JP2004195381A - 液体分離装置及び液体分離膜モジュールの運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】使用中の膜モジュールの完全性試験を行うために障害となっていた、膜の細孔内部に滞留した空気を短時間で確実に除去し、正確な完全性試験を効率的に実施することができる装置および方法を提供する。
【解決手段】液体分離膜を配した液体分離膜モジュールで液体中の不純物を除去する運転中もしくは運転の合間に、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給し、液体分離膜モジュール内の気体をその気体吸水性の液体に溶解させ後、液体分離膜の完全性試験を行う。
【選択図】図1
【解決手段】液体分離膜を配した液体分離膜モジュールで液体中の不純物を除去する運転中もしくは運転の合間に、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給し、液体分離膜モジュール内の気体をその気体吸水性の液体に溶解させ後、液体分離膜の完全性試験を行う。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体分離膜モジュールを用いた液体分離装置およびその運転方法に関する。さらに詳しくは、特に、水中の懸濁物や細菌類を除去する水処理用として好適な微多孔性液体分離膜を配した液体分離膜モジュールを用いた液体分離装置およびその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体分離膜は、化学工業,食品工業,電子工業などの進歩とともに、液体中の懸濁物質,微粒子,細菌の除去に応用されてきた。これらに使用される液体分離膜としても、繊維織物,不織布,焼結体、さらに、これらに珪藻土などをプレコートしたフィルターから始まり、様々な高分子を中心素材とし、細孔の大きさが0.1〜1μm程度の精密濾過膜(micro-filter)や1〜100nm程度の細孔を有する限外濾過膜(ultra-filter)が開発され、多岐にわたって活用されている。特に浄水処理においては、1991年度に厚生省の指導の元で開始された「膜利用型新浄水システムの開発研究(MAC21)」以来、これまで行われてきた凝集・沈殿+砂濾過を主としたプロセスに代わり得る新たな水処理プロセスとして数千m3/日規模の膜利用浄水場が稼働するに至っている。しかしながら、液体分離膜を用いたプロセスは、砂濾過に比べて早く確実に対象物質を除去することができるという利点を有しているが、膜厚の薄さ故に、膜の損傷によって処理水質が著しく低下する危険性を有している。
【0003】
そのため、通常製膜直後には製品検査のために「完全性試験」が行われる。完全性試験の代表的な方法の一つとして「バブルポイント法」という方法があげられる。この方法は、もともと、孔径評価を目的に開発された方法であるが、その方法の簡便さから、現在、精密濾過膜や限外濾過膜の完全性試験で多く用いられ、JIS K3832「精密濾過膜エレメントおよびモジュールのバブルポイント試験方法」にその方法が規定されている。この方法は、膜の細孔内に液体(通常は水)を充填し、その膜面を気体で徐々に加圧していき、細孔内から水が押し出され、空気が流れ始めるときの圧力(バブルポイント)を測定するものである。もし、膜に損傷や大きな孔があいていたりすると、期待値よりもきわめて低い圧力において空気が透過し始め、膜に欠陥があることを検知することができる。また、バブルポイント法と同様の原理で行う完全性試験として、欠陥によって生じる空気の流れを測定する「流量法」や膜モジュール内の膜の片側に予想されるバブルポイントよりも低い圧力をかけた状態で圧力の低下がないかを検知する「圧力法」も適用される。
【0004】
ところで、膜モジュールの完全性はこれまで製品検査の手段として適用されてきたが、膜の損傷は、膜の使用中にかかる機械的・化学的なストレスによる劣化が原因で生じる場合もある。特に、中空糸膜の場合は、膜自体が揺動しやすく、中空糸膜外側の流れやエアーバブリング洗浄などによって損傷する可能性があり、また、河川水など膜が汚れやすい原水を処理する場合、原水の水質や膜面への汚れの付着を抑えるために洗浄頻度が高いこともあって、特に生じやすい。そのため、運転中のわずかな欠陥が人体に害を及ぼす菌体などの侵入を許してしまうことになる飲料水製造用途の場合など、運転中や運転の合間にも完全性試験を実施して膜に損傷がないことを確認する必要性がある。
【0005】
しかしながら、完全性試験は、膜細孔内部が水で充満されていなければ実施することができない。すなわち、膜細孔内部が水で充満されているのであれば、膜に損傷や大きな孔があいていた場合に期待値よりもきわめて低い圧力において空気が透過し始めるので、膜に欠陥があることを検知することができるが、細孔内に水で満たされていない部分が存在すると、その部分から低い圧力でも空気が透過してしまうので、バブルポイントが低くなり、膜に欠陥があるかのような結果となってしまうため、正確な完全性試験ができない。
【0006】
一方、運転中や運転の合間の膜モジュールには、膜処理に供する一般的な原水に気泡が伴っていることが多いため、また、ろ過によって蓄積した濁質などを定期的に取り除く洗浄水の抜水のために、細孔内部に気泡が蓄積し、膜の乾燥といった事態を招くことがある。この現象は、膜の細孔径が大きい場合、また、膜素材が疎水性である場合に、特に起こりやすい。すなわち、膜の細孔径が大きいと、その細孔内における表面張力が小さく水の保持性が低いので、一旦細孔内部に取り込まれた水も外部に出やすく、空気が入ってしまう。また、膜素材が疎水性の場合にも、原水に伴って膜モジュール内に流入する空気が細孔内部に侵入して滞留し易く、さらに、モジュール内部の液を排水した場合は、たとえ短時間であっても細孔内部の水が抜けて空気が入る。そのため、濾過中の膜モジュールについて膜の完全性試験を行っても、空気の漏れを測定することになり、たとえ膜に欠陥がなくても、あたかも欠陥膜であるかのような結果になってしまい、正確な判定ができないことがある。
【0007】
膜素材がたとえ疎水性であったとしても、製膜直後に完全性試験を行うのであれば、親水性であるグリセリンやポリビニルアルコールなどを予め膜表面に塗布して水を導入しやすくしておくことができるが(特許文献1)、濾過中に運転を一度中断して完全性試験を行うには、グリセリンやポリビニルアルコールが既に洗い流されているので、効果を奏しない。また、運転中にこれらの親水性薬剤を流した上で完全性試験を行うことも不可能ではないが、膜を直接親水化させるための薬剤は粘度が高かったり膜を膨潤させたりするため、一旦乾燥してしまった細孔内の空気を追い出して再度水を充満させることは容易でない。さらに、そのあと、親水性薬剤を洗い流さなければならない点も、廃液・手間・コストの面からも実用的ではない。
