JP2004198737A - 光ファイバおよびそれを用いた光伝送路 - Google Patents
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Abstract
【課題】波長分割多重伝送などにおいて広い波長領域の光信号を伝送しても、伝送損失が少なく、波長分散が小さい光ファイバ、および、その光ファイバを用いた光伝送路を提供する。また、ラマン増幅型光伝送路に好適に適用可能な光ファイバを提供する。
【解決手段】本発明の光ファイバは、ゼロ分散波長が波長1350〜1410nmの波長範囲内にただ1つあり、1550nmにおける分散値(D)が2〜8ps/nm/kmであり、分散スロープ(DS)が正の値で0.05ps/nm2/km以下であり、実効コア断面積(Aeff )が50μm2 以下であり、波長1380nmにおける伝送損失が0.4dB/km以下であり、水素エージング試験前後で波長1380nmにおける伝送損失が0.04dB/km以上変動しない。好ましくは、波長1550nmにおいて伝送損失が0.25dB/km以下であり、直径20mmに曲げたときの損失増加量が30dB/m以下であり、カットオフ波長が1350nm以下である。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明の光ファイバは、ゼロ分散波長が波長1350〜1410nmの波長範囲内にただ1つあり、1550nmにおける分散値(D)が2〜8ps/nm/kmであり、分散スロープ(DS)が正の値で0.05ps/nm2/km以下であり、実効コア断面積(Aeff )が50μm2 以下であり、波長1380nmにおける伝送損失が0.4dB/km以下であり、水素エージング試験前後で波長1380nmにおける伝送損失が0.04dB/km以上変動しない。好ましくは、波長1550nmにおいて伝送損失が0.25dB/km以下であり、直径20mmに曲げたときの損失増加量が30dB/m以下であり、カットオフ波長が1350nm以下である。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバおよび光ファイバを用いた光伝送路に関するものであり、特に、波長分割多重光伝送を行なうときに用いる光ファイバおよび光伝送路に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、光ファイバを用いた光伝送における伝送容量を増大させる技術の検討が盛んに行われている。
一般に、光ファイバの伝送損失は波長1.55μm付近で最も小さくなるため、この波長帯を用いた光伝送を行うことが望まれ、波長1.55μm付近にゼロ分散波長を有する分散シフト光ファイバ(DSF)が開発された。この光ファイバにより、波長1.55μm帯において伝送容量が数Gbps(ギガビット/秒)の光伝送が可能となった。
【0003】
また近年では、伝送容量を増大させるための技術として波長分割多重(WDM)光伝送についての研究開発が極めて盛んに行われている。そして、WDM光伝送に好適に用いられる光ファイバについても多くの検討がなされている。
光ファイバをWDM光伝送に使用する場合には、使用波長帯にゼロ分散波長が存在しないことが非線形現象である四光波混合を防ぐ観点から要求されるため、使用波長帯に零分散をもたないノンゼロ分散シフト光ファイバ(NZDSF)が開発された。このNZDSFの開発により、波長1.53μm〜1.565μmの波長領域(Cバンド)および波長1.565μm〜1.625μmの波長領域(Lバンド)でのWDM伝送が可能となり、伝送容量は飛躍的に増大した。
【0004】
このようなWDM伝送システムにおいて、さらに、伝送容量を拡大するために、1.46μm〜1.53μmの波長領域(Sバンド)まで、信号光の波長帯域の幅を広げる試みがなされている。
【0005】
また、最近では、波長分割多重伝送の伝送帯域を拡大するために、Erをドープした光ファイバを用いた光増幅装置(EDFA)の広帯域化の検討だけでなく、ラマン増幅器や新希土類ドープ光ファイバ等による新型光増幅器を波長分割多重伝送用として適用する研究が盛んに行われており、実用化の検討も始まっている。なかでもラマン増幅器を用いたラマン増幅型光伝送路は実用化が間近になっている。
【0006】
ラマン増幅とは、光ファイバに強い光(励起光)を入射した際に起こる誘導ラマン散乱によって励起光波長から100nm程度長波長側にゲイン(利得)があらわれる現象を利用し、このように励起された状態の光ファイバに上記利得を有する波長域の信号を入射して、その信号光を増幅するという光信号の増幅方法である。
【0007】
従来の光ファイバの中には、広波長帯域の実現を目的として、ゼロ分散波長を水酸基(OH基)の吸収波長帯である1.38μm帯にシフトさせ、DWDMにおける4光波混合の発生を抑止するために、波長1550nmにおける有効コア断面積Aeff を60μm2 以上としたものがある。(例えば、特許文献1参照)
【0008】
【特許文献1】
米国特許第6,266,467号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に、実効コア断面積Aeff が大きくなるとラマン増幅を行なわせるためには効率が悪くなることが知られている。
なお、Aeff は下記式1で規定される。
【0010】
【数1】
【0011】
さらに、波長多重励起光源としてトータルとして1W以上の大きな光パワーを必要とすることから、単に効率の低下、経済的でないだけでなく、大電力の印加に起因する加熱により、伝送路に接続される光コネクタや、光ファイバに被覆されている樹脂に悪影響を及ぼす可能性がある。
このように、特許文献1に開示されている光ファイバはラマン増幅伝送システムに好適な光ファイバとは言いがたい。
【0012】
なお、特許文献1には、OH基の吸収ピーク帯にゼロ分散波長をシフトさせ、OH基の吸収ピーク帯の伝送損失を最小限とすることで、波長1.20〜1.60μmでの広帯域伝送を実現できると記載されているが、一般に、OHの吸収ピークは、水素の侵入により経時的に増加することが知られているが、特許文献1には光ファイバの長期の安定な使用に関する記述はない。
【0013】
本発明の目的は、波長分割多重伝送などにおいて広い波長領域の光信号を伝送しても、伝送損失が少なく、波長分散が小さい、光ファイバを提供することにある。
また本発明の目的は、上記光ファイバを用いた光伝送路を提供することにある。
さらに本発明の他の目的は、ラマン増幅型光伝送路に好適に適用可能な光ファイバを提供することにある。
