JP2004194654A - バクテリオファージ由来の溶菌遺伝子と溶菌遺伝子を組み込んだプラスミドによる遺伝子治療用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、従来のファージ治療の利点を生かしつつ、ファージを用いる欠点を改善することができる感染症に対する新たな医薬組成物、及びそのためのプラスミドなどを提供する。
【解決手段】
本発明は、ファージ全体を使用するのではなく、ファージが持つ溶菌遺伝子を組み込んだプラスミドを用い、このプラスミドに組み込まれた溶菌遺伝子を病原性の微生物中で発現させて細菌などの微生物を溶解することを特徴とする医薬組成物等に関する。
本発明は、バクテリオファージの溶菌遺伝子を含有する遺伝子構築物、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物、そのためのプラスミドなどの遺伝子構築物、並びにそれを用いた微生物の溶解剤、及び当該溶解剤を用いたヒト以外における病原性微生物を溶解させる方法に関する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、バクテリオファージの溶菌遺伝子を含有する遺伝子構築物、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物、そのためのプラスミドなどの遺伝子構築物、並びにそれを用いた微生物の溶解剤、及び当該溶解剤を用いたヒト以外における病原性微生物を溶解させる方法に関する。本発明は、バクテリオファージの溶菌遺伝子を利用する薬剤耐性菌等の細菌に対する新たな治療方法、及び該方法に使用するベクター、医薬組成物などに関する。
抗生物質が各種の感染症の治療に導入されて以来、抗生物質に対する薬剤耐性菌の存在が世界的レベルで重大な問題になっている。1929年のペニシリン発見の数年後には、ペニシリン耐性黄色ブドウ球菌が発見された。現在ではこの他にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、バンコマイシン耐性MRSA(VRSA)、ゲンタマイシン耐性緑濃菌、ニューキノロン耐性大腸菌、カルバペネム耐性セラチア菌などの多種類の薬剤耐性菌が出現してきている。抗生物質に抵抗性の耐性病原菌や非病原性耐性菌が知られている。病原性が弱いので健康な人には病気を起こさないが、病気や加齢などで免疫力が落ちた人に病気を起こし、しばしば院内感染の原因となっているものもある。
病人の体内で抗生物質が効かない薬剤耐性菌の存在が疑われる場合、従来とりうる唯一の手段は異なる種類の抗生物質の使用を試み、それが駄目なら更に別の抗生物質の使用を試みる、ということの繰り返しである。また、抗生物質の使用に替わり得る方法としては、人に遺伝的に欠けている生体内の酵素などを補う又は合成させる方法である遺伝子治療を挙げることが出来るが、これも現在ではまだ試みの域を出ていない。
他のひとつの方法として、ファージ治療(Bacteriophage therapy)が挙げられる。バクテリオファージは細菌類に感染してこれを溶解するからである。ファージの持つ人に対する安全性の高さ、ファージの持つ高い宿主特異性、変異し易さなど多くの利点があると考えられているが、この治療法は世界的には余り広く試みられてはいない。このようなファージ治療としては、遺伝子改変型のファージを使用する方法(特許文献1参照)、ヘリコバクタピロリの治療にバクテリオファージを使用する方法(特許文献2参照)、宿主特異的でかつ宿主範囲の広いバクテリオファージを使用する方法(特許文献3参照)などが提案されている。しかし、日本国内ではこの治療法はほとんど試みられておらず、世界的には旧ソ連や東ヨーロッパではかなり試みられている(非特許文献1参照)。
バクテリオファージにおける小型溶解タンパク質の発見以降、RNAファージによる細胞溶解に関する研究が数多く行われてきた。これらの研究につては多数の総説が報告されている(非特許文献2〜7参照)。一本鎖RNAバクテリオファージは、リゾチームを用いることなく感染サイクル終点でその宿主大腸菌細胞を溶解する。代わりに、このファージは低分子量の疎水性タンパク質をコードし、それはA−I群及びA−II群ファージにおいて宿主の十分な溶解を惹起する(非特許文献8−9参照)が、B−III群ファージにおいては、Qβファージの成熟化(A2)タンパク質が大腸菌細胞それ自体の溶解を誘発することが明らかにされている(非特許文献10−11参照)。
小型一本鎖DNAおよびRNAファージ類の溶解のメカニズムとしては、RNAファージQβのA2(成熟化/溶解)タンパク質がMurAステップを阻害して細胞壁の生合成をブロックし、また、φX174ファージ(小型球形DNAファージ)の溶解タンパク質Eが細胞壁の生合成のMraYステップを阻害して細胞壁の合成を阻害することが報告されている。MurAおよびMraYステップまたはその活性の阻害は、細胞壁の生合成を阻害することになり、そして、その結果、宿主細胞の溶解を誘発することになる(非特許文献4、及び非特許文献12−14参照)。
大腸菌に感染するRNAファージは、A群およびB群に分類される。A群のRNAファージは、亜群IおよびIIに分割され、B群のRNAファージは、亜群IIIおよびIVに分割される(非特許文献15−18参照)。RNAコリファージの上記の4つの亜群の中では、A−I群(f2、MS2、R17、fr)およびB−III群(Qβ)が非常に多く研究されている(例えば、非特許文献2−3参照)。上記のA群及びB群の2つのファージ類(A−I、IIおよびB−III、IV)の遺伝子構造は非常に似ている(図1aおよび図6参照)。成熟化タンパク質、コートタンパク質およびレプリカーゼβサブユニットをコードする主要な遺伝子類はほぼ同じ長さで、同じ順序で配置されているが、それ以外のマイナーな遺伝子類はわずかに異なっている。遺伝子の構成および遺伝子の順序が類似しているにもかかわらず、溶解遺伝子の構造および機能は、A群とB群で非常に異なっている。
また、Qβファージ(B−III群)およびSPファージ(B−IV群)の成熟化タンパク質は相互に交換可能に使用でき、SPファージの成熟化タンパク質は溶解作用を有している(非特許文献19参照)。これに関連する、GAファージ(A−II群)の溶解遺伝子の機能は、現在まで十分に解明されていない。
MS2ファージのクローニングされた溶解遺伝子により溶解された細胞においては、局所的破壊が起こり、かつ細胞質物質が放出されることが、透過型電子顕微鏡写真から明らかにされてきた(非特許文献20参照)。しかし、透過型電子顕微鏡を用いてRNAファージまたはクローニングされた溶解遺伝子類による溶解細胞を直接見えるようにすることは、これまでそれほど精力的には行われてこなかった。
特表平9−511397号 特表2000−505648号 特表2000−508322号 Sulakvelidze et al.(2001)."Bacteriophage therapy", Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 45, 649‐659 van Duin, J. (1988). Single-stranded RNA bacteriophages. in The Bacteriophages, pp. 117-167. Edited by R. Calendar. New York: Plenum. Young, R. (1992), Bacteriophage lysis: mechanism and regulation, Microbiological Reviews, 56, 430-481. Young, R., Wang, I.