JP2004201267A - ディジタルフィルタ並びにその係数算出装置及び係数算出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、高特性を維持しながら容易に調整を行い得るディジタルフィルタ並びにその係数算出装置及び係数算出方法を実現しようとするものである。
【解決手段】ディジタルフィルタ並びにその係数算出装置及び係数算出方法において、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することによりロールオフ窓関数を算出した後、当該ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数を設定するようにした。
【選択図】 図4
【解決手段】ディジタルフィルタ並びにその係数算出装置及び係数算出方法において、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することによりロールオフ窓関数を算出した後、当該ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数を設定するようにした。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はディジタルフィルタ並びにその係数算出装置及び係数算出方法に関し、例えばディジタルフィルタを用いた無線送信機に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の無線送信機においては、無線通信において周波数利用効率の向上を図るために、広帯域なディジタル信号を狭帯域化して伝送するようになされている。
【0003】
その際、狭帯域化に伴い、隣接チャネルへの干渉を極小化して信号品質を劣化させないようにすることが条件とされる。
【0004】
例えば、時間tにおけるディジタル信号a(t)のスペクトルを解析するにあたって、当該ディジタル信号a(t)の矩形波をg(t)としたとき、そのインパルス応答は、シンボル周期をTとして、次式
【0005】
【数1】
【0006】
で表され、図14のようなグラフ上に表される。
【0007】
この矩形波g(t)についての伝達関数G(t)は、次式
【0008】
【数2】
【0009】
で表されるような当該矩形波g(t)のフーリエ変換で与えられ、実際には図15に示すようにスペクトルが無限に広がっている状態で表される。
【0010】
このように矩形波g(t)の帯域幅が無限大ということは、図16に示すように、隣接チャネルに対して干渉を与えることとなり、この隣接チャネルへの干渉を無くすために帯域制限をすると、図17に示すように、隣接チャネルへの影響が少なくチャネル間隔を狭くすることが可能となる。
【0011】
この結果、帯域制限により、周波数利用効率の向上及び隣接チャネルへの干渉による符号誤り率の低下といった効果を得ることができる。
【0012】
しかし、ディジタル信号伝送の劣化要因として、上述のような帯域制限の必要性に加えて、帯域制限フィルタの符号間干渉の問題がある。
【0013】
すなわち例えばπ/4シフトQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式における搬送波の同相(I相)成分及び直交(Q相)成分に基づくI信号SI及びQ信号SQについて考えると、符号間干渉のない波形を図18に示す一方、符号間干渉のある波形を図19に示す。この図18及び図19では、I信号及びQ信号の振幅レベルは「±1」、「±1/√2」、「0」の5値である。
【0014】
まず図18に示す符号間干渉のない波形では、データはシンボル周期(T)ごとにI信号SI及びQ信号SQの振幅レベルを通過するが、図19に示す符号間干渉のある波形では、I信号SI及びQ信号SQの振幅レベルを通過しない。従ってフィルタ出力の波形がI信号SI及びQ信号SQの振幅レベルを通過しないため、シンボル値が誤判定になる可能性が高くなり、ビットエラーが生じるおそれがある。
【0015】
上述のような狭帯域化の際において隣接チャネルへの干渉や符号間干渉を極小化するフィルタとして、ナイキストフィルタが現代のディジタル信号伝送に用いられるのが一般的である。
【0016】
かかるナイキストフィルタでは、所定時間T〔秒〕の時間間隔(以下、これをナイキスト間隔と呼ぶ)でパルスを無歪みで伝送するためには1/(2T)〔Hz〕が必要最低限の帯域であり、当該1/(2T)〔Hz〕を越える帯域が許される場合は、符号間干渉を0にするようになされたフィルタである。
【0017】
このナイキストフィルタを用いた符号間干渉が0のシステムでは、そのインパルス応答がナイキスト間隔で(すなわち時間T〔秒〕ごとに)ゼロクロスしなければならないという基準がある(以下、この基準をナイキスト第1基準と呼ぶ)。かかるナイキスト第1基準は、カットオフ周波数fが1/(2T)を満たす、次式、
【0018】
【数3】
【0019】
であることが条件とされる。
【0020】
このようなナイキスト第1基準を満たしたフィルタのうち理想フィルタについて説明する。まず矩形波であるディジタル信号を一般的なLPFに入力すると、周波数により特性の異なる減衰や位相遅れが発生して振幅歪みと位相歪みとが発生する。その際、理想フィルタの条件として、第1に、特定の周波数成分を一定量減衰すること、第2に、特定の周波数成分以外の成分を完全に抑圧すること、第3に、周波数に比例した位相遅れを生じさせることが挙げられる。
【0021】
そして理想フィルタの伝達関数H(f)は、次式
【0022】
【数4】
【0023】
のように表され、この結果が図20のように表される。かかる伝達関数H(f)を逆フーリエ変換すると、当該伝達関数H(f)のインパルス応答H(t)が次式、
【0024】
【数5】
【0025】
として得ることができ、この結果が図21のように表される。このことから、理想フィルタのインパルス応答H(t)は、矩形波の伝達関数H(f)と同一であることがわかる。
【0026】
ところで、フィルタ出力は、入力信号の伝達関数とフィルタのインパルス応答の畳み込みであることから、矩形波の伝達関数から理想フィルタのインパルス応答を差し引いたものは0であることがわかる。
【0027】
このことは理想フィルタにおいて、矩形波の基本波より高い周波数成分は0に減衰され、低い周波数成分は1となることを表している。これが理想フィルタの減衰理論である。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなナイキスト第1基準を満足した、カットオフ周波数f(=1/(2T)、T:シンボル間隔)となる理想フィルタは、インパルス応答が負の時間も含めた無限長になり実現不可能であるため、実際には有限長インパルス応答でありながら、ナイキスト第1基準を満たすフィルタであるロールオフフィルタが使用される。
【0029】
かかるロールオフフィルタは、ロールオフ率と呼ばれるパラメータαに応じて遮断特性が異なるフィルタである。この遮断特性は、図22に示すように、ロールオフ率αが0に近づく(すなわち理想フィルタに近づく)と、急峻な特性となって周波数利用効率が向上するといった長所がある一方、インパルス応答のサイドローブの値が大きくなるため、アイパターンが狭くなりビットエラーが生じ易くなるといった短所がある。
【0030】
実際上、ロールオフフィルタの遮断域特性は、後述するように余弦波(コサイン)として表現されるため、このようなLPFをコサインロールオフフィルタと呼ぶ。
【0031】
このコサインロールオフフィルタにおいては、上述したナイキスト第1基準に加えて、所定のサンプルレートによるサンプリング点間の中点においてインパルス応答がゼロクロスする条件(以下、これをナイキスト第2基準と呼ぶ)と、インパルス応答の1サンプリング区間の積分値が入力信号の振幅に比例するための条件(以下、これをナイキスト第3基準と呼ぶ)をも満たすようになされている。
【0032】
実際にロールオフフィルタは、ロールオフ率αが1のときに符号間干渉が0となってナイキスト第2基準を満たすと共に、正弦波の逆数で表されるナイキスト第1基準を満たす伝達関数に対して当該正弦波の逆数が乗算された関数は全てナイキスト第3基準を満たすこととがわかる。
【0033】
かかるコサインロールオフフィルタは、上述のナイキスト第1〜第3基準を全て満足するフィルタであり、当該フィルタの伝達関数G(t)は、サンプル時間をt、シンボル時間をT、ロールオフ率をαとしたとき、次式、
【0034】
【数6】
【0035】
で表される。
【0036】
この式(6)によると、図23に示すように、第1に、1/(2T)において伝達関数G(t)が0.5で交差しており、第2に、ロールオフ率αが0のとき理想フィルタ特性と一致し、第3に、ロールオフ率αの値を大きくすると伝達関数G(t)は緩やかになり、第4に、ロールオフ率αが0のとき周波数帯域が広くなりインパルス応答の残留応答が短くなるといった特徴を有する。
【0037】
このコサインロールオフフィルタのインパルス応答g(t)は、上述した伝達関数G(t)を逆フーリエ変換することにより、次式、
【0038】
【数7】
【0039】
として得られる。実際に図24(A)及び(B)〜図26(A)及び(B)において、各ロールオフ率(α=0、0.5、1)のインパルス応答及びフィルタ出力波形を示す。
【0040】
図24(A)及び(B)〜図26(A)及び(B)により、コサインロールオフフィルタはナイキスト第1〜第3基準を満たしていることがわかる。
【0041】
ところが、例えば無線型式に応じて帯域制限フィルタのフィルタ特性をコサインロールオフフィルタのロールオフ特性を保ちながら可変させる場合、通常のアナログフィルタを帯域制限フィルタとして使用したときには、内部調整するには回路構成が物理的に取り替える必要があるため実用上不十分である一方、ディジタルフィルタを帯域制限フィルタとして使用したときには、内部調整にはソフトウェア的な処理をすれば良いのだが、実際にはロールオフ特性を持たせながら行うことは非常に煩雑で困難な問題があった。
【0042】
従って、ディジタルフィルタを用いて、このフィルタ特性をロールオフ特性を持たせながら無線型式に応じて可変するには、比較的簡単な手法でソフトウェア的に内部調整するだけで行い得ることが望ましい。
【0043】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、高特性を維持しながら容易に調整を行い得るディジタルフィルタ並びにその係数算出装置及び係数算出方法を提案しようとするものである。
【0044】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明においては、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタにおいて、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することにより算出されたロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数が設定されるようにした。
【0045】
この結果このディジタルフィルタでは、各係数にロールオフ窓関数を乗算すれば、理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性をディジタルフィルタに持たせることができ、無線型式に応じてフィルタ特性を可変させる場合に、各係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら当該各係数を設定することができる。
【0046】
また本発明においては、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタの係数算出装置において、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することによりロールオフ窓関数を算出する算出手段と、ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数を設定する設定手段とを設けるようにした。
【0047】