また本発明の目的は、上記ラマン増幅型光伝送路に好適に適用可能な光ファイバを用いた光伝送路を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ファイバは、上記課題を克服するため、次のように構成されている。
本発明の光ファイバは、ゼロ分散波長が波長1350〜1410nmの波長範囲内にただ1つあり、1550nmにおける分散値(D)が2〜8ps/nm/kmであり、分散スロープ(DS)が0.05ps/nm2/km以下で、実効(有効)コア断面積(Aeff )が50μm2 以下であり、波長1380nmにおける伝送損失が0.4dB/km以下であって、水素エージング試験前後で、波長1380nmにおける伝送損失が、0.04dB/km以上変動しないことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の光ファイバは、波長1550nmにおいて、伝送損失が0.25dB/km以下であり、直径20mmに曲げたときの損失増加量が30dB/m以下であり、カットオフ波長λc が1350nm以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明の光ファイバは、波長1350〜1410nmという、OHの吸収により伝送損失が増加しやすい波長帯にゼロ分散波長を有しているため、従来は、ゼロ分散波長近傍の低分散領域の波長帯、および、OHの吸収波長帯の2つの波長帯を伝送波長帯から除外しなければならなかったのが、1つの波長帯に限定することが可能となり、使用波長領域が拡大する。
【0017】
また、ラマン増幅器の適用を考えた場合に、
(1)実効コア断面積Aeff を50μm2 以下と、従来の非零分散シフト光ファイバ(NZDSF)に比べて小さくすることで、ラマン効率の向上がもたらされるため、従来のAeff が50μm2 以上であるNZDSFと比較して、本発明の分散シフト光ファイバがラマン増幅に適している。
(2)また、波長1380nmにおける伝送損失を0.4dB/km以下とすることより、ラマン増幅型光伝送路における励起光(ポンプ光)の減衰を最小限に抑えることが可能となった。
(3)さらに、本発明の分散シフト光ファイバを常温常圧で実質的に水素からなる雰囲気に充分放置した前後で、波長1380nmにおける伝送損失が0.04dB/km以上変動しないため、長期的に波長1380nmにおける経時変化も少なく、安定したラマン増幅システムが構築できる。
【0018】
以上のとおり、本発明の分散シフト光ファイバはラマン増幅型光伝送路を好適に適用できる。
【0019】
また、実際の伝送波長帯である1550nm帯において、伝送特性およびケーブル化からの要求を満足するためには、波長1550nmにおいて、伝送損失が0.25dB/km以下であり、直径20mmに曲げたときの損失増加量が30dB/m以下であり、カットオフ波長λcが1350nm以下とすることが好適である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光ファイバおよびそれを用いた光伝送路の好適実施の形態について添付図面を参照して述べる。
【0021】
本発明の光ファイバの実施の形態として、波長多重伝送用光ファイバとして用いて好適な分散シフト光ファイバを例示する。
また本発明の光伝送路の実施の形態として、ラマン増幅型光伝送路について述べる。光ファイバ通信において信号伝送距離を延ばし、雑音を低減させることが可能な通信システムとしてラマン増幅型光伝送路が知られている。
【0022】
ラマン増幅について簡単に述べる。
一般に、光をガラスなどの物質に入射すると、その物質の分子振動や格子振動のために、元の波長よりやや長い波長の光が発生する。この光をラマン散乱光という。さらに入射する励起光を強くすると位相の揃った強いラマン散乱光が発生する。これを誘導ラマン散乱光という。
入射される信号光と誘導ラマン散乱光との波長が一致していれば、誘導ラマン散乱光は信号光と同じ強弱の変化を受け、信号光を増幅する。このようにラマン増幅とは、強い励起光を光ファイバに入射したとき、材料である石英ガラスを構成する分子によって散乱された光(誘導ラマン散乱光)が入射時とは異なる波長に変換されて散乱されることを利用する光信号強度の増幅技術である。
ラマン増幅を用いた光ファイバ型増幅器は、このような光ファイバの中で発生する非線形光学現象に起因する増幅作用を利用したものである。
ラマン増幅は、光伝送路(光ファイバ)の中で生ずる増幅であるから、光伝送路に伝送光以外の増幅光を入射するシステムとも言える。
【0023】
ラマン増幅型光伝送路としては、分布定数型ラマン増幅光伝送路および集中定数型ラマン増幅光伝送路が知られているが、本実施の形態においては、分布定数型ラマン増幅光伝送路について述べる。
【0024】
図1は分布定数型ラマン増幅器を用いた光通信システム(伝送路)の1例を示す構成図である。
図1に図解した分布定数型ラマン増幅器を用いた伝送路は、第1の送受信端100と、第2の送受信端200と、第1および第2の送受信端100、200との間に配設された光ファイバ300とを有する。
第1の送受信端100は、ラマン増幅のための第1の励起光源(ポンプ)101と、第1の光合波手段102と、第1の光ファイバ103とで構成されている。第2の送受信端200も、第1の送受信端100と実質的に同じ構成をしており、ラマン増幅のための第2の励起光源(ポンプ)201と、第2の光合波手段202と、第2の光ファイバ203とで構成されている。
なお、分布定数型ラマン増幅光伝送路を構成する光ファイバとしては、光ファイバ103、300、203のいずれか1本のみでよく、必ずしも、光ファイバ103、203、300の全てを必要としないが、本例示においては、第1および第2の分布定数型ラマン増幅光伝送路の送受信端100、200との距離が比較的長く、中間に光ファイバ300を配置する場合を例示している。本例においては、ラマン増幅作用は、光ファイバ103、300、203において発生する。
【0025】
第1の送受信端100において、第2の送受信端200側に伝送すべき第1の伝送信号S1が第1の光合波手段102に入力され、第1の励起光源101から強い励起光S11が第1の光合波手段102に入力され、第1の光合波手段12において合波された光が光ファイバ103に入力されてラマン増幅され、ラマン増幅された光信号が光ファイバ300、203を伝播されながら再びラマン増幅され、ラマン増幅された光信号が第2の送受信端200の第2の光合波手段202を介して受信信号S1Aとして受信される。
第2の送受信端200から第1の送受信端100への信号伝送も上記同様に行なわれる。
