JP2004200833A - 円偏波モードのアンテナ及びそのアレーアンテナ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】円形導波管の断面の円周上で90°離れた2点F1,F2で、その円形導波管101と2本のストリップ線路102が前記円形導波管101内にストリップ線路102が挿入される形状で結合しており、その2本のストリップ線路102に伝播する信号が円形導波管101の挿入点でお互いに90°の位相差を持っているストリップ線路102と円形導波管101の円偏波モードとの変換装置を具備する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円偏波モードのアンテナ及びそのアレーアンテナ装置に係り、特に、ストリップ線路と円形導波管の円偏波モードとの変換装置に関するもので、無線装置における円偏波モードのアンテナとして利用される。
【0002】
【従来の技術】
従来、このような分野の技術としては、以下に開示されるものがあった。
【0003】
〔文献1〕:S.Nishi,K.Hamaguchi,T.Matui,and H.Ogawa,“A Wireless Video Home−link Using 60GHz Band:a Proposal of Antenna Structure”,Proc.of 30th European Microwave Conference,Vol.1,pp.305−308,Oct.2000
〔文献2〕:S.Nishi,K.Hamaguchi,T.Matui,and H.Ogawa,“Development of millimeter−wave video transmission system II Antenna development”,Technical Digestof Third Topical Symposium on Millimeter Waves,pp.207−210,March,2001
〔文献3〕:「最新平面アンテナ技術」監修 羽石 操、株式会社総合技術センター発行、平成5年3月25日初版第1刷発行75〜76頁/245頁
上記した文献1、文献2では、直線偏波の60GHz平面アンテナについて記載されている。かかるアンテナは、放射部が円形導波管であり、その各円形導波管を基本素子としたアレーアンテナ(文献2の図1参照)で、円形導波管アレーアンテナ(Circular waveguide array antenna)と呼ばれている。各円形導波管放射部へは、ストリップ線路で給電されている(文献1の図2、文献2の図2参照)。この円形導波管アレーアンテナは、非常に広い周波数帯域(文献2の図7参照)を有している。
【0004】
また、文献3の245頁下から9行目に記されているように、パッチアンテナの比帯域は1〜2%程度であるが、円形導波管アレーアンテナでは13%の比帯域が得られており(文献2の図7参照)、円形導波管アレーアンテナがミリ波広帯域通信用アンテナとして優れた特性を有している。なお、文献1、文献2のアンテナは直線偏波のアンテナである。
【0005】
次に、円偏波アンテナの従来技術について述べる。文献3では、基本素子がMSA(Microstrip Antenna)とした平面アレーアンテナの円偏波アンテナ(文献3の75−76頁参照)について記載されている。このうち2点給電方式としては、「図のごとく、直行した給電点F1およびF2より方形もしくは円形MSAを励振すると、お互いに偏波が直交する2つのモード、すなわち♯1および♯2モードが発生する。これらモードのモード間の分離度は良好であり、−30dB以下まで抑制可能である。従って、3dBハイブリッドもしくは電気長が8分の1波長だけ異なるオフセット給電線路等を用い空間的に直交する給電点F1とF2を励振すれば、♯1および♯2モードの振幅は等しく、位相差は±(π/2)だけ異なり、これらMSA素子は、円偏波アンテナとして作動する。」(文献3の75頁8行目より参照)と記載されている。つまりMSAでは♯1および♯2モードのモード間の分離度が良好であり、−30dB以下まで抑制可能であるため、直交する給電点F1とF2より、位相差が±(π/2)だけ異なる励振で円偏波を作ることが出来る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
