように、ガイド枠120を印刷用スペーサ140上に配置し、車輪121とガイド用レール143とを嵌合させる。また、インク噴霧装置110をガイド枠120に装着する。なお、マスキング用版130をガイド枠120を設置した状態でスライド可能な構成とすれば、図17の状態の後、マスキング用版130のみをスライドさせれば、図20の状態とすることができる。
【0087】
そして、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yを、第1回目の印刷の場合と同じになるように設定した後、トリガスイッチ22を押しながら、前後にガイド枠120を動かしつつ、左右にインク噴霧装置110を動かし、印刷文字パターン上に均一にインクが吐出されるようにして第2回目の印刷を行う。
【0088】
図21は、第2回目の印刷が完了した後に、マスキング用版130を取り外した場合に、窓部141から観察される文字列の様子を示す図である。この図に示すように、窓部141には、第1回目の印刷によってマスキング用版130の上側の版で印刷されたパターンと、第2回目の印刷によってマスキング用版130の下側の版で印刷されたパターンとが正確に合成され、目的の文字列である「田中」が、窓部141によって囲まれた印刷用部材150の一部に出現することになる。
【0089】
図22は、印刷時における、インク噴霧装置110と、各構成部品との関係を示す端面図である。第1回目の印刷後においてマスキング用版130は、第2回目の印刷位置へ移動されるが、印刷用スペーサ140の厚さがあるので、印刷用部材150に吸収される前の未乾燥インク200がマスキング用版130に付着してしまうことを防止できる。また、印刷時に、マスキング用版130の表面に付着したインク201は吸収されずに版の表面に残るが、ガイド枠120によって形成される高さ方向のスペースによって、インク噴霧装置110やガイド枠120に付着してしまうことを防止できる。なお、マスキング用版130に残ったインク201は、印刷が完了した後、吸湿性の紙を使用して拭去する。
【0090】
以上に説明したように、本発明の実施の形態によれば、文字パターンを分割してステンシルパターンを形成するようにしたので、文字が孤立部分を有する場合であっても、品質の高い文字を印刷することが可能になる。
【0091】
また、以上の実施の形態では、1枚のマスキング用版130に2つの文字パターンを設けるようにしたので、複数のマスキング用版130を取り替えて印刷する手間を省略することができる。
【0092】
また、以上の実施の形態では、版用レール142およびスライドストッパー144を有する印刷用スペーサ140と、切り欠き部を有するマスキング用版130とを利用し、版用レール142にマスキング用版130を嵌合させ、スライドストッパー144と切り欠きによって位置決めをするようにしたので、2つのパターンを簡単にしかも正確に合成することが可能になる。
【0093】
また、以上の実施の形態では、印刷用スペーサ140に窓部141を設け、この窓部141を通じて印刷するようにしたので、印刷用部材150の意図しない部分にインクが付着して汚損することを防止できる。
【0094】
また、インク噴霧装置110をガイド枠120によって印刷用部材150と垂直になるように保持するようにしたので、インクが意図しない位置に着弾して、印刷品質が低下することを防止できる。また、印刷用スペーサ140によって、マスキング用版130と、印刷用部材150との間にスペースを設けるようにしたので、マスキング用版130を移動させた場合に、未乾燥インクによって印刷用部材150が汚損することを防止できる。
【0095】
また、以上の実施の形態によれば、通常のプリンタでは印刷が困難な、例えば、祝儀袋、香典袋、熨斗紙に対しても簡易に印刷を行うことができるとともに、ステンシル印刷によれば、毛筆によって書かれたような印象を与えることができるので、これらにふさわしい文字を印刷することが可能になる。
【0096】
さらに、以上の実施の形態によれば、パーソナルコンピュータに接続されたプリンタを用いて印刷する場合に比較して、例えば、ドライバやアプリケーションソフトの設定等といった煩雑な手続きや知識を必要としないので、簡易に品質の高い文字を印刷することが可能になる。
【0097】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能である。
【0098】
例えば、以上の各実施の形態では、サーマル方式のインクカートリッジ10を用いるようにしたが、ピエゾ方式のインクカートリッジを使用することも可能である。また、インクカートリッジとしては、ブラック容器が別体にされているものや、ブラック容器が他の色とともに一体化されているものとしてもよい。また、シアン系やマゼンタ系のカラー色についてもそれぞれの容器が別体とされているものとしたり、全体が1つの容器として一体化されているものとしたりしてもよい。また、ブラック以外のカラーを使用するときは、ブラックとは別に少なくとも1色あればよい。また、ブラックを使用せずに他の1色のみとしてもよい。
【0099】