この結果このディジタルフィルタの係数算出装置では、各係数にロールオフ窓関数を乗算すれば、理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性をディジタルフィルタに持たせることができ、無線型式に応じてフィルタ特性を可変させる場合に、ディジタルフィルタの各係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら当該各係数を設定することができる。
【0048】
さらに本発明においては、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタの係数算出方法において、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することによりロールオフ窓関数を算出する第1のステップと、ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数を設定する第2のステップとを設けるようにした。
【0049】
この結果このディジタルフィルタの係数算出方法では、各係数にロールオフ窓関数を乗算すれば、理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性をディジタルフィルタに持たせることができ、無線型式に応じてフィルタ特性を可変させる場合に、ディジタルフィルタの各係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら当該各係数を設定することができる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0051】
(1)第1の実施の形態
第1の実施の形態では、ディジタル構成の帯域制限フィルタとして、FIR(Finite Impulse Response)フィルタを用いて、当該FIRフィルタにコサインロールオフフィルタのロールオフ特性を持たせるようになされている。
【0052】
(1−1)FIRフィルタの構成
FIRフィルタは、群遅延がない、すなわち出力の位相特性が入力信号のあらゆる周波数成分に対して一定の遅延時間のみを与えたものとなる、位相特性の良い直線位相フィルタを構成するようになされている。
【0053】
図1に示すように、FIRフィルタ1は、遅延段数を表すタップ数を4個としたとき、信号入力段に直列接続された3個の遅延素子T0〜T2と、当該各遅延素子T0〜T2の前段及び最後尾の遅延素子T2の後段からそれぞれ分岐して接続された4個の乗算器A0〜A3と、当該各乗算器A0〜A3の出力段にそれぞれ接続され、順次加算結果を積算する3個の加算器P0〜P2とから構成されており、このうち最後尾の加算器P2が当該FIRフィルタ1の信号出力段となる。
【0054】
通常ディジタルフィルタでナイキストフィルタを構成する場合は、アナログで実現した場合のナイキストフィルタのインパルス応答をサンプルレート(1/t)でサンプリングした値を利用するようになされている。例えばシンボルレート(1/T)に対して3倍のサンプルレートを有するディジタルフィルタを実現する場合には、T=3tとなる。
【0055】
このFIRフィルタ1の出力であるインパルス応答y(nt)は、シンボル間隔をT〔sec〕の入力信号x(nt)が入力されるとき、サンプリング時間をt〔sec〕(上述の例ではT/3)とし、かつ各乗算器の係数をそれぞれh(k)(k=0、1、…、N−1)とすると、次式、
【0056】
【数8】
【0057】
のような畳込み和(積和演算)式で表される。
【0058】
FIRフィルタ1は、タップ数N(すなわち乗算器の数)が多いほど理想フィルタに近づくことから、ここでは当該FIRフィルタ1でナイキスト特性を得る理論を当該タップ数Nを無視して、シンボル間隔T及びサンプリング時間tのみを用いて導くこととする。
【0059】
入力信号をシンボル間隔T〔sec〕ごとに「1」又は「−1」として他をゼロ補間したサンプリングしたとき、これら各サンプリング点のインパルス応答はシンボル間隔T〔sec〕ごとのインパルス応答となる。この結果を図2に示すと、3種類の入力信号S1A〜S1Cにおける全てのサンプリング点のインパルス応答がシンボル間隔T〔sec〕ごとにナイキスト第1基準を満たしており、この結果、符号間干渉が0であることが証明される。
【0060】
(1−2)FIRコサインロールオフフィルタの実現
理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性を持たせたFIRフィルタ(以下、これをFIRコサインロールオフフィルタと呼ぶ)を実現する。
【0061】
まず既に算出されている結果に基づいて、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答と、FIRフィルタの各乗算器の係数(以下、単にFIRフィルタ係数と呼ぶ)とが得られることから、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答をFIRフィルタ係数で割り算することにより、理論コサインロールオフフィルタで使用される最適な窓関数(以下、これをロールオフ窓関数と呼ぶ)の値が得られることがわかる。
【0062】
通常窓関数とは、時間窓の具体的な形状を規定した関数をいい、入力信号と掛け合わせることで、タップ数が有限であることから生じる周期境界上の不連続(リップル等)を軽減させ得るようになされるものであるが、ロールオフ窓関数は、目的の理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得るための時間窓を規定する関数とする。
【0063】
従ってこのように逆算して求めたロールオフ窓関数をFIRフィルタ係数に乗算することにより、図3に示すように目的の理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答S2Bを得ることができる。なおS2Aは窓関数がないFIR係数を示し、S2Cはロールオフ窓関数を示す。この図3においてFIRフィルタ係数S2Bは、グラフとして比較し易いように実際の係数を1に正規化している。
【0064】
(1−3)FIRコサインロールオフフィルタの係数算出方法
実際に、FIRフィルタ1を用いて理想コサインロールオフフィルタを実現するための係数算出方法を、図4に示すFIRコサインロールオフフィルタ設定処理手順RT1に従ってステップSP0から順に説明する。
【0065】
(1−3−1)必要パラメータの設定
FIRフィルタ1について、理想コサインロールオフフィルタを実現するにあたって、まず各種必要なパラメータを設定する(ステップSP1)。タップ数(すなわちフィルタ段数)Sを奇数とし、各乗算器の係数のうち最大添え字nを(S/2−0.5)とし、カットオフ周波数fcをデータレートの1/2とし、シンボル時間Tを1/fとし、シンボルサンプル数DSをシンボル内のサンプリング数とし、ロールオフ率αを0〜1とし、サンプリング周波数fsをfs×(DS×2)とし、サンプリング時間tsを1/fs=1/fc×(DS×2)とし、カットオフ周波数ωcを2πf(=2π×fc/fs)とそれぞれ設定する。
【0066】
(1−3−2)FIRフィルタ係数(窓関数なし)の計算
上述のように求めた必要なパラメータを次式、
【0067】
【数9】
【0068】
【数10】
【0069】
にそれぞれ代入することにより、窓関数なしのFIRフィルタ係数を算出する(ステップSP2)。
【0070】
(1−3−3)理論コサインロールオフフィルタの各サンプル時間の算出
理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答の算出に必要な各サンプリングの時間tm、t0は、それぞれ次式、
【0071】
【数11】
【0072】
【数12】
【0073】
のように求められる(ステップSP2)。この式(11)及び(12)により、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答は、ナイキスト第1基準を満足するインパルス応答となり、シンボルごとにゼロクロスする。これにより理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答のサンプリング周波数をFIRフィルタのサンプリング周波数に正規化させることができる。
【0074】
(1−3−4)理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答の算出
理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答ROLL(m)は、上述した各種パラメータや式(11)及び(12)を代入することにより、次式、
【0075】
【数13】
【0076】
のように求められ、時間軸を正規化することができる(ステップSP3)。
【0077】
(1−3−5)ロールオフ窓関数の算出
ロールオフ窓関数ROLL−MADO(m)は、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答ROLL(m)を、FIRフィルタ係数FIR(m)で割り算することにより、次式
【0078】
【数14】
【0079】
のように表される(ステップSP4)。
【0080】
理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答ROLL(m)と、FIRフィルタ係数FIR(m)のレベルが違うため、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答ROLL(m)をFIRフィルタ係数FIR(m)のレベルと時間軸を正規化することにより、ロールオフ窓関数ROLL−MADO(m)を算出することができる。
【0081】
(1−3−6)理論コサインロールオフフィルタの実現
上述のような演算を実行するようにして、FIRフィルタに理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性を持たせてなるFIRコサインロールオフフィルタを実現するには、FIRフィルタ係数(窓関数なし)に、式(14)で算出されたロールオフ窓関数ROLL−MADO(m)を乗算すれば良いことがわかる(ステップSP5)。
【0082】
(1−4)端末装置の構成
実際にFIRコサインロールオフフィルタは、図5に示すような端末装置10を用いて、上述のようなFIRコサインロールオフフィルタ設定処理手順RT1(図4)を実行することにより構築されるようになされている。
【0083】
この図5において、端末装置10は、全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit )11と、各種ソフトウェアが格納されたROM(Read Only Memory)12と、CPU11のワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)13と、各種データが格納されたハードディスク装置14と、CPU11が必要に応じて外部と通信するためのインターフェースであるインターフェース部15と、ディスプレイ16が接続された画像処理部17と、キーボード18及びマウス19が接続されたインターフェース部20とを有し、これらがバス21を介して相互に接続されることにより構成されている。
【0084】
この場合CPU11は、外部から与えられるデータやコマンドをインターフェース部15を介して取り込み、当該データやコマンドと、ROM12に格納されているソフトウェアとに基づいて上述のような各種演算処理を実行するようになされている。
【0085】
実際にはCPU11は、上述した図4に示すFIRコサインロールオフフィルタ設定処理手順RT1において、ステップSP4で算出されたロールオフ窓関数ROLL−MADO(m)をRAM13やハードディスク装置14に一時的に記憶しておき、続くステップSP5の場合や必要に応じて読み出すようになされている。
【0086】
(1−5)無線送信機の構成
図6は、本発明によるFIRコサインロールオフフィルタを適用した無線送信機30の構成を示し、マイクロホン31から出力されるアナログ音声信号S5をマイクアンプ32を介してアナログ/ディジタル変換回路33に入力する。