波長多重(WDM)光通信システムでは、短波長側の励起光が短波長側の信号光をラマン増幅し、一方、長波長側の励起光が長波長側の信号光をラマン増幅している。
【0026】
集中定数型ラマン増幅器は、たとえば、分散補償モジュールのような機器装置化された(たとえば、コイルに巻かれ中継局など煮設置された状態の)光ファイバに増幅光を入射させるような装置構成の増幅器である。
【0027】
ラマン増幅器を用いた光伝送路においては、光ファイバ103、300、203の長手方向の光強度分布をより均一にするために、第1の送受信端100側から第2の送受信端200側に信号を伝送する場合を例示すると、第1の送受信端100におけるラマン増幅のための励起光として、光ファイバ103の前方(信号光の入力側と同じ方向)の第1の励起光源101からと、光ファイバ103の後方(信号光が出力される方向)の第2の励起光源201からとの両方から入力することが望ましい。これを双方向励起と呼び、本実施の形態においても、双方向励起を行なう場合を例示する。
【0028】
光ファイバ103、300、203が石英ガラス系で作製されている場合には、ラマン増幅の最大の利得ピークは、励起光の光周波数より13T(テラ)Hz低い光周波数に存在する。例えば、1.5μm帯域の光通信システムでは、波長1580nmの信号光が、最大のラマン利得を得るためには、励起光を1480nmの波長に設定する必要がある。
【0029】
図2(A)、(B)は、図1に図解した分布定数型ラマン増幅光伝送路に用いる光ファイバ103、300、203の断面構成および屈折率プロファイルを示す図である。
図2(A)、(B)に図解した光ファイバは分散シフト光ファイバDSFであり、この分散シフト光ファイバDSFは、光ファイバの光軸中心に設けられた、直径a1、屈折率n1の第1のコア1と、第1のコア1の外周に形成された、直径b1、屈折率n2の第2コア2と、第2のコア2の外周に形成された、直径c1、屈折率n3の第3コア3と、第3コア3の外周に形成された、直径d1、屈折率n4のクラッド4とを有する。
分散シフト光ファイバDSFは、クラッド4の外周に樹脂が被覆されているが、樹脂被覆の図解を省略している。
【0030】
屈折率の大小関係は、n1>n3>n4>n2である。
クラッド4は石英ガラス、すなわち、シリカベースのガラスで形成されている。クラッド4の屈折率n4より屈折率の高い第1のコア1および第3のコア3には、シリカに屈折率を高めるドーパント、たとえば、ゲルマニュームが添加されている。第1のコア1のゲルマニュームの添加量は第3のコア3へのゲルマニュームの添加量より多い。クラッド4より屈折率の低い第2のコア2にはシリカに屈折率を非以下させるドーパント、たとえば、フッ素が添加されている。
クラッド14に対する第1のコア10の第1比屈折率差Δ1、クラッド14に対する第2のコア11の比屈折率差Δ2、および、クラッド14に対する第3のコア13の比屈折率差Δ3を下記式2で規定する。
【0031】
【数2】
【0032】
比屈折率差Δ1〜Δ3の1例を述べると、Δ1=+0.54%、Δ2=−0.3%、Δ3=+0.3%である。
外径a1:b1:c1の比率の1例を、コア部分の中心の第2のコア2の外周b1を基準にして述べると、(a1/b1):1.0:(c1/b1)=0.55:1.0:1.25である。
【0033】
図3は本実施の形態の分散シフト光ファイバの波長(横軸)と伝送損失(縦軸)の関係を示す図である。
本実施の形態の分散シフト光ファイバは、波長1380nmでのOH吸収に起因する損失増加は最小限に抑えられ、0.30dB/kmとなっている。
【0034】
図4は本実施の形態の波長多重伝送用光ファイバの波長(横軸)と分散値(縦軸)の関係を示す図である。
本実施の形態の波長多重伝送用光ファイバは、零分散波長が1410nmとなっていて、波長1550nmでの分散値は4.8ps/nm・kmとなっている。
なお、この分散シフト光ファイバの特性は、波長1550nmにおける伝送損失が0.249db/km、実効(有効)コア断面積Aeff は45μm2である。また、この分散シフト光ファイバのケーブルカットオフ波長は1160nmであり、分散スロープが0.029ps/nm2 ・kmとなっている。
【0035】
また、本実施形態の分散シフト光ファイバを、IEC60793-2-50(first edition2002-01) Annex C Section C3.1で規定された水素エージング試験を行い、試験前後での波長1380nmの損失変化を測定したところ、損失変化は0.00dB/kmであった(λy=1380nm)。
【0036】
上述したように、本発明の第1実施の形態の分散シフト光ファイバは、波長1350〜1410nmという、OHの吸収により伝送損失が増加しやすい波長帯にゼロ分散波長を有しているため、従来は、ゼロ分散波長近傍の低分散領域の波長帯、および、OHの吸収波長帯の2つの波長帯を伝送波長帯から除外しなければならなかったのが、1つの波長帯に限定することが可能となり、使用波長領域が拡大する。
本発明の第1実施の形態の分散シフト光ファイバは、実効コア断面積Aeff が50μm2 以下であり、従来の非零分散シフト光ファイバ(NZDSF)に比べて小さいので、ラマン効率の向上がもたらされ、ラマン増幅に適している。
本発明の第1実施の形態の分散シフト光ファイバは、波長1380nmにおける伝送損失を0.4dB/km以下なので、ラマン増幅型光伝送路における励起光(ポンプ光)の減衰を最小限に抑えることが可能となった。
さらに本発明の第一実施の形態の分散シフト光ファイバは、常温常圧で実質的に水素からなる雰囲気に充分放置した前後で、波長1380nmにおける伝送損失が0.04dB/km以上変動しないため、長期的に波長1380nmにおける経時変化も少なく、安定したラマン増幅システムが構築できる。
以上のとおり、本発明の分散シフト光ファイバはラマン増幅型光伝送路を好適に適用できる。
【0037】
また、本発明の第1実施の形態の分散シフト光ファイバは、実際の伝送波長帯である1550nm帯において伝送特性およびケーブル化からの要求を満足するためには、波長1550nmにおいて伝送損失が0.25dB/km以下であり、直径20mmに曲げたときの損失増加量が30dB/m以下であり、カットオフ波長λcが1350nm以下である。
【0038】
第2実施の形態
本発明の光ファイバの第2実施の形態について述べる。
図5(A)、(B)は本発明の光ファイバの第2の実施の形態としての分散シフト光ファイバの断面構成図と屈折率プロファイルを示す図である。