文献1、及び文献2で示した円形導波管アレーアンテナを円偏波とすることを考えてみる。文献3で示されているように、円形導波管の直交する給電点F1とF2より、位相差が±(π/2)だけ異なる励振が可能であれば、原理的に円偏波アンテナとなる。
【0007】
円形導波管への給電方法は、文献1の図3に述べられている。文献1の図3を図13に示す。
【0008】
図13では、円筒状のもので円形導波管の壁面が示されている。図13では、特性インピーダンスが50Ωのストリップ線路を円形導波管で上下より挟み、円形導波管内のストリップ線路の形状L,W,及び下側の円形導波管の長さShort Length(ショートレングス)を適当に選択し、ストリップ線路より円形導波管への変換を実現している。図13のような給電方法により、直交するF1、F2(図14参照)の給電点より励振した場合、お互いのストリップ線路が相互作用し、モード間の分離度が取れないことが予想される。
【0009】
そこで、ストリップ線路より円偏波導波管にF1より直線偏波を励振する構造で、F1に直交するF2よりストリップ線路の励振プローブを入れたときに、そのプローブとの相互作用がどの程度あるか、電磁界解析で計算してみた。
【0010】
図14に解析で用いた構造を示す。図14では、portAよりストリップ線路に入力された信号が、円形導波管のF1より直線偏波を励振する。図14中では、ストリップ線路の円形導波管内での形状は、ストリップ線路より円形導波管に信号が伝達するよう最適化された値で記載されている。F1と直交するF2より前述のストリップ線路と同じ形状で直交するストリップ線路が円形導波管内に配置されている。このストリップ線路は、portBで50Ωで終端されている。この形状のアンテナの放射パターンを計算した。
【0011】
図15に直交するF2からの励振プローブが無い場合(portB,F2につながっているストリップ線路が無い場合)の放射パターンを、半径方向をアンテナゲインとした極座標で示す。θは図14での垂直方向からの角度である。図15では、右旋成分がRHCP、左旋成分がLHCPとして表示されている。直交するF2からの励振プローブが無い場合、直線偏波が放射されるため、右旋成分と左旋成分が等しくなっているのが分かる。
【0012】
図16には、図13に示したように、直交するF2からのストリップ線路をいれた場合の計算結果を示す。図15に比べて左旋成分が右旋成分より3dB程度大きくなっており、楕円偏波となっていることが分かる。
【0013】
以上の計算結果より、円形導波管アレーアンテナでは、空間的に直交する給電点F1とF2より励振する場合、励振されたモード間の分離度は悪く、制御が困難であることが分かった。すなわち、円形導波管アレーアンテナで、直交する2点よりストリップ線路で給電する場合、お互いの相互作用が強く、π/2の位相差で給電しても、円偏波を作製するのは困難である。
【0014】
本発明は、上記状況に鑑みて、円形導波管アレーアンテナで、直交する2点よりストリップ線路で給電する場合においても、円偏波を励起することが出来る円偏波モードのアンテナを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕円偏波モードのアンテナにおいて、円形導波管の断面の円周上で90°離れた2点で、その円形導波管と2本のストリップ線路が、前記円形導波管内にストリップ線路が挿入される形状で結合しており、その2本のストリップ線路に伝播する信号が前記円形導波管の挿入点でお互いに90°の位相差を持っているストリップ線路と円形導波管の円偏波モードとの変換装置を具備することを特徴とする。
【0016】
〔2〕上記〔1〕記載の円偏波モードのアンテナにおいて、変換する周波数が、前記円形導波管の基底モードの遮断周波数をFTE11、次のモードの遮断周波数をFTM01とすると、(4FTE11+FTM01)/5と(FTE11+3FTM01)/4の間の周波数であることを特徴とする。
【0017】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の円偏波モードのアンテナにおいて、前記円形導波管の放射部にテーパ角度が10度程度以下のテーパ角を設け、前記放射部の直径を大きくすることを特徴とする。
【0018】
〔4〕上記〔1〕又は〔2〕記載の円偏波モードのアンテナにおいて、前記ストリップ線路を裏返して配置することにより、偏波の旋回方向を反転させることを特徴とする。