【0087】
アナログ/ディジタル変換回路33は、供給されるアナログ音声信号S5をアナログ/ディジタル変換し、かくして得られたディジタル音声信号D1をベースバンド処理回路34に送出する。
【0088】
ベースバンド処理回路34は、供給されるディジタル音声信号D1に対してデータ圧縮処理やイコライジング処理及びパケット化処理等の信号処理を施し、かくして得られたベースバンド処理信号D2をディジタル変調回路35に送出する。
【0089】
ディジタル変調回路35は、供給されるベースバンド処理信号D2に対して帯域制限、ディジタル/アナログ変換、LPF及びπ/4シフトQPSK変調処理等の所定の信号処理を順次施し、かくして得られたπ/4シフトQPSK変調信号S6を周波数変換回路36に送出する。
【0090】
周波数変換回路36は、供給されるπ/4シフトQPSK変調信号S6の周波数を送信用の所定周波数にまでアップコンバートし、かくして得られた周波数変換変調信号S7をRF(Radio Frequency)アンプ37及びアンテナ38を順次介して送信信号S8として受信器(図示せず)に送信する。
【0091】
この無線送信機30におけるディジタル変調回路35の詳細構成を図7に示す。このディジタル変調回路35においては、入力段にπ/4シフトQPSKマッピング回路40を有し、ベースバンド処理回路34(図6)から出力されるベースバンド処理信号D2をπ/4シフトQPSK変調方式に準ずるようにマッピングし、そのマッピングデータを搬送波の同相成分及び直交成分に応じた2系統に分離して、それぞれI相レベルマッピング回路41及びQ相レベルマッピング回路42に送出する。
【0092】
I相レベルマッピング回路41及びQ相レベルマッピング回路42は、π/4シフトQPSKマッピング回路40からのI相レベルマッピングデータ、Q相レベルマッピングデータに基づいて、当該入力データに応じた「±1」、「±1/√2」、「0」の5値をそれぞれ出力する。
【0093】
このπ/4シフトQPSK変調方式は、1つの搬送波の同相(I相)成分と直交(Q相)成分とを用いて同時に2ビットのデータを伝送するQPSK変調方式の一種であり、1シンボル毎にπ/4ずつ位相面を回転させた搬送波が用いられる点において通常のQPSK変調方式と相違する。従って、π/4シフトQPSK変調方式では、連続するシンボル間の位相差は±π/4、±3π/4となる。
【0094】
このようにI相レベルマッピング回路41及びQ相レベルマッピング回路42においてそれぞれマッピング/レベル変換処理されたI信号D5A及びQ信号D5Bは、後段にそれぞれ対応して設けられたFIRコサインロールオフフィルタ43、44に供給される。かくして各FIRコサインロールオフフィルタ43、44において、マッピング/レベル変換処理されたI信号D5A及びQ信号D5Bに対して理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性を持たせるようにフィルタリング処理を実行することにより、当該I信号D5A及びQ信号D5Bについてシンボル間で符号間干渉が生じるのを未然に防止しつつ、変調周波数帯域幅の狭帯域化を図ることができる。
【0095】
このようにFIRコサインロールオフフィルタ43、44においてフィルタリング処理されたI信号D6A及びQ信号D6Bは、後段の対応するD/A(Digital/Analog)変換回路45、46を介してアナログ信号に変換され折り返し歪みをLPF47、48で除去した後、直交変換回路49において所定の直交変調処理を施すことにより、得られたπ/4シフトQPSK変調信号S6が周波数変換回路36(図5)に送出される。
【0096】
(1−6)第1の実施の形態による動作及び効果
以上の構成において、FIRコサインロールオフフィルタを構築する際、まず各種必要なパラメータを設定した後、FIRフィルタ係数を算出し、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答に必要なサンプリング時間を求めるようにして、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答を算出する。
【0097】
そしてかかる理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答をFIRフィルタ係数で割り算することにより、理論コサインロールオフフィルタのロールオフ窓関数を求めることができ、この結果、FIRフィルタ係数にロールオフ窓関数を乗算すれば、理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性をFIRフィルタに持たせてなるFIRコサインロールオフフィルタを構築することができる。
【0098】
この結果、例えば無線型式に応じて帯域制限フィルタのフィルタ特性を可変させる場合に、FIRコサインロールオフフィルタにおけるFIRフィルタ係数に応じてロールオフ窓関数が算出されることから、結果的にFIRフィルタ係数のみを可変させるだけで当該FIRフィルタ係数をロールオフ特性を保ちながら設定することができる。
【0099】
以上の構成によれば、このFIRフィルタについて、FIRフィルタ係数と理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答とを算出しておき、当該算出結果に基づいて理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性を求めるようにしてFIRコサインロールオフフィルタを構築するようにしたことにより、例えば無線型式に応じて帯域制限フィルタのフィルタ特性を可変させる場合に、FIRコサインロールオフフィルタにおけるFIRフィルタ係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら設定することができ、かくして高特性を維持しながら容易に調整を行い得るFIRコサインロールオフフィルタを実現できる。
【0100】
(2)第2の実施の形態
第2の実施の形態では、ディジタル構成の帯域制限フィルタとして、FIRフィルタを用いて、当該FIRフィルタにルートロールオフフィルタのルートロールオフ特性を持たせるようになされている。
【0101】
(2−1)ルートロールオフフィルタの特性
ここでルートロールオフフィルタとは、通信システムでは、一般的に送信側ばかりでなく、受信側でも雑音除去の目的などのためフィルタリングするのが一般的で、受信側でロールオフ特性を満たしていれば通信が可能であることから、上述した式(6)で表されるコサインロールオフフィルタの伝達関数G(f)の平方根で表されるフィルタであり、その特性はロールオフフィルタに比べて、ロールオフ率によってはルートロールオフフィルタの方が振幅変動が少なく、電力増幅での非線形歪の発生を抑える働きをする。
【0102】
ルートロールオフフィルタの伝達関数M(t)は、コサインロールオフフィルタの伝達関数G(t)を用いると、次式
【0103】
【数15】
【0104】
で表され、具体的には、次式
【0105】
【数16】
【0106】
で表されるものである。
【0107】
かかる式(16)を図8に示すようにグラフ化すると、以下の第1〜第4のような特徴が得られる。第1に、ルートロールオフフィルタの伝達関数M(t)が1/(2T)において1/√2で交差しており、第2に、ロールオフ率α=0のとき、理想フィルタ特性と一致し、第3に、ロールオフ率αを大きくすると伝達関数M(t)は緩やかになり、第4に、ロールオフ率α=0のとき、周波数帯域は広くなりインパルス応答の残留応答が短くなる。
【0108】
このルートロールオフフィルタのインパルス応答m(t)は、式(16)で示される伝達関数M(t)を逆フーリエ変換することで、次式、
【0109】
【数17】
【0110】
のように得られる。実際に図9(A)及び(B)〜図11(A)及び(B)において、各ロールオフ率(α=0、0.5、1)のインパルス応答及びフィルタ出力波形を示す。
【0111】
これら図9(A)及び(B)〜図11(A)及び(B)からわかるように、第1に、ロールオフ率αが0以外では、ナイキスト第1〜第3基準を満たさず、第2に、レベルがロールオフ率αに応じて変化するという特徴がある。
【0112】
(2−2)FIRルートロールオフフィルタの実現
理論ルートロールオフフィルタのロールオフ特性を持たせたFIRフィルタ(以下、これをFIRルートロールオフフィルタと呼ぶ)を実現する。
【0113】
まず既に算出されている結果に基づいて、理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答と、FIRフィルタ係数とが得られることから、理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答をFIRフィルタ係数で割り算することにより、理論ルートロールオフフィルタで使用される最適な窓関数(以下、これをルートロールオフ窓関数と呼ぶ)の値が得られることがわかる。
【0114】
従ってこのように逆算して求めたルートロールオフ窓関数をFIRフィルタ係数に乗算することにより、図12に示すように目的の理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答S10Aを得ることができる。なおS10Bは窓関数がないFIR係数を示し、S10Cはロールオフ窓関数を示す。
【0115】
この図12においてFIRフィルタ係数S10Bは、グラフとして比較し易いように正規化してある。因みに、ロールオフ窓関数S10Cは、円滑な線ではないが、これはルートロールオフ特性としたことによって、FIRフィルタ係数(窓関数なし)と理論ルートロールオフとの双方における横軸方向数値偏移の規則性がなくなってしまったからである。
【0116】
理論的には、本方法によってルートロールオフ特性は理論波形を再現することができるが、FIRフィルタで実現する場合は、有限小数点演算のために出力波形は近似波形となる。また上述の図9(A)及び(B)〜図11(A)及び(B)で示す波形は、ナイキスト第1〜第3基準を満たしていないが、受信側においてルートロールオフ特性をもつフィルタを使用することによってナイキスト第1〜第3基準を満たすことが可能になる。
【0117】
ルートロールオフ窓関数の算出方法は、上述した第1の実施の形態におけるロールオフ窓関数の算出方法と同様の方法で求めることができる。具体的には、上述の式(7)において、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答g(t)を、理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答m(t)に置き換えるのみでよい。
【0118】
(2−3)第2の実施の形態による動作及び効果
以上の構成において、FIRルートロールフィルタを構築する際、まず各種必要なパラメータを設定した後、FIRフィルタ係数を算出し、理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答に必要なサンプリング時間を求めるようにして、理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答を算出する。
【0119】
そしてかかる理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答をFIRフィルタ係数で割り算することにより、理論ルートロールオフフィルタのルートロールオフ窓関数を求めることができ、この結果、FIRフィルタ係数にルートロールオフ窓関数を乗算すれば、理論ルートロールオフフィルタのルートロールオフ特性をFIRフィルタに持たせてなるFIRルートロールオフフィルタを構築することができる。
【0120】
この結果、例えば無線型式に応じて帯域制限フィルタのフィルタ特性を可変させる場合に、FIRルートロールオフフィルタにおけるFIRフィルタ係数に応じてルートロールオフ窓関数が算出されることから、結果的にFIRフィルタ係数のみを可変させるだけで当該FIRフィルタ係数をルートロールオフ特性を保ちながら設定することができる。