-N., et al., (2000). Phages will out: strategies of host cell lysis, Trends in Microbiology, 8, 120-128. Adhin, M. R. & van Duin, J. (1989). Translational regulation of the lysis gene in RNA bacteriophage for requires a UUG initiation codon, Molecular & General Genetics, 218, 137-142. Adhin, M. R., Hirashima, A., et al., (1989). Nucleotide sequence from the ssRNA bacteriophage JP34 resolves the discrepancy between serological and biophysical classification, Virology, 170, 238-242. Groeneveld, H., Oudot, F., et al., (1996). RNA phage KU1 has an insertion of 18 nucleotides in the start codon of its lysis gene, Virology, 218, 141-147. Kastelein, R. A., Remaut, et al., (1982). Lysis gene expression of RNA phage MS2 depends on a frameshift during translation, Nature, 276, 35-41. Coleman, J., Inouye, M., et al., (1983). Bacteriophage MS2 lysis protein does not require coat protein to mediate cell lysis, Journal of Bacteriology, 153, 1098-1100. Karnik, S. & Billeter, M., (1983). The lysis function of RNA bacteriophage Qβ is mediated by the maturation (AT) protein, EMBO Journal, 2, 1521-1526. Winter, R. B. & Gold, L., (1983). Overproduction of bacteriophage Qβ maturation (A2) protein leads to cell lysis, Cell, 33, 877-885. Bernhardt, T. G., Roof, W. D., et al., (2000). Genetic evidence that the bacteriophage φX174 lysis protein inhibits cell wall synthesis,Proceedings of the National Academy of Sciences, USA, 97, 4297-4302. Bernhardt, T. G., Struck, D. K., et al., (2OO1). The lysis protein E of φX174 is a specific inhibitor of the MraY-catalyzed step in peptidoglycan synthesis, Journal of Biological Chemistry, 276, 6093-6097. Bernhardt, T. G., Wang, I.-N., et al., (2OO1). A protein antibiotic in the phage Qβ virion: diversity in lysis targets, Science, 292, 2326-2329. Furuse, K., Hirashima, A., et al., (1979). Grouping of RNA coliphages based on analysis of the sizes of their RNAs and proteins, Virology, 97, 328-341. Miyake, T., Shiba, T., et al., (1969). Isolation and properties of two new RNA phages SP and FI, Japanese Journal of Microbiology, 13, 375-382. Watanabe, I., Miyake, T., et al., (1967). Isolation and grouping of RNA phages, Proceedings of the Japan Academy, 43, 204-209, Watanabe, I., Nishihara, T., et al., (1967). Group characteristics of RNA phages, Proceedings of the Japan Academy, 43, 210-213. Priano, C., Arora, R., et al., (1995). A complete plasmid-based complementation system for RNA coliphage Qβ : three proteins of bacteriophages Qβ(group III) and SP(group IV) can be interchanged, Journal of Molecular Biology, 249, 283-297. Witte, A., Reisinger, G. R., et al., (1989). Characterization of Escherichia coli lysis using a family of chimeric E-L genes, FEMS Microbiology Letters, 164, 159-167. Inokuchi, Y., Takahashi, R., et al., (1986). The complete nucleotide sequence of the group II RNA coliphage GA, Journal of Biochemistry, 99, 1169-1180. 桜井稔三、渡辺格、大野典也。(1967)。RNAファージの分離と血清学的分類。 ウイルス 17:165−171. Watanabe, I., Miyake, T., Sakurai, T., Shiba, T., and Ohno, T., (1969). Isolation and grouping of RNA phages. Proc. Japan Acad. 43: 204‐209. Nishihara, T., Haruna, I., Watanabe, I., Nozu, Y., and Okada, Y., (1969). Comparison of coat proteins from three groups of RNA Phages. Virology 37:153‐155. Nishihara, T., and Watanabe, I., (1969). Discrete buoyant density distribution among RNA phages. Virology 39: 360‐362.
現在世界的レベルで抗生物質に対する薬剤耐性菌の存在が重大な問題になっている。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE)、バンコマイシン耐性 MRSA(VRSA)などの抗生物質に抵抗性の耐性病原菌や非病原性耐性菌が多数知られてきており、これらの感染症に対する有効な処置方法が無いことが大きな問題になってきている。本発明は、これらの問題を解決することを目的としている。生体内に侵入してきたこれらの薬剤耐性菌を駆逐するための新規な手法、そのための医薬組成物を提供することを目的としている。
本発明の目的は、上記課題を解決し、従来のファージ治療の利点をより生かすことの出来る、薬剤耐性菌に対する新たな治療方法、及び該方法に使用するベクターなどを提供することである。
従来からファージを用いた治療法は提案されていたが、ファージはウイルスの1種であり、その使用に未知の多くの課題が懸念されていた。本発明者は、ファージ全体を使用するのではなく、小型球形一本鎖ファージが持つ溶菌遺伝子が産生する溶菌蛋白質に着目し、当該溶菌蛋白質の溶菌性を検討したところ、これらの蛋白質が十分な溶菌性をゆうしていることを確認し、当該溶菌蛋白質をコードする遺伝子を用いることにより薬剤耐性菌などを駆逐することができることを見出した。より具体的には、本発明は、溶菌遺伝子を組み込んだプラスミドを用い、このプラスミドを人の体内に導入し体内に存在する薬剤耐性菌などに導入(トランスフェクション)させ、その溶菌遺伝子の発現をさせて細菌の溶菌を導き、その結果、細菌を殺すことができることを見出した。
本発明の溶菌遺伝子を用いる方法は、ファージ全体を使用するものではなく、溶菌遺伝子のみを使用するという点において、従来のファージ全体を使用するファージ治療法とは全く異なるものであり、遺伝子を用いた細菌感染症に対する新規な治療方法、及びそのための医薬組成物を提供するものである。