【0019】
〔5〕上記〔1〕、〔2〕、〔3〕又は〔4〕記載の円偏波モードのアンテナにおいて、前記円形導波管より電波が放射される、あるいは電波を前記円形導波管で受けることを特徴とする。
【0020】
〔6〕アレーアンテナ装置において、上記〔5〕記載の円偏波モードのアンテナを基本素子としてアレー状に配置することを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
まず、本発明の第1実施例を示す円偏波モードのアンテナについて説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施例を示す円偏波モードのアンテナの解析で用いた構造の透視図である。
【0024】
この図において、101は円形導波管、102はストリップ線路、103はテフロン(登録商標)基板、104はストリップ線路102の分岐点、105はアンテナの放射方向、106は円形導波管101の放射部である。
【0025】
この実施例では、円形導波管101の直交する2点F1,F2より、ストリップ線路102で、放射する電波の周波数をπ/2の位相差で給電し、なおかつストリップ線路102の円形導波管101内での幅、円形導波管101内の長さ、Short Length、および円形導波管101の直径を適当に選び、円偏波を放射させるようにした。
【0026】
ここで、放射する周波数と円形導波管101の直径Dは、放射する電波の周波数で円形導波管101内を単一モードで伝播することとした。これはストリップ線路102より円形導波管101に単一のモードを励振したいためである。
【0027】
すなわち、放射する電波の周波数が、円形導波管101の基底モードであるTE11モードの遮断周波数FTE11より高い周波数であり、円形導波管101の次のモードであるTM01モードの遮断周波数FTM01より低い周波数である必要がある。
【0028】
上記パラメータの最適化は電磁界解析により行なった。解析をするのに、周波数を固定し円形導波管101の直径Dの最適を決めるより、円形導波管101の直径Dを固定し、その基底モードと次のモードの遮断周波数の間の周波数で最適な周波数を決める方が、解析の計算手順では都合が良い。そこで円形導波管101の直径Dを5.6mmと固定し、最適な周波数を求めた。例えば、D=5.6mmではFTE11=31.4GHz、FTM01=41.0GHzとなる。
【0029】
ストリップ線路102は、片側に銅箔によるグランド面が付着した、誘電率2.2で厚さ0.127mmの2枚のテフロン(登録商標)基板103と、それらのグランド面の反対側で挟まれた銅からなる幅0.2mmの線路により構成している。この形状でマイクロストリップライン102の特性インピーダンスは50Ωとなる。図中のポート(port)Aより入力した信号は、ストリップ線路102を伝播して2つに分岐され、直交する2点F1、F2より円形導波管101を励振する。分岐点104からF2までの距離は分岐点104からF1までの距離より位相差90度分長くなっている。この形状で給電する2本のストリップ線路の相互作用が無い場合には右旋の円偏波となる。
【0030】
パラメータの最適化で後述するが、ストリップ線路の幅Wは重要なパラメータではなく、特性インピーダンス50Ωの幅0.2mm程度が良いことが分かった。そこで、ストリップ線路102の端と円形導波管101中心の距離、およびShort Lengthを変えて計算し、アンテナの放射パターンのセンター方向の軸比を求めた。
【0031】
図1に示した実施例では、円形導波管101の直径Dをテーパ状に広げ、電波の放射部106での直径は6.6mm、テーパの角度は4.76°とした。このように、円形導波管をテーパ状に広げた効果は後述する。
【0032】
図2〜図5に得られた結果を示した。図2〜図5では縦軸を軸比とした周波数依存性を示している。図2は円形導波管の中心からストリップ線路の端までの長さL=1.12mmの場合、図3はL=1.22mmの場合、図4はL=1.32mmの場合、図5はL=1.37mmの場合をそれぞれ示している。各図では円形導波管の中心からストリップ線路の端までの長さLが一定で、Short Lengthの異なる場合が示されている。
【0033】