【0008】
また、膜素材が疎水性である場合に、モジュールを使用する直前に溶存空気濃度が溶存空気濃度の80%以下にまで脱気された水に浸漬し多孔質膜を親水化することも提案されているが(特許文献2)、モジュールの使用直前に膜の親水化処理を施していても、結局原水に含まれる気泡によって、また、ろ過によって蓄積した濁質などを定期的に取り除く洗浄水の抜水などによって、膜の細孔内部に気泡が蓄積し、膜が乾燥することがある。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−277466号公報(特許請求の範囲他)
【0010】
【特許文献2】
特開平05−208121号公報(特許請求の範囲他)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、使用中の膜モジュールの完全性試験を行うために障害となっていた、膜の細孔内部に滞留した空気を短時間で確実に除去し、正確な完全性試験を効率的に実施することができる装置および方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、液体中の不純物を除去する液体分離膜を配した液体分離膜モジュールを備えた液体分離装置であって、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給する気体吸水性液体供給手段と、液体分離膜の完全性試験を行う圧力計とを具備した液体分離装置を特徴とするものである。
【0013】
ここで、気体吸収性液体供給手段が気体吸水性液体製造装置を具備していることが好ましい。そして、液体分離膜モジュールの原液を気体吸収性の液体とする気体吸水性液体製造装置を具備していること、また、液体分離膜モジュールに逆洗水を供給する逆洗水供給手段と、逆洗水を気体吸水性の液体とする気体吸水性液体製造装置とを具備していることが好ましい。また、液体分離膜が中空糸膜であることや、液体分離膜のバブルポイントが50kPa以上1MPa以下の範囲内にあること、さらには、液体分離膜の空気に対する水の表面接触角が40度以上であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、液体分離膜を配した液体分離膜モジュールで液体中の不純物を除去する運転中もしくは運転の合間に、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給し、液体分離膜モジュール内の気体をその気体吸水性の液体に溶解させる液体分離膜モジュールの運転方法を特徴とするものである。
【0015】
このとき、気体吸収性の液体の少なくとも一部を原液側から透過液側へもしくは透過液側から原液側へと流すことが好ましい。そして、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給することで、液体分離膜モジュール内の気体をその気体吸水性の液体に溶解させるとともに、液体分離膜を洗浄すること、また、運転を中断し、液体分離膜モジュールに気体を供給して液体分離膜を気泡で洗浄した後、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給することが好ましい。さらに、液体分離膜モジュール内の気体を気体吸水性の液体に溶解させた後、液体分離膜の完全性試験を行うことも好ましい。
【0016】
そして、上述のいずれかの装置もしくは方法を用いる造水方法も好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の液体分離装置の構成とその運転方法について詳細に説明する。
【0018】
図1に、本発明に係る液体分離装置のフローの一実施態様を示す。本発明の液体分離装置は、たとえば、原水(原液)を液体分離膜モジュール1と、その液体分離膜モジュール1の上流側に配置された原水ポンプ3と、脱気水等の気体吸水性の液体を製造して液体分離膜モジュール1に供給するための脱気膜14および真空ポンプ13(気体吸水性液体製造装置)と、液体分離膜の完全性試験を行うための圧力計16とを備えている。
【0019】
液体分離膜モジュール1は、原水ライン4を介して原水ポンプ3に接続され、透過水(透過液)側で気体吸水性液体供給ライン11を介して脱気膜14および真空ポンプ13に接続されている。液体分離膜の完全性試験を行うための圧力計16は、原水(原液)側、透過水側のいずれに設けられていてもよいが、圧量計16とは反対の側には、エアの漏れを検知するための手段(たとえば気体流量計17)が設けられている。また、原水ポンプ3よりも上流側には原水ライン4を介して原水タンク2が接続され、液体分離膜モジュール1よりも下流側には、透過水ライン5を介して透過水タンク10が接続される。さらに、液体分離膜モジュール1の原水(原液)側には、空気の気泡により膜面をスクラビンするための気体供給ライン6、液体分離膜モジュール1を逆洗するための逆洗ライン7およびその逆洗水を排出するための排水ライン9を設けている。また、液体分離膜モジュール1の透過水側には、液体分離膜モジュール1に供給された気体吸水性液体の排水ライン9を設けている。
【0020】
ここで、液体分離膜モジュール1は限外濾過膜、精密濾過膜等の分離膜を具備しており、その分離膜の素材や形態、さらにはモジュールとしての形態は特に限定されるものではないが、細孔径が大きかったり疎水性が大きく気泡を滞留させやすい膜においては本発明の効果が顕著である。具体的には、細孔径の大きさとして、JIS K3832「精密濾過膜エレメントおよびモジュールのバブルポイント試験方法」の測定方法における液体分離膜のバブルポイントが50kPa以上1MPa以下である場合である。また、膜の素材としては、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリ3フッ化エチレン、ポリ6フッ化プロピレンなどが例示されるが、特に好ましくは、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、ポリプロピレンなどの疎水性の高い素材からなる膜である場合に本発明の効果が顕著に表れる。また、膜構造は、非対称膜、複合膜などいずれもの構造でもよく、膜、モジュールの形状としては、中空糸膜、管状膜,平膜などがあるが、構造が複雑で気泡の滞留が生じやすく、さらに透過水側に透過水や清浄な水を流すことができるという観点から、中空糸膜や平膜を用いたスパイラル型、とくに中空糸膜を用いたモジュールへの適用が好ましい。
