JP2004205437A - 摩耗判定システム、摩耗判定装置および摩耗判定プログラム - Google Patents

摩耗判定システム、摩耗判定装置および摩耗判定プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】摩耗部材の部分的な摩耗状態を判定するための技術を提供すること。
【解決手段】摩耗判定システム1において、摩耗部材であるタイヤ100が所定の厚さ以下まで摩耗した場合、摩耗した領域周辺に埋設された無線タグ10は破損または脱落したことより識別データを送信できなくなる。ここで、無線タグ10が送信すべき識別データは、無線タグ10自身の埋設される領域を識別可能なデータであるため、制御部40が受信できない識別データに対応する領域コードで示される領域については、この領域周辺におけるタイヤ100が所定の厚さ以下まで摩耗したことになる。このように、複数の無線タグ10それぞれからの識別データを受信したかどうかに基づいて、タイヤ100における領域毎の摩耗状態を容易に判定できる。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被接触部材との接触を繰り返すことによって摩耗する摩耗部材の摩耗状態を判定する摩耗判定システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、例えば、タイヤやブレーキライニングといった摩耗部材は、所定の状態まで摩耗した段階で交換しなければならないため、目視により摩耗状態をチェックすることが一般的に行われている。しかし、このような目視によるチェックは非常に煩雑であり、摩耗部材の形状・使用形態によっては摩耗状態をリアルタイムにチェックすることが困難である。例えば、摩耗部材がタイヤのような回転体である場合、回転しているタイヤの摩耗状態を目視でリアルタイムにチェックすることは不可能である。
【0003】
そこで、摩耗部材の摩耗状態を容易にチェックでき、かつ、摩耗部材の形状・使用形態に拘わらずリアルタイムにチェックすることができる技術が種々提案されている。
例えば、摩耗部材(タイヤのトレッド)中に情報の授受を行うトランスポンダを埋設し、摩耗部材が摩耗してトランスポンダが破損して応答がなくなったことを摩耗部材の摩耗として判定(検出)する、といった判定方法(摩耗状態検出方法)である(特許文献1参照)。
【0004】
また、摩耗部材(タイヤ)に埋設された光反射面に向けて光を照射すると共に、この反射面で反射した光を受光する受発光手段を備え、摩耗部材が摩耗して光反射面が外部に露出したときに受発光手段が光を受光し、このように光を受光したことを摩耗部材の摩耗として判定するように構成された装置(タイヤ摩耗警報装置)である(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−307981号公報
【特許文献2】
特開平11−170819号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した技術では、単に、摩耗部材に埋設された埋設物からの応答の有無を、摩耗部材が摩耗していることとして判定しているだけであるため、摩耗部材の部分的な摩耗状態までは判定できなかった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するために成されたものであり、その目的は、摩耗部材の部分的な摩耗状態を判定するための技術を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記問題を解決するため請求項1に記載の摩耗判定システムは、被接触部材との接触を繰り返すことによって摩耗する摩耗部材の摩耗状態を判定する摩耗判定システムであって、複数の通信手段と、判定手段とを備えている。この摩耗判定システムの通信手段は、それぞれが摩耗部材において被接触部材と接触する接触面に沿った異なる領域に、この領域周辺における摩耗部材が所定の厚さ以下まで摩耗した段階で少なくとも一部分が被接触部材に接触するように配設され、自身が配設される領域を識別可能な識別データを外部からの指令を受けて送信可能なものである。また、判定手段は、通信手段に対して識別データの送信を要求した後、この要求に応じた通信手段から送信された識別データを受信した状態を、この識別データで識別される領域周辺における摩耗部材が所定の厚さ以下までは摩耗していない状態であると判定する一方、識別データを受信しない状態を、この識別データで識別される領域周辺における摩耗部材が所定の厚さ以下まで摩耗し、被接触部材と接触した通信手段が破損または脱落した状態であると判定するものである。
【0009】
このように構成された摩耗判定システムによれば、摩耗部材が所定の厚さ以下まで摩耗した場合、摩耗した領域周辺に配設された通信手段は破損または脱落したことより識別データを送信できなくなる。ここで、通信手段が送信すべき識別データは、通信手段自身の配設される領域を識別可能なデータであるため、判定手段が受信できない識別データで識別される領域については、この領域周辺における摩耗部材が所定の厚さ以下まで摩耗したことになる。このように、複数の通信手段それぞれからの識別データを受信したかどうかに基づいて、摩耗部材の部分的な摩耗状態を容易に判定することができる。
【0010】
なお、上述した通信手段は、摩耗部材または摩耗部材周辺に配設されるものである。
また、識別データは、通信手段が配設される領域(以降、配設領域とする)を識別可能なデータであって、例えば、配設領域に対応づけられた内容を示すデータや、配設領域そのものを示すデータであってもよい。
【0011】
また、請求項2に記載の摩耗判定システムは、通信手段により送信される前記識別データを記録する記録手段を備え、判定手段は、通信手段から送信された識別データを受信した際、この識別データが記録手段に記録されている識別データである場合のみ、識別データに対する状態の判定を行う。
【0012】