【0121】
以上の構成によれば、このFIRフィルタについて、FIRフィルタ係数と理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答とを算出しておき、当該算出結果に基づいて理論ルートロールオフフィルタのルートロールオフ特性を求めるようにしてFIRルートロールオフフィルタを構築するようにしたことにより、例えば無線型式に応じて帯域制限フィルタのフィルタ特性を可変させる場合に、FIRルートロールオフフィルタにおけるFIRフィルタ係数のみを可変させるだけでルートロールオフ特性を保ちながら設定することができ、かくして高特性を維持しながら容易に調整を行い得るFIRルートロールオフフィルタを実現できる。
【0122】
(3)他の実施の形態
なお上述のように第1及び第2の実施の形態においては、FIRコサインロールオフフィルタ及びFIRルートロールオフフィルタを構成するディジタルフィルタとして、図1に示すように、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するFIRフィルタから構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、フィルタ係数をソフトウェア的に調整することができれば、FIRフィルタ以外にもコムフィルタやIIR(Infinite Impulse Response)フィルタ等に広く適用するようにしても良い。
【0123】
また第1及び第2の実施の形態においては、FIRコサインロールオフフィルタ及びFIRルートロールオフフィルタを構成するFIRフィルタとして、図1に示すように、信号入力段に直列接続された(N−1)(Nは2以上の自然数)個の遅延素子T0〜TN−2と、各遅延素子T0〜TN−2の前段及び最後尾の遅延素子TNの後段からそれぞれ分岐して接続されたN個の乗算器A0〜AN−1と、各乗算器A0〜ANー1の出力段にそれぞれ接続され、順次加算結果を積算して最後尾の信号出力段から出力する(N−1)個の加算器P0〜PN−2とからなる直接型構成のFIRフィルタで構築するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、直接型構成以外にも転置型構成のFIRフィルタを用いるようにしても良い。
【0124】
例えば図13に示すように、信号入力段に並列接続されたN(例えば4)個の乗算器A0〜AN−1と、2番目以降の各乗算器A1〜AN−1の出力段にそれぞれ対応して接続され、順次加算結果を積算して最後尾の信号出力段から出力する(N−1)個の加算器P0〜PN−2と、先頭の乗算器A0の出力段及び各加算器P0〜PN−2の入力段にそれぞれ接続された(N−1)個の遅延素子T0〜TN−2とからなる転置型構成のFIRフィルタ50を適用しても良い。
【0125】
さらに上述のように第1及び第2の実施の形態においては、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を、窓関数が乗算されていない各乗算器の係数で割り算することによりロールオフ窓関数を求め、当該ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるようにFIRフィルタ係数(各乗算器の係数)を設定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は理論ロールオフフィルタのインパルス応答をFIRフィルタ係数(各乗算器の係数)のレベルに正規化することによりロールオフ窓関数を算出することができれば、この他種々の方法でロールオフ窓関数を求めるようにしても良い。
【0126】
さらに上述の実施の形態においては、ディジタルフィルタの係数算出装置として図5に示すような端末装置10を用い、当該端末装置10が上述のようなFIRコサインロールオフフィルタ設定処理手順RT1(図4)を実行することによりFIRコサインロールオフフィルタを構築するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、データの演算処理及び記憶処理を行い得るものであれば、この他種々の構成からなる装置に広く適用することができる。
【0127】
すなわちディジタルフィルタの係数算出装置としての端末装置10において、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベルに正規化することによりロールオフ窓関数を算出する算出手段と、当該ロールオフ窓関数に基づいて当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数を設定する設定手段とを、端末装置10内のCPU11から構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、CPU11以外の他の係数算出手段を適用しても良く、また算出手段及び設定手段を別体の手段に分けてそれぞれ対応する演算処理を順次行うようにしても良い。
【0128】
さらに上述の実施の形態においては、図6に示すような無線送信機30のディジタル変調回路35内に上述のようなFIRコサインロールオフフィルタ43、44を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は入力信号に応じてフィルタ係数を調整する必要のある装置であれば、この他種々の装置に広く適用することができる。
【0129】
さらに上述の実施の形態においては、理想ロールオフ特性及び理想ルートロールオフ特性の実現のために、フィルタのタップ数Nを無視するようにした場合について述べたが、実際にハードウェアを構成する上でタップ数Nを有限にした場合には、打切り誤差により減衰特性が悪化するため、実際にはロールオフ窓関数及びルートロールオフ窓関数に一般的な打切り誤差低減用の窓関数を乗算することにより、理想ロールオフ特性及び理想ルートロールオフ特性に近似しながら減衰特性の良いフィルタを得ることができる。
【0130】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタにおいて、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することにより算出されたロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数が設定されるようにしたことにより、無線型式に応じてフィルタ特性を可変させる場合に、各係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら当該各係数を設定することができ、かくして高特性を維持しながら容易に調整を行い得るディジタルフィルタを実現することができる。
【0131】
また本発明においては、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタの係数算出装置において、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することによりロールオフ窓関数を算出する算出手段と、当該ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数を設定する設定手段とを設けるようにしたことにより、無線型式に応じてフィルタ特性を可変させる場合に、ディジタルフィルタの各係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら当該各係数を設定することができ、かくして高特性を維持しながら容易に調整を行い得るディジタルフィルタの係数算出装置を実現することができる。
【0132】
さらに本発明においては、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタの係数算出方法において、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することによりロールオフ窓関数を算出した後、当該ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数を設定するようにしたことにより、無線型式に応じてフィルタ特性を可変させる場合に、ディジタルフィルタの各係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら当該各係数を設定することができ、かくして高特性を維持しながら容易に調整を行い得るディジタルフィルタの係数算出方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるFIRフィルタの構成を示すブロック図である。
【図2】FIRフィルタ出力とナイキスト点との関係の説明に供するグラフである。
【図3】コサインロールオフフィルタのインパルス応答の説明に供するグラフである。
【図4】FIRコサインロールオフフィルタ設定処理手順を示すフローチャートである。
【図5】端末装置の構成を示すブロック図である。
【図6】無線送信機の構成を示すブロック図である。
【図7】図7に示す無線送信機内のディジタル変調回路の構成を示すブロック図である。
【図8】ルートロールオフフィルタの伝達関数の説明に供するグラフである。
【図9】ロールオフ率αが0のときのインパルス応答及びフィルタ出力波形の説明に供するグラフである。
【図10】ロールオフ率αが0.5のときのインパルス応答及びフィルタ出力波形の説明に供するグラフである。
【図11】ロールオフ率αが1のときのインパルス応答及びフィルタ出力波形の説明に供するグラフである。
【図12】ルートロールオフフィルタのインパルス応答の説明に供するグラフである。
【図13】他の実施の形態によるFIRフィルタの構成を示すブロック図である。
【図14】矩形波のインパルス応答の説明に供するグラフである。
【図15】矩形波の伝達関数の説明に供するグラフである。
【図16】矩形波伝送での隣接チャネル干渉の説明に供するグラフである。
【図17】帯域制限した一例の説明に供するグラフである。
【図18】符号間干渉のない波形を示すグラフである。
【図19】符号間干渉のある波形を示すグラフである。
【図20】理想フィルタの伝達関数の説明に供するグラフである。
【図21】理想フィルタのインパルス応答の説明に供するグラフである。
【図22】ロールオフフィルタのフィルタ特性の説明に供するグラフである。
【図23】ロールオフフィルタの伝達関数の説明に供するグラフである。
【図24】ロールオフ率αが0のときのインパルス応答及びフィルタ出力波形の説明に供するグラフである。
【図25】ロールオフ率αが0.5のときのインパルス応答及びフィルタ出力波形の説明に供するグラフである。
【図26】ロールオフ率αが1のときのインパルス応答及びフィルタ出力波形の説明に供するグラフである。
【符号の説明】
1、50……FIRフィルタ、10……端末装置、11……CPU、30……無線送信機、35……ディジタル変調回路、43、44……FIRコサインロールオフフィルタ、RT1……FIRコサインロールオフフィルタ設定処理手順。
【発明の属する技術分野】
本発明はディジタルフィルタ並びにその係数算出装置及び係数算出方法に関し、例えばディジタルフィルタを用いた無線送信機に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の無線送信機においては、無線通信において周波数利用効率の向上を図るために、広帯域なディジタル信号を狭帯域化して伝送するようになされている。
【0003】
その際、狭帯域化に伴い、隣接チャネルへの干渉を極小化して信号品質を劣化させないようにすることが条件とされる。
【0004】
例えば、時間tにおけるディジタル信号a(t)のスペクトルを解析するにあたって、当該ディジタル信号a(t)の矩形波をg(t)としたとき、そのインパルス応答は、シンボル周期をTとして、次式
【0005】
【数1】
【0006】
で表され、図14のようなグラフ上に表される。
【0007】
この矩形波g(t)についての伝達関数G(t)は、次式
【0008】
【数2】
【0009】