【0021】
なお、本発明における疎水性とは、次の方法を用い25℃の水中における直径1mmの空気泡の接触角を測定した場合に40°以上であるものをいう。すなわち、疎水性の判断方法としては、平滑な表面における空気に対する水の表面接触角が一般的であるが、表面に凹凸と細孔が存在する多孔性膜の接触角の測定方法としては、captive air bubble法(W. Zhang and B. Hallstrom; “Membrane characterization using the contact angle technique. I. Methodology of captive bubble technique” Desalination, 79 (1990) 1-12)によって膜の細孔の影響を取り除き、さらに膜表面の凹凸の影響を補正する方法(M. Taniguchi, J Pieracci, G. Belfort, Effect of Undulations on Surface Energy: A Quantitative Assessment, Langmuir 17 (2001) 4312-4315.)が適している。特に表面処理されており、膜の基本素材に対して疎水性が変化している場合は、この方法で直接測定することが必要である。
【0022】
また、本実施態様においては、気体吸水性液体製造装置として脱気膜14および真空ポンプ13を備えている。脱気膜14としては、上述の疎水性の高い素材からなる膜などを用いることもできるが、長期にわたって使用することを考えれば、ポリオルガノシロキサン、架橋型ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノシロキサン/ポリカーボネート共重合体、ポリオルガノシロキサン/ポリフェニレン共重合体、ポリオルガノシロキサン/ポリスチレン共重合体、ポリトリメチルシリルプロピン、ポリ4メチルペンテンなどからなる膜を用いることが好ましい。この中でも、機械的強度が高く、酸素透過係数が大きいという点で、架橋型ポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
【0023】
なお、膜式脱気以外に、真空脱気、超音波脱気、加熱脱気などで気体吸水性液体を製造するものであってもよいが、膜式脱気法を利用したものであれば、脱気面積が大きく、小型で効率的に脱気が可能なものとなる。また、本発明においては、気体吸水性液体製造装置を設けず、既に容易された気体吸水性液体を図2に示すように気体吸水性液体タンク12に貯留し、必要に応じてポンプで液体分離膜モジュール1に供給するようにしてもよい。
【0024】
さらに、図1に示す態様で、気体吸水性液体製造装置を液体分離膜モジュール1の透過側に配置しているが、図3に示すように、気体吸水性液体製造装置としての脱気膜14および真空ポンプ13を原水ライン4中に設置し、必要に応じて脱気処理を施した原水を分離膜モジュール1に供給することも、また、図4に示すように、気体吸水性液体製造装置としての脱気膜14および真空ポンプ13を逆洗水供給ライン7中に設置し、逆洗水を脱気して、脱気水によって逆洗を行うことも可能である。
【0025】
なお、図2〜図4において、図1と同一である部分については説明を省略する。
【0026】
次に、上述の液体分離装置の運転方法を図1に基づいて説明する。
【0027】
原水タンク2に貯留された原水は、原水ポンプ3によって液体分離膜モジュール1に供給され、分離膜を通過することで原水中の濁質が濾過される。分離膜を通過した水は、透過水として透過水ライン5から取り出される。一方、分離膜によって濾過された濁質は原水側に蓄積されるので、原水側にエア供給ライン6から空気を供給し、空気の気泡により膜面をスクラビング(エアスクラビング)したり、逆洗ライン7により透過水側から原水側へと透過水(逆洗水)を供給して液体分離膜モジュール1を洗浄する。
【0028】
そして、このような運転を続ける中で、定期的に、液体分離膜モジュール1に気体吸水性液体を導入して液体分離膜の完全性の試験を行う。すなわち、脱気膜14および真空ポンプ13で脱気水などの気体吸水性液体を製造し、その気体吸水性液体を供給ライン11を介して液体分離膜モジュール1の透過水側に供給し、モジュール内部をその気体吸水性液体で充満する。その状態を一定時保持した後、排水ライン9から気体吸水性液体を系外に排出する。このようにして、膜の細孔内部に滞留した空気を短時間で確実に気体吸水性液体に溶解させて除去できるので、完全性試験を効率的かつ正確に実施することが可能になる。このとき、空気をさらに効率的に気体吸水性液体に溶解させるために、気体吸水性液体を一定速度以上で流動させることが好ましい。気体吸水性液体が液体分離膜モジュール1内で滞留している場合には、水中の空気の拡散速度が遅いために膜表面で空気が飽和濃度に達し易く、細孔内の空気を確実に除去するためには時間がかかるようになる。
【0029】
液体分離膜モジュール1内の気体を気体吸水性の液体に溶解させた後に行う液体分離膜の完全性試験は、圧力計16と気体流量計17とを用いて行う。すなわち、前述の工程により液体分離膜モジュール1内、すなわち、膜の細孔内には液体(たとえば水)が充満されているので、その状態で、膜面を気体で徐々に加圧していき、細孔内から水が押し出され、気体流量計17によって空気が流れ始めるときの圧力(バブルポイント)を圧力計16で測定しする「圧力法」で調べる。また、「圧力法」に代わり、圧力計16で一定圧力に保たれていることを確認しながら気体流量計17の指示値が規定値を超えていないかどうかを調べる「流量法」によって実施することもできる。この際、図1に例示されるように液体分離膜モジュール1の原水側に気体を導入して、透過水側で気体の透過を気体流量計17によって測定しても良いし、逆に透過水側から気体を供給して、原水側で気体の透過を気体流量計17によって測定しても良い。
【0030】