また、図1および図10には、インク噴霧装置1,1Aの内部構成のみを示したが、当該内部構成を筐体内に収めるとともに、例えば、持ちやすいように把持部(グリップ)を設けるようにしてもよい。なお、グリップは、筐体をペンのように把持するためにプリント基板20の長手方向に沿うように設けたり、ガングリップのようにプリント基板20の長手方向に対して垂直方向に対して設けてもよい。また、トリガスイッチ22および吐出量調整つまみ23M,23C,23Yについても、操作性を考慮して、プリント基板20上ではなく筐体の一部に設けるようにしてもよい。さらに、インクカートリッジ10,10Aについては、インクが無くなった場合の交換を容易にするために、筐体またはプリント基板20に対して簡単に着脱できる構造としてもよい。
【0100】
また、図3に示す回路では、インクカートリッジ10に供給するパルス信号の周期によってインクの吐出力を変更するようにしたが、例えば、パルス信号の電圧やデューティー比(オン時間)を変更することにより、インクの吐出量を制御することも可能である。
【0101】
また、図3に示す回路では、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yや23Kを調整することにより、目的となる色を発色させるようにしたが、例えば、パーソナルコンピュータと、インターフェースを介して接続し、当該パーソナルコンピュータ上でアプリケーションソフトウエアを動作させて目的となる色を選択し、当該色に対応するデータをインク噴霧装置1,1Aに供給するようにしてもよい。また、ディスプレイ上に吐出量調整つまみ23C,23M,23Yや23Kのそれぞれの設定値を表示させ、これをマニュアル操作で設定するようにしてもよい。
【0102】
また、図1または図10に示す実施の形態では、吐出量調整つまみ23C,23M,23Y,23Kの設定値を固定した状態で印刷するようにしたが、例えば、吐出量調整つまみ23C,23M,23Yや吐出量調整つまみ23Kの設定値を乱数によって自動的に一定間隔で(または、不定期で)変更するようにすれば、様々な色のインクがアトランダムに噴霧されたり、または黒色の濃度が変化したりするので、このようなインクが塗布された対象物に、独特の色彩効果や濃度変化を表出することができる。
【0103】
また、図1に示す実施の形態では、列方向に配置された全てのノズルからインクを吐出するようにしたが、上述したように、必要に応じて一部のノズルからインクを吐出するようにしてもよい。例えば、細く帯状に印刷する場合にはデータ信号D1〜D12の一部のみを“H”の状態にすればよい。また、データ信号を色毎に変更すれば、例えば、中心からの位置によって色彩が異なる線(中心がマゼンタ、その周辺がイエロー、さらにその周辺がシアン等)を描画することが可能になるので、独特の色彩効果を表出することができる。
【0104】
また、上述の実施の形態の印刷装置では、ステンシル印刷を行う場合を例に挙げて説明したが、例えば、マスキング用版130の代わりに、孔版を用いることにより、孔版印刷装置として用いることも可能である。また、その他の印刷装置にも適用可能であることはいうまでもない。
【0105】
また、上述の実施の形態の印刷装置では、文字列を印刷する場合を挙げて説明を行ったが、これ以外にも、例えば、図形や模様を印刷することも可能である。その場合には、マスキング用版130を印刷しようとする図形や模様に合わせて作成すればよい。
【0106】
【発明の効果】
本発明によれば、安価でしかも噴霧する色を簡易に変更することが可能なインク噴霧装置を提供できる。また、他の発明では、希望の文字や図形を簡易な手段にて印刷することができる印刷装置やステンシル版プレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るインク噴霧装置の構成例を示す図である。
【図2】図1に示すインク噴霧装置のインクカートリッジの詳細な構成例を示す図である。
【図3】図1に示すインク噴霧装置のプリント基板上に形成されている回路の詳細な構成例を示す図である。
【図4】図2に示すインクカートリッジのノズルプレートに内蔵されている回路の構成例を示す図である。
【図5】図3に示す回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】図3に示す吐出量調整つまみの設定値と、コモン信号との関係を示すタイミングチャートである。
【図7】図3に示す吐出力調整つまみの設定値を、イエローを“8”に、マゼンタを“6”に、シアンを“5”に設定した場合におけるコモン信号の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【図8】図3に示す吐出力調整つまみの設定値を、イエローを“8”に、マゼンタを“4”に、シアンを“2”に設定した場合における印刷パターンの一例を示す図である。
【図9】図1に示す吐出量調整つまみに具備され、印刷後の発色を確認するためのホイールの構成例を示す図である。
【図10】ブラックインクカートリッジを使用した実施の形態の構成例を示す図である。
【図11】図1または図10に示すインク噴霧装置を利用したステンシル印刷装置の構成例を示す図である。
【図12】図11に示すステンシル印刷装置において使用するマスキング用版の構成例を示す図である。
【図13】孤立部を有する文字列をリブ無しで構成するためのマスキング用版の構成例を示す図である。
【図14】孤立部を有する文字列をリブ無しで構成するためのマスキング用版であって、1枚のマスキング用版によって印刷する場合の構成例を示す図である。
