JP2004198327A - 複数の化学物質の濃度の測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の物質の濃度変化に応じて吸光度等の出力が非線形に変化こと及び出力に複数の物質が寄与している点から、1つの出力に対応する濃度が種々存在することに起因して、従来の検量線を用いた方法では測定することが困難な場合であっても、複数の化学物質の濃度を同時に測定することができる、複数の化学物質の濃度の測定方法を提供すること。
【解決手段】測定すべき複数の化学物質濃度に対応した出力が測定可能な系において、(1)既知濃度の前記複数の化学物質に対応する出力を、複数の濃度においてそれぞれ測定する工程と、(2)その結果を階層型ニューラルネットワークに学習させる工程と、(3)被検試料について出力を測定する工程と、(4)得られた測定値と前記学習済ニューラルネットワークにより与えられる値との差を最小とする工程とを含む、複数の化学物質濃度の測定方法を提供した。
【選択図】 図1
【解決手段】測定すべき複数の化学物質濃度に対応した出力が測定可能な系において、(1)既知濃度の前記複数の化学物質に対応する出力を、複数の濃度においてそれぞれ測定する工程と、(2)その結果を階層型ニューラルネットワークに学習させる工程と、(3)被検試料について出力を測定する工程と、(4)得られた測定値と前記学習済ニューラルネットワークにより与えられる値との差を最小とする工程とを含む、複数の化学物質濃度の測定方法を提供した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の化学物質の濃度を同時に測定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、化学物質の濃度の測定は、該化学物質の濃度に応じて変化する物理量、例えば、溶液の吸光度等を出力として測定することにより行われている。測定すべき化学物質濃度と、出力との相関関係を求めるために、既知の種々の濃度に対する出力を測定し、横軸に濃度、縦軸に吸光度等の出力をとって検量線を作成する。そして、未知濃度の被検試料について出力を測定し、その出力に対応する濃度を前記検量線から読み取ることにより濃度測定が行われている。
【0003】
1種類の出力(例えば特定波長における吸光度)に対して影響を与える複数の化学物質が被検試料中に含まれている場合、その出力を測定しても、これら複数の化学物質の寄与の割合が不明なため、単一の化合物存在時のそれぞれの化合物について作成された検量線に基づいて各化学物質の濃度を測定することは不可能である。また、複数の物質の濃度変化に応じて吸光度等の出力が非線形に変化する。これと、上述した通り出力に複数の物質が寄与している点から、1つの出力に対応する濃度が種々存在する。このため、これに対応する濃度を従来手法で測定することは不可能である。
【0004】
また、重金属イオン濃度は、環境基準が設けられており、重金属イオン濃度を測定することは社会的に要求されている。従来より、金属イオン濃度の簡便な測定法として、蛍光性のイオノフォア(フルオロイオノフォア)を用いる方法が知られている。この方法では、蛍光性イオノフォアにより、目的とする金属イオンをトラップし、それによって生じる蛍光の変化を測定することにより目的とする金属イオンを定量するものである。
【0005】
しかしながら、特定の金属に対して高い選択性を有するイオノフォアは少ないので、複数の金属イオンに対してそれぞれ高選択性を有する複数のイオノフォアを用いて複数の金属イオンを同時に定量することは困難である。かといって、従来の方法において、中程度の選択性を有するイオノフォアを用いて金属イオンの定量を行うと、1つのイオノフォアにトラップされる金属イオン種が複数存在するため、各金属イオンの定量を正確に行うことはできない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、複数の物質の濃度変化に応じて吸光度等の出力が非線形に変化こと及び出力に複数の物質が寄与している点から、1つの出力に対応する濃度が種々存在することに起因して、従来の検量線を用いた方法では測定することが困難な場合であっても、複数の化学物質の濃度を同時に測定することができる、複数の化学物質の濃度の測定方法を提供することである。また、本発明の目的は、中程度の選択性を有するイオノフォアを用いた場合であっても、複数のイオン種の濃度を正確に測定することができる、複数のイオン種の濃度の測定方法を提供することである。
【0007】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、測定すべき複数の化学物質濃度とそれに対応する出力を、複数の濃度においてそれぞれ測定し、その結果をGNBR法で階層型人工ニューラルネットワークに学習させ、一方、被検試料について出力を測定し、得られた測定値と前記学習済ニューラルネットワークにより与えられる値との差の2乗が最小となる値を逐次2次計画法により求めることにより、複数の化学物質の濃度を測定することができることを見出し本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、測定すべき複数の化学物質濃度に対応した出力が測定可能な系において、(1)既知濃度の前記複数の化学物質に対応する出力を、複数の濃度においてそれぞれ測定する工程と、(2)その結果をGNBR法で階層型人工ニューラルネットワークに学習させる工程と、(3)被検試料について出力を測定する工程と、(4)得られた測定値と前記学習済ニューラルネットワークにより与えられる値との差の2乗が最小となる値を逐次2次計画法により求める工程とを含む、複数の化学物質濃度の測定方法を提供する。
【0009】
また、上記本発明の方法において、測定すべき複数のイオンの少なくともいずれかをトラップし得るトラッピング構造部分と、該トラッピング構造部分に結合され、イオンが該トラッピング構造部分にトラップされることによりシグナルを出力する出力構造部分とを少なくとも含む複数のイオノフォアを、既知濃度の測定すべき複数のイオンと接触させ、出力を測定することにより前記工程(1)及び工程(3)を行うことにより、中程度の選択性を有するイオノフォアを用いた場合であっても、複数のイオン種の濃度を正確に測定することができることを見出し本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、上記本発明の方法において、前記工程(1)及び工程(3)は、測定すべき複数のイオンの少なくともいずれかをトラップし得るトラッピング構造部分と、該トラッピング構造部分に結合され、イオンが該トラッピング構造部分にトラップされることによりシグナルを出力する出力構造部分とを少なくとも含む複数のイオノフォアを、既知濃度の測定すべき複数のイオンと接触させ、出力を測定することにより行われる、複数のイオン種の濃度の測定方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の方法により濃度が測定される化学物質は、何ら限定されるものではなく、その濃度に対応した出力が測定可能ないずれの化学物質であってもよい。例えば、下記実施例では、重金属イオンの濃度を測定しているが、他の化学物質の濃度測定にも適用できることは言うまでもない。また、化学物質は、液相中に含まれるものに限定されるものではなく、気相中や固相中に含まれるもの、また、生物体に含まれるもの等であってもよい。
【0012】
測定すべき複数の化学物質の濃度に対応する、測定可能な出力は、特に限定されるものではなく、例えば溶液の吸光度、濁度、光透過率、電気伝導度、電流、電圧、蛍光強度、放射能、旋光度等の種々の物理量を例示することができる。
【0013】
上記出力は、化学物質の濃度に応じて直接的に変化するものであってもよい(例えば、測定すべき化学物質が色素である場合の吸光度、測定すべき化学物質がイオンである場合の電気伝導度、測定すべき化学物質が旋光性物質である場合の旋光度等)し、測定すべき化学物質を指示薬やプローブと反応させ、その反応物の濃度に依存して変化するものであってもよい(例えば、金属イオンと結合することにより蛍光強度が変化するイオノフォア(後述)と反応させた後の蛍光強度、測定すべき化学物質と結合することにより発色又は色が変化する指示薬と反応させた後の吸光度、蛍光標識したプローブと結合させた後の蛍光強度等)。
【0014】
測定する出力の種類の数は、特に限定されないが、あまりに少ないと、各化学物質の濃度を正確に測定することが難しくなり、また、あまりに多いと処理が複雑になるので、測定対象となる化学物質の種類と同数の種類の出力を測定することが好ましい。例えば、下記実施例では、3種類の重金属イオンの濃度を測定しているが、測定した出力は、3つの異なるイオノフォアと反応させた後の蛍光強度である。
【0015】
本発明の方法の工程(1)では、各化学物質の濃度が既知の場合の、各出力の値を、各化学物質の濃度を種々変えて測定する。
【0016】
次に、その測定結果を、階層型ニューラルネットワークに学習させる(工程(2))が、このために、この工程に先立ち、工程(1)で測定された測定値及び既知濃度について、主成分分析(PCA (Principal Component Analysis)及び正規化を含む前処理工程を行うことが好ましい。なお、PCAは多変量解析の非常に基本的な手法であり、例えば、河口 至商、多変量解析入門I、森北出版、1973等の文献に記載されている。この手法は、大きなベクトル(数十〜数百次元)の持つ情報を、数次元の小さな次元のベクトル(1〜5次元程度)に圧縮することができる方法である。