円偏波アンテナの軸比は、およそ3dB以下が通常要求される。これらの図より明らかなように、電磁界解析により、円形導波管の直径Dを5.6mmとした場合、円形導波管の中心からストリップ線路の端までの長さLおよびShortLengthをいろいろ変えても、その基底モードの遮断周波数(FTE11)31.4GHzとその次のモードの遮断周波数(FTM01)41.0GHzの間の周波数の中で、33.0GHz〜38.5GHzの間の周波数でのみ3dB以下の軸比が得られることが分かる。言い換えると、FminおよびFmaxを以下のように定義すると、
Fmin=(4FTE11/5+FTM01/5)
Fmax=(FTE11/4+3FTM01/4)
FminとFmaxの間の周波数で良好な軸比の円偏波が得られることが明らかになった。
【0034】
次に、前述したパラメータWがあまり軸比に影響しないことを説明する。
【0035】
図6に、L=1.12mm、Short Length=3.3mmと固定して、パラメータWを変えたときの、軸比の周波数依存性を示した。この図より、パラメータWを変えても、軸比の顕著な改善が無いことがわかり、前述した良好な軸比が得られる周波数範囲は正しいことが分かる。
【0036】
次に、円形導波管放射部のテーパについて説明する。
【0037】
上記した円形導波管にテーパを設けないと、円形導波管より大気に電波を放射する放射部で不整合による反射が生じ、反射S11は−15dB程度となってしまう。ここでの反射は、円偏波特性を劣化させる。
【0038】
図17に1素子円形導波管アンテナにおける放射部での反射(S11)およびアンテナゲインの放射部でのテーパ角度依存性を電磁界解析で解析した結果を示した。
【0039】
この図において、円形導波管の直径は5.6mm、放射部の直径は6.6mmとし、テーパ角度を変えて電磁界解析をしている。この図より、テーパ角度を10°程度以下とすると反射(S11)は−20dB以下となり、また、アンテナゲインもわずかに高くなることが分かる。
【0040】
次に、円形導波管の直径が5.6mmでテーパを設けない場合と、テーパ角度を4.76°、放射部の直径を6.6mmとした場合で、軸比の周波数依存性を電磁界解析で解析した。その解析結果を図18に示す。
【0041】
この図より、テーパを設けることにより軸比が2dB程度改善されるのが分かる。ここで、テーパ角度は10°程度以下とすれば、放射部の直径はいくらでも大きくしてよいことに注意する。
【0042】
次に、電磁界解析で得られた軸比の放射角度依存性を、マイクロストリップラインアンテナと比較する。
【0043】
図19に1素子マイクロストリップラインアンテナの軸比の放射角度依存性を示す。放射角度はアンテナの放射方向からの角度とした(図14参照)。周波数は5.55GHzだが、軸比特性の比較は十分に可能である。
【0044】
この図より、放射角度が30°を超えると軸比が急激に悪くなるのが分かる。
【0045】
1素子円形導波管アンテナの軸比の放射角度依存性を図20に示す。
【0046】
この図より、円形導波管アンテナでは、放射角度が90°になっても3dB程度にしか劣化していないことが分かる。
【0047】
以上より、円形導波管による円偏波アンテナの円偏波は、特性が非常に優れていることが分かった。
【0048】
以上述べたように、円形導波管アレーアンテナにおいて、直交する2点(F1,F2)よりストリップ線路で、90度位相が異なる電波で給電し、円偏波を放射させる場合、円形導波管の直径と円偏波が得られる周波数に関係があることが明らかとなった。このことを考慮し、4素子の円形導波管放射部よりなる、アレーアンテナを試作した。周波数は37GHzとした。
【0049】
図7に本発明の第1実施例のアンテナの構造概念図、図8にそのアンテナの組立図、図9にストリップ線路の給電回路を示した。
【0050】
これらの図に示すように、4素子の円形導波管アレーアンテナは、アルミニウムを加工して作製した下板201と上板202と誘電体分配回路(203,204)からなり、その誘電体分配回路(第1層部材203,第2層部材204)は、それぞれ銅箔の付いたテフロン(登録商標)基板203A,204Aを有するとともに、1層メタル/第1の誘電体からなる第1層部材203と2層メタル/第2の誘電体/3層メタルよりなる第2層部材204からなる。
【0051】