このように構成された摩耗判定システムによれば、判定手段は、受信した識別データが記録手段に記録されている識別データでなければ、この識別データに基づく状態の判定を行わない。そのため、例えば、別の摩耗部材に配設されていた通信手段のように識別データとみなせるようなノイズを送信可能な異物が摩耗部材または摩耗部材周辺に付着して、外部から識別データとみなされるようなノイズを受信した場合であっても、このようなノイズが記録手段に記録されている識別データと一致するものでなければ識別データに基づく状態の判定が行われない。上述の識別データとみなせるようなノイズは、摩耗部材における領域を正確に特定できない異常なデータであることが想定されるため、このような異常なデータを識別データとして受信してしまうことは、判定手段による正常な判定を妨げてしまい、摩耗判定システムを誤動作させてしまう恐れがあるため好ましくない。よって、受信した識別データが記録手段に記録されている識別データでなければ、この識別データに基づく状態の判定を行わないように構成することは、異常なデータを識別データとして受信することがなくなるため、摩耗判定システムの誤動作を防止するためには好適である。
【0013】
また、請求項3に記載の摩耗判定システムは、要求指令手段を備えており、所定の要求条件が満たされた際に、要求指令手段が、複数の通信手段それぞれに対して識別データの送信を要求し、この要求に応じた通信手段から送信された識別データそれぞれを受信した後、受信した識別データそれぞれを記録手段に記録させる。
【0014】
このように構成された摩耗判定システムによれば、複数の通信手段それぞれから送信された識別データを記録手段に記録させることができる。
なお、上述の要求指令手段が、複数の通信手段それぞれに対して識別データの送信を要求する契機となる「所定の要求条件」としては、例えば、摩耗判定システムが起動したことを考えることができ、この場合、要求指令手段を、請求項4に記載のように、摩耗判定システムが起動した際に要求条件が満たされたと判定する、ように構成すればよい。
【0015】
このように構成された摩耗判定システムによれば、摩耗判定システムが起動した際に、要求指令手段により複数の通信手段それぞれに対して識別データの送信を要求することができる。
また、上述の要求指令手段が、識別データの送信を要求する契機となる「所定の要求条件」としては、外部から識別データの送信を要求するための要求指令信号を入力することを考えることもでき、この場合、要求指令手段を、請求項5に記載のように、外部から識別データの送信を要求するための要求指令信号を入力した際に要求条件が満たされたと判定する、ように構成すればよい。
【0016】
このように構成された摩耗判定システムによれば、外部から要求指令信号が入力された際に、要求指令手段により複数の通信手段それぞれに対して識別データの送信を要求することができる。
また、請求項6に記載の摩耗判定システムは、判定手段による判定結果を報知する報知手段を備えている。
【0017】
このように構成された摩耗判定システムによれば、利用者は、報知手段による報知内容によって、判定手段による判定結果を確認することができる。
なお、報知手段は、判定手段による判定結果を報知する手段であって、具体的には、判定手段による判定結果を示す文字や映像などを表示する表示装置、判定結果を示す音声を出力するスピーカなどにより構成すればよい。
【0018】
また、請求項7に記載の摩耗判定システムは、被接触部材である路面との接触を繰り返すことによって摩耗する摩耗部材であるタイヤの摩耗状態を判定する摩耗判定システムであって、通信手段はタイヤに埋設されている。
このように構成された摩耗判定システムによれば、タイヤの摩耗状態を判定することができる。
【0019】
さらに、この構成においては、請求項8に記載のように、通信手段を、タイヤの回転方向に沿って複数列並ぶようにタイヤに埋設して、判定手段が、複数列のうちいずれかの列における領域それぞれを識別可能な識別データが所定数以上受信されない状態を、該当する列周辺においてタイヤが偏摩耗した状態であると判定する、ように構成するとよい。
【0020】
このように構成された摩耗判定システムによれば、タイヤが偏摩耗した場合には、偏摩耗した状態になったと判定することができる。
また、請求項7の構成においては、請求項9に記載のように、通信手段を、タイヤにおいて路面と接触する接触面に沿って格子状に埋設して、判定手段が、隣接する所定数以上の範囲にわたる領域それぞれを認識可能な前記識別データが受信されない状態を、該当する領域周辺においてタイヤが剥離故障した状態であると判定する、ように構成するとよい。
【0021】
このように構成された摩耗判定システムによれば、タイヤが剥離故障した場合には、剥離故障した状態になったと判定することができる。
また、請求項10に記載の摩耗判定システムは、被接触部材である回転体との接触を繰り返すことによって摩耗する摩耗部材であるブレーキシューの摩耗状態を判定する摩耗判定システムであって、通信手段は、ブレーキシューに埋設またはブレーキシュー周辺に配設されている。
【0022】
このように構成された摩耗判定システムによれば、ブレーキシュー(具体的には、ブレーキシューの備えるライニング)の摩耗状態を判定することができる。さらに、この構成においては、請求項11に記載のように、通信手段を、回転体の回転方向に沿って複数列並ぶようにブレーキシューに埋設またはブレーキシュー周辺に配設して、判定手段が、複数列のうちいずれかの列における領域それぞれを識別可能な識別データが所定数以上受信されない状態を、該当する列周辺においてブレーキシューが偏摩耗した状態であると判定する、ように構成するとよい。
【0023】
このように構成された摩耗判定システムによれば、ブレーキシュー(具体的には、ブレーキシューの備えるライニング)が偏摩耗した場合には、偏摩耗した状態になったと判定することができる。
また、請求項10に記載の構成においては、請求項12のように、通信手段を、ブレーキシューにおいて回転体と接触する接触面に沿って格子状に埋設して、判定手段が、隣接する所定数以上の範囲にわたる領域それぞれを認識可能な識別データが受信されない状態を、該当する領域周辺においてブレーキシューが部分的に欠損した状態であると判定する、ように構成するとよい。
【0024】
このように構成された磨耗判定システムによれば、ブレーキシュー(具体的には、ブレーキシューの備えるライニング)が部分的に欠損した場合には、部分的に欠損した状態になったと判定することができる。
なお、上述した回転体とは、例えば、ブレーキドラムや車輪などのことである。
【0025】
また、請求項13に記載の摩耗判定システムは、被接触部材であるブレーキディスクとの接触を繰り返すことによって摩耗する摩耗部材であるブレーキパッドの摩耗状態を判定する摩耗判定システムであって、通信手段が、ブレーキパッドに埋設またはブレーキパッド周辺に配設されている。
【0026】
