JP2004203939A - 透明導電膜形成用塗料と透明導電膜及びそれを備えた表示装置 - Google Patents

透明導電膜形成用塗料と透明導電膜及びそれを備えた表示装置 Download PDF

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秀樹 温井
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洋介 竹田
Ryosuke Nakamura
亮輔 中村
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Abstract

【課題】地球上に多く存在し、価格も安価である卑金属を用い、透明性、導電性、帯電防止性、電磁波遮蔽性に優れているばかりでなく、耐塩水性、耐酸性、耐酸化性、耐紫外線性等の耐環境性が著しく優れたことで実用性が向上した膜を形成するための透明導電膜形成用塗料、前記特性に優れ、あるいは前記特性に加えて反射防止効果にも優れた透明導電膜、この透明導電膜を備えた表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の透明導電膜形成用塗料は、平均粒径が2〜200nmの卑金属硫化物微粒子を含有していることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明導電膜形成用塗料と透明導電膜及びそれを備えた表示装置に関し、更に詳しくは、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、陰極線管(CRT)等の各種表示装置の表示面、建造物等の窓ガラス、自動車のフロントガラス等の各種窓材等に好適に用いられ、透明性、導電性、帯電防止性、電磁波遮蔽性に優れているばかりでなく、耐塩水性、耐酸性、耐酸化性、耐紫外線性等の耐環境性が著しく優れたことで実用性が向上した膜を形成するための透明導電膜形成用塗料、前記特性に優れ、あるいは前記特性に加えて反射防止効果にも優れた透明導電膜、この透明導電膜を備えた表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の各種平面ディスプレイ、あるいは陰極線管(CRT)等においては、そのフェイスパネル面(表示面)に発生する静電気により埃が付着して視認性が低下する他、電磁波を放射して周囲の機器等に悪影響を及ぼす虞がある。
【0003】
そこで、帯電防止、電磁波遮蔽および反射防止を目的として、フェイスパネル面に透明導電性被膜を成膜する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この透明導電性被膜は、平均粒径2〜200nmの金属微粒子からなる透明導電性の微粒子層と、この微粒子層の上層に形成されかつこの微粒子層より屈折率の低い透明被膜とからなる2層構造の被膜である。
この金属微粒子としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)等の貴金属微粒子が用いられている。
【0004】
これらの貴金属微粒子の中でも、銀微粒子は、塩酸、塩水等により腐食され易く、耐塩水性及び耐酸性に劣るため、銀微粒子の表面を銀イオウ化合物で被覆した表面被覆銀微粒子を用いた透明導電性被膜が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、銀微粒子からなる透明導電膜の上に硫化物を含む透明被膜を形成した2層構造の透明導電性被膜も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−77832号公報
【特許文献2】
特開平10−204336号公報
【特許文献3】
特開平10−246803号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の透明導電性被膜においては、実際に使用される金属微粒子は、化学的に安定である金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)等の貴金属微粒子であり、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の卑金属微粒子は、実際には使用されていない。その理由は、卑金属微粒子が化学的安定性に劣り、しかもイオン化傾向が大きいために、容易に酸化され易く、膜の耐久性も低下し易く、透明導電膜に用いた場合、導電性の著しい低下がおこるからである。
このように、地球上に多く存在し、価格も安価である卑金属を用いた透明導電膜は、これまでに提案されてこなかったというのが現実である。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、地球上に多く存在し、価格も安価である卑金属を用い、透明性、導電性、帯電防止性、電磁波遮蔽性に優れているばかりでなく、耐塩水性、耐酸性、耐酸化性、耐紫外線性等の耐環境性が著しく優れたことで実用性が向上した膜を形成するための透明導電膜形成用塗料、前記特性に優れ、あるいは前記特性に加えて反射防止効果にも優れた透明導電膜、この透明導電膜を備えた表示装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は次の様な透明導電膜形成用塗料と透明導電膜及びそれを備えた表示装置を採用した。
すなわち、本発明の透明導電膜形成用塗料は、平均粒径が2〜200nmの卑金属硫化物微粒子を含有してなることを特徴とする。
【0009】
この透明導電膜形成用塗料では、平均粒径が2〜200nmの卑金属硫化物微粒子を含有したことにより、透明性、導電性、帯電防止性、電磁波遮蔽性に優れているのはもちろんのこと、耐塩水性、耐酸性、耐酸化性、耐紫外線性等の耐環境性に著しく優れた透明導電膜が得られる。