【0017】
(a) 測定値の前処理
測定値は、例えば蛍光/吸光スペクトル等の配列状データ、すなわちベクトルであり、また3D蛍光スペクトルの場合はマトリクス状のデータになる。これを図で考えると以下のようになる。図3は27次元のベクトルを示したものである。横軸に各ベクトル成分を並べ、縦軸にそれらに対応する値が入っているということを示している。さらに、測定値(例えばセンサから取得するスペクトル)も以下と同様の形状をしており、容易にスペクトルをベクトルとして扱うことができる。さらに、3Dスペクトルの場合は、行列で表現する場合を考えれば動揺に考えることができる。また、通常、PCAはベクトルを扱う。このため、マトリクス状のデータの場合は、以下のようなベクトルr(太字。なお、本明細書において太字のアルファベットはベクトルを表す)に置き換えてから適用する。
【0018】
【数1】
【0019】
このようにして得られた全てのサンプル点(ベクトル)を利用して、PCAで主成分を取り出す。ここで得られる上位数主成分を新しいデータ点とする。
s = Ar (s, A, rは全て太字)
ここで得られた新しいデータ点s(太字)は、スコアベクトルとも呼ばれる。また、A(太字)は、データベクトルのr(太字)の共分散行列の固有ベクトル上位数個を行成分として持つ行列である。これを新たに応答の値として取り扱う。
【0020】
例えば、100次元のスペクトルデータr(太字)を、3次元に圧縮する場合、A(太字)は3 x 100(数百)の行列になり、s(太字)は3次元になる。下記実施例のように3種のイオンの系では、40 x 29のマトリクス(3Dスペクトル)である。それを4次元に圧縮している(下記表1参照)。
【0021】
次に、これらの点の正規化を行う。正規化は、下記式を全てのベクトルの要素に対して行う。これは、ベクトルs(太字)の各成分を、全サンプルにおいて最大1、最小-1に変換するものである。
【0022】
【数2】
ただし、sjは、ベクトルs(太字)のj成分、sj min、sj maxは、それぞれ、j成分での全サンプル内での最小値、最大値を示す。
【0023】
(b) 既知濃度データの前処理
標準試料は、複数の化学物質を含むから、濃度データは、他成分のデータである。つまり、ベクトルの形、c(太字)、をしている。試料中の各化学物質の濃度は、以下のように非線形変換される。
t = log10(c) (cは太字)
さらに、これを下式で正規化する。
【0024】
【数3】
ただし、tjは、ベクトルt(太字)のj成分、tj min、tj maxは、それぞれ、j成分での全サンプル内での最小値、最大値を示す。
【0025】
【表1】
表1 PCA詳細(後述の実施例において)
【0026】
上記前工程で作成されたデータは、測定値y(太字)、濃度x(太字)共に、ベクトルの形をしている。これらを、階層型ニューラルネットワークに学習させる(工程(2))。学習方法としては、GNBR法が好ましい。GNBR法自体はニューラルネットワークの分野において周知であり、例えば、F. Dan Foresee et al., IEEE International Conf. on Neural Networks 1997, Vol.3 pp.1930-1935等の文献に記載されている。GNBR法は、下記数式におけるEを、重みw(太字)を調節し最小化することで学習を行う。このときの最小化アルゴリズムにLevenberg-Marquardt法を用いることで高速性を実現できる。また、GNBR法のアルゴリズム中で必要になる(ヘッセ)行列計算にLevenberg-Marquardt法での近似手法が利用される。なお、Levenberg-Marquardt法も周知であり、例えば、Martin T. Hagan et al., IEEE TRANSACTIONS ON NEURAL NETWORKS, VOL. 5, NO. 6, NOVEMBER 1994, pp.989-993に記載されているし、後述の通り、市販のソフトを用いて容易に行うことができる。
【0027】
【数4】
【0028】
ただし、F(x;w)(x、wは太字)は、階層型ニューラルネットワークを表し、nはサンプル総数を表す。さらに、GNBR法は、上式の係数α、βを決定する機構を持っている。GNBR法のプログラミングは、例えば、Windows(登録商標)上で作動する、周知の市販のソフトであるMATLAB(The MathWorks社より市販)専用のNeural Network Toolbox(商品名)を用いて当業者が容易に行うことができる。以上のアルゴリズムで学習された学習済ニューラルネットワークを区別して、以下、F(x;w*)(F, x, wは太字)と記述する。
【0029】
【表2】表2 学習詳細(下記実施例において)
【0030】
次に、被検試料について、標準試料と同様に出力を測定する(工程(3))。得られた測定値も、前記工程(2)に先立って行った前処理工程と同様にして、PCA及び正規化を行う。なお、正規化を行う際に用いるsj min、sj maxは、前記前処理工程で得たものを利用する。
【0031】
次に、前記工程(2)で得た階層型ニューラルネットワークを利用して、定量を最適化問題に帰着させる。F(x;w*)(x, wは太字)を学習済みのニューラルネットワークとして、被検試料の出力の測定値であって上記前処理を済ませたものをy'(yは太字)とする。
【0032】
【数5】
【0033】
この最小化問題を、さらに、x(太字)の範囲を限定するために以下の制約条件を付加する。
下限値≦xj≦上限値
なお、ここで、「下限値」及び「上限値」は、具体的には、処理後の値であるからここでは-1、1となる。
【0034】
この非線形計画問題を解くためのアルゴリズムが逐次2次計画法(SQP (Sequential Quadratic Programing)である。この方法は、ある非線形計画問題を逐次、2次計画問題に近似して、反復計算を行うことで解を得るアルゴリズムである。なお、SQP法自体はこの分野において周知であり、例えばScales, L.E., Introduction to Non-linear Optimization, MACMILLAN, 1985及び藤田宏ら、最適化法、岩波書店、1985等の教科書的文献に記載されている。SQP法は、上記周知の市販のソフトであるMATLAB(The MathWorks社より市販)専用のOptimization Toolbox(商品名)を用いて当業者が容易に行うことができる。
【0035】
上記で得られた解が、求める濃度の変換、正規化後の値である。この値を下式により逆変換して目的の濃度c(太字)を求めることができる。
【0036】
【数6】
【0037】
上記本発明の方法を、金属イオン、特に重金属イオンのような、イオン種の濃度測定に適用することができる。この場合には、前記工程(1)及び工程(3)は、測定すべき複数のイオンの少なくともいずれかをトラップし得るトラッピング構造部分と、該トラッピング構造部分に結合され、イオンが該トラッピング構造部分にトラップされることによりシグナルを出力する出力構造部分とを少なくとも含む複数のイオノフォアを、既知濃度の測定すべき複数のイオンと接触させ、出力を測定することにより行うことができる。
【0038】
イオンをトラップし得るトラッピング構造部分は、測定すべきイオン種をトラップすることができる構造であればいかなる構造でもよい。好ましい例として、イオンを包接するヘテロ分子構造を挙げることができる。ここで、「ヘテロ分子構造」とは、炭素原子の以外に酸素、窒素、イオウ又はリン原子等の電子供与性のヘテロ原子を含む構造を意味する。ヘテロ分子構造は環状構造であっても非環状構造であってもよい。環状構造の好ましい例として、クラウンエーテル及びヘテロクラウンエーテルを挙げることができ、特にヘテロクラウンエーテルが好ましい。ここで、ヘテロクラウンエーテルとは、クラウンエーテル中の複数の酸素原子の少なくとも1個が窒素原子やイオウ原子等の他の電子供与性の原子に置き換わったものを意味する。クラウンエーテル及びヘテロクラウンエーテルのサイズは特に限定されず、測定すべきイオン種に応じて適宜選択できるが、通常、12員〜24員程度が適当であり、好ましくは15員〜18員である。ただし、これらに限定されるものではなく、後述する式[A]で示されるものでは3員ないし63員が可能である。なお、トラップされるイオン種は、特に限定されず、各種金属イオンやアンモニウムイオン、有機イオン等であり、好ましくは金属イオン、特に重金属イオンである。
【0039】
好ましいクラウンエーテル又はヘテロクラウンエーテルの例として、下記一般式[A]で示すものを挙げることができる。
【0040】
【化8】
(ただし、X、Y及びZは互いに独立に酸素、窒素、イオウ又はリン原子を表し、複数のYが含まれる場合には、各Yは同一であっても異なっていてもよく、複数のZが含まれる場合には、各Zは同一であっても異なっていてもよく、n及びmは互いに独立に0ないし10の整数を示す。)
【0041】
上記一般式[A]で表されるヘテロクラウンエーテルの好ましい例として下記式[I]、[II]又は[VII]で表されるものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【化9】
【0043】
【化10】
【0044】
【化11】
【0045】
なお、本発明の方法には複数のイオノフォアが用いられるが、各イオノフォア中のトラッピング構造部分のイオン種に対する選択性が異なっていることが好ましい。従って、通常、異なるイオン種のサイズは同一ではないので、各イオノフォア中の環状構造のサイズはそれぞれ異なっていることが好ましい。