即ち、本発明は、バクテリオファージの溶菌遺伝子を含有する遺伝子構築物、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物、より詳細には感染症の治療用の医薬組成物、及び当該医薬組成物を投与して、当該医薬組成物に含有されたプラスミドを細菌にトランスフェクションさせ、当該プラスミドに組み込まれた溶菌遺伝子を発現させ、細菌を溶菌に導き死滅させることから成る、細菌感染症の治療方法に関する。また、本発明は、当該医薬組成物を製造するためのバクテリオファージの溶菌遺伝子をコードする遺伝子を含有する遺伝子構築物の使用に関する。
また、本発明は、バクテリオファージの溶菌遺伝子を含有するプラスミドなどの遺伝子構築物、より詳細には遺伝子治療用や微生物の溶解剤としての遺伝子構築物に関する。
さらに、本発明は、前記した本発明の遺伝子構築物を細菌にトランスフェクションさせ、当該遺伝子構築物に組み込まれた溶菌遺伝子を発現させることからなる、ヒト以外における細菌を溶菌する方法、及び前記した本発明の遺伝子構築物を含有してなる細菌類などの微生物の溶解剤に関する。
本発明の態様としては、第一の態様として、バクテリオファージの溶菌遺伝子を組み込んだプラスミドに係る。本発明の第二の態様として、本発明のプラスミドを細菌にトランスフェクションさせ、該プラスミドに組み込まれた溶菌遺伝子を発現させることから成る、細菌を溶菌する方法に係る。また、本発明の第三の態様としては、上記のプラスミドを有効成分として含有する薬剤組成物に係る。さらに、本発明の第四の態様としては、この薬剤組成物を投与し、該薬剤組成物に含有されたプラスミドを細菌にトランスフェクションさせ、該プラスミドに組み込まれた溶菌遺伝子を発現させ、細菌を溶菌に導き死滅させることから成る、細菌感染症の治療方法に係る。
本発明者は、GAおよびSPの溶解遺伝子を含有する発現プラスミドを構築するに当たって、GAファージ(A−II群)に感染した細胞の溶解が小溶解遺伝子(small lysis genes)の作用によるものであり、また、SPファージ(B−IV群)に感染した細胞の溶解が成熟化タンパク質遺伝子(A2)の作用によるものであると予測した。これは、MS2ファージ(A−I群)およびQβファージ(B−III群)に感染した細胞におけるのと同様であろう思われたからである。
まず、GAの溶解遺伝子を含有する発現プラスミドを構築するために、GA RNAのコートタンパク質および溶解タンパク質の遺伝子の断片を用いて、以下の実施例1に記載のようにしてRT−PCRにより目的の遺伝子を得た。MS2ファージ(非特許文献8参照)の場合と同様に、溶解活性を付与するためにコートタンパク質をコードする遺伝子を含有させた。この遺伝子をプラスミドpPLc245のAscIとPacIの間に含有させて、ファージGAの溶解遺伝子をコードする遺伝子を含有するプラスミドpGAcl−8を構築し、これを用いて大腸菌の溶解性を検討した。得られた結果を、図1に示した。図1の(a)(図1の上段)は、ファージGAのゲノムRNA(図1(a)上段)及びプラスミドpGAcl−8(図1(a)下段)のマップを示す。各ヌクレオチドの番号はイノクチらの方法(非特許文献21参照)による。プラスミドは溶解遺伝子の発現に関連する部分のみを示している。図1の(b)のグラフは、大腸菌K12ΔH1Δtrpを、28℃(吸光度(OD600)は0.2である。)で培養したときの増殖曲線を示し、グラフの横軸は誘導してからの時間(分)、縦軸は吸光度(OD600)を示す。グラフの白丸印(○)は前記したファージGAの溶解遺伝子をコードする遺伝子を含有するプラスミドpGAcl−8を含有する大腸菌の場合を示し、黒丸印(●)は空のプラスミドであるプラスミドpPLc245を含有させた大腸菌の場合を示す。グラフは誘発開始から15分毎の測定結果を示している。
この結果、プラスミドpGAcl−8を保有している大腸菌細胞は、誘発により、誘発から25分後に溶解を開始することがわかった。
GAファージにおける前記の結果を更に確認するために、A−II群ファージ(GAグループ)に属するその他の4種類のファージRNAを用いて同様に実験した。これらの4種のファージは、汚水中から大腸菌(雄株)を宿主として増殖して、文献に記載の方法(非特許文献17、及び非特許文献22−25参照)にしたがって分離したものである。これらのファージは、それぞれSDファージ、TH1ファージ、TL2ファージ、及びJP500ファージと称せられるいずれも公知のもので、汚水中などのどこにでも存在しているものであり、文献に記載の確立されたスクリーニング方法により、容易に分離できるものであるから当業者が容易に入手可能なものである。これらのファージのRNAをそれぞれ鋳型に用いて、RT−PCRにより二本鎖DNAを合成した。これを、プラスミドpPLc245(AP)のAscIとPacIの間に導入した。これらのcDNAは全て各ファージのコートタンパク質遺伝子及び溶菌遺伝子を含み、コートタンパク質遺伝子のリボゾーム結合部位(SD配列)を含んでいる。このようにして得られた遺伝子構築物を、それぞれ以下のとおり命名した。
(1) pSDcl−10 (SDファージ由来)
(2) pTH1cl−1 (TH1ファージ由来)
(3) pTL2cl−1 (TL2ファージ由来)
(4) pJP500cl−12 (JP500ファージ由来)
これらのそれぞれのプラスミドを大腸菌K12ΔH1Δtrpに導入し、図1(b)と同様にして増殖曲線を測定した。結果を図2〜5にそれぞれ示す。図2〜5の各グラフの横軸及び縦軸は図1(b)と同様である。
図4(TL2ファージ由来)及び図5(JP500ファージ由来)では、約60分後くらいから増殖の傾向がみられるが、図4では30分から60分の間、図5では15分から60分の間では明確な溶解性が観測できている。
これらのファージから得られたRT−PCR産物の遺伝子から、溶解(溶菌)活性を有する蛋白質をコードしている部分を検討した。これらのファージから得られた遺伝子の溶解(溶菌)活性を有する蛋白質をコードしている遺伝子の翻訳領域の塩基配列を配列表の配列番号1〜4にそれぞれ示す。
次に、SPファージ(B−IV群)について同様な検討を行うために、SP溶解遺伝子を含有する発現プラスミドを構築し、その欠失変異体およびそれらの溶解活性を調べた。
SP RNAのA2遺伝子を、以下の実施例3に記載のようにしてRT−PCRによる取得した。得られた遺伝子をpLプロモーターを含有するプラスミドpPLc245−2のEcoRIとSalIの間に挿入してプラスミドpSPA2−10を構築した。また、これらの遺伝子の一部を欠損させた遺伝子を同様に挿入してプラスミドpHE−3、プラスミドpPv−17、及びプラスミドpMI−4を併せて構築した。これらのプラスミドを用いて前記の方法と同様にして大腸菌の溶解性を検討した。得られた結果を、図6に示した。図6の(a)(図6の右側の上段)は、ファージSPのゲノムRNAのマップを示す。各ヌクレオチドの番号はイノクチらの方法(非特許文献21参照)による。図6の(b)は構築した各プラスミドのA2遺伝子の発現部位を示す。図6の(b)の上から、プラスミドpSPA2−10、プラスミドpHE−3、プラスミドpPv−17、及びプラスミドpMI−4をそれぞれ示している。数字は欠損位置を示し、それぞれの制限酵素部位を併せて示している。図6の(c)のグラフは、大腸菌K12ΔH1Δtrpを、28℃で、吸光度(OD600)を0.2に調整し、42℃にしてpLプロモーターを誘導させて培養したときの増殖曲線を示し、グラフの横軸は誘導してからの時間(分)、縦軸は吸光度(OD600)を示す。グラフの白丸印(○)はプラスミドpSPA2−10を導入した大腸菌の場合を示し、白三角印(△)はプラスミドpHE−3の場合、黒四角印(■)はプラスミドpPv−17の場合、及び黒丸印(●)はプラスミドpMI−4の場合をそれぞれ示している。グラフは誘発開始から15分毎の測定結果を示している。
この結果、A2遺伝子の全長が挿入されているプラスミドpSPA2−10を含有している大腸菌細胞は、誘発により、誘発から45分後に溶解を開始することがわかった。しかし、A2遺伝子の一部が欠損した遺伝子が挿入されているプラスミドpHE−3、プラスミドpPv−17、及びプラスミドpMI−4を含有する大腸菌は増殖を続けることができることを示している。大腸菌を溶解するためには、A2遺伝子の一体性が必要性であることがわかった。図6の(c)に示したように、欠失変異体プラスミドを保有している大腸菌細胞は、溶解活性を全く有していなかった。これらの結果は、Qβ−A2遺伝子(B−III群)で得られた他者の結果と一致している(非特許文献10−11参照)。これらの結果は、B−IIIおよびB−IV群のファージが、溶解(成熟化タンパク質)遺伝子に関して、類似の特性を有していることを意味している。