このように構成された摩耗判定システムによれば、ブレーキパッド(具体的には、ブレーキパッドの備えるライニング)の摩耗状態を判定することができる。さらに、この構成においては、請求項14に記載のように、通信手段を、ブレーキディスクの回転方向に沿って複数列並ぶようにブレーキパッドに埋設またはブレーキパッド周辺に配設して、判定手段が、複数列のうちいずれかの列における領域それぞれを識別可能な識別データが所定数以上受信されない状態を、該当する列周辺においてブレーキパッドが偏摩耗した状態であると判定する、ように構成するとよい。
【0027】
このように構成された摩耗判定システムによれば、ブレーキパッド(具体的には、ブレーキパッドの備えるライニング)が偏摩耗した場合には、偏摩耗した状態になったと判定することができる。
また、請求項13の構成においては、請求項15に記載のように、通信手段は、ブレーキパッドにおいてブレーキディスクと接触する接触面に沿って格子状に埋設され、判定手段が、隣接する所定数以上の範囲にわたる領域それぞれを認識可能な識別データが受信されない状態を、該当する領域周辺においてブレーキパッドが部分的に欠損した状態であると判定する、ように構成するとよい。
【0028】
このように構成された磨耗判定システムによれば、ブレーキディスク(具体的には、ブレーキディスクの備えるライニング)が部分的に欠損した場合には、部分的に欠損した状態になったと判定することができる。
また、請求項16に記載の摩耗判定システムは、被接触部材である電力供給用のトロリー線との接触を繰り返すことによって摩耗する摩耗部材であるパンタグラフのスリ板における摩耗状態を判定する摩耗判定システムであって、通信手段が、スリ板へ埋設またはスリ板周辺へ配設されている。
【0029】
このように構成された摩耗判定システムによれば、パンタグラフのスリ板の摩耗状態を判定することができる。
さらに、この構成においては、請求項17に記載のように、通信手段を、パンタグラフの移動方向に沿って複数列並ぶようにスリ板に埋設またはスリ板周辺に配設して、判定手段が、複数列のうちいずれかの列における領域それぞれを識別可能な識別データが所定数以上受信されない状態を、該当する列周辺においてスリ板が偏摩耗した状態であると判定する、ように構成してもよい。
【0030】
このように構成された摩耗判定システムによれば、スリ板が偏摩耗した場合には、偏摩耗した状態になったと判定することができる。
また、請求項16に記載の構成においては、請求項18に記載のように、通信手段を、スリ板においてトロリー線と接触する接触面に沿って格子状に埋設して、判定手段が、隣接する所定数以上の範囲にわたる領域それぞれを認識可能な識別データが受信されない状態を、該当する領域周辺においてスリ板が部分的に欠損した状態であると判定する、ように構成してもよい。
【0031】
このように構成された磨耗判定システムによれば、スリ板が部分的に欠損した場合には、部分的に欠損した状態になったと判定することができる。
また、請求項19に記載の摩耗判定装置は、請求項1から請求項18のいずれかに記載の判定手段を備えている。
【0032】
このように構成された摩耗判定装置は、請求項1から請求項18のいずれかに記載の摩耗判定システムの一部を構成することができるため、この摩耗判定装置を一部構成とした摩耗判定システムは、請求項1から請求項18のいずれかに記載の摩耗判定システムと同様の作用・効果を得ることができる。
【0033】
また、この構成においては、請求項20に記載のように、請求項2から請求項18のいずれかに記載の記録手段を備えてもよい。
このように構成された摩耗判定装置は、請求項2から請求項18のいずれかに記載の摩耗判定システムの一部を構成することができるため、この摩耗判定装置を一部構成とした摩耗判定システムは、請求項2から請求項18のいずれかに記載の摩耗判定システムと同様の作用・効果を得ることができる。
【0034】
また、この構成においては、請求項21に記載のように、請求項3から請求項18のいずれかに記載の要求指令手段を備えてもよい。
このように構成された摩耗判定装置は、請求項3から請求項18のいずれかに記載の摩耗判定システムの一部を構成することができるため、この摩耗判定装置を一部構成とした摩耗判定システムは、請求項3から請求項18のいずれかに記載の摩耗判定システムと同様の作用・効果を得ることができる。
【0035】
また、請求項22に記載の摩耗判定プログラムは、請求項1から請求項18のいずれかに記載の摩耗判定システムにおける判定手段として機能させるための各種手順を、コンピュータシステムに実行させるためのプログラムである。
この場合、コンピュータシステムが、請求項1から請求項18のいずれかに記載の摩耗判定システムの一部を構成することができるため、このコンピュータシステムを一部構成とした摩耗判定システムは、請求項1から請求項18のいずれかに記載の摩耗判定システムと同様の作用・効果を得ることができる。
【0036】
また、この摩耗判定プログラムを、請求項3から請求項18のいずれかに記載の要求指令手段として機能させるための各種手順を、コンピュータシステムに実行させるためのプログラムとしてもよい。この場合、コンピュータシステムが、請求項3から請求項18のいずれかに記載の摩耗判定システムの一部を構成することができるため、このコンピュータシステムを一部構成とした摩耗判定システムは、請求項3から請求項18のいずれかに記載の摩耗判定システムと同様の作用・効果を得ることができる。
【0037】
なお、上述した摩耗判定プログラムは、それぞれコンピュータシステムによる処理に適した命令の順番付けられた列からなるものであって、例えば、FD、CD−ROM、メモリーカードなどの記録媒体、インターネットなどの通信回線網を介して、摩耗判定装置自身、コンピュータシステム、または、これらを利用する利用者に提供されるものである。また、これらの摩耗判定プログラムを実行するコンピュータシステムとしては、例えば、摩耗判定システムを構成するコンピュータシステム、摩耗判定装置に内蔵されたコンピュータシステム、摩耗判定装置に無線または有線の通信路を介してデータ通信可能に接続されたコンピュータシステムなどを利用することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態について例を挙げて説明する。
[第1実施形態]
