JP2004208692A - 三次元細胞培養基材および細胞製剤の製造方法 - Google Patents

三次元細胞培養基材および細胞製剤の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
幹細胞を効率よくかつ安全に培養出来る基材を提供する。
【解決手段】
三次元構造を有する細胞培養のための基材であって、細胞膜上あるいは細胞外マトリックス上に存在する幹細胞および/または前駆細胞を制御する物質(幹細胞因子を除く)を含む2種以上の生理活性物質が該基材上に固定化されていることを特徴とする三次元細胞培養基材。
【選択図】なし

Description

本発明は、ヒト血液(末梢血、骨髄、臍帯血)や組織中に存在する幹細胞や前駆細胞の増殖に用いる培養基材に関する。本発明によると、安全に、効率よく細胞を増殖させることが可能である。
従来、造血幹細胞の培養法として、ストローマ細胞と共培養し、幹細胞や前駆細胞を増殖する方法がある(例えば、特許文献1および2参照)。しかし、このような技術では、増殖した造血幹細胞とストローマ細胞を完全に分離することは不可能であり、更に共培養によってストローマ細胞由来の未知のウイルス等による感染も否定出来ない。よって、このような技術で培養された幹細胞を治療に用いることには困難である。
一方、造血作用をもつ生理活性物質やフィブロネクチンやラミニン、さらにその機能を有するペプチドなどの単一の生理活性物質を基材に固定化して、造血幹細胞を増幅させる試みもなされているが、効果は十分ではない(例えば、特許文献3参照)。
生体内における幹細胞の未分化能維持においては、骨髄環境などの三次元微小構造と複数のサイトカインや細胞外マトリックスなどの幹細胞や前駆細胞を制御する生理活性物質が複雑に入り組んだ相互作用が必要とされている。また、骨髄内に限らず、皮膚などの組織中に存在する幹細胞も同様の微小環境内で未分化能を維持していると考えられている。このように、生体内環境を模倣し、細胞を効率よく培養するといった観点から、三次元構造を有する不織布を用いて、細胞を効率よく培養する試みがなされているが、幹細胞の制御に必要な生理活性物質が固定されておらず、したがって骨髄環境を模倣されておらず、効果は不十分である(非特許文献1参照)。さらに、生理活性物質をコーティングした金属多孔担体での培養も試みられているが、コーティングでは生理活性物質の固定化密度の制御が難しい(特許文献4参照)。
上記のように、幹細胞の制御を行うには、複数の生理活性物質の固定された三次元微小環境により、骨髄環境を模倣でき、幹細胞や前駆細胞の制御がより効率よく行われると考えられるが、これまで満足のゆく人工微小環境は得られていなかった。
特開平10−295369号公報 特開2002−065250号公報 特開2002−065252号公報 特表2002−529073号公報 ヤンリ−(Yan Li)ら、「ジャーナル オブ ヘマトセラピー アンド ステム セル リサーチ(Journal of Hematotherapy and Stem Cell Research)」,マリー アン リーバート インク(Mary Ann Liebert, Inc.),2001年,10巻,p.355−368
本発明では、上記従来技術の欠点を解消するものであり、幹細胞を効率よくかつ安全に培養出来る基材を提供することを目的としている。
(1)三次元構造を有する細胞培養のための基材であって、細胞膜上あるいは細胞外マトリックス上に存在する幹細胞および/または前駆細胞を制御する物質(幹細胞因子を除く)を含む2種以上の生理活性物質が該基材上に固定化されていることを特徴とする三次元細胞培養基材。
(2)細胞膜上あるいは細胞外マトリックス上に存在する幹細胞および/または前駆細胞を制御する物質がノッチリガンドであることを特徴とする(1)の三次元細胞培養基材。
(3)生理活性物質がノッチリガンドと細胞外マトリックスおよび/またはマトリックス蛋白質および/または接着因子であることを特徴とする(2)に記載の三次元細胞培養基材。
(4)該基材が、中空糸膜、不織布、編み地、スポンジ、ビーズのいずれか、またはその組み合わせであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の三次元細胞培養基材。
(5)該基材がセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびこれらの誘導体、並びにリン酸カルシウム系無機化合物からなる群より選択される1種類以上の物質を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の三次元細胞培養基材。
(6)該基材に親水性高分子が含まれていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の三次元細胞培養基材。
(7)親水性高分子がポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、デキストラン硫酸、ポリアクリル酸、およびアルブミンからなる群より選択された1種類以上の高分子であることを特徴とする(6)に記載の三次元細胞培養基材。
(8)培養細胞が幹細胞および/または前駆細胞であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかにのいずれかに記載の三次元細胞培養基材。
(9)培養細胞が造血幹細胞であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の三次元細胞培養基材。
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の三次元細胞培養基材であって、該三次元細胞培養基材で得られた細胞が癌または自己免疫疾患または脳梗塞またはパーキンソン病またはアルツハイマー病または糖尿病または心筋梗塞または血管再生の治療に用いられる三次元細胞培養基材。
(11)(1)〜(10)に記載の三次元細胞培養基材を用いることを特徴とする細胞製剤の製造方法。
(12)(11)に記載の製造方法により製造された細胞製剤。
本発明の幹細胞および/または前駆細胞の制御に必要不可欠な細胞膜上あるいは細胞外マトリックス上に存在する物質を含む2種以上の生理活性物質を固定化して生体内環境を模倣した三次元細胞培養基材を用いることによって、幹細胞や前駆細胞の分化能も保持したまま、分化させずに効率よく増殖させることが可能である。本発明の三次元細胞培養基材を用いて幹細胞、特に造血幹細胞を培養することにより、幹細胞を用いる細胞移植治療及び再生医療において、細胞製剤として十分な量の幹細胞を製造することができ、移植治療及び再生医療が容易に行えるようになる。また、基材に幹細胞および/または前駆細胞を制御する生理活性物質を固定化することによって、ウイルス等による感染を起こさなくなり、安全に幹細胞を培養することができる。さらに、基材表面上における生理活性物質の濃縮効果により、培養の際に培養液に添加を必要とする生理活性物質の使用量低減にもつながり、安価に細胞製剤を製造することが可能となる。
本発明は、三次元構造を有する細胞培養のための基材であって、該基材上に細胞膜上あるいは細胞外マトリックス上に存在する幹細胞および/または前駆細胞を制御する物質(幹細胞因子を除く)を含む2種以上の生理活性物質が該基材上に固定化された三次元細胞培養基材である。本発明における生理活性物質とはわずかな量で生物の生理や行動に何らかの特有な作用を示す化学物質であり、また、幹細胞とは、分裂して別の幹細胞を産生する能力(自己複製能)を有する細胞、および複数の特異的な分化経路に沿って分化しうる細胞であり、前駆細胞とは、分裂してもしなくてもよく、特異的な発生シグナルに応答することにより、異なる分化状態(ただし、必ずしも完全に分化した状態でなくてもよい)になるよう誘発されることが可能な細胞である。