SPファージにおける前記の結果を更に確認するために、B−IV群ファージ(SPグループ)に属するその他の3種類のファージRNAを用いて同様に実験した。これらの4種のファージは、汚水中から大腸菌(雄株)を宿主として増殖して、文献に記載の方法(非特許文献17、及び非特許文献22−25参照)にしたがって分離したものである。これらのファージは、それぞれSG10ファージ、ID2ファージ、及びTW19ファージと称せられるいずれも公知のもので、汚水中などのどこにでも存在しているものであり、文献に記載の確立されたスクリーニング方法により、容易に分離できるものであるから当業者が容易に入手可能なものである。これらのファージのRNAをそれぞれ鋳型に用いて、RT−PCRにより二本鎖DNAを合成し、プラスミドpPLc245−2のEcoRIとSalIの間に導入した。これらのcDNAは全て各ファージのA2遺伝子と、リボゾーム結合部位(SD配列)を含んでいる。このようにして得られた遺伝子構築物を、それぞれ以下のとおり命名した。
(5) pSG10A2−18 (SG10ファージ由来)
(6) pID2A2−1 (ID2ファージ由来)
(7) pTW19A2−15 (TW19ファージ由来)
これらのそれぞれのプラスミドを大腸菌K12ΔH1Δtrpに導入し、図6(C)と同様にして増殖曲線を測定した。結果を図7〜9にそれぞれ示す。図7〜9の各グラフの横軸及び縦軸は図6(c)と同様である。
同様な方法により、B−III群ファージ(Qβグループ)に属するTW18ファージ、A−I群ファージ(MS2グループ)に属するBO1ファージ及びZRファージのRNAを鋳型に用いて、RT−PCRにより遺伝子断片を取得した。得られた二本鎖DNAをプラスミドpPLc245(AP)のAscIとPacIの間に挿入して遺伝子構築物を構築した。なお、これらの3種のファージは、汚水中から大腸菌(雄株)を宿主として増殖して、文献に記載の方法(非特許文献17、及び非特許文献22−25参照)にしたがって分離したものである。これらの3種のファージ、即ちTW18ファージ、BO1ファージ、及びZRファージは、いずれも公知のもので、汚水中などのどこにでも存在しているものであり、文献に記載の確立されたスクリーニング方法により、容易に分離してこれるものであるから当業者が容易に入手可能なものである。
TW18ファージからのcDNAはA2遺伝子と、リボゾーム結合部位(SD配列)を含んでおり、BO1ファージ及びZRファージからのcDNAは、溶菌遺伝子、コートタンパク質遺伝子、及びコートタンパク質のリボゾーム結合部位(SD配列)を含むものである。このようにして得られた遺伝子構築物を、それぞれ以下のとおり命名した。
(8)pTW18A2−7プラスミド (TW18ファージ由来)
(9)pBO1cl−3プラスミド (BO1ファージ由来)
(10)pZRcl−3プラスミド (ZRファージ由来)
これらのそれぞれのプラスミドを大腸菌K12ΔH1Δtrpに導入し、図1(b)又は図6(C)と同様にして増殖曲線を測定した。結果を図10〜12にそれぞれ示す。図10〜12の各グラフの横軸及び縦軸は図1(b)又は図6(c)と同様である。
次に、GAファージ(A−II群)の溶解遺伝子を導入した溶解細胞の形態を電子顕微鏡写真を用いて検討した。RNAファージGA(A―II群)の溶解遺伝子によって誘発された大腸菌細胞から得られた結果の透過型電子顕微鏡写真を図13(a−h)に図面に代わる写真で示す。図13の写真は、プラスミドpGAcl−8を導入した大腸菌の、誘導から40分後の透過型電子顕微鏡写真である。各写真中のスケールバーは200nmを示す。この写真から、溶解細胞中で2種類の典型的な特徴が見られた。ひとつは、細胞表面上の膨張(バルーニング)構造であり(図13のc−h参照)、他のひとつは細胞壁からの物質類の漏出であった(図13のa、b参照)。
透過型電子顕微鏡写真では溶解した細胞の表面に孔を観察することはできなかったが、細胞から多くの物質の漏出が見られた。また、多くの膨張(バルーニング)した構造が観察され、これが細胞の外膜であることもありうるが、その確たる証拠は得られなかった(図13のc−h参照)。溶解遺伝子が導入されていない対照の細胞は、このような構造を全く示さなかった。膨張した構造になった細胞の中には未だ原型をとどめているものも有るが(図13のc、h参照)、図13のc及びdにおける構造物は破壊され、細胞中の物質類が放出されていた。さらに、図13のgでは、膨張した構造物が断片化したの観察された。
同様に、SPファージの溶解遺伝子により誘発されて溶解した細胞の電子顕微鏡写真を検討した。RNAファージSP(B−IV群)の溶解遺伝子によって誘発された大腸菌細胞から得られた結果の透過型電子顕微鏡写真を、図14の(a)−(f)に図面に代わる写真で示す。図14の写真は、プラスミドpSPA2−10を導入した大腸菌の、誘導から60分後の透過型電子顕微鏡写真である。各写真中のスケールバーは500nmを示す。
観察された溶解した細胞では、2つの非常に明確な特徴があった。第1の特徴は、細胞の形状が伸長し、かつ先細りになったことであり、部分的に断片化も同様に出現していた(図14のe、f参照)。第2の特徴は、細胞壁からの物質類の漏出であった(図14のa、b、c)。SPファージの溶解遺伝子によって誘発された細胞では、隣接する細胞に結合したような細胞類も観察された(図14のb、d参照)。これらの構造は、前記したGAファージの溶解遺伝子で誘発された細胞中で説明したのと同一の膨張した構造物であるのかも知れない。
ウィッテ(Witte)らは、透過型電子顕微鏡写真によってMS2ファージ(A−I群)のクローニングされた溶解遺伝子による細胞の溶解により局所破壊が起こったことを報告している(非特許文献20参照)。しかし、GAファージ(A−II群)のクローニングされた溶解遺伝子による細胞は、MS2ファージ(A−I群)のそれとは異なっていた。
多くの膨張した構造物がGA(A−II群)(図13参照)で観察されたが、SP(B−IV群)ではそれほど多くの典型的な膨張した構造物は観察されなかった(図14参照)。しかし、RNAファージQβ(B−III群)のA2(成熟化/溶解)遺伝子を導入して溶解させた細胞は、誘導開始後たったの5分で1個の細胞ではあるが、膨張した構造の形態が観察された。したがって、B群においても膨張した構造は、溶解細胞の溶解における中間の段階で存在するものと考えられる。
膨張した構造となる形態と、物質の漏出した形態の差を明確化することは困難である。しかし、膨張した構造の形態では、この構造自体と外部との間に明確な境界を観察することができるが、物質の漏出した形態では、漏出物質と外部の間に明確な境界を観察することが困難となる。
物質の漏出した形態は3つの異なる方法で出現すると考えられる。ひとつは、細胞壁からの直接漏出であり(例えば、図13のa、b参照)、第2は、膨張した構造の破壊であり(例えば、図13のc参照)、そして3つめは、上記2者の組み合わせである(例えば、図13のe、f参照)。
大腸菌の細胞の外膜が膨張した構造の形態は、これまでに、熱処理細胞、並びにλSタンパク質遺伝子、及びφX174とMS2ファージのキメラ遺伝子E−Lにより誘導された細胞で報告されている(非特許文献20等参照)。しかし、RNAファージ又はクローニングされたRNAファージによる大腸菌の外膜が膨張した構造の形態は、これまで報告されていない。E−Lキメラ遺伝子による膨張の機構は、既に報告されている(非特許文献20参照)。全体として、RNAファージGA(A−II群)およびSP(B−IV群)による大腸菌細胞の溶解特性の特徴点は、伸長した細胞の形態(図14;SPファージ)および多くの膨張した構造の形態(図13;GAファージ)が挙げられる。
このように、ファージ全体を用いなくてもファージの溶解遺伝子を細菌類に導入することにより、細菌類が溶解して死滅することが判明した。本発明はこの原理を応用して薬剤耐性菌などによる感染症を治療することができることを見出したものである。
本発明の溶解遺伝子としては、細菌類などの病原性の微生物の中で発現可能であって、発現して当該微生物を溶解して死滅させることのできる遺伝子であればよい。例えば細菌類に対する溶菌遺伝子などが挙げられる。