第2実施の形態の分散シフト光ファイバDSFは、光ファイバの光軸中心に設けられた、外径a2、屈折率n11の第1のコア11と、第1のコア11の外周に形成された、外径b2、屈折率n12の第2のコア12と、第2のコア12の外周に形成された、外径c2、屈折率n13の第3のコア13と、第3のコア13の外周に形成された、外径d2、屈折率n14の第4のコア14と、第4のコア14の外周に形成された、外径e2、屈折率n15の第5のコア15と、第5のコア15の外周に形成された、外径f2、屈折率n16のクラッド16とを有する。
分散シフト光ファイバDSFは、クラッド16の外周に樹脂が被覆されているが、樹脂被覆の図解を省略している。
【0039】
屈折率の大小関係は、n11>n13>n16>n12>n15であり、且つn14とn16とはほぼ等しい値である。
【0040】
第4のコア14およびクラッド16は石英ガラス、すなわち、シリカベースのガラスで形成されている。クラッド16の屈折率n16より屈折率の高い第1のコア11および第3のコア13には、シリカに屈折率を高めるドーパント、たとえば、ゲルマニュームが添加されている。第1のコア11にドープされるゲルマニュームの量は第3のコア13にドープされるゲルマニュームの量より多い。クラッド16より屈折率の低い第2のコア12および第5のコア15にはシリカに屈折率を非以下させるドーパント、たとえば、フッ素が添加されている。第5のコア15にドープされるフッ素の量は第2のコア12にドープされるフッ素の量より多い。
クラッド16に対する第1のコア11の第1比屈折率差Δ11、クラッド16に対する第2のコア12の比屈折率差Δ12、および、クラッド16に対する第3のコア13の比屈折率差Δ13、クラッド16に対する第4のコア14の比屈折率差Δ14、および、クラッド16に対する第5のコア15の比屈折率差Δ15は、上述した式(1)と同様に規定される。
【0041】
たとえば、比屈折率差Δ11はは0.54%であり、比屈折率差Δ12は−0.3%であり、比屈折率差Δ13は0.25%であり、比屈折率差Δ14は約1.0であり、比屈折率差Δ15は−0.4%である。
第2のコア12の外径b2を基準として、外径比、(a2/b2):1.0:(c2/b2):(d2/b2):(e2/b2)は、たとえば、0.55:1.0:1.35:2.2:2.5である。
【0042】
第2実施の形態の分散シフト光ファイバは、ゼロ分散波長が1380nm、波長1380nmでの損失は0.35dB/km、波長1550nmでの伝送損失が0.218dB/km、分散値は4.9ps/nm・km、実効コア断面積Aeff は45μm2、ケーブルカットオフ波長λc は1270nmであり、分散スロープが0.020ps/nm2 ・kmである。
【0043】
第2実施形態の分散シフト光ファイバを、IEC60793-2-50(first edition 2002-01) Annex C Section C3.1で規定された水素エージング試験を行い、試験前後での波長1380nmの損失変化を測定したところ、損失変化は0.00dB/kmであった(λy=1380nm)。
【0044】
以上のように、第2実施の形態の分散シフト光ファイバも第1実施の形態の分散シフト光ファイバと同様、分布定数型ラマン増幅光伝送路に好適に適用できる。
【0045】
本発明の光ファイバは、図2(A)、(B)および図5(A)、(B)を参照して例示した構成および屈折率プロファイルを持つものに限定されず、(1)ゼロ分散波長が波長1350〜1410nmの波長範囲内にただ1つあり、(2)1550nmにおける分散値(D)が2〜8ps/nm/kmであり、(3)分散スロープ(DS)が0.05ps/nm2/km以下で、実効(有効)コア断面積(Aeff )が50μm2 以下であり、(4)波長1380nmにおける伝送損失が0.4dB/km以下であって、(5)水素エージング試験前後で、波長1380nmにおける伝送損失が、0.04dB/km以上変動しないものであれば、上述した例示の光ファイバに限定されない。
【0046】
【発明の効果】
本発明の光ファイバは、波長1350〜1410nmという、OHの吸収により伝送損失が増加しやすい波長帯にゼロ分散波長を有しているため、従来の光ファイバにおいてはゼロ分散波長近傍の低分散領域の波長帯、およびOHの吸収波長帯の2つの波長帯を、伝送波長帯から除外しなければならなかったのが、1つの波長帯に限定することが可能となり、使用波長領域が拡大した。
【0047】
また、本発明の光ファイバは、有効(実効)コア断面積Aeff 50μm2 以下であり、分布定数型ラマン増幅光伝送路に適用した場合に、ラマン効率が向上した。
【0048】
さらに、本発明の光ファイバは、波長1380nmにおける伝送損失が0.48dB/km以下であり、常温常圧で実質的に水素からなる雰囲気に充分放置した前後で、波長1380nmにおける伝送損失が、0.04dB/km以上変動しないように形成することにより、ポンプ光の減衰を最小限におさえ、長期的に経時変化が少なく、長期間安定に動作しうる、ラマン増幅型光伝送路を構築できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の光伝送路の1実施の形態としての分布定数型ラマン増幅光伝送路の構成図である。
【図2】図2(A)、(B)は本発明の第1実施の形態の光ファイバの断面構成図および屈折率プロファイルを図解した図である。
【図3】図3は本実施の形態の分散シフト光ファイバの波長(横軸)と伝送損失(縦軸)の関係を示す図である。
【図4】図4は本実施の形態の波長多重伝送用光ファイバの波長(横軸)と分散値(縦軸)の関係を示す図である。
【図5】図5(A)、(B)は本発明の第2実施の形態の光ファイバの断面構成図および屈折率プロファイルを図解した図である。
【符号の説明】
1、11・・第1コア
2、12・・第2コア
3、13・・第3コア
14〜15・・第4〜第5コア
4、16・・クラッド
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバおよび光ファイバを用いた光伝送路に関するものであり、特に、波長分割多重光伝送を行なうときに用いる光ファイバおよび光伝送路に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、光ファイバを用いた光伝送における伝送容量を増大させる技術の検討が盛んに行われている。
一般に、光ファイバの伝送損失は波長1.55μm付近で最も小さくなるため、この波長帯を用いた光伝送を行うことが望まれ、波長1.55μm付近にゼロ分散波長を有する分散シフト光ファイバ(DSF)が開発された。この光ファイバにより、波長1.55μm帯において伝送容量が数Gbps(ギガビット/秒)の光伝送が可能となった。