本発明において、細胞膜上あるいは細胞外マトリックス上に存在する幹細胞および/または前駆細胞を制御する物質は、サイトカインのように細胞から細胞外液中に放出され血液などの体液中において溶液状態で細胞と相互作用して細胞の機能制御を行う生理活性物質ではなく、細胞膜上あるいは細胞外マトリックス上に担持された状態で上記の幹細胞および/または前駆細胞の細胞膜上のレセプター、リガンド、表面抗原などと反応してそれら細胞の分化、増殖、細胞死などの機能を制御する物質である。このような物質として例えば、ノッチリガンド(デルタ1〜3、ジャギド/セレート1,2)やデルテックス、DNERなどのEGFリピートを有するような蛋白質、あるいはTNF(腫瘍壊死因子)やFasリガンドなどのTNFリガンドファミリー、あるいはT細胞レセプター(TCR)、Wnt分泌蛋白、Tieレセプター、あるいは、ヘパリン結合性の成長因子としてFGF−1(aFGF)、FGF−2(bFGF)、FGF−3、FGF−4、FGF−5、FGF−6、FGF−7、FGF−8、FGF−9、HGF(hepatocyte growth factor)、HBEGF(heparin binding epidermal growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)などがあげられる。
本発明において、これら細胞膜上あるいは細胞外マトリックス上に存在する幹細胞および/または前駆細胞を制御する物質を含む2種以上の生理活性物質は三次元構造を有する細胞培養のための基材に固定化されて用いられる。中でも幹細胞および/または前駆細胞の増殖、分化機能を制御するためにはノッチリガンドを含む2種以上の生理活性物質が固定化された三次元細胞培養基材が好ましく用いられ、さらに好ましくはノッチリガンドと細胞外マトリックスおよび/またはマトリックス蛋白質および/または接着因子を組み合わせて固定化した三次元細胞培養基材が用いられる。ノッチリガンドを選択することにより、培養する幹細胞および/または前駆細胞の未分化状態を維持することができる。
細胞外マトリックスおよびマトリックス蛋白質とは細胞が合成し、細胞外に分泌・蓄積した生体高分子の複雑な会合体を指す。すなわち、細胞周辺に沈着した組織の構造支持体に該当し、細胞接着や細胞骨格の配向、細胞の形、細胞移動、細胞増殖、細胞内代謝、細胞分化を細胞から調整する。このような物質として例えば、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、グリコサミノグリカン(ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸など)、ヘパリンなどがあげられる。また、接着因子とは細胞表面に存在し細胞−細胞間および細胞−細胞外マトリックスの接着に関わる因子を指し、細胞−細胞間接着に関わる因子としてカドヘリンファミリー、Igスーパーファミリー、セレクチンファミリー、シアロムチンファミリーなどがあげられ、細胞−細胞外マトリックス間の結合に関わる因子としてインテグリンファミリーがあげられる。また人工的に合成されたペプチドや細胞外マトリックス、遺伝子組み換えタンパク質として三洋化成工業製“プロネクチンF”、“プロネクチンL”、宝酒造製”レトロネクチン”などがあげられる。
本発明で使用される生理活性物質は、基材に固定化され、溶出されないので、ヒト由来であってもマウスなどの異種動物由来、植物、昆虫、酵母、大腸菌由来であってもよい。また、天然型の物質から、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠損および/または付加されたアミノ酸配列を有するものや、他の生理活性物質と融合されたアミノ酸配列を有するものなど、天然型と実質的に同一の活性を有する物質を含む。実質的に同一の活性とは、幹細胞および/または前駆細胞を維持・増殖させる活性が天然型のものと同程度以上であることをいう。
これら生理活性物質は培養する幹細胞の種類によって適宜選定され、例えば、生理活性物質としてデルタ1とフィブロネクチンを選択することによって、ヒト臍帯血中に存在する造血幹細胞を、その分化能を維持したまま培養することができる。
本発明において使用する三次元構造を有する細胞培養のための基材とは、幹細胞および/または前駆細胞の細胞群と立体的に相互作用できる構造を持ち、足場としての役割を果たす材料のことである。そのような基材としては例えば、血液などの細胞群を一度に大量に処理できる体外循環に使用されている基材が好ましく、形状としては中空糸膜状、編み地や不織布のような繊維状、粒子状、ゲル状、スポンジ状など何でもよいが、幹細胞および/または前駆細胞が効率よく接触できる利点から中空糸膜状、編み地や不織布のような繊維状、スポンジ状またはビーズ状が望ましく、また、表面積を確保し、細胞と因子との相互作用を大きくする点からこれらは多孔質であることがのぞましい。多孔質材料の場合は、製造条件を制御することにより孔の制御も可能である。また、異なる形状のものを組み合わせて用いても良い。
本発明において基材が三次元構造を有することにより、生体内、特に骨髄組織内の造血微小環境に見られるような細胞外マトリックスやマトリックスタンパク質で形成されている三次元構造や支持細胞の存在する閉鎖空間にあるような環境を模倣することができ、三次元細胞培養基材に中空糸を使用すれば骨、骨髄や微小血管構造に見たてたり、繊維を使用することにより細胞外マトリックスにより構成される生体内の三次元微小環境見たてたりするなどして、造血微小環境を人工材料で模倣することが可能となる。このような生体内に類似した三次元的な環境を人工的に作製した基材を用いることにより、平面培養では得られない効率的な細胞培養を達成することができる。
本発明において、基材に使用される素材は、医療用に用いられている素材が好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、セルロース系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、リン酸カルシウム系(ヒドロキシアパタイトなど)、リン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、チタン、タンタル、ジルコニア、アルミナ、シリカなどが単独または組み合わせて用いられる。
これら高分子と無機化合物を組み合わせて用いる場合として、例えば、ポリスチレン繊維やポリメチルメタクリレート中空糸にアパタイトやチタンなどをコーティングして、より骨に近いような環境を作ることもできる。
また、高分子と高分子を組み合わせて用いる場合として、例えば、ポリスチレン等は繊維にすると強度が不足する場合があるので、ポリプロピレンやポリエチレンを芯材に用いて紡糸する(いわゆる海島型繊維)ことにより補強された繊維とすることができる。
また、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリスチレンなど疎水性の高分子を基材の素材として使用する際は、その接触面を親水化しておいてもよい。親水化の方法としては、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコールなどの親水性高分子を加工前の溶液に添加したり、細胞との接触面をアルブミンでコーティングすることにより達成できる。