摩耗判定システム1は、路面との接触を繰り返すことによって摩耗するタイヤ100の摩耗状態を判定するシステムであって、図1に示すように、タイヤ100に埋設された複数の無線タグ(RFIDタグ;Radio Frequency Identification)10、無線タグ10それぞれとの間で無線通信を行うためのアンテナ部20、各種情報を表示する表示部30、摩耗判定システム1全体の動作を制御する制御部40などを備えている。
【0039】
無線タグ10は、それぞれ固有のID(identification)が割り当てられたものであって、図2(a)に示すように、タイヤ100の回転方向(図2(a)における矢印参照)に沿って複数列(本実施形態においては3列)並べられ、タイヤ100において路面と接触する接触面に沿って格子状になるように埋設されている。この無線タグ10は、自身が埋設された領域周辺におけるタイヤ100が所定の厚さ以下まで摩耗した際には、少なくとも一部分がタイヤ100から露出して路面へ接触する状態になる。
【0040】
制御部40は、摩耗判定システム1の各構成要素との間で各種データの入出力を行うだけでなく、タイヤ100が備えられている車両の走行速度を検出する車速センサ200から走行速度を示す車速データを常時入力するように構成されている。
【0041】
また、この制御部40には、内蔵するメモリ内に対応テーブルがあらかじめ記録されている。この対応テーブルは、図3に示すように、複数の無線タグ10それぞれに割り当てられたIDに、複数の無線タグ10それぞれが埋設された領域を示す領域コード、および、後述する摩耗判定処理(図4)において利用される受信フラグが対応づけられた状態で登録されたデータテーブルである。なお、この対応テーブルにおける領域コードは、タイヤ100の回転方向に沿った列を示す列番号(AからC)と、列における位置を示す位置番号(1からn)とを連結してなるものである(図2(b)参照)。
○制御部40による摩耗判定処理
以下に、制御部40により実行される摩耗判定処理の処理手順を図4に基づいて説明する。この摩耗判定処理は、車速センサ200から入力された車速データで示される走行速度が所定の速度(本実施形態においては、5km/h)を超えている期間中、一定時間(本実施形態においては、速度が5km/h以上100km/h未満であれば30秒、100km/h以上であれば10秒)周期で繰り返し実行される。
【0042】
まず、対応テーブルの受信フラグを初期化する(s110)。この処理では、対応テーブルに登録されている全ての受信フラグに「0」をセットする。
次に、各無線タグ10に対するIDの送信要求を開始する(s120)。この処理では、アンテナ部20を介して、IDの送信を要求するための要求信号の送信(要求信号に相当する電波の放射)を開始する。この要求信号を受信した無線タグ10からは、無線タグ10自身に割り当てられたIDが送信されてくる。
【0043】
次に、タイマーをスタートする(s130)。
次に、タイマーのカウント値t1が所定の値t2以上(t2≦t1)となったかどうかをチェックする(s140)。この「所定の値t2」は、車両が5km/hで走行しているときに、タイヤ100が一回転するのに要する時間としてあらかじめ定められた値である。
【0044】
このs140の処理で、カウント値t1が所定の値t2以上となっていなければ(s140:NO)、対応テーブルの受信フラグのうち、s110の処理以降に受信したIDに対応する受信フラグに順次「1」をセットする(s150)。
このs150の処理を終えた後、s140の処理へ戻る。
【0045】
こうして、s140からs150の処理を繰り返し行った後、s140の処理で、カウント値t1が所定の値t2以上となっていれば(s140:YES)、タイマーをストップおよびリセットする(s160)。
次に、各無線タグ10に対する識別データの送信要求を終了する(s170)。この処理では、要求信号の送信(要求信号に相当する電波の放射)を終了する。
【0046】
次に、対応テーブルに「0」のセットされた受信フラグがあるかどうかをチェックする(s180)。ここで、「0」のセットされた受信フラグは、s110の処理以降に受信されなかったIDに対応する受信フラグである。このようにIDが受信されない状態は、このIDに対応する領域コードで示される領域周辺において、タイヤ100が所定の厚さ以下まで摩耗し、路面と接触した無線タグ10が破損または脱落したことによりIDを送信できなかったことを示している。そのため、このs190の処理では、「0」のセットされた受信フラグをチェックすることによって、タイヤ100において所定の厚さ以下まで摩耗した領域が存在しているかどうかを判定していることになる。
【0047】
このs180の処理で、対応テーブルに「0」のセットされた受信フラグがある場合(s180:YES)、この受信フラグに対応する領域コードで示される領域周辺におけるタイヤ100が所定の厚さ以下まで摩耗した旨を報知する(s190)。この処理では、該当する領域周辺におけるタイヤ100が所定の厚さ以下まで摩耗した旨のメッセージを示す画像を表示部に表示させることによって報知を行う。
【0048】
なお、この処理では、「0」のセットされた受信フラグに対応する領域コードの構成によっては以下に示すようなメッセージを示す画像を表示部30に表示させる。例えば、特定の列番号である領域コードの80%以上が「0」のセットされた受信フラグに対応する領域コードとなっていて、その他の列番号である領域コードの80%以上が「1」のセットされた受信フラグに対応する領域コードとなっている状態は、特定の列番号に対応する列周辺におけるタイヤ100が偏って摩耗した状態、つまり、偏摩耗していることを示している。そこで、このような状態のときには、タイヤ100における特定の列周辺が偏摩耗していると判定し、該当する列周辺においてタイヤ100が偏摩耗している旨をメッセージの画像により報知する。
【0049】
また、隣接する複数(例えば、4つ以上)の領域に対応する領域コードが全て「0」のセットされた受信フラグに対応する領域コードとなっていて、その他の領域コードの80%以上が「1」のセットされた受信フラグに対応する領域コードとなっている状態は、この領域コードに対応する領域周辺のみが大きく摩耗している状態、つまり、剥離故障(または、部分的に欠損)していることを示している。そこで、このような状態のときには、タイヤ100が剥離故障(部分的に欠損)していると判定し、該当する領域周辺においてタイヤ100が剥離故障(部分的に欠損)している旨をメッセージの画像により報知する。
【0050】
こうして、s190の処理を終えた後、または、s180の処理で対応テーブルに「0」のセットされた受信フラグがない場合(s180:NO)、本摩耗判定処理を終了する。