で表されるような当該矩形波g(t)のフーリエ変換で与えられ、実際には図15に示すようにスペクトルが無限に広がっている状態で表される。
【0010】
このように矩形波g(t)の帯域幅が無限大ということは、図16に示すように、隣接チャネルに対して干渉を与えることとなり、この隣接チャネルへの干渉を無くすために帯域制限をすると、図17に示すように、隣接チャネルへの影響が少なくチャネル間隔を狭くすることが可能となる。
【0011】
この結果、帯域制限により、周波数利用効率の向上及び隣接チャネルへの干渉による符号誤り率の低下といった効果を得ることができる。
【0012】
しかし、ディジタル信号伝送の劣化要因として、上述のような帯域制限の必要性に加えて、帯域制限フィルタの符号間干渉の問題がある。
【0013】
すなわち例えばπ/4シフトQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式における搬送波の同相(I相)成分及び直交(Q相)成分に基づくI信号SI及びQ信号SQについて考えると、符号間干渉のない波形を図18に示す一方、符号間干渉のある波形を図19に示す。この図18及び図19では、I信号及びQ信号の振幅レベルは「±1」、「±1/√2」、「0」の5値である。
【0014】
まず図18に示す符号間干渉のない波形では、データはシンボル周期(T)ごとにI信号SI及びQ信号SQの振幅レベルを通過するが、図19に示す符号間干渉のある波形では、I信号SI及びQ信号SQの振幅レベルを通過しない。従ってフィルタ出力の波形がI信号SI及びQ信号SQの振幅レベルを通過しないため、シンボル値が誤判定になる可能性が高くなり、ビットエラーが生じるおそれがある。
【0015】
上述のような狭帯域化の際において隣接チャネルへの干渉や符号間干渉を極小化するフィルタとして、ナイキストフィルタが現代のディジタル信号伝送に用いられるのが一般的である。
【0016】
かかるナイキストフィルタでは、所定時間T〔秒〕の時間間隔(以下、これをナイキスト間隔と呼ぶ)でパルスを無歪みで伝送するためには1/(2T)〔Hz〕が必要最低限の帯域であり、当該1/(2T)〔Hz〕を越える帯域が許される場合は、符号間干渉を0にするようになされたフィルタである。
【0017】
このナイキストフィルタを用いた符号間干渉が0のシステムでは、そのインパルス応答がナイキスト間隔で(すなわち時間T〔秒〕ごとに)ゼロクロスしなければならないという基準がある(以下、この基準をナイキスト第1基準と呼ぶ)。かかるナイキスト第1基準は、カットオフ周波数fが1/(2T)を満たす、次式、
【0018】
【数3】
【0019】
であることが条件とされる。
【0020】
このようなナイキスト第1基準を満たしたフィルタのうち理想フィルタについて説明する。まず矩形波であるディジタル信号を一般的なLPFに入力すると、周波数により特性の異なる減衰や位相遅れが発生して振幅歪みと位相歪みとが発生する。その際、理想フィルタの条件として、第1に、特定の周波数成分を一定量減衰すること、第2に、特定の周波数成分以外の成分を完全に抑圧すること、第3に、周波数に比例した位相遅れを生じさせることが挙げられる。
【0021】
そして理想フィルタの伝達関数H(f)は、次式
【0022】
【数4】
【0023】
のように表され、この結果が図20のように表される。かかる伝達関数H(f)を逆フーリエ変換すると、当該伝達関数H(f)のインパルス応答H(t)が次式、
【0024】
【数5】
【0025】
として得ることができ、この結果が図21のように表される。このことから、理想フィルタのインパルス応答H(t)は、矩形波の伝達関数H(f)と同一であることがわかる。
【0026】
ところで、フィルタ出力は、入力信号の伝達関数とフィルタのインパルス応答の畳み込みであることから、矩形波の伝達関数から理想フィルタのインパルス応答を差し引いたものは0であることがわかる。
【0027】
このことは理想フィルタにおいて、矩形波の基本波より高い周波数成分は0に減衰され、低い周波数成分は1となることを表している。これが理想フィルタの減衰理論である。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなナイキスト第1基準を満足した、カットオフ周波数f(=1/(2T)、T:シンボル間隔)となる理想フィルタは、インパルス応答が負の時間も含めた無限長になり実現不可能であるため、実際には有限長インパルス応答でありながら、ナイキスト第1基準を満たすフィルタであるロールオフフィルタが使用される。
【0029】
かかるロールオフフィルタは、ロールオフ率と呼ばれるパラメータαに応じて遮断特性が異なるフィルタである。この遮断特性は、図22に示すように、ロールオフ率αが0に近づく(すなわち理想フィルタに近づく)と、急峻な特性となって周波数利用効率が向上するといった長所がある一方、インパルス応答のサイドローブの値が大きくなるため、アイパターンが狭くなりビットエラーが生じ易くなるといった短所がある。
【0030】
実際上、ロールオフフィルタの遮断域特性は、後述するように余弦波(コサイン)として表現されるため、このようなLPFをコサインロールオフフィルタと呼ぶ。
【0031】
このコサインロールオフフィルタにおいては、上述したナイキスト第1基準に加えて、所定のサンプルレートによるサンプリング点間の中点においてインパルス応答がゼロクロスする条件(以下、これをナイキスト第2基準と呼ぶ)と、インパルス応答の1サンプリング区間の積分値が入力信号の振幅に比例するための条件(以下、これをナイキスト第3基準と呼ぶ)をも満たすようになされている。
【0032】
実際にロールオフフィルタは、ロールオフ率αが1のときに符号間干渉が0となってナイキスト第2基準を満たすと共に、正弦波の逆数で表されるナイキスト第1基準を満たす伝達関数に対して当該正弦波の逆数が乗算された関数は全てナイキスト第3基準を満たすこととがわかる。
【0033】
かかるコサインロールオフフィルタは、上述のナイキスト第1〜第3基準を全て満足するフィルタであり、当該フィルタの伝達関数G(t)は、サンプル時間をt、シンボル時間をT、ロールオフ率をαとしたとき、次式、
【0034】
【数6】
【0035】
で表される。
【0036】
この式(6)によると、図23に示すように、第1に、1/(2T)において伝達関数G(t)が0.5で交差しており、第2に、ロールオフ率αが0のとき理想フィルタ特性と一致し、第3に、ロールオフ率αの値を大きくすると伝達関数G(t)は緩やかになり、第4に、ロールオフ率αが0のとき周波数帯域が広くなりインパルス応答の残留応答が短くなるといった特徴を有する。
【0037】
このコサインロールオフフィルタのインパルス応答g(t)は、上述した伝達関数G(t)を逆フーリエ変換することにより、次式、
【0038】
【数7】
【0039】
として得られる。実際に図24(A)及び(B)〜図26(A)及び(B)において、各ロールオフ率(α=0、0.5、1)のインパルス応答及びフィルタ出力波形を示す。
【0040】
図24(A)及び(B)〜図26(A)及び(B)により、コサインロールオフフィルタはナイキスト第1〜第3基準を満たしていることがわかる。
【0041】
ところが、例えば無線型式に応じて帯域制限フィルタのフィルタ特性をコサインロールオフフィルタのロールオフ特性を保ちながら可変させる場合、通常のアナログフィルタを帯域制限フィルタとして使用したときには、内部調整するには回路構成が物理的に取り替える必要があるため実用上不十分である一方、ディジタルフィルタを帯域制限フィルタとして使用したときには、内部調整にはソフトウェア的な処理をすれば良いのだが、実際にはロールオフ特性を持たせながら行うことは非常に煩雑で困難な問題があった。
【0042】
従って、ディジタルフィルタを用いて、このフィルタ特性をロールオフ特性を持たせながら無線型式に応じて可変するには、比較的簡単な手法でソフトウェア的に内部調整するだけで行い得ることが望ましい。
【0043】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、高特性を維持しながら容易に調整を行い得るディジタルフィルタ並びにその係数算出装置及び係数算出方法を提案しようとするものである。
【0044】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明においては、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタにおいて、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することにより算出されたロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数が設定されるようにした。
【0045】
この結果このディジタルフィルタでは、各係数にロールオフ窓関数を乗算すれば、理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性をディジタルフィルタに持たせることができ、無線型式に応じてフィルタ特性を可変させる場合に、各係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら当該各係数を設定することができる。
【0046】
また本発明においては、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタの係数算出装置において、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することによりロールオフ窓関数を算出する算出手段と、ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数を設定する設定手段とを設けるようにした。
【0047】
この結果このディジタルフィルタの係数算出装置では、各係数にロールオフ窓関数を乗算すれば、理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性をディジタルフィルタに持たせることができ、無線型式に応じてフィルタ特性を可変させる場合に、ディジタルフィルタの各係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら当該各係数を設定することができる。
【0048】
さらに本発明においては、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタの係数算出方法において、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することによりロールオフ窓関数を算出する第1のステップと、ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数を設定する第2のステップとを設けるようにした。
【0049】
この結果このディジタルフィルタの係数算出方法では、各係数にロールオフ窓関数を乗算すれば、理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性をディジタルフィルタに持たせることができ、無線型式に応じてフィルタ特性を可変させる場合に、ディジタルフィルタの各係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら当該各係数を設定することができる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0051】
(1)第1の実施の形態
第1の実施の形態では、ディジタル構成の帯域制限フィルタとして、FIR(Finite Impulse Response)フィルタを用いて、当該FIRフィルタにコサインロールオフフィルタのロールオフ特性を持たせるようになされている。
【0052】
(1−1)FIRフィルタの構成
FIRフィルタは、群遅延がない、すなわち出力の位相特性が入力信号のあらゆる周波数成分に対して一定の遅延時間のみを与えたものとなる、位相特性の良い直線位相フィルタを構成するようになされている。
【0053】