なお、気体吸収性液体を液体分離膜モジュールに導入する方法は特に限定されるものではないが、濾過運転を止めた上で導入したり、濾過運転工程中に導入するようにしてもよい。また、気体吸収性液体は、原水側に導入しても透過水側に導入しても効果を得ることはできるが、膜細孔内に効率的に気体吸収性液体を導入させるためには、原水側から透過側もしくは透過側から原水側へと気体吸水性液体を流すことが好ましい。特に、液体分離膜モジュールの逆洗を行う場合に、例えば、図3に示すように逆洗水として脱気水を用いると、逆洗と滞留気体の吸収除去が同時に行えるうえに、界面張力を下げることができ、本発明の効果が大きくなるのでさらに好ましい。
【0031】
さらに、気体吸収性液体を液体分離膜モジュールに導入する時期・頻度・時間についても特に限定されるものではないが、少なくとも完全性試験を行う直前に実施する必要があり、また、気体がたまった部分ではろ過が乾燥し、ろ過に寄与する膜の面積が次第に減少するので、濾過水量が減少する。したがって、その影響を無視出来る程度の時期、頻度、時間で実施することが好ましい。
【0032】
そして、液体分離膜の洗浄をエアスクラビングによって行う場合は、空気が膜の細孔内に滞留しやすくなるため、エアスクラビング後に気体吸水性液体をモジュールに導入するのが好ましい。さらに、エアスクラビングと逆洗とを併用する場合は、エアスクラビングを実施した後に気体吸水性液体を用いて逆洗を行うと、非常に効率的である(図4)。
【0033】
気体吸収性の液体としては、本発明の目的にある、液体分離膜モジュール1中に蓄積される酸素等の気体を吸収するものであれば特に限定されるものではないが、脱気された水や水溶液、アルコールなどの溶媒や亜硫酸水素ナトリウム、クロラミンなどの酸素吸収剤(還元剤)を用いることができる。中でも、最も好適であるのは、脱気処理された水を用いる方法である。特に、浄水処理や廃水処理ように人体への影響や環境問題が懸念される場合、使用した酸素吸収剤などの薬剤の影響を考慮する必要があるが、脱気水を使用する場合はこの心配がない。さらに、脱気水を用いる場合は、気体の種類を問わず、膜の細孔内に滞留している気体を吸収・除去することができる。また、本発明の効果が大きくなるように、予め液体分離膜等で不純物を除去した清水を気体吸水性液体とするのも好ましい。不純物が少ないため、界面張力が小さくなり、本発明の効果が大きくなる。
【0034】
【実施例】
<実施例1>
図4に示す装置を用い、外圧式全ろ過法で透過流束0.5m/dとして、琵琶湖水(濁度計で毎日1回測定した平均濁度=5)を1週間一定流量で処理した。液体分離膜モジュール1としては、ポリフッ化ビニリデン中空糸膜(製造直後のバブルポイント0.15MPa、中空糸内径0.9mm、外径1.5mm、接触角63°)を1800本装填したもの(外径114mm、全長1.1m、有効膜面積7m2)1本を用いた。また、原水側のエアースクラビングは15分毎に実施した。
【0035】
その後、運転を停止してから、疎水性ポリフッ化ビニリデン中空糸膜を用いた脱気膜モジュール14(中空糸膜内径0.18mm、外径0.22mm、本数65000本、全長550mm、外径100mm)を用いて脱気処理した透過水(溶存酸素濃度0.4ppm)を逆洗ライン8からモジュール内に毎分9リットル流入させ、透過水ライン6から透過水タンクに10分間環流させた。この直後、バブルポイントを測定したところ、0.14MPaであり、使用前の値とほぼ同じ、すなわち、膜に欠陥がないという結果であった。さらに、この液体分離膜モジュールにイソプロピルアルコール50%水溶液を充満させた後、水で置換し、再度バブルポイントを測定したところ、0.14MPaであり、使用前の値とほぼ同じであり、膜に欠陥がないことが確認された。
<比較例1>
脱気膜モジュール1に接続された真空ポンプによる脱気処理を行わない他は、実施例1と同様にして、同じ琵琶湖水を1週間一定流量で処理した。ろ過運転直後のイソプロピルアルコールを充満させる前のバブルポイントを測定した結果、0.06MPaで、使用前の値に比べて遙かに小さく、膜に欠陥があるかのような結果になった。しかしながら、イソプロピルアルコール処理した後のバブルポイントを測定した結果、0.16MPaで、使用前とほぼ同じ値であり、膜に欠陥がないことが確認された。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、ろ過運転中もしくは運転の合間に液体分離膜モジュールの完全性試験を実施するにあたり障害となっていた、運転中に膜細孔内に保持された空気を短時間で確実に除去することが可能となり、その結果、完全性試験を正確に行うことができ、膜の損傷トラブルに対して迅速に対応、信頼性の高い液体分離膜モジュールの管理が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液体分離装置の一実施態様である。
【図2】本発明に係る液体分離装置の一実施態様である。
【図3】本発明に係る液体分離装置の一実施態様である。
【図4】本発明に係る液体分離装置の一実施態様である。
【符号の説明】
1:液体分離膜モジュール
2:原水タンク
3:原水ポンプ
4:原水ライン
5:透過水ライン
6:気体供給ライン
7:逆洗水供給ライン
8:排水ライン
9:排水ライン
10:透過水タンク
11:気体吸収性液体供給ライン
12:気体吸収性液体タンク
13:真空ポンプ
14:脱気膜
15:気体透過ライン
16:圧力計
17:気体流量計
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体分離膜モジュールを用いた液体分離装置およびその運転方法に関する。さらに詳しくは、特に、水中の懸濁物や細菌類を除去する水処理用として好適な微多孔性液体分離膜を配した液体分離膜モジュールを用いた液体分離装置およびその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体分離膜は、化学工業,食品工業,電子工業などの進歩とともに、液体中の懸濁物質,微粒子,細菌の除去に応用されてきた。これらに使用される液体分離膜としても、繊維織物,不織布,焼結体、さらに、これらに珪藻土などをプレコートしたフィルターから始まり、様々な高分子を中心素材とし、細孔の大きさが0.1〜1μm程度の精密濾過膜(micro-filter)や1〜100nm程度の細孔を有する限外濾過膜(ultra-filter)が開発され、多岐にわたって活用されている。特に浄水処理においては、1991年度に厚生省の指導の元で開始された「膜利用型新浄水システムの開発研究(MAC21)」以来、これまで行われてきた凝集・沈殿+砂濾過を主としたプロセスに代わり得る新たな水処理プロセスとして数千m3/日規模の膜利用浄水場が稼働するに至っている。しかしながら、液体分離膜を用いたプロセスは、砂濾過に比べて早く確実に対象物質を除去することができるという利点を有しているが、膜厚の薄さ故に、膜の損傷によって処理水質が著しく低下する危険性を有している。