また、地球上に多く存在し、価格も安価である卑金属を用いたことにより、透明導電膜形成用塗料の製造コストが低減する。
【0010】
この透明導電膜形成用塗料においては、前記卑金属としては、銅またはニッケルが好ましい。
前記卑金属硫化物微粒子は、貴金属元素を含有していることが好ましい。
前記貴金属元素は、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の群から選択された1種または2種以上であることが好ましい。
前記貴金属元素の前記卑金属硫化物微粒子中の全金属元素に対する割合は30重量%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の透明導電膜は、平均粒径が2〜200nmの卑金属硫化物微粒子を含有してなる透明導電層を備えたことを特徴とする。
この透明導電膜では、平均粒径が2〜200nmの卑金属硫化物微粒子を含有する透明導電層を備えたことにより、透明導電膜の透明性、導電性、帯電防止性、電磁波遮蔽性に優れているのはもちろんのこと、耐塩水性、耐酸性、耐酸化性、耐紫外線性等の耐環境性についても著しく優れたものとなる。
また、地球上に多く存在し、価格も安価である卑金属を用いたことにより、透明導電膜の製造コストが低減する。
【0012】
この透明導電膜においては、前記卑金属としては、銅またはニッケルが好ましい。
前記卑金属硫化物微粒子は、貴金属元素を含有していることが好ましい。
前記貴金属元素は、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の群から選択された1種または2種以上であることが好ましい。
前記貴金属元素の前記卑金属硫化物微粒子中の全金属元素に対する割合は30重量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の透明導電膜では、前記透明導電層のいずれか一方の主面または双方の主面に、前記透明導電層の屈折率とは異なる屈折率を有する透明層を形成していることが好ましい。
【0014】
この透明導電膜では、前記透明導電層の一方の主面または双方の主面に、前記透明導電層の屈折率とは異なる屈折率を有する透明層を形成したことにより、透明導電膜の反射性能が低下する。これにより、反射防止効果に優れた(低反射性の)透明導電膜が得られる。
【0015】
本発明の表示装置は、本発明の透明導電膜が表示面に形成されていることを特徴とする。
この表示装置では、その表示面に本発明の透明導電膜を形成したことにより、この表示面が透明性、導電性、帯電防止性、電磁波遮蔽性に優れているばかりでなく、耐塩水性、耐酸性、耐酸化性、耐紫外線性等の耐環境性についても著しく優れたものとなる。
また、地球上に多く存在し、価格も安価である卑金属を用いた製造コストの低い透明導電膜を備えたことにより、装置の製造コストが低下し、低価格の表示装置を提供することが可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の透明導電膜形成用塗料と透明導電膜及びそれを備えた表示装置の一実施形態について説明する。
なお、この実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0017】
「透明導電膜形成用塗料」
本実施形態の透明導電膜形成用塗料は、基本的に、液状の媒体中に卑金属硫化物微粒子を含有してなるものである。
卑金属硫化物微粒子として用いられる卑金属は、一般に卑金属と称されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、インジウム(In)、錫(Sn)、コバルト(Co)等が好適である。
また、これらの卑金属のうち2種または3種以上を組み合わせた混合物あるいは合金であってもよい。これらの卑金属のうちで特に好ましいものは、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、あるいはこれらの混合物または合金である。
【0018】
この卑金属硫化物微粒子の平均粒径は、2〜200nmが好ましく、さらに好ましくは5nm〜100nmである。卑金属硫化物微粒子の平均粒径を上記のように限定した理由は、平均粒径が2nm未満では、表面活性が高くなるために非常に酸化され易くなり、空気中における安定性が著しく低下し、透明導電膜の導電性を低下させてしまうからであり、また、平均粒径が200nmを超えると、卑金属硫化物微粒子による光の吸収が大きくなり、透明導電膜の可視光における透過率が低下してしまうからである。
【0019】
この卑金属硫化物微粒子は貴金属元素を含有してもよい。この貴金属元素としては、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の群から選択された1種または2種以上が好適である。
本実施形態では、貴金属元素を含有した卑金属硫化物微粒子も、卑金属硫化物微粒子と称することとする。
貴金属元素の卑金属硫化物微粒子中の全金属元素に対する割合、すなわち、貴金属元素の含有量/(卑金属元素の含有量+貴金属元素の含有量)は30重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは3〜25重量%である。
【0020】
貴金属成分は、卑金属硫化物微粒子の内部に均一に分散した状態でも、卑金属硫化物微粒子の表面に存在した状態でも、どちらでも良い。貴金属成分の存在状態としては、貴金属あるいは貴金属基合金という単体として存在してもよく、貴金属の硫化物として存在してもよい。卑金属硫化物微粒子に貴金属成分を含有させることにより、卑金属硫化物微粒子の耐酸化性がさらに向上する。