ポリメチルメタクリレートを中空糸膜として用いる場合、例えば公知の乾湿式紡糸法で製造できる。ポリメチルメタクリレートの原液の溶媒としては、ゾル−ゲル変化を示すポリメタクリレートを溶解する溶媒はすべて使用可能であるが、原液を冷却した時に適当な温度で、ゲル化する溶媒が好ましく使用される。さらに、凝固時に脱溶媒して製品とするための凝固剤としては、水が好ましく用いられるため、この水と置換容易な溶媒が特に好ましい。このため、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、酢酸、アセトン、メチルエチルケトン、およびこれらの相互混合物などが用いられる。
また、ポリメチルメタクリレートの原液のポリマー濃度も分子量と同様に材料の構造や機械的特性あるいは紡糸性に関与してくるものであり、得られる材料の構造および機械的特性を考慮すると、原液中のポリマー濃度は5〜30重量%、さらには10〜30重量%の範囲に設定されることが好ましい。
さらに、材料の細孔径制御のために、多価アルコールや水、塩などといった第3の添加剤を加えることも通常行なわれる手段である。
このようして得られるポリメチルメタクリレートの原液の粘度は繊維状や中空糸膜状に製造する場合、紡糸性と深く関わってくる要因であり、用いる口金の形状や寸法あるいは制御可能な温度範囲、ゾル−ゲル変化温度などを考慮して決定することが好ましい。通常、10〜8000ポイズであることが好ましく、さらには100〜3000ポイズであることが好ましい。すなわちポリマー濃度と分子量を適宜選択することで最適な紡糸原液条件を設定することが可能となる。
次に、本発明において、基材として好適に用いられる中空糸膜状の含水ポリメチルメタクリレート基材を製造する例を示す。
通常、中空糸膜の紡糸に用いられる乾湿式紡糸法は、吐出された糸条を空中で伸長し、所定の寸法に設定した後、凝固浴に導いて凝固・脱溶媒を行なう方法であり、一般に広く採用されている。
中空糸は内側に中空部分を形成させるための液体もしくは気体を、外側に重合体を溶液に溶かした紡糸原液を流すことができる多重スリットを用い、これらの液体、気体を凝固浴に吐出することにより得られる。内側に注入される液体としては、たとえば、該紡糸原液の溶媒および水やアルコールなどの凝固剤、これらの混合物、あるいは該共重合体やそれとの混合物の非溶媒であるような疎水性の液体、たとえば、n−オクタン、流動パラフィンなどの脂肪族炭化水素、ミリスチン酸イソプロピルの様な脂肪酸エステルなども使用できる。親水性の凝固剤を使用した場合には凝固剤に親和性の高い親水性ポリマー成分が膜内表面に移動し、凝固する。また、吐出糸条が空中での温度変化によってゲル化したり、凝固によって速やかに強固な構造を形成する場合には、自己吸引や圧入によって、窒素ガスや空気などの不活性気体を用いることができる。このような気体注入法は工程上からも非常に有利な方法である。温度変化によってゲル化をおこすような原液系の場合には、乾式部分において冷風を吹き付け、ゲル化を促進させることができる。中空糸の膜厚は紡糸原液の吐出量により、内径は注入液体もしくは気体の量によりコントロールする方法が一般的である。
吐出口金から浴液までの距離、いわゆる乾式部分の長さ(以下、乾式長と略)は、吐出ゾルの形状を目的寸法までに引き伸ばすために、一定距離を空中部分において、ゾルの状態でドラフトをかけることが好ましい。一方で、急激なドラフトは製糸安定性を低下させるため、ある程度乾式長を長くとることが好ましい。また同時に、乾式長が長すぎると、ゾルの変形が不安定となり、中空糸の寸法安定性が悪くなる傾向がある。したがって、乾式長は1mm以上、30mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは2mm以上20mm以下に設定される。
吐出ゾルをゲル化させ中空糸形状を固定するための液浴は、ゲル化のみを行なわせることもあるが、ゲル化と共にその脱溶媒を同時に行なう方が工程上有利な場合が多く、凝固浴として用いられる。したがって、その組成および特にその温度が中空糸の透過特性にも影響を及ぼす可能性がある。一般的には凝固浴温が高くなると、膜の透過性(孔径)は大きくなるが、寸法安定性は低下する傾向にあるため、目的の中空糸の特性に応じた条件が選択され、通常5〜70℃であることが好ましく、さらには、20〜50℃であることが好ましい。凝固浴は通常、水やアルコールなどの凝固剤、または紡糸原液を構成している溶媒との混合物からなる。凝固浴の組成はその凝固性によって、紡糸安定性や中空繊維の膜構造に影響する。
かくして得られた中空糸状ゲルは、十分に水洗され、膜の空隙に水分子を含有した含水ゲル構造が得られる。含水ゲル構造はいったん乾燥すると、再び元の含水ゲル構造に戻すことは困難であるため、乾燥によって、その膜構造が破壊されないようグリセリンなどの保湿剤を付与して、モジュール化などが行われる。
また、基材としてポリスルホン系中空糸膜を用いる場合、ポリスルホン系中空糸膜は例えば以下のようにして製造できるがこれに限定されない。
ポリスルホンとポリビニルピロリドン(重量比率20:1〜1:5が好ましく、5:1〜1:1がより好ましい)を良溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサンなどが好ましい)および良溶媒の混合溶液に溶解させた原液(濃度は、10〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい)を二重環状口金から吐出する際に内側に注入液を流し、乾式部を走行させた後凝固浴へ導く。この際、乾式部の湿度が影響を与えるために、乾式部走行中に膜外表面からの水分補給によって、外表面近傍での相分離挙動を速め、孔径拡大し、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を減らすことも可能である。ただし、相対湿度が高すぎると外表面での原液凝固が支配的になり、かえって孔径が小さくなり、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を増大する傾向がある。そのため、相対湿度としては60〜90%が好適である。また、注入液組成としてはプロセス適性から原液に用いた溶媒を基本とする組成からなるものを用いることが好ましい。注入液濃度としては、例えばジメチルアセトアミドを用いたときは、45〜80重量%、さらには60〜75重量%の水溶液が好適に用いられる。
本発明において、基材に生理活性物質を固定化するためには、基材表面に活性基や官能基を含有させ、それを利用して生理活性物質を固定化する方法や、基材表面の荷電と生理活性物質の荷電で静電相互作用的に固定する方法、基材表面に陰性荷電をもたせ、カチオン性ポリマーと複合化した生理活性物質を静電的相互作用により固定化する方法や、ポリエチレングリコールと複合化した生理活性物質を相互作用によりポリメチルメタクリレート系含水材料に固定化する方法、生理活性物質の疎水性部位と基材表面の疎水性部位を相互作用させる方法などがある。固定化する際は、細胞が回収しやすいように外部刺激により生理活性物質を解離できるスペーサーを介して固定化してもよい。
基材に生理活性物質を固定化するための活性基または官能基としては臭化シアンによる活性基、スクシンイミド基やα−クロロアセトアミドメチル基、クロロメチル基に加え、アミノ基、カルボキシル基、硫酸基、水酸基、リン酸基、イソシアネート基、ニトロ基、アルデヒド基、ピリジルジスルフィド基などを基材表面に導入する方法が挙げられるが、生理活性物質の固定化反応の容易さと水溶液で中での安定性からアミノ基が好適である。