【0003】
そのため、通常製膜直後には製品検査のために「完全性試験」が行われる。完全性試験の代表的な方法の一つとして「バブルポイント法」という方法があげられる。この方法は、もともと、孔径評価を目的に開発された方法であるが、その方法の簡便さから、現在、精密濾過膜や限外濾過膜の完全性試験で多く用いられ、JIS K3832「精密濾過膜エレメントおよびモジュールのバブルポイント試験方法」にその方法が規定されている。この方法は、膜の細孔内に液体(通常は水)を充填し、その膜面を気体で徐々に加圧していき、細孔内から水が押し出され、空気が流れ始めるときの圧力(バブルポイント)を測定するものである。もし、膜に損傷や大きな孔があいていたりすると、期待値よりもきわめて低い圧力において空気が透過し始め、膜に欠陥があることを検知することができる。また、バブルポイント法と同様の原理で行う完全性試験として、欠陥によって生じる空気の流れを測定する「流量法」や膜モジュール内の膜の片側に予想されるバブルポイントよりも低い圧力をかけた状態で圧力の低下がないかを検知する「圧力法」も適用される。
【0004】
ところで、膜モジュールの完全性はこれまで製品検査の手段として適用されてきたが、膜の損傷は、膜の使用中にかかる機械的・化学的なストレスによる劣化が原因で生じる場合もある。特に、中空糸膜の場合は、膜自体が揺動しやすく、中空糸膜外側の流れやエアーバブリング洗浄などによって損傷する可能性があり、また、河川水など膜が汚れやすい原水を処理する場合、原水の水質や膜面への汚れの付着を抑えるために洗浄頻度が高いこともあって、特に生じやすい。そのため、運転中のわずかな欠陥が人体に害を及ぼす菌体などの侵入を許してしまうことになる飲料水製造用途の場合など、運転中や運転の合間にも完全性試験を実施して膜に損傷がないことを確認する必要性がある。
【0005】
しかしながら、完全性試験は、膜細孔内部が水で充満されていなければ実施することができない。すなわち、膜細孔内部が水で充満されているのであれば、膜に損傷や大きな孔があいていた場合に期待値よりもきわめて低い圧力において空気が透過し始めるので、膜に欠陥があることを検知することができるが、細孔内に水で満たされていない部分が存在すると、その部分から低い圧力でも空気が透過してしまうので、バブルポイントが低くなり、膜に欠陥があるかのような結果となってしまうため、正確な完全性試験ができない。
【0006】
一方、運転中や運転の合間の膜モジュールには、膜処理に供する一般的な原水に気泡が伴っていることが多いため、また、ろ過によって蓄積した濁質などを定期的に取り除く洗浄水の抜水のために、細孔内部に気泡が蓄積し、膜の乾燥といった事態を招くことがある。この現象は、膜の細孔径が大きい場合、また、膜素材が疎水性である場合に、特に起こりやすい。すなわち、膜の細孔径が大きいと、その細孔内における表面張力が小さく水の保持性が低いので、一旦細孔内部に取り込まれた水も外部に出やすく、空気が入ってしまう。また、膜素材が疎水性の場合にも、原水に伴って膜モジュール内に流入する空気が細孔内部に侵入して滞留し易く、さらに、モジュール内部の液を排水した場合は、たとえ短時間であっても細孔内部の水が抜けて空気が入る。そのため、濾過中の膜モジュールについて膜の完全性試験を行っても、空気の漏れを測定することになり、たとえ膜に欠陥がなくても、あたかも欠陥膜であるかのような結果になってしまい、正確な判定ができないことがある。
【0007】
膜素材がたとえ疎水性であったとしても、製膜直後に完全性試験を行うのであれば、親水性であるグリセリンやポリビニルアルコールなどを予め膜表面に塗布して水を導入しやすくしておくことができるが(特許文献1)、濾過中に運転を一度中断して完全性試験を行うには、グリセリンやポリビニルアルコールが既に洗い流されているので、効果を奏しない。また、運転中にこれらの親水性薬剤を流した上で完全性試験を行うことも不可能ではないが、膜を直接親水化させるための薬剤は粘度が高かったり膜を膨潤させたりするため、一旦乾燥してしまった細孔内の空気を追い出して再度水を充満させることは容易でない。さらに、そのあと、親水性薬剤を洗い流さなければならない点も、廃液・手間・コストの面からも実用的ではない。
【0008】
また、膜素材が疎水性である場合に、モジュールを使用する直前に溶存空気濃度が溶存空気濃度の80%以下にまで脱気された水に浸漬し多孔質膜を親水化することも提案されているが(特許文献2)、モジュールの使用直前に膜の親水化処理を施していても、結局原水に含まれる気泡によって、また、ろ過によって蓄積した濁質などを定期的に取り除く洗浄水の抜水などによって、膜の細孔内部に気泡が蓄積し、膜が乾燥することがある。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−277466号公報(特許請求の範囲他)
【0010】
【特許文献2】
特開平05−208121号公報(特許請求の範囲他)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、使用中の膜モジュールの完全性試験を行うために障害となっていた、膜の細孔内部に滞留した空気を短時間で確実に除去し、正確な完全性試験を効率的に実施することができる装置および方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、液体中の不純物を除去する液体分離膜を配した液体分離膜モジュールを備えた液体分離装置であって、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給する気体吸水性液体供給手段と、液体分離膜の完全性試験を行う圧力計とを具備した液体分離装置を特徴とするものである。
【0013】
