JP2004198451A - 多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法において、着色時の応答速度を向上し、形成した画像を所定時間の間保持ができ、さらに、画像の一時的な消去・再現が可能な画像情報処理方法を提供する。
【解決手段】銀微粒子を担持する酸化チタンに、可視光を照射することにより、この可視光に応じた色に着色する多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法において、酸素雰囲気内あるいは酸化剤の存在下で前記可視光を照射することにより、着色速度を加速することを特徴とする方法。
【選択図】 図1
【解決手段】銀微粒子を担持する酸化チタンに、可視光を照射することにより、この可視光に応じた色に着色する多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法において、酸素雰囲気内あるいは酸化剤の存在下で前記可視光を照射することにより、着色速度を加速することを特徴とする方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法に関し、特に、画像形成方法、画像保存方法及び画像の一時的消去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紫外光を照射することにより、TiO2光触媒上に析出させたAgナノ粒子の色(褐色)が、空気中で蛍光灯からの光(可視光)を照射することで無色になり、再び紫外光を照射すると元の褐色に着色するフォトクロミック現象については、本発明者等により発表され公知である(例えば、非特許文献1参照。)。このフォトクロミック材料は、新たなフォトクロミック材料としてフルカラー電子ペーパー、装飾用の壁紙あるいは光情報記憶装置等、各種の応用が期待できる。なお、上記のフォトクロミック現象を利用した多色フォトクロミック材料に関しては、本願発明者等により、特願2002−171378として出願済みである。
【0003】
【非特許文献1】
大古善久他著「光化学討論会」、京都、2002年9月11日〜13日、「TiO2光触媒上に析出した銀ナノ粒子のフォトクロミック特性」
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のフォトクロミック材料は、上記のように多くの応用が期待されるが、そのためには、着色時の応答速度の向上、形成した画像を所定時間の間保持できること、画像の一時的な消去・再現機能等が要請されている。
【0005】
したがって本発明は、これらの要請に答えうる多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法の提供を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法は、銀微粒子を担持する酸化チタンに、酸素雰囲気内あるいは酸化剤の存在下で可視光を照射することにより、この可視光に応じた色に着色することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法においては、前記酸化チタンは、酸化剤を含む溶液中で、あるいは酸化剤を含む溶液を塗布した状態で可視光を照射することを特徴とするものである。
【0008】
さらに、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法においては、前記酸化剤は、メチルビオロゲン、過酸化水素、硝酸、ベンゾキノン、鉄(III)イオンまたはフェリシアン化物イオンであることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法は、銀微粒子を担持する酸化チタンに、可視光を照射することにより画像を形成し、その後、前記銀微粒子を担持する酸化チタンの表面を酸素遮断膜により被覆することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法においては、前記酸素遮断膜は、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドまたはナフィオンのポリマー溶液を塗布し、溶媒を揮発させることにより形成することを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法においては、前記酸素遮断膜は、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドまたはナフィオン薄膜を加熱塗布することにより形成することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法は、基体表面に銀微粒子を担持する酸化チタン薄膜を形成する工程と、この酸化チタン薄膜に可視光を照射することにより前記銀微粒子をイオン化して画像を形成する工程と、この工程により画像が形成された酸化チタン薄膜内の銀イオンを除去する工程と、この工程により銀イオンが除去された前記酸化チタン薄膜に白色可視光を照射することにより前記画像を消去する工程と、この工程により画像が消去された前記酸化チタン薄膜に、前記画像消去工程完了後、所定の期間内に紫外線を照射することにより前記画像を再現する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法においては、画像が形成された酸化チタン薄膜内の銀イオンを除去する工程は、酸化チタン薄膜をチオ硫酸ナトリウム水溶液または水で洗浄する工程からなることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法においては、前記可視光は単色光または複数の単色光の組み合わせであって白色光以外の色光であることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
(実施形態1:画像形成促進法)
本発明の第1の実施形態は、画像形成速度の向上方法に関するものである。