[第1実施形態の効果]
このように構成された摩耗判定システム1によれば、タイヤ100が所定の厚さ以下まで摩耗した場合、摩耗した領域周辺に埋設された無線タグ10は破損または脱落したことより識別データを送信できなくなる。ここで、無線タグ10が送信すべき識別データは、無線タグ10自身の埋設される領域を識別可能なデータであるため、制御部40が受信できない識別データ(「0」がセットされた受信フラグに対応する識別データ)に対応する領域コードで示される領域については、この領域周辺におけるタイヤ100が所定の厚さ以下まで摩耗したことになる。このように、図4の摩耗判定処理によって、複数の無線タグ10それぞれからの識別データを受信したかどうかに基づいて、タイヤ100における領域毎の摩耗状態を容易に判定することができる。
【0051】
また、図4におけるs150の処理で対応テーブルに登録されている受信フラグに「1」がセットされ、s180の処理で対応テーブルに登録されている受信フラグにセットされている値がチェックされる。このように、s180の処理では、対応テーブルに登録されている受信フラグに基づいてのみ摩耗状態の判定を行っている。そのため、例えば、別のタイヤに埋設されていた無線タグのようにIDとみなせるようなノイズを送信可能な異物がタイヤ100またはタイヤ100周辺に付着し、外部からIDとみなせるようなノイズを受信した場合であっても、このようなノイズが対応テーブルに登録されているIDと一致するものでなければIDに基づく摩耗状態の判定は行われない。上述のようにIDとみなせるようなノイズは、タイヤ100における領域を正確に特定できない異常なデータであることが想定されるため、このような異常なデータをIDとして受信してしまうことは、制御部40による摩耗状態の正常な判定が妨げられ、摩耗判定システム1を誤動作させてしまう恐れがあるため好ましくない。よって、対応テーブルに登録されている受信フラグに基づいてのみ摩耗状態の判定を行うように構成することは、異常なデータをIDとして受信してしまうことがなくなるため、摩耗判定システム1の誤動作を防止するためには好適である。
【0052】
また、図4におけるs190の処理で、タイヤ100が摩耗した旨を表示部30に画像を表示することにより報知することができるため、利用者は、表示部30に表示された内容に基づいて、タイヤ100が摩耗したことを確認することができる。
【0053】
また、タイヤ100が偏摩耗した状態となった場合には、図4におけるs180およびs190の処理において偏摩耗した状態になったと判定および報知することができる。
また、タイヤ100が剥離故障(部分的に欠損)した状態となった場合には、図4におけるs180およびs190の処理で、剥離故障(部分的に欠損)した状態になったと判定および報知することができる。
【0054】
[第2実施形態]
摩耗判定システム2は、第1実施形態における摩耗判定システム1と同様の構成であって、一部構成および処理内容が異なっているだけであるため、この相違点についてのみ詳述する。
【0055】
○制御部40による対応テーブル生成処理
以下に、制御部40により実行される対応テーブル生成処理の処理手順を図5に基づいて説明する。この対応テーブル生成処理は、摩耗判定システム2が起動(電源ON)された後、内蔵するメモリ内に対応テーブルが記録されておらず、かつ、車速センサ200から入力された車速データで示される走行速度が初めに所定の速度を超えたときに開始される。なお、対応テーブル生成処理が実行されれているとき摩耗判定処理(図4)は実行されない。
【0056】
まず、各無線タグ10に対するIDの送信要求を開始する(s210)。この処理は、図4におけるs120の処理と同様の処理である。
次に、タイマーをスタートする(s220)。
次に、タイマーのカウント値t1が所定の値t2以上(t2≦t1)となったかどうかをチェックする(s230)。この処理は、図4におけるs140の処理と同様の処理である。
【0057】
このs230の処理で、カウント値t1が所定の値t2以上となっていなければ(s230:NO)、s210の処理以降、各無線タグ10から送信されてくるIDを内蔵のメモリに順次記録する(s240)。
このs240の処理を終えた後、s230の処理へ戻る。
【0058】
こうして、s230からs240の処理を繰り返し行った後、s230の処理で、カウント値t1が所定の値t2以上となっていれば(s230:YES)、タイマーをストップおよびリセットする(s250)。
そして、s240の処理でメモリに記録されたIDに基づいて、対応テーブルを生成・記録する(s260)。本実施形態において、IDは、無線タグ10の埋設される領域を示す領域コードが含まれるような規則で割り当てられている(図3参照;識別コード「001−A1」には末尾に領域コード「A1」が含まれている)。そのため、このs260の処理では、上述の規則に基づいて、メモリに記録されているIDに領域コードと、初期値として「0」がセットされた受信フラグとを対応づけたデータテーブルを、対応テーブルとして生成してメモリに記録し直す。
【0059】
[第2実施形態の効果]
このように構成された摩耗判定システム2によれば、第1実施形態と同様の効果の他、図5におけるs260の処理で対応テーブルを生成することができる。そのため、制御部40内蔵のメモリに対応テーブルが記録されていない場合であっても、図5の対応テーブル生成処理により対応テーブルを生成して記録させることができる。
【0060】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されず、このほかにも様々な形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態においては、図4,図5における各処理が、制御部40からなるコンピュータシステムにより実行されるように構成されたものを例示した。しかし、これら各処理の一部または全部が、制御部40に有線・無線の信号伝送路で接続された別のコンピュータシステムにより実行されるように構成してもよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、図4,図5の各処理が、制御部40内蔵のメモリに記憶されている処理手順に従って実行されるように構成されたものを例示した。しかし、制御部40が、例えば、FDやメモリーカードなどの記録媒体との間でデータを入出力可能に構成されている場合には、上述の処理手順が記録されている記録媒体から処理手順を読み出して、上記各処理が実行されるように構成してもよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、図4におけるs190の処理で、表示部30に画像を表示させることにより報知を行うように構成されたものを例示した。しかし、摩耗判定システム1,2に設けたスピーカから、タイヤ100が摩耗した旨のメッセージを出力することで報知を行うように構成してもよい。