本発明における溶菌遺伝子としては、細菌類の中で発現可能であって、発現して当該微生物を溶解して死滅させることのできる遺伝子であればよく、例えば、それがコードするタンパク質が、細胞内で増殖したバクテリオファージが感染サイクルの終点で細胞を溶解させバクテリオファージが細胞外に放出するために必要な機能を有している限り、その他の作用を有する他のタンパク質をコードしていても良いし、又は、遺伝子が他の名称で呼ばれていても良い。従って、既に記載したように、バクテリオファージの種類によっては、このような「溶菌遺伝子」は成熟化タンパク質をコードする遺伝子であり得る。又、溶菌遺伝子による細胞溶解のメカニズムに特に制限はない。
本発明で使用した各種バクテリオファージ由来の溶菌遺伝子の幾つかは既に公知であり、その塩基配列に関する情報も、例えば、NCBIのサイト(http://ncbi.nlm.nih.gov)等から容易に入手することが出来る。
本発明のファージとしては、前記した溶解遺伝子を含有するものであれば特に制限はないが、好ましくは細菌類に対するバクテリオファージが挙げられる。
バクテリオファージは、細菌に感染するウイルスであるが、ビリオンに含まれるゲノムの種類によって、一本鎖DNAファージ、二本鎖DNAファージ、一本鎖RNAファージ、及び、二本鎖RNAファージに分類される。
この中で、本発明のプラスミドに組み込まれる溶菌遺伝子は、特に、一本鎖RNAファージであるレヴィウイルス(Leviviridae)科に属する小型球形RNAファージ、又は一本鎖DNAファージであるミクロウイルス(Microviridae)科に属する小型球形DNAファージに由来するものが好ましい。
レヴィウイルス科は更に、MS2ファージグループ(Iグループ)及びGAファージグループ(IIグループ)を含むレヴィウイルス属、並びに、Qβファージグループ(IIIグループ)及びSPファージグループ(IVグループ)を含むアロレヴィウイルス属に分類される。
本発明の遺伝子構築物は、前記した本発明の溶解遺伝子を細菌類などの病原性の微生物に導入でき、当該微生物中で当該遺伝子を発現できるものであれば、如何なる形態であってもよい。本発明の遺伝子構築物の好ましい例としてはプラスミドなどが挙げられる。
本発明のプラスミドには、各種の細菌にトランスフェクションさせ、該プラスミドに組み込まれた溶菌遺伝子を発現させる為に使用することができる。
従って、本発明のプラスミドには、溶菌遺伝子の他に、例えば、ファージのコートタンパク質のようなその他の遺伝子、並びに、該細菌内で溶菌遺伝子を転写・発現させるために必要な各要素(塩基配列)を適宜有するように構成される。
このような要素は当業者には周知であり、例えば、プロモーター等の転写調節領域、翻訳開始に必要なリボソーム結合部位(SD配列など)、及び、各種制限酵素切断部位等がある。
当業者であれば、これら各要素の選択、組み合わせ、プラスミドにおける配置などは、溶菌遺伝子の種類、トランスフェクションの対象となる細菌の種類、発現様式などに応じて適宜決定し、当該技術分野で周知の遺伝子工学的手法により容易に作成することが出来る。
例えば、プロモーターとしてλpLを使用することによって、その制御下に温度シフトによって溶菌遺伝子を発現させることが出来る。又、例えば、ラクトースプロモーターのような誘導プロモーターを使用することによって、イソプロピル1−チオβ−D−ガラクトシド(IPTG)のような適当な誘導物質を添加することよって溶菌遺伝子を発現させることが出来る。
本発明のプラスミドなどの遺伝子構築物によるトランスフェクションの対象となる細菌の種類に特に制限はない。その一例として、例えば、大腸菌、並びに、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、バンコマイシン耐性MRSA(VRSA)、ゲンタマイシン耐性緑濃菌、ニューキノロン耐性大腸菌、及びカルバペネム耐性セラチア菌のような各種の薬剤耐性菌を挙げることが出来る。
従って、本発明の第二の態様は、本発明のプラスミドなどの遺伝子構築物を細菌にトランスフェクションさせ、該プラスミドに組み込まれた溶菌遺伝子を発現させることから成る、ヒト以外における細菌を溶菌する方法、及び当該方法に使用される本発明のプラスミドなどの遺伝子構築物を含有してなる細菌類などの微生物の溶解剤を提供する。本発明の溶菌する方法は、ヒト以外の動物や植物などの生体中で行うこともできるが、インビトロなどの試験における生体外でおこなうこともできる。
更に、本発明の第三の態様は、前記した本発明のプラスミドなどの遺伝子構築物を有効成分として含有する医薬組成物(薬剤組成物)を提供するものである。本発明の医薬組成物は、前記した本発明のプラスミドなどの遺伝子構築物、及び製薬上許容される担体を含有してなる。
又、本発明の第四の態様として、この医薬組成物(薬剤組成物)を投与し、該薬剤組成物に含有されたプラスミドを細菌にトランスフェクションさせ、該プラスミドに組み込まれた溶菌遺伝子を発現させることから成る、細菌感染症の治療方法、及び前記した本発明の医薬組成物を製造するための本発明の遺伝子構築物の使用を提供する。
本発明の医薬組成物は、使用目的・用途・投与形態などに応じて、任意の形態を取ることが出来、例えば、錠剤、カプセル剤、液剤、エアゾール剤、リポソーム、ゲル剤、クリーム剤、粉剤、軟膏剤、膣坐剤などとして用いることができる。これらの製剤中に占めるプラスミドの含有割合は、通常、0.0001〜50重量%、好ましくは0.001〜10重量%程度である。
本発明の医薬組成物は各種慣用の方法により、製剤の当業者に周知の各種の基剤、担体と配合して前記のような各種の剤型に製剤化することができる。
即ち、例えば、水、低級アルコール、エチレングリコール、グリセリン類、その他各種の有機溶媒から成る液剤の担体;例えば、上記のような液剤の担体とヘプタフルオロプロパンガスとを配合したエアゾールの担体;例えば、上記のような液剤の担体とゲル生成剤とを組み合わせたゲル基剤;例えば、カルボキシビニルポリマーと有機アミンもしくは水酸化ナトリウム水溶液などの塩基の組み合わせまたはヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール等のゲル生成剤;非イオン性界面活性剤のような乳化剤;例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、ヤシ油、パラフィン油、ラノリン、ワセリン、酸化亜鉛、ビーズワックス、マクロゴール、ステアリルアルコール、プロピレングリコール等の軟膏基剤;例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、乳糖、殿粉、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、タルク、シリコン等の不活性な希釈剤、造粒剤、分散剤、並びに結合剤等の各種基剤及び担体を単独で又は組み合わせて使用できる。
これらの各種の製剤は慣用の方法、例えば、日本薬局方に記載の方法と同様にして製造することができる。また、本発明の医薬組成物は、その剤型に応じて、経口投与、皮膚への塗布、又は粘膜への噴霧等により患部に適用することが出来る。
例えば、本発明の医薬組成物を用いて胃、腸など消化器官に存在する耐性菌などを駆逐する場合には、胃溶解性コーティング剤でコーティングした錠剤やカプセル剤として、また腸溶解性コーティング剤でコーティングした錠剤やカプセル剤として経口投与することができる。また、咽頭、肺など呼吸器官に存在する薬剤耐性菌などを駆逐する場合には、噴霧器を用いて口や鼻から吸入する噴霧剤やエアゾール剤として非経口投与することができる。さらに、血管中や内蔵などの各種器官に入り込んでいる薬剤耐性菌などを駆逐する場合には、注射剤や点滴剤として静脈などから非経口投与することができる。
従って、本発明の治療方法において、例えば、胃、腸など消化器官に存在する抗生物質耐性菌の駆逐することが出来る。又は、静脈から注射により薬剤組成物を注入し、血管中の抗生物質耐性菌を駆逐することができる。更に、噴霧器を用いて口や鼻から薬剤組成物を吸入させ、咽頭、肺など呼吸器官に存在する抗生物質耐性菌を駆逐することも可能である。
その際の有効成分の投与量は剤型、治療対象となる起因菌の種類、症状等に応じて適宜選択されるが、一般的には、成人一人当たり、0.0001〜500mg/kg/日、好ましくは0.001〜50mg/kg/日の範囲で投与される。
尚、本発明のプラスミド、薬剤組成物等を投与して治療を行う際には、新たな耐性菌の出現を避けるためにも、本発明の溶菌遺伝子を含むプラスミドには抗生物質耐性遺伝子は含まれないようにすることが好ましい。