【0017】
褐色の銀担持酸化チタンに、可視光を照射すれば、その可視光の色に呈色するが、この際に適切な酸化剤の存在下で可視光を照射すれば、その色の呈色が速くなることが判明した。つまり、より速く画像形成が可能になる。本発明者等は、純水中で、銀担持酸化チタン膜上に紫外線を含まない白色光である可視光を照射した試料1と、過酸化水素中で、銀担持酸化チタン膜上に、空気中で、紫外線を含まない白色光である可視光を照射した試料2について、それぞれの照射時間を変化させて酸化チタン膜の退色の程度を、測定した。この測定結果が図1に示される。同図は、横軸が時間(分)、縦軸が吸光度である。この吸光度は、上記の各試料に400 nmの波長の光を照射し、その吸光度を測定しプロットした。
【0018】
図1から、純水中で可視光を照射した試料1では、照射時間とともに吸光度は徐々に低下するのに対し、過酸化水素中で可視光を照射した試料2では、短時間の照射により吸光度は急激に減少する。400 nmの波長光に対する吸光度が低いということは、この光を吸収することなく反射するため、試料2はこの波長の色を呈色することになる。
【0019】
なお、酸化剤の存在下での可視光照射は、過酸化水素中での照射以外に、気体酸素中、あるいは酸素濃度の高い気体中で可視光照射によっても、画像形成速度の向上が可能である。また、メチルビオロゲン、過酸化水素、硝酸、ベンゾキノン、鉄(III)イオン、フェリシアン化物イオンなどの溶液中で画像形成あるいはこれらの溶液を塗布した状態で画像形成することによっても画像形成速度の向上が可能である。
【0020】
(実施形態2:画像保存法)
本発明の第2の実施形態は、画像保存法に関するものである。
【0021】
この実施形態においては、銀担持酸化チタン膜上に可視光照射などにより画像を形成した後、この酸化チタン膜上に、酸素を遮断あるいは通しにくくする膜を被覆した。これにより、画像の消滅が停止または遅延され、画像の保存が可能になることが判明した。可視光下または暗所では、この処理をしない場合、徐々に画像は消えて白色または透明となる。
【0022】
本発明者等は、空気中で、銀担持酸化チタン膜上に紫外線を含まない白色光である可視光を照射した試料3と、銀担持酸化チタン膜上にスピンコーティング法でシリコーン膜を塗布した後、空気中で、紫外線を含まない白色光である可視光を照射した試料4について、時間の経過に対する退色の程度を、測定した。この測定結果は、図2に示される。同図は、横軸が時間(分)、縦軸が吸光度である。この吸光度は、上記の各試料に400 nmの波長の光を照射し、その吸光度を測定した。
【0023】
図2から、シリコーン膜を塗布しない試料3では、時間とともに退色が生ずるが、シリコーン膜を塗布した試料4では、時間が経過してもほとんど退色が生じないことがわかる。
【0024】
なお、酸素を遮断あるいは通しにくくする被膜の材料としては、シリコーン膜以外に、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ナフィオンなども利用可能である。これらのポリマー溶液を銀担持酸化チタン膜上にスピンコーティング法などで塗布し、溶媒を揮発させる。
【0025】
また、この被膜を再び溶媒に溶解させ、除去すれば、再び画像の消去、再形成が可能になる。
【0026】
(実施形態3:一時的に消去でき再現可能な画像形成法)
本発明の第3の実施形態は、一時的に消去でき再現可能な画像形成法に関するものである。
【0027】
画像形成後、生成した銀イオンを銀粒子の溶解により除去すれば、一時的に消去できその後再現可能な画像の形成ができる。すなわち、画像形成後、チオ硫酸ナトリウム水溶液ですすぐか、または水でよくすすぐ。すると、紫外光を照射してもすぐには褐色に戻らなくなる(長時間照射すれば、褐色になる)。白色可視光を照射すれば画像は消去できるが、一定時間内に紫外光を照射すれば、元の画像を再現できる(一定時間経過後は、紫外光を照射しても画像は再現できない)。長時間紫外照射するか、あるいは銀イオンを含む溶液に浸漬しながらまたは浸漬した後紫外光照射するなどすれば再度褐色にすることができ、リセットされる。
【0028】
図3乃至図6は、以上の一時消去の機能を説明するための模式図である。
【0029】
図3は、白色または無色の銀担持酸化チタン膜試料をチオ硫酸ナトリウム水溶液または水で洗浄処理すると、膜中のAg+イオンが除去されて、紫外光照射をしても褐色に戻らないようにする過程を示す模式図である。同図(A)はAg+イオンが膜中に存在(吸着)している様子を示す。これは、硝酸銀水溶液に浸漬させた場合や、褐色の試料に波長400 nm以上の白色光を照射した場合に見られる白色あるいは無色の試料に相当する。この試料をチオ硫酸ナトリウム水溶液に浸漬させると、同図(B)に示すように、Ag+イオンはTiO2表面から脱離して、TiO2膜中から除去される。この状態の試料に同図(C)に示すように、紫外光を照射しても、膜中にAg+イオンが存在しないため、試料の色変化は起こらない。このような処理により、TiO2膜中のAg+イオンを強制的に除去することが可能である。
【0030】
図4は、特定の色を呈した銀担持酸化チタン膜試料をチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄処理すると、その後紫外光照射しても褐色に戻らず、同じ特定の色が保持される、という過程を説明する模式図である。
【0031】
同図(A)に示すように、銀担持酸化チタン膜に褐色の状態から緑色の単色光を照射すると、試料は緑色を呈する。この試料をチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄処理すると、同図(B)に示すように、緑色のAg微粒子を構成していたAg(この時点ではAg+イオン)だけ、選択的に除去され、他のAg微粒子は膜内に残存する。この試料に、さらに紫外光を照射しても、同図(C)に示すように、Ag+イオンが存在しないため、元の褐色には戻らず、同図(D)に示すように、同じ緑色が保持される。ただし、十分長時間紫外光を照射すると、Ag微粒子同士の表面拡散の影響で、褐色に戻るようになる。