基材にアミノ基を含有させる方法としては、あらかじめ成形のための溶液にアミノ基を有する物質をブレンドしておいてから成形する方法や、成形した材料にアミノ基を含有する物質を含む溶液に浸漬または付着させ、放射線照射により固定化する方法、材料に活性基を導入しておき、アミノ基含有物質を固定化する方法などが用いられる。例えば、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンド基材を十分水洗した後、1wt%のポリエチレンイミン水溶液に浸漬して、25kGyにてγ線照射して基材にアミノ基を含有させる方法、あるいは、ポリスチレン基材をN−メチロール−α−クロロアセトアミド、ニトロベンゼン、硫酸、パラホルムアルデヒドの混合液で反応させ、クロロアセトアミドメチル化架橋ポリスチレン基材を得て、さらに、ポリエチレンイミンをトリエチルアミン、ジメチルスルホキシドの混合溶液に溶解し、この溶液にクロロアセトアミドメチル化架橋基材を加えて攪拌、洗浄して、ポリスチレン基材へアミノ基を導入することができるが、これらの方法に限定されない。
基材にアミノ基を含有させる場合は、材料全体にアミノ基を含有させてもよいし、血液や細胞の接触する部分だけにアミノ基を含有させてもよい。中空糸膜の内表面を用いる場合は、アミノ基含有高分子量物質を内側からろ過し、充填することにより内表面にアミノ基を集積させることができる。
基材にアミノ基を含有させる際に使用するアミノ基を有する物質としては、ポリマーであっても低分子であってもよい。低分子の場合は、アンモニア、テトラエチレンペンタミン、デンドリマー、アグマチンなどが用いられる。ポリマーの場合は、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリリジン、アジリジン(エチレンイミン)化合物を有するポリマー、ポリエチレンイミン誘導体、キトサン、グリシンエステル化ポリエチレングリコール、ヒドラジド化ポリエチレングリコール、ω−ヒドロキシ−α−アミンポリエチレングリコール、ω−アミノ−α−カルボキシルポリエチレングリコールおよびそれらに置換基の導入されたもの、およびこれらを構成するモノマー単位からなる共重合体などが挙げられるがこれらに限定されない。
これらアミノ基を有するポリマーの中でも毒性の低さ、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさなどから、分岐状のポリエチレンイミンが特に好適に用いられる。ポリエチレンイミンは、分子量600以上の直鎖状、分岐状のものが好ましく用いられ、また、ポリエチレンイミンの誘導体としては、ポリエチレンイミンをアルキル化、カルボキシル化、フェニル化、リン酸化、スルホン化、メルカプト化、ピリジルジスルフィド化など、所望の割合で誘導体化したものが挙げられる。
アミノ基含有材料に生理活性物質を固定化する方法としては、例えば、生理活性物質がアミノ基をもつ場合は、両端がスクシンイミド基の架橋剤を利用することにより、固定化することができる。このような架橋剤として、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ジスクシンイミジルスベリン酸や水溶性のm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、ビス(スクシンイミジル)スベリン酸などが挙げられる。水に不溶性の架橋剤を用いる場合は、ジメチルスルホキシドやメタノールなどの可溶性の有機溶媒に溶解後、水系の反応液に添加することにより利用できる。
以上の方法で基材上の活性基を用いて生理活性物質を固定化する際の生理活性物質の濃度は、固定化密度を上げるためには高い方が望ましいが、コスト面から考えて、1mg/ml以上が望ましい。0.5mg/ml未満の場合は固定化される生理活性物質の量が少なくなり、機能が低下する恐れがある。
ポリメチルメタクリレートからなる材料は、加水分解によりカルボキシル基を導入し、カルボジイミドなどの縮合剤を用いて、アミノ基を有する生理活性物質を固定化することができるが、ポリメチルメタクリレート基材に生理活性物質を固定化する場合は、生理活性物質またはポリエチレングリコールと複合した生理活性物質を含む水溶液を添加することにより、容易に生理活性物質をポリメチルメタクリレート基材に固定化することができる。生理活性物質のみを含む水溶液を添加することによっても、生理活性物質をポリメチルメタクリレート基材に固定化することができるが、ポリエチレングリコールと複合化された生理活性物質の場合は、ポリエチレングリコールを介してより強固にポリメチルメタクリレート基材に固定化することができる。これは疎水的相互作用および水素結合により固定化されると考えられる。この場合、生理活性物質の濃度が0.5mg/ml以下でも効率良く固定化することができる。
生理活性物質とポリエチレングリコールを複合化する方法は、例えば、次のような方法が挙げられる。末端がマレイミド基、ピリジルジスルフィド基、スクシンイミド基、無水マレイン酸基、フェニルアジド基など反応性の活性基で修飾されたポリエチレングリコールを生理活性物質のスルフィド基やアミノ基などの官能基に化学的に結合させる方法、あるいは生理活性物質と末端の水酸基をアミノ基やカルボキシル基やメルカプト基に変換したポリエチレングリコールを架橋剤で結合する方法である。
上記のような方法に利用できるような架橋剤としては、ポリエチレングリコール同士あるいは生理活性物質同士の結合を防ぐため二種類の違った官能基と反応する活性基をもつ架橋剤を使用することが好ましく、活性基として、アミノ基と反応するN−ヒドロキシスクシンイミド基、イミドエステル基、ニトロアリールハライド基、イミダゾリルカルバミン酸基、メルカプト基と反応するマレイミド基、ピリジルジスルフィド基、チオフタルイミド基、活性化ハロゲン基、光化学反応により架橋するフェニルアジド基、ジアゾカルベン基、などを持つような架橋剤を利用することができる。なかでも、N−ヒドロキシスクシンイミド基とピリジルジスルフィド基を持つような架橋剤を利用することにより、アミノ基を有するポリエチレングリコールや蛋白質などのアミノ基を有する生理活性物質にメルカプト基と反応可能なピリジルジスルフィド基を導入できる。また、このピリジルジスルフィド基は還元剤により還元することによりメルカプト基への変換に利用できる。このような架橋剤として、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート、スクシンイミジル6−[3’−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエートや水溶性のスルホスクシンイミジル6−[3’−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエートなどが挙げられる。水に不溶性の架橋剤を用いる場合は、ジメチルスルホキシドやメタノールなどの可溶性の有機溶媒に溶解後、水系の反応液に添加することにより利用できる。
また、生理活性物質やポリエチレングリコールのアミノ基をメルカプト基に変換する場合は、2−イミノチオランを利用すれば、一段階でメルカプト基を導入できる。
生理活性物質やポリエチレングリコールへ架橋剤を利用してのピリジルジスルフィド基などの反応性官能基の導入率はそれら1分子あたり1モル以上であることが必要であるが、生理活性物質が蛋白質の場合には、導入率を上げるために架橋剤の仕込量を上げると失活したり、凝集したりするおそれがある。生理活性物質が蛋白質の場合には、望ましくは仕込量はリガンド1モルあたり10モル以下が望ましい。
上記のようなピリジルジスルフィド基を持つような架橋剤を利用した生理活性物質とポリエチレングリコールとの複合化は、ピリジルジスルフィド基を導入した生理活性物質とメルカプト基を導入したポリエチレングリコールを混合し、ジスルフィド交換反応を利用することにより複合化できる。