本発明の、バクテリオファージの溶菌遺伝子を組み込んだプラスミドにより、従来技術における課題を解決し、従来のファージ治療の利点をより生かすことの出来る、抗生物質の使用に替わり得る、薬剤耐性菌に対する新たな治療方法、及び該方法に使用するベクターなどが提供される。本発明の医薬組成物は、従来のファージ治療のようにファージ全体を使用するものではなく、その溶解遺伝子のみを使用するものであることから、安全性が高く、かつ確実に標的の病原性微生物を選択的に溶解して死滅させることができる。また、本発明の医薬組成物は、薬剤を使用するものではないことから、新たな薬剤耐性菌を出現させることなく感染症の治療を行うことができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例に示す実験において使用した大腸菌としては、K12株ΔH1Δtrp[lacZam、Δbio−uvrB、Δ(trpE−A)2、rpsL(λNam7、Nam53、cI857、ΔH1)](Bernard, H.-U, et al., (1979) Gene, 5, 59-76)を使用した。
プラスミドの調製。
以下の実施例に示す実験においてはプラスミドベクターとして、プラスミドベクターpPLc245(Remaut, E., et al., (1983) Nucleic Acids Research 11, 4677-4688)をクローニングおよび発現用に用いた。
さらに、発現ベクターpPLc245を制限酵素NdeIで処理し、T4 DNAポリメラーゼおよびdNTP類との末端充填反応後、生成した平滑断端をT4 DNAリガーゼで接合して、それをプラスミドpPLc245−2と命名した。一方、制限酵素部位AscIおよびPacIを含むポリリンカー断片をpNEB193(New England Biolabs Inc.,MA、USA)から制限酵素EcoRIおよびHindIIIによって単離し、プラスミドpPLc245中に挿入し、その後同一酵素で消化した。生成したベクターを、プラスミドpPLc245(AP)と命名した。
大腸菌の調製と形質転換法。
以下に示す実施例において、トランスフェクション(transfection)は、以下の文献に記載の方法に準じて、カルシュウム、マンガン、DMS0(dimethyl sulfoxide)を含む溶液を用いて処理しトランスフェクションを実施した。
(1)野島博;高効率コンピタントセル調整法1991.3.p46-51. 「遺伝子工学ハンドブック(実験医学別冊)」、羊土社。
(2)Inoue H., Nojima H., and Okayama H., (1990); High efficiency transformation of Escherichia coli plasmids. Gene 96 23‐28。
より詳しい手順は以下のとおりである。
(A)SEM(simple and efficient method)によるコンピテント細胞の調製
細胞をプレート上で一晩培養し、10−15個の大きめのコロニーをとり、2Lの三角フラスコ中のSOB(250ml)に懸濁し、200−250rpm/分で40〜50分振とうした。18℃ (又は、室温)で保存した。このときの平均の吸光度は(A600)0.6(0.4−0.8)であった。
次に、三角フラスコを氷上で10分冷却し、4℃で3,000rpmで10分間で遠心分離した。沈殿物を0℃に冷却し、コマゴメは使わず、TB−84ml(1/3容積)に0℃にてゆっくりと懸濁した。次いで、10分間0℃にした後、50mlの試験管2本に分け、4℃で3,000rpmで10分間で遠心分離した。得られた沈殿物を0℃でTB−20mlに懸濁し、氷上でゆっくり混ぜ、次いでDMSO(ジメチルスルフォキシド)が最終的の7%になるように、1.5mlを混ぜながら加えた。氷上で10分間放置し、氷につけたエッペンチューブに0.1mlずつ分注し、液体窒素中に入れて後、液体窒素中又は−80℃で保存した。細胞数は、約1×10になり、DNAの量は1×10cfu/μg以上であった。
(B)形質転換(Transformation)
前記で調製したコンピテント細胞を冷凍庫より取り出し、0℃で溶解した後、DNA試料(プラスミド)1−10μlを細胞に加え、静かに混ぜる。氷上で30分間、42℃で30秒、さらに氷上で1〜2分間放置した。コンピテント細胞0.3mlにSOC1.3mlを加え、SOC液(0.9ml)を37℃のアルミニウムキャップに移す。28℃で1時間振とうし、大腸菌株K12ΔH1Δtrpをプレートにまいた。
前記で使用したSOCは、SOB、及び2Mグルコース溶液又は20%グルコース溶液から調製した。
また、前記で使用したSOBは、その1Lを次のようにして調製した。
バクトトリプトン(Bacto Tryptone) 20g
バクトイースト抽出物(Bacto Yeast Extract) 5g
5M NaCl 2ml
(又は4M NaCl 2.5ml)
2M KCl 1.25ml
の混合物に精製水を加えて全量を980mlに下後、この溶液に、10mlの1M MgSO及び10mlの1M MgClを加えて調製した。
前記で使用したTB溶液(Transformation Buffer)は次のようにして調製した。
3.0g(10mM)のPIPES(酸型)、2.2g(15mM)のCaCl・2HO、及び18.6g(250mM)のKClの混合物にオートクレーブ処理した精製水を加え、全量を950mlにした後、1M KOHを用いてpHを6.7に調整した。このとき、濁っていた液が透明な溶液になった。
これに、10.9g(55mM)のMnCl・4HOを加えた後、オートクレーブ処理した精製水を加え全量を1000mlにした。これを0.22μmのフィルターで濾過して、4℃で保存した。
大腸菌の増殖試験。
以下の実施例に示す全実験において、細胞は、ストレプトマイシン(25μg/ml)およびアンピシリン(50μg/ml)添加LB培地中において28℃で増殖させた(Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 2nd edn. Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory)。600nmにおける吸光度を測定し、細胞増殖と溶菌をモニタリングした。λファージのプロモーターであるλpL制御下にあるプラスミド(プラスミドpPLc245(AP)等)において遺伝子発現を誘発するため、温度を37℃から42℃に変化させ、cI857リプレッサー分子の熱による不活性化を行った。
A−II群ファージ溶菌遺伝子を組み込んだプラスミドによる細菌の溶菌(1)
RNAファージGA(A−II群)(Inokuchi, Y., et al., (1986) J. of Biochemistry 99, 1169-1180)をRT−PCR用RNA単離のために使用した。
(1)GA RNA由来GA溶菌(L)遺伝子のクローニング
GA RNAのRT−PCR増幅は、Promega Access RT−PCRシステムキットに含まれているプロトコールに従い実施した。フォーワードプライマーはAscI部位とGA RNAの1257位から1281位を含み、5'−GTAGGCGCGCCGCTTCACTTAGCGAATGCATTAGCC−3'であり、リバースプライマーはPacI部位およびGA RNAの2015位から2039位を含み、5'−CGCTTAATTAACTCGATATGAGAGTAGTCGTATCCG−3'であった。RT−PCR増幅から得られた断片を制限酵素AscIおよびPacI部位によって消化した。
(2)GA溶菌遺伝子を含む発現プラスミドの構築とそれらの溶菌活性
前記得られた遺伝子断片をベクターpPLc245(AP)のAscIおよびPacI部位の間に挿入し、プラスミドpGAc1−8を得た。クローニングした断片の配列を決定し、ジデオキシチェーン終止法(Sanger, F., et al., (1977) Proceedings of the National Academy of Science, USA 74, 5463-5467)によってそれらの一体性を確認した。得られたプラスミドは、コートタンパク質遺伝子を含め、MS2ファージ(Kastelein, R.A., et al., Nature 276, 35-41)の場合と同様に、活性な溶菌性を有するものである。 プラスミドpGAc1−8を大腸菌にトランスフェクションして得られた結果を図1に示した。プラスミドpGAc1−8を保有している大腸菌細胞は、誘発により、A群ファージで予測されるように誘発25分後に溶菌を開始した。対照として使用したプラスミドはpPLc245である。