図1に示すように、FIRフィルタ1は、遅延段数を表すタップ数を4個としたとき、信号入力段に直列接続された3個の遅延素子T0〜T2と、当該各遅延素子T0〜T2の前段及び最後尾の遅延素子T2の後段からそれぞれ分岐して接続された4個の乗算器A0〜A3と、当該各乗算器A0〜A3の出力段にそれぞれ接続され、順次加算結果を積算する3個の加算器P0〜P2とから構成されており、このうち最後尾の加算器P2が当該FIRフィルタ1の信号出力段となる。
【0054】
通常ディジタルフィルタでナイキストフィルタを構成する場合は、アナログで実現した場合のナイキストフィルタのインパルス応答をサンプルレート(1/t)でサンプリングした値を利用するようになされている。例えばシンボルレート(1/T)に対して3倍のサンプルレートを有するディジタルフィルタを実現する場合には、T=3tとなる。
【0055】
このFIRフィルタ1の出力であるインパルス応答y(nt)は、シンボル間隔をT〔sec〕の入力信号x(nt)が入力されるとき、サンプリング時間をt〔sec〕(上述の例ではT/3)とし、かつ各乗算器の係数をそれぞれh(k)(k=0、1、…、N−1)とすると、次式、
【0056】
【数8】
【0057】
のような畳込み和(積和演算)式で表される。
【0058】
FIRフィルタ1は、タップ数N(すなわち乗算器の数)が多いほど理想フィルタに近づくことから、ここでは当該FIRフィルタ1でナイキスト特性を得る理論を当該タップ数Nを無視して、シンボル間隔T及びサンプリング時間tのみを用いて導くこととする。
【0059】
入力信号をシンボル間隔T〔sec〕ごとに「1」又は「−1」として他をゼロ補間したサンプリングしたとき、これら各サンプリング点のインパルス応答はシンボル間隔T〔sec〕ごとのインパルス応答となる。この結果を図2に示すと、3種類の入力信号S1A〜S1Cにおける全てのサンプリング点のインパルス応答がシンボル間隔T〔sec〕ごとにナイキスト第1基準を満たしており、この結果、符号間干渉が0であることが証明される。
【0060】
(1−2)FIRコサインロールオフフィルタの実現
理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性を持たせたFIRフィルタ(以下、これをFIRコサインロールオフフィルタと呼ぶ)を実現する。
【0061】
まず既に算出されている結果に基づいて、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答と、FIRフィルタの各乗算器の係数(以下、単にFIRフィルタ係数と呼ぶ)とが得られることから、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答をFIRフィルタ係数で割り算することにより、理論コサインロールオフフィルタで使用される最適な窓関数(以下、これをロールオフ窓関数と呼ぶ)の値が得られることがわかる。
【0062】
通常窓関数とは、時間窓の具体的な形状を規定した関数をいい、入力信号と掛け合わせることで、タップ数が有限であることから生じる周期境界上の不連続(リップル等)を軽減させ得るようになされるものであるが、ロールオフ窓関数は、目的の理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得るための時間窓を規定する関数とする。
【0063】
従ってこのように逆算して求めたロールオフ窓関数をFIRフィルタ係数に乗算することにより、図3に示すように目的の理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答S2Bを得ることができる。なおS2Aは窓関数がないFIR係数を示し、S2Cはロールオフ窓関数を示す。この図3においてFIRフィルタ係数S2Bは、グラフとして比較し易いように実際の係数を1に正規化している。
【0064】
(1−3)FIRコサインロールオフフィルタの係数算出方法
実際に、FIRフィルタ1を用いて理想コサインロールオフフィルタを実現するための係数算出方法を、図4に示すFIRコサインロールオフフィルタ設定処理手順RT1に従ってステップSP0から順に説明する。
【0065】
(1−3−1)必要パラメータの設定
FIRフィルタ1について、理想コサインロールオフフィルタを実現するにあたって、まず各種必要なパラメータを設定する(ステップSP1)。タップ数(すなわちフィルタ段数)Sを奇数とし、各乗算器の係数のうち最大添え字nを(S/2−0.5)とし、カットオフ周波数fcをデータレートの1/2とし、シンボル時間Tを1/fとし、シンボルサンプル数DSをシンボル内のサンプリング数とし、ロールオフ率αを0〜1とし、サンプリング周波数fsをfs×(DS×2)とし、サンプリング時間tsを1/fs=1/fc×(DS×2)とし、カットオフ周波数ωcを2πf(=2π×fc/fs)とそれぞれ設定する。
【0066】
(1−3−2)FIRフィルタ係数(窓関数なし)の計算
上述のように求めた必要なパラメータを次式、
【0067】
【数9】
【0068】
【数10】
【0069】
にそれぞれ代入することにより、窓関数なしのFIRフィルタ係数を算出する(ステップSP2)。
【0070】
(1−3−3)理論コサインロールオフフィルタの各サンプル時間の算出
理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答の算出に必要な各サンプリングの時間tm、t0は、それぞれ次式、
【0071】
【数11】
【0072】
【数12】
【0073】
のように求められる(ステップSP2)。この式(11)及び(12)により、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答は、ナイキスト第1基準を満足するインパルス応答となり、シンボルごとにゼロクロスする。これにより理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答のサンプリング周波数をFIRフィルタのサンプリング周波数に正規化させることができる。
【0074】
(1−3−4)理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答の算出
理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答ROLL(m)は、上述した各種パラメータや式(11)及び(12)を代入することにより、次式、
【0075】
【数13】
【0076】
のように求められ、時間軸を正規化することができる(ステップSP3)。
【0077】
(1−3−5)ロールオフ窓関数の算出
ロールオフ窓関数ROLL−MADO(m)は、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答ROLL(m)を、FIRフィルタ係数FIR(m)で割り算することにより、次式
【0078】
【数14】
【0079】
のように表される(ステップSP4)。
【0080】
理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答ROLL(m)と、FIRフィルタ係数FIR(m)のレベルが違うため、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答ROLL(m)をFIRフィルタ係数FIR(m)のレベルと時間軸を正規化することにより、ロールオフ窓関数ROLL−MADO(m)を算出することができる。
【0081】
(1−3−6)理論コサインロールオフフィルタの実現
上述のような演算を実行するようにして、FIRフィルタに理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性を持たせてなるFIRコサインロールオフフィルタを実現するには、FIRフィルタ係数(窓関数なし)に、式(14)で算出されたロールオフ窓関数ROLL−MADO(m)を乗算すれば良いことがわかる(ステップSP5)。
【0082】
(1−4)端末装置の構成
実際にFIRコサインロールオフフィルタは、図5に示すような端末装置10を用いて、上述のようなFIRコサインロールオフフィルタ設定処理手順RT1(図4)を実行することにより構築されるようになされている。
【0083】
この図5において、端末装置10は、全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit )11と、各種ソフトウェアが格納されたROM(Read Only Memory)12と、CPU11のワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)13と、各種データが格納されたハードディスク装置14と、CPU11が必要に応じて外部と通信するためのインターフェースであるインターフェース部15と、ディスプレイ16が接続された画像処理部17と、キーボード18及びマウス19が接続されたインターフェース部20とを有し、これらがバス21を介して相互に接続されることにより構成されている。
【0084】
この場合CPU11は、外部から与えられるデータやコマンドをインターフェース部15を介して取り込み、当該データやコマンドと、ROM12に格納されているソフトウェアとに基づいて上述のような各種演算処理を実行するようになされている。
【0085】
実際にはCPU11は、上述した図4に示すFIRコサインロールオフフィルタ設定処理手順RT1において、ステップSP4で算出されたロールオフ窓関数ROLL−MADO(m)をRAM13やハードディスク装置14に一時的に記憶しておき、続くステップSP5の場合や必要に応じて読み出すようになされている。
【0086】
(1−5)無線送信機の構成
図6は、本発明によるFIRコサインロールオフフィルタを適用した無線送信機30の構成を示し、マイクロホン31から出力されるアナログ音声信号S5をマイクアンプ32を介してアナログ/ディジタル変換回路33に入力する。
【0087】
アナログ/ディジタル変換回路33は、供給されるアナログ音声信号S5をアナログ/ディジタル変換し、かくして得られたディジタル音声信号D1をベースバンド処理回路34に送出する。
【0088】
ベースバンド処理回路34は、供給されるディジタル音声信号D1に対してデータ圧縮処理やイコライジング処理及びパケット化処理等の信号処理を施し、かくして得られたベースバンド処理信号D2をディジタル変調回路35に送出する。
【0089】
ディジタル変調回路35は、供給されるベースバンド処理信号D2に対して帯域制限、ディジタル/アナログ変換、LPF及びπ/4シフトQPSK変調処理等の所定の信号処理を順次施し、かくして得られたπ/4シフトQPSK変調信号S6を周波数変換回路36に送出する。
【0090】
周波数変換回路36は、供給されるπ/4シフトQPSK変調信号S6の周波数を送信用の所定周波数にまでアップコンバートし、かくして得られた周波数変換変調信号S7をRF(Radio Frequency)アンプ37及びアンテナ38を順次介して送信信号S8として受信器(図示せず)に送信する。
【0091】
この無線送信機30におけるディジタル変調回路35の詳細構成を図7に示す。このディジタル変調回路35においては、入力段にπ/4シフトQPSKマッピング回路40を有し、ベースバンド処理回路34(図6)から出力されるベースバンド処理信号D2をπ/4シフトQPSK変調方式に準ずるようにマッピングし、そのマッピングデータを搬送波の同相成分及び直交成分に応じた2系統に分離して、それぞれI相レベルマッピング回路41及びQ相レベルマッピング回路42に送出する。
【0092】
I相レベルマッピング回路41及びQ相レベルマッピング回路42は、π/4シフトQPSKマッピング回路40からのI相レベルマッピングデータ、Q相レベルマッピングデータに基づいて、当該入力データに応じた「±1」、「±1/√2」、「0」の5値をそれぞれ出力する。
【0093】
このπ/4シフトQPSK変調方式は、1つの搬送波の同相(I相)成分と直交(Q相)成分とを用いて同時に2ビットのデータを伝送するQPSK変調方式の一種であり、1シンボル毎にπ/4ずつ位相面を回転させた搬送波が用いられる点において通常のQPSK変調方式と相違する。従って、π/4シフトQPSK変調方式では、連続するシンボル間の位相差は±π/4、±3π/4となる。