上記の方法で作製した三次元構造を有する細胞培養のための基材は、適宜、リン酸カルシウムでコーティングするなどして、骨髄環境に似た基材としてもよい。
2種類以上の生理活性物質を固定化する際は、1つの生理活性物質を固定した後、別の生理活性物質を固定化していくように順次必要な生理活性物質を基材に固定化してもよいし、所定の濃度比で混合された生理活性物質溶液を固定化反応に用いて、2種類以上の生理活性物質を一度に固定化してもよい。骨髄のような生体内環境では、複数の生理活性物質が関与した複雑な相互作用がからんで細胞の未分化維持などの制御がなされていることから、三次元構造を有する細胞培養のための基材に2種類以上の生理活性物質を固定化することにより、単一の生理活性物質の固定化では達成できないような、効率的な三次元細胞培養基材を提供することができる。
以上の様な方法で作製した三次元細胞細胞培養用基材によって様々な種類の幹細胞および/または前駆細胞の分化、増殖、細胞死などの細胞機能を制御しつつ培養することができる。
次に、本発明の三次元細胞培養基材を用いて細胞を培養する方法について説明する。
培養する幹細胞および/または前駆細胞はその細胞の持つ特異的な表面抗原(例えばCDなど)を利用してフローサイトメトリー法、磁気ビーズ法、アフィニティーカラム法など様々な細胞分離法により高純度に分離してくることができる。例えば造血幹細胞(自己複製能をもち、すべての血球の母細胞となる細胞)は表面にCD34をもつことが知られており、臍帯血や骨髄、末梢血からCD34陽性細胞として分離してくることができる。高純度に分離してきた細胞を培養することにより、培養後の幹細胞および/または前駆細胞についてより高純度を保つことができる。
本発明の基材を用いて細胞培養する培地としては、用いる幹細胞および/または前駆細胞の種類によって適宜利用されるが、MEM培地、BME培地、DME培地、α−MEM培地、IMEM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地、RPMI培地、StemSpan培地、StemPro培地及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらの培地に限定されない。また、培養の際は無血清培地であることが望ましい。
また、培地中には、必要に応じて添加剤として、サイトカインや細胞増殖因子を含有させることができる。サイトカインや細胞増殖因子を含有することにより、さらに幹細胞の増殖速度を高めたり、細胞活性を高めたりすることができる。なかでも、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、幹細胞因子(SCF)、Flk2/Flk3リガンド(FL)、トロンボポエチン(TPO)、可溶性インターロイキン−6レセプター、インターロイキン−6/可溶性インターロイキン−6レセプター複合体、インターロイキン−3が好ましく用いられる。
上記のような培地や添加剤とともに細胞を懸濁し、三次元培養基材が組み込まれた気体透過性バッグ内に懸濁液を封入して、5%CO2インキュベーター内で培養したり、三次元培養基材の組み込まれたカラム、細胞懸濁液の入ったリザーバー、市販の人工肺などを利用した酸素負荷装置、培地を交換するための透析カラムなどをラインに組み込んだような灌流培養システムを利用して細胞を培養することができる。
以上のような方法で、培養した幹細胞はその分化能を有したまま増殖することができ、様々な移植医療へ用いることが可能である。例えば、ヒト臍帯血中に存在する造血幹細胞を、その分化能を維持したまま培養して幹細胞移植を行い、癌治療、自己免疫疾患治療に用いることが可能である。造血幹細胞は患者に移植する事により患者の造血系の再構築を促すことができるため、癌治療においては、例えば大量の抗ガン剤による骨髄抑制を回避するために造血幹細胞移植を使用される、また、造血幹細胞は同種抗原に反応するリンパ球も生成するので、白血病に対するGVL効果による再発防止効果や腫瘍に対する抗腫瘍効果にも利用できる。また、造血不全や免疫不全の患者には量的あるいは質的に異常のある造血系、リンパ球系幹細胞を造血幹細胞移植により健常人の幹細胞により置換すれば疾患を治癒できる。また、造血幹細胞は自己複製能をもち、終生ずっと機能し続けるので培養前あるいは培養後に患者に欠損している遺伝子を導入すれば遺伝子治療用の細胞としても利用できる。また、本発明の基材で培養した幹細胞および/または前駆細胞を様々な組織幹細胞に分化させることにより、脳梗塞、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病などの脳・神経系の疾患の治療、血管傷害に対する血管再生治療、その他様々な組織・臓器の再生医療に用いることができる。このような例として例えば、幹細胞として神経幹細胞を使用して増殖させ脳梗塞や脊髄損傷の損傷部位に移植すれば脳神経系の再構築あるいは脊髄の再生が促される。また、神経幹細胞をドーパンミン産生ニューロンやアセチルコリン作動性ニューロンに分化させて移植することによりパーキンソン病やアルツハイマー病などの疾患の治療に応用できる。また、血管内皮前駆細胞を利用してこれを血管損傷部位に移植することにより血管新生を促し、血管損傷部位の修復を促す治療も可能である。
以下に移植医療の一種である幹細胞移植について言及する。
(幹細胞移植)
近年、白血病などの重い血液疾患に対して骨髄移植の代わりに特に臍帯血を供給源とし
て用いた造血幹細胞移植が行われている。臍帯血を用いた移植は、主に急性リンパ性白血
病(ALL)や急性骨髄性白血病(AML)、再生不良性貧血、先天性免疫不全症、先天性代謝異常疾患などの治療に用いられており、骨髄移植や末梢血幹細胞移植に比べて移植後の移植片対宿主病(GVHD)が軽くまた、増殖能力が旺盛であるため骨髄移植時に使用される細胞数の10分の1程度の細胞数でも移植が可能となる。臍帯血に含まれる幹細胞の総細胞絶対数は少なく成人における造血幹細胞の生着に必要な細胞数が確保されず、これまで移植は主に小児に対して行われていた。本発明の材料を用いて、臍帯血中の造血幹細胞及び前駆細胞を未分化維持しつつ増殖させることにより成人への幹細胞移植などの適応拡大や生着不全の回避、造血回復の促進、輸血量の軽減、複数の患者への移植、患者の入院期間の短縮やより安全な移植を実現することができる。
また、本発明の三次元細胞培養用基材で得られた細胞を造血疾患モデル動物に対して投与する実験を行うことにより、該培養細胞が造血疾患に有効であることを確認することができる。用いる動物は、特に限定しないが、マウスを用いることが好ましく、特に、BALB/c nu/nu、SCID、NOD-SCID、NOD-SCID/γc nullなどの先天異常マウスが好ましく用いられうる。これらの動物を用いて造血疾患モデルを作製するには、動物に致死量もしくは準致死量の放射線を照射する方法や5FU(5−フロオロウラシル)、CPM(サイクロフォスファミド)、MMC(マイトマイシンC)などの抗腫瘍剤を投与する方法が好ましく用いられうる。以上のような方法で作製した造血疾患モデル動物に投与される培養細胞は、ヒト由来のものでも他の動物由来のものでも用いられうる。培養細胞を投与された造血疾患モデルにおける造血能の回復は、投与後の末梢血球数の回復、CFU−S(脾臓コロニー数)やコロニーアッセイによって測定されたCFU数などによって確認されうる。投与した細胞製剤が、モデル動物と異種である場合や異系統である場合には、フローサイトメトリーを用いて表面マーカーを調べることにより、本発明に係る細胞製剤由来の末梢血球の含まれる割合を確認できる。本発明の三次元培養基材で培養した造血幹細胞を使用すれば、以上に説明した造血疾患モデル動物を用いた実験で、優れた造血能回復効果を期待できる。