ここで、気体吸収性液体供給手段が気体吸水性液体製造装置を具備していることが好ましい。そして、液体分離膜モジュールの原液を気体吸収性の液体とする気体吸水性液体製造装置を具備していること、また、液体分離膜モジュールに逆洗水を供給する逆洗水供給手段と、逆洗水を気体吸水性の液体とする気体吸水性液体製造装置とを具備していることが好ましい。また、液体分離膜が中空糸膜であることや、液体分離膜のバブルポイントが50kPa以上1MPa以下の範囲内にあること、さらには、液体分離膜の空気に対する水の表面接触角が40度以上であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、液体分離膜を配した液体分離膜モジュールで液体中の不純物を除去する運転中もしくは運転の合間に、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給し、液体分離膜モジュール内の気体をその気体吸水性の液体に溶解させる液体分離膜モジュールの運転方法を特徴とするものである。
【0015】
このとき、気体吸収性の液体の少なくとも一部を原液側から透過液側へもしくは透過液側から原液側へと流すことが好ましい。そして、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給することで、液体分離膜モジュール内の気体をその気体吸水性の液体に溶解させるとともに、液体分離膜を洗浄すること、また、運転を中断し、液体分離膜モジュールに気体を供給して液体分離膜を気泡で洗浄した後、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給することが好ましい。さらに、液体分離膜モジュール内の気体を気体吸水性の液体に溶解させた後、液体分離膜の完全性試験を行うことも好ましい。
【0016】
そして、上述のいずれかの装置もしくは方法を用いる造水方法も好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の液体分離装置の構成とその運転方法について詳細に説明する。
【0018】
図1に、本発明に係る液体分離装置のフローの一実施態様を示す。本発明の液体分離装置は、たとえば、原水(原液)を液体分離膜モジュール1と、その液体分離膜モジュール1の上流側に配置された原水ポンプ3と、脱気水等の気体吸水性の液体を製造して液体分離膜モジュール1に供給するための脱気膜14および真空ポンプ13(気体吸水性液体製造装置)と、液体分離膜の完全性試験を行うための圧力計16とを備えている。
【0019】
液体分離膜モジュール1は、原水ライン4を介して原水ポンプ3に接続され、透過水(透過液)側で気体吸水性液体供給ライン11を介して脱気膜14および真空ポンプ13に接続されている。液体分離膜の完全性試験を行うための圧力計16は、原水(原液)側、透過水側のいずれに設けられていてもよいが、圧量計16とは反対の側には、エアの漏れを検知するための手段(たとえば気体流量計17)が設けられている。また、原水ポンプ3よりも上流側には原水ライン4を介して原水タンク2が接続され、液体分離膜モジュール1よりも下流側には、透過水ライン5を介して透過水タンク10が接続される。さらに、液体分離膜モジュール1の原水(原液)側には、空気の気泡により膜面をスクラビンするための気体供給ライン6、液体分離膜モジュール1を逆洗するための逆洗ライン7およびその逆洗水を排出するための排水ライン9を設けている。また、液体分離膜モジュール1の透過水側には、液体分離膜モジュール1に供給された気体吸水性液体の排水ライン9を設けている。
【0020】
ここで、液体分離膜モジュール1は限外濾過膜、精密濾過膜等の分離膜を具備しており、その分離膜の素材や形態、さらにはモジュールとしての形態は特に限定されるものではないが、細孔径が大きかったり疎水性が大きく気泡を滞留させやすい膜においては本発明の効果が顕著である。具体的には、細孔径の大きさとして、JIS K3832「精密濾過膜エレメントおよびモジュールのバブルポイント試験方法」の測定方法における液体分離膜のバブルポイントが50kPa以上1MPa以下である場合である。また、膜の素材としては、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリ3フッ化エチレン、ポリ6フッ化プロピレンなどが例示されるが、特に好ましくは、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、ポリプロピレンなどの疎水性の高い素材からなる膜である場合に本発明の効果が顕著に表れる。また、膜構造は、非対称膜、複合膜などいずれもの構造でもよく、膜、モジュールの形状としては、中空糸膜、管状膜,平膜などがあるが、構造が複雑で気泡の滞留が生じやすく、さらに透過水側に透過水や清浄な水を流すことができるという観点から、中空糸膜や平膜を用いたスパイラル型、とくに中空糸膜を用いたモジュールへの適用が好ましい。
【0021】
なお、本発明における疎水性とは、次の方法を用い25℃の水中における直径1mmの空気泡の接触角を測定した場合に40°以上であるものをいう。すなわち、疎水性の判断方法としては、平滑な表面における空気に対する水の表面接触角が一般的であるが、表面に凹凸と細孔が存在する多孔性膜の接触角の測定方法としては、captive air bubble法(W. Zhang and B. Hallstrom; “Membrane characterization using the contact angle technique. I. Methodology of captive bubble technique” Desalination, 79 (1990) 1-12)によって膜の細孔の影響を取り除き、さらに膜表面の凹凸の影響を補正する方法(M. Taniguchi, J Pieracci, G. Belfort, Effect of Undulations on Surface Energy: A Quantitative Assessment, Langmuir 17 (2001) 4312-4315.)が適している。特に表面処理されており、膜の基本素材に対して疎水性が変化している場合は、この方法で直接測定することが必要である。
【0022】
また、本実施態様においては、気体吸水性液体製造装置として脱気膜14および真空ポンプ13を備えている。脱気膜14としては、上述の疎水性の高い素材からなる膜などを用いることもできるが、長期にわたって使用することを考えれば、ポリオルガノシロキサン、架橋型ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノシロキサン/ポリカーボネート共重合体、ポリオルガノシロキサン/ポリフェニレン共重合体、ポリオルガノシロキサン/ポリスチレン共重合体、ポリトリメチルシリルプロピン、ポリ4メチルペンテンなどからなる膜を用いることが好ましい。この中でも、機械的強度が高く、酸素透過係数が大きいという点で、架橋型ポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