【0046】
上記トラッピング構造部分には、イオンが該トラッピング構造部分にトラップされることによりシグナルを出力する出力構造部分が結合されている。出力構造部分は、測定可能ないずれかのシグナルを発することができる構造であればいかなる構造のものでもよく、また、シグナルの種類も限定されない。好ましい出力構造部分の例として、蛍光性原子団、吸光性原子団や発色性原子団を挙げることができ、蛍光性原子団が特に好ましい。
【0047】
一般に、蛍光性原子団がトラッピング構造部分に結合されている場合、トラッピング構造部分にイオンが結合することにより、蛍光強度等の蛍光特性が変化するので、公知の種々の蛍光性原子団を採用することができる。例えば、ローダミン、フルオレセイン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、クマリン、キノリン、スチルベン、ベンゾチオゾール及びピラゾリン等並びにこれらの基本骨格を有する誘導体を挙げることができるが、本発明において採用される蛍光性原子団はこれらに限定されるものではない。
【0048】
蛍光性原子団の好ましい例として、下記式[III]ないし[VI]及び[VIII]に示される基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
【化12】
【0050】
【化13】
【0051】
【化14】
【0052】
【化15】
【0053】
【化16】
【0054】
各イオノフォアに含まれる蛍光性原子団は、同一の励起波長で励起可能で異なる最大蛍光波長を有するものであることが好ましい。同一の励起波長で励起可能であれば、測定時の操作が簡便になり好ましい。また、最大蛍光波長が異なっている方が、後述するニューラルネットワークを用いた処理によってより正確な測定結果が得られ易くなる。もっとも、本発明の方法は、同一波長で励起する場合に限定されるものではなく、異なる波長で励起する場合も包含される。
【0055】
本発明の方法に用いるイオノフォアの種類の数は、特に限定されないが、測定すべきイオン種の数に比べて余りに少ないと正確な測定が困難となので、測定すべきイオン種の数と同数又はそれ以上であることが好ましいが、それ未満であってもよい。この場合、各イオノフォアに対して最も親和性の高いイオンがそれぞれ異なるようなイオノフォアの組合せを採用することが好ましい。
【0056】
本発明の方法は、各イオノフォアを溶液の状態で用いて行うことも可能であるが、各イオノフォアを単一の膜に固定化して用いるようにすると、取り扱いが簡便で、水系での利用も容易になるので好ましい。膜には、上記トラッピング構造部分又は出力構造部分を直接結合してもよいが、スペーサー構造を介して膜に固定化することが好ましい(膜に複数のイオノフォアが固定化されたものを本明細書において「膜センサー」と呼ぶことがある)。スペーサー構造は、トラッピング構造部分又は出力構造部分のいずれに結合してもよい。スペーサー構造は、何ら限定されるものではなく、例えば、炭素数3〜20程度、好ましくは4〜8程度のアルキル基や、膜への結合を容易にするために、このアルキル基の末端に二重結合を導入したアルケニル基、このアルキル基の末端にカルボキシル基、アミノ基又はハロゲン等を結合したカルボキシアルキル基、アミノアルキル基及びハロアルキル基等を例示することができる。特に、スペーサーの末端に二重結合を有するアルケニル基を有するイオノフォアは、ビニル系モノマーを重合して膜を形成する際にこれと共重合させて膜に共有結合することができるので好ましい。
【0057】
膜センサーの具体例として、次の組成のものを例示することができる。
【0058】
上記組成を有する膜溶液を用いて、膜センサーは例えば次のようにして作製することができる。上記組成を有する膜溶液を薄膜状態にし、加熱することで重合させる。すなわち、膜溶媒をシラン化したガラス板に数滴滴下し、その上にガラス板を置く。ガラス板の間隔は、カバーガラスを挿入して約0.18 mmとする。次いで、この全体を60℃に保った乾熱器に入れ、2時間ほど加熱を行い、膜化する。重合反応終了後、アセトニトリルに浸し、ガラス板から膜を剥離する。
【0059】
好ましいイオノフォアの具体例として、下記に示す構造を有するKM-F001、KM-F003、KM-F002及びKM-F004を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
【化17】
【0061】
【化18】
【0062】
【化19】
【0063】
【化20】
【0064】
膜に結合するイオノフォアの量は、特に限定されるものではなく、被検試料中の測定対象となるイオン種の予想される濃度に応じて、ルーチンな実験に基づき適宜設定することができるが、通常、膜の重量に対して0.1%〜10%程度が適当であり、好ましくは0.5%〜5%程度である。
【0065】
本発明の方法に用いられるイオノフォアは、トラッピング構造部分及び出力構造部分並びに膜に固定化する場合のスペーサー構造として、それぞれ周知の構造を用いることができ、また、市販品を利用することもでき、これらを結合するだけで得られるので、常法により容易に製造することができる。
【0066】
上記イオノフォアを用いて上記工程(1)を行う場合、複数のイオノフォアを、既知濃度の測定すべき複数のイオンと接触させ、各イオノフォアからの出力の値を、各イオン種の濃度を種々変えて測定する。測定対象としては、例えば出力構造部分が蛍光性原子団の場合には、所定の励起波長で励起した場合の蛍光スペクトル等である。蛍光スペクトルから、ピークの波長や変曲点の波長から複数の波長(スペクトルの代表点)を選択し、その波長における蛍光強度を第1工程における出力として後述のニューラルネットワーク処理に用いる。
【0067】
なお、工程(1)及び工程(3)に用いるイオノフォアの終濃度は、特に限定されるものではなく、被検試料中の測定対象となるイオン種の予想される濃度に応じて、ルーチンな実験に基づき適宜設定することができるが、各イオノフォアについて、通常、10-3〜10-7 mol/l、好ましくは10-4〜10-6 mol/l程度である。上記した膜センサーを用いる場合には、膜センサーに結合されているイオノフォアの量及び被検試料の量からイオノフォアの終濃度を計算する。他の反応条件は、各イオン種とイオノフォアの性質に応じて適宜設定できるが、通常、反応温度は室温でよく、反応時間は1分間ないし1時間程度でよい。
【0068】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0069】
参考例1 蛍光性イオノフォアKM-002、KM-003及びKM-005の製造
上記した蛍光性イオノフォアKM-002、KM-003及びKM-005の製造は、それぞれ市販のヘテロクラウンエーテル、蛍光原子団、アルケニル化合物を製造した。用いた市販品を以下に示す(化合物名の後に販売会社とカタログ番号を示す)。
(1) アルケニルに関して
5-ヘキセン-1-オール TCI社 FIC01
パラ-トルエンスフホニルクロライド Wako社 204-05722
(2) ヘテロクラウンエーテルに関して
4,13-ジアザ-18-クラウン-6-エーテル TCI-EP社 D2323
Kryptofix 21 Merck-schuchardt社 811720
1,7-ジアザ-12-クラウン-4 (98%) Across社製、275802500
(3) アントラセン色素に関して
9-クロロメチルアントラセン TCI社 C1046
(4) ナフチルイミド色素に関して
4-ブロモ-1.8-ナフタリック無水和物 TCI社 B0858
メチルアミン 40%水溶液 TCI社 M0137
(5) 4-ブロモメチル-6,7-ジメトキシクマリン(95%) Across社製、403060010
上記各市販品を用い、下記スキームに従って、常法によりKM-F002、KM-F003及びKM-F005を製造した。
【0070】
【化21】
【0071】
【化22】
【0072】
【化23】
【0073】
実施例1 溶液中のZn2+、Cd2+、Cu2+の濃度の測定
(1) イオン標準溶液の調製
硝酸亜鉛六水和物、硝酸カドミウム四水和物及び硝酸銅(II)水和物のそれぞれについて、下記表3に示す濃度のアセトニトリル溶液を調製した。簡便のため、以下の説明では、各濃度を略号で示すことがある。この略号も表6に併せて示す。
【0074】
【表3】表3 調製した各イオン標準溶液の濃度と、各濃度を示す略号
【0075】
なお、以下の説明において、各イオン標準溶液を表す場合、そのイオンの金属の元素記号の後に、そのイオン標準溶液の濃度の略号を付して示すことがある。例えば、濃度3.20 x 10-5 mol/lの亜鉛イオン標準溶液を「Zn6」、濃度8.00 x 10-6 mol/lのカドミウムイオン標準溶液を「Cd4」のように表すことがある。また、3種類のイオン標準溶液の混合物を、例えば「Zn3Cd4Cu5」のように表すことがある。
【0076】
(2) イオンサンプルの調製
(i) Zn6の200倍の濃度の溶液を250 mlメスフラスコで作成し、その溶液を10mlホールピペットで計量し、100 mlメスフラスコで希釈しZn6の20倍の濃度の溶液を調製した。
(ii) (i)の溶液を50mlホールピペットで計量し、100mlメスフラスコで希釈しZn5の20倍の濃度の溶液を調製した。
(iii) (ii)の操作を繰り返すことにより、Zn1〜Zn6の20倍の濃度の溶液を調製した。