【0094】
このようにI相レベルマッピング回路41及びQ相レベルマッピング回路42においてそれぞれマッピング/レベル変換処理されたI信号D5A及びQ信号D5Bは、後段にそれぞれ対応して設けられたFIRコサインロールオフフィルタ43、44に供給される。かくして各FIRコサインロールオフフィルタ43、44において、マッピング/レベル変換処理されたI信号D5A及びQ信号D5Bに対して理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性を持たせるようにフィルタリング処理を実行することにより、当該I信号D5A及びQ信号D5Bについてシンボル間で符号間干渉が生じるのを未然に防止しつつ、変調周波数帯域幅の狭帯域化を図ることができる。
【0095】
このようにFIRコサインロールオフフィルタ43、44においてフィルタリング処理されたI信号D6A及びQ信号D6Bは、後段の対応するD/A(Digital/Analog)変換回路45、46を介してアナログ信号に変換され折り返し歪みをLPF47、48で除去した後、直交変換回路49において所定の直交変調処理を施すことにより、得られたπ/4シフトQPSK変調信号S6が周波数変換回路36(図5)に送出される。
【0096】
(1−6)第1の実施の形態による動作及び効果
以上の構成において、FIRコサインロールオフフィルタを構築する際、まず各種必要なパラメータを設定した後、FIRフィルタ係数を算出し、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答に必要なサンプリング時間を求めるようにして、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答を算出する。
【0097】
そしてかかる理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答をFIRフィルタ係数で割り算することにより、理論コサインロールオフフィルタのロールオフ窓関数を求めることができ、この結果、FIRフィルタ係数にロールオフ窓関数を乗算すれば、理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性をFIRフィルタに持たせてなるFIRコサインロールオフフィルタを構築することができる。
【0098】
この結果、例えば無線型式に応じて帯域制限フィルタのフィルタ特性を可変させる場合に、FIRコサインロールオフフィルタにおけるFIRフィルタ係数に応じてロールオフ窓関数が算出されることから、結果的にFIRフィルタ係数のみを可変させるだけで当該FIRフィルタ係数をロールオフ特性を保ちながら設定することができる。
【0099】
以上の構成によれば、このFIRフィルタについて、FIRフィルタ係数と理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答とを算出しておき、当該算出結果に基づいて理論コサインロールオフフィルタのロールオフ特性を求めるようにしてFIRコサインロールオフフィルタを構築するようにしたことにより、例えば無線型式に応じて帯域制限フィルタのフィルタ特性を可変させる場合に、FIRコサインロールオフフィルタにおけるFIRフィルタ係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら設定することができ、かくして高特性を維持しながら容易に調整を行い得るFIRコサインロールオフフィルタを実現できる。
【0100】
(2)第2の実施の形態
第2の実施の形態では、ディジタル構成の帯域制限フィルタとして、FIRフィルタを用いて、当該FIRフィルタにルートロールオフフィルタのルートロールオフ特性を持たせるようになされている。
【0101】
(2−1)ルートロールオフフィルタの特性
ここでルートロールオフフィルタとは、通信システムでは、一般的に送信側ばかりでなく、受信側でも雑音除去の目的などのためフィルタリングするのが一般的で、受信側でロールオフ特性を満たしていれば通信が可能であることから、上述した式(6)で表されるコサインロールオフフィルタの伝達関数G(f)の平方根で表されるフィルタであり、その特性はロールオフフィルタに比べて、ロールオフ率によってはルートロールオフフィルタの方が振幅変動が少なく、電力増幅での非線形歪の発生を抑える働きをする。
【0102】
ルートロールオフフィルタの伝達関数M(t)は、コサインロールオフフィルタの伝達関数G(t)を用いると、次式
【0103】
【数15】
【0104】
で表され、具体的には、次式
【0105】
【数16】
【0106】
で表されるものである。
【0107】
かかる式(16)を図8に示すようにグラフ化すると、以下の第1〜第4のような特徴が得られる。第1に、ルートロールオフフィルタの伝達関数M(t)が1/(2T)において1/√2で交差しており、第2に、ロールオフ率α=0のとき、理想フィルタ特性と一致し、第3に、ロールオフ率αを大きくすると伝達関数M(t)は緩やかになり、第4に、ロールオフ率α=0のとき、周波数帯域は広くなりインパルス応答の残留応答が短くなる。
【0108】
このルートロールオフフィルタのインパルス応答m(t)は、式(16)で示される伝達関数M(t)を逆フーリエ変換することで、次式、
【0109】
【数17】
【0110】
のように得られる。実際に図9(A)及び(B)〜図11(A)及び(B)において、各ロールオフ率(α=0、0.5、1)のインパルス応答及びフィルタ出力波形を示す。
【0111】
これら図9(A)及び(B)〜図11(A)及び(B)からわかるように、第1に、ロールオフ率αが0以外では、ナイキスト第1〜第3基準を満たさず、第2に、レベルがロールオフ率αに応じて変化するという特徴がある。
【0112】
(2−2)FIRルートロールオフフィルタの実現
理論ルートロールオフフィルタのロールオフ特性を持たせたFIRフィルタ(以下、これをFIRルートロールオフフィルタと呼ぶ)を実現する。
【0113】
まず既に算出されている結果に基づいて、理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答と、FIRフィルタ係数とが得られることから、理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答をFIRフィルタ係数で割り算することにより、理論ルートロールオフフィルタで使用される最適な窓関数(以下、これをルートロールオフ窓関数と呼ぶ)の値が得られることがわかる。
【0114】
従ってこのように逆算して求めたルートロールオフ窓関数をFIRフィルタ係数に乗算することにより、図12に示すように目的の理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答S10Aを得ることができる。なおS10Bは窓関数がないFIR係数を示し、S10Cはロールオフ窓関数を示す。
【0115】
この図12においてFIRフィルタ係数S10Bは、グラフとして比較し易いように正規化してある。因みに、ロールオフ窓関数S10Cは、円滑な線ではないが、これはルートロールオフ特性としたことによって、FIRフィルタ係数(窓関数なし)と理論ルートロールオフとの双方における横軸方向数値偏移の規則性がなくなってしまったからである。
【0116】
理論的には、本方法によってルートロールオフ特性は理論波形を再現することができるが、FIRフィルタで実現する場合は、有限小数点演算のために出力波形は近似波形となる。また上述の図9(A)及び(B)〜図11(A)及び(B)で示す波形は、ナイキスト第1〜第3基準を満たしていないが、受信側においてルートロールオフ特性をもつフィルタを使用することによってナイキスト第1〜第3基準を満たすことが可能になる。
【0117】
ルートロールオフ窓関数の算出方法は、上述した第1の実施の形態におけるロールオフ窓関数の算出方法と同様の方法で求めることができる。具体的には、上述の式(7)において、理論コサインロールオフフィルタのインパルス応答g(t)を、理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答m(t)に置き換えるのみでよい。
【0118】
(2−3)第2の実施の形態による動作及び効果
以上の構成において、FIRルートロールフィルタを構築する際、まず各種必要なパラメータを設定した後、FIRフィルタ係数を算出し、理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答に必要なサンプリング時間を求めるようにして、理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答を算出する。
【0119】
そしてかかる理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答をFIRフィルタ係数で割り算することにより、理論ルートロールオフフィルタのルートロールオフ窓関数を求めることができ、この結果、FIRフィルタ係数にルートロールオフ窓関数を乗算すれば、理論ルートロールオフフィルタのルートロールオフ特性をFIRフィルタに持たせてなるFIRルートロールオフフィルタを構築することができる。
【0120】
この結果、例えば無線型式に応じて帯域制限フィルタのフィルタ特性を可変させる場合に、FIRルートロールオフフィルタにおけるFIRフィルタ係数に応じてルートロールオフ窓関数が算出されることから、結果的にFIRフィルタ係数のみを可変させるだけで当該FIRフィルタ係数をルートロールオフ特性を保ちながら設定することができる。
【0121】
以上の構成によれば、このFIRフィルタについて、FIRフィルタ係数と理論ルートロールオフフィルタのインパルス応答とを算出しておき、当該算出結果に基づいて理論ルートロールオフフィルタのルートロールオフ特性を求めるようにしてFIRルートロールオフフィルタを構築するようにしたことにより、例えば無線型式に応じて帯域制限フィルタのフィルタ特性を可変させる場合に、FIRルートロールオフフィルタにおけるFIRフィルタ係数のみを可変させるだけでルートロールオフ特性を保ちながら設定することができ、かくして高特性を維持しながら容易に調整を行い得るFIRルートロールオフフィルタを実現できる。
【0122】
(3)他の実施の形態
なお上述のように第1及び第2の実施の形態においては、FIRコサインロールオフフィルタ及びFIRルートロールオフフィルタを構成するディジタルフィルタとして、図1に示すように、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するFIRフィルタから構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、フィルタ係数をソフトウェア的に調整することができれば、FIRフィルタ以外にもコムフィルタやIIR(Infinite Impulse Response)フィルタ等に広く適用するようにしても良い。
【0123】
また第1及び第2の実施の形態においては、FIRコサインロールオフフィルタ及びFIRルートロールオフフィルタを構成するFIRフィルタとして、図1に示すように、信号入力段に直列接続された(N−1)(Nは2以上の自然数)個の遅延素子T0〜TN−2と、各遅延素子T0〜TN−2の前段及び最後尾の遅延素子TNの後段からそれぞれ分岐して接続されたN個の乗算器A0〜AN−1と、各乗算器A0〜ANー1の出力段にそれぞれ接続され、順次加算結果を積算して最後尾の信号出力段から出力する(N−1)個の加算器P0〜PN−2とからなる直接型構成のFIRフィルタで構築するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、直接型構成以外にも転置型構成のFIRフィルタを用いるようにしても良い。
【0124】