【0032】
図5は、特定の色を呈した試料をチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄処理すると、一度白色光で全体の色を消しても紫外光照射で同じ特定の色が現れるという過程を説明するための模式図である。
【0033】
同図(A)から同図(B)までは、図4と同じである。同図(B)の状態の試料に、Xe灯からの波長400 nm以上の白色光を照射すると、同図(C)に示すように、白色または無色になる。この試料に、同図(D)に示すように、再び紫外光を照射すると、緑色になり、褐色には戻らない。同図(E)は同図(B)と同じなので、何度も繰り返しが可能である。このように、Ag微粒子が光溶解して、一度Ag+イオンに変化しても、紫外光を照射すれば、ほぼ同じ場所に同じ大きさや形状の銀微粒子が生成すると考えられるため、緑以外の色を吸収するAg微粒子が生成する。すなわち、緑色に戻る。
【0034】
図6は、再度紫外光を照射するまでの時間が長時間である場合、試料に紫外光を照射しても元の特定の色に戻らなくなる過程を説明するための模式図である。同図(A)から同図(C)までは、図5と同じである。同図(C)の状態からすぐに紫外光を照射せず、長時間放置しておくと、Ag+イオンは膜中を遠くまで表面拡散出来るものと考えられる。そしてAg+イオンはチオ硫酸ナトリウムでAg+イオンを除去したはずの場所にまで、達してしまうものと考えられる。
【0035】
一方、元の赤い光を吸収する微粒子や青い光を吸収する微粒子も同図(A)に示すものより小さくなると考えられる。この場合、同図(E)に示すように、色は緑色ではなく褐色に戻ってしまうと考えられる。すなわち、チオ硫酸ナトリウムの処理によるこのような過程を繰り返すと銀量が減少するため、徐々に褐色や多色の発色は薄くなると考えられる。
【0036】
次に、このような本発明の一時的に消去でき再現可能な画像形成法に関し、発明者等が行った実施例について図7乃至図10により説明する。これらの図は、横軸が光の波長(nm)で、縦軸が吸光度である。
【0037】
(第1の実施例:青色光による画像形成)
1. 460 nmの単色光(青色)を水中で10分照射すると、図7の曲線aで示すように、460 nm付近の吸収が減少し、青色に着色する。このとき、光照射により酸化された銀イオンは水中に溶け出す。
【0038】
2. 次に、白色光を20分照射すると、同図の曲線bで示すように、全域に渡り吸収が減少し、無色になる。
【0039】
3. 次に、紫外光を10分照射すると、同図の曲線cで示すように、曲線aに近いスペクトルになり、青色に再着色する。
【0040】
ここで、上記の単色光(青色)は、キセノンランプからの光を半値幅10 nmのバンドパスフィルターに通して得られたもので、図の曲線dで示すようなスペクトルを有している。
【0041】
なお、上記第1ステップの処理を水中ではなく空気中で行えば銀イオンは酸化チタン上に残り、上記第3ステップでは褐色に着色する。つまり、上記のような水中での処理で特定の色を記憶したといえる。また、第1ステップの処理を空気中で行った後、水やチオ硫酸ナトリウム水溶液などで銀イオンを除去しても、水中で処理した場合と同様、特定の色を記憶させることができる。
【0042】
(第2の実施例:緑色光による画像形成)
1. 520 nmの単色光(緑色)を水中で10分照射すると、図8の曲線aで示すように、520 nm付近の吸収が減少し、緑色に着色する。このとき、光照射により酸化された銀イオンは水中に溶け出す。
【0043】
2. 次に、白色光を20分照射すると、同図の曲線bで示すように、全域に渡り吸収が減少し、無色になる。
【0044】
3. 次に、紫外光を10分照射すると、同図の曲線cで示すように、曲線aに近いスペクトルになり、緑色に再着色する。
【0045】
ここで、上記の単色光(緑色)は、キセノンランプからの光を半値幅10 nmのバンドパスフィルターに通して得られたもので、図の曲線dで示すようなスペクトルを有している。
【0046】
なお、第1ステップの処理を水中ではなく空気中で行えば、銀イオンは酸化チタン上に残り、第3ステップの処理では褐色に着色する。つまり、上記のような水中での処理で特定の色を記憶したといえる。また、第1ステップの処理の処理を空気中で行った後、水やチオ硫酸ナトリウム水溶液などで銀イオンを除去しても、水中で処理した場合と同様、特定の色を記憶させることができる。
【0047】
(第3の実施例:橙色光による画像形成)
1. 590 nmの単色光(橙色)を水中で10分照射すると、図9の曲線aで示すように、590 nm付近の吸収が減少し、橙色に着色する。 このとき、光照射により酸化された銀イオンは水中に溶け出す。
【0048】
2. 次に、白色光を20分照射すると、同図の曲線bで示すように、全域に渡り吸収が減少し、無色になる。
【0049】
3. 次に、紫外光を10分照射すると、同図の曲線cで示すように、同図の曲線aに近いスペクトルになり、橙色に再着色する。
【0050】
ここで、上記の単色光(橙色)は、キセノンランプからの光を半値幅10 nmのバンドパスフィルターに通して得られたもので、図の曲線dで示すようなスペクトルを有している。
【0051】
なお、第1ステップの処理を水中ではなく空気中で行えば、銀イオンは酸化チタン上に残り、第3ステップの処理では褐色に着色する。つまり、上記のような水中での処理で特定の色を記憶したといえる。また、第1ステップの処理を空気中で行った後、水やチオ硫酸ナトリウム水溶液などで銀イオンを除去しても、水中で処理した場合と同様、特定の色を記憶させることができる。
【0052】
(第4の実施例:赤色光による画像形成)
1. 660 nmの単色光(赤色)を水中で10分照射すると、図10の曲線aで示すように、660 nm付近の吸収が減少し、赤色に着色する。このとき、光照射により酸化された銀イオンは水中に溶け出す。
【0053】