【0021】
本実施形態の卑金属硫化物微粒子は、例えば、卑金属塩溶液中に硫化水素(HS)を導入する方法、卑金属塩溶液に硫化アルカリ溶液を加える方法等により作製することができる。
特に、卑金属硫化物微粒子が貴金属元素を含有する場合、卑金属塩溶液と貴金属塩溶液とを混合した溶液、あるいは卑金属塩と貴金属塩を溶解した溶液に、亜硫酸アルカリ溶液または次亜硫酸アルカリ溶液を加える方法等が好適である。
【0022】
この透明導電膜形成用塗料においては、卑金属硫化物微粒子の含有量は、液状の媒体中において安定な分散状態を維持することができる含有量であればよく、特に限定されるものではない。
この透明導電膜形成用塗料に用いられる液状の媒体(以下、単に媒体とも称する)は、基本的には、水および/または有機溶媒である。
【0023】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール類、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、アセト酢酸エステル等のケトン類が好適に用いられる。これらの有機溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
この透明導電膜形成用塗料は、得られる透明導電層の膜強度を向上させるために、バインダー成分を含んでいてもよい。用いることができるバインダー成分としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂等の有機系合成樹脂、テトラエトキシシラン(Si(OC)、テトラメトキシシラン(Si(OCH)、チタンテトラプロポキシド(Ti(OC)、ジルコニウムテトラブトキシド(Zr(OC)等の金属アルコキシドの加水分解物、シリコーンモノマー、シリコーンオリゴマー等の有機・無機系バインダー成分等が好適に用いられる。また、上記の有機系合成樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の硬化性樹脂が好適である。
【0025】
このバインダー成分としては、特に、式:M(OR)(式中、MはSi、TiまたはZrであり、RはC〜Cのアルキル基であり、mは1〜4の整数であり、nは1〜3の整数であり、かつm+nは4である)で表される化合物、またはその部分加水分解物の1種または2種以上の混合物が好適に用いられる。
塗料中のバインダー成分の含有量が過剰になると、透明導電層の導電性が低下するので、通常は10重量%以下の範囲内で含有量を決定することが好ましい。
【0026】
このバインダー成分と前記卑金属硫化物微粒子との親和性を高めるために、卑金属硫化物微粒子の表面を、シリコーンカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤、あるいはカルボン酸塩、ポリカルボン酸塩、リン酸エステル塩、スルホン酸塩、ポリスルホン酸塩等の親油化表面処理剤を用いて表面処理してもよい。
【0027】
本実施形態の透明導電膜形成用塗料は、必要ならば、塗膜における透過画像の色調を調整するために、着色材を含有していてもよい。この着色材は、透明導電層に含有されている卑金属硫化物微粒子に起因して可視光の波長帯域である400nm〜800nmの範囲内で特定の波長帯域に吸収がある場合、フェースパネル面(表示面)を透過する透過画像の色相が不自然に変化するのを調整する目的、または透過画像のコントラストを改善する目的、あるいはこれら双方の目的で添加される。この点を鑑みると、用いる着色材の色相は青色、紫色、黒色等が好ましい。
【0028】
さらに、この透明導電膜形成用塗料は、他の導電性微粒子を含有した構成としてもよい。
他の導電性微粒子としては、例えば、カーボン微粒子、金属微粒子、導電性酸化物微粒子等が挙げられる。また、これらの微粒子の平均粒径は、2〜200nmが好ましい。
【0029】
この透明導電膜形成用塗料中の固形分の濃度は、この塗料の流動性、卑金属硫化物微粒子の分散性等の観点から30重量%以下であることが好ましい。
また、この塗料では、前記卑金属硫化物微粒子及び前記他の導電性微粒子の各微粒子の表面を負に帯電させたものが好ましい。
微粒子の表面を負に帯電させるには、この透明導電膜形成用塗料のPHを各微粒子の等電点より大きくすればよい。
【0030】
特に、この塗料をガラス基材に塗布して透明導電膜を形成する場合、このガラス基材の表面は、空気中の水分が吸着することにより、通常、負に帯電しているので、上記の各微粒子の表面を負に帯電させておくことにより、透明導電層を形成する過程において微粒子が凝集することなく均一に分散させることができる。
これにより、均質性に優れた透明導電層を形成することができる。
【0031】
一方、上記の各微粒子の表面を正に帯電させた透明導電膜形成用塗料を用いると、塗布時にガラス基材上で微粒子の凝集が生じて不均一な塗膜となり、その結果、この塗膜により得られた透明導電層は、導電性不良等の不具合が生じる虞がある。
【0032】
「透明導電膜」
本実施形態の透明導電膜は、平均粒径が2〜200nmの卑金属硫化物微粒子を含有してなる透明導電層を備えている。
この透明導電層は、卑金属硫化物微粒子のみで構成されていてもよく、他の無機導電性物質、有機導電性物質等の導電性物質を含有してもよい。さらに、必要により着色剤成分、バインダーとして作用するマトリックス成分を含有してもよい。
【0033】
この透明導電層が良好な導電性を呈するためには、前記卑金属硫化物微粒子を70重量%以上含有したものが好ましい。
この透明導電層は、他の導電性微粒子を含有してもよい。他の導電性微粒子としては、カーボン微粒子、金属微粒子、導電性酸化物微粒子等が挙げられる。また、これらの他の導電性微粒子の平均粒径は2〜200nmが好ましい。