例えば図13に示すように、信号入力段に並列接続されたN(例えば4)個の乗算器A0〜AN−1と、2番目以降の各乗算器A1〜AN−1の出力段にそれぞれ対応して接続され、順次加算結果を積算して最後尾の信号出力段から出力する(N−1)個の加算器P0〜PN−2と、先頭の乗算器A0の出力段及び各加算器P0〜PN−2の入力段にそれぞれ接続された(N−1)個の遅延素子T0〜TN−2とからなる転置型構成のFIRフィルタ50を適用しても良い。
【0125】
さらに上述のように第1及び第2の実施の形態においては、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を、窓関数が乗算されていない各乗算器の係数で割り算することによりロールオフ窓関数を求め、当該ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるようにFIRフィルタ係数(各乗算器の係数)を設定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は理論ロールオフフィルタのインパルス応答をFIRフィルタ係数(各乗算器の係数)のレベルに正規化することによりロールオフ窓関数を算出することができれば、この他種々の方法でロールオフ窓関数を求めるようにしても良い。
【0126】
さらに上述の実施の形態においては、ディジタルフィルタの係数算出装置として図5に示すような端末装置10を用い、当該端末装置10が上述のようなFIRコサインロールオフフィルタ設定処理手順RT1(図4)を実行することによりFIRコサインロールオフフィルタを構築するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、データの演算処理及び記憶処理を行い得るものであれば、この他種々の構成からなる装置に広く適用することができる。
【0127】
すなわちディジタルフィルタの係数算出装置としての端末装置10において、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベルに正規化することによりロールオフ窓関数を算出する算出手段と、当該ロールオフ窓関数に基づいて当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数を設定する設定手段とを、端末装置10内のCPU11から構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、CPU11以外の他の係数算出手段を適用しても良く、また算出手段及び設定手段を別体の手段に分けてそれぞれ対応する演算処理を順次行うようにしても良い。
【0128】
さらに上述の実施の形態においては、図6に示すような無線送信機30のディジタル変調回路35内に上述のようなFIRコサインロールオフフィルタ43、44を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は入力信号に応じてフィルタ係数を調整する必要のある装置であれば、この他種々の装置に広く適用することができる。
【0129】
さらに上述の実施の形態においては、理想ロールオフ特性及び理想ルートロールオフ特性の実現のために、フィルタのタップ数Nを無視するようにした場合について述べたが、実際にハードウェアを構成する上でタップ数Nを有限にした場合には、打切り誤差により減衰特性が悪化するため、実際にはロールオフ窓関数及びルートロールオフ窓関数に一般的な打切り誤差低減用の窓関数を乗算することにより、理想ロールオフ特性及び理想ルートロールオフ特性に近似しながら減衰特性の良いフィルタを得ることができる。
【0130】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタにおいて、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することにより算出されたロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数が設定されるようにしたことにより、無線型式に応じてフィルタ特性を可変させる場合に、各係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら当該各係数を設定することができ、かくして高特性を維持しながら容易に調整を行い得るディジタルフィルタを実現することができる。
【0131】
また本発明においては、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタの係数算出装置において、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することによりロールオフ窓関数を算出する算出手段と、当該ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数を設定する設定手段とを設けるようにしたことにより、無線型式に応じてフィルタ特性を可変させる場合に、ディジタルフィルタの各係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら当該各係数を設定することができ、かくして高特性を維持しながら容易に調整を行い得るディジタルフィルタの係数算出装置を実現することができる。
【0132】
さらに本発明においては、ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタの係数算出方法において、理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各係数のレベル及び時間軸に正規化することによりロールオフ窓関数を算出した後、当該ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各係数を設定するようにしたことにより、無線型式に応じてフィルタ特性を可変させる場合に、ディジタルフィルタの各係数のみを可変させるだけでロールオフ特性を保ちながら当該各係数を設定することができ、かくして高特性を維持しながら容易に調整を行い得るディジタルフィルタの係数算出方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるFIRフィルタの構成を示すブロック図である。
【図2】FIRフィルタ出力とナイキスト点との関係の説明に供するグラフである。
【図3】コサインロールオフフィルタのインパルス応答の説明に供するグラフである。
【図4】FIRコサインロールオフフィルタ設定処理手順を示すフローチャートである。
【図5】端末装置の構成を示すブロック図である。
【図6】無線送信機の構成を示すブロック図である。
【図7】図7に示す無線送信機内のディジタル変調回路の構成を示すブロック図である。
【図8】ルートロールオフフィルタの伝達関数の説明に供するグラフである。
【図9】ロールオフ率αが0のときのインパルス応答及びフィルタ出力波形の説明に供するグラフである。
【図10】ロールオフ率αが0.5のときのインパルス応答及びフィルタ出力波形の説明に供するグラフである。
【図11】ロールオフ率αが1のときのインパルス応答及びフィルタ出力波形の説明に供するグラフである。
【図12】ルートロールオフフィルタのインパルス応答の説明に供するグラフである。
【図13】他の実施の形態によるFIRフィルタの構成を示すブロック図である。
【図14】矩形波のインパルス応答の説明に供するグラフである。
【図15】矩形波の伝達関数の説明に供するグラフである。
【図16】矩形波伝送での隣接チャネル干渉の説明に供するグラフである。
【図17】帯域制限した一例の説明に供するグラフである。
【図18】符号間干渉のない波形を示すグラフである。
【図19】符号間干渉のある波形を示すグラフである。
【図20】理想フィルタの伝達関数の説明に供するグラフである。
【図21】理想フィルタのインパルス応答の説明に供するグラフである。
【図22】ロールオフフィルタのフィルタ特性の説明に供するグラフである。
【図23】ロールオフフィルタの伝達関数の説明に供するグラフである。
【図24】ロールオフ率αが0のときのインパルス応答及びフィルタ出力波形の説明に供するグラフである。
【図25】ロールオフ率αが0.5のときのインパルス応答及びフィルタ出力波形の説明に供するグラフである。
【図26】ロールオフ率αが1のときのインパルス応答及びフィルタ出力波形の説明に供するグラフである。
【符号の説明】
1、50……FIRフィルタ、10……端末装置、11……CPU、30……無線送信機、35……ディジタル変調回路、43、44……FIRコサインロールオフフィルタ、RT1……FIRコサインロールオフフィルタ設定処理手順。
Claims (8)
- ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタにおいて、
理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各上記係数のレベル及び時間軸を正規化することにより算出されたロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各上記係数が設定された
ことを特徴とするディジタルフィルタ。 - 上記ロールオフ窓関数は、上記理論ロールオフフィルタの上記インパルス応答を、窓関数が乗算されていない各上記係数で割り算して得られる
ことを特徴とする請求項1に記載のディジタルフィルタ。 - 上記ディジタルフィルタは、
信号入力段に直列接続された(N−1)(Nは2以上の自然数)個の遅延素子と、
各上記遅延素子の前段及び最後尾の遅延素子の後段からそれぞれ分岐して接続されたN個の乗算器と、
各上記乗算器の出力段にそれぞれ接続され、順次加算結果を積算して最後尾の信号出力段から出力する(N−1)個の加算器と
を具え、上記係数列は各上記乗算器の係数からなる
ことを特徴とする請求項1に記載のディジタルフィルタ。 - 上記ディジタルフィルタは、
信号入力段に並列接続されたN(Nは2以上の自然数)個の乗算器と、
2番目以降の各上記乗算器の出力段にそれぞれ対応して接続され、順次加算結果を積算して最後尾の信号出力段から出力する(N−1)個の加算器と、
先頭の上記乗算器の出力段及び各上記加算器の入力段にそれぞれ接続された(N−1)個の遅延素子と
を具え、上記係数列は各上記乗算器の係数からなる
ことを特徴とする請求項1に記載のディジタルフィルタ。 - ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタの係数算出装置において、
理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各上記係数のレベル及び時間軸を正規化することによりロールオフ窓関数を算出する算出手段と、
上記ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各上記係数を設定する設定手段と
を具えることを特徴とするディジタルフィルタの係数算出装置。 - 上記算出手段は、
上記理論ロールオフフィルタの上記インパルス応答を、窓関数が乗算されていない各上記係数で割り算するようにして、上記ロールオフ窓関数を得る
ことを特徴とする請求項5に記載のディジタルフィルタの係数算出装置。 - ディジタル信号であるデータ列をそれぞれ対応する係数列で乗算した後、当該乗算結果を順次後段の乗算結果と加算する畳込み演算を行い、当該ディジタル信号について所定周波数成分で帯域制限するディジタルフィルタの係数算出方法において、
理論ロールオフフィルタのインパルス応答を各上記係数のレベル及び時間軸に正規化することによりロールオフ窓関数を算出する第1のステップと、
上記ロールオフ窓関数に基づいて、当該理論ロールオフフィルタのロールオフ特性を得られるように各上記係数を設定する第2のステップと
を具えることを特徴とするディジタルフィルタの係数算出方法。 - 上記第2のステップでは、
上記理論ロールオフフィルタの上記インパルス応答を、窓関数が乗算されていない各上記係数で割り算するようにして、上記ロールオフ窓関数を得る
ことを特徴とする請求項7に記載のディジタルフィルタの係数算出方法。
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