(iv) (i)〜(iii)の操作を、それぞれCd、Cuに対して行うことにより、表3に示した20倍の濃度の溶液を調製した。
(v) (iv)までに調製した溶液を、イオン種ごとに1mlホールピペットで計量し、同一の10mlメスフラスコで希釈することにより、表3の2倍の濃度での、3種類のイオンを全て組み合わせた216個の溶液を調製した。
(vi) KM-F002を2.5 x 10-4 mol/lの濃度で、100mlメスフラスコを用いて調製し、KM-F003、KM-F005にも同様に調製をした。
(vii) (vi)の溶液を、それぞれ20mlホールピペットで計量し、同一の250mlメスフラスコで希釈することにより、KM-F002、KM-F003、KM-F005の混合溶液を作成した。
(viii) (v)で調製した216個の溶液を1mlと、(vii)で調製した混合フルオロイオノフォア溶液1mlを、それぞれピペットマンで計量し、同一のポリエチレン製の試験管に注ぎ、混合させることで、表3の濃度で3種類のイオン混合溶液と、それぞれ1.0 x 10-5 mol/lのKM-F002、KM-F003、KM-F005の混合溶液を混合した216個のアセトニトリル溶液を調製した。
【0077】
蛍光3次元スペクトル測定
先ず、(viii)で調製した全てのサンプルについて、励起波長 310-450 nm、蛍光波長 380-580 nmの範囲で蛍光強度の測定を行った。代表例として、Zn6Cd6Cu6の3次元蛍光スペクトルを図1に示す。また、イオンを全く含まない溶液(イオンフリー)すなわち、KM-F002, KM-F003, KM-F005を同一のアセトニトリル中にそれぞれ1.0×10-5 mol/l混ぜた時の吸収スペクトルを図2に示す。
【0078】
(a) 測定値の前処理
測定値3D蛍光スペクトルは、本実施例では40×29のマトリクスであった。その全てのスペクトルデータ216個はそれぞれ下式でベクトルに変換された。
【0079】
【数7】
【0080】
このようにして得られた全てのサンプル点(ベクトル)を利用して、PCAを使い上位1〜5主成分のベクトルに変換した。その変換は、各サンプルのベクトルに対して下式を適用して行った。
s = Ar (s, A, r は全て太字)
A(太字)は、216個のデータベクトルに対するr(太字)の共分散行列の固有ベクトル上位5個を行成分として持つ行列である。この場合は、5×1160のベクトルである。そして、変換後の値s(sは太字)を新たなデータベクトルの値として取り扱う。
【0081】
次に、これらの点の正規化を行う。正規化は、下記式を全てのベクトルの要素に対して行った。さらに、下式によって変換された値yを、以下の階層型人工ニューラルネットワークの学習で用いた。
【0082】
【数8】
【0083】
なお、前処理をMATLAB用言語で記述したプログラムを図5及び図6(presignal.m)に示す。また、PCAは、MATLAB Statistics Toolboxに含まれるプログラムを呼び出すことで実現した。このプログラムは、Windows版MATLAB環境上で実行させた。
【0084】
イオン濃度の前処理
(b) 既知濃度データの前処理を用いて、3種類のイオン濃度を下記表4のように変換した。
【0085】
【表4】表4
このとき、tjmin, tjmax はそれぞれ、-4.4949、-6.0000 であった。
【0086】
GBNR を用いた学習
GNBR を用いて、前処理後のイオン濃度x(太字)から、前処理後の3 次元スペクトルy(太字)という関係を学習させた。この入出力関係をfとし、
y=f(x) (y,x 太字)
と表すことにする。用いた学習データは下記表5に示すとおりである。
【0087】
【表5】表5
【0088】
また、学習に用いたGNBR のパラメーターは、中間素子数20、最大学習回数500
であり、その他のパラメーターはの標準設定を用いた。
【0089】
また、学習に用いたMATLAB Neural Network toolbox に含まれるGNBR 法のプログラムには、いくつかのパラメータを設定した。
【0090】
【表6】表6
【0091】
なお、MATLAB 用言語で記述された階層型人工ニューラルネットワークを学習されるプログラムを図7(train.m 基本的にはプログラムすべてを用いる)に示す。GNBR 法自体は、MATLAB Neural Network Toolbox に含まれるプログラムを呼び出すことで実現した。GNBR 法は、このプログラムをWindows 版MATLAB 環境上で実行させた。
【0092】
(6)SQP 法を用いた予測
次に、階層型人工ニューラルネットワークとSQP 法を用いて、実験結果でありそれの前処理済みの値y’(y は太字)を出力するx’(x は太字)を予測する。このアルゴリズムは次のように表される。
(i) 初期化
E*を計算機のdouble 型の最大値に設定する。
(ii) 繰り返し
(ア) ランダムな値をx(x は太字)の初期値とする。
(イ) 既学習の階層型人工ニューラルネットワークF(x;w*)(x、w は太字)を用いた下式の制約付き最小化問題の解x*(x は太字)をSQP 法で求める。
E=||y’-F(x;w*)||2 (y、x、w は太字)
xi の最小値≦xi≦xi の最大値
(ウ) このとき、E<E*であれば、x’=x*とする。
(エ) 一定回数繰り返したら、x’を最終的な解として終了する。そうでなければ、(ア)に戻り
さらに繰り返す。
【0093】
以上のアルゴリズムにより、求める解x’を得ることができる。このとき、上述の繰り返し回数は10 回とした。また、x(x は太字)のi 成分xi の最大値、最小値はそれぞれ、-1、1とした。
【0094】
なお、本実施例で用いた、MATLAB 用プログラムで書かれたSQP 法を用いた予測プログラムを図8及び図9(comp.m 基本的にはプログラムすべてを用いる)に示す。SQP 法自体は、MATLABOptimization Toolbox に含まれるプログラムを呼び出すことで実現した。また、本実施例では、SQP 法を用いた予測プログラムをWindows 版MATLAB 環境上で実行させた。なお、MATLABに用いた他のプログラムを図10ないし図16に示す。
【0095】
また、MATLAB Optimization Toolbox に含まれるSQP 法のプログラムには、いくつかのパラメータを設定した。
【0096】
【表7】表6
【0097】
上記の方法で得られた解を
【数9】
を用いて変換した値を、測定結果とした。その結果例を下記表7に示した。
【0098】
【表8】表7
上記のとおりに、3 種類のイオン濃度が小さな誤差範囲内で測定できることがわかる。
【0099】
【発明の効果】
本発明により、複数の物質の濃度変化に応じて吸光度等の出力が非線形に変化こと及び出力に複数の物質が寄与している点から、1つの出力に対応する濃度が種々存在することに起因して、従来の検量線を用いた方法では測定することが困難な場合であっても、複数の化学物質の濃度を同時に測定することができる、複数の化学物質の濃度の測定方法が提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で作成した、Zn6Cd6Cu6の三次元蛍光スペクトルを示す図である。
【図2】本発明の実施例で作成した、イオノフォアの混合溶液のアセトニトリル中での吸収スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の方法における前処理の説明に用いたベクトルの例を示す図である。
【図4】本発明の方法における前処理の説明に用いた行列の例を示す図である。
【図5】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図6】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図7】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図8】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図9】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図10】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図11】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図12】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図13】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図14】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図15】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図16】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の化学物質の濃度を同時に測定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、化学物質の濃度の測定は、該化学物質の濃度に応じて変化する物理量、例えば、溶液の吸光度等を出力として測定することにより行われている。測定すべき化学物質濃度と、出力との相関関係を求めるために、既知の種々の濃度に対する出力を測定し、横軸に濃度、縦軸に吸光度等の出力をとって検量線を作成する。そして、未知濃度の被検試料について出力を測定し、その出力に対応する濃度を前記検量線から読み取ることにより濃度測定が行われている。