2. 次に、白色光を20分照射すると、同図の曲線bで示すように、全域に渡り吸収が減劣し、無色になる。
【0054】
3. 次に、紫外光を10分照射すると、同図の曲線cで示すように、同図の曲線aに近いスペクトルになり、赤色に再着色する。
【0055】
ここで、上記の単色光(赤色)は、キセノンランプからの光を半値幅10 nmのバンドパスフィルターに通して得られたもので、図の曲線dで示すようなスペクトルを有している。
【0056】
なお、第1ステップの処理を水中ではなく空気中で行えば、銀イオンは酸化チタン上に残り、第3ステップの処理では褐色に着色する。つまり、上記のような水中での処理で特定の色を記憶したといえる。また、第1ステップの処理を空気中で行った後、水やチオ硫酸ナトリウム水溶液などで銀イオンを除去しても、水中で処理した場合と同様、特定の色を記憶させることができる。
【0057】
このような実施形態3における、一時的に消去でき再現可能な画像形成法は次のような用途に利用可能である。例えば、銀微粒子を担持する酸化チタン薄膜が形成される基体表面に、通常の印刷技術等により下地画像を印刷し、その上の酸化チタン薄膜に上記の方法により画像を形成すれば、下地画像と本画像の切り替え、または、下地画像と、下地画像と本画像の合成の切り替えが可能になる。
【0058】
また、上記のように、本発明の画像形成法によれば、一定時間内にのみ画像再現可能な点を利用し、イベント会場等におけるチケットのタイムスタンプとしての応用が可能である。すなわち、上記の方法により文字を含むスタンプ画像が形成されたチケットを、その保持者が会場からの出場時に消去し、再入場をする際、紫外光照射による画像再現を試み、画像が再現されれば一定時間内なので再入場を認め、再現できなければ一定時間経過後として再入場を認めない、というように、計時機能を持たせることができる。
【0059】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、着色時の応答速度の向上ができることに加え、形成した画像を所定時間の間保持できること、さらに、画像の一時的な消去・再現ができることを特徴とする、種々の応用が可能なフォトクロミック材料を利用した画像形成法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフォトクロミック材料を用いた画像形成法における着色時の応答速度を従来方法に比較して示すグラフ。
【図2】本発明のフォトクロミック材料を用いた画像形成法における画像保持能力を従来方法に比較して示すグラフ。
【図3】白色または無色の状態にある本発明のフォトクロミック材料に対してチオ硫酸ナトリウム水溶液または水で洗浄処理すると、膜中のAg+イオンが除去され、再び紫外光を照射しても褐色に戻らないことを説明するための模式図。
【図4】特定の色に着色した状態にある本発明のフォトクロミック材料に対してチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いて洗浄処理した場合、紫外光を照射しても褐色に戻らなくなることを説明するための模式図。
【図5】特定の色に着色した状態にある本発明のフォトクロミック材料に対して、チオ硫酸ナトリウム水溶液を用いて洗浄処理した場合、同じ特定の色の一時的な消去・再現が可能であることを説明するための模式図。
【図6】本発明のフォトクロミック材料を用いて画像を一時的に消去した後、再度紫外光を照射するまでの時間が長時間である場合、試料に紫外光を照射しても元の特定の色に戻らなくなることを説明するための模式図。
【図7】本発明のフォトクロミック材料を用いた画像の一時的な消去・再現機能について行った実施例における吸光特性の変化を示すグラフである(460 nmの光を透過するフィルターを通してキセノンランプで照射した場合)。
【図8】本発明のフォトクロミック材料を用いた画像の一時的な消去・再現機能について行った実施例における吸光特性の変化を示すグラフである(520 nmの光を透過するフィルターを通してキセノンランプで照射した場合)。
【図9】本発明のフォトクロミック材料を用いた画像の一時的な消去・再現機能について行った実施例における吸光特性の変化を示すグラフである(590 nmの光を透過するフィルターを通してキセノンランプで照射した場合)。
【図10】本発明のフォトクロミック材料を用いた画像の一時的な消去・再現機能について行った実施例における吸光特性の変化を示すグラフである(660 nmの光を透過するフィルターを通してキセノンランプで照射した場合)。
【符号の説明】
a:初期(褐色)の吸光度と10分間単色光照射した後の吸光度の差スペクトル、b:初期(褐色)の吸光度とaの試料に20分間白色の可視光を照射した後の吸光度の差スペクトル、c:初期(褐色)の吸光度とbの試料に10分間紫外光を照射した後の吸光度の差スペクトル、d:試料を照射するために用いたフィルターの透過スペクトル
【発明の属する技術分野】
本発明は、多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法に関し、特に、画像形成方法、画像保存方法及び画像の一時的消去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紫外光を照射することにより、TiO2光触媒上に析出させたAgナノ粒子の色(褐色)が、空気中で蛍光灯からの光(可視光)を照射することで無色になり、再び紫外光を照射すると元の褐色に着色するフォトクロミック現象については、本発明者等により発表され公知である(例えば、非特許文献1参照。)。このフォトクロミック材料は、新たなフォトクロミック材料としてフルカラー電子ペーパー、装飾用の壁紙あるいは光情報記憶装置等、各種の応用が期待できる。なお、上記のフォトクロミック現象を利用した多色フォトクロミック材料に関しては、本願発明者等により、特願2002−171378として出願済みである。
【0003】
【非特許文献1】
大古善久他著「光化学討論会」、京都、2002年9月11日〜13日、「TiO2光触媒上に析出した銀ナノ粒子のフォトクロミック特性」