【0003】
また近年では、伝送容量を増大させるための技術として波長分割多重(WDM)光伝送についての研究開発が極めて盛んに行われている。そして、WDM光伝送に好適に用いられる光ファイバについても多くの検討がなされている。
光ファイバをWDM光伝送に使用する場合には、使用波長帯にゼロ分散波長が存在しないことが非線形現象である四光波混合を防ぐ観点から要求されるため、使用波長帯に零分散をもたないノンゼロ分散シフト光ファイバ(NZDSF)が開発された。このNZDSFの開発により、波長1.53μm〜1.565μmの波長領域(Cバンド)および波長1.565μm〜1.625μmの波長領域(Lバンド)でのWDM伝送が可能となり、伝送容量は飛躍的に増大した。
【0004】
このようなWDM伝送システムにおいて、さらに、伝送容量を拡大するために、1.46μm〜1.53μmの波長領域(Sバンド)まで、信号光の波長帯域の幅を広げる試みがなされている。
【0005】
また、最近では、波長分割多重伝送の伝送帯域を拡大するために、Erをドープした光ファイバを用いた光増幅装置(EDFA)の広帯域化の検討だけでなく、ラマン増幅器や新希土類ドープ光ファイバ等による新型光増幅器を波長分割多重伝送用として適用する研究が盛んに行われており、実用化の検討も始まっている。なかでもラマン増幅器を用いたラマン増幅型光伝送路は実用化が間近になっている。
【0006】
ラマン増幅とは、光ファイバに強い光(励起光)を入射した際に起こる誘導ラマン散乱によって励起光波長から100nm程度長波長側にゲイン(利得)があらわれる現象を利用し、このように励起された状態の光ファイバに上記利得を有する波長域の信号を入射して、その信号光を増幅するという光信号の増幅方法である。
【0007】
従来の光ファイバの中には、広波長帯域の実現を目的として、ゼロ分散波長を水酸基(OH基)の吸収波長帯である1.38μm帯にシフトさせ、DWDMにおける4光波混合の発生を抑止するために、波長1550nmにおける有効コア断面積Aeff を60μm2 以上としたものがある。(例えば、特許文献1参照)
【0008】
【特許文献1】
米国特許第6,266,467号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に、実効コア断面積Aeff が大きくなるとラマン増幅を行なわせるためには効率が悪くなることが知られている。
なお、Aeff は下記式1で規定される。
【0010】
【数1】
【0011】
さらに、波長多重励起光源としてトータルとして1W以上の大きな光パワーを必要とすることから、単に効率の低下、経済的でないだけでなく、大電力の印加に起因する加熱により、伝送路に接続される光コネクタや、光ファイバに被覆されている樹脂に悪影響を及ぼす可能性がある。
このように、特許文献1に開示されている光ファイバはラマン増幅伝送システムに好適な光ファイバとは言いがたい。
【0012】
なお、特許文献1には、OH基の吸収ピーク帯にゼロ分散波長をシフトさせ、OH基の吸収ピーク帯の伝送損失を最小限とすることで、波長1.20〜1.60μmでの広帯域伝送を実現できると記載されているが、一般に、OHの吸収ピークは、水素の侵入により経時的に増加することが知られているが、特許文献1には光ファイバの長期の安定な使用に関する記述はない。
【0013】
本発明の目的は、波長分割多重伝送などにおいて広い波長領域の光信号を伝送しても、伝送損失が少なく、波長分散が小さい、光ファイバを提供することにある。
また本発明の目的は、上記光ファイバを用いた光伝送路を提供することにある。
さらに本発明の他の目的は、ラマン増幅型光伝送路に好適に適用可能な光ファイバを提供することにある。
また本発明の目的は、上記ラマン増幅型光伝送路に好適に適用可能な光ファイバを用いた光伝送路を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ファイバは、上記課題を克服するため、次のように構成されている。
本発明の光ファイバは、ゼロ分散波長が波長1350〜1410nmの波長範囲内にただ1つあり、1550nmにおける分散値(D)が2〜8ps/nm/kmであり、分散スロープ(DS)が0.05ps/nm2/km以下で、実効(有効)コア断面積(Aeff )が50μm2 以下であり、波長1380nmにおける伝送損失が0.4dB/km以下であって、水素エージング試験前後で、波長1380nmにおける伝送損失が、0.04dB/km以上変動しないことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の光ファイバは、波長1550nmにおいて、伝送損失が0.25dB/km以下であり、直径20mmに曲げたときの損失増加量が30dB/m以下であり、カットオフ波長λc が1350nm以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明の光ファイバは、波長1350〜1410nmという、OHの吸収により伝送損失が増加しやすい波長帯にゼロ分散波長を有しているため、従来は、ゼロ分散波長近傍の低分散領域の波長帯、および、OHの吸収波長帯の2つの波長帯を伝送波長帯から除外しなければならなかったのが、1つの波長帯に限定することが可能となり、使用波長領域が拡大する。
【0017】
また、ラマン増幅器の適用を考えた場合に、
(1)実効コア断面積Aeff を50μm2 以下と、従来の非零分散シフト光ファイバ(NZDSF)に比べて小さくすることで、ラマン効率の向上がもたらされるため、従来のAeff が50μm2 以上であるNZDSFと比較して、本発明の分散シフト光ファイバがラマン増幅に適している。
(2)また、波長1380nmにおける伝送損失を0.4dB/km以下とすることより、ラマン増幅型光伝送路における励起光(ポンプ光)の減衰を最小限に抑えることが可能となった。
(3)さらに、本発明の分散シフト光ファイバを常温常圧で実質的に水素からなる雰囲気に充分放置した前後で、波長1380nmにおける伝送損失が0.04dB/km以上変動しないため、長期的に波長1380nmにおける経時変化も少なく、安定したラマン増幅システムが構築できる。
【0018】
以上のとおり、本発明の分散シフト光ファイバはラマン増幅型光伝送路を好適に適用できる。
【0019】