【0023】
なお、膜式脱気以外に、真空脱気、超音波脱気、加熱脱気などで気体吸水性液体を製造するものであってもよいが、膜式脱気法を利用したものであれば、脱気面積が大きく、小型で効率的に脱気が可能なものとなる。また、本発明においては、気体吸水性液体製造装置を設けず、既に容易された気体吸水性液体を図2に示すように気体吸水性液体タンク12に貯留し、必要に応じてポンプで液体分離膜モジュール1に供給するようにしてもよい。
【0024】
さらに、図1に示す態様で、気体吸水性液体製造装置を液体分離膜モジュール1の透過側に配置しているが、図3に示すように、気体吸水性液体製造装置としての脱気膜14および真空ポンプ13を原水ライン4中に設置し、必要に応じて脱気処理を施した原水を分離膜モジュール1に供給することも、また、図4に示すように、気体吸水性液体製造装置としての脱気膜14および真空ポンプ13を逆洗水供給ライン7中に設置し、逆洗水を脱気して、脱気水によって逆洗を行うことも可能である。
【0025】
なお、図2〜図4において、図1と同一である部分については説明を省略する。
【0026】
次に、上述の液体分離装置の運転方法を図1に基づいて説明する。
【0027】
原水タンク2に貯留された原水は、原水ポンプ3によって液体分離膜モジュール1に供給され、分離膜を通過することで原水中の濁質が濾過される。分離膜を通過した水は、透過水として透過水ライン5から取り出される。一方、分離膜によって濾過された濁質は原水側に蓄積されるので、原水側にエア供給ライン6から空気を供給し、空気の気泡により膜面をスクラビング(エアスクラビング)したり、逆洗ライン7により透過水側から原水側へと透過水(逆洗水)を供給して液体分離膜モジュール1を洗浄する。
【0028】
そして、このような運転を続ける中で、定期的に、液体分離膜モジュール1に気体吸水性液体を導入して液体分離膜の完全性の試験を行う。すなわち、脱気膜14および真空ポンプ13で脱気水などの気体吸水性液体を製造し、その気体吸水性液体を供給ライン11を介して液体分離膜モジュール1の透過水側に供給し、モジュール内部をその気体吸水性液体で充満する。その状態を一定時保持した後、排水ライン9から気体吸水性液体を系外に排出する。このようにして、膜の細孔内部に滞留した空気を短時間で確実に気体吸水性液体に溶解させて除去できるので、完全性試験を効率的かつ正確に実施することが可能になる。このとき、空気をさらに効率的に気体吸水性液体に溶解させるために、気体吸水性液体を一定速度以上で流動させることが好ましい。気体吸水性液体が液体分離膜モジュール1内で滞留している場合には、水中の空気の拡散速度が遅いために膜表面で空気が飽和濃度に達し易く、細孔内の空気を確実に除去するためには時間がかかるようになる。
【0029】
液体分離膜モジュール1内の気体を気体吸水性の液体に溶解させた後に行う液体分離膜の完全性試験は、圧力計16と気体流量計17とを用いて行う。すなわち、前述の工程により液体分離膜モジュール1内、すなわち、膜の細孔内には液体(たとえば水)が充満されているので、その状態で、膜面を気体で徐々に加圧していき、細孔内から水が押し出され、気体流量計17によって空気が流れ始めるときの圧力(バブルポイント)を圧力計16で測定しする「圧力法」で調べる。また、「圧力法」に代わり、圧力計16で一定圧力に保たれていることを確認しながら気体流量計17の指示値が規定値を超えていないかどうかを調べる「流量法」によって実施することもできる。この際、図1に例示されるように液体分離膜モジュール1の原水側に気体を導入して、透過水側で気体の透過を気体流量計17によって測定しても良いし、逆に透過水側から気体を供給して、原水側で気体の透過を気体流量計17によって測定しても良い。
【0030】
なお、気体吸収性液体を液体分離膜モジュールに導入する方法は特に限定されるものではないが、濾過運転を止めた上で導入したり、濾過運転工程中に導入するようにしてもよい。また、気体吸収性液体は、原水側に導入しても透過水側に導入しても効果を得ることはできるが、膜細孔内に効率的に気体吸収性液体を導入させるためには、原水側から透過側もしくは透過側から原水側へと気体吸水性液体を流すことが好ましい。特に、液体分離膜モジュールの逆洗を行う場合に、例えば、図3に示すように逆洗水として脱気水を用いると、逆洗と滞留気体の吸収除去が同時に行えるうえに、界面張力を下げることができ、本発明の効果が大きくなるのでさらに好ましい。
【0031】
さらに、気体吸収性液体を液体分離膜モジュールに導入する時期・頻度・時間についても特に限定されるものではないが、少なくとも完全性試験を行う直前に実施する必要があり、また、気体がたまった部分ではろ過が乾燥し、ろ過に寄与する膜の面積が次第に減少するので、濾過水量が減少する。したがって、その影響を無視出来る程度の時期、頻度、時間で実施することが好ましい。
【0032】
そして、液体分離膜の洗浄をエアスクラビングによって行う場合は、空気が膜の細孔内に滞留しやすくなるため、エアスクラビング後に気体吸水性液体をモジュールに導入するのが好ましい。さらに、エアスクラビングと逆洗とを併用する場合は、エアスクラビングを実施した後に気体吸水性液体を用いて逆洗を行うと、非常に効率的である(図4)。
【0033】
気体吸収性の液体としては、本発明の目的にある、液体分離膜モジュール1中に蓄積される酸素等の気体を吸収するものであれば特に限定されるものではないが、脱気された水や水溶液、アルコールなどの溶媒や亜硫酸水素ナトリウム、クロラミンなどの酸素吸収剤(還元剤)を用いることができる。中でも、最も好適であるのは、脱気処理された水を用いる方法である。特に、浄水処理や廃水処理ように人体への影響や環境問題が懸念される場合、使用した酸素吸収剤などの薬剤の影響を考慮する必要があるが、脱気水を使用する場合はこの心配がない。さらに、脱気水を用いる場合は、気体の種類を問わず、膜の細孔内に滞留している気体を吸収・除去することができる。また、本発明の効果が大きくなるように、予め液体分離膜等で不純物を除去した清水を気体吸水性液体とするのも好ましい。不純物が少ないため、界面張力が小さくなり、本発明の効果が大きくなる。
【0034】
【実施例】
<実施例1>