【0003】
1種類の出力(例えば特定波長における吸光度)に対して影響を与える複数の化学物質が被検試料中に含まれている場合、その出力を測定しても、これら複数の化学物質の寄与の割合が不明なため、単一の化合物存在時のそれぞれの化合物について作成された検量線に基づいて各化学物質の濃度を測定することは不可能である。また、複数の物質の濃度変化に応じて吸光度等の出力が非線形に変化する。これと、上述した通り出力に複数の物質が寄与している点から、1つの出力に対応する濃度が種々存在する。このため、これに対応する濃度を従来手法で測定することは不可能である。
【0004】
また、重金属イオン濃度は、環境基準が設けられており、重金属イオン濃度を測定することは社会的に要求されている。従来より、金属イオン濃度の簡便な測定法として、蛍光性のイオノフォア(フルオロイオノフォア)を用いる方法が知られている。この方法では、蛍光性イオノフォアにより、目的とする金属イオンをトラップし、それによって生じる蛍光の変化を測定することにより目的とする金属イオンを定量するものである。
【0005】
しかしながら、特定の金属に対して高い選択性を有するイオノフォアは少ないので、複数の金属イオンに対してそれぞれ高選択性を有する複数のイオノフォアを用いて複数の金属イオンを同時に定量することは困難である。かといって、従来の方法において、中程度の選択性を有するイオノフォアを用いて金属イオンの定量を行うと、1つのイオノフォアにトラップされる金属イオン種が複数存在するため、各金属イオンの定量を正確に行うことはできない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、複数の物質の濃度変化に応じて吸光度等の出力が非線形に変化こと及び出力に複数の物質が寄与している点から、1つの出力に対応する濃度が種々存在することに起因して、従来の検量線を用いた方法では測定することが困難な場合であっても、複数の化学物質の濃度を同時に測定することができる、複数の化学物質の濃度の測定方法を提供することである。また、本発明の目的は、中程度の選択性を有するイオノフォアを用いた場合であっても、複数のイオン種の濃度を正確に測定することができる、複数のイオン種の濃度の測定方法を提供することである。
【0007】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、測定すべき複数の化学物質濃度とそれに対応する出力を、複数の濃度においてそれぞれ測定し、その結果をGNBR法で階層型人工ニューラルネットワークに学習させ、一方、被検試料について出力を測定し、得られた測定値と前記学習済ニューラルネットワークにより与えられる値との差の2乗が最小となる値を逐次2次計画法により求めることにより、複数の化学物質の濃度を測定することができることを見出し本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、測定すべき複数の化学物質濃度に対応した出力が測定可能な系において、(1)既知濃度の前記複数の化学物質に対応する出力を、複数の濃度においてそれぞれ測定する工程と、(2)その結果をGNBR法で階層型人工ニューラルネットワークに学習させる工程と、(3)被検試料について出力を測定する工程と、(4)得られた測定値と前記学習済ニューラルネットワークにより与えられる値との差の2乗が最小となる値を逐次2次計画法により求める工程とを含む、複数の化学物質濃度の測定方法を提供する。
【0009】
また、上記本発明の方法において、測定すべき複数のイオンの少なくともいずれかをトラップし得るトラッピング構造部分と、該トラッピング構造部分に結合され、イオンが該トラッピング構造部分にトラップされることによりシグナルを出力する出力構造部分とを少なくとも含む複数のイオノフォアを、既知濃度の測定すべき複数のイオンと接触させ、出力を測定することにより前記工程(1)及び工程(3)を行うことにより、中程度の選択性を有するイオノフォアを用いた場合であっても、複数のイオン種の濃度を正確に測定することができることを見出し本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、上記本発明の方法において、前記工程(1)及び工程(3)は、測定すべき複数のイオンの少なくともいずれかをトラップし得るトラッピング構造部分と、該トラッピング構造部分に結合され、イオンが該トラッピング構造部分にトラップされることによりシグナルを出力する出力構造部分とを少なくとも含む複数のイオノフォアを、既知濃度の測定すべき複数のイオンと接触させ、出力を測定することにより行われる、複数のイオン種の濃度の測定方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の方法により濃度が測定される化学物質は、何ら限定されるものではなく、その濃度に対応した出力が測定可能ないずれの化学物質であってもよい。例えば、下記実施例では、重金属イオンの濃度を測定しているが、他の化学物質の濃度測定にも適用できることは言うまでもない。また、化学物質は、液相中に含まれるものに限定されるものではなく、気相中や固相中に含まれるもの、また、生物体に含まれるもの等であってもよい。
【0012】
測定すべき複数の化学物質の濃度に対応する、測定可能な出力は、特に限定されるものではなく、例えば溶液の吸光度、濁度、光透過率、電気伝導度、電流、電圧、蛍光強度、放射能、旋光度等の種々の物理量を例示することができる。
【0013】
上記出力は、化学物質の濃度に応じて直接的に変化するものであってもよい(例えば、測定すべき化学物質が色素である場合の吸光度、測定すべき化学物質がイオンである場合の電気伝導度、測定すべき化学物質が旋光性物質である場合の旋光度等)し、測定すべき化学物質を指示薬やプローブと反応させ、その反応物の濃度に依存して変化するものであってもよい(例えば、金属イオンと結合することにより蛍光強度が変化するイオノフォア(後述)と反応させた後の蛍光強度、測定すべき化学物質と結合することにより発色又は色が変化する指示薬と反応させた後の吸光度、蛍光標識したプローブと結合させた後の蛍光強度等)。
【0014】
測定する出力の種類の数は、特に限定されないが、あまりに少ないと、各化学物質の濃度を正確に測定することが難しくなり、また、あまりに多いと処理が複雑になるので、測定対象となる化学物質の種類と同数の種類の出力を測定することが好ましい。例えば、下記実施例では、3種類の重金属イオンの濃度を測定しているが、測定した出力は、3つの異なるイオノフォアと反応させた後の蛍光強度である。
【0015】
本発明の方法の工程(1)では、各化学物質の濃度が既知の場合の、各出力の値を、各化学物質の濃度を種々変えて測定する。
【0016】
次に、その測定結果を、階層型ニューラルネットワークに学習させる(工程(2))が、このために、この工程に先立ち、工程(1)で測定された測定値及び既知濃度について、主成分分析(PCA (Principal Component Analysis)及び正規化を含む前処理工程を行うことが好ましい。なお、PCAは多変量解析の非常に基本的な手法であり、例えば、河口 至商、多変量解析入門I、森北出版、1973等の文献に記載されている。この手法は、大きなベクトル(数十〜数百次元)の持つ情報を、数次元の小さな次元のベクトル(1〜5次元程度)に圧縮することができる方法である。
【0017】
(a) 測定値の前処理
測定値は、例えば蛍光/吸光スペクトル等の配列状データ、すなわちベクトルであり、また3D蛍光スペクトルの場合はマトリクス状のデータになる。これを図で考えると以下のようになる。図3は27次元のベクトルを示したものである。横軸に各ベクトル成分を並べ、縦軸にそれらに対応する値が入っているということを示している。さらに、測定値(例えばセンサから取得するスペクトル)も以下と同様の形状をしており、容易にスペクトルをベクトルとして扱うことができる。さらに、3Dスペクトルの場合は、行列で表現する場合を考えれば動揺に考えることができる。また、通常、PCAはベクトルを扱う。このため、マトリクス状のデータの場合は、以下のようなベクトルr(太字。なお、本明細書において太字のアルファベットはベクトルを表す)に置き換えてから適用する。
【0018】
【数1】
【0019】
このようにして得られた全てのサンプル点(ベクトル)を利用して、PCAで主成分を取り出す。ここで得られる上位数主成分を新しいデータ点とする。
s = Ar (s, A, rは全て太字)
ここで得られた新しいデータ点s(太字)は、スコアベクトルとも呼ばれる。また、A(太字)は、データベクトルのr(太字)の共分散行列の固有ベクトル上位数個を行成分として持つ行列である。これを新たに応答の値として取り扱う。
【0020】
例えば、100次元のスペクトルデータr(太字)を、3次元に圧縮する場合、A(太字)は3 x 100(数百)の行列になり、s(太字)は3次元になる。下記実施例のように3種のイオンの系では、40 x 29のマトリクス(3Dスペクトル)である。それを4次元に圧縮している(下記表1参照)。
【0021】
次に、これらの点の正規化を行う。正規化は、下記式を全てのベクトルの要素に対して行う。これは、ベクトルs(太字)の各成分を、全サンプルにおいて最大1、最小-1に変換するものである。