また、本発明の三次元培養基材を用いて疾病や疾患に対して有効な細胞を培養することにより細胞製剤を製造することも可能である。本件特許における細胞製剤とは組織や細胞を加工した医薬品や医療用具を指し、細胞製剤の製造方法とは細胞の分離、細胞の増殖、細胞への刺激、細胞への分化誘導、細胞のアポトーシス誘導など細胞を細胞製剤として疾病や疾患に対して有効な形態に加工するためのあらゆる行程を含んでいる。細胞製剤を製造するには、まず細胞群の供給源となる組織や体液などを採取する必要がある。これら細胞群の供給源はヒト由来のものが好ましいがこれに限定されない。また、幹細胞および/または前駆細胞を多く含む細胞群の供給源が好ましく、このような細胞群の供給源として臍帯血、骨髄液、羊膜組織、胎盤組織、生殖巣、G−CSF動員末梢血、胎児組織などがあげられるがこれらに限定されない。供給源として特に体液などを使用するときは、予め培養前に遠心法、単位重力沈降法、遠心選別法などで細胞培養に余分な成分を排除した均一な細胞群を得ることが一般的である。また、さらに培養前にフローサイトメトリー、磁気ビーズ法、アフィニティーカラム法など細胞分離の方法を用いて純度の高い幹細胞および/または前駆細胞にしておくことが好ましい。このような様々な加工を行った後、本発明の三次元培養基材を用いて上記の方法により細胞培養を行うことにより、細胞製剤として必要な細胞を純度高く得ることができる。また、本発明の三次元細胞培養基材を用いて細胞を培養した後に再度細胞分離を行うことが好ましく、そのようなプロセスを採用することにより、幹細胞および/または前駆細胞を増殖した細胞群から必要な細胞分離し、純度を高めることができるため、細胞製剤の製造方法として好ましい。この製造方法により目的とする有用な幹細胞および/または前駆細胞群を高純度で大量に得ることができ、効果の優れた細胞製剤を製造することができる。さらに、また、細胞分離の後に本発明の三次元培養基材で再度培養を行い、再び細胞分離を行うということも好ましい。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
1.造血幹細胞の培養方法
臍帯血はインフォームドコンセントを行った上で、協力医院にて採取された。
(1)単核球分画の採取
以下の操作はクリーンベンチ内で行った。
アルコール消毒・加熱滅菌を行った鋏を用いて臍帯血バックの血液チューブを切断し、臍帯血を50ml遠心管に移しかえた。等量の2mMエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)含有リン酸緩衝液(ニッスイ社製、“ダルベッコ”、以下PBS(−))溶液を用いて2倍希釈し、希釈臍帯血を調製した。新しい遠心管に15mlの比重液(”リンフォプレップ”、1.077±0.001g/ml、280±15mOsm、064838、第一化学薬品)を入れ、希釈臍帯血を25〜30ml/本にて10mlのピペットを用いてゆっくりと重層した。臍帯血を重層した遠心管を、遠心機を用いて、2000rpm(800×g)、 20min、20℃にて遠心した。遠心後下層から赤血球・顆粒球/比重液/中間層(単核球分画)/血漿・血小板の順に分画される。アスピレーティングピペットを用いて中間層の上1cmほどまで血漿・血小板分画を吸引除去した。中間層のみを2mlピペット用いて注意深く採取した。採取した中間層は50ml遠心管にて2mM EDTA含有PBS(−)溶液に希釈し、50mlまでメスアップ後に再度1500rpm(400×g)、10min、4℃にて遠心し洗浄操作を行った。上清を除去した。タッピング後さらに2mM EDTA含有PBS(−)溶液メスアップして、同条件にて遠心操作を行った後、1200rpm(300×g)、10min、4℃にて遠心操作を行った。10ml程度の2mM EDTA含有PBS(−)溶液で再浮遊後、血球計算版を用いて細胞密度、総細胞数を算出した。
(2)CD34陽性細胞の分離(磁気ビーズ法)
洗浄後の単核球分画を108個/300μlに0.5% 牛血清アルブミン(BSA)−2mM EDTA−PBS(−)を用いて浮遊させ、100μlのFcRブロッキング試薬(ミルティニ社製)を添加し、10min反応後、磁気ビーズ標識抗CD34抗体(ミルティニ社製)を100μl添加し、冷蔵遮光にて15分反応させた。細胞浮遊液は、0.5% BSA−2mM EDTA−PBS(−)にて10〜20倍希釈し、遠心操作(1200rpm(300×g)、7min、4℃)にて上清を取り除いた後、500μlの0.5% BSA−2mM EDTA−PBS(−)に浮遊させ、40umのメッシュで細胞塊を取り除き、マグネットに取り付けた磁気ビーズカラム(MACS MSカラム、ミルティニ社製)に添加した。カラムはあらかじめ、0.5% BSA−2mM EDTA−PBS(−)にて3回洗浄後に使用した。カラム下から落ちてくる溶液を排出した後、3回洗浄液で洗浄し、マグネットからカラムをはずして1mlの洗浄液を添加して、プランジャーにてカラム内の細胞を押し出し、CD34陽性細胞を回収した。再度新しいMSカラムを用いて同様の操作を繰り返すことでさらに純度を向上させた。回収したCD34陽性細胞はハンクス(HBSS、ギブコ社製)溶液に浮遊させ培養実験に使用した。
(3)細胞培養
培養液にはステムスパンSFEM(ステムセルテクノロジーズ社製)を基本培地に用いた。基本培地にサイトカインとしてSCF 50ng/ml、TPO 50ng/ml、FL 50ng/ml(peprotech)、IL3 20ng/ml(peprotech)、GM−CSF 10ng/ml(peprotech)、Epo(エポジン注アンプル750、中外製薬)3U/mlを添加したものを使用した。24穴プレート(cell suspension plate、住友化学)を用いて104個/wellで播種し5%CO2インキュベーターにて1週間培養した。三次元材料に編み地およびスポンジを用いる場合は、円形に切り取ったものをプレートに入れて培養した。
中空糸の場合は、ミニモジュールを作製して、1mlに懸濁させた104個の細胞を中空糸外側または内側に入れて培養した。
(4)CD34陽性細胞の増殖率の評価方法
生体外増幅した細胞の評価方法として、フローサイトメトリー法を行った。5mlラウンドチューブ(ファルコン)にPBS(−)で浮遊させた104〜106個/50μlの細胞を添加し、20μlのフルオレセイン(FITC)標識CD34抗体およびフィコエリスリン(PE)標識CD45抗体を添加した。遮光冷蔵にて30minインキュベーションしたのち10〜20倍量のPBS(−)にて希釈後、1200rpm(300×g)、7min、4℃にて遠心上清を除去した。50μlのPBS(−)で細胞を浮遊させ、ボルテックス後フローサイトメトリー(FACS Calibur、ベクトンディキンソン社製)にて測定を行った。CD34陽性かつCD45陽性細胞を造血幹細胞として、CD34陽性率、CD34陽性細胞数を算出した。算出には事前に細胞浮遊液の容積および総細胞密度を測定し、CD34陽性率(%)×細胞浮遊液体積(ml)×細胞密度(個/ml)により求めた。
作製例1 デルタ1の作製
ヒト心臓相補的DNA(cDNA)ライブラリーから、デルタFプライマー(5'−TGGCARTGYAAYTGYCARGA−3')とデルタRプライマー(5'−ATYTTYTTYTCRCARTTRAA−3')を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、デルタ1cDNAを増幅し、クローニングベクターpTbm−1(アンピシリン耐性遺伝子、f1 ori、T3およびT7プロモーター、LacZ発現系を保持しており、イソプロピル−1−チオ−β−ガラクトピラノシド(IPTG)/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)添加プレートでインサートの有無を青白判定できる特徴を有する。)に挿入し、デルタ1cDNAクローンを得た。得られたデルタ1cDNAの塩基配列をマキサム・ギルバート法で決定した。
ニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)レジンを用いてデルタ1タンパク質を精製するため、デルタ1C末端領域にヒスチジンが6つ連なった融合タンパク質を大腸菌ETbm1(T7RNAポリメラーゼ遺伝子がLacプロモーターの下流に位置するようにゲノムに組み込まれており、IPTGの添加によってもT7RNAポリメラーゼを産生することができる特徴を有する。)で発現させるために、大腸菌タンパク発現ベクターpTbm−2(アンピシリン耐性遺伝子、f1 ori、T7プロモーター、ヒスタグ(His tag))配列を保持しており、T7プロモーターとHis tag配列の間に塩基配列の読み枠を合わせて目的遺伝子を挿入すると目的タンパク質のC末端領域にヒスチジンが6つ連なった融合タンパク質を大腸菌ETbm1で発現させることができる特徴を有する。)にサブクローニングした。このクローンを37℃で大量培養した。大腸菌ETbm1に融合タンパク質を誘導するため、IPTGを加え、更に四時間培養した。大量培養した菌体を遠心にて回収し、NaClを300mM含む50mMリン酸緩衝液(pH7.8)に懸濁した。懸濁された菌体をホモジナイザーで破壊した。更に、遠心分離により上清を得た。Ni−NTAレジンを用いて、この上清からデルタ1融合タンパク質を精製した。
作製例2 三次元構造を有する基材の作製(編み地)
50重量比の海成分(46重量比のポリスチレンと4重量比のポリプロピレンの混合物)と50重量比の島成分(ポリプロピレン)とからなる海島型複合繊維(繊度0.289g/km、島の数16)を、35gのN−メチロール−α−クロロアセトアミド、232.5gのニトロベンゼン、232.5gの98%硫酸、0.5gのパラホルムアルデヒドの混合液を10℃で2時間反応させた。繊維をニトロベンゼンで洗浄し、メタノールで反応を停止させた。これによりクロロアミドメチル化架橋ポリスチレン(AMPSt)繊維を得た。得られたAMPSt繊維をさらに編地とした。
ポリエチレンイミン(分子量1万、和光純薬製)0.57gを、トリエチルアミン0.95g、ジメチルスルホキシド48.5gに溶解し、この溶液に1.02gのAMPSt編地1(クロロ含量2.6mmol相当)を加え攪拌した。反応は30℃で3時間行った。その後ジメチルスルホキシド、メタノール、純水で洗浄した。得られたものをアミノ基含有編地とする。
作製例3 三次元構造を有する基材の作製(中空糸)
25kGyでγ線滅菌された東レポリメチルメタクリレート(PMMA)製人工腎臓“フィルトライザー”BGを解体して中空糸膜を取り出し、中空糸膜を36本束ね、中空糸膜中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をモジュールケースに固定し、ミニモジュールを作製した。該ミニモジュールの直径は約7mm、長さは約10cmである。
作製例4 三次元構造を有する基材の作製(中空糸)
ポリスルホン(テイジンアモコ社製”ユーデル”(登録商標)P−3500)18部、ポリビニルピロリドン(BASF社製”K30”(登録商標))9部をN,N−ジメチルアセトアミド72部、水1部に加え、90℃、14時間加熱溶解した。この製膜原液を外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金より吐出し芯液としてジメチルアセトアミド58部、水42部からなる溶液を吐出させ、乾式長350mmを通過した後、水100%の凝固浴に導き中空糸膜を得た。
中空糸膜を10000本束ね、中空糸膜中空部を閉塞しないようにポリウレタン系ポッティング剤で両末端をモジュールケースに固定し、モジュールを作製した後、ポリエチレンイミン(分子量100万、BASF社製)0.1重量%を含む水溶液を中空糸膜内側から外側にかけてろ過をかけることにより、ポリエチレンイミンを中空糸膜内表面に集積して充填した後、25kGyでγ線照射した。
作製例5 三次元構造を有する基材の作製(スポンジ)
セルローススポンジ(東レ・ファインケミカル社製、C−W)の厚さ1mの乾燥圧縮品を、ポリエチレンイミン(分子量1万、アルドリッチ社製)0.1重量%を含む水溶液浸漬した状態で、25kGyでγ線照射した。
<実施例1>
作製例2で得られたアミノ基含有編地0.1gをNaClを150mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)2mLに浸漬し、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(ピアース社製)を27mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液を0.1mL添加し、0.5時間反応させた(室温)。反応させた編地をリン酸緩衝液洗浄した後、作製例1で得られたデルタ1とフィブロネクチン(いずれも1mg/ml)を含むリン酸緩衝液1mlに室温で4.5時間浸漬した後、NaClを150mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)で洗浄することにより、デルタ1とフィブロネクチンを固定化した編地を作製した。
この基材でCD34陽性細胞を1週間培養したところ、総細胞数は100倍に増え、CD34陽性細胞は10倍に増えた。
<比較例1>
実施例1でデルタ1とフィブロネクチンの混合溶液の代わりに、デルタ1の溶液(1mg/ml)を反応させ、固定化させた。この基材でCD34陽性細胞を1週間培養したところ、総細胞数は100倍に増えたが、CD34陽性細胞の増幅率は2倍であった。
<比較例2>
実施例1でデルタ1とフィブロネクチンの混合溶液の代わりに、フィブロネクチンの溶液(1mg/ml)を反応させ、固定化させた。この基材でCD34陽性細胞を1週間培養したところ、総細胞数は100倍に増えたが、CD34陽性細胞の増幅率は1.5倍であった。
作製例7
NaClを150mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に5mg/mlに溶解した作製例1で作製したデルタ1またはフィブロネクチンにN−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(ピアス社製、SPDP)を20mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液をデルタ1またはフィブロネクチン1分子に対して10倍モル量添加し、室温で30分反応させた後、PD−10カラム(ファルマシア社製)で高分子量分画に精製した。デルタ1またはフィブロネクチンが1モルに対してSPDP導入量は約4モルであった。これを、NaClを150mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に5mg/mlに溶解したアミノ化メトキシポリエチレングリコール(PEG)(シェアウォーター社、分子量5000、片末端アミノ基、片末端メトキシ基)に上記SPDP溶液を5倍モル量添加し、30分室温で反応させた後、ジチオスレイトールを25mMとなるように添加して還元した後、PD−10カラム(ファルマシア社製)で高分子量分画に精製し、片末端がメルカプト基のメトキシPEGを得た。1モルのSPDP化デルタ1またはSPDP化フィブロネクチンに対して片末端がメルカプト基のメトキシPEGを5倍モル量添加し、ジスルフィド結合を介して結合したPEG化デルタ1およびPEG化フィブロネクチンを得た。得られたジスルフィド結合を介して結合したPEG化デルタ1およびPEG化フィブロネクチンは無菌ろ過滅菌により滅菌した。