A−II群ファージ溶菌遺伝子を組み込んだプラスミドによる細菌の溶菌(2)
A−II群ファージ(GAグループ)に属するその他の4種類のファージRNAを鋳型に用いて、以下に示す同一のプライマー(GJ−4,GJ−6)
プライマー(GJ−4); 5'-GTAGGCGCGCCGCTTCACTTAGCGAATGCATTAGCC‐3'
プライマー(GJ‐6); 5'-CGCTTAATTAACTCGATATGAGAGTAGTCGTATCCG‐3'
を使ってRT−PCRにより二本鎖DNAを合成し、AscI、PacI制限酵素を用いて切断した。これらの遺伝子の中の溶解(溶菌)活性を有している蛋白質をコードしている部分の翻訳領域の塩基配列を、配列表の配列番号1〜4にそれぞれ示す。
その後、これらの遺伝子断片をプラスミドpPLc245(AP)の同一サイトに結合させて各プラスミドを作成した。これらは全て各ファージのコートタンパク質遺伝子及び溶菌遺伝子を含み、コートタンパク質遺伝子のリボゾーム結合部位(SD配列)を含む。
(1) pSDcl−10 (SDファージ由来)
(2) pTH1cl−1 (TH1ファージ由来)
(3) pTL2cl−1 (TL2ファージ由来)
(4) pJP500cl−12 (JP500ファージ由来)
同様な系でトランスフェクションし、誘発の結果得られた溶菌の結果を、図2〜図5に夫々示す。
B−IV群ファージ溶菌遺伝子を組み込んだプラスミドによる細菌の溶菌(1)
RNAファージSP(B−IV群)(Inokuchi, Y., et al., (1988) Nucleic Acids Research 16, 6205-6221)をRT−PCR用RNA類単離のために使用した。
(1)SP RNA由来SP溶菌(A2)遺伝子のクローニング。
SP RNAのRT−PCR増幅も同様に実施した。EcoRI部位およびSP RNAの41位から64位を含むフォーワードプライマーは、5'−GCTGCGAGCTCGTGAATTCACAGAGGAGAATCTATGCCAACCC−3'であり、リバースプライマーはSalI部位およびSP RNAの1389位から1411位を含み、5'−GCATCGTCGACAGGCCTAAGTTCAACGCTTAACGCGTTGG−3'であった。RT−PCR増幅から得られた断片をQIAクイックPCR精製キット(QIAGEN社)によって精製し、制限酵素EcoRIおよびSalIによって消化し、ベクターpPLc245−2のEcoRIおよびSalI部位の間に挿入し、プラスミドpSPA2−10を得た。
(2)pSPA2−10の欠失変異体の構築
pSPA2−10プラスミドを制限酵素MluIによって消化し、生成した大断片を自己連結してpM1−4を得、pSPA2−10はまたPvuIIによって同様に消化しpPv−17を得て、pSPA2−10をHpaIおよびEcoRVによって消化し、生成した断片を自己連結してプラスミドpHE−3を得た。
上記各プラスミドを大腸菌にトランスフェクションして得られた結果を図6に示した。プラスミドpSPA2−10を保有している大腸菌細胞は、誘発により、B群ファージ(Qβファージ)で予測されているのと同様に誘発により溶解した(図6(c))。pSPA2−10の欠失変異体を構築し、A2遺伝子の一体性の必要性がわかった(図6(b))。図6(c)に示したように、欠失変異体プラスミドを保有している大腸菌細胞は、溶菌活性を全く有していなかった。これらの結果は、B−IIIおよびB−IV群のファージが、溶菌(成熟化タンパク質)遺伝子に関して、類似の特性を有していることを意味している。
B−IV群ファージ溶菌遺伝子を組み込んだプラスミドによる細菌の溶菌(2)
更に、B−IV群ファージ(SPグループ)に属するその他の3種類のファージRNAを鋳型に用いて、以下に示すSP−8及びSP−9、並びにSP−23及びSP−24のプライマーを使ってRT−PCRにより二本鎖DNAを合成し、AscI, PacI制限酵素を用いて切断後、pPLc245(AP)の同一サイトに結合して各プラスミドを作成した。
(1) pSG10A2−18 プラスミド
SG10ファージ由来のA2遺伝子とそのリボゾーム結合部位(SD配列)を含む。SG10ファージRNAを鋳型に用いてプライマー(SP−8,SP−9)を用いて作成した。
(2) pID2A2−1プラスミド
ID2ファージ由来のA2遺伝子とそのリボゾーム結合部位(SD配列)を含む。ID2ファージRNAを鋳型に用いてプライマー(SP−8,SP−9)を用いて作成した。
(3) pTW19A2−15プラスミド
TW19ファージのA2遺伝子とそのリボゾーム結合部位(SD配列)を含む。TW19ファージRNAを鋳型に用いてプライマー(SP−23,SP−24)を用いて作成した。
プライマー(SP−8) ; 5'-GTAGGCGCGCCCACTACAGAGGAGAATCTATGCC-3'
プライマー(SP−9) : 5'-CGCTTAATTAACGCGGTGTAAGAGTTAAAGTCTG-3'
プライマー(SP‐23); 5'-GTAGGCGCGCCGCACTACAGAGGAGAATCTATGC-3'
プライマー(SP‐24); 5'-CGCTTAATTAACCCAAAGTTCAACGCTTAACGC-3'
同様な系でトランスフェクションし、誘発の結果得られた溶菌の結果を、図7〜図9に夫々示す。
B−III群ファージ溶菌遺伝子を組み込んだプラスミドによる細菌の溶菌(1)
B−III群ファージ(Qβグループ)に属する1種類のファージRNAを鋳型に用いて、以下に示すプライマーを使ってRT−PCRにより二本鎖DNAを合成し、AscI, PacI制限酵素を用いて切断後、pPLc245(AP)の同一サイトに結合して以下のプラスミドを作成した。
pTW18A2−7プラスミド:
TW18ファージ由来のA2遺伝子とそのリボゾーム結合部位(SD配列)を含む。TW18ファージRNAを鋳型に用いて、プライマー(Qb−3,Qb−12)を用いてRT−PCRにより二重鎖DNAを合成。AscI、PacI制限酵素を用いて切断、pPLc245(AP)の同一部位に結合した。
プライマー(Qb‐3) ; 5'-GTAGGCGCGCCAGTACTTCACTGAGTATAAGAGG-3'
プライマー(Qb‐12); 5'-CGCTTAATTAAGATACCGAAACGGTAACACGC-3'
同様な系でトランスフェクションし、誘発の結果得られた溶菌の結果を、図10に示す。
A−I群ファージ溶菌遺伝子を組み込んだプラスミドによる細菌の溶菌(1)
A−I群ファージ(MS2グループ)に属する2種類のファージRNAを鋳型に用いて、以下に示すプライマーを使ってRT−PCR により二本鎖DNAを合成し、AscI、PacI制限酵素を用いて切断後、pPLc245(AP)の同一サイトに結合して各プラスミドを作成した。
(1)pBO1cl−3プラスミド (BO1ファージ由来のコートタンパク質遺伝子、溶菌遺伝子及びコートタンパク質 のリボゾーム結合部位(SD配列)を含む)。
BO1ファージのRNAを鋳型に使用し、プライマーとして(MS−2,MS−11)を用いてRT−PCR により二本鎖DNA とし、プライマーに入っている制限酵素部位AscI、PacIで切断後、ベクターpPLc245(AP)の同一制限酵素サイトに組み込んだ。
(2)pZRcl−3プラスミド(ZRファージ由来のコートタンパク質遺伝子、溶菌遺伝子、及びコートタンパク質のリボゾーム結合部位(SD配列)を含む)。
ZRファージRNAを鋳型に使用し、プライマーとして(MS−2,MS−12)を用いて、RT−PCR により二本鎖DNAとし、プライマーに入っている制限酵素部位AscI、PacIで切断後、ベクターpPLc245(AP)の同一制限酵素サイトに組み込んだ。
プライマー(MS‐2) ; 5'-GTAGGCGCGCCGTTAGCATTAATCAGGCAACGGC-3'
プライマー(MS‐11); 5'-CGCTTAATTAATTACCAGAACCTAAGGTCGGATGC-3'
プライマー(MS‐12); 5'-CGCTTAATTAAGCAGCTTAGCGATAGCTAGGC-3'
同様な系でトランスフェクションし、誘発の結果得られた溶菌の結果を、図11及び図12に示す。
電子顕微鏡法。