【0063】
また、本実施形態においては、図4におけるs140の処理で、タイマーのカウント値t1と比較するための値t2が、車両が5km/hで走行しているときにタイヤ100が一回転するのに要する時間であるものを例示した。しかし、タイマーのカウント値t1と比較するための値t2は、あらかじめ定められた任意の時間(例えば、1s)としてもよい。
【0064】
また、上記第1,第2実施形態においては、本発明の構成を、1のタイヤ100に対して適用した構成を例示した。しかし、複数のタイヤそれぞれに対して適用することも当然可能である。
また、上記実施形態においては、タイヤ100またはタイヤ100周辺に配設される部材として無線タグ10を採用したものを例示した。しかし、このような部材は、無線通信でIDを送受信することができればよく、無線タグ10以外の部材、例えば、ICチップ、ICカード、トランスポンダなどを採用してもよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、本発明の構成をタイヤ100の摩耗状態を判定するために適用したものを例示した。しかし、本発明は、タイヤ100以外の摩耗状態を判定する構成に適用することも考えられる。例えば、ドラム式のブレーキシステムにおいて、ブレーキドラムとの接触を繰り返すことにより摩耗するブレーキシュー(具体的には、ブレーキシューの備えるライニング)の摩耗状態を判定する構成に適用することが考えられる。具体的には、無線タグ10を、ブレーキシューにおいてブレーキドラムの回転方向に沿って複数列並べ、ブレーキドラムと接触する接触面に沿って格子状になるようにブレーキシューへ埋設(またはブレーキシュー周辺に配設)すればよい。このように埋設された無線タグ10は、自身が埋設(または配設)された領域周辺におけるブレーキシューが所定の厚さ以下まで摩耗した際には、少なくとも一部分がブレーキシューから露出(突出)してブレーキドラムへ接触する状態になる。そして、第1,第2実施形態の記載のうち、図4のs120の処理における「所定の値t2」を、車両が5km/hで走行しているときにブレーキドラムが一回転するのに要する時間としてあらかじめ定められた値とし、これ以外の記載のうちタイヤ100との記載をブレーキシューと読み替え、路面との記載をブレーキドラムと読み替えるものとする。このように構成された摩耗判定システムによれば、ドラム式のブレーキシステムにおいても第1,第2実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、ここでは、本発明の構成は、ドラム式のブレーキシステムの他、ブレーキシューを利用した他のブレーキシステムにも適用することができる。
【0066】
また、本発明は、タイヤ100以外の摩耗状態を判定する構成として、例えば、図6に示すように、列車の台車300に備えられたディスク式のブレーキシステムにおいて、ブレーキディスク310との接触を繰り返すことにより摩耗するブレーキパッド(具体的には、ブレーキパッドの備えるライニング)320の摩耗状態を判定する構成に適用することが考えられる。具体的には、無線タグ10を、ブレーキパッド320においてブレーキディスク310の回転方向に沿って複数列並べ、ブレーキディスク310と接触する接触面に沿って格子状になるようにブレーキパッド320へ埋設(または、ブレーキパッド320周辺に配設)すればよい。このように埋設(または、配設)された無線タグ10は、自身が埋設(または、配設)された領域周辺におけるブレーキパッド320が所定の厚さ以下まで摩耗した際には、少なくとも一部分がブレーキパッド320から露出(突出)してブレーキディスク310へ接触する状態になる。そして、第1,第2実施形態の記載のうち、図4のs120の処理における「所定の値t2」を、車両が5km/hで走行しているときにブレーキディスク310が一回転するのに要する時間としてあらかじめ定められた値とし、これ以外の記載のうちタイヤ100との記載をブレーキパッド320と読み替え、路面との記載をブレーキディスク310と読み替えるものとする。このように構成された摩耗判定システムによれば、ディスク式のブレーキシステムにおいても第1,第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
特に、列車の台車300は、多くのブレーキディスク310を備えているため、これらブレーキディスク310からなるブレーキシステムに本発明の構成を採用することは、ブレーキディスク310それぞれについて領域毎の摩耗状態を容易に判定できるようになり、ブレーキシステムのメンテナンスに要する作業の手間を大幅に低減させることができるため好適である。
【0068】
また、本発明は、タイヤ100以外の摩耗状態を判定する構成として、例えば、図7に示すように、列車に備えられたパンタグラフ400において、電力供給用のトロリー線との接触を繰り返すことにより摩耗するスリ板410の摩耗状態を判定する構成に適用することが考えられる。具体的には、無線タグ10を、スリ板410において、パンタグラフ400の移動方向に沿って複数列並ぶようにスリ板410に埋設(または、スリ板410周辺に配設)すればよい。このように埋設(または配設)された無線タグ10は、自身が埋設(または配設)された領域周辺におけるスリ板410が所定の厚さ以下まで摩耗した際には、少なくとも一部分がスリ板410から突出してトロリー線へ接触する状態になる。そして、第1,第2実施形態の記載のうち、図4のs120の処理における「所定の値t2」を、トロリー線の一部分がスリ板410に接触してから離れるのに要する時間としてあらかじめ定められた値とし、これ以外の記載のうちタイヤ100との記載をスリ板410と読み替え、路面との記載をトロリー線と読み替えるものとする。このように構成された摩耗判定システムによれば、パンタグラフ400においても第1,第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