【0034】
バインダーとして作用するマトリックス成分の例としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂等の有機系合成樹脂、テトラエトキシシラン(Si(OC)、テトラメトキシシラン(Si(OCH)、チタンテトラプロポキシド(Ti(OC)、ジルコニウムテトラブトキシド(Zr(OC)等の金属アルコキシドの加水分解物、シリコーンモノマー、シリコーンオリゴマー等の有機・無機系バインダー成分等を挙げることができる。
また、上記の有機系合成樹脂としては、例えば、紫外線硬化型エポキシ樹脂等の紫外線硬化型樹脂を用いることができる。
【0035】
上記の卑金属硫化物微粒子以外の他の導電性微粒子およびマトリックス成分の含有量は、透明導電膜として要求される導電性に応じて選択される。
例えば、透明導電膜に帯電防止機能が要求される場合には、上記の透明導電層の表面抵抗は10〜1011Ω/□程度が必要となるので、他の導電性微粒子及びマトリックス成分の含有量は、卑金属硫化物微粒子1重量部に対し5重量部以下が好ましい。
【0036】
また、透明導電膜に電磁波遮蔽性や通電性機能が要求される場合には、上記の透明導電層の表面抵抗は10〜10Ω/□程度が必要となるので、他の導電性微粒子及びマトリックス成分の含有量は、卑金属硫化物微粒子1重量部に対し2重量部以下が好ましい。また、いずれの場合においても、マトリックス成分の含有量は、全導電性微粒子1重量部に対し0.3重量部以下が好ましい。
【0037】
この透明導電層の膜厚は、5nm〜200nmが好ましい。その理由は、膜厚が5nm未満では、十分な電磁波遮蔽性能が得難くなるばかりでなく、膜の均一性が不安定となるからであり、また、膜厚が200nmを越えると、導電性は問題ないものの透明性が低下し、透過画像の視認性が低下するからである。
さらに、帯電防止性及び電磁波遮蔽性のみを考慮するならば、膜厚は10nm〜50nmの範囲内とすることで、実用的に十分な帯電防止性及び電磁波遮蔽性を得ることができる。
【0038】
この透明導電層は、上記の透明導電膜形成用塗料を、透明性を有する基材、例えば、ガラス基板、耐熱性透明樹脂、ガラス板等の透明基材の表面に塗布し、その後、この塗布膜を乾燥し、必要に応じて焼き付けることにより、透明基材の表面に透明導電層を形成することができる。
塗布に際しては、形成された後の透明導電層の膜厚が、上述した様に5nm〜200nmとなるような塗布量とすることが好ましい。
【0039】
塗布方法としては、スピンコート法、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、ディップコート法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等、公知の任意の塗布技術を用いることができる。
これらのうち、スピンコート法、スプレーコート法、デイップコート法の各塗布方法は、短時間で均一な厚みの膜を形成することができるので、特に好ましい塗布方法である。
【0040】
本実施形態の透明導電膜は、平均粒径が2〜200nmの卑金属硫化物微粒子を含有してなる透明導電層を備えたので、従来では実用的には使用することができなかった卑金属を用いて、1011Ω/□以下という広い範囲の表面抵抗を有し、特に電磁波遮蔽機能に必要な10〜10Ω/□の導電性を有するものとなった。
また、この透明導電膜は、卑金属硫化物微粒子を用いているために、卑金属を用いる場合に従来では問題となっていた、容易に酸化され、導電性の著しい低下が生じるという問題点を克服することができた。
【0041】
本実施形態の透明導電膜は、例えば、通常使用される使用温度である−20℃〜60℃程度では、酸化による表面抵抗の劣化は生じず、また、食塩水や塩酸などの通常生活環境下にある薬品にも溶解することはない。さらに、紫外線等に対しても劣化することなく、十分な耐性を有する。
したがって、耐塩水性、耐酸性、耐酸化性、耐紫外線性等の耐環境性が著しく向上し、実用的に十分な耐久性を有するものとなる。
【0042】
本実施形態の透明導電膜は、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、タッチパネル、陰極線管(CRT)等、各種表示装置の表示パネルの表示面に適用することができる。
また、建築物等の窓ガラス、自動車のフロントガラス、自動車のメーターパネル、電子レンジの覗き窓等の各種窓材等にも適用することができる。
これらの表示装置や各種窓材等では、本実施形態の透明導電膜を適用したことにより、耐塩水性、耐酸性、耐酸化性、耐紫外線性等の耐環境性が著しく向上する。
【0043】
「低反射透明導電膜」
本実施形態の低反射透明導電膜は、上記の透明導電層のいずれか一方の主面または双方の主面、すなわち上層、または下層、または上層及び下層に、上記の透明導電層の屈折率とは異なる屈折率を有する透明な反射防止層が1層以上形成される。
この反射防止層は、膜の界面における外光反射を干渉効果により除去または低減するために用いられるもので、その屈折率は、上記の透明導電層より低いことが好ましい。
【0044】
図1は、本実施形態の低反射透明導電膜を示す断面図であり、ガラス基板、耐熱性透明樹脂、ガラス板等からなる透明基材1の表面に透明導電層2が形成され、透明導電層2の上層に該透明導電層2の屈折率とは異なる屈折率を有する透明な反射防止層3が1層形成され、この透明導電層2と反射防止層3により低反射透明導電膜4が構成されている。
【0045】
低反射透明導電膜4の層構成は、上記の構成に限定されるものではなく、例えば、反射防止層3を透明導電層2の下層に形成した構成としてもよく、透明導電層2の上層及び下層の双方に形成した構成としてもよい。