また、実際の伝送波長帯である1550nm帯において、伝送特性およびケーブル化からの要求を満足するためには、波長1550nmにおいて、伝送損失が0.25dB/km以下であり、直径20mmに曲げたときの損失増加量が30dB/m以下であり、カットオフ波長λcが1350nm以下とすることが好適である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光ファイバおよびそれを用いた光伝送路の好適実施の形態について添付図面を参照して述べる。
【0021】
本発明の光ファイバの実施の形態として、波長多重伝送用光ファイバとして用いて好適な分散シフト光ファイバを例示する。
また本発明の光伝送路の実施の形態として、ラマン増幅型光伝送路について述べる。光ファイバ通信において信号伝送距離を延ばし、雑音を低減させることが可能な通信システムとしてラマン増幅型光伝送路が知られている。
【0022】
ラマン増幅について簡単に述べる。
一般に、光をガラスなどの物質に入射すると、その物質の分子振動や格子振動のために、元の波長よりやや長い波長の光が発生する。この光をラマン散乱光という。さらに入射する励起光を強くすると位相の揃った強いラマン散乱光が発生する。これを誘導ラマン散乱光という。
入射される信号光と誘導ラマン散乱光との波長が一致していれば、誘導ラマン散乱光は信号光と同じ強弱の変化を受け、信号光を増幅する。このようにラマン増幅とは、強い励起光を光ファイバに入射したとき、材料である石英ガラスを構成する分子によって散乱された光(誘導ラマン散乱光)が入射時とは異なる波長に変換されて散乱されることを利用する光信号強度の増幅技術である。
ラマン増幅を用いた光ファイバ型増幅器は、このような光ファイバの中で発生する非線形光学現象に起因する増幅作用を利用したものである。
ラマン増幅は、光伝送路(光ファイバ)の中で生ずる増幅であるから、光伝送路に伝送光以外の増幅光を入射するシステムとも言える。
【0023】
ラマン増幅型光伝送路としては、分布定数型ラマン増幅光伝送路および集中定数型ラマン増幅光伝送路が知られているが、本実施の形態においては、分布定数型ラマン増幅光伝送路について述べる。
【0024】
図1は分布定数型ラマン増幅器を用いた光通信システム(伝送路)の1例を示す構成図である。
図1に図解した分布定数型ラマン増幅器を用いた伝送路は、第1の送受信端100と、第2の送受信端200と、第1および第2の送受信端100、200との間に配設された光ファイバ300とを有する。
第1の送受信端100は、ラマン増幅のための第1の励起光源(ポンプ)101と、第1の光合波手段102と、第1の光ファイバ103とで構成されている。第2の送受信端200も、第1の送受信端100と実質的に同じ構成をしており、ラマン増幅のための第2の励起光源(ポンプ)201と、第2の光合波手段202と、第2の光ファイバ203とで構成されている。
なお、分布定数型ラマン増幅光伝送路を構成する光ファイバとしては、光ファイバ103、300、203のいずれか1本のみでよく、必ずしも、光ファイバ103、203、300の全てを必要としないが、本例示においては、第1および第2の分布定数型ラマン増幅光伝送路の送受信端100、200との距離が比較的長く、中間に光ファイバ300を配置する場合を例示している。本例においては、ラマン増幅作用は、光ファイバ103、300、203において発生する。
【0025】
第1の送受信端100において、第2の送受信端200側に伝送すべき第1の伝送信号S1が第1の光合波手段102に入力され、第1の励起光源101から強い励起光S11が第1の光合波手段102に入力され、第1の光合波手段12において合波された光が光ファイバ103に入力されてラマン増幅され、ラマン増幅された光信号が光ファイバ300、203を伝播されながら再びラマン増幅され、ラマン増幅された光信号が第2の送受信端200の第2の光合波手段202を介して受信信号S1Aとして受信される。
第2の送受信端200から第1の送受信端100への信号伝送も上記同様に行なわれる。
波長多重(WDM)光通信システムでは、短波長側の励起光が短波長側の信号光をラマン増幅し、一方、長波長側の励起光が長波長側の信号光をラマン増幅している。
【0026】
集中定数型ラマン増幅器は、たとえば、分散補償モジュールのような機器装置化された(たとえば、コイルに巻かれ中継局など煮設置された状態の)光ファイバに増幅光を入射させるような装置構成の増幅器である。
【0027】
ラマン増幅器を用いた光伝送路においては、光ファイバ103、300、203の長手方向の光強度分布をより均一にするために、第1の送受信端100側から第2の送受信端200側に信号を伝送する場合を例示すると、第1の送受信端100におけるラマン増幅のための励起光として、光ファイバ103の前方(信号光の入力側と同じ方向)の第1の励起光源101からと、光ファイバ103の後方(信号光が出力される方向)の第2の励起光源201からとの両方から入力することが望ましい。これを双方向励起と呼び、本実施の形態においても、双方向励起を行なう場合を例示する。
【0028】
光ファイバ103、300、203が石英ガラス系で作製されている場合には、ラマン増幅の最大の利得ピークは、励起光の光周波数より13T(テラ)Hz低い光周波数に存在する。例えば、1.5μm帯域の光通信システムでは、波長1580nmの信号光が、最大のラマン利得を得るためには、励起光を1480nmの波長に設定する必要がある。
【0029】
図2(A)、(B)は、図1に図解した分布定数型ラマン増幅光伝送路に用いる光ファイバ103、300、203の断面構成および屈折率プロファイルを示す図である。
図2(A)、(B)に図解した光ファイバは分散シフト光ファイバDSFであり、この分散シフト光ファイバDSFは、光ファイバの光軸中心に設けられた、直径a1、屈折率n1の第1のコア1と、第1のコア1の外周に形成された、直径b1、屈折率n2の第2コア2と、第2のコア2の外周に形成された、直径c1、屈折率n3の第3コア3と、第3コア3の外周に形成された、直径d1、屈折率n4のクラッド4とを有する。
分散シフト光ファイバDSFは、クラッド4の外周に樹脂が被覆されているが、樹脂被覆の図解を省略している。
【0030】
屈折率の大小関係は、n1>n3>n4>n2である。
クラッド4は石英ガラス、すなわち、シリカベースのガラスで形成されている。クラッド4の屈折率n4より屈折率の高い第1のコア1および第3のコア3には、シリカに屈折率を高めるドーパント、たとえば、ゲルマニュームが添加されている。第1のコア1のゲルマニュームの添加量は第3のコア3へのゲルマニュームの添加量より多い。クラッド4より屈折率の低い第2のコア2にはシリカに屈折率を非以下させるドーパント、たとえば、フッ素が添加されている。