【0022】
【数2】
ただし、sjは、ベクトルs(太字)のj成分、sj min、sj maxは、それぞれ、j成分での全サンプル内での最小値、最大値を示す。
【0023】
(b) 既知濃度データの前処理
標準試料は、複数の化学物質を含むから、濃度データは、他成分のデータである。つまり、ベクトルの形、c(太字)、をしている。試料中の各化学物質の濃度は、以下のように非線形変換される。
t = log10(c) (cは太字)
さらに、これを下式で正規化する。
【0024】
【数3】
ただし、tjは、ベクトルt(太字)のj成分、tj min、tj maxは、それぞれ、j成分での全サンプル内での最小値、最大値を示す。
【0025】
【表1】
表1 PCA詳細(後述の実施例において)
【0026】
上記前工程で作成されたデータは、測定値y(太字)、濃度x(太字)共に、ベクトルの形をしている。これらを、階層型ニューラルネットワークに学習させる(工程(2))。学習方法としては、GNBR法が好ましい。GNBR法自体はニューラルネットワークの分野において周知であり、例えば、F. Dan Foresee et al., IEEE International Conf. on Neural Networks 1997, Vol.3 pp.1930-1935等の文献に記載されている。GNBR法は、下記数式におけるEを、重みw(太字)を調節し最小化することで学習を行う。このときの最小化アルゴリズムにLevenberg-Marquardt法を用いることで高速性を実現できる。また、GNBR法のアルゴリズム中で必要になる(ヘッセ)行列計算にLevenberg-Marquardt法での近似手法が利用される。なお、Levenberg-Marquardt法も周知であり、例えば、Martin T. Hagan et al., IEEE TRANSACTIONS ON NEURAL NETWORKS, VOL. 5, NO. 6, NOVEMBER 1994, pp.989-993に記載されているし、後述の通り、市販のソフトを用いて容易に行うことができる。
【0027】
【数4】
【0028】
ただし、F(x;w)(x、wは太字)は、階層型ニューラルネットワークを表し、nはサンプル総数を表す。さらに、GNBR法は、上式の係数α、βを決定する機構を持っている。GNBR法のプログラミングは、例えば、Windows(登録商標)上で作動する、周知の市販のソフトであるMATLAB(The MathWorks社より市販)専用のNeural Network Toolbox(商品名)を用いて当業者が容易に行うことができる。以上のアルゴリズムで学習された学習済ニューラルネットワークを区別して、以下、F(x;w*)(F, x, wは太字)と記述する。
【0029】
【表2】表2 学習詳細(下記実施例において)
【0030】
次に、被検試料について、標準試料と同様に出力を測定する(工程(3))。得られた測定値も、前記工程(2)に先立って行った前処理工程と同様にして、PCA及び正規化を行う。なお、正規化を行う際に用いるsj min、sj maxは、前記前処理工程で得たものを利用する。
【0031】
次に、前記工程(2)で得た階層型ニューラルネットワークを利用して、定量を最適化問題に帰着させる。F(x;w*)(x, wは太字)を学習済みのニューラルネットワークとして、被検試料の出力の測定値であって上記前処理を済ませたものをy'(yは太字)とする。
【0032】
【数5】
【0033】
この最小化問題を、さらに、x(太字)の範囲を限定するために以下の制約条件を付加する。
下限値≦xj≦上限値
なお、ここで、「下限値」及び「上限値」は、具体的には、処理後の値であるからここでは-1、1となる。
【0034】
この非線形計画問題を解くためのアルゴリズムが逐次2次計画法(SQP (Sequential Quadratic Programing)である。この方法は、ある非線形計画問題を逐次、2次計画問題に近似して、反復計算を行うことで解を得るアルゴリズムである。なお、SQP法自体はこの分野において周知であり、例えばScales, L.E., Introduction to Non-linear Optimization, MACMILLAN, 1985及び藤田宏ら、最適化法、岩波書店、1985等の教科書的文献に記載されている。SQP法は、上記周知の市販のソフトであるMATLAB(The MathWorks社より市販)専用のOptimization Toolbox(商品名)を用いて当業者が容易に行うことができる。
【0035】
上記で得られた解が、求める濃度の変換、正規化後の値である。この値を下式により逆変換して目的の濃度c(太字)を求めることができる。
【0036】
【数6】
【0037】
上記本発明の方法を、金属イオン、特に重金属イオンのような、イオン種の濃度測定に適用することができる。この場合には、前記工程(1)及び工程(3)は、測定すべき複数のイオンの少なくともいずれかをトラップし得るトラッピング構造部分と、該トラッピング構造部分に結合され、イオンが該トラッピング構造部分にトラップされることによりシグナルを出力する出力構造部分とを少なくとも含む複数のイオノフォアを、既知濃度の測定すべき複数のイオンと接触させ、出力を測定することにより行うことができる。
【0038】
イオンをトラップし得るトラッピング構造部分は、測定すべきイオン種をトラップすることができる構造であればいかなる構造でもよい。好ましい例として、イオンを包接するヘテロ分子構造を挙げることができる。ここで、「ヘテロ分子構造」とは、炭素原子の以外に酸素、窒素、イオウ又はリン原子等の電子供与性のヘテロ原子を含む構造を意味する。ヘテロ分子構造は環状構造であっても非環状構造であってもよい。環状構造の好ましい例として、クラウンエーテル及びヘテロクラウンエーテルを挙げることができ、特にヘテロクラウンエーテルが好ましい。ここで、ヘテロクラウンエーテルとは、クラウンエーテル中の複数の酸素原子の少なくとも1個が窒素原子やイオウ原子等の他の電子供与性の原子に置き換わったものを意味する。クラウンエーテル及びヘテロクラウンエーテルのサイズは特に限定されず、測定すべきイオン種に応じて適宜選択できるが、通常、12員〜24員程度が適当であり、好ましくは15員〜18員である。ただし、これらに限定されるものではなく、後述する式[A]で示されるものでは3員ないし63員が可能である。なお、トラップされるイオン種は、特に限定されず、各種金属イオンやアンモニウムイオン、有機イオン等であり、好ましくは金属イオン、特に重金属イオンである。
【0039】
好ましいクラウンエーテル又はヘテロクラウンエーテルの例として、下記一般式[A]で示すものを挙げることができる。
【0040】
【化8】
(ただし、X、Y及びZは互いに独立に酸素、窒素、イオウ又はリン原子を表し、複数のYが含まれる場合には、各Yは同一であっても異なっていてもよく、複数のZが含まれる場合には、各Zは同一であっても異なっていてもよく、n及びmは互いに独立に0ないし10の整数を示す。)
【0041】
上記一般式[A]で表されるヘテロクラウンエーテルの好ましい例として下記式[I]、[II]又は[VII]で表されるものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【化9】
【0043】
【化10】
【0044】
【化11】
【0045】
なお、本発明の方法には複数のイオノフォアが用いられるが、各イオノフォア中のトラッピング構造部分のイオン種に対する選択性が異なっていることが好ましい。従って、通常、異なるイオン種のサイズは同一ではないので、各イオノフォア中の環状構造のサイズはそれぞれ異なっていることが好ましい。
【0046】
上記トラッピング構造部分には、イオンが該トラッピング構造部分にトラップされることによりシグナルを出力する出力構造部分が結合されている。出力構造部分は、測定可能ないずれかのシグナルを発することができる構造であればいかなる構造のものでもよく、また、シグナルの種類も限定されない。好ましい出力構造部分の例として、蛍光性原子団、吸光性原子団や発色性原子団を挙げることができ、蛍光性原子団が特に好ましい。
【0047】
一般に、蛍光性原子団がトラッピング構造部分に結合されている場合、トラッピング構造部分にイオンが結合することにより、蛍光強度等の蛍光特性が変化するので、公知の種々の蛍光性原子団を採用することができる。例えば、ローダミン、フルオレセイン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、クマリン、キノリン、スチルベン、ベンゾチオゾール及びピラゾリン等並びにこれらの基本骨格を有する誘導体を挙げることができるが、本発明において採用される蛍光性原子団はこれらに限定されるものではない。
【0048】
蛍光性原子団の好ましい例として、下記式[III]ないし[VI]及び[VIII]に示される基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
【化12】
【0050】
【化13】
【0051】
【化14】
【0052】
【化15】
【0053】
【化16】
【0054】
各イオノフォアに含まれる蛍光性原子団は、同一の励起波長で励起可能で異なる最大蛍光波長を有するものであることが好ましい。同一の励起波長で励起可能であれば、測定時の操作が簡便になり好ましい。また、最大蛍光波長が異なっている方が、後述するニューラルネットワークを用いた処理によってより正確な測定結果が得られ易くなる。もっとも、本発明の方法は、同一波長で励起する場合に限定されるものではなく、異なる波長で励起する場合も包含される。