特に、列車のパンタグラフ400は、従来、目視やレーザ計などによりスリ板の摩耗状態を判定したため、車両の運行前または運行後でなければ摩耗状態を判定することができなかったが、パンタグラフ400に本発明の構成を採用することによって、スリ板410について領域毎の摩耗状態を運行中であっても容易に判定できるようになり、パンタグラフのメンテナンスに要する作業の手間を大幅に低減させることができるため好適である。
【0070】
なお、上述のように、本発明の構成を摩耗部材としてブレーキシュー、ブレーキパッド、パンタグラフの摩耗状態を判定するために適用する場合には、図4におけるs190の処理において、特定の位置番号である領域コードの80%以上が「0」のセットされた受信フラグに対応する領域コードとなっていて、その他の位置番号である領域コードの80%以上が「1」のセットされた受信フラグに対応する領域コードとなっている状態を、特定の位置番号に対応する位置(以降、行とする)周辺における摩耗部材が偏って摩耗した状態、つまり、偏摩耗していると判定し、該当する行周辺において摩耗部材が偏摩耗している旨をメッセージの画像により報知するようにしてもよい。このように構成すれば、行周辺におけるブレーキシューが偏摩耗した状態となった場合には、図4におけるs180およびs190の処理において偏摩耗した状態になったと判定および報知することができる。
【0071】
また、上記の記載においては、摩耗部材または摩耗部材周辺に配設される部材として無線通信でIDを送受信する無線タグ10を採用したものを例示した。しかし、摩耗部材が制御部40に対して大きく変位しない部材、例えば、上述のブレーキシュー、ブレーキパッド320、スリ板410などである場合には、有線通信でIDを送信する部材を採用してもよい。
【0072】
また、上記第2実施形態においては、図5の対応テーブル生成処理を開始する契機となる条件が、「制御部40内蔵のメモリに対応テーブルが記憶されておらず、かつ、車両の走行速度が初めて所定の速度を超えたとき」であるものを例示した。しかし、対応テーブル生成処理を開始する契機となる条件は、「摩耗判定システム2に設けた操作部により所定の操作(例えば、処理開始用のスイッチを押下する操作など)が行われたこと」としてもよい。この場合、利用者が任意のタイミングで対応テーブル生成処理を開始させることができる。そのため、例えば、車両におけるタイヤ100を交換して、各無線タグ10のIDが替わってしまった場合であっても、このように替わったIDが登録された対応テーブルを生成してメモリに記録することができる。
【0073】
また、対応テーブル生成処理を開始する契機となる条件は、「摩耗判定システム2が起動(電源ON)したこと」としてもよい。このように構成すれば、摩耗判定システム2が起動した際に、図5の対応テーブル生成処理を開始することができる。
【0074】
また、対応テーブル生成処理を開始する契機となる条件は、「外部から対応テーブル生成処理の開始を要求するための要求指令信号を入力すること」としてもよい。このように構成すれば、外部から要求指令信号が入力された際に、図5の対応テーブル生成処理を開始することができる。
【0075】
また、上記第2実施形態においては、図5におけるs260の処理で、制御部40がIDの割り当て規則に従って対応テーブルを自動生成するように構成されたものを例示した。しかし、無線タグ10が埋設された領域と、無線タグ10に割り当てられたIDとの対応関係が利用者側で把握できる場合には、s260の処理において、摩耗判定システム2に設けた操作部の操作により対応テーブルを利用者に手動で生成させるように構成してもよい。
【0076】
[本発明との対応関係]
以上説明した実施形態において、無線タグ10は本発明における通信手段であって、制御部40内蔵のメモリは本発明における記録手段である。
また、アンテナ部20,表示部30および制御部40からなる装置は本発明における摩耗判定装置である。
【0077】
また、各無線タグ10に割り当てられているIDは本発明における識別データである。
また、図4におけるs180,s190の処理は本発明における判定手段であり、s190の処理は本発明における報知手段である。
【0078】
また、図5の対応テーブル生成処理は本発明における要求指令手段である。
【図面の簡単な説明】
【図1】摩耗判定システムの構成を示すブロック図
【図2】タイヤに埋設された無線タグの配置を示す図
【図3】対応テーブルのデータ構成を示す図
【図4】摩耗判定処理の処理手順を示すフローチャート
【図5】対応テーブル生成処理の処理手順を示すフローチャート
【図6】別の実施形態における列車の台車を示す図
【図7】別の実施形態における列車のパンタグラフを示す図
【符号の説明】
1,2・・・摩耗判定システム、10・・・無線タグ、20・・・アンテナ部、30・・・表示部、40・・・制御部。

Claims (22)

  1. 被接触部材との接触を繰り返すことによって摩耗する摩耗部材の摩耗状態を判定する摩耗判定システムであって、
    それぞれが前記摩耗部材において被接触部材と接触する接触面に沿った異なる領域に、該領域周辺における前記摩耗部材が所定の厚さ以下まで摩耗した段階で少なくとも一部分が被接触部材に接触するように配設され、自身が配設される領域を識別可能な識別データを、外部からの指令を受けて送信可能な複数の通信手段と、
    該通信手段に対して前記識別データの送信を要求した後、該要求に応じた前記通信手段から送信された前記識別データを受信した状態を、該識別データで識別される領域周辺における前記摩耗部材が所定の厚さ以下までは摩耗していない状態であると判定する一方、前記識別データを受信しない状態を、該識別データで識別される領域周辺における前記摩耗部材が所定の厚さ以下まで摩耗し、被接触部材と接触した前記通信手段が破損または脱落した状態であると判定する判定手段と、を備えている
    ことを特徴とする摩耗判定システム。
  2. 前記通信手段により送信される前記識別データを記録する記録手段を備え、
    前記判定手段は、前記通信手段から送信された前記識別データを受信した際、該識別データが前記記録手段に記録されている識別データである場合のみ、該識別データに対する状態の判定を行う
    ことを特徴とする請求項1に記載の摩耗判定システム。