クラッド14に対する第1のコア10の第1比屈折率差Δ1、クラッド14に対する第2のコア11の比屈折率差Δ2、および、クラッド14に対する第3のコア13の比屈折率差Δ3を下記式2で規定する。
【0031】
【数2】
【0032】
比屈折率差Δ1〜Δ3の1例を述べると、Δ1=+0.54%、Δ2=−0.3%、Δ3=+0.3%である。
外径a1:b1:c1の比率の1例を、コア部分の中心の第2のコア2の外周b1を基準にして述べると、(a1/b1):1.0:(c1/b1)=0.55:1.0:1.25である。
【0033】
図3は本実施の形態の分散シフト光ファイバの波長(横軸)と伝送損失(縦軸)の関係を示す図である。
本実施の形態の分散シフト光ファイバは、波長1380nmでのOH吸収に起因する損失増加は最小限に抑えられ、0.30dB/kmとなっている。
【0034】
図4は本実施の形態の波長多重伝送用光ファイバの波長(横軸)と分散値(縦軸)の関係を示す図である。
本実施の形態の波長多重伝送用光ファイバは、零分散波長が1410nmとなっていて、波長1550nmでの分散値は4.8ps/nm・kmとなっている。
なお、この分散シフト光ファイバの特性は、波長1550nmにおける伝送損失が0.249db/km、実効(有効)コア断面積Aeff は45μm2である。また、この分散シフト光ファイバのケーブルカットオフ波長は1160nmであり、分散スロープが0.029ps/nm2 ・kmとなっている。
【0035】
また、本実施形態の分散シフト光ファイバを、IEC60793-2-50(first edition2002-01) Annex C Section C3.1で規定された水素エージング試験を行い、試験前後での波長1380nmの損失変化を測定したところ、損失変化は0.00dB/kmであった(λy=1380nm)。
【0036】
上述したように、本発明の第1実施の形態の分散シフト光ファイバは、波長1350〜1410nmという、OHの吸収により伝送損失が増加しやすい波長帯にゼロ分散波長を有しているため、従来は、ゼロ分散波長近傍の低分散領域の波長帯、および、OHの吸収波長帯の2つの波長帯を伝送波長帯から除外しなければならなかったのが、1つの波長帯に限定することが可能となり、使用波長領域が拡大する。
本発明の第1実施の形態の分散シフト光ファイバは、実効コア断面積Aeff が50μm2 以下であり、従来の非零分散シフト光ファイバ(NZDSF)に比べて小さいので、ラマン効率の向上がもたらされ、ラマン増幅に適している。
本発明の第1実施の形態の分散シフト光ファイバは、波長1380nmにおける伝送損失を0.4dB/km以下なので、ラマン増幅型光伝送路における励起光(ポンプ光)の減衰を最小限に抑えることが可能となった。
さらに本発明の第一実施の形態の分散シフト光ファイバは、常温常圧で実質的に水素からなる雰囲気に充分放置した前後で、波長1380nmにおける伝送損失が0.04dB/km以上変動しないため、長期的に波長1380nmにおける経時変化も少なく、安定したラマン増幅システムが構築できる。
以上のとおり、本発明の分散シフト光ファイバはラマン増幅型光伝送路を好適に適用できる。
【0037】
また、本発明の第1実施の形態の分散シフト光ファイバは、実際の伝送波長帯である1550nm帯において伝送特性およびケーブル化からの要求を満足するためには、波長1550nmにおいて伝送損失が0.25dB/km以下であり、直径20mmに曲げたときの損失増加量が30dB/m以下であり、カットオフ波長λcが1350nm以下である。
【0038】
第2実施の形態
本発明の光ファイバの第2実施の形態について述べる。
図5(A)、(B)は本発明の光ファイバの第2の実施の形態としての分散シフト光ファイバの断面構成図と屈折率プロファイルを示す図である。
第2実施の形態の分散シフト光ファイバDSFは、光ファイバの光軸中心に設けられた、外径a2、屈折率n11の第1のコア11と、第1のコア11の外周に形成された、外径b2、屈折率n12の第2のコア12と、第2のコア12の外周に形成された、外径c2、屈折率n13の第3のコア13と、第3のコア13の外周に形成された、外径d2、屈折率n14の第4のコア14と、第4のコア14の外周に形成された、外径e2、屈折率n15の第5のコア15と、第5のコア15の外周に形成された、外径f2、屈折率n16のクラッド16とを有する。
分散シフト光ファイバDSFは、クラッド16の外周に樹脂が被覆されているが、樹脂被覆の図解を省略している。
【0039】
屈折率の大小関係は、n11>n13>n16>n12>n15であり、且つn14とn16とはほぼ等しい値である。
【0040】
第4のコア14およびクラッド16は石英ガラス、すなわち、シリカベースのガラスで形成されている。クラッド16の屈折率n16より屈折率の高い第1のコア11および第3のコア13には、シリカに屈折率を高めるドーパント、たとえば、ゲルマニュームが添加されている。第1のコア11にドープされるゲルマニュームの量は第3のコア13にドープされるゲルマニュームの量より多い。クラッド16より屈折率の低い第2のコア12および第5のコア15にはシリカに屈折率を非以下させるドーパント、たとえば、フッ素が添加されている。第5のコア15にドープされるフッ素の量は第2のコア12にドープされるフッ素の量より多い。
クラッド16に対する第1のコア11の第1比屈折率差Δ11、クラッド16に対する第2のコア12の比屈折率差Δ12、および、クラッド16に対する第3のコア13の比屈折率差Δ13、クラッド16に対する第4のコア14の比屈折率差Δ14、および、クラッド16に対する第5のコア15の比屈折率差Δ15は、上述した式(1)と同様に規定される。
【0041】
たとえば、比屈折率差Δ11はは0.54%であり、比屈折率差Δ12は−0.3%であり、比屈折率差Δ13は0.25%であり、比屈折率差Δ14は約1.0であり、比屈折率差Δ15は−0.4%である。
第2のコア12の外径b2を基準として、外径比、(a2/b2):1.0:(c2/b2):(d2/b2):(e2/b2)は、たとえば、0.55:1.0:1.35:2.2:2.5である。
【0042】
第2実施の形態の分散シフト光ファイバは、ゼロ分散波長が1380nm、波長1380nmでの損失は0.35dB/km、波長1550nmでの伝送損失が0.218dB/km、分散値は4.9ps/nm・km、実効コア断面積Aeff は45μm2、ケーブルカットオフ波長λc は1270nmであり、分散スロープが0.020ps/nm2 ・kmである。
【0043】