この反射防止層3は、透明導電層2の上層に形成する場合には、その屈折率を透明導電層2の屈折率より小さくし、透明導電層2の下層に形成する場合には、その屈折率を透明導電層2の屈折率より大きくすることによって、有効な反射防止効果が得られる。
【0046】
また、この反射防止層3は、必ずしも1層に限定されるものではなく、多層に形成されていてもよく、例えば、透明導電層2も含めて最下層から最上層に向けて順次に屈折率が低くなる様な複数の薄膜層により構成してもよい。
多層薄膜における界面反射防止性能は、薄膜の屈折率と膜厚、および積層数により決定されるため、本実施形態の低反射透明導電膜においても、積層数を考慮して透明導電膜、反射防止層の厚みを適宜設計することにより、効果的な反射防止効果を得ることができる。
この反射防止層3の厚みは50〜200nmが好ましい。
【0047】
反射防止層3は、単に多層薄膜における界面反射を防止するのみならず、表示装置のフェイスパネルに用いた場合には、本実施形態の低反射透明導電膜を外力から保護する効果も期待されるため、実用上十分な強度を有しかつ屈折率が透明導電層2より低い反射防止層3を、透明導電層2の上層に設けることが好ましい。これによって、陰極線管、プラズマ発光表示装置、液晶表示装置、タッチパネル等に用いることができる実用的な低反射透明導電膜が得られる。
【0048】
この低屈折率の反射防止層3を形成するための塗布材としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂等の熱可塑性、熱硬化性、または光・電子線硬化性樹脂が好適に用いられる。
また、テトラエトキシシラン(Si(OC)、テトラメトキシシラン(Si(OCH)、チタンテトラプロポキシド(Ti(OC)、ジルコニウムテトラブトキシド(Zr(OC)等の金属アルコキシドの加水分解物、シリコーンモノマーまたはシリコーンオリゴマー等も好適に用いられる。
これらの塗布材は、単独で、または混合して用いることができる。
【0049】
この反射防止層3は、また、透明導電層2の反射防止機能と保護機能とを兼ねて、表面硬度が高くかつ屈折率が比較的低い酸化ケイ素(SiO)膜からなるハードコート層として形成することもできる。この反射防止性ハードコート層を形成することができる物質の例として、例えば、式:M(OR)(式中、MはSi、TiまたはZrであり、RはC〜Cのアルキル基であり、mは1〜4の整数であり、nは1〜3の整数であり、かつm+nは4である)で表される化合物、またはその部分加水分解物の1種または2種以上の混合物が好適に用いられる。この化合物の例としては、例えば、テトラエトキシシラン(Si(OC)が、被膜形成性、透明性、膜強度および反射防止性能の点から好適に用いられる。
【0050】
反射防止層3は、透明導電層2と異なる屈折率に設定できるのであれば、この反射防止層3を形成する各種樹脂、金属酸化物、複合酸化物、窒化物等、または焼付けによってこれらを生成することができる前駆体等を含んでいてもよい。また、低反射透明導電膜4の透過画像の色相やコントラストを調整するために着色材を含んでいてもよい。
【0051】
この反射防止層3は、透明導電層2と同様に、反射防止層3の成分を含む塗布液(反射防止膜形成用塗料)を所定の面に均一に塗布して成膜する方法によって形成することができる。
塗布方法としては、スピンコート法、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、ディップコート法、グラビア印刷法等を用いることができるが、特に、スピンコート法は、短時間で均一な厚みの膜を形成することができるので好ましい。
【0052】
塗布後は、塗膜を乾燥し、好ましくは焼き付けまたは光・電子線照射することによって、強固な膜が形成される。
本実施形態の低反射透明導電膜は、その最上層に、凹凸を有する低屈折率透明膜が形成されていてもよい。この凹凸を有する低屈折率透明膜は、低反射透明導電膜の層間の外光反射を防止すると共に、表面反射光を散乱させ、フェイスパネル面に防眩性を与える効果がある。
【0053】
「表示装置」
本実施形態の表示装置は、その表示面に上記の低反射透明導電膜が形成されている。
図2は、本実施形態の陰極線管(表示装置)を示す断面図であり、この陰極線管11は、フェイスパネル12の前面(表示面)12aに上記の低反射透明導電膜4が形成された構成である。
【0054】
この低反射透明導電膜4の透明導電層2は、平均粒径が2〜200nmの卑金属硫化物微粒子を含む本実施形態の透明導電膜形成用塗料をフェイスパネル12の前面12a上に塗布して形成される。
この低反射透明導電膜4は、透明導電層2が卑金属硫化物微粒子を含んでいるので、帯電防止性能、電磁波遮蔽性能を発現するに十分な導電性を有しており、かつ透明性が高く、フェイスパネル12からの透過画像が明るく、実用的に十分な視認性を有している。
【0055】
さらに、耐塩水性、耐酸性、耐酸化性、耐紫外線性等の耐環境性にも優れており、ハロゲン、酸性、酸化性、紫外線等の雰囲気に対して耐性があり、これらの雰囲気に長期間曝されることがあっても、卑金属硫化物微粒子の変質に由来する導電性の低下、変色、膜強度の低下等が生じる虞がない。
また、この低反射透明導電膜4は、透明導電層2の屈折率とは異なる屈折率を有する反射防止層3が上層に形成されているので、外光反射を防止することができる。
【0056】
したがって、この低反射透明導電膜4がフェイスパネル12の前面12aに形成された陰極線管11は、透過画像が明るく、視認性が良好であるうえに、帯電が防止されて埃が付き難く、電磁波障害が防止され、外光反射が低減される。
また、汗、塩水、酸性または酸化性の液体またはガス、紫外線等の劣化因子が存在する環境下に長期間曝されても、画面の変色、導電性や膜強度の低下等が生じることがなく、長期に亘って初期性能が維持される。