<実施例2>
PMMAミニモジュールの中空糸外側に作製例7で得られたPEG化デルタ1およびPEG化フィブロネクチンをそれぞれ0.5mg/mlずつ含む20mMリン酸緩衝液1.5mlを用いて室温で1時間固定化し洗浄することにより、デルタ1およびフィブロネクチンをPMMA中空糸膜外表面に固定化した。
このミニモジュールの中空糸外側にCD34陽性細胞を入れて、1週間培養したところ、総細胞数は100倍に増え、CD34陽性細胞は10倍に増えた。
<比較例3>
実施例2でPEG化デルタ1とPEG化フィブロネクチンの混合溶液の代わりに、PEG化デルタ1の溶液(0.5mg/ml)を反応させ、固定化させた。このミニモジュールの中空糸外側にCD34陽性細胞を入れて、1週間培養したところ、総細胞数は100倍に増えたが、CD34陽性細胞の増幅率は2倍であった。
<比較例4>
実施例2でPEG化デルタ1とPEG化フィブロネクチンの混合溶液の代わりに、PEG化フィブロネクチンの溶液(0.5mg/ml)を反応させ、固定化させた。このミニモジュールの中空糸外側にCD34陽性細胞を入れて、1週間培養したところ、総細胞数は100倍に増えたが、CD34陽性細胞の増幅率は1.5倍であった。
<比較例5>
ポリスチレン製プレートにデルタ1とフィブロネクチンの混合溶液(いずれも1mg/ml)を含むリン酸緩衝液を入れ、固相化(吸着)させた。この基材でCD34陽性細胞を1週間培養したところ、総細胞数は100倍に増えたが、CD34陽性細胞の増幅率は3倍であった。
<実施例3>
ポリエチレンイミン固定化ポリスルホン中空糸モジュールの中空糸内側にNaClを150mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)100mlにm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(ピアース社製)を27mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液を1ml添加した水溶液を0.5時間灌流し、反応させた(室温)。反応させた中空糸内部をリン酸緩衝液で洗浄した後、デルタ1(1mg/ml)を含むリン酸緩衝液10mlを中空糸内部に充填し。室温で4.5時間反応させた後、NaClを150mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)で洗浄することにより、デルタ1を中空糸内部に固定化したポリスルホン中空糸を作製した。次に、1mg/mlのヒト臍帯由来ヒアルロン酸(シグマ−アルドリッチ)を含むリン酸緩衝液10mlを中空糸内部に充填し、室温で30分固定化した後、リン酸緩衝液で洗浄することにより、デルタ1に加え、さらにヒアルロン酸を中空糸内部に固定化した。
このモジュールの中空糸内部にCD34陽性細胞を入れて、1週間培養したところ、総細胞数は150倍に増え、CD34陽性細胞は15倍に増えた。
<実施例4>
作製例6で得られたポリエチレンイミン固定化セルローススポンジにNaClを150mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)10mlにm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(ピアース社製)を27mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液を0.1ml添加し、0.5時間反応させた(室温)。反応させたスポンジをリン酸緩衝液で洗浄した後、デルタ1とI型コラーゲン(それぞれ1mg/ml)を含むリン酸緩衝液1mlをスポンジに添加し、室温で4.5時間反応させた後、NaClを150mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)で洗浄することにより、デルタ1およびI型コラーゲンを固定化したセルローススポンジを作製した。次に、1mg/mlのヘパラン硫酸(シグマ−アルドリッチ)を含むリン酸緩衝液1mlをスポンジに添加し、室温で30分固定化した後、リン酸緩衝液で洗浄することにより、デルタ1に加え、さらにヘパラン硫酸をスポンジ内部に固定化した。
このスポンジ内部にCD34陽性細胞を入れて、1週間培養したところ、総細胞数は200倍に増え、CD34陽性細胞は20倍に増えた。

Claims (12)

  1. 三次元構造を有する細胞培養のための基材であって、細胞膜上あるいは細胞外マトリックス上に存在する幹細胞および/または前駆細胞を制御する物質(幹細胞因子を除く)を含む2種以上の生理活性物質が該基材上に固定化されていることを特徴とする三次元細胞培養基材。
  2. 細胞膜上あるいは細胞外マトリックス上に存在する幹細胞および/または前駆細胞を制御する物質がノッチリガンドであることを特徴とする請求項1記載の三次元細胞培養基材。
  3. 生理活性物質がノッチリガンドと細胞外マトリックスおよび/またはマトリックス蛋白質および/または接着因子であることを特徴とする請求項2に記載の三次元細胞培養基材。
  4. 該基材が、中空糸膜、不織布、編み地、スポンジ、ビーズのいずれか、またはその組み合わせであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の三次元細胞培養基材。
  5. 該基材がセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびこれらの誘導体、並びにリン酸カルシウム系無機化合物からなる群より選択される1種類以上の物質を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の三次元細胞培養基材。
  6. 該基材に親水性高分子が含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の三次元細胞培養基材。
  7. 親水性高分子がポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、デキストラン硫酸、ポリアクリル酸、およびアルブミンからなる群より選択された1種類以上の高分子であることを特徴とする請求項6に記載の三次元細胞培養基材。
  8. 培養細胞が幹細胞および/または前駆細胞であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の三次元細胞培養基材。
  9. 培養細胞が造血幹細胞であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の三次元細胞培養基材。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の三次元細胞培養基材であって、該三次元細胞培養基材で得られた細胞が癌または自己免疫疾患または脳梗塞または脊髄損傷またはパーキンソン病またはアルツハイマー病または心筋梗塞または血管再生の治療に用いられる三次元細胞培養基材。
  11. 請求項1〜10に記載の三次元細胞培養基材を用いることを特徴とする細胞製剤の製造方法。
  12. 請求項11に記載の製造方法により製造された細胞製剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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