図4に示す装置を用い、外圧式全ろ過法で透過流束0.5m/dとして、琵琶湖水(濁度計で毎日1回測定した平均濁度=5)を1週間一定流量で処理した。液体分離膜モジュール1としては、ポリフッ化ビニリデン中空糸膜(製造直後のバブルポイント0.15MPa、中空糸内径0.9mm、外径1.5mm、接触角63°)を1800本装填したもの(外径114mm、全長1.1m、有効膜面積7m2)1本を用いた。また、原水側のエアースクラビングは15分毎に実施した。
【0035】
その後、運転を停止してから、疎水性ポリフッ化ビニリデン中空糸膜を用いた脱気膜モジュール14(中空糸膜内径0.18mm、外径0.22mm、本数65000本、全長550mm、外径100mm)を用いて脱気処理した透過水(溶存酸素濃度0.4ppm)を逆洗ライン8からモジュール内に毎分9リットル流入させ、透過水ライン6から透過水タンクに10分間環流させた。この直後、バブルポイントを測定したところ、0.14MPaであり、使用前の値とほぼ同じ、すなわち、膜に欠陥がないという結果であった。さらに、この液体分離膜モジュールにイソプロピルアルコール50%水溶液を充満させた後、水で置換し、再度バブルポイントを測定したところ、0.14MPaであり、使用前の値とほぼ同じであり、膜に欠陥がないことが確認された。
<比較例1>
脱気膜モジュール1に接続された真空ポンプによる脱気処理を行わない他は、実施例1と同様にして、同じ琵琶湖水を1週間一定流量で処理した。ろ過運転直後のイソプロピルアルコールを充満させる前のバブルポイントを測定した結果、0.06MPaで、使用前の値に比べて遙かに小さく、膜に欠陥があるかのような結果になった。しかしながら、イソプロピルアルコール処理した後のバブルポイントを測定した結果、0.16MPaで、使用前とほぼ同じ値であり、膜に欠陥がないことが確認された。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、ろ過運転中もしくは運転の合間に液体分離膜モジュールの完全性試験を実施するにあたり障害となっていた、運転中に膜細孔内に保持された空気を短時間で確実に除去することが可能となり、その結果、完全性試験を正確に行うことができ、膜の損傷トラブルに対して迅速に対応、信頼性の高い液体分離膜モジュールの管理が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液体分離装置の一実施態様である。
【図2】本発明に係る液体分離装置の一実施態様である。
【図3】本発明に係る液体分離装置の一実施態様である。
【図4】本発明に係る液体分離装置の一実施態様である。
【符号の説明】
1:液体分離膜モジュール
2:原水タンク
3:原水ポンプ
4:原水ライン
5:透過水ライン
6:気体供給ライン
7:逆洗水供給ライン
8:排水ライン
9:排水ライン
10:透過水タンク
11:気体吸収性液体供給ライン
12:気体吸収性液体タンク
13:真空ポンプ
14:脱気膜
15:気体透過ライン
16:圧力計
17:気体流量計
Claims (13)
- 液体中の不純物を除去する液体分離膜を配した液体分離膜モジュールを備えた液体分離装置であって、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給する気体吸水性液体供給手段と、液体分離膜の完全性試験を行う圧力計とを具備したことを特徴とする液体分離装置。
- 気体吸収性液体供給手段が気体吸水性液体製造装置を具備していることを特徴とする、請求項1に記載の液体分離装置。
- 液体分離膜モジュールの原液を気体吸収性の液体とする気体吸水性液体製造装置を具備していることを特徴とする、請求項1または2に記載の液体分離装置。
- 液体分離膜モジュールに逆洗水を供給する逆洗水供給手段と、逆洗水を気体吸水性の液体とする気体吸水性液体製造装置とを具備していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の液体分離装置。
- 液体分離膜が中空糸膜であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の液体分離装置。
- 液体分離膜のバブルポイントが50kPa以上1MPa以下の範囲内にあることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の液体分離装置。
- 液体分離膜の空気に対する水の表面接触角が40度以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか記載の液体分離装置。
- 液体分離膜を配した液体分離膜モジュールで液体中の不純物を除去する運転中もしくは運転の合間に、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給し、液体分離膜モジュール内の気体をその気体吸水性の液体に溶解させることを特徴とする液体分離膜モジュールの運転方法。
- 気体吸収性の液体の少なくとも一部を原液側から透過液側へもしくは透過液側から原液側へと流すことを特徴とする請求項8に記載の液体分離膜モジュールの運転方法。
- 液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給することで、液体分離膜モジュール内の気体をその気体吸水性の液体に溶解させるとともに、液体分離膜を洗浄することを特徴とする、請求項8または9に記載の液体分離膜モジュールの運転方法。
- 運転を中断し、液体分離膜モジュールに気体を供給して液体分離膜を気泡で洗浄した後、液体分離膜モジュールの原液側および透過液側の少なくとも一方に気体吸収性の液体を供給することを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の液体分離膜モジュールの運転方法。
- 液体分離膜モジュール内の気体を気体吸水性の液体に溶解させた後、液体分離膜の完全性試験を行うことを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の液体分離膜モジュールの運転方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の装置もしくは請求項8〜12のいずれかに記載の方法を用いることを特徴とする造水方法。
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-
2002
- 2002-12-19 JP JP2002367924A patent/JP2004195381A/ja active Pending
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