第2実施形態の分散シフト光ファイバを、IEC60793-2-50(first edition 2002-01) Annex C Section C3.1で規定された水素エージング試験を行い、試験前後での波長1380nmの損失変化を測定したところ、損失変化は0.00dB/kmであった(λy=1380nm)。
【0044】
以上のように、第2実施の形態の分散シフト光ファイバも第1実施の形態の分散シフト光ファイバと同様、分布定数型ラマン増幅光伝送路に好適に適用できる。
【0045】
本発明の光ファイバは、図2(A)、(B)および図5(A)、(B)を参照して例示した構成および屈折率プロファイルを持つものに限定されず、(1)ゼロ分散波長が波長1350〜1410nmの波長範囲内にただ1つあり、(2)1550nmにおける分散値(D)が2〜8ps/nm/kmであり、(3)分散スロープ(DS)が0.05ps/nm2/km以下で、実効(有効)コア断面積(Aeff )が50μm2 以下であり、(4)波長1380nmにおける伝送損失が0.4dB/km以下であって、(5)水素エージング試験前後で、波長1380nmにおける伝送損失が、0.04dB/km以上変動しないものであれば、上述した例示の光ファイバに限定されない。
【0046】
【発明の効果】
本発明の光ファイバは、波長1350〜1410nmという、OHの吸収により伝送損失が増加しやすい波長帯にゼロ分散波長を有しているため、従来の光ファイバにおいてはゼロ分散波長近傍の低分散領域の波長帯、およびOHの吸収波長帯の2つの波長帯を、伝送波長帯から除外しなければならなかったのが、1つの波長帯に限定することが可能となり、使用波長領域が拡大した。
【0047】
また、本発明の光ファイバは、有効(実効)コア断面積Aeff 50μm2 以下であり、分布定数型ラマン増幅光伝送路に適用した場合に、ラマン効率が向上した。
【0048】
さらに、本発明の光ファイバは、波長1380nmにおける伝送損失が0.48dB/km以下であり、常温常圧で実質的に水素からなる雰囲気に充分放置した前後で、波長1380nmにおける伝送損失が、0.04dB/km以上変動しないように形成することにより、ポンプ光の減衰を最小限におさえ、長期的に経時変化が少なく、長期間安定に動作しうる、ラマン増幅型光伝送路を構築できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の光伝送路の1実施の形態としての分布定数型ラマン増幅光伝送路の構成図である。
【図2】図2(A)、(B)は本発明の第1実施の形態の光ファイバの断面構成図および屈折率プロファイルを図解した図である。
【図3】図3は本実施の形態の分散シフト光ファイバの波長(横軸)と伝送損失(縦軸)の関係を示す図である。
【図4】図4は本実施の形態の波長多重伝送用光ファイバの波長(横軸)と分散値(縦軸)の関係を示す図である。
【図5】図5(A)、(B)は本発明の第2実施の形態の光ファイバの断面構成図および屈折率プロファイルを図解した図である。
【符号の説明】
1、11・・第1コア
2、12・・第2コア
3、13・・第3コア
14〜15・・第4〜第5コア
4、16・・クラッド
Claims (5)
- ゼロ分散波長が波長1350〜1410nmの波長範囲内にただ1つあり、
1550nmにおける分散値(D)が2〜8ps/nm/kmであり、
分散スロープ(DS)が正の値で0.05ps/nm2/km以下であり、
実効コア断面積(Aeff )が50μm2 以下であり、
波長1380nmにおける伝送損失が0.4dB/km以下であり、
水素エージング試験前後で波長1380nmにおける伝送損失が0.04dB/km以上変動しない、
ことを特徴とする光ファイバ。 - 波長1550nmにおいて伝送損失が0.25dB/km以下であり、
直径20mmに曲げたときの損失増加量が30dB/m以下であり、
カットオフ波長が1350nm以下である、
請求項1記載の光ファイバ。 - 光ファイバの光軸中心に設けられた、屈折率n1の第1のコアと、
該第1のコアの外周に形成された、屈折率n2の第2コアと、
該第2のコアの外周に形成された、屈折率n3の第3コアと、
該第3コアの外周に形成された、屈折率n4のクラッドと、
を有し、
屈折率の大小関係が、n1>n3>n4>n2である、
請求項1または2記載の光ファイバ。 - 光ファイバの光軸中心に設けられた、屈折率n11の第1のコアと、
該第1のコアの外周に形成された、屈折率n12の第2のコアと、
該第2のコアの外周に形成された、屈折率n13の第3のコアと、
該第3のコアの外周に形成された、屈折率n14の第4のコアと、
該第4のコアの外周に形成された、屈折率n15の第5のコアと、
該第5のコアの外周に形成された、屈折率n16のクラッドと
を有し、
屈折率の大小関係が、n11>n13>n16>n12>n15であり、且つn14とn16は実質的に等しい屈折率であることを特徴とする、
請求項1または2記載の光ファイバ。 - 請求項1〜4いずれか記載の光ファイバを用いてラマン増幅する、ラマン増幅型光伝送路。
Priority Applications (3)
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JP2002367193A JP2004198737A (ja) | 2002-12-18 | 2002-12-18 | 光ファイバおよびそれを用いた光伝送路 |
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ID=32764171
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JP (1) | JP2004198737A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN100375911C (zh) * | 2005-09-29 | 2008-03-19 | 武汉理工大学 | 一种具有宽带光放大和色散补偿作用的光纤及其制备方法 |
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2002
- 2002-12-18 JP JP2002367193A patent/JP2004198737A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN100375911C (zh) * | 2005-09-29 | 2008-03-19 | 武汉理工大学 | 一种具有宽带光放大和色散补偿作用的光纤及其制备方法 |
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