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のフォトクロミック材料は、上記のように多くの応用が期待されるが、そのためには、着色時の応答速度の向上、形成した画像を所定時間の間保持できること、画像の一時的な消去・再現機能等が要請されている。
【0005】
したがって本発明は、これらの要請に答えうる多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法の提供を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法は、銀微粒子を担持する酸化チタンに、酸素雰囲気内あるいは酸化剤の存在下で可視光を照射することにより、この可視光に応じた色に着色することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法においては、前記酸化チタンは、酸化剤を含む溶液中で、あるいは酸化剤を含む溶液を塗布した状態で可視光を照射することを特徴とするものである。
【0008】
さらに、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法においては、前記酸化剤は、メチルビオロゲン、過酸化水素、硝酸、ベンゾキノン、鉄(III)イオンまたはフェリシアン化物イオンであることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法は、銀微粒子を担持する酸化チタンに、可視光を照射することにより画像を形成し、その後、前記銀微粒子を担持する酸化チタンの表面を酸素遮断膜により被覆することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法においては、前記酸素遮断膜は、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドまたはナフィオンのポリマー溶液を塗布し、溶媒を揮発させることにより形成することを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法においては、前記酸素遮断膜は、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドまたはナフィオン薄膜を加熱塗布することにより形成することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法は、基体表面に銀微粒子を担持する酸化チタン薄膜を形成する工程と、この酸化チタン薄膜に可視光を照射することにより前記銀微粒子をイオン化して画像を形成する工程と、この工程により画像が形成された酸化チタン薄膜内の銀イオンを除去する工程と、この工程により銀イオンが除去された前記酸化チタン薄膜に白色可視光を照射することにより前記画像を消去する工程と、この工程により画像が消去された前記酸化チタン薄膜に、前記画像消去工程完了後、所定の期間内に紫外線を照射することにより前記画像を再現する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法においては、画像が形成された酸化チタン薄膜内の銀イオンを除去する工程は、酸化チタン薄膜をチオ硫酸ナトリウム水溶液または水で洗浄する工程からなることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法においては、前記可視光は単色光または複数の単色光の組み合わせであって白色光以外の色光であることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
(実施形態1:画像形成促進法)
本発明の第1の実施形態は、画像形成速度の向上方法に関するものである。
【0017】
褐色の銀担持酸化チタンに、可視光を照射すれば、その可視光の色に呈色するが、この際に適切な酸化剤の存在下で可視光を照射すれば、その色の呈色が速くなることが判明した。つまり、より速く画像形成が可能になる。本発明者等は、純水中で、銀担持酸化チタン膜上に紫外線を含まない白色光である可視光を照射した試料1と、過酸化水素中で、銀担持酸化チタン膜上に、空気中で、紫外線を含まない白色光である可視光を照射した試料2について、それぞれの照射時間を変化させて酸化チタン膜の退色の程度を、測定した。この測定結果が図1に示される。同図は、横軸が時間(分)、縦軸が吸光度である。この吸光度は、上記の各試料に400 nmの波長の光を照射し、その吸光度を測定しプロットした。
【0018】
図1から、純水中で可視光を照射した試料1では、照射時間とともに吸光度は徐々に低下するのに対し、過酸化水素中で可視光を照射した試料2では、短時間の照射により吸光度は急激に減少する。400 nmの波長光に対する吸光度が低いということは、この光を吸収することなく反射するため、試料2はこの波長の色を呈色することになる。
【0019】
なお、酸化剤の存在下での可視光照射は、過酸化水素中での照射以外に、気体酸素中、あるいは酸素濃度の高い気体中で可視光照射によっても、画像形成速度の向上が可能である。また、メチルビオロゲン、過酸化水素、硝酸、ベンゾキノン、鉄(III)イオン、フェリシアン化物イオンなどの溶液中で画像形成あるいはこれらの溶液を塗布した状態で画像形成することによっても画像形成速度の向上が可能である。
【0020】
(実施形態2:画像保存法)
本発明の第2の実施形態は、画像保存法に関するものである。
【0021】
この実施形態においては、銀担持酸化チタン膜上に可視光照射などにより画像を形成した後、この酸化チタン膜上に、酸素を遮断あるいは通しにくくする膜を被覆した。これにより、画像の消滅が停止または遅延され、画像の保存が可能になることが判明した。可視光下または暗所では、この処理をしない場合、徐々に画像は消えて白色または透明となる。
【0022】