透過型電子顕微鏡写真は、次のようにして作成した。試料は、プラスミド含有の大腸菌の誘導開始後約15分してから遠心分離で採取し、それらをPB(リン酸緩衝液)で洗浄後、濃度1.5%(w/v)になるまでグルタルアルデヒドを添加して4℃で一晩固定した。PB洗浄後試料をPBに懸濁させ、4%アガロースに包埋した。室温で60分間、1%(w/v)四酸化オスミウムで後固定後、細胞をPBで洗浄し、アルコールで脱水させた。細胞をその後Spurr低粘度樹脂(Spurr、1969)に浸潤させその中に包埋させ、重合させ、ライヘルトニーゼイウルトラカットマイクロトーメ(Reichert-Nissei Ultracut Microtome)のダイアモンドナイフで切断し、ホルムバル(Formvar)フィルムを被覆した銅グリッド上にのせ、ウラニル酢酸およびクエン酸鉛によって染色した。超薄切片を、JEM−2000EXII(JEOL Ltd.Japan)電子顕微鏡を用いて撮影した。結果を図13(プラスミドpGAcl−8)及び図14(プラスミドpSPA2−10)にそれぞれ示す。
本発明は、抗生物質のような薬剤を使用することなく感染症の原因となっている病原性の微生物を溶解して死滅させるための遺伝子構築物、及びそれを用いた医薬組成物を提供するものであり、感染症の治療用の薬剤として産業上の利用性を有するものである。また、本発明の遺伝子構築物は、微生物中に当該微生物を溶解させる作用を有する蛋白質をコードする遺伝子を導入することができるものであり、微生物の溶解剤、及びそれを用いた溶解方法として産業上の利用性を有するものである。
図1は、プラスミドpGAc1−8を大腸菌にトランスフェクションして得られた結果を示す。 図2は、pSDcl−10(SDファージ由来)によりトランスフェクションした大腸菌の溶菌の様子を示すグラフである。 図3は、pTH1cl−1によりトランスフェクションした大腸菌の溶菌の様子を示すグラフである。 図4は、pTL2cl−1によりトランスフェクションした大腸菌の溶菌の様子を示すグラフである。 図5は、pJP500cl−12によりトランスフェクションした大腸菌の溶菌の様子を示すグラフである。 図6は、プラスミドpSPA2−10等によりトランスフェクションした大腸菌の溶菌の様子を示すグラフである。 図7は、pSG10A2−18プラスミドによりトランスフェクションした大腸菌の溶菌の様子を示すグラフである。 図8は、pID2A2−1プラスミドプラスミドによりトランスフェクションした大腸菌の溶菌の様子を示すグラフである。 図9は、pTW19A2−15プラスミドによりトランスフェクションした大腸菌の溶菌の様子を示すグラフである。 図10は、pTW18A2−7プラスミドによりトランスフェクションした大腸菌の溶菌の様子を示すグラフである。 図11は、pBO1cl−3プラスミドによりトランスフェクションした大腸菌の溶菌の様子を示すグラフである。 図12は、pZRcl−3プラスミドによりトランスフェクションした大腸菌の溶菌の様子を示すグラフである。 図13は、GAファージ由来のプラスミドpGAcl−8を導入した大腸菌の誘発から40分後における溶解した大腸菌の透過型電子顕微鏡で観察した結果を示す図面に代わる写真である。 図14は、SPファージ由来のプラスミドpSPA2−10を導入した大腸菌の誘発から60分後における溶解した大腸菌の透過型電子顕微鏡で観察した結果を示す図面に代わる写真である。
配列番号1:A−II群に属するSDファージ由来の溶菌遺伝子の塩基配列を示す。
配列番号2:A−II群に属するTH1ファージ由来の溶菌遺伝子の塩基配列を示す。
配列番号3:A−II群に属するTL2ファージ由来の溶菌遺伝子の塩基配列を示す。
配列番号4:A−II群に属するJP500ファージ由来の溶菌遺伝子の塩基配列を
示す。
配列番号5:ファージGA及びA−II群ファージの溶菌遺伝子の作成用の
フォーワードプライマー(GJ−4)
配列番号6:ファージGA及びA−II群ファージの溶菌遺伝子の作成用の
リバースプライマー(GJ−6)
配列番号7:ファージSPの溶菌遺伝子の作成用のフォーワードプライマー
配列番号8:ファージSPの溶菌遺伝子の作成用のリバースプライマー
配列番号9:プライマー(SP−8)
配列番号10:プライマー(SP−9)
配列番号11:プライマー(SP‐23)
配列番号12:プライマー(SP‐24)
配列番号13:プライマー(Qb‐3)
配列番号14:プライマー(Qb‐12)
配列番号15:プライマー(MS‐2)
配列番号16:プライマー(MS‐11)
配列番号17:プライマー(MS‐12)

Claims (26)

  1. バクテリオファージの溶菌遺伝子を含有する遺伝子構築物、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物。
  2. 医薬組成物が、感染症の治療用である請求項1に記載の医薬組成物。
  3. バクテリオファージが、一本鎖RNAファージである請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  4. バクテリオファージが、レヴィウイルス(Leviviridae)科小型球形RNAファージ、及びミクロウイルス(Microviridae)科小型球形DNAファージからなる群から選ばれるものである請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
  5. バクテリオファージの溶菌遺伝子を含有する遺伝子構築物が、プラスミドである請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
  6. バクテリオファージの溶菌遺伝子を含有する遺伝子構築物における溶菌遺伝子が、λpL又はラクトースプロモーターの制御下にある構築物である請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
  7. バクテリオファージの溶菌遺伝子が、さらにコートタンパク質をコードする遺伝子を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
  8. 医薬組成物が、さらに遺伝子の発現のための誘導物質を含有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の医薬組成物。
  9. 遺伝子の発現のための誘導物質が、イソプロピル1−チオβ−D−ガラクトシド(IPTG)である請求項8に記載の医薬組成物。
  10. 医薬組成物が、非経口投与製剤である請求項1〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
  11. バクテリオファージの溶菌遺伝子を含有する遺伝子構築物。
  12. 遺伝子構築物が、プラスミドからなる請求項11に記載の遺伝子構築物。
  13. バクテリオファージが、一本鎖RNAファージである請求項11又は12に記載の遺伝子構築物。
  14. 一本鎖RNAファージが、レヴィウイルス属に属するファージである請求項13記載の遺伝子構築物。
  15. バクテリオファージが、小型球形DNAファージである請求項11又は12に記載の遺伝子構築物。
  16. バクテリオファージが、レヴィウイルス(Leviviridae)科小型球形RNAファージ、及びミクロウイルス(Microviridae)科小型球形DNAファージからなる群から選ばれるものである請求項11〜13のいずれかに記載の遺伝子構築物。
  17. バクテリオファージの溶菌遺伝子を含有する遺伝子構築物における溶菌遺伝子が、λpL又はラクトースプロモーターの制御下にある構築物である請求項11〜16のいずれかに記載の遺伝子構築物。
  18. バクテリオファージの溶菌遺伝子が、さらにコートタンパク質をコードする遺伝子を含有するものである請求項11〜17のいずれかに記載の遺伝子構築物。
  19. 請求項11〜18のいずれかに記載の遺伝子構築物を含有してなる細菌類の溶解剤。
  20. 溶解剤が、さらに遺伝子の発現のための誘導物質を含有するものである請求項19に記載の細菌類の溶解剤。
  21. 遺伝子の発現のための誘導物質が、イソプロピル1−チオβ−D−ガラクトシド(IPTG)である請求項20に記載の細菌類の溶解剤。
  22. 請求項11〜18のいずれかに記載の遺伝子構築物を細菌にトランスフェクションさせ、当該遺伝子構築物に組み込まれた溶菌遺伝子を発現させることからなる、ヒト以外における細菌を溶菌する方法。
  23. 細菌が大腸菌である請求項22に記載の方法。
  24. 温度シフトによって溶菌遺伝子を発現させる、請求項22又は23に記載の方法。
  25. 誘導物質の添加によって溶菌遺伝子を発現させる、請求項22又は23に記載の方法。
  26. 誘導物質がイソプロピル1−チオβ−D−ガラクトシド(IPTG)である、請求項25に記載の方法。

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