【図15】図11に示すステンシル印刷装置によって印刷する場合におけるインク噴霧装置と、マスキング用版と、印刷用スペーサとの関係を示す図である。
【図16】図11に示すステンシル印刷装置によって第1回目の印刷を行う前の状態を示す図である。
【図17】図11に示すステンシル印刷装置によって第1回目の印刷を行っている最中の状態を示す図である。
【図18】図11に示すステンシル印刷装置によって第1回目の印刷を行った後の状態を示す図である。
【図19】図11に示すステンシル印刷装置によって第2回目の印刷を行う前の状態を示す図である。
【図20】図11に示すステンシル印刷装置によって第2回目の印刷を行っている最中の状態を示す図である。
【図21】図11に示すステンシル印刷装置によって第2回目の印刷を行った後の状態を示す図である。
【図22】図11に示すステンシル印刷装置によって第1回目の印刷を行った後のインクの付着状態を示す図である。
【符号の説明】
21 接続ケーブル(装着部)
23C,23M,23Y,23K 吐出量調整つまみ(調整つまみ)
51 タイミング発生回路(制御部)
52 ヘッドドライバ回路(駆動電圧印加部)
61〜63 ホイール(カラーフィルタ)
130 マスキング用版(ステンシル版プレート)
140 印刷用スペーサ(中間部材)
141 窓部(窓部)
142 版用レール(保持部)
143 ガイド用レール(ガイド部)
144 スライドストッパー(係止部)
Claims (13)
- インクを噴霧して対象物に塗布するインク噴霧装置において、
インクジェット方式のプリンタのインクカートリッジを装着する装着部と、
上記装着部に装着された上記インクカートリッジに対して駆動電圧を印加する駆動電圧印加部と、
ユーザの操作に応じて上記駆動電圧印加部を制御する制御部と、
を有することを特徴とするインク噴霧装置。 - 前記装着部は、前記インクカートリッジを着脱可能に装着することが可能であることを特徴とする請求項1記載のインク噴霧装置。
- 前記駆動電圧印加部は、前記インクカートリッジに対して所定の周期のパルス信号を印加し、
前記制御部は、上記パルス信号の周期を変化させることにより、単位時間に吐出されるインクの量を制御する、
ことを特徴とする請求項1または2記載のインク噴霧装置。 - 前記インクの吐出量を制御する調整つまみを有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のインク噴霧装置。
- 前記インクカートリッジは、ブラック以外の色を含むカラーインクカートリッジであり、
前記駆動電圧印加部は、各色のインク毎に駆動電圧を印加し、
前記制御部は、各色のインク毎にパルス信号の周期を変化させることにより、前記対象物上で混合された結果として生ずる色彩を制御する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のインク噴霧装置。 - 前記制御部に接続され、前記各色のインクのパルス信号の周期を調整するための少なくとも2以上の調整つまみを有していることを特徴とする請求項5記載のインク噴霧装置。
- 前記複数の調整つまみのそれぞれには、各色のインクの発色に応じたカラーフィルタがその一部が重畳するように設けられており、各調整つまみを操作することにより、当該重畳部分に現れる色が、噴霧されたインクが対象物上で混合された結果として生ずる色彩を示す、ことを特徴とする請求項6記載のインク噴霧装置。
- ステンシル印刷用のステンシル版プレートにおいて、
第1から第n(n≧2)のパターンを有し、これらのパターンを合成することにより、目的とする図形または文字を印刷する、
ことを特徴とするステンシル版プレート。 - ステンシル版プレートとインク噴霧装置とを用いて印刷用部材上に所望の図形または文字を印刷するステンシル印刷装置において、
上記印刷用部材上に配置され、上記ステンシル版プレートを保持する保持部と、上記インク噴霧装置が自由に摺動可能となるようにガイドするガイド部とを有する中間部材を有する、
ことを特徴とするステンシル印刷装置。 - 前記保持部は、前記印刷用部材と前記ステンシル版プレートとが所定の間隔を有するようにして保持することを特徴とする請求項9記載のステンシル印刷装置。
- 前記ステンシル版プレートは、第1から第n(n≧2)のパターンを有しており、これらのパターンを合成することにより、目的とする図形または文字を印刷することを特徴とする請求項9または10記載のステンシル印刷装置。
- 前記中間部材は、前記ステンシル版プレートに形成されたいずれかのパターンが択一的に露出される窓部を有することを特徴とする請求項11記載のステンシル印刷装置。
- 前記中間部材と前記ステンシル版プレートは、前記窓部に露出される各パターンが相互にずれを生じないように、一定の位置で係止する係止部を有することを特徴とする請求項12記載のステンシル印刷装置。
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2003
- 2003-01-07 JP JP2003001096A patent/JP2004209877A/ja active Pending
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