  3. 所定の要求条件が満たされた際に、前記複数の通信手段それぞれに対して前記識別データの送信を要求し、該要求に応じた前記通信手段から送信された前記識別データそれぞれを受信した後、該受信した前記識別データそれぞれを前記記録手段に記録させる要求指令手段を備えている
    ことを特徴とする請求項1に記載の摩耗判定システム。
  4. 前記要求指令手段は、当該摩耗判定システムが起動した際に、前記要求条件が満たされたと判定する
    ことを特徴とする請求項3に記載の摩耗判定システム。
  5. 前記要求指令手段は、外部から前記識別データの送信を要求するための要求指令信号を入力した際に、前記要求条件が満たされたと判定する
    ことを特徴とする請求項3に記載の摩耗判定システム。
  6. 前記判定手段による判定結果を報知する報知手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の摩耗判定システム。
  7. 被接触部材である路面との接触を繰り返すことによって摩耗する摩耗部材であるタイヤの摩耗状態を判定する摩耗判定システムであって、
    前記通信手段は、タイヤに埋設されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の摩耗判定システム。
  8. 前記通信手段は、タイヤの回転方向に沿って複数列並ぶようにタイヤへ埋設され、
    前記判定手段は、前記複数列のうちいずれかの列における領域それぞれを識別可能な前記識別データが所定数以上受信されない状態を、該当する列周辺においてタイヤが偏摩耗した状態であると判定する
    ことを特徴とする請求項7に記載の摩耗判定システム。
  9. 前記通信手段は、タイヤにおいて路面と接触する接触面に沿って格子状に埋設され、
    前記判定手段は、隣接する所定数以上の範囲にわたる領域それぞれを認識可能な前記識別データが受信されない状態を、該当する領域周辺においてタイヤが剥離故障した状態であると判定する
    ことを特徴とする請求項7に記載の摩耗判定システム。
  10. 被接触部材である回転体との接触を繰り返すことによって摩耗する摩耗部材であるブレーキシューの摩耗状態を判定する摩耗判定システムであって、
    前記通信手段は、ブレーキシューに埋設またはブレーキシュー周辺に配設されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の摩耗判定システム。
  11. 前記通信手段は、回転体の回転方向に沿って複数列並ぶようにブレーキシューに埋設またはブレーキシュー周辺に配設され、
    前記判定手段は、前記複数列のうちいずれかの列における領域それぞれを識別可能な前記識別データが所定数以上受信されない状態を、該当する列周辺においてブレーキシューが偏摩耗した状態であると判定する
    ことを特徴とする請求項10に記載の摩耗判定システム。
  12. 前記通信手段は、ブレーキシューにおいて回転体と接触する接触面に沿って格子状に埋設され、
    前記判定手段は、隣接する所定数以上の範囲にわたる領域それぞれを認識可能な前記識別データが受信されない状態を、該当する領域周辺においてブレーキシューが部分的に欠損した状態であると判定する
    ことを特徴とする請求項10に記載の磨耗判定システム。
  13. 被接触部材であるブレーキディスクとの接触を繰り返すことによって摩耗する摩耗部材であるブレーキパッドの摩耗状態を判定する摩耗判定システムであって、
    前記通信手段は、ブレーキパッドに埋設またはブレーキパッド周辺に配設されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の摩耗判定システム。
  14. 前記通信手段は、ブレーキディスクの回転方向に沿って複数列並ぶようにブレーキパッドに埋設またはブレーキパッド周辺に配設され、
    前記判定手段は、前記複数列のうちいずれかの列における領域それぞれを識別可能な前記識別データが所定数以上受信されない状態を、該当する列周辺においてブレーキパッドが偏摩耗した状態であると判定する
    ことを特徴とする請求項13に記載の摩耗判定システム。
  15. 前記通信手段は、ブレーキパッドにおいてブレーキディスクと接触する接触面に沿って格子状に埋設され、
    前記判定手段は、隣接する所定数以上の範囲にわたる領域それぞれを認識可能な前記識別データが受信されない状態を、該当する領域周辺においてブレーキパッドが部分的に欠損した状態であると判定する
    ことを特徴とする請求項13に記載の磨耗判定システム。
  16. 被接触部材である電力供給用のトロリー線との接触を繰り返すことによって摩耗する摩耗部材であるパンタグラフのスリ板における摩耗状態を判定する摩耗判定システムであって、
    前記通信手段は、スリ板へ埋設またはスリ板周辺へ配設されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の摩耗判定システム。
  17. 前記通信手段は、パンタグラフの移動方向に沿って複数列並ぶようにスリ板に埋設またはスリ板周辺に配設され、
    前記判定手段は、前記複数列のうちいずれかの列における領域それぞれを識別可能な前記識別データが所定数以上受信されない状態を、該当する列周辺においてスリ板が偏摩耗した状態であると判定する
    ことを特徴とする請求項16に記載の摩耗判定システム。
  18. 前記通信手段は、スリ板においてトロリー線と接触する接触面に沿って格子状に埋設され、
    前記判定手段は、隣接する所定数以上の範囲にわたる領域それぞれを認識可能な前記識別データが受信されない状態を、該当する領域周辺においてスリ板が部分的に欠損した状態であると判定する
    ことを特徴とする請求項16に記載の磨耗判定システム。
  19. 請求項1から請求項18のいずれかに記載の判定手段を備えている
    ことを特徴とする摩耗判定装置。
  20. 請求項2から請求項18のいずれかに記載の記録手段を備えている
    ことを特徴とする請求項19に記載の摩耗判定装置。
  21. 請求項3から請求項18のいずれかに記載の要求指令手段を備えている
    このように構成された請求項20に記載の摩耗判定装置。
  22. 請求項1から請求項18のいずれかに記載の摩耗判定システムにおける判定手段として機能させるための各種手順を、コンピュータシステムに実行させるための摩耗判定プログラム。
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