図8に示すアンテナの組立図の下側に、WR15矩形導波管の入出力ポートが設けられ、入力した信号は、矩形導波管よりストリップ線路に変換され、4個の円形導波管放射部202Aに、同位相、同振幅で分配される。テフロン(登録商標)基板203A,204Aは厚さ0.127mmの誘電体に、18μmの銅箔が付いている。1層メタル/第1の誘電体からなる第1層部材203は上部のみ銅箔(1層メタル)が付いており、1層メタルは円形導波管205および矩形導波管206の場所のみ銅箔が除去されている。
【0052】
2層メタル/第2の誘電体/3層メタルよりなる第2層部材204は、上側の銅箔が2層メタルで、ストリップ線路部分のみ銅箔が残されており、下側の銅箔が3層メタルで、円形導波管205および矩形導波管206の場所のみ銅箔が除去されている。上板202、第1層部材203、第2層部材204および下板201は、図7に示す順番に重ね、第1層部材203と第2層部材204を上板202と下板201で挟み込み、図8に示した4隅の固定ネジ穴202Bを用いてネジ(図示なし)で固定する。
【0053】
組み上げた状態が図8に示されており、図中に寸法(単位mm)も示した。円形導波管205は、直径を5.6mmとし、7.2mmの間隔で4個配置した。アンテナサイズは30×45×12mmである。ストリップ線路の線路幅を線路の特性インピーダンスが50Ωとなる0.2mmとした。
【0054】
ストリップ線路による円形導波管205への給電は、円形導波管205の円周上で、90度異なるF1とF2の2点より行なっており、ストリップ線路(図1のストリップ線路102参照)/円形導波管205への変換は線路幅0.2mmのストリップ線路102を円形導波管205に挿入し、円形導波管205の放射と反対の方向は、3.3mmで短絡して(Short Length=3.3mm)実現している。円形導波管205への給電点F1,F2から線路端までの距離は1.22mmである。F1およびF2には、同振幅で、37GHzで位相差が90度で給電されるように、線路長が変えてある。
【0055】
以下、本発明の実施例の円偏波モードのアンテナの動作について説明する。
【0056】
アンテナは受信する動作と、送信する動作は、逆で同じ動作となるので、以下では送信する動作のみ説明する。
【0057】
試作したアンテナの入出力は、図9に示すように、WR15矩形導波管206で、図8に示したアンテナの裏面にWR15矩形導波管206の口がある。WR15矩形導波管206の口より入力した37GHzの電波は、矩形導波管206より、ストリップ線路/矩形導波管変換器でストリップ線路に変換され、ストリップ線路の分配回路を伝播する。ストリップ線路を伝播する37GHzの電波は、その分配回路で、4つの円形導波管205に、同振幅同位相で分配される。各円形導波管205へのストリップ線路からの給電は以下のように行なわれる。
【0058】
ストリップ線路は2つに分岐し、円形導波管205には直交する2点、F1,F2より給電される。分岐点よりF1とF2までの線路長は、37GHzで位相差が90度となるよう分岐点からF1までの長さが、分岐点からF2までの長さより長くなっている。F1およびF2でのストリップ線路から円形導波管205への変換は、パラメータW=0.2mm、円形導波管の長さL=1.22mm、Short Length=3.3mmの形状でそれぞれ行なわれている。
【0059】
前述したように、このパラメータで円形導波管205に変換すると、円形導波管205には円偏波が励起される。励起された円偏波は、円形導波管205を伝播し、大気中に放射される。4個の円形導波管205からは、同振幅同位相で37GHzの電波が放射されるので、アンテナ前方ではそれぞれの電波が強め合い放射される。
【0060】
以上のように、第1実施例によれば、放射する周波数が、前述した円形導波管205のFminとFmaxの間の周波数となっているため、ストリップ線路より円形導波管205に、円形導波管205の直交する2点より90度位相が異なる37GHzの電波で励起すると、円偏波を励起することが出来る。実際に作製した2個のアンテナで測定した軸比を図10に示した。2個のアンテナはほぼ同様な軸比となっており、また、電磁界解析で計算した結果(図3参照)ともほぼ良い一致をしている。
【0061】
次に、本発明の第2実施例を示す円偏波モードのアンテナについて説明する。
【0062】
図11は本発明の第2実施例の円偏波モードのアンテナの構造を示す概念図である。
【0063】