【0057】
この様に、本実施形態の表示装置は、本実施形態の低反射透明導電膜を備えているので、表示面の帯電が防止され、画像表示面に埃などが付着する虞がない。また、電磁波が遮蔽されるので、各種の電磁波障害を防止することができる。しかも、従来の電磁波遮蔽膜に比べて光透過性に優れているので、画像が明るく、反射が抑制される。したがって、視認性が改善され、反射光の色むらが低減され、その結果、表示面の外観が改善される。
【0058】
本発明の透明導電膜形成用塗料、透明導電膜及び低反射透明導電膜は、上記の陰極線管11の他、例えば、蛍光表示管(FIP)、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、電界効果型ディスプレイ(FED)、タッチパネル、電光表示装置等、各種表示装置のフェイスパネルに加えて、自動車、建物等の窓、電子レンジの覗き窓等にも有効に適用することができる。
【0059】
【実施例】
以下、実施例1〜4及び比較例1〜3により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0060】
A.透明導電膜形成用塗料の調整(その1)
実施例1〜4の透明導電膜形成用塗料として、4種類の透明導電膜形成用塗料(A−1〜A−4)を作製した。
(1)透明導電膜形成用塗料(A−1)
Cu硫化物微粒子を含む透明導電膜形成用塗料を調整した。
硝酸銅(CuNO・3HO) 483.2g
純水 10000g
の溶液に、
硫化ナトリウム(NaS) 117.2g
純水 10000g
ポリビニルピロリドン 微量
の溶液を加え、その後、40℃にて3時間、撹拌し、Cu硫化物微粒子を生成させた。
【0061】
次いで、不純物イオンを洗浄により除去し、アンモニア水(NHOH)を加えてpH=8.5に調整した。その後、限外濾過装置にて濃縮し、CuS微粒子を3重量%合有するCuS微粒子分散液を作製した。このCuS微粒子の平均粒径は30nmであった。
次いで、このCuS微粒子分散液250gにメタノール400g及びジアセトンアルコール100gを加えて透明導電膜形成用塗料(A−1)を調整した。
【0062】
(2)透明導電膜形成用塗料(A−2)
(Cu,Ag)硫化物微粒子を含む透明導電膜形成用塗料を調整した。
硝酸銅(CuNO・3HO) 434.9g
硝酸銀(AgNO) 34.0g
純水 10000g
の溶液に、
硫化ナトリウム(NaS) 117.2g
純水 10000g
ポリビニルピロリドン 微量
の溶液を加え、その後、40℃にて3時間、撹拌し、(Cu,Ag)硫化物微粒子を生成させた。
【0063】
次いで、不純物イオンを洗浄により除去し、アンモニア水(NHOH)を加えてpH=8.5に調整した。その後、限外濾過装置にて濃縮し、(Cu,Ag)S微粒子を3重量%合有する(Cu,Ag)S微粒子分散液を作製した。この(Cu,Ag)S)微粒子の平均粒径は20nmであった。また、元素分析により、(Cu,Ag)S微粒子の金属元素比は、Ag/Cu=11/89、Ag/(Cu+Ag)=0.11であった。
次いで、この(Cu,Ag)S微粒子分散液250gにメタノール400g及びジアセトンアルコール100gを加えて透明導電膜形成用塗料(A−2)を調整した。
【0064】
(3)透明導電膜形成用塗料(A−3)
(Cu,Ru)硫化物微粒子を含む透明導電膜形成用塗料を調整した。
塩化銅(CuCl・2HO) 272.8g
塩化ルテニウム(RuCl)10重量%溶液832.4g
純水 10000g
の溶液に、
硫化ナトリウム(NaS) 117.2g
純水 10000g
ポリビニルピロリドン 微量
の溶液を加え、その後、40℃にて3時間、撹拌し、(Cu,Ru)硫化物微粒子を生成させた。
【0065】
次いで、不純物イオンを洗浄により除去し、アンモニア水(NHOH)を加えてpH=8.5に調整した。その後、限外濾過装置にて濃縮し、(Cu,Ru)S微粒子を3重量%合有する(Cu,Ru)S微粒子分散液を作製した。この(Cu,Ru)S微粒子の平均粒径は20nmであった。また、元素分析により、(Cu,Ru)S微粒子の金属元素比は、Ru/Cu=18/82、Ru/(Cu+Ru)=0.18であった。
次いで、この(Cu,Ru)S微粒子分散液250gにメタノール400g及びジアセトンアルコール100gを加えて透明導電膜形成用塗料(A−3)を調整した。
【0066】
(4)透明導電膜形成用塗料(A−4)
(Cu,Au)硫化物微粒子を含む透明導電膜形成用塗料を調整した。
塩化銅(CuCl・2HO) 315.4g
塩化金酸ナトリウム(NaAuCl・2HO)59.7g
純水 10000g
の溶液に、
硫化ナトリウム(NaS) 117.2g
純水 10000g
ポリビニルピロリドン 微量
の溶液を加え、その後、40℃にて3時間、撹拌し、(Cu,Au)硫化物微粒子を生成させた。
【0067】
次いで、不純物イオンを洗浄により除去し、アンモニア水(NHOH)を加えてpH=8.5に調整した。その後、限外濾過装置にて濃縮し、(Cu,Au)S微粒子を3重量%合有する(Cu,Au)S微粒子分散液を作製した。この(Cu,Au)S微粒子の平均粒径は10nmであった。また、元素分析により、(Cu,Au)S微粒子の金属元素比は、Au/Cu=8/92、Au/(Cu+Au)=0.08であった。
次いで、この(Cu,Au)S微粒子分散液250gにメタノール400g及びジアセトンアルコール100gを加えて透明導電膜形成用塗料(A−4)を調整した。
【0068】
B.透明導電膜形成用塗料の調整(その2)
比較例1〜3の透明導電膜形成用塗料として、3種類の透明導電膜形成用塗料(B−1〜B−3)を作製した。
(1)透明導電膜形成用塗料(B−1)