本発明者等は、空気中で、銀担持酸化チタン膜上に紫外線を含まない白色光である可視光を照射した試料3と、銀担持酸化チタン膜上にスピンコーティング法でシリコーン膜を塗布した後、空気中で、紫外線を含まない白色光である可視光を照射した試料4について、時間の経過に対する退色の程度を、測定した。この測定結果は、図2に示される。同図は、横軸が時間(分)、縦軸が吸光度である。この吸光度は、上記の各試料に400 nmの波長の光を照射し、その吸光度を測定した。
【0023】
図2から、シリコーン膜を塗布しない試料3では、時間とともに退色が生ずるが、シリコーン膜を塗布した試料4では、時間が経過してもほとんど退色が生じないことがわかる。
【0024】
なお、酸素を遮断あるいは通しにくくする被膜の材料としては、シリコーン膜以外に、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ナフィオンなども利用可能である。これらのポリマー溶液を銀担持酸化チタン膜上にスピンコーティング法などで塗布し、溶媒を揮発させる。
【0025】
また、この被膜を再び溶媒に溶解させ、除去すれば、再び画像の消去、再形成が可能になる。
【0026】
(実施形態3:一時的に消去でき再現可能な画像形成法)
本発明の第3の実施形態は、一時的に消去でき再現可能な画像形成法に関するものである。
【0027】
画像形成後、生成した銀イオンを銀粒子の溶解により除去すれば、一時的に消去できその後再現可能な画像の形成ができる。すなわち、画像形成後、チオ硫酸ナトリウム水溶液ですすぐか、または水でよくすすぐ。すると、紫外光を照射してもすぐには褐色に戻らなくなる(長時間照射すれば、褐色になる)。白色可視光を照射すれば画像は消去できるが、一定時間内に紫外光を照射すれば、元の画像を再現できる(一定時間経過後は、紫外光を照射しても画像は再現できない)。長時間紫外照射するか、あるいは銀イオンを含む溶液に浸漬しながらまたは浸漬した後紫外光照射するなどすれば再度褐色にすることができ、リセットされる。
【0028】
図3乃至図6は、以上の一時消去の機能を説明するための模式図である。
【0029】
図3は、白色または無色の銀担持酸化チタン膜試料をチオ硫酸ナトリウム水溶液または水で洗浄処理すると、膜中のAg+イオンが除去されて、紫外光照射をしても褐色に戻らないようにする過程を示す模式図である。同図(A)はAg+イオンが膜中に存在(吸着)している様子を示す。これは、硝酸銀水溶液に浸漬させた場合や、褐色の試料に波長400 nm以上の白色光を照射した場合に見られる白色あるいは無色の試料に相当する。この試料をチオ硫酸ナトリウム水溶液に浸漬させると、同図(B)に示すように、Ag+イオンはTiO2表面から脱離して、TiO2膜中から除去される。この状態の試料に同図(C)に示すように、紫外光を照射しても、膜中にAg+イオンが存在しないため、試料の色変化は起こらない。このような処理により、TiO2膜中のAg+イオンを強制的に除去することが可能である。
【0030】
図4は、特定の色を呈した銀担持酸化チタン膜試料をチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄処理すると、その後紫外光照射しても褐色に戻らず、同じ特定の色が保持される、という過程を説明する模式図である。
【0031】
同図(A)に示すように、銀担持酸化チタン膜に褐色の状態から緑色の単色光を照射すると、試料は緑色を呈する。この試料をチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄処理すると、同図(B)に示すように、緑色のAg微粒子を構成していたAg(この時点ではAg+イオン)だけ、選択的に除去され、他のAg微粒子は膜内に残存する。この試料に、さらに紫外光を照射しても、同図(C)に示すように、Ag+イオンが存在しないため、元の褐色には戻らず、同図(D)に示すように、同じ緑色が保持される。ただし、十分長時間紫外光を照射すると、Ag微粒子同士の表面拡散の影響で、褐色に戻るようになる。
【0032】
図5は、特定の色を呈した試料をチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄処理すると、一度白色光で全体の色を消しても紫外光照射で同じ特定の色が現れるという過程を説明するための模式図である。
【0033】
同図(A)から同図(B)までは、図4と同じである。同図(B)の状態の試料に、Xe灯からの波長400 nm以上の白色光を照射すると、同図(C)に示すように、白色または無色になる。この試料に、同図(D)に示すように、再び紫外光を照射すると、緑色になり、褐色には戻らない。同図(E)は同図(B)と同じなので、何度も繰り返しが可能である。このように、Ag微粒子が光溶解して、一度Ag+イオンに変化しても、紫外光を照射すれば、ほぼ同じ場所に同じ大きさや形状の銀微粒子が生成すると考えられるため、緑以外の色を吸収するAg微粒子が生成する。すなわち、緑色に戻る。
【0034】
図6は、再度紫外光を照射するまでの時間が長時間である場合、試料に紫外光を照射しても元の特定の色に戻らなくなる過程を説明するための模式図である。同図(A)から同図(C)までは、図5と同じである。同図(C)の状態からすぐに紫外光を照射せず、長時間放置しておくと、Ag+イオンは膜中を遠くまで表面拡散出来るものと考えられる。そしてAg+イオンはチオ硫酸ナトリウムでAg+イオンを除去したはずの場所にまで、達してしまうものと考えられる。
【0035】
一方、元の赤い光を吸収する微粒子や青い光を吸収する微粒子も同図(A)に示すものより小さくなると考えられる。この場合、同図(E)に示すように、色は緑色ではなく褐色に戻ってしまうと考えられる。すなわち、チオ硫酸ナトリウムの処理によるこのような過程を繰り返すと銀量が減少するため、徐々に褐色や多色の発色は薄くなると考えられる。
【0036】
次に、このような本発明の一時的に消去でき再現可能な画像形成法に関し、発明者等が行った実施例について図7乃至図10により説明する。これらの図は、横軸が光の波長(nm)で、縦軸が吸光度である。