【0055】
本発明の方法に用いるイオノフォアの種類の数は、特に限定されないが、測定すべきイオン種の数に比べて余りに少ないと正確な測定が困難となので、測定すべきイオン種の数と同数又はそれ以上であることが好ましいが、それ未満であってもよい。この場合、各イオノフォアに対して最も親和性の高いイオンがそれぞれ異なるようなイオノフォアの組合せを採用することが好ましい。
【0056】
本発明の方法は、各イオノフォアを溶液の状態で用いて行うことも可能であるが、各イオノフォアを単一の膜に固定化して用いるようにすると、取り扱いが簡便で、水系での利用も容易になるので好ましい。膜には、上記トラッピング構造部分又は出力構造部分を直接結合してもよいが、スペーサー構造を介して膜に固定化することが好ましい(膜に複数のイオノフォアが固定化されたものを本明細書において「膜センサー」と呼ぶことがある)。スペーサー構造は、トラッピング構造部分又は出力構造部分のいずれに結合してもよい。スペーサー構造は、何ら限定されるものではなく、例えば、炭素数3〜20程度、好ましくは4〜8程度のアルキル基や、膜への結合を容易にするために、このアルキル基の末端に二重結合を導入したアルケニル基、このアルキル基の末端にカルボキシル基、アミノ基又はハロゲン等を結合したカルボキシアルキル基、アミノアルキル基及びハロアルキル基等を例示することができる。特に、スペーサーの末端に二重結合を有するアルケニル基を有するイオノフォアは、ビニル系モノマーを重合して膜を形成する際にこれと共重合させて膜に共有結合することができるので好ましい。
【0057】
膜センサーの具体例として、次の組成のものを例示することができる。
【0058】
上記組成を有する膜溶液を用いて、膜センサーは例えば次のようにして作製することができる。上記組成を有する膜溶液を薄膜状態にし、加熱することで重合させる。すなわち、膜溶媒をシラン化したガラス板に数滴滴下し、その上にガラス板を置く。ガラス板の間隔は、カバーガラスを挿入して約0.18 mmとする。次いで、この全体を60℃に保った乾熱器に入れ、2時間ほど加熱を行い、膜化する。重合反応終了後、アセトニトリルに浸し、ガラス板から膜を剥離する。
【0059】
好ましいイオノフォアの具体例として、下記に示す構造を有するKM-F001、KM-F003、KM-F002及びKM-F004を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
【化17】
【0061】
【化18】
【0062】
【化19】
【0063】
【化20】
【0064】
膜に結合するイオノフォアの量は、特に限定されるものではなく、被検試料中の測定対象となるイオン種の予想される濃度に応じて、ルーチンな実験に基づき適宜設定することができるが、通常、膜の重量に対して0.1%〜10%程度が適当であり、好ましくは0.5%〜5%程度である。
【0065】
本発明の方法に用いられるイオノフォアは、トラッピング構造部分及び出力構造部分並びに膜に固定化する場合のスペーサー構造として、それぞれ周知の構造を用いることができ、また、市販品を利用することもでき、これらを結合するだけで得られるので、常法により容易に製造することができる。
【0066】
上記イオノフォアを用いて上記工程(1)を行う場合、複数のイオノフォアを、既知濃度の測定すべき複数のイオンと接触させ、各イオノフォアからの出力の値を、各イオン種の濃度を種々変えて測定する。測定対象としては、例えば出力構造部分が蛍光性原子団の場合には、所定の励起波長で励起した場合の蛍光スペクトル等である。蛍光スペクトルから、ピークの波長や変曲点の波長から複数の波長(スペクトルの代表点)を選択し、その波長における蛍光強度を第1工程における出力として後述のニューラルネットワーク処理に用いる。
【0067】
なお、工程(1)及び工程(3)に用いるイオノフォアの終濃度は、特に限定されるものではなく、被検試料中の測定対象となるイオン種の予想される濃度に応じて、ルーチンな実験に基づき適宜設定することができるが、各イオノフォアについて、通常、10-3〜10-7 mol/l、好ましくは10-4〜10-6 mol/l程度である。上記した膜センサーを用いる場合には、膜センサーに結合されているイオノフォアの量及び被検試料の量からイオノフォアの終濃度を計算する。他の反応条件は、各イオン種とイオノフォアの性質に応じて適宜設定できるが、通常、反応温度は室温でよく、反応時間は1分間ないし1時間程度でよい。
【0068】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0069】
参考例1 蛍光性イオノフォアKM-002、KM-003及びKM-005の製造
上記した蛍光性イオノフォアKM-002、KM-003及びKM-005の製造は、それぞれ市販のヘテロクラウンエーテル、蛍光原子団、アルケニル化合物を製造した。用いた市販品を以下に示す(化合物名の後に販売会社とカタログ番号を示す)。
(1) アルケニルに関して
5-ヘキセン-1-オール TCI社 FIC01
パラ-トルエンスフホニルクロライド Wako社 204-05722
(2) ヘテロクラウンエーテルに関して
4,13-ジアザ-18-クラウン-6-エーテル TCI-EP社 D2323
Kryptofix 21 Merck-schuchardt社 811720
1,7-ジアザ-12-クラウン-4 (98%) Across社製、275802500
(3) アントラセン色素に関して
9-クロロメチルアントラセン TCI社 C1046
(4) ナフチルイミド色素に関して
4-ブロモ-1.8-ナフタリック無水和物 TCI社 B0858
メチルアミン 40%水溶液 TCI社 M0137
(5) 4-ブロモメチル-6,7-ジメトキシクマリン(95%) Across社製、403060010
上記各市販品を用い、下記スキームに従って、常法によりKM-F002、KM-F003及びKM-F005を製造した。
【0070】
【化21】
【0071】
【化22】
【0072】
【化23】
【0073】
実施例1 溶液中のZn2+、Cd2+、Cu2+の濃度の測定
(1) イオン標準溶液の調製
硝酸亜鉛六水和物、硝酸カドミウム四水和物及び硝酸銅(II)水和物のそれぞれについて、下記表3に示す濃度のアセトニトリル溶液を調製した。簡便のため、以下の説明では、各濃度を略号で示すことがある。この略号も表6に併せて示す。
【0074】
【表3】表3 調製した各イオン標準溶液の濃度と、各濃度を示す略号
【0075】
なお、以下の説明において、各イオン標準溶液を表す場合、そのイオンの金属の元素記号の後に、そのイオン標準溶液の濃度の略号を付して示すことがある。例えば、濃度3.20 x 10-5 mol/lの亜鉛イオン標準溶液を「Zn6」、濃度8.00 x 10-6 mol/lのカドミウムイオン標準溶液を「Cd4」のように表すことがある。また、3種類のイオン標準溶液の混合物を、例えば「Zn3Cd4Cu5」のように表すことがある。
【0076】
(2) イオンサンプルの調製
(i) Zn6の200倍の濃度の溶液を250 mlメスフラスコで作成し、その溶液を10mlホールピペットで計量し、100 mlメスフラスコで希釈しZn6の20倍の濃度の溶液を調製した。
(ii) (i)の溶液を50mlホールピペットで計量し、100mlメスフラスコで希釈しZn5の20倍の濃度の溶液を調製した。
(iii) (ii)の操作を繰り返すことにより、Zn1〜Zn6の20倍の濃度の溶液を調製した。
(iv) (i)〜(iii)の操作を、それぞれCd、Cuに対して行うことにより、表3に示した20倍の濃度の溶液を調製した。
(v) (iv)までに調製した溶液を、イオン種ごとに1mlホールピペットで計量し、同一の10mlメスフラスコで希釈することにより、表3の2倍の濃度での、3種類のイオンを全て組み合わせた216個の溶液を調製した。
(vi) KM-F002を2.5 x 10-4 mol/lの濃度で、100mlメスフラスコを用いて調製し、KM-F003、KM-F005にも同様に調製をした。
(vii) (vi)の溶液を、それぞれ20mlホールピペットで計量し、同一の250mlメスフラスコで希釈することにより、KM-F002、KM-F003、KM-F005の混合溶液を作成した。
(viii) (v)で調製した216個の溶液を1mlと、(vii)で調製した混合フルオロイオノフォア溶液1mlを、それぞれピペットマンで計量し、同一のポリエチレン製の試験管に注ぎ、混合させることで、表3の濃度で3種類のイオン混合溶液と、それぞれ1.0 x 10-5 mol/lのKM-F002、KM-F003、KM-F005の混合溶液を混合した216個のアセトニトリル溶液を調製した。
【0077】
蛍光3次元スペクトル測定
先ず、(viii)で調製した全てのサンプルについて、励起波長 310-450 nm、蛍光波長 380-580 nmの範囲で蛍光強度の測定を行った。代表例として、Zn6Cd6Cu6の3次元蛍光スペクトルを図1に示す。また、イオンを全く含まない溶液(イオンフリー)すなわち、KM-F002, KM-F003, KM-F005を同一のアセトニトリル中にそれぞれ1.0×10-5 mol/l混ぜた時の吸収スペクトルを図2に示す。
【0078】
(a) 測定値の前処理
測定値3D蛍光スペクトルは、本実施例では40×29のマトリクスであった。その全てのスペクトルデータ216個はそれぞれ下式でベクトルに変換された。
【0079】