Ag微粒子を含む透明導電膜形成用塗料を調整した。
クエン酸3ナトリウム2水和物 140g
硫酸第1鉄(FeSO) 75g
純水 600g
の溶液に、
硝酸銀(AgNO) 25g
純水 500g
の溶液を加え、その後、5℃にて2時間、撹拌し、Ag微粒子を生成させた。
【0069】
次いで、不純物イオンを洗浄により除去し、アンモニア水(NHOH)を加えてpH=8.5に調整した。その後、限外濾過装置にて濃縮し、Ag微粒子を固形分として3重量%合有するAg微粒子分散液を作製した。このAg微粒子の平均粒径は20nmであった。
次いで、このAg微粒子分散液250gにメタノール400g及びジアセトンアルコール100gを加えて透明導電膜形成用塗料(B−1)を調整した。
【0070】
(2)透明導電膜形成用塗料(B−2)
Au微粒子を含む透明導電膜形成用塗料を調整した。
硼水素化ナトリウム(NaBH) 17.1g
純水 300g
ポリビニルピロリドン 微量
の溶液に、
塩化金酸ナトリウム(NaAuCl・2HO)60g
純水 600g
の溶液を加え、その後、5℃にて2時間、撹拌し、Au微粒子を生成させた。
【0071】
次いで、不純物イオンを洗浄により除去し、アンモニア水(NHOH)を加えてpH=8.5に調整した。その後、限外濾過装置にて濃縮し、Au微粒子を固形分として3重量%合有するAu微粒子分散液を作製した。
次いで、このAu微粒子分散液25gと上記の透明導電膜形成用塗料(B−1)にて調整したAg微粒子分散液225gとを、メタノール400g及びジアセトンアルコール100gを加えて混合し、透明導電膜形成用塗料(B−2)を調整した。
【0072】
(3)透明導電膜形成用塗料(B−3)
Ru微粒子を含む透明導電膜形成用塗料を調整した。
硼水素化ナトリウム(NaBH) 17.1g
純水 300g
ポリビニルピロリドン 微量
の溶液に、
塩化ルテニウム(RuCl)10重量%溶液312.2g
純水 1000g
の溶液を加え、その後、5℃にて2時間、撹拌し、Ru微粒子を生成させた。
【0073】
次いで、不純物イオンを洗浄により除去し、アンモニア水(NHOH)を加えてpH=8.5に調整した。その後、限外濾過装置にて濃縮し、Ru微粒子を固形分として3重量%合有するRu微粒子分散液を作製した。
次いで、このRu微粒子分散液50gと上記の透明導電膜形成用塗料(B−1)にて調整したAg微粒子分散液200gとを、メタノール400g及びジアセトンアルコール100gを加えて混合し、透明導電膜形成用塗料(B−3)を調整した。
【0074】
C.反射防止膜形成用塗料の調整
実施例1〜4及び比較例1〜3共通の反射防止膜形成用塗料として、次の反射防止膜形成用塗料を作製した。
テトラエトキシシラン(SiO:28重量%)100g
エタノール 880g
35重量%塩酸 2g
純水 18g
を混合し、その後、50℃にて3時間、撹拌し、SiOの濃度が2.8重量%のシリカ重縮合物溶液を調整した。この溶液にブタノール350g及びジアセトンアルコール317gを加えてSiOの濃度が1.5重量%の反射防止膜形成用塗料(C)を調整した。
【0075】
D.透明導電膜付き透明基材の作製
実施例1〜4及び比較例1〜3の透明導電膜付き透明基材を作製した。
「実施例1」
ブラウン管用パネルガラス基材(透明基材)の表面を35℃に保持しつつ、スピナー法により150rpm−60秒の条件で透明導電膜形成用塗料(A−1)を塗布し、スピナー上で乾燥させた後、引き続いて反射防止膜形成用塗料(C)を同一条件で塗布し、スピナー上で乾燥させた。その後、乾燥器を用いて150℃にて1時間加熱し、ブラウン管用パネルガラス基材上に、透明導電膜付き透明基材を作製した。
【0076】
その後、この透明導電膜付き透明基材の表面抵抗、反射率を測定した。
表面抵抗は、抵抗測定装置(ロレスタAP:三菱油化(株)製)を用いて、四端子法による表面抵抗の測定を行った。
また、反射率は、入射角5度の正反射冶具を用いて、透明導電膜に550nmの波長の光を入射した際における反射率を、分光スペクトルメータにより測定した。
【0077】
また、この透明導電膜付き透明基材の耐塩酸試験を行った。この耐塩酸試験では、前記透明基材を5%の濃度の塩酸に25℃−24時間浸漬した後、取り出して洗浄、乾燥させ、その透明基材の表面抵抗(Ω/□)を測定し、浸漬前後の表面抵抗変化率(浸漬後の表面抵抗/浸漬前の表面抵抗)を求めた。
【0078】
「実施例2」
透明導電膜形成用塗料(A−1)の替わりに透明導電膜形成用塗料(A−2)を使用した他は、実施例1と同一の操作により透明導電膜付き透明基材を作製し、実施例1と同一の条件にて表面抵抗、反射率の測定及び耐塩酸試験を行った。
【0079】
「実施例3」
透明導電膜形成用塗料(A−1)の替わりに透明導電膜形成用塗料(A−3)を使用した他は、実施例1と同一の操作により透明導電膜付き透明基材を作製し、実施例1と同一の条件にて表面抵抗、反射率の測定及び耐塩酸試験を行った。
【0080】
「実施例4」
透明導電膜形成用塗料(A−1)の替わりに透明導電膜形成用塗料(A−4)を使用した他は、実施例1と同一の操作により透明導電膜付き透明基材を作製し、実施例1と同一の条件にて表面抵抗、反射率の測定及び耐塩酸試験を行った。
【0081】
「比較例1」
透明導電膜形成用塗料(A−1)の替わりに透明導電膜形成用塗料(B−1)を使用した他は、実施例1と同一の操作により透明導電膜付き透明基材を作製し、実施例1と同一の条件にて表面抵抗、反射率の測定及び耐塩酸試験を行った。
【0082】
「比較例2」
透明導電膜形成用塗料(A−1)の替わりに透明導電膜形成用塗料(B−2)を使用した他は、実施例1と同一の操作により透明導電膜付き透明基材を作製し、実施例1と同一の条件にて表面抵抗、反射率の測定及び耐塩酸試験を行った。