この図において、301は下板、302は上板、303,304は誘電体分配回路であり、この誘電体分配回路303,304は、3層メタル/第2の誘電体/2層メタルからなる第3層部材303と第1の誘電体/1層メタルからなる第4層部材304からなる。また、303A,304Aはテフロン(登録商標)基板、302Bは固定ネジ穴である。
【0064】
第2実施例は第1実施例と同様、円形導波管を放射の基本素子とした、2×2円形導波管アレーアンテナである。周波数も第1実施例と同様37GHzだが、偏波は第1実施例と異なり、左旋の円偏波とした。アンテナを構成する部品は第1実施例と全く同じである。第1実施例との違いは、2層メタル分配回路(第3層部材303と第4層部材304:1層メタル/第1の誘電体と、2層メタル/第2の誘電体/3層メタル)の左右をひっくり返し、お互いの上下を変えて重ねていることである(図7と、図11とを参照)。
【0065】
つまり、上側に、上側に3層メタル、下側に2層メタルの付いた第2誘電体を、下側に、下側に1層メタルの付いた第1の誘電体を置き、重ねてストリップ線路を形成している。図12にこの第2実施例のストリップ線路を示した。この図12において、305は円形導波管、306は矩形導波管である。
【0066】
以下、この実施例の円偏波モードのアンテナの動作について説明する。
【0067】
このアンテナ動作は第1実施例と同じであるが、第2実施例では2層メタル分配回路が左右逆となっているため、ストリップ線路より円形導波管に励振するときの位相関係が逆になることが第1実施例と異なる点である。つまり、第1実施例ではストリップ線路により、円形導波管の直交する2点、F1,F2より、位相が90度異なる電波を励振するが、F2は、F1に対しアンテナを上から見て反時計周りに90度異なる位置で、90度位相が遅れた電波で円形導波管を励振している。
【0068】
一方、第2実施例では、F2はF1に対し、アンテナを上から見て反時計周りに90度異なる位置より、90度位相が進んだ電波で円形導波管を励振している。このことより、第1実施例では右旋の円偏波が放射されるが、第2実施例では左旋の円偏波が放射される。
【0069】
以上説明したように、第2実施例によれば、第1実施例のストリップ線路を左右が逆になるようにひっくり返して用いている。
【0070】
図9に第1実施例のストリップ線路を、図12に第2実施例のストリップ線路を示しているが、ストリップ線路を左右ひっくり返しても、円形導波管および矩形導波管が左右対称に配置されているため、動作することが分かる。
【0071】
さらに、本発明は以下のような利用形態を有している。
【0072】
本発明は、ミリ波マイクロ波の円偏波アンテナに適用が可能である。
【0073】
実施例では、4素子のアレーアンテナで実施したが、この1素子の円偏波平面アンテナとしても良い。またアンテナとしなくても、ストリップ線路と円形導波管の円偏波モードとの変換装置として用いることも可能である。
【0074】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0075】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によると、以下のような効果を奏することができる。
【0076】
(A)放射する周波数が、円形導波管のFminとFmaxの間の周波数となっているため、ストリップ線路より円形導波管に、円形導波管の直交する2点より90度位相が異なる37GHzの電波で励起すると、円偏波を励起することが出来る。
【0077】
(B)上記(A)のストリップ線路を、左右が逆になるようにひっくり返して用いていることにより、上記(A)と同様に、円偏波を励起することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す円偏波モードのアンテナの解析で用いた構造の透視図である。
【図2】軸比の周波数依存性(L=1.12mm)を示す図である。
【図3】軸比の周波数依存性(L=1.22mm)を示す図である。
【図4】軸比の周波数依存性(L=1.32mm)を示す図である。
【図5】軸比の周波数依存性(L=1.37mm)を示す図である。
【図6】パラメータWを変えたときの軸比の周波数依存性を示す図である。
【図7】本発明の第1実施例の構造を示す概念図である。
【図8】本発明の第1実施例の組立図である。
【図9】本発明の第1実施例のストリップ線路を示す図である。