【数7】
【0080】
このようにして得られた全てのサンプル点(ベクトル)を利用して、PCAを使い上位1〜5主成分のベクトルに変換した。その変換は、各サンプルのベクトルに対して下式を適用して行った。
s = Ar (s, A, r は全て太字)
A(太字)は、216個のデータベクトルに対するr(太字)の共分散行列の固有ベクトル上位5個を行成分として持つ行列である。この場合は、5×1160のベクトルである。そして、変換後の値s(sは太字)を新たなデータベクトルの値として取り扱う。
【0081】
次に、これらの点の正規化を行う。正規化は、下記式を全てのベクトルの要素に対して行った。さらに、下式によって変換された値yを、以下の階層型人工ニューラルネットワークの学習で用いた。
【0082】
【数8】
【0083】
なお、前処理をMATLAB用言語で記述したプログラムを図5及び図6(presignal.m)に示す。また、PCAは、MATLAB Statistics Toolboxに含まれるプログラムを呼び出すことで実現した。このプログラムは、Windows版MATLAB環境上で実行させた。
【0084】
イオン濃度の前処理
(b) 既知濃度データの前処理を用いて、3種類のイオン濃度を下記表4のように変換した。
【0085】
【表4】表4
このとき、tjmin, tjmax はそれぞれ、-4.4949、-6.0000 であった。
【0086】
GBNR を用いた学習
GNBR を用いて、前処理後のイオン濃度x(太字)から、前処理後の3 次元スペクトルy(太字)という関係を学習させた。この入出力関係をfとし、
y=f(x) (y,x 太字)
と表すことにする。用いた学習データは下記表5に示すとおりである。
【0087】
【表5】表5
【0088】
また、学習に用いたGNBR のパラメーターは、中間素子数20、最大学習回数500
であり、その他のパラメーターはの標準設定を用いた。
【0089】
また、学習に用いたMATLAB Neural Network toolbox に含まれるGNBR 法のプログラムには、いくつかのパラメータを設定した。
【0090】
【表6】表6
【0091】
なお、MATLAB 用言語で記述された階層型人工ニューラルネットワークを学習されるプログラムを図7(train.m 基本的にはプログラムすべてを用いる)に示す。GNBR 法自体は、MATLAB Neural Network Toolbox に含まれるプログラムを呼び出すことで実現した。GNBR 法は、このプログラムをWindows 版MATLAB 環境上で実行させた。
【0092】
(6)SQP 法を用いた予測
次に、階層型人工ニューラルネットワークとSQP 法を用いて、実験結果でありそれの前処理済みの値y’(y は太字)を出力するx’(x は太字)を予測する。このアルゴリズムは次のように表される。
(i) 初期化
E*を計算機のdouble 型の最大値に設定する。
(ii) 繰り返し
(ア) ランダムな値をx(x は太字)の初期値とする。
(イ) 既学習の階層型人工ニューラルネットワークF(x;w*)(x、w は太字)を用いた下式の制約付き最小化問題の解x*(x は太字)をSQP 法で求める。
E=||y’-F(x;w*)||2 (y、x、w は太字)
xi の最小値≦xi≦xi の最大値
(ウ) このとき、E<E*であれば、x’=x*とする。
(エ) 一定回数繰り返したら、x’を最終的な解として終了する。そうでなければ、(ア)に戻り
さらに繰り返す。
【0093】
以上のアルゴリズムにより、求める解x’を得ることができる。このとき、上述の繰り返し回数は10 回とした。また、x(x は太字)のi 成分xi の最大値、最小値はそれぞれ、-1、1とした。
【0094】
なお、本実施例で用いた、MATLAB 用プログラムで書かれたSQP 法を用いた予測プログラムを図8及び図9(comp.m 基本的にはプログラムすべてを用いる)に示す。SQP 法自体は、MATLABOptimization Toolbox に含まれるプログラムを呼び出すことで実現した。また、本実施例では、SQP 法を用いた予測プログラムをWindows 版MATLAB 環境上で実行させた。なお、MATLABに用いた他のプログラムを図10ないし図16に示す。
【0095】
また、MATLAB Optimization Toolbox に含まれるSQP 法のプログラムには、いくつかのパラメータを設定した。
【0096】
【表7】表6
【0097】
上記の方法で得られた解を
【数9】
を用いて変換した値を、測定結果とした。その結果例を下記表7に示した。
【0098】
【表8】表7
上記のとおりに、3 種類のイオン濃度が小さな誤差範囲内で測定できることがわかる。
【0099】
【発明の効果】
本発明により、複数の物質の濃度変化に応じて吸光度等の出力が非線形に変化こと及び出力に複数の物質が寄与している点から、1つの出力に対応する濃度が種々存在することに起因して、従来の検量線を用いた方法では測定することが困難な場合であっても、複数の化学物質の濃度を同時に測定することができる、複数の化学物質の濃度の測定方法が提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で作成した、Zn6Cd6Cu6の三次元蛍光スペクトルを示す図である。
【図2】本発明の実施例で作成した、イオノフォアの混合溶液のアセトニトリル中での吸収スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の方法における前処理の説明に用いたベクトルの例を示す図である。
【図4】本発明の方法における前処理の説明に用いた行列の例を示す図である。
【図5】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図6】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図7】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図8】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図9】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図10】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図11】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図12】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図13】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図14】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図15】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
【図16】本発明の実施例に用いたプログラムのソースコードを示す図である。
Claims (17)
- 測定すべき複数の化学物質濃度に対応した出力が測定可能な系において、(1)既知濃度の前記複数の化学物質に対応する出力を、複数の濃度においてそれぞれ測定する工程と、(2)その結果を階層型ニューラルネットワークに学習させる工程と、(3)被検試料について出力を測定する工程と、(4)得られた測定値と前記学習済ニューラルネットワークにより与えられる値との差を最小とする工程とを含む、複数の化学物質濃度の測定方法。
- 前記工程(2)は、GNBP法により行われる請求項1記載の方法。
- 前記工程(4)は、得られた測定値と前記学習済ニューラルネットワークにより与えられる値との差の2乗が最小となる値を逐次2次計画法により求めることにより行う請求項1又は2記載の方法。
- 前記工程(2)及び工程(4)の前に、正規化を含む前処理工程をそれぞれ含む請求項1記載の方法。
- 前記前処理工程が、正規化の前に主成分分析をさらに含む請求項4記載の方法。
- 前記化学物質がイオンである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記イオンが金属イオンである請求項6記載の方法。
- 前記工程(1)及び工程(3)は、測定すべき複数のイオンの少なくともいずれかをトラップし得るトラッピング構造部分と、該トラッピング構造部分に結合され、イオンが該トラッピング構造部分にトラップされることによりシグナルを出力する出力構造部分とを少なくとも含む複数のイオノフォアを、既知濃度の測定すべき複数のイオンと接触させ、出力を測定することにより行われる請求項6又は7記載の方法。
- 前記出力構造部分が、吸光性原子団又は蛍光性原子団である請求項8記載の方法。
- 前記トラッピング構造部分が、イオンを包接するヘテロ分子構造を有する請求項8又は9記載の方法。
- 前記トラッピング構造部分が環状構造を有する請求項8又は9記載の方法。
- 前記環状構造がクラウンエーテル又はヘテロクラウンエーテルである請求項11記載の方法。
- 前記クラウンエーテル又はヘテロクラウンエーテルが12員環ないし18員環である請求項12記載の方法。
- 各イオノフォア中のクラウンエーテル又はヘテロクラウンエーテルのサイズが異なっている請求項12又は13記載の方法。
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