【0037】
(第1の実施例:青色光による画像形成)
1. 460 nmの単色光(青色)を水中で10分照射すると、図7の曲線aで示すように、460 nm付近の吸収が減少し、青色に着色する。このとき、光照射により酸化された銀イオンは水中に溶け出す。
【0038】
2. 次に、白色光を20分照射すると、同図の曲線bで示すように、全域に渡り吸収が減少し、無色になる。
【0039】
3. 次に、紫外光を10分照射すると、同図の曲線cで示すように、曲線aに近いスペクトルになり、青色に再着色する。
【0040】
ここで、上記の単色光(青色)は、キセノンランプからの光を半値幅10 nmのバンドパスフィルターに通して得られたもので、図の曲線dで示すようなスペクトルを有している。
【0041】
なお、上記第1ステップの処理を水中ではなく空気中で行えば銀イオンは酸化チタン上に残り、上記第3ステップでは褐色に着色する。つまり、上記のような水中での処理で特定の色を記憶したといえる。また、第1ステップの処理を空気中で行った後、水やチオ硫酸ナトリウム水溶液などで銀イオンを除去しても、水中で処理した場合と同様、特定の色を記憶させることができる。
【0042】
(第2の実施例:緑色光による画像形成)
1. 520 nmの単色光(緑色)を水中で10分照射すると、図8の曲線aで示すように、520 nm付近の吸収が減少し、緑色に着色する。このとき、光照射により酸化された銀イオンは水中に溶け出す。
【0043】
2. 次に、白色光を20分照射すると、同図の曲線bで示すように、全域に渡り吸収が減少し、無色になる。
【0044】
3. 次に、紫外光を10分照射すると、同図の曲線cで示すように、曲線aに近いスペクトルになり、緑色に再着色する。
【0045】
ここで、上記の単色光(緑色)は、キセノンランプからの光を半値幅10 nmのバンドパスフィルターに通して得られたもので、図の曲線dで示すようなスペクトルを有している。
【0046】
なお、第1ステップの処理を水中ではなく空気中で行えば、銀イオンは酸化チタン上に残り、第3ステップの処理では褐色に着色する。つまり、上記のような水中での処理で特定の色を記憶したといえる。また、第1ステップの処理の処理を空気中で行った後、水やチオ硫酸ナトリウム水溶液などで銀イオンを除去しても、水中で処理した場合と同様、特定の色を記憶させることができる。
【0047】
(第3の実施例:橙色光による画像形成)
1. 590 nmの単色光(橙色)を水中で10分照射すると、図9の曲線aで示すように、590 nm付近の吸収が減少し、橙色に着色する。 このとき、光照射により酸化された銀イオンは水中に溶け出す。
【0048】
2. 次に、白色光を20分照射すると、同図の曲線bで示すように、全域に渡り吸収が減少し、無色になる。
【0049】
3. 次に、紫外光を10分照射すると、同図の曲線cで示すように、同図の曲線aに近いスペクトルになり、橙色に再着色する。
【0050】
ここで、上記の単色光(橙色)は、キセノンランプからの光を半値幅10 nmのバンドパスフィルターに通して得られたもので、図の曲線dで示すようなスペクトルを有している。
【0051】
なお、第1ステップの処理を水中ではなく空気中で行えば、銀イオンは酸化チタン上に残り、第3ステップの処理では褐色に着色する。つまり、上記のような水中での処理で特定の色を記憶したといえる。また、第1ステップの処理を空気中で行った後、水やチオ硫酸ナトリウム水溶液などで銀イオンを除去しても、水中で処理した場合と同様、特定の色を記憶させることができる。
【0052】
(第4の実施例:赤色光による画像形成)
1. 660 nmの単色光(赤色)を水中で10分照射すると、図10の曲線aで示すように、660 nm付近の吸収が減少し、赤色に着色する。このとき、光照射により酸化された銀イオンは水中に溶け出す。
【0053】
2. 次に、白色光を20分照射すると、同図の曲線bで示すように、全域に渡り吸収が減劣し、無色になる。
【0054】
3. 次に、紫外光を10分照射すると、同図の曲線cで示すように、同図の曲線aに近いスペクトルになり、赤色に再着色する。
【0055】
ここで、上記の単色光(赤色)は、キセノンランプからの光を半値幅10 nmのバンドパスフィルターに通して得られたもので、図の曲線dで示すようなスペクトルを有している。
【0056】
なお、第1ステップの処理を水中ではなく空気中で行えば、銀イオンは酸化チタン上に残り、第3ステップの処理では褐色に着色する。つまり、上記のような水中での処理で特定の色を記憶したといえる。また、第1ステップの処理を空気中で行った後、水やチオ硫酸ナトリウム水溶液などで銀イオンを除去しても、水中で処理した場合と同様、特定の色を記憶させることができる。
【0057】
このような実施形態3における、一時的に消去でき再現可能な画像形成法は次のような用途に利用可能である。例えば、銀微粒子を担持する酸化チタン薄膜が形成される基体表面に、通常の印刷技術等により下地画像を印刷し、その上の酸化チタン薄膜に上記の方法により画像を形成すれば、下地画像と本画像の切り替え、または、下地画像と、下地画像と本画像の合成の切り替えが可能になる。
【0058】
また、上記のように、本発明の画像形成法によれば、一定時間内にのみ画像再現可能な点を利用し、イベント会場等におけるチケットのタイムスタンプとしての応用が可能である。すなわち、上記の方法により文字を含むスタンプ画像が形成されたチケットを、その保持者が会場からの出場時に消去し、再入場をする際、紫外光照射による画像再現を試み、画像が再現されれば一定時間内なので再入場を認め、再現できなければ一定時間経過後として再入場を認めない、というように、計時機能を持たせることができる。
【0059】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、着色時の応答速度の向上ができることに加え、形成した画像を所定時間の間保持できること、さらに、画像の一時的な消去・再現ができることを特徴とする、種々の応用が可能なフォトクロミック材料を利用した画像形成法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフォトクロミック材料を用いた画像形成法における着色時の応答速度を従来方法に比較して示すグラフ。