【図10】本発明の2個のアンテナで測定した軸比の周波数依存性を示す図である。
【図11】本発明の第2実施例の円偏波モードのアンテナの構造を示す概念図である。
【図12】本発明の第2実施例のストリップ線路を示す図である。
【図13】従来のストリップ線路/円形導波管変換部の構造を示す図である。
【図14】従来の直交する2点より励振するプローブの相互作用を電磁界解析で計算した構造図である。
【図15】直交するF2からの励振プローブが無い場合の放射パターンを示す図である。
【図16】直交するF2からの励振プローブがある場合の放射パターンを示す図である。
【図17】1素子円形導波管アンテナにおける放射部での反射(S11)およびアンテナゲインの放射部でのテーパ角度依存性を電磁界解析で解析した結果を示す図である。
【図18】円形導波管の直径が5.6mmでテーパを設けない場合と、テーパ角度を4.76°、放射部の直径を6.6mmとした場合で、軸比の周波数依存性を電磁界解析で解析した結果を示す図である。
【図19】1素子マイクロストリップラインアンテナの軸比の放射角度依存性を示す図である。
【図20】1素子円形導波管アンテナの軸比の放射角度依存性を示す図である。
【符号の説明】
101,205,305 円形導波管
102 ストリップ線路
103,203A,204A,303A,304A テフロン(登録商標)基板
104 ストリップ線路の分岐点
105 アンテナの放射方向
106,202A 円形導波管放射部
201,301 下板
202,302 上板
202B,302B 固定ネジ穴
203,204;303,304 誘電体分配回路
206,306 矩形導波管
Claims (6)
- 円形導波管の断面の円周上で90°離れた2点で、該円形導波管と2本のストリップ線路が、前記円形導波管内にストリップ線路が挿入される形状で結合しており、該2本のストリップ線路に伝播する信号が前記円形導波管の挿入点でお互いに90°の位相差を持っているストリップ線路と円形導波管の円偏波モードとの変換装置を具備することを特徴とする円偏波モードのアンテナ。
- 請求項1記載の円偏波モードのアンテナにおいて、変換する周波数が、前記円形導波管の基底モードの遮断周波数をFTE11、次のモードの遮断周波数をFTM01とすると、(4FTE11+FTM01)/5と(FTE11+3FTM01)/4の間の周波数であることを特徴とする円偏波モードのアンテナ。
- 請求項1又は2記載の円偏波モードのアンテナにおいて、前記円形導波管の放射部にテーパ角度が10度程度以下のテーパ角を設け、前記放射部の直径を大きくすることを特徴とする円偏波モードのアンテナ。
- 請求項1又は2記載の円偏波モードのアンテナにおいて、前記ストリップ線路を裏返して配置することにより、偏波の旋回方向を反転させることを特徴とする円偏波モードのアンテナ。
- 請求項1、2、3又は4記載の円偏波モードのアンテナにおいて、前記円形導波管より電波が放射される、あるいは電波を前記円形導波管で受けることを特徴とする円偏波モードのアンテナ。
- 請求項5記載の円偏波モードのアンテナを基本素子としてアレー状に配置することを特徴とするアレーアンテナ装置。
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JP2002364700A JP2004200833A (ja) | 2002-12-17 | 2002-12-17 | 円偏波モードのアンテナ及びそのアレーアンテナ装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007195104A (ja) * | 2006-01-23 | 2007-08-02 | Oki Electric Ind Co Ltd | 円形導波管アンテナ及び円形導波管アレーアンテナ |
US7612732B2 (en) | 2007-01-31 | 2009-11-03 | Oki Electric Industry Co., Ltd. | Antenna with stripline splitter circuit |
-
2002
- 2002-12-17 JP JP2002364700A patent/JP2004200833A/ja active Pending
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