【0083】
「比較例3」
透明導電膜形成用塗料(A−1)の替わりに透明導電膜形成用塗料(B−3)を使用した他は、実施例1と同一の操作により透明導電膜付き透明基材を作製し、実施例1と同一の条件にて表面抵抗、反射率の測定及び耐塩酸試験を行った。
実施例1〜4及び比較例1〜3の表面抵抗、反射率、表面抵抗変化率各々の評価結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
Figure 2004203939
【0085】
表1の結果によれば、実施例1〜4では、全ての評価項目において良好な結果を得ており、特に、表面抵抗変化率は非常に小さなものであった。これにより、透明性、導電性、帯電防止性等に優れているのはもちろんのこと、特に、耐塩酸性に優れていることが確認された。
一方、比較例1〜3では、透明性、導電性、帯電防止性等については、実施例1〜4と遜色ないものの、表面抵抗変化率が10以上と極めて大きく、耐塩酸性に劣っていることが確認された。また、耐塩酸試験後の透明導電膜の表面を観察したところ、変質して透明性が低下しているのが認められた。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の透明導電膜形成用塗料によれば、平均粒径が2〜200nmの卑金属硫化物微粒子を含有したので、透明性、導電性、帯電防止性、電磁波遮蔽性に優れているのはもちろんのこと、耐塩水性、耐酸性、耐酸化性、耐紫外線性等の耐環境性に著しく優れた透明導電膜が得られる。
また、地球上に多く存在し、価格も安価である卑金属を用いたので、透明導電膜形成用塗料の製造コストを低減することができる。
【0087】
本発明の透明導電膜によれば、平均粒径が2〜200nmの卑金属硫化物微粒子を含有してなる透明導電層を備えたので、透明導電膜の透明性、導電性、帯電防止性、電磁波遮蔽性に優れているのはもちろんのこと、耐塩水性、耐酸性、耐酸化性、耐紫外線性等の耐環境性についても著しく優れている。
また、地球上に多く存在し、価格も安価である卑金属を用いたので、透明導電膜の製造コストを低減することができ、その結果、この透明導電膜を有する製品の製造コストも低減することができる。
【0088】
また、前記透明導電層の一方の主面または双方の主面に、前記透明導電層の屈折率とは異なる屈折率を有する透明層を形成したので、透明導電膜の反射性能を低下させることができ、反射防止効果に優れた(低反射性の)透明導電膜を提供することができる。
【0089】
本発明の表示装置によれば、その表示面に本発明の透明導電膜を形成したので、この表示面が透明性、導電性、帯電防止性、電磁波遮蔽性に優れているばかりでなく、耐塩水性、耐酸性、耐酸化性、耐紫外線性等の耐環境性についても著しく優れている。
また、製造コストの低い透明導電膜を備えたので、表示装置の製造コストを低減させることができ、低価格の表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の低反射透明導電膜を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の陰極線管を示す断面図である。
【符号の説明】
1 透明基材
2 透明導電層
3 反射防止層
4 低反射透明導電膜
11 陰極線管(表示装置)
12 フェイスパネル
12a 前面(表示面)

Claims (12)

  1. 平均粒径が2〜200nmの卑金属硫化物微粒子を含有してなることを特徴とする透明導電膜形成用塗料。
  2. 前記卑金属は、銅またはニッケルであることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜形成用塗料。
  3. 前記卑金属硫化物微粒子は、貴金属元素を含有してなることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電膜形成用塗料。
  4. 前記貴金属元素は、銀、金、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムの群から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項3記載の透明導電膜形成用塗料。
  5. 前記貴金属元素の前記卑金属硫化物微粒子中の全金属元素に対する割合は30重量%以下であることを特徴とする請求項3または4記載の透明導電膜形成用塗料。
  6. 平均粒径が2〜200nmの卑金属硫化物微粒子を含有してなる透明導電層を備えたことを特徴とする透明導電膜。
  7. 前記卑金属は、銅またはニッケルであることを特徴とする請求項6記載の透明導電膜。
  8. 前記卑金属硫化物微粒子は、貴金属元素を含有してなることを特徴とする請求項6または7記載の透明導電膜。
  9. 前記貴金属元素は、銀、金、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムの群から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項8記載の透明導電膜。
  10. 前記貴金属元素の前記卑金属硫化物微粒子中の全金属元素に対する割合は30重量%以下であることを特徴とする請求項8または9記載の透明導電膜。
  11. 前記透明導電層のいずれか一方の主面または双方の主面に、前記透明導電層の屈折率とは異なる屈折率を有する透明層を形成してなることを特徴とする請求項6ないし10のいずれか1項記載の透明導電膜。
  12. 請求項6ないし11のいずれか1項記載の透明導電膜が表示面に形成されていることを特徴とする表示装置。
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