【図2】本発明のフォトクロミック材料を用いた画像形成法における画像保持能力を従来方法に比較して示すグラフ。
【図3】白色または無色の状態にある本発明のフォトクロミック材料に対してチオ硫酸ナトリウム水溶液または水で洗浄処理すると、膜中のAg+イオンが除去され、再び紫外光を照射しても褐色に戻らないことを説明するための模式図。
【図4】特定の色に着色した状態にある本発明のフォトクロミック材料に対してチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いて洗浄処理した場合、紫外光を照射しても褐色に戻らなくなることを説明するための模式図。
【図5】特定の色に着色した状態にある本発明のフォトクロミック材料に対して、チオ硫酸ナトリウム水溶液を用いて洗浄処理した場合、同じ特定の色の一時的な消去・再現が可能であることを説明するための模式図。
【図6】本発明のフォトクロミック材料を用いて画像を一時的に消去した後、再度紫外光を照射するまでの時間が長時間である場合、試料に紫外光を照射しても元の特定の色に戻らなくなることを説明するための模式図。
【図7】本発明のフォトクロミック材料を用いた画像の一時的な消去・再現機能について行った実施例における吸光特性の変化を示すグラフである(460 nmの光を透過するフィルターを通してキセノンランプで照射した場合)。
【図8】本発明のフォトクロミック材料を用いた画像の一時的な消去・再現機能について行った実施例における吸光特性の変化を示すグラフである(520 nmの光を透過するフィルターを通してキセノンランプで照射した場合)。
【図9】本発明のフォトクロミック材料を用いた画像の一時的な消去・再現機能について行った実施例における吸光特性の変化を示すグラフである(590 nmの光を透過するフィルターを通してキセノンランプで照射した場合)。
【図10】本発明のフォトクロミック材料を用いた画像の一時的な消去・再現機能について行った実施例における吸光特性の変化を示すグラフである(660 nmの光を透過するフィルターを通してキセノンランプで照射した場合)。
【符号の説明】
a:初期(褐色)の吸光度と10分間単色光照射した後の吸光度の差スペクトル、b:初期(褐色)の吸光度とaの試料に20分間白色の可視光を照射した後の吸光度の差スペクトル、c:初期(褐色)の吸光度とbの試料に10分間紫外光を照射した後の吸光度の差スペクトル、d:試料を照射するために用いたフィルターの透過スペクトル
Claims (9)
- 銀微粒子を担持する酸化チタンに、酸素雰囲気内あるいは酸化剤の存在下で可視光を照射することにより、この可視光に応じた色に着色することを特徴とする多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法。
- 前記酸化チタンは、酸化剤を含む溶液中で、あるいは酸化剤を含む溶液を塗布した状態で可視光を照射することを特徴とする請求項1記載の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法。
- 前記酸化剤は、メチルビオロゲン、過酸化水素、硝酸、ベンゾキノン、鉄(III)イオンまたはフェリシアン化物イオンであることを特徴とする請求項2記載の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法。
- 銀微粒子を担持する酸化チタンに、可視光を照射することにより画像を形成し、その後、前記銀微粒子を担持する酸化チタンの表面を酸素遮断膜により被覆することを特徴とする多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法。
- 前記酸素遮断膜は、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドまたはナフィオンのポリマー溶液を塗布し、溶媒を揮発させることにより形成することを特徴とする請求項4記載の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法。
- 前記酸素遮断膜は、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドまたはナフィオン薄膜を加熱圧着することにより形成することを特徴とする請求項4記載の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法。
- 基体表面に銀微粒子を担持する酸化チタン薄膜を形成する工程と、この酸化チタン薄膜に可視光を照射することにより前記銀微粒子をイオン化して画像を形成する工程と、この工程により画像が形成された酸化チタン薄膜内の銀イオンを除去する工程と、この工程により銀イオンが除去された前記酸化チタン薄膜に白色可視光を照射することにより前記画像を消去する工程と、この工程により画像が消去された前記酸化チタン薄膜に、前記画像消去工程完了後、所定の期間内に紫外線を照射することにより前記画像を再現する工程とを備えることを特徴とする多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法。
- 画像が形成された酸化チタン薄膜内の銀イオンを除去する工程は、酸化チタン薄膜をチオ硫酸ナトリウム水溶液または水で洗浄する工程からなることを特徴とする請求項7記載の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法。
- 前記可視光は単色光または複数の単色光の組み合わせであって白色光以外の色光であることを特徴とする請求項8記載の多色フォトクロミック材料を用いた画像情報処理方法。
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